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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/20 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
C22B1/20 V
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021090198
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182572
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-12-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒向 直樹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 賢史郎
(72)【発明者】
【氏名】桑原 稔
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-023604(JP,A)
【文献】特表2018-503046(JP,A)
【文献】特開2012-046813(JP,A)
【文献】特開平01-191751(JP,A)
【文献】特開昭58-126935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結機のパレット上に装入した焼結原料を焼結して焼結鉱を得る焼結鉱の製造方法であって、
焼結原料を焼結機のパレットへサブゲートを有するフィーダから堆積させて原料装入層を形成する工程と、前記原料装入層の上面から原料装入層中へ通気棒を刺し込む工程と、前記原料装入層の上面の高さを測定して、原料装入層の進行方向に直交する水平幅方向の原料層厚分布を測定する工程と、前記原料装入層の上面を均す工程と、均した原料装入層の表面に点火して焼結原料を焼結する工程と、点火後の原料装入層に上方から高酸素濃度空気を吹き込む工程と、を有し、
焼結機排鉱部で焼成された原料の断面をカメラで撮影して、カメラで撮影した焼成された焼結原料の断面におけるパレット底面からの赤熱部の高さが均一になるように、サブゲート開度調整後の焼結機幅方向ごとの焼成風量の偏差を確認した後に、残存する偏差を補うように、酸素吹込み装置を用いて焼結機幅方向での酸素濃度を調整し、焼成風量を幅方向で一定になるようにすることを特徴とする、焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石から焼結鉱を製造する焼結機で用いる焼結原料の装入状態を制御することで、良好な性状の焼結鉱を得ることができる焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、本発明に係る焼結鉱の製造方法が対象とする従来から知られている焼結機の一例を説明するための図である。一般に、高炉製銑法において主原料として用いられる焼結鉱は、図1に示すような工程を経て製造される。以下、その製造方法について、図示したフローに従って簡単に説明する。
【0003】
図1に示すように、平均粒径1.0~5.0mm程度の鉄鉱石粉や製鉄所内回収粉、焼結鉱篩下粉、石灰石やドロマイトなどの含CaO原料(CaO系副原料)、生石灰等の造粒助剤およびコークス粉、無煙炭などの凝結材などからなる焼結原料は、まず、それぞれホッパー1に貯蔵される。そして、これらの原料は、これらを収容しているホッパー1から、コンベヤ上に所定の割合で切り出され、混合造粒用ドラムミキサー2により混合しながら適量の水を加えて調湿され、造粒されて、平均径で3.0~6.0mmの大きさの造粒粒子(擬似粒子)となる。次に、造粒粒子は、焼結機上に配置されているサージホッパー4からドラムフィーダー5と切り出しシュート6を介して、無端移動式の焼結機パレット7上に400~600mm程度の原料層厚(高さ)になるように装入されて原料装入層8を形成する。次に、その原料装入層8の上方に設置した点火炉9により、この原料装入層8の上面にある凝結材に点火する。そして、焼結機パレット7下に配置したウインドボックス10から空気を吸引することにより、該原料装入層8中の造粒粒子内の凝結材(内装凝結材)を上層から下層へと順次に燃焼させ、このときに発生する燃焼熱によって、該造粒した焼結原料を加熱、溶融させることで、原料同士の結合を促して焼結鉱となる。焼結機パレット上に焼成された焼結層(焼結ケーキ)は、焼結機後方に配置されている排鉱部11を経て次工程へ運搬され、破砕-整粒されて、5.0mm以上のものが成品焼結鉱として回収される。なお、3は床敷鉱ホッパー、17はカットオフゲートである。
【0004】
ここで、原料装入層8の厚みは焼成時の原料装入層(焼結ベッド)の通気性に大きく関係しており、原料層厚の小さい部分は大きい部分に比較すると、通気抵抗が小さい。このため、原料層厚の小さい部分では他より、多量の空気が流れる。すなわち焼成風量が大きくなる。このような焼成風量が大きい部分では、酸素が多く供給されるため、凝結材の燃焼が促進され、燃焼速度が増大して焼成が速く進行する。
【0005】
原料装入層8中で、焼成風量が過剰に大きい部分が生じると、その部分では凝結材の燃焼による高温状態の時間が十分保持できないまま、燃焼帯の進行のみが速く進み、焼成後の組織が脆弱化して成品の歩留まりが低下する。さらに焼成風量が大きくなると焼成自体が伝搬しなくなり、焼結ベッド内に未焼の領域が残留して生産性を低下させる事態が生じる。なお、燃焼帯とは点火後の原料装入層8のうちで凝結材が燃焼している箇所のことである。原料装入層8中の凝結材は上層から下層へと順次燃焼するため、燃焼帯も焼成の進行に従い、上層から下層へと移動する。
【0006】
原料層厚の変動により原料装入層8の進行方向に直交する水平幅方向(以下、「幅方向」という)で焼成速度が異なると、操業操作としては、焼成速度の最も遅い部分を基準として焼成の完了を考えるため、焼結機のパレット速度を落として生産率を下げるか、一部を焼成未了のままで焼結機パレットから排鉱させて、焼結鉱篩下粉を増大させて製品歩留まりを低下させながら操業することとなり、いずれにせよ、生産率を低減せざるを得ない。なお、焼成速度とは原料層厚を原料装入層8の上面にある凝結材が点火されてから、燃焼帯が原料装入層8の最下端に至るまでの時間で割ったものである。
【0007】
そのため、製品歩留まりを改善し、焼結鉱篩下粉量を低減して凝結材原単位を低減するためには、焼成速度を幅方向で一定にすることが望ましい。このためには焼結機パレット上の原料装入層8の幅方向の原料層厚分布を正確に把握し、原料層厚分布が幅方向で一定となるようにすることが必要である。
【0008】
焼結機パレット上の原料装入層8の原料層厚を測定する技術としては、従来、原料給鉱側と排鉱側に幅方向に複数設置したレベル計で、幅方向各位置の給鉱部原料層厚と排鉱部原料層厚を測定し、その差から焼結鉱の収縮率を算出し、焼結鉱の冷間強度と機構率の各幅方向偏差が最少となるように給鉱部の原料装入密度を求め、この原料装入密度となるようにサブゲート開度を調整する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平5-5589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に記載される焼結機の焼結原料層厚レベル制御方法では、サブゲートのゲート開度で装入密度を制御するようにしているが、サブゲートの分割数には限りがあるため、各サブゲートの幅よりも狭い範囲における焼成風量を調整することが難しいという未解決の課題があった。
【0011】
本発明の目的は、焼結鉱のムラ焼けを防止でき、焼結鉱の強度・歩留まりを改善することができる焼結鉱の製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した従来技術が抱えている問題点を解決し、前記目的の実現に向けた研究の中で、発明者らは、原料給鉱側に幅方向に複数設置したレベル計で、幅方向各位置の給鉱部原料層厚を測定した後、サブゲートの開度、通気棒刺し込み深度、幅方向における酸素濃度のうち、少なくとも2つ以上の条件を調整することによって、幅方向ごとの焼成風量を均一化し、焼成速度の均一化を図ることができ、その結果、焼結機排鉱部で焼成された原料の断面において、パレット底面からの赤熱部の高さが均一になるようになり、ムラ焼けを防止し、焼結鉱の強度・歩留まりを改善することができることを見出した。
【0013】
即ち、本発明は、焼結機のパレット上に装入した焼結原料を焼結して焼結鉱を得る焼結鉱の製造方法であって、焼結原料を焼結機のパレットへサブゲートを有するフィーダから堆積させて原料装入層を形成する工程と、前記原料装入層の上面から原料装入層中へ通気棒を刺し込む工程と、前記原料装入層の上面の高さを測定して、原料装入層の進行方向に直交する水平幅方向の原料層厚分布を測定する工程と、前記原料装入層の上面を均す工程と、均した原料装入層の表面に点火して焼結原料を焼結する工程と、点火後の原料装入層に上方から高酸素濃度空気を吹き込む工程と、を有し、焼結機排鉱部で焼成された原料の断面において、パレット底面からの赤熱部の高さが均一になるように、前記サブゲートの開度、前記通気棒の刺し込み深度、および、前記水平幅方向における高酸素濃度空気の酸素濃度、のうち少なくとも2つを調整することを特徴とする、焼結鉱の製造方法である。
【0014】
なお、前記のように構成される本発明に係る焼結鉱の製造方法においては、
(1)前記サブゲート開度および前記通気棒の刺し込み深度で調整を実施する場合、サブゲート開度調整後の焼結機幅方向ごとの焼成風量の偏差を確認した後に、残存する偏差を補うように、焼結機幅方向で通気棒の刺し込み深度を調整し、焼成風量を幅方向で一定になるようにすること、
(2)前記サブゲート開度および前記幅方向における酸素濃度で調整を実施する場合、サブゲート開度調整後の焼結機幅方向ごとの焼成風量の偏差を確認した後に、残存する偏差を補うように、酸素吹込み装置を用いて焼結機幅方向での酸素濃度を調整し、焼成風量を幅方向で一定になるようにすること、
(3)前記通気棒の刺し込み深度および幅方向における酸素濃度で調整を実施する場合、ドラムフィーダーから原料を払い出した後、原料層厚レベルセンサを用い、カットオフゲートの手前にて焼結機の幅方向ごとの原料装入層の原料層厚の測定を行い、目標値に対する原料層厚の偏差を確認し、残存する幅方向の原料層厚偏差によって生じる、焼結機幅方向ごとの焼成風量を算出し、焼結機幅方向ごとの焼成風量の偏差を補うように、焼結機幅方向で通気棒の刺し込み深度を調整し、焼成風量を幅方向で一定になるようし、通気棒の差し込み深度調整で調整しきらない場合は、残存する偏差を補うように、酸素吹込み装置を用いて焼結機幅方向での酸素濃度を調整し、焼成風量を幅方向で一定になるようにすること、
がより好ましい解決手段となるものと考えられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、焼結機排鉱部で焼成された原料の断面において、パレット底面からの赤熱部の高さが均一になるように、サブゲート開度、通気棒刺し込み深度、幅方向における酸素濃度のうち、少なくとも2つ以上の条件を調整することによって、幅方向焼成速度を適正状態に正確に制御することができ、高強度高品質の焼結鉱を、高歩留まりで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る焼結鉱の製造方法が対象とする従来の焼結機の一例を説明するための図である。
図2】本発明に係る焼結鉱の製造方法を実施する焼結機における焼結原料装入部の一実施形態を説明するための図である。
図3】本発明に係る焼結鉱の製造方法を実施する焼結機における原料装入層の厚み検出装置の一実施形態を説明するための図である。
図4】本発明に係る焼結鉱の製造方法における風量と通気棒深度との関係を説明するためのグラフである。
図5】本発明に係る焼結鉱の製造方法における風量と酸素濃度との関係を説明するためのグラフである。
図6】本発明に係る焼結鉱の製造方法における赤熱部の一実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る焼結鉱の製造方法の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図2は、本発明に係る焼結鉱の製造方法を実施する焼結機における焼結原料装入部の一実施形態を説明するための図である。図2に示す例において、図1に示す焼結機と同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。図2に示す例において、焼結原料20は、パレット7上を、搬送方向13(同図の矢印13方向)に搬送される。この搬送方向13方向と直交する方向を焼結機の水平幅方向14(同図の矢印14方向)と定義する。サージホッパー4から切出された原料は、ドラムフィーダー5により焼結機のパレット7上に拡散して装入される。ドラムフィーダー5の装入部には、焼結機の幅方向にサブゲート15が等間隔に配設されており、図示しない制御装置(演算装置)からの指令によって、各々のゲート開度を調整することで、該当する部位の焼結原料20の切出し量を増減制御することができる。
【0019】
ドラムフィーダー5の排出部には、焼結機の幅方向に複数配置された通気棒16が設けられている。装入された焼結原料20の表面に通気棒16を刺し込むことで密度の低い領域を形成し、刺し込んだ部位の燃焼速度を増加させることができる。通気棒16の刺し込み深度と焼成風量には、一般的に図4に例を示すような相関がある。それぞれの通気棒16で焼結原料20の表面に差し込む深さを調整できる。
【0020】
ドラムフィーダー5の搬送方向13側には、カットオフゲート17が配設されている。このカットオフゲート17は、所謂均し板であり、焼結機の幅方向にわたって原料装入層8の上端に位置するように配設されている。カットオフゲート17は、焼結用のパレット7の底面からの高さ方向に上下に位置調節できるようになっており、焼結機の焼結原料20の原料層厚方向に余剰な部分を圧密化することで、原料層厚を一様にするものである。カットオフゲート17で均した後の原料装入層8の層厚は一定になるが、カットオフゲート17は焼結原料20を圧密化する方法で均している。そのため、カットオフゲート17で均される前の原料装入層8の層厚に幅方向で変異がある場合、均された後の焼結原料20に幅方向で空隙率変動が生じる。焼成風量は焼結原料20の空隙率によって変動するため、カットオフゲート17で均される前の原料装入層8の層厚に幅方向で変異がある場合、幅方向の焼成風量の偏差が発生する。
【0021】
カットオフゲート17の出側には、焼結原料20を点火する点火炉9が設けられている。この点火炉9で焼結原料20の表面に点火し、パレット7の下側に配置された風箱10から図示しない主排風機で吸引することで、焼結工程が開始される。
【0022】
酸素吹込み装置18は、点火炉9の出側に設けられている。酸素吹込み装置18は、焼結原料20の原料装入層8に高酸素濃度空気を吹き込み、吹き込んだ部位の燃焼速度を増加させる工程である。酸素吹込み装置18は、焼結機幅方向に沿って部屋に分割されており、原料装入層8の表面に吹き込む高酸素濃度空気の流量を部屋それぞれで調整することができるものである。酸素濃度と焼成風量には、一般的に図5に例を示すような相関がある。
【0023】
図2に示す実施形態では、原料層厚検出装置として、カットオフゲート17の入側に、6個の原料層厚レベルセンサ19を等間隔に配設している。原料層厚レベルセンサ19は、点火・吸引開始前のパレット7上の焼結原料20の原料装入層8の高さを検出し、その高さを焼結原料20の原料装入層8の層厚のレベルとして検出するものである。原料層厚検出装置は、図3に示すように、焼結機のパレット7上の所定の高さ位置に焼結機のパレット7の幅方向に所定の間隔で配置されたレーザー距離計からなる原料層厚レベルセンサ19により、原料層厚レベルセンサ19から鉛直下方向にレーザー光21を照射し、反射したレーザー光21の強度から、焼結機のパレット7上に装入された原料装入層8の原料層厚を連続的に測定する装置である。
【0024】
また、本実施態様では、図1に示す焼結機の排鉱部11に、図示しないカメラを設置し、焼成された原料が焼結機パレット7から払い出される際に、焼成された原料の断面を撮影している。図6にカメラで撮影した焼成された原料の断面のイメージを示す。焼成原料20の断面には、焼成されて低温となった焼結ケーキ部22と、焼成されてはいるがまだ900℃~1300℃の温度で赤色に見える赤熱部23とが確認できる。図6に示すように、焼成された原料の断面において、焼結機の幅方向に等間隔に点p1~p10の位置を定め、各地点において、赤熱部23の焼結機パレット7の底面までの高さd1~d10をそれぞれ測定する。測定した高さd1~d10の平均値をDとすると、Dよりも小さい地点は、幅方向の平均に対して燃焼速度が速く、Dよりも大きい地点は、幅方向の平均に対して燃焼速度が遅い。本発明による目的は、ここでの高さd1~d10の標準偏差σdを小さく、すなわち、d1~d10の高さを均一にすることで達成することができる。
【実施例
【0025】
図2に示した例と同等の構成の、日産8000t規模のドワイトロイド式焼結機を用いて、原料装入層8の幅は3.9m、原料装入層8の原料層厚は630mmで、本発明を実施した。通気棒16は幅方向に等間隔に18本設置して、それぞれ原料装入層8内への通気棒16の深度を独立に制御できるよう構成した。また、酸素吹込み装置18は、装置内に焼結機幅方向に向かって伸びる酸素吹込み口から吹き込む酸素流量を調節することで、焼結機幅方向で酸素濃度を制御できるよう構成した。
【0026】
前述の焼結機において、原料装入層8の原料層厚の目標値を630mmと設定し、ドラムフィーダー5から焼結原料を払い出した。原料層厚レベルセンサ19を用い、カットオフゲート17手前にて焼結機の幅方向ごとの原料装入層8の原料層厚の測定を行った結果、目標値630mmに対し原料装入層8の原料層厚は変動した。目標層厚に対しての幅方向各原料層厚の偏差を求め、偏差が少なくなるよう、6分割のサブゲート15を用い、サブゲート開度を調整した。サブゲート開度はゲート脇の回転式取手を回転させることで調整した。サブゲート15の分割範囲における原料装入層8の層厚が目標値630mmよりも小さい場合はゲートを開く方向に、原料装入層8の層厚が目標値630mmよりも大きい場合はゲートを閉じる方向に、サブゲート15の開度を調整した。
【0027】
サブゲート開度調整後に残存している幅方向ごとの原料装入層8の原料層厚を、原料層厚レベルセンサ19を用いて測定した。残存する幅方向の原料層厚偏差によって生じる、カットオフゲート17で均された後の原料装入層8の空隙率を算出した。なお、空隙率の算出は、カットオフゲート17で均される前後の原料装入層8の原料層厚変化から算出した。この際、カットオフゲート17で均される前の装入密度は焼結機幅方向で一定とした。前述のようにして算出した、カットオフゲート17で均された後の、焼結機幅方向ごとの原料装入層8の空隙率およびパレット下からの吸引差圧、原料層厚から、エルガン式を用い焼結機幅方向ごとの焼成風量を算出した。これにより、サブゲート開度調整後の焼結機幅方向ごとの焼成風量が計算された。この段階では、サブゲート開度の調整が6分割に限定されるため、分割数よりも小さい範囲では調整仕切れない箇所が残存した。
【0028】
<サブゲート開度および通気棒の刺し込み深度で調整を実施する場合>
この場合、サブゲート開度調整後の焼結機幅方向ごとの焼成風量の偏差を確認した後に、残存する偏差を補うように、焼結機幅方向で通気棒16の刺し込み深度を調整し、焼成風量を幅方向で一定になるようにした。通気棒16は焼結機上の歩廊デッキの台座に固定されており、台座から鉛直下方向の原料装入層8に向かって通気棒16を差し込む構成となっていた。台座のボルトを緩め、通気棒16を原料装入層8に差し込む深さを調整することで、通気棒16の差し込み深度を調整した。焼成風量を大きくする場合は通気棒差し込み深度を深くし、焼成風量を小さくする場合は通気棒差し込み深度を浅くした。通気棒16を刺す量は、図4に示す実機での通気棒刺し込み深度と焼成風量の相関から決定した。
【0029】
<サブゲート開度および幅方向における酸素濃度で調整を実施する場合>
この場合、サブゲート開度調整後の焼結機幅方向ごとの焼成風量の偏差を確認した後に、残存する偏差を補うように、酸素吹込み装置18での調整を実施した。酸素吹込み装置18を用いて焼結機幅方向での酸素濃度を調整し、焼成風量を幅方向で一定になるようにした。酸素吹込み装置18では、装置内に焼結機幅方向に向かって伸びる酸素吹込み口から吹き込む酸素流量を調節することで、焼結機幅方向で酸素濃度を制御した。焼成風量を大きくしたい場合はその地点の酸素吹込み量を増やし、相対的に酸素濃度を高くする。焼成風量を小さくする場合は、その地点の酸素吹込みを実施せず、相対的に酸素濃度を低くする。その際、酸素濃度と焼成風量の関係は、図5の実機での相関を用いた。
【0030】
<通気棒の刺し込み深度および幅方向における酸素濃度で調整を実施する場合>
この場合、ドラムフィーダー5から原料を払い出した後、原料層厚レベルセンサ19を用い、カットオフゲート17の手前にて焼結機の幅方向ごとの原料装入層8の原料層厚の測定を行い、目標値630mmに対する原料層厚の偏差を確認した。残存する幅方向の原料層厚偏差によって生じる、焼結機幅方向ごとの焼成風量を前述と同等の方法で算出した。焼結機幅方向ごとの焼成風量の偏差を補うように、焼結機幅方向で通気棒16の刺し込み深度を調整し、焼成風量を幅方向で一定になるようにした。通気棒16を刺す量は、図4に示す実機での通気棒刺し込み深度と焼成風量の相関から決定した。ただし、通気棒16は、焼結機パレット7上の原料装入層8の原料層厚以上に差し込むことはできない。そのため、原料層厚をtとすると、通気棒差し込み深度の調整範囲は、0mm~tmmである。この範囲の通気棒16の差し込み深度調整で焼結機幅方向ごとの焼成風量の偏差が調整仕切らない場合は、さらに酸素吹込み装置18での調整を実施した。酸素吹込み装置18を用いて焼結機幅方向での酸素濃度を調整し、焼成風量を幅方向で一定にした。その際、酸素濃度と焼成風量の関係は、図5の実機での相関を用いた。
【0031】
<サブゲート開度および通気棒の刺し込み深度および幅方向における酸素濃度での全てを用いて調整を実施する場合>
サブゲート開度および通気棒の刺し込み深度および幅方向における酸素濃度での全てを用いて調整を実施することも可能である。この場合は、最終的に焼結機幅方向での焼成風量が一定となるように、それぞれの因子を操作した。
【0032】
前述の手順で、比較例として、A:未調整時、B:サブゲート開度のみ調整時、C:通気棒の刺し込み深度のみ調整時、D:幅方向における酸素濃度のみ調整時の4パターンと、本発明例として、E:サブゲート開度および通気棒の刺し込み深度調整時、F:サブゲート開度および幅方向における酸素濃度調整時、G:通気棒の刺し込み深度および幅方向における酸素濃度調整時、H:サブゲート開度および通気棒の刺し込み深度および幅方向における酸素濃度調整時の4パターン、合わせて8パターンのそれぞれのケースにおいて、焼結機排鉱部における焼成された原料の断面を撮影し、赤熱部23のパレット7底面からの高さd1~d10、およびd1~d10の標準偏差σdを求めた。また、焼結鉱のシャッター強度および焼結鉱の歩留まりを測定した。なお、焼結鉱のシャッター強度は、JIS M 8711に準拠して求めた。また、焼結鉱の歩留まりは、排鉱後の焼結鉱を篩目5×15mmの篩網で篩った際の、「篩上の重量÷母材の重量」から算出した。結果を以下の表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1の結果から以下のことがわかった。
【0035】
まず、B:サブゲート開度のみ調整時のσdは、A:未調整時のσdより小さかったが、サブゲート開度の調整が6分割に限定されるため、分割数よりも小さい範囲では調整仕切れない箇所があった。
【0036】
また、C:通気棒の刺し込み深度のみ調整時のσdおよびD:幅方向における酸素濃度のみ調整時のσdは、共に、A:未調整時よりもσdより小さかったが、通気棒の刺し込み深度および幅方向における酸素濃度は共に調整上限があるため、調整仕切れない箇所が一部残った。
【0037】
さらに、E:サブゲート開度および通気棒の刺し込み深度調整時のσd、F:サブゲート開度および幅方向における酸素濃度調整時のσd、G:通気棒の刺し込み深度および幅方向における酸素濃度調整時のσdは、どれも、B:サブゲート開度のみ調整時のσd、C:通気棒の刺し込み深度のみ調整時のσd、D:幅方向における酸素濃度のみ調整時のσdのいずれかよりも小さく、また焼結鉱のシャッター強度および焼結鉱の歩留まりが改善された。
【0038】
さらにまた、H:サブゲート開度および通気棒の刺し込み深度および幅方向における酸素濃度調整時のσdは、E:サブゲート開度および通気棒の刺し込み深度調整時のσd、F:サブゲート開度および幅方向における酸素濃度調整時のσd、G:通気棒の刺し込み深度および幅方向における酸素濃度調整時のσdと同程度であった。
【0039】
前述の結果より、サブゲートの開度、通気棒刺し込み深度、幅方向における酸素濃度のうち、少なくとも2つ以上の条件を調整することによって、幅方向ごとの焼成風量を均一化し、焼成速度の均一化を図ることができ、その結果、焼結機排鉱部で焼成された原料の断面において、パレット底面からの赤熱部の高さが均一になるようになり、ムラ焼けを防止し、焼結鉱の強度・歩留まりを改善することができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る焼結鉱の製造方法は、種々の配合から得られる焼結原料について、特に焼結鉱のムラ焼けの防止や、焼結鉱の強度・歩留まりの改善を目的とした場合に、好適に応用が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 ホッパー
2 ドラムミキサー
3 床敷鉱
4 サージホッパー
5 ドラムフィーダー
6 切り出しシュート
7 パレット
8 原料装入層
9 点火炉
10 ウインドボックス
11 排鉱部
13 搬送方向
14 幅方向
16 通気棒
15 サブゲート
17 カットオフゲート
18 酸素吹込み装置
19 レーザー距離計
20 焼結原料
21 レーザー光
22 焼結ケーキ部
23 赤熱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6