(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】洗車機、および洗車機の制御方法
(51)【国際特許分類】
B60S 3/06 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
B60S3/06
(21)【出願番号】P 2021121478
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】青山 哲也
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147566(JP,A)
【文献】特開平11-222105(JP,A)
【文献】特開平09-309415(JP,A)
【文献】特開2012-035802(JP,A)
【文献】特開平08-239016(JP,A)
【文献】特開平09-109847(JP,A)
【文献】特開2004-114958(JP,A)
【文献】特開2009-126368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の回りに回動し、車両の表面のうち、法線が前記回転軸と平行な面を含む表面を洗浄するブラシと、液体を噴射するノズルとを含み、前記車両に対する前後方向への相対移動により、前記車両を洗浄する洗車機本体と、
前記洗車機本体を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ノズルを制御して前記ブラシに対して解凍液を噴射させ
、
前記洗車機本体は、左右一対の前記ブラシを備え、
前記ノズルは、左右一対の第1ノズルを含み、
前記制御部は、一方の前記ブラシと同じ側に位置する一方の前記第1ノズルを制御して、他方の前記ブラシのうち洗浄時に前記車両と当接する部分に対して解凍液を噴射させる洗車機。
【請求項2】
回転軸の回りに回動し、車両の表面のうち、法線が前記回転軸と平行な面を含む表面を洗浄するブラシと、液体を噴射するノズルとを含み、前記車両に対する前後方向への相対移動により、前記車両を洗浄する洗車機本体と、
前記洗車機本体を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ノズルを制御して前記ブラシに対して解凍液を噴射させ、
前記ノズルは、前記ブラシの側周囲に位置する第2ノズルを含み、
前記制御部は、前記第2ノズルを制御して前記ブラシの側面に対して解凍液を噴射させる洗車機。
【請求項3】
回転軸の回りに回動し、車両の表面のうち、法線が前記回転軸と平行な面を含む表面を洗浄するブラシと、液体を噴射するノズルとを含み、前記車両に対する前後方向への相対移動により、前記車両を洗浄する洗車機本体と、
前記洗車機本体を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ブラシにより前記車両を洗浄するときの前記ブラシの回動速度より遅い回動速度で前記ブラシを回動させつつ前記ノズルを制御して前記ブラシに対して解凍液を噴射させる洗車機。
【請求項4】
前記ブラシは、前記車両のタイヤホイルを洗浄するホイルブラシである請求項1
から3の何れか1項に記載の洗車機。
【請求項5】
前記制御部は、前記ノズルを制御して、前記ブラシのうち洗浄時に前記車両と当接する部分に対して解凍液を噴射させる請求項1
から4の何れか1項に記載の洗車機。
【請求項6】
前記第1ノズルは前記ブラシに備えられる請求項
1に記載の洗車機。
【請求項7】
前記制御部は、
左右一対の前記ブラシ同士の距離を制御し、
前記距離が所定値以下のとき、制御対象となる前記第1ノズルを制御して解凍液を噴射させる請求項
1または
6に記載の洗車機。
【請求項8】
前記ブラシに対して解凍液を噴射させるときの前記ノズルに対する前記制御部の制御内容の一部と、前記ブラシに前記車両を洗浄させるときの前記ノズルに対する前記制御部の制御内容の一部とは共通する請求項1から7の何れか1項に記載の洗車機。
【請求項9】
前記制御部は、前記ノズルを制御して前記ブラシに対して解凍液を噴射させる期間の少なくとも一部において、前記ブラシを回動させる請求項1から
8の何れか1項に記載の洗車機。
【請求項10】
回転軸の回りに回動し、車両の外表面のうち、法線が前記回転軸と平行な面を含む表面を洗浄するブラシと、液体を噴射するノズルとを含み、前記車両に対する前後方向への相対移動により、前記車両を洗浄する洗車機本体を備えた洗車機の制御方法であって、
前記ノズルを制御して前記ブラシに対して解凍液を噴射させる解凍工程を含
み、
前記洗車機により前記車両の洗浄の受付を行う受付工程と、
前記洗車機本体により前記車両を洗浄する洗浄工程とをさらに含み、
前記受付工程および前記洗浄工程の実行期間の少なくとも一部の期間において前記解凍工程を実行する洗車機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の洗浄を行う洗車機、および当該洗車機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、洗車機が備えるブラシの解氷動作および凍結防止動作について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の手法では、回転軸に対し略垂直な面を洗浄するブラシの解凍が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る洗車機は、回転軸の回りに回動し、車両の表面のうち、法線が前記回転軸と平行な面を含む表面を洗浄するブラシと、液体を噴射するノズルとを含み、前記車両に対する前後方向への相対移動により、前記車両を洗浄する洗車機本体と、前記洗車機本体を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記ノズルを制御して前記ブラシに対して解凍液を噴射させる。
【0006】
また、本開示の一態様に係る洗車機の制御方法は、回転軸の回りに回動し、車両の外表面のうち、法線が前記回転軸と平行な面を含む表面を洗浄するブラシと、液体を噴射するノズルとを含み、前記車両に対する前後方向への相対移動により、前記車両を洗浄する洗車機本体を備えた洗車機の制御方法であって、前記ノズルを制御して前記ブラシに対して解凍液を噴射させる解凍工程を含む。
【発明の効果】
【0007】
回転軸に対し略垂直な面を洗浄するブラシの解凍を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るホイルブラシおよびその近傍を拡大した、洗車機本体の一部分の概略側面図である。
【
図2】実施形態に係る洗車機を示す概略側面図、および概略正面図である。
【
図3】実施形態に係るホイルブラシの概略正面図である。
【
図4】実施形態に係る洗車方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る洗車方法の一例を示す、洗車機の工程正面図である。
【
図6】実施形態に係る洗車方法の一例を示す、洗車機の他の工程正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態〕
<洗車機の概要>
図2は、本実施形態に係る洗車機2が備える、洗車機本体4とリモートパネル6との概略側面2Sと、および洗車機本体4の概略正面4Fとを示す模式図である。本実施形態に係る洗車機2は、
図2に示すように、被洗浄車両である車両Xの洗車を行う洗車機本体4を備える。洗車機2は、洗車機本体4による車両Xの洗車条件を取得するリモートパネル6を備えていてもよい。
図2の洗車機2の概略側面2Sにおいては、車両Xがリモートパネル6よりも、紙面に向かって奥側に位置することを示すために、車両Xの外形を点線にて示す。
【0010】
図2の洗車機本体4の概略正面4Fに示すように、洗車機本体4は、例えば、2つのフレーム8と、当該2つのフレーム8の上端同士を連結する天井部10とを備える。洗車機本体4は、
図2の洗車機2の概略側面2Sに示す、車両Xの進入方向DAに沿って、車両Xが、フレーム8および天井部10によって囲まれた空間4Sを通過できる構造を有している。なお、本明細書において、進入方向DAは、洗車機本体4の正面から背面に向かう方向とする。
【0011】
洗車機本体4は、例えば、フレーム8のそれぞれの下部に車輪12を有し、図示しない駆動部によって当該車輪12を回転駆動することにより、地面Gに配されたレールRに沿って、車両Xに対し前後方向に相対移動する。レールRは、例えば、進入方向DAに沿って形成されている。ここで、洗車機本体4は、車両Xに対する相対移動を行いつつ、空間4S中の車両Xに対する洗浄を実施する。
【0012】
洗車機本体4には、清掃部の1つとして、車両X上に摺動してブラッシングする複数の回転ブラシが設けられる。例えば、洗車機本体4が備える回転ブラシは、それぞれが回転モータ(不図示)によって回転するトップブラシ14、サイドブラシ16、およびロッカーブラシ18を含む。トップブラシ14は、車両Xの上面に沿って移動し、車両Xの上面を洗浄する。サイドブラシ16、およびロッカーブラシ18は、車両Xの両側面を洗浄する。特に、ロッカーブラシ18は、車両Xの側面のうち、サイドブラシ16が洗浄可能な部分よりも下方の部分を含む、車両Xの側面下部を洗浄する。
【0013】
洗車機本体4の側部には、洗剤またはワックス等を含む各種液剤を貯液した複数の貯液タンク(不図示)を収納するタンク収納部20が配される。タンク収納部20の上方には、市水を含む水、または各貯液タンクからの液剤を分配する分配配管部22が設けられる。分配配管部22には、清掃部に含まれる、第1浄水ノズル24、第2浄水ノズル26、第1洗剤ノズル28、第2洗剤ノズル30、撥水コートノズル32、およびワックスノズル34がそれぞれ電磁弁(不図示)を介して導出される。
【0014】
第1浄水ノズル24、および第2浄水ノズル26は、洗車機本体4の手前側、および奥側にそれぞれ配され、車両Xに対して市水を含む水を噴射する。第1洗剤ノズル28、第2洗剤ノズル30は、洗車機本体4の手前側および奥側にそれぞれ配され、車両Xに対してシャンプー等を含む洗浄液を噴射する。撥水コートノズル32およびワックスノズル34は洗車機本体4の後面に配される。撥水コートノズル32は車両Xに対して撥水コート剤の液剤を噴射する。ワックスノズル34は車両Xに対してワックスを噴射する。
【0015】
また、洗車機本体4には、気流を発生して車両Xを乾燥させるブロワ36が設けられる。ブロワ36にはトップ送風ノズル38、およびサイド送風ノズル40が接続される。トップ送風ノズル38は、洗車機本体4の中央上部に設けられ、車両Xの天井面に向けて送風する。サイド送風ノズル40は、洗車機本体4の両側部に設けられ、車両Xの側面に向けて送風する。洗車機本体4は、トップ送風ノズル38、およびサイド送風ノズル40の送風によって、洗浄後の車両Xを乾燥させる。
【0016】
なお、
図2においては、図示の簡単のために、上述した、洗車機本体4が備える、車両Xの洗浄のための各装置に関する図示を省略している場合がある。また、
図2に示す、洗車機本体4が備える各装置は、単なる例示であり、洗車機本体4は、上述した装置の他、従来公知の構成を含む、車両Xの洗浄のための装置、および当該洗浄を補助する装置を、フレーム8または天井部10に備えていてもよい。
【0017】
洗車機本体4の一方のフレーム8の前面には操作パネル42が配される。操作パネル42は洗車条件を設定する操作ボタン(不図示)を備え、車両Xから降車したユーザ等の操作により洗車の受け付けまたは洗車条件の設定を行う。
【0018】
さらに、洗車機2は、洗車機本体4を制御する制御部44を備える。特に、制御部44は、洗車機本体4のレールRに沿った移動、および、洗浄部の各部の動作を制御することにより、洗車機本体4による車両Xの洗浄を制御する。制御部44は、
図2に示すように、洗車機本体4に備えられていてもよく、あるいは、洗車機本体4の外部に位置していてもよい。制御部44は、不図示の通信装置等により、洗車機本体4または後述するリモートパネル6との間における情報の送受信を行い、洗車機本体4を制御してもよい。制御部44は、例えば、CPU等のプロセッサで構成され、メモリに格納された制御プログラムがプロセッサ上で実行されることにより、各制御が実現される。
【0019】
リモートパネル6は、例えば、洗車機本体4の前方側に位置し、おおよそ洗車機本体4の移動方向に沿って配置される。また、リモートパネル6は、
図2に示すように、その正面が、洗車機本体4により洗浄される前、換言すれば、洗車機本体4の内部に進入する前の車両Xと対向するように配置される。このため、
図2においては、リモートパネル6の背面を図示している。
【0020】
図2に示すように、リモートパネル6は、筐体46と、地面Gに立設された、筐体46を支持する支持柱48とを備える。リモートパネル6は、筐体46に設けられた、不図示のタッチパネルまたはボタン等の操作により、洗車機本体4による車両Xの洗車条件の少なくとも一部を取得してもよい。制御部44は、リモートパネル6が取得した洗車条件の少なくとも一部に基づいて、洗車機本体4を制御し、車両Xを洗浄してもよい。
【0021】
<ホイルブラシ>
さらに、本実施形態に係る洗車機本体4は、
図2に示すように、清掃部が有する回転ブラシの1つとして、各フレーム8に位置する左右一対のホイルブラシ50を備える。各ホイルブラシ50は、例えば、
図2の洗車機2の概略側面2Sに示すように、サイドブラシ16よりもさらに洗車機本体4の背面側かつ下方側に位置する。
【0022】
ホイルブラシ50は、特に、車両Xが備えるタイヤホイルXT上に摺動してブラッシングすることにより、タイヤホイルXTの側表面を洗浄する回転ブラシである。ホイルブラシ50は、車両XのタイヤホイルXTの、スポークまたはリブ等を含むメタルホイル部分、および、メタルホイル部分の周囲に形成された、ゴムまたはチューブ等を含むタイヤ部分の双方の側表面を洗浄してもよい。
【0023】
ホイルブラシ50の詳細について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るホイルブラシ50およびその近傍を拡大した、洗車機本体4の一部分の概略正面図であり、特に、
図2の洗車機本体4の概略正面4Fに示す領域Aについて拡大した図である。
図1は、後に詳述する、ホイルブラシ50の待機状態WSと伸長状態ESとのそれぞれにおけるホイルブラシ50を示す。
【0024】
図1においては、より明瞭にホイルブラシ50およびその近傍に位置する部材を図示するために、洗車機本体4のフレーム8を透過して各部材を示す。また、
図1においては、図示の簡単のために、ホイルブラシ50と直接関連しない、サイドブラシ16、ロッカーブラシ18を含む他の回転ブラシを含む、洗車機本体4が備える各部の図示を省略している。
【0025】
ホイルブラシ50について、
図3をさらに参照して詳説する。
図3は、ホイルブラシ50およびその近傍について拡大して示す、ホイルブラシ50の概略正面図であり、特に、ホイルブラシ50を
図1の待機状態WSに示す方向Bからみた概略図である。
図3においては、ホイルブラシ50、当該ホイルブラシ50の支持する部材、および、ホイルブラシ50と関連するノズル等の部材のみを抜き出して図示する。
【0026】
ホイルブラシ50は、複数の毛材52と、取り付け部54とを含む。毛材52のそれぞれは、例えば、取り付け部54に植え込まれることにより取り付けられる。例えば、取り付け部54には、複数の凹部が形成されていてもよく、当該凹部のそれぞれには、複数本の毛材52がまとめられてなる束が植え込まれていてもよい。毛材52は柔軟でありかつある程度の弾性を有する材料を含み、例えば、ポリプロピレンまたはポリエチレンを含んでいてもよい。
【0027】
毛材52のそれぞれは、取り付け部54の毛材52が取り付けられた表面の略法線方向に延伸する。これにより、毛材52の先端部のそれぞれが、
図1に示すホイルブラシ50の洗浄面50Fを形成する。洗浄面50Fは、例えば、取り付け部54の毛材52が取り付けられた表面と略水平方向の面であってもよい。
【0028】
例えば、毛材52のそれぞれは略同一の長さを有していてもよく、あるいは、少なくとも一つの長さが他の何れかの長さと異なっていてもよい。このため、洗浄面50Fは略面一であってもよく、ある一部分において他の何れかの部分と取り付け部54からの高さが異なっていてもよい。また、毛材52のそれぞれは、取り付け部54の中心から放射状に取り付けられている。取り付け部54の最も周囲端部側に位置する毛材52のそれぞれは、
図1に示すホイルブラシ50の側表面50Sを形成する。
【0029】
さらに、ホイルブラシ50は、第1ノズルとして、中心ノズル56と周囲ノズル58とを含む。中心ノズル56と周囲ノズル58とは、それぞれに供給された液体を噴射するノズルである。中心ノズル56と周囲ノズル58とは、例えば、取り付け部54の、毛材52が取り付けられた表面上に位置し、当該表面の略法線方向に液体を噴射するように形成されている。中心ノズル56は、取り付け部54の中心の近傍に位置し、周囲ノズル58は、中心ノズル56よりも取り付け部54の周囲側に位置する。なお、
図1において、中心ノズル56と周囲ノズル58とは、毛材52を透過して示されている。
【0030】
<ブラシ支持部>
本実施形態において、洗車機本体4は、さらに、各フレーム8に、左右一対のブラシ支持部60を備える。ブラシ支持部60のそれぞれは、ホイルブラシ50のそれぞれをフレーム8に対し支持する。ブラシ支持部60は、回動部62と、ブラシシャフト64とを含む。例えば、回動部62は、ブラシシャフト64が挿入される開口を備える。回動部62は、ブラシシャフト64が開口に挿入された状態において、ブラシシャフト64の長手方向を軸として回動する。ブラシシャフト64は、例えば、地面Gと略水平、かつ、進入方向DAと略直交する方向に長手方向を有する。回動部62は、例えば、不図示のモータ等の動力部によって、ブラシシャフト64回りに回動する。
【0031】
ブラシ支持部60は、さらに複数のボルト66を備える。ボルト66は、取り付け部54と回動部62とを互いに締め付けて固定する。このため、回動部62のブラシシャフト64回りの回動に伴い、取り付け部54もブラシシャフト64回りに回動する。したがって、ホイルブラシ50は、ブラシシャフト64の長手方向と略同一方向に沿った回転軸50A回りに回動する。
【0032】
ホイルブラシ50の回動に伴い、中心ノズル56と周囲ノズル58とは回動する。ここで、回転軸50Aは、例えば、取り付け部54の中心を通る。このため、中心ノズル56は、ホイルブラシ50の回動に伴って回動するものの位置は大きく変動しない。一方、周囲ノズル58は、ホイルブラシ50の回動に伴い中心ノズル56の周囲を回動する。
【0033】
本実施形態において、取り付け部54は毛材52の長手方向がブラシシャフト64の長手軸と略同一方向となるように回動部62に対し固定される。したがって、ホイルブラシ50の洗浄面50Fは、回転軸50Aが略法線方向と同一方向となるように形成される。
【0034】
ブラシ支持部60は、さらに、アーム68を含む。アーム68は、ビーム部70と、ビーム部70の一端に形成された第1シャフト72と、ビーム部70の他端に形成された第2シャフト74とを含む。第1シャフト72と第2シャフト74とは、例えば、進入方向DAと略同一方向に長手方向を有し、それぞれが長手方向を回転軸として、ビーム部70を回動可能に支持する。
【0035】
第1シャフト72は、例えば、ブラシシャフト64に形成されたブラシシャフト支持部76を貫通し、ブラシシャフト64を回動可能に支持する。第2シャフト74は、洗車機本体4のフレーム8に固定される。このため、ビーム部70が第2シャフト74回りに回動することにより、ホイルブラシ50は第2シャフト74周りに回動する。特に、ビーム部70の第2シャフト74回りに回動に伴い、ホイルブラシ50の洗浄面50Fのフレーム8からの距離が変わる。
【0036】
例えば、
図1に示す待機状態WSにおいて、ビーム部70を第2シャフト74回りに回動させ、第1シャフト72をフレーム8から空間4Sに向かって移動させるとする。この場合、
図1の伸長状態ESに示すように、ホイルブラシ50は、待機状態WSと比較して、フレーム8よりも空間4S側に移動する。
【0037】
ここで、ブラシシャフト64は、ビーム部70の第2シャフト74回りの回動に関わらず、長手方向が地面Gと略平行となるように、第1シャフト72回りに回動する。このため、ホイルブラシ50の回転軸50Aは、ホイルブラシ50の位置に関わらず地面Gと略平行となる。
【0038】
各ブラシ支持部60は、一方のホイルブラシ50の洗浄面50Fが他方のホイルブラシ50の洗浄面50Fと互いに対向するようにホイルブラシ50を支持する。このため、一方のホイルブラシ50が含む中心ノズル56と周囲ノズル58との液体の噴射方向は、他方のホイルブラシ50の洗浄面50Fに向かう方向に向けられている。
【0039】
制御部44は、ブラシ支持部60の各部の動作の制御を通じて、ホイルブラシ50の回転軸50A回りの回動およびホイルブラシ50の洗浄面50Fのフレーム8からの位置を制御する。一方のフレーム8に位置するブラシ支持部60の各部の動作は、他方のフレーム8に位置するブラシ支持部60の各部の動作と互いに連動していてもよく、あるいは、個々に動作してもよい。また、制御部44は、各アーム68を制御することにより、2つのホイルブラシ50のそれぞれの位置を制御する。換言すれば、制御部44は、左右一対のホイルブラシ50同士の距離を制御する。
【0040】
<ホースおよび補助ノズル>
本実施形態において、洗車機本体4は、さらに、左右一対の第1ホース78、第2ホース80、および第2ノズルとしての補助ノズル82を備える。加えて、洗車機本体4は、第1ホース78と第2ホース80とは、例えば、2つのフレーム8と天井部10とに渡って門型に形成されたアーチ84を備える。
【0041】
第1ホース78と第2ホース80とは、内側を液体が流動可能な筒状の部材である。第1ホース78と第2ホース80とはアーチ84と連通する。例えば、洗車機本体4は、液体タンクからの液体を、アーチ84を介して第1ホース78と第2ホース80とのそれぞれに供給する。第1ホース78と第2ホース80とのそれぞれへの液体の供給量は、アーチ84または各ホースの何れかに形成された図示しないバルブ等により制御されてもよい。
【0042】
第1ホース78はブラシシャフト64および取り付け部54の内部と連通し、取り付け部54の内部に形成された図示しない液体流路を介して、中心ノズル56と周囲ノズル58とのそれぞれと連通する。これにより、洗車機本体4は、第1ホース78を介して中心ノズル56と周囲ノズル58とのそれぞれに液体を供給することにより、中心ノズル56と周囲ノズル58とのそれぞれに液体を噴射させる。
【0043】
中心ノズル56と周囲ノズル58とのそれぞれへの液体の供給量は、略同一であってもよく、あるいは、図示しないバルブの開閉によって制御されてもよい。また、ホイルブラシ50の移動に伴うブラシシャフト64とアーチ84との距離の変化に追従するため、第1ホース78は十分な長さと柔軟性とを有している。
【0044】
補助ノズル82は第2ホース80と連通し、第2ホース80を介して供給された液体を噴射するノズルである。補助ノズル82は、洗車機本体4のフレーム8の、待機状態WSにあるホイルブラシ50の上方に固定されている。換言すれば、補助ノズル82は、ホイルブラシ50の側周囲に位置する。このため、ホイルブラシ50が待機状態WSにある場合、補助ノズル82はホイルブラシ50の側表面50Sに対し液体を噴射する。
【0045】
第1ホース78および第2ホース80を介した各ノズルへの液体の供給は、制御部44により制御される。換言すれば、制御部44は、第1ノズルである中心ノズル56および周囲ノズル58と第2ノズルである補助ノズル82とのそれぞれにおける液体の噴射を制御する。
【0046】
<洗車方法の概要および受付工程>
洗車機2による車両Xの洗車方法について、
図4から
図6の各図を参照し説明する。
図4は、洗車機2による洗車方法の一例を示すフローチャートである。
図5および
図6は、洗車機2による洗車方法の各工程における、洗車機本体4の正面工程図である。
図5および
図6においては、特に、各工程におけるホイルブラシ50の動作をより明確に示すために、ホイルブラシ50およびその周囲の一部部材を透過して示し、さらに、洗車機本体4が備える部材の一部の図示を省略している。
【0047】
本実施形態に係る洗車方法においては、はじめに、受付工程として、洗車機2が、車両Xのユーザ等からの洗車を受け付ける(ステップS2)。洗車の受付は、例えば、上記ユーザが、リモートパネル6または操作パネル42等を操作することにより、車両Xの洗車条件の設定、および洗車料金の支払い等を行うことにより実施してもよい。
【0048】
受付工程において、車両Xは洗車機本体4よりも洗車機本体4の正面側に位置する。ここで、受付工程において、ホイルブラシ50は、例えば、上述した待機状態WSにある。例えば、受付工程において、
図5のステップS2に示すように、2つのホイルブラシ50の洗浄面50Fの間の距離W1は、車両Xの左右のタイヤホイルXTの外表面の間の距離WXよりも長い。受付工程におけるホイルブラシ50の待機状態WSの保持は、制御部44によるブラシ支持部60の制御によって実現する。
【0049】
<事前解凍工程>
洗車の受付が完了すると、
図4に示すように、洗車機2は解凍工程の一つとして事前解凍工程を実行する(ステップS4)。事前解凍工程においては、はじめに、制御部44が各ブラシ支持部60を制御し、各ホイルブラシ50を待機状態WSから伸長状態ESに移行させ、
図5のステップS4に示すように、2つのホイルブラシ50の洗浄面50F同士を接近させる。例えば、事前解凍工程において、2つのホイルブラシ50の洗浄面50Fの間の距離W2が、上述した距離WXよりも短くなる位置に、各ホイルブラシ50が移動される。
【0050】
次いで、制御部44は、対応するノズルの制御等を通じて、各ホイルブラシ50の中心ノズル56と周囲ノズル58とのそれぞれから解凍液を噴射させる。一方のホイルブラシ50が備える中心ノズル56の噴射範囲56Rおよび周囲ノズル58の噴射範囲58Rは、他方のホイルブラシ50の洗浄面50Fの少なくとも一部を含む。このため、洗車機2は、一方のホイルブラシ50の中心ノズル56および周囲ノズル58からの解凍液を、他方のホイルブラシ50の洗浄面50Fに噴射させることにより、当該ホイルブラシ50の洗浄面50Fの解凍を行う。
【0051】
本実施形態において、中心ノズル56および周囲ノズル58から噴射される解凍水は、例えば、洗車機本体4の貯液タンク等に貯留された市水、または当該市水を図示しないヒータ等の加熱部により加熱した温水等であってもよい。ホイルブラシ50の洗浄面50Fの解凍は、例えば、洗浄面50Fへの市水または温水等の噴射による、洗浄面50F上において成長した氷の結晶の溶解または除去を含む。
【0052】
事前解凍工程における中心ノズル56および周囲ノズル58からの解凍液の噴射の間、制御部44は各ホイルブラシ50をブラシシャフト64の回りに回動させてもよい。この場合、周囲ノズル58が中心ノズル56の周囲を回動するため、一方のホイルブラシ50の周囲ノズル58からの解凍液が他方のホイルブラシ50の洗浄面50Fに対しより効率的にかつより均一に噴射され、洗浄面50Fがより効率的に解凍される。
【0053】
事前解凍工程において、各ホイルブラシ50の動作は連動していてもよい。特に、事前解凍工程において、各ホイルブラシ50は、同一方向、かつ、同一速度にて回転してもよい。この場合、制御部44による2つのホイルブラシ50の制御内容を同一内容とすることができ、制御部44によるホイルブラシ50の制御をより簡素化できる。
【0054】
一方、事前解凍工程において、制御部44は、各ホイルブラシ50の回転方向が互いに逆方向となるように、各ホイルブラシ50を回転させてもよい。あるいは、事前解凍工程において、制御部44は、一方のホイルブラシ50の周囲ノズル58の噴射方向と他方のホイルブラシ50の周囲ノズル58の噴射方向とが同一直線状とならないように、各ホイルブラシ50を同一回転方向に回転させてもよい。
【0055】
以上により、一方のホイルブラシ50の周囲ノズル58からの解凍液が、他方のホイルブラシ50の周囲ノズル58からの解凍液に衝突しにくくなる。したがって、一方のホイルブラシ50の周囲ノズル58からの解凍液が、他方のホイルブラシ50の洗浄面50Fに到達しやすくなるため、より効率よく洗浄面50Fを解凍できる。
【0056】
さらに、事前解凍工程において、制御部44は、一方のホイルブラシ50の中心ノズル56と周囲ノズル58とのそれぞれからの解凍液の噴射の間、他方のホイルブラシ50の中心ノズル56と周囲ノズル58とのそれぞれからの解凍液の噴射を停止してもよい。以上により、一方のホイルブラシ50の各ノズルからの解凍液が、他方のホイルブラシ50の各ノズルからの解凍液に衝突しにくくなる。したがって、一方のホイルブラシ50の各ノズルからの解凍液が、他方のホイルブラシ50の洗浄面50Fに到達しやすくなるため、より効率よく洗浄面50Fを解凍できる。
【0057】
上述の通り、事前解凍工程において、制御部44は、各ホイルブラシ50同士の距離を待機状態WSよりも近接させた状態において、各ホイルブラシ50の洗浄面50Fの解凍を実行する。換言すれば、制御部44は、各ホイルブラシ50同士の距離が所定値以下のときに、制御対象となる中心ノズル56と周囲ノズル58とを制御して解凍液を噴射させる。
【0058】
上記構成により、各ホイルブラシ50の各ノズルからの解凍液を、他方のホイルブラシ50の洗浄面50Fにより強く当てることができ、ホイルブラシ50の洗浄面50Fをより効率的に解凍できる。また、上記構成により、各ホイルブラシ50の各ノズルからの解凍液が、ホイルブラシ50の周囲に飛散することを低減できる。これにより、各ホイルブラシ50の各ノズルからの解凍液がホイルブラシ50の周囲に付着することを低減し、ひいては、ホイルブラシ50の周囲における解凍液の凍結を低減できる。
【0059】
ここまで、事前解凍工程において各ホイルブラシ50の洗浄面50Fを解凍する方法について説明したが、事前解凍工程においては、他の洗浄部の解凍が実行されてもよい。例えば、事前解凍工程においては、トップブラシ14、サイドブラシ16、またはロッカーブラシ18を含む、ホイルブラシ50以外のブラシに解凍液を噴射することにより、これらのブラシの解凍動作を実行してもよい。当該構成により、ホイルブラシ50以外のブラシを含む他の洗浄部の解凍を、ホイルブラシ50の解凍と並行して実行できるため、洗車機2全体としての解凍時間を短縮することができる。
【0060】
トップブラシ14、サイドブラシ16、またはロッカーブラシ18への解凍液の噴射は、これらのブラシによる洗浄工程において、洗浄液として市水または洗浄剤を噴射するノズルから、各ブラシに向けて解凍液を噴射することにより実現してもよい。あるいは、各ホイルブラシ50が備えるノズルからの解凍液が、トップブラシ14、サイドブラシ16、またはロッカーブラシ18にもかかるようにすることにより、これらのブラシの解凍動作を実現してもよい。
【0061】
<洗浄工程>
事前解凍工程において、例えば、一定時間だけ各ホイルブラシ50の各ブラシからの解凍液の噴射を行った後、
図4に示すように、制御部44は、洗車機本体4を制御して、車両Xを洗浄する(ステップS6)、洗浄工程に移行する。洗浄工程において、制御部44は、洗車機本体4を車両Xに対し前後方向に移動させつつ、洗車機本体4の洗浄部を動作させて、車両Xを洗浄する。
【0062】
本実施形態において、洗浄工程は事前解凍工程に引き続いて実行されるため、洗浄工程の開始時、車両Xは洗車機本体4の正面側に位置する。また、
図2の概略側面2Sに示すように、洗車機本体4は、ホイルブラシ50よりも正面側、換言すれば、ホイルブラシ50よりも車両Xに近い側に、トップブラシ14、サイドブラシ16、およびロッカーブラシ18を含む。
【0063】
このため、洗浄工程においては、ホイルブラシ50による車両Xの洗浄よりも先に、トップブラシ14、サイドブラシ16、およびロッカーブラシ18による車両Xの洗浄が実行されてもよい。トップブラシ14、サイドブラシ16、およびロッカーブラシ18による車両Xの洗浄は、制御部44が従来公知の制御内容により洗車機本体4を車両Xに対し相対移動させつつ各ブラシを動作させることにより実行されてもよい。
【0064】
洗浄工程のホイルブラシ50による車両Xの洗浄を実施しない期間において、制御部44は、ホイルブラシ50を待機状態WSに維持する。例えば、制御部44は、事前解凍工程から洗浄工程への移行の際に、各ブラシ支持部60を制御し、各ホイルブラシ50を各フレーム8の側に移動させてもよい。これにより、2つのホイルブラシ50の洗浄面50Fの間の距離が上述したW1となり、上述した距離WXよりも長くなるため、洗車機本体4の車両Xに対する相対移動の間のホイルブラシ50と車両Xとの干渉を低減する。
【0065】
ここで、各ホイルブラシ50が待機状態WSにある間、各ホイルブラシ50は補助ノズル82の下方に位置する。特に、
図6のステップS6-2に示すように、各ホイルブラシ50の側表面50Sは、補助ノズル82の噴射範囲82Rに含まれる。
【0066】
洗浄工程において、ホイルブラシ50が待機状態WSにある場合、制御部44は、補助ノズル82から解凍液を噴射させて、ホイルブラシ50の側表面50Sへ解凍液を噴射させる。これにより、制御部44は、解凍工程の一つとして、ホイルブラシ50の側表面50Sの解凍を、洗浄工程の一部の期間に実行する。
【0067】
補助ノズル82からの解凍液をホイルブラシ50の側表面50Sへ噴射する間、制御部44はホイルブラシ50をブラシシャフト64の回りに回動させてもよい。これにより、側表面50Sに補助ノズル82からの解凍液がより均一に噴射され、側表面50Sがより効率的に解凍される。
【0068】
洗車機本体4が車両Xの後側に向かって移動しつつ車両Xを洗浄することにより、進入方向DAにおいて、ホイルブラシ50と車両Xの前側のタイヤホイルXTとが重なる位置まで洗車機本体4が移動する。ここで、
図6のステップS6-4に示すように、制御部44は、ブラシ支持部60を制御し、ホイルブラシ50を車両Xに向けて移動させ、車両Xと当接させる。これにより、ホイルブラシ50の洗浄面50Fは、車両Xの前側のタイヤホイルXTの外側面と当接する。
【0069】
制御部44は、さらに、ホイルブラシ50の洗浄面50Fと車両Xの前側のタイヤホイルXTの外側面とが当接した状態において、ホイルブラシ50をブラシシャフト64の回りに回動させる。これにより、制御部44は、ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄を実行する。制御部44は、ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄の間、洗車機本体4を車両Xに対し静止させてもよい。
【0070】
制御部44は、ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄の間、ホイルブラシ50をブラシシャフト64の回りに回動させつつ、ホイルブラシ50の中心ノズル56と周囲ノズル58とのそれぞれから洗浄液を噴射させてもよい。中心ノズル56と周囲ノズル58とのそれぞれからの洗浄液は、中心ノズル56と周囲ノズル58とのそれぞれから噴射される解凍液と同一であってもよく、あるいは、洗剤等を含んでいてもよい。
【0071】
ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄が完了した後、制御部44は、ブラシ支持部60を制御し、ホイルブラシ50をフレーム8に向けて移動させて、ホイルブラシ50を待機状態WSとする。次いで、制御部44は、洗車機本体4を車両Xの後側に向かって移動させつつ洗浄部を制御することにより、車両Xの洗浄を再開する。
【0072】
さらに、洗車機本体4が車両Xの後側に向かって移動しつつ車両Xを洗浄することにより、進入方向DAにおいて、ホイルブラシ50と車両Xの後側のタイヤホイルXTとが重なる位置まで洗車機本体4が移動する。ここで、制御部44は、ホイルブラシ50により車両Xの前側のタイヤホイルXTの洗浄の際のホイルブラシ50の制御内容と同一の制御内容にてホイルブラシ50を制御し、ホイルブラシ50による車両Xの後側のタイヤホイルXTの洗浄を実行する。
【0073】
この後、上述した制御と同一の内容の制御により、制御部44は、ホイルブラシ50を待機状態WSとし、洗車機本体4を車両Xの後側に向かって移動させつつ洗浄部を制御することにより、車両Xの洗浄を再開する。洗車機本体4により、車両Xの背面まで洗浄が完了した後、制御部44は、洗車機本体4を車両Xの前側に向かって移動させつつ洗浄部を制御することにより、車両Xの洗浄を行ってもよい。
【0074】
また、制御部44は、進入方向DAにおいて、ホイルブラシ50と車両Xの前側のタイヤホイルXTとが重なる度に、ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄を実行してもよい。さらに、補助ノズル82からの解凍液をホイルブラシ50の側表面50Sへ噴射することによるホイルブラシ50の側表面50Sの解凍動作は、洗浄工程の期間のうち、ホイルブラシ50が待機状態WSにある場合に適宜実行されてもよい。
【0075】
この後、洗車機本体4により、車両Xの前面まで再度洗浄が完了した後、制御部44は、洗車機本体4を車両Xの後側に向かって移動させつつ各ブロアを制御し車両Xに対する送風を制御することにより、車両Xの乾燥を行ってもよい。この後、洗車機本体4による車両Xの背面までの乾燥が完了することにより、洗浄工程が完了する。
【0076】
<まとめ>
本実施形態に係る洗車機2は、中心ノズル56および周囲ノズル58または補助ノズル82からの解凍液をホイルブラシ50に対し噴射させる。これにより、洗車機2は、ホイルブラシ50の解凍動作を実行できる。特に、洗車機2の制御部44が、上述した制御方法に基づいて洗車機2を制御することにより、洗車機2は、ホイルブラシ50の解凍動作を実行できる。
【0077】
例えば、洗車機2は、ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄を実行する前にホイルブラシ50の解凍動作を実行することにより、ホイルブラシ50上に発生した氷を除去した状態において、ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄を実行できる。あるいは、洗車機2は、車両Xの洗浄工程の実行期間にホイルブラシ50の解凍動作を実行することにより、車両Xの洗浄工程の間におけるホイルブラシ50に付着した市水等の液体の氷結を低減できる。したがって、洗車機2は、より適切にホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄を実行できる。
【0078】
特に、一般に、タイヤホイルXTは車両Xの下部側に位置するため、タイヤホイルXTには泥等の汚れが多く付着しやすい傾向にある。このため、厳冬期等、ホイルブラシ50上の水分の氷結等が生じやすい場合においても、タイヤホイルXTの洗浄を適切に実行できることは、車両Xの清浄性維持の観点から好ましい。したがって、洗車機2は、厳冬期等においても、ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄を停止することを避けられるため、より効果的に車両Xを洗浄できる。
【0079】
ここで、ホイルブラシ50による車両Xの洗浄の際に車両Xと当接する洗浄面50Fの法線方向は、ホイルブラシ50の回転軸50Aの軸方向と略同一方向である。換言すれば、ホイルブラシ50は、車両Xの表面のうち、タイヤホイルXTの外表面を含む、法線が回転軸50Aと平行な面を含む表面を洗浄する。このように、車両の表面のうち、法線が回転軸と平行な面を含む表面を洗浄するブラシの洗浄面は、一般に、ブラシの回動に関わらず常に車両側を向いている。
【0080】
例えば、トップブラシ14、サイドブラシ16、およびロッカーブラシ18は、洗浄する表面の平面方向が回転軸と略平行であり、換言すれば、車両の表面のうち、法線が回転軸と略直交する面を洗浄する。このようなブラシは、当該ブラシの回動により、車両と接する洗浄面が面する方向を、車両側からフレーム側に変更することができる。このため、各フレームに備えられたノズルから、各ブラシの洗浄面に解凍液を噴射しつつ、各ブラシを回動させることにより、各ブラシの洗浄面の解凍が比較的容易に実行できる。
【0081】
一方、ホイルブラシ50のように、ブラシ回動に関わらず常に車両側を向いているブラシの洗浄面の解凍は、当該ブラシが位置するフレームに備えられたノズルからの解凍液の噴射によって実現することは困難である。例えば、上記ブラシの洗浄面の解凍を解凍液の噴射により効率的に実行するためには、当該ブラシが位置するフレームとは反対側のフレーム側から洗浄面に解凍液を噴射する必要がある。
【0082】
本実施形態においては、各フレーム8に形成された左右一対のホイルブラシ50のそれぞれが、中心ノズル56と周囲ノズル58とを含む第1ノズルを備える。これにより、一方のホイルブラシ50の洗浄面50Fの解凍を、他方のホイルブラシ50が備える各ノズルからの解凍液の噴射により実行できる。ゆえに、本実施形態に係る洗車機2は、ホイルブラシ50の洗浄面50Fをより簡素な構成により解凍できる。ホイルブラシ50の洗浄面50Fを解凍することにより、洗車機2は、ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTを含む車両Xの表面の洗浄をより適切に実行できる。
【0083】
また、本実施形態においては、ホイルブラシ50が待機状態WSにある場合、ホイルブラシ50の側周囲側に位置する補助ノズル82から噴射された解凍液により、ホイルブラシ50の側表面50Sの解凍が可能である。上記構成により、洗車機2は、洗浄工程等、2つのフレーム8の間に車両Xが位置する場合においても、ホイルブラシ50の解凍動作を実行できる。
【0084】
<補遺>
本実施形態において、第1ノズルである中心ノズル56および周囲ノズル58はホイルブラシ50に備えられる。これにより、中心ノズル56および周囲ノズル58をホイルブラシ50と別体として形成する場合と比較して、洗車機2の構造がより簡素となる。また、上記構成により、ホイルブラシ50の洗浄面50Fと中心ノズル56および周囲ノズル58とがより近接する。したがって、中心ノズル56および周囲ノズル58から洗浄液を噴射しつつ、ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄を実行する場合、上記構成により、ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄より効果的となる。
【0085】
本実施形態において、ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄と、ホイルブラシ50の洗浄面50Fの解凍とは、何れも、第1ノズルから液体を噴射しつつ、ホイルブラシ50をブラシシャフト64の回りに回動させることにより実現する。したがって、ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄とホイルブラシ50の洗浄面50Fの解凍とにおいて、ホイルブラシ50の制御内容の一部は共通であってもよい。これにより、ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄時におけるホイルブラシ50の制御内容の一部を、ホイルブラシ50の洗浄面50Fの解凍時におけるホイルブラシ50の制御内容に流用でき、後者の設計を容易化できる。
【0086】
制御部44は、補助ノズル82からの解凍液をホイルブラシ50の側表面50Sに噴射させる際、ホイルブラシ50によるタイヤホイルXTの洗浄時におけるホイルブラシ50の回動速度よりも遅い回動速度にて、ホイルブラシ50を回動させてもよい。これにより、ホイルブラシ50に付着した解凍液による十分な解凍が実現する前にホイルブラシ50の回転に伴い生じる遠心力によって解凍液が振り落されることを低減し、解凍効果が低下することを防止できる。さらに、上記構成により、ホイルブラシ50に付着した解凍液がホイルブラシ50の回動により周囲に散乱することを低減する。したがって、上記構成により、洗車機2は、ホイルブラシ50から周囲に散乱した解凍液が、ホイルブラシ50の周囲において凍結することを低減できる。
【0087】
本実施形態において、ホイルブラシ50への解凍液の噴射が、車両Xの洗車の受付から車両Xの洗浄の完了までの間に実行される例について説明した。しかし、本実施形態に係る洗車機2は、車両Xの洗浄の完了から、次の車両Xの洗車の受付までの間に、ホイルブラシ50へ解凍液を噴射し、ホイルブラシ50の解凍を実行してもよい。
【0088】
例えば、制御部44は、車両Xの洗浄の完了から、次の車両Xの洗車の受付までの間に、上述した事前解凍工程における制御内容と同一の制御内容にて洗車機本体4を制御することにより、ホイルブラシ50の解凍を実行してもよい。あるいは、制御部44は、車両Xの洗浄の完了から、次の車両Xの洗車の受付までの間に、補助ノズル82からの解凍液を待機状態WSにあるホイルブラシ50の側表面50Sに噴射させてもよい。これらの解凍動作は、車両Xの洗浄の完了から、次の車両Xの洗車の受付までの間に、間欠的に実行されてもよい。
【0089】
また、制御部44は、車両Xの洗車の受付の完了後、事前解凍工程の実施の要否、および、洗浄工程の間におけるホイルブラシ50の解凍動作の実施の要否を判断してもよい。例えば、洗車機2の周囲の気温が所定以上である場合に、制御部44はホイルブラシ50の解凍動作が不要であると判断してもよい。また、前回のホイルブラシ50の解凍動作完了からの経過時間が所定時間以下である、または、前回の洗車完了からの経過時間が所定時間以下である場合において、制御部44はホイルブラシ50の解凍動作が不要であると判断してもよい。さらに、制御部44は、上述した条件を複数組み合わせてホイルブラシ50の解凍動作の要否の判断を行ってもよい。制御部44は、ホイルブラシ50の解凍動作の要否を、例えば、操作パネル42の操作等による設定に基づいて判断してもよい。制御部44が、ホイルブラシ50の解凍動作が不要であると判断した場合に、制御部44は、上述した事前解凍工程または洗浄工程の間におけるホイルブラシ50の解凍動作の実施を省略してもよい。
【0090】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された異なる技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
2 洗車機
4 洗車機本体
8 フレーム
44 制御部
50 ホイルブラシ
50A 回転軸
50F 洗浄面
50S 側表面
56 中心ノズル
58 周囲ノズル
82 補助ノズル