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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/10 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
G06F1/10 520
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021214414
(22)【出願日】2021-12-28
(65)【公開番号】P2023097977
(43)【公開日】2023-07-10
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】江角 悠
(72)【発明者】
【氏名】応 ギョウコン
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-164674(JP,A)
【文献】特開2014-146222(JP,A)
【文献】特開2004-029992(JP,A)
【文献】特開2005-316784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/04- 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1処理部(5、13)と、通信経路(6)を介して前記第1処理部と通信するように構成された第2処理部(7)と、を備える電子制御装置(1)であって、
前記第2処理部は、
前記第2処理部内にて生成される内部クロック信号に従ってカウント動作を行い、前記第1処理部からの定期信号が受信される毎にカウント値をリセットするように構成された内部カウンタ(33)と、
前記内部カウンタによるカウント値が予め定められた出力周期よりも長い予め定められた判定期間を前記内部クロック信号の周期で除した値に相当する判定周期値以上である場合に、状態信号を、前記第1処理部内で用いられる動作クロック信号の遅延を示すアクティブレベルに設定し、前記アクティブレベルに設定された前記状態信号を前記定期信号の受信によって非アクティブレベルに設定するように構成された比較部(34)
を備え、
前記第1処理部は、
前記動作クロック信号であって前記内部クロック信号とは異なる前記動作クロック信号に従ってカウントされるカウント値が前記出力周期を前記動作クロック信号の周期で除した値に相当する出力周期値になる毎に、前記第2処理部から前記状態信号を取得し、取得した前記状態信号に基づいて前記動作クロック信号が遅延しているか否かを判定するように構成された遅延判定部(15、S30)と、
前記遅延判定部によって前記状態信号が取得された後に、前記定期信号を前記第2処理部に送信するように構成された信号送信部(16、S40)と、
を備える電子制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記第1処理部では、
前記遅延判定部は、
前記動作クロック信号に従ってカウントされるカウント値が前記出力周期値になる毎に、前記第2処理部から前記状態信号を取得するように構成された取得部(S100)と、
前記取得部によって前記アクティブレベルである前記状態信号が連続して取得される連続回数をカウントするように構成されたカウント部(S150)と、
前記連続回数が予め定められた確定判定回数以上である場合に、前記動作クロック信号の遅延を確定するように構成された遅延確定部(S170)と、
を備える、電子制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子制御装置であって、
前記第1処理部では、
前記遅延判定部は、
前記取得部が、前記第2処理部から、前記状態信号を取得すると共に、前記状態信号が取得されるときの前記内部カウンタの前記カウント値を取得し、
前記連続回数が前記確定判定回数未満であると判定された場合に、前記連続回数が前記確定判定回数よりも小さい準判定回数以上であり、且つ、前記アクティブレベルである前記状態信号が前記準判定回数連続して取得されたときの前記内部カウンタの前記カウント値の合計値に相当する時間が予め定められた継続閾値以上である場合に、前記動作クロック信号の遅延を確定するように構成された早期遅延確定部(S165)
を更に備える、電子制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子制御装置であって、
前記第2処理部は、
前記状態信号が前記アクティブレベルである期間が予め定められた途絶異常確定期間以上である場合に、前記動作クロック信号が途絶していることを確定するように構成された途絶確定部(35)
を更に備える電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイコンと、マイコンの異常を監視する監視ICと、を備える電子制御装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、監視ICが、マイコンのエラー訂正回路により訂正不能なデータ誤りを検出した際に、マイコンの異常を検出する、という技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-72569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、電子制御装置では、監視ICによって、マイコンの動作用クロックの遅れがマイコンの異常として検出されることが望まれる。
本開示の1つの局面は、電子制御装置において、マイコンの動作用クロックの遅れを検出する新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、第1処理部(5、13)と、通信経路(6)を介して第1処理部と通信するように構成された第2処理部(7)と、を備える電子制御装置(1)である。第2処理部は、内部カウンタ(33)と、比較部(34)とを備える。内部カウンタは、第2処理部内にて生成される内部クロック信号に従ってカウント動作を行い、第1処理部からの定期信号が受信される毎にカウント値をリセットするように構成される。比較部は、内部カウンタによるカウント値が判定周期値以上である場合に、状態信号を、第1処理部内で用いられる動作クロック信号の遅延を示すアクティブレベルに設定する。判定周期値は、予め定められた出力周期よりも長い予め定められた判定期間を内部クロック信号の周期で除した値に相当する。比較部は、アクティブレベルに設定された状態信号を定期信号の受信によって非アクティブレベルに設定するように構成される。
【0006】
第1処理部は、遅延判定部(15、S30)と、信号送信部(16、S40)と、を備える。遅延判定部は、動作クロック信号であって内部クロック信号とは異なる動作クロック信号に従ってカウントされるカウント値が出力周期値になる毎に、第2処理部から状態信号を取得する。出力周期値は、出力周期を動作クロック信号の周期で除した値に相当する。遅延判定部は、取得した状態信号に基づいて動作クロック信号が遅延しているか否かを判定するように構成される。信号送信部は、遅延判定部によって状態信号が取得された後に、定期信号を第2処理部に送信するように構成される。
【0007】
このような構成によれば、電子制御装置では、第1処理部は、動作クロック信号が遅延しているか否かといった状態信号が示す情報を、状態信号が第1処理部自らの定期信号の送信によって非アクティブレベルに設定(すなわち、リセット)される前に取得する。これにより、第1処理部は、定期信号の送信前に取得した状態信号に基づいて、動作クロック信号が遅延しているか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ECUの構成を示すブロック図である。
図2】起動周期と送信周期とを説明する説明図である。
図3】ICを用いてクロックの途絶を検出する様子を示す説明図である。
図4】ICを用いてクロックが速くなる異常を検出する様子を示す説明図である。
図5】ICを用いてクロックが遅れる異常が検出されない様子を示す説明図である。
図6】第1実施形態における定期処理のフローチャートである。
図7】第1実施形態における遅延判定処理のフローチャートである。
図8】第1実施形態におけるECUの作動を示す説明図である。
図9】第2実施形態における定期処理のフローチャートである。
図10】第2実施形態における遅延判定処理のフローチャートである。
図11】第2実施形態におけるECUの作動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。なお、本明細書内でいう「等しい」とは、厳密な意味での等しいことに限るものではなく、同様の効果を奏するのであれば厳密に等しいことでなくてもよい。また以下では、各種パラメータについて適宜数値を用いて説明するが、これらのパラメータは記載された数値に限定されるものではない。また、図面は、特徴を分かり易く記載するため、必ずしも時間軸上の長さ等を厳密に表すものではない。
【0010】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す電子制御装置(以下、ECU1)は、車両に搭載され、例えば車両の駆動系を制御する。ECU1の制御対象としての駆動系は、例えば、トランスミッションであってもよい。但し、制御対象は、トランスミッションを含む駆動系に限定されるものではなく、車両における種々の構成であり得る。
【0011】
ECU1は、マイクロコンピュータ(以下、マイコン5)と、集積回路(以下、IC7)とを備える。ECUは、Electronic Control Unitの略であり、ICはintegrated circuitの略である。ECU1は、発振器3、ドライバ8を更に備えていてもよい。ドライバ8は、ドライバ8の制御対象であるフェイルセーフ制御対象9(例えば、各種アクチュエータ)を制御するための駆動回路であり得る。
【0012】
ECU1において、マイコン5とIC7とは、通信バス6(以下、バス6)を介して、予め定められた通信方式(例えば、SPI)に従って、クロック同期式通信を行う。SPIは、Serial Peripheral Interfaceの略である。
【0013】
<マイコン5>
マイコン5は、図示は省略されているが、CPUや、ROM、RAM、フラッシュメモリ等といったメモリ、等を有する。CPUは、例えば、ROMに格納されたプログラムを実行することにより、各種の機能を実現する。当該プログラムが実行されることで、当該プログラムに対応する方法が実行される。マイコン5は、機能として、通信部10と、動作クロック生成部11と、起動部12と、定期処理部13と、を備える。
【0014】
通信部10は、バス6を介して、IC7が備える通信部30と、クロック同期式通信(すなわち、SPI通信)を行う。バス6は、図示しないが、マイコン5からIC7に同期通信用の通信クロックを供給するクロック信号線と、マイコン5からIC7へのデータ転送用の信号線と、IC7からマイコン5へのデータ転送用の信号線と、マイコン5がIC7を通信相手として選択しているか否かを示す信号線と、を備える。通信部10は、例えば、動作クロック生成部11によって生成される動作クロック信号(以下、動作クロックCKm)を取得し、分周又は逓倍して一定周波数の通信クロックを生成してクロック信号線に出力し、通信クロックに同期するデータの送受信を行う。
【0015】
動作クロック生成部11は、水晶発振子やセラミック発振子等を含む発振器3が発生する発振信号から、予め定められた周波数の上述の動作クロックCKmを生成する。動作クロックCKmはマイコン5内で用いられるクロック信号である。例えば、マイコン5のCPUは、動作クロックCKmに従って動作する。
【0016】
起動部12は、定期処理部13を繰り返し起動する。起動部12は、定期処理部13を起動する周期が、予め定められた出力周期(例えば、10msec)となるように作動する。ここでいう出力周期とは、所謂設計仕様として予め定められている値(以下、設計値)をいう。
【0017】
具体的には、例えば、起動部12は、動作クロックCKmに従ってカウント動作を行い、カウント値が予め定められた出力周期値となる毎にリセットされるカウンタ(以下、起動カウンタ40)を備えていてもよい。ここでいうリセットとは、カウント値を0に設定することをいう。起動部12は、起動カウンタ40によるカウント値が0から出力周期値となる毎に起動信号を出力し、起動信号の出力によって定期処理部13を起動してもよい。
【0018】
出力周期値は、設計値である出力周期(すなわち、10msec)を動作クロックCKmの周期、具体的には、動作クロックCKmの周期の設計値でカウントした値に相当する。以下では、周期の設計値を設計周期ともいう。換言すれば、出力周期値は、設計値である出力周期を動作クロックCKmの設計周期で除した値に相当する。なお、以下では、実際の動作クロックCKmの周期を単に動作クロックCKmの周期ともいう。
【0019】
これによると、起動部12は、「動作クロックCKmの周期×出力周期値」毎に起動信号を出力し、定期処理部13は、「動作クロックCKmの周期×出力周期値」毎に起動される。つまり、定期処理部13が実際に起動される周期(以下、起動周期Tc)は「動作クロックCKmの周期×出力周期値」となる。
【0020】
動作クロックCKmの周期が動作クロックCKmの設計周期に等しい場合、起動周期Tcは設計値である出力周期に等しくなり、定期処理部13は出力周期(すなわち、10msec)毎に起動される。但し、後述する種々の要因により、実際の動作クロックCKmの周期が動作クロックCKmの設計周期よりも長くなったり短くなったりする、動作クロックCKmの異常が生じ得る。このような動作クロックCKmの異常が生じている場合、結果として、定期処理部13が実際に起動される周期である起動周期Tcは出力周期よりも長く、又は短くなる。
【0021】
なお、起動部12は、上述の構成に限定されるものではない。例えば、動作クロックCKmに従って作動するマイコン5は、マイコン5の所定周期毎(例えば、10msec)のタイマ割込み処理の中で、定期処理部13の機能を実現してもよい。10mesec毎のタイマ割込み処理は、動作クロックCKmに従って作動する。この場合、10mesec毎のタイマ割込み処理が起動部12としての処理に相当する。また、マイコン5にて、10mesec毎のタイマ割込みのタイミングを生成する(すなわち、タイミングをカウントする)図示しない回路が、上述の起動カウンタ40に相当する。
【0022】
定期処理部13は、通常処理部14と、遅延判定部15と、信号送信部16と、を備える。
通常処理部14は、ECU1の制御対象を制御するための処理を実行する。
【0023】
遅延判定部15は、動作クロックCKmの遅延(以下、遅れともいう)が生じているか否かを判定する。ここでいう動作クロックCKmの遅延とは、実際の(すなわち、作動中の)動作クロックCKmの周期が、動作クロックCKmの設計周期よりも長くなることをいう。
【0024】
信号送信部16は、定期信号をIC7に送信する(すなわち、SPI通信にて定期信号を示すコマンドを送信する)。
定期処理部13は、起動されると、通常処理部14→遅延判定部15→信号送信部16といった予め定められた順に、これら一連の機能を実行する。定期処理部13は、少なくとも遅延判定部15の実行後に信号送信部16を実行する。換言すれば、定期処理部13は、少なくとも信号送信部16を実行する前に遅延判定部15を実行する。定期処理部13がこれら一連の機能を実行する期間を1サイクルともいう。
【0025】
通常処理部14、遅延判定部15が処理の実行に要する時間は、サイクル毎に(すなわち、毎回)ほぼ変化しない(すなわち、等しい)ものとする。
これによると、図2に示すように、起動周期Tcと、信号送信部16によって定期信号が出力される時間間隔(すなわち、設計値ではない、実際の時間間隔)である送信周期Tsとが、ほぼ等しくなる。
【0026】
例えば、動作クロックCKmが正常である(すなわち、動作クロックCKmの設計周期に等しい)場合、起動周期Tcは出力周期に等しく、送信周期Tsも出力周期に等しい。つまり、信号送信部16は、動作クロックCKmが正常である場合、出力周期(すなわち、10msec)毎に定期信号を出力する。ただし、動作クロックCKmが異常である場合(例えば、速くなったり、遅れたりしている場合)は、この限りではない。
【0027】
<IC7>
IC7は、マイコン5において動作クロックCKmの異常が生じているか否かを監視(すなわち、判定)するためのICである。動作クロックCKmの異常としては、例えば、上述の動作クロックCKmの遅延や、動作クロックCKmが速くなること、更に、動作クロックCKmの途絶が挙げられる。動作クロックCKmが速くなるとは、作動中の動作クロックCKmの周期が動作クロックCKmの設計周期よりも短くなることをいう。
【0028】
なお、動作クロックCKmが遅延する異常、速くなる異常は、例えば、発振器3や動作クロック生成部11の異常によって生じ得る。発振器3の異常に関しては、制御電圧で制御される電圧制御発振器である場合の制御電圧の変動や、その他の要因等によって生じ得る。又、動作クロックCKmの途絶は、例えば、上述の電圧制御発振器の制御電圧の途絶や断線、その他の要因等によって生じ得る。
【0029】
IC7は、通信部30と、内部クロック生成部31と、内部カウンタ33と、比較ロジック部34と、判定ロジック部35と、フェイルセーフ部36と、を備える。
通信部30は、マイコン5の通信部10との間でバス6を介してクロック同期式通信(すなわち、SPI通信)を行い、マイコン5から予め定められた態様の信号を受信すると、上述の定期信号を受信したと判定する。例えば、通信部30は、定期信号を受信したと判定したときに、所定の信号(以下、初期化信号)を内部カウンタ33に出力してもよい。
【0030】
内部クロック生成部31は、一定周波数の内部クロック信号(以下、内部クロックCKi)を生成する。内部クロックCKiはIC7内で用いられるクロック信号である。内部クロックCKiは動作クロックCKmとは異なるクロック信号である。異なるとは、例えば、クロック信号を生成する基となる発振信号が異なること(すなわち、異なる発振器が発生する発振信号であること)を含む。内部カウンタ33と、比較ロジック部34と、判定ロジック部35と、フェイルセーフ部36と、は内部クロックCKiに基づいて作動する。
【0031】
内部カウンタ33は、内部クロックCKiに従ってカウント動作を行うカウンタである。内部カウンタ33は、マイコン5から定期信号が受信される毎(例えば、通信部30から上述の初期化信号が出力される毎)に、カウント値がリセットされる。つまり、内部クロックCKiの周期と、リセットされる直前の内部カウンタ33のカウント値とを乗算した値が、実際の定期信号が受信される時間間隔(すなわち、送信周期Ts)に相当する。
【0032】
比較ロジック部34は、動作クロックCKmの遅延又は途絶を判定するために、内部カウンタ33のカウント値と所定の閾値との比較を行う。具体的には、比較ロジック部34は、内部カウンタ33によるカウント値を読み出す。例えば、比較ロジック部34は、内部クロックCKiに従って内部カウンタ33によるカウント動作が行われる毎に、カウント値を読み出してもよい。
【0033】
比較ロジック部34は、内部カウンタ33によるカウント値が所定の閾値である第1判定周期値以上である場合、第1状態フラグをアクティブレベルに設定する。第1状態フラグは、アクティブレベルに設定される場合に、動作クロックCKmが遅延していること(すなわち、より詳しくは遅延しているおそれがあること)を示す。ここでは、アクティブレベルとは、オンの状態(例えば、ハイレベルである1を示す状態)をいう。第1判定周期値は、比較ロジック部34にて予め記憶されている。
【0034】
第1判定周期値は、上述の出力周期(すなわち、10msec)よりも長い予め定められた第1判定期間(例えば、20msec)を、内部クロックCKiの設計周期でカウントした値に相当する。換言すれば、第1判定周期値は、第1判定期間を内部クロックCKiの設計周期で除した値に相当する。第1判定期間は、動作クロックCKmの遅延、ひいては動作クロックCKmの途絶を判定するため閾値である。
【0035】
又、比較ロジック部34は、内部カウンタ33によるカウント値が第1判定周期値未満である場合、第1状態フラグを非アクティブレベルに設定する。ここでは、非アクティブレベルとは、オフの状態(例えば、ローレベルである0を示す状態)をいう。又、比較ロジック部34は、アクティブレベルに設定された第1状態フラグを、定期信号の受信によって(例えば、初期化信号の出力によって)、非アクティブレベルに設定する。比較ロジック部34は、記憶装置(例えば、レジスタ等)に、アクティブレベル又は非アクティブレベルの第1状態フラグを記憶する。
【0036】
なお、本実施形態では更に、比較ロジック部34は、動作クロックCKmが速くなっていることを判定するために、内部カウンタ33のカウント値と所定の閾値との比較を行う。具体的には、比較ロジック部34は、マイコン5から定期信号が受信される毎(例えば、初期化信号が出力される毎)に内部カウンタ33によるカウント値を読み出す。読み出されたカウント値は、送信周期Tsを内部クロックCKiの周期で除した値に等しい。
【0037】
比較ロジック部34は、内部カウンタ33によるカウント値が所定の閾値である第2判定周期値以下である場合、第2状態フラグをアクティブレベルに設定する。第2状態フラグは、アクティブレベルに設定される場合に、動作クロックCKmが速くなっていること(すなわち、より詳しくは速くなっているおそれがあること)を示す。第2判定周期値は、比較ロジック部34にて予め記憶されている。
【0038】
第2判定周期値は、上述の出力周期(すなわち、10msec)よりも短い予め設定された第2判定期間(例えば、5msec)を、内部クロックCkiの設計周期でカウントした値に相当する。換言すれば、第2判定周期値は、第2判定期間を内部クロックCKiの設計周期で除した値に相当する。第2判定期間は、動作クロックCKmが速くなっていることを判定するための閾値である。
【0039】
又、比較ロジック部34は、定期信号が受信されたタイミングでの内部カウンタ33によるカウント値が第2判定周期値よりも大きい場合、第2状態フラグを非アクティブレベルに設定する。比較ロジック部34は、記憶装置(例えば、レジスタ等)に、アクティブレベル又は非アクティブレベルの第2状態フラグを記憶する。
【0040】
判定ロジック部35は、比較ロジック部34によって設定された第1状態フラグを読み出す。判定ロジック部35は、図3に示すように、アクティブレベルに設定された第1状態フラグが取得される期間が予め定められた途絶異常確定期間以上となる場合に、動作クロックCKmの途絶が生じていると判定(すなわち、確定)する。そして、判定ロジック部35は、途絶判定フラグを、非アクティブレベル(例えば、ローレベルである0)からアクティブレベル(例えば、ハイレベルである1)に設定する。
【0041】
例えば、判定ロジック部35は、開始時点から継続して第1状態フラグがアクティブレベルに設定されている経過時間を、内部クロックCKiに従ってカウント動作を行うカウンタによってカウントしてもよい。開始時点とは、第1状態フラグが非アクティブレベルからアクティブレベルに設定された時点をいう。判定ロジック部35は、このカウント値が途絶異常確定期間を内部クロックCKiの設計周期で除した値以上である場合に、途絶判定フラグをアクティブレベルに設定してもよい。
【0042】
途絶判定フラグは、アクティブレベルに設定されているときに、動作クロックCKmの途絶が生じていることを示す。途絶異常確定期間は、上述の第1判定期間よりも長い時間に設定され得る。例えば、途絶異常確定期間は、第1判定期間の数倍以上に設定されてもよい。途絶判定フラグによって、動作クロックCKmの途絶が、ノイズ等の影響を抑制して、精度よく判定される。
【0043】
なお、本実施形態では更に、判定ロジック部35は、比較ロジック部34によって設定された第2状態フラグを読み出す。判定ロジック部35は、図4に示すように、アクティブレベルに設定された第2状態フラグが取得される期間が予め定められたクロック異常確定期間以上となる場合に、動作クロックCKmが速くなっていると判定(すなわち、速くなっている異常を確定)する。具体的には、判定ロジック部35は、クロックエラーフラグを、非アクティブレベル(例えば、ローレベルである0)からアクティブレベル(例えば、ハイレベルである1)に設定する。
【0044】
クロックエラーフラグは、アクティブレベルに設定されているときに、動作クロックCKmが速くなる異常が生じていること(すなわち、異常が確定されたこと)を示す。クロック異常確定期間は、少なくとも上述のマイコン5からの定期信号の出力周期(すなわち、10msec)以上の相対的に長い時間に設定され得る。クロック異常確定期間は、上述の途絶異常確定期間と同一の値であっても異なる値であってもよい。クロックエラーフラグによって、動作クロックCKmが速くなっていることが、ノイズ等の影響を抑制して、精度よく確定される。
【0045】
フェイルセーフ部36は、判定ロジック部35によって、途絶判定フラグがアクティブレベルにセットされた場合、又は、クロックエラーフラグがアクティブレベルにセットされた場合に、フェイルセーフ処理を実行する。例えば、フェイルセーフ処理としては、トランスミッションのクラッチを制御するソレノイドを駆動するための上位電源を強制的にオフすることで、車両に駆動力が伝達されないようにする(すなわち、ニュートラルの状態にする)処理であり得る。
【0046】
この場合、例えば、上位電源を強制的にオフするスイッチがフェイルセーフ制御対象9に相当し、スイッチをオフに切り替えるための駆動信号を生成する回路がドライバ8に相当する。なお、フェイルセーフ処理はこれに限定されるものではなく、車両の安全を確保するために車両の機能を制限する種々の処理であり得る。
【0047】
<IC7単体による動作クロックCKmの異常判定>
上述のようにIC7は、判定ロジック部35が、アクティブレベルの第1状態フラグが途絶異常確定期間以上継続することによってアクティブレベルにセットされる途絶判定フラグを用いて、動作クロックCKmの途絶を確定する。
【0048】
但し、第1状態フラグは、図5に示すように、動作クロックCKmの遅延に対しては、定期信号が受信される毎にアクティブレベルであった第1状態フラグが非アクティブレベルに設定(すなわち、リセット)される。つまり、動作クロックCKmの遅延に対しては、アクティブレベルの第1状態フラグが継続しない。このため、IC7単体では、例えばアクティブレベルの第1状態フラグが所定時間以上継続することによって遅延を確定するといったように、第1状態フラグを利用して動作クロックCKmの遅延についての異常を確定することは困難である。
【0049】
そこで、ECU1では、マイコン5の定期処理部13が、定期処理の実行によって、IC7から第1状態フラグを取得し動作クロックCKmの遅延についての異常確定を行う。
[1-2.処理]
定期処理部13は、起動部12によって起動されることをきっかけとして、定期処理を実行する。
【0050】
<定期処理>
定期処理部13が実行する定期処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。定期処理は、起動部12にて動作クロックCKmに従う起動カウンタ40によってカウントされるカウント値が出力周期値となる毎に、実行される。
【0051】
定期処理部13は、ステップ(以下、S)10では、通常処理を実行する。通常処理とは、ECU1の制御対象を制御するための予め定められた処理をいう。例えば、定期処理部13は、図示していないが、制御対象としてのトランスミッションを制御するための制御信号を出力する。
【0052】
定期処理部13は、次にS20では、通信部30を用いてバス6を介して、IC7から第1状態フラグを取得する(すなわち、SPI通信によってIC7から第1状態フラグを読み出す)。定期処理部13は、本ステップが実行される時点でIC7の比較ロジック部34(例えば、レジスタ等といった記憶装置)に記憶されている第1状態フラグを取得する。
【0053】
定期処理部13は、続くS30では、後述する遅延判定処理を実行することによって、動作クロックCKmの遅延が生じているか否かを判定する。
定期処理部13は、次にS40では、通信部30を用いてバス6を介して、SPI通信によって、IC7に、定期信号を送信する(すなわち、SPI通信にて定期信号を示すコマンドを送信する)。定期信号は、SPI通信で用いられる所定の態様の信号である。そして、定期処理部13は、以上で1サイクルの定期処理を終了する。
【0054】
<遅延判定処理>
次に、定期処理部13が上述のS30にて実行する遅延判定処理について、図7に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0055】
定期処理部13は、S100では、第1状態フラグの読み出し結果を取得する。
定期処理部13は、次にS110では、正常カウンタのカウント値(以下、正常カウント値ともいう)、異常カウンタのカウント値(以下、異常カウント値ともいう)、正常フラグ、及び異常フラグを取得する。正常カウンタ及び異常カウンタは定期処理部13が備えるカウンタであり、カウント値は、例えばマイコン5が備えるメモリに記憶される。
【0056】
正常フラグ及び異常フラグは、動作クロックCKmが遅延しているか否かを確定するためのフラグであり、例えばマイコン5が備えるメモリに記憶される。
異常フラグは、オンされた場合、動作クロックCKmの遅れが生じているという判定結果(すなわち、確定結果)を示し、オフされた場合、動作クロックCKmの遅れが生じていないという判定結果(すなわち、確定結果)を示す。正常フラグは、例えば動作クロックCKmの遅れが生じて異常フラグが一度オンされた後に、動作クロックCKmが正常に戻ったことを判定するためのフラグである。
【0057】
異常カウンタは、動作クロックCKmの遅れを判定する際にノイズ等の影響を抑制するため、動作クロックCKmの遅れが生じた回数をカウントする。正常カウンタは、例えばクロックの遅れが生じて異常フラグが一度オンされた後に動作クロックCKmが正常に戻ったときに、正常に戻ったことを判定するためのカウンタである。
【0058】
定期処理部13は、続くS120では、マイコン5とIC7との通信が正常であるか否かを判定する。例えば、マイコン5は、通信部10を介してIC7へ出力する指示に対する応答をIC7から受信している場合に通信が正常であると判定し、判定結果をメモリに記憶する通信監視機能を備えていてもよい。定期処理部13は、メモリに記憶されている判定結果が正常を示す場合、マイコン5とIC7との通信が正常に実行されていると判定してもよい。
【0059】
定期処理部13は、マイコン5とIC7との通信が正常であると判定された場合に処理をS130に移行させ、通信が正常でないと判定された場合に処理をS160に移行させる。
【0060】
定期処理部13は、S130では、第1状態フラグが非アクティブレベルであるか否かを判定する。ここで、定期処理部13は、第1状態フラグが非アクティブレベルであると判定された場合に処理をS140へ移行させる。定期処理部13は、S140では正常カウンタによるカウント値をカウントアップ(例えば、1つ増加)し、異常カウンタによるカウント値をリセット(すなわち、0に設定)する。そして、定期処理部13は、処理をS160へ移行する。
【0061】
一方、定期処理部13は、第1状態フラグがアクティブレベルであると判定された場合に処理をS150へ移行させる。定期処理部13は、S150では正常カウンタによるカウント値をリセット(すなわち、0に設定)し、異常カウンタによるカウント値をカウントアップ(例えば、1つ増加)する。そして、定期処理部13は、処理をS160へ移行する。
【0062】
定期処理部13は、S160では、異常カウンタによるカウント値が予め定められた確定判定回数(例えば、3)以上であるか否かを判定する。確定判定回数は、マイコン5が備えるメモリに予め記憶されている。本実施形態では確定判定回数が3である例を説明するが、確定判定回数はこれに限定されるものではない。確定判定回数は1以上の任意の整数であってよいが、2以上の整数であることが望ましい。
【0063】
定期処理部13は、異常カウント値が確定判定回数以上である場合に処理をS170へ移行させ、異常カウント値が確定判定回数未満である場合に処理をS180へ移行させる。
定期処理部13は、S170では、異常フラグをオン(すなわち、アクティブレベル)に設定し、正常フラグをオフ(すなわち、非アクティブレベル)に設定する。そして、定期処理部13は、処理をS180へ移行する。
【0064】
なお、S170では、定期処理部13は、異常フラグがオンとなると、フェイルセーフ処理を実行することが可能である。定期処理部13は、異常フラグがオンとなると、例えば、通信部10を用いてバス6を介したSPI通信により、IC7に対して、IC7に上述のフェイルセーフ処理を実行させる指示を出力してもよい。IC7は、この指示に従って、フェイルセーフ部36を用いてフェイルセーフ処理を実行することができる。
【0065】
定期処理部13は、S180では、異常フラグがオフであり、且つ、正常カウンタによるカウント値が1以上であるか否かを判定する。ここで、定期処理部13は、肯定判定される場合に処理をS190へ移行させ、S190にて正常フラグをオンに設定し、以上で本遅延判定処理を終了する。一方、定期処理部13は、S180にて否定判定される場合に、以上で本遅延判定処理を終了する。
【0066】
<作動>
上述のように構成された定期処理部13を含むマイコン5及びIC7(すなわち、ECU1)の作動を図8に基づいて説明する。なお、図8では、例えば時刻t1と時刻t11、時刻t2と時刻t21、時刻t3と時刻t31といった時間間隔等を、作動を説明するために、わかりやすい間隔で表示している。図8は、必ずしも実際のタイミングや時間間隔を厳密に表示するものではない。
【0067】
定期処理部13は、動作クロックCKmが遅れたか否かといった情報を示す第1状態フラグを、第1状態フラグが定期信号の受信(例えば、時刻t11、時刻t21、時刻t31等)によってリセットされる前(例えば、時刻t1、時刻t2、時刻t3等)に、取得する。定期処理部13は、(例えば、時刻t1、時刻t2、時刻t3等において、)アクティブレベルの第1状態フラグが連続した回数(すなわち、アクティブレベルの第1状態フラグが定期処理にて連続したサイクル数)をカウントする。
【0068】
定期処理部13は、アクティブレベルの第1状態フラグが確定判定回数(例えば、3回)以上連続した場合(例えば、時刻t3)に、動作クロックCKmが遅延しているとの判定を確定する。そして、定期処理部13は、異常フラグをオンに設定し、正常フラグをオフに設定する。
【0069】
定期処理部13は、例えば時刻t3にて動作クロックCKmが遅延しているとの判定が確定される(すなわち、異常フラグがオンに設定される)と、制御対象(すなわち、各種アクチュエータ)への出力を制限するフェイルセーフ処理を実行する。定期処理部13は、フェイルセーフ処理の実行によって、動作クロックCKmが遅延している場合であっても車両が安全に退避走行できるようにする。
【0070】
[1-3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)ECU1では、IC7にて内部カウンタ33は、内部クロックCKiに従ってカウント動作を行い、マイコン5からの定期信号が受信される毎にカウント値がリセットされる。比較ロジック部34は、内部カウンタ33によるカウント値が、第1判定周期値以上である場合に、第1状態フラグをアクティブレベルに設定する。第1判定周期値は、設計値である出力周期(例えば、10msec)よりも長い第1判定期間(例えば、20msec)を内部クロックCKiの周期で除した値に相当する。また、比較ロジック部34は、前記アクティブレベルに設定された第1状態フラグを定期信号の受信によって非アクティブレベルに設定する。
【0071】
マイコン5は、定期処理部13を備え、定期処理部13は遅延判定部15と信号送信部16とを備える。遅延判定部15は、動作クロックCKmに従ってカウントされるカウント値が出力周期値になる毎にIC7から第1状態フラグを取得して動作クロックCKmが遅延しているか否かを判定する。出力周期値は、設計値である出力周期を動作クロックCKmの設計周期で除した値に相当する。信号送信部16は、遅延判定部15によって第1状態フラグが取得された後に、定期信号をIC7に送信する。
【0072】
これにより、マイコン5は、定期信号の送信によってリセットされる前の第1状態フラグに基づいて、動作クロックCKmが遅延しているか否かを判定することができる。
また、予めIC7を備えるECU1において、IC7の設計変更を行うことなく、マイコン5によって動作クロックCKmの遅延を判定することができる。ここでいうIC7とは、動作クロックCKmが遅延しているか否かを示す第1状態フラグを定期信号の受信によってリセットする上述のIC7をいう。
【0073】
(1b)マイコン5は、S100では、動作クロックCKmに従ってカウントされるカウント値が出力周期値になる毎に、IC7から第1状態フラグを取得する。マイコン5は、S150では、アクティブレベルである第1状態フラグが連続して取得される回数である連続回数(すなわち、異常カウント値)をカウントする。マイコン5は、S170では、連続回数が確定判定回数(例えば、3回)以上である場合に、動作クロックCKmの遅延が生じていることを確定する。これにより、ノイズ等の影響を抑制し、動作クロックCKmの遅延を精度よく判定することができる。
【0074】
(1c)IC7は、第1状態フラグがアクティブレベルである期間が途絶判定期間以上である場合に、動作クロックCKmが途絶していると判定する。これにより、動作クロックCKmの途絶を、ノイズ等の影響を抑制して、精度よく判定することができる。
【0075】
(1d)マイコン5は、定期処理部13にて、動作クロックCKmの遅延が生じていると判定すると、ECU1による制御対象を作動させるための各種アクチュエータへの出力を制限するフェイルセーフ処理を実行する。これにより、動作クロックCKmの遅延が生じている場合にも、車両を安全に退避走行させることができる。
【0076】
なお、上述の実施形態において、ECU1が電子制御装置に相当し、マイコン5が第1処理部に相当し、バス6が通信経路に相当、IC7が第2処理部に相当し、比較ロジック部34が比較部に相当する。判定ロジック部35が途絶確定部に相当し、遅延判定部15が遅延判定部に相当し、信号送信部16が信号送信部に相当する。また、S30が遅延判定部としての処理に相当し、S40が信号送信部としての処理に相当する。S100が取得部としての処理に相当し、S150がカウント部としての処理に相当し、S170が遅延確定部としての処理に相当する。また、第1状態フラグが状態信号に相当し、第1判定期間が判定期間に相当し、第1判定周期値が判定周期値に相当し、異常カウント値が連続回数に相当する。
【0077】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0078】
上述した第1実施形態では、定期処理部13は、アクティブレベルの第1状態フラグが確定判定回数(例えば、3回)連続して取得された場合に、動作クロックCKmの遅延が生じていると判定した。これに対し、第2実施形態では、定期処理部13は、IC7が備える内部カウンタ33のカウンタ値を更に取得して動作クロックCKmの遅延を判定する点で、第1実施形態と相違する。
【0079】
[2-2.処理]
第2実施形態の定期処理部13が、第1実施形態の定期処理(すなわち、図6)に代えて実行する定期処理について、図9のフローチャートを用いて説明する。なお、図9におけるS10-S20、S40の処理は、図6におけるS10-S20、S40の処理と同様であるため、以下では説明を一部簡略化する。
【0080】
<定期処理>
本実施形態の定期処理部13が実行する定期処理について、図9のフローチャートを用いて説明する。定期処理部13は、S10にて通常処理を実行し、S20にて第1状態フラグを読み出した後、続くS25では、内部カウンタ33のカウント値を読み出す。定期処理部13は、続くS35では、図10に示す遅延判定処理を実行し、遅延判定処理の実行後にS40にて定期信号を送信する。
【0081】
<遅延判定処理>
次に、定期処理部13が上述のS35にて実行する遅延判定処理について、図10に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、本実施形態の遅延判定処理は、図7に示す第1実施形態の遅延処理に対して、S105、S115、S145、S155、S165が追加されている点で第1実施形態と相違する。以下では、第1実施形態と同様の処理については説明を一部簡略化する。
【0082】
定期処理部13は、S100にて第1状態フラグの読み出し結果を取得した後、続くS105では、内部カウンタ33のカウント値の読み出し結果を取得する。例えば、定期処理部13は、内部カウンタ33のカウンタ値をIC7からマイコン5へ送信させる指示を、バス6を介してIC7(すなわち、通信部30)へ送信してもよい。IC7(例えば、通信部30)は、この指示に従って内部カウンタ33のカウント値を読み出して、上述の指示への応答としてこのカウント値を、バス6を介してマイコン5(すなわち、通信部10)へ送信してもよい。
【0083】
このようにして、定期処理部13は、第1状態フラグと内部カウンタ33のカウント値とを、定期信号の送信直前に取得する。つまり、動作クロックCKmが途絶していない場合、内部カウンタ33のカウント値は、実際の定期信号の受信間隔(すなわち、送信周期Ts)に相当する値を示しており、定期信号の送信周期Tsを内部クロックCKiの設計周期で除した値に等しい。
【0084】
定期処理部13は、次にS110では、正常カウント値、異常カウント値、正常フラグ、及び異常フラグを取得する。
定期処理部13は、続くS115では、マイコン5のメモリに記憶されている異常継続時間を取得する。異常継続時間は、IC7にて第1状態フラグが連続してアクティブレベルに設定される時間を示す。換言すれば、異常継続時間は、動作クロックCKmが途絶せず遅延している場合に、IC7にて計測する定期信号の受信間隔(すなわち、送信周期Ts)の合計値を示す。
【0085】
定期処理部13は、続くS120、S130では、図7に示すS120、S130と同様の処理を実行する。
ここで、定期処理部13は、S130にて第1状態フラグが非アクティブレベルであると判定された場合に処理をS140に移行させる。定期処理部13は、S140では正常カウント値をカウントアップ(例えば、1つ増加)し、異常カウント値をリセット(すなわち、0に設定しメモリに記憶)する。次に、定期処理部13は、S145では、異常継続時間をリセット(すなわち、0に設定)し、処理をS160へ移行させる。
【0086】
一方、定期処理部13は、S130にて第1状態フラグがアクティブレベルであると判定された場合に処理をS150に移行させ、S150では正常カウント値をリセット(すなわち、0に設定)し、異常カウント値をカウントアップ(例えば、1つ増加)する。
【0087】
次に、定期処理部13は、S155では、メモリに記憶されている異常継続時間に、内部カウンタ33によるカウント値に相当する時間を加算して新たな異常継続時間とし、この新たな異常継続時間をメモリに上書きして記憶し、処理をS160へ移行させる。内部カウンタ33によるカウント値に相当する時間とは、内部クロックCKiの設計周期にS105にて取得した内部カウンタ33のカウント値を乗じた値をいう。
【0088】
定期処理部13は、S160では、異常カウント値が予め定められた確定判定回数(例えば、3)以上である場合に処理をS170へ移行させ、異常カウント値が確定判定回数未満である場合に処理をS165へ移行させる。
【0089】
定期処理部13は、S165では、異常カウント値が準判定回数以上であり、且つ、異常継続時間が予め定められた継続閾値(例えば、80msec)以上であるか否かを判定する。
【0090】
準判定回数は、例えば、確定判定回数から予め定められた縮小値(例えば、1)を減じた値といったように、確定判定回数よりも小さい整数である。準判定回数は1以上の整数であり、この場合、確定判定回数は2以上の整数である。なお、本実施形態では、確定判定回数である3から縮小値としての1を減じた値(すなわち、3-1)である2が、準判定回数として設定される。
【0091】
継続閾値は、検出すべき遅延する動作クロックCKmの周期の最小値として予め定められた遅延クロック周期(例えば、40msec)と、確定判定回数(例えば、3)とを乗じた時間よりも、小さい時間(例えば、後述する80msec)に設定され得る。但し、遅延クロック周期は、第1判定期間以上の任意の時間に設定され得る。
【0092】
ここで、定期処理部13は、肯定判定される場合に処理をS170へ移行させ、S170では、異常フラグをオンに設定し、正常フラグをオフに設定し、IC7へフェイルセーフ処理を実行させる指示を出力し、処理をS180へ移行させる。一方、定期処理部13は、否定判定される場合に処理をS180へ移行させる。
【0093】
定期処理部13は、続くS180、S190では、図7に示すS180、S190と同様の処理を実行する。そして、定期処理部13は、以上で遅延判定処理を終了する。
<作動>
上述のように構成された定期処理部13を含むマイコン5及びIC7を備えるECU1の作動を、図11に基づいて説明する。ここでは、動作クロックCKmが、出力周期(すなわち、10msec)よりも非常に遅い周期(例えば、90msec)となった例を、動作クロックCKmの遅延の例として説明する。
【0094】
時刻t1では、IC7にてアクティブレベルに設定された第1状態フラグをマイコン5にて読み出す。これにより、異常カウント値は0から1にカウントアップされ、正常カウント値は、例えば正常カウンタによってカウント可能な最大値からリセット(すなわち、0に設定)される。そして、IC7から第1状態フラグと共に取得された内部カウンタ33のカウント値に相当する時間(例えば、90msec)が異常継続時間としてメモリに記憶される。時刻t1では、異常判定フラグはオフに設定されており、正常判定フラグはオンに設定されている。ECU1の制御対象(例えば、上述のトランスミッション)の制御を実行する各種アクチュエータに対しては、通常制御が行われている。
【0095】
時刻t2では、IC7にてアクティブレベルに設定された第1状態フラグをマイコン5にて読み出す。これにより、異常カウント値は1から2にカウントアップされ、正常カウント値はリセットされる(すなわち、リセットされた状態を維持する)。そして、IC7から第1状態フラグと共に取得された内部カウンタ33のカウント値に相当する時間(例えば、90msec)がメモリに既に記憶されている異常継続時間に加算される。加算後の異常継続時間が新たな異常継続時間(例えば、180msec)としてメモリに記憶される。
【0096】
時刻t2では、アクティブレベルに設定された第1状態フラグが2回連続して検出されており(すなわち、異常カウント値=2)、且つ、異常継続時間(すなわち、180msec)が継続閾値(すなわち、80msec)以上となっている。このため、時刻t2では、異常判定フラグはオンに設定され、正常判定フラグはオフに設定される。ECU1の制御対象(例えば、上述のトランスミッション)の制御を実行する各種アクチュエータに対しては、フェイルセーフ処理により、通常よりも制能が制限される。
【0097】
これにより、異常カウント値が確定判定回数(例えば、3)以上となることを待たずに、動作クロックCKmの遅延が確定される。また、結果として、異常カウント値が確定判定回数以上となることを待たずに、速やかにフェイルセーフ処理が実行される。
【0098】
[2-3.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果(1a)-(1d)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0099】
(2a)マイコン5は、S100ではIC7から第1状態フラグを取得すると共に、S105では、第1状態フラグが取得されるときの内部カウンタ33のカウント値を取得する。マイコン5は、S165では、異常カウント値が確定判定回数未満であると判定された場合に、異常カウント値が準判定回数以上であり、且つ、異常継続時間が継続閾値以上である場合に、動作クロック信号の遅延を確定する。準判定回数は確定判定回数よりも小さい値である。異常継続時間は、アクティブレベルである第1状態フラグが準判定回数連続して取得されたときの内部カウンタ33のカウント値の合計値に相当する時間である。相当する時間とは、カウント値の合計値に内部カウンタ33を動作させる内部クロックCKiの設計周期を乗じた値をいう。
【0100】
これにより、動作クロックCKmの周期が非常に長くなった場合、異常カウント値が確定判定回数以上となることを待たずに、動作クロックCKmの遅延を速やかに確定することができる。また、結果として、異常カウント値が確定判定回数以上となることを待たずに、速やかにフェイルセーフ処理に移行することができる。
【0101】
(2b)継続閾値は、検出すべき遅延クロック周期と確定判定回数とを乗じた値よりも小さい値に設定されてもよい。検出すべき遅延クロック周期は、検出すべき遅延する動作クロックCKmの、周期の最小値として予め定められた値であり得る。これにより、(2a)の効果を得ることができる。
【0102】
なお、上述の実施形態において、S100、S105が取得部としての処理に相当し、S165が早期遅延確定部としての処理に相当する。異常継続時間が合計値に相当する時間に相当する。
【0103】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0104】
(3a)上述の実施形態において、図2に示すように、定期処理部の処理は、通常処理部→遅延判定部→信号送信部、という順番としたが、本開示はこれに限定されるものではない。遅延判定部と信号送信部の順番が変わらなければ遅いクロックに対する異常判定には問題ないため、遅延判定部→信号送信部→通常処理部としても良い。
また、上記実施形態では、定期処理部13は、通常処理部14、遅延判定部15、信号送信部16を備え、これら一連の機能を実行したが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、定期処理部13は、遅延判定部15、信号送信部16のみを実行するものであってもよく、通常処理部14、遅延判定部15、信号送信部16、に加えて更に他の機能を実行するものであってもよい。いずれの場合においても、定期処理部13の各機能は予め定められた順に毎回実行され、各機能のうち遅延判定部15は信号送信部16よりも前に(すなわち、換言すれば信号送信部16は遅延判定部15よりも後に)実行される。
【0105】
(3b)上述の実施形態において、マイコン5とIC7とは、バス6を介してSPIに従って通信を行うものであったが、通信方式は、クロック同期式通信であればよく、SPIに限定されるものではない。
【0106】
(3c)上述の実施形態において、アクティブレベルがオフの状態(例えば、ローレベルである0を示す状態)であり、非アクティブレベルがオンの状態(例えば、ハイレベルである1を示す状態)であってもよい。
【0107】
(3d)上述の実施形態において、マイコン5が実行する遅延判定処理において、異常継続時間はIC7にて第1状態フラグが連続してアクティブレベルに設定される時間を示していたが、本開示はこれに限定されるものではない。異常継続時間は、IC7にて第1状態フラグが連続してアクティブレベルに設定される時間に相当する内部カウンタ33のカウント値、又はカウント値の合計値を示していてもよい。この場合、継続閾値(例えば、80msec)は、継続閾値という時間に相当する内部カウンタ33のカウント値を示していてもよい。時間に相当する内部カウンタ33のカウント値とは、時間を内部カウンタ33を動作させる内部クロックCKiの設計周期で除した値に相当する。マイコン5は、S165では、異常カウント値が準判定回数(すなわち、2)以上であり、且つ、カウント値で示された異常継続時間がカウント値で示された継続閾値以上であるか否か、を判定してもよい。
【0108】
(3e)本開示に記載のECU1、マイコン5、IC7及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載のECU1、マイコン5、IC7及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の、ECU1、マイコン5、IC7及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。ECU1、マイコン5、IC7に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0109】
(3f)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0110】
(3g)上述したECU1、マイコン5、IC7、又は定期処理部13の他、当該ECU1、マイコン5、IC7、又は定期処理部13を機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、クロック遅延判定方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0111】
1…ECU、5…マイコン、6…バス、7…IC、13…定期処理部、15…遅延判定部、16…信号送信部、33…内部カウンタ、34…比較ロジック部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11