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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 49/00 20060101AFI20241217BHJP
   H02K 16/02 20060101ALI20241217BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20241217BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20241217BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F16H49/00 A
H02K16/02
H02K7/14 B
H02K7/10 A
F16K51/00 Z
【請求項の数】 46
(21)【出願番号】P 2021166901
(22)【出願日】2021-10-11
(65)【公開番号】P2022094917
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2024-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2020207606
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021017410
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021071315
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴郁
(72)【発明者】
【氏名】井上 博登
(72)【発明者】
【氏名】佐原 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】橋元 慎二
(72)【発明者】
【氏名】福島 龍
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】大内 理功
(72)【発明者】
【氏名】河田 真治
(72)【発明者】
【氏名】中島 登志久
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 誠一郎
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-092311(JP,A)
【文献】特開2013-150408(JP,A)
【文献】特開2020-133790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 49/00
H02K 16/02
H02K 7/14
H02K 7/10
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の極を有し、回転する駆動側マグネット(20)と、
前記駆動側マグネットを収容する筐体(15、50)と、
前記駆動側マグネットよりも極数が多く、前記筐体に固定されている固定マグネット(40)と、
複数の磁性体部(25a)を有し、前記駆動側マグネットと前記固定マグネットとの間で磁束を変調させることによって回転するポールピース(25)と、
前記筐体の内部を、前記駆動側マグネットが配置されている側の駆動側空間(113a)と、前記固定マグネットおよび前記ポールピースが配置されている側の従動側空間(113b)とに区画し、前記駆動側空間と前記従動側空間との間で流体を封止する封止部材(51)と、を備え、
前記ポールピースおよび前記固定マグネットは、円筒状であり、前記駆動側マグネットに対して同軸上かつ径方向外側に配置されており、
前記封止部材は、前記駆動側マグネットに対して径方向外側に位置する封止円筒部(51b)と、前記封止円筒部を前記駆動側空間側から塞ぐ封止底面部(51c)とを有している動力伝達装置。
【請求項2】
前記磁性体部(25a)の個数(Npp)は、前記駆動側マグネットの極数(Pin)および前記固定マグネットの極数(Pf)に対して、
Npp=(Pin+Pf)/2
の関係になっている請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記筐体は、前記駆動側マグネット、前記固定マグネットおよび前記ポールピースを径方向外側から囲む円筒状の筐体円筒部(50b)を有し、
さらに、磁性体で円筒状に形成され、前記筐体円筒部の内周面に固定されたバックヨーク(56)を備え、
前記固定マグネットは、前記バックヨークの内周面に固定されている請求項1または2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記筐体は、前記駆動側マグネット、前記固定マグネットおよび前記ポールピースを径方向外側から囲む円筒状の筐体円筒部(50b)を有し、
前記固定マグネットは、前記筐体円筒部の内周面に固定されている請求項1または2に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記筐体円筒部は磁性体で形成されている請求項3または4に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記ポールピースを前記筐体に対して回転可能に支持する軸受部材(49)を備え、
前記駆動側マグネットの軸方向において、前記ポールピースのうち前記軸受部材の反対側の端部は、前記駆動側マグネットのうち前記軸受部材の反対側の端部と前記固定マグネットのうち前記軸受部材の反対側の端部とを結ぶ仮想線(lv)よりも前記軸受部材の反対側に位置している請求項1ないし5のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記駆動側マグネットの軸方向において、前記ポールピースは、前記駆動側マグネットおよび前記固定マグネットよりも短くなっている請求項1ないし6のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記駆動側マグネットの軸方向において、前記固定マグネットは、前記駆動側マグネットよりも長くなっている請求項1ないし7のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項9】
前記駆動側マグネットの軸方向において、前記駆動側マグネットは、前記ポールピースよりも長く、かつ前記固定マグネットよりも短くなっている請求項1ないし8のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項10】
前記筐体は、
前記駆動側マグネット、前記固定マグネットおよび前記ポールピースを径方向外側から囲む円筒状の筐体円筒部(50b)と、
前記筐体円筒部に固定され、前記駆動側マグネットを前記ポールピースと軸合わせするための軸合わせ部(15a)とを有している請求項1ないし9のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項11】
前記封止円筒部は、単一の非磁性体部材で形成されている請求項1ないし10のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項12】
前記封止部材は、前記封止円筒部のうち前記封止底面部とは反対側の端部から径方向外側に延びる封止上面部(51a)を有しており、
前記封止上面部、前記封止円筒部および前記封止底面部は、単一の非磁性体部材で形成されている請求項1ないし10のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項13】
前記ポールピースと一体かつ同軸状に回転する出力軸(41)を備え、
前記封止底面部は、前記出力軸を回転可能に支持する従動側軸受け部(51e)を有している請求項1ないし12のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項14】
前記駆動側マグネットと一体かつ同軸状に回転する入力軸(14)を備え、
前記封止底面部は、前記入力軸を回転可能に支持する駆動側軸受け部(51d)を有している請求項1ないし13のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項15】
前記従動側空間は、フロン系冷媒が存在する空間である請求項1ないし14のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項16】
前記ポールピースは、蒸気圧縮式冷凍サイクル(110)の冷媒を減圧膨張させる膨張弁(113)の弁体(48)を駆動するようになっており、
前記従動側空間は、前記冷媒が存在する空間である請求項1ないし14のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項17】
前記ポールピースは、流体の流量を調整する流量調整弁(200)の弁体(201)を駆動するようになっており、
前記従動側空間は、前記流体が存在する空間である請求項1ないし14のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項18】
前記ポールピースは、流体を流動させるポンプ(300)のインペラ(301)を駆動するようになっており、
前記従動側空間は、前記流体が存在する空間である請求項1ないし14のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項19】
前記駆動側マグネットを回転させる駆動力を電磁力によって出力するモータ部(11)と、
前記駆動側マグネットの動作に関する回転負荷の変動を用いて、前記ポールピースのロックが発生しているか否かを判定するロック判定部(71)と、を備える請求項1ないし18のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項20】
前記モータ部の極数(Pm)が、前記駆動側マグネットの極数(Pin)と異なっている請求項19に記載の動力伝達装置。
【請求項21】
前記モータ部の極数(Pm)の1/2が、前記駆動側マグネットにおける極数(Pin)の1/2と前記固定マグネットにおける極数(Pf)の1/2の最小公倍数と異なっており、且つ、前記モータ部の極数と前記モータ部におけるスロット数(Ns)の最小公倍数が、前記固定マグネットにおける極数(Pf)の1/2と前記固定マグネットにおける極数(Pf)の1/2の最小公倍数と異なっている請求項19に記載の動力伝達装置。
【請求項22】
前記ロック判定部は、前記モータ部に対する入力電流の周波数分析を行い、予め定められた特定周波数(fs)の前記入力電流が基準値を超えた場合、前記ポールピースのロックが発生していると判定する請求項19ないし21のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項23】
前記モータ部は、三相モータ(11a)であり、
前記ロック判定部は、前記三相モータの駆動電流に対する周波数分析を行い、予め定められた特定周波数(fs)の前記駆動電流が基準値を超えた場合、前記ポールピースのロックが発生していると判定する請求項19ないし21のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項24】
前記モータ部は、整流子及びブラシを有する直流モータ(11c)であり、
前記ロック判定部は、前記直流モータの駆動電流に対する周波数分析を行い、予め定められた特定周波数(fs)の前記駆動電流が基準値を超えた場合、前記ポールピースのロックが発生していると判定する請求項19ないし21のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項25】
前記モータ部は、三相モータ(11a)であり、
予め定められた三角波と前記回転負荷の変動に連動して定められる判定電圧の関係から、前記三相モータにおけるオン時間とオフ時間の比であるデューティー比を特定する為の三相インバータ回路(72)を有し、
前記ロック判定部は、前記回転負荷の変動に連動して変化する前記判定電圧に対する周波数分析を行い、予め定められた特定周波数(fs)の前記判定電圧が基準値を超えた場合に、前記ポールピースのロックが発生していると判定する請求項19ないし21のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項26】
前記モータ部は、三相モータ(11a)であり、
前記ロック判定部は、前記三相モータにおけるいずれか一相の電流に対する周波数分析を行い、予め定められた特定周波数(fsa、fsb)の前記一相の電流が基準値を超えた場合、前記ポールピースのロックが発生していると判定する請求項19ないし21のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項27】
前記モータ部は、三相モータ(11a)であり、
前記ロック判定部は、前記三相モータのいずれか二相に関する線間電圧に対する周波数分析を行い、予め定められた特定周波数(fsa、fsb)の前記線間電圧が基準値を超えた場合、前記ポールピースのロックが発生していると判定する請求項19ないし21のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項28】
前記回転負荷の変動に伴う振動に起因した加速度を検出する加速度センサ(73d)を有し、
前記ロック判定部は、前記加速度センサで検出された前記加速度に対する周波数分析を行い、予め定められた特定周波数(fs)の前記加速度の変化が基準値を超えた場合、前記ポールピースのロックが発生していると判定する請求項19ないし21のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項29】
コイル(12a)が巻回されたスロットを有するステータ(12)と、磁石を有して回転するロータ(13)とを有し、前記ロータによって前記駆動側マグネットを駆動するモータ部(11)を備え、
前記スロットは、各相に複数個ずつ設けられており、
前記駆動側マグネットによって前記コイルに生じる誘起電圧が各相で相殺されるように前記駆動側マグネットが構成されている請求項1ないし28のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項30】
コイル(12a)が巻回されたスロットを有するステータ(12)と、磁石を有して回転するロータ(13)とを有し、前記ロータによって前記駆動側マグネットを駆動するモータ部(11)を備え、
前記スロットは、各相に複数個ずつ設けられていて、前記ロータの周方向に均等に配置されており、
前記スロットのいずれにおいても、前記コイルの巻き方向が同一方向になっており、
前記駆動側マグネットの複数の極(20n、20s)は、前記ロータの周方向に均等に配置されており、
前記駆動側マグネットの極対数が、各相のスロット数の倍数と異なっている請求項1ないし28のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項31】
コイル(12a)が巻回されたスロットを有するステータ(12)と、磁石を有して回転するロータ(13)とを有し、前記ロータによって前記駆動側マグネットを駆動するモータ部(11)を備え、
前記スロットは、各相に複数個ずつ設けられていて、前記ロータの周方向に均等に配置されており、
前記スロットは、各相において、前記コイルの巻き方向が右巻きのものと左巻きのものとが互いに同数になっており、
前記駆動側マグネットの複数の極(20n、20s)は、前記ロータの周方向に均等に配置されており、
前記駆動側マグネットの極対数が、各相のスロット数の半分の奇数倍と異なっている請求項1ないし28のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項32】
前記ロータ、前記ステータおよび前記駆動側マグネットが、前記ロータの径方向に並んで配置されている請求項29ないし31のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項33】
前記ロータ、前記ステータおよび前記駆動側マグネットが、前記ロータの軸方向に並んで配置されている請求項29ないし31のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項34】
コイル(12a)を有するステータ(12)と、磁石を有して回転するロータ(13)とを有し、前記ロータによって前記駆動側マグネットを駆動するモータ部(11)を備え、
前記駆動側マグネットは円筒状であり、
前記ステータおよび前記ロータは、前記駆動側マグネットの内側に配置されている請求項1ないし28のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項35】
磁性体で形成され、前記ロータと前記駆動側マグネットとの間に配置された介在部材(21)を備える請求項34に記載の動力伝達装置。
【請求項36】
コイル(12a)を有するステータ(12)を備え、
前記駆動側マグネットは円筒状であり、
前記ステータは前記駆動側マグネットの内側に配置されていて、前記駆動側マグネットをロータとして回転させる請求項1ないし28のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項37】
前記駆動側空間において前記封止部材と前記駆動側マグネットの軸方向に重なる位置に配置された回路基板(701)と、
前記回路基板のうち前記封止部材と前記駆動側マグネットの軸方向に重なる位置に配置され、放射ノイズを発生させる回路素子(702)とを備え、
前記封止部材は導体で形成されている請求項1ないし36のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項38】
前記駆動側空間に配置され、前記駆動側マグネットと一体かつ同軸状に回転する入力軸(14)と、
前記駆動側空間において前記回路基板に対して前記封止部材と反対側に配置され、前記入力軸の軸受け部分を補強する補強板(59)とを備え、
前記補強板は導体で形成されており、
前記回路素子は、前記補強板と前記駆動側マグネットの軸方向に重なる位置に配置されている請求項37に記載の動力伝達装置。
【請求項39】
前記筐体は、前記従動側空間を形成する本体部(50)と、前記駆動側空間を形成するケース(15)とを有しており、
前記本体部は導体で形成されており、
前記封止部材は前記本体部に固定されており、
前記封止部材は、前記補強板が固定された固定部(51f)を有しており、
前記固定部は、前記封止部材と前記補強板とを電気的に接続している請求項38に記載の動力伝達装置。
【請求項40】
前記回路素子は、前記回路基板に対して前記封止部材側に面するように配置されており、
前記筐体は、前記従動側空間を形成する本体部(50)と、前記駆動側空間を形成するケース(15)とを有しており、
前記ケースは、導体で形成され、前記封止部材と前記回路基板との間の隙間を前記駆動側マグネットの径方向外側から塞いでいる請求項37ないし39のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項41】
前記駆動側空間に配置され、前記駆動側マグネットと一体かつ同軸状に回転する入力軸(14)と、
前記駆動側空間において前記入力軸の軸受け部分を補強する補強板(59)と、
前記駆動側空間において前記封止部材と向かい合うように配置され、前記補強板に固定された回路基板(701)と、
前記回路基板に半田(704)によって接合された回路素子(702)と備え、
前記封止部材は、前記補強板が固定された固定部(51f)を有している請求項1ないし36のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【請求項42】
前記固定部が少なくとも3ヶ所設けられており、
前記回路素子は、前記回路基板において、前記固定部の全てに外接する仮想外接円の内側の範囲(A1)に配置されている請求項41に記載の動力伝達装置。
【請求項43】
前記固定部が少なくとも2ヶ所設けられており、
前記回路素子は、前記回路基板において、前記固定部同士の間の範囲(A2)に配置されている請求項41に記載の動力伝達装置。
【請求項44】
前記介在部材は、前記ロータと前記駆動側マグネットとの間に配置された円筒状のモータ部バックヨーク(21a)と、前記バックヨークを前記駆動側マグネットの軸方向一端側から塞ぐロータカップ(21b)とを有しており、
前記モータ部バックヨークおよび前記ロータカップは磁性体で形成されており、
前記駆動側マグネットの軸方向において、前記駆動側マグネット、前記ポールピースおよび前記固定マグネットの前記軸方向一端側における端部の位置(Bmg)は、前記ステータ、前記ロータおよび前記モータ部バックヨークの前記軸方向一端側における端部の位置(Bmt)よりも前記モータ部から離れた側にある請求項35に記載の動力伝達装置。
【請求項45】
前記駆動側マグネットの軸方向における前記ロータカップの厚さ(Trc)は、前記駆動側マグネットの径方向における前記モータ部バックヨークの厚さ(Tby)よりも大きくなっている請求項44に記載の動力伝達装置。
【請求項46】
前記介在部材は、前記ロータと前記駆動側マグネットとの間に配置された円筒状のモータ部バックヨーク(21a)と、前記モータ部バックヨークを前記駆動側マグネットの軸方向一端側から塞ぐロータカップ(21b)とを有しており、
前記駆動側マグネットの軸方向における前記ロータカップの厚さ(Trc)は、前記駆動側マグネットの径方向における前記モータ部バックヨークの厚さ(Tby)よりも大きくなっている請求項35に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁力を用いて動力を伝達する動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、第1可動子および第2可動子に磁石が配置され、第1可動子と第2可動子との間に中間ヨークが配置された動力伝達装置が記載されている。中間ヨークには磁性体が配置されている。
【0003】
第1可動子、中間ヨークおよび第2可動子は、いずれも円筒状であり、互いに同軸状に配置されている。第2可動子が回転すると、磁気的相互作用により第1可動子が回転する。この時、第2可動子が第1可動子と第2可動子との極数比がギヤ比となる。
【0004】
中間ヨークは、第1可動子側の空間と第2可動子側の空間とを隔てる円筒状の隔壁に嵌め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5958466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術に対して、トルクを増大させたいというニーズがある。このニーズに応える手法として、磁石の極数を変更させて減速比を大きくすることが考えられるが、磁石の極数を変更させると構造の複雑化やコストの増大を招くこととなる。
【0007】
また、上記従来技術では、隔壁に中間ヨークが嵌め込まれているので、隔壁の耐圧性を高めるのが困難である。
【0008】
特に、この動力伝達装置を車両用空調装置の冷凍サイクルに用いられる膨張弁に適用する場合、搭載スペースの都合上、大幅な小型化が求められるので高圧冷媒に対する耐圧性の確保が困難である。また、搭載スペースの都合上、横置きや逆さ置きなど、動力伝達装置に冷媒が侵入して回転の抵抗となるような配置がなされることがあるので、トルクを増大させたいというニーズが高まっている。
【0009】
本発明は、上記点に鑑みて、磁石の極数を変更させることなく減速比を大きくするとともに耐圧性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の動力伝達装置は、
複数の極を有し、回転する駆動側マグネット(20)と、
駆動側マグネットを収容する筐体(15、50)と、
駆動側マグネットよりも極数が多く、筐体に固定されている固定マグネット(40)と、
複数の磁性体を有し、駆動側マグネットと固定マグネットとの間で磁束を変調させることによって回転するポールピース(25)と、
筐体の内部を、駆動側マグネットが配置されている側の駆動側空間(113a)と、固定マグネットおよびポールピースが配置されている側の従動側空間(113b)とに区画し、駆動側空間と従動側空間との間で流体を封止する封止部材(51)と、を備え、
ポールピースおよび固定マグネットは、円筒状であり、駆動側マグネットに対して同軸上かつ径方向外側に配置されており、
封止部材は、駆動側マグネットに対して径方向外側に位置する封止円筒部(51b)と、封止円筒部を駆動側空間側から塞ぐ封止底面部(51c)とを有している。
【0011】
これによると、固定マグネットを筐体に固定させてポールピースを回転させるので、ポールピースを筐体に固定させる構成と比較して減速比を大きくできる。ポールピースの極数は固定マグネットの極数よりも大きいからである。
【0012】
封止部材をポールピースから独立した部材にすることができるので、封止部材の耐圧性を高めることができる。
【0013】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の蒸気圧縮式冷凍サイクルを示す全体構成図である。
図2】第1実施形態の第1膨張弁を示す断面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4】第2実施形態の第1膨張弁を示す断面図である。
図5図4のV-V断面図である。
図6】第3実施形態の第1膨張弁を示す断面図である。
図7図6のVII-VII断面図である。
図8】第4実施形態の第1膨張弁を示す断面図である。
図9】第5実施形態の第1膨張弁を示す断面図である。
図10】第6実施形態の第1膨張弁の制御系を示すブロック図である。
図11】第6実施形態における入力電流に対する周波数分析の結果を示すグラフである。
図12】第6実施形態におけるロック判定制御に関するフローチャートである。
図13】第7実施形態の第1膨張弁の制御系を示すブロック図である。
図14】第7実施形態における駆動電流の包絡線に対する周波数分析の結果を示すグラフである。
図15】第8実施形態の第1膨張弁の制御系を示すブロック図である。
図16】第8実施形態における駆動電流に対する周波数分析の結果を示すグラフである。
図17】第9実施形態の第1膨張弁の制御系を示すブロック図である。
図18】第9実施形態における判定電圧に対する周波数分析の結果を示すグラフである。
図19】第10実施形態の第1膨張弁の制御系を示すブロック図である。
図20】第10実施形態における駆動電流に対する周波数分析の結果を示すグラフである。
図21】第11実施形態の第1膨張弁の制御系を示すブロック図である。
図22】第11実施形態における線間電圧に対する周波数分析の結果を示すグラフである。
図23】第12実施形態の第1膨張弁の構成を示す断面図である。
図24】第12実施形態における加速度に対する周波数分析の結果を示すグラフである。
図25】第13実施形態の第1膨張弁のうちモータ部および駆動側マグネットの断面図である。
図26】第13実施形態のモータ部の電気回路の一部を示す回路図である。
図27】第13実施形態のモータ部の1つの相における回転角度と駆動側マグネットによる誘起電圧との関係を示すグラフである。
図28】第14実施形態の第1膨張弁のうちモータ部および駆動側マグネットの断面図である。
図29】第14実施形態のモータ部の電気回路の一部を示す回路図である。
図30】第14実施形態のモータ部の1つの相における回転角度と駆動側マグネットによる誘起電圧との関係を示すグラフである。
図31】第15実施形態の第1膨張弁のうちモータ部および駆動側マグネットの断面図である。
図32】第15実施形態のモータ部の電気回路の一部を示す回路図である。
図33】第16実施形態の第1膨張弁のうちモータ部および駆動側マグネットの断面図である。
図34】第17実施形態における第1膨張弁の構成の一部を示す説明図である。
図35】第18実施形態の第1膨張弁の一部を示す断面図である。
図36図35のXXXVI矢視図である。
図37】第19実施形態の補強板および回路部を示す平面図である。
図38】第20実施形態の第1膨張弁の一部を示す断面図である。
図39】第20実施形態の補強板を示す平面図である。
図40】第20実施形態の基板を示す平面図である。
図41】第20実施形態の基板とFETマイコンとの半田付け部を示す断面図である。
図42】第20実施形態における基板の変形状態を説明する断面図である。
図43】第21実施形態の補強板を示す平面図である。
図44】第21実施形態の基板を示す平面図である。
図45】ロック判定制御の変形例を示すフローチャートである。
図46】動力伝達装置が適用された流調弁を示す断面図である。
図47】動力伝達装置が適用された小型ポンプを示す断面図である。
図48】第22実施形態の第1膨張弁を示す断面図である。
図49】第22実施形態の第1膨張弁における磁束の流れを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0016】
(第1実施形態)
本開示における第1実施形態について、図1図3を参照して説明する。本実施形態の動力伝達装置1は、蒸気圧縮式冷凍サイクル110の第1膨張弁113および第2膨張弁115に適用されている。蒸気圧縮式冷凍サイクル110は、図1に示す車両用空調装置100に適用されている。車両用空調装置100は、車両走行用の駆動力を走行用の電動モータから得る電気自動車に適用されている。
【0017】
車両用空調装置100は、車室内を冷房する冷房モード、車室内を暖房する暖房モード、および車室内を除湿しつつ暖房する除湿暖房モードの3つの動作モードを備えている。図1では、冷房モードでの冷媒流れは実線矢印で示され、暖房モードでの冷媒流れは破線矢印で示され、除湿暖房モードでの冷媒流れは二点鎖線矢印で示されている。
【0018】
車両用空調装置100は、蒸気圧縮式冷凍サイクル110と車室内空調ユニット120とを備えている。
【0019】
蒸気圧縮式冷凍サイクル110は、圧縮機111、室内熱交換器112、第1膨張弁113、室外熱交換器114、第2膨張弁115、蒸発器116、電磁開閉弁117およびアキュムレータ118を有している。
【0020】
圧縮機111は、冷媒を吸入して圧縮し吐出する電動圧縮機である。蒸気圧縮式冷凍サイクルを循環する冷媒としては、フロン系冷媒(例えば、R134a)が採用されている。蒸気圧縮式冷凍サイクルは、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界サイクルである。
【0021】
室内熱交換器112は、圧縮機111から吐出された冷媒を、車室内空調ユニット120内を流れる空気と熱交換させて凝縮させる。第1膨張弁113は、室内熱交換器112で凝縮された冷媒を減圧膨張させる。室外熱交換器114は、第1膨張弁113から流出した冷媒と外気とを熱交換させる。第2膨張弁115は、室外熱交換器114から流出した冷媒を減圧膨張させる。蒸発器116は、第2膨張弁115で減圧膨張された冷媒を車室内空調ユニット120内を流れる空気と熱交換させて蒸発させる。電磁開閉弁117は、室外熱交換器114から流出した冷媒を、第2膨張弁115および蒸発器116をバイパスさせてアキュムレータ118へ導く冷媒流路を開閉する電磁弁である。アキュムレータ118は、蒸発器116で蒸発した冷媒、および電磁開閉弁117を通過した冷媒の気液を分離する。
【0022】
車室内空調ユニット120は、車室内に配置されており、その内部に空気通路を形成している。車室内空調ユニット120内の空気通路には、送風機121、蒸発器116、室外熱交換器114およびエアミックスドア122が配置されている。送風機121は、車室内空調ユニット120内の空気通路に送風する電動送風機である。蒸発器116は、送風機121に対し空気流れの下流に配置されている。室内熱交換器112は、蒸発器116に対し空気流れの下流に配置されている。エアミックスドア122は、室内熱交換器112へ流れる空気と室内熱交換器112をバイパスして流れる空気との流量比を調節する。車室内空調ユニット120は、エアミックスドア122により調温された空気を車室内に吹き出す。
【0023】
車両用空調装置100の冷房モードでは、電磁開閉弁117は閉弁状態とされ、エアミックスドア122は、室内熱交換器112への空気流路を閉塞する。そのため、圧縮機111から吐出された冷媒は、室内熱交換器112では熱交換されずに室内熱交換器112を通過し、第1膨張弁113、室外熱交換器114、第2膨張弁115、蒸発器116、アキュムレータ118の順に流れて、アキュムレータ118から圧縮機111に戻る。
【0024】
このとき、第1膨張弁113は冷媒流れを絞らない弁開度にされ、第2膨張弁115は冷媒流れを絞る弁開度にされるので、室外熱交換器114では冷媒が凝縮され、蒸発器116では冷媒が蒸発する。
【0025】
車両用空調装置100の暖房モードでは、電磁開閉弁117は開弁状態とされ、第2膨張弁115は冷媒流れを遮断する閉弁状態とされ、エアミックスドア122は、空気が室内熱交換器112へ流通するように開かれる。そのため、圧縮機111から吐出された冷媒は、室内熱交換器112、第1膨張弁113、室外熱交換器114、電磁開閉弁117、アキュムレータ118の順に流れて、アキュムレータ118から圧縮機111に戻る。このとき、第1膨張弁113は冷媒流れを絞る弁開度にされ、第2膨張弁115は閉弁状態にされるので、室内熱交換器112では冷媒が凝縮され、室外熱交換器114では冷媒が蒸発され、蒸発器116には冷媒が流れない。
【0026】
車両用空調装置100の除湿暖房モードでは、電磁開閉弁117は閉弁状態とされ、エアミックスドア122は、空気が室内熱交換器112へ流通するように開かれる。そのため、圧縮機111から吐出された冷媒は、室内熱交換器112、第1膨張弁113、室外熱交換器114、第2膨張弁115、蒸発器116、アキュムレータ118の順に流れて、アキュムレータ118から圧縮機111に戻る。
【0027】
このとき、第1膨張弁113および第2膨張弁115は冷媒流れを絞る弁開度にされるので、室内熱交換器112では冷媒が凝縮され、室外熱交換器114では冷媒が蒸発される。
【0028】
図2に示すように、第1膨張弁113は、動力伝達装置1、駆動側機構部10および従動側機構部35を有している。第1膨張弁113は、車両に縦置き配置されている。縦置き配置とは、弁体48の軸方向が車両上下方向と略平行となり、かつ駆動側機構部10が従動側機構部35に対して車両上方側になるような配置のことである。
【0029】
動力伝達装置1は、駆動側機構部10が発生する駆動力を、磁力を用いて従動側機構部35に伝達する。
【0030】
駆動側機構部10は、モータ部11およびモーターケース15を有している。モータ部11は三相モータ11aであり、ステータ12、ロータ13およびシャフト14を有している。シャフト14は、動力伝達装置1の入力軸であり、ロータ13と一体に回転する。モーターケース15は、モータ部11を収容している。
【0031】
ステータ12はモーターケース15に固定されている。ステータ12はステータコイル12aを有している。本例では、ステータ12のスロット数Nsは6である。
【0032】
ロータ13は円筒状であり、ロータ13の内部にステータ12が配置されている。図3に示すように、ロータ13は、N極13nおよびS極13sからなる一対の磁石が円周方向に沿って複数組配置されている。本例では、N極13nおよびS極13sは各4個であるので、ロータ13の極数Prは8である。ステータ12およびロータ13は、シャフト14を回転させる駆動力を電磁力によって出力する。
【0033】
モーターケース15には、駆動側機構部10のシャフト14と従動側機構部35の回転部材41とを軸合わせ(芯出し)するため軸合わせ部15aが形成されている。軸合わせ部15aは、従動側機構部35の本体部50に嵌め合わされている。
【0034】
モーターケース15内には回路部70が収容されている。回路部70は、モータ部11である三相モータ11aを制御する為の複数の電子部品を搭載した回路基板を有している。
【0035】
従動側機構部35は、回転部材41、弁体48、軸受部材49および本体部50を有している。
【0036】
回転部材41、弁体48および軸受部材49は本体部50に収容されている。本体部50は、モーターケース15とともに、第1膨張弁113の筐体を構成している。本体部50には、弁室52、流入口側接続口53、流出口側接続口54および弁座55が形成されている。
【0037】
回転部材41は、動力伝達装置1の出力軸であり、駆動側機構部10から伝達された駆動力によって回転する。回転部材41は、棒状の部材であり、シャフト14と同軸状に配置されている。回転部材41のうち駆動側機構部10と反対側の端部には噛合溝41aが形成されている。回転部材41は、本体部50に固定された軸受部材49によって回転可能に支持されている。
【0038】
弁体48は、弁室52内に配置された棒状の部材である。弁体48は、回転部材41と同軸状に配置されている。回転部材41の噛合溝41aには弁体48の突出片48aが噛み合っている。これにより、回転部材41の回転力が弁体48に伝達される。
【0039】
突出片48aは弁体48の一端に形成されている。弁体48の外周面には雄ネジが形成されている。弁体48の雄ネジは、本体部50に形成されたネジ孔50aに螺合していてネジ機構を構成している。これにより、弁体48が回転すると弁体48は軸方向に移動する。
【0040】
弁体48は複数の部材で形成されている。具体的には、弁体48は回転部材41側に位置して上述の雄ネジが形成された雄ネジ部材481と、弁座55側に位置する弁座側部材482と、両部材481、482の間に配置されたボール483とで構成されている。両部材481、482の間にボール483が配置されていることにより、弁体48のうち弁座側部材482は、回転することなく軸方向に移動する。
【0041】
弁体48のうちボール受け部材をなす弁座側部材482は、弁体48が弁座55から軸方向に離れる側に、コイルスプリング47によって付勢されている。
【0042】
弁体48が軸方向に移動することにより弁体48が弁座55に当接したり弁座55から離れたりして弁室52が開閉される。弁室52内において、弁体48が弁座55から離れることにより、冷媒は流入口側接続口53から流出口側接続口54へ流れて減圧膨張する。
【0043】
動力伝達装置1は、非接触連結部60を備えている。非接触連結部60は、磁気ギア60bおよび封止板51を有している。磁気ギア60bは、駆動側マグネット20、ポールピース25および固定マグネット40を備えている。
【0044】
駆動側マグネット20は、モータ部11のシャフト14と一体に回転する。ポールピース25は、駆動側マグネット20と固定マグネット40との間で磁束を変調させ、回転部材41と一体に回転する。固定マグネット40は、第1膨張弁113の本体部50に固定されている。
【0045】
駆動側マグネット20は、円筒状であり、モータ部11のロータ13の外周面に、円筒状の介在部材21を介して接合されている。すなわち、モータ部11は、駆動側マグネット20の内側に配置されている。介在部材21は磁性体で形成されている。
【0046】
駆動側マグネット20は、N極20nおよびS極20sからなる一対の磁石が円周方向に沿って少なくとも一組配置されている。本例では、N極20nおよびS極20sは各1個であるので、駆動側マグネット20の極数Pinは2である。
【0047】
駆動側マグネット20の極数Pinは、ロータ13の極数Prからステータ12のスロット数Nsを減算した値と同じになっている。本例では、ロータ13の極数Prは8であり、ステータ12のスロット数Nsは6であるので、駆動側マグネット20の極数Pinは2になっている。
【0048】
封止板51は、第1膨張弁113の内部空間を駆動側空間113aと従動側空間113bとに区画するとともに、従動側空間113bを封止する封止部材である。駆動側空間113aは、駆動側機構部10側の空間であり、従動側空間113bは従動側機構部35側の空間である。
【0049】
封止板51は、従動側空間113bに存在する冷媒(高圧冷媒)が駆動側空間113aに漏れ出すのを防止する。本例では、封止板51は非磁性体(例えば、SUS305)で形成されている。
【0050】
封止板51は、中央部が下方に向かって凹んだ円盤状であり、封止上面部51aと封止円筒部51bと封止底面部51cとを有している。封止上面部51aは、円環板状であり、外縁部が第1膨張弁113の本体部50に固定されている。封止円筒部51bは、円筒状であり、駆動側マグネット20の外径側に位置している。封止底面部51cは、駆動側マグネット20の下方側に位置しており、封止円筒部51bを駆動側空間113a側から塞いでいる。
【0051】
封止底面部51cは、中央部が下方に向かって湾曲した円板状である。封止円筒部51bと封止底面部51cとの境界をなす角部は、直角ではなく、所定の曲率半径で丸められた形状になっていて耐圧性が高められている。
【0052】
封止板51は、耐圧性を向上させるために、封止上面部51a、封止円筒部51bおよび封止底面部51cが一体成形されている。
【0053】
封止底面部51cは、シャフト14および回転部材41の軸方向において、シャフト14と回転部材41との間の空隙に配置されている。すなわち、封止底面部51cは、トルク発生点の少ない場所に配置されている。そのため、封止板51における耐トルク性および耐圧性の確保が容易になっている。
【0054】
ポールピース25は、円筒状であり、封止板51の封止円筒部51bの外径側に配置されている。ポールピース25は、従動側機構部35の回転部材41に接合されている。
【0055】
固定マグネット40は、円筒状であり、ポールピース25の外径側に配置されている。固定マグネット40は、円筒状のバックヨーク56を介して、本体部50(換言すれば、筐体)のうち円筒状の本体円筒部50b(換言すれば、筐体円筒部)に嵌め込まれている。バックヨーク56および本体円筒部50bは磁性体で形成されている。
【0056】
固定マグネット40は、N極40nおよびS極40sからなる一対の磁石が円周方向に沿って略等間隔に複数個配置されている。固定マグネット40の極数Pfは、駆動側マグネット20の極数Pinよりも多くなっている。本例では、N極40nおよびS極40sは各20個であるので、固定マグネット40の極数Pfは40である。
【0057】
固定マグネット40の軸方向長さL2は、駆動側マグネット20の軸方向長さL1よりも長くなっている。これにより、トルク発生点の多いポールピース25と固定マグネット40の間の面積を大きくできる。
【0058】
ポールピース25は、複数個の磁性体部25aおよび複数個の非磁性体部25bを有している。磁性体部25aおよび非磁性体部25bは扇台形状であり、磁性体部25aが円周方向に沿って略等間隔に配されている。非磁性体部25bは、磁性体部25a同士の間に配置されている。例えば、磁性体部25aは軟磁性体(例えば鉄系金属)で形成されており、非磁性体部25bは非磁性体(例えばステンレスまたは樹脂)で形成されている。
【0059】
ポールピース25の極数Ppは、駆動側マグネット20の極数Pinと固定マグネット40の極数Pfとの合計と同じ個数になっている。本例では、駆動側マグネット20の極数Pinは2であり、固定マグネット40の極数Pfは40であるので、ポールピース25の極数Ppは42である。すなわち、磁性体部25aおよび非磁性体部25bは各21個である。すなわち、磁性体部25aの個数Nppは、駆動側マグネット20の極数Pinおよび固定マグネット40の極数Pfに対して、以下の関係になっている。
Npp=(Pin+Pf)/2
ポールピース25の軸方向長さLpは、固定マグネット40の軸方向長さL2よりも短くなっている。これにより、ポールピース25での軸方向への磁束漏れが低減でき、伝達トルクを向上できる。
【0060】
第2膨張弁115の構成は、第1膨張弁113と同様である。
【0061】
次に、本実施形態における動力伝達装置1の作動を説明する。モータ部11のシャフト14が回転して駆動側マグネット20も一体に回転すると、駆動側マグネット20と固定マグネット40との間の磁気的相互作用により、ポールピース25が駆動側マグネット20の回転方向と同じ方向に回転する。
【0062】
このときの減速比は、ポールピース25の極数Ppを駆動側マグネット20の極数Pinで除した値と同じになる。ポールピース25の極数Ppは駆動側マグネット20の極数Pinよりも大きいので、ポールピース25の回転数は駆動側マグネット20の回転数よりも小さくなる。
【0063】
本例では、ポールピース25の極数Ppは42であり、駆動側マグネット20の極数Pinは2であるので、減速比は21となる。
【0064】
これに対し、ポールピース25が固定され、固定マグネット40と同じ極数のマグネットを従動側機構部35の回転部材41に接合させて回転させる構成(以下、この構成を比較例と言う。)では、減速比は20となる。
【0065】
ポールピース25の極数Ppが固定マグネット40の極数Pfよりも大きいので、ポールピース25を回転させる本実施形態では、固定マグネット40と同じ極数のマグネットを回転させる比較例よりも減速比が大きくなる。
【0066】
ポールピース25を回転させる本実施形態においては、ポールピース25は封止板51から独立した部材となる。そのため、従来技術のようにポールピースが回転せず封止板に埋没されている構造と比較して封止板51の耐圧性を向上させることができる。
【0067】
本実施形態では、封止板51は、封止円筒部51bと封止底面部51cとを有している。これにより、封止板51は、中央部が従動側機構部35側に向かって凹んだ円盤状になっている。そのため、封止板51をポールピース25から独立した部材として配置できるので、封止板51の耐圧性を高めることができる。
【0068】
本実施形態では、ポールピース25が有する磁性体25aの個数Nppは、駆動側マグネット20の極数Pinおよび固定マグネット40の極数Pfに対して、以下の関係になっている。
Npp=(Pin+Pf)/2
これにより、駆動側マグネット20の回転力をポールピース25に伝達できる。
【0069】
本実施形態では、固定マグネット40はバックヨーク56の内周面に固定され、バックヨーク56は本体円筒部50bの内周面に固定されている。これにより、固定マグネット40を本体部50に圧入固定しやすくなる。
【0070】
本実施形態では、ステータ12およびロータ13は、駆動側マグネット20の内側に配置されている。これにより、第1膨張弁113の軸方向における体格を小型化できる。
【0071】
本実施形態では、ロータ13と駆動側マグネット20との間に介在部材21が配置されている。これにより、ロータ13を駆動側マグネット20の内側に良好に配置できる。
【0072】
本実施形態では、駆動側マグネット20の軸方向において、ポールピース25は、駆動側マグネット20および固定マグネット40よりも短くなっている。これにより、ポールピース25での軸方向への磁束漏れが低減でき、伝達トルクを向上できる。
【0073】
駆動側マグネット20の軸方向において、固定マグネット40は、駆動側マグネット20よりも長くなっている。これにより、トルク発生点の多いポールピース25と固定マグネット40の間の面積を大きくできる。
【0074】
本実施形態では、駆動側マグネット20の軸方向において、駆動側マグネット20は、ポールピース25よりも長く、かつ固定マグネット40よりも短くなっている。これにより、ポールピース25での軸方向への磁束漏れが低減できるとともに、トルクが発生する面の面積を大きく確保できるので、伝達トルクを向上できる。
【0075】
本実施形態では、モーターケース15の軸合わせ部15aが本体円筒部50bに固定されることによって、駆動側マグネット20をポールピース25とが軸合わせされる。これにより、駆動側マグネット20とポールピース25とを容易に軸合わせできる。
【0076】
本実施形態では、封止円筒部51bは、単一の非磁性体部材で形成されている。これにより、薄肉で耐圧性を確保することが可能になるので、磁気抵抗を低減可能になる。
【0077】
本実施形態では、封止板51の封止上面部51a、封止円筒部51bおよび封止底面部51cは、単一の非磁性体部材で形成されている。これにより、磁気抵抗を一層低減可能になる。
【0078】
(第2実施形態)
上記実施形態では、モータ部11は駆動側マグネット20の内側に配置されているが、本実施形態では、図4図5に示すように、モータ部11は、駆動側マグネット20の外側、かつ駆動側マグネット20に対して従動側機構部35の反対側に配置されている。
【0079】
本実施形態においても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0080】
(第3実施形態)
上記実施形態では、モータ部11のロータ13と磁気ギア60bの駆動側マグネット20とが別部材になっているが、本実施形態では、図6図7に示すように、駆動側マグネット20がモータ部11のロータ13も兼ねている。
【0081】
すなわち、ステータ12は駆動側マグネット20の内側に配置されていて、駆動側マグネット20をロータとして回転させる。これにより、部品点数を削減して構成を簡素化できる。
【0082】
(第4実施形態)
本実施形態では、図8に示すように、ポールピース25が、駆動側マグネット20の上端と固定マグネット40の上端とを結ぶ仮想線lvよりも上方にある。
【0083】
換言すれば、駆動側マグネット20の軸方向において、ポールピース25は、駆動側マグネット20のうち軸受部材49の反対側の端部と固定マグネット40のうち軸受部材49の反対側の端部とを結ぶ仮想線lvよりも軸受部材49の反対側に位置している。これにより、ポールピース25および回転部材41を下方側(軸受部材49側)に押し付ける磁気的作用が発生するので、回転部材41の回転を安定化できる。
【0084】
(第5実施形態)
本実施形態では、図9に示すように、封止板51の封止底面部51cに駆動側軸受け部51dと従動側軸受け部51eとが形成されている。駆動側軸受け部51dは、シャフト14の下端部を回転可能に支持する。従動側軸受け部51eは、回転部材41の上端部を回転可能に支持する。これにより、シャフト14および回転部材41の回転を安定化できる。
【0085】
(第6実施形態)
本実施形態では、第1実施形態の回路部70の具体的構成を示す。図10に示すように、回路部70には、モータ部11である三相モータ11a及びバッテリBが電気的に接続されている。バッテリBは、車両の各種電気機器に電力を供給するもので、例えば、充放電可能な二次電池(本実施形態では、リチウムイオン電池)が採用される。回路部70は、バッテリBからの入力電力の供給を受けて、三相モータ11aを駆動する為の駆動電流を出力する。
【0086】
そして、回路部70は、電子部品として、第1膨張弁113の動作を制御する為のECU等の電子部品を有しており、第1膨張弁113の動作に関する制御部として働く。回路部70は、ロック判定部71を有している。ロック判定部71は、制御部の一部を構成しており、第1膨張弁113の動作に際し、駆動側機構部10で生じた動力が従動側機構部35に伝達されず、従動側にロックが生じているか否かを判定する。
【0087】
具体的に、ロック判定部71は、図12のフローチャートに示すロック判定制御プログラムを実行することによって、従動側がロックし、弁体48に動作エラーが生じているか否かを判定する。ロック判定制御プログラムの詳細については後述する。
【0088】
又、本実施形態に係る回路部70には、入力電流センサ73aが接続されている。入力電流センサ73aは、バッテリBから回路部70に入力される入力電流の値を測定する為のセンサである。第1実施形態では、ロック判定部71は、入力電流センサ73aの検出結果に対して、高速フーリエ変換を使った周波数分析を施し、その分析結果に基づいて、従動側にロックが生じているか否かを判定する。
【0089】
ここで、磁気ギア60bが標準状態にある場合におけるトルク変動(即ち、駆動側マグネット20における回転負荷の変動)について説明する。尚、標準状態とは、駆動側マグネット20とポールピース25の間で動力が好適に伝達され、駆動側マグネット20及びポールピース25が何れも円滑に回転する状態をいう。
【0090】
標準状態において、一回の回転における駆動側マグネット20とポールピース25の間における回転負荷の変動は、駆動側マグネット20の磁極対の数と、固定マグネット40の磁極対の数の最小公倍数となる時点で発生する。
【0091】
例えば、標準状態において、駆動側マグネット20が一秒間に時計回りに21回転し、ポールピース25が一秒間に時計回りに1回転する場合、駆動側マグネット20及びポールピース25における相対的な回転速度差は、1秒間に20回転となる。この為、標準状態における回転負荷の変動は200Hzで発生することになる。
【0092】
続いて、磁気ギア60bがロック状態にある場合における回転負荷の変動について説明する。尚、ロック状態とは、駆動側マグネット20は回転自在な状態であるが、固定マグネット40が何らかの事由で固着している状態を意味する。
【0093】
上述した標準状態の例を用いて、ロック状態を考察すると、固定マグネット40とポールピース25の作用によって、駆動側マグネット20とポールピース25の間の空隙に2極の空間高調波が固定された状態になるため、駆動側マグネットの2極と駆動軸の回転速度から21Hzの回転負荷の変動を生じる。
【0094】
上述のように、駆動側マグネット20は、介在部材21およびシャフト14を介して、モータ部11のロータ13と一体化している。この為、ロック状態における回転負荷の変動が発生すると、駆動側マグネット20の回転負荷の変動は、モータ部11に関する速度フィードバックによって、入力電流の変動として表れる。
【0095】
従って、入力電流センサ73aの検出結果に対して、ロック判定部71によって周波数分析を施すことで、ポールピース25等のロックが発生したことを検知することができる。
【0096】
尚、ロック状態において発生する入力電流の変動に係る周波数は、モータ部11に対する駆動電流の変動に係る周波数とは異なっている為、入力電流の変動に係る周波数を特定することで、ポールピース25等がロックしたことを検知することができる。
【0097】
そして、標準状態における入力電力に対する周波数分析の結果と、ロック時分析結果RLを比較する際に、ある特定の周波数(以下、特定周波数という)に着目することによって、より容易に、ポールピース25等にロックが生じていることがわかる。
【0098】
図11は、入力電流センサ73aの検出結果に対して、ロック判定部71によって周波数分析を施したロック時分析結果RLの一例を示すグラフである。図11に示すロック時分析結果RLからわかるように、特定周波数fsにおいて、入力電流のピークが表れており、ポールピース25等のロックによる回転負荷の変動によるものである。
【0099】
特定周波数fsのピークは、モータ部11の極数Pm(例えば、8)と駆動側マグネット20の極数Pin(例えば、2)が異なっているという条件を満たすことで、より明確に特定することができる。特定周波数fsのピークは、駆動側マグネット20の極数Pinが少ないほど明確に特定することができる。
【0100】
このように、本実施形態に係る動力伝達装置1によれば、ロック判定部71にて入力電流の周波数分析を行った結果について、標準状態とロック状態を比較することで、ポールピース25等にロックが生じているか否かを、容易に判定することができる。
【0101】
続いて、本実施形態に係る動力伝達装置1におけるロック判定制御の内容について、図12を参照して説明する。上述したように、動力伝達装置1を含む第1膨張弁113は、車両に搭載された車両用空調装置100における蒸気圧縮式冷凍サイクル110の構成機器として搭載されている。従って、ロック判定制御は、車両が起動された時点で、ロック判定部71により実行される。
【0102】
先ず、車両の起動と共に実行されるステップS1では、駆動側機構部10を構成するモータ部11の駆動が行われる。この時、モータ部11は、ロータ13を一定回転で作動させる。
【0103】
ステップS2に移行すると、ステップS1における入力電流の検出結果に対する信号分析処理が実行される。即ち、ステップS1におけるモータ部11の駆動に際して検出した入力電流の検出結果に対して、高速フーリエ変換を用いた周波数分析が、ロック判定部71によって行われる。
【0104】
ステップS3では、ロック判定条件を満たすか否かが判定される。ロック判定条件とは、ポールピース25等がロックしていると判定される条件を意味しており、第1実施形態では、入力電流に対する周波数分析の結果にて、特定周波数fsにおける入力電流の値が基準値を超えることである。
【0105】
尚、基準値とは、標準状態を基準として定められ、例えば、標準状態における入力電流に対する周波数分析の結果にて、特定周波数fsにおける入力電流の値に基づいて定められる。
【0106】
入力電流に対する周波数分析の結果にて、特定周波数fsにおける入力電流の値が基準値を超えていた場合、ステップS12に処理を移行し、そうでない場合は、ステップS4に処理を進める。
【0107】
ステップS4においては、エアコン起動信号を受信したか否かが判定される。エアコン起動信号は、車両用空調装置を構成する空調制御装置から出力される制御信号であり、例えば、車両の操作パネルを用いて、空調運転の開始を指示する操作が行われた場合に出力される。エアコン起動信号を受信していない場合は、エアコン起動信号を受信するまで、処理を待機し、エアコン起動信号を受信した場合、ステップS5に処理を進める。
【0108】
ステップS5に移行すると、車両用空調装置における空調運転の開始に伴う初期化処理の一つとして、駆動側機構部10を構成するモータ部11の駆動が行われる。この場合もステップS1と同様に、モータ部11は、ロータ13を一定回転で作動させる。
【0109】
ステップS6においては、ステップS5における入力電流の検出結果に対する信号分析処理が実行される。即ち、ステップS5におけるモータ部11の駆動に際して検出した入力電流の検出結果に対して、高速フーリエ変換を用いた周波数分析が、ロック判定部71によって行われる。
【0110】
ステップS7では、ステップS3と同様に、ロック判定条件を満たすか否かが判定される。入力電流に対する周波数分析の結果にて、特定周波数fsにおける入力電流の値が基準値を超えていた場合、ステップS12に処理を移行し、そうでない場合は、ステップS8に処理を進める。
【0111】
ステップS8においては、ステップS4~ステップS7において、ポールピース25等のロックが発生していないと判定されている為、エアコン起動信号に基づいて、車両用空調装置における空調運転が開始される。
【0112】
この時、車両用空調装置では、空調制御用のセンサ群の検出信号および操作パネルからの操作信号に基づいて運転モードが選定され、選定された運転モードに基づいて車両用空調装置の各構成機器に対する制御信号が出力される。従って、第1膨張弁113に対しては、運転モードに基づく開度制御を実現する為に、モータ部11の駆動制御信号が出力される。
【0113】
ステップS9では、車両用空調装置の空調運転中において、駆動側機構部10を構成するモータ部11の駆動が行われる。車両用空調装置の空調運転が実行されている為、第1膨張弁113のモータ部11には、空調運転の態様に応じた絞り開度を実現する為の制御信号が出力され、モータ部11は、制御信号に基づいてロータ13を作動させる。
【0114】
ステップS10においては、ステップS9における第1膨張弁113の開度制御に伴う入力電流の検出結果に対する信号分析処理が実行される。即ち、ステップS10におけるモータ部11の駆動に際して検出した入力電流の検出結果に対して、高速フーリエ変換を用いた周波数分析が、ロック判定部71によって行われる。
【0115】
ステップS11では、ステップS3、ステップS7と同様に、ロック判定条件を満たすか否かが判定される。入力電流に対する周波数分析の結果にて、特定周波数fsにおける入力電流の値が基準値を超えていた場合、ステップS12に処理を移行し、そうでない場合は、ステップS9に処理を戻し、空調運転中におけるポールピース25等のロック判定を継続する。
【0116】
ステップS12に移行すると、ステップS3、ステップS7、ステップS11にてロック判定条件を満たすと判定されたことに基づいて、ロック発生信号を出力する。ロック発生信号は、ポールピース25や回転部材41が固着してロックしている状態であることを示す信号である。ロック発生信号を出力した後、ロック判定制御を終了する。
【0117】
尚、ロック発生信号の出力先としては、例えば、車両用空調装置の空調制御装置や、車両本体側の制御装置にすることができる。ロック発生信号を空調制御装置に対して出力した場合、空調制御装置は、動力伝達装置1の動作(即ち、第1膨張弁113の動作)を停止させる。又、ステップS7、ステップS11において、ロック判定条件を満たした場合については、車両用空調装置の空調運転を停止させても良い。
【0118】
本実施形態に係る動力伝達装置1によれば、図12に示すロック判定制御を実行することによって、ポールピース25等にロックが発生しているか否かを常時監視することができる。つまり、ポールピース25等にロックが発生した時点で、ロックの発生を認知して、ロックを解消する為の対応策をとることができる。
【0119】
以上説明したように、本実施形態に係る動力伝達装置1によれば、駆動側機構部10のシャフト14と、従動側機構部35の回転部材41が、非接触連結部60である磁気ギア60bにて、磁力を利用して非接触で連結されている。この為、シャフト14と共に駆動側マグネット20が回転している状態で、ポールピース25及び回転部材41がロックした場合、駆動側マグネット20と固定マグネット40の間に作用する磁力の影響で、シャフト14及び駆動側マグネット20の回転負荷が周期的に変動する。
【0120】
動力伝達装置1によれば、駆動側機構部10における回転負荷の変動を用いることによって、別に区画された従動側機構部35におけるポールピース25のロックが発生しているか否かを判定することができる。
【0121】
図2図3に示すように、動力伝達装置1における非接触連結部60は、駆動側マグネット20と固定マグネット40の間に、ポールピース25を配置した磁気ギア60bにより構成されている。そして、この構成において、モータ部11の極数Pmが駆動側マグネット20におけるN極20n及びS極20sを合算した極数Pinと異なっている。
【0122】
これにより、図12に示すロック判定制御における周波数分析において、特定周波数fsを明確に区別することができ、ロック判定条件を満たすか否かの判定精度を向上させることができる。
【0123】
そして、図10図12に示すように、本実施形態に係る動力伝達装置1において、モータ部11の入力電流に対する周波数分析が行われ、特定周波数fsにおける入力電流が基準値を超えた場合に、ポールピース25のロックが発生していると判定される。
【0124】
これにより、比較的検出が容易な入力電流の変動に基づいて、駆動側機構部10とは区画された従動側機構部35におけるポールピース25のロックを、精度良く判定することができる。
【0125】
(第6実施形態の変形例)
上述した第6実施形態においては、モータ部11の極数Pmと駆動側マグネット20の極数Pinが異なるように構成されていることを条件として、ロック時分析結果RLにおける特定周波数fsの値を用いて、ロック判定条件を満たすか否かを判定していた。
【0126】
第6実施形態に係る変形例として、ロック判定条件を、2種類の特定周波数fs及び特定周波数fssの値を用いるように構成することも可能である。
【0127】
この態様を採用する際の条件の一つとして、モータ部11の極数Pmの1/2が、駆動側マグネット20における極数Pinの1/2と固定マグネット40における極数Pfの1/2の最小公倍数と異なっていることが挙げられる。この条件を満たすことによって、図11に示すロック時分析結果RLにおける特定周波数fsにおけるピークを用いて、ロック判定条件を満たすか否かを判定することができる。
【0128】
又、モータ部11の極数Pmとモータ部11におけるスロット数Nsの最小公倍数が、駆動側マグネット20における極数Pinの1/2と固定マグネット40における極数Pfの1/2の最小公倍数と異なっているという条件を満たすことで、特定周波数fssの値を利用できる。図11に示すように、特定周波数fssは、特定周波数fsよりも高い周波数を示している。
【0129】
このように、ロック判定条件に際して、特定周波数fsの値による判定と、特定周波数fssの値による判定を用いることによって、より高い精度をもって、ポールピース25等のロックが生じているか否かを判定することができる。
【0130】
(第7実施形態)
続いて、上述した実施形態と異なる第7実施形態について、図13図14を参照して説明する。第7実施形態では、ポールピース25等のロックが発生していることを判定する判定手法が上述した実施形態と相違している。駆動側機構部10、従動側機構部35等の基本的な構成については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0131】
図13に示すように、第7実施形態に係る動力伝達装置1において、駆動側機構部10を構成するモータ部11として、三相モータ11aが採用されている。そして、第7実施形態に係る回路部70は、ロック判定部71と、三相インバータ回路72と、駆動電流センサ73bを有している。
【0132】
ロック判定部71は、第6実施形態と同様である。又、駆動電流センサ73bは、三相モータ11aにおける各相のステータコイル12aに供給される駆動電流を検出する為のセンサである。
【0133】
そして、三相インバータ回路72は、バッテリBから供給される直流電力を交流電力に変換する電力変換回路であり、複数のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を組み合わせて構成されている。
【0134】
図13に示すように、三相インバータ回路72は、バッテリBと三相モータ11aと電気的に接続されており、バッテリBの直流電力を三相交流に変換して、三相モータ11aの各相のステータコイル12aに供給する。
【0135】
第7実施形態に係る三相インバータ回路72は、整流回路(RCF)と、包絡線検波器(ENV)とを有している。整流回路は、三相信号をアナログ信号に変換することにより三相交流波形を生成すると共に、三相交流波形を全波整流する。包絡線検波器は、全波整流波形の包絡線を検出して出力する。
【0136】
次に、第7実施形態におけるロック判定制御について、図14を参照して説明する。非接触連結部60がロック状態にある場合、駆動側マグネット20側は回転するが、ポールピース25は停止した状態となる。この為、駆動側マグネット20及びポールピース25の間における回転負荷の変動は、上述した実施形態と同様に、磁気的相互作用によって一定の周期で発生する。
【0137】
この為、回転負荷の変動に伴って、駆動側マグネット20の回転速度が変動することになる。モータ部11の駆動電流は、駆動側マグネット20等の回転速度と同期した周波数で流れる為、回転負荷の変動に伴って、駆動電流の周波数も変動し、駆動電流の包絡線にも表れる。
【0138】
第7実施形態では、ロック判定条件を満たすか否かを判定する際に、三相インバータ回路72の包絡線検波器から出力される駆動電流の包絡線に対する周波数分析が行われる。図14に、駆動電流の包絡線に対する周波数分析の結果の一例を示す。図14には、標準分析結果RSと、ロック時分析結果RLが示されている。標準分析結果RSは、標準状態における駆動電流の包絡線に対する周波数分析の結果を示している。そして、ロック時分析結果RLは、ロック状態における駆動電流の包絡線に対する周波数分析の結果を示している。
【0139】
上述したように、駆動電流の包絡線の値は、ポールピース25等がロックすると、回転負荷の変動に伴って変動する。この為、図14に示すように、回転負荷の変動に対応する特定周波数fsにおいて、ロック時分析結果RLにおける値のピークは、標準分析結果RSの値よりも突出して大きな値を示す。
【0140】
従って、第5実施形態では、駆動電流の包絡線に対して、ロック判定部71によって周波数分析を施すことで、ポールピース25等のロックが発生したことを検知することができる。
【0141】
そして、第5実施形態におけるロック判定制御においては、ロック判定条件として、駆動電流の包絡線に対する周波数分析の結果において、特定周波数fsにおける駆動電流の包絡線の値が基準値を超えていることが採用される。この場合の基準値は、標準状態を基準として定められ、例えば、標準状態における駆動電流の包絡線に対する周波数分析の結果(即ち、標準分析結果RS)にて、特定周波数fsにおける駆動電流の包絡線の値に基づいて定められる。
【0142】
この場合、特定周波数fsにおける駆動電流の包絡線の値が基準値を超えていれば、駆動側マグネット20における回転負荷の変動が発生しており、ポールピース25等が固着して、ロック状態にあると判定することができる。そうでない場合は、駆動側マグネット20とポールピース25の間で、適切に動力が伝達され、駆動側マグネット20及びポールピース25が回転可能な標準状態であると判定することができる。
【0143】
以上説明したように、第7実施形態に係る動力伝達装置1によれば、三相モータ11aの駆動電流の包絡線に対して周波数分析を行う構成とした場合であっても、上述した実施形態と同様の構成から、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0144】
即ち、第7実施形態に係る動力伝達装置1によれば、駆動電流の包絡線の変動に基づいて、駆動側機構部10とは別に区画された従動側機構部35におけるポールピース25のロックを、精度良く判定することができる。
【0145】
(第8実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第8実施形態について、図15図16を参照して説明する。第8実施形態では、モータ部11及びポールピース25等のロックが発生していることを判定する判定手法が上述した実施形態と相違している。その他の従動側機構部35等の構成については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0146】
図15に示すように、第8実施形態に係る動力伝達装置1においては、モータ部11として、直流モータ11cが採用されている。直流モータ11cは、整流子及びブラシを有する直流整流子電動機である。
【0147】
そして、第8実施形態に係る回路部70は、ロック判定部71と、駆動電流センサ73bを有している。回路部70には、バッテリBと直流モータ11cが電気的に接続されている。ロック判定部71は、上述した実施形態と同様である。又、第8実施形態に係る駆動電流センサ73bは、直流モータ11cに供給される駆動電流を検出する為のセンサである。
【0148】
次に、第8実施形態におけるロック判定制御について、図16を参照して説明する。第6実施形態に係る動力伝達装置1では、モータ部11として、整流子及びブラシを有する直流モータ11cを採用している。従って、直流モータ11cにおいて、ロータ13の回転方向を所定方向に保つために、ロータ13の回転位相が予め定められた位相となった時点で、整流子及びブラシによって電流の向きが切り替えられる。
【0149】
従って、直流モータ11cの駆動電流に対して周波数分析を行った場合、図16に示すように、標準分析結果RS及びロック時分析結果RLの何れにおいても、整流子及びブラシによる電流切替に起因するピークが表れる。
【0150】
そして、第8実施形態においても、非接触連結部60がロック状態にある場合、駆動側マグネット20及びポールピース25の間における回転負荷の変動は、上述した実施形態と同様に、磁気的相互作用によって一定の周期で発生する。回転負荷が変動する周期は、整流子及びブラシの電流切替に関する周期とは異なる為、特定周波数fsにおいて、ロック時分析結果RLに係る駆動電流のピークは、標準分析結果RSに係る駆動電流の値と明確に区別することができる。
【0151】
従って、第8実施形態では、直流モータ11cの駆動電流に対して、ロック判定部71によって周波数分析を施すことで、ポールピース25等のロックが発生したことを検知することができる。
【0152】
そして、第8実施形態におけるロック判定制御においては、ロック判定条件として、直流モータ11cの駆動電流に対する周波数分析の結果において、特定周波数fsにおける駆動電流が基準値を超えていることが採用される。この場合の基準値は、標準状態を基準として定められ、例えば、標準状態における直流モータ11c駆動電流に対する周波数分析の結果(即ち、標準分析結果RS)にて、特定周波数fsにおける駆動電流の値に基づいて定められる。
【0153】
この場合、特定周波数fsにおける直流モータ11cの駆動電流の値が基準値を超えていれば、駆動側マグネット20における回転負荷の変動が発生しており、ポールピース25等が固着して、ロック状態にあると判定することができる。そうでない場合は、駆動側マグネット20と固定マグネット40の間で、適切に動力が伝達され、駆動側マグネット20及びポールピース25が回転可能な標準状態であると判定することができる。
【0154】
以上説明したように、第8実施形態に係る動力伝達装置1によれば、直流モータ11cの駆動電流に対する周波数分析を行う構成とした場合であっても、上述した実施形態と同様の構成から、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0155】
即ち、第8実施形態に係る動力伝達装置1によれば、直流モータ11cの駆動電流の変動に基づいて、駆動側機構部10とは別に区画された従動側機構部35におけるポールピース25のロックを、精度良く判定することができる。
【0156】
(第9実施形態)
続いて、上述した実施形態と異なる第9実施形態について、図17図18を参照して説明する。第9実施形態では、ポールピース25等のロックが発生していることを判定する判定手法が上述した実施形態と相違している。その他の従動側機構部35等の構成については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0157】
図17に示すように、第9実施形態に係る動力伝達装置1において、駆動側機構部10を構成するモータ部11として、三相モータ11aが採用されている。そして、第7実施形態に係る回路部70は、ロック判定部71と、三相インバータ回路72と、判定電圧特定部74を有している。
【0158】
ロック判定部71は、上述した実施形態と同様である。そして、三相インバータ回路72は、上述した実施形態と同様に、バッテリBと三相モータ11aと電気的に接続されており、バッテリBの直流電力を三相交流に変換して、三相モータ11aの各相のステータコイル12aに供給する。
【0159】
第9実施形態に係る三相インバータ回路72は、モータ部11のオン時間とオフ時間の比であるデューティー比を決定し、決定されたディーティー比に基づいて、直流モータ11cに対する電力供給を行う。即ち、三相モータ11aに対するPWM制御が行われる。
【0160】
具体的には、予め定められた三角波と、判定電圧とを比較して、三角波が判定電圧よりも高い期間と、三角波が判定電圧よりも低い期間の比により、三相モータ11aに供給される電圧のデューティー比が定められる。判定電圧特定部74は、デューティー比を決定する為の判定電圧を特定する。判定電圧特定部74は、例えば、コンパレータに対して、三角波と判定電圧が入力される場合に、コンパレータに入力される判定電圧の値を特定する。
【0161】
次に、第9実施形態におけるロック判定制御について、図18を参照して説明する。上述したように、第9実施形態における三相モータ11aの作動は、PWM制御によって制御されている。従って、デューティー比が高いほど、三相モータ11aにおけるロータ13の回転速度は速くなり、デューティー比が低くなれば、ロータ13の回転速度は遅くなる。
【0162】
この為、第9実施形態において、ポールピース25等が固着してロック状態になって、駆動側マグネット20に係る回転負荷が変動すると、回転負荷の変動に追従して、デューティー比が変動することになる。上述したように、デューティー比は、三角波と判定電圧を比較することによって定められる為、判定電圧がディーティー比の変動と同じ周期で変動する。
【0163】
一方、標準状態である場合には、駆動側マグネット20とポールピース25の間の回転負荷に大きな変動が発生しない為、デューティー比及び判定電圧についても、大きな変動は生じない。
【0164】
第9実施形態に係るロック判定制御においては、判定電圧に対して周波数分析を行っている。図18に示すように、ロック時分析結果RLでは、回転負荷の変動に対応する特定周波数fsにて、判定電圧のピークが表れる。一方、標準状態の場合、回転負荷の大きな変動はなく、駆動側マグネット20及びポールピース25が適切に回転している。この為、標準分析結果RSにおいては、特定周波数fsにて、判定電圧の値が大きく変動することはない。
【0165】
従って、第9実施形態では、PWM制御に係る判定電圧に対して、ロック判定部71によって周波数分析を施すことで、ポールピース25等のロックが発生したことを検知することができる。
【0166】
そして、第9実施形態におけるロック判定制御においては、ロック判定条件として、PWM制御に係る判定電圧に対する周波数分析の結果において、特定周波数fsにおける判定電圧が基準値を超えていることが採用される。この場合の基準値は、標準状態を基準として定められ、例えば、標準状態における判定電圧に対する周波数分析の結果(即ち、標準分析結果RS)にて、特定周波数fsにおける判定電圧の値に基づいて定められる。
【0167】
この場合、特定周波数fsにおける判定電圧の値が基準値を超えていれば、駆動側マグネット20における回転負荷の変動が発生しており、ポールピース25等が固着して、ロック状態にあると判定することができる。そうでない場合は、駆動側マグネット20とポールピース25の間で、適切に動力が伝達され、駆動側マグネット20及びポールピース25が回転可能な標準状態であると判定することができる。
【0168】
以上説明したように、第9実施形態に係る動力伝達装置1によれば、モータ部11のPWM制御に係る判定電圧に対して周波数分析を行う構成とした場合であっても、上述した実施形態と同様の構成から、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0169】
即ち、第9実施形態に係る動力伝達装置1によれば、判定電圧の変動に基づいて、駆動側機構部10とは別に区画された従動側機構部35におけるポールピース25のロックを、精度良く判定することができる。
【0170】
(第10実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第10実施形態について、図19図20を参照して説明する。第10実施形態では、ポールピース25等のロックが発生していることを判定する判定手法が上述した実施形態と相違している。その他の従動側機構部35等の構成については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0171】
図19に示すように、第10実施形態に係る動力伝達装置1において、駆動側機構部10を構成するモータ部11として、三相モータ11aが採用されている。そして、第8実施形態に係る回路部70は、ロック判定部71と、三相インバータ回路72と、駆動電流センサ73uを有している。
【0172】
ロック判定部71は、上述した実施形態と同様である。そして、三相インバータ回路72は、上述した実施形態と同様に、バッテリBと三相モータ11aと電気的に接続されており、バッテリBの直流電力を三相交流に変換して、三相モータ11aの各相のステータコイル12aに供給する。
【0173】
第10実施形態に係る駆動電流センサ73uは、三相モータ11aに対するU相、V相、W相のうち、U相の駆動電流を検出するセンサである。駆動電流センサ73bは、三相モータ11aに対する駆動電流のうち、いずれか一相に係る駆動電流を検出すればよい。
【0174】
次に、第10実施形態におけるロック判定制御について、図20を参照して説明する。非接触連結部60がロック状態にある場合、駆動側マグネット20側は回転するが、ポールピース25は停止した状態となる。この為、駆動側マグネット20及びポールピース25の間における回転負荷の変動は、上述した実施形態と同様に、磁気的相互作用によって一定の周期で発生する。
【0175】
ポールピース25が停止している為、駆動側マグネット20が回転する際に、駆動側マグネット20と固定マグネット40の間において、磁気が吸引するように作用する状態と、磁気が反発するように作用する状態が生じる。駆動側マグネット20側の回転速度は、固定マグネット40との間における磁気の吸引及び反発の影響によって、加速及び減速する。モータ部11の駆動電流は、駆動側マグネット20等の回転速度と同期した周波数で流れる為、回転速度の変動に伴って、駆動電流の周波数も変動する。
【0176】
尚、以下の説明では、固定マグネット40との間の磁力の影響で回転速度が遅くなった場合の特定周波数を第1特定周波数fsaと言い、固定マグネット40との間の磁力の影響で回転速度が速くなった場合の特定周波数を第2特定周波数fsbと言う。
【0177】
一方、標準状態にある場合は、駆動側マグネット20及びポールピース25は、一定の回転速度で回転する為、駆動電流の周波数も一定となる。標準状態における一定の回転速度に対応する周波数を標準周波数fcという。
【0178】
そして、第10実施形態に係るロック判定制御では、三相モータ11aに対するいずれか一相の駆動電流に対して周波数分析を行っている。図20に示すように、標準分析結果RSでは、標準周波数fcにて駆動電流のピークが表れる。
【0179】
一方、ロック時分析結果RLにおいては、標準周波数fcよりも小さな第1特定周波数fsaにて、駆動電流のピークが表れる。第1特定周波数fsaにおける駆動電流は、回転負荷の変動によって駆動側マグネット20の回転速度が遅くなった時点の値を示している。
【0180】
又、ロック時分析結果RLでは、標準周波数fcよりも大きな第2特定周波数fsbにおいて、駆動電流のピークが表れる。第2特定周波数fsbにおける駆動電流は、回転負荷の変動によって駆動側マグネット20の回転速度が速くなった時点の値を示している。
【0181】
上述したように、標準状態であるならば、駆動側マグネット20及びポールピース25は一定の回転速度で回転している為、標準周波数fcにピークが表れ、第1特定周波数fsa及び第2特定周波数fsbにピークが表れることはない。
【0182】
従って、第10実施形態では、三相モータ11aに対するいずれか一相の駆動電流に対して周波数分析を施し、第1特定周波数fsa及び第2特定周波数fsbの値を比較することで、ポールピース25等のロックが発生したことを検知できる。
【0183】
そして、第10実施形態におけるロック判定制御では、ロック判定条件として、三相モータ11aのいずれか一相の駆動電流に対する周波数分析の結果にて、第1特定周波数fsa及び第2特定周波数fsbにおける駆動電流が基準値を超えていることが採用される。
【0184】
この場合の基準値は、標準状態を基準として定められ、例えば、第1特定周波数fsaに係る基準値は、標準分析結果RSにおいて、第1特定周波数fsaにおける駆動電流の値に基づいて定められる。又、第2特定周波数fsbに係る基準値は、標準分析結果RSにおいて、第2特定周波数fsbにおける駆動電流の値に基づいて定められる。
【0185】
第1特定周波数fsaにおける駆動電流の値が基準値を超えていれば、駆動側マグネット20における回転負荷の変動が発生しており、ポールピース25等が固着して、ロック状態にあると判定することができる。そうでない場合は、駆動側マグネット20とポールピース25の間で、適切に動力が伝達され、駆動側マグネット20及びポールピース25が回転可能な標準状態であると判定することができる。
【0186】
第1特定周波数fsa及び第2特定周波数fsbの何れにおいても、駆動電流の値がそれぞれの基準値を超えていた場合に、ポールピース25等のロックが発生していると判定することで、より確実に、ロック状態の発生を検知することができる。
【0187】
尚、第1特定周波数fsa及び第2特定周波数fsbのいずれか一方において、駆動電流の値がそれぞれの基準値を超えていた場合に、ロック状態が発生していると判定するように構成しても良い。
【0188】
以上説明したように、第10実施形態に係る動力伝達装置1によれば、三相モータ11aのいずれか一相の駆動電流に対して周波数分析を行う構成とした場合であっても、上述した実施形態と同様の構成から、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0189】
即ち、第10実施形態に係る動力伝達装置1によれば、三相モータ11aのいずれか一相の駆動電流の変動に基づいて、駆動側機構部10とは別に区画された従動側機構部35におけるポールピース25のロックを、精度良く判定することができる。
【0190】
(第11実施形態)
続いて、上述した実施形態と異なる第11実施形態について、図21図22を参照して説明する。第11実施形態では、ポールピース25等のロックが発生していることを判定する判定手法が上述した実施形態と相違している。その他の従動側機構部35等の構成については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0191】
図21に示すように、第11実施形態に係る動力伝達装置1において、駆動側機構部10を構成するモータ部11として、三相モータ11aが採用されている。そして、第11実施形態に係る回路部70は、ロック判定部71と、三相インバータ回路72と、線間電圧センサ73cを有している。
【0192】
ロック判定部71は、上述した実施形態と同様である。そして、三相インバータ回路72は、上述した実施形態と同様に、バッテリBと三相モータ11aと電気的に接続されており、バッテリBの直流電力を三相交流に変換して、三相モータ11aの各相のステータコイル12aに供給する。
【0193】
線間電圧センサ73cは、三相モータ11aに対する三相のうち、いずれか二相の間の電圧の値を検出するセンサである。線間電圧センサ73cは、例えば、三相モータ11aに対するU相、V相、W相のうち、U相とV相の間の線間電圧の値を検出する。
【0194】
次に、第11実施形態におけるロック判定制御について、図22を参照して説明する。上述したように、ロック状態にある場合、駆動側マグネット20及びポールピース25の間における回転負荷の変動は、上述した実施形態と同様に、磁気的相互作用によって一定の周期で発生する。
【0195】
そして、ポールピース25が停止している為、駆動側マグネット20が回転する際に、駆動側マグネット20と固定マグネット40の間において、磁気が吸引するように作用する状態と、磁気が反発するように作用する状態が生じる。この為、駆動側マグネット20側の回転速度は、固定マグネット40との間における磁気の吸引及び反発の影響によって加速及び減速する。モータ部11の駆動電流は、駆動側マグネット20等の回転速度と同期した周波数で流れる為、回転速度の変動に伴って、三相モータ11aにおけるいずれか二相の線間電圧も変動する。
【0196】
そして、第11実施形態に係るロック判定制御では、三相モータ11aのいずれか二相の線間電圧に対して周波数分析を行っている。図22に示すように、標準分析結果RSでは、標準周波数fcにて線間電圧のピークが表れる。
【0197】
一方、ロック時分析結果RLでは、第1特定周波数fsa及び第2特定周波数fsbにて、駆動電流のピークが表れる。第1特定周波数fsaにおける線間電圧は、回転負荷の変動によって駆動側マグネット20の回転速度が遅くなった時点の値を示している。第2特定周波数fsbにおける線間電圧は、回転負荷の変動によって駆動側マグネット20の回転速度が速くなった時点の値を示している。
【0198】
上述したように、標準状態であるならば、駆動側マグネット20及びポールピース25は一定の回転速度で回転している為、標準周波数fcにピークが表れ、第1特定周波数fsa及び第2特定周波数fsbにピークが表れることはない。
【0199】
従って、第11実施形態では、三相モータ11aのいずれか二相の線間電圧に対して周波数分析を施し、第1特定周波数fsa及び第2特定周波数fsbの値を比較することで、ポールピース25等のロックが発生したことを検知できる。
【0200】
そして、第11実施形態におけるロック判定制御では、ロック判定条件として、三相モータ11aのいずれか二相の線間電圧に対する周波数分析の結果にて、第1特定周波数fsa及び第2特定周波数fsbにおける線間電圧が基準値を超えていることが採用される。
【0201】
この場合の基準値は、標準状態を基準として定められ、例えば、第1特定周波数fsaに係る基準値は、標準分析結果RSにおいて、第1特定周波数fsaにおける線間電圧の値に基づいて定められる。又、第2特定周波数fsbに係る基準値は、標準分析結果RSにおいて、第2特定周波数fsbにおける線間電圧の値に基づいて定められる
第1特定周波数fsaにおける線間電圧の値が基準値を超えていれば、駆動側マグネット20における回転負荷の変動が発生しており、ポールピース25等がロック状態にあると判定することができる。そうでない場合は、駆動側マグネット20及びポールピース25が回転可能な標準状態であると判定することができる。
【0202】
第1特定周波数fsa及び第2特定周波数fsbの何れにおいても、線間電圧の値がそれぞれの基準値を超えていた場合に、ポールピース25等のロックが発生していると判定することで、より確実に、ロック状態の発生を検知することができる。
【0203】
以上説明したように、第11実施形態に係る動力伝達装置1によれば、三相モータ11aの線間電圧に対して周波数分析を行う構成とした場合であっても、上述した実施形態と同様の構成から、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0204】
即ち、第11実施形態に係る動力伝達装置1によれば、三相モータ11aの線間電圧の変動に基づいて、駆動側機構部10とは別に区画された従動側機構部35におけるポールピース25のロックを、精度良く判定することができる。
【0205】
(第12実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第12実施形態について、図23図24を参照して説明する。第12実施形態では、ポールピース25等のロックが発生していることを判定する判定手法が上述した実施形態と相違している。その他の従動側機構部35等の構成については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0206】
第12実施形態に係る動力伝達装置1では、回路部70は、ロック判定部71と、加速度センサ73dを有している。図23に示すように、加速度センサ73dは、駆動側機構部10のモーターケース15に配置されており、駆動側機構部10に生じた加速度の変化を検出する。従って、第12実施形態に係る動力伝達装置1では、駆動側機構部10のモータ部11の作動によって生じた振動を、加速度センサ73dによって検出することができる。
【0207】
次に、第12実施形態におけるロック判定制御について、図24を参照して説明する。上述したように、標準状態にある場合、駆動側マグネット20及びポールピース25の間における回転負荷の変動は、ほとんどなく、駆動側マグネット20及びポールピース25が一体的に回転する。つまり、駆動側機構部10は、駆動側マグネット20及びポールピース25が一体的に回転することにより一定の周期で振動する。
【0208】
一方、ロック状態にある場合、ポールピース25が停止している為、駆動側マグネット20が回転する際に、固定マグネット40との間における磁気的相互作用によって回転負荷が変動する。回転負荷の変動によって、駆動側マグネット20及びシャフト14の回転速度が変化する為、モータ部11を含む駆動側機構部10には、回転負荷の変動に起因した振動が生じる。
【0209】
ロック状態における振動の発生周期は、駆動側マグネット20と固定マグネット40の間における磁気の影響によって、標準状態における振動の発生周期と相違する。これにより、加速度センサ73dによって、駆動側機構部10に生じた振動の周期を分析することで、ポールピース25等のロックが生じているか否かを判定できる。
【0210】
そして、第12実施形態に係るロック判定制御では、加速度センサ73dの検出信号に対して周波数分析を行っている。図24に示すように、標準分析結果RSでは、標準周波数fcにて加速度のピークが表れる。標準周波数fcは、標準状態において、駆動側マグネット20及びポールピース25の回転による振動の発生周期に対応している。
【0211】
一方、ロック時分析結果RLでは、特定周波数fsにて、加速度のピークが表れる。特定周波数fsにおける加速度のピークは、回転負荷の変動によって駆動側機構部10の振動に起因している。
【0212】
上述したように、標準状態であるならば、駆動側マグネット20及びポールピース25は一定の回転速度で回転している為、標準周波数fcにピークが表れ、特定周波数fsに加速度のピークが表れることはない。
【0213】
従って、第12実施形態では、加速度センサ73dの検出信号に対して周波数分析を施し、特定周波数fsの値を比較することで、ポールピース25等のロックが発生したことを検知できる。
【0214】
そして、第12実施形態におけるロック判定制御では、ロック判定条件として、加速度センサ73dの検出信号に対する周波数分析の結果にて、特定周波数fsにおける加速度の値が基準値を超えていることが採用される。この場合の基準値は、標準状態を基準として定められ、例えば、標準分析結果RSにおいて、特定周波数fsにおける加速度の値に基づいて定められる。
【0215】
特定周波数fsにおける加速度の値が基準値を超えていれば、駆動側マグネット20における回転負荷の変動が発生しており、ポールピース25等がロック状態にあると判定することができる。そうでない場合は、駆動側マグネット20及びポールピース25が回転可能な標準状態であると判定することができる。
【0216】
以上説明したように、第12実施形態に係る動力伝達装置1によれば、加速度センサ73dで検出された加速度に対する周波数分析を行う構成とした場合であっても、上述した実施形態と同様の構成から、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0217】
即ち、第12実施形態に係る動力伝達装置1によれば、加速度センサ73dで検出される加速度の変動に基づいて、駆動側機構部10とは別に区画された従動側機構部35におけるポールピース25のロックを、精度良く判定することができる。
【0218】
(第13実施形態)
上記第1実施形態等ではモータ部11のステータ12およびロータ13が磁気ギア60bの駆動側マグネット20の内側に配置されている。これにより、ステータ12、ロータ13および駆動側マグネット20が径方向に並ぶこととなるため、駆動側マグネット20によってモータ部11に誘起電圧が発生し、回転抵抗となる。
【0219】
本実施形態は、上記点に鑑みて、動力伝達装置1の磁気ギア60bによって第1膨張弁113のモータ部11に回転抵抗が生じることを抑制することを目的とする。
【0220】
図25図26に示すように、本実施形態のモータ部11は三相モータ11aである。円筒状のロータ13は、ステータ12の径方向外側に配置されている。
【0221】
ステータ12のスロット数Nsは6である。したがって、U相、V相、W相の各相にスロットが2つずつある。ステータ12の6つのスロットは、周方向にU相のスロット12U、V相のスロット12V、W相のスロット12W、U相のスロット12U、V相のスロット12V、W相のスロット12Wの順番に配置されている。ステータ12の6つのスロット12U、12V、12W、12U、12V、12Wは、周方向に均等に配置されている。ステータ12の6つのスロット12U、12V、12W、12U、12V、12Wは、周方向に60度毎に配置されている。
【0222】
したがって、ステータ12の6つのスロット12U、12V、12W、12U、12V、12Wのうち、同じ相の一対のスロットは、周方向に180度毎に配置されている。換言すれば、ステータ12の6つのスロット12U、12V、12W、12U、12V、12Wのうち、同じ相の一対のスロットは、互いに向かい合う位置に配置されている。
【0223】
ステータ12のステータコイル12aの巻き方向は、全てのスロットにおいて互いに同一方向になっている。
【0224】
駆動側マグネット20は、ロータ13の径方向外側にて、ロータ13と同軸上に配置されている。
【0225】
駆動側マグネット20の極数Pinは2である。したがって、駆動側マグネット20の極対数は1である。駆動側マグネット20のN極20nおよびS極20sは、周方向に交互かつ均等に設けられている。駆動側マグネット20のN極20nおよびS極20sは、周方向に180度ずつ設けられている。
【0226】
三相モータ11aの各相の2つのスロットにおいて、駆動側マグネット20のN極40nおよびS極40sとの位置関係が互いに逆になり、駆動側マグネット20の磁束が逆位相になる。
【0227】
そのため、図27に示すように、三相モータ11aの1つの相の2つのスロットにおいて、駆動側マグネット20による誘起電圧が逆位相になり互いに打ち消し合って相殺されるので、三相モータ11aの1つの相の誘起電圧の合計が0になる。他の2つの相においても同様に、誘起電圧の合計が0になる。
【0228】
したがって、各相のスロットにおいて、駆動側マグネット20による誘起電圧が相殺されるので、モータ部11における回転抵抗を低減できる。
【0229】
本実施形態では、駆動側マグネット20によってステータコイル12aに生じる誘起電圧が各相で相殺されるように駆動側マグネット20が構成されている。換言すれば、各相において、駆動側マグネット20によってステータコイル12aに生じる誘起電圧の和が0になるように駆動側マグネット20が構成されている。これにより、モータ部11における回転抵抗を低減できる。
【0230】
(第14実施形態)
上記実施形態では、三相モータ11aの各相において誘起電圧の合計が0になるように、三相モータ11aの各相のスロット数を2とし、駆動側マグネット20の極対数を1としている。本実施形態は、図28に示すように、駆動側マグネット20の極対数が、1つの相のスロット数の倍数と異なっている。換言すれば、駆動側マグネット20の極対数が、1つの相のスロット数を整数倍した数と異なっている。
【0231】
図28図29に示すように、モータ部11は三相モータ11aである。円筒状のロータ13は、ステータ12の径方向外側に配置されている。
【0232】
ステータ12のスロット数Nsは9である。したがって、U相、V相、W相の各相にスロットが3つずつある。ステータ12の9つのスロットは、周方向にU相のスロット12U、V相のスロット12V、W相のスロット12W、U相のスロット12U、V相のスロット12V、W相のスロット12W、U相のスロット12U、V相のスロット12V、W相のスロット12Wの順番に配置されている。
【0233】
ステータ12の9つのスロット12U、12V、12W、12U、12V、12W、12U、12V、12Wは、周方向に均等に配置されている。ステータ12の9つのスロット12U、12V、12W、12U、12V、12W、12U、12V、12Wは、周方向に40度毎に配置されている。
【0234】
したがって、ステータ12の9つのスロット12U、12V、12W、12U、12V、12W、12U、12V、12Wのうち、同じ相の3つのスロットは、周方向に120度毎に配置されている。
【0235】
ステータ12のステータコイル12aの巻き方向は、全てのスロットにおいて互いに同一方向になっている。
【0236】
駆動側マグネット20は、ロータ13の径方向外側にて、ロータ13と同軸上に配置されている。駆動側マグネット20の極数Pinは4である。したがって、駆動側マグネット20の極対数は2である。駆動側マグネット20のN極20nおよびS極20sは、周方向に交互かつ均等に設けられている。駆動側マグネット20のN極20nおよびS極20sは、周方向に90度ずつ設けられている。
【0237】
この構成においてステータコイル12aに電流が流れてロータ13が回転すると、図30に示すように、三相モータ11aの各相の3つのスロットにおいて、駆動側マグネット20による誘起電圧の位相が互いに120度ずれるので、三相モータ11aの各相の誘起電圧の合計がほぼ0になる。他の2つの相においても同様に、誘起電圧の合計がほぼ0になる。
【0238】
したがって、各相のスロットにおいて、駆動側マグネット20による誘起電圧がほぼ相殺されるので、モータ部11における回転抵抗を低減できる。
【0239】
本実施形態では、ステータ12のステータコイル12aの巻き方向は、全てのスロットにおいて互いに同一方向になっており、駆動側マグネット20の極対数は、各相のスロット数の倍数と異なっている。
【0240】
これにより、各相のスロットにおいて、駆動側マグネット20による誘起電圧がほぼ相殺されるので、モータ部11における回転抵抗を低減できる。
【0241】
(第15実施形態)
上記第13実施形態では、ステータ12のステータコイル12aの巻き方向は、全てのスロットにおいて互いに同一方向になっているが、本実施形態では、ステータコイル12aが右巻きされているスロットと、ステータコイル12aが左巻きされているステータコイル12aとが同数になっている。そして、駆動側マグネット20の極対数が、単相のスロット数の半分の奇数倍と異なっている。
【0242】
図31図32に示すように、本実施形態のモータ部11は三相モータ11aである。円筒状のロータ13は、ステータ12の径方向外側に配置されている。
【0243】
ステータ12のスロット数Nsは6である。したがって、ステータ12は、右巻きスロットと左巻きスロットとを3個ずつ有している。また、U相、V相、W相の各相にスロットが2つずつある。ステータ12の6つのスロットは、周方向にU相の右巻きスロット12UR、V相の左巻きスロット12VL、W相の右巻きスロット12WR、U相の左巻きスロット12UL、V相の右巻きスロット12VR、W相の左巻きスロット12WLの順番に配置されている。
【0244】
ステータ12の6つのスロット12UR、12VL、12WR、12UL、12VR、12WLは、周方向に均等に配置されている。ステータ12の6つのスロット12UR、12VL、12WR、12UL、12VR、12WLは、周方向に60度毎に配置されている。
【0245】
したがって、ステータ12の6つのスロット12UR、12VL、12WR、12UL、12VR、12WLのうち、同じ相の一対のスロットは、周方向に180度毎に配置されている。換言すれば、ステータ12の6つのスロット12UR、12VL、12WR、12UL、12VR、12WLのうち、同じ相の一対のスロットは、互いに向かい合う位置に配置されている。
【0246】
ステータ12の6つのスロット12UR、12VL、12WR、12UL、12VR、12WLのうち、同じ相の一対のスロットのうち一方のスロットにおけるステータコイル12aの巻き方向は右巻きで、他方のスロットにおけるステータコイル12aの巻き方向は左巻きになっている。したがって、同じ相の一対のスロットにおいて、右巻きのステータコイル12aと左巻きのステータコイル12aとが同数になっている。
【0247】
ステータ12の6つのスロット12UR、12VL、12WR、12UL、12VR、12WLは、ステータコイル12aが右巻きのスロットと、ステータコイル12aが左巻きのスロットとが交互に配置されている。
【0248】
したがって、ステータ12の6つのスロットのうち互いに対向する一対のスロットは、ステータコイル12aの巻き方向が互いに逆になっている。
【0249】
駆動側マグネット20は、ロータ13の径方向外側にて、ロータ13と同軸上に配置されている。
【0250】
駆動側マグネット20の極数Pinは8である。したがって、駆動側マグネット20の極対数は4である。駆動側マグネット20のN極20nおよびS極20sは、周方向に交互かつ均等に設けられている。駆動側マグネット20のN極20nおよびS極20sは、周方向に45度ずつ設けられている。
【0251】
三相モータ11aの各相の2つのスロットにおいて、駆動側マグネット20のN極40nおよびS極40sとの位置関係が互いに同じになるが、ステータコイル12aの巻き方向が互いに逆になっているので、駆動側マグネット20の磁束が逆位相になる。
【0252】
そのため、上述の図27と同様に、三相モータ11aの1つの相の2つのスロットにおいて、駆動側マグネット20による誘起電圧が逆位相になり互いに打ち消し合って相殺されるので、三相モータ11aの1つの相の誘起電圧の合計が0になる。他の2つの相においても同様に、誘起電圧の合計が0になる。
【0253】
したがって、各相のスロットにおいて、駆動側マグネット20による誘起電圧が相殺されるので、モータ部11における回転抵抗を低減できる。
【0254】
本実施形態では、ステータ12のスロットは、各相において、ステータコイル12aの巻き方向が右巻きのものと左巻きのものとが互いに同数になっており、駆動側マグネット20の極対数が、各相のスロット数の半分の奇数倍と異なっている。
【0255】
これにより、各相のスロットにおいて、駆動側マグネット20による誘起電圧がほぼ相殺されるので、モータ部11における回転抵抗を低減できる。
【0256】
(第16実施形態)
上記第15実施形態では、モータ部11は三相モータ11aであるが、本実施形態では、図33に示すように、モータ部11はステッピングモータ11bである。
【0257】
円筒状のロータ13は、ステータ12の径方向外側に配置されている。
【0258】
ステータ12のスロット数Nsは8である。ステータ12の8つのスロットは、周方向に均等に配置されている。ステータ12の6つのスロットは、周方向に45度毎に配置されている。
【0259】
ステータ12の8つのスロットのうち、ステータコイル12aが右巻きのスロット12Rの個数と、ステータコイル12aが左巻きのスロット12Lの個数とが同数になっている。ステータコイル12aが右巻きのスロット12Rは4個、ステータコイル12aが左巻きのスロット12Lも4個になっている。
【0260】
ステータ12の8つのスロット12R、12Lのうち、ステータコイル12aが右巻きの4つのスロット12Rは周方向に連続して配置され、ステータコイル12aが左巻きの4つのスロット12Lも周方向に連続して配置されている。
【0261】
したがって、ステータ12の8つのスロット12R、12Lのうち互いに対向する一対のスロットは、ステータコイル12aの巻き方向が互いに逆になっている。
【0262】
駆動側マグネット20は、ロータ13の径方向外側にて、ロータ13と同軸上に配置されている。
【0263】
駆動側マグネット20の極数Pinは8である。したがって、駆動側マグネット20の極対数は4である。駆動側マグネット20のN極20nおよびS極20sは、周方向に交互かつ均等に設けられている。駆動側マグネット20のN極20nおよびS極20sは、周方向に45度ずつ設けられている。
【0264】
ステータ12の8つのスロット12R、12Lのうち互いに対向する一対のスロットにおいて、駆動側マグネット20のN極40nおよびS極40sとの位置関係が互いに同じになるが、ステータコイル12aの巻き方向が互いに逆になっているので、駆動側マグネット20の磁束が逆位相になる。
【0265】
そのため、上述の図27と同様に、互いに対向する一対のスロットにおいて、駆動側マグネット20による誘起電圧が逆位相になり互いに打ち消し合って相殺されるので、互いに対向する一対のスロットにおいて誘起電圧の合計が0になる。
【0266】
したがって、互いに対向する一対のスロットにおいて、駆動側マグネット20による誘起電圧が相殺されるので、モータ部11における回転抵抗を低減できる。
【0267】
(第17実施形態)
上記実施形態では、ロータ13、ステータ12および駆動側マグネット20がロータ13の径方向に並んでいるが、本実施形態では、図34に示すように、ロータ13、ステータ12および駆動側マグネット20がロータ13の軸方向に並んでいる。すなわち、本実施形態では、モータ部11はアキシャルギヤップモータ11dである。
【0268】
アキシャルギヤップモータ11dにおいては、ステータ12と駆動側マグネット20の並び方向がロータ13とステータ12の並び方向と同じになるので、ステータ12と駆動側マグネット20による磁束の向きがロータ13とステータ12による磁束の向きと同じになる。したがって、駆動側マグネット20によってモータ部11に誘起電圧が発生し、回転抵抗となる。
【0269】
そこで、本実施形態においても、ステータ12のスロット数Nsと駆動側マグネット20の極数Pinとの関係を上記第13~17実施形態と同様にすることによって、駆動側マグネット20による誘起電圧が相殺されるので、モータ部11における回転抵抗を低減できる。
【0270】
(第18実施形態)
本実施形態では、図35に示すように、回路部70に、回転角度を検出する角度センサ77が設けられている。
【0271】
角度センサ77は、駆動側マグネット20の磁束を検出することにより、駆動側マグネット20の回転角度、すなわちシャフト14の回転角度を検出する。
【0272】
角度センサ77の検出信号は、回路部70に入力される。回路部70は、角度センサ77の検出信号に基づいて、三相モータ11aを駆動する為の駆動電流を制御する。
【0273】
角度センサ77は、駆動側マグネット20の上方にて回路部70に固定されている。角度センサ77は、ロータ13の径方向において、駆動側マグネット20の径方向内側端部よりも径方向外側、かつポールピース25の径方向中央部よりも径方向内側に配置されている。
【0274】
駆動側マグネット20の外周面側に着磁されているので、角度センサ77の位置が駆動側マグネット20の外周面に近いほど駆動側マグネット20の磁束を良好に検出できる。
【0275】
駆動側マグネット20の上端は、ポールピース25および固定マグネット40の上端よりも上方に位置していることが好適である。これにより、駆動側マグネット20の上端が角度センサ77に近くなり、角度センサ77近傍における駆動側マグネット20の磁束量が大きくなるので、駆動側マグネット20の磁束を良好に検出できる。
【0276】
駆動側マグネット20の極数Pinは2である。これにより、駆動側マグネット20が1回転すると角度センサ77が検出する磁束の波形が1周期分できることとなるので、角度センサ77によってシャフト14の回転角度を精度良く検出できる。
【0277】
固定マグネット40と、本体部50の本体円筒部50bとの間には、円筒状の圧力容器58が配置されている。
【0278】
回路部70とモーターケース15との間には補強板59が設けられている。補強板59は、シャフト14の軸受け部分を補強する部材である。補強板59は、回路部70およびモーターケース15に固定されている。図36に示すように、補強板59および回路部70には、シャフト14の軸受け部分が挿入される軸受け穴59a、70aが形成されている。
【0279】
圧力容器58および補強板59は、非磁性体で形成されている。これにより、角度センサ77による磁束の検出に、圧力容器58および補強板59が悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0280】
(第19実施形態)
上記第18実施形態では、補強板59は非磁性体で形成されているが、本実施形態では、補強板59は磁性体で形成されており、図37に示すように、補強板59のうち角度センサ77の近傍部位が切り欠かれることによって切欠部59bが形成されている。
【0281】
これにより、補強板59が磁性体で形成されていても、角度センサ77による磁束の検出に補強板59が悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0282】
(第20実施形態)
上記第19実施形態では、補強板59がモーターケース15に固定されているが、本実施形態では、図38に示すように、補強板59が封止板51に固定されている。
【0283】
補強板59は封止板51にボルト80で締結固定されている。具体的には、封止板51の封止上面部51aにボルト固定部51fが形成されている。ボルト固定部51fは、補強板59に向かって突出する円筒形状を有している。ボルト固定部51fには雌ネジ穴51gが形成されている。雌ネジ穴51gには、ボルト80と螺合するネジ溝が形成されている。
【0284】
図39は、補強板59をシャフト14の軸方向から見たときの平面図である。図39に示すように、補強板59には、ボルト80が貫通されるボルト孔59cが形成されている。図40は、回路部70の回路基板701をシャフト14の軸方向から見たときの平面図である。図40に示すように、回路基板701には、ボルト固定部51fが貫通される貫通孔701aが形成されている。
【0285】
ボルト固定部51f、ボルト孔59cおよび貫通孔701aは多数個ずつ形成されている。本例では、ボルト固定部51f、ボルト孔59cおよび貫通孔701aは3個ずつ形成されている。
【0286】
図38に示すように、ボルト固定部51fの端面は、補強板59に接触している。ボルト固定部51fの端面が補強板59に接触している。回路基板701は補強板59に固定されている。例えば、回路基板701は、ガラスエポキシ基板である。ガラスエポキシ基板は、ガラス繊維製の布を重ねたものに、エポキシ樹脂を含浸した基材である。
【0287】
本体部50、封止板51および補強板59は、導体かつ磁性体である金属(例えば、鉄系金属やステンレス)で形成されている。したがって、封止板51および補強板59が本体部50と電気的にグランド(GND)に接続されている。
【0288】
回路基板701および補強板59の平面形状は互いに同じであり、本例では本体円筒部50bよりも大きい矩形状になっている。本体部50のうち本体円筒部50bよりも下方側の部位は、外形が角柱状の本体角柱部50cになっている。
【0289】
モーターケース15は、上側ケース15bおよび下側ケース15cを有している。上側ケース15bおよび下側ケース15cは、導電性の材料(例えば、鉄粉が混入された樹脂)で形成されている。
【0290】
上側ケース15bは、有蓋角筒状に形成されている。下側ケース15cは、上部(上側ケース15b側の部位)が角筒形状を有し、下部(本体角柱部50c側の部位)が円筒形状を有している。
【0291】
モーターケース15(本例では、上側ケース15b)は、封止板51と補強板59とを径方向外側から覆うように本体部50に嵌め合わされている。これにより、封止板51と補強板59との間の隙間がモーターケース15によって塞がれている。
【0292】
回路部70は、複数個の回路素子を有している。複数個の回路素子のうち一部の回路素子は、放射ノイズを発生させる回路素子である。本例では、放射ノイズを発生させる回路素子はFETマイコン702である。FETマイコン702は、バッテリの直流電力をスイッチングによって交流電力に変換して出力する。放射ノイズを発生させる回路素子としては、FETマイコン702以外に、コイルを含む電子部品やICチップ等がある。
【0293】
FETマイコン702および他の回路素子703は、回路基板701に半田付けにより接合されている。FETマイコン702は、シャフト14の軸方向から見たときに、補強板59および封止板51と重合する位置に配置されている。
【0294】
FETマイコン702は、QFN(Quad Flat Non-leaded)型素子である。QFN型素子は、リードがない素子である。したがって、図41に示すように、FETマイコン702の端子702aは、回路基板701に挿入されることなく、回路基板701の銅箔パターン701bとの間に挟まれた半田704によって接合される。
【0295】
FETマイコン702のスイッチングは、放射ノイズの発生原因となるが、封止板51、補強板59およびモーターケース15により、FETマイコン702からの放射ノイズを遮断できる。
【0296】
封止板51および補強板59が本体部50と電気的にグランド(GND)に接続されていることにより、放射ノイズの遮断効果を高めることができる。
【0297】
本体部50、封止板51および補強板59が磁性体で形成されているので、放射ノイズのうち周波数の低い成分の遮断効果を高めることができる。
【0298】
回路基板701は補強板59に固定されており、補強板59は封止板51に固定されており、封止板51は本体部50に固定されている。すなわち、回路基板701は、補強板59および封止板51を介して、強度の高い本体部50に固定されている。
【0299】
これにより、回路基板701と補強板59との固定部であるボルト固定部51fが支点となるので、回路基板701は図42に示すように変形することとなる。すなわち、図42中、二点鎖線で示すように、ボルト固定部51fよりも外側では回路基板701が変形するものの、ボルト固定部51fよりも内側では回路基板701の変形が抑制される。そのため、回路基板701上の半田付けされた部分の応力が低減される。
【0300】
FETマイコン702は、シャフト14の軸方向から見たときに、貫通孔701a(換言すれば、回路基板701と補強板59とが固定される部位)の仮想外接円C1よりもシャフト14側に配置されている。具体的には、図40中、ハッチングが付された第1範囲A1に配置されている。これにより、回路基板701とFETマイコン702の半田付け部(すなわち半田704)に作用する応力が効果的に低減される。
【0301】
より好ましくは、FETマイコン702は、シャフト14の軸方向から見たときに、貫通孔701a同士の間に配置されている。具体的には、図40中、網掛けが付された第2範囲A2に配置されている。これにより、回路基板701とFETマイコン702の半田付け部に作用する応力が一層効果的に低減される。
【0302】
本実施形態では、FETマイコン702は、回路基板701のうち封止板51と駆動側マグネット20の軸方向に重なる位置に配置されており、封止板51は導体で形成されている。これにより、駆動側マグネット20の軸方向において、FETマイコン702からの放射ノイズを封止板51によって遮断できる。
【0303】
本実施形態では、補強板59は導体で形成されており、FETマイコン702は、補強板59と駆動側マグネット20の軸方向に重なる位置に配置されている。これにより、駆動側マグネット20の軸方向において、FETマイコン702からの放射ノイズを補強板59によって遮断できる。
【0304】
本実施形態では、FETマイコン702は、回路基板701に対して封止板51側に面するように配置されている。ケース15は、導体で形成されており、封止板51と回路基板701との間の隙間を駆動側マグネット20の径方向外側から塞いでいる。これにより、駆動側マグネット20の径方向において、FETマイコン702からの放射ノイズをケース15によって遮断できる。
【0305】
本実施形態では、本体部50は導体で形成されており、封止板51は本体部50に固定されており、封止板51のボルト固定部51fは、封止板51と補強板59とを電気的に接続している。これにより、封止板51および補強板59が本体部50と電気的にグランド(GND)に接続されていることにより、放射ノイズの遮断効果を高めることができる。
【0306】
本実施形態では、回路基板701は補強板59に固定されており、封止板51は、補強板59が固定された固定部51fを有している。これにより、回路基板701の変形が抑制されるので、回路基板701上の半田付けされた部分の応力を低減できる。
【0307】
本実施形態では、固定部51fが少なくとも3ヶ所設けられており、FETマイコン702は、回路基板701において第1範囲A1に配置されている。第1範囲A1は、固定部51fの全てに外接する仮想外接円の内側の範囲である。これにより、回路基板701とFETマイコン702の半田付け部(すなわち半田704)に作用する応力が効果的に低減される。
【0308】
(第21実施形態)
上記第20実施形態では、ボルト固定部51fが3個形成されているが、本実施形態では、ボルト固定部51fが2個形成されている。ボルト固定部51fは、シャフト14の周方向に180度間隔で形成されている。
【0309】
したがって、図43に示すように、補強板59には、ボルト80が貫通されるボルト孔59cが2個形成されており、図44に示すように、回路基板701には、ボルト固定部51fが貫通される貫通孔701aが2個形成されている。
【0310】
FETマイコン702は、シャフト14の軸方向から見たときに、貫通孔701a同士の間に配置されている。具体的には、図44中、網掛けが付された第2範囲A2に配置されている。これにより、回路基板701とFETマイコン702の半田付け部に作用する応力が効果的に抑制される。
【0311】
本実施形態では、固定部51fが2ヶ所設けられており、FETマイコン702は、回路基板701において第2範囲A2に配置されている。第2範囲A2は、固定部51f同士の間の範囲A2である。これにより、回路基板701とFETマイコン702の半田付け部に作用する応力が効果的に抑制される。
【0312】
(第22実施形態)
上記第1実施形態等のようにモータ部11のステータ12およびロータ13が駆動側マグネット20の内側に配置されていると、モータ部11の磁束と駆動側マグネット20の磁束とが干渉して磁気ギア60bの磁束の流れが悪くなることが起こり得る。
【0313】
この点に鑑みて、本実施形態では、駆動側マグネット20の磁束とモータ部11の磁束との磁気干渉を低減させるための構成を有している。
【0314】
図48に示すように、介在部材21は、モータ部バックヨーク21aとロータカップ21bとを有している。モータ部バックヨーク21aは円筒状であり、ロータ13と駆動側マグネット20との間に、ロータ13および駆動側マグネット20と同軸上に配置されている。ロータカップ21bはモータ部バックヨーク21aを駆動側マグネット20の軸方向一端側(図48では下方側)から塞いでいる。モータ部バックヨーク21aおよびロータカップ21bは磁性体で形成されている。
【0315】
図48では、図示の都合上、モーターケース15、封止板51、バックヨーク56等の図示を省略している。
【0316】
駆動側マグネット20の軸方向、すなわち図48の上下方向において、駆動側マグネット20、ポールピース25および固定マグネット40の下端位置Bmgは、ステータ12、ロータ13およびモータ部バックヨーク21aの下端位置Bmtよりも下方側になっている。
【0317】
これにより、図49に示すように、駆動側マグネットの磁束Mmgがモータ部11の磁束Mmtを下方側に避けるように流れるので、磁気干渉を低減させて性能を改善できる。
【0318】
駆動側マグネット20の軸方向、すなわち図48の上下方向において、駆動側マグネット20、ポールピース25および固定マグネット40の上端位置Umgは、ステータ12、ロータ13およびモータ部バックヨーク21aの上端位置Umtよりも下方側になっている。
【0319】
これにより、図49に示すように、駆動側マグネットの磁束Mmgがモータ部11の磁束Mmtを下方側にさらに避けるように流れるので、磁気干渉をさらに低減させて性能をさらに改善できる。
【0320】
換言すれば、駆動側マグネット20の軸方向、すなわち図48の上下方向において、駆動側マグネット20、ポールピース25および固定マグネット40の中央位置は、ステータ12、ロータ13およびモータ部バックヨーク21aの中央位置Umtよりも下方側になっているので、駆動側マグネットの磁束Mmgがモータ部11の磁束Mmtを下方側にさらに避けるように流れて磁気干渉を低減させることができる。
【0321】
駆動側マグネット20の軸方向、すなわち図49の上下方向におけるロータカップ21bの厚さTrcは、駆動側マグネット20の径方向、すなわち図49の左右方向におけるモータ部バックヨーク21aの厚さTbyよりも大きくなっている。
【0322】
これにより、図49に示すように、駆動側マグネットの磁束Mmgがモータ部11の磁束Mmtをロータカップ側に避けるように流れやすくなるので、磁気干渉を低減させて性能を改善できる。
【0323】
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。
【0324】
(1)上記実施形態では、封止円筒部51bと封止底面部51cとの境界部である角部が所定の曲率半径で丸められた形状になっているが、封止円筒部51bと封止底面部51cとの境界部である角部が直角になっていてもよい。
【0325】
(2)上記実施形態では、ポールピース25の軸方向長さLpが固定マグネット40の軸方向長さL2よりも短く、固定マグネット40の軸方向長さL2が駆動側マグネット20の軸方向長さL1よりも長くなっているが、ポールピース25の軸方向長さLpと固定マグネット40の軸方向長さL2とが互いに同じになっていてもよい。駆動側マグネット20の軸方向長さL1と固定マグネット40の軸方向長さL2とが互いに同じになっていてもよい。
【0326】
(3)上記実施形態では、封止板51は一体成形されているが、封止板51は少なくとも封止円筒部51bが単一の部材で形成されていれば耐圧性を確保したまま封止円筒部51bを薄肉化できるので、磁気抵抗を低減できる。
【0327】
(4)上記実施形態では、固定マグネット40はバックヨーク56を介して本体円筒部50bの内周面に固定されているが、固定マグネット40は、本体円筒部50bの内周面に直接固定されていてもよい。
【0328】
(5)上記実施形態では、第1膨張弁113は車両に縦置き配置されているが、第1膨張弁113は車両に横置き配置されていてもよい。横置き配置とは、弁体48の軸方向が車両前後左右方向と略平行となるような配置のことである。第1膨張弁113は、上記第1実施形態に対して上下逆に配置されていてもよい。
【0329】
(6)上記実施形態では、軸合わせ部15aがモーターケース15と一体となっていたが、軸合わせ部が筐体50、封止板51と一体となっており、モータケースがねじ止めなどで固定されてもよい。
【0330】
(7)上述した実施形態においては、図12に示すフローチャートに従って、車両の起動時、車両用空調装置の起動時、及び空調運転中に、ロック判定条件を満たすか否かを判定することで、ポールピース25等のロックの発生を常時監視している。
【0331】
しかしながら、ロック判定制御及びロック判定条件に関する判定タイミングは、上述したタイミングに限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、図5に示すフローチャートに替えて、図45に示すフローチャートを実行するように構成しても良い。
【0332】
図45に示すように、先ず、ステップS21にて、エラー発生信号を受信したか否かが判定される。エラー発生信号を受信した場合、ステップS22に進み、エラー発生信号を受信していない場合、そのまま、図45に示すロック判定制御を終了する。
【0333】
ここで、エラー発生信号とは、外部に配置された制御装置から出力される制御信号であって、動力伝達装置1の動作にエラーがあると考えられる場合に出力される。例えば、車両用空調装置の冷凍サイクルにおける冷媒温度や冷媒圧力が明らかな異常値を示していた場合、車両用空調装置の空調制御装置は、エラー発生信号を出力する。
【0334】
ステップS22では、動力伝達装置1の動作をチェックする為、モータ部11を駆動させる。この時、ステップS2等と同様に、ロータ13を一定回転で作動させる。ステップS23においては、ステップS22におけるモータ部11の駆動で出力される出力信号(例えば、入力電流)に対する信号分析処理が行われる。信号分析処理の内容は、ステップS3等と同様であり、出力信号に対する周波数分析が行われる。
【0335】
ステップS24に移行すると、ロック判定条件を満たすか否かが判定される。ロック判定条件を満たす場合は、ポールピース25等が固着したロック状態であると判定し、ステップS25にてロック発生信号を出力する。
【0336】
ロック判定条件を満たしていない場合、ステップS26において、駆動側マグネット20及びポールピース25が回転可能な標準状態であると判定して、正常信号を出力する。正常信号は、駆動側マグネット20及びポールピース25が一体的に回転する標準状態であることを示す。
【0337】
図45に示す変形例に係るロック判定制御では、外部からのエラー発生信号の受信を契機として、モータ部11の駆動、周波数分析、ロック判定条件に関する判定を行う構成である。この為、変形例に係る動力伝達装置1は、適切なタイミングでポールピース25等のロックが発生しているかを判定することができる。又、常時監視する構成と比較して、ロック判定部71の処理負担を軽減することができる。
【0338】
(8)上記実施形態では、動力伝達装置1は蒸気圧縮式冷凍サイクルの膨張弁に適用されているが、図46図47に示すように、動力伝達装置1は流量調整弁200や小型ポンプ300等の回転機械にも適用可能である。
【0339】
流量調整弁200は、動力伝達装置1によって伝達された駆動力によって弁体201を所定角度回転させて流路202の開度を調整することによって、流路202における流体の流量を調整する。
【0340】
小型ポンプ300は、動力伝達装置1によって伝達された駆動力によってインペラ301を連続的に回転させて流体を吸入して送出する。
【0341】
(9)上記第20実施形態では、補強板59は封止板51にボルト80で締結固定されているが、補強板59は封止板51にリベット、カシメ、溶接等によって固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0342】
15 モーターケース(筐体)
20 駆動側マグネット
25 ポールピース
40 固定マグネット
50 本体部(筐体)
51 封止板(封止部材)
51b 封止円筒部
51c 封止底面部
113a 駆動側空間
113b 従動側空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49