IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

特許7605023ガスクロマトグラフィ分析方法及びガスクロマトグラフィ分析システム
<>
  • 特許-ガスクロマトグラフィ分析方法及びガスクロマトグラフィ分析システム 図1
  • 特許-ガスクロマトグラフィ分析方法及びガスクロマトグラフィ分析システム 図2
  • 特許-ガスクロマトグラフィ分析方法及びガスクロマトグラフィ分析システム 図3
  • 特許-ガスクロマトグラフィ分析方法及びガスクロマトグラフィ分析システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ガスクロマトグラフィ分析方法及びガスクロマトグラフィ分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/68 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
G01N30/68 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021089760
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2021196357
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2020102011
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003993
【氏名又は名称】弁理士法人野口新生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】芝本 繁明
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0088093(US,A1)
【文献】特開2002-195991(JP,A)
【文献】特開平09-138218(JP,A)
【文献】特開平11-237339(JP,A)
【文献】特開2009-288210(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0054832(US,A1)
【文献】特表2009-518652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0038347(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/68
G01N 30/26
G01N 27/62
G01N 21/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアガスを用いてサンプルガスを分離カラムに導入して前記サンプルガス中の成分を分離するステップと、
前記分離カラムを経たサンプルガスを、検出器に導入して前記サンプルガス中の成分を検出するステップと、を含み、
前記検出するステップは、
水の電気分解により生成する水素ガス及び酸素ガスを個別に取り出すことと、
取り出した水素ガス及び酸素ガスの流量をそれぞれ制御して、検出器ガスとして前記検出器へそれぞれ供給すること、とを含み、
前記分離するステップは、前記水の電気分解により生成され個別に取り出された前記水素ガスの一部を前記キャリアガスとして前記分離カラムの上流に供給することを含み、
前記検出するステップは、
前記検出器ガスとして前記検出器に導入される水素ガスと前記キャリアガスとして前記検出器に導入される水素ガスとの合計流量と、前記検出器に導入される酸素ガスの流量との比率が所定の比率となるように水素ガス及び酸素ガスのそれぞれの流量を制御することを含む、ガスクロマトグラフィ分析方法。
【請求項2】
サンプルガス中の成分を分離するための分離カラムと、
前記分離カラムの下流に流体接続されて前記分離カラムで分離された成分を検出するための検出器と、
水の電気分解により水素ガス及び酸素ガスを生成し、生成した水素ガス及び酸素ガスを個別に取り出すように構成されたガス生成器と、
前記ガス生成器で生成された水素ガスを検出器ガスとして前記検出器に導くための第1流路と、
前記ガス生成器で生成された酸素ガスを検出器ガスとして前記検出器に導くための第2流路と、
前記第1流路を介して前記検出器に導入される水素ガスの流量、及び、前記第2流路を介して前記検出器に導入される酸素ガスの流量をそれぞれ調節する検出器ガス流量調節部と、
前記ガス生成器で生成された水素ガスをキャリアガスとして前記分離カラムの上流に導くための第3流路と、
前記キャリアガスとして前記検出器に導入される水素ガスの流量を調節するキャリアガス流量調節部と
前記検出器ガス流量調節部及び前記キャリアガス流量調節部を制御して、前記検出器に前記検出器ガスとして導入される水素ガスと前記検出器に前記キャリアガスとして導入される水素ガスとの合計流量と、前記検出器に導入される酸素ガスの流量との比率を所定の比率に調節するように構成された制御部と、を備えている、ガスクロマトグラフィ分析システム。
【請求項3】
前記分離カラムはキャピラリカラムである、請求項2に記載のガスクロマトグラフィ分析システム。
【請求項4】
サンプルガス中の成分を分離するための分離カラムと、
前記分離カラムの下流に流体接続されて前記分離カラムで分離された成分を検出するための検出器と、
水の電気分解により水素ガス及び酸素ガスを生成し、生成した水素ガス及び酸素ガスを個別に取り出すように構成されたガス生成器と、
前記ガス生成器で生成された水素ガスを検出器ガスとして前記検出器に導くための第1流路と、
前記ガス生成器で生成された酸素ガスを検出器ガスとして前記検出器に導くための第2流路と、
前記第1流路を介して前記検出器に導入される水素ガスの流量、及び、前記第2流路を介して前記検出器に導入される酸素ガスの流量をそれぞれ調節する検出器ガス流量調節部と、
前記検出器ガス流量調節部を制御して、前記検出器に導入される水素ガスの流量と酸素ガスの流量との比率を前記検出器に適合した比率に調節するように構成された制御部と、
前記検出器の種類、及び、その種類に適合する水素ガスと酸素ガスとの流量の比率との相関に関する情報を記憶する情報記憶部と、を備え、
前記制御部は、ユーザにより入力された情報又は前記検出器から得られる情報に基づいて前記検出器の種類を認識し、前記検出器の種類に適合した水素ガスの酸素ガスの比率を前記情報記憶部から割り出し、割り出した水素ガスと酸素ガスの比率を前記検出器に適合した比率として用いるように構成されている、ガスクロマトグラフィ分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフィ分析方法及びガスクロマトグラフィ分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフィ分析では、FID(水素炎イオン化検出器)、FPD(炎光光度検出器)、FTD(熱イオン化検出器)、TCD(熱伝導度検出器)などを検出器として用いることができる。
【0003】
ところで、FIDなどの検出器では、検出器に水素ガスを供給する必要がある。水素ガスの供給源として水素ガスボンベが使用されることが一般的であるが、水素ガスボンベの危険性を回避するために、水の電気分解装置によって水素ガスを生成し、生成した水素ガスをFIDの作動ガスとして使用することが提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】US2002/054832A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシステムでは、水の電気分解装置によって生成する水素ガスと酸素ガスを十分に活用できていない。
【0006】
本発明は、水の電気分解によって生成した水素ガスと酸素ガスとをガスクロマトグラフィ分析において効率的に活用することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガスクロマトグラフィ分析方法は、キャリアガスを用いてサンプルガスを分離カラムに導入して前記サンプルガス中の成分を分離するステップと、前記分離カラムを経たサンプルガスを、検出器に導入して前記サンプルガス中の成分を検出するステップと、を含み、前記検出するステップは、水の電気分解により生成する水素ガス及び酸素ガスを個別に取り出すことと、取り出した水素ガス及び酸素ガスのそれぞれの流量を制御して検出器ガスとしてそれぞれ前記検出器へ供給することと、を含んでいる。
【0008】
本発明に係るガスクロマトグラフィ分析システムは、サンプルガス中の成分を分離するための分離カラムと、前記分離カラムの下流に流体接続されて前記分離カラムで分離された成分を検出するための検出器と、水の電気分解により水素ガス及び酸素ガスを生成し、生成した水素ガス及び酸素ガスを個別に取り出すように構成されたガス生成器と、前記ガス生成器で生成された水素ガスを検出器ガスとして前記検出器に導くための第1流路と、前記ガス生成器で生成された酸素ガスを検出器ガスとして前記検出器に導くための第2流路と、前記第1流路を介して前記検出器に導入される水素ガスの流量、及び、前記第2流路を介して前記検出器に導入される酸素ガスの流量をそれぞれ調節する検出器ガス流量調節部と、を備えている。
【0009】
すなわち、本発明に係るガスクロマトグラフィ分析方法及びシステムでは、水の電気分解によって生成した水素ガスと酸素ガスを個別に取り出し、水素ガス及び酸素ガスのそれぞれの流量を制御しながら検出器ガスとして検出器へ導入する。これにより、検出器に導入される水素ガスと酸素ガスの比率を所望の値に制御することができる。検出器に導入される水素ガスと酸素ガスの理想的な比率は検出器に種類によって異なるが、本発明では、検出器に導入される水素ガスと酸素ガスの比率を所望の値に制御できるため、多様な検出器に対応することができる。一方、特許文献1のように、水の電気分解により生成した水素ガス及び酸素ガスの混合ガスを検出器に導入する方式では、検出器に導入される水素ガスと酸素ガスの比率が一定であり、多様な種類の検出器に対応することができない。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るガスクロマトグラフィ分析方法では、水の電気分解により生成した水素ガス及び酸素ガスを個別に取り出し、取り出した水素ガス及び酸素ガスのそれぞれの流量を制御し、検出器ガスとして検出器へそれぞれ供給するので、水の電気分解によって生成した水素ガス及び酸素ガスをガスクロマトグラフィ分析において効率的に活用することができる。
【0011】
本発明に係るガスクロマトグラフィ分析システムでは、水の電気分解により水素ガス及び酸素ガスを生成して個別に取り出し、取り出した水素ガス及び酸素ガスのそれぞれの流量を調節しながら検出器ガスとして検出器へそれぞれ導入できるように構成されているので、水の電気分解によって生成した水素ガス及び酸素ガスをガスクロマトグラフィ分析において効率的に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ガスクロマトグラフィ分析システムの一実施例を示す概略構成図である。
図2】同実施例の検出器の構造の一例を概略的に示す断面図である。
図3】同実施例の動作の一例を示すフローチャートである。
図4】同実施例のガス生成器におけるガス生成原理を概略的に示す原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るガスクロマトグラフィ分析方法及びシステムの一実施例について説明する。
【0014】
図1に示されているように、この実施例のガスクロマトグラフィ分析システムは、インジェクタ2、分離カラム4、検出器6、カラムオーブン8、ガス生成器10、制御装置12、AFC(アドバンストフローコントローラ)20及びAPC(アドバンストプレッシャーコントローラ)を備えている。
【0015】
分離カラム4は、サンプルガス中の成分を分離するための分離媒体がコーティング又は充填された、例えばキャピラリである。分離カラム4は、入口端がインジェクタ2と流体接続され、出口端が検出器6と流体接続されている。分離カラム4は、内部空間の温度が設定された温度に調節されるカラムオーブン8内に収容されている。
【0016】
インジェクタ2は、サンプルガスを生成し、生成したサンプルガスをキャリアガスによって分離カラム4へ導入するためのものである。この実施例では、キャリアガスとしてガス生成器10で生成された水素ガスが使用される。
【0017】
検出器6は、分離カラム4を経たサンプルガス中の成分を検出するためのものである。検出器6としては、FID、FPD、FTD、TCDのうちのいずれかを使用することができる。検出器6がFID、FPD、FTDのいずれかである場合には、ガス生成器10で生成された水素ガス及び酸素ガスが検出器ガスとして検出器6に供給される。また、検出器6がTCDである場合には、ガス生成器10で生成された水素ガスのみが検出器ガスとして検出器6に供給される(すなわち、検出器6に導入される酸素ガスの流量がゼロに調節される)。
【0018】
ここで、分離カラム4として、キャピラリカラムのほかにパックドカラムを使用することもできる。特に、検出器6がTCDである場合には、分離カラム4としてパックドカラムを使用することが好ましい。
【0019】
ガス生成器10は、水の電気分解によって水素ガス及び酸素ガスを生成し、生成した水素ガス及び酸素ガスのそれぞれを個別に取り出すことができるように構成されているものである。図4は、ガス生成器10におけるガス生成原理を概略的に示している。ガス生成器10内には、イオン交換膜を間に挟んでアノード電極とカソード電極とが設けられており、アノード電極とカソード電極との間に直流電圧を印加することにより、アノード電極側では、次式
2HO-4e=O+4H
の電気分解反応によって酸素が生成され、カソード電極側では、次式
4H+4e=2H
の電気分解反応によって酸素が生成される。ガス生成器10は、アノード電極で生成された酸素ガス、カソード電極で生成された水素ガスを個別に取り出すことができるように構成されている。なお、水の電気分解によって生成した水素ガス及び酸素ガスを個別に取り出すことができるように構成された電気分解装置は既知である(例えば、特開2020-066796号公報、特開2018-178231号公報を参照)。
【0020】
ガス生成器10は水素ガス用出口と酸素ガス用出口を有し、水素ガス出口には流路13が接続され、酸素ガス出口には流路18が接続されている。流路13は、インジェクタ2に通じる流路14と、検出器6に通じる流路16とに分岐している。流路18は検出器6に通じている。流路16は、ガス生成器10で生成された水素ガスを検出器ガスとして検出器6へ導くための第1流路を構成している。流路18は、ガス生成器10で生成された酸素ガスを検出器ガスとして検出器6へ導くための第2流路を構成している。流路14は、ガス生成器10で生成された水素ガスをキャリアガスとして分離カラム4の上流へ導くための第3流路を構成している。
【0021】
AFC20は、分析時に、インジェクタ2に導入される水素ガスの全流量、分離カラム4の入口圧、スプリットベント流量、パージベント流量のそれぞれを制御するためのものである。インジェクタ2に導入される水素ガスの全流量からスプリットベント流量及びパージベント流量を差し引いた流量が、分離カラム4を介して検出器6にキャリアガスとして導入される水素ガスの流量となる。すなわち、AFC20は、キャリアガスとして検出器6に導入される水素ガスの流量を調節するためのキャリアガス流量調節部を実現している。
【0022】
APC22は、流路16を流れる水素ガスの流量、及び、流路18を流れる酸素ガスの流量をそれぞれ調節するためのものである。すなわち、APC22は、検出器6に検出器ガスとして導入される水素ガスと酸素ガスのそれぞれの流量を調節するための検出器ガス流量調節部を実現している。なお、検出器ガス流量調節部は、1つのAPC22のような流量調節器によって実現される必要はなく、流路16を流れる水素ガスの流量、及び、流路18を流れる酸素ガスの流量が互いに異なる流量調節器によって調節されてもよい。
【0023】
ここで、FIDを例に挙げて検出器6の構造について説明する。
【0024】
検出器6がFIDである場合、図2に示されているように、検出器6のセル100の内部空間に水素炎を発生させるためのノズル102が設けられている。ノズル102の内側を分離カラム4の出口部をなす配管104が通っている。ノズル102には流路16の一部をなす配管108が流体接続されており、ガス生成器10で生成された水素ガスが検出器ガスとして配管104の外周面とノズル102の内面との間の隙間に導入される。検出器ガスとしてノズル102に導入された水素ガスはノズル102の先端部で分離カラム4からのキャリアガスと合流し、ノズル102の先端から噴出される。
【0025】
セル100の内部空間には、流路18の一部をなす配管110が通じており、ガス生成器10で生成された酸素ガスが検出器ガスとしてセル100の内部空間に導入される。セル100の内部空間に導入された酸素ガスは、ノズル102の先端から噴出される水素ガスを燃焼させるための助燃ガスとして使用され、それによってノズル102の先端に水素炎が形成される。なお、配管110がノズル2の内部にまで通じて、水素ガスと酸素ガスとがノズル2の内部において混合されるようになっていてもよい。
【0026】
図1に戻って分析システムの説明を続ける。
制御装置12は、ガス生成器10、AFC20及びAPC22の動作制御を行なう機能を有するものであり、CPU(中央演算装置)及びデータ記憶装置を少なくとも備えた電子回路によって実現される。制御装置12は、制御部24及び情報記憶部26を備えている。制御部24は、CPUがプログラムを実行することによって実現される機能であり、情報記憶部26はデータ記憶装置の一部の記憶領域によって実現される機能である。
【0027】
制御部24は、分析に必要な量の水素ガス及び酸素ガスが得られるようにガス生成器10を動作させるだけでなく、AFC20及びAPC22の動作を制御することによって、検出器6に導入される水素ガスの流量と酸素ガスの流量の比率を検出器6に適合させるように構成されている。
【0028】
検出器6を正常動作させるために必要な水素ガスと酸素ガスとの流量の比率は、検出器6の種類(FID、FPDなど)によって異なる。情報記憶部26には、各種検出器に適合する水素ガスと酸素ガスとの流量の比率に関する情報が記憶されている。なお、別の実施例として、検出器6に適合する水素ガスと酸素ガスとの比率に関する情報を検出器6自身が保持していてもよい。
【0029】
図1とともに図3のフローチャートを用いて、制御部24によって実現されるガスクロマトグラフィ分析システムの動作の一例について説明する。
【0030】
まず、制御部24は、検出器6がどのような種類のものであるかを、ユーザによって入力される情報に基づいて、又は検出器6から読み取った情報に基づいて認識し、検出器6の種類に適合する水素ガスと酸素ガスとの流量の比率を情報記憶部26に記憶されている情報から割り出す(ステップ101)。そして、制御部24は、分離カラム4を経てキャリアガスとして検出器6に導入される水素ガスと流路16を介して検出器ガスとして検出器6に導入される水素ガスとの合計流量と、流路18を介して検出器6に導入される酸素ガスの流量との比率を、情報記憶部26の情報から割り出した比率にするために必要な水素ガス及び酸素ガスの各流量を計算する(ステップ102)。制御部24は、計算結果に基づいて、必要な量の水素ガス及び酸素ガスが生成されるようにガス生成部10を動作させ(ステップ103)、検出器6に導入される水素ガス及び酸素ガスの各流量の比率が検出器6に適合したものとなるように、AFC20及びAPC22の動作を制御する(ステップ104)。
【0031】
上記の動作によって検出器6に導入される水素ガス及び酸素ガスのそれぞれの流量が制御された状態で、サンプルがインジェクタ2に注入されてガスクロマトグラフィ分析が開始される。インジェクタ2に注入されたサンプルはサンプルガスとなり、キャリアガスによって分離カラム4に導入されてサンプル中の成分が分離される(ステップ105)。分離カラム4で分離されたサンプル中の成分は、キャリアガスとともに検出器6へ導入されて検出される(ステップ106)。
【0032】
なお、上記実施例では、ガス生成器10で生成された水素ガスをキャリアガスとして使用しているが、ガス生成器10とは別にキャリアガスの供給源を設けてもよい。その場合、キャリアガスとして、ヘリウムガス、窒素ガスなど水素ガス以外のガスを使用することもできる。水素ガス以外のガスをキャリアガスとして使用する場合、制御部24は、検出器6に検出器ガスとして導入される水素ガスの流量と酸素ガスの流量との比率が検出器6に適合したものとなるように、APC22の動作を制御する。
【0033】
以上において説明した実施例は、本発明に係るガスクロマトグラフィ分析方法及びシステムの実施形態の例示にすぎない。本発明に係るガスクロマトグラフィ分析方法及びシステムの実施形態は、以下のとおりである。
【0034】
本発明に係るガスクロマトグラフィ分析方法の一実施形態では、キャリアガスを用いてサンプルガスを分離カラムに導入して前記サンプルガス中の成分を分離するステップと、前記分離カラムを経たサンプルガスを、検出器に導入して前記サンプルガス中の成分を検出するステップと、を含み、前記検出ステップは、水の電気分解により生成する水素ガス及び酸素ガスを個別に取り出すことと、取り出した水素ガス及び酸素ガスの流量をそれぞれ制御し、検出器ガスとしてそれぞれ前記検出器へ供給することと、を含む。
【0035】
上記実施形態に係る分析方法の具体的態様では、前記検出するステップが、前記検出器に導入される水素ガスと酸素ガスの比率を前記検出器に適合した比率に調節することを含む。このような態様により、水の電気分解により生成された水素ガスを使用するガスクロマトグラフィ分析において多様な種類の検出器が使用可能になる。
【0036】
上記具体的態様において、前記分離するステップが、水の電気分解により生成した水素ガスを前記キャリアガスとして前記分離カラムの上流に供給することを含み、前記検出するステップにおいて、前記検出器ガスとして前記検出器に導入される水素ガスと前記キャリアガスとして前記検出器に導入される水素ガスとの合計流量と、前記検出器に導入される酸素ガスの流量との比率が前記検出器に適合した比率となるように水素ガス及び酸素ガスのそれぞれの流量を制御するようにしてもよい。このような態様により、水素ガス及び酸素ガス以外の種類のガスをメイクアップガスとして使用しない場合に、ガスクロマトグラフィ分析で使用するすべてのガスが水の電気分解によって生成されることになるため、ガスボンベを使用しないガスクロマトグラフィ分析を実現できる。メイクアップガスは、検出器の形状をキャピラリカラムの使用時の流量に適したものとしてクロマトグラムにおけるピークの広がりを抑制することによって不要とすることができる。そして、検出器に導入される水素ガスの合計流量と検出器に導入される酸素ガスの流量との比率が検出器に適合するように制御されるため、ガスボンベを使用しないガスクロマトグラフィ分析において多様な種類の検出器が使用可能となる。
【0037】
本発明に係るガスクロマトグラフィ分析システムの一実施形態は、サンプルガス中の成分を分離するための分離カラムと、前記分離カラムの下流に流体接続されて前記分離カラムで分離された成分を検出するための検出器と、水の電気分解により水素ガス及び酸素ガスを生成し、生成した水素ガス及び酸素ガスを個別に取り出すように構成されたガス生成器と、前記ガス生成器で生成された水素ガスを検出器ガスとして前記検出器に導くための第1流路と、前記ガス生成器で生成された酸素ガスを検出器ガスとして前記検出器に導くための第2流路と、前記第1流路を介して前記検出器に導入される水素ガスの流量、及び、前記第2流路を介して前記検出器に導入される酸素ガスの流量をそれぞれ調節する検出器ガス流量調節部と、を備えている。
【0038】
上記実施形態に係る分析システムの第1態様では、前記検出器ガス流量調節部を制御して、前記検出器に導入される水素ガスの流量と酸素ガスの流量との比率を前記検出器に適合した比率に調節するように構成された制御部をさらに備えている。このような態様により、水の電気分解により水素ガス、酸素ガスを生成して検出器ガスとして使用するガスクロマトグラフィ分析システムにおいて、多様な種類の検出器が使用可能になる。
【0039】
上記第1態様において、前記ガス生成器で生成された水素ガスをキャリアガスとして前記分離カラムの上流に導くための第3流路と、前記キャリアガスとして前記検出器に導入される水素ガスの流量を調節するキャリアガス流量調節部と、をさらに備え、前記制御部は、前記検出器ガス流量調節部及び前記キャリアガス流量調節部を制御して、前記検出器に前記検出器ガスとして導入される水素ガスと前記検出器に前記キャリアガスとして導入される水素ガスとの合計流量と、前記検出器に導入される酸素ガスの流量との比率を前記検出器に適合した比率に調節するように構成されていてもよい。このような態様により、水素ガス及び酸素ガス以外の種類のガスをメイクアップガスとして使用しない場合に、分析に使用するガスのすべてがガス生成部によって生成されることになるため、ガスボンベを使用しないガスクロマトグラフィ分析システムを実現できる。メイクアップガスは、検出器の形状をキャピラリカラムの使用時の流量に適したものとしてクロマトグラムにおけるピークの広がりを抑制することによって不要とすることができる。そして、検出器に導入される水素ガスの合計流量と検出器に導入される酸素ガスの流量との比率が検出器に適合するように制御されるため、ガスボンベを使用しないガスクロマトグラフィ分析システムにおいて多様な種類の検出器が使用可能となる。
【0040】
また、上記第1態様において、前記検出器の種類、及び、その種類に適合する水素ガスと酸素ガスとの流量の比率との相関に関する情報を記憶する情報記憶部を備えていてもよい。その場合、前記制御部は、ユーザにより入力された情報又は前記検出器から得られる情報に基づいて前記検出器の種類を認識し、前記検出器の種類に適合した水素ガスの酸素ガスの比率を前記情報記憶部から割り出し、割り出した水素ガスと酸素ガスの比率を前記検出器に適合した比率として用いるように構成してもよい。そうすれば、ユーザが水素ガス及び酸素ガスの流量設定を行なわなくても、検出器に適する水素ガス流量及び酸素ガス流量が分析システムによって自動的に割り出される。
【0041】
本発明における前記分離カラムはキャピラリカラムであってよい。
【符号の説明】
【0042】
2 インジェクタ
4 分離カラム
6 検出器
8 カラムオーブン
10 ガス生成器
12 制御装置
13,14,16,18 流路
20 AFC
22 APC
24 制御部
26 情報記憶部
図1
図2
図3
図4