(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】リアクトルの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/12 20060101AFI20241217BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20241217BHJP
B29C 45/33 20060101ALI20241217BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20241217BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B29C33/12
B29C45/26
B29C45/33
B29C45/14
H01F41/04 A
H01F41/04 F
(21)【出願番号】P 2021189255
(22)【出願日】2021-11-22
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岸本 俊
(72)【発明者】
【氏名】横澤 諒
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-039888(JP,A)
【文献】特開2012-235031(JP,A)
【文献】特開2020-096025(JP,A)
【文献】特開2003-173917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 39/26-39/36
B29C 41/38-41/44
B29C 43/36-43/42
B29C 43/50
B29C 45/00-45/84
B29C 49/48-49/56
B29C 49/70
B29C 51/30-51/40
B29C 51/44
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアを備えるリアクトルの製造装置であって、
前記コアを収納するキャビティを有する金型を備え、
前記金型は、前記コアと接触して成形時の樹脂圧に対して前記コアを支持するコア支えピンを備え、
成形時の樹脂流路は、前記コアの内側を通る内側流路、および前記コアの外側を通る外側流路を含んでおり、
前記内側流路の幅が前記外側流路の幅よりも広い位置に、前記コア支えピンが配置さ
れ、
前記製造装置は、一対のE字形状のコアを備えるリアクトルの製造装置であり、
各E字形状のコアは、ベースコアから同一方向に突出する外脚コアおよび中脚コアを備え、
前記外脚コアの幅は、前記中脚コアの幅よりも小さく、
前記コア支えピンは、前記外脚コアを、前記外脚コアが前記ベースコアから突出する方向と直交する方向の樹脂圧に対して支持する
リアクトルの製造装置。
【請求項2】
前記中脚コアには、樹脂がモールドされたコイルモールドが組付けられており、
前記内側流路には、前記コイルモールドと前記外脚コアの間の隙間の流路が含まれ、
前記外側流路には、前記外脚コアの外側の流路が含まれ、
前記隙間の幅が、前記外脚コアの外側の流路の幅よりも広い、
請求項
1に記載のリアクトルの製造装置。
【請求項3】
コアを備えるリアクトルの製造方法であって、
前記コアを収納するキャビティを有する金型を用いて成形品を成形するステップを含み、
前記金型は、前記コアと接触して成形時の樹脂圧に対して前記コアを支持するコア支えピンを備え、
前記成形するステップにおける樹脂流路は、前記コアの内側を通る内側流路、および前記コアの外側を通る外側流路を含んでおり、
前記内側流路の幅が前記外側流路の幅よりも広い位置に、前記コア支えピンが配置
され、
前記製造方法は、一対のE字形状のコアを備えるリアクトルの製造方法であり、
各E字形状のコアは、ベースコアから同一方向に突出する外脚コアおよび中脚コアを備え、
前記外脚コアの幅は、前記中脚コアの幅よりも小さく、
前記コア支えピンは、前記外脚コアを、前記外脚コアが前記ベースコアから突出する方向と直交する方向の樹脂圧に対して支持する
リアクトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトルの製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、一次成形工程と二次成形工程とを含むリアクトルの製造方法を開示している。特許文献1に記載された技術によると、共通の金型を一次成形および二次成形の両方に使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次成形工程において、コアの外周側に樹脂が優先的に入ると、コアを樹脂圧に対して支持することができないため、コアに高い応力が生じてコアが割れてしまうという問題がある。
【0005】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、成形時の樹脂圧によってコアが割れることを防止できるリアクトルの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態におけるリアクトルの製造装置は、
コアを備えるリアクトルの製造装置であって、
前記コアを収納するキャビティを有する金型を備え、
前記金型は、前記コアと接触して成形時の樹脂圧に対して前記コアを支持するコア支えピンを備え、
成形時の樹脂流路は、前記コアの内側を通る内側流路、および前記コアの外側を通る外側流路を含んでおり、
前記内側流路の幅が前記外側流路の幅よりも広い位置に、前記コア支えピンが配置される。
【0007】
本実施の形態におけるリアクトルの製造方法は、
コアを備えるリアクトルの製造方法であって、
前記コアを収納するキャビティを有する金型を用いて成形品を成形するステップを含み、
前記金型は、前記コアと接触して成形時の樹脂圧に対して前記コアを支持するコア支えピンを備え、
前記成形ステップにおける樹脂流路は、前記コアの内側を通る内側流路、および前記コアの外側を通る外側流路を含んでおり、
前記内側流路の幅が前記外側流路の幅よりも広い位置に、前記コア支えピンが配置される。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、成形時の樹脂圧によってコアが割れることを防止できるリアクトルの製造装置および製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】関連技術にかかる金型の概要を示す模式上面図である。
【
図3】関連技術にかかる金型の内側流路と外側流路の寸法関係を示すための図である。
【
図4】関連技術にかかる製造装置においてコアが割れる3つのモードを示すための図である。
【
図5】実施形態1にかかる製造装置の金型を示す模式上面図である。
【
図6】実施形態1にかかる金型の内側流路と外側流路の寸法関係を示すための図である。
【
図7】実施形態1にかかる金型の各流路の好ましい寸法関係を示すための図である。
【
図8】実施形態1にかかる金型の各流路の好ましい寸法関係を示すための図である。
【
図9】実施形態1にかかる金型の各流路の好ましい寸法関係を示すための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態にいたる検討
まず、本願の発明者が行った検討内容について説明する。
図1は、関連する製造装置の金型200の概要を示す模式上面図である。関連する製造装置は、コアを備えるリアクトルの製造装置である。なお、関連する製造装置は、金型200の開閉装置(不図示)や、樹脂の射出装置(不図示)をさらに備えていてもよい。金型200内には、コア10、および樹脂がモールドされたコイルモールド20がインサートされる。符号R1は、コイルモールド20が有する樹脂を表している。そして、コア10およびコイルモールド20の周囲に樹脂が注入され、インサート成形が行われる。成形過程では、ボルト等の挿通穴である穴hも形成される。
図1は、インサート成形時の金型200内部の状態を表している。
【0011】
図1では、説明の明確化のため、XYZの3次元直交座標系を示している。尚、Z方向が鉛直方向である。したがって、Z方向が高さ方向となる。樹脂は、例えば、Z軸負方向に射出される。
【0012】
金型200は、コア10を収納するキャビティを備える。キャビティには、例えば、一対のE字形状のコア10がインサートされる。コア10は、圧粉体を焼結した焼結品であってもよい。
【0013】
図2は、コア10の構成を示す模式上面図である。コア10は、ベースコア11と、中脚コア12と、外脚コア13aおよび13bとを備える。以下では、外脚コア13aおよび13bを互いに区別しない場合には、単に外脚コア13と称する場合がある。中脚コア12および外脚コア13は、ベースコア11から同一方向に突出する。
図2では、X方向はベースコア11の延在方向であり、Y方向は中脚コア12および外脚コア13の延在方向である。中脚コア12には、樹脂がモールドされたコイルモールド20が組付けられる。
【0014】
ベースコア11は、中脚コア12と外脚コア13aとを接続する接続部111aと、中脚コア12と外脚コア13bとを接続する接続部111bとを備えている。以下では、接続部111aおよび111bを互いに区別しない場合には、単に接続部111と称する場合がある。
【0015】
外脚コア13aおよび13bの幅(例えば、X方向の長さ)は、中脚コア12の幅よりも狭い。より小さいサイズのリアクトルを製造する場合には、外脚コア13が細くなり、外脚コア13が成形時に折れてしまう可能性がある。
【0016】
図1に戻り説明を続ける。成形時の樹脂流路には、コア10の内部を通る内側流路31aおよび31bと、コア10の外部を通る外側流路32と、コイルモールド20の内側を通る流路33と、2つのコア10の間を通る流路34とを含んでいる。以下では、内側流路31aおよび31bを互いに区別しない場合には、単に内側流路31と称する場合がある。また、内側流路31、外側流路32、流路33、および流路34を互いに区別しない場合には、単に流路30と称する場合がある。関連する金型200では、外側流路32に優先的に樹脂が注入される。したがって、コア10が矢印で示されるように外側から内側に向かって加圧され、コア10が割れてしまうという問題がある。
【0017】
図3は、金型200における外側流路32と内側流路31aとの寸法関係を示す模式図である。関連する金型200では、外側流路32のX方向の幅W1は、内側流路31aのX方向の幅W2よりも広い。このような場合、コア10の外脚コア13aは、右向き矢印で示される方向に加圧される。同様に、外側流路32のY方向の幅も、内側流路31aのY方向の幅よりも広い。したがって、コア10のベースコア11は、下向き矢印で示す方向に加圧される。金型200は樹脂圧に対してコア10を支える機構を備えていないため、コア10に高い応力が発生して割れてしまう可能性がある。
【0018】
発明者は、コア10の割れを防ぐために、各流路30の寸法とコア10の割れモードとの関係について検討を行った。
図4は、コア10の3つの割れモードを示す模式図である。モード1は、外側流路32から先に樹脂を充填した場合に発生する。モード1では、外脚コア13が、矢印で示されるようにX方向に加圧され、部位X1に高応力が発生する。モード1が発生する原因としては、外脚コア13の内側に支持機構がないことが考えられる。
【0019】
モード2も、外側流路32から先に樹脂を充填した場合に発生する。モード2では、ベースコア11が、矢印で示されるようにY方向に加圧され、部位X2に高応力が発生する。モード2が発生する原因として、ベースコア11の内側に支持機構がないことが考えられる。
【0020】
モード3は、コア10の上側から先に樹脂を充填した場合に発生する。モード3では、コア10が矢印で示されるように下向きに加圧され、部位X3に高応力が発生する。モード3が発生する原因として、コア10の下側(例えば、Z軸負方向側)に支持機構がないことが考えられる。
【0021】
本願の発明者は、以上の検討に基づき、実施形態にかかる発明に想到した。以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0022】
実施形態1
以下、図面を参照して実施形態1にかかる製造装置について説明する。
図5は、実施形態1にかかる製造装置の金型100の概要を示す模式上面図である。なお、以下では、上述した関連する製造装置の金型200と異なる点を中心に説明する。
【0023】
金型100は、コア支えピン110a、110b、110c、110d、110e、110f、および110gを備えている。以下では、コア支えピン110a、110b、110c、110d、110e、110f、および110gを互いに区別しない場合には、単にコア支えピン110と称する場合がある。コア支えピン110と接触している部分には樹脂が流れないため、成形品にはコア支えピン110に対応する窓が形成される。
【0024】
コア支えピン110は、コア10と接触し、成形時の樹脂圧に対してコア10を支持する。コア支えピン110a、110b、110c、および110dは、±X方向の矢印で示される成形時の樹脂圧に対して外脚コア13を支持する。コア支えピン110e、110f、および110gは、±Y方向の矢印で示される成形時の樹脂圧に対してベースコア11を支持している。下向き矢印は、2つの内側流路31の両方から樹脂圧を受けることを表している。コア支えピン110eおよび110fは、ベースコア11に含まれる接続部111を支持している。
【0025】
コア支えピン110a、110b、110c、110d、110e、および110fは、外側流路32よりも内側流路31の幅が広い位置に配置されている。なお、一部のコア支えピン110(例えば、コア支えピン110e)は、それ以外の位置に配置されていてもよい。
【0026】
図6は、金型100における外側流路32と内側流路31aとの寸法関係を示す模式図である。外側流路32には、外脚コア13aの外側の流路が含まれている。内側流路31aには、コイルモールド20と外脚コア13aの間の隙間の流路が含まれている。
【0027】
金型100では、内側流路31aのX方向の幅W2は、外側流路32のX方向の幅W1よりも広い。換言すると、上述した隙間の幅が、外脚コア13aの外側の流路の幅よりも広い。このような場合、コア10の外脚コア13aは、左向き矢印で示される方向に加圧される。コア支えピン110aは、外脚コア13aを、左向き矢印の方向の圧力に対して支持し、外脚コア13aの変形を防いでいる。
【0028】
同様に、内側流路31aのY方向の幅は、外側流路32のY方向の幅よりも広い。したがって、コア10のベースコア11は、上向き矢印で示す方向に加圧される。コア支えピン110fは、ベースコア11を、上向き矢印の方向の圧力に対して支持し、ベースコア11の変形を防いでいる。
【0029】
金型100は、内側流路31の幅が外側流路32の幅よりも広くなるように設計されており、コア10が内側に変形して割れることを防止できる。また、コア10がコア支えピン110によって外側から支持されており、金型100は、コア10が外側に変形して割れることを防止できる。したがって、実施形態1にかかる製造装置は、成形時の樹脂圧によってコア10が割れることを防止できる。
【0030】
次に、
図7から
図9を参照して、各流路30の好ましい寸法関係について説明する。
図7から
図9は、各流路30の好ましい寸法関係を示すための図である。なお、
図7から
図9では、コア支えピン110の図示が省略されている。
図7の符号Aは、内側流路31のX方向の幅を示している。
図7の符号Bは、外側流路32のX方向の幅Bを示している。
図8の符号Cは、内側流路31のY方向の幅を示している。
図8の符号Dは、外側流路32のY方向の幅を示している。
図9の符号Hは、上述した流路34の幅を示している。発明者は、以下の第1~第3の寸法関係を満たすことにより、上述したモード1から3による割れを防ぐことができることを発見した。
【0031】
図7を参照して、第1の寸法関係は、A>B、かつ0.5≦B≦2(単位はmm)を満たすことである。上述したモード1との関係で、内側流路31のX方向の幅が、外側流路32のX方向の幅よりも広く設定されている。外側流路32のX方向の幅は、0.5mm以上2mm以下の範囲から選択可能である。
【0032】
図8を参照して、第2の寸法関係は、C>D、かつ0.5≦D≦2(単位はmm)を満たすことである。上述したモード2との関係で、内側流路31のY方向の幅が、外側流路32のY方向の幅よりも広く設定される必要がある。また、上述したモード3との関係で、外側流路32のY方向の幅を適切に設定する必要がある。
【0033】
図9を参照して、第3の寸法関係は、0.4≦H≦2(単位はmm)を満たし、外脚コア13a同士、および外脚コア13b同士のうち少なくとも一方が接触していることである。上述したモード2および3との関係で、流路34の幅は、0.4mm以上2mm以下の範囲から選択される必要がある。
【0034】
実施形態1にかかる製造装置は、外側流路よりも内側流路の寸法を広くすることでコア10の内側に先に樹脂を入れ、樹脂圧を受けたコアを金型に設けたピンで支持する。したがって、実施形態1にかかる製造装置は、コアの変形を抑制してコア内部の応力を低下させることで、コア10が割れることを防ぐことができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 コア
11 ベースコア
111、111a、111b 接続部
12 中脚コア
13、13a、13b 外脚コア
20 コイルモールド
30 流路
31、31a、31b 内側流路
32 外側流路
33、34 流路
100 金型
200 金型
110、110a、110b、110c、110d、110e、110f、110g コア支えピン
h 挿通穴