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特許7605117硬化型組成物、2液硬化型組成物セット、及び、接着物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】硬化型組成物、2液硬化型組成物セット、及び、接着物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 22/14 20060101AFI20241217BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20241217BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20241217BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241217BHJP
   C09J 5/04 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C08F22/14
C08F2/50
C09J4/00
C09J11/06
C09J5/04
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021545600
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2020034365
(87)【国際公開番号】W WO2021049590
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2019164835
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】大村 健人
(72)【発明者】
【氏名】河合 道弘
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/116931(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/022810(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/212330(WO,A1)
【文献】特表2014-503474(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0190335(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 22/00-22/40
C09J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチレンマロネート化合物と、
ルイス酸性化合物と、
光塩基発生剤とを含み、
前記メチレンマロネート化合物の含有量は、硬化型組成物の全固形分に対し、90質量%~99質量%であり、
前記ルイス酸性化合物の含有量は、前記メチレンマロネート化合物の含有量100質量部に対し、0.001質量部~0.1質量部であり、
前記光塩基発生剤の含有量は、硬化型組成物の全固形分に対し、0.5質量%~5質量%である、
硬化型組成物。
【請求項2】
前記メチレンマロネート化合物が、下記式(1)又は式(2)で表される化合物である請求項1に記載の硬化型組成物。
【化1】



式(1)及び式(2)中、X~Xはそれぞれ独立に、O、NR、又は、C(R)を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、又は、アリール基を表し、Rは、アルキレン基
、アリーレン基、又は、これらを2以上組み合わせた基を表す。
【請求項3】
前記X~Xがそれぞれ独立に、O、又は、NRである、請求項に記載の硬化型組成物。
【請求項4】
前記X~Xが、Oである、請求項2又は請求項3に記載の硬化型組成物。
【請求項5】
前記R及びRがそれぞれ独立に、アルキル基である、請求項2~請求項のいずれか1項に記載の硬化型組成物。
【請求項6】
前記Rが、アルキレン基である、請求項2~請求項のいずれか1項に記載の硬化型組成物。
【請求項7】
前記式(1)で表される化合物を含む、請求項2~請求項のいずれか1項に記載の硬化型組成物。
【請求項8】
前記ルイス酸性化合物が、金属カチオンを有するルイス酸性化合物を含む、請求項1請求項7のいずれか1項に記載の硬化型組成物。
【請求項9】
前記ルイス酸性化合物が、Fe2+、Cu2+、Zn2+、Ag、Yb3+、及び、Ti4+よりなる群から選択される少なくとも1種の金属カチオンを有するルイス酸性化合物を含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の硬化型組成物。
【請求項10】
前記ルイス酸性化合物が、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、tert-ブトキシドアニオン、アセチルアセトナートアニオン、塩化物イオン、及び、臭化物イオンよりなる群から選択される少なくとも1種の対アニオンを有するルイス酸性化合物を含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の硬化型組成物。
【請求項11】
前記光塩基発生剤は、光によりアミン化合物を発生する化合物を含む、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の硬化型組成物。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の硬化型組成物を第1の被接着物の表面に付与する工程、
前記硬化型組成物が付与された前記第1の被接着物の表面と第2の被接着物とを貼合する工程、及び、
前記第1の被接着物、又は、前記第2の被接着物の少なくともいずれかが光透過性を有する被接着物であり、前記光透過性を有する被接着物の側から前記第1の被接着物と前記第2の被接着物との間の前記硬化型組成物に光を照射する工程を含む
接着物の製造方法。
【請求項13】
メチレンマロネート化合物と、光塩基発生剤とを含む組成物Aと、
ルイス酸性化合物を含む組成物Bとを含み、
前記メチレンマロネート化合物の含有量は、前記組成物Aの全固形分に対し、90質量%~99質量%であり、
前記光塩基発生剤の含有量は、前記組成物Aの全固形分に対し、0.5質量%~5質量%であり、
前記ルイス酸性化合物の含有量は、前記組成物Bの全固形分に対し、50質量%~100質量%であ
前記ルイス酸性化合物の含有量は、前記メチレンマロネート化合物の含有量100質量部に対し、0.001質量部~0.1質量部である、
2液型硬化型組成物セット。
【請求項14】
前記メチレンマロネート化合物が、下記式(1)又は式(2)で表される化合物である請求項13に記載の2液型硬化型組成物セット。
【化2】



式(1)及び式(2)中、X~Xはそれぞれ独立に、O、NR、又は、C(R)を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、又は、アリール基を表し、Rは、アルキレン基、アリーレン基、又は、これらを2以上組み合わせた基を表す。
【請求項15】
ルイス酸性化合物を含む組成物Bを第1の被接着物の表面に付与する工程、
メチレンマロネート化合物と光塩基発生剤を含む組成物Aを前記第1の被接着物の表面又は第2の被接着物の表面に付与する工程、
前記組成物Bを付与した前記第1の被接着物の表面と、前記組成物Aを付与した前記第2の被接着物の表面とを貼合するか、又は、前記組成物A及び組成物Bを付与した前記第1の被接着物の表面と、第2の被接着物の表面とを貼合する工程、及び、
前記第1の被接着物、又は、前記第2の被接着物の少なくともいずれかが光透過性を有する被接着物であり、前記光透過性を有する被接着物の側から前記第1の被接着物と前記第2の被接着物との間の前記組成物A及び前記組成物Bに光を照射する工程を含み、
前記メチレンマロネート化合物の含有量は、前記組成物Aの全固形分に対し、90質量%~99質量%であり、
前記光塩基発生剤の含有量は、前記組成物Aの全固形分に対し、0.5質量%~5質量%であり、
前記ルイス酸性化合物の含有量は、前記組成物Bの全固形分に対し、50質量%~100質量%である、
前記ルイス酸性化合物の付与量は、前記メチレンマロネート化合物の付与量100質量部に対し、0.001質量部~0.1質量部である、
接着物の製造方法。
【請求項16】
前記メチレンマロネート化合物が、下記式(1)又は式(2)で表される化合物である請求項15に記載の接着物の製造方法。
【化3】



式(1)及び式(2)中、X~Xはそれぞれ独立に、O、NR、又は、C(R)を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、又は、アリール基を表し、Rは、アルキレン基、アリーレン基、又は、これらを2以上組み合わせた基を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化型組成物、2液硬化型組成物セット、及び、接着物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬化型組成物は、接着剤、コーティング剤、封止剤、及び賦形剤等の用途に広く用いられている。硬化型組成物を用いた重合反応は、重合時に発生する活性種により、ラジカル重合、カチオン重合、及び、アニオン重合の3種類に分類される。
【0003】
アニオン重合性モノマーとしては、2-エチルシアノアクリレート等のシアノアクリレート化合物及びジエチルメチレンマロネート等のメチレンマロネート化合物等が知られている。
【0004】
シアノアクリレート化合物は、水のような弱塩基により速やかに重合することが知られている。
一方、非特許文献1においては、ジアルキルメチレンマロネート化合物は、シアノアクリレート化合物と異なり、水のような弱塩基ではアニオン重合性を示さないことが予見されており、本発明者らの検討でも、メチレンマロネート化合物は、水のような弱塩基ではアニオン重合性を示さないものであった。
【0005】
非特許文献2においては、2-エチルシアノアクリレートホモポリマーとジエチルメチレンマロネートホモポリマーの熱重量分析結果が示されている。2-エチルシアノアクリレートホモポリマーは200℃未満で分解による重量減少が見られるが、ジエチルメチレンマロネートホモポリマーは250℃においてもほとんど重量減少が見られず、耐熱性に優れることが報告されている。従って、メチレンマロネート化合物の硬化性を改善することができれば、耐熱性に優れる材料として、種々の用途に応用できることが期待される。
特許文献1においては、1,1-ジアルコキシカルボニルエチレン(メチレンマロネート)類の硬化方法が示され、当該化合物の活性化剤として特定の塩基性化合物を使用した硬化方法が検討されている。
【0006】
又、アニオン重合性のモノマーを光硬化型組成物に適用する検討も行われている。
前記特許文献1においては、メチレンマロネート化合物と、アシルホスフィンオキサイド及びメタロセンを併用した光重合開始剤を含む組成物の紫外線硬化が検討されている。しかしながら、メチレンマロネート化合物のみでは紫外線硬化せず、シアノアクリレート化合物と併用することで紫外線硬化することが記載されている。
特許文献2には、カチオン化したアミジン骨格を有する置換基を持つ化合物と、陰イオンとからなるイオン対型の光塩基発生剤が記載され、メチレンマロネート化合物の光硬化について検討されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】J.Am.Chem.Soc.,vol.117,pp3605-3610,1995
【文献】Polymer,vol.39,No.1,pp173-181,1998.
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2015-512460号公報
【文献】特開2017-036361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、接着剤及び封止剤等の技術分野においては、基材を硬化型組成物で貼合した後、光が透過する部分については紫外線等の光により硬化させ、光が透過しない部分(暗部)においては別の硬化機構により硬化させる、いわゆるデュアル硬化型組成物が検討されている。
アニオン重合性モノマーであるメチレンマロネート化合物をデュアル硬化型組成物に適用した場合、前記した通り、光硬化型組成物としての使用例は知られているが、ジアルキルメチレンマロネート化合物は弱塩基により硬化し難く、又、特許文献1に記載された活性化剤も硬化性が不十分である場合があり、暗部硬化性が不十分であった。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、光硬化及び暗部硬化可能な硬化型組成物、又は、前記硬化型組成物を用いた接着物の製造方法を提供することである。
本発明が解決しようとする他の課題は、光硬化及び暗部硬化可能な2液硬化型組成物セット、又は、前記2液硬化型組成物セットを用いた接着物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> メチレンマロネート化合物と、ルイス酸性化合物と、光塩基発生剤とを含む、硬化型組成物。
<2> 前記メチレンマロネート化合物が、下記式(1)又は式(2)で表される化合物である<1>に記載の硬化型組成物。
【0012】
【化1】
【0013】
式(1)及び式(2)中、X~Xはそれぞれ独立に、O、NR、又は、C(R)を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、又は、アリール基を表し、Rは、アルキレン基、アリーレン基、又は、これらを2以上組み合わせた基を表す。
【0014】
<3> 前記ルイス酸性化合物が、金属カチオンを有するルイス酸性化合物を含む、<1>又は<2>に記載の硬化型組成物。
<4> 前記ルイス酸性化合物が、Fe2+、Cu2+、Zn2+、Ag、Yb3+、及び、Ti4+よりなる群から選択される少なくとも1種の金属カチオンを有するルイス酸性化合物を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の硬化型組成物。
<5> 前記ルイス酸性化合物が、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、tert-ブトキシドアニオン、アセチルアセトナートアニオン、塩化物イオン、及び、臭化物イオンよりなる群から選択される少なくとも1種の対アニオンを有するルイス酸性化合物を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の硬化型組成物。
<6> 前記ルイス酸性化合物の含有量が、前記メチレンマロネート化合物の含有量100質量部に対し、0.001質量部~1.0質量部である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化型組成物。
<7> 前記X~Xがそれぞれ独立に、O、又は、NRである、<1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化型組成物。
<8> 前記X~Xが、Oである、<1>~<7>のいずれか1つに記載の硬化型組成物。
<9> 前記R及びRがそれぞれ独立に、アルキル基である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の硬化型組成物。
<10> 前記Rが、アルキレン基である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の硬化型組成物。
<11> 前記式(1)で表される化合物を含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の硬化型組成物。
<12> 前記光塩基発生剤は、光によりアミン化合物を発生する化合物を含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の硬化型組成物。
<13> <1>~<12>のいずれか1つに記載の硬化型組成物を第1の被接着物の表面に付与する工程、前記硬化型組成物が付与された前記第1の被接着物の表面と第2の被接着物とを貼合する工程、及び、前記第1の被接着物、又は、前記第2の被接着物の少なくともいずれかが光透過性を有する被接着物であり、前記光透過性を有する被接着物の側から前記第1の被接着物と前記第2の被接着物との間の前記硬化型組成物に光を照射する工程を含む接着物の製造方法。
<14> メチレンマロネート化合物と、光塩基発生剤とを含む組成物Aと、ルイス酸性化合物を含む組成物Bとを含む2液型硬化型組成物セット。
【0015】
<15> 前記メチレンマロネート化合物が、下記式(1)又は式(2)で表される化合物である<14>に記載の2液型硬化型組成物セット。
【0016】
【化2】
【0017】
式(1)及び式(2)中、X~Xはそれぞれ独立に、O、NR、又は、C(R)を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、又は、アリール基を表し、Rは、アルキレン基、アリーレン基、又は、これらを2以上組み合わせた基を表す。
【0018】
<16> ルイス酸性化合物を含む組成物Bを第1の被接着物の表面に付与する工程、メチレンマロネート化合物と光塩基発生剤を含む組成物Aを前記第1の被接着物の表面又は第2の被接着物の表面に付与する工程、前記組成物Bを付与した前記第1の被接着物の表面と、前記組成物Aを付与した前記第2の被接着物の表面とを貼合するか、又は、前記組成物A及び組成物Bを付与した前記第1の被接着物の表面と、第2の被接着物の表面とを貼合する工程、及び、前記第1の被接着物、又は、前記第2の被接着物の少なくともいずれかが光透過性を有する被接着物であり、前記光透過性を有する被接着物の側から前記第1の被接着物と前記第2の被接着物との間の前記硬化型組成物に光を照射する工程を含む接着物の製造方法。
<17> 前記メチレンマロネート化合物が、下記式(1)又は式(2)で表される化合物である<16>に記載の接着物の製造方法。
【0019】
【化3】
【0020】
式(1)及び式(2)中、X~Xはそれぞれ独立に、O、NR、又は、C(R)を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、又は、アリール基を表し、Rは、アルキレン基、アリーレン基、又は、これらを2以上組み合わせた基を表す。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光硬化及び暗部硬化可能な硬化型組成物、又は、前記硬化型組成物を用いた接着物の製造方法を提供することができる。
又、本発明によれば、光硬化及び暗部硬化可能な2液硬化型組成物セット、及び、前記2液硬化型組成物セットを用いた接着物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。又、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本発明において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
本発明において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
又、本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
又、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びメタクリロイルの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリロキシ」はアクリロキシ及びメタクリロキシの双方、又は、いずれかを表す。
更に、本明細書における化合物の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本発明において「付与」とは、被接着物の表面に、硬化型組成物の少なくとも一部が接触する様に操作すること、又は、組成物A若しくは/及び組成物Bの少なくとも一部が接触する様に操作することを意味する。
具体的には、塗工、穴埋め及びその他の手段を使用して、被接着物の表面の一部又は全部を、硬化型組成物で覆うこと、又は、組成物A若しくは/及び組成物Bで覆うことが例示できる。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
【0023】
(硬化型組成物)
本発明の硬化型組成物は、メチレンマロネート化合物と、ルイス酸性化合物と、光塩基発生剤とを含む。
【0024】
例えば、従来のメチレンマロネート化合物を含む硬化型組成物は、重合開始剤により硬化するか、又は、特許文献1に記載された発明のように、硬化直前に塩基性化合物を混合する方法しか、知られていなかった。
本発明者らは、鋭意検討した結果、メチレンマロネート化合物と、ルイス酸性化合物と、光塩基発生剤とを含む硬化型組成物とすることにより、光により硬化できるとともに、暗部においても空気中の水分により硬化できることを本発明者らは見出した。
詳細な反応機構は不明であるが、光塩基発生剤を含むことにより、光照射により発生する塩基により光硬化可能であり、又、ルイス酸性化合物が、メチレンマロネート化合物における1つ又は2つのカルボニル基の酸素原子に配位することにより、メチレンマロネート化合物のアニオン重合活性を向上させ、空気中の水分によってもアニオン重合可能になったと推定している。
特に、メチレンマロネート化合物を空気中の水分によりアニオン重合することは、何ら知られておらず、又、メチレンマロネート化合物を光硬化及び暗部硬化可能とした硬化型組成物は、今回、初めて見出した。
【0025】
又、本発明の硬化型組成物は、上記の構成とすることにより、光硬化及び暗部硬化の両方が可能であるため、内部の硬化性にも優れ、厚膜硬化性にも優れる。
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0027】
<メチレンマロネート化合物>
本発明の硬化型組成物は、メチレンマロネート化合物を含む。
メチレンマロネート化合物は、下記式(1)又は式(2)でも示されているように、-CO-C(=CH)-CO-構造を有する化合物である。
中でも、メチレンマロネート化合物としては、反応速度、及び、保存安定性の観点から、下記式(1)又は式(2)で表される化合物が好ましく、下記式(1)で表されるメチレンマロネート化合物がより好ましい。
【0028】
【化4】
【0029】
式(1)及び式(2)中、X~Xはそれぞれ独立に、O、NR、又は、C(R)を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、又は、アリール基を表し、Rは、アルキレン基、アリーレン基、又は、これらを2以上組み合わせた基を表す。
【0030】
式(1)及び式(2)におけるX~Xはそれぞれ独立に、耐熱性、反応速度、及び、保存安定性の観点から、O、又は、NRであることが好ましく、O、又は、NHであることがより好ましく、Oであることが特に好ましい。
式(1)におけるX及びXは、耐熱性、反応速度、及び、保存安定性の観点から、同じ基であることが好ましい。
又、式(2)におけるX及びXは、耐熱性、反応速度、及び、保存安定性の観点から、同じ基であることが好ましい。
式(1)及び式(2)におけるRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数(「炭素原子数」ともいう。)1~20のアルキル基、又は、炭素数6~20のアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は、フェニル基であることがより好ましく、水素原子、又は、炭素数1~6のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
すなわち、NRは、NHであることが特に好ましく、C(R)は、CHであることが特に好ましい。
式(1)におけるR及びRはそれぞれ独立に、耐熱性、反応速度、及び、保存安定性の観点から、炭素数1~20のアルキル基、又は、炭素数6~20のアリール基であることが好ましく、炭素数1~20のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~10のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることが特に好ましく、メチル基又はエチル基であることが最も好ましい。
又、式(1)におけるR及びRはそれぞれ独立に、耐熱性、反応速度、及び、保存安定性の観点から、アルキル基であることが好ましい。
更に、式(1)におけるR及びRは、耐熱性、反応速度、及び、保存安定性の観点から、同じ基であることが好ましい。
式(2)におけるRは、反応速度の観点から、炭素数1~20のアルキレン基、又は、炭素数6~20のアリーレン基、又は、1以上のアルキレン基と1以上のアリーレン基とを組み合わせた炭素数7~20の基であることが好ましく、炭素数1~20のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~10のアルキレン基であることが更に好ましく、メチレン基、エチレン基、又は、ジメチルメチレン基であることが特に好ましい。
又、式(2)におけるRは、反応速度の観点から、アルキレン基であることが好ましい。
【0031】
式(1)及び式(2)における各基のアルキル基又はアルキレン基は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよく、又、置換基を有していてもよい。
前記アルキル基又はアルキレン基が有していてもよい置換基としては、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基等が挙げられる。
式(1)及び式(2)における各基のアリール基又はアリーレン基は、置換基を有していてもよい。
前記アリール基又はアリーレン基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基等が挙げられる。
【0032】
前記式(1)で表されるメチレンマロネート化合物の好ましい具体例としては、例えば、2-メチレンマロン酸ジメチル、2-メチレンマロン酸ジエチル、2-メチレンマロン酸ジブチル、2-メチレンマロン酸1-メチル-3-ヘキシル、2-メチレンマロン酸ジシクロヘキシル等の2-メチレンマロン酸ジアルキルが好ましく挙げられる。
中でも、2-メチレンマロン酸ジエチルが特に好ましく挙げられる。
【0033】
前記式(2)で表されるメチレンマロネート化合物の好ましい具体例としては、例えば、5-メチレン-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン、2,2-ジメチル-5-メチレン-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン等の5-メチレン-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン化合物等が好ましく挙げられる。
【0034】
本発明の硬化型組成物は、メチレンマロネート化合物を1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本発明の硬化型組成物におけるメチレンマロネート化合物の含有量は、硬化型組成物の全固形分に対し、10質量%~99.9質量%であることが好ましく、30質量%~99.5質量%であることがより好ましく、50質量%~99.5質量%であることが更に好ましく、90質量%~99質量%であることが特に好ましい。
なお、本明細書において「全固形分」とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。又、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
【0035】
<ルイス酸性化合物>
本発明の硬化型組成物は、ルイス酸性化合物を含む。
本発明に用いられるルイス酸性化合物は、メチレンマロネート化合物に配位等作用可能なルイス酸性化合物であることが好ましい。
前記ルイス酸性化合物としては、硬化速度、及び、保存安定性の観点から、金属カチオンを有するルイス酸性化合物を含むことが好ましく、1価~4価の金属カチオンを有するルイス酸性化合物を含むことがより好ましく、1価~3価の金属カチオンを有するルイス酸性化合物を含むことが特に好ましい。
前記金属カチオンとしては、硬化速度、及び、保存安定性の観点から、3族~12族の金属カチオンが好ましく、Fe2+、Cu2+、Zn2+、Ag、Yb3+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、In3+、Au、Sn4+,Cd2+、Ni2+、Mn2+、Co2+、Cr2+、Ga2+よりなる群から選択される少なくとも1種の金属カチオンであることが更に好ましく、Fe2+、Cu2+、Zn2+、Ag、Yb3+、及び、Ti4+よりなる群から選択される少なくとも1種の金属カチオンであることが特に好ましく、Cu2+、Zn2+、及び、Agよりなる群から選択される少なくとも1種の金属カチオンであることが最も好ましい。
【0036】
前記ルイス酸性化合物は、硬化速度、及び、保存安定性の観点から、金属カチオンと対アニオンとの塩であることが好ましい。
又、前記ルイス酸性化合物は、硬化速度、及び、保存安定性の観点から、スルホン酸イオン、次亜塩素酸イオン、1,3-ジケトナートアニオン、アルコキシドアニオン、及び、ハロゲン化物イオンよりなる群から選択される少なくとも1種の対アニオンを有するルイス酸性化合物を含むことが好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トシル酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、次亜塩素酸アニオン、tert-ブトキシドアニオン、アセチルアセトナートアニオン、塩化物イオン、及び、臭化物イオンよりなる群から選択される少なくとも1種の対アニオンを有するルイス酸性化合物を含むことがより好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、tert-ブトキシドアニオン、アセチルアセトナートアニオン、塩化物イオン、及び、臭化物イオンよりなる群から選択される少なくとも1種の対アニオンを有するルイス酸性化合物を含むことが更に好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸アニオンを有するルイス酸性化合物を含むことが特に好ましい。
【0037】
前記ルイス酸性化合物として具体的には、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(II)、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)、トリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウム(III)、チタン(IV)ブトキシド、チタン(IV)tert-ブトキシド、塩化銅(II)、臭化銅(II)、塩化亜鉛(II)、臭化亜鉛(II)等が好ましく挙げられる。
中でも、硬化速度、及び、保存安定性の観点から、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(II)、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)、又は、トリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウム(III)がより好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(II)、又は、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)が特に好ましい。
【0038】
本発明の硬化型組成物は、ルイス酸性化合物を1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本発明の硬化型組成物におけるルイス酸性化合物の含有量は、メチレンマロネート化合物の含有量100質量部に対し、0.001質量部~1.0質量部であることが好ましく、0.001質量部~0.5質量部であることがより好ましく、0.001質量部~0.1質量部であることが特に好ましい。
【0039】
<光塩基発生剤>
本発明の硬化型組成物は、光塩基発生剤を含む。
本発明に用いられる光塩基発生剤としては、特に制限はないが、光によりブレンステッド塩基を発生する光塩基発生剤であることが好ましく、光により有機塩基を発生する光塩基発生剤であることがより好ましく、光によりアミン化合物を発生する光塩基発生剤であることが特に好ましい。
なお、本発明における「光」とは、その照射により硬化型組成物中において光塩基発生剤からアニオン重合開始種(塩基)を発生させるエネルギーを付与できる電磁波や放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、及び赤外線などを包含する。
【0040】
光塩基発生剤としては、例えば、光により塩基を発生する化合物である、カルバメート基(ウレタン結合)を有する化合物、アシルオキシイミノ基を有する化合物、アニオン-カチオン複合体、カルバモイルオキシイミノ基を有する化合物等が挙げられる。
又、光塩基発生剤としては、特開2015-087612号公報、特開2008-247747号公報、国際公開第2010/064631号、国際公開第2009/122664号、特開2015-28540号公報、特開2013-80206号公報、特開2008-208342号公報等に記載のものも挙げられる。
【0041】
又、光塩基発生剤の市販品としては、特に限定されないが、富士フイルム和光純薬(株)のWPBGシリーズ「WPBG-082」、「WPBG-167」、「WPBG-168」、「WPBG-018」、「WPBG-027」、「WPBG-140」等を使用することもできる。
【0042】
光塩基発生剤としては、前記した通り、光によりアミン化合物を発生する光塩基発生剤が好ましいが、その中でも、光硬化性、光硬化速度、及び、厚膜硬化性の観点から、下記式(Pb1)で表される化合物を含むことが好ましい。
下記式(Pb1)で表される化合物は、光の照射により、アルデヒド基とアミド基のカルボニル基とがラクトン環を形成し、アミド基の窒素原子を含む構造が、アミノ基となり、アミン化合物(塩基)が生成する。
【0043】
【化5】
【0044】
式(Pb1)中、環Xは、置換基を有していてもよい芳香環又は置換基を有していてもよいヘテロ芳香環を表し、Rb1及びRb2はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、又、Rb1とRb2とは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0045】
式(Pb1)における環Xは、置換基を有していてもよい芳香環であることが好ましい。
環Xにおける前記芳香環としては、単環又は2環以上が縮合した芳香環が挙げられる。具体的には、例えは、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環等が挙げられる。中でも、ベンゼン環であることが好ましい。
環Xにおける前記ヘテロ芳香環としては、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を含む単環又は2環以上が縮合したヘテロ芳香環が挙げられる。具体的には、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環等が挙げられる。
環Xにおける前記芳香環又は前記ヘテロ芳香環は、置換基を有していてもよい。前記置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、炭素数1~6のアルキル基等)等が挙げられる。前記芳香環又は前記ヘテロ芳香環は、これら置換基よりなる群から選ばれる1個~3個の基で置換されていてもよい。
【0046】
式(Pb1)におけるRb1及びRb2はそれぞれ独立に、アルキル基であるか、又は、Rb1とRb2とが互いに結合して環を形成していることが好ましい。
又、Rb1及びRb2は、同じ基であるか、又は、Rb1とRb2とが互いに結合して環を形成していることが好ましい。
前記アルキル基としては、鎖状又は分岐のアルキル基が挙げられ、炭素数1~20のアルキル基が好ましく挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。
中でも、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数1~3のアルキル基が更に好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
又、式(Pb1)におけるRb1とRb2とは互いに結合して環を形成していてもよい。Rb1とRb2とが形成する前記環としては、単環又は2以上の環が縮合した環が挙げられる。例えば、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン環等が挙げられる。中でも、ピペリジン環であることが好ましい。
更に、Rb1とRb2とが形成する前記環は、置換基を有していてもよい。前記置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、炭素数1~6のアルキル基等)等が挙げられる。前記環は、これら置換基よりなる群から選ばれる1個~6個の基で置換されていてもよい。
【0047】
前記式(Pb1)で表される化合物の好ましい具体例としては、環Xがベンゼン環であり、Rb1及びRb2がそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基(より好ましくは炭素数1~3のアルキル基、特に好ましくはメチル基又はエチル基)であるか、又は、b1とRb2とが互いに結合してピペリジン環又はピロリジン環を形成しているものが挙げられる。
【0048】
又、式(Pb1)で表される化合物は、市販されているものを用いてもよいし、又、公知の方法により製造してもよい。例えば、J.Chem.Soc.,PerkinTrans.I,p344-348等の記載に従い又は準じて製造することができる。
【0049】
光によりアミン化合物を発生する化合物としては、式(Pb1)で表される化合物以外にも、カーバメート化合物が例示される。
カーバメート化合物の具体例としては、9-アントリルメチル N,N-ジエチルカーバメート等が挙げられる。
【0050】
本発明の硬化型組成物は、光塩基発生剤を1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本発明の硬化型組成物における光塩基発生剤の含有量は、硬化型組成物の全固形分に対し、0.01質量%~30質量%であることが好ましく、0.1質量%~15質量%であることがより好ましく、0.2質量%~10質量%であることが更に好ましく、0.5質量%~5質量%であることが特に好ましい。
【0051】
<重合禁止剤>
本発明の硬化型組成物は、保存安定性の観点から、重合禁止剤を含むことが好ましく、ラジカル重合禁止剤を含むことがより好ましい。
前記重合禁止剤は、保存安定性の観点から、フェノール系ラジカル重合禁止剤を含むことが好ましい。前記フェノール系ラジカル重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メキノール、ブチルヒドロキシアニソール、ジ-tert-ブチルヒドロキシトルエン、メチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、2,6-ジメチルハイドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、4-tert-ブチルカテコール、tert-ブチルヒドロキノン、6-tert-ブチル-4-キシレノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール及び1,2,4-トリヒドロキシベンゼンよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ハイドロキノン構造を有するラジカル重合禁止剤である、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、2,6-ジメチルハイドロキノン及び2,6-ジ-tert-ブチルハイドロキノンよりなる群から選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0052】
又、前記重合禁止剤としては、五酸化二リン、SO、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、プロパンサルトン、BF錯体等のアニオン重合禁止剤が好ましく挙げられる。
又、前記重合禁止剤としては、保存安定性の観点から、ハイドロキノン構造を有するラジカル重合禁止剤とアニオン重合禁止剤とを併用することも好ましい。
【0053】
前記重合禁止剤は、保存安定性の観点から、フェノール性ヒドロキシ基を有する重合禁止剤を含むことが好ましく、下記式(In1)で表される化合物であることがより好ましく、下記式(In2)で表される化合物であることが特に好ましい。
又、前記重合禁止剤としては、保存安定性の観点から、ハイドロキノン構造を有するラジカル重合禁止剤とアニオン重合禁止剤とフェノール性ヒドロキシ基を有する重合禁止剤とを併用することが特に好ましい。
【0054】
【化6】
【0055】
式(In1)及び式(In2)中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は、ヒドロキシ基(但し、フェノール性ヒドロキシ基を除く)以外の、互いに結合して環を形成してもよい置換基を表し、Rは水素原子、又は、アルキル基を表し、R~R10はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基を表し、R11は水素原子、又は、(メタ)アクリロイル基を表す。
【0056】
式(In1)において、保存安定性の観点から、R~Rの少なくとも1つは前記置換基であることが好ましく、R及びRは少なくとも前記置換基であることがより好ましく、R、R及びRは少なくとも前記置換基であることが特に好ましい。
式(In1)におけるR及びRはそれぞれ独立に、保存安定性の観点から、直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基、フェノール性ヒドロキシ基を有する構造を有するアルキル基、又は、(メタ)アクリロキシフェニル構造を有するアルキル基であることが好ましく、Rは直鎖若しくは分岐アルキル基であり、かつRはフェノール性ヒドロキシ基を有する構造を有するアルキル基、又は、(メタ)アクリロキシフェニル構造を有するアルキル基であることがより好ましく、Rは直鎖若しくは分岐アルキル基であり、かつRは(メタ)アクリロキシフェニル構造を有するアルキル基であることが特に好ましい。
式(In1)におけるRは、保存安定性の観点から、水素原子、アルキル基、又は、アルコキシ基であることが好ましく、直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基、又は、アルコキシ基であることがより好ましく、直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、アルコキシ基であることが更に好ましい。
前記R、R及びRにおけるアルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数1~6のシクロアルキル基、t-ブチル基、又は、2-メチル-2-ブチル基であることが更に好ましく、メチル基、t-ブチル基、又は、2-メチル-2-ブチル基であることが特に好ましい。
前記アルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよく、又、置換基を有していてもよい。
置換基としては、重合禁止能の失われない基であればよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基等が挙げられる。又、前記置換基が、更に前記置換基及びアルキル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基により置換されていてもよい。
式(In1)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0057】
式(In2)におけるRは、保存安定性の観点から、水素原子、又は、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は、メチル基であることがより好ましい。
式(In2)におけるR及びR10は、保存安定性の観点から、第3級アルキル基であることが好ましく、炭素数4~8の第3級アルキル基であることがより好ましく、t-ブチル基、又は、2-メチル-2-ブチル基であることが特に好ましい。
式(In2)におけるR及びRは、保存安定性の観点から、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t-ブチル基、2-メチル-2-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、又は、ブトキシ基であることがより好ましい。
式(In2)におけるR11は、保存安定性の観点から、水素原子、又は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0058】
中でも、保存安定性の観点から、前記フェノール性ヒドロキシ基を有する重合禁止剤は、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチル-フェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)モノアクリレート、2,2’-エチレンビス(4,6-ジ-tert-アミルフェノール)モノアクリレート及び2,2’-メチレンビス(6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール)よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0059】
本発明の硬化型組成物は、前記重合禁止剤を1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本発明の硬化型組成物における前記重合禁止剤の含有量は、保存安定性の観点から、メチレンマロネート化合物の含有量100質量部に対し、0.01質量部~20質量部であることが好ましく、0.05質量部~10質量部であることがより好ましく、0.1質量部~5質量部であることが特に好ましい。
【0060】
<他の成分>
本発明の硬化型組成物には、その用途に応じて、更に他の成分を含んでいてもよい。例えば、メチレンマロネート化合物以外の他のアニオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光塩基発生剤以外の光重合開始剤、溶媒、アニオン重合促進剤、可塑剤、増粘剤、増感剤、密着性付与剤(シランカップリング剤等)等を含有することができる。
更に、その他の添加剤としては、例えば、充填剤、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑促進剤、タレ防止剤、硬化促進剤、粘弾性調整剤、抗菌剤、蛍光増白剤、酸化防止剤等が挙げられる。これらのうち、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
他のアニオン重合性化合物としては、本発明の効果を発揮できる範囲であれば特に限定はない。例えば、2-エチルシアノアクリレート等のシアノアクリレート、重合性エポキシ系化合物(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等の2以上のグリシジル基を有する化合物等)等が挙げられる
ラジカル重合性化合物としては、本発明の効果を発揮できる範囲であれば特に限定はない。例えば、(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリルアミド化合物等が挙げられる。
【0062】
本発明の硬化型組成物は、硬化を補助又は促進するため、重合開始剤を含有してもよく、ラジカル重合性化合物を含む場合、ラジカル重合開始剤を更に含むことが好ましく、光ラジカル発生剤を更に含有することがより好ましい。
前記光ラジカル発生剤としては、ラジカル重合性化合物を光重合させる際に使用される公知の光ラジカル発生剤が使用できる。
光ラジカル発生剤としては、アシルゲルマン系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、ヒドロキシ基、窒素原子及びチオエーテル結合を有しないアセトフェノン系化合物、ヒドロキシ基、窒素原子及びチオエーテル結合を有しないベンゾイン系化合物等が挙げられる。
中でも、光ラジカル発生剤としては、光硬化性、接着速度、及び、保存安定性の観点から、アシルゲルマン系化合物が好ましい。
アシルゲルマン化合物としては、モノアシルゲルマン系化合物、ビスアシルゲルマン系化合物が好ましく挙げられ、ビスアシルゲルマン系化合物がより好ましく挙げられる。
アシルゲルマン系化合物としては、例えば、Ivocerin(Ivoclar Vivadent社製)が好ましく挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド系化合物としては、モノアシルホスフィンオキサイド系化合物、ビスアシルホスフィンオキサイド系化合物が好ましく挙げられ、ビスアシルホスフィンオキサイド系化合物がより好ましく挙げられる。
【0063】
本発明の硬化型組成物は、光ラジカル発生剤を1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本発明の硬化型組成物における重合開始剤の含有量は、光硬化性、及び、保存安定性の観点から、硬化型組成物の全固形分に対し、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~2質量%であることがより好ましく、0.05質量%~1質量%であることが特に好ましい。
【0064】
溶媒としては、本発明の効果が発揮できるものであれば特に限定はない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルのエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらのうち、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
硬化型組成物中に溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、メチレンマロネート化合物の含有量100質量部に対し、1質量部~1,000質量部であることが好ましく、1質量部~500質量部であることがより好ましく、1質量部~300質量部であることが特に好ましい。
【0065】
アニオン重合促進剤としては、ポリアルキレンオキサイド類、クラウンエーテル類、シラクラウンエーテル類、カリックスアレン類、シクロデキストリン類及びピロガロール系環状化合物類等が挙げられる。ポリアルキレンオキサイド類とは、ポリアルキレンオキサイド及びその誘導体であって、例えば、特公昭60-37836号公報、特公平1-43790号公報、特開昭63-128088号公報、特開平3-167279号公報、米国特許第4386193号明細書、米国特許第4424327号明細書等で開示されているものが挙げられる。具体的には、(1)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレンオキサイド、(2)ポリエチレングリコールモノアルキルエステル、ポリエチレングリコールジアルキルエステル、ポリプロピレングリコールジアルキルエステル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル等のポリアルキレンオキサイドの誘導体などが挙げられる。クラウンエーテル類としては、例えば、特公昭55-2236号公報、特開平3-167279号公報等で開示されているものが挙げられる。具体的には、12-クラウン-4、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ベンゾ-12-クラウン-4、ベンゾ-15-クラウン-5、ベンゾ-18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、ジベンゾ-24-クラウン-8、ジベンゾ-30-クラウン-10、トリベンゾ-18-クラウン-6、asym-ジベンゾ-22-クラウン-6、ジベンゾ-14-クラウン-4、ジシクロヘキシル-24-クラウン-8、シクロヘキシル-12-クラウン-4、1,2-デカリル-15-クラウン-5、1,2-ナフト-15-クラウン-5、3,4,5-ナフチル-16-クラウン-5、1,2-メチルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-tert-ブチル-18-クラウン-6、1,2-ビニルベンゾ-15-クラウン-5等が挙げられる。シラクラウンエーテル類としては、例えば、特開昭60-168775号公報等で開示されているものが挙げられる。具体的には、ジメチルシラ-11-クラウン-4、ジメチルシラ-14-クラウン-5、ジメチルシラ-17-クラウン-6等が挙げられる。カリックスアレン類としては、例えば、特開昭60-179482号公報、特開昭62-235379号公報、特開昭63-88152号公報等で開示されているものが挙げられる。具体的には、5,11,17,23,29,35-ヘキサ-tert-butyl-37,38,39,40,41,42-ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42-ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42-ヘキサ-(2-オキソ-2-エトキシ)-エトキシカリックス〔6〕アレン、25,26,27,28-テトラ-(2-オキソ-2-エトキシ)-エトキシカリックス〔4〕アレン、テトラキス(4-t-ブチル-2-メチレンフェノキシ)エチルアセテート等が挙げられる。シクロデキストリン類としては、例えば、特表平5-505835号公報等で開示されているものが挙げられる。具体的には、α-、β-又はγ-シクロデキストリン等が挙げられる。ピロガロール系環状化合物類としては、特開2000-191600号公報等で開示されている化合物が挙げられる。具体的には、3,4,5,10,11,12,17,18,19,24,25,26-ドデカエトキシカルボメトキシ-C-1、C-8、C-15、C-22-テトラメチル[14]メタシクロファン等が挙げられる。これらのアニオン重合促進剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
可塑剤は、本発明の効果が損なわれない範囲であれば含有させることができる。
この可塑剤としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソトリデシル、フタル酸ジペンタデシル、テレフタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジイソノニル、トルイル酸デシル、ショウノウ酸ビス(2-エチルヘキシル)、2-エチルヘキシルシクロヘキシルカルボキシレート、フマル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、カプロン酸トリグリセライド、安息香酸2-エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、2-シアノアクリル酸エステルとの相溶性が良く、かつ可塑化効率が高いという点から、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、安息香酸2-エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエートが好ましい。これらの可塑剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
又、可塑剤の含有量は特に限定されないが、メチレンマロネート化合物の含有量を100質量部とした場合に、好ましくは3質量部~50質量部、より好ましくは10質量部~45質量部、更に好ましくは20質量部~40質量部である。可塑剤の含有量が3質量部~50質量部であれば、耐冷熱サイクル試験後の接着強さの保持率を向上させることができる。
【0067】
更に、増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとの共重合体、メタクリル酸メチルとその他のメタクリル酸エステルとの共重合体、アクリルゴム、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル-2-シアノアクリル酸エステル及びエチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの増粘剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
本発明の硬化型組成物には、充填剤等として、ヒュームドシリカを含有させることもできる。
このヒュームドシリカは、超微粉(好ましくは一次粒子径が500nm以下、特に好ましくは1nm~200nm)の無水シリカであり、この無水シリカは、例えば、四塩化ケイ素を原料とし、高温の炎中において気相状態での酸化に起因して生成する超微粉(好ましくは一次粒子径が500nm以下、特に好ましくは1nm~200nm)の無水シリカであって、親水性の高い親水性シリカと、疎水性の高い疎水性シリカとがある。このヒュームドシリカとしては、いずれも用いることができるが、メチレンマロネート化合物への分散性がよいという点から、疎水性シリカが好ましい。
【0069】
親水性シリカとしては市販の各種の製品を用いることができ、例えば、アエロジル50、130、200、300及び380(以上、商品名であり、日本アエロジル(株)製である)等が挙げられる。これらの親水性シリカの比表面積は、それぞれ50±15m/g、130±25m/g、200±25m/g、300±30m/g、380±30m/gである。又、市販の親水性シリカとしては、レオロシールQS-10、QS-20、QS-30及びQS-40(以上、商品名であり、トクヤマ社製である)等を用いることができる。これらの親水性シリカの比表面積は、それぞれ140±20m/g、220±20m/g、300±30m/g、380±30m/gである。この他、CABOT社製等の市販の親水性シリカを用いることもできる。
【0070】
更に、疎水性シリカとしては、親水性シリカの表面に存在するヒドロキシ基と反応し、疎水基を形成し得る化合物、又は親水性シリカの表面に吸着され、表面に疎水性の層を形成し得る化合物を、親水性シリカと溶媒の存在下又は不存在下に接触させ、好ましくは加熱し、親水性シリカの表面を処理することで生成する製品を用いることができる。
【0071】
親水性シリカを表面処理して疎水化するのに用いる化合物としては、n-オクチルトリアルコキシシラン等の疎水基を有するアルキル、アリール、アラルキル系の各種のシランカップリング剤、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシリル化剤、ポリジメチルシロキサン等のシリコーンオイル、ステアリルアルコール等の高級アルコール、及びステアリン酸等の高級脂肪酸などが挙げられる。疎水性シリカとしては、いずれの化合物を用いて疎水化された製品を用いてもよい。
【0072】
市販の疎水性シリカとしては、例えば、シリコーンオイルで表面処理され、疎水化されたアエロジルRY200、R202、ジメチルシリル化剤で表面処理され、疎水化されたアエロジルR974、R972、R976、n-オクチルトリメトキシシランで表面処理され、疎水化されたアエロジルR805、トリメチルシリル化剤で表面処理され、疎水化されたアエロジルR811、R812(以上、商品名であり、日本アエロジル(株)製である)及びメチルトリクロロシランで表面処理され、疎水化されたレオロシールMT-10(商品名であり、(株)トクヤマである)等が挙げられる。これらの疎水性シリカの比表面積は、それぞれ100±20m/g、100±20m/g、170±20m/g、110±20m/g、250±25m/g、150±20m/g、150±20m/g、260±20m/g、120±10m/gである。
【0073】
本発明の硬化型組成物におけるヒュームドシリカの好ましい含有量は、メチレンマロネート化合物の含有量100質量部とした場合に、1質量部~30質量部である。このヒュームドシリカの好ましい含有量は、メチレンマロネート化合物の種類、及び、ヒュームドシリカの種類等にもよるが、1質量部~25質量部であり、特に好ましい含有量は2質量部~20質量部である。上記範囲であると、作業性も良好な接着剤組成物とすることができる。
【0074】
<硬化型組成物の製造方法>
本発明の硬化型組成物の製造方法は、特に制限はなく、前記各成分を混合し製造すればよいが、湿気及び酸素のない又は少ない(例えば、0.01体積%以下)雰囲気下で混合することが好ましく、不活性ガス雰囲気下で混合することがより好ましい。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。
又、本発明の硬化型組成物の製造方法は、遮光下で行われることが好ましい。
前記混合方法としては、特に制限はなく、公知の混合方法を用いることができる。
【0075】
<硬化型組成物の保管方法>
本発明の硬化型組成物の保管方法は、公知の保管方法により保管されればよいが、例えば、湿気及び酸素のない又は少ない(例えば、0.01体積%以下)雰囲気下で保管するか、又は、密閉容器に保管することが好ましく、不活性ガス雰囲気下で保管するか、又は、密閉容器に保管することがより好ましい。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。
又、本発明の硬化型組成物は、遮光下で保管されることが好ましい。
【0076】
<硬化型組成物の硬化方法>
本発明の硬化型組成物の硬化方法は、メチレンマロネート化合物による重合硬化が可能であれば、特に制限はなく、湿気等の水分により硬化させても、光により硬化させてもよいが、湿気等の水分により硬化させることが好ましい。
本発明の硬化型組成物を光により硬化させる場合は、高圧水銀灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LED(発光ダイオード)ランプ、太陽光等を利用して、紫外線や可視光線を照射することにより硬化させることができる。
【0077】
<用途>
本発明の硬化型組成物は、公知の硬化型組成物の用途に使用することができる。
例えば、いわゆる、瞬間接着剤として好適に用いることができる。
本発明の硬化型組成物は、光硬化性及び暗部硬化性を有し、かつ保存安定性に優れるため、一般用、工業用及び医療用など広範囲の分野において利用することができる。
例えば、接着剤、コーティング剤(保護コート剤等)、印刷インキ(インクジェットインキ等)、フォトレジスト、封止剤等が挙げられ、これらに限定されない。
具体的には、例えば、電子部品の封止、つり竿におけるリールシートや糸通しガイド等の取付け、コイル等の線材の固定、磁気ヘッドの台座への固定、歯の治療に使用されている充填剤、人工爪の接着や装飾等のような、同種又は異種の物品間の接着や固定、又は、コーティングに好適に用いることができる。
【0078】
<硬化型組成物を用いた接着物の製造方法>
本発明の硬化型組成物は、下記に示す本発明の接着物の製造方法の第1の実施態様に好ましく使用することができる。
本発明の接着物の製造方法の第1の実施態様は、本発明の硬化型組成物を第1の被接着物の表面に付与する工程(以下、「硬化型組成物付与工程」ともいう。)、前記硬化型組成物が付与された前記第1の被接着物の表面と第2の被接着物とを貼合する工程(以下、「第1の貼合工程」ともいう。)、及び、前記第1の被接着物、又は、前記第2の被接着物の少なくともいずれかが光透過性を有する被接着物であり、前記光透過性を有する被接着物の側から前記第1の被接着物と前記第2の被接着物との間の前記硬化型組成物に光を照射する工程(以下、「第1の光照射工程」ともいう。)を含む。
また、本発明の硬化型組成物は、光照射を行わなくとも、暗部硬化が可能であり、本発明の接着物の製造方法は、光照射を行わない方法であってもよい。
【0079】
又、本発明の接着物の製造方法の第1の実施態様においては、前記第1の被接着物の表面のみに本発明の硬化型組成物を付与してもよいし、又、前記第1の被接着物の表面、及び、前記第2の被接着物の表面の両方に本発明の硬化型組成物を付与してもよい。
更に、前記第1の被接着物と前記第2の被接着物とは、それぞれ異なる被接着物であっても、同じ1つの被接着物であってもよい。すなわち、第1の被接着物の1つの表面に接着剤を付与し、同じ第1の被接着物の他の表面に貼り合わせて接着する態様であってもよい。
貼合する前記第1の被接着物の表面及び前記第2の被接着物の表面の形状は、特に制限はなく、平面、凹凸面、不定形状の面等の任意の形状であればよい。
【0080】
被接着物の材質としては、例えば、プラスチック、ゴム、木材、金属、無機材料、紙等が挙げられる。
プラスチックの具体例として、例えば、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等のセルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ノルボルネン等の環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
ゴムの具体例としては、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。
木材の具体例としては、例えば、自然の木材及び合成木材等が挙げられる。
金属の具体例としては、例えば、鋼板、アルミ、クロム等の金属、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムスズ(ITO)等の金属酸化物等が挙げられる。
無機材料の具体例としては、例えば、ガラス、モルタル、コンクリート、石材等が挙げられる。
紙の具体例としては、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙等が挙げられる。
本発明の接着物の製造方法の第1の実施態様である場合、第1の被接着物、又は、第2の被接着物の少なくともいずれかが光透過性を有する被接着物を使用する。
【0081】
又、前記硬化型組成物付与工程において、硬化型組成物を第1の被接着物の表面に付与する方法としては、特に制限はない。
付与の方法としては、例えば、はけ、へら、綿棒、ローラー、及びスプレー等の付与具を使用する方法、並びにバーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ディップコーター、ロールコーター、スピンコーター、フローコーター、ナイフコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター及びディスペンサー等の塗工機で塗工する方法が挙げられる。
【0082】
その後、第1の被着物の塗工面に2の被接着物と貼合する。
前記第1の被接着物、又は、前記第2の被接着物の少なくともいずれかが光透過性を有する被接着物の側から光を照射して、前記硬化型組成物を硬化させる。
【0083】
光硬化においては、光により光塩基発生剤より塩基が発生し、メチレンマロネート化合物がアニオン重合されて硬化し、前記第1の被接着物の面と前記第2の被接着物の面とを接着する。
光硬化において照射する光としては、紫外線等が好ましく挙げられる。紫外線の照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプ等が挙げられる。その他、発光ダイオードを光源とした紫外線装置(UV-LED)、紫外線領域のレーザー光線等も挙げられる。
【0084】
暗部硬化においては、ルイス酸性化合物が、メチレンマロネート化合物に作用して、空気中の水分等により、メチレンマロネート化合物が硬化し、前記第1の被接着物の面と前記第2の被接着物の面とを接着する。
前記第1の被接着物の面と前記第2の被接着物の面とを重ね合わせる際、必要に応じて、前記第1の被接着物の面及び/又は前記第2の被接着物の面を動かしてもよい。
【0085】
又、前記第1の実施態様においては、室温(例えば、10℃~35℃)にても硬化可能であるが、硬化を促進させるため、前記第1の被接着物の面、前記第2の被接着物の面、及び/又は、被接着物を加熱してもよい。暗反応を促進する目的においては、光照射工程の後に、加熱することが好ましい。
加熱温度としては、被接着物に影響がない範囲、例えば35℃から100℃程度に加熱して硬化を行ってもよい。
更に、前記第1の実施態様においては、必要に応じて、硬化による接着が完了するまで、前記第1の被接着物の面と前記第2の被接着物の面とが重なる方向に、それぞれ圧力をかけてもよい。
【0086】
(2液硬化型組成物セット)
本発明の2液型硬化型組成物セットは、メチレンマロネート化合物と光塩基発生剤を含む組成物Aと、ルイス酸性化合物を含む組成物Bとを含む。
例えば、前記組成物Aと前記組成物Bとを被接着物の表面に付与、好ましくは、接着する一方の被接着物の表面に前記組成物A及び前記組成物Bを付与、又は、接着する1方の被接着物の表面に前記組成物Aを付与し、他方の被接着物の表面に前記組成物Bを付与し、必要に応じて、溶媒を除去し、2つの被接着物の表面を重ね合わせて硬化接着させることができる。
【0087】
本発明の2液型硬化型組成物セットにおける前記組成物Aのメチレンマロネート化合物の好ましい態様及び前記光塩基発生剤の好ましい態様、並びに、前記組成物Bの前記ルイス酸性化合物の好ましい態様は、後述する以外は、前述した本発明の硬化型組成物におけるメチレンマロネート化合物の好ましい態様、前記光塩基発生剤の好ましい態様、及び、前記ルイス酸性化合物の好ましい態様と同様である。
又、本発明の2液型硬化型組成物セットにおける前記組成物A、及び、前記組成物Bはそれぞれ独立に、前記重合禁止剤、及び/又は、前記他の成分を含んでいてもよい。
本発明の2液型硬化型組成物セットにおける前記重合禁止剤、及び、前記他の成分の好ましい態様は、前述した本発明の硬化型組成物における前記重合禁止剤、及び、前記他の成分の好ましい態様と同様である。
又、前記組成物Bが、光塩基発生剤を更に含んでいてもよい。
【0088】
前記組成物Aにおけるメチレンマロネート化合物の含有量は、組成物Aの全固形分に対し、10質量%~99.9質量%であることが好ましく、30質量%~99.5質量%であることがより好ましく、50質量%~99.5質量%であることが更に好ましく、90質量%~99質量%であることが特に好ましい。
前記組成物Aにおける前記光塩基発生剤の含有量は、組成物Aの全固形分に対し、0.01質量%~30質量%であることが好ましく、0.1質量%~15質量%であることがより好ましく、0.2質量%~10質量%であることが更に好ましく、0.5質量%~5質量%であることが特に好ましい。
【0089】
前記組成物Bにおける前記ルイス酸性化合物の含有量は、組成物Bの全固形分に対し、1質量%~100質量%であることが好ましく、10質量%~100質量%であることがより好ましく、50質量%~100質量%であることが特に好ましい。
前記組成物Bは、溶媒を含むことが好ましい。溶媒としては、本発明の硬化型組成物において前述したものが好適に挙げられる。
前記組成物Bにおける溶媒の含有量は、組成物Bの全質量に対し、10質量%~99.99質量%であることが好ましく、50質量%~99.9質量%であることがより好ましく、80質量%~99質量%であることが特に好ましい。
【0090】
又、本発明の2液型硬化型組成物セットは、前記組成物A及び前記組成物B以外の組成物や物品を含んでいてもよい。
前記組成物A及び前記組成物B以外の組成物としては、特に制限はないが、例えば、前記組成物A及び/又は前記組成物Bを付与する被接着物の面の洗浄液、前記組成物A及び前記組成物Bの硬化物の除去液等が挙げられる。
又、前記物品としては、特に制限はないが、例えば、前記組成物A又は前記組成物Bを付与するはけ、へら、綿棒、ローラー、スプレー等の付与具、余分な前記組成物A及び前記組成物Bを除去する紙、布等の除去具等が挙げられる。
【0091】
(2液硬化型組成物セットを使用した接着物の製造方法)
本発明の2液硬化型組成物セットを使用した接着物の製造方法である本発明の接着物の製造方法の第2の実施態様は、ルイス酸性化合物を含む組成物Bを第1の被接着物の表面に付与する工程、メチレンマロネート化合物と光塩基発生剤を含む組成物Aを前記第1の被接着物の表面又は第2の被接着物の表面に付与する工程、前記組成物Bを付与した前記第1の被接着物の表面と、前記組成物Aを付与した前記第2の被接着物の表面とを貼合するか、又は、前記組成物A及び組成物Bを付与した前記第1の被接着物の表面と、第2の被接着物の表面とを貼合する工程、及び、前記第1の被接着物、又は、前記第2の被接着物の少なくともいずれかが光透過性を有する被接着物であり、前記光透過性を有する被接着物の側から前記第1の被接着物と前記第2の被接着物との間の前記硬化型組成物に光を照射する工程を含む。
【0092】
本発明の接着物の製造方法の第2の実施態様における前記組成物A及び前記組成物Bの好ましい態様は、前述した本発明の2液型硬化型組成物セットにおける前記組成物A及び前記組成物Bの好ましい態様と同様である。
【0093】
<組成物B付与工程、及び、組成物A付与工程>
本発明の接着物の製造方法の第2の実施態様は、ルイス酸性化合物を含む組成物Bを第1の被接着物の表面に付与する工程(「組成物B付与工程」ともいう。)、及び、メチレンマロネート化合物と光塩基発生剤とを含む組成物Aを前記第1の被接着物の表面又は第2の被接着物の表面に付与する工程(「組成物A付与工程」ともいう。)を含む。
前記組成物B付与工程、及び、前記組成物A付与工程は、どちらを先に行っても、同時に行ってもよい。
又、本発明の接着物の製造方法の第2の実施態様においては、1方の被接着物の表面(第1の被接着物の表面)に前記組成物A及び前記組成物Bの両方を付与し、他方の被接着物の表面(第2の被接着物の表面)には前記組成物A及び前記組成物Bを付与しても、前記組成物A及び/又は前記組成物Bを付与してもよいし、又、1方の被接着物の表面(第1の被接着物の表面)に前記組成物Aに付与し、他方の被接着物の表面(第2の被接着物の表面)に前記組成物Bを付与してもよい。
更に、前記第1の被接着物の表面と前記第2の被接着物の表面とは、それぞれ異なる被接着物の一部の面であっても、1つの被接着物における接着可能な2箇所の面であってもよい。
前記第1の被接着物の表面及び前記第2の被接着物の表面の形状は、特に制限はなく、平面、凹凸面、不定形状の面等の任意の形状であればよい。
【0094】
前記組成物A付与工程における前記組成物Aの付与量は、特に制限はなく、接着可能な量であればよく、所望に応じて、適宜選択することができる。
又、前記組成物Aの付与後、必要に応じて、溶媒を風乾、加熱乾燥等により除去してもよい。
【0095】
前記組成物B付与工程における前記組成物Bの付与量は、特に制限はなく、接着可能な量であればよいが、前記組成物Bに含まれるルイス酸性化合物の付与量が、前記組成物A付与工程における前記組成物Aによるメチレンマロネート化合物の付与量100質量部に対し、0.001質量部~1.0質量部であることが好ましく、0.001質量部~0.5質量部であることがより好ましく、0.001質量部~0.1質量部であることが特に好ましい。
又、前記組成物Bの付与後、必要に応じて、溶媒を風乾、加熱乾燥等により除去してもよい。
【0096】
前記組成物B付与工程、及び、前記組成物A付与工程に用いられる付与方法は、特に制限はなく、公知の方法により前記組成物B又は前記組成物Aを前記第1の被接着物の表面若しくは前記第2の被接着物の表面に付与することができる。
【0097】
<第2の貼合工程>
本発明の接着物の製造方法の第2の実施態様は、前記組成物Bを付与した前記第1の被接着物の表面と、前記組成物Aを付与した前記第2の被接着物の表面とを貼合するか、又は、前記組成物A及び組成物Bを付与した前記第1の被接着物の表面と、第2の被接着物の表面とを貼合する工程(以下、「第2の貼合工程」ともいう。)を含む。
前記第2の貼合工程においては、前記第1の被接着物の表面と前記第2の被接着物の表面とを重ね合わせ貼合すればよい。
【0098】
又、前記第2の光硬化工程においては、メチレンマロネート化合物の光硬化であっても、暗部硬化であっても、光硬化及び暗部硬化の両方であってもよい。
【0099】
<第2の光照射工程>
本発明の接着物の製造方法の第2の実施態様は、前記第1の被接着物、又は、前記第2の被接着物の少なくともいずれかが光透過性を有する被接着物であり、前記光透過性を有する被接着物の側から前記第1の被接着物と前記第2の被接着物との間の前記硬化型組成物に光を照射する工程(「第2の光照射工程」ともいう。)を含む。
【0100】
光硬化においては、光により光塩基発生剤より塩基が発生し、メチレンマロネート化合物がアニオン重合されて硬化し、前記第1の被接着物の面と前記第2の被接着物の面とを接着する。
また、前記第1の被接着物、及び、前記第2の被接着物は、前記第1の被接着物、又は、前記第2の被接着物の一方のみが光透過性を有する被接着物であっても、前記第1の被接着物、及び、前記第2の被接着物の両方が透過性を有する被接着物であってもよい。
光硬化において照射する光としては、紫外線等が好ましく挙げられる。紫外線の照射光源としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0101】
暗部硬化においては、前記組成物Bに含まれるルイス酸性化合物が、前記組成物Aに含まれるメチレンマロネート化合物に作用して、空気中の水分等により、メチレンマロネート化合物が硬化し、前記第1の被接着物の面と前記第2の被接着物の面とを接着する。
前記第1の被接着物の面と前記第2の被接着物の面とを重ね合わせる際、必要に応じて、前記第1の被接着物の面及び/又は前記第2の被接着物の面を動かして、前記組成物A及び前記組成物Bの混合を促進させてもよい。
【0102】
又、前記第2の実施態様においては、室温(例えば、10℃~35℃)にても硬化可能であるが、硬化を促進させるため、前記第1の被接着物の面、前記第2の被接着物の面、及び/又は、被接着物を加熱してもよい。暗反応を促進する目的においては、光照射工程の後に、加熱することが好ましい。
加熱温度としては、被接着物に影響がない範囲、例えば35℃から100℃程度に加熱して硬化を行ってもよい。
更に、前記第2の実施態様においては、必要に応じて、硬化による接着が完了するまで、前記第1の被接着物の面と前記第2の被接着物の面とが重なる方向に、それぞれ圧力をかけてもよい。
【0103】
本発明の硬化型組成物、本発明の2液型硬化型組成物セット、又は、本発明の接着物の製造方法により接着する被接着物としては、特に制限はなく、無機化合物であっても、有機化合物であっても、無機-有機複合物であってもよく、又、同じ材質であっても、異なる材質のものであってもよい。又、本発明の硬化型組成物、本発明の2液型硬化型組成物セット、又は、本発明の接着物の製造方法は、固体状の任意の形状のものを接着することができる。
被着物の例としては、前記と同様の材料を挙げることができる。
【実施例
【0104】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。又、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0105】
<メチレンマロン酸ジエチルの調製>
下記文献に従い製造したメチレンマロン酸ジエチル(以下、「DEMM」ともいう。)を使用した。純度:99質量%以上(H-NMRより)。
日本化学会誌、1972、No.3、596頁-598頁
【0106】
(比較例1)
<光硬化>
DEMMの200μLを、厚さ10mmのポリプロピレンシートで作製されたφ8mm、深さ5mmの円柱形の穴部に注ぎ込み、紫外線照射装置(SUV-16:アズワン社製)にて積算光量3J/cm(ヘレウス社製紫外線測定器(UV Power Puck)、UV-C)で上部より紫外線を照射した。
照射後、2μLのメタンスルホン酸と重水素化クロロホルムを添加し、重合を停止させた。
得られた硬化物について、H-NMR(ブルッカー社製)にてDEMMの反応率を測定し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC、東ソー(株)製HPLC8021、遊離液:クロロホルム)にて重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0107】
<暗部硬化>
DEMMを銅の試験片(底面12.7mm×12.7mmの角柱)に2滴(約5mg)を滴下し、もう一つの試験片を貼り合わせた。貼り合わせた後、接着試験片で2.586kgの重量を持ち上げることができるまでの時間をセットタイムとして、最長30分まで記録した。
【0108】
(比較例2)
ルイス酸であるトリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(以下、「Zn(OTf)」ともいう。)0.02gをアセトン2mLに加え、完全溶解させルイス酸触媒溶液を得た。
合成例1で得られたDEMM5gに対し、ルイス酸触媒溶液500μLを混合した後、真空乾燥してルイス酸触媒溶液由来のアセトンを除去し、比較例2の組成物を得た。
得られた組成物を使用して、比較例1と同様に評価した。それらの結果を表1に示す。
【0109】
(比較例3)
合成例1で得られたDEMM1.2gに対し、光塩基発生剤である9-アントリルメチル N,N-ジエチルカーバメート(富士フイルム和光純薬(株)製、商品名WPBG-018、以下「WPBG」ともいう。)0.0214gを混合し、完全に溶解するまで撹拌し、比較例3の組成物(硬化型組成物)を得た。
得られた組成物を使用して、比較例1と同様に評価した。それらの結果を表1に示す。
【0110】
(実施例1)
比較例2で得られた組成物1.2gに、光塩基発生剤であるWPBG-018の0.0214gを混合し、完全に溶解するまで撹拌し、実施例1の組成物(硬化型組成物)を得た。
得られた組成物を使用して比較例1と同様に評価した。それら結果を表1に示す。
【0111】
(実施例2)
組成物として、実施例1の組成物を使用した。
実施例1の組成物を用い、積算光量を6J/cmとした以外は、比較例1と同様の操作を行い、比較例1と同様に評価した。それらの結果を表1に示す。
【0112】
(実施例3)
組成物として、実施例1の組成物を使用した。
実施例1の組成物を用い、積算光量を9J/cmとした以外は、比較例1と同様の操作を行い、比較例1と同様に評価した。それらの結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1における組成物の各成分の数値は、組成物中の質量比を表す。
表1に示すように、実施例1~3の硬化型組成物は、光硬化及び暗部硬化の両方が可能である。
一方、表1に示すように、ルイス酸性化合物と光塩基発生剤の両方を含まない比較例1の硬化型組成物、及び、ルイス酸性化合物を含まず光塩基発生剤のみを含む比較例3の硬化型組成物は、光硬化せず、及び、暗部硬化も不満足なものであった。又、光塩基発生剤を含まずルイス酸性化合物のみを含む比較例2の硬化型組成物は、暗部硬化したものの、光硬化しなかった。
【0115】
2019年9月10日に出願された日本国特許出願第2019-164835号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。