(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】給電システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241217BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241217BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20241217BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241217BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20241217BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20241217BHJP
【FI】
G06Q50/10
G08G1/00 X
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/40
H02J50/80
(21)【出願番号】P 2021113359
(22)【出願日】2021-07-08
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 勝也
(72)【発明者】
【氏名】平野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】杉山 緑
(72)【発明者】
【氏名】山下 龍之介
【審査官】星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/069198(WO,A1)
【文献】特開2012-141799(JP,A)
【文献】特開2013-041377(JP,A)
【文献】特開2016-066183(JP,A)
【文献】特開2013-246541(JP,A)
【文献】GUNJI. Daisuke,Feasibility Study on In-motion Wireless Power Transfer System Before Traffic Lights Section,[online],IEEE,2019年06月18日,https://ieeexplore.ieee.org/document/9030615,[検索日 2024.10.21]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G08G 1/00
H02J 50/10
H02J 7/00
H02J 50/40
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に対してワイヤレス給電を行なう給電マットが設置され得る対象領域内の複数の場所の各々について、前記給電マットを設置した場合に得られるメリットを評価するコンピュータを備える、給電システム
であって、
前記コンピュータは、前記対象領域で1つ以上の移動体が使用される所定期間において、各移動体の挙動と、各移動体の蓄電残量と、人の密集度との少なくとも1つを観測した結果を用いて、前記対象領域内の場所ごとの前記メリットを評価するように構成され、
前記コンピュータは、前記所定期間における観測結果を用いて、ユーザが希望する設置場所に前記給電マットを設置した場合に得られるメリットが大きくなる改善策を提案するように構成される、給電システム。
【請求項2】
前記コンピュータは、前記所定期間において前記移動体の交通量が多かった場所ほど、前記給電マットを設置した場合に得られるメリットが大きいと評価するように構成される、請求項
1に記載の給電システム。
【請求項3】
前記コンピュータは、前記所定期間において前記移動体の滞在時間が長かった場所ほど、前記給電マットを設置した場合に得られるメリットが大きいと評価するように構成される、請求項
1に記載の給電システム。
【請求項4】
前記コンピュータは、前記所定期間において前記移動体の蓄電残量が少なくなった場所ほど、前記給電マットを設置した場合に得られるメリットが大きいと評価するように構成される、請求項
1に記載の給電システム。
【請求項5】
前記コンピュータは、前記所定期間において人の密集度が低かった場所ほど、前記給電マットを設置した場合に得られるメリットが大きいと評価するように構成される、請求項
1に記載の給電システム。
【請求項6】
当該給電システムは表示装置をさらに備え、
前記コンピュータは、前記対象領域内の場所ごとの前記メリットの評価結果を前記表示装置に表示させるように構成される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の給電システム。
【請求項7】
前記コンピュータは、前記給電マットが劣化しにくいほど、前記給電マットを設置した場合に得られるメリットが大きいと評価するように構成され、
前記コンピュータは、前記対象領域内の場所ごとに、複数種の給電マットを含む選択肢の中から、前記メリットが最も大きくなる給電マットを選ぶように構成される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の給電システム。
【請求項8】
前記給電マットは、筒状に巻回可能な程度の柔軟性を有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電システム及び給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開2018-157686号公報(特許文献1)には、複数の給電ユニットが走行車線に沿って設けられた給電レーンを車両が走行する際に、車体前方の道路上に異物の存在を検知した場合に、異物の存在を検知した地点の前後の所定範囲に存在する給電ユニットからの給電を停止又は抑制させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載される給電ユニットは道路に埋設される。そして、複数の給電ユニットの各々は1つの送電コイルを備える。これに対し、本願発明者は、容易に設置可能な給電マットを提案する。給電マットは、たとえば床又は壁に設置され、給電マットに近づいた移動体に対してワイヤレス給電を行なうように構成される。
【0005】
給電マットは設置自由度が高い。給電マットの設置場所の候補は多くなるため、ユーザにとって給電マットの設置場所の選定は必ずしも容易ではない。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、給電マットを適切な場所に設置しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の観点に係る給電システムは、移動体に対してワイヤレス給電を行なう給電マットが設置され得る対象領域内の複数の場所の各々について、給電マットを設置した場合に得られるメリットを評価するコンピュータを備える。
【0008】
以下、上記コンピュータを、「評価コンピュータ」とも称する。また、評価コンピュータによって評価される場所を、「評価対象」とも称する。また、評価対象に給電マットを設置した場合に得られるメリットを、「設置メリット」とも称する。
【0009】
評価コンピュータは、定置式のサーバであってもよいし、モバイル端末に搭載されてもよい。移動体の例としては、無人の移動体(無人搬送車(AGV)、ドローン等)、乗り物(自動車、船等)が挙げられる。
【0010】
評価コンピュータは、対象領域内の評価対象ごとに設置メリットを評価する。ユーザは、給電マットの設置場所の選定において、評価コンピュータによって評価された設置メリットを参考にすることができる。よって、上記評価コンピュータは、給電マットの設置場所の選定を容易にすることができる。ユーザは、給電マットを適切な場所に設置しやすくなる。
【0011】
評価コンピュータは、対象領域で1つ以上の移動体が使用される所定期間において、各移動体の挙動と、各移動体の蓄電残量と、人の密集度との少なくとも1つを観測した結果(観測結果)を用いて、対象領域内の場所ごとの設置メリットを評価するように構成されてもよい。以下、上記所定期間を「観測期間」とも称する。
【0012】
評価コンピュータが、上記の観測結果を用いて設置メリットを評価することで、的確な評価結果が得られやすくなる。
【0013】
評価コンピュータは、観測期間において移動体の交通量が多かった場所ほど、給電マットを設置した場合に得られるメリットが大きいと評価するように構成されてもよい。
【0014】
移動体の交通量が多い場所に給電マットを設置すれば、給電マットの利用頻度が高くなると予想される。給電マットの利用頻度が高いことは、設置メリットが大きいことを意味する。上記構成によれば、設置メリットを的確に評価しやすくなる。
【0015】
評価コンピュータは、観測期間において移動体の滞在時間が長かった場所ほど、給電マットを設置した場合に得られるメリットが大きいと評価するように構成されてもよい。
【0016】
移動体の滞在時間が多い場所に給電マットを設置すれば、給電マットの利用時間が長くなると予想される。給電マットの利用時間が長いことは、設置メリットが大きいことを意味する。上記構成によれば、設置メリットを的確に評価しやすくなる。
【0017】
評価コンピュータは、観測期間において移動体の蓄電残量が少なくなった場所ほど、給電マットを設置した場合に得られるメリットが大きいと評価するように構成されてもよい。
【0018】
移動体の蓄電残量が少なくなる場所に給電マットを設置すれば、蓄電残量が少ない移動体(すなわち、給電を必要とする移動体)が給電マットから給電を受けられるようになると予想される。給電マットの設置によって給電を必要とする移動体が給電マットから給電を受けられるようになることは、設置メリットが大きいことを意味する。上記構成によれば、設置メリットを的確に評価しやすくなる。
【0019】
移動体の蓄電残量は、たとえば移動体が備える蓄電装置のSOC(State Of Charge)で表わすことができる。SOCは、たとえば満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
【0020】
評価コンピュータは、観測期間において人の密集度が低かった場所ほど、給電マットを設置した場合に得られるメリットが大きいと評価するように構成されてもよい。
【0021】
人の密集度が低い場所に給電マットを設置すれば、移動体が給電マットを利用しやすくなると予想される。移動体が給電マットを利用しやすいことは、設置メリットが大きいことを意味する。上記構成によれば、設置メリットを的確に評価しやすくなる。
【0022】
評価コンピュータは、観測期間における観測結果を用いて、ユーザが希望する設置場所に給電マットを設置した場合に得られるメリットが大きくなる改善策を提案するように構成されてもよい。
【0023】
ユーザが給電マットを設置したい場所がある場合において、上記の評価コンピュータは、ユーザが希望する設置場所に対して設置メリットが大きくなる改善策を提案する。このため、ユーザは、設置メリットが大きい場所に給電マットを設置しやすくなる。上記構成によれば、ユーザが給電マットを有効に利用しやすくなる。
【0024】
改善策の例としては、対象領域内のレイアウトの変更、又は移動体の制御の変更が挙げられる。
【0025】
上述したいずれかの給電システムは表示装置をさらに備えてもよい。評価コンピュータは、対象領域内の場所ごとの設置メリットの評価結果を表示装置に表示させるように構成されてもよい。
【0026】
上記の構成では、評価コンピュータが、前述の評価を行なった後、その評価結果を表示装置に表示させる。このため、ユーザは、評価結果を見て、給電マットの設置場所を選定することができる。
【0027】
評価コンピュータは、給電マットが劣化しにくいほど、給電マットを設置した場合に得られるメリットが大きいと評価するように構成されてもよい。評価コンピュータは、対象領域内の場所ごとに、複数種の給電マットを含む選択肢の中から設置メリットが最も大きくなる給電マットを選ぶように構成されてもよい。
【0028】
上記構成によれば、設置後の給電マットの劣化を抑制しやすくなる。
【0029】
上述したいずれかの給電システムにおいて、給電マットは筒状に巻回可能な程度の柔軟性を有してもよい。こうした給電マットは、巻いて筒状にできるため、持ち運びが容易である。
【0030】
上述したいずれかの給電システムにおいて、給電マットは複数の板材が組み合わさって形成されてもよい。給電マットは、複数の板材に分解可能に構成されてもよい。複数の板材の各々は、1つ以上の送電コイルを含んでもよい。こうした給電マットは、複数の板材に分解可能に構成されるため、持ち運びが容易である。
【0031】
上述したいずれかの給電システムにおいて、給電マットは複数の送電コイルを備えてもよい。給電マットは、複数の送電コイルを用いて、給電マット上を走行中の移動体に対して給電を行なうように構成されてもよい。こうした構成によれば、移動体は走行しながら給電マットから給電を受けることができる。
【0032】
本開示の第2の観点に係る給電方法は、移動体に対してワイヤレス給電を行なう給電マットが設置され得る対象領域内の複数の場所の各々について、給電マットを設置した場合に得られるメリットを評価することと、対象領域内の場所ごとの設置メリットの評価結果を表示することとを含む。
【0033】
上記給電方法によっても、前述した給電システムと同様、給電マットを適切な場所に設置しやすくなる。
【発明の効果】
【0034】
本開示によれば、給電マットを適切な場所に設置しやすくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る給電マットを示す図である。
【
図2】
図1に示した給電マットの使用中の状態の一例を示す図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る給電システムにおいて、移動体の構成と、給電マット及びその電源設備の構成とについて説明するための図である。
【
図4】実施の形態1に係る給電方法を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態1に係るコンピュータ(サーバ)の機能について説明するための図である。
【
図6】
図5に示した工場における移動体の使用態様の一例について説明するための図である。
【
図7】設置メリットの評価結果の第1の例を示す図である。
【
図8】設置メリットの評価結果の第2の例を示す図である。
【
図9】設置メリットの評価結果の第3の例を示す図である。
【
図10】設置メリットの評価結果の第4の例を示す図である。
【
図11】本開示の実施の形態2に係るコンピュータ(サーバ)が実行する設置メリットの評価に係る処理を示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態2において、設置メリットが大きくなる改善策及びその効果の第1の例を示す図である。
【
図13】実施の形態2において、設置メリットが大きくなる改善策及びその効果の第2の例を示す図である。
【
図14】
図5に示したコンピュータが実行する処理の変形例を示す図である。
【
図17】
図14に示した処理で表示される、対象領域内の場所ごとに選ばれた給電マットの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0037】
[実施の形態1]
図1は、この実施の形態に係る給電マットを示す図である。
図1を参照して、給電マット100は、シート基材110と、シート基材110の内部に設けられた複数の送電コイル120とを含む。給電マット100は持ち運び可能に構成される。給電マット100の重さは、たとえば1人又は数人で持ち運び可能な程度に軽い。また、後述する給電マット100の電源設備(
図3参照)は給電マット100に対して着脱可能に構成される。給電マット100は、筒状に巻回可能な程度の柔軟性を有する。
図1には、部分的に筒状に巻回された状態の給電マット100を示している。ただし、給電マット100は、全体を筒状に巻回することもできる。給電マット100を巻いて筒状にすることで、給電マット100を持ち運びやすくなる。給電マット100は、筒状に巻回された状態で保管されてもよい。給電マット100は、シート状に広げることもできる。給電マット100は広げられた状態で使用される(後述する
図2参照)。給電マット100は、敷物として扱うことができる。給電マット100は、屋内の床の上に設置可能に構成される。給電マット100は屋内の通路(たとえば、通路の交差点)に設置されてもよい。給電マット100は、床の上に設置された後に、取外し可能な留め具(たとえば、押さえ金具又はグリッパー)で固定されてもよい。
【0038】
この実施の形態では、広げられた状態の給電マット100が矩形状の外形(平面形状)を有する。ただし、給電マット100の外形は矩形状に限られず適宜変更可能である。給電マット100の外形は、四角形以外の多角形(三角形、五角形、六角形等)でもよいし、円形でもよい。この実施の形態では、給電マット100に含まれる複数の送電コイル120がシート基材110に内蔵されている。しかしこれに限られず、送電コイル120は給電マット100の表面に露出するように設けられてもよい。シート基材110は、たとえば樹脂で形成される。ただし、シート基材110の材質は適宜変更可能である。送電コイル120は、たとえば金属で形成される。ただし、送電コイル120の材質は適宜変更可能である。たとえば、送電コイル120は導電性樹脂で形成されてもよい。給電マット100が備える送電コイル120の数は任意であり、2以上10未満であってもよいし、10以上100未満であってもよいし、100以上であってもよい。
【0039】
この実施の形態では、マット面(給電マット100の主面)において、複数の送電コイル120が縦と横とに規則的に配列されている。送電コイル120は、たとえば格子状に配置されている。ただしこれに限られず、送電コイル120の配置は適宜変更可能である。送電コイル120は不規則に配置されてもよい。
図1に示す例では、送電コイル120が平面視で正六角形に形成されているが、送電コイル120の形状は適宜変更可能である。送電コイル120の平面形状は、六角形以外の多角形(たとえば、四角形)であってもよいし、円形であってもよい。送電コイル120の大きさも、給電マット100の用途(たとえば、給電マット100を使用する移動体の構造)に合わせて適宜変更してもよい。
【0040】
図2は、給電マット100の使用中の状態の一例を示す図である。
図2に示す例では、給電マット100上に移動体201~208が載っている。給電マット100に含まれる複数の送電コイル120は、別々の移動体に個別に給電可能に構成される。移動体の受電コイル(2次コイル)と電磁的に結合した送電コイル120から移動体へワイヤレス給電が実行される。ワイヤレス電力伝送(WPT)の方式は任意であり、磁界共鳴方式でもよいし、電磁誘導方式でもよい。また、他の方式が採用されてもよい。
【0041】
移動体201~208の各々は、屋内を走行可能に構成される小型のBEV(電気自動車)である。移動体201~206の各々は無人搬送車(AGV)である。移動体207及び208の各々は1人乗り電気自動車である。
【0042】
移動体201~205は、同じタイプのAGVである。移動体201~205の各々は、荷物の搬送に使用される。
図2に示す例では、移動体201~203の各々が単独で荷物を運んでいる。一方、移動体204及び205は、1台では運べない大きな荷物を協働で運んでいる。移動体201~205の各々は、屋内での搬送に適している。以下では、区別して説明する場合を除いて、移動体201~205の各々を「AGV200」と称する。
【0043】
移動体206は、配達ボックス付きのAGVである。配達ボックスは施解錠可能に構成されてもよい。配達ボックスは、特定の人(たとえば、認証に成功した者)のみが施解錠可能であってもよい。配達ボックスは温度調整可能に構成されてもよい。配達ボックスは保冷庫であってもよい。
【0044】
移動体207及び208の各々は、人が乗って手動で運転することも無人で自動運転で走行することも可能に構成される。移動体207はハンドルバーを備える。移動体208はハンドルバー及び座席を備える。移動体207及び208の各々は、屋内を移動する乗り物として適している。
【0045】
図3は、給電マット100から給電を受ける移動体の構成と、給電マット100の電源設備の構成とについて説明するための図である。以下では、移動体の一例として、AGV200の構成について説明する。
【0046】
図2とともに
図3を参照して、この実施の形態に係る給電システムは、給電マット100と、電源モジュール300と、カメラ350とを含む。電源モジュール300は、給電マット100の電源設備に相当する。電源モジュール300はケーブルを介して給電マット100と電気的に接続される。電源モジュール300は電源回路310を備える。電源回路310は、電力系統PGから電力の供給を受け、給電マット100に含まれる複数の送電コイル120の各々に電力を供給するように構成される。電力系統PGは、図示しない発電所及び送配電設備によって構築される電力網である。電力系統PGは、交流電力(たとえば、三相交流電力)を電源モジュール300へ供給する。電源回路310は、電力変換回路を含む。電源回路310は、電力系統PGから供給される電力を、給電マット100に適した電力に変換して、変換後の電力を給電マット100へ供給する。
【0047】
カメラ350は、電源モジュール300から電力の供給を受け、給電マット100の上方から給電マット100の周辺を撮像するように構成される。電源モジュール300は、給電マット100のための電源回路310に加えて、カメラ350のための電源回路(図示せず)も含む。カメラ350は、壁に取り付けられてもよい。あるいは、カメラ350を支持する支柱が設けられてもよい。カメラ350は、撮像素子に加えて、撮像素子で取得した映像を解析するためのプロセッサ及び画像処理回路を内蔵する。カメラ350は、給電マット100の全面を撮像し、給電マット100上に存在する対象(生体又は物体)を識別する。カメラ350によって給電マット100の状態が監視される。
【0048】
給電マット100は、シート基材110(
図1)の内部に、複数の磁気マーカ121と、電力制御回路130と、無線通信機140と、電力制御回路130を制御するマットコントローラ150とをさらに備える。マットコントローラ150としては、プロセッサ、RAM(Random Access Memory)、記憶装置、及び通信I/F(インターフェース)を備えるコンピュータを採用できる。この実施の形態では、マットコントローラ150において記憶装置に記憶されているプログラムをプロセッサが実行することで、給電マット100における各種制御が実行される。ただし、給電マット100における各種制御は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
【0049】
電力制御回路130は接続切替回路を含む。この接続切替回路は、電源回路310から電力の供給を受け、給電マット100に含まれる各送電コイル120と電源回路310との接続/遮断を切り替えるように構成される。電力制御回路130の接続切替回路は、送電コイル120ごとに設けられたスイッチを含んでもよい。この実施の形態では、接続切替回路がノーマリオフ型のスイッチ回路である。マットコントローラ150が停止状態(スリープ状態を含む)になっているときには、給電マット100に含まれる各送電コイル120と電源回路310とは遮断状態になる。
【0050】
電力制御回路130は電力変換回路をさらに含む。この電力変換回路は、電源回路310と電気的に接続された各送電コイル120に対して所定の電圧を印加するように構成される。具体的には、電力制御回路130の電力変換回路は、共振回路(たとえば、LC共振回路)、フィルタ回路、インバータ、及びPFC(Power Factor Correction)回路を含んでもよい。詳細は後述するが、マットコントローラ150は、受電コイル(2次コイル)と結合した送電コイル120に対してはワイヤレス給電に適した電圧を印加し、受電コイル(2次コイル)と結合していない送電コイル120に対しては微弱な電圧を印加するように、電力制御回路130を制御する。
【0051】
複数の磁気マーカ121は、複数の送電コイル120に対応して設けられている。すなわち、磁気マーカ121は、給電マット100に含まれる送電コイル120ごとに設けられている。磁気マーカ121は、対応する送電コイル120の位置を示す。移動体は、磁気マーカ121が発する磁気を磁気センサで検出することにより、その磁気マーカ121に対応する送電コイル120の位置を検出できる。
【0052】
給電マット100と電源モジュール300とをつなぐケーブルの内部には電力線だけでなく通信線も設けられている。この実施の形態では、給電マット100と電源モジュール300とが通信可能に構成される。マットコントローラ150は、電源モジュール300内の電源回路310を制御するように構成される。また、カメラ350は電源モジュール300を介して給電マット100と通信可能に接続されている。カメラ350が取得した情報は電源モジュール300を経由してマットコントローラ150に入力される。
【0053】
AGV200は、バッテリ210と、送電コイル120から非接触で電力を受ける受電コイル220と、受電コイル220で受けた電力を用いてバッテリ210の充電を行なう充電回路230と、無線通信機240と、充電回路230を制御するECU(Electronic Control Unit)250とを備える。
【0054】
バッテリ210としては、公知の車両用蓄電装置(たとえば、液式二次電池、全固体二次電池、又は組電池)を採用できる。車両用二次電池の例としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池が挙げられる。二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタのような他の蓄電装置を採用してもよい。充電回路230は、バッテリ210の車載充電器として機能する。ECU250としては、プロセッサ、RAM、記憶装置、及び通信I/Fを備えるコンピュータを採用できる。この実施の形態では、ECU250において記憶装置に記憶されているプログラムをプロセッサが実行することで、AGV200における各種制御が実行される。ただし、AGV200における各種制御は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
【0055】
AGV200は、バッテリ210に蓄えられた電力を用いて無人で走行可能に構成される自動運転車両である。図示は割愛しているが、AGV200は、電動モータと、BMS(Battery Management System)と、自動運転センサと、地図情報を有するナビゲーションシステムとをさらに備える。AGV200は、バッテリ210から電動モータに電力を供給して、電動モータによって生成される動力によって走行する。また、BMSは、バッテリ210の状態(たとえば、電流、電圧、及び温度)を検出する各種センサを含み、その検出結果がECU250に入力される。たとえば、バッテリ210の充電電力(充電電流及び充電電圧)がBMSによって検出される。また、BMSによってバッテリ210のSOC(State Of Charge)が推定され、その推定結果がECU250に入力される。
【0056】
自動運転センサは、自動運転に使用されるセンサである。ただし、自動運転センサは、自動運転が実行されていないときに所定の制御で使用されてもよい。自動運転センサは、AGV200の外部環境を認識するための情報を取得するセンサと、AGV200の位置及び姿勢に関する情報を取得するセンサとを含む。自動運転センサは、カメラ、ミリ波レーダ、及びライダーの少なくとも1つを含む。さらに、自動運転センサはIMU(Inertial Measurement Unit)及びGPS(Global Positioning System)センサを含む。
【0057】
AGV200は、所定の走行スケジュールに従って無人で自律走行可能に構成される。走行スケジュールは、たとえば目的地への出発時刻及び到達時刻を含む。走行スケジュールの設定方法は任意である。たとえば、AGV200と無線通信可能なユーザ端末(たとえば、モバイル端末)をユーザが操作して、ECU250に走行スケジュール及び目的地を設定してもよい。あるいは、AGV200と有線通信可能に接続されたサービスツール、又はAGV200が備えるHMI(Human Machine Interface)をユーザが操作して、ECU250に走行スケジュール及び目的地を設定してもよい。
【0058】
ECU250は、所定の自動運転プログラムに従い、自動運転(自動駐車を含む)を実行するように構成される。ECU250は、自動運転センサによって取得される各種情報を用いて、AGV200のアクセル装置、ブレーキ装置、及び操舵装置(いずれも図示せず)を制御することにより、AGV200の自動運転を実行する。自動運転プログラムは、OTA(Over The Air)によって逐次更新されてもよい。
【0059】
充電回路230は、バッテリ210と受電コイル220との間に位置し、ECU250によって制御される。充電回路230は電力変換回路を含む。送電コイル120から受電コイル220に供給される電力によってバッテリ210の充電が行なわれる場合には、受電コイル220からバッテリ210に適切な電力が入力されるようにECU250が充電回路230を制御する。充電回路230は、受電コイル220から入力される交流電力を直流電力に変換してバッテリ210へ直流電力を出力する。具体的には、充電回路230は、共振回路(たとえば、LC共振回路)、フィルタ回路、整流回路を含んでもよい。
【0060】
AGV200は、マット面(給電マット100の主面)におけるAGV200の位置を検出する位置センサモジュール221をさらに備える。位置センサモジュール221は、送電コイル120と受電コイル220との位置合わせに使用される。位置センサモジュール221は、たとえばAGV200の底面に設けられている。位置センサモジュール221は複数の磁気センサを含む。複数の磁気センサは格子状に配置されてもよい。位置センサモジュール221に含まれる各磁気センサは、磁気マーカ121から発せられる磁気を検出する。AGV200は、位置センサモジュール221の検出結果に基づいて、送電コイル120と受電コイル220との位置合わせを行ないながら、給電マット100上を走行するように構成される。
【0061】
この実施の形態では、給電マット100とAGV200とが通信可能に構成される。マットコントローラ150とECU250とは、無線通信機140及び240を介して、相互に無線通信を行なってもよい。通信方式は任意である。マットコントローラ150とECU250とは、たとえばNFC(Near Field Communication)又はBluetooth(登録商標)のような近距離通信(たとえば、給電マット100周辺の範囲での直接通信)を行なうように構成されてもよい。また、マットコントローラ150とECU250とは、無線LAN(Local Area Network)を利用した無線通信を行なうように構成されてもよい。AGV200は、RFID(Radio Frequency IDentification)装置を備えてもよい。そして、マットコントローラ150は、AGV200のRFID装置から発せられる信号を受信するように構成されてもよい。
【0062】
上記では、AGV200の構成について説明したが、
図2に示した移動体206~208の各々も、
図3に示した構成に準ずる構成を内部に有する。必要に応じて、上述した回路構成を変更して同様の機能を実現してもよい。
【0063】
この実施の形態では、給電マット100の周辺の所定エリア内に移動体が存在しないときには、給電マット100のマットコントローラ150が停止状態(たとえば、スリープ状態)になっている。そして、1台目の移動体が上記所定エリア内に入ると、マットコントローラ150が起動する。たとえば、カメラ350が給電マット100の周辺に移動体を認識したときに、移動体が所定エリア内に入ったと認定されてもよい。また、移動体のRFID装置から発せられる信号を無線通信機140が受信したときに、移動体が所定エリア内に入ったと認定されてもよい。また、給電システムは、ジオフェンシング技術を利用して、移動体が所定エリア内に入ったか否かを判断するように構成されてもよい。
【0064】
図4は、この実施の形態に係る給電方法を示すフローチャートである。この実施の形態では、所定の充電開始条件が成立したときに、移動体が
図4に示す処理を開始する。所定の充電開始条件は、たとえば移動体が給電マット100の周辺の所定エリア内に入ると成立する。以下では、フローチャート中の各ステップを、単に「S」と表記する。また、以下では
図4に示される処理をAGV200が実行する場合について説明するが、
図4に示される処理は、他の移動体(たとえば、
図2に示した移動体206~208)によっても実行される。
【0065】
図3とともに
図4を参照して、S11では、AGV200のECU250が給電要求(給電を要求する信号)を給電マット100へ送信する。
【0066】
給電マット100がAGV200(ECU250)から上記給電要求を受信すると、マットコントローラ150が
図4に示す処理を開始する。なお、S11において、認証のための情報が移動体から給電マット100へ送信されてもよい。そして、マットコントローラ150は、認証に成功した移動体に対してのみ、
図4に示す処理を開始してもよい。
【0067】
マットコントローラ150は、S21において、給電マット100に含まれるいずれかの送電コイル120が、AGV200の受電コイル220(2次コイル)と電磁的に結合したか否かを判断する。マットコントローラ150は、送電コイル120と受電コイル220との結合係数に基づいて、送電コイル120と受電コイル220とが電磁的に結合しているか否かを判断してもよい。マットコントローラ150は、給電マット100に含まれる各送電コイル120に微弱電力を供給しながら、いずれかの送電コイル120がAGV200の受電コイル220と電磁的に結合したか否かを判断してもよい。
【0068】
受電コイル220と電磁的に結合した送電コイル120(以下、「結合コイル」とも称する)が給電マット100に存在する場合には、S21においてYESと判断され、処理がS22に進む。S22では、結合コイルから受電コイル220へワイヤレス電力伝送(WPT)が実行されるように、マットコントローラ150が電力制御回路130を制御する。S22では、ワイヤレス給電のための電圧が結合コイルに印加される。ただし、カメラ350によって給電マット100上(特に、結合コイルの近傍)に所定の対象(たとえば、金属片のような異物)が検出されたときには、WPT(S22)が禁止されてもよい。結合コイルが給電マット100に存在しない場合には、S21においてNOと判断され、処理がS23に進む。S23では、給電マット100に含まれる各送電コイル120に微弱電力が供給されるように、マットコントローラ150が電力制御回路130を制御する。
【0069】
マットコントローラ150は、AGV200から充電完了通知を受信するまで、上述したS21~S23の処理を継続する。マットコントローラ150は、S24において、給電マット100が充電完了通知を受信したか否かを判断する。
【0070】
一方、AGV200は、S12において走行中充電を実行する。具体的には、AGV200は、位置センサモジュール221の検出結果に基づいて、送電コイル120と受電コイル220との位置合わせを行ないながら、給電マット100上を走行する。AGV200は走行中に給電マット100から給電を受ける。そして、給電マット100の送電コイル120からAGV200の受電コイル220に供給される電力によってバッテリ210の充電が行なわれる。走行中のAGV200に対して給電を行なう送電コイル120は、AGV200の位置に応じて変わる。バッテリ210の充電中は、ECU250が充電電力を調整するように充電回路230を制御する。
【0071】
AGV200は、所定の充電完了条件が成立するまで上記の走行及び充電を継続する。ECU250は、S13において、上記充電完了条件が成立したか否かを判断する。この実施の形態では、AGV200が給電マット100を通過したときに充電完了条件が成立する。ECU250は、受電コイル220が給電マット100から給電を受けなくなったときに、AGV200が給電マット100を通過したと判断してもよい。また、バッテリ210のSOCが所定SOC値(たとえば、満充電を示すSOC値)以上になったときにも充電完了条件が成立する。充電完了条件が成立すると(S13にてYES)、ECU250は、S14において、給電マット100へ充電完了通知を送信する。そして、給電マット100が充電完了通知を受信すると(S24にてYES)、
図4に示す一連の処理が終了する。
【0072】
上述のように、給電マット100は、移動体(たとえば、
図2に示した移動体201~208のいずれか)に対してワイヤレス給電を行なうように構成される。給電マット100は持ち運び容易であるため(
図1参照)、給電マット100の設置自由度は高い。給電マット100の設置場所の候補は多くなるため、ユーザにとって給電マット100の設置場所の選定は必ずしも容易ではない。そこで、この実施の形態に係る給電システムは、給電マット100を適切な場所に設置しやすくするため、以下に説明するサーバ500を備える。
図5は、サーバ500の機能について説明するための図である。
【0073】
図3とともに
図5を参照して、サーバ500は、給電マット100が設置され得る対象領域内の複数の場所の各々について設置メリット(すなわち、給電マット100を設置した場合に得られるメリット)を評価するように構成される。サーバ500は、本開示に係る「コンピュータ」の一例に相当する。
【0074】
サーバ500は、プロセッサ510と、記憶装置520と、通信装置530とを備える。プロセッサ510は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶装置520は、各種情報を保存可能に構成される。通信装置530は、各種通信I/Fを含む。サーバ500は、通信装置530を通じて外部と通信するように構成される。
【0075】
記憶装置520には、プロセッサ510に実行されるプログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置520に記憶されているプログラムをプロセッサ510が実行することで、サーバ500における各種処理が実行される。ただし、サーバ500における各種処理は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
【0076】
この実施の形態に係る給電システムは、表示装置600をさらに備える。表示装置600は、サーバ500からの指示に従って情報を表示するように構成される。この実施の形態では、表示装置600としてタッチパネルディスプレイを採用する。表示装置600は、ユーザからの入力を受け付け、ユーザから入力を受けると、その入力に対応する信号をサーバ500へ出力する。この実施の形態では、表示装置600が、サーバ500に対する入力装置を兼ねる。ただしこれに限られず、入力装置は表示装置とは別に設けられてもよい。
【0077】
サーバ500は、たとえば給電マット100の貸出し業者に帰属する。サーバ500は、対象領域で複数の移動体が使用される所定の観測期間において、各移動体の挙動と各移動体の蓄電残量とを観測した結果(観測結果)を用いて、対象領域内の場所ごとの設置メリットを評価するように構成される。設置メリットの評価は、たとえば給電マット100の貸出し前に行なわれる。
図6に示す例では、貸出し業者が工場800に給電マット100を貸し出す前に、サーバ500が、工場800内の領域R100における複数の場所の各々について設置メリットを評価する。この実施の形態では、工場800内の領域R100が、本開示に係る「対象領域」の一例に相当する。
【0078】
工場800では、領域R100において移動体M-1~M-3が使用される。移動体M-1~M-3の各々は、たとえば
図3に示したAGV200と同じ構成を有するAGVである。
図6は、工場800における移動体M-1~M-3の使用態様の一例について説明するための図である。
【0079】
図6を参照して、移動体M-1は、エリア#1とエリア#4との間を移動して荷物の搬送を行なう。移動体M-1は、経路R1に従ってエリア#1とエリア#4との間を往復する。移動体M-2は、エリア#1とエリア#9との間を移動して荷物の搬送を行なう。移動体M-2は、主に経路R21に従ってエリア#1とエリア#9との間を往復する。ただし、経路R21が混んでいるときには、移動体M-2は経路R22に従ってエリア#1とエリア#9との間を移動する。移動体M-3は、エリア#2とエリア#6との間を移動して荷物の搬送を行なう。移動体M-3は、経路R3に従ってエリア#2とエリア#6との間を往復する。このように、移動体M-1~M-3は、工場800の業務において荷物の搬送に用いられる。
【0080】
再び
図5を参照して、観測期間においても、通常の業務と同様、上記のとおり移動体M-1~M-3が使用される(
図6参照)。そして、観測期間においては、領域R100で通常どおり稼働する移動体M-1~M-3の各々の挙動及び蓄電残量が測定されて記録される。観測期間においては、移動体M-1~M-3の各々が、フローチャートF1で示される処理を所定周期で繰り返し実行する。
【0081】
フローチャートF1において、S101では、ECU250(
図3)が、領域R100における移動体の位置を記憶装置に記録する。移動体の位置は、たとえば自動運転センサによって測定される。S101で取得される位置データは、移動体の挙動を示す。S102では、ECU250が、バッテリ210(
図3)のSOCを記憶装置に記録する。バッテリ210のSOCは、たとえばBMSによって測定される。S102で取得されるSOCデータは、移動体の蓄電残量を示す。
【0082】
観測期間経過後、サーバ500は、上記の処理(フローチャートF1)によって記録されたデータ(観測期間における観測結果)を移動体M-1~M-3の各々から抽出する。サーバ500は、移動体M-1~M-3の各々との通信(無線通信又は有線通信)によって、移動体M-1~M-3の各々からデータを取得してもよい。また、移動体M-1~M-3の各々から所定の記憶媒体(又は、サービスツール)を介してサーバ500へデータが送られてもよい。
【0083】
サーバ500は、フローチャートF2で示される処理により、領域R100内の複数の場所の各々について設置メリットを評価する。フローチャートF2で示される処理は、ユーザからの指示に応じて開始されてもよいし、サーバ500が評価に必要なデータを取得したときに自動的に開始されてもよい。
【0084】
プロセッサ510は、S201において、観測期間における観測結果(すなわち、移動体M-1~M-3の各々から取得した位置データ及びSOCデータ)を解析し、S202において、その解析結果に基づいて領域R100内の場所ごとの設置メリットを評価する。そして、プロセッサ510は、S203において、設置メリットの評価結果を表示装置600に表示させる。
【0085】
以下、
図7~
図9を用いて、評価方法及び評価結果について説明する。各図においては、設置メリットの評価結果をA~Eで表わす。設置メリットの評価結果は、高い方からA、B、C、D、Eの順である。
【0086】
図7は、設置メリットの評価結果の第1の例を示す図である。
図5及び
図6とともに
図7を参照して、この例では、移動体の交通量を指標にして設置メリットが評価された。サーバ500は、
図5に示したフローチャートF1のS101で測定された観測期間における移動体の挙動、特に移動体の位置の推移に基づいて、移動体の交通量(通過頻度)を求めた。サーバ500は、観測期間において移動体の交通量が多かった場所ほど、給電マット100を設置した場合に得られるメリットが大きいと評価した。具体的には、場所D11~D19のうち、場所D11、D12、D15、及びD18の各々が、「A」と評価された。場所D11は、移動体M-1が経路R1に従って頻繁に通るため(
図6参照)、「A」と評価された。場所D12及びD15の各々は、移動体M-2が経路R21及びR22の両方で通るため(
図6参照)、「A」と評価された。場所D18は、移動体M-3が経路R3に従って通り、かつ、移動体M-2が経路R22に従って通るため(
図6参照)、「A」と評価された。
【0087】
図8は、設置メリットの評価結果の第2の例を示す図である。
図5及び
図6とともに
図8を参照して、この例では、移動体の滞在時間を指標にして設置メリットが評価された。サーバ500は、
図5に示したフローチャートF1のS101で測定された観測期間における移動体の挙動に基づいて、場所ごとの移動体の滞在時間を求めた。サーバ500は、観測期間において移動体の滞在時間が長かった場所ほど、給電マット100を設置した場合に得られるメリットが大きいと評価した。具体的には、場所D21~D29のうち、場所D21が「A」と評価された。荷物の受渡しが行なわれるエリア#1,#2,#4,#6,#9近傍の評価が比較的高くなった。
【0088】
図9は、設置メリットの評価結果の第3の例を示す図である。
図5及び
図6とともに
図9を参照して、この例では、移動体の蓄電残量を指標にして設置メリットが評価された。サーバ500は、
図5に示したフローチャートF1のS102で測定された観測期間における移動体の蓄電残量の推移に基づいて、場所ごとの移動体の蓄電残量(バッテリ210のSOC)を求めた。サーバ500は、観測期間において移動体の蓄電残量が少なくなった場所ほど、給電マット100を設置した場合に得られるメリットが大きいと評価した。具体的には、場所D31~D39のうち、場所D35が「B」と評価された。経路R1では移動体の走行距離が短いため(
図6参照)、場所D31の評価は低かった。
【0089】
サーバ500は、指標の異なる複数の評価結果(たとえば、
図7~
図9に示した評価結果)を、ユーザからの指示に従って個別に表示装置600に表示させてもよい。工場管理者(工場800の管理者)は、全ての評価結果を確認した上で、給電マット100の設置場所を決定してもよい。給電マット100の貸出し業者は、工場管理者からの依頼に応じて、給電マット100を工場800に搬入し、工場管理者が評価結果(すなわち、対象領域R100内の場所ごとの設置メリット)を参考にして決めた場所に給電マット100を設置してもよい。
【0090】
以上説明したように、サーバ500は、対象領域R100内の複数の評価対象(たとえば、
図7に示した場所D11~D19)の各々について設置メリットを評価する。ユーザは、給電マット100の設置場所の選定において、サーバ500によって評価された設置メリットを参考にすることができる。よって、サーバ500は、給電マット100の設置場所の選定を容易にすることができる。ユーザは、給電マット100を適切な場所に設置しやすくなる。
【0091】
実施の形態1に係る給電方法は、移動体に対してワイヤレス給電を行なう給電マット100が設置され得る対象領域内の複数の場所の各々について、給電マット100を設置した場合に得られるメリットを評価すること(
図5のS202)と、対象領域内の場所ごとのメリットの評価結果を表示すること(
図5のS203)とを含む。こうした給電方法によれば、ユーザが給電マット100を適切な場所に設置しやすくなる。
【0092】
給電マット100の設置メリットを評価する指標は、上述した移動体の交通量、滞在時間、及び蓄電残量に限られない。たとえば、人の密集度を指標にして給電マット100の設置メリットが評価されてもよい。たとえば、観測期間において、工場800内の領域R100に設置された1以上のカメラ(図示せず)で人の挙動が観測されてもよい。サーバ500は、1以上のカメラで測定された観測期間における人の挙動に基づいて、領域R100内の場所ごとの人の密集度を求めてもよい。
【0093】
図10は、設置メリットの評価結果の第4の例を示す図である。
図5及び
図6とともに
図10を参照して、この例では、人の密集度を指標にして設置メリットが評価された。サーバ500は、観測期間において人の密集度が低かった場所ほど、給電マット100を設置した場合に得られるメリットが大きいと評価した。具体的には、場所D41~D49のうち、場所D44及びD46は、観測期間において人の密集度が高く、「E」と評価された。
【0094】
工場管理者は、上記の評価結果を確認し、人の密集度が高い場所(たとえば、
図10に示した場所D44及びD46)を、給電マット100の設置場所の候補から除外してもよい。
【0095】
サーバ500は、上述した移動体の交通量、滞在時間、及び蓄電残量と、人の密集度との全てを指標として総合的に設置メリットを評価して、総合的な評価結果を表示装置600に表示させてもよい。
【0096】
[実施の形態2]
本開示の実施の形態2に係る給電システムについて説明する。実施の形態2は実施の形態1と共通する部分が多いため、主に相違点について説明し、共通する部分についての説明は割愛する。
【0097】
実施の形態2に係るサーバ500は、ユーザが希望する設置場所に給電マット100を設置した場合に得られるメリットが大きくなる改善策を提案するように構成される。
図11は、実施の形態2に係るサーバ500が実行する設置メリットの評価に係る処理を示すフローチャートである。サーバ500は、
図5に示したフローチャートF2に係る処理の代わりに、
図11に示す処理を実行する。
【0098】
図11を参照して、S200では、サーバ500(
図5)が評価指標を決定する。たとえば、サーバ500は、所定の選択肢の中から評価指標を選ぶように、顧客(たとえば、工場管理者)に要求する。評価指標の選択肢は、たとえば、移動体の交通量、滞在時間、及び蓄電残量と、人の密集度とを含む。そして、サーバ500は、顧客が選んだ指標を、評価指標として決定する。以下では、顧客が移動体の蓄電残量を選んだ場合について説明する。顧客は、移動体の稼働時間を長くするため、あるいは蓄電装置の劣化を抑制するために、移動体の蓄電残量が少なくなるまで蓄電装置の充電を行なわないことを希望するかもしれない。
【0099】
S201及びS202では、上記S200で決定された指標に基づいて設置メリットの評価が行なわれる。その後、S203において、設置メリットの評価結果(たとえば、
図9参照)が表示される。
図11のS201~S203では、
図5のS201~S203に準ずる処理が実行される。
【0100】
S204では、ユーザが希望する給電マット100の設置場所(以下、「希望場所」とも称する)を、サーバ500が取得する。たとえば、サーバ500は、所定の選択肢の中から希望場所を選ぶように、顧客に要求する。給電マット100の設置場所の選択肢は、たとえば
図9に示した場所D31~D39である。以下では、顧客が場所D36を選んだ場合について説明する。
【0101】
S205では、サーバ500が、観測期間における観測結果(すなわち、移動体M-1~M-3の各々から取得した位置データ及びSOCデータ)を用いて、場所D36の設置メリットに影響を与える条件を変えながら場所D36の設置メリットがどのように変わるかをシミュレーションで順次確認して、場所D36の設置メリットが大きくなる条件(改善策)が存在するか否かを判断する。
【0102】
場所D36の設置メリットが大きくなる改善策がないと判断された場合には(S205にてNO)、
図11に示す一連の処理は終了する。他方、場所D36の設置メリットが大きくなる改善策があると判断された場合には(S205にてYES)、サーバ500が、S206において、場所D36の設置メリットが大きくなる改善策及びその効果を、表示装置600(
図5)に表示させる。
【0103】
図12は、設置メリットが大きくなる改善策及びその効果の第1の例を示す図である。
図12を参照して、この例では、サーバ500が、移動体M-2の走行制御を変えることを、改善策として提案する。具体的には、移動体M-2が、エリア#1からエリア#9に向かうときには経路R21に従って走行し、エリア#9からエリア#1に戻るときには経路R22に従って走行するように、移動体M-2の走行制御を変える。移動体M-2の走行制御をこのように変えることで、場所D36の設置メリットが「C」(
図9参照)から「A」に大きくなることが、前述のシミュレーション(
図11のS205)によって示された。さらに、サーバ500は、1回の充電による充電電力量を大きくするために、場所D36において移動体M-2を遅く走行させることを提案してもよい。
【0104】
顧客が上記改善策を受け入れる場合には、移動体M-2の自動運転プログラムを書き換えることによって、移動体M-2の走行制御を変えてもよい。サーバ500は、移動体M-2との通信(無線通信又は有線通信)によって、移動体M-2の自動運転プログラムを書き換えてもよい。また、サーバ500から所定の記憶媒体(又は、サービスツール)を介して移動体M-2に自動運転プログラムをインストールしてもよい。あるいは、サーバ500によらず、顧客が移動体M-2の自動運転プログラムを書き換えてもよい。
【0105】
実施の形態2に係る給電システムにおいて、サーバ500は、観測期間における観測結果を用いて、ユーザが希望する設置場所に給電マット100を設置した場合に得られるメリットが大きくなる改善策を提案するように構成される。ユーザが給電マットを設置したい場所がある場合において、上記の評価コンピュータは、前述の評価を行なった後、ユーザが希望する設置場所に対して設置メリットが大きくなる改善策を提案する。このため、ユーザは、設置メリットが大きい場所に給電マットを設置しやすくなる。上記構成によれば、ユーザが給電マットを有効に利用しやすくなる。
【0106】
図11のS200において、移動体の蓄電残量以外の評価指標が選ばれてもよい。以下、
図11のS200において顧客が移動体の交通量を選び、
図11のS204において顧客が場所D13(
図7)を選んだ場合について説明する。
図13は、設置メリットが大きくなる改善策及びその効果の第2の例を示す図である。
【0107】
図13を参照して、この例では、エリア#4とエリア#7とを入れ替え、移動体M-1の走行制御を変えることを、サーバ500が改善策として提案する。移動体M-1が経路R1Aに従ってエリア#1とエリア#4(改善前はエリア#7があった位置)との間を往復するように、移動体M-1の走行制御を変える。対象領域R100内のレイアウトと移動体M-1の走行制御とをこのように変えることで、場所D13の設置メリットが「B」(
図7参照)から「A」に大きくなることが、前述のシミュレーション(
図11のS205)によって示された。また、エリア#4に近い場所D13Aの設置メリットも「A」と評価された。
【0108】
なお、AI(人工知能)を用いた機械学習により得た学習済みモデルを上記シミュレーション(
図11のS205)に用いてもよい。学習済みモデルは、観測期間における観測結果(
図5参照)、評価結果(
図11のS202)、及び希望場所(
図11のS204)を入力すると、希望場所の設置メリットが上記評価結果よりも高くなる改善策(たとえば、領域R100内のレイアウト、又は移動体の制御態様)が出力されるように学習されたモデルであってもよい。モデルの学習には、蓄積された観測結果のビッグデータが使用されてもよい。
【0109】
[他の実施の形態]
サーバ500は、給電マットが劣化しにくいほど、給電マットを設置した場合に得られるメリットが大きいと評価するように構成されてもよい。サーバ500は、対象領域内の場所ごとに、複数種の給電マットを含む選択肢の中から、設置メリットが最も大きくなる給電マットを選ぶように構成されてもよい。サーバ500は、
図5に示したフローチャートF2に係る処理に代えて、
図14に示すフローチャートF2Aに係る処理を実行してもよい。
図14は、
図5に示したフローチャートF2の変形例を示す図である。
【0110】
図14を参照して、プロセッサ510は、S301において、対象領域の地図情報(マップデータ)を取得する。地図情報はフロアマップを示す情報であってもよい。サーバ500は、対象領域を管理する外部コンピュータから対象領域の地図情報を取得してもよい。ユーザが対象領域の地図情報をサーバ500に入力してもよい。
【0111】
続くS302では、プロセッサ510が、対象領域の地図情報を用いて、対象領域内の場所ごとに、複数種の給電マットを含む選択肢の中から設置メリットが最も大きくなる給電マット(最も劣化しにくい給電マット)を選ぶ。
【0112】
給電マットの選択肢は、たとえば、標準マット、防水マット、昇降マット、及び壁付きマットを含む。標準マットは、標準仕様の給電マットである。たとえば、
図1に示した給電マット100が標準マットに該当する。防水マットは、防水仕様の給電マットである。たとえば、標準仕様の給電マットの表面に防水コーティングのような防水処理が施された給電マットが、防水マットに該当する。
【0113】
昇降マットは、昇降機構を備える給電マットである。
図15は、昇降マットの一例を示す図である。
図15を参照して、昇降マット100Aは、1枚の第1板材101と複数の第2板材102とが組み合わさってシート状に形成されている。
【0114】
第1板材101はケーブルを介して電源モジュール300と電気的に接続される。第1板材101は、シート基材110Aを有し、電力制御回路130、無線通信機140、及びマットコントローラ150が、シート基材110Aに内蔵されている。
【0115】
複数の第2板材102の各々は、シート基材110Bと、昇降機構110Cと、送電コイル120とを備える。送電コイル120はシート基材110Bの表面に設けられている。ただしこれに限られず、送電コイル120はシート基材110Bに内蔵されてもよい。昇降機構110Cは、シート基材110Bに対して設けられ、シート基材110Bの高さを調整可能に構成される。昇降機構110Cは、人によって調整されてもよい。また、昇降機構110Cは、マットコントローラ150からの指示に従って昇降してもよい。
【0116】
第2板材102は1つの送電コイル120を備える。しかしこれに限られず、第2板材102は2以上の送電コイル120を備えてもよい。第2板材102は、隣接する第2板材102の電線(たとえば、送電コイル120とつながる電線)を接続するためのコネクタを有してもよい。第2板材102は、接続されたコネクタを固定するロック機構をさらに有してもよい。電力系統PGから供給される電力は、電源モジュール300及び第1板材101を経由して、各第2板材102に供給される。電源モジュール300に含まれる電源回路310は、各第2板材102に含まれる送電コイル120に電力を供給する。
【0117】
1つの第1板材101に対して複数の第2板材102を組み合わせることで、
図1に示した給電マット100に準ずる機能を有する昇降マット100Aが形成される。ただし、昇降マット100Aは、第2板材102ごとの高さを調整できる。また、第2板材102の数を変えることによって昇降マット100Aの大きさを調整できる。昇降マット100Aは分解可能に構成される。組み合わさって昇降マット100Aを形成する複数の第2板材102は、個々の小片(第2板材102)に戻すことができる。昇降マット100Aは、1枚の第1板材101と複数の第2板材102とに分解可能に構成される。このため、昇降マット100Aは持ち運びが容易である。また、昇降マット100Aを構成する複数の第2板材102のうち一部の第2板材102が故障又は劣化した場合には、該当する第2板材102のみを交換することができる。
【0118】
壁付きマットは、壁に設置可能な給電マットである。
図16は、壁付きマットの一例を示す図である。
図16を参照して、壁付きマット100Bは、たとえば屋内の壁に設置される。設置方式は、壁掛け方式であってもよいし、貼付け方式であってもよい。壁付きマット100Bは、複数の送電コイル120と、電力制御回路130と、無線通信機140と、マットコントローラ150とを備える。AGV200Aは、壁付きマット100Bを使用可能に構成される。AGV200Aは、基本的には
図3に示したAGV200に準ずる構成を有する。ただし、AGV200Aは、車体下部に設けられた受電コイル220(
図3)に加えて、車体側部に設けられた受電コイル220Aを備える。受電コイル220Aは、壁に設置された壁付きマット100Bの送電コイル120から非接触で電力を受けるように構成される。
【0119】
再び
図14を参照して、この変形例において、対象領域で使用される移動体は、上述した標準マット、防水マット、昇降マット、及び壁付きマットの全てを使用可能に構成される。S302では、対象領域内の場所ごとに、その場所に合った給電マット(より特定的には、最も劣化しにくい給電マット)が選ばれる。複数種の給電マットについて劣化しにくさが同じである場合には、所定の優先順位に従って1種類の給電マットが選ばれる。この変形例では、優先順位が高いほうから、標準マット、防水マット、昇降マット、壁付きマットの順とする。
【0120】
続くS303では、プロセッサ510が、上記S302で選ばれた対象領域内の場所ごとの給電マットを表示装置600に表示させる。
【0121】
図17は、
図14のS303で表示される対象領域内の場所ごとの給電マットの一例を示す図である。
図17を参照して、この例では、領域R200が対象領域に相当する。領域R200に含まれる場所D51~D55のうち、場所D51に対しては防水マット、場所D52及びD54の各々に対しては壁付きマット、場所D53に対しては昇降マット、場所D55に対しては標準マットが選ばれた。場所D51は屋外である。屋外に標準マットを設置すると、標準マットが雨に濡れて劣化しやすくなるため、場所D51に対しては防水マットが選ばれた。場所D52及びD54は細い通路である。細い通路では、人によって給電マットが踏まれて劣化しやすくなるため、場所D52及びD54の各々に対しては壁付きマットが選ばれた。場所D53には段差がある。段差は移動体の走行を妨げる。移動体が段差を乗り越えるときには、給電マットに衝撃が加わりやすい。このため、場所D53に対しては、段差を緩和可能な昇降マットが選ばれた。場所D55に関しては、標準マット、防水マット、昇降マット、及び壁付きマットについて劣化しにくさが同じであった。このため、優先順位が最も高い標準マットが選ばれた。
【0122】
対象領域は、工場内に限られず、他の事業所(たとえば、学校、病院、旅館、銀行、又はショッピングセンタ)内であってもよいし、住宅内であってもよい。また、対象領域は屋外であってもよい。サーバ500は、屋外の対象領域の交通情報(たとえば、移動体の交通量及び渋滞度を示す情報)を用いて、対象領域内の場所ごとの設置メリットを評価するように構成されてもよい。給電マットの貸出し以外の用途で設置メリットが評価されてもよい。
【0123】
給電マットが適用される移動体は、
図2及び
図3に示した車両に限られない。移動体は、内燃機関を備えないBEVに限られず、内燃機関を備えるPHEV(プラグインハイブリッド車両)であってもよい。移動体が無人で自動運転可能に構成されることは必須ではない。移動体は人によって手動運転されてもよい。移動体は走行中充電ではなく停車中充電を行なってもよい。移動体は、農業機械、歩行ロボット、ドローン、ロボットクリーナ、又は宇宙探査機であってもよいし、鉄道車両、船、又は飛行機であってもよい。
【0124】
上記の各種変形例は任意に組み合わせて実施されてもよい。
【0125】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0126】
100 給電マット、100A 昇降マット、100B 壁付きマット、101 第1板材、102 第2板材、110,110A,110B シート基材、110C 昇降機構、120 送電コイル、121 磁気マーカ、130 電力制御回路、140 無線通信機、150 マットコントローラ、200,200A AGV、201~208 移動体、210 バッテリ、220,220A 受電コイル、221 位置センサモジュール、230 充電回路、240 無線通信機、250 ECU、300 電源モジュール、310 電源回路、350 カメラ、500 サーバ、510 プロセッサ、520 記憶装置、530 通信装置、600 表示装置、800 工場、PG 電力系統、R100,R200 領域。