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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】車両管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
G01M17/007 H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021210893
(22)【出願日】2021-12-24
(65)【公開番号】P2023095164
(43)【公開日】2023-07-06
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 一彰
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-067594(JP,A)
【文献】特開2021-184223(JP,A)
【文献】特開2008-002907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0250229(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 - 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品を搭載する第1車両と、複数の前記部品と交換可能な複数の交換可能部品を搭載する第2車両と、を管理する車両管理システムであって、
前記第1車両に搭載される前記部品毎に、前記部品に許容される許容負荷に対する前記部品に累積している負荷の割合である負荷率である第1負荷率と、単位走行距離当たりの前記部品の負荷率である負荷累積度と、を演算し、
前記第2車両に搭載される前記交換可能部品毎に、前記交換可能部品に許容される許容負荷に対する前記交換可能部品に累積している負荷の割合である第2負荷率を演算し、
前記部品毎の前記第1負荷率と前記負荷累積度とに基づいて、前記部品毎に寿命を演算し、
前記部品毎の前記負荷累積度と前記交換可能部品毎の前記第2負荷率とに基づいて、複数の前記部品のうち少なくとも1つの前記部品を対応する前記交換可能部品に交換した後における前記第1車両の部品毎の寿命である交換後寿命を演算し、
前記部品毎の寿命のうち最も短い第1最短寿命に比して前記部品毎の前記交換後寿命のうち最も短い第2最短寿命が長く、且つ、前記部品毎の寿命のうち最も長い第1最長寿命と前記第1最短寿命との差である第1寿命差に比して前記部品毎の前記交換後寿命のうち最も長い第2最長寿命と前記第2最短寿命との差である第2寿命差が小さいときには、前記第1車両と前記第2車両との間の部品交換を推奨する旨の報知を行なう
車両管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両管理システムに関し、詳しくは、複数の部品を搭載する第1車両と、複数の前記部品と交換可能な複数の交換可能部品を搭載する第2車両と、を管理する車両管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両管理システムとしては、車両の複数の部品のうち特定の1つの部品(サスペンション)の疲労損傷度を演算するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、走行時に車両に加わる入力の大きさに相関する入力相関値を累積した累積値を記憶し、記憶した累積値と、特定の部品に関する疲労寿命と累積値との関係である対応関係と、に基づいて特定の部品の疲労損傷度を演算する。そして、演算した疲労損傷度が警告閾値より大きいときには、部品の交換時期が近づいている旨を報知する。こうした報知により、ユーザは、特定の1つの部品の交換を適切なタイミングで行なえるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-79920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の車両管理システムでは、車両の寿命が最も寿命が短い部品の寿命で決まるため、特定の部品の交換前の寿命より交換しない他の部品の寿命が短い場合には、特定の部品を交換しても車両の寿命が長くならない場合がある。また、交換した特定の部品の寿命が交換していない他の部品に比して過剰に長くなるなど、部品間で寿命のバラツキが生じると、部品間の交換時期のバラツキが大きくなり、交換作業が繁雑になってしまう。したがって、ユーザに、車両に搭載される複数の部品の最短寿命をより長くすると共に部品間の寿命のバラツキを抑制可能な部品交換を促すことが望ましい。
【0005】
本発明の車両管理システムは、ユーザに、車両に搭載される複数の部品の最短寿命をより長くすると共に部品間の寿命のバラツキを抑制可能な部品交換を促すことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両管理システムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の車両管理システムは、
複数の部品を搭載する第1車両と、複数の前記部品と交換可能な複数の交換可能部品を搭載する第2車両と、を管理する車両管理システムであって、
前記第1車両に搭載される前記部品毎に、前記部品に許容される許容負荷に対する前記部品に累積している負荷の割合である負荷率である第1負荷率と、単位走行距離当たりの前記部品の負荷率である負荷累積度と、を演算し、
前記第2車両に搭載される前記交換可能部品毎に、前記交換可能部品に許容される許容負荷に対する前記交換可能部品に累積している負荷の割合である第2負荷率を演算し、
前記部品毎の前記第1負荷率と前記負荷累積度とに基づいて、前記部品毎に寿命を演算し、
前記部品毎の前記負荷累積度と前記交換可能部品毎の前記第2負荷率とに基づいて、複数の前記部品のうち少なくとも1つの前記部品を対応する前記交換可能部品に交換した後における前記第1車両の部品毎の寿命である交換後寿命を演算し、
前記部品毎の寿命のうち最も短い第1最短寿命に比して前記部品毎の前記交換後寿命のうち最も短い第2最短寿命が長く、且つ、前記部品毎の寿命のうち最も長い第1最長寿命と前記第1最短寿命との差である第1寿命差に比して前記部品毎の前記交換後寿命のうち最も長い第2最長寿命と前記第2最短寿命との差である第2寿命差が小さいときには、前記第1車両と前記第2車両との間の部品交換を推奨する旨の報知を行なう
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の車両管理システムでは、第1車両に搭載される部品毎に、部品に許容される許容負荷に対する部品に累積している負荷の割合である負荷率である第1負荷率と、単位走行距離当たりの部品の負荷率である負荷累積度と、を演算し、第2車両に搭載される交換可能部品毎に、交換可能部品に許容される許容負荷に対する交換可能部品に累積している負荷の割合である第2負荷率を演算する。また、部品毎の第1負荷率と負荷累積度とに基づいて、部品毎に寿命を演算し、部品毎の負荷累積度と交換可能部品毎の第2負荷率とに基づいて、複数の部品のうち少なくとも1つの部品を対応する交換可能部品に交換した後における第1車両の部品毎の寿命である交換後寿命を演算する。そして、部品毎の寿命のうち最も短い第1最短寿命に比して部品毎の交換後寿命のうち最も短い第2最短寿命が長く、且つ、部品毎の寿命のうち最も長い第1最長寿命と第1最短寿命との差である第1寿命差に比して部品毎の交換後寿命のうち最も長い第2最長寿命と第2最短寿命との差である第2寿命差が小さいときには、前記第1車両と第2車両との間の部品交換を推奨する旨の報知を行なう。第1車両と第2車両との間で部品を交換すると、交換しない場合に比して、第1車両に搭載される複数の部品のうち最も寿命が短い部品の寿命である最短寿命を長くでき、且つ、部品間の寿命のバラツキを抑制できる場合に、報知を行なうから、ユーザに、車両に搭載される複数の部品の最短寿命をより長くすると共に部品間の寿命のバラツキを抑制可能な部品交換を促すことができる。
【0009】
こうした本発明の車両管理システムにおいて、前記交換後寿命は、値1から前記第2負荷率を減じた値を対応する前記部品の前記負荷累積度で除した値と、前記負荷累積度を演算したときの前記第1車両の走行距離と、の和としてもよい。
【0010】
また、本発明の車両管理システムにおいて、前記部品および前記交換可能部品は、前記第1、第2車両の複数の回転軸を支える複数のベアリングとしてもよい。こうすれば、ユーザに、複数のベアリングの最短寿命を長くすると共にベアリング間の寿命のバラツキを抑制可能な部品交換を促すことができる。
【0011】
本発明の車両管理方法は、
複数の部品を搭載する第1車両と、複数の前記部品と交換可能な複数の交換可能部品を搭載する第2車両と、を管理する車両管理方法であって、
前記第1車両に搭載される前記部品毎に、前記部品に許容される許容負荷に対する前記部品に累積している負荷の割合である負荷率である第1負荷率と、単位走行距離当たりの前記部品の負荷率である負荷累積度と、を演算し、
前記第2車両に搭載される前記交換可能部品毎に、前記交換可能部品に許容される許容負荷に対する前記第2交換可能部品に累積している負荷の割合である第2負荷率を演算し、
前記部品毎の前記第1負荷率と前記負荷累積度とに基づいて、前記部品毎に寿命を演算し、
前記部品毎の前記負荷累積度と前記交換可能部品毎の前記第2負荷率とに基づいて、複数の前記部品のうち少なくとも1つの前記部品を対応する前記交換可能部品に交換した後における前記第1車両の部品毎の寿命である交換後寿命を演算し、
前記部品毎の寿命のうち最も短い第1最短寿命に比して前記部品毎の前記交換後寿命のうち最も短い第2最短寿命が長く、且つ、前記部品毎の寿命のうち最も長い第1最長寿命と前記第1最短寿命との差である第1寿命差に比して前記部品毎の前記交換後寿命のうち最も長い第2最長寿命と前記第2最短寿命との差である第2寿命差が小さいときには、前記第1車両と前記第2車両との間の部品交換を推奨する旨の報知を行なう
ことを要旨とする。
【0012】
この本発明の車両管理方法では、第1車両に搭載される部品毎に、部品に許容される許容負荷に対する部品に累積している負荷の割合である負荷率である第1負荷率と、単位走行距離当たりの部品の負荷率である負荷累積度と、を演算し、第2車両に搭載される交換可能部品毎に、交換可能部品に許容される許容負荷に対する第2交換可能部品に累積している負荷の割合である第2負荷率を演算する。また、部品毎の第1負荷率と負荷累積度とに基づいて、部品毎に寿命を演算し、部品毎の負荷累積度と交換可能部品毎の第2負荷率とに基づいて、複数の部品のうち少なくとも1つの部品を対応する交換可能部品に交換した後における第1車両の部品毎の寿命である交換後寿命を演算する。そして、部品毎の寿命のうち最も短い第1最短寿命に比して部品毎の交換後寿命のうち最も短い第2最短寿命が長く、且つ、部品毎の寿命のうち最も長い第1最長寿命と第1最短寿命との差である第1寿命差に比して部品毎の交換後寿命のうち最も長い第2最長寿命と第2最短寿命との差である第2寿命差が小さいときには、前記第1車両と第2車両との間の部品交換を推奨する旨の報知を行なう。第1車両と第2車両との間で部品を交換すると、交換しない場合に比して、第1車両に搭載される複数の部品のうち最も寿命が短い部品の寿命である最短寿命を長くでき、且つ、部品間の寿命のバラツキを抑制できる場合に、報知を行なうから、ユーザに、車両に搭載される複数の部品の最短寿命をより長くすると共に部品間の寿命のバラツキを抑制可能な部品交換を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例としての車両管理システム10の構成の概略を示す構成図である。
図2】実施例の車両管理システム10における自動車20A、20Bの構成の概略を示す構成図である。
図3】報知処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図4】自動車20Aのベアリングを自動車20Bのベアリングに交換せずにそのまま使用した場合における、自動車20Aの走行距離Ltと第1負荷率F1a、F2aとの関係の一例を説明するための説明図である。
図5】現在の走行距離Ltaで自動車20Aのベアリング94aを自動車20Bのベアリング94aに交換し、ベアリング94bを自動車20Bのベアリング94bに交換しない場合における、自動車20Aの走行距離Ltと第2負荷率F1b、F2bとの関係の一例を説明するための説明図である。
図6】現在の走行距離Ltaで自動車20Aのベアリング94a、94bを自動車20Bのベアリング94a、94bに交換した場合における、自動車20Aの走行距離Ltと第2負荷率F1b、F2bとの関係の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例
【0015】
図1は、本発明の一実施例としての車両管理システム10の構成の概略を示す構成図である。図2は、実施例の車両管理システム10における自動車20A、20Bの構成の概略を示す構成図である。図示するように、実施例の車両管理システム10は、ネットワーク12により通信可能に接続された自動車20A,20B(第1、第2車両)に搭載されたハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)30と、車両管理センターに配置された管理サーバ120と、を備える。
【0016】
自動車20A、20Bは、図2に示すように、エンジン22と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2と、インバータ41、42と、バッテリ50と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70と、を備える。
【0017】
エンジン22は、例えばガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料を用いて駆動する内燃機関として構成されている。エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24により制御されている。
【0018】
プラネタリギヤ30は、シングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されており、サンギヤ、リングギヤ、キャリアには、それぞれモータMG1の回転子、駆動輪38a、38bにデファレンシャルギヤ37を介して連結されると共にモータMG2の回転子が接続された駆動軸36、エンジン22のクランクシャフト26が接続されている。
【0019】
モータMG1、MG2は、例えば同期発電電動機として構成されており、インバータ41、42は、電力ライン54を介してバッテリ50と接続されている。モータMG1、MG2は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40によって、インバータ41、42の図示しない複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されている。バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52によって管理されている。
【0020】
クランクシャフト26、駆動軸36、モータMG1、MG2の回転子に接続される回転軸などの各回転軸は、ベアリング(例えば、ベアリング94a~94dなど)で支持されている。
【0021】
HVECU70は、CPU72を中心として構成されたマイクロコンピュータであり、CPU72の他に、プログラムなどを記憶するROM74や、データを一時的に記憶するRAM76、図示しない入出力ポートを備える。
【0022】
HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。入力ポートを介してHVECU70に入力される信号としては、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号、シフトレバー81のポジションを検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ86からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ84からのブレーキポジションBPなどを挙げることができる。また、車速センサ88からの車速V、オドメータ89からの走行距離Lt、ネットワーク12を介した管理サーバ120との通信を司る通信装置92からの各種情報なども挙げることができる。
【0023】
HVECU70からは各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。出力ポートを介してHVECU70から出力される制御信号としては、表示装置90への表示制御信号や、通信装置92への通信制御信号などを挙げることができる。
【0024】
HVECU70は、所定時間毎(例えば、数msec毎)に、搭載する各部品の負荷率F1~Fn(nは、部品の個数)を演算する。負荷率F1~Fnは、各回転軸を支持するベアリング(例えば、ベアリング94a~94dなど)に累積される負荷である負荷積算値SUM1~SUMnを、それぞれの許容負荷SUMmax1~SUMmaxnで除して演算される(Fm=SUMm/SUMmaxn、mは、値1から値nの自然数)。負荷積算値SUM1~SUMnは、各ベアリングに負荷を与えている回転軸(例えば、クランクシャフト26、駆動軸36、モータMG1、MG2の回転軸など)のトルクを積算した値である。許容負荷SUMmax1~SUMmaxnは、各ベアリングが故障に至る負荷積算値SUM1~SUMnとして予め実験やAI(人工知能)による解析などにより定めた値である。また、HVECU70は、所定時間毎(例えば、数msec毎)に、負荷率F1~Fnを走行距離Ltで除した単位走行距離当たりの負荷率としての負荷累積度ΔF1~ΔFn(ΔFm=Fm/Lt、mは、値1から値nの自然数)を演算している。HVECU70は、演算した負荷率F1~Fn、負荷累積度ΔF1~ΔFnを通信装置92、ネットワーク12を介して管理サーバ120に送信している。
【0025】
こうして構成された自動車20A、20Bでは、互いに搭載されている部品を交換可能に構成されている。
【0026】
管理サーバ120は、顧客情報記憶部122と、交換報知部124と、通信装置126と、を備える。顧客情報記憶部122は、機能ブロックであり、車両毎に車両識別情報、車種や形式、部品などの車両構成データ、顧客名や顧客住所などの顧客データ、車両を販売した販売店、過去に生じた故障やその修理内容などの故障関連データなどを記憶している。交換報知部124は、機能ブロックであり、2つの自動車20間で部品の交換を推奨すべきか否かを報知する報知処理を行なう。報知処理については、後述する。通信装置126は、ネットワーク12を介した自動車20A、20Bとの通信を司る。
【0027】
次に、こうして構成された車両管理システム10の動作、特に、管理サーバ120から自動車20Aに部品交換(実施例では、ベアリングの交換)を推奨する報知を行なう際の動作について説明する。図3は、報知処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、管理サーバ120の交換報知部124により所定時間毎(例えば、1ヶ月毎など)に繰り返して実行される。
【0028】
報知処理では、最初に、走行距離Lta、第1負荷率F1a~Fna、第2負荷率F1b~Fnb、負荷累積度ΔF1a~ΔFnaを入力する(ステップS100)。走行距離Ltaは、自動車20Aのオドメータ89により検出された走行距離Ltであり、ネットワーク12を介した通信により入力している。第1負荷率F1a~Fnaは、自動車20Aで演算した負荷率F1~Fnであり、ネットワーク12を介した通信により入力している。第2負荷率F1b~Fnbは、自動車20Bで演算した負荷率F1~Fnであり、ネットワーク12を介した通信により入力している。負荷累積度ΔF1a~ΔFnaは、自動車20Aで演算した負荷累積度ΔF1~ΔFnであり、ネットワーク12を介した通信により入力している。
【0029】
続いて、自動車20Aに負荷率が大きいベアリングが搭載されているか否かを判定する(ステップS110)。ここでは、ステップS100で入力した第1負荷率F1a~Fnaのうちの少なくとも1つが所定率dFrefを超えているときに、自動車20Aに負荷率が大きいベアリングが搭載されていると判定する。所定率dFrefは、ベアリングの交換の目安となる負荷率であって、例えば、値0.5、0.6、0.7などに設定される。したがって、ステップS110は、自動車20Aに交換を検討すべき部品があるか否かを判定する処理となっている。
【0030】
ステップS110で、自動車20Aに負荷率が大きいベアリングが搭載されていないときには、自動車20Aに交換を検討すべき部品がないと判断して、本ルーチンを終了する。
【0031】
ステップS110で、自動車20Aに負荷率が大きいベアリングが搭載されているときには、自動車20Aに交換を検討すべき部品があると判断して、続いて、自動車20Aに搭載されている各ベアリングの寿命としての部品寿命L1~Lnを演算する(ステップS120)。部品寿命L1~Lnは、各ベアリングの第1負荷率F1a~Fnaが値1となる走行距離Ltaである。図4は、自動車20Aのベアリングを自動車20Bのベアリングに交換せずにそのまま使用した場合における、自動車20Aの走行距離Ltと第1負荷率F1a、F2aとの関係の一例を説明するための説明図である。図中、実線は、走行距離Ltaと第1負荷率F1aとの関係を示している。一点鎖線は、走行距離Ltaと第2負荷率F2aとの関係を示している。第1負荷率F1a、F2aは、図示するように、走行距離Ltに比例する。ユーザの自動車20Aの使用状況によって各ベアリングにかかる負荷が異なることから、図4における直線の傾きは、ユーザの自動車20Aの使用状況によって異なる。実施例では、ベアリング94aは、ベアリング94bに比して傾きが大きく早く寿命を迎えることになる。
【0032】
続いて、演算した部品寿命L1~Lnのうち最も短いものを第1最短寿命L1minに設定すると共に、部品寿命L1~Lnのうち最も長いものを第1最長寿命L1maxに設定し(ステップS130)、第1最長寿命L1maxから第1最短寿命L1minを減じた第1寿命差ΔL1を演算する(ステップS140)。
【0033】
次に、自動車20Aの複数のベアリングのうち選択した特定のベアリングを自動車20Bの対応するベアリングに交換した後の自動車20Aにおける各ベアリングの寿命としての交換後寿命L1new~Lmnewを設定する(ステップS150)。ここで、交換するベアリングとしては、第1負荷率F1a~Fnaのうち所定率dFrefを超えているベアリングを選択することができる。交換するベアリングの個数は、1つでもよいし、複数でもよい。
【0034】
ステップS150で、自動車20Aの複数のベアリングのうち自動車20Bのベアリングと交換していないベアリングについては、交換後寿命Lmnew(mは、値1から値nの自然数)を部品寿命Lm(mは、値1から値nの自然数)とする。自動車20Aの複数のベアリングのうち自動車20Bのベアリングと交換したベアリングについては、交換後寿命Lmnew(mは、値1から値nの自然数)を、第2負荷率Fmb(mは、値1から値nの自然数)と、負荷累積度ΔFma(mは、値1から値nの自然数)と、走行距離Ltaとを用いて次式(1)により演算したものを設定する。図5は、現在の走行距離Ltaで自動車20Aのベアリング94aを自動車20Bのベアリング94aに交換し、ベアリング94bを自動車20Bのベアリング94bに交換しない場合における、自動車20Aの走行距離Ltと第2負荷率F1b、F2bとの関係の一例を説明するための説明図である。図6は、現在の走行距離Ltaで自動車20Aのベアリング94a、94bを自動車20Bのベアリング94a、94bに交換した場合における、自動車20Aの走行距離Ltと第2負荷率F1b、F2bとの関係の一例を説明するための説明図である。図5図6において、実線は、走行距離Ltaと第1、第2負荷率F1a、F1bとの関係を示している。一点鎖線は、走行距離Ltaと第1、第2負荷率F2a、F2bとの関係を示している。破線は、ベアリング94a、94bを交換しない場合における自動車20Aの走行距離Ltと第1負荷率F1a、F2aとの関係の一例を示している。図5図6においては、第1負荷率F1aと第2負荷率F1bとが不連続になっている。図6においては、第1負荷率F2aと第2負荷率F2bとが不連続になっている。これは、自動車20Aと自動車20Bとでは、ユーザによる車両の使用状況が異なるため、自動車20Aが走行距離Ltaを走行している時点で自動車20Aに搭載されるベアリング94a、94bの負荷率F1、F2(F1a、F1b)と自動車20Bに搭載されるベアリング94a、94bの負荷率F1、F2とが異なることに基づく。交換後は、ユーザの自動車20Aの使用状況に応じた負荷累積度ΔF1、ΔF2でベアリング94a、94bの第2負荷率F1b、F2bは増加する。式(1)は、上記の走行距離Ltと第1負荷率F1a、F2a、第2負荷率F1b、F2bとの関係から容易に求めることができる。
【0035】
Lmnew=(1-Fmb)/ΔFma+Lta ・・・(m=1~n) ・・・(1)
【0036】
続いて、演算した交換後寿命L1new~Lnnewのうち最も短いものを第2最短寿命L2minに設定すると共に、交換後寿命L1new~Lnnewのうち最も長いものを第2最長寿命L2maxに設定し(ステップS160)、第2最長寿命L2maxから第2最短寿命L2minを減じた第2寿命差ΔL2を演算する(ステップS170)。
【0037】
そして、第2最短寿命L2minが第1最短寿命L1minより長いか否かを判定する(ステップS180)。自動車20Aの寿命は、最も短い寿命の部品の寿命で決まる。そのため、第1最短寿命L1minは、全ての部品を交換しない場合の自動車20Aの寿命に相当し、第2最短寿命L2minは、選択した部品を交換した後の自動車20Aの寿命に相当する。したがって、ステップS180は、選択した部品を交換した場合の自動車20Aの寿命が交換しない場合に比して長いか否か、即ち、少なくとも1つの部品を交換すると自動車20Aの寿命が長くなるか否かを判定する処理となっている。
【0038】
ステップS180で第2最短寿命L2minが第1最短寿命L1minと同一または短いときには、部品交換しても自動車20Aの寿命が長くならないと判断して、本ルーチンを終了する。
【0039】
ステップS180で第2最短寿命L2minが第1最短寿命L1minより長いときには、部品交換すると自動車20Aの寿命が長くなると判断して、続いて、第2寿命差ΔL2が第1寿命差ΔL1より小さいか否かを判定する(ステップS190)。第1寿命差ΔL1は、第1最長寿命L1maxから第1最短寿命L1minを減じた値であることから、ベアリングの交換を行なわない場合の自動車20Aの各ベアリングの寿命のバラツキを反映した値となっている。第2寿命差ΔL2は、第2最長寿命L2maxから第2最短寿命L2minを減じた値であることから、部品交換後の自動車20Aの各ベアリングの寿命のバラツキを反映した値となっている。したがって、ステップS190は、交換後の自動車20Aの各ベアリングの寿命のバラツキが小さくなるか否かを判定する処置となっている。
【0040】
ステップS190で、第2寿命差ΔL2が第1寿命差ΔL1以上のときには、部品交換を行なうと自動車20Aの各ベアリングの寿命のバラツキが大きくなると判断して、本ルーチンを終了する。
【0041】
ステップS190で、第2寿命差ΔL2が第1寿命差ΔL1未満のときには、部品交換を行なうと、自動車20Aの各ベアリングの寿命のバラツキが小さくなると判断して、交換を推奨する旨を通信装置126からネットワーク12を介して自動車20Aに報知にして(ステップS200)、本ルーチンを終了する。こうした報知を受信した自動車20Aは、表示装置90に車両Bとの部品の交換を推奨する旨を表示する。このように、ステップS180で第2最短寿命L2minが第1最短寿命L1minより長く、且つ、ステップS190で第2寿命差ΔL2が第1寿命差ΔL1未満のときには、自動車20Aに交換を推奨する旨を報知することにより、自動車20Aのユーザにベアリングの交換を促すことができる。これにより、ユーザに、自動車20Aに搭載される複数のベアリングの最短寿命を長くできると共にベアリング間の寿命のバラツキを抑制可能な部品交換を促すことができる。
【0042】
以上説明した実施例の車両管理システム10によれば、自動車20Aの各ベアリングについて第1負荷率F1a~Fnaと負荷累積度ΔF1a~ΔFnaとを演算し、自動車20Bの各ベアリングについて第2負荷率F1b~Fnbを演算し、演算した第1負荷率F1a~Fnaと負荷累積度ΔF1a~Fnaとに基づいて部品寿命L1~Lnを演算し、負荷累積度ΔF1a~ΔFnaと第2負荷率F1b~Fnbとに基づいて交換後の交換後寿命L1new~Lnnewを演算し、部品寿命L1~Lnのうち最も短い第1最短寿命L1minに比して交換後の交換後寿命L1new~Lnnewのうち最も短い第2最短寿命L2minが長く、且つ、第1寿命差ΔL1に比して第2寿命差ΔL2が小さいときには、自動車20A、20Bで部品交換を推奨する旨の報知を自動車20Aに行なうことにより、ユーザに、自動車20Aに搭載される複数のベアリングの最短寿命を長くできると共にベアリング間の寿命のバラツキを抑制可能な部品交換を促すことができる。
【0043】
実施例の車両管理システム10では、図3の報知処理ルーチンのステップS110で、自動車20Aに負荷率が大きいベアリングが搭載されているか否かを判定している。しかしながら、ステップS110を実行せずに、ステップS100を実行した後にステップS120以降を実行してもよい。
【0044】
実施例の車両管理システム10では、自動車20A、20Bの負荷率F1~Fnおよび負荷累積度ΔF1~ΔFnを自動車20A、20BのHVECU70で演算している。しかしながら、自動車20A、20Bの負荷率F1~Fnおよび負荷累積度ΔF1~ΔFnを管理サーバ120の交換報知部124で演算してもよい。この場合、自動車20A、20Bの負荷率F1~Fnおよび負荷累積度ΔF1~ΔFnの演算に必要なデータは、自動車20A、20Bからネットワーク12を介して通信装置126により入力すればよい。
【0045】
実施例の車両管理システム10では、自動車20A、20Bで部品交換を推奨する旨の報知を自動車20Aに行なっている。しかしながら、図3に例示した報知処理を自動車20Aと共に自動車20Bに適用して、自動車20A、20Bの双方について交換を推奨する報知を行なえる場合のみ、管理サーバ120から自動車20A、20Bの双方に交換を推奨する報知を行なってもよい。即ち、上述したように、自動車20Aの各部品について第1負荷率F1a~Fnaと負荷累積度ΔF1a~ΔFnaとを演算し、自動車20Bの各部品について第2負荷率F1b~Fnbを演算し、演算した第1負荷率F1a~Fnaと負荷累積度ΔF1a~Fnaとに基づいて部品寿命L1~Lnを演算し、負荷累積度ΔF1a~ΔFnaと第2負荷率F1b~Fnbとに基づいて交換後の交換後寿命L1new~Lnnewを演算し、部品寿命L1~Lnのうち最も短い第1最短寿命L1minに比して交換後の交換後寿命L1new~Lnnewのうち最も短い第2最短寿命L2minが長く、且つ、第1寿命差ΔL1に比して第2寿命差ΔL2が小さいときであり、且つ、自動車20Bの各部品について第1負荷率F1a~Fnaと負荷累積度ΔF1a~ΔFnaとを演算し、自動車20Aの各部品について第2負荷率F1b~Fnbを演算し、演算した第1負荷率F1a~Fnaと負荷累積度ΔF1a~Fnaとに基づいて部品寿命L1~Lnを演算し、負荷累積度ΔF1a~ΔFnaと第2負荷率F1b~Fnbとに基づいて交換後の交換後寿命L1new~Lnnewを演算し、部品寿命L1~Lnのうち最も短い第1最短寿命L1minに比して交換後の交換後寿命L1new~Lnnewのうち最も短い第2最短寿命L2minが長く、且つ、第1寿命差ΔL1に比して第2寿命差ΔL2が小さいときに、自動車20A、20Bで部品交換を推奨する旨の報知を自動車20A、20Bに行なうことにより、自動車20A、20B間での部品の交換をより適正に行なうことができる。
【0046】
実施例の車両管理システム10では、図3に例示した報知処理ルーチンを管理サーバ120が実行している。しかしながら、図3の報知処理ルーチンの一部または全ての処理を自動車20Aや自動車20Bで行なってもよい。
【0047】
実施例では、本発明を、管理サーバ120から自動車20Aに部品交換としてベアリングの交換を推奨する報知に適用する場合について例示している。しかしながら、交換の対象となる部品は、ベアリングに限定されるものではなく、自動車20A、20Bに走行に伴って何らかの負荷が累積される部品であれば如何なる部品としても構わない。
【0048】
実施例では、本発明を、車両管理システムの形態として説明しているが、本発明を図3の車両管理方法の形態としても構わない。
【0049】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、自動車20AのHVECU70と管理サーバ120の交換報知部124とが「車両管理システム」に相当する。
【0050】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なうべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0051】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、車両管理システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 車両管理システム、12 ネットワーク、20 自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、30 プラネタリギヤ、36 駆動軸、37 デファレンシャルギヤ、38a、38b 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41、42 インバータ、50 バッテリ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU52)、54 電力ライン、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(HVECU)、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 オドメータ、MG1、MG2 モータ、90 表示装置、92 通信装置、94a~94d ベアリング、120 管理サーバ、122 顧客情報記憶部、124 交換報知部、126 通信装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6