(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】回転電機用のバスバモジュール
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
H02K3/50 A
(21)【出願番号】P 2021124637
(22)【出願日】2021-07-29
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】柏田 知一
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-176214(JP,A)
【文献】特開2014-176209(JP,A)
【文献】特開2013-106369(JP,A)
【文献】特開2015-070632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機を構成するステータのコイルに電気的に接続される回転電機用のバスバモジュールであって、
前記回転電機の軸線方向、周方向、及び径方向を、それぞれ第1方向、第2方向、及び第3方向とするとき、
前記第1方向において互いに間隔をあけて配置されるとともに、前記第2方向において並んで配置される複数のバスバと、
電気絶縁性の樹脂により形成されて前記複数のバスバを覆う保持部材と、を備え、
前記複数のバスバは、
前記第1方向に延びるとともに電源と電気的に接続される第1接続部と、
前記第3方向に延びるとともに前記電源からの電力を前記ステータに供給する第2接続部と、
前記第1接続部と前記第2接続部との間において前記第2方向に延びる中間部と、をそれぞれ有する第1バスバ、第2バスバ、及び第3バスバを含んでおり、
前記保持部材は、
前記第1バスバ及び前記第2バスバを覆うとともに前記第1バスバと前記第2バスバとの間に介在する第1保持部と、
前記第1保持部及び前記第3バスバを覆う第2保持部と、を有しており、
前記第3バスバは、前記第1保持部に当接して
おり、
前記第3バスバの前記中間部は、前記第1方向及び前記第2方向に延びる板状であり、
前記第1保持部は、
前記第3バスバの前記第1接続部及び前記中間部のうち少なくとも一方の前記第1方向の一端面が当接される当接面を有するベース部と、
前記当接面の前記第3方向の両側において前記ベース部から突出するとともに前記第3バスバの前記第1接続部及び前記中間部のうち少なくとも一方を挟む突起と、を有している、
回転電機用のバスバモジュール。
【請求項2】
前記第1バスバ、前記第2バスバ、及び前記第3バスバのうち少なくとも1つは、前記第1方向に貫通する貫通孔を有しており、
前記保持部材は、前記貫通孔と前記第1方向において連通する連通孔を有している、
請求項
1に記載の回転電機用のバスバモジュール。
【請求項3】
前記第1バスバ、前記第2バスバ、及び前記第3バスバは、それぞれ前記貫通孔を有している、
請求項
2に記載の回転電機用のバスバモジュール。
【請求項4】
前記連通孔は、前記第1保持部に形成された第1孔と、前記第2保持部に形成された第2孔と、を有しており、
前記第2孔は、前記第1方向において前記第1孔と連通している、
請求項
2または請求項
3に記載の回転電機用のバスバモジュール。
【請求項5】
前記複数のバスバは、前記コイルの中性線と電気的に接続される第4バスバを含んでおり、
前記第1保持部は、前記第3バスバの前記第1接続部及び前記中間部のうち少なくとも一方の前記第1方向の一端面が当接される第1当接面と、前記第1方向において前記第1当接面とは反対側に位置するとともに、前記第4バスバが当接される第2当接面と、を有するベース部を備えており、
前記第2保持部は、前記第4バスバを覆っている、
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の回転電機用のバスバモジュール。
【請求項6】
前記第3バスバの前記第1接続部は、前記第2方向及び前記第3方向の双方において、前記第1バスバの前記第1接続部と前記第2バスバの前記第1接続部との間に位置しており、
前記第1保持部は、前記第1バスバ及び前記第2バスバの双方の前記第1接続部を覆っており、
前記第3バスバの前記中間部は、前記第1接続部から前記第2方向の一側に延びており、
前記第3バスバは、前記第1接続部の基端から前記第2方向において前記第3バスバの前記中間部とは反対側に延びる延在部を有しており、
前記第3バスバの前記中間部は、前記第1保持部のうち前記第1バスバ及び前記第2バスバのいずれか一方を覆う部分に前記第3方向において当接しており、
前記延在部は、前記第1保持部のうち前記第1バスバ及び前記第2バスバの他方を覆う部分に前記第3方向において当接している、
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の回転電機用のバスバモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機用のバスバモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転電機用のステータに用いられるバスバユニットが開示されている。このバスバユニットは、ステータのコイルに電気的に接続されるバスバと、バスバを保持する樹脂製の保持部材とを有している。
【0003】
コイルは、第1相コイル、第2相コイル、及び第3相コイルの3つの相コイルから構成されている。
バスバは、第1相コイルに接続される第1バスバ、第2相コイルに接続される第2バスバ、第3相コイルに接続される第3バスバ、及びコイルの中性線に接続される中性線バスバを有している。
【0004】
保持部材は、第1バスバ、第2バスバ、第3バスバ、及び中性線バスバを一体的に保持している。
こうしたバスバユニットは、保持部材を成形する成形型内に各バスバをインサートした状態で、同成形型と各バスバとによって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填することにより成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、こうした回転電機用のバスバユニット(以下、バスバモジュール)においては、保持部材が各バスバ間に介在することでバスバ同士が絶縁されている。しかしながら、バスバ同士の間の隙間の断面積が小さい場合には、当該隙間を溶融樹脂が流れにくくなる。これにより、キャビティのうちバスバを挟んで上記隙間とは反対側の流路の断面積が当該隙間の断面積に比べて大きい場合には、当該隙間を流れる溶融樹脂の流動圧力と、当該流路を流れる溶融樹脂の流動圧力とに差が生じる。そのため、こうした圧力差によって、バスバが正規の位置からずれやすいといった問題がある。
【0007】
本開示の目的は、バスバの位置ずれを抑制できる回転電機用のバスバモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の回転電機用のバスバモジュールは、回転電機を構成するステータのコイルに電気的に接続されるバスバモジュールであって、前記回転電機の軸線方向、周方向、及び径方向を、それぞれ第1方向、第2方向、及び第3方向とするとき、前記第1方向において互いに間隔をあけて配置されるとともに、前記第2方向において並んで配置される複数のバスバと、電気絶縁性の樹脂により形成されて前記複数のバスバを覆う保持部材と、を備え、前記複数のバスバは、前記第1方向に延びるとともに電源と電気的に接続される第1接続部と、前記第3方向に延びるとともに前記電源からの電力を前記ステータに供給する第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間において前記第2方向に延びる中間部と、をそれぞれ有する第1バスバ、第2バスバ、及び第3バスバを含んでおり、前記保持部材は、前記第1バスバ及び前記第2バスバを覆うとともに前記第1バスバと前記第2バスバとの間に介在する第1保持部と、前記第1保持部及び前記第3バスバを覆う第2保持部と、を有しており、前記第3バスバは、前記第1保持部に当接している。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、バスバの位置ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、回転電機用のバスバモジュールの一実施形態について、ステータに取り付けられたバスバモジュールを示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のバスバモジュールについて示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のバスバモジュールについて示す下面図である。
【
図4】
図4は、
図1のバスバモジュールについて、第1バスバ及び第2バスバを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1のバスバモジュールについて、第3バスバを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1のバスバモジュールについて、第4バスバを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1のバスバモジュールについて、一次モールド体を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1のバスバモジュールについて、一次モールド体を示す下面図である。
【
図9】
図9は、
図1のバスバモジュールについて、第1成形型のキャビティ内に溶融樹脂が充填された状態を示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図1のバスバモジュールについて、一次モールド体、第3バスバ、及び第4バスバを分解して示す分解斜視図である。
【
図11】
図11は、
図1のバスバモジュールについて、一次モールド体に第3バスバ及び第4バスバを取り付けた状態を示す平面図である。
【
図12】
図12は、
図1のバスバモジュールについて、一次モールド体に第3バスバ及び第4バスバを取り付けた状態を示す下面図である。
【
図13】
図13は、
図1のバスバモジュールについて、第2成形型のキャビティ内に溶融樹脂が充填された状態を示す断面図である。
【
図14】
図14は、
図1のバスバモジュールについて、第2成形型のキャビティ内に溶融樹脂が充填された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の回転電機用のバスバモジュールは、
[1]回転電機を構成するステータのコイルに電気的に接続される回転電機用のバスバモジュールであって、前記回転電機の軸線方向、周方向、及び径方向を、それぞれ第1方向、第2方向、及び第3方向とするとき、前記第1方向において互いに間隔をあけて配置されるとともに、前記第2方向において並んで配置される複数のバスバと、電気絶縁性の樹脂により形成されて前記複数のバスバを覆う保持部材と、を備え、前記複数のバスバは、前記第1方向に延びるとともに電源と電気的に接続される第1接続部と、前記第3方向に延びるとともに前記電源からの電力を前記ステータに供給する第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間において前記第2方向に延びる中間部と、をそれぞれ有する第1バスバ、第2バスバ、及び第3バスバを含んでおり、前記保持部材は、前記第1バスバ及び前記第2バスバを覆うとともに前記第1バスバと前記第2バスバとの間に介在する第1保持部と、前記第1保持部及び前記第3バスバを覆う第2保持部と、を有しており、前記第3バスバは、前記第1保持部に当接している。
【0012】
同構成によれば、まず、第1バスバ及び第2バスバを第1成形型にインサートした状態で、第1成形型のキャビティ内に溶融樹脂を充填することにより、第1バスバ、第2バスバ、及び第1保持部から構成される一次モールド体が形成される。このとき、第1バスバ、第2バスバ、及び第3バスバを成形型にインサートした状態で、成形型のキャビティ内に溶融樹脂を充填する場合に比べて、バスバ同士の間の間隔が大きくできる。これにより、溶融樹脂の流動圧力に差が生じることが抑制される。したがって、第1バスバ及び第2バスバの位置ずれが抑制される。
【0013】
次に、一次モールド体及び第3バスバを第2成形型にインサートした状態で、第2成形型のキャビティ内に溶融樹脂を充填することにより、一次モールド体、第3バスバ、及び第2保持部から構成される二次モールド体が形成される。このとき、第3バスバは第1保持部に当接しているため、第3バスバと第1保持部との間には隙間がない。このため、第3バスバと第1保持部との間を溶融樹脂が流れなくなる。これにより、第3バスバと第1保持部との間に隙間がある状態で溶融樹脂を充填する場合に比べて、第3バスバの位置ずれが抑制される。
【0014】
したがって、バスバの位置ずれを抑制できる。
[2]前記第3バスバの前記中間部は、前記第1方向及び前記第2方向に延びる板状であり、前記第1保持部は、前記第3バスバの前記第1接続部及び前記中間部のうち少なくとも一方の前記第1方向の一端面が当接される当接面を有するベース部と、前記当接面の前記第3方向の両側において前記ベース部から突出するとともに前記第3バスバの前記第1接続部及び前記中間部のうち少なくとも一方を挟む突起と、を有していることが好ましい。
【0015】
同構成によれば、二次モールド体を形成する際に、溶融樹脂の流動圧力により第3方向において第3バスバが第1保持部、すなわち一次モールド体に対して相対移動することが突起により規制される。したがって、第3バスバの位置ずれを一層抑制できる。
【0016】
[3]前記第1バスバ、前記第2バスバ、及び前記第3バスバのうち少なくとも1つは、前記第1方向に貫通する貫通孔を有しており、前記保持部材は、前記貫通孔と前記第1方向において連通する連通孔を有していることが好ましい。
【0017】
例えば、第1バスバ及び第2バスバが貫通孔を有しており、第1保持部がこれらの貫通孔にそれぞれ連通する連通孔を有している構成においては、以下の製造方法を採用することができる。すなわち、第1成形型が型締めされる際に、第1バスバ及び第2バスバの各々の貫通孔に位置決め用のピンが挿通される。この状態で、溶融樹脂を第1成形型のキャビティ内に充填する。これにより、第1バスバ及び第2バスバの位置ずれをより一層抑制できる。このとき、第1保持部には、貫通孔の各々に連通する連通孔が形成される。
【0018】
また、例えば第3バスバが貫通孔を有しており、第2保持部がこの貫通孔に連通する連通孔を有している構成においては、以下の製造方法を採用することができる。すなわち、第2成形型が型締めされる際に、第3バスバの貫通孔に位置決め用のピンが挿通される。この状態で、溶融樹脂を第2成形型のキャビティ内に充填する。これにより、第3バスバの位置ずれをより一層抑制できる。このとき、第2保持部には、貫通孔に連通する連通孔が形成される。
【0019】
したがって、上記構成によれば、第1バスバ、第2バスバ、及び第3バスバのうち少なくとも1つの位置ずれをより一層抑制できる。
[4]前記第1バスバ、前記第2バスバ、及び前記第3バスバは、それぞれ前記貫通孔を有していることが好ましい。
【0020】
同構成によれば、第1バスバ、第2バスバ、及び第3バスバの位置ずれをより一層抑制できる。
[5]前記連通孔は、前記第1保持部に形成された第1孔と、前記第2保持部に形成された第2孔と、を有しており、前記第2孔は、前記第1方向において前記第1孔と連通していることが好ましい。
【0021】
第2保持部に形成された第2孔が、第1保持部に形成された第1孔と連通している構成においては、以下の製造方法を採用することができる。すなわち、第2成形型が型締めされる際に、一次モールド体を構成する第1バスバ及び第2バスバのうち少なくとも一方に設けられた貫通孔及び同貫通孔に連通する第1孔に、位置決め用のピンが挿通される。したがって、上記構成によれば、一次モールド体を形成する際に用いた貫通孔及び第1保持部に形成された第1孔を、二次モールド体を形成する際に利用することができる。
【0022】
[6]前記複数のバスバは、前記コイルの中性線と電気的に接続される第4バスバを含んでおり、前記第1保持部は、前記第3バスバの前記第1接続部及び前記中間部のうち少なくとも一方の前記第1方向の一端面が当接される第1当接面と、前記第1方向において前記第1当接面とは反対側に位置するとともに、前記第4バスバが当接される第2当接面と、を有するベース部を備えており、前記第2保持部は、前記第4バスバを覆っていることが好ましい。
【0023】
同構成によれば、一次モールド体、第3バスバ、及び第4バスバを第2成形型にインサートした状態で、第2成形型のキャビティ内に溶融樹脂を充填することにより、一次モールド体、第3バスバ、第4バスバ、及び第2保持部から構成される二次モールド体が形成される。このとき、第4バスバは第1保持部に当接しているため、第4バスバと第1保持部との間には隙間がない。このため、第4バスバと第1保持部との間を溶融樹脂が流れなくなる。これにより、第4バスバと第1保持部との間に隙間がある状態で溶融樹脂を充填する場合に比べて、第4バスバの位置ずれを抑制できる。
【0024】
[7]前記第3バスバの前記第1接続部は、前記第2方向及び前記第3方向の双方において、前記第1バスバの前記第1接続部と前記第2バスバの前記第1接続部との間に位置しており、前記第1保持部は、前記第1バスバ及び前記第2バスバの双方の前記第1接続部を覆っており、前記第3バスバの前記中間部は、前記第1接続部から前記第2方向の一側に延びており、前記第3バスバは、前記第1接続部の基端から前記第2方向において前記第3バスバの前記中間部とは反対側に延びる延在部を有しており、前記第3バスバの前記中間部は、前記第1保持部のうち前記第1バスバ及び前記第2バスバのいずれか一方を覆う部分に前記第3方向において当接しており、前記延在部は、前記第1保持部のうち前記第1バスバ及び前記第2バスバの他方を覆う部分に前記第3方向において当接していることが好ましい。
【0025】
同構成によれば、第1バスバ及び第2バスバの双方の第1接続部と、第3バスバの中間部及び延在部との間には、第1保持部が介在している。したがって、第1バスバ及び第2バスバと、第3バスバとが電気的に絶縁される。
【0026】
また、二次モールド体を形成する際に、溶融樹脂の流動圧力により第3方向において第3バスバが第1保持部、すなわち一次モールド体に対して相対移動することが、第1保持部のうち第1バスバ及び第2バスバの双方の第1接続部を覆う部分により規制される。したがって、バスバの位置ずれを一層抑制できる。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の回転電機用のバスバモジュールの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本明細書における「直交」は厳密に直交の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね直交の場合も含まれる。
【0028】
<バスバモジュール94の全体構成>
図1から
図3に示すように、バスバモジュール94は、例えばハイブリッド車両や電動車両におけるモータジェネレータ等の回転電機90に使用されるものである。
【0029】
回転電機90は、複数のスロット(図示略)が形成されたステータコア92及び同スロットに挿入されたコイル93を備える筒状のステータ91と、ステータ91の径方向内側に配置されるロータ(図示略)とから構成されている。なお、本実施形態では、回転電機90は、3相交流で駆動されるものである。コイル93は、3相(U相、V相、及びW相)のそれぞれに対応する3つの相コイルから構成されている。
【0030】
バスバモジュール94は、ステータ91の軸線方向の一端部に配置されるとともに、コイル93に電気的に接続されている。
なお、以降において、回転電機90の軸線方向、周方向、及び径方向を、それぞれ第1方向X、第2方向Y、及び第3方向Zとして説明する。
【0031】
また、第1方向Xにおいて、ステータ91に対してバスバモジュール94が配置される側を第1方向一側X1とし、その反対側を第1方向他側X2として説明する。
また、第3方向Zにおいて、回転電機90の中心軸線側を第3方向内側Z1とし、その反対側を第3方向外側Z2として説明する。
【0032】
バスバモジュール94は、コイル93に電気的に接続される第1バスバ10、第2バスバ20、第3バスバ30、及び第4バスバ40と、各バスバ10,20,30,40を覆う保持部材50と、温度センサ80とを備えている。
【0033】
温度センサ80は、コイル93に電気的に接続されたバスバの温度を検出することによりコイル93の温度を検知するものであり、温度検知部81と、温度検知部81から延びる電線82とを備えている。温度検知部81には、例えばサーミスタが設けられている。温度センサ80は、バスバモジュール94の第2方向Yの一側の端部に設けられている。
【0034】
次に、バスバモジュール94の各構成について詳細に説明する。
<第1バスバ10、第2バスバ20の構成>
図4に示すように、第1バスバ10及び第2バスバ20は、導電性の金属板材により形成されている。
【0035】
第1バスバ10及び第2バスバ20は、第2方向Yの他側から一側に向けて順に配置されている。第1バスバ10及び第2バスバ20は、第2方向Yにおいて間隔をあけて並んでいる。
【0036】
なお、以降では、第2方向Yにおいて第1バスバ10に対して第2バスバ20側を第2方向一側Y1とし、その反対側を第2方向他側Y2として説明する。
バスバ10,20は、図示しない電源と電気的に接続される第1接続部11,21と、同電源からの電力をステータ91に供給する第2接続部12,22とを有している。
【0037】
また、バスバ10,20は、第1接続部11,21と第2接続部12,22との間において第2方向Yに延びる中間部13,23を有している。
中間部13,23の第2方向他側Y2の端部13a,23aは、先端が屈曲して第3方向内側Z1に延びている。
【0038】
第1接続部11,21は、中間部13,23の第2方向一側Y1の端部に設けられている。第1接続部11,21は、中間部13,23の上記端部の第3方向内側Z1の端面から突出するとともに、先端が立ち上がって第1方向一側X1に延びている。第1接続部11,21は、第1方向Xと、第1方向X及び第3方向Zの双方に直交する方向とに延びる平板状である。
【0039】
第2接続部12,22は、中間部13,23の端部13a,23aから第3方向Zに延びている。第2接続部12,22は、第3方向Zにおいて端部13a,23a側に位置する平板状の平板部12a,22aと、先端側に位置する棒状の端子部12b,22bとを有している。端子部12b,22bは、平板部12a,22aの第3方向内側Z1の端面のうち最も第2方向他側Y2に位置する部分から突出している。なお、本実施形態では、端子部12bが、コイル93のうちU相に対応するコイルの動力線(図示略)に接続される部分である。また、端子部22bが、コイル93のうちW相に対応するコイルの動力線(図示略)に接続される部分である。
【0040】
平板部12a,22aには、それぞれ第1方向Xに貫通する貫通孔14,24が設けられている。
<第3バスバ30の構成>
図5に示すように、第3バスバ30は、導電性の金属板材により形成されている。
【0041】
第3バスバ30は、図示しない電源と電気的に接続される第1接続部31と、同電源からの電力をステータ91に供給する第2接続部32とを有している。
また、第3バスバ30は、第1接続部31と第2接続部32との間において第2方向Yに延びる中間部33と、第1接続部31から第2方向Yにおいて中間部33とは反対側に延びる延在部35とを有している。
【0042】
第1接続部31は、第1方向Xと、第1方向X及び第3方向Zの双方に直交する方向とに延びる平板状である。
中間部33は、第1接続部31の第2方向一側Y1の端面のうち最も第1方向他側X2に位置する部分から第2方向Yに延びている。中間部33の第2方向一側Y1の端部33aは、第1方向他側X2に屈曲するとともに、先端が第3方向内側Z1に延びている。
【0043】
第2接続部32は、中間部33の端部33aから第3方向内側Z1に延びている。第2接続部32は、第3方向Zにおいて端部33a側に位置する平板状の平板部32aと、先端側に位置する棒状の端子部32bとを有している。端子部32bは、平板部32aの第3方向内側Z1の端面のうち最も第2方向他側Y2に位置する部分から突出している。なお、本実施形態では、端子部32bが、コイル93のうちV相に対応するコイルの動力線(図示略)に接続される部分である。
【0044】
平板部32aには、第1方向Xに貫通する貫通孔34が設けられている。
延在部35は、第1接続部31の第2方向他側Y2の端面のうち最も第1方向他側X2に位置する部分から第2方向Yに延びている。延在部35の第2方向他側Y2の端部35aは、第1方向他側X2に屈曲するとともに、先端が第3方向外側Z2に延びている。
【0045】
<第4バスバ40の構成>
図6に示すように、第4バスバ40は、導電性の金属板材により形成されている。
第4バスバ40は、コイル93の中性点を形成するものであり、第2方向Yに延びる本体部41と、本体部41から突出するとともに、コイル93の中性線(図示略)に接続される3つの第3接続部43A,43B,43Cとを有している。
【0046】
本体部41の第2方向一側Y1の端部には、先端が折り返されて形成された折り返し部42が設けられている。
折り返し部42は、第2方向Yに延びる基端部42a、基端部42aの先端から屈曲する屈曲部42b、及び屈曲部42bの先端から基端部42aに沿って延びる先端部42cを有している。
【0047】
屈曲部42bの第1方向一側X1の端面が、温度センサ80の温度検知部81の先端部が当接する部分である。すなわち、温度センサ80の温度検知部81は、第4バスバ40の温度を検出するものである。
【0048】
屈曲部42bの第2方向一側Y1の端面には、第2方向Yに突出する一対の突部から構成されるとともに、温度検知部81に形成された突部(図示略)が嵌合する凹部42dが設けられている。
【0049】
第3接続部43A,43B,43Cは、第2方向他側Y2から第2方向一側Y1に向けて順に並んでいる。第3接続部43A,43B,43Cは、第2方向Yにおいて互いに等間隔に並んでいる。
【0050】
第3接続部43A,43Bは、本体部41の第3方向内側Z1の端面から突出している。第3接続部43A,43Bは、第3方向Zにおいて本体部41側に位置する平板状の平板部43aと、先端側に位置する棒状の端子部43bとを有している。端子部43bは、平板部43aの第3方向内側Z1の端面のうち最も第2方向他側Y2に位置する部分から突出している。
【0051】
第3接続部43Cは、折り返し部42の先端部42cの先端に設けられている。第3接続部43Cは、先端部42cの第3方向内側Z1の端面から突出している。第3接続部43Cは、先端部42c側に位置するとともに第2方向Yに延びる基部43cと、先端側に位置する棒状の端子部43dとを有している。端子部43dは、基部43cの突端から第3方向内側Z1に突出している。第3接続部43Cは、全体としてL字状である。
【0052】
なお、本実施形態では、端子部43b,43dが、コイル93の中性線(図示略)に接続される部分である。
第3接続部43A,43Bの平板部43aには、第1方向Xに貫通する貫通孔44が設けられている。
【0053】
<保持部材50の基本構成>
図2から
図8に示すように、保持部材50は、電気絶縁性を有する樹脂材料により形成されており、バスバ10,20,30,40及び温度センサ80を覆っている。
【0054】
保持部材50は、第1バスバ10及び第2バスバ20を覆うとともに両バスバ10,20との間に介在する第1保持部51と、第1保持部51、第3バスバ30、第4バスバ40、及び温度センサ80の温度検知部81を覆う第2保持部56とを有している。
【0055】
また、保持部材50は、貫通孔14,24,34,44と第1方向Xにおいて連通する複数の連通孔70を有している。連通孔70は、第1保持部51に形成された第1孔71と、第2保持部56に形成された第2孔72とを有している。
【0056】
次に、保持部材50の各構成について詳細に説明する。
<第1保持部51の構成>
図4、
図7及び
図8に示すように、第1保持部51は、ベース部52と、第1接続部11,21を覆う第1囲繞部53と、第2接続部12,22を覆う第2囲繞部54と、突起60とを有している。
【0057】
ベース部52は、第2方向Yに延びるとともに、第1バスバ10及び第2バスバ20の中間部13,23の全体を一括して覆っている。
図7及び
図10に二点鎖線で示すように、ベース部52は、第3バスバ30の第1接続部31、中間部33、及び延在部35の各々の第1方向他側X2の端面が当接される第1当接面C1を有している。第1当接面C1は、ベース部52の第1方向一側X1の端面52aに設けられている。
【0058】
図8及び
図12に示すように、ベース部52の第1方向他側X2(
図8の紙面直交方向における手前側)の端面52bには、第4バスバ40が嵌合する嵌合凹部55が形成されている。嵌合凹部55の底面は、第4バスバ40の第1方向一側X1の端面が当接される第2当接面C2を構成している。
【0059】
図4及び
図7に示すように、第1囲繞部53は、ベース部52から第1方向一側X1に延びるとともに、第1接続部11,21の基端側を覆っている。第1接続部11,21の先端側は、外方に露出している(
図7参照)。
【0060】
図4及び
図8に示すように、第2囲繞部54は、ベース部52から第3方向内側Z1に延びるとともに、第2接続部12,22の平板部12a,22aを覆っている。第2接続部12,22の端子部12b,22bは、外方に露出している(
図8参照)。
【0061】
各第2囲繞部54には、第1孔71が1つずつ形成されている。各第1孔71は、第1バスバ10の貫通孔14と、第2バスバ20の貫通孔24とに第1方向Xにおいて連通している。
【0062】
図7に示すように、突起60は、第1当接面C1の第3方向Zの両側においてベース部52から第1方向一側X1に突出している。突起60は、第3方向内側Z1に位置する一対の第1突起61と、第3方向外側Z2に位置する第2突起62とを有している。
【0063】
一対の第1突起61は、ベース部52の第3方向内側Z1の端面52cから突出している。第1突起61同士は、第2方向Yにおいて互いに間隔をあけて並んでいる。一対の第1突起61の第1方向Xにおける基端側は、第2接続部22を覆う第2囲繞部54の外面に連なっている。
【0064】
第2突起62は、ベース部52の端面52aから第1方向Xに突出するとともに、第2方向Yに延びている。
<第2保持部56の構成>
図2及び
図3に示すように、第2保持部56は、ベース部57と、第3バスバ30の一部を覆う第3囲繞部58と、温度センサ80の温度検知部81を支持する支持部59とを有している。
【0065】
図2から
図8に示すように、ベース部57は、第2方向Yに延びるとともに、第3バスバ30の端部33a,35a及び第2接続部32の一部を覆っている。また、ベース部57は、第1保持部51の第1方向他側X2の端面を覆うとともに、第4バスバ40の本体部41、折り返し部42、及び第3接続部43A,43B,43Cの一部を覆っている。詳しくは、ベース部57は、第2接続部32の平板部32a、第3接続部43A,43Bの平板部43a、及び第3接続部43Cの基部43cを覆っている。バスバ30,40の端子部32b,43b,43dは、外方に露出している(
図2及び
図3参照)。
【0066】
図3に示すように、ベース部57には、第2孔72が4つ形成されている。
図2から
図6に示すように、各第2孔72は、第2バスバ20の貫通孔24、第3バスバ30の貫通孔34、及び第4バスバ40の2つの貫通孔44と第1方向Xにおいて連通している。貫通孔24に連通する第2孔72は、第1孔71とも第1方向Xにおいて連通している。
【0067】
図2及び
図5に示すように、第3囲繞部58は、ベース部57から第1方向一側X1に延びている。第3囲繞部58は、第3バスバ30の第1接続部31の基端側と、第1接続部31から延びる中間部33及び延在部35のうち第1方向X及び第2方向Yの双方に延びる部分とを覆っている。第1接続部31の先端側は、外方に露出している(
図2参照)。
【0068】
図2及び
図6に示すように、支持部59は、ベース部57の第2方向一側Y1の端部に設けられている。支持部59は、折り返し部42の屈曲部42bに温度センサ80の温度検知部81の先端部が当接した状態で屈曲部42b及び温度検知部81の先端部を一括して覆っている(
図2参照)。
【0069】
第2保持部56には、複数の孔73が形成されている。複数の孔73は、第2孔72とは第1方向Xにおいて重ならない位置に設けられている。
<バスバモジュール94の製造方法>
次に、
図9から
図14を参照して、バスバモジュール94の製造方法について説明する。なお、
図9は、
図8の9-9線に沿った断面図に対応する図であり、
図13及び
図14は、
図11の13-13線及び14-14線に沿った断面図に対応する図である。
【0070】
まず、
図9に示すように、第2バスバ20の貫通孔24に位置決め用のピン114を挿通させる。また、図示は省略するが、第1バスバ10の貫通孔14に位置決め用のピン114を挿通させる。この状態で、第1成形型110の上型111及び下型112を型締めする。これにより、第1成形型110にインサートされた第1バスバ10及び第2バスバ20がキャビティ113に対して位置決めされる。
【0071】
続いて、第1成形型110のキャビティ113内に溶融樹脂R1を充填する。これにより、第1バスバ10、第2バスバ20、及び第1保持部51から構成される一次モールド体94aが形成される。このとき、第1保持部51には、貫通孔14,24の各々に連通する第1孔71が形成される。
【0072】
次に、
図10に示すように、第3バスバ30及び第4バスバ40を一次モールド体94aに取り付ける。
図10及び
図11に示すように、第3バスバ30をベース部52の端面52aに取り付けるべく、第3バスバ30の第1接続部31をベース部52から突出する一対の第1突起61と、第2突起62との間に挿入する。そして、第3バスバ30の第1接続部31、中間部33、及び延在部35の各々の第1方向他側X2の端面がベース部52の第1当接面C1に当接するまで第3バスバ30の挿入を進める。これにより、第3バスバ30が一次モールド体94aに取り付けられる。
【0073】
このとき、第3バスバ30の第1接続部31は、一対の第1突起61及び第2突起62に当接している。また、第3バスバ30の第1接続部31は、第2方向Y及び第3方向Zの双方において第1バスバ10の第1接続部11と第2バスバ20の第1接続部21との間に位置している。第3バスバ30の中間部33は、2つの第1囲繞部53のうち第2バスバ20の第1接続部21を覆う方に第3方向外側Z2から当接している。第3バスバ30の延在部35は、2つの第1囲繞部53のうち第1バスバ10の第1接続部11を覆う方に第3方向内側Z1から当接している。
【0074】
図10及び
図12に示すように、第4バスバ40をベース部52の第1方向他側X2の端面52bに形成された嵌合凹部55に取り付ける。これにより、第4バスバ40が一次モールド体94aに対して正規の取り付け位置に位置決めされる。このとき、ベース部52の第2当接面C2(
図8参照)に対して第4バスバ40の第1方向一側X1の端面が当接した状態となっている。
【0075】
なお、このとき、第3バスバ30と、第1バスバ10及び第2バスバ20と、第4バスバ40とは、第1方向Xにおいて互いに間隔をあけて配置された状態となっている(
図13及び
図14参照)。
【0076】
次に、
図13に示すように、第2バスバ20の貫通孔24に位置決め用のピン124を挿通させる。また、図示は省略するが、第3バスバ30及び第4バスバ40の貫通孔34,44に位置決め用のピン124を挿通させる。この状態で、
図13及び
図14に示すように、第2成形型120の上型121及び下型122を型締めする。このとき、一次モールド体94a、第3バスバ30、第4バスバ40、及び温度検知部81は、第1方向Xの両側から各バスバ10,20,30,40及び温度検知部81を挟む複数の治具(図示略)によって固定されている。これにより、第2成形型120にインサートされた一次モールド体94a、第3バスバ30、第4バスバ40及び温度検知部81がキャビティ123に対して位置決めされる。
【0077】
続いて、第2成形型120のキャビティ123内に溶融樹脂R2を充填する。これにより、一次モールド体94a、第3バスバ30、第4バスバ40、第2保持部56、及び温度センサ80から構成される二次モールド体94bが形成される。このとき、
図13に示すように、第2保持部56には、貫通孔24及び貫通孔24に連通する第1孔71と、貫通孔34と、2つの貫通孔44とにそれぞれ連通する第2孔72が形成される。
【0078】
また、
図2に示すように、第2保持部56には、上記複数の治具(図示略)により複数の孔73が形成される。
なお、このとき、第2接続部12、第3接続部43A、第2接続部22、第3接続部43B、第2接続部32、及び第3接続部43Cは、第2方向他側Y2から第2方向一側Y1にかけて順に配置されるとともに、第2方向Yにおいて互いに等間隔に並んでいる。
【0079】
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、第1バスバ10及び第2バスバ20を第1成形型110にインサートした状態で、第1成形型110のキャビティ113内に溶融樹脂R1を充填する。これにより、第1バスバ10、第2バスバ20、及び第1保持部51から構成される一次モールド体94aが形成される。このとき、第1バスバ10、第2バスバ20、第3バスバ30、及び第4バスバ40を成形型にインサートした状態で、成形型のキャビティ内に溶融樹脂を充填する場合に比べて、バスバ10,20同士の間の間隔が大きくできる。これにより、溶融樹脂R1の流動圧力に差が生じることが抑制される。
【0080】
次に、一次モールド体94a、第3バスバ30、及び第4バスバ40を第2成形型120にインサートした状態で、第2成形型120のキャビティ123内に溶融樹脂R2を充填する。これにより、一次モールド体94a、第3バスバ30、第4バスバ40、及び第2保持部56から構成される二次モールド体94bが形成される。このとき、第3バスバ30及び第4バスバ40は第1保持部51に当接しているため、第3バスバ30と第1保持部51との間及び第4バスバ40と第1保持部51との間には隙間がない。このため、第3バスバ30と第1保持部51との間及び第4バスバ40と第1保持部51との間を溶融樹脂R2が流れなくなる。
【0081】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)保持部材50は、第1バスバ10及び第2バスバ20を覆うとともに第1バスバ10と第2バスバ20との間に介在する第1保持部51と、第1保持部51、第3バスバ30、及び第4バスバ40を覆う第2保持部56とを有している。第3バスバ30は、第1保持部51に当接している。
【0082】
こうした構成によれば、上述した作用を奏する。したがって、バスバ10,20,30の位置ずれを抑制できる。
(2)第3バスバ30の中間部33は、第1方向X及び第2方向Yに延びる板状である。第1保持部51は、第3バスバ30の第1接続部31、中間部33、及び延在部35の各々の第1方向他側X2の端面が当接される第1当接面C1を有するベース部52を有している。また、第1保持部51は、第1当接面C1の第3方向Zの両側においてベース部52から突出するとともに第3バスバ30の第1接続部31を挟む突起60を有している。
【0083】
こうした構成によれば、二次モールド体94bを形成する際に、溶融樹脂R2の流動圧力により第3方向Zにおいて第3バスバ30が第1保持部51、すなわち一次モールド体94aに対して相対移動することが突起60により規制される。したがって、第3バスバ30の位置ずれを一層抑制できる。
【0084】
(3)第1バスバ10、第2バスバ20、第3バスバ30、及び第4バスバ40は、それぞれ貫通孔14,24,34,44を有している。保持部材50は、貫通孔14,24,34,44と第1方向Xにおいて連通する連通孔70を有している。
【0085】
こうした構成によれば、第1成形型110が型締めされる際に、第1バスバ10及び第2バスバ20の各々の貫通孔14,24に位置決め用のピン114が挿通される。この状態で、溶融樹脂R1を第1成形型110のキャビティ113内に充填する。これにより、第1バスバ10及び第2バスバ20の位置ずれをより一層抑制できる。このとき、第1保持部51には、貫通孔14,24の各々に連通する連通孔70が形成される。
【0086】
また、第2成形型120が型締めされる際に、第3バスバ30及び第4バスバ40の各々の貫通孔34,44に位置決め用のピン124が挿通される。この状態で、溶融樹脂R2を第2成形型120のキャビティ123内に充填する。これにより、第3バスバ30及び第4バスバ40の位置ずれをより一層抑制できる。このとき、第2保持部56には、貫通孔34,44に連通する連通孔70が形成される。
【0087】
したがって、第1バスバ10、第2バスバ20、第3バスバ30、及び第4バスバ40の位置ずれをより一層抑制できる。
(4)連通孔70は、第1保持部51に形成された複数の第1孔71と、第2保持部56に形成された複数の第2孔72とを有している。複数の第2孔72のうちの1つは、貫通孔24と連通する第1孔71と第1方向Xにおいて連通している。
【0088】
こうした構成によれば、第2成形型120が型締めされる際に、一次モールド体94aを構成する第2バスバ20に設けられた貫通孔24及び貫通孔24に連通する第1孔71に、位置決め用のピン124が挿通される。したがって、一次モールド体94aを形成する際に用いた貫通孔24及び第1保持部51に形成された第1孔71を、二次モールド体94bを形成する際に利用することができる。
【0089】
(5)第1保持部51は、ベース部52を備えている。ベース部52は、第3バスバ30の第1接続部31、中間部33、及び延在部35の各々の第1方向他側X2の端面が当接される第1当接面C1を有している。また、ベース部52は、第1方向Xにおいて第1当接面C1とは反対側に位置するとともに、第4バスバ40が当接される第2当接面C2を有している。第2保持部56は、第4バスバ40を覆っている。
【0090】
こうした構成によれば、一次モールド体94a、第3バスバ30、及び第4バスバ40を第2成形型120にインサートした状態で、第2成形型120のキャビティ123内に溶融樹脂R2を充填することにより、二次モールド体94bが形成される。このとき、第4バスバ40は第1保持部51に当接しているため、第4バスバ40と第1保持部51との間には隙間がない。このため、第4バスバ40と第1保持部51との間を溶融樹脂R2が流れなくなる。これにより、第4バスバ40と第1保持部51との間に隙間がある状態で溶融樹脂R2を充填する場合に比べて、第4バスバ40の位置ずれを抑制できる。
【0091】
(6)第3バスバ30の第1接続部31は、第2方向Y及び第3方向Zの双方において、第1バスバ10の第1接続部11と第2バスバ20の第1接続部21との間に位置している。第1保持部51の第1囲繞部53は、第1バスバ10及び第2バスバ20の双方の第1接続部11、21を覆っている。第3バスバ30の中間部33は、第1接続部31から第2方向一側Y1に延びている。第3バスバ30は、第1接続部31の基端から第2方向Yにおいて第3バスバ30の中間部33とは反対側に延びる延在部35を有している。第3バスバ30の中間部33は、第1保持部51のうち第2バスバ20の第1接続部21を覆う第1囲繞部53に第3方向Zにおいて当接している。延在部35は、第1保持部51のうち第1バスバ10の第1接続部11を覆う第1囲繞部53に第3方向Zにおいて当接している。
【0092】
こうした構成によれば、第1バスバ10及び第2バスバ20の双方の第1接続部11、21と、第3バスバ30の中間部33及び延在部35との間には、第1保持部51のうち第1囲繞部53が介在している。したがって、第1バスバ10及び第2バスバ20と、第3バスバ30とが電気的に絶縁される。
【0093】
また、二次モールド体94bを形成する際に、溶融樹脂R2の流動圧力により第3方向Zにおいて第3バスバ30が一次モールド体94aに対して相対移動することが、第1接続部11,21を覆う第1囲繞部53により規制される。したがって、第3バスバ30の位置ずれを一層抑制できる。
【0094】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0095】
・温度センサ80は、本実施形態で例示したように、バスバモジュール94の第2方向一側Y1の端部に設けられるものに限定されず、その配置は、バスバモジュール94のステータ91への搭載要件によって適宜変更してもよい。例えば、温度センサ80をバスバモジュール94の第2方向他側Y2の端部に設けてもよいし、第2方向Yにおけるバスバモジュール94の中央に設けるようにしてもよい。
【0096】
・温度センサ80を省略してもよい。この場合、第2保持部56から支持部59を省略することができる。
・各バスバ10,20,30,40の形状は、本実施形態で例示したものに限定されず、ステータ91への搭載要件に合わせて適宜変更してもよい。例えば、第3バスバ30から延在部35を省略してもよいし、第4バスバ40から折り返し部42を省略してもよい。また、こうした変更に伴って、バスバモジュール94の第2接続部12,22,32及び第3接続部43A,43B,43Cの配置を適宜変更してもよい。
【0097】
・第4バスバ40の数は、本実施形態で例示したように1つに限定されず、例えば2つ以上であってもよい。また、第4バスバ40を省略してもよい。この場合、第1保持部51の端面52bから嵌合凹部55を省略することができる。
【0098】
・第2保持部56は、貫通孔14及び貫通孔14に連通する第1孔71と第1方向Xにおいて連通する第2孔72を有するものであってもよい。この場合、第2保持部56から貫通孔24及び貫通孔24に連通する第1孔71と第1方向Xにおいて連通する第2孔72を省略することができる。
【0099】
・第2保持部56は、本実施形態で例示したように第1方向Xにおいて第1孔71と連通する第2孔72を有するものに限定されない。すなわち、第2保持部56から第1方向Xにおいて第1孔71と連通する第2孔72を省略してもよい。
【0100】
・貫通孔14,24,34,44の数及び配置は、本実施形態で例示したものに限定されず、各バスバ10,20,30,40の形状に合わせて適宜変更してもよい。
・連通孔70は、第2孔72を有するものに限定されない。すなわち、第2保持部56から第2孔72を省略してもよい。この場合、第3バスバ30及び第4バスバ40から貫通孔34,44を省略することができる。また、この場合、二次モールド体94bを形成する際には、例えば第1方向Xの両側から第3バスバ30及び第4バスバ40を治具により挟むようにすればよい。このとき、第2保持部56には、上記治具により孔73が形成される。なお、こうした場合であっても、孔73は、元々の第2孔72と同一の位置に設けられることが好ましい。こうした構成によれば、第3バスバ30及び第4バスバ40の第2接続部32及び第3接続部43A,43B,43Cが正規の位置からずれることを抑制できる。
【0101】
・第1孔71を省略してもよい。この場合、第1バスバ10及び第2バスバ20から貫通孔14,24を省略することができる。また、この場合、一次モールド体94aを形成する際には、例えば第1方向Xの両側から第1バスバ10及び第2バスバ20を治具により挟むようにすればよい。このとき、第1保持部51には上記治具により孔73が形成される。なお、こうした場合であっても、孔73は、元々の第1孔71と同一の位置に設けられることが好ましい。こうした構成によれば、第1バスバ10及び第2バスバ20の第2接続部12,22が正規の位置からずれることを抑制できる。
【0102】
・保持部材50から孔73を省略してもよい。詳しくは、保持部材50が成形された後に孔73を別の樹脂部材により埋めるようにしてもよい。
・突起60の形状は、本実施形態で例示した形状に限定されない。例えば、突起60は、第1突起61を1つ有するものであってもよいし、複数の第2突起62が第2方向Yに間隔をあけて並ぶものであってもよい。
【0103】
・突起60の数は、本実施形態で例示したように1つに限定されない。例えば、複数の突起60が第1当接面C1の延在方向に沿って間隔をあけて並ぶものであってもよい。この場合、突起60は、第3バスバ30の第1接続部31のみを第3方向Zの両側から挟むものに限定されず、第3バスバ30の第1接続部31及び中間部33のうち少なくとも一方を第3方向Zの両側から挟むものであればよい。
【0104】
・第1当接面C1は、本実施形態で例示したように、第3バスバ30の第1接続部31、中間部33、及び延在部35の各々の第1方向他側X2の端面が当接するものに限定されない。例えば、第1当接面C1は、第1接続部31及び中間部33のうち少なくとも一方が当接するものであればよい。
【0105】
・複数のバスバの配置は、本実施形態で例示したものに限定されず、ステータ91への搭載要件に合わせて適宜変更することができる。この場合であっても、複数のバスバが第1方向Xにおいて互いに間隔をあけて配置されるとともに、第2方向Yにおいて並んで配置されるものであればよい。
【符号の説明】
【0106】
C1 第1当接面
C2 第2当接面
R1,R2 溶融樹脂
X 第1方向
X1 一側
X2 他側
Y 第2方向
Y1 一側
Y2 他側
Z 第3方向
Z1 内側
Z2 外側
10 第1バスバ
11 第1接続部
12 第2接続部
12a 平板部
12b 端子部
13 中間部
13a 端部
14 貫通孔
20 第2バスバ
21 第1接続部
22 第2接続部
22a 平板部
22b 端子部
23 中間部
23a 端部
24 貫通孔
30 第3バスバ
31 第1接続部
32 第2接続部
32a 平板部
32b 端子部
33 中間部
33a 端部
34 貫通孔
35 延在部
35a 端部
40 第4バスバ
41 本体部
42 折り返し部
42a 基端部
42b 屈曲部
42c 先端部
42d 凹部
43A,43B,43C 第3接続部
43a 平板部
43b 端子部
43c 基部
43d 端子部
44 貫通孔
50 保持部材
51 第1保持部
52 ベース部
52a 端面
52b 端面
52c 端面
53 第1囲繞部
54 第2囲繞部
55 嵌合凹部
56 第2保持部
57 ベース部
58 第3囲繞部
59 支持部
60 突起
61 第1突起
62 第2突起
70 連通孔
71 第1孔
72 第2孔
73 孔
80 温度センサ
81 温度検知部
82 電線
90 回転電機
91 ステータ
92 ステータコア
93 コイル
94 バスバモジュール
94a 一次モールド体
94b 二次モールド体
110 第1成形型
111 上型
112 下型
113 キャビティ
114 ピン
120 第2成形型
121 上型
122 下型
123 キャビティ
124 ピン