(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】非接触給電設備
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20241217BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20241217BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/10
(21)【出願番号】P 2022017176
(22)【出願日】2022-02-07
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松原 礼
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-211501(JP,A)
【文献】特開2023-108381(JP,A)
【文献】特開2023-080761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
B60L 5/00
B60L 53/12
B60M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、
前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、
複数の前記電源装置の前記交流電流の位相を同期させる同期システムを更に備え、
前記同期システムは、規定の周期の同期信号を出力するマスタユニットを備え、
複数の前記電源装置のそれぞれは、当該電源装置に接続された前記給電線に前記交流電流を供給する電源回路と、前記同期信号を受信して前記電源回路を制御する電源制御部と、を備え、
前記電源制御部は、受信した前記同期信号から規定の遅れ時間分遅らせた位相に対して、前記マスタユニットから当該電源制御部までの前記同期信号の伝送所要時間に応じた時間分進めた調整後位相を演算し、前記交流電流の位相を前記調整後位相に同期させるように前記電源回路を制御する、非接触給電設備。
【請求項2】
前記遅れ時間は、全ての前記電源制御部で同じ値が用いられる、請求項1に記載の非接触給電設備。
【請求項3】
前記同期システムは、前記マスタユニットからの前記同期信号を受信する、少なくとも1つのスレーブユニットを更に備え、
前記スレーブユニットは、直接的に前記マスタユニットに接続され、又は、他の前記スレーブユニットを介して間接的に前記マスタユニットに接続され、
更に、前記スレーブユニットは、少なくとも1つの前記電源装置に接続され、受信した前記同期信号を当該電源装置に伝送するように構成されている、請求項1
又は2に記載の非接触給電設備。
【請求項4】
前記電源制御部は、以下の式に基づいて前記調整後位相を演算する、請求項
3に記載の非接触給電設備。
α1=α0-{Td-(1/Vs×Lt+Ts×Ns)}
ここで、
α1は、前記調整後位相であり、
α0は、前記電源制御部が受信した前記同期信号の位相であり、
Tdは、前記遅れ時間であり、
Vsは、前記同期信号の伝送速度であり、
Ltは、前記マスタユニットから前記電源制御部までの前記同期信号の伝送経路の長さであり、
Tsは、前記スレーブユニットにおける前記同期信号の処理に要する時間であり、
Nsは、前記マスタユニットから前記電源制御部までに介在する前記スレーブユニットの台数である。
【請求項5】
複数の前記電源制御部のうち、前記マスタユニットからの前記同期信号の前記伝送所要時間が最も長い前記電源制御部を最遅電源制御部として、
前記遅れ時間は、前記マスタユニットから前記最遅電源制御部までの前記同期信号の前記伝送所要時間以上に設定されている、請求項1から
4のいずれか一項に記載の非接触給電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、複数の給電線のそれぞれに接続され、給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような非接触給電設備の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の非接触給電設備では、マスタユニット(51(A))が複数のスレーブユニット(51)に同期信号を発信する。そして、複数のスレーブユニット(51)のそれぞれに接続された電源装置(M)が、当該スレーブユニット(51)により受信した同期信号に基づいて、対応する給電線(47)に交流電流を供給する。こうして、複数の給電線(47)のそれぞれに供給される交流電流の位相の同期を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような非接触給電設備では、マスタユニットから電源装置までの同期信号の伝送所要時間は、マスタユニットに対する電源装置の接続態様に依存する。そのため、マスタユニットから電源装置までの同期信号の伝送所要時間が、電源装置ごとに異なる場合がある。しかし、特許文献1の非接触給電設備では、そのような伝送所要時間の差異について考慮されておらず、その点で複数の給電線のそれぞれに供給される交流電流の位相の同期精度を高めることに限界があった。
【0006】
そこで、複数の給電線のそれぞれに供給される交流電流の位相の同期精度を高めることが可能な非接触給電設備の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、非接触給電設備の特徴構成は、
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、
前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、
複数の前記電源装置の前記交流電流の位相を同期させる同期システムを更に備え、
前記同期システムは、規定の周期の同期信号を出力するマスタユニットを備え、
複数の前記電源装置のそれぞれは、当該電源装置に接続された前記給電線に前記交流電流を供給する電源回路と、前記同期信号を受信して前記電源回路を制御する電源制御部と、を備え、
前記電源制御部は、受信した前記同期信号から規定の遅れ時間分遅らせた位相に対して、前記マスタユニットから当該電源制御部までの前記同期信号の伝送所要時間に応じた時間分進めた調整後位相を演算し、前記交流電流の位相を前記調整後位相に同期させるように前記電源回路を制御する点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、電源制御部が、受信した同期信号から規定の遅れ時間分遅らせた位相に対して、マスタユニットから当該電源制御部までの同期信号の伝送所要時間に応じた時間分進めた調整後位相を演算する。そして、電源制御部は、給電線に供給される交流電流の位相を調整後位相に同期させるように電源回路を制御する。これにより、マスタユニットから電源制御部までの同期信号の伝送所要時間が電源装置ごとに異なる場合であっても、複数の電源回路のそれぞれが給電線に供給する交流電流の位相を適切に同期させることができる。したがって、複数の給電線のそれぞれに供給される交流電流の位相の同期精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る非接触給電設備を備えた物品搬送設備の平面図
【
図3】実施形態に係る非接触給電設備の構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、実施形態に係る非接触給電設備100について、図面を参照して説明する。本実施形態では、非接触給電設備100は、物品搬送設備200に設けられている。
【0011】
図1及び
図2に示すように、物品搬送設備200は、走行レール2と、移動体3とを備えている。走行レール2は、移動体3の移動経路1に沿って配置されている。本実施形態では、一対の走行レール2が、鉛直方向である上下方向Zに沿う上下方向視で、移動経路1に直交する方向である経路幅方向Hに互いに一定の間隔を空けた状態で、天井から吊り下げ支持されている(
図2参照)。本実施形態では、移動体3は、走行レール2に案内されて移動経路1に沿って走行する物品搬送車である。物品搬送車としての移動体3の搬送対象である物品は、例えば、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)や、ディスプレイの材料となるガラス基板等である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態では、移動経路1は、環状に形成された1つの主経路1aと、それぞれが複数の物品処理部Pを経由する環状に形成された複数の副経路1bと、主経路1aと複数の副経路1bとを接続する複数の接続経路1cと、を備えている。
【0013】
図2に示すように、移動体3は、移動経路1に沿って配設された給電線11から非接触で駆動用電力を受電する受電装置4を備えている。本実施形態では、移動体3は、一対の走行レール2に案内されて移動経路1に沿って走行する走行部9と、走行レール2の下方に位置して走行部9に吊り下げ支持された搬送車本体10と、を更に備えている。
【0014】
走行部9は、駆動モータ14と、一対の走行輪15と、を備えている。駆動モータ14は、一対の走行輪15の駆動力源である。一対の走行輪15は、駆動モータ14により回転駆動される。走行輪15は、走行レール2の上面にて形成される走行面を転動する。本実施形態では、走行部9は、一対の案内輪16を更に備えている。一対の案内輪16は、上下方向Zに沿う軸心周りに回転自在に支持されている。一対の案内輪16は、一対の走行レール2における経路幅方向Hに対向する一対の内側面に当接するように配置されている。
【0015】
搬送車本体10は、物品を昇降自在に吊り下げ支持する物品支持部と、当該物品支持部を昇降させるアクチュエータと、を備えている(図示を省略)。
【0016】
上記の駆動モータ14、種々のアクチュエータ等への電力は、給電線11から非接触で受電装置4に供給される。上述したように、移動体3の駆動用電力を受電装置4に供給する給電線11は、移動経路1に沿って配設されている。本実施形態では、給電線11は、受電装置4に対して経路幅方向Hの両側に配置されている。
【0017】
本実施形態では、受電装置4は、ピックアップコイル40を備えている。ピックアップコイル40には、交流電流が供給された給電線11の周囲に生じた磁界により、交流の電力が誘起される。この交流の電力は、整流回路、平滑コンデンサ等を備えた受電回路により直流に変換され、上記の駆動モータ14、種々のアクチュエータ等に供給される。
【0018】
非接触給電設備100は、受電装置4に非接触で電力を供給するように構成されている。
図3に示すように、非接触給電設備100は、受電装置4を備えた移動体3の移動経路1に沿って並ぶように配置された複数の給電線11と、当該複数の給電線11のそれぞれに接続され、給電線11に交流電流を供給する電源装置5とを備えている。このように、非接触給電設備100では、給電線11と電源装置5との組が複数組設けられている。これは、本実施形態のように、1つの大きな環状の主経路1aと、当該主経路1aよりも小さな環状の複数の副経路1bとを備えた比較的大きな規模の物品搬送設備200(
図1参照)では、給電線11における送電の効率が低下することや、故障時に設備の全体が停止すること等を抑制するためである。
【0019】
複数の電源装置5のそれぞれは、当該電源装置5に接続された給電線11に交流電流を供給する電源回路51と、当該電源回路51を制御する電源制御部52と、を備えている。
【0020】
電源回路51は、例えばインバータ回路を備えたスイッチング電源回路を中核として構成されている。電源制御部52は、指令値に基づいて、インバータ回路を構成するスイッチング素子をスイッチングするスイッチング制御信号のデューティーを制御する。例えば、電源制御部52は、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)により電源回路51に交流電流を出力させる。ここで、指令値は、例えば、電流値(実効値でも波高値(ピーク・トゥ・ピーク値)でも良い)や、PWM制御におけるデューティーである。
【0021】
図4に示すように、非接触給電設備100は、複数の電源装置5の交流電流の位相を同期させる同期システム6を更に備えている。同期システム6は、規定の周期の同期信号を出力するマスタユニット7を備えている。本実施形態では、同期システム6は、マスタユニット7からの同期信号を受信する、少なくとも1つのスレーブユニット8を更に備えている。
【0022】
スレーブユニット8は、直接的にマスタユニット7に接続され、又は、他のスレーブユニット8を介して間接的にマスタユニット7に接続されている。更に、スレーブユニット8は、少なくとも1つの電源装置5に接続されている。そして、スレーブユニット8は、当該スレーブユニット8が受信した同期信号を、当該スレーブユニット8に接続された電源装置5に伝送する。より詳細には、スレーブユニット8は、少なくとも1つの電源装置5の電源制御部52に接続されている。そして、スレーブユニット8は、当該スレーブユニット8が受信した同期信号を、当該スレーブユニット8に接続された電源制御部52に伝送する。電源制御部52は、当該電源制御部52に接続されたスレーブユニット8からの同期信号を受信する。
【0023】
本実施形態では、マスタユニット7も、少なくとも1つの電源装置5に接続されている。そして、マスタユニット7は、当該マスタユニット7に接続された電源装置5に同期信号を伝送する。より詳細には、マスタユニット7は、少なくとも1つの電源装置5の電源制御部52に接続されている。そして、マスタユニット7は、当該マスタユニット7に接続された電源制御部52に同期信号を伝送する。電源制御部52は、当該電源制御部52に接続されたマスタユニット7からの同期信号を受信する。
【0024】
図4に示す例では、2つのスレーブユニット8が同期システム6に設けられている。以下の説明では、2つのスレーブユニット8を、それぞれ、「第1スレーブユニット8A」、「第2スレーブユニット8B」とする。第1スレーブユニット8Aは、直接的にマスタユニット7に接続されている。第2スレーブユニット8Bは、第1スレーブユニット8Aを介して間接的にマスタユニット7に接続されている。
【0025】
また、
図4に示す例では、2つの電源制御部52がマスタユニット7に接続されている。そして、1つの電源制御部52が第1スレーブユニット8Aに接続されている。また、2つの電源制御部52が第2スレーブユニット8Bに接続されている。以下の説明では、マスタユニット7に接続された2つの電源制御部52を、それぞれ、「第1電源制御部52A」、「第2電源制御部52B」とする。そして、第1スレーブユニット8Aに接続された電源制御部52を、「第3電源制御部52C」とする。また、第2スレーブユニット8Bに接続された2つの電源制御部52を、それぞれ、「第4電源制御部52D」、「第5電源制御部52E」とする。
【0026】
電源制御部52は、受信した同期信号から規定の遅れ時間Td分遅らせた位相に対して、マスタユニット7から当該電源制御部52までの同期信号の伝送所要時間に応じた時間である調整時間Ta分進めた調整後位相α1を演算する。そして、電源制御部52は、電源回路51が給電線11に供給する交流電流の位相を調整後位相α1に同期させるように電源回路51を制御する。
【0027】
本実施形態では、電源制御部52は、以下の式に基づいて調整後位相α1を算出する。
α1=α0-(Td-Ta)
α1:調整後位相
α0:電源制御部52が受信した同期信号の位相
Td:遅れ時間
Ta:調整時間
【0028】
本実施形態では、調整時間Taは、以下の式に基づいて算出される。
Ta=1/Vs×Lt+Ns×Ts
Vs:同期信号の伝送速度
Lt:マスタユニット7から電源制御部52までの同期信号の伝送経路の長さ
Ts:スレーブユニット8における同期信号の処理に要する時間
Ns:マスタユニット7から電源制御部52までに介在するスレーブユニット8の台数
【0029】
つまり、本実施形態では、電源制御部52は、以下の式に基づいて調整後位相α1を演算する。
α1=α0-{Td-(1/Vs×Lt+Ts×Ns)}
【0030】
このように、調整時間Taは、マスタユニット7から電源制御部52までの同期信号の伝送経路の長さLtが長い程長くなり、マスタユニット7から電源制御部52までに介在するスレーブユニット8の台数Nsが多い程長くなる。なお、同期信号の伝送速度Vsは、同期信号の伝送経路を構成する電線の種類等に依存する固定値である。
【0031】
ここで、遅れ時間Tdは、調整後位相α1の演算時に、各電源制御部52で同じ値が用いられる。したがって、調整後位相α1の演算時に同期信号の位相α0を遅らせる時間(Td-Ta)は、マスタユニット7から電源制御部52までの同期信号の伝送経路の長さLtが長い程短くなり、マスタユニット7から電源制御部52までに介在するスレーブユニット8の台数Nsが多い程短くなる。
【0032】
図4に示す例では、第1電源制御部52A、第2電源制御部52B、第3電源制御部52C、第4電源制御部52D、第5電源制御部52Eの順に、マスタユニット7からの同期信号の伝送経路の長さLtが長くなっている。そのため、第1電源制御部52A、第2電源制御部52B、第3電源制御部52C、第4電源制御部52D、第5電源制御部52Eの順に、マスタユニット7からの同期信号の伝送所要時間が長くなっている。つまり、複数の電源制御部52のうち、マスタユニット7からの同期信号の伝送所要時間が最も長い電源制御部52を「最遅電源制御部」とすると、第5電源制御部52Eが最遅電源制御部に相当する。なお、マスタユニット7からの同期信号の伝送経路の長さLtが実質的にゼロの電源制御部52(言い換えれば、当該長さLtをゼロとみなせる電源制御部52)が存在していても良い。
【0033】
なお、
図4に示す例では、第3電源制御部52Cは、第1スレーブユニット8Aを介してマスタユニット7に接続されている。そのため、マスタユニット7から第3電源制御部52Cまでの同期信号の伝送所要時間には、1台分(Ns=1)のスレーブユニット8(第1スレーブユニット8A)における同期信号の処理に要する時間Tsが含まれている。また、第4電源制御部52D及び第5電源制御部52Eのそれぞれは、第1スレーブユニット8A及び第2スレーブユニット8Bを介してマスタユニット7に接続されている。そのため、マスタユニット7から第4電源制御部52Dまでの同期信号の伝送所要時間、及び、マスタユニット7から第5電源制御部52Eまでの同期信号の伝送所要時間のそれぞれには、2台分(Ns=2)のスレーブユニット8(第1スレーブユニット8A及び第2スレーブユニット8B)における同期信号の処理に要する時間Tsが含まれている。
【0034】
図5に、第1電源制御部52Aによる調整後位相α1の演算と、第5電源制御部52Eによる調整後位相α1の演算との比較を示す。なお、
図5において、黒塗り矢印は、マスタユニット7から、左側に示す符号に対応する電源制御部52までの同期信号の伝送所要時間を表している。そして、白塗り矢印は、左側に示す符号に対応する電源制御部52が、マスタユニット7からの同期信号を受信してから、給電線11に交流電流を供給するように電源回路51を制御するまでの時間を表している。
【0035】
図5に示すように、時刻t1に、マスタユニット7が同期信号を発信する。そして、第1電源制御部52Aが、時刻t2にマスタユニット7からの同期信号を受信し、第5電源制御部52Eが、第1電源制御部52Aよりも遅れて、マスタユニット7からの同期信号を時刻t3に受信する。これは、上述したように、第5電源制御部52Eが最遅電源制御部であり、マスタユニット7から第5電源制御部52Eまでの同期信号の伝送所要時間が、マスタユニット7から第1電源制御部52Aまでの同期信号の伝送所要時間よりも長いためである。
【0036】
マスタユニット7からの同期信号を受信した第1電源制御部52A及び第5電源制御部52Eのそれぞれは、上記の式に基づいて、調整後位相α1を演算する。第1電源制御部52Aは、当該第1電源制御部52Aが受信した同期信号の位相α0に対応する時刻t2から遅れ時間Td分遅らせた位相に対応する時刻t5に対して、第1調整時間Ta1分進めた、調整後位相α1に対応する時刻t41を演算する。第5電源制御部52Eは、当該第5電源制御部52Eが受信した同期信号の位相α0に対応する時刻t3から遅れ時間Td分遅らせた位相に対応する時刻t6に対して、第2調整時間Ta2分進めた、調整後位相α1に対応する時刻t42を演算する。
【0037】
ここで、第1調整時間Ta1は、第1電源制御部52Aにより算出された調整時間Taである。つまり、第1調整時間Ta1は、マスタユニット7から第1電源制御部52Aまでの同期信号の伝送所要時間(時刻t1~t2)に応じた時間である。また、第2調整時間Ta2は、第5電源制御部52Eにより算出された調整時間Taである。つまり、第2調整時間Ta2は、マスタユニット7から第5電源制御部52Eまでの同期信号の伝送所要時間(時刻t1~t3)に応じた時間である。そのため、第1電源制御部52Aがマスタユニット7からの同期信号を受信した時刻t2から、遅れ時間Td分遅らせた時刻t5に対して第1調整時間Ta1分進めた時刻t41と、第5電源制御部52Eがマスタユニット7からの同期信号を受信した時刻t3から、遅れ時間Td分遅らせた時刻t6に対して第2調整時間Ta2分進めた時刻t42とは、極めて近い時刻となる。つまり、第1電源制御部52Aが給電線11に交流電流を供給するように電源回路51を制御するタイミングと、第5電源制御部52Eが給電線11に交流電流を供給するように電源回路51を制御するタイミングとを同期させることができる。他の電源制御部52についても同様であるため、複数の電源回路51のそれぞれが給電線11に供給する交流電流の位相を適切に同期させることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、遅れ時間Tdは、マスタユニット7から最遅電源制御部である第5電源制御部52Eまでの同期信号の伝送所要時間(時刻t1~t3)以上に設定されている。
【0039】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、2つのスレーブユニット8(第1スレーブユニット8A、第2スレーブユニット8B)が同期システム6に設けられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、1つのスレーブユニット8が同期システム6に設けられた構成であっても良いし、3つ以上のスレーブユニット8が同期システム6に設けられた構成であっても良い。或いは、スレーブユニット8が同期システム6に設けられていない構成であっても良い。
【0040】
(2)上記の実施形態では、第1スレーブユニット8Aに1つの電源装置5(詳細には、第3電源制御部52C)が接続されていると共に、第2スレーブユニット8Bに2つの電源装置5(詳細には、第4電源制御部52D及び第5電源制御部52E)が接続された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、スレーブユニット8に3つ以上の電源装置5が接続された構成であっても良い。
【0041】
(3)上記の実施形態では、2つの電源装置5(詳細には、第1電源制御部52A及び第2電源制御部52B)がマスタユニット7に直接的に接続された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、1つの電源装置5がマスタユニット7に直接的に接続された構成であっても良いし、3つ以上の電源装置5がマスタユニット7に直接的に接続された構成であっても良い。或いは、電源装置5がマスタユニット7に直接的に接続されていない構成であっても良い。
【0042】
(4)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0043】
〔上記実施形態の概要〕
以下では、上記において説明した非接触給電設備の概要について説明する。
【0044】
非接触給電設備は、
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、
前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、
複数の前記電源装置の前記交流電流の位相を同期させる同期システムを更に備え、
前記同期システムは、規定の周期の同期信号を出力するマスタユニットを備え、
複数の前記電源装置のそれぞれは、当該電源装置に接続された前記給電線に前記交流電流を供給する電源回路と、前記同期信号を受信して前記電源回路を制御する電源制御部と、を備え、
前記電源制御部は、受信した前記同期信号から規定の遅れ時間分遅らせた位相に対して、前記マスタユニットから当該電源制御部までの前記同期信号の伝送所要時間に応じた時間分進めた調整後位相を演算し、前記交流電流の位相を前記調整後位相に同期させるように前記電源回路を制御する。
【0045】
この構成によれば、電源制御部が、受信した同期信号から規定の遅れ時間分遅らせた位相に対して、マスタユニットから当該電源制御部までの同期信号の伝送所要時間に応じた時間分進めた調整後位相を演算する。そして、電源制御部は、給電線に供給される交流電流の位相を調整後位相に同期させるように電源回路を制御する。これにより、マスタユニットから電源制御部までの同期信号の伝送所要時間が電源装置ごとに異なる場合であっても、複数の電源回路のそれぞれが給電線に供給する交流電流の位相を適切に同期させることができる。したがって、複数の給電線のそれぞれに供給される交流電流の位相の同期精度を高めることができる。
【0046】
ここで、前記同期システムは、前記マスタユニットからの前記同期信号を受信する、少なくとも1つのスレーブユニットを更に備え、
前記スレーブユニットは、直接的に前記マスタユニットに接続され、又は、他の前記スレーブユニットを介して間接的に前記マスタユニットに接続され、
更に、前記スレーブユニットは、少なくとも1つの前記電源装置に接続され、受信した前記同期信号を当該電源装置に伝送するように構成されていると好適である。
【0047】
この構成によれば、例えば、複数の電源装置が比較的広い範囲に亘って配置されている場合であっても、マスタユニットにより出力された同期信号を、スレーブユニットを介して適切に電源装置に伝送することができる。したがって、上記のような場合であっても、複数の給電線のそれぞれに供給される交流電流の位相の同期精度を高めることができる。
【0048】
前記同期システムが前記スレーブユニットを備えた構成において、
前記電源制御部は、以下の式に基づいて前記調整後位相を演算すると好適である。
α1=α0-{Td-(1/Vs×Lt+Ts×Ns)}
ここで、
α1は、前記調整後位相であり、
α0は、前記電源制御部が受信した前記同期信号の位相であり、
Tdは、前記遅れ時間であり、
Vsは、前記同期信号の伝送速度であり、
Ltは、前記マスタユニットから前記電源制御部までの前記同期信号の伝送経路の長さであり、
Tsは、前記スレーブユニットにおける前記同期信号の処理に要する時間であり、
Nsは、前記マスタユニットから前記電源制御部までに介在する前記スレーブユニットの台数である。
【0049】
この構成によれば、調整後位相を精度良く演算することができる。したがって、調整後位相に基づいて電源装置により供給される交流電流の位相の同期精度を、更に高めることができる。
【0050】
また、複数の前記電源制御部のうち、前記マスタユニットからの前記同期信号の前記伝送所要時間が最も長い前記電源制御部を最遅電源制御部として、
前記遅れ時間は、前記マスタユニットから前記最遅電源制御部までの前記同期信号の前記伝送所要時間以上に設定されていると好適である。
【0051】
この構成によれば、最遅電源制御部により制御される電源回路が供給する交流電流の位相が、他の電源回路が供給する交流電流の位相とずれることを回避できる。したがって、全ての電源装置により供給される交流電流の位相を精度良く同期させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示に係る技術は、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、複数の給電線のそれぞれに接続され、給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
100 :非接触給電設備
1 :移動経路
3 :移動体
4 :受電装置
5 :電源装置
51 :電源回路
52 :電源制御部
6 :同期システム
7 :マスタユニット
8 :スレーブユニット
11 :給電線