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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】光電変換素子および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/60 20230101AFI20241217BHJP
   H10K 30/30 20230101ALI20241217BHJP
   H10K 39/32 20230101ALI20241217BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20241217BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H10K30/60
H10K30/30
H10K39/32
H01L31/10 D
H01L27/146 E
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021508908
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2020009098
(87)【国際公開番号】W WO2020195633
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019062367
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 陽介
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-142704(JP,A)
【文献】特開2017-038045(JP,A)
【文献】国際公開第2014/027581(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0351813(US,A1)
【文献】特開2012-206989(JP,A)
【文献】特表2012-510454(JP,A)
【文献】特開2010-138077(JP,A)
【文献】特開2009-227670(JP,A)
【文献】CAI, Zhengxu et al.,“Enhancement in Open-Circuit Voltage in Organic Solar Cells by Using Ladder-Type Nonfullerene Acceptors”,ACS Applied Materials & Interfaces,2018年03月28日,Vol. 10, No. 16,pp. 13528-13533,DOI: 10.1021/acsami.8b01308
【文献】TSUTSUI, Yusuke et al.,“Evaluation of the intrinsic charge carrier transporting properties of linear- and bent-shaped π-extended benzo-fused thieno[3,2-b]thiophenes”,Physical Chemistry Chemical Physics,2015年03月10日,Vol. 17, No. 15,pp. 9624-9628,DOI: 10.1039/c5cp00785b
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-30/89
H10K 39/00-39/38
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられると共に、第1の有機半導体材料として下記式(1-1)~式(1-10)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を少なくとも1種含む有機光電変換層と
を備えた光電変換素子。
【化1】
【請求項2】
前記有機光電変換層は、さらに第2の有機半導体材料としてフラーレンまたはフラーレン誘導体を含む、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記有機光電変換層は、さらに第3の有機半導体材料を含む、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記第3の有機半導体材料は、400nm以上700nm以下のいずれかの波長の光を吸収する、請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記有機光電変換層は、400nm以上700nm以下の範囲の全ての波長の光を吸収する、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記第1電極は複数の電極からなる、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記第1電極と前記有機光電変換層との間に、さらに第1の電荷ブロック層が設けられている、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記有機光電変換層と前記第2電極との間に、さらに、第2の電荷ブロック層が設けられている、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項9】
1または複数の有機光電変換部がそれぞれ設けられている複数の画素を備え、
前記有機光電変換部は、
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられると共に、第1の有機半導体材料として下記式(1-1)~式(1-10)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を少なくとも1種含む有機光電変換層と
を有する撮像装置。
【化2】
【請求項10】
各画素には、1または複数の前記有機光電変換部と、前記有機光電変換部とは異なる波長域の光電変換を行う1または複数の無機光電変換部とが積層されている、請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記無機光電変換部は、半導体基板に埋め込み形成され、
前記有機光電変換部は、前記半導体基板の第1の面側に形成されている、請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記半導体基板は前記第1の面と対向する第2の面を有し、前記第2の面側に多層配線層が形成されている、請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記有機光電変換部は青色光の光電変換を行い、
前記半導体基板内に、緑色光の光電変換を行う無機光電変換部と、赤色光の光電変換を行う無機光電変換部とが積層されている、請求項11に記載の撮像装置。
【請求項14】
各画素では、互いに異なる波長域の光電変換を行う複数の前記有機光電変換部が積層されている、請求項9に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば有機材料を用いた光電変換素子およびこれを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1および非特許文献1では、例えば、青色光を吸収して光電変換する光電変換層の材料として、クマリン色素とフラーレンとを組み合わせて用いることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-129276号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 49, No. 11, pp. 111601.1-11601.4 (2010)
【発明の概要】
【0005】
ところで、高い外部量子効率および光応答性を有する光電変換素子の開発が求められている。
【0006】
外部量子効率および光応答性を向上させることが可能な光電変換素子および撮像装置を提供することが望ましい。
【0007】
本開示の一実施形態の光電変換素子は、第1電極と、第1電極と対向配置された第2電極と、第1電極と第2電極との間に設けられると共に、第1の有機半導体材料として下記式(1-1)~式(1-10)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を少なくとも1種含む有機光電変換層とを備えたものである。
【化1】

【0008】
本開示の一実施形態の撮像装置は、1または複数の有機光電変換部がそれぞれ設けられている複数の画素を備えたものであり、有機光電変換部として、上記一実施形態の光電変換素子を有する。
【0009】
本開示の一実施形態の光電変換素子および一実施形態の撮像装置では、上記式(1-1)~式(1-10)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を少なくとも1種用いて有機光電変換層を形成するようにした。これにより、有機光電変換層を間に対向配置された第1電極および第2電極へのキャリアの移動度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1の実施の形態にかける撮像素子の構成の一例を表す断面模式図である。
図2図1に示した撮像素子の全体構成を表す図である。
図3図1に示した撮像素子の等価回路図である。
図4図1に示した撮像素子の下部電極および制御部を構成するトランジスタの配置を表わす模式図である。
図5】本開示の第1の実施の形態に係る撮像素子の構成の他の例を表す断面模式図である。
図6図1に示した撮像素子の製造方法を説明するための断面図である。
図7図6に続く工程を表す断面図である。
図8図7に続く工程を表す断面図である。
図9図8に続く工程を表す断面図である。
図10図9に続く工程を表す断面図である。
図11図1に示した撮像素子の一動作例を表すタイミング図である。
図12】本開示の第2の実施の形態に係る撮像素子の構成の一例を表す断面模式図である。
図13】本開示の第3の実施の形態に係る撮像素子の構成の一例を表す断面模式図である。
図14】本開示の第4の実施の形態に係る撮像素子の構成の一例を表す断面模式図である。
図15図1等に示した撮像素子を画素に用いた撮像装置の構成を表すブロック図である。
図16図15に示した撮像装置を用いた電子機器(カメラ)の一例を表す機能ブロック図である。
図17】体内情報取得システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図18】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図19】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
図20】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図21】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示における一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本開示の一具体例であって、本開示は以下の態様に限定されるものではない。また、本開示は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比等についても、それらに限定されるものではない。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.第1の実施の形態
(ベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を含む光電変換層を有する光電変換素子の例)
1-1.撮像素子の構成
1-2.撮像素子の製造方法
1-3.作用・効果
2.第2の実施の形態(半導体基板上に2つの有機光電変換部が積層された例)
3.第3の実施の形態(下部電極がベタ膜で形成された有機光電変換部を有する例)
4.第4の実施の形態(半導体基板上に3つの有機光電変換部が積層された例)
5.適用例
6.応用例
7.実施例
【0012】
<1.第1の実施の形態>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る撮像素子(撮像素子10A)の断面構成の一例を表したものである。図2は、図1に示した撮像素子10Aの平面構成を表したものである。図3は、図1に示した撮像素子10Aの等価回路図であり、図2に示した領域100に相当するものである。図4は、図1に示した撮像素子10Aの下部電極21および制御部を構成するトランジスタの配置を模式的に表したものである。撮像素子10Aは、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器に用いられるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像装置(撮像装置1;図17参照)において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。本実施の形態の撮像素子10Aは、下部電極21、光電変換層24および上部電極25がこの順に積層された有機光電変換部20を有する。光電変換層24は、後述する一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を用いて形成されている。この有機光電変換部20が、本開示の「光電変換素子」の一具体例に相当する。
【0013】
(1-1.撮像素子の構成)
撮像素子10Aは、例えば、1つの有機光電変換部20と、2つの無機光電変換部32G,32Rとが縦方向に積層された、いわゆる縦方向分光型のものである。有機光電変換部20は、半導体基板30の第1面(裏面;面30S1)側に設けられている。無機光電変換部32G,32Rは、半導体基板30内に埋め込み形成されており、半導体基板30の厚み方向に積層されている。有機光電変換部20は、上記のように、対向配置された下部電極21と上部電極25との間に、有機材料を用いて形成された光電変換層24を有する。この光電変換層24は、p型半導体およびn型半導体を含んで構成され、層内にバルクヘテロ接合構造を有する。バルクヘテロ接合構造は、p型半導体およびn型半導体が混ざり合うことで形成されたp/n接合面である。
【0014】
有機光電変換部20と、無機光電変換部32G,32Rとは、互いに異なる波長域の光を選択的に検出して光電変換を行うものである。例えば、有機光電変換部20では、青(G)の色信号を取得する。無機光電変換部32G,32Rでは、吸収係数の違いにより、それぞれ、緑(G)および赤(R)の色信号を取得する。これにより、撮像素子10Aでは、カラーフィルタを用いることなく一つの画素において複数種類の色信号を取得可能となっている。
【0015】
なお、本実施の形態では、光電変換によって生じる電子および正孔の対(電子-正孔対)のうち、電子を信号電荷として読み出す場合(n型半導体領域を光電変換層とする場合)について説明する。また、図中において、「p」「n」に付した「+(プラス)」は、p型またはn型の不純物濃度が高いことを表している。
【0016】
半導体基板30の第2面(表面;30S2)には、例えば、フローティングディフュージョン(浮遊拡散層)FD1(半導体基板30内の領域36B),FD2(半導体基板30内の領域37C),FD3(半導体基板30内の領域38C)と、転送トランジスタTr2,Tr3と、アンプトランジスタ(変調素子)AMPと、リセットトランジスタRSTと、選択トランジスタSELと、多層配線40とが設けられている。多層配線40は、例えば、配線層41,42,43が絶縁層44内に積層された構成を有している。
【0017】
なお、図面では、半導体基板30の第1面(面30S1)側を光入射側S1、第2面(面30S2)側を配線層側S2と表している。
【0018】
有機光電変換部20は、下部電極21、半導体層23、光電変換層24および上部電極25が、半導体基板30の第1面(面30S1)の側からこの順に積層されている。また、下部電極21と半導体層23との間には、絶縁層22が設けられている。下部電極21は、例えば、撮像素子10Aごとに分離形成されると共に、詳細は後述するが、絶縁層22を間に互いに分離された読み出し電極21Aおよび蓄積電極21Bによって構成されている。下部電極21のうち、読み出し電極21Aは、絶縁層22に設けられた開口22Hを介して半導体層23と電気的に接続されている。半導体層23、光電変換層24および上部電極25は、図1では、複数の撮像素子10Aに共通した連続層として設けられている例を示したが、例えば、撮像素子10Aごとに分離形成されていてもよい。半導体基板30の第1面(面30S1)と下部電極21との間には、例えば、誘電体膜26、絶縁膜27および層間絶縁層28が設けられている。上部電極25の上には、保護層51が設けられている。保護層51内には、例えば、読み出し電極21Aに対応する位置に遮光膜52が設けられている。この遮光膜52Aは、少なくとも蓄積電極21Bにはかからず、少なくとも半導体層23と直接接している読み出し電極21Aの領域を覆うように設けられていればよい。保護層51の上方には、平坦化層(図示せず)やオンチップレンズ53等の光学部材が配設されている。
【0019】
半導体基板30の第1面(面30S1)と第2面(面30S2)との間には貫通電極34が設けられている。この貫通電極34は、有機光電変換部20の読み出し電極21Aと電気的に接続されており、有機光電変換部20は、貫通電極34を介して、アンプトランジスタAMPのゲートGampと、フローティングディフュージョンFD1を兼ねるリセットトランジスタRST(リセットトランジスタTr1rst)の一方のソース/ドレイン領域36Bとに接続されている。これにより、撮像素子10Aでは、半導体基板30の第1面(面30S21)側の有機光電変換部20で生じた電荷を半導体基板30の第2面(面30S2)側に良好に転送し、特性を高めることが可能となっている。
【0020】
貫通電極34の下端は、配線層41内の接続部41Aに接続されており、接続部41Aと、アンプトランジスタAMPのゲートGampとは、下部第1コンタクト45を介して接続されている。接続部41Aと、フローティングディフュージョンFD1(領域36B)とは、例えば、下部第2コンタクト46を介して接続されている。貫通電極34の上端は、例えば、上部第1コンタクト29A、パッド部39Aおよび上部第2コンタクト29Bを介して読み出し電極21Aに接続されている。
【0021】
貫通電極34は、例えば、撮像素子10Aの各々において有機光電変換部20ごとに設けられている。貫通電極34は、有機光電変換部20と、アンプトランジスタAMPのゲートGampおよびフローティングディフュージョンFD1とのコネクタとしての機能を有すると共に、有機光電変換部20において生じた電荷の伝送経路となっている。
【0022】
フローティングディフュージョンFD1(リセットトランジスタRSTの一方のソース/ドレイン領域36B)の隣にはリセットトランジスタRSTのリセットゲートGrstが配置されている。これにより、フローティングディフュージョンFD1に蓄積された電荷を、リセットトランジスタRSTによりリセットすることが可能となる。
【0023】
本実施の形態の撮像素子10Aでは、上部電極25側から有機光電変換部20に入射した光は、光電変換層24で吸収される。これによって生じた励起子は、光電変換層24を構成する電子供与体と電子受容体との界面に移動し、励起子分離、即ち、電子と正孔とに解離する。ここで発生した電荷(電子および正孔)は、キャリアの濃度差による拡散や、陽極(例えば、上部電極25)と陰極(例えば、下部電極21)との仕事関数の差による内部電界によってそれぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流として検出される。また、下部電極21と上部電極25との間に電位を印加することによって、電子および正孔の輸送方向を制御することができる。
【0024】
以下、各部の構成や材料等について説明する。
【0025】
有機光電変換部20は、選択的な波長域(例えば、400nm以上700nm以下)の一部または全部の波長域に対応する光を吸収して、電子-正孔対を発生させる有機光電変換素子である。
【0026】
下部電極21は、上記のように、分離形成された読み出し電極21Aと蓄積電極21Bとから構成されている。読み出し電極21Aは、光電変換層24内で発生した電荷をフローティングディフュージョンFD1に転送するためのものであり、例えば、上部第2コンタクト29B、パッド部39A、上部第1コンタクト29A、貫通電極34、接続部41Aおよび下部第2コンタクト46を介してフローティングディフュージョンFD1に接続されている。蓄積電極21Bは、光電変換層24内で発生した電荷のうち、電子を信号電荷として半導体層23内に蓄積するためのものである。蓄積電極21Bは、半導体基板30内に形成された無機光電変換部32G,32Rの受光面と正対して、これらの受光面を覆う領域に設けられている。蓄積電極21Bは、読み出し電極21Aよりも大きいことが好ましく、これにより、多くの電荷を蓄積することができる。蓄積電極21Bには、図4に示したように、配線を介して電圧印加回路60が接続されている。
【0027】
下部電極21は、光透過性を有する導電膜により構成されている。下部電極21の構成材料としては、例えば、ITO、ドーパントとしてスズ(Sn)を添加したIn23、結晶性ITOおよびアモルファスITOを含むインジウム錫酸化物が挙げられる。下部電極21の構成材料としては、上記以外にも、ドーパントを添加した酸化スズ(SnO2)系材料、あるいはドーパントを添加してなる酸化亜鉛系材料を用いてもよい。酸化亜鉛系材料としては、例えば、ドーパントとしてアルミニウム(Al)を添加したアルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム(Ga)を添加したガリウム亜鉛酸化物(GZO)、ホウ素(B)を添加したホウ素亜鉛酸化物およびインジウム(In)を添加したインジウム亜鉛酸化物(IZO)が挙げられる。また、下部電極21の構成材料としては、CuI、InSbO4、ZnMgO、CuInO2、MgIN24、CdO、ZnSnO3またはTiO2等を用いてもよい。更に、スピネル形酸化物やYbFe24構造を有する酸化物を用いてもよい。なお、上記のような材料を用いて形成された下部電極21は、一般に高仕事関数を有し、アノード電極として機能する。
【0028】
半導体層23は、光電変換層24の下層、具体的には、絶縁層22と光電変換層24との間に設けられ、光電変換層24で発生した信号電荷を蓄積するためのものである。半導体層23は、光電変換層24よりも電荷の移動度が高く、且つ、バンドギャップが大きな材料を用いて形成されていることが好ましい。例えば、半導体層23の構成材料のバンドギャップは、3.0eV以上であることが好ましい。このような材料としては、例えば、IGZO等の酸化物半導体材料および有機半導体材料等が挙げられる。有機半導体材料としては、例えば、遷移金属ダイカルコゲナイド、シリコンカーバイド、ダイヤモンド、グラフェン、カーボンナノチューブ、縮合多環炭化水素化合物および縮合複素環化合物等が挙げられる。半導体層23の厚みは、例えば10nm以上300nm以下である。上記材料によって構成された半導体層23を光電変換層24の下層に設けることにより、電荷蓄積時における電荷の再結合を防止し、転送効率を向上させることが可能となる。
【0029】
光電変換層24は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。本実施の形態の光電変換層24は、例えば、400nm以上700nm以下の範囲の一部または全ての波長の光を吸収する。光電変換層24は、例えば、それぞれp型半導体またはn型半導体として機能する有機材料(p型半導体材料またはn型半導体材料)を2種以上含んで構成されている。光電変換層24は、層内に、このp型半導体材料とn型半導体材料との接合面(p/n接合面)を有する。p型半導体は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能するものであり、n型半導体は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能するものである。光電変換層24は、光を吸収した際に生じる励起子が電子と正孔とに分離する場を提供するものであり、具体的には、励起子は、電子供与体と電子受容体との界面(p/n接合面)において電子と正孔とに分離する。
【0030】
光電変換層24は、p型半導体材料およびn型半導体材料の他に、所定の波長域の光を光電変換する一方、他の波長域の光を透過させる有機材料、いわゆる色素材料を含んで構成されていてもよい。光電変換層24をp型半導体材料、n型半導体材料および色素材料の3種類の有機材料を用いて形成する場合には、p型半導体材料およびn型半導体材料は、可視領域(例えば、400nm~700nm)において光透過性を有する材料であることが好ましい。光電変換層24の厚みは、例えば25nm以上400nm以下であり、好ましくは、50nm以上350nm以下である。より好ましくは、150nm以上300nm以下である。
【0031】
本実施の形態では、光電変換層24は、例えば、400nm以上500nm以下の光を吸収する、下記一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を含んで形成されている。このベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物が本開示の「第1の有機半導体材料」の一具体例に相当する。
【0032】
【化2】
(R1~R4は、各々独立してフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフタレン基、フェニルナフタレン基、ビフェニルナフタレン基、ビナタレン基、チオフェン基、ビチオフェン基、ターチオフェン基、ベンゾチオフェン基、フェニルベンゾチオフェン基、ビフェニルベンゾチオフェン基ベンゾフラン基、フェニルベンゾフラン基、ビフェニルベンゾチオフェン基、アルカン基、シクロアルカン基、フルオレン基、フェニルフルオレン基、またはその誘導体である。)
【0033】
光電変換層24を構成する他の有機材料としては、例えば、フラーレンまたはフラーレン誘導体が挙げられる。フラーレンまたはフラーレン誘導体は、本開示の「第2の有機半導体材料」の一具体例に相当する。
【0034】
更に、光電変換層24は、例えば、400nm以上700nm以下のいずれかの波長を吸収する有機半導体材料を含んでいてもよい。このような材料としては、例えば、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ポルフィリン誘導体、メロシアニン誘導体およびアントラキノン誘導体等が挙げられる。上記有機半導体材料が、本開示の「第3の有機半導体材料」の一具体例に相当する。
【0035】
上記有機半導体材料は、その組み合わせによってp型半導体またはn型半導体として機能する。
【0036】
なお、光電変換層24は、上記有機半導体材料以外に有機材料を含んでいてもよい。上記有機半導体材料以外の有機材料としては、例えば、キナクリドン、塩素化ホウ素サブフタロシアニン、ペンタセン、ベンゾチエノベンゾチオフェン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、ペリレン、およびフルオランテンあるいはそれらの誘導体のうちのいずれか1種が好適に用いられる。あるいは、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体やそれらの誘導体を用いてもよい。加えて、金属錯体色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、フェニルキサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、ロダシアニン系色素、キサンテン系色素、大環状アザアヌレン系色素、アズレン系色素、ナフトキノン、アントラキノン系色素、アントラセンおよびピレン等の縮合多環芳香族、および、芳香環あるいは複素環化合物が縮合した鎖状化合物、または、スクアリリウム基およびクロコニツクメチン基を結合鎖として持つキノリン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール等の二つの含窒素複素環、または、スクアリリウム基およびクロコニツクメチン基により結合したシアニン系類似の色素等を好ましく用いることができる。なお、上記金属錯体色素としては、ジチオール金属錯体系色素、金属フタロシアニン色素、金属ポルフィリン色素、またはルテニウム錯体色素が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0037】
上部電極25は、下部電極21と同様に光透過性を有する導電膜により構成されている。撮像素子10Aを1つの画素として用いた撮像装置1では、上部電極25は画素毎に分離されていてもよいし、各画素に共通の電極として形成されていてもよい。上部電極25の厚みは、例えば10nm~200nmである。
【0038】
半導体層23と光電変換層24との間および光電変換層24と上部電極25との間には、他の層が設けられていてもよい。例えば、図5に示した撮像素子10Bのように、例えば、下部電極21側から順に、半導体層23、電子ブロック層24A(第1の電荷ブロック層)、光電変換層24および正孔ブロック層24B(第2の電荷ブロック層)が積層されていてもよい。更に、下部電極21と光電変換層24との間に下引き層および正孔輸送層や、光電変換層24と上部電極25との間に仕事管巣調整層やバッファ層、あるいは電子輸送層を設けるようにしてもよい。
【0039】
絶縁層22は、蓄積電極21Bと半導体層23とを電気的に分離するためのものである。絶縁層22は、下部電極21を覆うように、例えば、層間絶縁層28上に設けられている。また、絶縁層22には、下部電極21のうち、読み出し電極21A上に開口22Hが設けられており、この開口22Hを介して、読み出し電極21Aと半導体層23とが電気的に接続されている。絶縁層22は、例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)および酸窒化シリコン(SiON)等のうちの1種よりなる単層膜か、あるいはこれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。絶縁層22の厚みは、例えば、20nm~500nmである。
【0040】
誘電体膜26は、半導体基板30と絶縁膜27との間の屈折率差によって生じる光の反射を防止するためのものである。誘電体膜26の材料としては、半導体基板30の屈折率と絶縁膜27の屈折率との間の屈折率を有する材料であることが好ましい。更に、誘電体膜26の材料としては、例えば、負の固定電荷を有する膜を形成可能な材料を用いることが好ましい。あるいは、誘電体膜26の材料としては、半導体基板30よりもバンドギャップの広い半導体材料または導電材料を用いることが好ましい。これにより、半導体基板30の界面における暗電流の発生を抑えることが可能となる。このような材料としては、酸化ハフニウム(HfOx)、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化タンタル(TaOx)、酸化チタン(TiOx)、酸化ランタン(LaOx)、酸化プラセオジム(PrOx)、酸化セリウム(CeOx)、酸化ネオジム(NdOx)、酸化プロメチウム(PmOx)、酸化サマリウム(SmOx)、酸化ユウロピウム(EuOx)、酸化ガドリニウム(GdOx)、酸化テルビウム(TbOx)、酸化ジスプロシウム(DyOx)、酸化ホルミウム(HoOx)、酸化ツリウム(TmOx)、酸化イッテルビウム(YbOx)、酸化ルテチウム(LuOx)、酸化イットリウム(YOx)、窒化ハフニウム(HfNx)、窒化アルミニウム(AlNx)、酸窒化ハフニウム(HfOxy)および酸窒化アルミニウム(AlOxy)等が挙げられる。
【0041】
絶縁膜27は、半導体基板30の第1面(面30S1)および貫通孔30Hの側面に形成された誘電体膜26上に設けられ、貫通電極34と半導体基板30との間を電気的に絶縁するためのものである。絶縁膜27の材料としては、例えば、酸化シリコン(SiOx)、TEOS、窒化シリコン(SiNx)および酸窒化シリコン(SiON)等が挙げられる。
【0042】
層間絶縁層28は、例えば、酸化シリコン(SiOx)、TEOS、窒化シリコン(SiNx)および酸窒化シリコン(SiON)等のうちの1種よりなる単層膜か、あるいはこれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。
【0043】
保護層51は、光透過性を有する材料により構成され、例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)および酸窒化シリコン(SiON)等のうちのいずれかよりなる単層膜、あるいはそれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。保護層51の厚みは、例えば、100nm~30000nmである。
【0044】
半導体基板30は、例えば、n型のシリコン(Si)基板により構成され、所定の領域(例えば画素部1a)にpウェル31を有している。pウェル31の第2面(面30S2)には、上述した転送トランジスタTr2,Tr3と、アンプトランジスタAMPと、リセットトランジスタRSTと、選択トランジスタSEL等が設けられている。また、半導体基板30の周辺部(周辺部1b)には、図2に示したように、ロジック回路等からなる、例えば、画素読み出し回路110および画素駆動回路120が設けられている。
【0045】
リセットトランジスタRST(リセットトランジスタTr1rst)は、有機光電変換部20からフローティングディフュージョンFD1に転送された電荷をリセットするものであり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。具体的には、リセットトランジスタTr1rstは、リセットゲートGrstと、チャネル形成領域36Aと、ソース/ドレイン領域36B,36Cとから構成されている。リセットゲートGrstは、リセット線RST1に接続され、リセットトランジスタTr1rstの一方のソース/ドレイン領域36Bは、フローティングディフュージョンFD1を兼ねている。リセットトランジスタTr1rstを構成する他方のソース/ドレイン領域36Cは、電源VDDに接続されている。
【0046】
アンプトランジスタAMPは、有機光電変換部20で生じた電荷量を電圧に変調する変調素子であり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。具体的には、アンプトランジスタAMPは、ゲートGampと、チャネル形成領域35Aと、ソース/ドレイン領域35B,35Cとから構成されている。ゲートGampは、下部第1コンタクト45、接続部41A、下部第2コンタクト46および貫通電極34等を介して、読み出し電極21AおよびリセットトランジスタTr1rstの一方のソース/ドレイン領域36B(フローティングディフュージョンFD1)に接続されている。また、一方のソース/ドレイン領域35Bは、リセットトランジスタTr1rstを構成する他方のソース/ドレイン領域36Cと、領域を共有しており、電源VDDに接続されている。
【0047】
選択トランジスタSEL(選択トランジスタTR1sel)は、ゲートGselと、チャネル形成領域34Aと、ソース/ドレイン領域34B,34Cとから構成されている。ゲートGselは、選択線SEL1に接続されている。また、一方のソース/ドレイン領域34Bは、アンプトランジスタAMPを構成する他方のソース/ドレイン領域35Cと、領域を共有しており、他方のソース/ドレイン領域34Cは、信号線(データ出力線)VSL1に接続されている。
【0048】
無機光電変換部32G,32Rは、それぞれ、半導体基板30の所定の領域にpn接合を有する。無機光電変換部32G,32Rは、シリコン基板において光の入射深さに応じて吸収される光の波長が異なることを利用して縦方向に光を分光することを可能としたものである。無機光電変換部32Gは、緑色光を選択的に検出して緑色に対応する信号電荷を蓄積させるものであり、緑色光を効率的に光電変換可能な深さに設置されている。無機光電変換部32Rは、赤色光を選択的に検出して赤色に対応する信号電荷を蓄積させるものであり、赤色光を効率的に光電変換可能な深さに設置されている。なお、緑(G)は、例えば495nm~620nmの波長域、赤(R)は、例えば620nm~750nmの波長域にそれぞれ対応する色である。無機光電変換部32G,32Rはそれぞれ、各波長域のうちの一部または全部の波長域の光を検出可能となっていればよい。
【0049】
無機光電変換部32Gは、例えば、正孔蓄積層となるp+領域と、電子蓄積層となるn領域とを含んで構成されている。無機光電変換部32Rは、例えば、正孔蓄積層となるp+領域と、電子蓄積層となるn領域とを有する(p-n-pの積層構造を有する)。無機光電変換部32Gのn領域は、縦型の転送トランジスタTr2に接続されている。無機光電変換部32Gのp+領域は、転送トランジスタTr2に沿って屈曲し、無機光電変換部32Rのp+領域につながっている。
【0050】
転送トランジスタTr2(転送トランジスタTR2trs)は、無機光電変換部32Gにおいて発生し、蓄積された、緑色に対応する信号電荷を、フローティングディフュージョンFD2に転送するためのものである。無機光電変換部32Gは半導体基板30の第2面(面30S2)から深い位置に形成されているので、無機光電変換部32Gの転送トランジスタTR2trsは縦型のトランジスタにより構成されていることが好ましい。また、転送トランジスタTR2trsは、転送ゲート線TG2に接続されている。更に、転送トランジスタTR2trsのゲートGtrs2の近傍の領域37Cには、フローティングディフュージョンFD2が設けられている。無機光電変換部32Gに蓄積された電荷は、ゲートGtrs2に沿って形成される転送チャネルを介してフローティングディフュージョンFD2に読み出される。
【0051】
転送トランジスタTr3(転送トランジスタTR3trs)は、無機光電変換部32Rにおいて発生し、蓄積された赤色に対応する信号電荷を、フローティングディフュージョンFD3に転送するものであり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。また、転送トランジスタTR3trsは、転送ゲート線TG3に接続されている。更に、転送トランジスタTR3trsのゲートGtrs3の近傍の領域38Cには、フローティングディフュージョンFD3が設けられている。無機光電変換部32Rに蓄積された電荷は、ゲートGtrs3に沿って形成される転送チャネルを介してフローティングディフュージョンFD3に読み出される。
【0052】
半導体基板30の第2面(面30S2)側には、さらに、無機光電変換部32Gの制御部を構成するリセットトランジスタTR2rstと、アンプトランジスタTR2ampと、選択トランジスタTR2selが設けられている。また、無機光電変換部32Rの制御部を構成するリセットトランジスタTR3rstと、アンプトランジスタTR3ampおよび選択トランジスタTR3selが設けられている。
【0053】
リセットトランジスタTR2rstは、ゲート、チャネル形成領域およびソース/ドレイン領域から構成されている。リセットトランジスタTR2rstのゲートはリセット線RST2に接続され、リセットトランジスタTR2rstの一方のソース/ドレイン領域は電源VDDに接続されている。リセットトランジスタTR2rstの他方のソース/ドレイン領域は、フローティングディフュージョンFD2を兼ねている。
【0054】
アンプトランジスタTR2ampは、ゲート、チャネル形成領域およびソース/ドレイン領域から構成されている。ゲートは、リセットトランジスタTR2rstの他方のソース/ドレイン領域(フローティングディフュージョンFD2)に接続されている。また、アンプトランジスタTR2ampを構成する一方のソース/ドレイン領域は、リセットトランジスタTR2rstを構成する一方のソース/ドレイン領域と領域を共有しており、電源VDDに接続されている。
【0055】
選択トランジスタTR2selは、ゲート、チャネル形成領域およびソース/ドレイン領域から構成されている。ゲートは、選択線SEL2に接続されている。また、選択トランジスタTR2selを構成する一方のソース/ドレイン領域は、アンプトランジスタTR2ampを構成する他方のソース/ドレイン領域と領域を共有している。選択トランジスタTR2selを構成する他方のソース/ドレイン領域は、信号線(データ出力線)VSL2に接続されている。
【0056】
リセットトランジスタTR3rstは、ゲート、チャネル形成領域およびソース/ドレイン領域から構成されている。リセットトランジスタTR3rstのゲートはリセット線RST3に接続され、リセットトランジスタTR3rstを構成する一方のソース/ドレイン領域は電源VDDに接続されている。リセットトランジスタTR3rstを構成する他方のソース/ドレイン領域は、フローティングディフュージョンFD3を兼ねている。
【0057】
アンプトランジスタTR3ampは、ゲート、チャネル形成領域およびソース/ドレイン領域から構成されている。ゲートは、リセットトランジスタTR3rstを構成する他方のソース/ドレイン領域(フローティングディフュージョンFD3)に接続されている。また、アンプトランジスタTR3ampを構成する一方のソース/ドレイン領域は、リセットトランジスタTR3rstを構成する一方のソース/ドレイン領域と、領域を共有しており、電源VDDに接続されている。
【0058】
選択トランジスタTR3selは、ゲート、チャネル形成領域およびソース/ドレイン領域から構成されている。ゲートは、選択線SEL3に接続されている。また、選択トランジスタTR3selを構成する一方のソース/ドレイン領域は、アンプトランジスタTR3ampを構成する他方のソース/ドレイン領域と、領域を共有している。選択トランジスタTR3selを構成する他方のソース/ドレイン領域は、信号線(データ出力線)VSL3に接続されている。
【0059】
リセット線RST1,RST2,RST3、選択線SEL1,SEL2,SEL3、転送ゲート線TG2,TG3は、それぞれ、駆動回路を構成する垂直駆動回路112に接続されている。信号線(データ出力線)VSL1,VSL2,VSL3は、駆動回路を構成するカラム信号処理回路113に接続されている。
【0060】
下部第1コンタクト45、下部第2コンタクト46、上部第1コンタクト29A、上部第2コンタクト29Bおよび上部第3コンタクト29Cは、例えば、PDAS(Phosphorus Doped Amorphous Silicon)等のドープされたシリコン材料、または、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属材料により構成されている。
【0061】
(1-2.撮像素子の製造方法)
本実施の形態の撮像素子10Aは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0062】
図6図10は、撮像素子10Aの製造方法を工程順に表したものである。まず、図6に示したように、半導体基板30内に、第1の導電型のウェルとして例えばpウェル31を形成し、このpウェル31内に第2の導電型(例えばn型)の無機光電変換部32G,32Rを形成する。半導体基板30の第1面(面30S1)近傍にはp+領域を形成する。
【0063】
半導体基板30の第2面(面30S2)には、同じく図6に示したように、例えばフローティングディフュージョンFD1~FD3となるn+領域を形成したのち、ゲート絶縁層33と、転送トランジスタTr2、転送トランジスタTr3、選択トランジスタSEL、アンプトランジスタAMPおよびリセットトランジスタRSTの各ゲートを含むゲート配線層47とを形成する。これにより、転送トランジスタTr2、転送トランジスタTr3、選択トランジスタSEL、アンプトランジスタAMPおよびリセットトランジスタRSTを形成する。更に、半導体基板30の第2面(面30S2)上に、下部第1コンタクト45、下部第2コンタクト46および接続部41Aを含む配線層41~43および絶縁層44からなる多層配線40を形成する。
【0064】
半導体基板30の基体としては、例えば、半導体基板30と、埋込み酸化膜(図示せず)と、保持基板(図示せず)とを積層したSOI(Silicon on Insulator)基板を用いる。埋込み酸化膜および保持基板は、図6には図示しないが、半導体基板30の第1面(面30S1)に接合されている。イオン注入後、アニール処理を行う。
【0065】
次いで、半導体基板30の第2面(面30S2)側(多層配線40側)に支持基板(図示せず)または他の半導体基体等を接合して、上下反転する。続いて、半導体基板30をSOI基板の埋込み酸化膜および保持基板から分離し、半導体基板30の第1面(面30S1)を露出させる。以上の工程は、イオン注入およびCVD(Chemical Vapor Deposition)等、通常のCMOSプロセスで使用されている技術にて行うことが可能である。
【0066】
次に、図7に示したように、例えばドライエッチングにより半導体基板30を第1面(面30S1)側から加工し、例えば環状の貫通孔30Hを形成する。貫通孔30Hの深さは、図7に示したように、半導体基板30の第1面(面30S1)から第2面(面30S2)まで貫通すると共に、例えば、接続部41Aまで達するものである。
【0067】
続いて、図8に示したように、半導体基板30の第1面(面30S1)および貫通孔30Hの側面に、例えば原子層堆積(Atomic Layer Deposition;ALD)法を用いて誘電体膜26を成膜する。これにより、半導体基板30の第1面(面30S1)、貫通孔30Hの側面および底面に連続する誘電体膜26が形成される。次いで、半導体基板30の第1面(面30S1)上および貫通孔30H内に絶縁膜27を成膜したのち、例えばドライエッチングにより貫通孔30Hの底部に形成された絶縁膜27および誘電体膜26を除去し、接続部41Aを露出させる。なお、このとき、第1面(面30S1)上の絶縁膜27も薄膜化される。続いて、絶縁膜27上および貫通孔30H内に導電膜を成膜したのち、導電膜上の所定の位置にフォトレジストPRを形成する。次いで、エッチングおよびフォトレジストPRを除去することで、半導体基板30の第1面(面30S1)上に張り出し部を有する貫通電極34が形成される。
【0068】
次に、図9に示したように、絶縁膜27および貫通電極34上に層間絶縁層28を構成する絶縁膜を形成したのち、貫通電極34上等に上部第1コンタクト29A、パッド部39A,39B、上部第2コンタクト29Bおよび上部第3コンタクト29Cを形成したのち、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて層間絶縁層28の表面を平坦化する。次いで、層間絶縁層28上に導電膜21xを成膜したのち、導電膜21xの所定の位置にフォトレジストを形成する。
【0069】
続いて、図10に示したように、エッチングおよびフォトレジストを除去することで、読み出し電極21Aおよび蓄積電極21Bを形成する。
【0070】
その後、層間絶縁層28および読み出し電極21Aおよび蓄積電極21B上に絶縁層22を成膜したのち、読み出し電極21A上に開口22Hを設ける。次いで、絶縁層22上に、半導体層23、光電変換層24、上部電極25を順に形成する。最後に、上部電極25上に、保護層51、遮光膜52およびオンチップレンズ53を配設する。以上により、図1に示した撮像素子10Aが完成する。
【0071】
なお、有機材料を用いて半導体層23やその他有機層を形成する場合には、真空工程において連続的に(真空一貫プロセスで)形成することが望ましい。また、光電変換層24の成膜方法としては、必ずしも真空蒸着法を用いた手法に限らず、他の手法、例えば、スピンコート技術やプリント技術等を用いてもよい。更に、透明電極(下部電極21および上部電極25)を形成する方法としては、透明電極を構成する材料にも依るが、真空蒸着法や反応性蒸着法、各種のスパッタリング法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法といった物理的気相成長法(PVD法)、パイロゾル法、有機金属化合物を熱分解する方法、スプレー法、ディップ法、MOCVD法を含む各種の化学的気相成長法(CVD法)、無電解メッキ法および電解メッキ法を挙げることができる。
【0072】
撮像素子10Aでは、有機光電変換部20に、オンチップレンズ53を介して光が入射すると、その光は、有機光電変換部20、無機光電変換部32G,32Rの順に通過し、その通過過程において緑、青、赤の色光毎に光電変換される。以下、各色の信号取得動作について説明する。
【0073】
(有機光電変換部20による青色信号の取得)
撮像素子10Aへ入射した光のうち、まず、青色光が、有機光電変換部20において選択的に検出(吸収)され、光電変換される。
【0074】
有機光電変換部20は、貫通電極34を介して、アンプトランジスタAMPのゲートGampとフローティングディフュージョンFD1とに接続されている。よって、有機光電変換部20で発生した電子-正孔対のうちの電子が、下部電極21側から取り出され、貫通電極34を介して半導体基板30の第2面(面30S2)側へ転送され、フローティングディフュージョンFD1に蓄積される。これと同時に、アンプトランジスタAMPにより、有機光電変換部20で生じた電荷量が電圧に変調される。
【0075】
また、フローティングディフュージョンFD1の隣には、リセットトランジスタRSTのリセットゲートGrstが配置されている。これにより、フローティングディフュージョンFD1に蓄積された電荷は、リセットトランジスタRSTによりリセットされる。
【0076】
ここでは、有機光電変換部20が、貫通電極34を介して、アンプトランジスタAMPだけでなくフローティングディフュージョンFD1にも接続されているので、フローティングディフュージョンFD1に蓄積された電荷をリセットトランジスタRSTにより容易にリセットすることが可能となる。
【0077】
これに対して、貫通電極34とフローティングディフュージョンFD1とが接続されていない場合には、フローティングディフュージョンFD1に蓄積された電荷をリセットすることが困難となり、大きな電圧をかけて上部電極25側へ引き抜くことになる。そのため、光電変換層24がダメージを受けるおそれがある。また、短時間でのリセットを可能とする構造は暗時ノイズの増大を招き、トレードオフとなるため、この構造は困難である。
【0078】
図11は、撮像素子10Aの一動作例を表したものである。(A)は、蓄積電極21Bにおける電位を示し、(B)は、フローティングディフュージョンFD1(読み出し電極21A)における電位を示し、(C)は、リセットトランジスタTR1rstのゲート(Gsel)における電位を示したものである。撮像素子10Aでは、読み出し電極21Aおよび蓄積電極21Bは、それぞれ個別に電圧が印加されるようになっている。
【0079】
撮像素子10Aでは、蓄積期間においては、駆動回路から読み出し電極21Aに電位V1が印加され、蓄積電極21Bに電位V2が印加される。ここで、電位V1,V2は、V2>V1とする。これにより、光電変換によって生じた電荷(信号電荷;電子)は、蓄積電極21Bに引きつけられ、蓄積電極21Bと対向する半導体層23の領域に蓄積される(蓄積期間)。因みに、蓄積電極21Bと対向する半導体層23の領域の電位は、光電変換の時間経過に伴い、より負側の値となる。なお、正孔は、上部電極25から駆動回路へと送出される。
【0080】
撮像素子10Aでは、蓄積期間の後期においてリセット動作がなされる。具体的には、タイミングt1において、走査部は、リセット信号RSTの電圧を低レベルから高レベルに変化させる。これにより、単位画素Pでは、リセットトランジスタTR1rstがオン状態になり、その結果、フローティングディフュージョンFD1の電圧が電源電圧VDDに設定され、フローティングディフュージョンFD1の電圧がリセットされる(リセット期間)。
【0081】
リセット動作の完了後、電荷の読み出しが行われる。具体的には、タイミングt2において、駆動回路から読み出し電極21Aには電位V3が印加され、蓄積電極21Bには電位V4が印加される。ここで、電位V3,V4は、V3<V4とする。これにより、蓄積電極21Bに対応する領域に蓄積されていた電荷は、読み出し電極21AからフローティングディフュージョンFD1へと読み出される。即ち、半導体層23に蓄積された電荷が制御部に読み出される(転送期間)。
【0082】
読み出し動作完了後、再び、駆動回路から読み出し電極21Aに電位V1が印加され、蓄積電極21Bに電位V2が印加される。これにより、光電変換によって生じた電荷は、蓄積電極21Bに引きつけられ、蓄積電極21Bと対向する光電変換層24の領域に蓄積される(蓄積期間)。
【0083】
(無機光電変換部32G,32Rによる緑色信号,赤色信号の取得)
続いて、有機光電変換部20を透過した光のうち、緑色光は無機光電変換部32G、赤色光は無機光電変換部32Rにおいて、それぞれ順に吸収され、光電変換される。無機光電変換部32Gでは、入射した緑色光に対応した電子が無機光電変換部32Gのn領域に蓄積され、蓄積された電子は、転送トランジスタTr2によりフローティングディフュージョンFD2へと転送される。同様に、無機光電変換部32Rでは、入射した赤色光に対応した電子が無機光電変換部32Rのn領域に蓄積され、蓄積された電子は、転送トランジスタTr3によりフローティングディフュージョンFD3へと転送される。
【0084】
(1-3.作用・効果)
前述したように、高い外部量子効率を有する青色光用の光電変換素子の開発が求められている。例えば、ポルフィリン色素を用いた青色有機光電変換素子が報告されているが、その外部量子効率は80Vで20%程度となっている。また、また、青色有機光電変換膜の材料としてフラーレンとクマリン色素とを組み合わせて用いた光電変換素子が報告されているが、その外部量子効率は5Vで23%程度となっている。
【0085】
これに対して本実施の形態では、光電変換層24の材料として、上記一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を用いるようにした。
【0086】
上記一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物は、分子の長軸が基板面に対して水平なフェイスオン配向をとる。また、一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物は、ベンゾチエノベンゾチオフェン骨格による強い分子間相互作用によって、キャリア輸送に有利なヘリングボーン型の結晶となり得る。このため、光電変換層24内における一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物は、下部電極21および上部電極25の各電極面の垂直方向に対して高いキャリア移動度を示す。また、一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物は、低電圧で優れた光応答電流を示す。
【0087】
以上により、400nm以上500nm以下の光を吸収し、且つ、下部電極21および上部電極25へのキャリアの移動度が高い光電変換層24が形成される。よって、高い外部量子効率を有する青色光用の撮像素子10Aを提供することが可能となる。
【0088】
また、一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物は、上記のように、光電変換層24を間に対向配置される下部電極21および上部電極25の各電極面の垂直方向に対して高いキャリア移動度を示す。よって、光照射の有無による光電流のオン/オフ応答特性を向上させることが可能となる。
【0089】
加えて、一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物は、遷移双極子モーメントが光入射方向に対して水平であるため、400nm以上500nm以下の光を強く吸収することが可能となる。よって、オンチップカラーフィルタが不要となり、本実施の形態の撮像素子10Aのように、互いに異なる波長の光を吸収する光電変換部が縦方向に積層された、所謂縦方向分光型の撮像素子を構成することが可能となる。
【0090】
次に、本開示の第2~第5の実施の形態について説明する。以下では、上記第1の実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0091】
<2.第2の実施の形態>
【0092】
図12は、本開示の第2の実施の形態に係る撮像素子(撮像素子10C)の断面構成を表したものである。撮像素子10Cは、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器に用いられるCMOSイメージセンサ等の撮像装置(撮像装置1)において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。本実施の形態の撮像素子10Cは、2つの有機光電変換部20および有機光電変換部70と、1つの無機光電変換部32とが縦方向に積層されたものである。
【0093】
有機光電変換部20,70と、無機光電変換部32とは、互いに波長域の光を選択的に検出して光電変換を行うものである。具体的には、例えば有機光電変換部20では、上記第1の実施の形態と同様に、青(B)の色信号を取得する。有機光電変換部70は、例えば緑(G)の色信号を取得する。無機光電変換部32では、例えば赤(R)の色信号を取得する。これにより、撮像素子10Cでは、カラーフィルタを用いることなく一つの画素において複数種類の色信号を取得可能となっている。
【0094】
有機光電変換部70は、例えば有機光電変換部20の上方に積層され、有機光電変換部20と同様に、下部電極71、半導体層73、光電変換層74、および上部電極75が、半導体基板30の第1面(面30S1)の側からこの順に積層された構成を有している。また、下部電極71と半導体層73との間には、絶縁層72が設けられている。下部電極71は、例えば、撮像素子10Cごとに分離形成されると共に、詳細は後述するが、絶縁層72を間に互いに分離された読み出し電極71Aおよび蓄積電極71Bによって構成されている。下部電極71のうち、読み出し電極71Aは、絶縁層72に設けられた開口72Hを介して光電変換層74と電気的に接続されている。半導体層73、光電変換層74および上部電極75は、図12では、撮像素子10Cごとに分離形成されている例を示したが、例えば、複数の撮像素子10Cに共通した連続層として設けられていてもよい。
【0095】
光電変換層74は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、光電変換層24と同様に、それぞれp型半導体またはn型半導体として機能する有機材料(p型半導体材料またはn型半導体材料)を2種以上含んで構成されている。光電変換層74は、p型半導体材料およびn型半導体材料の他に、所定の波長域の光を光電変換する一方、他の波長域の光を透過させる有機材料、いわゆる色素材料を含んで構成されていてもよい。光電変換層74をp型半導体材料、n型半導体材料および色素材料の3種類の有機材料を用いて形成する場合には、p型半導体材料およびn型半導体材料は、可視領域(例えば、400nm~700nm)において光透過性を有する材料であることが好ましい。光電変換層74の厚みは、例えば25nm以上400nm以下であり、好ましくは、50nm以上350nm以下である。より好ましくは、150nm以上300nm以下である。光電変換層74に用いられる色素材料としては、例えば、サブフタロシアニン、フタロシアニン、クマリンおよびポルフィリンまたはそれらの誘導体等またはそれらの誘導体等が挙げられる。
【0096】
半導体基板30の第1面(面30S1)と第2面(面30S2)との間には、2つの貫通電極34X,34Yが設けられている。
【0097】
貫通電極34Xは、上記第1の実施の形態と同様に、有機光電変換部20の読み出し電極21Aと電気的に接続されており、有機光電変換部20は、貫通電極34Xを介して、アンプトランジスタAMPのゲートGampと、フローティングディフュージョンFD1を兼ねるリセットトランジスタRST(リセットトランジスタTr1rst)の一方のソース/ドレイン領域36B1に接続されている。貫通電極34Xの上端は、例えば、上部第1コンタクト29A、パッド部39Aおよび上部第2コンタクト29Bを介して読み出し電極21Aに接続されている。
【0098】
貫通電極34Yは、有機光電変換部70の読み出し電極71Aと電気的に接続されており、有機光電変換部70は、貫通電極34Yを介して、アンプトランジスタAMPのゲートGampと、フローティングディフュージョンFD2を兼ねるリセットトランジスタRST(リセットトランジスタTr2rst)の一方のソース/ドレイン領域36B2に接続されている。貫通電極34Yの上端は、例えば、上部第4コンタクト79A、パッド部69A、上部第5コンタクト79B、パッド部69Bおよび上部第6コンタクト79Cを介して読み出し電極71Aに接続されている。また、有機光電変換部70を構成する下部電極71の蓄積電極71Bには、上部第7コンタクト79Dを介してパッド69Cが接続されている。
【0099】
以上のように、本実施の形態の撮像素子10Bでは、2つの有機光電変換部20,70と、1つの無機光電変換部32とが積層された構成とし、上記第1の実施の形態と同様に、例えば、青(B)の色信号を取得する有機光電変換部20を構成する光電変換層24を、上記一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を用いて形成するようにした。これにより、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0100】
<3.第3の実施の形態>
図13は、本開示の第3の実施の形態の撮像素子(撮像素子10D)の断面構成を模式的に表したものである。撮像素子10Dは、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器に用いられるCMOSイメージセンサ等の撮像装置(撮像装置1)において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。本実施の形態の有機光電変換部80は、下部電極81と、光電変換層24と、上部電極25とがこの順に積層された構成を有し、下部電極81が画素内においてベタ膜として形成されている点が上記第1、第2の実施の形態とは異なる。
【0101】
撮像素子10Dは、単位画素P毎に、1つの有機光電変換部80と、2つの無機光電変換部32G,32Rと縦方向に積層されものである。有機光電変換部80と、無機光電変換部32G,32Rとは、互いに異なる波長帯域の光を選択的に検出して光電変換を行うものである。具体的には、有機光電変換部80では、上記第1の実施の形態と同様に、例えば青(B)の色信号を取得する。半導体基板30の第2面(面30S2)上には多層配線層40が設けられている。多層配線層40は、例えば、配線層41,42,43が絶縁層44内に積層された構成を有している。
【0102】
有機光電変換部80は、選択的な波長帯域(例えば、400nm以上700nm以下)の一部または全部の波長帯域に対応する光を吸収して、電子-正孔対を発生させる有機光電変換素子である。
有機光電変換部80は、上記のように、例えば、対向配置された下部電極81および上部電極25と、下部電極81と上部電極25との間に設けられた光電変換層24とから構成されている。本実施の形態の有機光電変換部80は、図13に示したように、下部電極81が各画素内においてベタ膜で形成されていることを除き、下部電極81、光電変換層24および上部電極25は、上記第1の実施の形態における有機光電変換部20と同様の構成を有する。
【0103】
半導体基板30の第2面(面30S2)には、例えば、フローティングディフュージョン(浮遊拡散層)FD1,FD2,FD3と、縦型トランジスタ(転送トランジスタ)Tr1と、転送トランジスタTr2と、アンプトランジスタ(変調素子)AMPと、リセットトランジスタRSTとが設けられている。
【0104】
縦型トランジスタTr1は、無機光電変換部32Gにおいて発生し、蓄積された、緑色に対応する信号電荷を、フローティングディフュージョンFD1に転送する転送トランジスタである。無機光電変換部32Gは半導体基板30の第2面(面30S2)から深い位置に形成されているので、無機光電変換部32Gの転送トランジスタは縦型トランジスタTr1により構成されていることが好ましい。転送トランジスタTr2は、無機光電変換部32Rにおいて発生し、蓄積された赤色に対応する信号電荷を、フローティングディフュージョンFD2に転送するものであり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。アンプトランジスタAMPは、有機光電変換部80で生じた電荷量を電圧に変調する変調素子であり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。リセットトランジスタRSTは、有機光電変換部80からフローティングディフュージョンFD3に転送された電荷をリセットするものであり、例えばMOSトランジスタにより構成されている。
【0105】
下部第1コンタクト45および下部第2コンタクト46は、例えば、PDAS(Phosphorus Doped Amorphous Silicon)等のドープされたシリコン材料、または、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属材料により構成されている。
【0106】
撮像素子10Dでは、以下のようにして各色の信号が取得される。
【0107】
(有機光電変換部80による青色信号の取得)
撮像素子10Dへ入射した光のうち、まず、青色光が、有機光電変換部80において選択的に検出(吸収)され、光電変換される。
【0108】
有機光電変換部80は、貫通電極34を介して、アンプトランジスタAMPのゲートGampとフローティングディフュージョンFD3とに接続されている。よって、有機光電変換部80で発生した電子-電子対のうちの電子が、下部電極81側から取り出され、貫通電極34を介して半導体基板30の第2面(面30S2)側へ転送され、フローティングディフュージョンFD3に蓄積される。これと同時に、アンプトランジスタAMPにより、有機光電変換部80で生じた電荷量が電圧に変調される。
【0109】
また、フローティングディフュージョンFD3の隣には、リセットトランジスタRSTのリセットゲートGrstが配置されている。これにより、フローティングディフュージョンFD3に蓄積された電荷は、リセットトランジスタRSTによりリセットされる。
【0110】
ここでは、有機光電変換部80が、貫通電極34を介して、アンプトランジスタAMPだけでなくフローティングディフュージョンFD3にも接続されているので、フローティングディフュージョンFD3に蓄積された電荷をリセットトランジスタRSTにより容易にリセットすることが可能となる。
【0111】
これに対して、貫通電極34とフローティングディフュージョンFD3とが接続されていない場合には、フローティングディフュージョンFD3に蓄積された電荷をリセットすることが困難となり、大きな電圧をかけて上部電極25側へ引き抜くことになる。そのため、光電変換層24がダメージを受けるおそれがある。また、短時間でのリセットを可能とする構造は暗時ノイズの増大を招き、トレードオフとなるため、この構造は困難である。
【0112】
(無機光電変換部32G,32Rによる緑色信号,赤色信号の取得)
続いて、有機光電変換部80を透過した光のうち、緑色光は無機光電変換部32G、赤色光は無機光電変換部32Rにおいて、それぞれ順に吸収され、光電変換される。無機光電変換部32Gでは、入射した緑色光に対応した電子が無機光電変換部32Gのn領域に蓄積され、蓄積された電子は、縦型トランジスタTr1によりフローティングディフュージョンFD1へと転送される。同様に、無機光電変換部32Rでは、入射した赤色光に対応した電子が無機光電変換部32Rのn領域に蓄積され、蓄積された電子は、転送トランジスタTr2によりフローティングディフュージョンFD2へと転送される。
【0113】
以上のように、本実施の形態の撮像素子10Dでは、有機光電変換部80を構成する下部電極81をベタ膜として形成し、上記第1の実施の形態と同様に、例えば、青(B)の色信号を取得する有機光電変換部80を構成する光電変換層24を、上記一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を用いて形成するようにした。これにより、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0114】
<4.第4の実施の形態>
図14は、本開示の第4の実施の形態に係る撮像素子(撮像素子10E)の断面構成を表したものである。撮像素子10Eは、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器に用いられるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像装置1において1つの画素(単位画素P)を構成するものである。本実施の形態の撮像素子10Eは、半導体基板30上に絶縁層96を介して赤色光電変換部90R、緑色光電変換部90Gおよび青色光電変換部90Bがこの順に積層された構成を有する。
【0115】
赤色光電変換部90R、緑色光電変換部90Gおよび青色光電変換部90Bは、それぞれ一対の電極の間、具体的には、第1電極91Rと第2電極93Rとの間、第1電極91Gと第2電極93Gとの間、第1電極91Bと第2電極93Bとの間に、それぞれ有機光電変換層92R,92G,92Bを有する。有機光電変換層92Bは、上記第1の実施の形態と同様に、例えば、有機光電変換層82Bは、上記一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を用いて形成されている。
【0116】
青色光電変換部90B上には、保護層97およびオンチップレンズ層98を介してオンチップレンズ98Lが設けられている。半導体基板30内には、赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bが設けられている。オンチップレンズ98Lに入射した光は、赤色光電変換部90R、緑色光電変換部90Gおよび青色光電変換部90Bで光電変換され、赤色光電変換部90Rから赤色蓄電層310Rへ、緑色光電変換部90Gから緑色蓄電層310Gへ、青色光電変換部90Bから青色蓄電層310Bへそれぞれ信号電荷が送られるようになっている。信号電荷は、光電変換によって生じる電子および正孔のどちらであってもよいが、以下では、電子を信号電荷として読み出す場合を例に挙げて説明する。
【0117】
半導体基板30は、例えばp型シリコン基板により構成されている。この半導体基板30に設けられた赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bは、各々n型半導体領域を含んでおり、このn型半導体領域に赤色光電変換部90R、緑色光電変換部90Gおよび青色光電変換部90Bから供給された信号電荷(電子)が蓄積されるようになっている。赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bのn型半導体領域は、例えば、半導体基板30に、リン(P)またはヒ素(As)等のn型不純物をドーピングすることにより形成される。なお、半導体基板30は、ガラス等からなる支持基板(図示せず)上に設けるようにしてもよい。
【0118】
半導体基板30には、赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bそれぞれから電子を読み出し、例えば垂直信号線(例えば、後述の図15の垂直信号線Lsig)に転送するための画素トランジスタが設けられている。この画素トランジスタのフローティングディフージョンが半導体基板30内に設けられており、このフローティングディフージョンが赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bに接続されている。フローティングディフージョンは、n型半導体領域により構成されている。
【0119】
絶縁層96は、例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸窒化シリコン(SiON)および酸化ハフニウム(HfOx)等のうちの1種よりなる単層膜か、あるいはこれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。また、絶縁層96は、有機絶縁材料を用いて形成してもよい。絶縁層96には、図示していないが、赤色蓄電層310Rと赤色光電変換部90R、緑色蓄電層310Gと緑色光電変換部90G、青色蓄電層310Bと青色光電変換部90Bをそれぞれ接続するためのプラグおよび電極が設けられている。
【0120】
赤色光電変換部90Rは、半導体基板30に近い位置から、第1電極91R、有機光電変換層92Rおよび第2電極93Rをこの順に有するものである。緑色光電変換部90Gは、赤色光電変換部90Rに近い位置から、第1電極91G、有機光電変換層92Gおよび第2電極93Gをこの順に有するものである。青色光電変換部90Bは、緑色光電変換部90Gに近い位置から、第1電極91B、有機光電変換層92Bおよび第2電極93Bをこの順に有するものである。赤色光電変換部90Rと緑色光電変換部90Gとの間には絶縁層94が、緑色光電変換部90Gと青色光電変換部90Bとの間には絶縁層95がさらに設けられている。赤色光電変換部90Rでは赤色(例えば、波長600nm以上700nm未満)の光が、緑色光電変換部90Gでは緑色(例えば、波長500nm以上600nm未満)の光が、青色光電変換部90Bでは青色(例えば、波長400nm以上500nm未満)の光がそれぞれ選択的に吸収され、電子-正孔対が発生するようになっている。
【0121】
第1電極91Rは有機光電変換層92Rで生じた信号電荷を、第1電極91Gは有機光電変換層92Gで生じた信号電荷を、第1電極91Bは有機光電変換層92Bで生じた信号電荷をそれぞれ取り出すものである。第1電極91R,91G,91Bは、例えば、画素毎に設けられている。この第1電極91R,91G,91Bは、例えば、光透過性の導電材料、具体的にはITOにより構成される。第1電極91R,91G,91Bは、例えば、酸化スズ系材料または酸化亜鉛系材料により構成するようにしてもよい。酸化スズ系材料とは酸化スズにドーパントを添加したものであり、酸化亜鉛系材料とは例えば、酸化亜鉛にドーパントとしてアルミニウムを添加したアルミニウム亜鉛酸化物,酸化亜鉛にドーパントとしてガリウムを添加したガリウム亜鉛酸化物および酸化亜鉛にドーパントとしてインジウムを添加したインジウム亜鉛酸化物等である。この他、IGZO,CuI,InSbO4,ZnMgO,CuInO2,MgIn24,CdOおよびZnSnO3等を用いることも可能である。第1電極91R,91G,91Bの厚みは、例えば50nm~500nmである。
【0122】
第1電極91Rと有機光電変換層92Rとの間、第1電極91Gと有機光電変換層92Gとの間、および第1電極91Bと有機光電変換層92Bとの間には、それぞれ例えば、電子輸送層が設けられていてもよい。電子輸送層は、有機光電変換層92R,92G,92Bで生じた電子の第1電極91R,91G,91Bへの供給を促進するためのものであり、例えば、酸化チタンまたは酸化亜鉛等により構成されている。酸化チタン膜と酸化亜鉛膜とを積層させて電子輸送層を構成するようにしてもよい。電子輸送層の厚みは、例えば0.1nm~1000nmであり、0.5nm~300nmであることが好ましい。
【0123】
有機光電変換層92R,92G,92Bは、それぞれ、選択的な波長域の光を吸収して光電変換し、他の波長域の光を透過させるものである。ここで、選択的な波長域の光とは、有機光電変換層92Rでは、例えば、波長600nm以上700nm未満の波長域の光である。有機光電変換層92Gでは、例えば、波長500nm以上600nm未満の波長域の光である。有機光電変換層92Bでは、例えば、波長400nm以上500nm未満の波長域の光である。有機光電変換層92R,92G,92Bの厚みは、例えば25nm以上400nm以下であり、好ましくは、50nm以上350nm以下である。より好ましくは、150nm以上300nm以下である。
【0124】
有機光電変換層92R,92G,92Bは、光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、光電変換層24と同様に、それぞれp型半導体またはn型半導体として機能する有機材料(p型半導体材料またはn型半導体材料)を2種以上含んで構成されている。有機光電変換層92R,92G,92Bは、p型半導体材料およびn型半導体材料の他に、上記所定の波長域の光を光電変換する一方、他の波長域の光を透過させる有機材料、いわゆる色素材料を含んで構成されていてもよい。このような材料としては、例えば、有機光電変換層92Rでは、例えば、ローダミンおよびメロシアニンまたはその誘導体が挙げられる。有機光電変換層92Gでは、例えば、サブフタロシアニン、フタロシアニン、クマリンおよびポルフィリンまたはそれらの誘導体が挙げられる。有機光電変換層92Bでは、上記一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物が挙げられる。
【0125】
有機光電変換層92R,92G,92Bを構成する有機材料としては、例えば、フラーレンまたはフラーレン誘導体が挙げられる。有機光電変換層92R,92G,92Bは、さらに、上記以外の有機材料を含んでいてもよい。
【0126】
有機光電変換層92Rと第2電極93Rとの間、有機光電変換層92Gと第2電極93Gとの間、および有機光電変換層92Bと第2電極93Bとの間には、それぞれ、例えば正孔輸送層が設けられていてもよい。正孔輸送層は、有機光電変換層92R,92G,92Bで生じた正孔の第2電極93R,93G,93Bへの供給を促進するためのものであり、例えば酸化モリブデン,酸化ニッケルあるいは酸化バナジウム等により構成されている。PEDOT(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene))およびTPD(N,N'-Bis(3-methylphenyl)-N,N'-diphenylbenzidine)等の有機材料により正孔輸送層を構成するようにしてもよい。正孔輸送層の厚みは、例えば0.5nm以上100nm以下である。
【0127】
第2電極93Rは有機光電変換層92Rで発生した正孔を、第2電極93Gは有機光電変換層92Gで発生した正孔を、第2電極93Bは有機光電変換層92Gで発生した正孔をそれぞれ取りだすためのものである。第2電極93R,93G,93Bから取り出された正孔は各々の伝送経路(図示せず)を介して、例えば半導体基板30内のp型半導体領域(図示せず)に排出されるようになっている。第2電極93R,93G,93Bは、例えば、金(Au),銀(Ag),銅(Cu)およびアルミニウム(Al)等の導電材料により構成されている。第1電極91R,91G,91Bと同様に、透明導電材料により第2電極93R,93G,93Bを構成するようにしてもよい。撮像素子10Eでは、この第2電極93R,93G,93Bから取り出される正孔は排出されるため、例えば、後述する撮像装置1において複数の撮像素子10Eを配置した際には、第2電極93R,93G,93Bを各撮像素子10E(単位画素P)に共通して設けるようにしてもよい。第2電極93R,93G,93Bの厚みは例えば、0.5nm以上100nm以下である。
【0128】
絶縁層94は第2電極93Rと第1電極91Gとを絶縁するためのものであり、絶縁層95は第2電極93Gと第1電極91Bとを絶縁するためのものである。絶縁層94,95は、例えば、金属酸化物、金属硫化物あるいは有機物により構成されている。金属酸化物としては、例えば、酸化シリコン(SiOx)、酸化アルミニウム(AlOx),酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化チタン(TiOx)、酸化亜鉛(ZnOx)、酸化タングステン(WOx)、酸化マグネシウム(MgOx)、酸化ニオブ(NbOx)、酸化スズ(SnOx)および酸化ガリウム(GaOx)等が挙げられる。金属硫化物としては、硫化亜鉛(ZnS)および硫化マグネシウム(MgS)等が挙げられる。絶縁層94,95の構成材料のバンドギャップは3.0eV以上であることが好ましい。絶縁層94,95の厚みは、例えば2nm以上100nm以下である。
【0129】
以上のように、上記一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を用いて有機光電変換層92Bを形成することにより、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0130】
<5.適用例>
(適用例1)
図15は、上記第1~第4の実施の形態において説明した撮像素子10A(または、撮像素子10B~10E)を各画素に用いた撮像装置(撮像装置1)の全体構成を表したものである。この撮像装置1は、CMOSイメージセンサであり、半導体基板30上に、撮像エリアとしての画素部1aを有すると共に、この画素部1aの周辺領域に、例えば、行走査部131、水平選択部133、列走査部134およびシステム制御部132からなる周辺回路部130を有している。
【0131】
画素部1aは、例えば、行列状に2次元配置された複数の単位画素P(撮像素子10に相当)を有している。この単位画素Pには、例えば、画素行ごとに画素駆動線Lread(具体的には行選択線およびリセット制御線)が配線され、画素列ごとに垂直信号線Lsigが配線されている。画素駆動線Lreadは、画素からの信号読み出しのための駆動信号を伝送するものである。画素駆動線Lreadの一端は、行走査部131の各行に対応した出力端に接続されている。
【0132】
行走査部131は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、画素部1aの各単位画素Pを、例えば、行単位で駆動する画素駆動部である。行走査部131によって選択走査された画素行の各単位画素Pから出力される信号は、垂直信号線Lsigの各々を通して水平選択部133に供給される。水平選択部133は、垂直信号線Lsigごとに設けられたアンプや水平選択スイッチ等によって構成されている。
【0133】
列走査部134は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、水平選択部133の各水平選択スイッチを走査しつつ順番に駆動するものである。この列走査部134による選択走査により、垂直信号線Lsigの各々を通して伝送される各画素の信号が順番に水平信号線135に出力され、当該水平信号線135を通して半導体基板30の外部へ伝送される。
【0134】
行走査部131、水平選択部133、列走査部134および水平信号線135からなる回路部分は、半導体基板30上に直に形成されていてもよいし、あるいは外部制御ICに配設されたものであってもよい。また、それらの回路部分は、ケーブル等により接続された他の基板に形成されていてもよい。
【0135】
システム制御部132は、半導体基板30の外部から与えられるクロックや、動作モードを指令するデータ等を受け取り、また、撮像装置1の内部情報等のデータを出力するものである。システム制御部132はさらに、各種のタイミング信号を生成するタイミングジェネレータを有し、当該タイミングジェネレータで生成された各種のタイミング信号を基に行走査部131、水平選択部133および列走査部134等の周辺回路の駆動制御を行う。
【0136】
(適用例2)
上記撮像装置1は、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等のカメラシステムや、撮像機能を有する携帯電話等、撮像機能を備えたあらゆるタイプの電子機器に適用することができる。図16に、その一例として、電子機器2(カメラ)の概略構成を示す。この電子機器2は、例えば、静止画または動画を撮影可能なビデオカメラであり、撮像装置1と、光学系(光学レンズ)310と、シャッタ装置311と、撮像装置1およびシャッタ装置311を駆動する駆動部313と、信号処理部312とを有する。
【0137】
光学系310は、被写体からの像光(入射光)を撮像装置1の画素部1aへ導くものである。この光学系310は、複数の光学レンズから構成されていてもよい。シャッタ装置311は、撮像装置1への光照射期間および遮光期間を制御するものである。駆動部313は、撮像装置1の転送動作およびシャッタ装置311のシャッタ動作を制御するものである。信号処理部312は、撮像装置1から出力された信号に対し、各種の信号処理を行うものである。信号処理後の映像信号Doutは、メモリ等の記憶媒体に記憶されるか、あるいは、モニタ等に出力される。
【0138】
更に、上記撮像装置1は、下記電子機器(カプセル型内視鏡10100および車両等の移動体)にも応用することが可能である。
【0139】
<6.応用例>
(体内情報取得システムへの応用例)
更に、本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0140】
図17は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る、カプセル型内視鏡を用いた患者の体内情報取得システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【0141】
体内情報取得システム10001は、カプセル型内視鏡10100と、外部制御装置10200とから構成される。
【0142】
カプセル型内視鏡10100は、検査時に、患者によって飲み込まれる。カプセル型内視鏡10100は、撮像機能及び無線通信機能を有し、患者から自然排出されるまでの間、胃や腸等の臓器の内部を蠕動運動等によって移動しつつ、当該臓器の内部の画像(以下、体内画像ともいう)を所定の間隔で順次撮像し、その体内画像についての情報を体外の外部制御装置10200に順次無線送信する。
【0143】
外部制御装置10200は、体内情報取得システム10001の動作を統括的に制御する。また、外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100から送信されてくる体内画像についての情報を受信し、受信した体内画像についての情報に基づいて、表示装置(図示せず)に当該体内画像を表示するための画像データを生成する。
【0144】
体内情報取得システム10001では、このようにして、カプセル型内視鏡10100が飲み込まれてから排出されるまでの間、患者の体内の様子を撮像した体内画像を随時得ることができる。
【0145】
カプセル型内視鏡10100と外部制御装置10200の構成及び機能についてより詳細に説明する。
【0146】
カプセル型内視鏡10100は、カプセル型の筐体10101を有し、その筐体10101内には、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、給電部10115、電源部10116、及び制御部10117が収納されている。
【0147】
光源部10111は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、撮像部10112の撮像視野に対して光を照射する。
【0148】
撮像部10112は、撮像素子、及び当該撮像素子の前段に設けられる複数のレンズからなる光学系から構成される。観察対象である体組織に照射された光の反射光(以下、観察光という)は、当該光学系によって集光され、当該撮像素子に入射する。撮像部10112では、撮像素子において、そこに入射した観察光が光電変換され、その観察光に対応する画像信号が生成される。撮像部10112によって生成された画像信号は、画像処理部10113に提供される。
【0149】
画像処理部10113は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサによって構成され、撮像部10112によって生成された画像信号に対して各種の信号処理を行う。画像処理部10113は、信号処理を施した画像信号を、RAWデータとして無線通信部10114に提供する。
【0150】
無線通信部10114は、画像処理部10113によって信号処理が施された画像信号に対して変調処理等の所定の処理を行い、その画像信号を、アンテナ10114Aを介して外部制御装置10200に送信する。また、無線通信部10114は、外部制御装置10200から、カプセル型内視鏡10100の駆動制御に関する制御信号を、アンテナ10114Aを介して受信する。無線通信部10114は、外部制御装置10200から受信した制御信号を制御部10117に提供する。
【0151】
給電部10115は、受電用のアンテナコイル、当該アンテナコイルに発生した電流から電力を再生する電力再生回路、及び昇圧回路等から構成される。給電部10115では、いわゆる非接触充電の原理を用いて電力が生成される。
【0152】
電源部10116は、二次電池によって構成され、給電部10115によって生成された電力を蓄電する。図17では、図面が煩雑になることを避けるために、電源部10116からの電力の供給先を示す矢印等の図示を省略しているが、電源部10116に蓄電された電力は、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、及び制御部10117に供給され、これらの駆動に用いられ得る。
【0153】
制御部10117は、CPU等のプロセッサによって構成され、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、及び、給電部10115の駆動を、外部制御装置10200から送信される制御信号に従って適宜制御する。
【0154】
外部制御装置10200は、CPU,GPU等のプロセッサ、又はプロセッサとメモリ等の記憶素子が混載されたマイクロコンピュータ若しくは制御基板等で構成される。外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100の制御部10117に対して制御信号を、アンテナ10200Aを介して送信することにより、カプセル型内視鏡10100の動作を制御する。カプセル型内視鏡10100では、例えば、外部制御装置10200からの制御信号により、光源部10111における観察対象に対する光の照射条件が変更され得る。また、外部制御装置10200からの制御信号により、撮像条件(例えば、撮像部10112におけるフレームレート、露出値等)が変更され得る。また、外部制御装置10200からの制御信号により、画像処理部10113における処理の内容や、無線通信部10114が画像信号を送信する条件(例えば、送信間隔、送信画像数等)が変更されてもよい。
【0155】
また、外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100から送信される画像信号に対して、各種の画像処理を施し、撮像された体内画像を表示装置に表示するための画像データを生成する。当該画像処理としては、例えば現像処理(デモザイク処理)、高画質化処理(帯域強調処理、超解像処理、NR(Noise reduction)処理及び/又は手ブレ補正処理等)、並びに/又は拡大処理(電子ズーム処理)等、各種の信号処理を行うことができる。外部制御装置10200は、表示装置の駆動を制御して、生成した画像データに基づいて撮像された体内画像を表示させる。あるいは、外部制御装置10200は、生成した画像データを記録装置(図示せず)に記録させたり、印刷装置(図示せず)に印刷出力させてもよい。
【0156】
以上、本開示に係る技術が適用され得る体内情報取得システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、撮像部10112に適用され得る。これにより、検出精度が向上する。
【0157】
(内視鏡手術システムへの応用例)
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0158】
図18は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0159】
図18では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0160】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0161】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0162】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0163】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0164】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0165】
光源装置11203は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0166】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0167】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0168】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0169】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0170】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0171】
図19は、図18に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0172】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0173】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0174】
撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0175】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0176】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0177】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0178】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0179】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0180】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0181】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0182】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0183】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0184】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0185】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0186】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0187】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0188】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部11402に適用され得る。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、検出精度が向上する。
【0189】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0190】
(移動体への応用例)
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0191】
図20は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0192】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図20に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0193】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0194】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0195】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0196】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0197】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0198】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0199】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0200】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0201】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図20の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0202】
図21は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0203】
図21では、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0204】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0205】
なお、図21には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0206】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0207】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0208】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0209】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0210】
<7.実施例>
次に、本開示の実施例について詳細に説明する。
【0211】
(実験例1)
石英基板上にスパッタリング装置を用いて厚さ100nmのITO膜を成膜した。このITO膜を、フォトリソグラフィーおよびエッチングによってパターニングし、ITO電極(下部電極)を形成した。続いて、ITO電極付きの石英基板をUV/オゾン処理にて洗浄した後、石英基板を真空蒸着機に移し、1×10-5Pa以下に減圧された状態で基板ホルダを回転させながら石英基板上に、抵抗加熱法を用いて有機材料の成膜を行った。まず、下記式(3)に示した電子ブロッキング材料を、基板温度0℃にて10nmの厚みで成膜し、電子ブロック層を形成した。次に、下記式(1-1)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体と、C60フラーレンと(下記式(2))を、基板温度40℃にて、それぞれ、0.50Å/秒、0.25Å/秒の成膜レートで、混合層の厚さが230nmとなるように成膜し、光電変換層を形成した。続いて、下記式(4)に示した正孔ブロッキング材料を、基板温度0℃にて10nmの厚みで成膜し、正孔ブロック層を形成した。最後に、石英基板をスパッタリング装置に移し、正孔ブロック層上に、ITOを50nmの厚みで成膜し、上部電極を形成した。以上の作製方法により、1mm×1mmの光電変換領域を有する光電変換素子(実験例1)を作製した。作製した光電変換素子は、窒素(N2)雰囲気下において150℃、210分のアニールを行った。
【0212】
【化3】
【0213】
【化4】
【0214】
(実験例2)
実験例1で用いた式(1-1)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体の代わりに下記式(1-2)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体を用いた以外は、実験例1と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例2)を作製した。
【0215】
【化5】
【0216】
(実験例3)
実験例1で用いた式(1-1)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体の代わりに下記式(1-3)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体を用いた以外は、実験例1と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例3)を作製した。
【0217】
【化6】
【0218】
(実験例4)
実験例1で用いた式(1-1)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体の代わりに下記式(1-4)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体を用いた以外は、実験例1と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例4)を作製した。
【0219】
【化7】
【0220】
(実験例5)
実験例1で用いた式(1-1)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体の代わりに下記式(1-5)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体を用いた以外は、実験例1と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例5)を作製した。
【0221】
【化8】
【0222】
(実験例6)
実験例1で用いた式(1-1)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体の代わりに下記式(1-6)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体を用いた以外は、実験例1と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例6)を作製した。
【0223】
【化9】
【0224】
(実験例7)
実験例1で用いた式(1-1)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体の代わりに下記式(1-7)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体を用いた以外は、実験例1と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例7)を作製した。
【0225】
【化10】
【0226】
(実験例8)
実験例1で用いた式(1-1)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体の代わりに下記式(1-8)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体を用いた以外は、実験例1と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例8)を作製した。
【0227】
【化11】
【0228】
(実験例9)
実験例1で用いた式(1-1)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体の代わりに下記式(1-9)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体を用いた以外は、実験例1と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例9)を作製した。
【0229】
【化12】
【0230】
(実験例10)
実験例1で用いた式(1-1)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体の代わりに下記式(1-10)に示したベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体を用いた以外は、実験例1と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例10)を作製した。
【0231】
【化13】
【0232】
(実験例11)
式(1-1)および式(1-7)に示した2種類のベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体と、C60フラーレンと(上記式(2))とを用いて光電変換層を形成した以外は、実験例1と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例11)を作製した。
【0233】
(実験例12)
式(1-2)および式(1-7)に示した2種類のベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体と、C60フラーレンと(上記式(2))とを用いて光電変換層を形成した以外は、実験例2と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例12)を作製した。
【0234】
(実験例13)
式(1-3)および式(1-7)に示した2種類のベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体と、C60フラーレンと(上記式(2))とを用いて光電変換層を形成した以外は、実験例3同様の方法を用いて光電変換素子(実験例13)を作製した。
【0235】
(実験例14)
式(1-4)および式(1-7)に示した2種類のベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体と、C60フラーレンと(上記式(2))とを用いて光電変換層を形成した以外は、実験例4と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例14)を作製した。
【0236】
(実験例15)
式(1-5)および式(1-7)に示した2種類のベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体と、C60フラーレンと(上記式(2))とを用いて光電変換層を形成した以外は、実験例5と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例15)を作製した。
【0237】
(実験例16)
式(1-6)および式(1-7)に示した2種類のベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体と、C60フラーレンと(上記式(2))とを用いて光電変換層を形成した以外は、実験例6と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例16)を作製した。
【0238】
(実験例17)
式(1-8)および式(1-7)に示した2種類のベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体と、C60フラーレンと(上記式(2))とを用いて光電変換層を形成した以外は、実験例8と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例17)を作製した。
【0239】
(実験例18)
式(1-9)および式(1-7)に示した2種類のベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体と、C60フラーレンと(上記式(2))とを用いて光電変換層を形成した以外は、実験例9と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例18)を作製した。
【0240】
(実験例19)
式(1-10)および式(1-7)に示した2種類のベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体と、C60フラーレンと(上記式(2))とを用いて光電変換層を形成した以外は、実験例10と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例19)を作製した。
【0241】
(実験例20)
下記式(5)に示したDNTTと、C60フラーレンと(上記式(2))とを用いて光電変換層を形成した以外は、実験例1と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例20)を作製した。
【0242】
【化14】
【0243】
(実験例21)
下記式(6)に示したDPh-BTBTと、C60フラーレンと(上記式(2))とを用いて光電変換層を形成した以外は、実験例1と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例20)を作製した。
【0244】
【化15】
【0245】
実験例1~実験例21において作成した光電変換素子の外部量子効率(EQE)および応答時間を以下の方法を用いて評価した。その結果を各実験例で用いたベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体と共に表1にまとめた。
【0246】
青色LED光源からバンドパスフィルターを介して光電変換素子に照射される光の波長を450nm、光量を1.62μW/cm2とし、半導体パラメータアナライザを用いて光電変換素子の電極間に印加されるバイアス電圧を制御し、上部電極に対して下部電極に印加する電圧を掃引することで電流-電圧曲線を得た。短絡状態での明電流値および暗電流値を計測してEQEを算出した。更に、光電変換素子の電極間に印加されるバイアス電圧を制御し、上部電極に対して下部電極に-2.6Vの電圧を印可した状態で、波長450nm、光量1.62μW/cm2の矩形上の光パルスを光電変換素子に照射し、オシロスコープを用いて電流の減衰波形を観測した。光パルス照射直後に、電流が光パルス照射時の電流から3%まで減衰する時間を、応答速度の指標である応答時間とする。
【0247】
【表1】
【0248】
表1から、上記一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を用いて光電変換層を形成した実験例1~実験例19では、一般的な材料を用いて光電変換層を形成した実験例20,実験例21と、同程度のEQEが得られることがわかった。また、上記一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を用いて光電変換層を形成した実験例1~実験例19では、一般的な材料を用いて光電変換層を形成した実験例20,実験例21と比較して、応答時間が大幅に向上することがわかった。よって、記一般式(1)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を用いて光電変換層を形成することにより、高いEQEを保持しつつ、光応答性を向上させることができることがわかった。
【0249】
以上、第1~第4の実施の形態および実施例ならびに適用例を挙げて説明したが、本開示内容は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。また、これらの有機光電変換部および無機光電変換部の数やその比率も限定されるものではなく、有機光電変換部だけで複数色の色信号が得られるようにしてもよい。
【0250】
更に、上記実施の形態等では、下部電極21を構成する複数の電極として、読み出し電極21Aおよび蓄積電極21Bの2つの電極から構成した例を示したが、この他に、転送電極あるいは排出電極等の3つあるいは4つ以上の電極を設けるようにしてもよい。
【0251】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0252】
なお、本開示は、以下のような構成であってもよい。以下の構成の本技術によれば、上記式(1-1)~式(1-10)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を少なくとも1種用いて有機光電変換層を形成するようにしたので、有機光電変換層を間に対向配置された第1電極および第2電極へのキャリアの移動度が向上する。よって、外部量子効率および光応答性を向上させることが可能となる。
[1]
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられると共に、第1の有機半導体材料として下記式(1-1)~式(1-10)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を少なくとも1種含む有機光電変換層と
を備えた光電変換素子。
【化1】
[2]
前記有機光電変換層は、さらに第2の有機半導体材料としてフラーレンまたはフラーレン誘導体を含む、前記[1]に記載の光電変換素子。
[3]
前記有機光電変換層は、さらに第3の有機半導体材料を含む、前記[1]または[2]に記載の光電変換素子。
[4]
前記第3の有機半導体材料は、400nm以上700nm以下のいずれかの波長の光を吸収する、前記[3]に記載の光電変換素子。
[5]
前記有機光電変換層は、400nm以上700nm以下の範囲の全ての波長の光を吸収する、前記[1]乃至[4]のうちのいずれかに記載の光電変換素子。
[6]
前記第1電極は複数の電極からなる、前記[1]乃至[5]のうちのいずれかに記載の光電変換素子。
[7]
前記第1電極と前記有機光電変換層との間に、さらに第1の電荷ブロック層が設けられている、前記[1]乃至[6]のうちのいずれかに記載の光電変換素子。
[8]
前記有機光電変換層と前記第2電極との間に、さらに、第2の電荷ブロック層が設けられている、前記[1]乃至[7]のうちのいずれかに記載の光電変換素子。
[9]
1または複数の有機光電変換部がそれぞれ設けられている複数の画素を備え、
前記有機光電変換部は、
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられると共に、第1の有機半導体材料として下記式(1-1)~式(1-10)で表されるベンゾチエノベンゾチオフェン系化合物を少なくとも1種含む有機光電変換層と
を有する撮像装置。
【化2】
[10]
各画素には、1または複数の前記有機光電変換部と、前記有機光電変換部とは異なる波長域の光電変換を行う1または複数の無機光電変換部とが積層されている、前記[9]に記載の撮像装置。
[11]
前記無機光電変換部は、半導体基板に埋め込み形成され、
前記有機光電変換部は、前記半導体基板の第1の面側に形成されている、前記[10]に記載の撮像装置。
[12]
前記半導体基板は前記第1の面と対向する第2の面を有し、前記第2の面側に多層配線層が形成されている、前記[11]に記載の撮像装置。
[13]
前記有機光電変換部は青色光の光電変換を行い、
前記半導体基板内に、緑色光の光電変換を行う無機光電変換部と、赤色光の光電変換を行う無機光電変換部とが積層されている、前記[11]または[12]に記載の撮像装置。
[14]
各画素では、互いに異なる波長域の光電変換を行う複数の前記有機光電変換部が積層されている、前記[9]乃至[13]のうちのいずれかに記載の撮像装置。
【0253】
本出願は、日本国特許庁において2019年3月28日に出願された日本特許出願番号2019-062367号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願の全ての内容を参照によって本出願に援用する。
【0254】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21