(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】記憶システム及び記憶制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/00 20060101AFI20241217BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241217BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20241217BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B60W50/00
B60W60/00
B60W50/14
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2022022948
(22)【出願日】2022-02-17
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓光
(72)【発明者】
【氏名】徳永 穣
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-051933(JP,A)
【文献】特開2017-134725(JP,A)
【文献】特開2016-057490(JP,A)
【文献】特開2022-163852(JP,A)
【文献】特開2008-165433(JP,A)
【文献】特開2018-041123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者を支援する支援システムの動作情報を記憶する記憶システムであって、
記憶装置と、
前記支援システムから動作情報を取得する第一取得部と、
前記運転者の前記車両の運転操作に係る情報を取得する第二取得部と、
前記第一取得部により取得された前記動作情報と前記第二取得部により取得された前記運転操作に係る情報とに基づいて、前記運転操作が前記支援システムによる支援を抑制する第一操作であるかを判定する判定部と、
前記判定部によって前記運転操作が前記第一操作であると判定されたことに応じて、前記動作情報と前記車両の周囲環境に関する外界情報とを関連付けて前記記憶装置に記憶させる記憶部と、
を備え、
前記記憶装置は、第一記憶装置及び第二記憶装置を含み、
前記第一記憶装置は、前記動作情報と前記外界情報とを関連付けて一時的に記憶し、
前記第二記憶装置は、前記第一記憶装置から情報を取得して記憶し、
前記記憶部は、前記判定部によって前記運転操作が前記第一操作であると判定されたことに応じて、前記第一記憶装置に記憶された前記動作情報及び前記外界情報のうち、前記第一操作が実行されたタイミングから所定時間遡った期間に記憶された前記動作情報及び前記外界情報を取得して記憶するように、前記第二記憶装置に指示を出力する、
記憶システム。
【請求項2】
前記第一操作は、前記支援システムによって設定されたヘッドライトの照射位置を変更する操作、前記支援システムによる操舵支援中における逆方向への操舵操作、前記支援システムによる加速支援中におけるブレーキ操作、及び、前記支援システムによる減速支援中におけるアクセル操作のうちの少なくとも1つの運転操作である、請求項
1に記載の記憶システム。
【請求項3】
前記支援システムは、前記運転者へ目標速度を報知する支援を行い、
前記判定部は、前記運転操作が、前記運転者へ報知された前記目標速度から閾値速度以上乖離する速度で走行する第二操作であるかをさらに判定し、
前記記憶部は、前記判定部によって前記運転操作が前記第二操作であると判定されたことに応じて、前記動作情報と前記外界情報とを関連付けて前記記憶装置に記憶させる、請求項1
又は2に記載の記憶システム。
【請求項4】
車両の運転者を支援する支援システムの動作情報を記憶装置に記憶させる記憶制御装置であって、
前記支援システムから動作情報を取得する第一取得部と、
前記運転者の前記車両の運転操作に係る情報を取得する第二取得部と、
前記第一取得部により取得された前記動作情報と前記第二取得部により取得された前記運転操作に係る情報とに基づいて、前記運転操作が前記支援システムによる支援を抑制する第一操作であるかを判定する判定部と、
前記判定部によって前記運転操作が前記第一操作であると判定されたことに応じて、前記動作情報と前記車両の周囲環境に関する外界情報とを関連付けて前記記憶装置に記憶させる記憶部と、
を備
え、
前記記憶装置は、第一記憶装置及び第二記憶装置を含み、
前記第一記憶装置は、前記動作情報と前記外界情報とを関連付けて一時的に記憶し、
前記第二記憶装置は、前記第一記憶装置から情報を取得して記憶し、
前記記憶部は、前記判定部によって前記運転操作が前記第一操作であると判定されたことに応じて、前記第一記憶装置に記憶された前記動作情報及び前記外界情報のうち、前記第一操作が実行されたタイミングから所定時間遡った期間に記憶された前記動作情報及び前記外界情報を取得して記憶するように、前記第二記憶装置に指示を出力する、
記憶制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、記憶システム及び記憶制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両情報を記憶する記憶システムを開示する。このシステムは、複数のECU(Electronic Control Unit)を備える。いずれかのECUの自己診断機能により異常が検出された場合に、通信ラインを介して異常が検出されていない他のECUに対して、車両情報を記憶させるための記憶コマンドが送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1記載のシステムに対して、車両の運転者を支援するECU(支援ECU)を搭載することが考えられる。そして、支援ECUの動作の検証のために、支援ECUの動作情報と、支援タイミングにおける車両外部の環境に関する情報とを記憶することが考えられる。特許文献1記載のシステムは、支援ECUを含む複数のECUのいずれかに異常が検出された場合に情報を記憶する。このため、特許文献1記載のシステムは、システム動作としては正常な支援であるものの運転者にとって不要な支援が実行された場面において、情報を記憶することが困難である。本開示は、支援制御に関する情報を適切に記憶することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る記憶システムは、車両の運転者を支援する支援システムの動作情報を記憶する。記憶システムは、記憶装置、第一取得部、第二取得部、判定部、及び記憶部を備える。第一取得部は、支援システムから動作情報を取得する。第二取得部は、運転者の車両の運転操作に係る情報を取得する。判定部は、第一取得部により取得された動作情報と第二取得部により取得された運転操作に係る情報とに基づいて、運転操作が支援システムによる支援を抑制する第一操作であるかを判定する。記憶部は、判定部によって運転操作が第一操作であると判定されたことに応じて動作情報と車両の周囲環境に関する外界情報とを関連付けて記憶装置に記憶させる。
【0006】
この記憶システムにおいては、支援システムから動作情報が取得され、運転者の車両の運転操作に係る情報が取得される。そして、運転者の運転操作が支援システムによる支援を抑制する第一操作であるか判定される。運転操作が第一操作であると判定されたことに応じて、動作情報と車両の周囲環境に関する外界情報とが関連付けられて記憶される。第一操作は、支援システムによる支援が運転者にとって不要である場合に行われる。このため、記憶システムは、運転者の第一操作に基づいて情報を記憶することによって、システム動作としては正常な支援であるものの運転者にとって不要な支援が実行された場面の情報を記憶することができる。よって、記憶システムは、支援制御に関する情報を適切に記憶することができる。
【0007】
一実施形態においては、記憶装置は、第一記憶装置及び第二記憶装置を含み、第一記憶装置は、動作情報と外界情報とを関連付けて一時的に記憶し、第二記憶装置は、第一記憶装置から情報を取得して記憶し、記憶部は、判定部によって運転操作が第一操作であると判定されたことに応じて、第一記憶装置に記憶された動作情報及び外界情報のうち、第一操作が実行されたタイミングから所定時間遡った期間に記憶された動作情報及び外界情報を取得して記憶するように、第二記憶装置に指示を出力してもよい。この場合、記憶システムは、運転者にとって不要な支援に対して運転者の運転操作の反応が遅れた場合であっても、運転者にとって不要な支援が実行された場面の情報を記憶することができる。
【0008】
一実施形態においては、第一操作は、支援システムによって設定されたヘッドライトの照射位置を変更する操作、支援システムによる操舵支援中における逆方向への操舵操作、支援システムによる加速支援中におけるブレーキ操作、及び、支援システムによる減速支援中におけるアクセル操作のうちの少なくとも1つの運転操作であってもよい。
【0009】
一実施形態においては、支援システムは、運転者へ目標速度を報知する支援を行い、判定部は、運転操作が運転者へ報知された目標速度から閾値速度以上乖離する速度で走行する第二操作であるかをさらに判定し、記憶部は、判定部によって運転操作が第二操作であると判定されたことに応じて、動作情報と外界情報とを関連付けて記憶装置に記憶させてもよい。第二操作は、第一操作と同様に、支援システムによる支援内容が運転者にとって不要である場合に行われる。このため、記憶システムは、運転者の第二操作に基づいて情報を記憶することによって、システム動作としては正常な支援であるものの運転者にとって不要な支援が実行された場面の情報を記憶することができる。
【0010】
本開示の他の側面に係る記憶制御装置は、車両の運転者を支援する支援システムの動作情報を記憶装置に記憶させる。記憶制御装置は、第一取得部、第二取得部、判定部、及び記憶部を備える。第一取得部は、支援システムから動作情報を取得する。第二取得部は、運転者の車両の運転操作に係る情報を取得する。判定部は、第一取得部により取得された動作情報と第二取得部により取得された運転操作に係る情報とに基づいて、運転操作が支援システムによる支援を抑制する第一操作であるかを判定する。記憶部は、判定部によって運転操作が第一操作であると判定されたことに応じて動作情報と車両の周囲環境に関する外界情報とを関連付けて記憶装置に記憶させる。この記憶制御装置は、上述した記憶システムと同一の効果を奏する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、支援制御に関する情報を適切に記憶できる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る記憶システムが備わる車両のブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る記憶システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】バッファから取り出される情報を説明する図である。
【
図4】一実施形態に係る記憶システムの動作の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明及び各図面において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0014】
(車両の構成)
図1は、一実施形態に係る記憶システムが備わる車両のブロック図である。
図1に示されるように、記憶システム1は、一例として車両2に搭載される。車両2は、運転者に運転支援を提供する支援システムを搭載する。運転支援の内容は特に限定されない。提供される運転支援は、いわゆるADAS(Advanced Driver Assistance System)であってもよい。ADASは、追従走行支援、車間距離制御支援、ABS(Anti-lock Braking System)、ブレーキアシスト、操舵支援、速度制御支援、外部環境情報の表示などを含んでもよい。記憶システム1は、支援システムの動作情報を記憶する。動作情報には、支援内容を特定可能な情報が含まれる。例えば、追従走行支援の動作情報は、システムによって付与された操舵量、操舵タイミング、加減速量、加減速タイミングなどの情報である。記憶システム1は、後述する機能を発揮することで、提供された運転支援のうち運転者が不要と感じた支援に関する情報を記録することができる。
【0015】
車両2は、一例として、外部センサ3、内部センサ4、操作検知センサ5、運転支援ECU6、HMI(Human Machine Interface)7、アクチュエータ8、ドライブレコーダ9、記憶制御ECU10(記憶制御装置の一例)、及び、記憶装置20を備える。記憶システム1は、記憶制御ECU及び記憶装置20を備えて構成される。
【0016】
外部センサ3は、車両2の周囲環境に関する外界情報を検出する検出器である。周囲環境とは、車両2の周辺の物体の位置、物体の状況などである。外界情報には、車両2が走行する車道の前方の物体の位置、形状、色などが含まれる。物体には、車両、歩行者、信号機、路面ペイントなどが含まれる。外部センサ3は、一例としてカメラであり、外界情報は画像情報であってもよい。
【0017】
カメラは、車両2の外部状況を撮像する撮像機器である。カメラは、一例として車両2のフロントガラスの裏側に設けられる。カメラは、車両2の外部状況に関する撮像情報を取得する。カメラは、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。ステレオカメラは、両眼視差を再現するように配置された二つの撮像部を有する。ステレオカメラの撮像情報には、奥行き方向の情報も含まれる。
【0018】
外部センサ3は、カメラに限定されず、レーダセンサなどであってもよい。レーダセンサは、電波(例えばミリ波)又は光を利用して車両2の周辺の物体を検出する検出器である。レーダセンサには、例えば、ミリ波レーダ又はライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)が含まれる。レーダセンサは、電波又は光を車両2の周辺に送信し、物体で反射された電波又は光を受信することで物体を検出する。
【0019】
内部センサ4は、車両2の走行状態を検出する検出器である。内部センサ4は、車速センサ、加速度センサ及びヨーレートセンサの少なくとも1つを含んでもよい。車速センサは、車両2の速度を検出する検出器である。車速センサとしては、例えば、車両2の車輪又は車輪と一体に回転するドライブシャフトなどに対して設けられ、車輪の回転速度を検出する車輪速センサが用いられる。加速度センサは、車両2の加速度を検出する検出器である。加速度センサは、車両2の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサと、車両2の加速度を検出する横加速度センサとを含んでもよい。ヨーレートセンサは、車両2の重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサとしては、例えばジャイロセンサを用いることができる。
【0020】
操作検知センサ5は、車両2の運転者の運転操作を検出する検出器である。操作検知センサ5は、例えば、舵角センサ、レバー操作検知センサ、及びペダルセンサの少なくとも1つを含む。舵角センサは、車両2のステアリングシャフトの回転量を検出する検出器である。レバー操作検知センサは、運転席の操作レバー(方向指示器、ヘッドライトの方向(ハイビームまたはロービーム)など)の操作を検知する検出器である。ペダルセンサは、ブレーキペダルの操作量、アクセルペダルの操作量などを検出する検出器である。
【0021】
運転支援ECU6は、車両2の運転者を支援する運転支援システムとして機能する。運転支援ECU6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)、CAN(Controller Area Network)通信回路などを有する電子制御ユニットである。運転支援ECU6は、例えばCAN通信回路を用いて通信するネットワークに接続され、上述した車両2の構成要素と通信可能に接続される。運転支援ECU6は、例えば、CPUが出力する信号に基づいて、CAN通信回路を動作させてデータを入出力し、データをRAMに記憶し、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行することで、後述する機能を実現する。運転支援ECU6は、複数の電子制御ユニットから構成されてもよい。
【0022】
HMI7は、車両2の乗員(運転者含む)と、運転支援ECU6によって実現されるシステムとのインターフェイスである。HMI7は、一例として、情報を表示可能であり、かつ、乗員の操作入力を受け付け可能なタッチディスプレイなどを含む。
【0023】
アクチュエータ8は、車両2の走行制御を実行する装置である。アクチュエータ8は、エンジンアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを少なくとも含む。エンジンアクチュエータは、運転操作又は運転支援ECU6の制御信号に応じてエンジンに対する空気の供給量を変更(例えばスロットル開度を変更)することで、車両2の駆動力を制御する。なお、エンジンアクチュエータは、車両2がハイブリッド車又は電気自動車である場合には、動力源としてのモータの駆動力を制御する。
【0024】
ブレーキアクチュエータは、運転支援ECU6からの制御信号に応じてブレーキシステムを制御し、車両2の車輪へ付与する制動力を制御する。ブレーキシステムとしては、例えば、液圧ブレーキシステムを用いることができる。なお、ブレーキアクチュエータは、車両2が回生ブレーキシステムを備えている場合、液圧ブレーキシステム及び回生ブレーキシステムの両方を制御してもよい。操舵アクチュエータは、電動パワーステアリングシステムのうち操舵トルクを制御するアシストモータの駆動を、運転支援ECU6からの制御信号に応じて制御する。これにより、操舵アクチュエータは、車両2の操舵トルクを制御する。
【0025】
ドライブレコーダ9は、車両2の周囲の画像を記録する装置である。ドライブレコーダ9は、車両2の周囲を撮像するカメラ及び内部記憶装置を含む。つまり、ドライブレコーダ9は、車両2の周囲環境に関する外界情報を取得する機器である。
図1においては、簡潔に図示するために外部センサ3とドライブレコーダ9とを別個に示しているが、ドライブレコーダ9は、外部センサ3に含まれ得る。ドライブレコーダ9は、画像を外部の記憶装置20へ出力する機能を有する。
【0026】
記憶制御ECU10は、記憶装置20を制御する機器である。記憶制御ECU10は、運転支援ECU6と同様に、CPU、ROM、RAM、CAN通信回路などを有する電子制御ユニットである。記憶制御ECU10は、記憶装置20に接続され、記憶装置20が記憶する情報の対象を決定し、記憶装置20に記憶させる。あるいは、記憶制御ECU10は、記憶装置20が記憶する情報の対象を記憶装置20に決定させ、記憶させることもできる。
【0027】
記憶装置20は、情報を記憶する装置であり、ROM、RAM、HDD(HardDisk Drive)などで構成される。記憶装置20は、運転支援ECU6に接続され、運転支援ECU6から動作情報を取得する。記憶装置20は、ドライブレコーダ9に接続され、ドライブレコーダ9から外界情報を取得する。以下では、外界情報の一例は画像情報であるとして説明する。記憶装置20において、動作情報と画像情報とは時系列で関連付けられ得る。記憶装置20は、記憶制御ECU10から出力される制御信号(指示の一例)に基づいて、動作情報と画像情報とを記憶する。
【0028】
記憶装置20は、例えば、記憶制御ECU10から出力される記憶開始信号の受信タイミングに基づいて、動作情報と画像情報とを関連付けて記憶することを開始してもよい。記憶装置20は、開始トリガ信号に示されるタイミングに基づいて動作情報と画像情報とを関連付けて記憶することを開始してもよい。記憶装置20は、記憶開始信号の受信タイミング又は開始トリガ信号に示されるタイミングから所定期間経過後に記憶動作を終了させてもよい。記憶装置20は、記憶終了信号の受信タイミング又は終了トリガ信号に示されるタイミングで記憶動作を終了させてもよい。
【0029】
記憶装置20は、動作情報と画像情報とを一時的に記憶し、記憶制御ECU10から出力される制御信号に基づいて、一時的に記憶された情報のうち、指定された範囲の情報を、一時的な記憶領域から非一時的な記憶領域へとコピーしてもよい。これにより、記憶装置20は、記憶制御ECU10の制御信号を受信したタイミングよりも前の期間、つまり、過去に遡って情報を記憶することができる。このような動作を実現するために、記憶装置20は、バッファ21(第一記憶装置の一例)及びストレージ22(第二記憶装置の一例)を有する。バッファ21は、動作情報と画像情報とを一時的に記憶する記憶装置である。一時的に記憶するとは、容量が閾値を超えたり、イベントが発生したりした場合に、上書き又は消去される形態で記憶することをいう。概して、バッファ21は、容量が閾値を超えた場合に時系列の先頭の情報から上書きされるように構成される。これにより、バッファ21は、時系列の観測データなどを一定期間連続して記憶することができる。
【0030】
ストレージ22は、バッファ21から情報を取得して記憶する。ストレージ22は、バッファに記憶された動作情報及び画像情報のうち、記憶制御ECU10から指示された期間に記憶された動作情報及び画像情報を取得して記憶する。記憶制御ECU10から指示された期間は、記憶開始信号の受信タイミング又は開始トリガ信号に示されるタイミングから所定時間遡った期間としてもよい。所定時間は、予め任意に設定された時間である。
【0031】
記憶装置20は、動作情報と画像情報とを一時的に記憶し、記憶制御ECU10から出力される制御信号に基づいて、一時的に記憶された情報のうち、指定された範囲の情報を、上書き禁止又は消去禁止としてもよい。この場合、記憶装置20は、バッファ21及びストレージ22の何れか一方を備えていればよい。
【0032】
このように、記憶制御ECU10及び記憶装置20は、協働して動作することにより、記憶制御ECU10によって指定された期間の動作情報と画像情報とを関連付けて、非一時的な領域に記憶することができる。上述した処理は、記憶制御ECU10と、記憶装置20に備わる制御チップとの両方が協働して動作することで実現するだけでなく、記憶制御ECU10のみの制御だけで実現することもできる。
【0033】
(記憶制御ECUの詳細)
記憶制御ECU10は、機能的には、支援内容取得部11(第一取得部の一例)、操作取得部12(第二取得部の一例)、行動判定部13(判定部の一例)、及び、記憶部14を備える。
【0034】
支援内容取得部11は、運転支援ECU6から動作情報を取得する。動作情報は、上述したとおり、支援内容を特定可能な情報が含まれる。操作取得部12は、運転者の車両2の運転操作に係る情報を取得する。操作取得部12は、操作検知センサ5から運転操作に係る情報を取得する。
【0035】
行動判定部13は、支援内容取得部11により取得された動作情報と操作取得部12により取得された運転操作に係る情報とに基づいて、運転操作が運転支援ECU6による支援を抑制する第一操作であるかを判定する。行動判定部13は、運転支援ECU6の動作情報によって支援内容を把握し、操作検知センサ5によって検知された運転操作に係る情報から運転操作を把握する。そして、行動判定部13は、支援内容と運転操作とを比較して、運転操作が支援を抑制する第一操作であるかを判定する。「支援を抑制する」とは、支援の効果を発揮させないように、又は、支援の効果が減じるように運転操作されている状態をいう。
【0036】
例えば、支援内容取得部11は、運転支援ECU6によってヘッドライトの照射位置がハイビームに設定されたという動作情報を、運転支援ECU6から取得したとする。そして、操作検知センサ5は、ハイビームに設定されたヘッドライトをロービームへ再設定した運転操作に係る情報を検知したとする。この場合、行動判定部13は、ロービームへ再設定した運転操作は、ハイビームへ設定するという支援の効果を発揮させないようにする運転操作、つまり、第一操作であると判定する。
【0037】
例えば、支援内容取得部11は、運転支援ECU6によって操舵支援が提供されており、操舵方向を含む動作情報を運転支援ECU6から取得したとする。そして、操作検知センサ5は、運転支援ECU6による操舵支援中に操舵方向とは逆方向の操舵操作に係る情報を検知したとする。この場合、行動判定部13は、運転支援ECU6によって設定されたヘッドライトの照射位置を変更する操作が、運転支援ECU6による操舵支援の効果を発揮させないようにする運転操作、つまり、第一操作であると判定する。
【0038】
例えば、支援内容取得部11は、運転支援ECU6によって速度支援が提供されており、加減速を含む動作情報を運転支援ECU6から取得したとする。そして、操作検知センサ5は、運転支援ECU6による加速支援中においてブレーキペダルを踏み込む運転操作に係る情報を検知したとする。この場合、行動判定部13は、運転支援ECU6による加速支援中におけるブレーキ操作が、運転支援ECU6による操舵支援の効果を発揮させないようにする運転操作、つまり、第一操作であると判定する。同様に、操作検知センサ5は、運転支援ECU6による減速支援中においてアクセルペダルを踏み込む運転操作に係る情報を検知したとする。この場合、行動判定部13は、運転支援ECU6による減速支援中におけるアクセル操作が、運転支援ECU6による操舵支援の効果を発揮させないようにする運転操作、つまり、第一操作であると判定する。
【0039】
記憶部14は、行動判定部13によって運転操作が第一操作であると判定されたことに応じて、動作情報と外界情報とを関連付けて記憶装置20に記憶させる。これにより、第一操作がなされたタイミングにおける動作情報と外界情報とを記憶させることができる。
【0040】
(記憶システムの動作)
図2は、一実施形態に係る記憶システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図2に示されるフローチャートは、運転支援ECU6の支援中において、例えば記憶システム1の作動スイッチが乗員の操作によりONされたタイミングで開始される。
【0041】
図2に示されるように、記憶システム1の記憶装置20は、一時記憶処理(ステップS10)として、バッファ21に運転支援ECU6の動作情報及び車両2の外界情報(例えばドライブレコーダ9の画像情報)を記憶する。これにより、バッファ21は、一定期間の動作情報及び画像情報を関連付けて記憶する。
【0042】
記憶制御ECU10の支援内容取得部11は、第一取得処理(ステップS12)として、運転支援ECU6から動作情報を取得する。続いて、記憶制御ECU10の操作取得部12は、第二取得処理(ステップS14)として、操作検知センサ5から運転操作に係る情報を取得する。
【0043】
記憶制御ECU10の行動判定部13は、判定処理(ステップS16)として、ステップS12で取得された動作情報とステップS14で取得された運転操作に係る情報とに基づいて、運転操作が第一操作であるかを判定する。
【0044】
運転操作が第一操作であると判定された場合(ステップS16:YES)、記憶部14は、指示処理(ステップS18)として、記憶装置20へ開始トリガ信号を出力する。続いて、記憶装置20は、抽出処理(ステップS20)として、バッファ21に記憶されたデータのうち、開始トリガ信号から所定時間遡ったタイミングまでの期間に記憶されたデータを抽出する。
【0045】
図3は、バッファから取り出される情報を説明する図である。
図3では、バッファ21に格納された情報を履歴として時系列で示している。
図3に示されるように、横軸が時間軸tであり、ドライブレコーダ9のフレーム画像G1~G12が外界情報として撮像順にバッファ21に格納されている。そして、運転支援ECU6の動作情報D1~D6が時系列でバッファ21に格納されている。ここで、運転支援ECU6の運転者にとって不要となる支援が発生タイミングH1で実行されたとする。これに応じて、運転者によって第一操作がなされ、記憶部14によって開始トリガ信号が出力されたとする(出力タイミングH2)。この場合、記憶装置20は、出力タイミングH2から所定期間T1だけ遡ったタイミングH0~出力タイミングH2までの期間Hを記憶対象とする。そして、記憶装置20は、期間Hに含まれるフレーム画像G3~G10と、動作情報D2~D5とをバッファ21から抽出する。
【0046】
図2に戻り、記憶装置20は、記憶処理(ステップS22)として、ステップS20において抽出されたデータをストレージ22に記憶させる。ステップS22が終了した場合、又は、運転操作が第一操作でないと判定された場合(ステップS16:NO)、
図2に示されるフローチャートが終了する。フローチャートが終了した場合、例えば記憶システム1の作動スイッチが乗員の操作によりOFFされたか否かが判定される。作動スイッチがOFFされていない場合には、ステップS10に戻り、処理が繰り返される。
【0047】
(実施形態のまとめ)
例えばカメラを用いたADASでは、カメラ認識での誤検知によりユーザが不要と感じる作動が発生し、システムの性能低下やユーザへの不快感につながる。このような作動の原因を究明するためには、ユーザが不要と感じた際のADASの動作情報、及び、その際の映像などの関連情報が必要となる。しかしながら、ユーザが不要と感じた作動はシステム動作としては正常であるため、従来の装置は、記録開始タイミングを判定することができない。
【0048】
記憶システム1においては、運転支援ECU6から動作情報が取得され、操作検知センサ5から運転者の車両2の運転操作に係る情報が取得される。そして、運転者の運転操作が運転支援ECU6による支援を抑制する第一操作であるか判定される。運転操作が第一操作であると判定されたことに応じて、動作情報と車両2の周囲環境に関する外界情報とが関連付けられて記憶される。第一操作は、運転支援ECU6による支援が運転者にとって不要である場合に行われる。このため、記憶システム1は、運転者の第一操作に基づいて情報を記憶することによって、システム動作としては正常な支援であるものの運転者にとって不要な支援が実行された場面の情報を記憶することができる。よって、記憶システム1は、支援制御に関する情報を適切に記憶することができる。
【0049】
記憶装置20はストレージ22だけでなく一時的な記憶が可能なバッファ21を備えるので、記憶システム1は、運転者にとって不要な支援に対して運転者の運転操作の反応が遅れた場合であっても、運転者にとって不要な支援が実行された場面の情報を記憶することができる。
【0050】
(変形例)
以上、例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0051】
例えば、行動判定部13は、操作検知センサ5(舵角センサ)の検出結果ではなく、内部センサ4(ヨーレートセンサ)の検出結果に基づいて、運転支援ECU6による操舵方向とは逆の方向に操作する運転操作を検出してもよい。動作情報に関連付けられる情報は、外界情報だけでなく、地図情報又はGPSの自車両位置情報などを含んでもよい。
【0052】
運転支援ECU6は、ADASとして運転者へ目標速度を報知する支援を行ってもよい。例えば、車室内の表示パネルに、画像認識によって標識から得られた制限速度(目標速度の一例)を表示させてもよい。そして、行動判定部13は、運転操作が運転者へ報知された制限速度から閾値速度以上乖離する速度で走行する第二操作であるかを判定する。閾値速度は、運転操作が第二操作であるか否かを判定するために予め設定される。記憶部14は、運転操作が第二操作であると判定されたことに応じて、動作情報と外界情報とを関連付けて記憶装置に記憶させてもよい。
【0053】
図4は、一実施形態に係る記憶システムの動作の他の例を示すフローチャートである。
図4に示されるフローチャートは、
図3に示されるフローチャートと比較して、ステップS17が追加されている点が相違し、その他は同一である。以下では相違点のみ説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0054】
運転操作が第一操作でないと判定された場合(ステップS16:NO)、記憶制御ECU10の行動判定部13は、第二判定処理(ステップS17)として、ステップS12で取得された動作情報(表示されている速度情報)と、現在の車速とに基づいて、運転操作が第二操作であるかを判定する。例えば、表示されている速度が100km/sであり、現在の速度が40km/sである場合、表示されている速度が誤認識された速度であって運転者が無視している可能性が高い。閾値速度が30km/sに設定されている場合、40km/sで走行する運転操作は第二操作と判定される。
【0055】
運転操作が第二操作であると判定された場合(ステップS17:YES)、記憶部14は、指示処理(ステップS18)として、記憶装置20へ開始トリガ信号を出力する。運転操作が第二操作でないと判定された場合(ステップS17:NO)、
図4に示されるフローチャートが終了する。
図4に示されるフローチャートを実行することにより、記憶システム1は、支援制御に関する情報をさらに適切に記憶できる。
【符号の説明】
【0056】
1…記憶システム、2…車両、3…外部センサ、4…内部センサ、5…操作検知センサ、6…運転支援ECU、9…ドライブレコーダ、10…記憶制御ECU、11…支援内容取得部(第一取得部の一例)、12…操作取得部(第二取得部の一例)、13…行動判定部(判定部の一例)、14…記憶部、20…記憶装置、21…バッファ、22…ストレージ。