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  • 特許-発光エンブレム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】発光エンブレム
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/10 20180101AFI20241217BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20241217BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241217BHJP
【FI】
F21S45/10
F21W104:00
F21Y115:10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022016163
(22)【出願日】2022-02-04
(65)【公開番号】P2023114063
(43)【公開日】2023-08-17
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 雄登
(72)【発明者】
【氏名】福井 弘貴
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-273087(JP,A)
【文献】実開平04-024213(JP,U)
【文献】特開昭57-042735(JP,A)
【文献】特開2014-141197(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0019625(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 45/10
F21W 104/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板上に実装された、光源としての発光素子と、
前記発光素子を収容する、開口部を有するハウジングと、
エンブレムが表面に施され、前記発光素子から発せられる光が取り出される発光部が前記表面に含まれ、前記開口部を塞ぐように前記ハウジングに取り付けられるカバーと、
を備え、
前記ハウジングから前記カバー側に延びる、前記カバーの破損抑制用の第1のリブと、前記カバーから前記ハウジング側に延びる、前記カバーの破損抑制用の第2のリブの、少なくともいずれか一方を備え、
前記プリント基板の前記発光素子が実装された面が、前記ハウジングの底部を向き、
前記発光素子から発せられ、前記ハウジングの内面及び前記プリント基板によって反射された光を前記発光部から取り出す、
発光エンブレム。
【請求項2】
前記ハウジングが、前記ハウジングの底部の前記発光素子と対向する位置に、前記ハウジングの底部の内側から突出する突起を有する、
請求項に記載の発光エンブレム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光エンブレム、特にフロントグリルなどの車両の表面に設置される発光エンブレムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のフロントグリルに取り付けられる、エンブレムを光輝表示させることのできる発光エンブレムが知られている(特許文献1を参照)。特許文献1に記載の発光エンブレムにおいては、ケースにLEDが収容された発光装置がエンブレムの背面側に設置されており、これら発光装置とエンブレムはブランケットにより支持されて車両のフロントグリルに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-93378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発光エンブレムの構造によれば、車両の衝突などにより発光エンブレムが厚さ方向の衝撃を受けた際に、エンブレムが背面側の発光装置の方向に大きく撓むため、破損が生じやすいという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、車両の衝突などにより厚さ方向の衝撃を受けた際のエンブレムの破損を抑制することのできる発光エンブレムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]~[3]の発光エンブレムを提供する。
【0007】
[1]光源としての発光素子と、前記発光素子を収容する、開口部を有するハウジングと、エンブレムが表面に施され、前記発光素子から発せられる光が取り出される発光部が前記表面に含まれ、前記開口部を塞ぐように前記ハウジングに取り付けられるカバーと、を備え、前記ハウジングから前記カバー側に延びる、前記カバーの破損抑制用の第1のリブと、前記カバーから前記ハウジング側に延びる、前記カバーの破損抑制用の第2のリブの、少なくともいずれか一方を備える、発光エンブレム。
[2]前記発光素子が、プリント基板上に実装され、前記プリント基板の前記発光素子が実装された面が、前記ハウジングの底部を向き、前記発光素子から発せられ、前記ハウジングの内面及び前記プリント基板によって反射された光を前記発光部から取り出す、上記[1]に記載の発光エンブレム。
[3]前記ハウジングが、前記ハウジングの底部の前記発光素子と対向する位置に、前記ハウジングの底部の内側から突出する突起を有する、上記[2]に記載の発光エンブレム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の衝突などにより厚さ方向の衝撃を受けた際のエンブレムの破損を抑制することのできる発光エンブレムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る発光エンブレムの正面図である。
図2図2(a)、(b)、(c)は、それぞれ図1に示される切断線A-A、B-B、C-Cで切断された、本発明の実施の形態に係る発光エンブレムの断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る発光エンブレムの分解斜視図である。
図4図4(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係る発光エンブレムの変形例の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔発光エンブレムの構成〕
図1は、本発明の実施の形態に係る発光エンブレム1の正面図である。図2(a)、(b)、(c)は、それぞれ図1に示される切断線A-A、B-B、C-Cで切断された発光エンブレム1の断面図である。また、図3は、発光エンブレム1の分解斜視図である。
【0011】
発光エンブレム1は、光源としての発光素子131と、発光素子131を収容する、開口部143を有するハウジング14と、エンブレムが表面に施され、発光素子131から発せられる光が取り出される発光部120が表面に含まれ、開口部143を塞ぐようにハウジング14に取り付けられるカバー10と、ハウジング14からカバー10側に延びる、カバー10の破損抑制用のリブ142を備える。
【0012】
発光素子131は、プリント基板13上に実装された発光素子であり、典型的には、LEDが用いられる。プリント基板13は、発光素子131が実装された面がハウジング14の底部144を向くように設置される。プリント基板13は、後述するように、ハウジング14に固定される。
【0013】
発光素子131からハウジング14の底部144に向かって発せられた光は、ハウジング14の内面やプリント基板13によって反射された後、後述するアウターレンズ12に進入して発光部120から外部に取り出されるため、発光部120の輝度の均一性が高い。また、この発光エンブレム1の構造においては、発光素子を光取り出し部の真下に配置して光を直接的に取り出す場合と比べて、発光素子から光取り出し部までの光路長が大きく、光を内部で十分に拡散させることができるため、ハウジング14の厚さを増加させなくても十分な発光部120の輝度の高い均一性が得られる。すなわち、発光部120の輝度の高い均一性を確保しつつ、ハウジング14を薄くすることができる。
【0014】
そして、ハウジング14を薄くすることにより、リブ142を短くすることができる。リブ142を短くすることにより、後述するリブ142の衝突に対する耐久性が向上し、後述するリブ142によるカバー10の破損を抑制する効果が向上する。
【0015】
発光素子131から発せられた光はプリント基板13で反射されるため、プリント基板13は、光の吸収を抑えることのできるFR-4、CEM3などの白色の基板であることが好ましい。プリント基板13の表面の発光素子131が発する光に対する反射率は50%以上であり、80%以上であることが好ましい。プリント基板13には、発光素子131の他に、抵抗、コンデンサ、ダイオードなどの電子部品が搭載される。
【0016】
発光素子131から発せられた光はハウジング14で反射されるため、ハウジング14は、光の吸収を抑えることのできる白色のPC(ポリカーボネート)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル)、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)、AES(アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン)などの樹脂により一体成形されることが好ましい。ハウジング14の表面の発光素子131が発する光に対する反射率は50%以上であり、80%以上であることが好ましい。なお、製造コストの観点からは、ハウジング14を白色樹脂の成形により形成することが好ましいが、白色でない材料の表面に白色の塗料を塗布して形成してもよい。
【0017】
ハウジング14は、プリント基板13をハウジング14に固定するためのボス140と、ハウジング14の底部144からの光漏れを抑制するための突起141と、カバー10の破損抑制用のリブ142を有する。
【0018】
ボス140は、ハウジング14の底部144の内側から厚さ方向に延びる、ネジ穴を有する柱状の突起である。プリント基板13の孔130を通してネジをボス140のネジ穴に締め込むことにより、プリント基板13をボス140に固定することができる。
【0019】
突起141は、ハウジング14の底部144の内側から厚さ方向に突出する、円錐又は多角錐状の突起である。ハウジング14の底部144の発光素子131と対向する位置に突起141を設けることにより、底部144の最も強い光が照射される部分の厚さを増して、底部144を透過する漏れ光を低減することができる。
【0020】
また、発光素子131から発せられる光を突起141に反射させて、突起141の周囲に拡散させることにより、ハウジング14内での拡散効率をより大きくすることができる。発光素子131から発せられる光を突起141の頂点ではなく主に傾斜面に照射させるように突起141を配置してもよい。主に光が照射される位置によって、突起141の反射による配光を調整することができる。突起141の高さは、例えば、ハウジング14の底部144とアウターレンズ12との間隔の50%程度であり、傾斜面の傾斜角度は60°程度である。
【0021】
カバー10は、光を透過しないカバー本体11と、カバー10の表面に露出した発光部120を有する、導光体からなるアウターレンズ12を有する。カバー本体11とアウターレンズ12は、一体成形品であってもよいし、別部品であってもよい。
【0022】
アウターレンズ12は、カバー本体11の内側、すなわち発光エンブレム1を正面から見たときのカバー本体11の裏側、に設置されている。そして、アウターレンズ12の一部が、発光部120としてカバー本体11の隙間100から外部に露出しており、発光素子131から発せられてアウターレンズ12に取り込まれた光が発光部120から取り出される。すなわち、発光素子131を点灯させると、発光部120から外部に光が照射される。カバー10の表面のエンブレムは、カバー本体11とアウターレンズ12の発光部120の形状により表現される。
【0023】
カバー本体11は、例えば、ABS、ASAなどの樹脂からなる。カバー本体11は、例えば、黒色などに着色された樹脂を成形することにより形成されてもよいし、表面に塗装やめっきを施されてもよい。
【0024】
アウターレンズ12は、発光素子131から発せられる光を透過するPMMA(メタクリル酸メチル)、PCなどの樹脂からなる。特に、耐候性に優れるPMMAをアウターレンズ12の材料として用いることが好ましい。PMMAは、PCなどの他の導光体材料と比べて強度が低く、変形時に破損しやすいという欠点を有するが、後述するリブ142を利用したカバー10の破損を抑制する構造によれば、PMMAをアウターレンズに用いる場合であっても、変形による破損を抑えることができる。すなわち、例えば、アウターレンズ12の材料にPMMAを用いることにより、耐候性に優れ、かつ衝突などの際の変形による破損が抑えられたカバー10を得ることができる。
【0025】
発光エンブレム1の内部への水などの浸入を防ぐため、アウターレンズ12とハウジング14が、溶着などにより接合されていることが好ましい。
【0026】
〔カバーの破損を抑制するための構造〕
以下、ハウジング14に設けられたリブ142を利用した、カバー10の変形時の破損を抑制するための構成について説明する。
【0027】
リブ142は、ハウジング14の底部144の内側から厚さ方向に延び、その先端がカバー10に近接する、柱状、板状などの突起である。リブ142は、プリント基板13に設けられた孔132を貫通してカバー10側まで延びている。
【0028】
車両のフロントグリルなどに設置された発光エンブレム1が、車両の衝突などにより厚さ方向の衝撃を受けた際には、カバー10のハウジング14の方向に変形する。このとき、リブ142の先端が変形したカバー10に突き当たり、衝撃が分散され、カバー10の破損を抑制することができる。図1~3に例示される構造においては、カバー10が変形した際に、アウターレンズ12にリブ142の先端が突き当たる。
【0029】
発光エンブレム1が厚さ方向の衝撃を受けると、カバー10は撓んで、その中央部分が最も大きく変位する。このため、カバー10の破損を効果的に抑制するためには、リブ142がカバー10の中央付近を支えられるように、リブ142の平面方向の配置位置が、ハウジング14の平面方向の中心から35mm以内であることが好ましい。
【0030】
また、カバー10の破損を効果的に抑制するためには、リブ142の先端とカバー10との距離(例えば、図2(c)に示されるように、リブ142の先端とアウターレンズ12が対向する場合は、リブ142の先端とアウターレンズ12との距離)は、0.5mm以上、2.5mm以内であることが好ましい。
【0031】
また、発光部120の輝度の均一性を損なうことなく、リブ142の長さ方向の衝撃に対する耐久性を大きくするためには、リブ142の長さが15mm以下であることが好ましい。リブ142が短ければ、水平方向の断面積を大きくすることなく耐久性を確保することができるため、リブ142が光路を遮ることによる発光部120の輝度の均一性の低下を抑えることができる。
【0032】
図4(a)、(b)は、それぞれ発光エンブレム1の変形例の構造を示す断面図である。図4(a)、(b)に示される断面の切断位置は、図2(c)に示される断面の切断位置に対応する。
【0033】
図4(a)に示される構造においては、プリント基板13がリブ142の先端よりもカバー10に近く、プリント基板13の発光素子131が実装された面とリブ142の先端が対向する。この場合、カバー10が変形すると、まず、ハウジング14に固定されたプリント基板13に接触し、さらに変形が大きくなると、プリント基板13を介してリブ142の先端に接触する。
【0034】
図4(a)に示される構造においては、カバー10は変形時にプリント基板13を介してリブ142の先端に接触するため、プリント基板13の厚さの分だけリブ142を短くすることができる。リブ142を短くすることにより、リブ142の長さ方向の衝撃に対する耐久性が向上し、結果的にカバー10の破損抑制力が向上する。
【0035】
図4(b)に示される構造においては、カバー10の破損抑制用のリブとして、ハウジング14に設けられるリブ142の代わりに、カバー10からハウジング14側に延びるリブ121が設けられている。リブ121は、例えば、アウターレンズ12からプリント基板13に設けられた孔132を貫通してハウジング14側に延びる。この場合、カバー10が変形すると、リブ121の先端がハウジング14の底部144に接触し、衝撃が分散される。
【0036】
なお、発光エンブレム1は、カバー10の破損抑制用のリブとして、ハウジング14に設けられるリブ142とカバー10に設けられるリブ121の両方を備えていてもよい。
【0037】
また、その他の変形例として、プリント基板13がハウジング14ではなくカバー10、例えばアウターレンズ12、に固定された構造を用いてもよい。この場合、カバー10の剛性が向上するため、カバー10の破損抑制力が向上する。
【0038】
(実施の形態の効果)
上記の本発明の実施の形態に係る発光エンブレム1においては、車両の衝突などにより厚さ方向の衝撃を受けた際に、エンブレムが施されたカバー10への衝撃を、リブ142を介して分散させることにより、カバー10の破損を抑制することができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0040】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0041】
1 発光エンブレム
10 カバー
11 カバー本体
12 アウターレンズ
120 発光部
121 リブ
13 プリント基板
131 発光素子
14 ハウジング
142 リブ
143 開口部
図1
図2
図3
図4