(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】給電システム、制御装置および給電システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 20/15 20160101AFI20241217BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20241217BHJP
B60K 6/28 20071001ALI20241217BHJP
【FI】
B60W20/15 ZHV
B60W10/26 900
B60K6/28
(21)【出願番号】P 2021178712
(22)【出願日】2021-11-01
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松盛 裕志
(72)【発明者】
【氏名】坂柳 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】半田 学
(72)【発明者】
【氏名】杉山 緑
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐希
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-64342(JP,A)
【文献】特開2015-116010(JP,A)
【文献】特開2017-91427(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0310818(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0237944(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20- 6/547,
B60W 10/00-20/50,
B60L 53/60,
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの電力を用いて充電可能なバッテリを搭載した車両と、
前記車両に電力を供給する給電装置と、
前記給電装置の状態を検出するためのカメラと、
前記給電装置から前記車両への給電を制御するための制御装置とを備え、
前記車両は、
エンジンと、
前記バッテリから供給される電力を受けて走行駆動力を発生するモータとを含み、
前記制御装置は、前記車両から前記給電装置による給電が要求された場合
であって、かつ、前記カメラの映像から前記給電装置が混雑していると判断される場合に、
前記車両から前記エンジン用の燃料残量を取得し、
前記燃料残量が基準値よりも大きい場合には、前記車両に対して充電時間の短縮を促す
提案を出力し、
前記
提案を承諾する応答を前記車両から受けた場合に、前記
提案が承諾されない場合に比べて、充電電力の電力単価および燃料単価の少なくとも1つを低く設定する、給電システム。
【請求項2】
前記
提案は、前記バッテリの必要充電量よりも少ない充電量を提案する情報を含む、請求項1に記載の給電システム。
【請求項3】
前記
提案は、前記バッテリの必要充電時間よりも少ない充電時間を提案する情報を含む、請求項1に記載の給電システム。
【請求項4】
外部からの電力を用いて充電可能なバッテリを搭載した車両と、
前記車両に電力を供給する給電装置を含む給電設備と、
前記給電装置の状態を検出するためのカメラと、
前記給電設備において前記車両への給電を制御するための制御装置とを備え、
前記給電装置は、AC給電装置およびDC給電装置を含み、
前記車両は、
エンジンと、
前記バッテリから供給される電力を受けて走行駆動力を発生するモータとを含み、
前記車両は、前記AC給電装置からの交流電力を用いたAC充電、および、前記DC給電装置からの直流電力を用いたDC急速充電の双方が可能であり、
前記制御装置は、前記車両から前記DC給電装置による給電が要求された場合
であって、かつ、前記カメラの映像から前記給電装置が混雑していると判断される場合に、
前記車両から前記エンジン用の燃料残量を取得し、
前記燃料残量が基準値よりも大きい場合には、前記車両に対して前記AC給電装置による給電を促す
提案を出力し、
前記
提案を承諾する応答を前記車両から受けた場合に、前記
提案が承諾されない場合に比べて、充電電力の電力単価および燃料単価の少なくとも1つを低く設定する、給電システム。
【請求項5】
外部からの電力を用いて充電可能なバッテリを搭載した車両と、
前記車両に電力を供給する給電装置を含む給電設備と、
前記給電装置の状態を検出するためのカメラと、
前記給電装置から前記車両への給電を制御するための制御装置とを備え、
前記車両は、
エンジンと、
前記バッテリから供給される電力を受けて走行駆動力を発生するモータと、
前記給電装置と無線通信を行なう通信装置とを含み、
前記制御装置は、前記車両から前記給電装置による給電が予約された場合であって、かつ、前記カメラの映像から前記給電装置が混雑していると判断される場合に、
前記車両から前記エンジン用の燃料残量を取得し、
前記燃料残量が基準値よりも大きい場合には、前記車両に対して他の給電設備への移動を促す
提案を出力し、
前記
提案を承諾する応答を前記車両から受けた場合に、前記
提案が承諾されない場合に比べて、充電電力の電力単価および燃料単価の少なくとも1つを低く設定する、給電システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記給電装置内に配置される、請求項1~
5のいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記給電装置と通信可能なサーバである、請求項1~
5のいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項8】
給電装置からの電力を用いて、エンジンを有する車両に搭載されたバッテリを充電する給電システムを制御するための制御装置であって、
前記給電システムは、前記給電装置の状態を検出するためのカメラを含み、
前記制御装置は、
プロセッサと、
前記プロセッサによって実行されるプログラムを記憶したメモリとを備え、
前記プロセッサは、前記車両から前記給電装置による給電が要求された場合
であって、かつ、前記カメラの映像から前記給電装置が混雑していると判断される場合に、
前記車両から前記エンジン用の燃料残量を取得し、
前記燃料残量が基準値よりも大きい場合には、前記車両に対して充電時間の短縮を促す
提案を出力し、
前記
提案を承諾する応答を前記車両から受けた場合に、前記
提案が承諾されない場合に比べて、充電電力の電力単価および燃料単価の少なくとも1つを低く設定する、制御装置。
【請求項9】
給電装置からの電力を用いて、エンジンを有する車両に搭載されたバッテリを充電する給電システムを制御するための方法であって、
前記給電システムは、前記給電装置の状態を検出するためのカメラを含み、
前記方法は、
前記車両から前記給電装置による給電が要求されたか否かを判定するステップと、
前記車両から前記エンジン用の燃料残量を取得するステップと、
前記給電装置による給電が要求された場合であって
、前記燃料残量が基準値よりも大き
く、さらに前記カメラの映像から前記給電装置が混雑していると判断される場合に、前記車両に対して充電時間の短縮を促す
提案を出力するステップと、
前記
提案を承諾する応答を前記車両から受けた場合に、前記
提案が承諾されない場合に比べて、充電電力の電力単価および燃料単価の少なくとも1つを低く設定するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電システム、制御装置および給電システムの制御方法に関し、より特定的には、車両に搭載されたバッテリを充電するための給電設備を有効利用するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車あるいはプラグインタイプのハイブリッド車(Plug-in Hybrid Electrical Vehicle:PHEV)のように、外部からの電力を用いて、車両に搭載されたバッテリを充電する外部充電が可能な車両(以下、「電動車両」とも称する。)が増加している。これに伴って、外出先で電動車両を充電するための給電設備(給電ステーション)が普及しつつある。
【0003】
エンジンおよびモータを備えるハイブリッド車においては、仮にバッテリの充電量が低下した場合でも、エンジンを駆動することによって走行あるいは発電を行なうことができる。これに対し、電気自動車はエンジンを備えていないため、外部充電ができずにバッテリから出力可能な電力が枯渇してしまうと走行できなくなってしまう。すなわち、電気自動車においては、ハイブリッド車よりも外部充電の重要度が高くなる。
【0004】
特開2018-064342号公報(特許文献1)には、燃料残量の多いハイブリッド車については、給電設備における充電電力を、電気自動車の場合よりも高く設定する構成が開示されている。特開2018-064342号公報(特許文献1)の構成においては、燃料残量の多いハイブリッド車については充電料金が割高になってしまうため、当該ハイブリッド車のユーザに対して、当該給電設備における充電を中止して、燃料を使用して走行するインセンティブが付与される。これによって、給電設備における混雑が緩和されて電気自動車に対して外部充電を優先的に行なうことができるので、給電設備を有効利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、特開2018-064342号公報(特許文献1)に開示された充電システムにおいては、ハイブリッド車の場合には、当該給電設備におけるバッテリの充電ができなかったり、割高な充電料金の支払いが必要となるため、ユーザの利便性が損なわれてしまう可能性がある。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、外部給電を行なうことができる給電設備において、ハイブリッド車のユーザの利便性を損なうことなく給電設備を有効利用することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の局面に係る給電システムは、外部からの電力を用いて充電可能なバッテリを搭載した車両と、車両に電力を供給する給電装置と、給電装置から車両への給電を制御するための制御装置とを備える。車両は、エンジンと、バッテリから供給される電力を受けて走行駆動力を発生するモータとを含む。制御装置は、車両から給電装置による給電が要求された場合に、(i)車両からエンジン用の燃料残量を取得し、(ii)燃料残量が基準値よりも大きい場合には、車両に対して充電時間の短縮を促す指示を出力し、(iii)上記指示を承諾する応答を車両から受けた場合に、上記指示が承諾されない場合に比べて、充電電力の電力単価および燃料単価の少なくとも1つを低く設定する。
【0009】
本開示に係る給電システムによれば、エンジンおよびモータを備えたハイブリッド車から外部給電の要求があった場合に、燃料残量が基準値よりも多いと、車両に対して充電時間の短縮を促す指示が出力される。そして、車両のユーザによって当該指示が承諾されると、後続の電気自動車の充電機会が増えるとともに、ハイブリッド車についての電力単価および/または燃料単価が割り引かれる。したがって、ハイブリッド車のユーザの利便性を損なうことなく、給電設備を有効利用することができる。
【0010】
ある実施の形態においては、上記指示は、バッテリの必要充電量よりも少ない充電量を提案する情報を含む。
【0011】
このような構成とすることによって、ユーザに対して充電量の低減を提案して、充電時間の短縮を促すことができる。
【0012】
ある実施の形態においては、上記指示は、バッテリの必要充電時間よりも少ない充電時間を提案する情報を含む。
【0013】
このような構成とすることによって、ユーザに対して充電時間の短縮を促すことができる。
【0014】
本開示の第2の局面に係る給電システムは、外部からの電力を用いて充電可能なバッテリを搭載した車両と、車両に電力を供給する給電装置を含む給電設備と、給電設備において車両への給電を制御するための制御装置とを備える。給電装置は、AC給電装置およびDC給電装置を含む。車両は、エンジンと、バッテリから供給される電力を受けて走行駆動力を発生するモータとを含む。車両は、AC給電装置からの交流電力を用いたAC充電、および、DC給電装置からの直流電力を用いたDC急速充電の双方が可能に構成される。制御装置は、車両からDC給電装置による給電が要求された場合に、(i)車両からエンジン用の燃料残量を取得し、(ii)燃料残量が基準値よりも大きい場合には、車両に対してAC給電装置による給電を促す指示を出力し、(iii)上記指示を承諾する応答を車両から受けた場合に、上記指示が承諾されない場合に比べて、充電電力の電力単価および燃料単価の少なくとも1つを低く設定する。
【0015】
本開示に係る給電システムによれば、AC給電装置およびDC給電装置を有する給電装置に対して、エンジンおよびモータを備えたハイブリッド車からDC給電装置を用いた外部給電の要求があった場合に、燃料残量が基準値よりも多いと、車両に対してAC給電装置による給電を促す指示が出力される。そして、車両のユーザによって当該指示が承諾されると、電力単価および/または燃料単価が割り引かれる。したがって、ハイブリッド車のユーザの利便性を損なうことなく、給電設備を有効利用することができる。
【0016】
ある実施の形態においては、給電システムは、給電装置の状態を検出するためのカメラをさらに備える。制御装置は、カメラの映像から給電装置が混雑していると判断される場合に、上記指示を出力する。
【0017】
このような構成とすることによって、カメラの映像から給電設備が混雑している場合に限って、充電量の低減あるいは充電方式の変更が指示される。したがって、電気自動車に対する優先的な使用が不要な場合には、ハイブリッド車のユーザの要求通りの充電が実行される。したがって、ハイブリッド車のユーザの利便性を損なうことなく、給電設備を有効利用することができる。
【0018】
本開示の第3の局面に係る給電システムは、外部からの電力を用いて充電可能なバッテリを搭載した車両と、車両に電力を供給する給電装置を含む給電設備と給電装置の状態を検出するためのカメラと、給電装置から車両への給電を制御するための制御装置とを備える。車両は、エンジンと、バッテリから供給される電力を受けて走行駆動力を発生するモータと、給電装置と無線通信を行なう通信装置とを含む。制御装置は、車両から給電装置による給電が予約された場合であって、かつ、カメラの映像から給電装置が混雑していると判断される場合に、(i)車両からエンジン用の燃料残量を取得し、(ii)燃料残量が基準値よりも大きい場合には、車両に対して他の給電設備への移動を促す指示を出力し、(iii)上記指示を承諾する応答を車両から受けた場合に、上記指示が承諾されない場合に比べて、充電電力の電力単価および燃料単価の少なくとも1つを低く設定する。
【0019】
本開示に係る給電システムによれば、ハイブリッド車から外部給電の予約があった場合であって、かつ給電設備が混雑している場合に、燃料残量が基準値よりも多いと、車両に対して他の給電設備への移動を促す指示が出力される。そして、車両のユーザによって当該指示が承諾されると、電力単価および/または燃料単価が割り引かれる。充電予約の際に他の給電設備への移動が指示されるため、当該給電設備への無駄な移動が防止できる。したがって、ハイブリッド車のユーザの利便性を損なうことなく、給電設備を有効利用することができる。
【0020】
ある実施の形態においては、制御装置は給電装置内に配置される。
このような構成とすることによって、給電装置において処理を実行することができる。
【0021】
ある実施の形態においては、制御装置は給電装置と通信可能なサーバである。
このような構成とすることによって、遠隔に配置されたサーバによって一元的に処理を実行することができる。
【0022】
本開示の第4の局面に係る制御装置は、給電装置からの電力を用いて、エンジンを有する車両に搭載されたバッテリを充電する給電システムを制御するための制装置である。制御装置は、プロセッサと、プロセッサによって実行されるプログラムを記憶したメモリとを備える。プロセッサは、車両から給電装置による給電が要求された場合に、(i)車両からエンジン用の燃料残量を取得し、(ii)燃料残量が基準値よりも大きい場合には、車両に対して充電時間の短縮を促す指示を出力し、(iii)上記指示を承諾する応答を車両から受けた場合に、上記指示が承諾されない場合に比べて、充電電力の電力単価および燃料単価の少なくとも1つを低く設定する。
【0023】
本開示に係る制御装置によれば、エンジンおよびモータを備えたハイブリッド車から外部給電の要求があった場合に、燃料残量が基準値よりも多いと、車両に対して充電時間の短縮を促す指示が出力される。そして、車両のユーザによって当該指示が承諾されると、電力単価および/または燃料単価が割り引かれる。したがって、ハイブリッド車のユーザの利便性を損なうことなく、給電設備を有効利用することができる。
【0024】
本開示の第5の局面に係る方法は、給電装置からの電力を用いて、エンジンを有する車両に搭載されたバッテリを充電する給電システムを制御するための方法に関する。方法は、(i)車両から給電装置による給電が要求されたか否かを判定するステップと、(ii)車両からエンジン用の燃料残量を取得するステップと、(iii)給電装置による給電が要求された場合であって、かつ、燃料残量が基準値よりも大きい場合に、車両に対して充電時間の短縮を促す指示を出力するステップと、(iv)上記指示を承諾する応答を車両から受けた場合に、上記指示が承諾されない場合に比べて、充電電力の電力単価および燃料単価の少なくとも1つを低く設定するステップとを含む。
【0025】
本開示に係る給電システムの制御方法によれば、エンジンおよびモータを備えたハイブリッド車から外部給電の要求があった場合に、燃料残量が基準値よりも多いと、車両に対して充電時間の短縮を促す指示が出力される。そして、車両のユーザによって当該指示が承諾されると、電力単価および/または燃料単価が割り引かれる。したがって、ハイブリッド車のユーザの利便性を損なうことなく、給電設備を有効利用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示に係る給電システムによれば、エンジンおよびモータを備えたハイブリッド車から外部給電の要求があった場合に、燃料残量が基準値よりも多いと、車両に対して充電時間の短縮を促す指示が出力される。そして、車両のユーザによって当該指示が承諾されると、電力単価および/または燃料単価が割り引かれる。したがって、ハイブリッド車のユーザの利便性を損なうことなく、給電設備を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施の形態1に係る給電システムの全体概略図である。
【
図2】
図1における車両および給電設備の詳細を説明するための機能ブロック図である。
【
図3】
図1の給電システムにおいて実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【
図4】実施の形態2に係る給電システムにおける車両および給電設備の機能ブロック図である。
【
図5】
図4の給電システムにおいて実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【
図6】実施の形態3に係る給電システムにおいて実行される制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0029】
[実施の形態1]
(システムの概要)
図1は、本実施の形態に係る給電システム10の全体概略図である。
図1を参照して、給電システム10は、車両100と、給電設備50に配置された給電装置200と、サーバ300とを含む。なお、
図1においては、1つの給電装置200のみが示されているが、給電設備50は2つ以上の給電装置200を含んでいてもよい。
【0030】
車両100は、エンジン120、モータ130およびバッテリ150を含む。車両100は、エンジン120および/またはモータ130によって生成される駆動力を用いて走行することが可能な、いわゆるハイブリッド車である。モータ130は、バッテリ150からの電力により駆動される。バッテリ150は、車両100の外部に設けられた給電装置200から給電ケーブル205を介して供給される電力により充電することが可能である。すなわち、車両100は、プラグインタイプのハイブリッド車である。
【0031】
給電装置200は、系統電源から受けた交流電力を、車両100に適した電圧の交流電力あるいは直流電力に変換して車両100に供給する。給電装置200は、給電ケーブル205の端部に設けられたコネクタ206を車両100のインレットに接続することによって、車両100と有線で通信することができる。また、それに加えて、給電装置200は、無線によって車両100と通信する構成であってもよい。
【0032】
給電装置200およびサーバ300は、インターネットなどの通信ネットワーク400を介して、互いに通信可能に構成されている。サーバ300と通信ネットワーク400との通信は、有線であってもよいし無線であってもよい。
【0033】
サーバ300は、プロセッサ310と、メモリ320と、通信装置330とを含む。プロセッサ310,メモリ320および通信装置330は、共通のバス340により互いに接続されており、互いに情報の授受が可能に構成されている。
【0034】
プロセッサ310は、たとえばCPU(Central Processing Unit)であって、プログラムに記述された所定の演算処理を実行するように構成されている。メモリ320は、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを含む。ROMは、プロセッサ310により実行されるプログラムを格納する。RAMは、プロセッサ310におけるプログラムの実行により生成されるデータと、通信装置330を介して入力されたデータとを一時的に格納する。RAMは、作業領域として利用される一時的なデータメモリとしても機能する。
【0035】
通信装置330は、通信ネットワーク400を介して給電装置200との間でデータの授受を行なうための通信インターフェースである。上述のように、サーバ300と通信ネットワーク400との通信は、有線あるいは無線で行なわれる。
【0036】
(車両および給電装置の構成)
次に、
図2を用いて、車両100および給電装置200の詳細な構成について説明する。
図2を参照して、まず、車両100の構成について説明する。車両100は、エンジン120、モータ130およびバッテリ150に加えて、制御装置であるECU(Electronic Control unit)110と、駆動装置であるPCU(Power Control Unit)140と、充電器160と、インレット170と、通信装置180と、ナビゲーション装置(Navi)190とをさらに含む。
【0037】
インレット170には、給電装置200に設けられた給電ケーブル205のコネクタ206が接続される。給電ケーブル205は、電力伝達用の電力線、および、制御信号伝達用の制御線を含む。給電ケーブル205を介して給電装置200から供給された電力は、充電器160へ伝達される。また、給電装置200から供給された制御信号は、ECU110に伝達される。
【0038】
充電器160は、たとえばAC/DCコンバータまたは整流器を含んで構成される。充電器160は、ECU110によって制御され、給電ケーブル205およびインレット170を介して給電装置200から伝達された交流電力を、バッテリ150の充電に適した直流電力に変換して、バッテリ150を充電する。バッテリ150は、複数のセルを含む組電池である、バッテリ150に含まれる各セルは、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池のような二次電池である。なお、バッテリ150は、モータ130の減速時などの回生動作によって発電された電力、および、エンジン120を駆動することによってモータ130で発電された電力によっても充電することができる。
【0039】
PCU160は、たとえばDC/DCコンバータおよびインバータを含んで構成される。PCU160は、バッテリ150からの直流電力を交流電力に変換してモータ130を駆動する。車両100は、モータ130で生成された駆動力および/またはエンジン120によって生成された駆動力によって走行する。
【0040】
通信装置180は、無線により外部と信号の授受を行なうための通信インターフェースである。通信装置180は、通信ネットワーク400を介して、外部機器と通信を行なうことができる。また、通信装置180は、給電装置200の通信装置230とも通信することが可能に構成されている。
【0041】
ナビゲーション装置190は、図示しないタッチパネルを含んでおり、ユーザによって指定された目的地までの走行経路を提示して案内する。ナビゲーション装置190は、ユーザに入力された目的地の情報を、通信装置180を介して外部サーバに送信し、当該外部サーバによって探索された、当該目的地までの走行経路の候補情報を受け、タッチパネル上に表示する。表示された候補の中からユーザによって所望の走行経路が選択されると、ナビゲーション装置190は、選択された走行経路に基づいてユーザを案内する。
【0042】
ECU110は、いずれも図示しないが、CPUおよびメモリを含んで構成されており、車両100に含まれる各機器を統括的に制御する。走行時においては、ECU110は、ユーザによるアクセル、ハンドルおよびブレーキなどの操作に基づいてエンジン120およびPCU140を制御して、車両100を走行させる。
【0043】
また、バッテリ150の充電時においては、給電ケーブル205のコネクタ206が接続されると、ECU110は、給電装置200に対して車両情報を送信する。そして、給電装置200から電力が供給されると、充電器160を制御してバッテリ150を充電する。
【0044】
次に、給電装置200の構成について説明する。給電装置200は、充電装置210と、制御装置220と、通信装置230とを含む。なお、給電設備50が複数の給電装置を含んでいる場合には、制御装置220および通信装置230は、当該複数の給電装置に対する共通の装置として設けられていてもよい。
【0045】
充電装置210は、給電装置200の外部に配置された交流電源260に接続されている。充電装置210は、制御装置220からの指令に従って、交流電源260から受けた交流電力を所定の周波数の交流電力に変換し、給電ケーブル205を介して車両100に供給する。
【0046】
制御装置220は、いずれも図示しないが、CPUおよびメモリを含んで構成されており、給電装置200内の他の機器を統括的に制御する。具体的には、制御装置220は、給電ケーブル205あるいは通信装置230を介して受信する車両100からの情報に基づいて充電装置210を制御して、車両100へ供給する電力を調整する。
【0047】
また、制御装置220は、給電設備50に配置されたカメラ250からの映像を受け、当該映像情報に基づいて給電設備50の混雑状況を判定する。
【0048】
通信装置230は、車両100および通信ネットワーク400と無線で通信するための通信インターフェースである。制御装置220は、通信装置230を介して、車両100からの充電予約情報の受信および給電設備50の混雑情報の送信などを行なう。
【0049】
なお、給電装置200から電力を供給することができる車両は、上記のようなエンジンを有するハイブリッド車に限らず、モータのみの駆動力で走行する電気自動車にも給電することができる。
【0050】
(混雑緩和制御の説明)
一般的に、バッテリを給電するために要する時間は、ガソリンなどの燃料を給油する時間に比べて長くなる。すなわち、バッテリの充電のために給電装置を占有する時間は、比較的長くなる。そのため、ハイブリッド車および電気自動車などの電動車両が普及して、給電対象の車両数が増加すると、給電設備が混雑する可能性が高くなる。
【0051】
ここで、エンジンを併用したハイブリッド車においては、仮にバッテリに蓄えられた電力が枯渇した場合でも、燃料の残量があればエンジンの駆動力および/またはエンジンの駆動によって発電された電力を用いて走行を継続することは可能である。一方で、バッテリの電力のみを利用して走行する電気自動車の場合、バッテリ内の電力が枯渇すると走行することができなくなってしまう。すなわち、電気自動車における充電電力の低下は、ハイブリッド車における充電電力の低下よりも深刻な問題となり得る。
【0052】
そのため、特に給電設備が混雑している状況においては、電気自動車の電欠を防止する観点から考えると、ハイブリッド車よりも電気自動車の充電を優先することが好ましい。一方で、ハイブリッド車においては、常に電気自動車の充電がハイブリッド車よりも優先されてしまうと、所望のタイミングで充電ができなかったり、燃料の残量が少なく充電の必要性が高い場合にも充電ができない状態となったりすることになり、利便性が損なわれてしまう可能性がある。
【0053】
そこで、実施の形態1の給電システムにおいては、給電設備の混雑時において、燃料残量が比較的多いハイブリッド車から給電が要求された場合に、当該ハイブリッド車のユーザに給電時間の短縮を促す提案を行なうことにより、給電装置の利用回転率を高めて、電気自動車の充電を実行しやすくする「混雑緩和制御」を行なう。また、実施の形態1の混雑緩和制御においては、給電時間の短縮要請に対応したハイブリッド車に対しては、混雑緩和に対する協力の対価として、充電電力の電力単価および/または燃料単価が割引かれる。
【0054】
このような構成とすることによって、ハイブリッド車においても充電の必要性が高い場合には電気自動車と同等の優先度で充電することができ、さらに、充電の必要性が比較的低い場合には、電力および/または燃料の単価の低減によるメリットを得ることができる。したがって、ハイブリッド車のユーザの利便性を損なうことなく給電設備を有効活用することができる。
【0055】
図3は、実施の形態1に係る給電システム10において実行される混雑緩和制御を説明するためのフローチャートである。なお、以下の説明においては、混雑緩和制御が車両100および給電装置200において実行される場合について説明するが、給電装置200の制御の一部または全てはサーバ300で実行されてもよい。
【0056】
図3のフローチャートは、車両100のECU110および給電装置200の制御装置220において、予め定められた条件成立時にメインルーチンから呼び出されて実行される。フローチャート中の各ステップは、ECU110および制御装置220のソフトウェア処理により実現されるが、一部あるいは全てのステップは、ECU110および制御装置220に含まれるLSI(Large Scale Integration)等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0057】
図3を参照して、まず、車両100における制御について説明する。車両100のECU110は、ステップ(以下、ステップをSと略す。)100において、車両100のインレット170に給電ケーブル205のコネクタ206が接続されると、S110にて、車両ID、充電許容電力、燃料残量およびSOCを含む車両情報を給電装置200へ送信する。
【0058】
その後、ECU110は、S120にて、給電装置200から充電時間短縮が提案されたか否かを判定する。給電装置200から充電時間短縮の提案がなかった場合(S120にてNO)は、処理がS140に進められて、ECU110は、給電装置200から供給される電力を用いてバッテリ150の充電動作を実行する。
【0059】
一方、給電装置200から充電時間短縮の提案があった場合(S120にてYES)は、処理がS130に進められて、ECU110は、ユーザの操作に従って、当該提案を承諾するか否かの回答を給電装置200へ送信する。後述するように、充電時間短縮の提案に承諾した場合には、充電単価の割引(あるいは燃料単価の割引)を示す割引情報(たとえば、クーポンあるいはポイント)が給電装置200から送信される。車両100のユーザは、当該割引情報を用いることで、今回または次回以降の充電、あるいは、次回以降の燃料補給を、通常より安い単価によって実行することができる。
【0060】
次に、給電装置200における制御について説明する。給電装置200の制御装置220は、給電ケーブル205を介して車両100から車両情報を受信すると、S200にて、充電対象の車両100がハイブリッド車であるか否かを判定する。充電対象の車両100がハイブリッド車ではなく電気自動車である場合(S200にてNO)は、以降のS210~S270の処理がスキップされ、制御装置220は、S280にて、車両100からの要求に従って給電を開始する。
【0061】
充電対象の車両100がハイブリッド車の場合(S200にてYES)は、処理がS210に進められて、制御装置220は、カメラ250からの映像に基づいて給電設備50および給電装置200の混雑度を算出し、当該混雑度が所定よりも大きいか否かを判定する。混雑度については、たとえばカメラ250の映像に含まれる給電待機中の車両台数に基づいて判断される。あるいは、給電の予約が可能な給電設備の場合には、現状の予約台数に基づいて混雑度を判断してもよい。
【0062】
混雑度が小さい場合(S210にてNO)は、電気自動車に対する優先充電は不要であるため、S280にて処理が進められて、制御装置220は、車両100への給電を開始する。混雑度が大きい場合(S210にてYES)は、処理がS220に進められて、制御装置220は、車両100のSOCと許容充電電力とに基づいて、充電完了までの予測時間を算出する。そして、制御装置220は、S230にて、S220で算出した充電予測時間がしきい値Taよりも大きいか否かを判断する。なお、しきい値Taは、たとえば10分である。
【0063】
充電予測時間がしきい値Ta以下の場合(S230にてNO)には、比較的短時間で給電処理が完了するため、処理がS280に進められて、制御装置220は、車両100からの要求に従って給電を開始する。一方、充電予測時間がしきい値Taより大きい場合(S230にてYES)は、待機中の車両の待ち時間が長くなってしまうため、制御装置220は、S240にて、車両情報に含まれる車両100の燃料残量が基準値αよりも多いか否かを判定する。言い換えれば、制御装置220は、仮にバッテリ150内の充電量が枯渇しても、エンジン120からの駆動力あるいはエンジン120による発電電力を用いて、近隣の他の給電設備までの距離を走行できるか否かを判定する。基準値αは、たとえば10リットルである。
【0064】
燃料残量が基準値α以下の場合(S240にてNO)は、エンジン120を用いた走行による走行距離が十分確保できず、バッテリ150の充電が必要であるため、制御装置220は、処理をS280に進めて、車両100からの要求に従って給電を開始する。一方、燃料残量が基準値αより多い場合(S240にてYES)は、エンジン120の駆動力あるいはエンジン120による発電電力を用いた走行によって、ある程度の走行距離が確保できるため、制御装置220は、S250にて、充電時間を短縮することを促す指示を車両100に出力する。充電時間短縮の指示は、バッテリ150の必要充電時間よりも少ない充電時間を提案する指示であってもよいし、バッテリ150の必要充電量よりも少ない充電量を提案する指示であってもよい。なお、制御装置220は、充電時間を短縮することを促す指示とともに、当該指示を承諾した場合の充電単価の割引に関する情報をあわせて車両100に対して出力する。
【0065】
充電時間短縮の提案に対する回答を車両100から受けると、制御装置220は、S260にて、車両100のユーザが、充電時間短縮の提案を承諾したか否かを判定する。充電時間短縮が承諾されなかった場合(S260にてNO)、車両100のユーザは当該給電装置200における給電を希望しているため、制御装置220は、処理をS280に進めて、車両100からの要求に従って給電を開始する。一方、充電時間短縮が承諾された場合(S260にてYES)は、制御装置220は、S270にて、充電時間短縮の要請に対する応答の対価として、充電単価を割引(低減)して給電を開始する(S280)。なお、
図3には示されていないが、充電時間短縮の提案に対して当該給電装置200での充電が中止された場合には、S280がスキップされる。
【0066】
なお、充電単価の低減については、これから実行する給電における電力単価を低減してもよいし、次回以降の給電の際の電力単価を低減してもよい。また、電力単価に代えてまたは加えて、燃料補給時の燃料単価を低減してもよい。
【0067】
以上のように、給電設備の混雑時に燃料残量が多いハイブリッド車から給電要求があった場合に、充電時間を短縮することを促す指示を車両に通知することによって、給電設備の回転効率を向上させて、電気自動車への給電が優先的に時機構されるようにすることができる。また、充電時間を短縮したハイブリッド車に対して、電力単価および/または燃料単価を低減することによって、充電時間短縮に対するインセンティブを付与することができる。したがって、ハイブリッド車のユーザの利便性を損なうことなく、給電設備を有効利用することができる。
【0068】
[実施の形態2]
外部充電の形態として、給電装置からの交流電力を用いる「AC充電」と、給電装置からの直流電力を用いる「DC充電」が知られている。また、DC充電において、AC充電よりも大きな電力を給電装置から供給して、より短時間でバッテリを充電する「DC急速充電」が可能な給電装置も知られている。
【0069】
実施の形態2においては、上記のAC充電が可能なAC給電装置と、DC急速充電が可能なDC給電装置とを含む給電設備において、電気自動車がDC給電装置を優先的に利用できるようにすることによって、給電設備を有効利用する構成について説明する。
【0070】
図4は、実施の形態2に係る給電システム10Aにおける車両100Aおよび給電設備50Aの機能ブロック図である。
図4において、
図2で示した実施の形態1の給電システム10と重複する部分の説明は繰り返さない。
【0071】
図4を参照して、車両100Aは、
図2で示した車両100における充電器160が充電器160Aに置き換えられており、さらに、インレット170に代えて、AC充電用のインレット170ACと、DC急速充電用のインレット170DCとを備えている。また、給電設備50Aは給電装置200Aを含んでおり、給電装置200Aにおいては、
図2の給電装置200における充電装置210が、DC充電装置210Aに置き換えられたものとなっている。すなわち、
図2の給電装置200はAC給電装置であり、
図4の給電装置200AはDC給電装置である。
図4には示されていないが、給電設備50Aは、DC給電装置である給電装置200Aに加えて、AC給電装置である給電装置200も含んでいる。
【0072】
給電装置200AにおけるDC充電装置210Aは、AC/DCコンバータあるいは整流器を含んで構成されており、外部に配置された交流電源260からの交流電力を直流電力に変換して、給電ケーブル205を介して車両100Aに供給する。給電装置200Aから出力可能な電力は、給電装置200から出力可能な電力よりも大きい。したがって、同じ電力量を充電する場合には、給電装置200Aを用いたDC急速充電のほうが、給電装置200を用いたAC充電よりも短時間で充電を完了することができる。
【0073】
車両100Aにおいて、AC充電が行なわれる場合には、給電ケーブル205のコネクタ206がインレット170ACに接続される。また、DC急速充電が行なわれる場合には、コネクタ206がインレット170DCに接続される。なお、交流電力を伝達する端子と直流電力を伝達する端子とが、共通のコネクタに配置された構成であってもよい。その場合には、車両側のインレットも共通のインレットで構成される。インレット170ACで受けた交流電力、および、インレット170DCで受けた直流電力は、充電器160Aへの伝達される。
【0074】
充電器160Aは、AC/DCコンバータあるいは整流器を含んでいる。充電器160Aは、インレット170ACからの交流電力を用いてバッテリ150を充電する場合には、上記のAC/DCコンバータあるいは整流器によって交流電力を直流電力に変換して、バッテリ150を充電する。一方、インレット170DCからの直流電力を用いる場合には、充電器160Aは、受けた直流電力を用いてバッテリ150を直接充電する。なお、充電器160AはDC/DCコンバータを含んでもよいが、電力変換による損失を低減するためには、インレット170DCからの直流電力をそのまま用いることが好ましい。
【0075】
実施の形態1で説明したように、電気自動車の電欠を防止する観点から考えると、ハイブリッド車よりも電気自動車の充電を優先することが好ましい。そのため、DC急速充電が可能な給電装置が設けられている給電設備の場合には、ハイブリッド車よりも電気自動車にDC急速充電を適用することが好ましい。そこで、実施の形態2においては、給電設備の混雑時に、AC充電およびDC急速充電が可能なハイブリッド車から、DC急速充電の要求があった場合には、ハイブリッド車に対してAC給電装置によるAC充電への変更を促す提案を行なう制御を実行する。そして、ハイブリッド車のユーザが、AC給電装置への移動を承諾した場合には、その対価として、電力単価および/または燃料単価の割引を行なう。これにより、電気自動車によるDC急速充電の優先的な利用が可能となるとともに、ハイブリッド車のユーザの利便性の低下を抑制することができ、全体として給電設備を有効利用することが可能となる。
【0076】
図5は、実施の形態2の給電システム10Aにおいて実行される混雑緩和制御を説明するためのフローチャートである。
図5には、車両100AのECU110および給電装置200Aの制御装置220において実行されるフローチャートが示されている。なお、実施の形態1と同様に、給電装置200Aの制御の一部または全てはサーバ300で実行されてもよい。車両100Aの制御においては、
図3のフローチャートにステップS135,S136が追加されたものとなっている。また、給電装置200Aの制御においては、
図3のフローチャートのステップS250,S260が、ステップS250A,S260Aに置き換わったものとなっている。
図5において、
図3と重複するステップの説明は繰り返さない。
【0077】
図5を参照して、まず給電装置200Aの制御について説明する。混雑度が大きく、充電予測時間がしきい値Taよりも大きく、かつ、燃料残量が基準値αより多い場合に、DC給電装置に対して車両100AからDC急速充電の要求があると(S240にてYES)、処理がS250Aに進められて、制御装置220は、AC給電装置に移動してAC充電を促す指示を車両100Aに出力する。このとき、制御装置220は、指示を承諾してAC給電装置へ移動した場合の、充電単価の割引に関する情報をあわせて車両100Aに対して出力する。
【0078】
AC給電装置への移動の提案に対する回答を車両100Aから受けると、制御装置220は、S260Aにて、車両100のユーザが、AC給電装置への移動の提案を承諾したか否かを判定する。AC給電装置への移動が承諾されなかった場合(S260AにてNO)、車両100AのユーザはDC急速給電を希望しているため、制御装置220は、処理をS280に進めて、車両100Aからの要求に従ってDC急速給電を開始する。一方、AC給電装置への移動が承諾された場合(S260AにてYES)は、制御装置220は、S270にて、AC給電装置への移動の要請に対する応答の対価として、次回以降の充電において利用可能な割引情報を車両100Aに提供する。
【0079】
なお、
図5には示されていないが、車両100Aのユーザは、制御装置220からの要請を承諾した場合には、給電装置200AからAC給電装置である給電装置200へ移動してAC充電を行なう。このときに、上記の割引情報を利用することによって、電力単価が低減される。
【0080】
次に、車両100Aにおける制御について説明する。DC給電装置である給電装置200Aに設けられている給電ケーブル205のコネクタ206がインレット170DCに接続され、給電ケーブル205を介して車両情報が給電装置200Aに送信されると、S120Aにて、ECU110は、給電装置200Aから、AC給電装置への移動を促す指示が提案されたか否かを判定する。給電装置200AからAC給電装置への移動の提案がなかった場合(S120AにてNO)は、処理がS140に進められて、ECU110は、給電装置200Aから供給される電力を用いてバッテリ150のDC急速受電を実行する。
【0081】
一方、給電装置200AからAC給電装置への移動の提案があった場合(S120AにてYES)は、処理がS130に進められて、ECU110は、ユーザの操作に従って、当該提案を承諾するか否かの回答を給電装置200Aへ送信する。そして、ECU110は、S135において、給電装置200Aに対する回答において、AC給電装置への移動の提案が承諾されているか否かを判定する。
【0082】
AC給電装置への移動が承諾されていない場合(S135にてNO)は、ユーザが給電装置200Aにおける充電を希望しているため、処理がS140に進められて、ECU110は、給電装置200Aから供給される電力を用いてバッテリ150のDC急速充電を実行する。一方、AC給電装置への移動が承諾された場合(S135にてYES)は、ECU110は、S136にて、給電装置200Aからの割引情報を受信する。その後、車両100Aのユーザは、給電設備50AにおけるAC給電装置である給電装置200、あるいは、他の給電設備に移動して充電を実行する。このとき、給電装置200Aから受信した割引情報を利用することによって、低減された充電単価によって充電が行なわれる。なお、実施の形態1と同様に、電力単価に代えてまたは加えて、燃料補給時の燃料単価を低減してもよい。
【0083】
以上のように、給電設備の混雑時に燃料残量が多いハイブリッド車からDC急速充電の要求があった場合に、AC給電装置への移動を促す指示を車両に通知することによって、電気自動車によるDC急速充電が優先的に行なわれるようにすることができる。また、AC給電装置への移動を承諾したハイブリッド車に対して、電力単価および/または燃料単価を低減することによって、AC給電装置への移動に対するインセンティブを付与することができる。したがって、ハイブリッド車のユーザの利便性を損なうことなく、給電設備を有効利用することができる。
【0084】
[実施の形態3]
実施の形態1および実施の形態2の給電システムにおいては、給電装置に設けられた給電ケーブルのコネクタが車両のインレットに接続されたときに、充電時間の短縮あるいはAC給電装置への移動が提案される構成について説明した。
【0085】
実施の形態3においては、無線通信あるいは通信ネットワークを通じて携帯端末等から給電設備の利用予約が可能なシステムにおいて、当該給電設備の混雑状況に応じて、ハイブリッド車に対して別の給電設備における充電を促すことによって、当該給電設備における電気自動車の給電が優先的に利用できるようにする構成について説明する。
【0086】
実施の形態3の給電システムは、基本的には、実施の形態1において説明した
図2の給電システム10と同じ構成を有している。なお、給電装置については、実施の形態1の給電装置200のようなAC給電装置であってもよいし、実施の形態2の給電装置200AのようなDC給電装置であってもよい。
【0087】
実施の形態3の給電システムにおいては、車両100に搭載された通信装置180との通信、あるいは、通信ネットワーク400を介した携帯端末およびパーソナルコンピュータなどとの通信によって、車両100が給電設備に到着する前に、給電装置200に対して給電の予約をすることが可能に構成されている。このような給電予約が可能な給電システムにおいて、給電設備が混雑しているときにハブリッド車から給電予約の要求を受けた場合、あるいは、給電予約を受けた後に給電設備が混雑し、待機中の車両に電気自動車が含まれる場合では、上述のように電気自動車の充電を優先することが好ましい。
【0088】
そのため、実施の形態3の給電システムにおいては、上記のような状況の場合に、ハイブリッド車のユーザに対して、混雑度の低い近隣の他の給電設備への移動を促す提案を行なって、当該給電設備において電気自動車の充電を実行しやすくする。そして、他の給電設備への移動要請に対応したハイブリッド車に対しては、その対価として、充電電力の電力単価および/または燃料単価が割引かれる。これによって、ハイブリッド車のユーザの利便性を損なうことなく、給電設備を有効活用することができる。
【0089】
図6は、実施の形態3に係る給電システムにおいて実行される制御を説明するためのフローチャートである。
図6には、車両100のECU110および給電装置200の制御装置220において実行されるフローチャートが示されている。なお、実施の形態1および実施の形態2と同様に、給電装置200の制御の一部または全てはサーバ300で実行されてもよい。
【0090】
図6を参照して、まず給電装置200における制御について説明する。給電装置200の制御装置220は、給電ケーブル205を介して車両100から車両情報を受信すると、S400にて、充電対象の車両100がハイブリッド車であるか否かを判定する。充電対象の車両100がハイブリッド車ではなく電気自動車である場合(S400にてNO)は、以降のS410~S450の処理がスキップされ、制御装置220は、車両100からの予約を受け付けて処理を終了する。
【0091】
充電対象の車両100がハイブリッド車の場合(S400にてYES)は、処理がS410に進められて、制御装置220は、カメラ250からの映像に基づいて給電設備50および給電装置200の混雑度を算出し、当該混雑度が所定よりも大きいか否かを判定する。混雑度については、たとえばカメラ250の映像に含まれる給電待機中の車両台数、および、現状の予約台数に基づいて判断される。
【0092】
混雑度が小さい場合(S410にてNO)は、電気自動車に対する優先充電は不要であるため、制御装置220は、車両100からの予約を受け付けて処理を終了する。混雑度が大きい場合(S410にてYES)は、処理がS420に進められて、制御装置220は、車両情報に含まれる車両100の燃料残量が基準値αよりも多いか否かを判定する。
【0093】
燃料残量が基準値α以下の場合(S420にてNO)は、エンジン120を用いた走行による走行距離が十分確保できず、バッテリ150の充電が必要であるため、制御装置220は、車両100からの予約を受け付けて処理を終了する。一方、燃料残量が基準値αより多い場合(S420にてYES)は、エンジン120の駆動力あるいはエンジン120による発電電力を用いた走行によって、ある程度の走行距離が確保できるため、制御装置220は、S430にて、近隣の他の給電設備への移動を促す指示を車両100に出力する。なお、制御装置220は、他の給電設備への移動を促す指示とともに、充電単価の割引に関する情報および近隣の他の給電設備の混雑状況をあわせて車両100に対して出力する。
【0094】
他の給電設備への移動の提案に対する回答を車両100から受けると、制御装置220は、S440にて、車両100のユーザが他の給電設備への移動の提案を承諾したか否かを判定する。他の給電設備への移動が承諾されなかった場合(S440にてNO)、車両100のユーザは当該給電装置200における給電を希望しているため、制御装置220は、車両100からの予約を受け付けて処理を終了する。一方、他の給電設備への移動が承諾された場合(S440にてYES)は、制御装置220は、S450にて、他の給電設備への移動の要請に対する応答の対価として、次回以降の充電において利用可能な割引情報を車両100に提供する。なお、実施の形態1と同様に、電力単価に代えてまたは加えて、燃料補給時の燃料単価を低減してもよい。
【0095】
次に、車両100における制御について説明する。車両100のユーザの操作によって給電装置200における給電の予約がなされると、車両100のECU110は、S300にて、通信装置180を介して無線通信によって予約情報を給電装置200へ送信する。予約情報は、たとえば、車両ID、給電開始時刻、SOC、燃料残量、許容充電電力などの情報が含まれる。
【0096】
次に、ECU110は、S310にて、給電装置200から他の給電設備への移動を促す提案がなされたか否かを判定する。給電装置200から他の給電設備への移動を促す提案がなかった場合(S310にてNO)は、ECU110は、以降の処理をスキップして処理を終了する。この場合、給電装置200における予約が維持されるので、予約された時刻に給電設備に行くことで、給電装置200による給電をすることができる。
【0097】
一方、給電装置200から他の給電設備への移動を促す提案があった場合(S310にてYES)は、処理がS320に進められて、ECU110は、ユーザの操作に従って、当該提案を承諾するか否かの回答を給電装置200へ送信する。そして、ECU110は、S330において、給電装置200に対する回答において、他の給電設備への移動の提案が承諾されているか否かを判定する。
【0098】
他の給電設備への移動が承諾されていない場合(S330にてNO)は、ユーザが給電装置200における充電を希望しているため、ECU110は、以降の処理をスキップして処理を終了する。この場合、給電装置200における予約が維持されるので、予約された時刻に給電設備に行くことで、給電装置200による給電をすることができる。
【0099】
一方、他の給電設備への移動が承諾された場合(S330にてYES)は、ECU110は、S340にて、給電装置200からの割引情報を受信する。この場合、給電装置200における予約がキャンセルされるので、車両100のユーザは、他の給電設備に移動して充電を実行する。このとき、給電装置200から受信した割引情報を利用することによって、低減された充電単価によって充電が行なわれる。
【0100】
なお、
図6のフローチャートは、車両100から予約されたタイミングで実行される制御について説明したが、一旦車両100からの予約を受け付けた後に、予約された充電開始時刻までの間に給電設備に混雑が生じ、かつ、待機車両に電気自動車が含まれるような場合には、制御装置220は、予約の受付後であっても他の給電設備への移動を車両100のユーザに要請してもよい。
【0101】
また、他の給電設備への移動の提案に代えてあるいは加えて、実施の形態1のように充電時間の短縮を要請してもよい。あるいは、車両100の予約情報において、DC給電装置を用いたDC急速充電が要求されている場合には、実施の形態2のようにAC充電に変更することを要請してもよい。
【0102】
以上のように、燃料残量が多いハイブリッド車から給電装置の利用予約がされた場合に、予約された充電開始時刻において当該給電装置の混雑が予想されるときに、他の給電装置への移動を促す指示を車両に通知することによって、電気自動車への給電を優先的に実行することができる。また、他の給電装置への移動を承諾したハイブリッド車に対して、電力単価および/または燃料単価を低減することによって、他の給電装置へ移動することのインセンティブを付与することができる。したがって、ハイブリッド車のユーザの利便性を損なうことなく、給電設備を有効利用することができる。
【0103】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
10,10A 給電システム、50,50A 給電設備、100,100A 車両、110 ECU、120 エンジン、130 モータ、140 PCU、150 バッテリ、160,160A 充電器、170,170AC,170DC インレット、180,230,330 通信装置、190 ナビゲーション装置、200,200A 給電装置、205 給電ケーブル、206 コネクタ、210 充電装置、210A DC充電装置、220 制御装置、250 カメラ、260 交流電源、300 サーバ、310 プロセッサ、320 メモリ、340 バス、400 通信ネットワーク。