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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】光源装置、発光装置及び計測装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/062 20060101AFI20241217BHJP
   H01S 5/026 20060101ALI20241217BHJP
   H01S 5/042 20060101ALI20241217BHJP
   H01S 5/183 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01S5/062
H01S5/026 612
H01S5/042 630
H01S5/183
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022014979
(22)【出願日】2022-02-02
(65)【公開番号】P2023112941
(43)【公開日】2023-08-15
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】大野 誠治
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030319(JP,A)
【文献】特開2012-206485(JP,A)
【文献】特開2021-150388(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110493913(CN,A)
【文献】特開2004-181741(JP,A)
【文献】特開2011-051319(JP,A)
【文献】米国特許第10530125(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第105049018(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイリスタを有する発光素子を備える発光部と、
前記発光部を発光させる発光素子として設定する設定部と、
前記発光素子を発光可能な状態に移行した後に、前記設定部からのオン設定をオフに移行させ、
前記発光素子を発光させる発光電流をオン/オフして当該発光素子を複数回発光させる制御部と備え
前記複数回発光させる際の発光間隔は、前記設定部からのオン設定が無い状態で、前記発光素子への発光電流をオフした後の、予め定められた、再発光が可能な期間に応じて設定されている
光源装置。
【請求項2】
前記設定部からのオン設定をオフに移行させる前に、前記発光素子を1回以上発光させる請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記発光素子に発光電流を供給する電源の接地側において発光電流をオン/オフするドライバを備え、
前記ドライバのオフ抵抗は、前記期間に応じて設定されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記ドライバのオフ抵抗は、ドライバ素子と当該ドライバ素子に並列に設けられた抵抗とで構成されていることを特徴とする請求項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記ドライバのオフ抵抗は、複数の値に切り替えられることを特徴とする請求項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記発光素子を複数回発光させる間、又は、発光させる前に前記発光電流よりも電流値の小さいパルスを供給することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項7】
前記設定部は、シフト動作して前記発光部の発光させる発光素子を設定するシフト部であって、
前記制御部は、前記シフト部に供給するシフト信号を接地電位に設定することで、当該シフト部をオフ状態に移行させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記発光素子の再発光を不能にする消去パルスを前記発光部に供給することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記発光素子と発光電流を供給する電源の接地側に発光電流をオン/オフする第1のドライバと、前記消去パルスを供給する第2のドライバと、を備え、
前記第2のドライバは、オン抵抗が前記第1のドライバのオフ抵抗に比べて小さく、当該第1のドライバがオフの際にオンになることで再発光を不能にする値に設定されていることを特徴とする請求項に記載の光源装置。
【請求項10】
サイリスタを有する発光素子を複数備える発光部と、
順にオン状態が転送され、オン状態になることにより前記発光部において発光させる発光素子を設定する設定部と、を備え、
前記発光素子のサイリスタのゲートが、抵抗を介して当該発光素子に発光電流を供給する電圧供給線に接続されている
発光装置。
【請求項11】
前記設定部は、サイリスタで構成されていることを特徴とする請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
基板を有し、
前記基板上に前記発光素子が面発光素子とサイリスタとの順で積層されて設けられ、当該基板上に当該発光素子と等価な構造体上に前記設定部のサイリスタが設けられていることを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記面発光素子と前記サイリスタとは、電気的に分離されていることを特徴とする請求項12に記載の発光装置。
【請求項14】
請求項1乃至のいずれか1項に記載された光源装置と、
前記光源装置の前記発光部から出射され、被計測物で反射された光を受光する受光部と、
を備える計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、発光装置及び計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の発光素子と、複数の当該発光素子に対応して設けられ、オン状態になることで当該発光素子が点灯するように駆動する複数の駆動素子と、を有する光源と、複数の前記発光素子を順次に点灯させる順次点灯動作と、複数の当該発光素子を同時に並行して点灯させる同時点灯動作とに切り替えて制御する制御部と、を備える発光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-158160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サイリスタを有する発光素子を備え、サイリスタをオンさせて発光素子を発光させる発光装置がある。
本発明は、サイリスタをオンさせるオン信号が不要な際には、オン信号を維持させない光源装置などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、サイリスタを有する発光素子を備える発光部と、前記発光部を発光させる発光素子として設定する設定部と、前記発光素子を発光可能な状態に移行した後に、前記設定部からのオン設定をオフに移行させ、前記発光素子を発光させる発光電流をオン/オフして当該発光素子を複数回発光させる制御部と備え、前記複数回発光させる際の発光間隔は、前記設定部からのオン設定が無い状態で、前記発光素子への発光電流をオフした後の、予め定められた、再発光が可能な期間に応じて設定されている光源装置である。
請求項に記載の発明は、前記設定部からのオン設定をオフに移行させる前に、前記発光素子を1回以上発光させる請求項1に記載の光源装置である。
請求項に記載の発明は、前記制御部は、前記発光素子に発光電流を供給する電源の接地側において発光電流をオン/オフするドライバを備え、前記ドライバのオフ抵抗は、前記期間に応じて設定されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置である。
請求項に記載の発明は、前記ドライバのオフ抵抗は、ドライバ素子と当該ドライバ素子に並列に設けられた抵抗とで構成されていることを特徴とする請求項に記載の光源装置である。
請求項に記載の発明は、前記ドライバのオフ抵抗は、複数の値に切り替えられることを特徴とする請求項に記載の光源装置である。
請求項に記載の発明は、前記制御部は、前記発光素子を複数回発光させる間、又は、発光させる前に前記発光電流よりも電流値の小さいパルスを供給することを特徴とする請求項1に記載の光源装置である。
請求項に記載の発明は、前記設定部は、シフト動作して前記発光部の発光させる発光素子を設定するシフト部であって、前記制御部は、前記シフト部に供給するシフト信号を接地電位に設定することで、当該シフト部をオフ状態に移行させることを特徴とする請求項1に記載の光源装置である。
請求項に記載の発明は、前記制御部は、前記発光素子の再発光を不能にする消去パルスを前記発光部に供給することを特徴とする請求項1に記載の光源装置である。
請求項に記載の発明は、前記制御部は、前記発光素子と発光電流を供給する電源の接地側に発光電流をオン/オフする第1のドライバと、前記消去パルスを供給する第2のドライバと、を備え、前記第2のドライバは、オン抵抗が前記第1のドライバのオフ抵抗に比べて小さく、当該第1のドライバがオフの際にオンになることで再発光を不能にする値に設定されていることを特徴とする請求項に記載の光源装置である。
請求項10に記載の発明は、サイリスタを有する発光素子を複数備える発光部と、順にオン状態が転送され、オン状態になることにより前記発光部において発光させる発光素子を設定する設定部と、を備え、前記発光素子のサイリスタのゲートが、抵抗を介して当該発光素子に発光電流を供給する電圧供給線に接続されている発光装置である。
請求項11に記載の発明は、前記設定部は、サイリスタで構成されていることを特徴とする請求項10に記載の発光装置である。
請求項12に記載の発明は、基板を有し、前記基板上に前記発光素子が面発光素子とサイリスタとの順で積層されて設けられ、当該基板上に当該発光素子と等価な構造体上に前記設定部のサイリスタが設けられていることを特徴とする請求項11に記載の発光装置である。
請求項13に記載の発明は、前記面発光素子と前記サイリスタとは、電気的に分離されていることを特徴とする請求項12に記載の発光装置である。
請求項14に記載の発明は、請求項1乃至のいずれか1項に記載された光源装置と、前記光源装置の前記発光部から出射され、被計測物で反射された光を受光する受光部と、を備える計測装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、オン信号の維持が不要な際には、オン信号を維持させないようにできる。
請求項に記載の発明によれば、発光素子の繰り返し発光が確実に行える。
請求項に記載の発明によれば、接地側から供給しない場合に比べ、発光電流の立ち上がりが早くなる。
請求項に記載の発明によれば、簡易な構成でオフ抵抗が設定できる。
請求項に記載の発明によれば、再発光が可能な期間が選択できる。
請求項に記載の発明によれば、再発光が可能な期間が調整できる。
請求項に記載の発明によれば、シフト部への電流供給が停止できる。
請求項に記載の発明によれば、発光部の初期化ができる。
請求項に記載の発明によれば、発光部の初期化が容易にできる。
請求項10に記載の発明によれば、抵抗値により発光素子の再発光が可能な期間が設定できる。
請求項11に記載の発明によれば、サイリスタでない場合に比べ、シフト動作をさせやすい。
請求項12に記載の発明によれば、発光素子をサイリスタの上に設ける場合に比べ、発光素子の特性がよくなる。
請求項13に記載の発明によれば、電気的に分離されていない場合に比べ、発光素子を接地側でオン/オフできる。
請求項14に記載の発明によれば、三次元形状を計測できる計測装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態が適用される光源装置を説明する図である。
図2】シフトサイリスタ、結合トランジスタ、発光制御サイリスタ及びVCSELにより、発光装置の動作を説明する図である。(a)は、等価回路、(b)は、シフトサイリスタと結合トランジスタとの部分における断面図である。
図3】発光装置のレイアウト及び断面を説明する図である。(a)は、レイアウト、(b)は、(a)のIIIB-IIIB線での断面である。
図4】第1の実施の形態が適用される、光源装置を動作させるタイミングチャートである。
図5】第1の実施の形態が適用されない、光源装置を動作させるタイミングチャートである。
図6】発光制御サイリスタとVCSELとの直列接続において、発光制御サイリスタにおける電圧及びVCSELの発光電流を示す図である。(a)は、設定したタイミングチャート、(b)は、発光制御サイリスタの電圧及びVCSELの発光電流である。
図7】発光制御サイリスタとVCSELとの等価回路である。(a)は、等価回路、(b)は、半導体層及びpn接合の寄生容量を示す図である。
図8】ドライバのオフ抵抗を変更した場合における、発光制御サイリスタのカソードの電圧と、VCSELの発光電流を示す図である。
図9】ドライバのオフ抵抗を変更した場合における、発光制御サイリスタのカソードの電圧と、VCSELの発光電流を示す他の図である。(a)は、発光電流の全体を示し、(b)は、(a)における発光電流を拡大した図である。
図10】VCSELの再発光が可能な期間を長く設定する方法を説明するタイミングチャートである。
図11】第2の実施の形態が適用される光源装置を説明する図である。
図12】第3の実施の形態が適用される光源装置を説明する図である。
図13】消去パルスを設けるタイミングを説明するタイミングチャートである。
図14】計測装置の構成を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
ここでは、設定部のオン状態や、サイリスタを備えた発光素子においてサイリスタのオン状態の維持が不要な際には、オン状態を維持させない光源装置を説明する。
これまで、設定部のオン状態や、サイリスタを備えた発光素子におけるサイリスタをオン状態に維持していないと発光素子がオン状態にならないだろうと考えていた。しかし、設定部のオン状態や、サイリスタを備えた発光素子におけるサイリスタをオン状態に維持すると、不要な電力が消費されるおそれがあった。
また、発光素子を発光させる発光信号をオフ(「L」)にすれば発光素子のオン状態が消去されると考えていた。しかし、発光素子がオン状態又はオン状態に移行可能なときに、発光信号をオン(「H」)にすると、本来発光させたくない発光素子が発光するといった誤動作が発生するおそれがあった。
【0009】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態が適用される光源装置1を説明する図である。図1において、紙面の右方向を+x方向とする。サイリスタ及びトランジスタを記号で示し、抵抗を長方形で示す。他の場合も同様である。
図1に示す光源装置1は、発光装置10と制御部50とを備える。
【0010】
(発光装置10)
発光装置10は、一方側(-x方向側)にGND端子と、VGK端子と、φ1端子と、φ2端子と、VLD端子と、Vdrv端子とを備える。なお、GNDは、基準電圧である接地電位(以下では、接地電位GNDと表記する。以下同様である。)、VGKは、電源電位(電源電位VGK)、VLDは、発光電流を供給する発光電圧VLD、Vdrvは、発光電流をオン/オフするドライバが出力するドライバ電圧Vdrvを意味する。
【0011】
発光装置10は、発光部11とシフト部12とを備える。発光部11は、垂直共振器面発光レーザVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)と発光制御サイリスタSとを複数備える。以下では、垂直共振器面発光レーザVCSELをVCSELと表記する。図1では、6個のVCSEL(VCSEL(1)~VCSEL(6))及び6個の発光制御サイリスタS(発光制御サイリスタS(1)~S(6))を示している。そして、VCSELのアノードと発光制御サイリスタSのカソードとが接続されている。つまり、同じ番号のVCSELと発光制御サイリスタSとが直列接続されている。そして、6個のVCSEL及び6個の発光制御サイリスタSは、一方側(-x方向側)から他方側(+x方向側)に向けて配列されている。直列接続されたVCSELと発光制御サイリスタSとがサイリスタを有する発光素子の一例である。なお、発光素子は、サイリスタのpn接合が発光する素子であってもよく、この素子もサイリスタを有する発光素子である。
【0012】
シフト部12は、シフトサイリスタTと結合トランジスタQと電源線抵抗Rg、電流制限抵抗RLと結合抵抗Rcとを複数備える。6個のシフトサイリスタT(シフトサイリスタT(1)~T(6))及び6個の結合トランジスタQ(結合トランジスタQ(1)~Q(6))を示している。なお、6個の電源線抵抗Rgと、6個の電流制限抵抗RLと、6個の結合抵抗Rcとを備えるが、これらには、番号を付さない。1個のシフトサイリスタT、結合トランジスタQ、電源線抵抗Rg、電流制限抵抗RL、及び結合抵抗Rcとでシフトユニット12aが構成されている。6個のシフトユニット12aが一方側(-x方向側)から他方側(+x方向側)に向けて配列されている。シフト部12は、一方側(-x方向側)の端部に、電源線抵抗Rgと、スタート抵抗とを備える。さらに、発光装置10は、電流制限抵抗R1、R2を備える。
【0013】
シフトユニット12aにおいて、発光制御サイリスタSと結合トランジスタQとに接続されている。シフトユニット12aにおける結合トランジスタQは、発光部11の発光制御サイリスタSに接続されている。つまり、発光制御サイリスタS(1)~S(6)は、結合トランジスタQ(1)~Q(6)と、結合トランジスタQ(1)~Q(6)は、発光制御サイリスタS(1)~S(6)と同じ番号で接続されている。ここでは、6個の発光制御サイリスタS、結合トランジスタQ、発光制御サイリスタS及びVCSELを示しているが、他の個数であってもよい。
【0014】
発光装置10において、VGK端子は電源線71、GND端子は接地線73、φ1端子はシフト信号線72-1、φ2端子はシフト信号線72-2、VLD端子は電圧供給線74、Vdrv端子は、ドライバ電圧線75に接続されている。なお、シフト信号線72-1、72-2をそれぞれ区別しない場合は、シフト信号線72と表記する。
【0015】
制御部50は、バッファBuf1、Buf2と、電源VS1、VS2と、ドライバDrvと、発光電流制限抵抗RIとを備える。バッファBuf1は、シフト信号p1を発光装置10のφ1端子に供給する。バッファBuf2は、シフト信号p2を発光装置10のφ2端子に供給する。電源VS1は、電源電位VGKを発生し、発光装置10のVGK端子に供給する。また、電源VS1は、バッファBuf1、Buf2の電源を兼ねている。すなわち、バッファBuf1,Buf2は、シフト信号p1、p2がHレベルのときは、ほぼ電源VS1の電圧を出力し、シフト信号p1、p2がLレベルのときはほぼ接地電位GNDの電圧を出力する。なお、バッファBuf1、Buf2の電源は、電源電位VGKとは独立した電源であってもよい。
【0016】
電源VS2は、発光電圧VLDを発生し、発光装置10のVLD端子に供給する。ドライバDrvは、例えばNMOSトランジスタをドライバ素子として、ゲートに印加される発光信号pIによりオン/オフされる。NMOSトランジスタは、ソースが接地され、ドレインが発光電流制限抵抗RIを介して、Vdrv端子に接続されている。ドライバDrvは、オンになると、接地電位GNDを発光装置10のVdrv端子に供給する。接地電位側(接地側)で、発光電流をオン/オフすることで、発光電流の立ち上がりが早くなる。後述するように、ドライバDrvは、予め設定されたオン抵抗Ronとオフ抵抗Roffを有する。オン抵抗Ronは、ドライバDrvがオン時の抵抗、オフ抵抗Roffは、ドライバDrvがオフ時の抵抗である。なお、オフ抵抗Roffは、NMOSトランジスタの構造によって構成してもよく、NMOSトランジスタのゲート電圧などを制御して構成してもよい。また、オフ抵抗Roffは、NMOSトランジスタのソース-ドレイン間に、NMOSトランジスタのオフ時より抵抗値の小さい抵抗を設けて構成してもよい。このようにすると、簡易にオフ抵抗Roffが設定される。なお、NMOSトランジスタの代わりに、絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの他の素子を用いてもよい。なお、NMOSトランジスタやIGBTがドライバ素子の一例である。
【0017】
発光装置10における接続関係は、拡大図によって説明する。発光制御サイリスタSを発光制御サイリスタ、シフトサイリスタTをシフトサイリスタ、結合トランジスタQを結合トランジスタと表記することがある。発光制御サイリスタSとシフトサイリスタTとを区別しないで、サイリスタと表記することがある。
【0018】
(シフトサイリスタ、結合トランジスタ、VCSEL及び発光制御サイリスタの動作)
ここでは、発光装置10の基本的な動作を説明する。
シフトサイリスタ及び発光制御サイリスタは、npnp構造のサイリスタである。サイリスタは、n型のカソードK(以下では、カソードKと表記する。以下同様とする。)、p型のゲートGp(pゲートGp)、n型のゲートGn(nゲートGn)、p型のアノードA(アノードA)を備える。なお、発光制御サイリスタSは、pゲートGpを制御に用いないため、表記しない。
【0019】
結合トランジスタは、マルチコレクタのnpnバイポーラトランジスタである。結合トランジスタは、n型のエミッタE(エミッタE)、p型のベースB(ベースB)、n型のコレクタCf、Cs(コレクタCf、Cs)を備える。
【0020】
なお、上記の符号は、サイリスタ間、結合トランジスタ間において区別しないで用いる。後述するサイリスタを構成するバイポーラトランジスタについても同様とする。ただし、サイリスタは、後述するように、シングルコレクタのnpnバイポーラトランジスタとpnpバイポーラトランジスタとの組み合わせで構成されている。よって、エミッタE、ベースB、コレクタCと表記する。以下では、図に符号を付さない場合であっても、アノードA、カソードK、nゲートGn、pゲートGp、エミッタE、ベースB、コレクタCの表記を用いる。
【0021】
シフトサイリスタT、結合トランジスタQ、発光制御サイリスタS及びVCSELは、例えばGaAsなどのIII-V属の化合物半導体で構成されている。ここでは、この化合物半導体の接合の順方向電圧(拡散電位)Vdを1.5Vとし、化合物半導体で構成されるバイポーラトランジスタの飽和電圧Vcを0.3Vとする。また、接地電位GNDを0V、電源電位VGK、発光電圧VLDを5Vとする。シフト信号p1、p2及び発光信号pIは、Lレベルが0V(「L」(0V))で、Hレベルが5V(「H」(5V))である信号とする。そして、ドライバDrvは、発光信号pIが「L」(0V)になるとオフになり、「H」(5V)になるとオンになるとする。
【0022】
図2は、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)、発光制御サイリスタS(1)及びVCSEL(1)により、発光装置10の動作を説明する図である。図2(a)は、等価回路、図2(b)は、シフトサイリスタT(1)と結合トランジスタQ(1)との部分における断面図である。図2(a)では、シフトサイリスタT(2)を合わせて示している。
【0023】
図2(a)に示すように、シフトサイリスタT(1)は、npnバイポーラトランジスタTr1(以下では、npnトランジスタTr1と表記する。)とpnpバイポーラトランジスタTr2(以下では、pnpトランジスタTr2と表記する。)との組み合わせで構成されている。npnトランジスタTr1のベースBがpnpトランジスタTr2のコレクタCに接続され、npnトランジスタTr1のコレクタCがpnpトランジスタTr2のベースBに接続されている。npnトランジスタTr1のエミッタEがシフトサイリスタT(1)のカソードK、npnトランジスタTr1のコレクタC(pnpトランジスタTr2のベースB)がシフトサイリスタT(1)のnゲートGn、pnpトランジスタTr2のコレクタC(npnトランジスタTr1のベースB)がシフトサイリスタT(1)のpゲートGp、pnpトランジスタTr2のエミッタEがシフトサイリスタT(1)のアノードAである。シフトサイリスタT(1)のカソードKであるnpnトランジスタTr1のエミッタEは、接地電位GNDが供給されるGND端子に接続された接地線73に接続されている。シフトサイリスタT(1)のアノードAであるpnpトランジスタTr2のエミッタEは、φ1端子に接続されたシフト信号線72-1に接続されている。nゲートGnは、直列接続されたスタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgとの接続点に接続されている。スタート抵抗Rsの他方(接続点でない方)は、φ2端子に接続されたシフト信号線72-2に接続されている。電源線抵抗Rgの他方(接続点でない方)は、電源電位VGKが供給されるVGK端子に接続された電源線71に接続されている。φ1端子には、シフト信号p1が供給される。φ2端子には、シフト信号p2が供給される。
【0024】
npnトランジスタである結合トランジスタQ(1)は、ベースBがシフトサイリスタT(1)のpゲートGp(npnトランジスタTr1のベースB及びpnpトランジスタTr2のコレクタC)に接続され、エミッタEが接地線73に接続されている。コレクタCfが直列接続された結合抵抗Rcと電源線抵抗Rgとを介して電源電位VGKが供給される電源線71に接続されている。結合抵抗Rcと電源線抵抗Rgとの接続点は、シフトサイリスタT(2)のnゲートGnに接続されている。
【0025】
シフトサイリスタT(1)におけるnpnトランジスタTr1と、結合トランジスタQ(1)とは、カレントミラー回路を構成する。つまり、npnトランジスタTr1に流れる電流に比例した電流が、結合トランジスタQ(1)に流れる。
【0026】
結合トランジスタQ(1)のコレクタCsは、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnに接続されるとともに、電流制限抵抗RLを介して、発光電圧VLDが供給されるVLD端子に接続された電圧供給線74に接続されている。
【0027】
前述したように、VCSEL(1)と発光制御サイリスタS(1)とは直列接続されている。つまり、VCSEL(1)のアノードAと発光制御サイリスタS(1)のカソードKとが接続されている。発光制御サイリスタS(1)のアノードAは、電圧供給線74に接続されている。VCSEL(1)のカソードKは、ドライバ電圧Vdrvが供給されるVdrv端子に接続されたドライバ電圧線75に接続されている。
【0028】
シフトサイリスタT(2)のアノードAは、φ2端子に接続されたシフト信号線72-2に接続されている。図1に示したように、奇数番号のシフトサイリスタTのアノードAは、シフト信号線72-1に接続され、偶数番号のシフトサイリスタTのアノードAは、シフト信号線72-2に接続されている。シフトサイリスタTのシフト信号線72-1、72-2との接続関係を除いて、番号2以上のシフトサイリスタT、結合トランジスタ、発光制御サイリスタS、及びVCSELの接続関係は、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタ(1)、発光制御サイリスタS(1)、及びVCSEL(1)と同様である。以下では、シフト信号p1(φ1)、シフト信号p2(φ2)と表記する場合がある。
【0029】
まず、シフトサイリスタT(1)の動作を説明する。
初めに、電源線71が電源電位VGK(5V)、接地線73が接地電位GND(0V)に設定され、シフト信号p1(φ1)、p2(φ2)が「L」(0V)であるとする。この時、シフトサイリスタT(1)を構成するnpnトランジスタTr1、pnpトランジスタTr2は、オフ状態にある。シフトサイリスタT(1)のnゲートGnは、直列接続されたスタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgとの接続点に接続されている。そして、スタート抵抗Rsの他方(接続点でない方)は、「L」(0V)のシフト信号線72-2に接続され、電源線抵抗Rgの他方(接続点でない方)は、5Vの電源線71に接続されている。よって、nゲートGnは、電圧差(5V)がスタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgとで分圧された電圧になる。スタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgとの抵抗比を、一例として1:5とすると、nゲートGnは、0.83Vになる。なお、発光信号pIは、「L」(0V)であって、ドライバDrvはオフである。よって、ドライバ電圧線75には、ドライバ電圧Vdrvが供給されていない。この状態を初期状態と表記する。
【0030】
ここで、シフト信号p1(φ1)が「L」(0V)から「H」(5V)に移行すると、シフトサイリスタT(1)のpnpトランジスタTr2のエミッタE(「H」(5V))とベースB(pゲートGp)(0.83V)との電圧差が4.17Vが順方向電圧Vd(1.5V)以上となり、エミッタE-ベースB間が順バイアスになって、pnpトランジスタTr2がオフ状態からオン状態に移行する。すると、pnpトランジスタTr2のコレクタC(npnトランジスタTr1のベースB)が、エミッタE(「H」(5V))から飽和電圧Vc(0.3V)を引いた4.7Vになる。npnトランジスタTr1のエミッタE(0V)とベースB(4.7V)との電圧差(4.7V)が順方向電圧Vd(1.5V)以上となり、エミッタE-ベースB間が順バイアスになるので、npnトランジスタTr1がオフ状態からオン状態に移行する。シフトサイリスタT(1)におけるnpnトランジスタTr1とpnpトランジスタTr2とがオン状態になるので、シフトサイリスタT(1)がオフ状態からオン状態に移行する。シフトサイリスタTがオフ状態からオン状態に移行することを、ターンオンと表記する。なお、シフトサイリスタTがオン状態からオフ状態に移行することを、ターンオフと表記する。
【0031】
初期状態において、シフト信号p1(φ1)が「L」(0V)から「H」(5V)に移行するとシフトサイリスタT(1)がターンオンしてオフ状態からオン状態に移行する。そこで、アノードAが「H」(5V)になるとターンオンしうる状態を、オン状態に移行可能な状態であると表記する。他の場合も同様とする。
【0032】
シフトサイリスタT(1)がターンオンすると、シフトサイリスタT(1)において、nゲートGnは、飽和電圧Vcの0.3Vになる。また、アノードAは、順方向電圧Vdと飽和電圧Vcとを足した電圧(Vd+Vc)、及びシフトサイリスタTの内部抵抗での電圧低下により決まる電圧になる。ここでは、アノードAは、1.9Vになるとする。つまり、シフトサイリスタT(1)がターンオンすると、シフト信号線72-1は、5Vから1.9Vに移行する。すると、シフトサイリスタT(1)のpゲートGpは、1.6Vになる。
【0033】
以上説明したように、シフトサイリスタT(1)は、nゲートGnの電圧がアノードAの電圧より順方向電圧Vd(1.5V)以上低い値となれば、ターンオンする。なお、シフトサイリスタT(1)は、シフト信号線72-1の電圧(アノードA-カソードK間の電圧)が、上記の1.9V未満になると、ターンオフする。例えば、アノードAが「L」(0V)になると、アノードA-カソードK間の電圧差が0Vになるので、シフトサイリスタT(1)は、ターンオフする。一方、シフト信号線72-1の電圧(アノードA-カソードK間の電圧差)が1.9V以上であれば、シフトサイリスタT(1)のオン状態が保持される。よって、1.9Vを保持電圧と表記する。なお、保持電圧が印加されていても、シフトサイリスタT(1)をオン状態に保持するための電流が流れていないと、シフトサイリスタT(1)のオン状態は保持されない。オン状態を保持する電流を保持電流と表記する。
【0034】
次に、結合トランジスタQ(1)の動作を説明する。
シフトサイリスタT(1)がオフ状態であれば、npnトランジスタTr1は、オフ状態である。よって、結合トランジスタQ(1)も、オフ状態である。このとき、結合トランジスタQ(1)において、エミッタEは、接地電位GND(0V)に設定されている。コレクタCfは、直列に接続された電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとを介して電源電位VGK(5V)になっている。また、コレクタCsは、電流制限抵抗RLを介して発光電圧VLD(5V)になっている。
【0035】
シフトサイリスタT(1)がターンオンする、つまりnpnトランジスタTr1がオン状態になると、上述したように、シフトサイリスタT(1)のpゲートGpが1.6Vになる。すると、結合トランジスタQ(1)はベースBがシフトサイリスタT(1)のpゲートGpに接続されているので、エミッタE-ベースB間が順方向電圧Vd(1.5V)以上、つまり順バイアスになり、結合トランジスタQ(1)は、オフ状態からオン状態に移行する。すると、コレクタCfは飽和電圧Vc(0.3V)となる(コレクタCsについては後述する。)。電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとの接続点(シフトサイリスタT(2)のnゲートGn)は、電源線71の電圧(5V)とコレクタCfの電圧(0.3V)との電圧差(4.7V)が電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとで分圧された電圧となる。電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとの抵抗比を一例として5:1とすると、電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとの接続点(シフトサイリスタT(2)のnゲートGn)は、1.08Vとなる。
【0036】
シフトサイリスタT(2)のアノードAは、シフト信号p2(φ2)が供給されるシフト信号線72-2に接続されている。シフト信号p2(φ2)は、「L」(0V)であるので、シフトサイリスタT(2)は、ターンオンしない。しかし、シフト信号p2(φ2)が「L」(0V)から「H」(5V)に移行すると、シフトサイリスタT(2)のアノードAが「H」(5V)になり、nゲートGn(1.08V)との電圧差(3.92V)が順方向電圧Vd(1.5V)以上、つまりnゲートGn-アノードA間が順バイアスになって、シフトサイリスタT(2)がターンオンする。このように複数の素子があって、その複数の素子のうちターンオンする素子が次々に移行していく動作がシフト動作である。また、本明細書における実施の形態では、このシフト動作によってターンオンやターンオフさせられる素子がシフト素子である。シフトサイリスタTを用いることで、シフト動作をさせやすい。
【0037】
最後に、発光制御サイリスタS(1)及びVCSEL(1)の動作を説明する。
結合トランジスタQ(1)のコレクタCsは、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnに接続されている。よって、結合トランジスタQ(1)がオンすると発光制御サイリスタSのアノードA-nゲートGn間のpn接合が順方向となり、コレクタCsは発光電圧VLDから発光制御サイリスタSのアノードA-nゲートGn間のpn接合を介して電流を引き込むことで、おおよそ発光電圧VLD(5V)から順方向電圧Vd(1.5V)を引いた3.5Vの電圧になる。ここで、ドライバDrvがオンになって、ドライバ電圧VdrvがGND電圧(0V)になると、VCSEL(1)のカソードKが0Vになる。よって、発光制御サイリスタS(1)のアノードAとVCSEL(1)のカソードKとの間に、発光電圧VLD(5V)とドライバ電圧Vdrv(0V)との間の電圧差(5V)が印加される。これにより、発光制御サイリスタS(1)がターンオンして、直列接続された発光制御サイリスタS(1)とVCSEL(1)とに電流が流れ、VCSEL(1)が発光する。なお、結合トランジスタQ(1)がオンになり、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnが3.5Vになった状態は、ドライバDrvがオンになると、VCSEL(1)が発光する状態である。よって、この状態、つまり結合トランジスタQ(1)がオンになり、発光制御サイリスタS(1)のアノードA-nゲートGn間が順バイアス(3.5V)になった状態を、VCSEL(1)が発光可能な状態と表記する。発光制御サイリスタSは、nゲートGnの電位によって、VCSELの発光を制御するので、発光制御サイリスタと表記する。ここでは、シフト部12のシフトサイリスタTと結合トランジスタQとがオンになり、発光制御サイリスタSのアノードA-nゲートGn間が順バイアスになることを、シフト部12からのオン設定と表記する。そして、シフト部12のシフトサイリスタTと結合トランジスタQとがオフになることを、シフト部12からのオン設定がオフに移行すると表記する。さらに、結合トランジスタQがオンになった際における、発光制御サイリスタSのnゲートGnにコレクタCsから供給される飽和電圧Vc(ここでは、0.3V)がオン信号と表記する。オン信号は、発光制御サイリスタSを発光可能な状態に移行させる。
【0038】
すなわち、電源線71が電源電位VGK(5V)、接地線73が接地電位GND(0V)に設定され、シフト信号p1(φ1)、p2(φ2)が「L」(0V)であり、ドライバDrvはオフであって、ドライバ電圧線75にドライバ電圧Vdrvが供給されていない状態が初期状態である。初期状態になると、シフトサイリスタT(1)がオン状態に移行可能な状態になる。ここで、シフト信号p1(φ1)(シフト信号線72-1)が「L」(0V)から「H」(5V)に移行すると、シフトサイリスタT(1)がターンオンしてオフ状態からオン状態に移行する。シフトサイリスタT(1)がターンオンすると、結合トランジスタQ(1)がオフ状態からオン状態に移行する。すると、発光制御サイリスタS(1)のアノードAとnゲートGnとが順バイアスとなり、VCSEL(1)が発光可能な状態になる。また、結合トランジスタQ(1)がオン状態になると、シフトサイリスタT(2)がオン状態に移行可能な状態になる。そして、シフト信号p2(φ2)(シフト信号線72-2)が「L」(0V)から「H」(5V)に移行すると、シフトサイリスタT(2)がターンオンする。なお、シフトサイリスタT(1)は、シフト信号p1(φ1)(シフト信号線72-1)が「H」(5V)から「L」(0V)に移行すると、カソードKとアノードAとが「L」(0V)になって、ターンオフする。他のシフトサイリスタT、結合トランジスタQ、発光制御サイリスタS及びVCSELも同様に動作する。
【0039】
図2(b)に示すように、発光装置10は、複数の半導体層が積層されて構成されている(後述する図3参照)。図2(b)では、シフトサイリスタT(1)及び結合トランジスタQ(1)を構成するn型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、及びp型の半導体層88が積層された部分を示す。シフトサイリスタT(1)は、n型の半導体層85をカソードK、p型の半導体層86をpゲートGp、n型の半導体層87をnゲートGn、及びp型の半導体層88をアノードAとして構成されている。一方、結合トランジスタQ(1)は、n型の半導体層85をエミッタE、p型の半導体層86をベースB、n型の半導体層87をコレクタCf、Csとして構成されている。ここで、シフトサイリスタT(1)のカソードKと結合トランジスタQ(1)のエミッタEとは、n型の半導体層85を介して電気的に接続されている。同様に、シフトサイリスタT(1)のpゲートGpと結合トランジスタQ(1)のベースBとは、p型の半導体層86を介して電気的に接続されている。そして、シフトサイリスタT(1)のnゲートGnと結合トランジスタQ(1)のコレクタCf、Csとは、共にn型の半導体層87で構成されているが、分離されている。他のシフトサイリスタT、結合トランジスタQも同様である。
【0040】
図3は、発光装置10のレイアウト及び断面を説明する図である。図3(a)は、レイアウト、図3(b)は、図3(a)のIIIB-IIIB線での断面である。図3(a)では、シフトサイリスタT(1)~(4)、結合トランジスタQ(1)~(4)、発光制御サイリスタS(1)~S(4)及びVCSEL(1)~(4)を中心に示している。図3(b)では、発光制御サイリスタS(1)、VCSEL(1)、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)、結合トランジスタQ(1)に接続された結合抵抗Rc、電源線抵抗Rgの部分の断面を示している。
【0041】
図3(b)に示すように、発光装置10は、n型の半導体基板80上にn型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83、トンネル接合層84、n型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、及びp型の半導体層88が積層されて構成されている。なお、n型の半導体基板80は、基板の一例である。そして、シフトサイリスタT、結合トランジスタQ、発光制御サイリスタS、VCSELなどの素子は、一部の半導体層がエッチングにより除去されて分離された複数のアイランドから構成されている。なお、アイランドは、メサと表記されることがあり、アイランド(メサ)を形成するエッチングをメサエッチングと表記されることがある。以下では、発光制御サイリスタS(1)及びVCSEL(1)が設けられるアイランド301、シフトサイリスタT(1)及び結合トランジスタQ(1)が設けられるアイランド302などを中心にアイランド(アイランド300、301~307)を説明する。
【0042】
アイランド300は、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)などのシフト部12(図1参照)が設けられる部分であって、n型の半導体基板80上にn型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83、トンネル接合層84、n型の半導体層85が除去されないで残されている。
【0043】
アイランド301にVCSEL(1)と発光制御サイリスタS(1)とが積層されて設けられている。アイランド302に図2(b)に示したシフトサイリスタT(1)及び結合トランジスタQ(1)が設けられている。アイランド303に電流制限抵抗RL、アイランド304に電源線抵抗Rg及び結合抵抗Rcが設けられている。アイランド305に電源線抵抗Rg及びスタート抵抗Rsが設けられている。アイランド306に電流制限抵抗R1、アイランド307に電流制限抵抗R2が設けられている。
【0044】
以下では、図3(a)、(b)を参照してレイアウト及び断面を説明する。
アイランド301の周囲は、n型の半導体層81、活性層82、半導体層83、トンネル接合層84、半導体層85~88がエッチングにより除去されている。p型の半導体層88上にp型の半導体層とオーミック接触しやすいpオーミック電極321が設けられている。p型の半導体層88を除去して露出させたn型の半導体層87上にn型の半導体層とオーミック接触しやすいnオーミック電極331が設けられている。VCSEL(1)は、n型の半導体層81をカソードK(図2(a)参照)、活性層82を活性層、p型の半導体層83をアノードAとする。発光制御サイリスタS(1)は、n型の半導体層85をカソードK、p型の半導体層86をpゲートGp(pゲート層)、n型の半導体層87をnゲートGn(nゲート層)、n型の半導体層88をアノードAとする。nオーミック電極331は、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnである。
【0045】
図3(b)に示すように、n型の半導体基板80上に、VCSEL(1)が設けられ、VCSEL(1)上に、トンネル接合層84を介して、発光制御サイリスタS(1)が設けられている。トンネル接合層84は、VCSEL(1)のp型の半導体層83と発光制御サイリスタS(1)のn型の半導体層85とが、逆バイアスになって電流が流れにくくなることを抑制する。トンネル接合層84は、n型の不純物を高濃度に添加したn++層と、p型の不純物を高濃度に添加したp++層との接合であって、逆バイアスであってもトンネル効果によって電流が流れる。
【0046】
アイランド301は、nオーミック電極331が設けられる部分を除いて、円柱状である。pオーミック電極321は、円柱状であるアイランド301のp型の半導体層88上に、円環状に設けられている。そして、エッチングにより露出させたp型の半導体層83を構成する半導体層の一部が円柱状の外周部から酸化されることで、円環状に電流が流れにくい電流阻止部βとなっている。一方、酸化されなかった中央部は、電流が流れやすい電流通過部αとなっている。そして、円環状のpオーミック電極321の中央部から光が出射される。なお、電流阻止部βは、p型の半導体層83に、AlAs層やAl濃度が高いAlGaAs層を設け、露出した外周部から酸化させて、Alを酸化することで構成される。VCSEL(1)の周辺部は、エッチングに起因した欠陥が多く、非発光再結合が起こりやすい。よって、電流阻止部βを設けることで、非発光再結合に消費される電力が抑制される。電流阻止部βを設けることで、低消費電力化及び光取り出し効率の向上が図れる。なお、光取り出し効率とは、電力当たりに取り出すことができる光量である。
【0047】
図3(a)(b)では、VCSEL(1)は、発光制御サイリスタS(1)を透過して光を出射する。なお、アイランド301の光が出射する部分の発光制御サイリスタS(1)(トンネル接合84、半導体層85~88)を除去してもよい。この場合、発光制御サイリスタS(1)は、円筒状になる。このようにすると、VCSEL(1)が出射する光が、発光制御サイリスタS(1)で吸収されて光量が低下することが抑制される。
【0048】
アイランド302の周囲は、p型の半導体層86、n型の半導体層87、p型の半導体層88がエッチングにより除去されている(図2(b)参照)。p型の半導体層88上にpオーミック電極322が設けられている。pオーミック電極322は、シフトサイリスタT(1)のアノードAに接続される電極(アノードA電極)であって、シフト信号p1(φ1)が供給されるシフト信号線72-1に接続されている。p型の半導体層88を除去して露出させたn型の半導体層87上にnオーミック電極332、333、334が設けられている。nオーミック電極332、334は、結合トランジスタQ(1)のコレクタCs、Cfに接続される電極(コレクタCf、Cs電極)である。なお、pオーミック電極322とnオーミック電極332、334との間のn型の半導体層87は除去されている(図2(b)参照)。nオーミック電極333は、シフトサイリスタT(1)のnゲートGnに接続される電極(nゲートGn電極)である。
【0049】
アイランド303の周囲は、p型の半導体層86、n型の半導体層87、p型の半導体層88がエッチングにより除去されている。さらに、アイランド303において、露出されたn型の半導体層87上に、2個のnオーミック電極335、336が設けられている。2個のnオーミック電極335、336間におけるn型の半導体層87が電流制限抵抗RLである。
【0050】
アイランド304は、アイランド303と同様に構成されている。p型の半導体層88が除去されて露出されたn型の半導体層87上に、3個のnオーミック電極337、338、339が設けられている。そして、nオーミック電極337、338間におけるn型の半導体層87が結合抵抗Rc、nオーミック電極338、339間におけるn型の半導体層87が電源線抵抗Rgである。
【0051】
アイランド305は、アイランド304と同様に構成され、スタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgが設けられている。アイランド306、307は、アイランド303と同様に構成され、電流制限抵抗R1、R2が設けられている。
【0052】
アイランド300の露出したn型の半導体層85上に、nオーミック電極338が設けられている。n型の半導体基板80の裏面には、裏面電極79が設けられている。
【0053】
次に、接続関係を説明する。なお、図3(a)では、接続に用いられる配線(電源線71、シフト信号線72-1、72-2、電圧供給線74)を直線で示している。
アイランド301の発光制御サイリスタS(1)のアノードA電極であるpオーミック電極321は、発光電圧VLDが供給される電圧供給線74に接続されている。アイランド301の発光制御サイリスタS(1)のnゲートGn電極であるnオーミック電極331は、アイランド302の結合トランジスタQ(1)のコレクタCs電極であるnオーミック電極332に接続されている。nオーミック電極332は、アイランド303に設けられた電流制限抵抗RLのnオーミック電極336に接続されている。アイランド303のnオーミック電極335は、電圧供給線74に接続されている。
【0054】
アイランド302のシフトサイリスタT(1)のアノードA電極であるpオーミック電極322は、シフト信号線72-1に接続されている。シフト信号線72-1は、アイランド306に設けられた電流制限抵抗R1を介して、シフト信号p1が供給されるφ1端子に接続されている。アイランド302のシフトサイリスタT(1)のnゲートGn電極であるnオーミック電極333は、アイランド305に設けられた電源線抵抗Rgとスタート抵抗Rsとの接続点であるnオーミック電極(符号なし)に接続されている。アイランド302の結合トランジスタQ(1)のコレクタCf電極であるnオーミック電極334は、アイランド304の結合抵抗Rcの一方のnオーミック電極337に接続されている。
【0055】
アイランド304の結合抵抗Rcの他方のnオーミック電極338は、シフトサイリスタT(2)のnゲートGn電極であるnオーミック電極(符号なし)に接続されている。アイランド304の電源線抵抗Rgの他方の電極であるnオーミック電極339は、電源電位VGKが供給される電源線71に接続されている。
【0056】
アイランド305のスタート抵抗Rsの一方のnオーミック電極(符号なし)は、シフト信号線72-2に接続されている。アイランド305の電源線抵抗Rgの他方のnオーミック電極(符号なし)は、電源線71に接続されている。シフト信号線72-2は、アイランド307に設けられた電流制限抵抗R2を介してシフト信号p2(φ2)が供給されるφ2端子に接続されている。
【0057】
なお、シフト信号線72-1は、奇数番号のシフトサイリスタTのアノードA電極であるpオーミック電極に接続され、シフト信号線72-2は、偶数番号のシフトサイリスタTのアノードA電極であるpオーミック電極に接続されている。
【0058】
他のシフトサイリスタT、結合トランジスタQ、発光制御サイリスタS、及びVCSELは、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)、発光制御サイリスタS(1)及びVCSEL(1)と同様に構成されている。
【0059】
アイランド300の露出したn型の半導体層85のnオーミック電極338は、接地電位GNDが供給されるGND端子になっている。そして、n型の半導体基板80の裏面の裏面電極79は、ドライバ電圧Vdrvが供給されるVdrv端子である。
【0060】
シフトサイリスタT、結合トランジスタQは、発光制御サイリスタS及びVCSELが構成される層と等価な積層半導体層(構造体)上に設けられている。しかし、n型の半導体層85にnオーミック電極338を設けて、接地電位GNDに設定している。一方、n型の半導体基板80の裏面の裏面電極79には、ドライバ電圧Vdrv(≧0V)が供給される。すなわち、p型の半導体層83のアノードAの電位は、n型の半導体層81のカソードKの電位より必ず低くなり、n型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83で形成されるpn接合は順方向にならない。よって、アイランド300に含まれる半導体層85は裏面電極79から絶縁されている。このように、発光部11とシフト部12とが電気的に分離されていることにより、VCSELに供給する発光電流が接地電位側(接地側)でオン/オフされる。
【0061】
以上説明したように、発光装置10は、1の半導体で構成された半導体基板80に設けられている。
【0062】
図4は、第1の実施の形態が適用される、光源装置1を動作させるタイミングチャートである。横軸は時間であって、時刻a~時刻rのアルファベット順に経過するとする。なお、時刻c~時刻dの間に、時刻c~cを設け、時刻q~時刻rの間に、時刻q~qを設けている。図4では、シフト信号p1、p2及び発光信号pIの時間に対する変化を示し、オン状態になるシフトサイリスタT、発光制御サイリスタS及びVCSELの番号を表記している。なお、発光制御サイリスタS及びVCSELを、S/VCSELと表記する。
【0063】
ここでは、図1に示した発光装置10において、VCSEL(1)とVCSEL(6)とを発光させるとする。なお、初期状態からVCSEL(1)を発光させた後、発光装置10を初期状態に戻したのちに、VCSEL(6)を発光させている。つまり、VCSEL(1)及びVCSEL(6)を、発光させる。このようにすることで、VCSELを任意に選んで発光させられる。言い換えると、VCSELをランダムに発光させられる。
【0064】
図2で説明したように、VCSEL(1)は、シフトサイリスタT(1)をオン状態にすることで発光させられる。VCSEL(6)は、シフトサイリスタT(6)をオン状態にすることで発光させられる。なお、VCSEL(1)を、時刻b、時刻c、時刻c、時刻c、時刻c、時刻c、時刻cにおいて、間欠的に発光させている。また、VCSEL(6)を、時刻p、時刻q、時刻q、時刻q、時刻q、時刻q、時刻qにおいて、間欠的に発光させている。なお、間欠的な個々の発光を発光パルスと表記する。発光パルス間の間隔(例えば、発光パルスが消光した時刻cから次の発光パルスが発光する時刻cまでの期間)は、発光パルス間で同じである。さらに、発光パルスのパルス幅(例えば、発光パルスが発光した時刻bから発光パルスが消光する時刻cまでの期間)は、発光パルス間で同じである。このように間欠的に発光させると、発光制御サイリスタSを発光可能な状態に維持しやすく、一旦シフトサイリスタTで発光可能な状態にした後は、シフトサイリスタTのオンにかかわらず、再発光させやすくなる。発光パルスのパルス幅を発光パルス幅、発光パルス間の間隔を発光パルス間隔と表記することがある。なお、間欠的に発光させていればよく、各発光パルスのパルス幅とパルス間隔とを異ならせてもよい。各発光パルスのパルス幅とパルス間隔とを同じにしなくてもよいが、同じにすると制御しやすい。なお、発光パルス間隔を再発光可能な期間よりも長くしてしまうと、再発光が不能になってしまうので、発光パルス間隔は再発光可能のうちに再び発光パルスがくるようにしている。
【0065】
図1を参照しつつ、図4のタイミングチャートを詳細に説明する。
時刻aの前は、初期状態である。初期状態とは、電源線71が電源電位VGK(5V)、接地線73が接地電位GND(0V)に設定され、シフト信号p1(φ1)、p2(φ2)が「L」(0V)であり、ドライバDrvはオフであって、ドライバ電圧線75にドライバ電圧Vdrvが供給されていない状態である。このとき、シフトサイリスタT(1)は、オン状態に移行可能な状態になっている。
【0066】
時刻aにおいて、シフト信号p1を「L」(0V)から「H」(5V)に移行させると、シフトサイリスタT(1)がターンオンしてオフ状態からオン状態に移行する。そして、発光制御サイリスタS(1)のアノードA-nゲートGn間が順バイアスになり、VCSEL(1)が発光可能な状態になる。
時刻bにおいて、発光信号pIを「L」(0V)から「H」(5V)に移行させる。ドライバDrvがオフからオンになり、ドライバ電圧Vdrvが接地電位GND(0V)になる。すると、発光制御サイリスタS(1)がターンオンして、発光制御サイリスタS(1)のアノードA-VCSEL(1)のカソードK間に、発光電圧VLD(5V)が印加される。すると、直列接続された発光制御サイリスタS(1)とVCSEL(1)とに電流が流れて、VCSEL(1)が発光する。
【0067】
時刻cにおいて、シフト信号p1を「H」(5V)から「L」(0V)に移行させると、シフトサイリスタT(1)がターンオフしてオン状態からオフ状態に移行する。
また、時刻cにおいて、発光信号pIを「H」(5V)から「L」(0V)に移行させると、発光制御サイリスタS(1)のアノードA-VCSEL(1)のカソードK間に電流が流れなくなり、VCSEL(1)が発光を停止(消光)する。
この後、時刻cから時刻dまでの間において、発光信号pIを「L」(0V)から「H」(5V)へ、「H」(5V)から「L」(0V)へと4回変化させることで、VCSEL(1)を4回発光させている。
【0068】
時刻cから時刻dまでの間において、シフト信号p1(φ1)は「L」(0V)であって、シフトサイリスタT(1)はオフ状態であって、シフトサイリスタT(1)及び結合トランジスタQ(1)には電流が流れていない。他のシフトサイリスタTも同様である。よって、シフト部12(図1参照)において、電力が消費されることが抑制される。つまり、結合トランジスタQ(1)からのオン信号の維持が不要な際には、オン信号を維持しないようにしている。
【0069】
時刻dにおいて、初期状態になる。このとき、シフトサイリスタT(1)は、オン状態に移行可能な状態になっている。
【0070】
時刻eにおいて、シフト信号p1を「L」(0V)から「H」(5V)に移行させると、時刻aと同様に、シフトサイリスタT(1)がターンオンしてオフ状態からオン状態に移行する。
時刻fにおいて、シフト信号p2を「L」(0V)から「H」(5V)に移行させると、シフトサイリスタT(2)がターンオンする。
【0071】
時刻gにおいて、シフト信号p1を「H」(5V)から「L」(0V)に移行させると、シフトサイリスタT(1)がターンオフする。
以下順に、時刻hにおいて、シフトサイリスタT(3)をターンオンさせ、時刻iにおいて、シフトサイリスタT(2)をターンオフさせる。さらに。時刻jにおいて、シフトサイリスタT(4)をターンオンさせ、時刻kにおいて、シフトサイリスタT(3)をターンオフさせる。時刻lにおいて、シフトサイリスタT(5)をターンオンさせ、時刻mにおいて、シフトサイリスタT(4)をターンオフさせる。時刻nにおいて、シフトサイリスタT(6)をターンオンさせ、時刻oにおいて、シフトサイリスタT(5)をターンオフさせる。このとき、発光制御サイリスタS(6)のアノードA-nゲートGn間が順バイアスになって、VCSEL(6)が発光可能な状態になる。
【0072】
時刻pにおいて、発光信号pIを「L」(0V)から「H」(5V)に移行させる。ドライバDrvがオフからオンになり、ドライバ電圧Vdrvが接地電位GND(0V)になる。すると、時刻bと同様に、VCSEL(6)が発光する。
【0073】
時刻qにおいて、シフト信号p2を「H」(5V)から「L」(0V)に移行させると、シフトサイリスタT(6)がターンオフする。
また、時刻qにおいて、発光信号pIを「H」(5V)から「L」(0V)に移行させると、VCSEL(6)が発光を停止(消光)する。
この後、時刻qから時刻rまでの間において、発光信号pIを「L」(0V)から「H」(5V)へ、「H」(5V)から「L」(0V)へと4回変化させることで、VCSEL(6)を4回発光させている。
【0074】
時刻qから時刻rまでの間において、シフト信号p2(φ2)は「L」(0V)であって、シフトサイリスタT(6)はオフ状態であって、シフトサリスタT(6)及び結合トランジスタQ(6)には、電流が流れていない。他のシフトサイリスタT及び結合トランジスタQも同様である。よって、シフト部12(図1参照)において、電力が消費されることが抑制される。つまり、結合トランジスタQ(6)からのオン信号の維持が不要な際には、オン信号を維持しないようにしている。
【0075】
以上説明したように、シフト部12は、隣接する2個のシフトサイリスタTの内、シフトの川上に位置するシフトサイリスタTがオン状態にした後、シフトの川下に位置するシフトサイリスタTをオン状態にし、その後、シフトの川上に位置するシフトサイリスタTをオフ状態にする。このように、シフト部12では、隣接する2個のシフトサイリスタTが同時にオン状態になる期間(例えば、時刻fから時刻gまでの間)を設けた、位相を180度ずらしたシフト信号(シフト信号p1及びシフト信号p2)により、シフトサイリスタTのシフト動作によりオン状態がシフトされる。
【0076】
図5は、第1の実施の形態が適用されない、光源装置1を動作させるタイミングチャートである。なお、このタイミングチャートを従来例と表記する。発光装置10は、同じであり、図5の横軸は、図4と同様である。
【0077】
図5に示す従来例では、VCSEL(1)の発光を間欠的に繰り返す時刻cから時刻dまでの期間において、シフトサイリスタT(1)をオン状態に保持している。同様に、VCSEL(6)が発光を間欠的に繰り返す時刻qから時刻rまでの期間において、シフトサイリスタT(6)をオン状態に維持している。これらの期間において、シフトサイリスタT(1)又はシフトサイリスタT(6)には、オン状態を保持する電流が流れ続けている。よって、従来例は、図4に示した第1の実施の形態が適用されるタイミングチャートで示した光源装置1の動作に比べ、電力の消費が多い。
【0078】
次に、シフトサイリスタTをオフ状態にした期間(例えば、図4における時刻cから時刻dまでの期間)において、VCSELを間欠的に発光させることを説明する。
【0079】
図6は、発光制御サイリスタS(1)とVCSEL(1)との直列接続において、発光制御サイリスタS(1)における電圧及びVCSEL(1)の発光電流を示す図である。図6(a)は、設定したタイミングチャート、図6(b)は、発光制御サイリスタS(1)の電圧及びVCSEL(1)の発光電流である。図6(a)は、図4に示したタイミングチャートの時刻aから始まる一部である。なお、時刻cから時刻d(図4参照)までの間に、時刻sから時刻yをアルファベット順に追加している。図6(b)では、横軸が時間(ns)、左縦軸が発光制御サイリスタS(1)のpゲートGp、nゲートGn、カソードKの電圧(V)である。また、右縦軸がVCSEL(1)の発光電流(mA)である。
【0080】
図6(a)の設定したタイミングチャートを説明する。
時刻aにおいて、シフト信号p1を「L」(0V)から「H」(5V)に移行させて、シフトサイリスタT(1)をターンオンさせる。時刻bにおいて、発光信号pIを「L」(0V)から「H」(5V)に移行させて、VCSEL(1)を発光させる。この時刻を図6(b)の時間軸における100nsとする。そして、時刻bから10ns経過した時刻cにおいて、シフト信号p1を「H」(5V)から「L」(0V)に移行させて、シフトサイリスタT(1)をターンオフさせる。時刻cから10ns経過した時刻sにおいて、発光信号pIを「H」(5V)から「L」(0V)に移行させて、VCSEL(1)を消光させる。時刻sから100ns休止した時刻tにおいて再び発光信号pIを「L」(0V)から「H」(5V)に移行させて、VCSEL(1)を再発光させる。この後、時刻bから時刻tの発光信号pIを繰り返させる。つまり、VCSEL(1)は、100nsの時刻bから20ns間発光して消光し、100ns休止させた後に20ns再発光させる。そして、同じ時間間隔で再発光を繰り返させる。ここで、時刻bから時刻sまでが発光パルスであり、時刻bから時刻sまでの期間が発光パルスの幅、時刻sから時刻tまでの期間が発光パルスのパルス間隔である。他の場合も同様である。発光パルスのパルス間隔を発光間隔と表記することがある。
【0081】
図6(b)は、図1における発光電流制限抵抗RIを100Ω、電源VS1が供給する電源電位VGKと電源VS2が供給する発光電圧VLDとを共に5Vとし、ドライバDrvのオン抵抗Ronを1Ω、オフ抵抗Roffを1MΩとして、シミュレーションした結果である。pゲートGpは取り出していないが、図6(b)には、pゲートGpの電圧を示している。
【0082】
図7は、発光制御サイリスタS(1)とVCSEL(1)との等価回路である。図7(a)は、等価回路、図7(b)は、半導体層及びpn接合の寄生容量を示す図である。図7(b)には、VCSEL(1)における、カソードKを構成するn型の半導体層81、アノードAを構成するp型の半導体層83と、発光制御サイリスタSにおける、カソードKを構成するn型の半導体層85、pゲートGpを構成するp型の半導体層86、nゲートGnを構成するn型の半導体層87、アノードAを構成するp型の半導体層88を示している(図3(b)参照)。活性層82、トンネル接合層84を省略している。
【0083】
VCSEL(1)における、カソードK(n型の半導体層81)とアノードA(p型の半導体層83)とのpn接合に寄生容量Cvが存在する。発光制御サイリスタS(1)における、カソードK(n型の半導体層85)とpゲートGp(p型の半導体層86)とのpn接合に寄生容量Cgk、pゲートGp(p型の半導体層86)とnゲートGn(n型の半導体層87)とのpn接合に寄生容量Cgg、nゲートGn(n型の半導体層87)とアノードA(p型の半導体層88)とのpn接合に寄生容量Cagが存在する。なお、VCSEL(1)のアノードA(p型の半導体層83)と発光制御サイリスタS(1)のカソードK(n型の半導体層85)との間にはトンネル接合層84が存在して同電位となる。よって、VCSELのアノードA(p型の半導体層83)と発光制御サイリスタS(1)のカソードK(n型の半導体層85)との間には寄生容量を生じない。
【0084】
図7(a)、(b)を参照して、図6(a)のタイミングチャートを説明する。
時刻aにおいて、シフトサイリスタT(1)がターンオンすると、結合トランジスタQ(1)のコレクタCsが、発光制御サイリスタSのnゲートGnから電流を引き込み始める。ここで、発光電圧VLD(電圧供給線74)が5Vであるので、発光制御サイリスタS(1)のアノードAの電圧は、5Vである。よって、発光制御サイリスタS(1)のアノードAとnゲートGnとの間が順バイアスになり、nゲートGnは、アノードAの電圧から順方向電圧Vd(1.5V)を引いた3.5Vになる。pゲートGpの電圧は、アノードAの電圧から飽和電圧Vc(0.3V)を引いた4.7Vになる。また、カソードKの電圧は、VCSEL(1)の順方向電圧Vd(1.5V)が加味されて、pゲートGpの電圧より2×Vd低い1.7Vになる。これが、図6(a)の時刻bの直前の状態であり、図6(b)の時間軸における100nsの直前の状態である。
【0085】
時刻bにおいて、発光信号pIが「L」(0V)から「H」(5V)になってドライバDrvがオンになると、VCSELのカソードKが接続されたドライバ電圧線75は、ドライバDrv、発光電流制限抵抗RIを介して、接地電位GNDになる。これにより、発光制御サイリスタS(1)がターンオンし、VCSEL(1)が発光する。図6(b)に示すシミュレーション結果では、発光電流が流れることで、nゲートGn、pゲートGp、カソードKの各電圧が、3.2V、4.7V、1.7V程度になっている。
【0086】
時刻cにおいて、シフト信号p1が「H」(5V)から「L」(0V)に移行しても、VCSEL(1)が発光しているので、nゲートGnの電圧は変化しない。
【0087】
時刻sにおいて、発光信号pIが「H」(5V)から「L」(0V)になってドライバDrvがオフになると、ドライバDrvは、1Ωのオン抵抗Ronから1MΩのオフ抵抗Roffに切り替わる。オフ抵抗Roffが大きいと、発光制御サイリスタS(1)のアノードA-VCSEL(1)のカソードKとの間の電流は、保持電流以下となり、発光制御サイリスタSがターンオフしオン状態からオフ状態に移行して、VCSEL(1)が消光する。このとき、nゲートGnは電流制限抵抗RLを介して発光電圧VLD(5V)の電圧供給線74に接続されているので、nゲートGnの電圧が、発光電圧VLD(5V)に向かって上昇する。すなわち、寄生容量Cag(容量をCagとする)が電流制限抵抗RL(抵抗値をRLとする)を介して、RL×Cagの時定数で放電する。一方、寄生容量Cgg、Cgk、Cvに蓄積された電荷は移動できないので、nゲートGnの電圧が上昇した分だけpゲートGp、カソードKの電圧が上昇する。図6(b)では、nゲートGn、pゲートGp、カソードKの電圧は、5V、6V、3V程度になっている。
【0088】
時刻tにおいて、発光信号pIが「L」(0V)から「H」(5V)になってドライバDrvが再びオンになると、VCSEL(1)のカソードKが接続されたドライバ電圧線75が急に接地電位GND(0V)に向かって変化する。このため、寄生容量Cag、Cgg、Cgkを貫通する変位電流が流れ、これをしきい電流として発光制御サイリスタS(1)がターンオンし、VCSEL(1)が発光する。
時刻uにおいて、発光信号pIが「H」(5V)から「L」(0V)になってドライバDrvがオフになると、時刻sと同様にして、発光制御サイリスタSがターンオフし、VCSEL(1)が消光する。時刻sから時刻tまでを繰り返すことにより、VCSEL(1)は、間欠的に複数回発光する。
【0089】
発光制御サイリスタSのオフ状態(オフ)、又は発光制御サイリスタSをオフにするとは、発光制御サイリスタSのオン状態を維持する信号が供給されていないという意味であって、発光制御サイリスタSをオフにする信号を供給するという意味ではない。上述したように、結合トランジスタQのコレクタCsがオフ状態になると、発光制御サイリスタSのnゲートGnに発光制御サイリスタSをオン状態に移行可能な状態にする信号が供給されなくなる。しかし、発光制御サイリスタSは、蓄積された電荷によりオン状態に移行可能な状態がしばらくの間維持されている。
【0090】
図6(a)では、時刻cにおいて、シフト信号p1を「H」(5V)から「L」(0V)に移行させて、シフトサイリスタT(1)をターンオフさせてから、時刻sにおいて、発光信号pIを「H」(5V)から「L」(0V)に移行させて、VCSEL(1)を消光させている。このようにすることで、発光制御サイリスタS(1)のカソードKを高い電圧に設定して、VCSEL(1)の再発光が確実に行える。図6(a)では、シフトサイリスタT(1)をターンオフさせる前に、VCSEL(1)を1回発光させているが、複数回発光させてもよい。
【0091】
図8は、ドライバDrvのオフ抵抗Roffを変更した場合における、発光制御サイリスタS(1)のカソードKの電圧と、VCSEL(1)の発光電流を示す図である。図8は、オフ抵抗Roffを、50kΩ、100kΩ、200kΩ、500kΩ及び1MΩとして、シミュレーションした結果である。なお、設定したタイミングチャートは、図6(a)である。
【0092】
オフ抵抗Roffが小さいほど、VCSEL(1)を消光した後の、発光制御サイリスタS(1)のカソードKの電圧の低下が大きい。オフ抵抗Roffを100kΩ、200kΩ、500kΩ及び1MΩとした場合、図6(a)の発光制御サイリスタS(1)をオフ状態にした後、つまりシフト部12をオフにした後の時刻tにおいて、再発光する。つまり、シフト部12をオフにした後であっても、VCSEL(1)を間欠的に複数回発光させられる(再発光が可能になる)。
【0093】
一方、オフ抵抗Roffを50kΩとした場合では、図6(a)の発光制御サイリスタS(1)をオフ状態にした後、つまりシフト部12をオフにした後の時刻tにおいて、発光しない。これは、ドライバDrvをオンにしても、VCSEL(1)のカソードKが接続されたドライバ電圧線75の電圧変化が小さく、変位電流が小さいため、発光制御サイリスタS(1)がターンオンしないことによる。
【0094】
シミュレーションにおいて、発光制御サイリスタS(1)がターンオンしなくなるカソードKの電圧は、0.9V未満であった。発光制御サイリスタSがターンオンしなくなり、VCSEL(1)は、再発光しなくなる(再発光が不能になる)。カソードKの電圧は、各pn接合の寄生容量(図7(b)の寄生容量Cgg、Cgk、Cv)、発光制御サイリスタSのしきい電流、及びドライバ電圧線75の電圧変化の速さdV/dtなどで決まる。発光制御サイリスタSは、容量部の一例であり、直列接続された発光制御サイリスタSとVCSELとは、容量部を有する発光素子の一例である。
【0095】
シフト部12をオフにした後、VCSELを間欠的に発光させるには、ドライバDrvのオフ抵抗Roffが大きいことがよい。前述したように、一度オン状態にしたVCSELは、発光制御サイリスタSのカソードKの電圧が0.9V未満になると再発光が不能になると説明した。図8に示したように、発光制御サイリスタSのカソードKの電圧は、オフ抵抗Roffが大きいほど、低下が少ない。しかし、オフ抵抗Roffが大きすぎると、一度オン状態にしたVCSELの再発光が可能な期間が長くなる。つまり、一度オン状態にしたVCSELの再発光が不能になってから別のVCSELを発光させるため、一度オン状態にしたVCSELの再発光が可能な期間が長いと、別のVCSELを発光させるまでの期間(休止期間)を長く設定することになる。
【0096】
図9は、ドライバDrvのオフ抵抗Roffを変更した場合における、発光制御サイリスタS(1)のカソードKの電圧と、VCSEL(1)の発光電流を示す他の図である。図9(a)は、発光電流の全体を示し、(b)は、図9(a)における発光電流を拡大した図である。図9(a)、(b)は、オフ抵抗Roffを、50kΩ及び30kΩとして、シミュレーションした結果である。なお、設定したタイミングチャートは、図6(a)であり、オフ抵抗Roffが50kΩは、図8のオフ抵抗Roffが50kΩと同じである。
【0097】
オフ抵抗Roffを小さくすると、ドライバDrvをオフにした後、発光制御サイリスタSのカソードKの電圧は、速やかに0Vに近づく。しかし、オフ抵抗Roffを小さくしすぎると、ドライバDrvをオフにした後も発光制御サイリスタSに保持電流以上の電流が流れ続けて、発光制御サイリスタS(1)がオフしないようになる。
【0098】
図9(a)に示すように、オフ抵抗Roffが50kΩの場合には、時刻tにおいて、2回目の発光をしない。しかし、オフ抵抗Roffが30kΩの場合には、時刻tにおいて、再発光する。そして、その以降の時刻v、xにおいても、再発光する。図9(b)に示すように、発光電流を拡大すると、オフ抵抗Roffが50kΩでは、ドライバDrvがオフである期間において、発光電流が低下し、時刻u以降ではほぼ0Aになっている。一方、オフ抵抗Roffが30kΩでは、ドライバDrvがオフである期間において、発光電流が0.07mA流れている。つまり、発光制御サイリスタS(1)に保持電流以上の電流が流れつづけ、発光制御サイリスタS(1)がオン状態を保持している。
【0099】
以上のことから、ドライバDrvのオフ抵抗Roffは、VCSELの再発光が可能な期間において、VCSELを再発光が可能な状態に維持され、且つ、再発光が不能になるまでの期間(休止期間)が長すぎないように設定されることを要する。さらに、ドライバDrvのオフ抵抗Roffは、ドライバDrvがオフである期間において、発光制御サイリスタSに保持電流以上の電流を流さないように設定されることを要する。言い換えれば、ドライバDrvのオフ抵抗Roffは、予め定められた再発光が不能になるまでの期間(休止期間)に応じて設定される。
【0100】
上記したように、VCSELの再発光が可能な期間、及び再発光が不能になるまでの期間(休止期間)は、ドライバDrvのオフ抵抗Roffによって決められる。しかし、再発光が可能な期間を、ドライバDrvのオフ抵抗Roffに決められる期間より、長く設定したい場合がある。
【0101】
図10は、VCSELの再発光が可能な期間を長く設定する方法を説明するタイミングチャートである。図10は、図4に示したタイミングチャートと同様である。図4のタイミングチャートでは、時刻c、時刻c、時刻c、時刻c、時刻q、時刻q、時刻q、時刻qに発光パルスを設けている。しかし、図10のタイミングチャートでは、時刻c、時刻c、時刻c、時刻c、時刻q、時刻q、時刻q、時刻qでは、図4の場合に比べVCSELに流れる電流が少なくなるように、発光信号pIを小さくしている。このようにすると、VCSELの光量を抑制ししつつ、発光制御サイリスタSのカソードKの電圧が、VCSELを発光させた場合と同様に上昇して、再発光が可能な状態になる。この場合の発光パルスを保持パルスと表記する。つまり、時刻b、時刻c、時刻c、時刻p、時刻q、時刻qでのパルスは、発光パルスであるが、時刻c、時刻c、時刻c、時刻c、時刻q、時刻q、時刻q、時刻qでのパルスは、保持パルスである。図4の保持パルスを用いない場合において、VCSEL(1)の再発光が可能な期間を時刻cから時刻cとした場合、図10の保持パルスを用いる場合には、VCSEL(1)の再発光が可能な期間は、時刻cから時刻cと3倍になる。図10では、発光パルス間に2個の保持パルスを設けているが、2個を超える保持パルスを設けてもよい。保持パルスを設けることで、VCSELの再発光が可能な期間を任意の期間に延ばせる。
【0102】
図10では、VCSEL(1)及びVCSEL(6)に対する、保持パルス間の間隔、及び保持パルスと発光パルスとの間隔(区別しない場合は、パルス間隔と表記する。)を同じにしている。また、発光パルス及び保持パルスの幅を同じにしている。しかし、パルス間隔は、再発光が可能な期間が継続するように設定すればよい。同様に、保持パルスの幅も、再発光が可能な期間が継続するように設定すればよい。そして、保持パルスによるVCSELの光量は発光パルスに比べて小さく、且つ、電圧変化の速さdV/dtなどを発光制御サイリスタSが発光可能な状態になる程度の大きさになるようにするとよい。その条件を満たすのであれば、実質的に発光していない状態も可能である。保持パルスによる発光を嫌う場合には、電流値をVCSELのしきい電流以下となるように選べばよい。なお、保持パルスは最初の発光パルスの前に入れてもよい。その場合、シフトサイリスタTをオフするタイミングは最初の発光パルスの後の方がなおよい。
【0103】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、ドライバDrvのオフ抵抗Roffは、1つであるとした。
第2の実施の形態では、ドライバDrvのオフ抵抗Roff値が切替えられるようになっている。
【0104】
図11は、第2の実施の形態が適用される光源装置2を説明する図である。光源装置2の制御部50は、第1の実施の形態におけるドライバDrvの代わりに、2個のドライバDrv1、Drv2を備える。ドライバDrv1は、オン抵抗Ron1、オフ抵抗Roff1である。ドライバDrv2は、オン抵抗Ron2、オフ抵抗Roff2である。オン抵抗Ron1とオン抵抗Ron2は、同じであってもよく異なっていてもよい。一方、オフ抵抗Roff1とオフ抵抗Roff2とは、異なっている(例えば、Roff1>Roff2)。そして、ドライバDrv1とドライバDrv2とは、スイッチSWを介して、発光電流制限抵抗RIに接続されている。スイッチを切り替えることにより、ドライバDrv1とドライバDrv2とが切り換えられる。スイッチは、オフ抵抗Roff1及びオフ抵抗Roff2のいずれより抵抗値が大きいNMOSトランジスタなどでよい。
【0105】
オフ抵抗Roff2が小さいドライバDrv2では、オフ抵抗Roff1が大きいドライバDrv1に比べ、発光制御サイリスタSのカソードKの電圧が低下する速度が速い。このため、VCSELが間欠的に発光する期間が短くなる。そして、再発光が不能になるまでの期間(休止期間)が短くなる。よって、ドライバDrv1とドライバDrv2とで切り替えることで、間欠的に発光させる期間を設定してもよい。また、ドライバDrv1とドライバDrv2とで切り替えることで、休止期間を設定してもよい。
【0106】
なお、オフ抵抗Roff値を変更する方法として、NMOSトランジスタのソース-ドレイン間に、スイッチを介して、NMOSトランジスタのオフ時の抵抗より抵抗値が小さく、且つ、抵抗値の異なる複数の抵抗を並列に接続してもよい。スイッチを切り替えることで、ドライバDrvのオフ抵抗Roff値が変更され、再発光が可能な期間の選択が可能になる。
【0107】
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態が適用される光源装置1、及び第2の実施の形態が適用される光源装置2では、再発光が不能になるまでの期間(休止期間)は、ドライバDrvのオフ抵抗Roffによって決められた。第3の実施の形態が適用される光源装置3では、休止期間を短く設定するために、再発光しない状態に消去する消去パルスを設けている。消去パルスを設けると、間欠的に複数回発光させたことで発光制御サイリスタがオンしっぱなしになりやすくなっている場合や、誤動作で発光制御サイリスタがオンしてしまっていた場合などに、VCSELが誤発光することが抑制される。さらに、消去パルスを設けないと、前に発光させたVCSELの再発光を抑制するためには、このVCSELに接続された発光制御サイリスタSに電荷がなくなるまでの期間(休止期間)待たなければならない。このため、別のVCSELを発光させるタイミングが遅くなり、次々に発光させるVCSELを切り替えて高速駆動したい場合などに、高速駆動がしにくい。よって、消去パルスを設けることで、休止期間が短くなって、高速駆動がしやすくなる。
【0108】
図12は、第3の実施の形態が適用される光源装置3を説明する図である。光源装置3の制御部50は、図1に示した光源装置1の制御部50に、ドライバDrv3と消去電流制限抵抗RJとをさらに備える。ドライバDrv3は、例えばNMOSトランジスタをドライバ素子として、ゲートに印加される消去信号pJによりオン/オフされる。ドライバDrv3のNMOSトランジスタは、ソースが接地され、ドレインが消去電流制限抵抗RJを介して、Vdrv端子に接続されている。消去信号pJは、接地電位GND(「L」(0V))と電源電位VGK(「H」(5V))とを有する信号とする。ここでは、ドライバDrv3は、消去信号pJが「L」(0V)においてオフになり、消去信号pJが「H」(5V)においてオンになるとする。つまり、消去信号pJが「H」(5V)の期間が消去パルスであって、この期間が消去パルスのパルス幅である。ドライバDrvが第1のドライバの一例、ドライバDrv3が第2のドライバの一例である。
【0109】
ドライバDrv3は、オン抵抗Ronが0Ωに近く、オフ抵抗Roffが∞に近い。そして、消去電流制限抵抗RJは、ドライバDrv3をオンにした場合に、発光制御サイリスタSのカソードKの電圧を予め設定した消去期間(消去パルスのパルス幅)において低下させ、VCSELを再発光が不能な状態にする値に設定されている。例えば、図8(b)に示したオフ抵抗Roffである50kΩである。また、前述したように、消去電流制限抵抗RJは、発光制御サイリスタSに保持電流以上の電流が流れない値に設定されている。
【0110】
図13は、消去パルスを設けるタイミングを説明するタイミングチャートである。図13は、発光制御サイリスタS(1)/VCSEL(1)がオンした影響を消去する例として、図4に示したタイミングチャートの時刻nから時刻rまでの付近を切り出し、消去パルスを付加している。このため、時刻oと時刻pとの間に、時刻aaと時刻abとを付加している。
【0111】
消去パルスは、VCSELの一連の発光が終了した時刻(図4の時刻d)以降であって、次に発光させたいVCSELを発光させる前(図4の時刻p)に設けるのがよい。図12では、VCSEL(6)を発光させるとする。
時刻nにおいて、シフト信号p2が「L」(0V)から「H」(5V)に移行して、シフトサイリスタT(6)がターンオンして、オフ状態からオン状態に移行する。時刻oにおいて、シフト信号p1が「H」(5V)から「L」(0V)に移行して、シフトサイリスタT(5)がターンオフして、オン状態からオフ状態に移行する。
時刻aaにおいて、消去信号pJを「L」(0V)から「H」(5V)に移行させ、ドライバDrv3をオンにする。そして、時刻abまでの期間において、VCSELが再発光が不能な状態にする。時刻aaは、発光させたいVCSEL(6)を設定するシフトサイリスタT(6)のみがオン状態になっているタイミングである。
【0112】
時刻abにおいて、消去信号pJを「H」(5V)から「L」(0V)に移行させ、ドライバDrv3をオフにする。そして、時刻abの後の時刻bにおいて、発光信号pIを「L」(0V)から「H」(5V)に移行させて、VCSEL(6)を発光させる。時刻aaから時刻abまでの消去信号pJが「H」(5V)である期間が消去パルスである。
ここでは、VCSEL(6)を発光させるとして説明したが、他のVCSELであってもよい。
【0113】
消去パルスは、より望ましくは、発光させたいVCSELを設定するシフトサイリスタTのみがオン状態になる時刻(図12の時刻o)以降であって、発光させたいVCSELを発光させる前(図12の時刻p)に設けることがよい。これは、シフト部12において、オン状態がシフトされているときに、設定されたVCSEL以外の発光制御サイリスタSのnゲートGnの電圧を下げた影響や、シフト中のノイズによる発光制御サイリスタSのnゲートGnの電圧の変動が、消去パルスによってリセット(初期化)されるためである。よって、消去パルスは、前に発光させたVCSELの再発光を不能にする場合のみでなく、発光装置10におけるいずれのVCSELの発光をも不能にするために、最初にVCSELを発光させる前に用いてもよい。
【0114】
なお、消去パルスは、ドライバDrvがNMOSトランジスタで構成される場合、NMOSトランジスタのソース-ドレイン間に、NMOSトランジスタのオフ抵抗より抵抗値が小さく、且つ、抵抗値が異なる複数の抵抗を並列に接続し、その一つを消去電流制限抵抗RJとしてもよい。複数の抵抗はスイッチを介して接続されて、スイッチを切り替えることで消去パルスを発生してもよい。
【0115】
消去パルスのパルス幅を発光パルスのパルス幅より狭く、又は/及び、消去パルスの電流値を発光パルスの電流値より小さくすることで、消去パルスによるVCSELの発光が抑制される。
【0116】
消去パルスとして、ドライバ電圧線75に電圧変化の速さdV/dtが遅いパルスを供給するとよい。オン状態になった発光制御サイリスタSは、オフ状態になっても、電荷が残っている。nゲートGnには、電流制限抵抗RLによって発光電圧VLDが印加されている。よって、nゲートGnであるnゲート層87の電荷が逃げやすい。一方、pゲートGnであるpゲート層86(図3参照)に電荷が残りやすい(図7(b)参照)。そして、残っている電荷の量によって、発光制御サイリスタSのしきい電圧が変化する。このように、ドライバ電圧線75に電圧変化の速さdV/dtが遅いパルスを供給して、発光制御サイリスタSのしきい電圧を上げて、発光制御サイリスタSをターンオンしにくくしてもよい。
【0117】
上述した、発光装置10は、カソードコモンで記載したが、アノードコモンとしてもよい。このとき、nゲート層(n型の半導体層87)にnオーミック電極を設けたが、pゲート層(p型の半導体層86)にpオーミック電極を設けるように構成すればよい。
また、発光装置10のシフト部12において、シフトサイリスタT間を、結合トランジスタQで接続したが、ダイオードや抵抗で接続してもよい。
【0118】
上記の実施の形態では、異なるタイミングで発光する複数の発光素子を備える発光装置10を例として説明した。しかし、上記の実施の形態を、ひとつの発光素子や、複数の発光素子が同時に発光するひとつの発光素子群に適用してもよい。
また、シフト部12を設定部とする例を説明したが、シフト動作するシフト部でなく、設定部をドライバから直に発光素子のサイリスタに信号を送るように構成してもよい。
【0119】
(計測装置100)
第1の実施の形態から第3の実施の形態で示した光源装置1、2、3は、被計測物の三次元形状(以下では、3D形状と表記する。)を計測する計測装置に適用しうる。計測装置は、光の飛行時間による、いわゆるToF(Time of Flight)法に基づいて、3D形状を計測する装置である。計測装置は、光源装置と三次元センサ(以下では、3Dセンサと表記する。)とを備える。ToF法では、光源装置から光が出射されたタイミングから被計測物で反射して3Dセンサが受光するタイミングまでの時間を計測する。そして、三次元センサから取得される時間から、被計測物までの距離が算出され、被計測物の3D形状が特定される。また、三次元形状を計測することを、三次元計測、3D計測又は3Dセンシングと表記することがある。三次元センサは、受光部の一例である。
【0120】
このような計測装置は、特定された3D形状から被計測物を認識することに適用される。例えば、携帯型情報処理装置などに搭載され、アクセスしようとするユーザの顔の認識などに利用される。つまり、アクセスしたユーザの顔の3D形状を取得し、アクセスすることが許可されているか否かを識別し、アクセスが許可されているユーザであると認識された場合にのみ、自装置(携帯型情報処理装置)の使用を許可する。
また、この計測装置は、拡張現実(AR:Augmented Reality)など、継続的に被計測物の3D形状を計測する場合にも適用される。
【0121】
このような計測装置は、携帯型情報処理装置以外のパーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置に適用しうる。
【0122】
図14は、計測装置100の構成を説明するブロック図である。計測装置100は、発光装置10と制御部50とを備える光源装置1、2、3と、3Dセンサ5とを備える。光源装置1、2、3は、被計測物に向けて光を出射する。3Dセンサ5は、被計測物で反射されて戻ってきた光(反射光)を取得する。3Dセンサ5は、ToF法により計測した、出射されてから反射光を受光するまでの時間に基づいた被計測物までの距離に関する情報(距離情報)を出力する。なお、計測装置100には、計測制御部200を含んでもよい。計測制御部200は、CPU、ROM、RAMなどを含むコンピュータとして構成され、3Dセンサ5から取得した距離情報に基づいて、被計測物の3次元形状を特定する。
【0123】
本発明は、次のように捉えてもよい。
シフト部は、配列の順にオン状態が転送される転送素子で構成されていることを特徴とする発光装置である。このようにすることで、オン状態を転送しない場合に比べ、シフト部が構成しやすい。
シフト部のサイリスタがオン状態になることにより、発光素子がサイリスタ機能により発光可能な状態に移行することを特徴とする発光装置である。このようにすることで、シフト部の制御と発光部の制御とが分けられる。
発光素子は、直列接続された面発光素子とサイリスタとで構成されていることを特徴とする発光装置である。このようにすることで、発光特性を向上させやすい。
【符号の説明】
【0124】
1、2、3…光源装置、5…3Dセンサ、10…発光装置、11…発光部、12…シフト部、12a…シフトユニット、50…制御部、71…電源線、72、72-1、72-2…シフト信号線、73…接地線、74…電圧供給線、75…ドライバ電圧線、79…裏面電極、100…計測装置、200…計測制御部、Buf1、Buf2…バッファ、Drv、Drv1、Drv2、Drv3…ドライバ、GND…接地電位、p1、p2…シフト信号、pI…発光信号、pJ…消去信号、S…発光制御サイリスタ、T…シフトサイリスタ、VCSEL…垂直共振器面発光レーザ、Vc…飽和電圧、Vd…順方向電圧(拡散電位)、Vdrv…ドライバ電圧、VGK…電源電位、VLD…発光電圧、VS1、VS2…電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14