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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】支援装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20241217BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20241217BHJP
   G06Q 30/0601 20230101ALI20241217BHJP
【FI】
G06Q10/20
G05B23/02 V
G06Q30/0601
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022004178
(22)【出願日】2022-01-14
(65)【公開番号】P2023103572
(43)【公開日】2023-07-27
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志水 政紀
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 秀人
(72)【発明者】
【氏名】堀 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】塚本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】吉川 徹哉
【審査官】松野 広一
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2014/061604(JP,A1)
【文献】特開平01-172621(JP,A)
【文献】特開2001-227935(JP,A)
【文献】特開2017-101596(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107907324(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111855209(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消耗部品を有する機器のメンテナンスを支援する支援装置であって、
少なくとも一つのコンピュータを備え、前記少なくとも一つのコンピュータは、
前記消耗部品の消耗レベルを示す指標を取得する処理と、
前記消耗レベルを示す指標が所定の閾値に達したときに、その時点において前記消耗部品の交換に要する所要期間を特定する処理と、
前記閾値に対応付けられた前記消耗部品の余命期間が、前記交換に要する所要期間よりも短いときに、前記機器の動作を制限する処理と、
前記消耗レベルを示す指標が所定の閾値に達する前に、その時点において前記消耗部品の交換に要する所要期間を特定する処理と、
前記閾値に対応付けられた前記消耗部品の余命期間が、前記交換に要する所要期間よりも短いときに、前記閾値を修正する処理と、
を実行する、
支援装置。
【請求項2】
前記機器の動作を制限する処理では、前記消耗部品の余命期間が、前記交換に要する所要期間に対して短いときほど、前記機器の動作が大きく制限される、請求項1に記載の支援装置。
【請求項3】
前記閾値を修正する処理では、前記消耗部品の余命期間が、前記交換に要する所要期間に対して短いときほど、前記閾値が大きく修正される、請求項1または2に記載の支援装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つのコンピュータは、前記消耗部品の交換に要する所要期間を管理する外部の装置と、通信可能に構成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の支援装置。
【請求項5】
前記消耗レベルを示す指標は、前記機器で測定された振動データから抽出された、前記消耗部品に対応する次数成分の強度である、請求項1からのいずれか一項に記載の支援装置。
【請求項6】
前記消耗部品は、ギア又はベアリングであって、
前記消耗部品に対応する次数成分は、前記ギアの歯数又は前記ベアリングの転動体の数に相関する、請求項に記載の支援装置。
【請求項7】
前記機器は、第1の消耗部品と第2の消耗部品とを含む、複数の消耗部品を有し、
前記消耗レベルを示す指標を取得する処理、前記消耗部品の交換に要する所要期間を特定する処理、及び、前記機器の動作を制限する処理は、前記第1の消耗部品と前記第2の消耗部品とのそれぞれについて実行され、
前記第1の消耗部品の消耗レベルを示す指標は、前記機器で測定された振動データから抽出された、第1の次数成分の強度であり、
前記第2の消耗部品の消耗レベルを示す指標は、前記機器で測定された振動データから抽出された、第2の次数成分の強度である、請求項5又は6に記載の支援装置。
【請求項8】
前記機器は、水力発電システムである、請求項1からのいずれか一項に記載の支援装置。
【請求項9】
消耗部品を有する機器のメンテナンスを支援する支援装置であって、
少なくとも一つのコンピュータを備え、前記少なくとも一つのコンピュータは、
前記消耗部品の消耗レベルを示す指標を取得する処理と、
前記消耗レベルを示す指標が、所定の閾値に達しているのか否かを判定する処理と、
前記消耗レベルを示す指標が前記閾値に達する前に、その時点において前記消耗部品の交換に要する所要期間を特定する処理と、
前記閾値に対応付けられた前記消耗部品の余命期間が、前記交換に要する所要期間よりも短いときに、前記閾値を修正する処理と、を実行する、
支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、消耗部品を有する機器のメンテナンスを支援する支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、消耗部品(例えば、宝くじ券等の当落判別機におけるインパクト印字ヘッドの印字ピン)の消耗レベルを示す指標(例えば、印字ピンの飛び出し量)が閾値に達したときに、自動で消耗部品を発注するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-086661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消耗部品の交換に要する所要期間は、当該消耗部品の在庫状況等に応じて変化し得る。このため、特許文献1の技術では、例えば、在庫不足等、消耗部品の交換に要する所要期間が通常時よりも長くなる事象が発生した場合、発注された新たな消耗部品と交換される前に、使用中の消耗部品に異常が発生し得る。その結果、機器の動作が適切に継続されないおそれがある。本明細書では、消耗部品の交換に要する所要期間が変化した場合であっても、機器の動作を適切に継続することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する技術は、消耗部品を有する機器のメンテナンスを支援する支援装置によって具現化される。支援装置は、少なくとも一つのコンピュータを備える。前記少なくとも一つのコンピュータは、前記消耗部品の消耗レベルを示す指標を取得する処理と、前記消耗レベルを示す指標が所定の閾値に達したときに、その時点において前記消耗部品の交換に要する所要期間を特定する処理と、前記閾値に対応付けられた前記消耗部品の余命期間が、前記交換に要する所要期間よりも短いときに、前記機器の動作を制限する処理と、を実行する。
【0006】
上述した支援装置は、少なくとも一つのコンピュータによって、消耗レベルを示す指標が所定の閾値に達したときに、その時点において消耗部品の交換に要する所要期間を特定する。これにより、消耗部品の消耗レベルが所定の閾値に達し、当該消耗部品の交換時期が近付いたときに、その時点において交換に要する所要期間を特定することができる。さらに、コンピュータは、閾値に対応付けられた消耗部品の余命期間が、その時点における交換に要する所要期間よりも短いときに、機器の動作を制限する。これにより、交換時期が近付いた消耗部品の消耗を抑制することができる。このため、消耗部品の実際の余命期間を延ばすことができる。このように、本明細書が開示する支援装置は、消耗部品の消耗レベルが所定の閾値に達した時点における最新の消耗部品の交換に要する所要期間に基づいて、機器の適切な動作を継続することができる。
【0007】
本明細書では、別の実施形態の支援装置も開示する。本実施形態の支援装置は、消耗部品を有する機器のメンテナンスを支援する。支援装置は、少なくとも一つのコンピュータを備える。前記少なくとも一つのコンピュータは、前記消耗部品の消耗レベルを示す指標を取得する処理と、前記消耗レベルを示す指標が、所定の閾値に達しているのか否かを判定する処理と、前記消耗レベルを示す指標が前記閾値に達する前に、その時点において前記消耗部品の交換に要する所要期間を特定する処理と、前記閾値に対応付けられた前記消耗部品の余命期間が、前記交換に要する所要期間よりも短いときに、前記閾値を修正する処理と、を実行する。
【0008】
上述した支援装置は、少なくとも一つのコンピュータによって、消耗レベルを示す指標が所定の閾値に達する前に、その時点において消耗部品の交換に要する所要期間を特定する。これにより、消耗部品の消耗レベルが所定の閾値に達する前に、その時点における交換に要する所要期間を特定することができる。さらに、コンピュータは、閾値に対応付けられた消耗部品の余命期間が最新の交換に要する所要期間よりも短いときに、閾値を修正する。これにより、閾値を、最新の所要期間に応じた閾値に修正することができる。その結果、閾値に対応付けられた消耗部品の余命期間も修正されるため、消耗レベルが所定の修正された閾値に達したときに、当該閾値に対応付けられた余命期間が最新の交換に要する所要期間よりも短くなることを防止することができる。このように、消耗部品の消耗レベルが所定の閾値に達した時点における最新の消耗部品の交換に要する所要期間に基づいて、機器の適切な動作を継続することができる。
【0009】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の支援装置10と、支援装置10がメンテナンスを支援する水力発電システム100と、のブロック図を示す。
図2】支援装置10のメモリ14内に格納されるリードタイムテーブルT1の一例を示す。
図3】各次数成分F1~F4における作動期間Tと振動強度VLとの関係を示す。
図4】第1の次数成分F1における作動期間Tと振動強度VLとの関係を示す。
図5】第1実施形態の支援装置10のCPU12が実行する処理のフロー図を示す。
図6】第2実施形態の支援装置10のCPU12が実行する処理のフロー図を示す。
図7】第3実施形態の支援装置10のCPU12が実行する処理のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本技術の一実施形態では、前記機器の動作を制限する処理では、前記消耗部品の余命期間が、前記交換に要する所要期間に対して短いときほど、前記機器の動作が大きく制限されてもよい。このような構成によると、例えば、交換に要する所要期間と余命期間とが過不足なく一致するように、機器の動作を制限することができる。
【0012】
本技術の一実施形態では、前記少なくとも一つのコンピュータは、前記消耗レベルを示す指標が所定の閾値に達する前に、その時点において前記消耗部品の交換に要する所要期間を特定する処理と、前記閾値に対応付けられた前記消耗部品の余命期間が、前記交換に要する所要期間よりも短いときに、前記閾値を修正する処理と、を実行してもよい。このような構成によると、交換に要する所要期間に応じて、閾値を変更することができる。
【0013】
本技術の一実施形態では、前記閾値を修正する処理では、前記消耗部品の余命期間が、前記交換に要する所要期間に対して短いときほど、前記閾値が大きく修正されてもよい。このような構成によると、例えば、交換に要する所要期間と余命期間とが過不足なく一致するように、閾値を修正することができる。
【0014】
本技術の一実施形態では、前記少なくとも一つのコンピュータは、前記消耗部品の交換に要する所要期間を管理する外部の装置と、通信可能に構成されていてもよい。このような構成によると、少なくとも一つのコンピュータは、例えば、外部の装置から最新の消耗部品の交換に要する所要期間を取得することができる。
【0015】
本技術の一実施形態では、前記消耗レベルを示す指標は、前記機器で測定された振動データから抽出された、前記消耗部品に対応する次数成分の強度であってもよい。但し、別の実施形態では、消耗レベルを示す指標が、振動データに由来する指標でなくてもよく、機器に応じて様々に設定されることができる。例えば、前記機器がインクジェットプリンタであって、前記消耗部品がインクカートリッジである場合、消耗レベルを示す指標は、当該インクカートリッジの残量であってもよい。
【0016】
本技術の一実施形態では、前記消耗部品は、ギア又はベアリングであってもよい。その場合、前記消耗部品に対応する次数成分は、前記ギアの歯数又は前記ベアリングの転動体の数に相関してもよい。このような構成によると、転動体の数に相関する次数成分を利用して、消耗部品を特定することができる。
【0017】
本技術の一実施形態では、前記機器は、第1の消耗部品と第2の消耗部品とを含む、複数の消耗部品を有してもよい。その場合、前記消耗レベルを示す指標を取得する処理、前記消耗部品の交換に要する所要期間を特定する処理、及び、前記機器の動作を制限する処理は、前記第1の消耗部品と前記第2の消耗部品とのそれぞれについて実行されてもよい。さらに、前記第1の消耗部品の消耗レベルを示す指標は、前記機器で測定された振動データから抽出された、第1の次数成分の強度であってもよく、前記第2の消耗部品の消耗レベルを示す指標は、前記機器で測定された振動データから抽出された、第2の次数成分の強度であってもよい。このような構成によると、機器が複数の消耗部品を備える場合に、機器で測定された振動データから抽出された次数成分を利用して、複数の消耗部品のうち、消耗レベルが高い消耗部品を特定することができる。
【0018】
本技術の一実施形態では、前記機器は、水力発電システムであってもよい。但し、別の実施形態では、機器は、例えば、プリンタであってもよい。
【0019】
(第1実施形態)
図面を参照して第1実施形態の支援装置について説明する。図1は、支援装置10と、支援装置10が支援する水力発電システム100と、の平面図を示す。支援装置10は、例えばノートパソコンであり、CPU12と、メモリ14と、を備える。なお、変形例では、支援装置10は、デスクトップ型のパソコンであってもよいし、スマートフォン、タブレット等であってもよい。支援装置10は、水力発電システム100のメンテナンスを支援する装置である。
【0020】
水力発電システム100は、水車4と、第1の発電機40と、第2の発電機50と、増速機30と、制御装置20と、を備える。水力発電システム100は、水車4の回転を、増速機30を介して各発電機40、50に伝達することによって発電する装置である。
【0021】
水車4は、水車4から一方に延びる駆動軸6を備える。駆動軸6は、水車4の中心に固定されるシャフトである。水車4は、流路2内に配置される。流路2は、Y軸方向(すなわち、図1の紙面左方)からX軸方向に(すなわち、図1の紙面上方)に向かって湾曲している。矢印D1に示されるように、流路2内の水は、Y軸方向に沿って流路2に流れる。その後、矢印D2に示されるように、流路2内の水は、水車4に向かって流れる。流路2内の水は、水車4に設けられたガイドベーンに沿って水車4を通過して、矢印D3の方向に流れる。その結果、水車4が回転する。これにより、水車4の駆動軸6も同様に回転する。駆動軸6は、増速機30の駆動回転体32に接続される。
【0022】
増速機30は、ケース31と、駆動回転体32と、第1の従動回転体34と、第2の従動回転体35と、振動センサ39と、を備える。ケース31は、各回転体32、34及び35を収容する。各回転体32、34、35は、かさ歯車(すなわち、ギア)である。駆動回転体32の斜面は、第1の従動回転体34の斜面と当接する。これにより、駆動回転体32の斜面の歯が、第1の従動回転体34の斜面の歯と噛み合う。その結果、第1の従動回転体34は、駆動回転体32が固定される駆動軸6に対して直交する。同様に、第2の従動回転体35も、駆動軸6に対して直交するように噛み合う。駆動軸6の回転は、駆動回転体32を介して、駆動軸6に直交する第1の従動回転体34及び第2の従動回転体35に伝達される。
【0023】
また、駆動回転体32の歯数は、第1の従動回転体34及び第2の従動回転体35の歯数よりも多い。第1の従動回転体34及び第2の従動回転体35は、ともに同一の歯数を有する。その結果、駆動回転体32の回転数に対して、第1の従動回転体34及び第2の従動回転体35の回転数が多くなる。これにより、増速機30は、第1の従動回転体34及び第2の従動回転体35の回転を増速する。
【0024】
振動センサ39は、増速機30の振動数、回転数を検出する。振動センサ39は、増速機30の振動数及び回転数を、増幅器振動データI3として制御装置20に送信する。
【0025】
第1の発電機40は、ケース41と、第1の入力軸46と、第1のモータ48と、ベアリング42、43と、第1の入力ギア44と、モータギア45と、モータ軸47と、を備える。ケース41は、第1の発電機40の各部品を収容する。第1の入力軸46は、ケース41を貫通するシャフトである。第1の入力軸46は、軸継手41sを介して増速機30の第1の従動回転体34と接続される。これにより、水車4の駆動軸6の回転が、増速機30の駆動回転体32及び第1の従動回転体34を介して、第1の発電機40の第1の入力軸46に伝達される。
【0026】
第1の入力軸46には、ベアリング42、43と、第1の入力ギア44と、が固定される。ベアリング42、43は、第1の入力軸46を回転可能にケース41に支持する。ベアリング42、43は、ともにいわゆるボールベアリングであり、それぞれ、複数個のボール42b、43bを備える。
【0027】
第1の入力ギア44は、いわゆる、平歯車である。第1の入力ギア44は、平歯車であるモータギア45と互いに噛み合っている。モータギア45は、モータ軸47に固定される。これにより、第1の入力軸46の回転が、モータ軸47に伝達される。その結果、モータ軸47に固定された磁石(図示省略)が回転し、第1のモータ48が発電する。このように、第1の発電機40は、水車4の回転を利用して発電する。
【0028】
振動センサ49は、第1の発電機40の振動数、回転数を検出する。振動センサ49は、第1の発電機40の振動数及び回転数を、第1の振動データI4として制御装置20に送信する。
【0029】
第2の発電機50は、ケース51と、第2の入力軸56と、第2のモータ58と、ベアリング52、53と、第2の入力ギア54と、モータギア55と、モータ軸57と、を備える。ケース51は、第2の発電機50の各部品を収容する。第2の入力軸56は、ケース51を貫通するシャフトである。第2の入力軸56は、軸継手51sを介して第2の従動回転体35と接続される。これにより、水車4の駆動軸6の回転が、増速機30の駆動回転体32及び第2の従動回転体35を介して、第2の発電機50の第2の入力軸56に伝達される。このように、第2の発電機50は、第1の発電機40と同様の構成を有する。振動センサ59は、第2の発電機50の振動数及び回転数を、第2の振動データI5として制御装置20に送信する。
【0030】
制御装置20は、CPU22と、メモリ24と、を備えるコンピュータである。制御装置20は、メモリ24内のプログラムに従って、各発電機40、50の動作を制御する。例えば、制御装置20は、各発電機40、50に予め定められた所定の発電量を発電させる通常モードに加え、より大きな発電量を発電させるパワーモード、発電量を低減するセーブモード、等を各発電機40、50に対して実行可能である。制御装置20は、各発電機40、50、及び増速機30から受信した各振動データI3、I4、I5に基づいて、各発電機40、50を制御する。
【0031】
管理装置60は、水力発電システム100のベンダに配置されるコンピュータである。管理装置60は、各発電機40、50及び増速機30の消耗部品(例えば、歯車、ギア、ベアリング)のメーカ(図示省略)から、各消耗部品の在庫状況を所定の時間ごとに受信する。これにより、管理装置60は、各消耗部品の最新の在庫状況を管理する。また、管理装置60は、消耗部品の在庫状況に加え、工場からの水力発電システム100までの物流状況等の最新情報を管理する。すなわち、管理装置60は、消耗部品の交換に要する所要期間を管理する。管理装置60は、インターネット8を介して、支援装置10と接続される。また、管理装置60は、インターネット8を介して、各消耗部品の発注を実施することができる。
【0032】
支援装置10は、メモリ14内に、リードタイムテーブルT1を記憶する。図2に示されるように、リードタイムテーブルT1は、消耗部品ごとに、閾値Th、余命期間RT、実リードタイムLTを関連付けて格納する。例えば、駆動回転体32には、閾値Th1、余命期間RT1、実リードタイムLT1が、関連づけて記憶される。同様に、第1の従動回転体34には、閾値Th2、余命期間RT2、実リードタイムLT2が、関連づけて記憶される。図示は省略したが、リードタイムテーブルT1には、上述した他の消耗部品(すなわち、ベアリング42、43、52、53、入力ギア44、54等)に対応する閾値Th等の情報が、それぞれ格納される。
【0033】
閾値Thは、消耗品の消耗レベルの閾値である。消耗レベルは、消耗部品の消耗度合いを示す値であり、その値が高いほど消耗度合いが激しいことを示す。支援装置10は、当該閾値を利用して、消耗部品の消耗レベルを識別する。支援装置10は、ある消耗部品において、消耗レベルが閾値Thに達していない場合、当該消耗部品の消耗レベルが低いため、交換の必要性はないと判定する。一方、支援装置10は、ある消耗部品において、消耗レベルが閾値Thに達した場合、当該消耗部品の消耗レベルが高いため、交換の必要性があると判定する。詳細は後述するが、本実施形態の支援装置10は、消耗レベルを示す指標として、次数成分の振動強度を利用する。ここで、次数成分とは、各消耗部品が一回転する間に発生する振動のサイクル数(すなわち、振動数)を示す。
【0034】
また、ギア(すなわち、各回転体32、34、35、各ギア44、45、54、55)に対応する次数成分は、それらの歯数に相関する。ベアリング42、43、52、53に対応する次数成分は、それらのボール42b、43b、53b、54bの数に対応する。ベアリング42、43、52、53に対応する次数成分は、それらの転動体の数に相関する。このように、支援装置10は、消耗部品の構造に相関する次数成分を利用して、各振動データI3、I4、I5に含まれる次数成分と消耗部品とを対応付けることができる。
【0035】
余命期間RTは、消耗部品の消耗レベルが閾値Thに達した時点において、その後に当該消耗部品が適切に動作すると推測される期間を示す。余命期間RTは、閾値Thに応じて変化する。例えば、閾値Thが低く設定されている場合には、余命期間RTは長くなる。閾値Thが高く設定されている場合には、余命期間RTは短くなる。
【0036】
実リードタイムLTは、ある時点における消耗部品の在庫状況、消耗部品の製造工場から水力発電システム100までの距離、交通状況、交換作業に要する期間、交換作業の作業者の人数等、によって決定される。すなわち、実リードタイムLTは、消耗部品を交換するために実際に要する期間を示す。実リードタイムLTは、その時点において変化し得る情報である。例えば、消耗部品の在庫が不足している場合、実リードタイムLTは長くなる。支援装置10は、管理装置60から、インターネット8を介して最新の在庫状況を受信し、当該在庫状況を利用して、リードタイムテーブルT1の実リードタイムLTを更新する。これにより、支援装置10は、最新の実リードタイムLTを利用して、水力発電システム100のメンテナンスを支援することができる。なお、変形例では、支援装置10は、メモリ14内に予め実リードタイムLTを記憶していてもよい。
【0037】
図3及び図4を参照して、次数成分Fと振動強度VLと作動期間Tの関係について説明する。図3及び図4は、水力発電システム100の各消耗部品(例えば、駆動回転体32)に対して、耐久試験等、様々な試験を実施することにより得られたグラフである。第1の次数成分F1は、駆動回転体32(図1参照)が有する次数成分である。振動強度VLは、振幅等、振動の強度を示す指標である。作動期間Tは、消耗部品が作動した期間である。図3に示されるように、第1の次数成分F1を有する駆動回転体32の振動強度VLは、作動期間Tが長くなるにつれて大きくなる。同様に、次数成分F2~F4を有する他の消耗部品の振動強度VLも、その大きさはそれぞれ異なるものの、作動期間Tが長くなるにつれて大きくなる。すなわち、振動強度VLは、消耗部品の消耗レベルを示す。
【0038】
図4に示されるように、駆動回転体32の振動強度VLは、作動期間Tとともに徐々に増加する。駆動回転体32の振動強度VLは、到達タイミングTxで閾値Th1に達する。その後、駆動回転体32が作動を継続すると、限界タイミングTzで限界強度Vm1を超える。限界強度Vm1は、耐久試験等において、駆動回転体32の動作に異常が確認された強度である。図4に示されるように、駆動回転体32の振動強度VLは、到達タイミングTxで閾値Th1に達してから、余命期間RTが経過した後、限界タイミングTzで限界強度Vm1に達する。このように、水力発電システム100の各消耗部品の次数成分F、閾値Th、余命期間RTは、互いに相関関係を有しており、それらの値は、耐久試験等によって得ることができる。
【0039】
図5を参照して、本実施形態の支援装置10のCPU12が実行する処理について説明する。なお、以下では、処理を実行する主体を単に支援装置10として説明する。水力発電システム100の発電中に、支援装置10の電源がオンされると、図5の処理が開始される。図5の処理が開始される前、水力発電システム100の各発電機40、50は、通常モードで発電を実行している。
【0040】
支援装置10は、制御装置20から各振動データI3~I5を受信する(ステップS1)。次いで、支援装置10は、受信した各振動データI3~I5を解析して、次数成分Fごとに振動強度VLを抽出する(ステップS2)。すなわち、支援装置10は、抽出された次数成分Fに対応する消耗部品(以下、対象消耗部品と称する)ごとに、現時点での振動強度VLを取得する。さらに、支援装置10は、対象消耗部品(例えば、駆動回転体32)に対応する閾値Th(例えば、閾値Th1)を、メモリ14内のリードタイムテーブルT1(図2参照)から取得する(ステップS4)。
【0041】
支援装置10は、ステップS2の処理で取得した対象消耗部品の振動強度VLと、ステップS4の処理で取得した閾値Thと、を比較する(ステップS6)。図4を参照して説明したように、対象消耗部品の振動強度VLが閾値Thに達していない場合、対象消耗部品の消耗レベルは低い。このため、対象消耗部品の振動強度VLが閾値Thに達していない場合(ステップS6:NO)、支援装置10は、ステップS1の処理を再度実行し、新たな振動データIを制御装置20から受信する。すなわち、支援装置10は、対象消耗部品の振動強度VLが閾値Thに達するまで、ステップS1~ステップS6の処理を繰り返す。
【0042】
対象消耗部品の振動強度VLが閾値Thに達した場合(ステップS6:YES)、支援装置10は、メモリ14内のリードタイムテーブルT1(図2参照)から、対象消耗部品に対応する実リードタイムLT(例えば、実リードタイムLT1)を特定する(ステップS8)。次いで、支援装置10は、ステップS8の処理で特定された実リードタイムLTと、ステップS4の処理で取得した閾値Thに対応付けられた余命期間RT(例えば、余命期間RT1)と、を比較する(ステップS10)。
【0043】
余命期間RTが実リードタイムLTよりも長い場合(ステップS10:NO)支援装置10は、対象消耗部品の発注を要求する発注要求信号を、インターネット8を介して管理装置60に送信する(ステップS14)。管理装置60は、対象消耗部品のメーカに対して、発注を実施する。これにより、余命期間RTが経過する前に、実リードタイムLTを振動強度VLが閾値Thに達した(すなわち、作動期間Tが限界タイミングTzに近い)対象消耗部品を、新たな消耗部品と交換することができる。その後、支援装置10は、図5の処理を終了する。
【0044】
一方、余命期間RTが実リードタイムLTよりも短い場合(ステップS10:YES)、支援装置10は、対象消耗部品を含む装置(例えば、増速機30)の動作を制限する(ステップS12)。例えば、支援装置10は、ステップS12において、各発電機40、50をセーブモードに移行する。その結果、例えば、増速機30の各回転体32、34、35の回転数が低減する。その結果、対象消耗部品(例えば、駆動回転体32)の動作制限後の余命期間RTが長くなる。
【0045】
さらに、支援装置10は、余命期間RTが実リードタイムLTに対して短いときほど、ステップS12において、各発電機40、50の出力電力を小さくする。これにより、余命期間RTが実リードタイムLTに対して短いときほど、動作制限後における対象消耗部品の余命期間RTを延長することができる。その結果、支援装置10は、動作制限後における対象消耗部品の余命期間RTを、実リードタイムLTに対して過不足なく設定することができる。このように、本実施形態の支援装置10は、最新の実リードタイムLTと余命期間RTとの比較結果に応じて、対象消耗部品の動作を制限する。これにより、実リードタイムLTが変化した場合であっても、その変化に応じて余命期間RTが長くなるように水力発電システム100を動作させることができる。その結果、支援装置10は、水力発電システム100の適切な動作を継続することができる。
【0046】
その後、支援装置10は、対象消耗部品に対応する発注要求信号を、インターネット8を介して管理装置60に送信し(ステップS14)、図5の処理を終了する。これにより、動作制限によって対象消耗部品の余命期間RTを延長しつつ、対象消耗部品と交換する新たな消耗部品を発注することができる。
【0047】
(第2実施形態)
次いで、図6を参照して、第2実施形態の支援装置10が実行する処理について説明する。第2実施形態の支援装置10は、第1実施形態の支援装置10と同様の構成を備える。
【0048】
水力発電システム100の発電中に自身の電源がオンされると、第2実施形態の支援装置は、ステップS1、S2及びS4の処理を実行した後、振動強度VLと閾値Thとを比較する前に、メモリ14内のリードタイムテーブルT1(図2参照)から、対象消耗部品に対応する実リードタイムLTを特定する(ステップS20)。
【0049】
次いで、支援装置10は、ステップS20の処理で特定された実リードタイムLTとステップS4の処理で取得した閾値Thに対応付けられた余命期間RTとを比較する(ステップS22)。余命期間RTが実リードタイムLTよりも短い場合(ステップS22:YES)、支援装置10は、対象消耗部品に対応する閾値Thを修正する(ステップS24)。具体的には、支援装置10は、対象消耗部品に対応する閾値Thをより低い値に変更する。対象消耗部品の振動強度VLが閾値Thに達する前であっても、余命期間RTが実リードタイムLTよりも短い場合、対象消耗部品の振動強度VLが当該余命期間RTと対応付く閾値Thに達した後、対象消耗部品の発注を実行しても、余命期間RTが経過する前に対象消耗部品を交換することができない。その場合、水力発電システム100は、適切に動作を継続することができない。
【0050】
このため、本実施形態の支援装置10は、余命期間RTが実リードタイムLTよりも短い場合に閾値Thをより低い値に修正することによって、修正前の閾値Thに達した後に対象消耗部品を発注する構成に比べ、早期に対象消耗部品の発注を実行することができる。その結果、水力発電システム100は、適切に動作を継続することができる。
【0051】
さらに、支援装置10は、余命期間RTが実リードタイムLTに対して短いときほど、ステップS12において、閾値Thを低い値に修正する。これにより、余命期間RTが実リードタイムLTに対して短いときほど、修正後における対象消耗部品の余命期間RTが短くなる。その結果、支援装置10は、修正後の閾値Thに対応する対象消耗部品の余命期間RTを、実リードタイムLTに対して過不足なく設定することができる。
【0052】
一方、余命期間RTが実リードタイムLTよりも長い場合(ステップS22:NO)、支援装置10は、ステップS24の処理をスキップして、ステップS26の処理を実行する。
【0053】
ステップ26の処理では、支援装置10は、振動強度VLと閾値Thとを比較する。ここで、ステップS26の処理で比較される閾値Thには、ステップS4の処理で取得した閾値Th及びステップS24の処理で修正した閾値Thのいずれか一方が用いられる。対象消耗部品の振動強度VLが閾値Thに達している場合(ステップS26:YES)、支援装置10は、対象消耗部品に対応する発注要求信号を、インターネット8を介して管理装置60に送信する(ステップS28)。その後、支援装置10は、図6の処理を終了する。
【0054】
対象消耗部品の振動強度VLが閾値Thに達していない場合(ステップS26:NO)、支援装置10は、支援装置10は、再び、ステップS1の処理を実行して、新たな振動データIを受信する。すなわち、支援装置10は、対象消耗部品の振動強度VLが閾値Thに達するまで、ステップS1~S26の処理を繰り返す。
【0055】
(第3実施形態)
図7を参照して第3実施形態の支援装置10が実行する処理について説明する。第3実施形態の支援装置10は、第1、第2実施形態の支援装置10と同様の構成を備える。第3実施形態の支援装置は、第2実施形態の支援装置10と同様にステップS1~ステップS26までの処理を実行した後、さらに、ステップS20の処理で特定した実リードタイムLTと閾値Thに対応付けられた余命期間RTとを比較する(ステップS30)。ここで、ステップS30の処理において余命期間RTを算出する閾値Thには、ステップS4の処理で取得した閾値Th及びステップS24の処理で修正した閾値Thのいずれか一方が用いられる。
【0056】
余命期間RTが実リードタイムLTよりも長い場合(ステップS30:NO)支援装置10は、対象消耗部品に対応する発注要求信号を、インターネット8を介して管理装置60に送信し(ステップS34)、図7の処理を終了する。
【0057】
一方、余命期間RTが実リードタイムLTよりも短い場合(ステップS30:YES)支援装置10は、各発電機40、50をセーブモードに設定する(ステップS32)。これにより、対象消耗部品の動作制限後における余命期間RTを延長することができる。その後、支援装置10は、対象消耗部品に対応する発注要求信号を、インターネット8を介して管理装置60に送信し(ステップS34)、図7の処理を終了する。
【0058】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上記の実施形態の変形例を以下に列挙する。
【0059】
(変形例1)第1実施形態の支援装置10は、ステップS12の処理において、余命期間RTが実リードタイムLTに対して短いときほど、各発電機40、50の出力電力を小さくしなくてもよい。その場合、支援装置10は、余命期間RTが実リードタイムLTよりも短い場合に、余命期間RTと実リードタイムLTとの差分に関わらず、各発電機40、50を、所定のセーブモードに設定してもよい。さらなる変形例では、支援装置10は、余命期間RTが実リードタイムLTよりも短い場合に、各発電機40、50の動作を停止してもよい。これにより、各発電機40、50に異常が発生する前に、各発電機40、50の動作が停止されるため、各発電機40、50の故障を抑制することができる。
【0060】
(変形例2)第2実施形態の支援装置10は、ステップS24の処理において、余命期間RTが実リードタイムLTに対して短いときほど、閾値Thを小さくしなくてもよい。その場合、支援装置10は、余命期間RTが実リードタイムLTよりも短い場合に、余命期間RTと実リードタイムLTとの差分に関わらず、閾値Thを、所定の閾値Thに修正してもよい。
【0061】
(変形例3)支援装置10は、管理装置60と同様に、水力発電システム100のベンダに配置されてもよい。
【0062】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0063】
2 :流路
4 :水車
6 :駆動軸
8 :インターネット
10 :支援装置
12、22 :CPU
14、24 :メモリ
20 :制御装置
30 :増速機
32 :駆動回転体
34 :第1の従動回転体
35 :第2の従動回転体
39、49 :振動センサ
40 :第1の発電機
41s :軸継手
42、43 :ベアリング
42b、43b :ボール
44 :第1の入力ギア
45 :モータギア
46 :第1の入力軸
47 :モータ軸
48 :第1のモータ
60 :管理装置
100 :水力発電システム
LT :実リードタイム
RT :余命期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7