(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】光学部材
(51)【国際特許分類】
G02B 5/04 20060101AFI20241217BHJP
B60R 1/04 20060101ALI20241217BHJP
B60R 1/10 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G02B5/04 F
B60R1/04 H
B60R1/10
(21)【出願番号】P 2021158057
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 裕次郎
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩
【審査官】南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-143087(JP,A)
【文献】特開2015-231766(JP,A)
【文献】特開2007-011149(JP,A)
【文献】特開2015-020669(JP,A)
【文献】特開2005-199844(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02309319(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00
B60R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する導光体(12)で構成され、外景を表す外景光を前記導光体の内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記導光体の外面に含まれ、前記導光体の外部から前記外景光が入射し、一方向(D1)に対して交差する入射面(15)と、
前記導光体の外面に含まれ、前記入射面に対し前記一方向の一方側に配置され、前記一方向に並んで設けられた複数の平坦面(161)と複数のプリズム部(162)とを有する第1面(16)と、
前記導光体の外面に含まれ、前記入射面に対し前記一方向の前記一方側に配置され、前記導光体において前記第1面に対する反対側に設けられた第2面(25)とを備え、
前記複数の平坦面はそれぞれ、前記一方向に平行な面として形成され、前記導光体の内部に入射した前記外景光を前記第2面に向けて反射し、
前記第2面は、前記複数の平坦面が反射した前記外景光を前記第1面に向けて反射し、
前記複数のプリズム部はそれぞれ、前記入射面に平行な射出面(162a)を有し、
前記射出面は、前記第2面で反射された前記外景光を前記導光体の外部へ射出し、
前記第2面は、前記一方向の前記一方側ほど前記第1面から離れるように前記平坦面に対し傾斜している、光学部材。
【請求項2】
前記導光体は、前記入射面と前記第1面とを有する導光部材(14)と、前記導光部材と同じ屈折率を備え前記第2面を有する調整部(24)とを有し、
前記導光部材は、前記平坦面と平行な平滑面(17)を有し、
前記調整部は、前記平滑面に対しインデックスマッチングされて連結されている、請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
前記調整部は、前記導光部材と同じ屈折率を有する液体で満たされており、前記調整部の屈折率を前記導光部材と同じに維持しながら伸縮可能に構成され、前記第2面と前記平滑面との成す角度(ζ)を前記調整部の伸縮に伴って変化させる、請求項2に記載の光学部材。
【請求項4】
前記第1面は、前記第2面に対し、前記平坦面の法線方向である平坦面法線方向(D2)の一方側に設けられ、
前記外景光は、前記導光体の外部に配置される或る外景点(G)から前記入射面に入射する所定光線(Ls)を含み、
前記外景点は、前記導光体に対する前記平坦面法線方向の前記一方側とは反対側の他方側、かつ、複数の前記射出面のうちの1つである特定射出面(162c)に交差する仮想直線(LN1)上に位置し、
前記所定光線は、前記導光体の内部で前記複数の平坦面の何れかと前記第2面とによって反射された上で前記特定射出面から前記仮想直線に沿った向きで前記導光体の外部へ射出する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光学部材。
【請求項5】
前記導光体は空気中に配置され、
前記複数の平坦面は、該複数の平坦面のうち前記所定光線が前記入射面から反射されずに到達するものを、特定平坦面(161a)として含み、
前記特定平坦面に対する前記所定光線の入射角をφとし、前記導光体の屈折率をnとした場合、前記導光体は、「sinφ>1/n」を満たす、請求項4に記載の光学部材。
【請求項6】
前記入射面は、前記平坦面法線方向の前記他方側ほど前記一方向の前記一方側に位置するように前記平坦面法線方向に対して傾いており、
前記所定光線が前記入射面に入射する際の入射方向(Di)は、該入射方向に平行な直線が前記平坦面法線方向の前記一方側ほど前記一方向の前記一方側に位置するように前記平坦面法線方向に対して傾いており、
前記複数の平坦面は、該複数の平坦面のうち前記所定光線が前記入射面から反射されずに到達するものを、特定平坦面(161a)として含み、
前記特定平坦面に対する前記所定光線の入射角をφとし、前記入射方向と前記平坦面法線方向との成す角度をθiとし、前記入射面と前記平坦面法線方向との成す角度をψとした場合、前記導光体は、「θi<φ」を満たし且つ「ψ<φ」を満たす、請求項4に記載の光学部材。
【請求項7】
前記第2面は、該第2面のうち、前記一方向の前記一方側とは反対側である他方側の端に位置する入射側端縁(251)を有し、
前記入射面は、前記入射面のうち前記平坦面法線方向の前記他方側の端に位置する他方端縁(152)を有し、前記入射側端縁に対し前記平坦面法線方向の前記一方側から前記他方側へ拡がるように形成され、
前記複数の平坦面は、該複数の平坦面のうち前記所定光線が前記入射面から反射されずに到達するものを、特定平坦面(161a)として含み、
前記入射面と前記平坦面とのそれぞれに対し直交する導光断面において、前記第2面の入射側端縁と前記入射面の他方端縁とを結ぶ仮想の線分(LN2)が前記平坦面法線方向に対して成す角度をξとし、前記特定平坦面に対する前記所定光線の入射角をφとした場合、前記導光体は、「ξ<φ」を満たす、請求項4に記載の光学部材。
【請求項8】
前記導光体は空気中に配置され、
前記所定光線が前記導光体の内部で前記第2面に反射される回数は1回であり、
前記入射面は、前記平坦面法線方向の前記他方側ほど前記一方向の前記一方側に位置するように前記平坦面法線方向に対して傾いており、
前記所定光線が前記入射面に入射する際の入射方向(Di)は、該入射方向に平行な直線が前記平坦面法線方向の前記一方側ほど前記一方向の前記一方側に位置するように前記平坦面法線方向に対して傾いており、
前記入射面と前記平坦面とのそれぞれに対し直交する導光断面において、前記複数の平坦面のうち前記所定光線が前記入射面から反射されずに到達する特定平坦面(161a)が前記所定光線を反射する反射点(PA)と、前記特定平坦面で反射されてから前記特定射出面に到達した前記所定光線と該特定射出面とが交差する交点(PB)との前記一方向に沿った距離をHとし、前記導光体に対する前記平坦面法線方向の前記一方側かつ前記仮想直線上に位置するアイポイント(EP)と前記外景点との距離をDとし、前記一方向に対し前記第2面が傾斜する角度をζとし、前記入射方向と前記平坦面法線方向との成す角度をθiとし、前記入射面と前記平坦面法線方向との成す角度をψとし、前記導光体の屈折率をnとした場合、「ζ=1/2×[arccos{cos(θi+ψ+arcsin(H×cosθi/D))/n}+arcsin{cos(ψ+θi)/n}-π/2]」という関係が成立する、請求項4に記載の光学部材。
【請求項9】
前記第2面は、該第2面のうち、前記一方向の前記一方側とは反対側である他方側の端に位置する入射側端縁(251)を有し、
前記複数の平坦面は、該複数の平坦面のうち前記所定光線が前記入射面から反射されずに到達するものを、特定平坦面(161a)として含み、
前記入射面と前記平坦面とのそれぞれに対し直交する導光断面において、前記特定平坦面に対する前記所定光線の入射角をφとし、前記所定光線が前記導光体の内部で前記第2面に反射される回数をmとし、前記入射側端縁と前記平坦面との前記平坦面法線方向に沿った距離をTとし、前記第2面が前記一方向に占める幅をWxとした場合、前記導光体は、「Wx≧m×2×T×tanφ」を満たす、請求項4に記載の光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を透過する導光体に入射した光をその導光体の内部で反射させて導光する光学部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の光学部材としては、例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1に記載の光学部材は、透光性の樹脂材料からなる導光体と、半透過平面ミラーと、平面ミラーと、複数のプリズムが形成されたプリズムシートとを有している。
【0003】
その導光体は、外景光が入射する入射面と、その入射面から入射した外景光が最初に到達する第1面と、その第1面に対する反対側に設けられた第2面とを有している。そして、その導光体の第1面には半透過平面ミラーが密着固定され、第2面には平面ミラーが密着固定されている。そのため、半透過平面ミラーと平面ミラーは導光体を挟んで互いに対向する。また、その半透過平面ミラーと平面ミラーは互いに平行に配置されている。
【0004】
プリズムシートは、半透過平面ミラーに対し導光体側とは反対側に配置され、その半透過平面ミラーに密着固定されている。
【0005】
このような構成から、特許文献1の光学部材では、入射面から入射した外景光の一部が半透過平面ミラーで第2面へ反射され、半透過平面ミラーで反射された光は、平面ミラーで第1面へ反射される。そして、半透過平面ミラーで反射されなかった光の残部は、半透過平面ミラーに吸収され、或いは半透過平面ミラーを透過する。その半透過平面ミラーを透過した光は複数のプリズムの射出面から外部へと射出される。このプリズムの射出面は、導光体の入射面と平行になっている。
【0006】
これにより、入射面から導光体の内部に入射した外景光は、入射面とは異なる第1面に設けられた複数のプリズムを通して広範囲に射出される。そして、その複数のプリズムから射出された光を視認するユーザは、ユーザに対し光学部材を挟んだ反対側に位置する外景を、特許文献1の光学部材を介して視認することができる。例えば、この光学部材は、所定の障害物に配置され、その障害物に遮られてユーザが直接視認できない死角領域の外景をそのユーザに視認させる死角補助装置として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、特許文献1の光学部材では、導光体の入射面と複数のプリズムの射出面は平行であり、半透過平面ミラーと平面ミラーも平行である。そのため、プリズムの射出面から射出した外景光(すなわち、射出光)の光路は、導光体の入射面に入射する直前の外景光の光路と平行になる。要するに、その射出光は、入射面に入射する直前の外景光を平行移動させた光になる。その結果、死角領域の外景を特許文献1の光学部材を介して見るユーザには、その死角領域の外景が実際の位置からずれた位置にあるように見える。発明者らの詳細な検討の結果、以上のようなことが見出された。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、導光体を介してユーザに見せる外景が実際の位置に対しずれて見えることを抑制することが可能な光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の光学部材は、
光を透過する導光体(12)で構成され、外景を表す外景光を導光体の内部で反射させて導光する光学部材であって、
導光体の外面に含まれ、導光体の外部から外景光が入射し、一方向(D1)に対して交差する入射面(15)と、
導光体の外面に含まれ、入射面に対し上記一方向の一方側に配置され、上記一方向に並んで設けられた複数の平坦面(161)と複数のプリズム部(162)とを有する第1面(16)と、
導光体の外面に含まれ、入射面に対し上記一方向の一方側に配置され、導光体において第1面に対する反対側に設けられた第2面(25)とを備え、
複数の平坦面はそれぞれ、上記一方向に平行な面として形成され、導光体の内部に入射した外景光を第2面に向けて反射し、
第2面は、複数の平坦面が反射した外景光を第1面に向けて反射し、
複数のプリズム部はそれぞれ、入射面に平行な射出面(162a)を有し、
射出面は、第2面で反射された外景光を導光体の外部へ射出し、
第2面は、上記一方向の一方側ほど第1面から離れるように平坦面に対し傾斜している。
【0011】
このようにすれば、外景光が導光体を通ってユーザに届く場合、外景のうち導光体に対し導光体の第2面側に位置する或る外景点から入射面までの外景光の光路に対し、プリズム部の射出面からユーザのアイポイントまでの外景光の光路を傾けることができる。そして、その射出面からユーザのアイポイントまでの外景光の光路を導光体の第2面側に延長した直線を想定した場合、その想定した直線を、例えば第2面と平坦面とが平行である場合に比して上記外景点に近付けることができる。従って、外景のうち上記外景点を含む一部領域の位置ズレを抑制して、その外景の一部領域をユーザに見せることが可能である。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態において、光学部材が外景光を導光する状況を表す光学部材の断面と、導光体まわりの外景のうちの或る点である外景点と、ユーザのアイポイントとを示した図である。
【
図2】第1実施形態において、
図1と同じ光学部材の断面を拡大して示した断面図である。
【
図3】第1実施形態において、
図2のIII部分を拡大して示した部分断面図である。
【
図4】第1実施形態において、
図2のIV部分を拡大して示した部分断面図である。
【
図5】第1実施形態と対比される第1比較例において、光学部材の断面と外景点とユーザのアイポイントとを示した図であって、
図1に相当する図である。
【
図6】第1比較例において、
図5と同じ光学部材の断面を拡大して示した断面図であって、
図2に相当する図である。
【
図7】第2実施形態において、光学部材の概略構成を示した斜視図である。
【
図8】第2施形態において、光学部材の断面を示した断面図であって、
図2に相当する図である。
【
図9】第3施形態において、光学部材の断面を示した断面図であって、
図2に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、各実施形態を説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の光学部材10は、例えば、ユーザ90の視界を遮り死角を生じさせる障害物92に取り付けられる。そして、光学部材10は、その障害物92に起因してユーザ90の死角になった死角領域の光景をそのユーザ90に視認させる死角補助装置として機能する。
【0016】
光学部材10は、光を透過する導光体12で構成されており、外景を表す外景光を導光体12の内部で反射させて導光する。例えば光学部材10は車両に搭載され、そのような車載用途の場合には、光学部材10を搭載する車両のピラーなどに取り付けられる。そして、光学部材10は、障害物92であるそのピラーにより死角になる領域からの外景光をユーザ90側に導光し、車両の運転者であるユーザ90に死角領域の光景を視認させる。
【0017】
なお、
図1では、障害物92である車両のピラーが断面図示されている。また、
図1および後述の図では、理解しやすい図示とするために、光学部材10の断面ハッチングは省かれている。また、本実施形態で説明される角度の単位は、特に断りのない限り、[rad]である。
【0018】
図1、
図2に示すように、本実施形態の光学部材10を構成する導光体12は、第1方向D1に延伸し、第2方向D2を厚み方向とするように形成されている。その第1方向D1と第2方向D2は互いに交差する方向、厳密に言えば互いに垂直な方向である。
【0019】
また、
図1、
図2に示された断面は導光断面と称される。この導光断面に表される導光体12の断面形状は、第1方向D1と第2方向D2とのぞれぞれに対して垂直な第3方向D3(例えば、
図2の紙面奥行き方向)の何れの位置でも変化せず同じであり、導光体12はその第3方向D3にも延伸するように形成されている。なお、第1方向D1は本開示の一方向に対応し、第2方向D2は本開示の平坦面法線方向に対応する。
【0020】
導光体12は、障害物92に対し第2方向D2の一方側に配置され、ユーザ90に対し第2方向D2の他方側に配置される。そして、そのユーザ90は、導光体12および障害物92に対し第2方向D2の他方側に位置する死角領域の光景を導光体12を介して間接的に視認する。例えば、導光体12は車室内に設置されるので、空気中に配置される。
【0021】
導光体12は、導光部材14と調整部24とを含んで構成されている。その導光部材14と調整部24は何れも、例えば無色透明であり、光を透過する透光性を備えている。従って、導光体12も、例えば無色透明であり、透光性を備えている。
【0022】
導光部材14と調整部24は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル等の樹脂材料、またはガラスなど透明材料で構成されている。そして、導光部材14と調整部24は同じ材料で構成されている。従って、導光部材14の屈折率と調整部24の屈折率は同じであるので、導光体12の屈折率nは導光部材14の屈折率と調整部24の屈折率との何れとも同じである。なお、本実施形態の説明において、屈折率とは絶対屈折率を意味する。
【0023】
導光部材14は入射面15と第1面16と平滑面17と傾斜面18とを有し、調整部24は第2面25と対向面26とを有している。その入射面15と第1面16と傾斜面18と第2面25は、導光体12の外面に含まれる。
【0024】
導光体12の入射面15は、第1方向D1に対して交差する面であり、例えば平面状に形成されている。そして、入射面15は、第2方向D2の他方側ほど第1方向D1の一方側に位置するように第2方向D2に対して傾いている。この入射面15には、導光体12の外部から外景光が入射する。
【0025】
また、入射面15は、一方端縁151と他方端縁152とを有している。その一方端縁151は、入射面15のうち第2方向D2の一方側の端に位置し、他方端縁152は、入射面15のうち第2方向D2の他方側の端に位置する。
【0026】
導光体12の第1面16は、第1方向D1および上記第3方向D3に拡がる面であり、導光体12のうち第2方向D2の一方側に設けられている。また、第1面16は、入射面15に対し第1方向D1の一方側に配置されている。詳細には、第1面16は、その第1面16のうち第1方向D1の一方側とは反対側の他方側の端縁にて、入射面15の一方端縁151に連結している。
【0027】
また、第1面16は、第1方向D1に並んで設けられた複数の平坦面161と複数のプリズム部162とを有している。詳細には、平坦面161とプリズム部162は、第1方向D1に交互に並んで設けられている。この平坦面161は導光体12の内部の導光される光を反射するために設けられ、プリズム部162は、導光体12の内部の導光される光を射出するために設けられている。すなわち、平坦面161とプリズム部162は、導光体12の内部の導光される光を、第1面16で反射する反射光と第1面16を透過する透過光とに、第1面16の面積分割により分離する。
【0028】
なお、
図1、
図2の導光断面に表れる平坦面161とプリズム部162は、実際にはそれぞれ微細なものであるが、
図1、
図2の導光断面では、見やすい図示とするために、敢えて実際よりも大きく表示されている。
【0029】
複数の平坦面161はそれぞれ、第1方向D1および上記第3方向D3に平行な面として形成されている。例えば、第2方向D2に垂直な1つの平面を想定した場合、全ての平坦面161は、その想定した1つの平面に含まれる。すなわち、第2方向D2は、平坦面161の法線方向である。
【0030】
複数のプリズム部162は、平坦面161に対し第2方向D2の一方側へそれぞれ突き出ている。複数のプリズム部162はそれぞれ、
図1、
図2の導光断面において第2方向D2の一方側ほど第1方向D1の幅が狭くなる三角形断面形状を備えている。
図1、
図2から判るように、その導光断面とは、入射面15と平坦面161とのそれぞれに対し直交する平面で切断して得られる断面である。
【0031】
複数のプリズム部162は、上記のように三角形断面形状を備えているので、その三角形断面形状の頂点で互いに連結するプリズム射出面162aとプリズム他面162bとを有している。このプリズム射出面162aとプリズム他面162bは何れも、第2方向D2に対して傾斜した傾斜面となっている。
【0032】
詳細には、プリズム射出面162aは本開示の射出面に対応し、入射面15に平行な平面になっている。従って、
図3、
図4に示すように、プリズム射出面162aは、入射面15と同様、第2方向D2の他方側ほど第1方向D1の一方側に位置するように第2方向D2に対して傾いている。逆に、プリズム他面162bは、第2方向D2の他方側ほど第1方向D1の他方側に位置するように第2方向D2に対して傾いている。また、プリズム射出面162aは、入射面15に対し反対側を向いている。
【0033】
図1、
図2に示すように、導光体12の傾斜面18は、第1面16に対し第2方向D2の他方側に設けられている。すなわち、傾斜面18は、導光体12において第1面16に対する反対側に設けられている。
【0034】
また、傾斜面18は、第2方向D2の他方側ほど第1方向D1の他方側に位置するように第2方向D2に対して傾いている。傾斜面18は、入射面15に対し第1方向D1の一方側に配置されている。詳細には、傾斜面18は、その傾斜面18のうち第1方向D1の他方側の端縁にて、入射面15の他方端縁152に連結している。
【0035】
導光部材14の平滑面17は、第1方向D1および上記第3方向D3に平行な平面として形成されている。従って、平滑面17は、平坦面161と平行である。
【0036】
また、平滑面17は、第1面16に対し第2方向D2の他方側に設けられている。すなわち、平滑面17は、導光部材14において第1面16に対する反対側に設けられている。
【0037】
また、平滑面17は、傾斜面18に対し第1方向D1の一方側に配置されている。詳細には、傾斜面18が第1方向D1の一方側に有する端縁と、平滑面17が第1方向D1の他方側に有する端縁とが互いに連結している。
【0038】
調整部24は、導光部材14の平滑面17に対し第2方向D2の他方側に設けられている。調整部24の対向面26は、調整部24のうち第2方向D2の一方側に設けられ、第1方向D1および上記第3方向D3に平行な平面として形成されている。
【0039】
そして、対向面26は平滑面17に対し第2方向D2に対向し、平滑面17に対して接合されている。これにより、導光部材14と調整部24は一体となって導光体12を構成している。詳細には、調整部24は、導光部材14の平滑面17に対しインデックスマッチングされて連結されている。従って、導光体12の内部で進む光線は、屈折も反射もすることなく平滑面17および対向面26を通過することができる。
【0040】
導光体12の第2面25は、第1方向D1に対し僅かに傾斜した平面として形成されている。詳細には、第2面25は、第1方向D1の一方側ほど第2方向D2の他方側に位置するように第1方向D1に対して傾いている。すなわち、第2面25は、第1方向D1の一方側ほど第1面16から離れるように平坦面161に対し傾斜している。
【0041】
また、第2面25は、対向面26および第1面16に対し第2方向D2の他方側に設けられている。すなわち、第2面25は、導光体12において第1面16に対する反対側に設けられている。
【0042】
また、第2面25は、傾斜面18に対し第1方向D1の一方側に配置されているので、入射面15に対しても第1方向D1の一方側に配置されている。第2面25は入射側端縁251を有している。この入射側端縁251は、第2面25のうち第1方向D1の他方側の端に位置する。すなわち、入射側端縁251は、第2面25のうち入射面15側の端に位置する。本実施形態では、調整部24は、
図1、
図2の導光断面において三角形断面形状を有するので、第2面25の入射側端縁251は、対向面26が第1方向D1の他方側に有する端縁と一致する。そのため、第2面25の入射側端縁251は、平滑面17が第1方向D1の他方側に有する端縁とも一致する。そして、第2面25は、その第2面25の入射側端縁251にて、傾斜面18が第1方向D1の一方側に有する端縁に連結している。
【0043】
また、第2方向D2では、第2面25の入射側端縁251は、入射面15の一方端縁151と他方端縁152との間に位置している。すなわち、入射面15は、その入射側端縁251に対し第2方向D2の一方側から他方側へ拡がるように形成されている。言い換えると、入射面15の他方端縁152と平坦面161との第2方向D2に沿った距離Tdと、第2面25の入射側端縁251と平坦面161との第2方向D2に沿った距離Tは、「Td>T」の関係になっている。
【0044】
なお、本実施形態の説明では、入射面15の他方端縁152と平坦面161との第2方向D2に沿った距離Tdを入射面高さTdと称する。また、第2面25の入射側端縁251と平坦面161との第2方向D2に沿った距離Tは、平滑面17と平坦面161との第2方向D2に沿った距離と同じであり、本実施形態の説明では、導光部材厚みTと称する。
【0045】
図1、
図2に示すように、導光体12の外部から入射面15に入射しユーザ90のアイポイントEPへ届く外景光は、導光体12の外部に配置される或る点である外景点Gから入射面15に入射する所定光線Lsを含む。その所定光線Lsは、その外景点Gから入射面15に入射し、導光体12の内部を通ってユーザ90のアイポイントEPへ届く。ユーザ90のアイポイントEPとは、そのユーザ90の目の位置である。また、所定光線Lsは外景光に含まれるので、可視光線である。
【0046】
外景点Gは、ユーザ90に対する死角領域に含まれている。詳細には、外景点Gは、導光体12に対する第2方向D2の他方側に位置し、かつ、複数のプリズム射出面162aのうちの1つである特定射出面162c(
図4参照)に交差する仮想直線LN1上に位置する。一方、ユーザ90のアイポイントEPは、導光体12に対する第2方向D2の一方側に位置し、かつ、仮想直線LN1上に位置する。
【0047】
また、本実施形態の光学部材10は、車両に搭載される死角補助装置として機能するので、導光体12から外景点Gまでの距離は、模式図である
図1の図示とは異なり実際には、導光体12からアイポイントEPまでの距離と比較して格段に長い。
【0048】
また、所定光線Lsは、導光体12の内部で複数の平坦面161の何れかと第2面25とによって反射され、そのように反射された上で、プリズム部162の特定射出面162cから、仮想直線LN1に沿った向きで導光体12の外部へ射出する。言い換えると、所定光線Lsは、プリズム部162の特定射出面162cから、仮想直線LN1に沿ってユーザ90のアイポイントEPへ射出する。
【0049】
また、所定光線Lsは、導光体12で屈折または反射されて進むので、直進する複数の光線Li、L1、L2、L3、Loを有している。例えば本実施形態では、所定光線Lsは、入射前光線Li、第1光線L1、第2光線L2、第3光線L3、および射出光線Loを有している。その複数の光線Li、L1、L2、L3、Loは、所定光線Lsの光路の上流側から、入射前光線Li、第1光線L1、第2光線L2、第3光線L3、射出光線Loの順で直列に連結している。
図1、
図2では、その複数の光線Li、L1、L2、L3、Loは、矢印でそれぞれ表されている。また、
図1、
図2には、所定光線Lsが入射面15から導光体12の内部に入射し導光体12の内部で導光される様子が示されている。
【0050】
図1~
図4に示すように、所定光線Lsのうち入射前光線Liは、外景点Gから入射面15に入射するまでの光線であり、第1光線L1は、入射面15から平坦面161で最初に反射されるまでの光線である。第2光線L2は、第1光線L1を反射した平坦面161から第2面25で最初に反射されるまでの光線であり、第3光線L3は、第2光線L2を反射した第2面25からプリズム部162の特定射出面162cまでの光線である。射出光線Loは、プリズム部162の特定射出面162cからユーザ90のアイポイントEPまでの光線、すなわち、特定射出面162cから導光体12の外部へ射出されユーザ90のアイポイントEPへ向かう光線である。
【0051】
例えば、入射前光線Liで示されるように、所定光線Lsが入射面15に入射する際の入射方向Diは、その入射方向Diに平行な直線が第2方向D2の一方側ほど第1方向D1の一方側に位置するように第2方向D2に対して傾いている。その所定光線Lsの入射方向Diとは、言い換えると、入射前光線Liと平行な方向である。
【0052】
また、入射前光線Liおよび第1光線L1で示されるように、所定光線Lsは、入射面15で屈折させられて導光体12の内部へ入射する。そして、第1光線L1で例示されるように、導光体12に対する第2方向D2の他方側の外景を表し入射面15から導光体12の内部へ入射した外景光は、第1面16と第2面25とのうち第1面16に入射面15から最初に到達する。具体的には、第1面16が有する複数の平坦面161のうちの1つの平坦面161である特定平坦面161aに、所定光線Ls(詳細には、第1光線L1)が入射面15から反射されずに到達する。そして、特定平坦面161aは、その特定平坦面161aが有する反射点PAで第1光線L1を反射する。この第1光線L1および第2光線L2で例示されるように、複数の平坦面161はそれぞれ、導光体12の内部に入射した外景光を第2面25に向けて反射する。
【0053】
また、第2光線L2および第3光線L3で例示されるように、第2面25は、複数の平坦面161が反射した外景光を第1面16に向けて反射する。
【0054】
また、第3光線L3および射出光線Loで示されるように、所定光線Lsは、プリズム部162の特定射出面162cで屈折させられて導光体12の外部へ射出される。詳細に言うと、所定光線Lsは、特定平坦面161aで反射され更に第2面25でも反射されてからプリズム部162の特定射出面162cに到達する。その特定射出面162cは、所定光線Lsと特定射出面162cとが交差する交点である射出点PBを有し、所定光線Lsは、その射出点PBで屈折させられ、導光体12の外部にあるユーザ90のアイポイントEPへ射出される。そして、第3光線L3および射出光線Loで例示されるように、特定射出面162cを含む複数のプリズム射出面162aは、第2面25で反射された外景光を導光体12の外部へ射出する。
【0055】
なお、導光体12の内部で第1面16に到達した外景光のうち、プリズム射出面162aに到達した光はプリズム射出面162aから導光体12の外部へ射出され、平坦面161に到達した光は第2面25へ向けて反射される。
【0056】
本実施形態の光学部材10は、死角補助装置として良好な性能を得るために、次に示すような種々の条件で設計される。例えば、特定平坦面161aに対する所定光線Lsの入射角をφとし、導光体12の屈折率をnとした場合、導光体12は下記式F1を満たす。その入射角φとは、言い換えると、所定光線Lsのうちの第1光線L1が特定平坦面161aの法線LV1に対して成す角度である。下記式F1が満たされることにより、特定平坦面161aは所定光線Lsを全反射する。なお、
図2には、正の値の角度φ、θi、ψ、ξ、ζがそれぞれ表示されている。また、下記式F1または後述の関係式に含まれる角度φ、θi、ψ、ξ、ζは何れも、π/2[rad]未満の角度である。
sinφ>1/n ・・・(F1)
【0057】
また、所定光線Lsの入射方向Diと第2方向D2との成す角度である入射時傾斜角度をθiとし、入射面15と第2方向D2との成す角度をψとした場合、導光体12は下記式F2を満たし、且つ下記式F3を満たす。なお、下記式F2、式F3において、角度φは、上述したように、特定平坦面161aに対する所定光線Lsの入射角である。この角度φの定義は、後述する関係式でも同じである。
θi<φ ・・・(F2)
ψ<φ ・・・(F3)
【0058】
また、
図2の導光断面において、第2面25の入射側端縁251と入射面15の他方端縁152とを結ぶ仮想の線分LN2が第2方向D2に対して成す角度をξとした場合、導光体12は、下記式F4を満たす。
ξ<φ ・・・(F4)
【0059】
また、
図1、
図2の導光断面において、反射点PAと射出点PBとの第1方向D1に沿った距離をHとし、ユーザ90のアイポイントEPと外景点Gとの距離をDとし、第1方向D1に対し第2面25が傾斜する角度をζとした場合、下記式F5の関係が成立する。
ζ=1/2×[arccos{cos(θi+ψ+arcsin(H×cosθi/D))/n}+arcsin{cos(ψ+θi)/n}-π/2] ・・・(F5)
【0060】
なお、上記式F5において角度θi、ψおよび屈折率nの定義は、上述したとおりである。すなわち、角度θiは、所定光線Lsの入射方向Diと第2方向D2との成す角度であり、角度ψは、入射面15と第2方向D2との成す角度であり、屈折率nは導光体12の屈折率である。また、上記式F5に含まれる角度ζ、θi、ψの単位は何れも、[rad]である。また、本実施形態で説明される「arccos」は、0~π[rad]の範囲内の角度を与える関数であり、「arcsin」は、-π/2~π/2[rad]の範囲内の角度を与える関数である。
【0061】
また、本実施形態の説明では、ユーザ90のアイポイントEPと外景点Gとの距離Dを表示距離Dと称し、第1方向D1に対し第2面25が傾斜する角度ζを第2面傾斜角度ζと称する。また、
図1の反射点PAと射出点PBとの第1方向D1に沿った距離Hを導光距離Hと称する。
【0062】
また、
図2の導光断面において、所定光線Lsが導光体12の内部で第2面25に反射される回数をmとし、第2面25の入射側端縁251と平坦面161との第2方向D2に沿った距離をTとし、第2面25が第1方向D1に占める幅をWxとした場合、導光体12は、下記式F6を満たす。なお、本実施形態では、所定光線Lsが導光体12の内部で第2面25に反射される回数mは1回である。
Wx≧m×2×T×tanφ ・・・(F6)
【0063】
次に、本実施形態の光学部材10が奏する作用効果について述べる。本実施形態によれば、第2面25は、導光体12において第1面16に対する反対側に設けられている。第1面16の複数のプリズム部162はプリズム射出面162aを有し、そのプリズム射出面162aは、第2面25で反射された外景光を導光体12の外部へ射出する。そして、第2面25は、第1方向D1の一方側ほど第1面16から離れるように平坦面161に対し傾斜している。
【0064】
これにより、外景光が導光体12を通ってユーザ90に届く場合、外景のうち導光体12に対し第2方向D2の他方側に位置する或る点(例えば、
図1の外景点G)から入射面15までの外景光の光路に対し、プリズム射出面162aからユーザ90のアイポイントEPまでの外景光の光路を傾けることができる。そして、プリズム射出面162aからアイポイントEPまでの外景光の光路を第2方向D2の他方側に延長した直線(例えば、
図1の仮想直線LN1)を想定した場合、その想定した直線を、例えば第2面25と平坦面161とが平行である場合に比して、外景のうちの上記或る点に近付けることができる。従って、外景のうち上記或る点を含む一部領域の位置ズレを抑制して、その外景の一部領域をユーザ90に見せることが可能である。
【0065】
ここで、本実施形態の光学部材10が奏する上記の作用効果を詳しく説明するために、
図5、
図6に示す第1比較例について説明する。
図5、
図6に示すように、第1比較例の光学部材70を構成する導光体72は導光部材14を有しているが、調整部24を有していない。そのため、導光体72の内部の導光される光は、平滑面17で反射される。言い換えると、第1比較例は、本実施形態における角度ζ(
図1参照)を「ζ=0」とした場合と同様である。これらの点を除き、第1比較例の光学部材70は本実施形態の光学部材10と同じである。
【0066】
図5、
図6に示すように、第1比較例において、
図1と同じ外景点Gから
図1と同じ入射前光線Liが導光体72の入射面15に入射する場合を想定する。この場合、平滑面17と平坦面161は平行であり、入射面15とプリズム射出面162aも平行であるので、外景点Gから入射面15に入射するまでの入射前光線Liと、プリズム部162の特定射出面162cから射出された射出光線Loaは平行になる。そして、導光体72の内部で所定光線Lsが1回以上反射されながら第1方向D1に導光されるので、その射出光線Loaは入射前光線Liを平行移動させたものになる。
【0067】
そのため、第1比較例の導光体72を介して外景点Gを見るユーザ90は、実際の外景点Gから位置ズレ距離ΔGmだけ離れた外景認識位置Gaに外景点Gがあると認識する。そして、方角については、ユーザ90は、実際の外景点Gから位置ズレ角度θmだけ方角がずれた外景認識位置Gaに外景点Gがあると認識する。
【0068】
上記の位置ズレ距離ΔGmは、導光体12の導光距離Hと所定光線Lsの入射時傾斜角度θiとに基づき下記式F7から得られる。このとき、入射前光線Liの延長線と平坦面161との交点と、特定平坦面161aが有する反射点PAとの間隔A0は非常に小さいので「A0=0」とみなされた上で、下記式F7が導出されている。
ΔGm=H×cosθi ・・・(F7)
【0069】
また、第1比較例では、所定光線Lsが導光体12の内部で平滑面17に反射される回数が1回であるので、上記式F7中の導光距離Hは、特定平坦面161aに対する所定光線Lsの入射角φと導光部材厚みTとに基づき下記式F8から得られる。このとき、プリズム部162は非常に小さいので、射出点PBを有するプリズム部162が平坦面161から突き出ていないものとみなされた上で、下記式F8が導出されている。
H≒2×T×tanφ ・・・(F8)
【0070】
また、上記の位置ズレ角度θmは、導光体12の導光距離Hと所定光線Lsの入射時傾斜角度θiと表示距離Dとに基づき下記式F9から得られる。この式F9は、
図5に示すように、上記式F7に基づき導出されている。
θm=arcsin(H×cosθi/D) ・・・(F9)
【0071】
以上説明した第1比較例に対し、本実施形態では、
図1、
図2に示すように、例えば外景点Gを見るユーザ90の視線が
図1の仮想直線LN1に沿ったものになる。そのため、上記したように、外景のうち例えば外景点Gを含む一部領域の位置ズレを抑制して、その外景の一部領域をユーザ90に見せることが可能である。
【0072】
(1)また、本実施形態によれば、導光体12は、入射面15と第1面16とを有する導光部材14と、第2面25を有する調整部24とを有している。その導光部材14の屈折率と調整部24の屈折率は同じであり、調整部24は、導光部材14の平滑面17に対しインデックスマッチングされて連結されている。従って、導光体12の内部で導光される外景光が導光部材14と調整部24との境目で屈折または反射されることを回避し、調整部24の入れ替えにより、第2面傾斜角度ζを任意に定めることが可能である。
【0073】
(2)また、本実施形態によれば、導光体12が導光する外景光は、仮想直線LN1上に位置する外景点Gから入射面15に入射する所定光線Lsを含む。そして、その所定光線Lsは、導光体12の内部で反射されながら導光され、第1面16の特定射出面162cから仮想直線LN1に沿った向きで、導光体12の外部にあるユーザ90のアイポイントEPへ射出する。従って、そのユーザ90の視線は仮想直線LN1に沿って外景点Gへ向かうので、ユーザ90は、その外景点Gを位置ズレなく視認することが可能である。
【0074】
(3)また、本実施形態によれば、導光体12は、上記式F1を満たす。従って、平坦面161による所定光線Lsの反射は全て、全反射になる。更に、第2面25は、第1方向D1の一方側ほど第2方向D2の他方側に位置するように第1方向D1に対して傾いているので、第2面25も、導光体12の内部において所定光線Lsを全反射する。従って、平坦面161の反射が全反射でない場合と比較して、例えばユーザ90に届く光量が増すので、光学部材10が位置ズレさせずに表示する外景をユーザ90に明るく見せることができる。
【0075】
(4)また、本実施形態によれば、導光体12は、上記式F4を満たす。ここで、例えば上記式F4とは逆に「ξ>φ」という関係が成立している第2比較例を想定する。この場合、その第2比較例では、入射角φを有する第1光線L1は、その第1光線L1の光路の下流側ほど、第2面25の入射側端縁251と入射面15の他方端縁152とを結ぶ仮想の線分LN2から離れる。
【0076】
そのため、第2比較例では、入射面15の他方端縁152近傍から第1光線L1と平行に入射した光線と、第2面25の入射側端縁251との間には必ず間隔が空く。すなわち、入射面15から第1光線L1と平行に入射した光線の束と、第2面25の入射側端縁251の近傍で第2面25によって反射された光線との間に必ず隙間(別言すると、光線の隙間)が生じる。従って、複数のプリズム部162のうち、所定光線Lsまたはその所定光線Lsに平行な光線が到達したプリズム部162同士の間に、所定光線Lsもその所定光線Lsに平行な光線も到達しないプリズム部162が生じうる。その結果、
図1の外景点Gを含む一部領域をユーザ90に視認させる場合に、導光体12の表示の連続性が損なわれる。
【0077】
これに対し、本実施形態では、上記式F4が満たされるので、上記光線の隙間は生じない。従って、
図1の外景点Gを含む一部領域をユーザ90に視認させる場合に、導光体12の表示の連続性を確保することが可能である。
【0078】
(5)また、本実施形態によれば、上記式F5の関係が成立する。従って、上記式F5を用いて調整部24の形状を容易に定めることが可能である。
【0079】
ここで、上記式F5の導出について、
図1~
図4を用いて説明する。先ず、第2面傾斜角度ζが0で第2面25が平坦面161と平行になっている仮想の構成、具体的には、上記した第1比較例の構成を想定する。その場合、プリズム射出面162aと入射面15も平行であるので、
図3、
図4に示すように、入射面15に対する入射前光線Liの入射角が角度θ0であれば、特定射出面162cから射出した射出光線Loaが特定射出面162cの法線に対して成す射出角も角度θ0になる。
【0080】
このとき、上記第1比較例の射出光線Loaと本実施形態の射出光線Loとの間に生じる
図4の位置ズレ角度θmは、第1比較例の説明で用いた上記式F9から得られる。また、その位置ズレ角度θmは非常に小さいので、本実施形態の導光体12の導光距離Hは第1比較例のそれと変わらないとみなすことができる。すなわち、特定射出面162cの射出点PBは第1比較例と本実施形態との間で同じになるものとみなすことができる。
【0081】
従って、本実施形態の射出光線Loが特定射出面162cの法線に対して成す射出角θ2aが下記式F10を満たせば、外景点Gを位置ズレなくユーザ90に視認させることができる。要するに、第2面25の傾斜によって、第1比較例の射出光線Loaを
図4において位置ズレ角度θmだけ反時計回りに回せば、外景点Gを位置ズレなくユーザ90に視認させることができる。
θ2a=θ0-θm ・・・(F10)
【0082】
また、スネルの法則から、下記式F11が成立する。下記式F11においてnは導光体12の屈折率であり、θ2は、特定射出面162cに対する第3光線L3の入射角である。
n×sinθ2=sinθ2a ・・・(F11)
【0083】
また、第2面25に対する第3光線L3の反射角θ2bは、下記式F12から得られる。また、入射面15と各プリズム射出面162aは平行であるので、特定射出面162cの法線は平坦面161に対し角度ψだけ傾いている。これを加味すると、下記式F12から下記式F13が得られる。
θ2b=φ+ζ ・・・(F12)
θ2=π/2-ψ-φ-2×ζ ・・・(F13)
【0084】
また、上記式F10、式F11、式F13から、下記式F14が得られる。そして、下記式F14の角度θ0を入射前光線Liの入射角として求めると、下記式F15が成立するので、下記式F14、式F15から下記式F16が得られる。
n×sin(π/2-ψ-φ-2×ζ)=sin(θ0-θm) ・・・(F14)
θ0=π/2-ψ-θi ・・・(F15)
n×sin(π/2-ψ-φ-2×ζ)=sin(π/2-ψ-θi-θm)
・・・(F16)
【0085】
また、上記式F16を変形すると、上記式F16は下記式F17になり、下記式F17から下記式F18が得られ、更に、下記式F18から下記式F19が得られる。
n×cos(ψ+φ+2×ζ)=cos(ψ+θi+θm) ・・・(F17)
ψ+φ+2×ζ=arccos{cos(ψ+θi+θm)/n} ・・・(F18)
2×ζ=arccos{cos(ψ+θi+θm)/n}-ψ-φ ・・・(F19)
【0086】
また、スネルの法則から、入射面15に対する入射前光線Liの入射角θ0と入射面15に対する第1光線L1の屈折角θ0aとの間には、下記式F20が成立する。また、特定平坦面161aに対する第1光線L1の入射角φは、下記式F21から得られる。
sinθ0=n×sinθ0a ・・・(F20)
φ=π/2-ψ-θ0a ・・・(F21)
【0087】
また、上記式F19と上記式F21とから下記式F22が得られ、下記式F22と上記式F20とから下記式F23が得られる。
2×ζ=arccos{cos(ψ+θi+θm)/n}
-ψ-π/2+ψ+θ0a ・・・・・・・・(F22)
2×ζ=arccos{cos(ψ+θi+θm)/n}
-π/2+arcsin(sinθ0/n) ・・・(F23)
【0088】
また、上記式F23と上記式F15とから下記式F24が得られ、下記式F24を変形すると下記式F25が得られ、下記式F25と上記式F9とから上記式F5が得られる。
ζ=1/2×[arccos{cos(ψ+θi+θm)/n}
+arcsin{sin(π/2-ψ-θi)/n}-π/2] ・・・(F24)
ζ=1/2×[arccos{cos(ψ+θi+θm)/n}
+arcsin{cos(ψ+θi)/n}-π/2] ・・・(F25)
上記式F5の導出についての説明は、以上である。
【0089】
(6)また、本実施形態によれば、導光体12は、上記式F6を満たす。従って、第2面25の大きさを、導光体12の内部に入射した所定光線Lsを第2面25で反射させるのに十分な大きさとすることができる。すなわち、上記式F8から判るように、導光体12の内部に入射した所定光線Lsが第1面16から射出されるまで、第2方向D2の他方側でのその所定光線Lsの反射を全て第2面25での反射にすることが可能である。これにより、導光体12からユーザ90へ射出される所定光線Lsの向きを全て第2面25で調整することができる。
【0090】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。このことは後述の実施形態の説明においても同様である。
【0091】
図7、
図8に示すように、本実施形態では、導光体12に含まれる調整部24が第1実施形態と異なっている。そして、第1実施形態と異なり、導光体12の第2面傾斜角度ζが調整可能になっている。なお、
図7では、導光体12の第1面16が有する複数の平坦面161および複数のプリズム部162の図示が省略されている。
【0092】
具体的に、本実施形態の調整部24は、調整部24の内部が導光部材14と同じ屈折率を有する液体で満たされた構造になっている。それと共に、調整部24のうち、第2面25と対向面26とを除く側面は蛇腹構造とされ、伸縮可能となっている。また、第2面25の入射側端縁251は、第3方向D3に沿って延びる回転軸31に連結されている。その第3方向D3は、第1方向D1と第2方向D2とのぞれぞれに対して垂直な方向である。
【0093】
これにより、第2面25は、矢印A1、A2で示されるように、第3方向D3に平行な回転軸心CLを中心として揺動可能になっている。すなわち、調整部24は、第2面25と平滑面17との成す角度と同一の第2面傾斜角度ζを調整部24の伸縮に伴って変化させる。
【0094】
そして、その第2面25の揺動に伴って、射出光線Loの向きも、矢印A3で示されるように揺動する。例えば、第2面25の揺動により導光体12の第2面傾斜角度ζが大きくなるほど、射出光線Loが第1方向D1に対して成す射出光線角度θ3は小さくなる。
【0095】
また、調整部24内に満たされる液体を溜めるタンク32と、パイプ33とが設けられている。そのパイプ33は、調整部24内を満たす液体がタンク32と調整部24との間で流通可能なように、タンク32と調整部24とを連結している。また、不図示のポンプまたは重力の作用により、タンク32内の液体は調整部24へ流れるように加圧されている。
【0096】
従って、調整部24の内部は、調整部24が伸縮しても、導光部材14と同じ屈折率を有する液体で常に満たされるので、調整部24は、調整部24の屈折率を導光部材14と同じに維持しながら伸縮可能に構成されている。
【0097】
例えば、調整部24の第2面25には調整ネジ34が取り付けられており、第2面25が第1方向D1の一方側に有する端部の位置が、その調整ネジ34によって、矢印A4で示されるように第2方向D2に移動させられる。これにより、第2面25が回転軸心CLを中心として揺動し、第2面傾斜角度ζが変化する。
【0098】
(1)上述したように、本実施形態によれば、調整部24は、導光部材14と同じ屈折率を有する液体で満たされており、調整部24の屈折率を導光部材14と同じに維持しながら伸縮可能に構成されている。そして、調整部24は、第2面傾斜角度ζを調整部24の伸縮に伴って変化させる。従って、ユーザ90のアイポイントEPと外景点Gとの間の表示距離D(
図1参照)が変化した場合でも、その表示距離Dに合わせて第2面25の向きを調整し、位置ズレのない外景点G(
図1参照)をユーザ90に視認させることが可能である。
【0099】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0100】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0101】
図9に示すように、本実施形態では、外景点Gからの所定光線Lsは、導光体12の内部に入射した後、第2面25に2回反射されてから、導光体12からユーザ90のアイポイントEPへ向けて射出される。
【0102】
従って、本実施形態では、
図9の導光断面において所定光線Lsが導光体12の内部で第2面25に反射される回数m、すなわち上記式F6に含まれる回数mは、2回である。このことから、本実施形態では、第2面25が第1方向D1に占める幅Wxについて、上記式F6より、下記式F6-1が成立する。
Wx≧4×T×tanφ ・・・(F6-1)
【0103】
そして、所定光線Lsは、入射前光線Li、第1~第3光線L1、L2、L3、および射出光線Loに加えて更に、第4光線L4と第5光線L5とを第3光線L3と射出光線Loとの間に有している。
【0104】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2実施形態と組み合わせることも可能である。
【0105】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、例えば
図1に示すように、導光体12の外部から入射面15に入射する外景光は、外景点Gからの所定光線Lsを含むが、その所定光線Lsに加え更に、所定光線Ls以外の光線を含んでいても差し支えない。
【0106】
(2)上述の各実施形態では、例えば
図1、
図2に示すように、導光部材14は、第1方向D1に対して傾斜した傾斜面18を有し、入射面高さTdは導光部材厚みTよりも大きいが、これは一例である。例えば、傾斜面18が第1方向D1に対して傾斜せずに第1方向D1に平行となっており、入射面高さTdが導光部材厚みTと同じになっていることも考え得る。
【0107】
(3)上述の各実施形態では、導光体12が有する複数のプリズム部162はそれぞれ、例えば
図2の導光断面において三角形断面形状を備えているが、これは一例である。例えば、そのプリズム部162は、その導光断面において台形断面形状を備えていても差し支えない。また、導光体12が有する全てのプリズム部162が互いに同じ形状である必要もない。
【0108】
(4)なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【0109】
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0110】
10 光学部材
12 導光体
15 入射面
16 第1面
25 第2面
161 平坦面
162 プリズム部
162a プリズム射出面(射出面)
D1 第1方向(一方向)