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  • 特許-データ記録装置および方法 図1
  • 特許-データ記録装置および方法 図2
  • 特許-データ記録装置および方法 図3
  • 特許-データ記録装置および方法 図4
  • 特許-データ記録装置および方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】データ記録装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G07C 5/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022018593
(22)【出願日】2022-02-09
(65)【公開番号】P2023116050
(43)【公開日】2023-08-22
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 淳
(72)【発明者】
【氏名】小川 洋平
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-096713(JP,A)
【文献】特開2016-132368(JP,A)
【文献】特開平10-177663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ予め定められたサンプリング周期で取得される車両の状態に関する複数のデータを前記サンプリング周期よりも長い基準記録周期で記録するデータ記録装置であって、
前記複数のデータのうちの車外装置により指定された少なくとも1つの指定データを行方向に並ぶように前記基準記録周期で記憶領域に格納すると共に、前記サンプリング周期以上かつ前記基準記録周期未満の短縮記録周期で取り込んだ前記指定データを前記基準記録周期で格納される前記指定データに対して列方向に並ぶように前記短縮記録周期で前記記憶領域に格納するデータ記録装置。
【請求項2】
請求項に記載のデータ記録装置において、
イベントの発生に応じて、前記短縮記録周期で取り込んだ1つの前記指定データを前記基準記録周期で格納される前記指定データに対して行方向に並ぶように前記記憶領域に格納すると共に、前記指定データの識別子を前記短縮記録周期で格納される前記指定データに対して行方向に並び、かつ前記1つの前記指定データに対して列方向に並ぶように前記記憶領域に格納するデータ記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のデータ記録装置において、
前記車外装置は、前記車両に搭載された通信装置を介して前記車両から前記複数のデータを取得して管理する管理サーバおよび前記車両の故障診断のために前記データ記録装置に接続される端末の少なくとも何れか一方であるデータ記録装置。
【請求項4】
請求項1からの何れか一項に記載のデータ記録装置において、前記複数のデータを前記基準記録周期で常時記録するデータ記録装置。
【請求項5】
それぞれ予め定められたサンプリング周期で取得される車両の状態に関する複数のデータを前記サンプリング周期よりも長い基準記録周期で記録するデータ記録方法であって、
前記複数のデータのうちの車外装置により指定された少なくとも1つの指定データを行方向に並ぶように前記基準記録周期で記憶領域に格納すると共に、前記サンプリング周期以上かつ前記基準記録周期未満の短縮記録周期で取り込んだ前記指定データを前記基準記録周期で格納される前記指定データに対して列方向に並ぶように前記短縮記録周期で前記記憶領域に格納するデータ記録方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の状態に関する複数のデータを記録するデータ記録装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のセンサにより測定される測定値の詳細情報を取得可能な検針装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この検針装置は、測定値の利用目的に応じたサンプリング周期を記憶しており、指定された利用目的に対応するサンプリング周期を特定し、特定したサンプリング周期で複数のセンサでの測定を実行させる。更に、当該検針装置は、センサにより測定される測定値の変化の有無を検知し、測定値の変化を検知した場合、当該変化を検知した期間の測定値を詳細情報として抽出する。また、特許文献1には、1以上のセンサを有すると共にサンプリング周期を詳細なデータに要求される極めて短い周期に設定して測定を実施する検針メータも記載されている。この検針メータでは、測定したデータを一定の期間ごとに区切って管理し、測定期間Aにおける期間開始時点の測定値A1を、当該測定期間Aの代表値として保持する。更に、当該検針メータは、測定値A1と測定期間終了時の測定値A2の測定値を比較し、両者の変化量が閾値を超えている場合には、測定値A1-A2を記憶領域に格納し、変化量が当該閾値を超えていない場合には、測定値A1-A2を破棄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-190202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両において、特許文献1に記載された検針装置のように、当該車両の状態に関する複数のデータごとに利用目的に応じて記憶されたサンプリング周期から指定された利用目的に対応するサンプリング周期を特定し、特定したサンプリング周期で複数のデータを測定していくことも考えられる。しかしながら、特許文献1には、利用目的の指定やサンプリング周期の特定の仕方が何ら記載されておらず、ニーズに応じて車両側で柔軟にサンプリング周期を変化させながら的確なデータを得ることは困難である。一方、特許文献1に記載された検針メータのように、測定期間の開始時点における測定値と終了時における測定値との変化量に基づいて、当該測定期間におけるデータを記憶または破棄すれば、極めて短い周期でデータの測定を実施しても、記憶領域の使用量を抑えることができる。しかしながら、測定期間の区切り方によっては、当該変化量が閾値を超えていたとしても、発生した現象に対応した的確なデータが得られなくなるおそれもある
【0005】
そこで、本開示は、データの記録に必要な容量の増加を抑制しつつ、車両の状態に関する複数のデータをニーズに応じて柔軟かつ的確に記録可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のデータ記録装置は、それぞれ予め定められたサンプリング周期で取得される車両の状態に関する複数のデータを前記サンプリング周期よりも長い基準記録周期で記録するデータ記録装置であって、前記複数のデータのうちの車外装置により指定された少なくとも1つの指定データを前記サンプリング周期以上かつ前記基準記録周期未満の短縮記録周期で記録するものである。
【0007】
また、本開示のデータ記録方法は、それぞれ予め定められたサンプリング周期で取得される車両の状態に関する複数のデータを前記サンプリング周期よりも長い基準記録周期で記録するデータ記録方法であって、前記複数のデータのうちの車外装置により指定された少なくとも1つの指定データを前記サンプリング周期以上かつ前記基準記録周期未満の短縮記録周期で記録するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示のデータ記録装置を含む車両を示す概略構成図である。
図2】本開示のデータ記録装置により記録されるフリーズフレームデータを例示する説明図である。
図3】本開示のデータ記録装置を含む車両の車載通信装置により実行されるルーチンの一例を示すフローチャートである。
図4】車外装置からの指定に応じて、本開示のデータ記録装置が指定データを基準記録周期および短縮記録周期で記録する手順を説明するための説明図である。
図5】車外装置からの指定に応じて、本開示のデータ記録装置により記録されるフリーズフレームデータおよび任意記録データを例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示のデータ記録装置を含む車両1を示す概略構成図である。同図に示す車両1は、例えば、何れも図示しないエンジン(内燃機関)、モータジェネレータ、インバータ、バッテリ等を含むハイブリッド車両である。図示するように、車両1は、車載通信装置5と、複数の電子制御装置(以下、「ECU」という。)10,20,30…とを含む。車載通信装置5は、車外装置としての管理サーバ50や例えば車両販売店や車両整備工場で使用される端末(携帯端末を含む)との間で高速データ通信(無線パケット通信)により情報をやり取りすると共に、複数のECU10等との間で情報をやり取りすることができるものである。
【0011】
複数のECU10,20,30は、何れも図示しないCPU,ROM,RAM、入出力インターフェース等を有するマイクロコンピュータ(図示省略)と、不揮発性メモリ(NVRAM)11,21または31を含むものである。ECU10は、車両1のエンジンを制御するものである。ECU20は、車両1のモータジェネレータを駆動するインバータ等を制御するものである。ECU30は、車両1のバッテリを管理するものである。また、ECU10,20,30は、各々にインストールされたアプリケーション(ソフトウェア)と、CPU,ROM,RAM、不揮発性メモリ11,21または31といったハードウェアとの協働により構築されたデータ記録モジュール(データ記録装置)15,25または35を含む。
【0012】
データ記録モジュール15,25,35は、それぞれ予め定められたサンプリング周期(例えば、数msecから数十msec)Tsで取得(検出または算出)される車両1の状態に関する複数のデータ(各種物理量や設定状態等)を当該サンプリング周期Tsよりも長い基準記録周期Trb(例えば、500msec)でフリーズフレームデータとして不揮発性メモリ11,21または31に記憶させる(記録する)。図2に、ECU10のデータ記録モジュール25により記録されるフリーズフレームデータを例示する。同図に示すように、フリーズフレームデータは、不揮発性メモリ11等の予め定められた記憶領域に例えば車速やエンジン回転数といった予め定められた複数のデータを列方向に並べると共に当該複数のデータの各々を基準記録周期Trbで行方向に並べて格納することにより生成される。また、図示するように、フリーズフレームデータの各行のインデックスには、該当するデータの名称(車速、エンジン回転数等)と共に当該データに予め付与されているデータID(識別子)が格納される。フリーズフレームデータは、基本的に、不揮発性メモリ11等に記録されてから例えば所定時間が経過した段階で当該不揮発性メモリ11等から消去される。
【0013】
各ECU10,20,30において記録されるフリーズフレームデータは、例えば予め定められた周期で車載通信装置5から管理サーバ50に送信される。管理サーバ50は、例えば車両1のメーカーにより設置・管理されるものであり、CPU,ROM,RAM、入出力装置等を有するコンピュータや、車両1の車載通信装置5と通信するための通信モジュール、各種情報を記憶する記憶装置等を含む。管理サーバ50は、車両1の車載通信装置5から送信されるフリーズフレームデータを当該車両1の車台番号や車両番号といった車両情報に紐付けして記憶装置に記憶させる。管理サーバ50により管理されるフリーズフレームデータには、車両販売店や整備工場等の端末からアクセス可能であり、車両1に何らかの異常が発生した際に、車両1側に記憶されていないフリーズフレームデータを管理サーバ50から取得して、車両1で発生した異常の原因の解析等に用いることができる。
【0014】
ここで、ECU10等のデータ記録モジュール15等により記録されるフリーズフレームデータは、上述のような比較的長い基準記録周期Trbで記録されるものである。このため、車両1で異常検出等のイベントが発生したタイミングの前後におけるデータが当該フリーズフレームデータに含まれていないこともあり得る。また、フリーズフレームデータの基準記録周期Trbをより短くした場合、詳細なデータを得ることができるものの、不揮発性メモリ11,21,31の容量増に伴うコストアップや、車載通信装置5と管理サーバ50等との通信時間の増加等を招いてしまう。一方、各種規制等の対象となるプログラムの書き換えとは異なり、データ記録モジュール15等におけるデータの記録周期の変更に認証は不要である。
【0015】
これらを踏まえて、車両1では、車外装置としての管理サーバ50からの指定に応じて、各データ記録モジュール15,25,35により記録されるフリーズフレームデータに含まれる複数のデータ(物理量等)の少なくとも一部を上記基準記録周期Trb未満の周期(以下、「短縮記録周期Trs」という。)で任意記録データとして記録できるようになっている。本実施形態において、管理サーバ50は、車両1の車載通信装置5との通信の開通時(初期設定時)に、車両1の対象となる複数のECU10,20,30等ごとに短縮記録周期Trsで記録されるべきデータを指定するための記録周期通知を当該車載通信装置5に送信する。また、管理サーバ50は、車両1の安全機能等のシステムアップデートに伴って一部のデータをより詳細に取得する必要が生じたときや、他車両での不具合発生等に応じて同一車種について一部のデータをより詳細に取得する必要が生じたとき等にも、車両1の車載通信装置5に対して上記記録周期通知を送信する。
【0016】
図3は、管理サーバ50による記録周期通知の送信に応じて車両1の車載通信装置5により実行されるルーチンの一例を示すフローチャートである。図3に示すように、車載通信装置5は、管理サーバ50からの記録周期通知を受信すると(ステップS100)、当該記録周期通知から管理サーバ50により指定されたECU(以下、「指定ECU」という。)と、当該管理サーバ50により指定された短縮記録周期Trsで記録されるべきデータ(以下、「指定データ」という。)のデータIDとを取得する(ステップS110)。記録周期通知には、指定ECUおよび指定データのデータIDの少なくとも何れか一方が複数含まれていてもよく、指定ECUおよび指定データのデータIDの少なくとも何れか一方が1つだけ含まれていてもよい。以下、指定ECUがECU10であり、指定データが「車速」であるものとして、図3のルーチンについて説明する。
【0017】
ステップS110の処理の後、車載通信装置5は、指定ECUであるECU10に車速を短縮記録周期Trsで記録すべき旨の通知を送信する(ステップS120)。車載通信装置5からの通知を受信したECU10は、上述の基準記録周期Trb(例えば、500msec)に加えて、予め定められた短縮記録周期Trs(例えば、100msec)をデータ記録モジュール15の車速の記録周期に設定する。これにより、データ記録モジュール15は、図示しない車速センサにより取得される車速を基準記録周期Trbでフリーズフレームデータとして不揮発性メモリ11に記憶させると共に、車速センサにより取得される車速を短縮記録周期Trsで任意記録データとして不揮発性メモリ11に記憶させる。
【0018】
指定ECUであるECU10は、データ記録モジュール15の車速の記録周期を変更した後、当該記録周期の設定変更が完了したことを示す設定完了通知を車載通信装置5に通知する。車載通信装置5は、指定ECUであるECU10からの設定完了通知を受信すると(ステップS130)、指定ECUにおける指定データIDについての記録周期の設定変更が車両1側で完了した旨を示す設定完了通知を管理サーバ50に送信し(ステップS140)、図2の一連の処理を終了させる。
【0019】
図4は、管理サーバ50からの記録周期通知に応じて、指定ECUとしてのECU10のデータ記録モジュール15が指定データとしての車速を基準記録周期Trbおよび短縮記録周期Trsで記録する手順を説明するための説明図である。また、図5は、管理サーバ50からの記録周期通知に応じてデータ記録モジュール15により記録されるフリーズフレームデータおよび任意記録データを例示する説明図である。
【0020】
図4および図5に示すように、データ記録モジュール15は、管理サーバ50による短縮記録周期Trsでの車速(指定データ)の記録の指定に応じて、車速センサにより所定のサンプリング周期Tsで取得される車速を当該短縮記録周期Trsで取り込む。また、データ記録モジュール15は、取り込んだ車速を行方向に並ぶように基準記録周期Trbで不揮発性メモリ11の記憶領域にフリーズフレームデータとして格納する。更に、データ記録モジュール15は、短縮記録周期Trsで取り込んだ車速を基準記録周期Trbで格納される車速に対して列方向に並ぶように不揮発性メモリ11の記憶領域に任意記録データとして格納する。
【0021】
より詳細には、データ記録モジュール15は、基準記録周期Trbが経過するたびに、短縮記録周期Trsで取り込んだ車速(例えば図4のフレーム1における車速)を行方向に並ぶように不揮発性メモリ11の記憶領域に格納する。また、データ記録モジュール15は、短縮記録周期Trsが経過するたびに、取り込んだ車速(例えば図4におけるフレーム2から5までの車速)を次に基準記録周期Trbが経過したときに当該記憶領域に格納されることになる車速(例えば図5のデータ位置“-1”に格納される図4のフレーム6における車速)に対して例えば図中下から上に向けて列方向に並ぶようにデータ取り込み順に不揮発性メモリ11の記憶領域に格納する。本実施形態では、図4および図5に示すように、短縮記録周期Trsが基準記録周期Trbの約数になっていることから、基準記録周期Trbで格納される車速(例えば図4のフレーム6における車速)も、基準記録周期Trbで格納される当該車速(例えば図5のデータ位置“-1”に格納される車速)の下段に任意記録データとして格納される。
【0022】
また、データ記録モジュール15は、車両1の診断機能による異常検出といったイベントの発生に応じて、短縮記録周期Trsで取り込んだ1つの指定データとしての車速(例えば、図4のフレーム8における車速)を基準記録周期Trbで格納される車速(例えば、図4におけるフレーム6および11における車速)に対して行方向に並ぶように不揮発性メモリ11の記憶領域にフリーズフレームデータとして格納する。更に、データ記録モジュール15は、指定データである車速のデータIDを短縮記録周期Trsで格納される車速に対して行方向に並び、かつ当該1つの車速(図5のデータ位置“0”における車速)に対して列方向に並ぶように不揮発性メモリ11の記憶領域に任意記録データとして格納する。なお、管理サーバ50によりECU20やECU30が指定ECUとされた場合、データ記録モジュール25,35が図4および図5を参照して説明した手順に従ってフリーズフレームデータおよび任意記録データを不揮発性メモリ21または31に記憶させる。また、本実施形態では、イベントの発生に応じて、各ECU10等のフリーズフレームデータおよび任意記録データの消去が禁止される。
【0023】
上述のように、車両1のデータ記録装置を構成するデータ記録モジュール15,25,35は、車両1の状態に関する複数のデータ(物理量等)をサンプリング周期Tsよりも長い基準記録周期Trbでフリーズフレームデータとして記録する。また、データ記録モジュール15,25,35は、当該複数のデータのうちの管理サーバ(車外装置)50により指定された少なくとも1つの指定データをサンプリング周期Ts以上かつ基準記録周期Trb未満の短縮記録周期Trsで任意記録データとして記録する。このように、管理サーバ50により指定された指定データのみを短縮記録周期Trsで記録していくことで、不揮発性メモリ11,21,31の容量の増加を抑制することが可能となる。更に、管理サーバ50側では、制約の多い車両1側に比べて、短縮記録周期Trsで記録されるべき指定データを様々に変化するニーズに応じて柔軟かつ的確に決定することができる。この結果、データ記録モジュール15,25,35によれば、データの記録に必要な容量の増加を抑制しつつ、車両1の状態に関する複数のデータをニーズに応じて柔軟かつ的確に記録することが可能となる。
【0024】
また、車両1のデータ記録モジュール15,25,35は、指定データを行方向に並ぶように基準記録周期Trbで不揮発性メモリ11,21,31の記憶領域にフリーズフレームデータとして格納すると共に、短縮記録周期Trsで取り込んだ指定データを基準記録周期Trbで格納されるデータに対して列方向に並ぶように不揮発性メモリ11等の記憶領域に短縮記録周期Trsで任意記録データとして格納する。これにより、基準記録周期Trbで記録されるフリーズフレームデータのフォーマット(行方向のフォーマット)を変更することなく、短縮記録周期Trsで詳細な任意記録データを記録していくことが可能となる。
【0025】
更に、車両1のデータ記録モジュール15,25,35は、異常検出といったイベントの発生に応じて、短縮記録周期Trsで取り込んだ1つの指定データを基準記録周期Trbで格納される指定データに対して行方向に並ぶように不揮発性メモリ11等の記憶領域に格納すると共に、指定データのデータID(識別子)を短縮記録周期Trsで格納される指定データに対して行方向に並び、かつ当該1つの指定データに対して列方向に並ぶように不揮発性メモリ11等の記憶領域に格納する。これにより、短縮記録周期Trsで記録される指定データに基準記録周期Trbで記録される対応した指定データの識別子を付与することができる。この結果、当該データIDに基づいて、基準記録周期Trbで記録された指定データと短縮記録周期Trsで記録された指定データとから詳細な時系列データを復元することが可能となる。
【0026】
なお、短縮記録周期Trsは、車両1側で記憶されている予め定められた時間に限られず、車外装置としての管理サーバ50により指定される周期(時間)であってもよい。また、短縮記録周期Trsは、必ずしも基準記録周期Trbの約数になっている必要はない。更に、指定ECU、指定データおよび短縮記録周期Trsは、管理サーバ50以外の車外装置である車両販売店や車両整備工場で使用される端末により設定されてもよい。また、車両販売店や車両整備工場の端末(携帯端末を含む)は、車両1の故障診断のために有線または無線通信によりデータ記録モジュール15等に接続されるものであってもよい。更に、上述のような本開示の発明は、車両1に搭載されて複数のデータを予め定められた基準記録周期で常時記録するもデータロガーに適用されてもよい。また、車両1は、ハイブリッド車両に限られるものではなく、エンジンのみを動力発生源として車両であってもよく、電気自動車(燃料電池車両を含む。)であってもよい。
【0027】
以上説明したように、本開示のデータ記録装置は、車両の状態に関する複数のデータをサンプリング周期よりも長い基準記録周期で記録すると共に、当該複数のデータのうちの車外装置により指定された少なくとも1つの指定データを当該サンプリング周期以上かつ基準記録周期未満の短縮記録周期で記録するものである。このように、車外装置により指定された指定データのみを短縮記録周期で記録していくことで、データの記録に必要な容量の増加を抑制することが可能となる。更に、車外装置側では、制約の多い車両側に比べて、短縮記録周期で記録されるべき指定データを様々に変化するニーズに応じて柔軟かつ的確に決定することができる。この結果、本開示のデータ記録装置によれば、データの記録に必要な容量の増加を抑制しつつ、車両の状態に関する複数のデータをニーズに応じて柔軟かつ的確に記録することが可能となる。なお、短縮記録周期は、車両側で記憶されている予め定められた時間であってもよく、車外装置により指定される周期(時間)であってもよい。
【0028】
また、前記データ記録装置は、前記指定データを行方向に並ぶように前記基準記録周期で記憶領域に格納すると共に、前記短縮記録周期で取り込んだ前記指定データを前記基準記録周期で格納される前記指定データに対して列方向に並ぶように前記短縮記録周期で前記記憶領域に格納するものであってもよい。これにより、基準記録周期で記録されるデータのフォーマット(行方向のフォーマット)を変更することなく、短縮記録周期で詳細なデータを記録していくことが可能となる。
【0029】
更に、前記データ記録装置は、イベントの発生に応じて、前記短縮記録周期で取り込んだ1つの前記指定データを前記基準記録周期で格納される前記指定データに対して行方向に並ぶように前記記憶領域に格納すると共に、前記指定データの識別子を前記短縮記録周期で格納される前記指定データに対して行方向に並び、かつ前記1つの前記指定データに対して列方向に並ぶように前記記憶領域に格納するものであってもよい。これにより、短縮記録周期で記録される指定データに基準記録周期で記録される対応した指定データの識別子を付与することができるので、当該識別子に基づいて、基準記録周期で記録された指定データと短縮記録周期で記録された指定データとから詳細な時系列データを復元することが可能となる。
【0030】
また、前記車外装置は、前記車両に搭載された通信装置を介して前記車両から前記複数のデータを取得して管理する管理サーバおよび前記車両の故障診断のために前記データ記録装置に接続される端末の少なくとも何れか一方であってもよい。
【0031】
更に、前記データ記録装置は、前記複数のデータを前記基準記録周期で常時記録するものであってもよい。
【0032】
そして、本開示のデータ記録方法によれば、データの記録に必要な容量の増加を抑制しつつ、車両の状態に関する複数のデータをニーズに応じて柔軟かつ的確に記録することが可能となる。
【0033】
ただし、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本開示の発明は、車両の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 車両、5 車載通信装置、10,20,30 電子制御装置(ECU)、11,21,31 不揮発性メモリ、15,25,35 データ記録モジュール、50 管理サーバ、Trb 基準記録周期、Trs 短縮記録周期、Ts サンプリング周期。
図1
図2
図3
図4
図5