(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】バリア性包装材料
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20241217BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20241217BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B27/20 Z
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2021539838
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2020026048
(87)【国際公開番号】W WO2021029156
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-06-21
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】今泉 淑希子
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 友和
【審査官】橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222151(JP,A)
【文献】特開平07-251475(JP,A)
【文献】国際公開第2018/187438(WO,A1)
【文献】特開2004-276301(JP,A)
【文献】特開2002-030160(JP,A)
【文献】特開2002-030161(JP,A)
【文献】国際公開第2009/123200(WO,A1)
【文献】特開2000-254994(JP,A)
【文献】特開昭60-230851(JP,A)
【文献】特開2008-044260(JP,A)
【文献】特開2018-149779(JP,A)
【文献】特開平11-334018(JP,A)
【文献】特開2019-014043(JP,A)
【文献】特開平10-166516(JP,A)
【文献】国際公開第2019/088265(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリアフィルムと、シーラント層とを備えるバリア性包装材料であって、
前記バリアフィルムが
基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の面に設けられた無機酸化物層と、
前記無機酸化物層上に接して設けられた耐変形バリアコート層と、
を備え、
前記耐変形バリアコート層が水酸基含有高分子化合物と
アスペクト比50~150の水膨潤性雲母とを含み、
前記耐変形バリアコート層の全質量を100質量部とすると、前記耐変形バリアコート層における前記水酸基含有高分子化合物の含有量が65質量部~95質量部であり且つ前記水膨潤性雲母の含有量が5質量部~35質量部であり、
前記基材フィルムがポリエチレンフィルムであり且つ前記シーラント層がポリエチレン樹脂で構成されている、バリア性包装材料。
【請求項2】
バリアフィルムとシーラント層とを備えるバリア性包装材料であって、
前記バリアフィルムが
基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の面に設けられた無機酸化物層と、
前記無機酸化物層上に接して設けられた耐変形バリアコート層と、
を備え、
前記耐変形バリアコート層が水酸基含有高分子化合物と
アスペクト比50~150の水膨潤性雲母とを含み、
前記耐変形バリアコート層の全質量を100質量部とすると、前記耐変形バリアコート層における前記水酸基含有高分子化合物の含有量が65質量部~95質量部であり且つ前記水膨潤性雲母の含有量が5質量部~35質量部であり、
前記基材フィルムがポリプロピレンフィルムであり且つ前記シーラント層がポリプロピレン樹脂で構成されている、バリア性包装材料。
【請求項3】
前記耐変形バリアコート層における前記水膨潤性雲母の含有量が20質量部未満である、請求項1又は2に記載のバリア性包装材料。
【請求項4】
前記基材フィルムは、フィルム平面上第一方向と、第一方向と直
交する第二方向において、100℃、15分での熱収縮率が2%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のバリア性包装材料。
【請求項5】
前記基材フィルムは、フィルム平面上第一方向と、第一方向と直
交する第二方向において、120℃、15分での熱収縮率が5%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のバリア性包装材料。
【請求項6】
前記基材フィルムと、前記無機酸化物層との間に密着性向上層を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のバリア性包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包装材料に用いられることができ、水蒸気及び/又は酸素を制限するためのガスバリアフィルムに関する。包装材料は、乾燥食品、菓子、パン、珍味などの食品、あるいは、錠剤、粉末薬、湿布、貼付剤などの医薬品を包装するためのものである(もちろん、他の物品も包装することができる。)。より詳しくは、本開示は、高いガスバリア性があり、内容物の視認も可能とする透明性を有する用途のための包装分野に用いられるバリアフィルムに関する。また、本開示は、このバリアフィルムを備える包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムは食品やそのほかの内容物を包装するために用いられている。例えば、特許文献1は、食品包装用のバリアフィルムを開示している。特許文献2は、ポリエチレンフィルム上に、金属や金属酸化物層を積層したフィルムを開示している。特許文献3は、基材フィルムと、水溶性高分子及び水膨潤性雲母を含むコーティング層とを備えるガスバリアフィルムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第10066093号明細書
【文献】米国公開特許2016/0039181号明細書
【文献】国際公開第2019/088265号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、海洋プラスチックごみ問題等に端を発する環境意識の高まりから、プラスチック材料の分別回収と再資源化の更なる高効率化が求められるようになってきている。すなわち、従来、様々な異種材料を組み合わせることで高性能化を図ってきた軟包材においても、モノマテリアル化が求められるようになってきた。しかしながら、ポリオレフィン系樹脂を用いて軟包材のモノマテリアル化を実現しようとすると、良好なバリア性を得ることが困難であるのが実情である。
【0005】
例えば、商品を収容した状態の軟包材は製造及び流通の過程で折れ曲がったり、軟包材同士が擦れ合ったりする。このような過程を経ても軟包材はガスバリア性を維持している必要がある。包装材料に求められるこの性質を本明細書において「耐虐待性」という。バリアフィルムの優れた耐虐待性を実現するには、基材フィルムの変形にバリアコート層が十分に追従できるように、バリアコート層の軟らかさを調整すること、つまり、バリアコート層に耐変形性を付与することが有用であるとの知見を本発明者らは得た。
【0006】
本開示は、包装材料の優れたリサイクル性を実現するのに有用であり且つ優れた耐虐待性を有するバリアフィルム及びバリア性包装材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第一態様に係るバリアフィルムは、ポリオレフィン系樹脂を含む基材フィルムと、基材フィルムの一方の面に設けられた無機酸化物層と、無機酸化物層上に接して設けられた耐変形バリアコート層とを備え、耐変形バリアコート層は水酸基含有高分子化合物と水膨潤性雲母とを含み、耐変形バリアコート層の全質量を100質量部とすると、耐変形バリアコート層における水膨潤性雲母の含有量が5質量部~35質量部である。
【0008】
第一態様に係るバリアフィルムによれば、無機酸化物層及び耐変形バリアコート層がバリア層として機能し、優れたガスバリア性が発揮される。耐変形バリアコート層は水膨潤性雲母の含有量が上記範囲であることで耐変形バリアコート層は基材フィルムの変形に追従できるため、耐変形バリアコート層の表面に設けられた無機酸化物層を安定的に保護することができる。このため、上記バリアフィルムは優れた耐虐待性を有する。
【0009】
第一態様に係るバリアフィルムによれば、基材フィルムがポリオレフィン系樹脂を含むため、ポリオレフィン系樹脂を含むシーラント層と併用されることで、包装材料のモノマテリアル化を実現できる。なお、本開示において、モノマテリアルの包装材料とは、特定の材料(例えば、ポリオレフィン系樹脂)の質量比率が90質量%以上である包装材料をいう。
【0010】
本開示の第二態様に係るバリアフィルムは、ポリエチレンを含む基材フィルムと、水酸基含有高分子化合物を含む耐変形バリアコート層とを備える積層フィルムである。このバリアフィルムによれば、耐変形バリアコート層がバリア層として機能し、優れたガスバリア性が発揮される。耐変形バリアコート層が基材フィルムの変形に追従できるため、優れた耐虐待性を有する。また、このバリアフィルムによれば、基材フィルムがポリエチレンを含むため、ポリエチレンを含むシーラント層と併用されることで、包装材料のモノマテリアル化を実現できる。
【0011】
本開示の一側面に係るバリア性包装材料は、上記第一又は第二態様に係るバリアフィルムと、ポリオレフィン系樹脂を含むシーラント層とを備える。モノマテリアル化の実現の観点から、シーラント層は基材フィルムと同じプラスチック材料であることが好ましい。例えば、基材フィルムがポリエチレンフィルムである場合にはシーラント層もポリエチレンフィルムであることが好ましく、基材フィルムがポリプロピレンフィルムである場合にはシーラント層もポリプロピレンフィルムであることが好ましい。インク層は、例えば、バリアフィルムの耐変形バリアコート層上に設けられる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、包装材料の優れたリサイクル性を実現するのに有用であり且つ優れた耐虐待性を有するバリアフィルム及びバリア性包装材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の第一実施形態に係るバリアフィルムの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の第二実施形態に係るバリアフィルムの構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の第三実施形態に係るバリアフィルムの構成を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の第四実施形態に係るバリアフィルムの構成を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係る包装材料の構成を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、熱収縮率の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施形態を以下に示す。本発明は必ずしも以下の実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態は例示的なものであり、当業者は以下に説明する以外の方法で本発明を実施する方法を理解することができる。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
<バリアフィルム>
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態に係るバリアフィルムの構成を模式的に示す断面図である。この図に示すバリアフィルム10Aは、少なくともポリエチレンを含む基材フィルム1と、基材フィルムの一方の面に設けられたバリア層としての耐変形バリアコート層3Aを備える。耐変形バリアコート層3Aは少なくとも水酸基含有高分子化合物を含む。
【0016】
基材フィルム1は、ポリエチレンを含むプラスチックフィルムであり、例えば、ポリエチレンを50%以上含む材料とする。ポリエチレンとはエチレンの単独重合体、又はエチレンと5mol%以下のα-オレフィレン単量体との共重合体を意味する。ポリエチレン以外の樹脂材料は少なくともポリエチレン樹脂としてのリサイクルの可能性を排除しない限り、混合することができる。基材フィルム1はポリエチレンとしてのリサイクル可能な材料であることが好ましい。基材フィルム1はバイオマス由来又はリサイクル品のポリエチレンを含んでもよい。なお、ここでは基材フィルム1がポリエチレンフィルムである場合を例示するが、基材フィルム1はポリエチレン以外のオレフィン系樹脂フィルムであってもよい。
【0017】
ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)に分類されるものが使用できる。LDPEとは、密度が0.910g/cm3以上且つ0.925g/cm3以下のポリエチレンである。MDPEとは、密度が0.926g/cm3以上且つ0.940g/cm3以下のポリエチレンである。HDPEとは、密度が0.941g/cm3以上且つ0.965g/cm3以下のポリエチレンである。LDPEは、例えば、1000気圧以上且つ2000気圧未満の高圧でエチレンを重合することにより得られる。MDPE及びHDPEは、例えば、1気圧以上且つ1000気圧未満の中圧又は低圧でエチレンを重合することにより得られる。なお、MDPE及びHDPEは、エチレンとα-オレフィンとの共重合体を部分的に含んでいてもよい。
【0018】
エチレンとα-オレフィンとの共重合体は、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEとも称する)である。LLDPEは、中圧又は低圧でエチレンを重合することにより得られる直鎖状ポリマーにα-オレフィンを共重合させて短鎖分岐を導入することによって得られる。α-オレフィンの例としては、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン、オクテン-1などを挙げることができる。LLDPEの密度は、例えば0.915g/cm3以上且つ0.945g/cm3以下である。
【0019】
基材フィルム1は単層フィルムであっても多層のフィルムであってもよい。耐熱性の観点から、HDPEの単層フィルム、又は基材フィルム1を構成する層として最も厚いコア層にHDPEを用いてもよい。また、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、中和剤などの添加物を含んでいてもよい。多層の基材フィルムとする場合は、例えばバリア層を積層する側の層には滑剤を含まないようにしてもよい。
【0020】
基材フィルム1は、熱変形によるバリア層の劣化を抑制するために、フィルム平面上第一方向と、第一方向と直交する第二方向において、100℃、15分での熱収縮率が2%以下であってもよい。第一方向と直交する第二方向は、例えばMD(樹脂流れ方向)、TD(垂直方向)である。また、120℃、15分での熱収縮率が5%以下であってもよく、80℃、15分での熱収縮率が1%以下であってもよい。
【0021】
基材フィルム1は、未延伸フィルムであってもよく、一軸延伸配向フィルム又は二軸延伸配向フィルムであってもよく、表面処理(コロナ放電処理など)やアンカーコート又はアンダーコート処理したフィルムであってもよい。基材フィルム1のコーティングされる面(皮膜が形成される面)に、コロナ処理、低温プラズマ処理、大気圧プラズマなどを施してもよい。これにより、塗液に対する良好な濡れ性と、皮膜に対する接着強度とが得られる。
【0022】
基材フィルム1の厚さは、包装材料としての適性や他の皮膜の積層適性を考慮しつつ、価格及び用途によって適宜選択される。基材フィルム1の厚さは、実用的には3μm~200μmであり、好ましくは5μm~120μmであり、より好ましくは10μm~100μmである。
【0023】
基材フィルム1は、包装材料の一方又は両方の最外面がヒートシール性を有する面となるように、基材フィルム自体がヒートシール性を有していてもよい。基材フィルム自体がヒートシール性を有していることで、基材フィルム1にシーラントフィルムを貼り合わせたりシーラント層を設けたりすることなく、包装材料を製造することができる。
【0024】
耐変形バリアコート層3Aは、水酸基含有高分子化合物を含む。水酸基含有高分子化合物としては、具体的には、例えば、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン等の水溶性高分子が挙げられるが、特にポリビニルアルコールはバリア性が優れ、好ましい。
【0025】
耐変形バリアコート層3Aの厚さは、例えば0.05μm~2.0μmの範囲であり、例えば0.1μm~1μmとしてもよいし、0.2μm~6μmとしてもよい。耐変形バリアコート層3Aの厚さは、バリア性が発揮される厚み且つ後述する無機酸化物層への応力を低減できる厚みとすることが好ましい。
【0026】
耐変形バリアコート層3Aは水酸基含有高分子化合物と、水膨潤性雲母とを含んでもよい。耐変形バリアコート層3Aの全質量を100質量部とすると、耐変形バリアコート層3Aにおける水膨潤性雲母の含有量は、例えば20質量部~50質量部で示された近似範囲内である。なお、耐変形バリアコート層3Aは、固形分として水酸基含有高分子化合物及び水膨潤性雲母を含む塗液を使用して形成できる。この塗液の全固形分のうち、水膨潤性雲母の固形分比率は、例えば20質量%~50質量%で示された近似範囲内とすればよい。
【0027】
水膨潤性雲母の面積平均径は、例えば、0.5μm~5μmで示された近似範囲内であり、1.5μm~2.5μmで示された近似範囲内であってもよい。水膨潤性雲母のアスペクト比は、例えば、10以上200以下で示された近似範囲内である。耐変形バリアコート層3Aの厚さは、例えば、0.1μm~1μmで示された近似範囲内であり、0.15μm~0.7μmで示された近似範囲内であってもよい。
【0028】
耐変形バリアコート層3Aは水酸基含有高分子化合物に加え、金属アルコキシド又はその加水分解物、重合物の少なくとも1種類以上を含む組成物を含んでもよい。
【0029】
金属アルコキシドとしては、下記式(1)で表わされる金属アルコキシド及びその加水分解物、又は重合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む組成物から形成されることが好ましい。
M(OR1)m(R2)n-m ・・・(1)
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1~8の1価の有機基であり、メチル基、エチル基等のアルキル基であることが好ましい。MはSi、Ti、Al、Zr等のn価の金属原子を示す。mは1~nの整数である。
【0030】
金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC2H5)4]、トリイソプロポキシアルミニウム[Al(O-iso-C3H7)3]等が挙げられる。金属アルコキシドは、加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であることから、テトラエトキシシラン又はトリイソプロポキシアルミニウムであることが好ましい。
【0031】
金属アルコキシドの加水分解物としては、例えば、テトラエトキシシランの加水分解物であるケイ酸(Si(OH)4)、及び、トリプロポキシアルミニウムの加水分解物である水酸化アルミニウム(Al(OH)3)等が挙げられる。これらは、1種だけでなく、複数種を組み合わせて使用することもできる。上記組成物における金属アルコキシド及びその加水分解物の含有量は、例えば、10質量%~90質量%である。
【0032】
耐変形バリアコート層3Aは、ガスバリア性や包装材料としての強度を損なわない範囲内であれば、各種の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、界面活性剤、及びシランカップリング剤などが挙げられる。
【0033】
耐変形バリアコート層3Aは、公知の湿式コーティング方法により、基材フィルム上に、少なくとも水溶性高分子を構成成分として含む塗液を塗工した後、加熱乾燥して形成される。
【0034】
[第二実施形態]
図2は、第二実施形態に係るバリアフィルムの構成を模式的に示す断面図である。この図に示すバリアフィルム10Bは、バリア層が二層構造である点でバリアフィルム10Aと相違する。すなわち、バリア層2Bは、耐変形バリアコート層3Bと無機酸化物層4とによって構成されている。無機酸化物層4は耐変形バリアコート層3Bと基材フィルム1の間に配置されている。無機酸化物層4とこれに接する耐変形バリアコート層3Bとによってバリア層2Bを構成することで、バリア層の耐屈曲性や、バリア性の向上が見込まれる。なお、バリア層が多層構造である場合、耐変形バリアコート層は例えばバリア層の最も外側に設けられる。
【0035】
バリア層2Bが無機酸化物層4を含む場合、第一実施形態に係る耐変形バリアコート層3Aと比較し、耐変形バリアコート層3Bは水膨潤性雲母の含有量が少ないことが好ましい。すなわち、耐変形バリアコート層3Bの全質量を100質量部とすると、耐変形バリアコート層3Bにおける水膨潤性雲母の含有量は、例えば、5質量部~35質量部で示された近似範囲内である。この値は7質量部以上、10質量部以上又は12質量部以上であってもよい。この値は30質量部以下、20質量部以下もしくは20質量部未満又は17質量部以下であってもよい。特に、この含有量は10質量部未満20質量部以下の範囲又は15質量部であってもよい。なお、耐変形バリアコート層3Bは、固形分として水酸基含有高分子化合物及び水膨潤性雲母を含む塗液を使用して形成できる。この塗液の全固形分のうち、水膨潤性雲母の固形分比率が所望の範囲となるように調整すればよい。
【0036】
耐変形バリアコート層3Bの水膨潤性雲母の含有量が上記の下限値以上であることで、水膨潤性雲母による迷路効果によって優れたガスバリア性が発揮されるとともに耐変形バリアコート層3Bに優れた耐湿性を付与できる。他方、水膨潤性雲母の含有量が上限値以下であることで耐変形バリアコート層3Bが基材フィルム1の変形に追従できるため、無機酸化物層4を安定的に保護することができ、優れた耐虐待性が発揮される。また、水膨潤性雲母の含有量が上記範囲であると、無機酸化物層4と耐変形バリアコート層3Bの優れた密着強度が達成される。
【0037】
耐変形バリアコート層3Bの厚さなどの特性(水膨潤性雲母の含有量を除く。)は耐変形バリアコート層3Aと同様とすればよい。
【0038】
バリア層2Bが無機酸化物層4を含むことで、酸素や水蒸気に対するバリア性を更に向上させることが可能である。無機酸化物層4は金属酸化物を含み、金属酸化物としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、イットリウム、タンタル、ケイ素、マグネシウム等の金属の酸化物が挙げられる。金属酸化物は、安価でバリア性能に優れることから、酸化アルミウムや酸化ケイ素が好ましく、特に水蒸気バリア性が良い酸化ケイ素が特に好ましい。また、酸化ケイ素はその組成SiOxにおいてxは1.0~2.0であってもよい。xが1.0以上であると、良好なガスバリア性が得られやすい傾向がある。
【0039】
無機酸化物層4の形成方法は真空成膜であることが好ましい。真空成膜としては、物理気相成長法及び化学気相成長法が挙げられる。物理気相成長法としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。また、化学気相成長法としては、例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等が挙げられる。
【0040】
無機酸化物層4の厚さは、10nm~300nmであることが好ましく、20nm~100nmであることがより好ましい。無機酸化物層4の厚さが10nm以上であることにより、均一な膜が得られやすくガスバリア性が得られやすくなる傾向がある。一方、無機酸化物層の厚さが300nm以下であることにより、柔軟性を保持させることができ、成膜後の折り曲げ、引張等の外力による亀裂等が生じにくくなる傾向がある。
【0041】
[第三実施形態]
図3は、第三実施形態に係るバリアフィルムの構成を模式的に示す断面図である。この図に示すバリアフィルム10Cは、バリア層2Bと基材フィルム1との間に密着性向上層5が設けられている点でバリアフィルム10Bと相違する。密着性向上層5は、基材フィルム1に対するバリア層2Bの密着性を向上させる層である。特に、密着性向上層5が無機酸化物層4と接するように構成されている場合には、無機酸化物層4が形成される面が密着性向上層5によって平坦化されるため、より一層のバリア性の向上が見込まれる。
【0042】
密着性向上層5を構成する材料は、例えば、溶剤溶解性又は水溶性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂又はアルキルチタネート等から選択されることが好ましい。これらは単独又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0043】
密着性向上層5は、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法などの周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式によって形成することができる。乾燥条件については、一般的に使用される条件で構わない。また、反応を促進させるために、高温のエージング室などに数日放置して乾燥させる方法を用いてもよい。密着性向上層5の厚さは、例えば0.01μm~1.0μmの範囲である。
【0044】
[第四実施形態]
図4は、第四実施形態に係るバリアフィルムの構成を模式的に示す断面図である。この図に示すバリアフィルム10Dは、少なくとも基材フィルム11と、基材フィルム11の一方の面に設けられたバリア層12とを備える。バリア層12は、少なくとも無機酸化物層14と、無機酸化物層14に接して設けられた耐変形バリアコート層13を含む。バリアフィルム10Dの各構成は、矛盾のない限り、上述の実施形態の構成を援用可能である。
【0045】
基材フィルム11は、プラスチック材料からなる。プラスチック材料からなる基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びプロピレン-エチレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6及びナイロン66の脂肪族系ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミドなどの芳香族ポリアミドなどのポリアミド系樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、及びエチレン-ビニルアルコール共重合体などのビニル系樹脂、ポリメチルメタクリレート及びポリアクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体などのアクリル系樹脂、セロファンなどからなるフィルムが挙げられる。これらの樹脂は、1種又は2種以上が組み合わせられて用いられる。
【0046】
これらの中でも、基材フィルム11としては、ポリオレフィン系樹脂フィルム(特に、ポリプロピレンフィルムなど)、ポリエステル系樹脂フィルム(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム)、及びポリアミド系樹脂フィルム(特に、ナイロンフィルム)などが好適に用いられる。
【0047】
基材フィルム11としては、単一の樹脂で構成された単層フィルムや複数の樹脂を用いた単層又は積層フィルムが用いられる。また、これらの樹脂を他の基材(金属、木材、紙、セラミックスなど)に積層した積層基材を用いてもよい。
【0048】
基材フィルム11は、未延伸フィルムであってもよく、一軸延伸配向フィルム又は二軸延伸配向フィルムであってもよく、表面処理(コロナ放電処理など)やアンカーコート又はアンダーコート処理したフィルムであってもよい。基材フィルム11のコーティングされる面(皮膜が形成される面)に、コロナ処理、低温プラズマ処理、大気圧プラズマなどを施すことにより、塗液に対する良好な濡れ性と、皮膜に対する接着強度とが得られる。
【0049】
基材フィルム11の厚さは、特に限定されるものではなく、包装材料としての適性や他の皮膜の積層適性を考慮しつつ、価格及び用途によって適宜選択される。基材フィルムの厚さは、実用的には3μm~200μmであり、好ましくは5μm~120μmであり、より好ましくは10μm~100μmである。
【0050】
基材フィルム11は、包装材料の一方又は両方の最外面がヒートシール性を有する面となるように、基材フィルム自体がヒートシール性を有していてもよい。基材フィルム自体がヒートシール性を有していることで、基材フィルムにシーラントフィルムを貼り合わせたりシーラント層を設けたりすることなく、包装材料を製造することができる。
【0051】
無機酸化物層14は上記実施形態の無機酸化物層4と同様のものを適用できる。
【0052】
耐変形バリアコート層13は、少なくとも、水溶性高分子(水酸基含有高分子化合物)と、水膨潤性雲母とを含む。無機酸化物層14の基材と反対の面に接して耐変形バリアコート層13が設けられていることで、基材フィルム11が熱等で変形した場合でも無機酸化物層14のバリア性を耐変形バリアコート層13が補うことで、バリア性を保持することができる。
【0053】
[水溶性高分子]
水溶性高分子は、特定の温度で水に完全に溶解もしくは微分散可能な高分子のことである。水溶性高分子としては、後述する無機層状鉱物の単位結晶層間に侵入、配位(インターカレーション)することが可能な化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリビニルアルコール及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、酸化でんぷん、エーテル化でんぷん、及びデキストリンなどのでんぷん類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、及びポリメタクリル酸又はそのエステル、塩類及びそれらの共重合体、スルホイソフタル酸などの極性基を含有する共重合ポリエステル、ポリヒドロキシエチルメタクリレート及びその共重合体などのビニル系重合体、ウレタン系高分子、あるいは、これらの各種重合体のカルボキシル基などの官能基変性重合体などが挙げられる。
【0054】
水溶性高分子は、例えば鹸化度が95%以上のポリビニルアルコール樹脂である。ポリビニルアルコール樹脂は、鹸化度や重合度が高い程、吸湿膨潤性が低くなる傾向にあり、鹸化度が95%以上の場合、十分なガスバリア性が得られやすい。
【0055】
水溶性高分子がポリビニルアルコール樹脂の場合、ポリビニルアルコール樹脂は、少なくとも1種類がポリビニルアルコール系重合体及びその誘導体であってもよい。
【0056】
ポリビニルアルコール樹脂の重合度は、例えば1100~2300であり、1500~2000であってもよい。ポリビニルアルコール樹脂の重合度が上記範囲内の場合、ガスバリア性及びコーティング層の凝集強度が改善されたフィルムを得ることができる。
【0057】
[水膨潤性雲母]
雲母は、極薄の単位結晶層が重なって1つの層状粒子を形成している無機層状鉱物の一種である。雲母には、天然雲母、合成雲母が含まれる。例えば、白雲母、金雲母、黒雲母、カリウム金雲母、カリウム四ケイ素雲母、カリウムテニオライト、カリウム・フッ素四ケイ素雲母ナトリウム・フッ素四ケイ素雲母、ナトリウム金雲母、ナトリウム四ケイ素雲母、ナトリウムヘクトライトなどが挙げられる。本発明の目的のために、一種類のマイカを使用することができ、又は2種類以上の異なるマイカを一緒に組み合わせることができる。
【0058】
雲母としては、水中で膨潤・へき開するものが好ましく、これらの中でも、特に水への膨潤性を有する水膨潤性雲母が好ましく用いられる。より具体的には、極薄の単位結晶層間に水を配位し、吸収・膨潤する性質を有する合成雲母であり、一般には、Si4+がO2-に対して配位して四面体構造を構成する層と、Al3+、Mg2+、Fe2+、及びFe3+などが、O2-及びOH-に対して配位して八面体構造を構成する層とが、1対1あるいは2対1で結合し、積み重なって層状構造を形成する化合物である。例えば、ナトリウム・フッ素四ケイ素雲母が好ましい。
【0059】
水膨潤性雲母の大きさは、アスペクト比が高いと、フィルムのバリア性が改善されるという観点から、水膨潤性雲母のアスペクト比は、例えば10~200であり、50~150であってもよい。水膨潤性雲母のアスペクト比が上記範囲の場合、ガスバリア性が改善されたフィルムを得られる可能性が高く、同時に、コーティング層の凝集強度、コーティング層の基材への密着強度の低下を防止することができる。
【0060】
また、水膨潤性雲母の面積平均径(MA)は、例えば0.5μm~5μmであり、1μm~3μmであってもよく、1.5μm~2.5μmであってもよい。面積平均径とは、面積で重みづけされた平均粒子径のことである。水膨潤性雲母の面積平均径が上記範囲の場合、水膨潤性雲母が、沈殿することなくコーティング層内でより均一に分散するため、ガスバリア性及び透明性が維持され、又は、改善されたフィルムを得ることができる。
【0061】
水膨潤性雲母として、水膨潤性の合成雲母を用いると、水膨潤性の合成雲母は、水溶性高分子との相溶性が高く、天然系の雲母に比べて不純物が少ないため、不純物に由来するガスバリア性の低下及び耐変形バリアコート層の凝集強度の低下を招くことがない。特定のメカニズムで限定されるものではないが、水膨潤性の合成雲母は、結晶構造内にフッ素原子を有することから、耐変形バリアコート層のガスバリア性の湿度依存性を低く抑えることに寄与すると考えられる。更に、他の水膨潤性の無機層状鉱物に比べて、高いアスペクト比を有することから、迷路効果がより効果的に働き、特にコーティング層のガスバリア性が高く発現するのに寄与する。
【0062】
特に、水溶性高分子がポリビニルアルコール樹脂の場合、水膨潤性の合成雲母は、ポリビニルアルコール樹脂との高い相溶性を有する。加えて、水膨潤性の合成雲母の面積平均径が例えば0.5μm~5μmの場合、更には1μm~3μmの場合、あるいは1.5μm~2.5μmの場合、水膨潤性の合成雲母は、ポリビニルアルコール樹脂とのより高い相溶性を有する。
【0063】
水膨潤性の合成雲母がポリビニルアルコール樹脂とのより高い相溶性を有する場合、より重合度の高いポリビニルアルコールを用いることができる。より重合度の高いポリビニルアルコールを用いることによって、ガスバリア性がより改善されたフィルムを得ることができる。具体的には、水膨潤性の合成雲母の面積平均径が例えば0.5μm~5μmの場合、更には1μm~3μmの場合、あるいは1.5μm~2.5μmの場合、ポリビニルアルコールの重合度を1100以上とすることができ、ガスバリア性がより改善されたフィルムを得ることができる。
【0064】
耐変形バリアコート層13の全質量を100質量部とすると、耐変形バリアコート層13における水膨潤性雲母の含有量は、例えば、5質量部~35質量部で示された近似範囲内である。この値は7質量部以上、10質量部以上又は12質量部以上であってもよい。この値は30質量部以下、20質量部以下もしくは20質量部未満又は17質量部以下であってもよい。特に、この含有量は10質量部以上20質量部未満の範囲又は15質量部であってもよい。なお、耐変形バリアコート層13は、固形分として水酸基含有高分子化合物及び水膨潤性雲母を含む塗液を使用して形成できる。この塗液の全固形分のうち、水膨潤性雲母の固形分比率が所望の範囲となるように調整すればよい。
【0065】
耐変形バリアコート層13の水膨潤性雲母の含有量が上記の下限値以上であることで、水膨潤性雲母による迷路効果によって優れたガスバリア性が発揮されるとともに耐変形バリアコート層3Bに優れた耐湿性を付与できる。他方、水膨潤性雲母の含有量が上限値以下であることで耐変形バリアコート層13が基材フィルム11の変形に追従できるため、無機酸化物層14を安定的に保護することができ、優れた耐虐待性が発揮される。また、水膨潤性雲母の含有量が上記範囲であると、無機酸化物層14と耐変形バリアコート層13の優れた密着強度が達成される。
【0066】
耐変形バリアコート層13は、公知の湿式コーティング方法によって形成することができる。例えば、耐変形バリアコート層13は、少なくとも水溶性高分子及び水膨潤性雲母を主たる構成成分として含む塗液を塗工した後、溶媒成分を乾燥除去して形成される。
【0067】
塗液は、溶媒としては、水を主として、水に溶解あるいは均一に混合する溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールなどのアルコール類、アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、セロソルブ類、カルビトール類、及びアセトニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。
【0068】
用いられる湿式コーティング方法としては、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ダイコート、スクリーン印刷、及びスプレーコートなどが含まれる。これらの湿式コーティング方法を用いて、基材フィルムの一方又は両方の面に、塗液を塗布する。塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、及び赤外線照射など、公知の乾燥方法が用いられる。
【0069】
無機酸化物層14上に形成した耐変形バリアコート層の厚さは、例えば、0.1μm~1μmであってもよく、0.15μm~0.7μmであってもよく、0.2μm~0.5μmであってもよい。耐変形バリアコート層の厚さが0.1μm以上だと、十分なガスバリア性が得られやすい。一方、耐変形バリアコート層の厚さが1μmを超えると、均一な塗膜面を設けることが難しいばかりでなく、乾燥負荷の増大、製造コストの増大につながり好ましくない。
【0070】
無機酸化物層14上に形成した耐変形バリアコート層の厚さは、耐変形バリアコート層に含まれる水膨潤性雲母の平均粒子径を調整することにより、十分なバリア性を保持しながらより薄くすることができる。耐変形バリアコート層に含まれる水膨潤性雲母の平均粒子径を調整することにより、水膨潤性雲母が耐変形バリアコート層内でより均一に分散するからである。例えば、水膨潤性雲母の面積平均径を0.5μm~5μmの範囲、あるいは1μm~3μmの範囲、あるいは1.5μm~2.5μmの範囲とした場合、十分なバリア性を保持しながら耐変形バリアコート層の厚さを1μm以下にすることができる。
【0071】
耐変形バリアコート層13は、ガスバリア性や包装材料としての強度を損なわない範囲内であれば、各種の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、界面活性剤、及びシランカップリング剤などが挙げられる。
【0072】
なお、無機酸化物層14と基材フィルム11の間に密着性向上層5(
図3参照)を設けてもよい。無機酸化物層4が形成される面が密着性向上層5によって平坦化されるため、より一層のバリア性の向上が見込まれる。
【0073】
<バリア性包装材料>
図5は、本実施形態に係る包装材料の構成を模式的に示す断面図である。包装材料100は、バリアフィルム10と、接着層20と、シーラント層30とをこの順序で備える。バリアフィルム10は、基材フィルム1と、バリア層2とを備える。バリアフィルム10のバリア層2とシーラント層30との間に接着層20が設けられている。バリア層2の表面(基材フィルム1側面とは反対側の面)にインク層40が設けられている。
【0074】
バリアフィルム10は、例えば、上記実施形態に係るバリアフィルム10A~10Dのいずれかと同様の構成のものである。
【0075】
接着層20を構成する接着剤としては、積層される各層の材質に応じてアクリル系、ポリエステル系、エチレン-酢酸ビニル系、ウレタン系、塩化ビニル-酢酸ビニル系、塩素化ポリプロピレン系などの接着剤を用いることができる。接着剤として、無溶剤接着剤を使用してもよい。接着層20は、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター等を用いて形成できる。接着剤の塗布量としては、例えば1g/m2~10g/m2である。
【0076】
シーラント層30は、包装材料を用いて内容物を包装する際の接着部として機能する。シーラント層30を構成する材料としては、例えば、未延伸ポリエチレンフィルム、未延伸ポリプロピレンフィルムが挙げられる。シーラント層30の厚さは、例えば15μm~200μmである。
【0077】
シーラント層30は、基材フィルム1と同じプラスチック材料であることが好ましい。例えば、基材フィルム1がポリエチレンフィルムである場合にはシーラント層30もポリエチレンフィルムであることが好ましく、基材フィルム1がポリプロピレンフィルムである場合にはシーラント層30もポリプロピレンフィルムであることが好ましい。ここで、同じプラスチック材料であるとは、基材フィルム1とシーラント層30を構成する主成分のプラスチック材料が同じという意味であり、同一のリサイクルプロセスで再生可能であることを意味する。同一のリサイクルプロセスで再生可能であれば、異なる他の成分が含まれていてもよい。2つの基材フィルムが同じプラスチック材料である場合、包装材料としてリサイクル適性を持たせることが可能となる。シーラント層30はバイオマス由来又はリサイクル品の樹脂材料を含んでもよい。
【0078】
インク層40は、包装袋などとして実用的に用いるため、文字、絵柄等が形成された層である。例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等のインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキにより構成される層である。インクとして、バイオマスインキ、フレキソインキを使用してもよい。なお、基材フィルム1の表面にインク層40を設けてもよい。
【0079】
バリアフィルム10の酸素透過度は、例えば、10cm3/m2・day・atm以下であり、5cm3/m2・day・atm以下とすることができる。バリアフィルム10の水蒸気透過度は、例えば、3g/m2・day以下であり、1.5g/m2・day以下とすることができる。
【0080】
包装材料100の酸素透過度は、例えば、10cm3/m2・day・atm以下であり、5cm3/m2・day・atm以下とすることができる。包装材料100の水蒸気透過度は、例えば、5g/m2・day以下であり、1.5g/m2・day以下とすることができる。包装材料100は、例えば、乾燥内容物、液体内容物、食品、非食品向けの軟包装材として利用することができる。
【0081】
バリアフィルム10の剥離強度(ラミネート強度)は、1N/15mm以上であってもよく、2N/15mm以上であってもよい。この剥離強度は、バリアフィルム10のバリア層2側の面とシーラント層30(又は他のプラスチックフィルム)とを接着層20を介して貼り合わせた際の剥離強度である。この剥離強度は、T型剥離でのはく離接着強さ試験方法(JIS K6854-3、ISO11339)又は180度剥離でのはく離接着強さ試験方法(JIS K6854-2、ISO8510-2)に従って測定された値を意味する。測定試料は、バリアフィルム10を含む積層体を15mm幅の短冊状にカットして作製すればよい。
【0082】
包装材料100のシーラント層30同士をヒートシールした際のヒートシール強度は15N/15mm以上であってもよく、30N/15mm以上であってもよい。このヒートシール強度は、T型剥離でのはく離接着強さ試験方法(JIS K6854-3、ISO11339)に従って測定された値を意味する。測定試料は、ヒートシール後の包装材料100を含む積層体を15mm幅の短冊状にカットして作製すればよい。
【実施例】
【0083】
以下、本開示について実施例及び比較例に基づいて説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
<基材フィルム>
ポリエチレンを含むフィルムA~Cを用意した。
・フィルムA:コア層であるHDPEと、その両面にMDPEを積層したMD延伸フィルム。
・フィルムB:HDPEからなるMD延伸フィルム。
・フィルムC:HDPEからなる未延伸フィルム。
表1にフィルムA~Cの厚さと熱収縮率を示す。
【0085】
【0086】
<耐変形バリアコート層の準備>
下記に示す溶液を用意し、耐変形バリアコート層用の塗液とした。
水酸基含有高分子化合物として、ポリビニルアルコール樹脂(PVA、Selvol-325(鹸化度98~99%、重合度1700)、Sekisui Specialty Chemicals America,LLC.社製)を用いた。ポリビニルアルコール樹脂及び水を混合して、95℃にて加熱し、ポリビニルアルコール樹脂を水に溶解した。この混合物を室温まで冷却した後、最終的な固形分濃度が5質量%となるように、水及びイソプロパノール(質量比は1:1)で希釈し、成分(A)を調製した。
【0087】
水膨潤性雲母として、水膨潤性合成雲母(ソマシフ MEB-3、コープアグリ社製)を用いた。面積粒径が2μmとなるように、ビーズミルを用いて水膨潤性合成雲母を処理した。その後、最終的な固形分濃度が8質量%となるように水を混合し、成分(B)を調製した。
【0088】
成分(A)及び成分(B)を、最終的な耐変形バリアコート層における水膨潤性合成雲母の含有量が15質量%となるように、水及びメタノール(質量比は1:1)で希釈し、耐変形バリアコート層塗液Aを調製した。
【0089】
成分(A)及び成分(B)を、最終的な耐変形バリアコート層における水膨潤性合成雲母の含有量が35質量%となるように、水及びメタノール(質量比は1:1)で希釈し、耐変形バリアコート層塗液Bを調製した。
【0090】
成分(A)及び成分(B)を、最終的な耐変形バリアコート層における水膨潤性合成雲母の含有量が25質量%となるように、水及びメタノール(質量比は1:1)で希釈し、耐変形バリアコート層塗液Cを調製した。
【0091】
成分(A)及び成分(B)を、最終的な耐変形バリアコート層における水膨潤性合成雲母の含有量が22.5質量%となるように、水及びメタノール(質量比は1:1)で希釈し、耐変形バリアコート層塗液Dを調製した。
【0092】
成分(A)及び成分(B)を、最終的な耐変形バリアコート層における水膨潤性合成雲母の含有量が20質量%となるように、水及びメタノール(質量比は1:1)で希釈し、耐変形バリアコート層塗液Eを調製した。
【0093】
成分(A)及び成分(B)を、最終的な耐変形バリアコート層における水膨潤性合成雲母の含有量が5質量%となるように、水及びメタノール(質量比は1:1)で希釈し、耐変形バリアコート層塗液Fを調製した。
【0094】
成分(A)を水及びメタノール(質量比は1:1)で希釈し、バリアコート層塗液Gを調製した。
【0095】
成分(A)及び成分(B)を、最終的な耐変形バリアコート層における水膨潤性合成雲母の含有量が40質量%となるように、水及びメタノール(質量比は1:1)で希釈し、バリアコート層塗液Hを調製した。
【0096】
成分(A)及び成分(B)並びにシランカップリング剤及びテトラエトキシシランを水及びメタノール(質量比は1:1)で希釈し、以下の組成のバリアコート層塗液Iを調製した。
・PVA:30.5質量部
・水膨潤性合成雲母:2.1質量部
・シランカップリング剤:4.4質量部
・テトラエトキシシラン:63.0質量部
【0097】
<バリアフィルムの作製>
(実施例1)
フィルムA上にアクリルポリオールと、イソシアネート化合物と、エポキシ系シランカップリング剤を含む密着層形成用塗布液を塗布し加熱乾燥させ、乾燥後の塗布量が0.1g/m2である密着性向上層を形成した。密着性向上層形成面に、酸化ケイ素(SiOx、x=1.8)を蒸着し、0.03μmの厚さを有する無機酸化物層を形成した。
【0098】
無機酸化物層上に耐変形バリアコート層用塗液Aをグラビアコート法により塗布して乾燥した。これにより、耐変形バリアコート層(厚さ0.3μm)を備えるバリアフィルムを得た。
【0099】
(実施例2)
耐変形バリアコート層用の塗液の塗布量を変更し、耐変形バリアコート層の厚さを0.6μmとしたこと以外は実施例1と同様の工程で実施例2のバリアフィルムを作製した。
【0100】
(実施例3)
基材フィルムをフィルムAに変更した以外は実施例1と同様の工程で実施例3のバリアフィルムを作製した。
【0101】
(実施例4)
耐変形バリアコート層用の塗液の塗布量を変更し、耐変形バリアコート層の厚さを0.6μmとしたこと以外は実施例3と同様の工程で実施例4のバリアフィルムを作製した。
【0102】
(実施例5)
基材フィルムをフィルムCに変更した以外は実施例1と同様の工程で実施例5のバリアフィルムを作製した。
【0103】
(実施例6)
耐変形バリアコート層用の塗液の塗布量を変更し、耐変形バリアコート層の厚さを0.6μmとしたこと以外は実施例5と同様の工程で実施例6のバリアフィルムを作製した。
【0104】
(実施例7)
フィルムC上に、耐変形バリアコート層用塗液Bをグラビアコート法により塗布して乾燥し、厚さ0.3μmの耐変形バリアコート層を形成し、実施例7のバリアフィルムを作製した。
【0105】
<実施例1~7に係るバリアフィルムの評価>
[酸素透過度(等圧法)の測定]
30℃、70%RHの雰囲気下での酸素透過度(cm3/m2・day・atm)を、酸素透過度測定装置MOCON(OX-TRAN2/21、モダンコントロール社製)を用いて測定した。ガスバリアフィルムの酸素透過度を測定した結果を表2に示す。
【0106】
[水蒸気透過度の測定]
40℃、90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(g/m2・day)を、水蒸気過度測定装置PERMATRAN W-3/33 MG(モダンコントロール社製)を用いて測定した。ガスバリアフィルムの水蒸気透過度を測定した結果を表2に示す。
【0107】
[熱収縮率の測定]
基材フィルムから、レターサイズ(8.5in×11in=215.9mm×279.4mm)の試料を切り出し、
図6に示すようにTD及びMDに平行にそれぞれ2点ずつ、7か所プロットした(Tn-Tn’及びMn-Mn’の間隔はいずれも10mmとした)。ガラスプレートに固定せずにフィルムを配置し、オーブンの設定温度を表1の加熱温度に設定し、オーブンで15分間加熱した。取り出したフィルムのTn-Tn’及びMn-Mn’の距離を測定し、Tn-Tn’(加熱後)/Tn-Tn’(加熱前)、Mn-Mn’(加熱後)/Mn-Mn’(加熱前)をそれぞれTD及びMDの熱収縮率とした。
【0108】
[ラミネート強度の測定]
実施例1~7のバリアフィルムに、厚さ60μmのLLDPE(Linear Low Density Polyethylene)フィルムをラミネートし、バリア性包装材料を作製した。このバリア性包装材料は、ドライラミネーション加工により、ポリエステルウレタン系接着剤(タケラックA-525、三井化学社製/タケネートA-52、三井化学社製)を介して、LLDPEフィルムと耐変形バリアコート層とが向かい合うようにLLDPEフィルムをラミネートし、40℃にて48時間養生(エージング)したものである。この包装材料を15mm幅の短冊状にカットし、テンシロン万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製)により、ガスバリア性フィルムを、300mm/分の速度で剥離させて、ラミネート強度を測定した。測定はT型剥離でのはく離接着強さ試験方法(JIS K6854-3、ISO11339)及び180度剥離でのはく離接着強さ試験方法(JIS K6854-2、ISO8510-2)に従って行った。結果を表2に示す。なお、剥離界面はいずれも基材フィルムと耐変形バリアコート層との間で確認された。
【0109】
【0110】
<実施例1及び実施例7に係るバリア性包装材料の評価>
[ヒートシール強度]
実施例1,7に係るバリア性包装材料をそれぞれ二枚準備した。二枚のバリア性包装材料のシーラント層が向き合うように重ね合わせ、ヒートシーラーを用いて160℃、0.2MPa、1秒間の条件でヒートシールした。ヒートシール後の試料を15mm幅の短冊状にカットし、JIS Z0238:1998に記載された「袋のヒートシール強さ試験」に準拠して、ヒートシール強度測定を行った。ヒートシール強度の測定は、テンシロン万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、引張速度300mm/分にて行った。結果を表3に示す。
【0111】
[酸素透過度(等圧法)の測定]
30℃、70%RHの雰囲気下での酸素透過度(cm3/m2・day・atm)を、酸素透過度測定装置MOCON(OX-TRAN2/21、モダンコントロール社製)を用いて測定した。ガスバリアフィルムの酸素透過度を測定した結果を表3の「ラミネート後」の項目に示す。
【0112】
[水蒸気透過度の測定]
40℃、90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(g/m2・day)を、水蒸気過度測定装置PERMATRAN W-3/33 MG(モダンコントロール社製)を用いて測定した。バリア性包装材料の水蒸気透過度を測定した結果を表3の「ラミネート後」の項目に示す。
【0113】
[虐待試験]
実施例1及び実施例7に係るバリア性包装材料を縦295mm×横210mmの大きさに切り出して試料を得た。これらの試料について、以下の虐待試験を行った。すなわち、テスター産業社製のゲルボフレックステスターの固定ヘッドに、試料を直径87.5mm×210mmの円筒状になるよう取り付けた。試料の両端を保持し、初期把持間隔175mmとし、ストロークの87.5mmで440度のひねりを加え、この動作の繰り返し往復運動を速度40回/分で50回行い、屈曲した。虐待試験後の試料について、酸素透過度及び水蒸気透過度を上記の方法によって測定した。結果を表3の「虐待試験後」の項目に示す。
【0114】
【0115】
(実施例8)
基材フィルムを二軸延伸ポリプロピレンフィルム(PP、厚さ20μm、Polo Films社製)に変更し、耐変形バリアコート層用塗液Aに代えて耐変形バリアコート層用塗液Bを用いたこと以外は実施例1と同様の工程で実施例8のバリアフィルムを作製した。
【0116】
(実施例9)
耐変形バリアコート層用塗液Bに代えて耐変形バリアコート層用塗液Cを用いたこと以外は実施例8と同様の工程で実施例9のバリアフィルムを作製した。
【0117】
(実施例10)
耐変形バリアコート層用塗液Bに代えて耐変形バリアコート層用塗液Dを用いたこと以外は実施例8と同様の工程で実施例10のバリアフィルムを作製した。
【0118】
(実施例11)
耐変形バリアコート層用塗液Bに代えて耐変形バリアコート層用塗液Eを用いたこと以外は実施例8と同様の工程で実施例11のバリアフィルムを作製した。
【0119】
(実施例12)
耐変形バリアコート層用塗液Bに代えて耐変形バリアコート層用塗液Aを用いたこと以外は実施例8と同様の工程で実施例12のバリアフィルムを作製した。
【0120】
(実施例13)
耐変形バリアコート層用塗液Bに代えて耐変形バリアコート層用塗液Fを用いたこと以外は実施例8と同様の工程で実施例13のバリアフィルムを作製した。
【0121】
(比較例1)
耐変形バリアコート層用塗液Bに代えてバリアコート層用塗液Gを用いたこと以外は実施例8と同様の工程で比較例1のバリアフィルムを作製した。
【0122】
(比較例2)
耐変形バリアコート層用塗液Bに代えてバリアコート層用塗液Hを用いたこと以外は実施例8と同様の工程で比較例2のバリアフィルムを作製した
【0123】
(比較例3)
耐変形バリアコート層用塗液Bに代えてバリアコート層用塗液Iを用いたこと以外は実施例8と同様の工程で比較例3のバリアフィルムを作製した
【0124】
<バリア性包装材料の作製>
厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP GLC、三井化学東セロ社製)をシーラント層として用意し、実施例8~13及び比較例1~3のバリアフィルムに、それぞれのガスバリアフィルムのバリア層形成面側(バリアコート層表面)に、ドライラミネーション加工により、ポリエステルウレタン系接着剤(タケラックA-525、三井化学社製/タケネートA-52、三井化学社製)を介して、耐変形バリアコート層表面とシーラント層とが向かい合うようにシーラント層をラミネートし、40℃にて48時間養生(エージング)し、実施例8~13及び比較例1~3のバリア性包装材料を得た。
【0125】
<実施例8~13に係るバリアフィルムの評価>
[バリアフィルムの酸素透過度・水蒸気透過度の評価]
実施例8~13に係るバリアフィルムについて、実施例1~7と同様の方法で酸素透過度及び水蒸気透過度測定を行った。結果を表4の「ラミネート前」の項目に示す。また、実施例8~13のバリア性包装材料について、同様の方法で酸素透過度及び水蒸気透過度測定を行った結果を表4の「ラミネート後」の項目に示す。
【0126】
[耐屈曲性の評価]
実施例8~13に係るバリア性包装材料を縦295mm×横210mmの大きさに切り出して試料を得た。これらの試料について、上記と同様にして虐待試験を行った。虐待試験後の試料について、酸素透過度及び水蒸気透過度を上記の方法によって測定した。結果を表4の「虐待試験後」の項目に示す。
【0127】
[ラミネート強度の測定]
実施例8~13に係るバリア性包装材料を15mm幅の短冊状にカットし、テンシロン万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製)により、ガスバリアフィルムとシーラント層との界面で300mm/分の速度で90°剥離させて、ラミネート強度を測定した。測定はT型剥離でのはく離接着強さ試験方法(JIS K6854-3、ISO11339)に従って行った。結果を表4に示す。なお、剥離界面は実施例8~11においては基材フィルムと耐変形バリアコート層との間で確認された。実施例12,13では測定においてフィルムが破断した。
【0128】
[ヒートシール強度]
実施例8~13に係るバリア性包装材料をそれぞれ二枚準備した。二枚のバリア性包装材料のシーラント層が向き合うように重ね合わせ、ヒートシーラーを用いて160℃、0.2MPa、1秒間の条件でヒートシールした。ヒートシール後の試料を15mm幅の短冊状にカットし、JIS Z0238:1998に記載された「袋のヒートシール強さ試験」に準拠して、ヒートシール強度測定を行った。ヒートシール強度の測定は、テンシロン万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、引張速度300mm/分にて行った。結果を表4の「ヒートシール強度」の項目に示す。なお、剥離界面は実施例8~11においては基材フィルムと耐変形バリアコート層との間で確認された。実施例12,13では測定においてフィルムが破断した。
【0129】
【表4】
表中の「-」は未測定であることを意味する。
【0130】
<比較例1~3に係るバリアフィルムの評価>
[バリアフィルムの酸素透過度の評価]
比較例1~3に係るバリアフィルムについて、実施例1~7と同様の方法で酸素透過度測定を行った。結果を表5の「ラミネート前」の項目に示す。
【0131】
[バリアフィルムの水蒸気透過度の評価]
比較例1~3に係るバリアフィルムについて、実施例1~7と同様の方法(バリアコート層の表面をセンサー側(湿度0%側)に向けて測定)で水蒸気透過度測定を行った。結果を表4の「ラミネート前1」の項目に示す。比較例1~3に係るバリアフィルムについて、バリアコート層の表面を高湿度側(湿度90%側)に向けて水蒸気透過度測定を行った。結果を表4の「ラミネート前2」の項目に示す。
【0132】
<比較例1~3に係るバリア性包装材料の評価>
[バリア性包装材料の酸素透過度の評価]
比較例1~3に係るバリア性包装材料について、実施例1~7と同様の方法で酸素透過度測定を行った。結果を表5の「ラミネート前」の項目に示す。
【0133】
[バリア性包装材料の水蒸気透過度の評価]
比較例1~3に係るバリア性包装材料について、実施例1~7と同様の方法で水蒸気透過度測定を行った。結果を表5の「ラミネート後」の項目に示す。
【0134】
[耐屈曲性の評価]
比較例1~3に係るバリア性包装材料を縦295mm×横210mmの大きさに切り出して試料を得た。これらの試料について、上記と同様にして虐待試験を行った。虐待試験後の試料について、酸素透過度及び水蒸気透過度を上記の方法によって測定した。結果を表5の「虐待試験後」の項目に示す。
【0135】
[ラミネート強度の測定]
比較例1~3に係るバリア性包装材料を15mm幅の短冊状にカットし、実施例1~7と同様にしてT型剥離強度及び180°剥離強度を測定した。結果を表5に示す。
【0136】
[ヒートシール強度]
比較例1~3に係るバリア性包装材料をそれぞれ二枚準備した。二枚のバリア性包装材料のシーラント層が向き合うように重ね合わせ、ヒートシーラーを用いて160℃、0.2MPa、1秒間の条件でヒートシールした。ヒートシール後の試料を15mm幅の短冊状にカットし、実施例1,7と同様にしてヒートシール強度測定を行った。結果を表5に示す。
【0137】
【表5】
表中の「-」は未測定であることを意味する。
【0138】
バリアコート層が水膨潤性雲母(無機層状鉱物)を含まない比較例1に係るバリアフィルムは耐湿性が不十分であり、バリア性低下が認められた(ラミネート前2参照)。バリアコート層における水膨潤性雲母の含有量が40質量%である比較例2に係るバリアフィルムは、T型剥離強度が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本開示によれば、包装材料の優れたリサイクル性を実現するのに有用であり且つ優れたガスバリア性を有するバリアフィルム及びバリア性包装材料が提供される。
【符号の説明】
【0140】
1,11…基材フィルム、2,2B,12…バリア層、3A,3B,13…耐変形バリアコート層、4,14…無機酸化物層、5…密着性向上層、10,10A,10B,10C,10D…バリアフィルム、20…接着層、30…シーラント層、40…インク層、100…バリア性包装材料