(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】水処理装置および水処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/24 20060101AFI20241217BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20241217BHJP
B01D 21/06 20060101ALI20241217BHJP
B01D 21/08 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B01D21/24 D
B01D21/01 A
B01D21/06 A
B01D21/08 C
B01D21/24 G
(21)【出願番号】P 2021186780
(22)【出願日】2021-11-17
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 高志
(72)【発明者】
【氏名】石神 卓美
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-231230(JP,A)
【文献】特開2001-300207(JP,A)
【文献】特開2021-137783(JP,A)
【文献】特開2017-087196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/34
C02F 1/52- 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロックを含む被処理水を沈殿槽に移送する移送ステップ、を含む水処理方法であって、
前記移送ステップは、底面及び壁面を有し且つ少なくとも上方の一部が開放された、又は開閉可能な流入樋であって、一方から被処理水が流入し、他方の底面端部において前記沈殿槽と接続された被処理水流出口を有し、該被処理水流出口において被処理水が衝突する衝突面と水平面とのなす角度(a)が20°~
80°である流入樋、を用いる、水処理方法。
【請求項2】
前記流入樋の底面は、被処理水流入側から被処理水流出口に向かって傾斜しており、該底面と水平面とのなす角度(b)が0
°~45°である、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記被処理水流出口が、前記沈殿槽内部に配置されたセンターウェルに配管を介して接続されており、前記センターウェルと前記配管の接続口が、沈殿槽に保持された被処理水の水面よりも下方に位置している、請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記移送ステップの前に、排水と凝集剤を混和させてフロックを形成するフロック形成ステップ、を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項5】
前記移送ステップの後に、前記沈殿槽においてフロックを沈殿させる沈殿ステップ、をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項6】
沈殿槽と、前記沈殿槽内部に配置されたセンターウェルと、前記センターウェルに配管を介して接続された被処理水流入路と、を含む水処理装置であって、
前記被処理水流入路は、底面及び壁面を有し且つ少なくとも上方の一部が開放された又は開閉可能な流入樋であって、一方から被処理水が流入し、他方の底面端部において前記配管と接続された被処理水流出口を有し、該被処理水流出口において被処理水が衝突する衝突面と水平面とのなす角度(a)が20
°~
80°である、水処理装置。
【請求項7】
前記流入樋の底面は、被処理水流入側から被処理水流出口に向かって傾斜しており、該
底面と水平面とのなす角度(b)が0
°~45°である、請求項6に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記センターウェルと前記配管の接続口が、沈殿槽に保持された被処理水の水面よりも下方に位置している、請求項6又は7に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記被処理水流入路と接続された、排水と凝集剤とを混和させてフロックを形成する混和槽をさらに含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排水に対する処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業排水などに含まれる無機汚泥等を凝集沈殿させる場合、沈殿槽流入前に混和槽において排水に凝集剤を添加して、フロックを十分に成長させてから沈殿槽に流入させ、フロックと被処理水を分離させる沈降分離法による排水処理方法が知られている。
【0003】
沈降分離性能の低下を抑制する方法として、沈殿槽の掻寄板を回転させる回転シャフトの周囲に配置される流入管(センターウェル)と、流入管の上方に配置される被処理水を収容可能な収容部を有し、収容部の内側に内周壁を有する流入部ユニットが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、沈降分離性能の低下を抑制する方法として、沈殿槽の掻寄板を回転させる回転シャフトの周囲に配置される流入管と、流入管の外側に配置される被処理水を収容可能な収容部と、回転シャフト付着物の清掃機構を有する流入部ユニットが開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、被処理水の処理効率を向上させる方法として、沈殿槽の内側に配置される被処理水の流入管ユニットにおいて、流入管と複数の案内羽根とを持ち、複数の案内羽根が流入管内側の軸方向に多段に配置され、流入管に供給される被処理水の流れを変える流入管ユニットが開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-182906号公報
【文献】特開2020-44463号公報
【文献】特開2018-79440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3はセンターウェル(流入管)ユニットに関する発明であるが、そのセンターウェルに被処理水を流入させる被処理水流入路に関する工夫については開示されていない。被処理水流入路は一般的に閉じられた配管によって構成されており、フロックが配管内に付着した場合、配管内部が目視確認できず、清掃も容易ではなかった。そこで本発明者らは、流入路として上方が解放された流入樋を用いて被処理水を沈殿槽に導入することで、流入路におけるフロックの付着を目視することができ、更に清掃が容易であることを見出した。
しかしながら流入路として流入樋を用いた場合、通常、樋の底面には流入した流体を落下させるための流出口があり、通常流出口は樋の一端に備えられていることから、当該流出口において流体と壁面とが衝突する。フロックを含む被処理水が流入樋の壁面に衝突すると、成長させたフロックが破壊され、フロックの沈降分離性能が低下するという問題点を新たに見出した。
本発明は、フロックの沈降分離性能の低下を抑制し、内部を目視確認でき、清掃も容易な被処理水流入路を含む、水処理装置および水処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討した結果、被処理水流入路を、底面及び壁面を有し且つ少なくとも上方の一部が開放された、又は開閉可能な流入樋であって、一方から被処理水が流入し、他方の底面端部において前記配管と接続された被処理水流出口を有し、該被処理水流出口において被処理水が衝突する衝突面と水平面とのなす角度(a)を20~90°とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
[1]フロックを含む被処理水を沈殿槽に移送する移送ステップ、を含む水処理方法であって、
前記移送ステップは、底面及び壁面を有し且つ少なくとも上方の一部が開放された、又は開閉可能な流入樋であって、一方から被処理水が流入し、他方の底面端部において前記沈殿槽と接続された被処理水流出口を有し、該被処理水流出口において被処理水が衝突する衝突面と水平面とのなす角度(a)が20°~90°である流入樋、を用いる、水処理方法。
[2]前記流入樋の底面は、被処理水流入側から被処理水流出口に向かって傾斜しており、該底面と水平面とのなす角度(b)が0~45°である、[1]に記載の水処理方法。[3]前記被処理水流出口が、前記沈殿槽内部に配置されたセンターウェルに配管を介して接続されており、前記センターウェルと前記配管の接続口が、沈殿槽に保持された被処理水の水面よりも下方に位置している、[1]又は[2]に記載の水処理方法。
[4]前記移送ステップの前に、排水と凝集剤を混和させてフロックを形成するフロック形成ステップ、を更に含む、[1]~[3]のいずれかに記載の水処理方法。
[5]前記移送ステップの後に、前記沈殿槽においてフロックを沈殿させる沈殿ステップ、をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の水処理方法。
[6]沈殿槽と、前記沈殿槽内部に配置されたセンターウェルと、前記センターウェルに配管を介して接続された被処理水流入路と、を含む水処理装置であって、
前記被処理水流入路は、底面及び壁面を有し且つ少なくとも上方の一部が開放された又は開閉可能な流入樋であって、一方から被処理水が流入し、他方の底面端部において前記配管と接続された被処理水流出口を有し、該被処理水流出口において被処理水が衝突する衝突面と水平面とのなす角度(a)が20~90°である、水処理装置。
[7]前記流入樋の底面は、被処理水流入側から被処理水流出口に向かって傾斜しており、該底面と水平面とのなす角度(b)が0~45°である、[6]に記載の水処理装置。[8]前記センターウェルと前記配管の接続口が、沈殿槽に保持された被処理水の水面よりも下方に位置している、[6]又は[7]に記載の水処理装置。
[9]前記被処理水流入路と接続された、排水と凝集剤とを混和させてフロックを形成する混和槽をさらに含む、[6]~[8]のいずれかに記載の水処理装置。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、フロックの沈降分離性能の低下を抑制し、内部を目視確認でき、清掃も容易な被処理水流入路を含む、水処理装置および水処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】壁面とは異なる衝突面を有する流入樋の側面断面模式図である。
【
図3】各実施例における水流速度の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[水処理装置]
本発明の一形態の水処理装置は、沈殿槽と、前記沈殿槽内部に配置されたセンターウェルと、前記センターウェルに配管を介して接続された被処理水流入路と、を含む水処理装置である。
本形態の水処理装置によれば、フロックの沈殿分離性能の低下を抑制し、水処理装置内部、特に被処理水流入路を目視確認でき、清掃も容易となる。
以下、本形態の水処理装置の好ましい様態について説明する。
【0013】
本形態の水処理装置の全体的な構成の好ましい様態を、図面を用いて説明する。
図1は、本形態の水処理装置の一例の側面断面模式図である。
図1に示した水処理装置100は、沈殿槽1と、流入樋2と、配管3と、センターウェル4と、被処理水排出口5と、掻寄ユニット6と、沈殿物排出口7と、を有する。
【0014】
本形態の水処理装置は、例えば、工業排水などの被処理水に含まれる無機汚泥等のフロックを、被処理水から分離させて浄化する水処理装置であり、例えば沈降分離法が用いられる水処理装置である。
【0015】
沈殿槽1は、被処理水を保持することで、該被処理水に含まれるフロックを槽の下方に沈殿させる槽であり、被処理水を保持できる側面と底面を有する槽であればよく、典型的には円筒状などの底面を有する筒状の槽であるが、柱状などの矩形状であってもよい。沈殿槽1は、底面11と、底面の周縁部から上方に向けて起立した壁面12と、を含む。底面11は、フロックを沈殿物排出口7から容易に排出するために、沈殿物排出口7に向かってテーパ形状を有するが、底面11が平面であってもよい。沈殿槽1において、壁面12の上方は通常開口している。沈殿槽1は、内部に被処理水を貯留するとともに、フロックを沈殿させる。なお「フロック」とは、工業排水などの被処理水に含まれる無機汚泥等を凝集させて生成した塊状物を意味する。
【0016】
流入樋2は、被処理水を沈殿槽外から沈殿槽1に移送する被処理水流入路であり、底面21及び壁面22を有し且つ上方が開放されている。上方は、樋の内部が視認できる限り、少なくともその一部が解放されていればよく、又は開閉可能な流入樋であってもよい。流入樋2を用いて被処理水を沈殿槽1に移送することで、沈殿槽1の所定の場所に被処理水を導入することが可能となり、沈殿効率を高めることができる。
流入樋2の上方は、その一部が開放されており、又は開閉可能であることによって、流入樋2の内部の汚れの形成、例えばフロックが流入樋壁面に付着する状況を目視確認でき、流入樋2の閉塞可能性を素早く察知できるとともに、流入樋壁面に付着したフロックの清掃も容易となる。
流入樋2は、一方の端部である被処理水流入口23からフロックを含む被処理水を流入させて、他方の底面端部に備えられた被処理水流出口24から被処理水を流出する。被処理水流出口24は配管3を介してセンターウェル4に接続されており、フロックを含む被処理水は、センターウェル内の所定の場所に導入される。
【0017】
流入樋2の壁面22は、典型的には被処理水の流れ方向と平行となる壁面、および、被処理水の流れ方向と垂直となる壁面を含む。ここで壁面22の形状は、平面であってもよく、曲面であってもよく、平面と曲面の両方を含む形状であってもよい。
【0018】
流入樋2に流入された被処理水は、被処理水流出口24において衝突面25と衝突してから流出する。流入樋の構造は、典型的には流入樋の底面に円形の排出口が設けられており、当該排出口から流体が排出される。そして排出口は壁面に接するように設けられていることから、排出口が接する面に流体が一度衝突し、その後排出口より流体が排出されることとなる。
図2に示すように衝突面25は、流入樋2の壁面22bおよびセンターウェルの壁面42とは異なる面を別途設置してもよく、流入樋2の壁面22bの一部であって
もよく、センターウェル4の壁面42の一部であってもよい。衝突面25の形状は、平面であってもよく、曲面であってもよく、平面と曲面の両方を含む形状であってもよい。
【0019】
図2で示される、衝突面25と水平面とのなす角度(a)の下限値は、20°以上であることが好ましく、30°以上であることがより好ましく、40°以上であることがさらに好ましい。また、角度(a)の上限値は、90°以下であることが好ましく、80°以下であることがより好ましく、60°以下であることがさらに好ましく、50°以下であることが特に好ましい。
角度(a)が上記範囲内であることで、フロックを含む被処理水が衝突面25に衝突する際のフロックの破壊を防止し、フロックの沈降分離性能低下を抑制することができる。
【0020】
流入樋2の底面21は、被処理水流入口23側から被処理水流出口24側に向かって傾斜しており、
図2で示される、流入樋2の底面21と水平面とのなす角度(b)の下限値は、0°以上であることが好ましく、10°以上であることがより好ましく、15°以上であることがさらに好ましい。また、角度(b)の上限値は、45°以下であることが好ましく、40°以下であることがより好ましく、30°以下であることがさらに好ましい。
角度(b)が上記範囲内であることで、フロックを含む被処理水が衝突面25に衝突する際のフロックの破壊を防止し、フロックの沈降分離性能低下を抑制することができ、さらに配管3へのフロックの付着による配管閉塞を抑制することができる。
流入樋2の材質は特に限定されず、アルミやSUSなどの金属性であってもよく、木製であってもよい。フロックの付着を抑制する観点から、防汚塗料などでコーティングされたものであることが好ましい。また木製である場合には、耐腐食性を向上させるためニスなどでコーティングしてもよい。衝突面25が、流入樋2と別の部材である場合には、流入樋と同じ材料であってもよく、異なっていてもよい。
【0021】
流入樋2の被処理水排出口25から流出された被処理水は、配管3を介してセンターウェル4内に導入される。配管3とセンターウェル4の接続口31は、沈殿槽1内に保持された被処理水の水面よりも下方に位置していることが好ましい。なお、ここでの被処理水の水面とは、水処理時の所定の水位のことをいう。接続口31が被処理水の水面よりも下方に位置していることで、フロックの破壊を防止し、フロックの沈降分離性能低下を抑制することができる。
【0022】
センターウェル4は、例えば円筒状などの底面を有さない筒状である。センターウェル4は沈殿槽1中心部の上方に設置され、センターウェル4の下方には下方開口部41を有し、下方開口部41は沈殿槽1の底面11から離れている。流入樋2から配管3を介してセンターウェル4内に供給された被処理水は、センターウェル4内を下方に向けて流れ、下方開口部41から沈殿槽1内に供給される。センターウェル4から沈殿槽1内に供給された被処理水は、沈殿槽1の壁面12とセンターウェル4の壁面42との間をゆっくりと上昇する。例えばこの過程で、フロックが被処理水から分離して沈殿する。
【0023】
被処理水排出口5は、沈殿槽1の壁面12の上方に設けられている。フロックと分離された被処理水が、沈殿槽1の内壁面とセンターウェル4の壁面42との間をゆっくりと上昇し、被処理水排出口5から沈殿槽1の外部に流出される。沈殿槽1の外部に流出した被処理水は、例えばさらに別の処理が行われる。
【0024】
掻寄ユニット6は、回転シャフト61と、駆動モータ62と、支持部材63と、複数の掻寄板64と、を有する。回転シャフト61は、沈殿槽1の中心部(センターウェル4の中心部)に配置され、筒状であるセンターウェル4を貫通している。すなわちセンターウェル4は、回転シャフト61の周囲に配置される。駆動モータ62は、直接または伝達機
構などを介して回転シャフト61に接続され、回転シャフト61を回転させる。支持部材63は、回転シャフト61の下端に連結されて、径方向に伸びている。複数の掻寄板64は、支持部材63に取り付けられている。すなわち、回転シャフト61は掻寄板64を回転させる。複数の掻寄板64は、支持部材63から沈殿槽1の底面11に向けて設けられている。このような掻寄ユニット6によれば、駆動モータ62によって回転シャフト61が回転されることで、支持部材63および複数の掻寄板64が回転する。これにより、沈殿槽1の底面11に沈殿したフロックを含む沈殿物が、底面11の中央部に向けて掻き寄せられる。掻き寄せられた沈殿物は、底面11の中央部に設けられた沈殿物排出口7を通じて沈殿槽1の外部に排出される。
【0025】
流入樋2には、排水と凝集剤とを混和させてフロックを形成する混和槽が接続されていてもよい。混和槽において、工業排水等に凝集剤が添加されることで、無機汚泥等が凝集し、フロックを含む被処理水を得ることができる。
【0026】
[水処理方法]
本発明の一形態の水処理方法は、フロックを含む被処理水を沈殿槽に移送する移送ステップ、を含む水処理方法である。
本形態の水処理方法によれば、フロックの沈殿分離性能の低下を抑制し、水処理装置内部、特に被処理水流入路を目視確認でき、清掃も容易となる。
以下、本形態の水処理方法の好ましい様態について説明する。
【0027】
本形態の水処理方法における、フロックを含む被処理水を沈殿槽に移送する移送ステップは、底面及び壁面を有し且つ少なくとも上方の一部が開放された、又は開閉可能な流入樋を用いる。流入樋の上方の一部が開放されている、又は開閉可能であることによって、流入樋の内部を目視確認でき、清掃も容易となる。
流入樋は、一方の端部である被処理水流入口からフロックを含む被処理水を流入させて、他方の底面端部に備えられた被処理水流出口から被処理水を流出する。
【0028】
流入樋に流入された被処理水は、被処理水流出口において衝突面と衝突してから流出する。
図2で示される、衝突面と水平面とのなす角度(a)の下限値は、20°以上であることが好ましく、30°以上であることがより好ましく、40°以上であることがさらに好ましい。また、角度(a)の上限値は、90°以下であることが好ましく、80°以下であることがより好ましく、60°以下であることがさらに好ましい。
角度(a)が上記範囲内であることで、フロックを含む被処理水が衝突面に衝突する際のフロックの破壊を防止し、フロックの沈降分離性能低下を抑制することができる。
【0029】
流入樋の底面は、被処理水流入側から被処理水流出側に向かって傾斜しており、
図2で示される、流入樋の底面と水平面とのなす角度(b)の下限値は、0°以上であることが好ましく、10°以上であることがより好ましく、15°以上であることがさらに好ましい。また、角度(b)の上限値は、45°以下であることが好ましく、40°以下であることがより好ましく、30°以下であることがさらに好ましい。
角度(b)が上記範囲内であることで、フロックを含む被処理水が衝突面に衝突する際のフロックの破壊を防止し、フロックの沈降分離性能低下を抑制することができ、さらに配管へのフロックの付着による配管閉塞を抑制することができる。
【0030】
流入樋の被処理水流出口から流出された被処理水は、配管を介してセンターウェル内に導入される。配管とセンターウェルの接続口は、沈殿槽に保持された被処理水の水面よりも下方に位置していることが好ましい。接続口が被処理水の水面よりも下方に位置していることで、フロックの破壊を防止し、フロックの沈降分離性能低下を抑制することができる。
【0031】
本形態の水処理方法は、移送ステップの前に、排水と凝集剤を混和させてフロックを形成するフロック形成ステップをさらに含んでもよい。フロック形成ステップでは、例えば混和槽において、工業排水等に凝集剤が添加されることで、無機汚泥等が凝集し、フロックを含む被処理水を得ることができる。
【0032】
本形態の水処理方法は、移送ステップの後に、沈殿槽においてフロックを沈殿させる沈殿ステップをさらに含んでもよい。沈殿ステップでは、例えば移送ステップにおいて沈殿槽に移送されたフロックを含む被処理水が、沈殿槽内部に貯留される過程において、フロックが沈殿する。
【0033】
その他の水処理方法の好ましい態様は、本形態の水処理装置の好ましい態様と同様である。
【実施例】
【0034】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用料、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0035】
[実施例1~19]
幅35mm、長さ200mm、流入側深さ35mm、流出側深さ60mmであり、端部に直径25mm程度の円形の流出口を備える樋を使用した。なお、樋斜面の傾斜(角度(b))は10°であった。また、衝突面として幅35mm、長さ40mmの板を、流出口側の端部に任意の角度(a)で設置した。
【0036】
樋の流出口とは逆側の端部から、任意の流入速度A(L/秒)によって、水を流入させ、流出口から流出させた時、流出口の流入側端部を基準点とし、その点における水深B(mm)を計測した。下記式から、基準点における水の断面積C(m2)、基準点における水流速度D(m/秒)を算出した。
基準点における水の断面積C(m2)=(B/1000)×(35/1000)
基準点における水流速度D(m/秒)=流入速度A(L/秒)/1000/水の断面積C(m2)
【0037】
各実施例における流入速度(L/秒)、角度(a)は表1の通りとした。算出された水流速度の結果を表1および
図3に示した。
【0038】
【0039】
樋に流入した水が壁面に勢いよく衝突すると、水が跳ね返ることで流出口からスムーズに流出せず樋の中に留まるため、水流速度が低下する。つまり、水流速度が低くなる条件では、フロックを含む被処理水を処理する場合において、壁面への衝突によりフロックの破壊が生じると推察される。逆に水流速度が高くなる条件では、フロックの破壊が抑制され、フロックの沈降分離性能の低下を抑制できると推察される。
【0040】
表1および
図3の通り、角度(a)が20~90°の実施例では、水流速度が十分に高く、フロックの破壊が抑制される速度であった。つまり本願発明の流入樋を用いた水処理方法によって、フロックの破壊を抑制し、フロックの沈降分離性能の低下を抑制できることが分かる。
【符号の説明】
【0041】
1…沈殿槽、11…沈殿槽底面、12…沈殿槽壁面、2…流入樋、21…流入樋底面、22…流入樋壁面、23…被処理水流入口、24…被処理水流出口、25…衝突面、3…配管、31…接続口、4…センターウェル、41…センターウェル下方開口部、42…センターウェル壁面、5…被処理水排出口、6…掻寄ユニット、61…回転シャフト、62…駆動モータ、63…支持部材、64…掻寄板、7…沈殿物排出口