(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】半導体装置と半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/06 20060101AFI20241217BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241217BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241217BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01L29/78 652P
H01L29/78 652T
H01L29/78 652S
H01L29/78 653A
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 658A
(21)【出願番号】P 2021112201
(22)【出願日】2021-07-06
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 正和
(72)【発明者】
【氏名】平林 康弘
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-527117(JP,A)
【文献】実開昭58-185850(JP,U)
【文献】特開2012-060147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/06
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置(1)であって、
素子構造が形成されている素子領域(101)と、前記素子領域の周囲に位置している終端領域(102)と、を有している半導体層(10)、を備えており、
前記終端領域は、
前記半導体層の第1深さ範囲に設けられている第1耐圧保持構造(16,17,18)と、
前記半導体層の前記第1深さ範囲とは異なる第2深さ範囲に設けられており、前記半導体層の深さ方向において前記第1耐圧保持構造に対向するように配置されている第2耐圧保持構造(16,17,18)と、を有しており、
前記第1耐圧保持構造と前記第2耐圧保持構造の少なくともいずれか一方がリサーフ層(17,18)であり、
前記第1耐圧保持構造の電界強度分布と前記第2耐圧保持構造の電界強度分布は、前記終端領域の内周側から外周側に向けての高低の関係が逆である、半導体装置。
【請求項2】
前記半導体層の材料が炭化珪素である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1耐圧保持構造が前記リサーフ層を含んでおり、
前記第2耐圧保持構造が複数のガードリング(16)を含んでおり、
(1)前記第1耐圧保持構造の前記リサーフ層の不純物濃度が前記内周側から前記外周側に向けて低下しているときは、前記第2耐圧保持構造の前記ガードリングの面積比(単位面積当たりの面積)が前記内周側から前記外周側に向けて小さくなっており、
(2)前記第1耐圧保持構造の前記リサーフ層の不純物濃度が前記内周側から前記外周側に向けて増加しているときは、前記第2耐圧保持構造の前記ガードリングの面積比(単位面積当たりの面積)が前記内周側から前記外周側に向けて大きくなっている、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1耐圧保持構造が前記リサーフ層であり、
前記第2耐圧保持構造も前記リサーフ層であり、
前記第1耐圧保持構造の前記リサーフ層の不純物濃度が前記内周側から前記外周側に向けて低下しているときは、前記第2耐圧保持構造の前記リサーフ層の不純物濃度が前記内周側から前記外周側に向けて増加している、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体装置(1)の製造方法であって、
素子構造が形成されている素子領域(101)と、前記素子領域の周囲に位置している終端領域(102)と、を有する半導体層(100)上にマスク(44)を成膜する成膜工程であって、前記終端領域において、内周側から外周側に向けて前記マスクの開口率が変動するように前記マスクを成膜する、成膜工程と、
前記マスクをリフローするリフロー工程であって、前記マスクの厚みを前記
内周側から前記外周側に向かう方向に沿って変動させる、リフロー工程と、
前記マスク越しに前記半導体層内に不純物をイオン注入し、リサーフ層(17,18)を形成するイオン注入工程と、
を備えており、
前記終端領域は、
前記半導体層の第1深さ範囲に設けられている第1耐圧保持構造(16,17,18)と、
前記半導体層の前記第1深さ範囲とは異なる第2深さ範囲に設けられており、前記半導体層の深さ方向において前記第1耐圧保持構造に対向するように配置されている第2耐圧保持構造(16,17,18)と、を有しており、
前記第1耐圧保持構造と前記第2耐圧保持構造の少なくともいずれか一方が前記リサーフ層(17,18)である、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記半導体層の材料が炭化珪素である、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置と半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
特許文献1は、p型の複数のガードリングとp型の複数の拡散領域が半導体層の終端領域に設けられた半導体装置を開示する。複数のガードリングの各々は、半導体層の表面に露出する位置に設けられている。複数の拡散領域の各々は、複数のガードリングが設けられている深さよりも深い位置に設けられている。このように、複数のガードリングと複数の拡散領域は、半導体層の終端領域において異なる深さに設けられている。
【0003】
半導体装置がオフすると、素子領域から終端領域に向けて空乏層が広がる。空乏層は、複数のガードリングと複数の拡散領域を経由しながら終端領域の外周側及び深部側に向かって広がる。複数のガードリングと複数の拡散領域が設けられていることにより、素子領域から広がる空乏層が終端領域の外周側及び深部側に向かって大きく広がり、半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の半導体装置では、高い耐圧を得るために、複数のガードリングと複数の拡散領域の相対的な位置関係が適切に配置されるのが望ましい。しかしながら、複数のガードリングを形成するためのマスクと複数の拡散領域を形成するためのマスクのそれぞれのマスクずれによって複数のガードリングと複数の拡散領域の相対的な位置関係を適切に配置させることが難しい。本明細書は、製造ばらつきを許容するとともに高耐圧な特性を有することができる半導体装置を提供する。さらに、本明細書は、そのような半導体装置を製造するときに利用可能な半導体装置の製造方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する半導体装置(1)は、素子構造が形成されている素子領域(101)と、前記素子領域の周囲に位置している終端領域(102)と、を有している半導体層(10)、を備えることができる。前記終端領域は、前記半導体層の第1深さ範囲に設けられている第1耐圧保持構造(16,17,18)と、前記半導体層の前記第1深さ範囲とは異なる第2深さ範囲に設けられており、前記半導体層の深さ方向において前記第1耐圧保持構造に対向するように配置されている第2耐圧保持構造(16,17,18)と、を有することができる。前記第1耐圧保持構造と前記第2耐圧保持構造の少なくともいずれか一方がリサーフ層(17,18)である。前記第1耐圧保持構造の電界強度分布と前記第2耐圧保持構造の電界強度分布は、前記終端領域の内周側から外周側に向けての高低の関係が逆である。
【0007】
上記半導体装置では、前記第1耐圧保持構造と前記第2耐圧保持構造の少なくともいずれか一方が前記リサーフ層で構成されているので、前記第1耐圧保持構造と前記第2耐圧保持構造の相対的な位置関係のずれの影響が抑えられる。さらに、上記半導体装置では、前記第1耐圧保持構造と前記第2耐圧保持構造の電界強度分布の高低の関係が逆となっているので、各々の電界強度の分布を組み合わせた電界強度分布については、前記終端領域の内周側から外周側に向けて均一化される。このため、上記半導体装置は、前記半導体層の前記終端領域において高電圧を保持することができる。このように、上記半導体装置は、製造ばらつきを許容するとともに高耐圧な特性を有することができる。
【0008】
本明細書が開示する半導体装置(1)の製造方法は、半導体層(100)上にマスク(44)を成膜する成膜工程であって、前記半導体層の上面に平行な少なくとも一方向に沿って前記マスクの開口率が変動するように前記マスクを成膜する、成膜工程と、前記マスクをリフローするリフロー工程であって、前記マスクの厚みを前記一方向に沿って変動させる、リフロー工程と、前記マスク越しに前記半導体層内に不純物をイオン注入し、リサーフ層(17,18)を形成するイオン注入工程と、を備えることができる。
【0009】
上記製造方法によると、厚みを変動させた前記マスク越しにドーパントをイオン注入することにより、不純物濃度が変動した前記リサーフ層を形成することができる。この製造方法は特に、前記半導体層の材料が不純物拡散の小さい材料のときに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の半導体装置の平面図を模式的に示す。
【
図2】本実施形態の半導体装置の要部断面図(
図1のII-II線における断面図)を模式的に示す。
【
図3】
図1の本実施形態の半導体装置を製造する一工程における要部断面図を模式的に示す。
【
図4】
図1の本実施形態の半導体装置を製造する一工程における要部断面図を模式的に示す。
【
図5】
図1の本実施形態の半導体装置を製造する一工程における要部断面図を模式的に示す。
【
図6】
図1の本実施形態の半導体装置を製造する一工程における要部断面図を模式的に示す。
【
図7】
図1の本実施形態の半導体装置を製造する一工程における要部断面図を模式的に示す。
【
図8】
図1の本実施形態の半導体装置を製造する一工程における要部断面図を模式的に示す。
【
図9】
図1の本実施形態の半導体装置を製造する一工程における要部断面図を模式的に示す。
【
図10】
図1の本実施形態の半導体装置を製造する一工程における要部断面図を模式的に示す。
【
図11】本実施形態の変形例の半導体装置の要部断面図(
図1のII-II線における断面図)を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び
図2に示されるように、半導体装置1は、半導体層10と、半導体層10の上面10A上の一部を被覆するソース電極22と、半導体層10の上面10A上の一部を被覆する層間絶縁膜24と、半導体層10の下面10B上の全面を被覆するドレイン電極26と、複数のトレンチ型絶縁ゲート30と、を備えている。本実施形態の半導体装置1は、縦型のMOSFETであり、電力用半導体装置として利用される。なお、
図2に示されるように、半導体層10の上面10A上にはソース電極22と層間絶縁膜24が設けられているが、
図1においては、これらの構成要素を省略して図示している。
【0012】
半導体層10は、特に限定されるものではないが、例えば炭化珪素(SiC)を材料とする半導体層である。半導体層10は、素子領域101と終端領域102を有している。
図1に示されるように、素子領域101は、半導体層10の上面10Aに直交する方向(Z方向)から見たときに(以下、「半導体層10を平面視したときに」という)、半導体層10の中央部に配置されており、スイッチング素子構造(この例ではMOSFET構造)が形成されている範囲として半導体層10内に区画されている。終端領域102は、半導体層10を平面視したときに、半導体層10の周辺部であって素子領域101の周囲に配置されており、耐圧保持構造(この例では、後述する複数のガードリング16とリサーフ層17)が形成されている範囲として半導体層10内に区画されている。
【0013】
図2に示されるように、半導体層10は、n
+型のドレイン領域11、n
-型のドリフト領域12、p型のボディ領域13、n
+型の複数のソース領域14、p
+型の複数のボディコンタクト領域15、p
+型の複数のガードリング16及びp型のリサーフ層17を有している。なお、この実施形態では、ガードリング16が5つのガードリング16a,16b,16c,16d,16eで構成されている場合を例示しているが、それとは異なる個数で構成されていてもよい。また、ガードリング16は、FLR(Field Limiting Ring)とも称される。ボディ領域13、複数のソース領域14及び複数のボディコンタクト領域15は、素子領域101の表層部に選択的に形成されている。複数のガードリング16及びリサーフ層17は、終端領域102に選択的に形成されている。この実施形態では、素子領域101と終端領域102の境界がボディ領域13の周縁によって画定される。
【0014】
ドレイン領域11は、素子領域101及び終端領域102の双方において半導体層10の裏層部に配置されており、半導体層10の下面10Bに露出する位置に設けられている。ドレイン領域11は、n型の不純物(例えば、窒素又はリン等)を高濃度に含んでおり、半導体層10の下面10B上を被膜するドレイン電極26にオーミック接触している。
【0015】
ドリフト領域12は、素子領域101及び終端領域102の双方においてドレイン領域11上に設けられている。ドリフト領域12のn型の不純物濃度は、ドレイン領域11のn型の不純物濃度よりも低い。
【0016】
ボディ領域13は、素子領域101に位置するドリフト領域12上に配置されており、半導体層10の表層部に設けられている。ボディ領域13は、イオン注入技術を利用して、半導体層10の表層部にp型の不純物(例えば、アルミニウム又はボロン等)を導入して形成される。
【0017】
ソース領域14は、素子領域101に位置するボディ領域13上に配置されており、半導体層10の上面10Aに露出する位置に設けられている。ソース領域14は、ボディ領域13によってドリフト領域12から隔てられている。ソース領域14は、イオン注入技術を利用して、半導体層10の表層部にn型の不純物を導入して形成される。ソース領域14は、n型の不純物を高濃度に含んでおり、半導体層10の上面10A上を被膜するソース電極22にオーミック接触している。
【0018】
ボディコンタクト領域15は、素子領域101に位置するボディ領域13上に配置されており、半導体層10の上面10Aに露出する位置に設けられている。ボディコンタクト領域15は、イオン注入技術を利用して、半導体層10の表層部にp型の不純物を導入して形成される。ボディコンタクト領域15は、p型の不純物を高濃度に含んでおり、半導体層10の上面10A上を被膜するソース電極22にオーミック接触している。
【0019】
図1に示されるように、素子領域101に対応する範囲の半導体層10の上面10Aには、半導体層10を平面視したときに、ストライプ状に配置されている複数のトレンチ型絶縁ゲート30が形成されている。複数のトレンチ型絶縁ゲート30の各々は、一方向(Y方向)に沿って伸びている。
図2に示されるように、トレンチ型絶縁ゲート30は、酸化シリコンのゲート絶縁膜32及びポリシリコンのゲート電極34を有している。ゲート電極34は、ドリフト領域12とソース領域14を隔てる部分のボディ領域13にゲート絶縁膜32を介して対向している。これにより、ドリフト領域12とソース領域14を隔てる部分のボディ領域13がチャネル領域として機能することができる。
【0020】
このように、半導体層10の素子領域101には、ドレイン領域11とドリフト領域12とボディ領域13とソース領域14とボディコンタクト領域とトレンチ型絶縁ゲート30で構成されるMOSFET構造が形成されている。一方、半導体層10の終端領域102には、複数のガードリング16で構成される耐圧保持構造とリサーフ層17で構成される耐圧保持構造の2つの耐圧保持構造が形成されている。
【0021】
複数のガードリング16は、終端領域102に位置するドリフト領域12上に配置されており、半導体層10の上面10Aに露出する位置に設けられている。複数のガードリング16は、半導体層10の上面10Aから所定深さまでの範囲に設けられている。複数のガードリング16の各々の電位はフローティングである。
図1に示されるように、複数のガードリング16の各々は、半導体層10を平面視したときに、素子領域101の周囲を一巡するように設けられており、他のガードリングに対して同心の相似形である。このように、複数のガードリング16は、終端領域102の内周側から外周側に向けて個々のガードリングが繰り返し現れるようにレイアウトされている。
【0022】
図2に示されるように、複数のガードリング16では、隣り合うガードリングの間隔が終端領域102の内周側から外周側に向けて大きくなるように調整されている。即ち、半導体層10を平面視したときに、ガードリング16の面積比(単位面積当たりの面積)が終端領域102の内周側から外周側に向けて小さくなっている。
【0023】
リサーフ層17は、終端領域102に位置するドリフト領域12内に配置されており、半導体層10の所定の深さ範囲に設けられている。リサーフ層17は、終端領域102の内周側から外周側に向けて半導体層10の面方向に連続して広がるp型の拡散領域である。リサーフ層17の電位はフローティングである。リサーフ層17は、複数のガードリング16から離反しており、半導体層10の深さ方向において複数のガードリング16に対向するように配置されている。リサーフ層17は、半導体層10を平面視したときに、複数のガードリング16と同様に、素子領域101の周囲を一巡するように設けられている。後述の製造方法で説明するように、リサーフ層17は、p型の不純物濃度が終端領域102の内周側から外周側に向けて低下するプロファイルを有している。
【0024】
次に、半導体装置1の動作について説明する。半導体装置1の動作時には、ドレイン電極26の電位がソース電極22の電位よりも高くなるような電圧がドレイン・ソース間に印加される。ゲート電極34の電位が閾値よりも高くなると、ゲート絶縁膜32に接する範囲のボディ領域13にチャネルが形成される。すると、ソース電極22から、ソース領域14、チャネル、ドリフト領域12及びドレイン領域11を介してドレイン電極26へ電子が流れる。一方、ゲート電極34の電位が閾値以下になると、チャネルが消失し、電子の流れが停止する。このように、半導体装置1は、ゲート電極34の電位に基づいてソース電極22とドレイン電極26の間を流れる電流を制御することができる。
【0025】
半導体装置1がオフすると、ドリフト領域12とボディ領域13のpn接合面からドリフト領域12内に空乏層が広がる。素子領域101のドリフト領域12では、上面10A側から下面10B側に向けて空乏層が広がる。終端領域102のドリフト領域12では、内周側から外周側に向けて空乏層が広がる。半導体装置1では、複数のガードリング16とリサーフ層17からなる2つの耐圧保持構造が終端領域102に設けられているので、終端領域102の深い位置にまで耐圧保持構造が設けられている。このため、素子領域101から広がる空乏層は、終端領域102の外周側及び深部側に向かって大きく広がることができる。
【0026】
半導体装置1では、2つの耐圧保持構造のうちの少なくとも1つがリサーフ層17である。このため、複数のガードリング16とリサーフ層17の両者の位置関係のずれが生じても、耐圧が大きく低下することがない。半導体装置1は、複数のガードリング16とリサーフ層17を形成するときの製造ばらつきを許容することができる。
【0027】
さらに、半導体装置1では、半導体層10を平面視したときの複数のガードリング16の面積比(単位面積当たりの面積)が終端領域102の内周側から外周側に向けて小さくなっている。このため、半導体装置1がオフしたときの複数のガードリング16の電界強度分布は、終端領域102の内周側で相対的に低く、終端領域の外周側で相対的に高い。即ち、複数のガードリング16の電界強度分布は、終端領域102の内周側から外周側に向けて増加する傾向にある。一方、半導体装置1では、リサーフ層17のp型の不純物濃度が終端領域102の内周側から外周側に向けて低下している。このため、半導体装置1がオフしたときのリサーフ層17の電界強度分布は、終端領域102の内周側で相対的に高く、終端領域の外周側で相対的に低い。即ち、リサーフ層17の電界強度分布は、終端領域102の内周側から外周側に向けて低下する傾向にある。このように、半導体装置1では、複数のガードリング16とリサーフ層17の電界強度分布の高低の関係が逆となっているので、各々の電界強度の分布を組み合わせた電界強度分布については、終端領域102の内周側から外周側に向けて均一化される。このため、半導体装置1は、終端領域102において高電圧を保持することができるので、高耐圧という特性を有することができる。
【0028】
次に、半導体装置1の製造方法について説明する。なお、半導体装置1の製造方法は、リサーフ層17の形成工程に特徴を有するので、以下ではリサーフ層17の形成工程について説明し、他の工程については説明を省略する。
【0029】
まず、
図3に示されるように、炭化珪素基板上に炭化珪素のエピ層が積層した半導体層100を準備する。炭化珪素基板がドレイン領域11であり、エピ層がドリフト領域12の一部である。なお、後述するように、エピタキシャル成長技術によって半導体層100上に炭化珪素の再エピ層を成膜することにより、
図1及び
図2に示す半導体層10となる。
【0030】
次に、
図4に示されるように、半導体層100上にNSG(Non-doped Silicate Glass)膜42とBPSG(Boro-Phospho Silicate Glass)膜44を成膜する。NSG膜42は、BPSG膜44に含まれるボロン及びリンの不純物が半導体層100に拡散するのを抑えるために用いられている。BPSG膜44は、後述するように、イオン注入時のマスクとして用いられる。
【0031】
次に、
図5に示されるように、BPSG膜44上にレジスト46を成膜する。レジスト46には、終端領域102に対応する範囲に複数の開口46aが形成されている。レジスト46は、その開口率が終端領域102の内周側から外周側に向けて小さくなるように形成されている。
【0032】
次に、
図6に示されるように、ドライエッチング技術を利用して、レジスト46の複数の開口46aの各々から露出するBPSG膜44の一部をエッチングする。これにより、BPSG膜44には、レジスト46の複数の開口46aに対応した複数の開口44aが形成される。
【0033】
次に、
図7に示されるように、レジスト剥離液を用いてレジスト46を除去する。
【0034】
次に、
図8に示されるように、リフロー技術を利用して、BPSG膜44の表面を流動化させる。これにより、BPSG膜44の表面が開口率に応じてテーパ状に平坦化される。BPSG膜44の開口率が終端領域102の内周側から外周側に向けて小さくなるように形成されていたので、BPSG膜44の表面が終端領域102の内周側から外周側に向けて高くなるように、即ち、BPSG膜44は、その厚みが終端領域102の内周側から外周側へと向けて大きくなるように形成される。
【0035】
次に、
図9に示されるように、イオン注入技術を利用して、NSG膜42及びBPSG膜44を通過して半導体層10内にp型の不純物を注入する。p型の不純物の注入エネルギー(すなわち、不純物の注入深さ)を変更しながら、半導体層10の内部にp型不純物を注入する。BPSG膜44の厚みが終端領域102の内周側から外周側に向けて大きくなっているので、半導体層100内に導入されるp型の不純物の濃度は、終端領域102の内周側から外周側に向けて低下する。
【0036】
次に、
図10に示されるように、アニール技術を利用して、注入したp型の不純物を活性化し、リサーフ層17を形成する。これにより、終端領域102の内周側から外周側に向けてp型の不純物濃度が低下したリサーフ層17が形成される。なお、このアニール工程は、他のアニール工程と兼用されてもよい。
【0037】
この後、エピタキシャル成長技術を利用して半導体層100上にn-型のドリフト領域12の残りの部分に対応した再エピ層を成膜する。さらに、素子領域101の表面構造及び終端領域102の複数のガードリング16を形成すると、半導体装置1が完成する。
【0038】
よく知られているように、炭化珪素を材料とする半導体層では、ドーパントがほとんど拡散しない。このため、従来技術のように、例えば開口率を変動させたイオン注入用のマスク越しにイオン注入を行っても、面方向の拡散が不十分となり、リサーフ層が面方向に断続的に形成されるか、又は、不純物濃度が面方向に高低を繰り返すようなリサーフ層が形成されてしまう。一方、上記製造方法によると、イオン注入工程に先立って、厚みが終端領域102の内周側から外周側に向けて変動するBPSG膜44を形成し、そのBPSG膜44越しにイオン注入を行うことで、面方向の不純物濃度が連続的に変化するリサーフ層17を形成することができる。このように、リサーフ層17を形成するための上記方法は、半導体層の材料が炭化珪素の場合に特に有用である。
【0039】
上記実施形態では、半導体層10を平面視したときの複数のガードリング16の面積比(単位面積当たりの面積)が終端領域102の内周側から外周側に向けて小さくなっており、リサーフ層17のp型の不純物濃度が終端領域102の内周側から外周側に向けて低下している。この例に代えて、半導体層10を平面視したときの複数のガードリング16の面積比(単位面積当たりの面積)が終端領域102の内周側から外周側に向けて大きくなっており、リサーフ層17のp型の不純物濃度が終端領域102の内周側から外周側に向けて増加していてもよい。この場合も、上記実施形態と同様に、複数のガードリング16とリサーフ層17の電界強度分布の高低の関係が逆となり、半導体装置1は高耐圧という特性を有することができる。複数のガードリング16の面積比は、隣り合うガードリング16の間隔によって調整されてもよく、個々のガードリング16の面積によって調整されてもよく、それらを組み合わせて調整されてもよい。また、上記実施形態では、複数のガードリング16が半導体層10の浅い範囲に配置され、リサーフ層17が半導体層10の深い範囲に配置されていた。この例に代えて、複数のガードリング16が半導体層10の深い範囲に配置され、リサーフ層17が半導体層10の浅い範囲に配置されてもよい。この場合も、深い範囲に配置された複数のガードリング16の面積比が終端領域102の内周側から外周側に向けて大きくなっており、浅い範囲に配置されたリサーフ層17のp型の不純物濃度が終端領域102の内周側から外周側に向けて増加していてもよい。
【0040】
また、
図11に示されるように、終端領域102に2つのリサーフ層17,18が設けられていてもよい。この例では、深い範囲に配置されたリサーフ層17のp型の不純物濃度が終端領域102の内周側から外周側に向けて低下する場合は、浅い範囲に配置されたリサーフ層18のp型の不純物濃度が終端領域102の内周側から外周側に向けて増加しており、逆に、深い範囲に配置されたリサーフ層17のp型の不純物濃度が終端領域102の内周側から外周側に向けて増加する場合は、浅い範囲に配置されたリサーフ層18のp型の不純物濃度が終端領域102の内周側から外周側に向けて低下している。これらの場合も、上記実施形態と同様に、2つのリサーフ層17,18の電界強度分布の高低の関係が逆となり、半導体装置1は高耐圧な特性を有することができる。なお、これらリサーフ層17,18は、上記した製造方法を利用して形成することができる。
【0041】
本明細書が開示する技術要素について、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0042】
本明細書が開示する半導体装置は、素子構造が形成されている素子領域と、前記素子領域の周囲に位置している終端領域と、を有している半導体層を備えることができる。前記半導体層の材料は、特に限定されるものではないが、例えば炭化珪素であってもよい。ここで、前記素子領域に形成されている前記素子構造としては、様々な種類のものが採用され得る。前記素子構造としては、例えばMOSFET構造、IGBT構造が例示される。前記終端領域は、前記半導体層の第1深さ範囲に設けられている第1耐圧保持構造と、前記半導体層の前記第1深さ範囲とは異なる第2深さ範囲に設けられており、前記半導体層の深さ方向において前記第1耐圧保持構造に対向するように配置されている第2耐圧保持構造と、を有することができる。前記第1深さ範囲が前記第2深さ範囲よりも浅い範囲であってもよく、前記第1深さ範囲が前記第2深さ範囲よりも深い範囲であってもよい。前記第1耐圧保持構造と前記第2耐圧保持構造の少なくともいずれか一方がリサーフ層である。前記第1耐圧保持構造の電界強度分布と前記第2耐圧保持構造の電界強度分布は、前記終端領域の内周側から外周側に向けての高低の関係が逆である。
【0043】
上記半導体装置では、前記第1耐圧保持構造が前記リサーフ層を含んでおり、前記第2耐圧保持構造が複数のガードリングを含んでいてもよい。この場合、(1)前記第1耐圧保持構造の前記リサーフ層の不純物濃度が前記内周側から前記外周側に向けて低下しているときは、前記第2耐圧保持構造の前記ガードリングの面積比(単位面積当たりの面積)が前記内周側から前記外周側に向けて小さくなっており、(2)前記第1耐圧保持構造の前記リサーフ層の不純物濃度が前記内周側から前記外周側に向けて増加しているときは、前記第2耐圧保持構造の前記ガードリングの面積比(単位面積当たりの面積)が前記内周側から前記外周側に向けて大きくなっている。(1)及び(2)のいずれの場合でも、前記第1耐圧保持構造と前記第2耐圧保持構造の電界強度分布の高低の関係が逆となり、上記半導体装置は高耐圧な特性を有することができる。
【0044】
上記半導体装置では、前記第1耐圧保持構造が前記リサーフ層であり、前記第2耐圧保持構造も前記リサーフ層であってもよい。この場合、前記第1耐圧保持構造の前記リサーフ層の不純物濃度が前記内周側から前記外周側に向けて低下しているときは、前記第2耐圧保持構造の前記リサーフ層の不純物濃度が前記内周側から前記外周側に向けて増加していてもよい。前記第1耐圧保持構造と前記第2耐圧保持構造の電界強度分布の高低の関係が逆となり、上記半導体装置は高耐圧な特性を有することができる。
【0045】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、半導体層上にマスクを成膜する成膜工程であって、前記半導体層の上面に平行な少なくとも一方向に沿って前記マスクの開口率が変動するように前記マスクを成膜する、成膜工程と、前記マスクをリフローするリフロー工程であって、前記マスクの厚みを前記一方向に沿って変動させる、リフロー工程と、前記マスク越しに前記半導体層内に不純物をイオン注入し、リサーフ層を形成するイオン注入工程と、を備えることができる。前記半導体層の材料は、特に限定されるものではないが、例えば炭化珪素であってもよい。この製造方法は、様々な領域で必要とされる任意の前記リサーフ層を形成することができる。
【0046】
上記製造方法では、前記半導体層が、素子構造が形成されている素子領域と、前記素子領域の周囲に位置している終端領域と、を有していてもよい。前記成膜工程では、前記終端領域において、内周側から外周側に向けて前記マスクの開口率が変動するように前記マスクが成膜されてもよい。この製造方法によると、前記終端領域に前記リサーフ層を形成することができる。
【0047】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0048】
:半導体装置、 10:半導体層、 11:ドレイン領域、 12:ドリフト領域、 13:ボディ領域、 14:ソース領域、 15:ボディコンタクト領域、 16:ガードリング、 17:リサーフ層、 22:ソース電極、 24:層間絶縁膜、 26:ドレイン電極、 30:トレンチ型絶縁ゲート、 101:素子領域、 102:終端領域