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特許7605151再撮影支援装置、プログラム及び再撮影支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】再撮影支援装置、プログラム及び再撮影支援方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/46 20240101AFI20241217BHJP
【FI】
A61B6/46 536Z
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022023404
(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公開番号】P2023120495
(43)【公開日】2023-08-30
【審査請求日】2024-07-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良平
(72)【発明者】
【氏名】清水 亜麻衣
【審査官】嵯峨根 多美
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-097864(JP,A)
【文献】国際公開第2021/106885(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/209290(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/036012(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像の所定の領域の第1のずれを判定する第1の判定手段と、
前記放射線画像の所定の領域の第2のずれを判定する第2の判定手段と、
少なくとも前記第1のずれの判定と前記第2のずれの判定に基づき、前記放射線画像再撮影を支援する再撮影支援情報を出力する出力手段と、
を有し、
前記出力手段は、前記再撮影支援情報として、前記第1のずれに関連する第1の部位の位置を変えるための情報、及び、前記第2のずれに関連する第2の部位の位置を変えるための情報を出力可能である再撮影支援装置。
【請求項2】
前記第1の判定手段は、前記第1のずれの判定として前記放射線画像の所定の領域の第1の方向のずれを判定し、
前記第2の判定手段は、前記第2のずれの判定として前記放射線画像の所定の領域の第2の方向のずれを判定し、
前記出力手段は、前記第1の方向のずれの判定と前記第2の方向のずれの判定とに基づき、前記再撮影支援情報を出力する、請求項1に記載の再撮影支援装置。
【請求項3】
前記第1の判定手段は、前記第1のずれの判定として前記放射線画像の所定の領域の第1の方向のずれ量を判定し、
前記第2の判定手段は、前記第2のずれの判定として前記放射線画像の所定の領域の第2の方向のずれ量を判定し、
前記出力手段は、前記第1の方向のずれ量の判定と前記第2の方向のずれ量の判定とに基づき、前記再撮影支援情報を出力する、請求項1または2に記載の再撮影支援装置。
【請求項4】
前記出力手段は、前記再撮影支援情報として前記第1のずれに関する情報および前記第2のずれに関する情報を出力することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の再撮影支援装置。
【請求項5】
前記出力手段は、前記再撮影支援情報として、前記第1の方向のずれ量に基づき、前記第1のずれに関連する第1の部位の位置を変えるための情報を出力し、前記第2の方向のずれ量に基づき、前記第2のずれに関連する第2の部位の位置を変えるための情報を出力することを特徴とする、請求項3に記載の再撮影支援装置。
【請求項6】
前記出力手段は、前記第1の部位の位置を変えるための情報として、前記第1の部位の移動距離を出力し、前記第2の部位の位置を変えるための情報として、前記第2の部位の移動距離を出力する、請求項に記載の再撮影支援装置。
【請求項7】
前記出力手段は、前記第1の部位の位置を変えるための情報として、前記第1の部位の移動方向を出力し、前記第2の部位の位置を変えるための情報として、前記第2の部位の移動方向を出力する、請求項5または6に記載の再撮影支援装置。
【請求項8】
前記出力手段は、再撮影が必要であることを示す情報とともに、前記再撮影支援情報を出力する、請求項1からのいずれか一項に記載の再撮影支援装置。
【請求項9】
前記第1のずれを判定する所定の領域と、前記第2のずれを判定する所定の領域とは同一の関節領域であることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の再撮影支援装置。
【請求項10】
前記所定の領域を撮影部位情報に基づき決定する決定手段を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の再撮影支援装置。
【請求項11】
前記第1のずれを判定する所定の領域と前記第2のずれを判定する所定の領域は、肘関節側面の上腕骨滑車外縁と上腕骨小頭縁、又は上腕骨小頭縁と上腕骨滑車内縁に囲まれた範囲を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の再撮影支援装置。
【請求項12】
少なくとも、放射線画像と、前記放射線画像の所定の領域の第1のずれに関する情報と、前記放射線画像の所定の領域の第2のずれに関する情報と、が教師データとして学習された学習済みモデルと、
放射線画像を取得する取得手段と、
前記学習済みモデルと前記取得手段によって取得された放射線画像とに基づき、前記放射線画像再撮影を支援する再撮影支援情報を出力する出力手段と、
を有し、
前記出力手段は、前記再撮影支援情報として、前記第1のずれに関連する第1の部位の位置を変えるための情報、及び、前記第2のずれに関連する第2の部位の位置を変えるための情報を出力可能である再撮影支援装置。
【請求項13】
コンピューターを、
放射線画像から所定の領域の第1のずれを判定する第1の判定手段、
前記放射線画像の所定の領域の第2のずれを判定する第2の判定手段、
少なくとも前記第1のずれの判定と前記第2のずれの判定に基づき、前記放射線画像再撮影を支援する再撮影支援情報を出力する出力手段、
として機能させ、
前記出力手段は、前記再撮影支援情報として、前記第1のずれに関連する第1の部位の位置を変えるための情報、及び、前記第2のずれに関連する第2の部位の位置を変えるための情報を出力可能であるプログラム。
【請求項14】
前記第1の判定手段は、前記第1のずれの判定として前記放射線画像の所定の領域の第1の方向のずれを判定し、
前記第2の判定手段は、前記第2のずれの判定として前記放射線画像の所定の領域の第2の方向のずれを判定し、
前記出力手段は、前記第1の方向のずれの判定と前記第2の方向のずれの判定とに基づき、前記再撮影支援情報を出力する、請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
前記第1の判定手段は、前記第1のずれの判定として前記放射線画像の所定の領域の第1の方向のずれ量を判定し、
前記第2の判定手段は、前記第2のずれの判定として前記放射線画像の所定の領域の第2の方向のずれ量を判定し、
前記出力手段は、前記第1の方向のずれ量の判定と前記第2の方向のずれ量の判定とに基づき、前記再撮影支援情報を出力する、請求項13または14に記載のプログラム。
【請求項16】
前記出力手段は、前記再撮影支援情報として前記第1のずれに関する情報および前記第2のずれに関する情報を出力することを特徴とする、請求項13から15のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項17】
前記出力手段は、前記再撮影支援情報として、前記第1の方向のずれ量に基づき、前記第1のずれに関連する第1の部位の位置を変えるための情報を出力し、前記第2の方向のずれ量に基づき、前記第2のずれに関連する第2の部位の位置を変えるための情報を出力することを特徴とする、請求項15に記載のプログラム。
【請求項18】
前記出力手段は、前記第1の部位の位置を変えるための情報として、前記第1の部位の移動距離を出力し、前記第2の部位の位置を変えるための情報として、前記第2の部位の移動距離を出力する、請求項17に記載のプログラム。
【請求項19】
前記出力手段は、前記第1の部位の位置を変えるための情報として、前記第1の部位の移動方向を出力し、前記第2の部位の位置を変えるための情報として、前記第2の部位の移動方向を出力する、請求項17または18に記載のプログラム。
【請求項20】
前記出力手段は、再撮影が必要であることを示す情報とともに、前記再撮影支援情報を出力する、請求項13から19のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項21】
前記第1のずれを判定する所定の領域と、前記第2のずれを判定する所定の領域とは同一の関節領域であることを特徴とする、請求項13から20のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項22】
前記コンピューターを、
前記所定の領域を撮影部位情報に基づき決定する決定手段、
として機能させる、請求項13から21のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項23】
前記第1のずれを判定する所定の領域と前記第2のずれを判定する所定の領域は、肘関節側面の上腕骨滑車外縁と上腕骨小頭縁、又は上腕骨小頭縁と上腕骨滑車内縁に囲まれた範囲を含むことを特徴とする、請求項13から22のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項24】
放射線画像の所定の領域の第1のずれを判定する第1の判定工程と、
前記放射線画像の所定の領域の第2のずれを判定する第2の判定工程と、
少なくとも前記第1のずれの判定と前記第2のずれの判定に基づき、前記放射線画像再撮影を支援する再撮影支援情報を出力する出力工程と、
を含み、
前記出力工程は、前記再撮影支援情報として、前記第1のずれに関連する第1の部位の位置を変えるための情報、及び、前記第2のずれに関連する第2の部位の位置を変えるための情報を出力可能である再撮影支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再撮影支援装置、プログラム及び再撮影支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療被ばくの最適化および線量管理は特に重要視されており、放射線撮影装置による撮影において照射線量の低減が求められている。無用な放射線被ばくを避けるため、再撮影を最小限に留める工夫が必要とされている。
放射線撮影において患者の撮影姿勢が適切ではない場合、撮影時に患者の体位の取り方(ポジショニング)にずれが生じ、再撮影が必要となる。患者のポジショニングのずれを判定することで再撮影を行うか否かを判断する技術が知られているが、再撮影を複数回行わないようにするため、より精度の高いポジショニングのずれ判定が望まれている。
【0003】
患者のポジショニングのずれを判定する技術として、従来から、関節におけるポジショニングのずれを判定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-097864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
膝においては、例えば臥位で撮影する場合、関節の自由度が低い。大腿側のポジショニングは変わりにくく、かつ変えにくい。そのため、従来、下腿側の1領域のポジショニングのずれを判断することで、膝におけるポジショニングのずれを判定していた。同様に、足首においても、例えば臥位で撮影する場合、関節の自由度が低い。下腿側のポジショニングは変わりにくく、かつ変えにくい。そのため、従来、足先側の1領域のポジショニングのずれを判断することで足首のポジショニングのずれを判定していた。
【0006】
一方、肘は関節の自由度が高いため、肘におけるポジショニングのずれ判定においては、前腕側及び上腕側の2方向ともポジショニングのずれが生じやすい。そのため、従来のように、1領域のみのポジショニングのずれを判定することによって1方向(前腕側又は上腕側)のポジショニングのずれのみを判定しても、肘のポジショニングのずれを精度高く判定することはできない。
【0007】
また、膝や足首などにおいても、関節の自由度は低いものの、2方向(例えば、膝であれば大腿側と下腿側、足首であれば下腿側と足先側)のいずれもポジショニングにずれが生じる可能性はある。そのため、膝や足首などをはじめ、関節のポジショニングのずれの判定においては、1領域のみのポジショニングのずれを判定することによって1方向のポジショニングのずれのみを判定しても、ポジショニングのずれを精度高く判定することはできない。
【0008】
本発明の課題は、関節のポジショニングのずれを精度高く判定することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の再撮影支援装置は、
放射線画像の所定の領域の第1のずれを判定する第1の判定手段と、
前記放射線画像の所定の領域の第2のずれを判定する第2の判定手段と、
少なくとも前記第1のずれの判定と前記第2のずれの判定に基づき、前記放射線画像再撮影を支援する再撮影支援情報を出力する出力手段と、
を有し、
前記出力手段は、前記再撮影支援情報として、前記第1のずれに関連する第1の部位の位置を変えるための情報、及び、前記第2のずれに関連する第2の部位の位置を変えるための情報を出力可能である
【0011】
また、本発明の再撮影支援装置は、
少なくとも、放射線画像と、前記放射線画像の所定の領域の第1のずれに関する情報と、前記放射線画像の所定の領域の第2のずれに関する情報と、が教師データとして学習された学習済みモデルと、
放射線画像を取得する取得手段と、
前記学習済みモデルと前記取得手段によって取得された放射線画像とに基づき、前記放射線画像再撮影を支援する再撮影支援情報を出力する出力手段と、
を有し、
前記出力手段は、前記再撮影支援情報として、前記第1のずれに関連する第1の部位の位置を変えるための情報、及び、前記第2のずれに関連する第2の部位の位置を変えるための情報を出力可能である
【0013】
また、本発明のプログラムは、
コンピューターを、
放射線画像から所定の領域の第1のずれを判定する第1の判定手段、
前記放射線画像の所定の領域の第2のずれを判定する第2の判定手段、
少なくとも前記第1のずれの判定と前記第2のずれの判定に基づき、前記放射線画像再撮影を支援する再撮影支援情報を出力する出力手段、
として機能させ、
前記出力手段は、前記再撮影支援情報として、前記第1のずれに関連する第1の部位の位置を変えるための情報、及び、前記第2のずれに関連する第2の部位の位置を変えるための情報を出力可能である。
【0014】
また、本発明の再撮影支援方法は、
放射線画像の所定の領域の第1のずれを判定する第1の判定工程と、
前記放射線画像の所定の領域の第2のずれを判定する第2の判定工程と、
少なくとも前記第1のずれの判定と前記第2のずれの判定に基づき、前記放射線画像再撮影を支援する再撮影支援情報を出力する出力工程と、
を含み、
前記出力工程は、前記再撮影支援情報として、前記第1のずれに関連する第1の部位の位置を変えるための情報、及び、前記第2のずれに関連する第2の部位の位置を変えるための情報を出力可能である
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、関節のポジショニングのずれを精度高く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る放射線撮影システムの一例を示すブロック図である。
図2】肘関節側面を模式的に示す図である。
図3】肘関節正面を模式的に示す図である。
図4】(a)は、入力データの教師データとする放射線画像の一例を示す図であり、(b)は、出力データの教師データとする領域マップの一例を示す図である。
図5図1のコンソールの機能的構成を示すブロック図である。
図6図5の制御部により実行される撮影制御処理の流れを示すフローチャートである。
図7】再撮影判断支援情報の表示例を示す図である。
図8】再撮影支援情報の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、以下の実施形態及び図示例に限定されるものではない。
【0018】
<1.放射線撮影システム>
はじめに、本実施形態に係る放射線撮影システム(以下、システム100)の概略構成について説明する。
図1は、システム100を示すブロック図である。
【0019】
システム100は、図1に示すように、放射線画像撮影装置(以下、撮影装置1)と、コンソール2と、を備えている。
また、本実施形態に係るシステム100は、放射線発生装置(以下、発生装置3)と、画像管理装置4と、学習装置5と、を更に備えている。
各装置1~5は、例えば通信ネットワークN(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して互いに通信可能となっている。
【0020】
なお、システム100は、撮影室内に据え付けられたものであってもよいし、移動可能に構成されたもの(例えば、回診車)となっていてもよい。
また、システム100は、図示しない病院情報システム(Hospital Information System:HIS)や、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)等と通信可能となっていてもよい。
【0021】
〔1-1.放射線発生装置〕
発生装置3は、ジェネレーター31と、照射指示スイッチ32と、放射線源33と、を備えている。
【0022】
ジェネレーター31は、照射指示スイッチ32が操作されたことに基づいて、予め設定された撮影条件に応じた電圧を放射線源33(管球)へ印加するようになっている。
【0023】
放射線源33は、ジェネレーター31から電圧が印加されると、印加された電圧に応じた線量の放射線R(例えばX線等)を発生させるようになっている。
【0024】
また、本実施形態に係る発生装置3は、生成しようとする放射線画像の形態(静止画、複数のフレームを有する動態画像)に応じた態様で放射線Rを発生させるようになっている。
静止画の場合には、1回の照射指示スイッチ32の押下につき放射線Rの照射を1回だけ行う。
動態画像の場合には、1回の照射指示スイッチ32の押下につきパルス状の放射線Rの照射を所定時間当たり複数回(例えば1秒間に15回)繰り返す、又は放射線Rの照射を所定時間継続する。
【0025】
〔1-2.放射線画像撮影装置〕
撮影装置1は、被写体の撮影部位が写った放射線画像のデジタルデータを生成するものである。
本実施形態に係る撮影装置1は、可搬型のFPD(Flat Panel Detector)となっている。
具体的には、本実施形態に係る撮影装置1は、図示を省略するが、放射線Rを受けることで線量に応じた電荷を発生させる撮像素子及び電荷の蓄積・放出を行うスイッチ素子が二次元状(マトリクス状)に配列されたセンサー基板や、各スイッチ素子のオン/オフを切り替える走査部、各画素から放出された電荷の量を信号値として読み出す読み出し部、各部を制御し、読み出し部が読み出した複数の信号値から放射線画像を生成する制御部、生成した放射線画像のデータや各種信号等を他の装置(コンソール2、発生装置3、画像管理装置4等)へ送信したり他の装置から各種情報や各種信号を受信したりする通信部等を備えている。
【0026】
そして、撮影装置1は、発生装置3から放射線Rが照射されるタイミングと同期して、電荷の蓄積・放出、信号値の読出しを行うことにより、静止画の画像データ(以下、静止画データ)、又は動態画像の画像データ(以下、動態画像データ)を生成するようになっている。
静止画データを生成する場合には、1回の照射指示スイッチ32の押下につき放射線画像の生成を1回だけ行う。
動態画像データを生成する場合には、1回の照射指示スイッチ32の押下につき動態画像を構成するフレームの生成を所定時間当たり複数回(例えば1秒間に15回)繰り返す。
【0027】
なお、撮影装置1は、発生装置3と一体になったものであってもよい。
【0028】
〔1-3.コンソール〕
コンソール2は、撮影装置1及び発生装置3の少なくとも一方の装置に各種撮影条件を設定するものである。
また、コンソール2は、PC、専用の装置等で構成されている。
撮影条件は、例えば、被写体Sに関する条件(撮影部位、撮影方向、体格等)と、放射線Rの照射に関する条件(管電圧や管電流、照射時間、電流時間積(mAs値)等)と、撮影装置1の画像読取に関する条件とを含む。
コンソール2は、撮影条件の設定を、他のシステム(HIS、RIS等)から取得した検査オーダー情報に基づいて自動で行うようになっていてもよいし、ユーザー(例えば技師等)によって操作部25になされた操作に基づいて(手動で)行うようになっていてもよい。
【0029】
また、本実施形態に係るコンソール2は、再撮影判断支援装置及び再撮影支援装置を兼ねている。
すなわち、コンソール2は、ユーザーによる、撮影装置1において生成された放射線画像を再撮影とするか否かの判断を支援する再撮影判断支援情報を、再撮影とするか否かの判断時のタイミング(再撮影とするか否かをまだ決めていないタイミング)で出力する再撮影判断支援装置としての機能を有している。また、コンソール2は、撮影装置1において生成された放射線画像の再撮影を支援する再撮影支援情報を、再撮影を行うタイミング(再撮影を行うことは決めているタイミング)で出力する再撮影支援装置としての機能を有している。
【0030】
〔1-4.画像管理装置〕
画像管理装置4は、撮影装置1が生成した画像データを管理するものである。
画像管理装置4は、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:以下、PACS)、画像診断ワークステーション(以下、IWS)等である。
【0031】
〔1-5.学習装置〕
学習装置5は、複数の教師データを学習して、コンソール2において後述する再撮影判断支援情報生成処理を実施する際に用いる学習済みモデルMを生成する装置である。
学習装置5は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、記憶部、通信部、操作部、表示部等を備えて構成されており、教師データに基づく学習済みモデルMの生成は、CPUと記憶部に記憶されているプログラムとの協働により実現される。
学習装置5は、例えば、撮影部位及び撮影方向に応じた複数種類の学習済みモデルMを生成する。
【0032】
本実施形態において、学習装置5は、撮影部位が関節(例えば、肘関節、膝関節、足関節等)の放射線画像と、その放射線画像の所定の領域の第1のずれに関する情報と、その放射線画像の所定の領域の第2のずれに関する情報と、をセットで教師データとして機械学習し、学習済みモデルM(入力された放射線画像から、所定の領域の第1のずれに関する情報及び第2のずれに関する情報を推定(決定)する学習済みモデルM)を生成する。機械学習の手法は特に限定されないが、例えば、Deep Learning等を用いることができる。
【0033】
ここで、本発明におけるずれとは、基準となる正しい位置や状態からはずれていることを指す。基準となる正しい位置や状態は、例えば、診断に最適とされる理想的なポジショニングでの位置や状態である。例えば、肘関節側面の放射線画像においては、理想的なポジショニングでは、上腕骨滑車外縁71と上腕骨小頭縁72(図2参照)がほぼ重なる(一致する)状態となる。上腕骨滑車外縁71と上腕骨小頭縁72が重なっていない放射線画像では、ずれが生じていることとなる。
【0034】
本発明における所定の領域は、放射線画像におけるずれ(第1のずれ、第2のずれ)を判定する対象となる領域であり、撮影部位情報に基づいて決定される領域である。この領域は、本実施形態においては、ずれ領域と呼ぶ。第1のずれを判定する対象となる所定の領域を第1のずれ領域、第2のずれを判定する対象となる所定の領域を第2のずれ領域と呼ぶ。
第1のずれ領域と、第2のずれ領域は、同一の関節領域である。同一の関節領域とは、例えば、同一の肘関節の領域が挙げられる。また、同一の足首の関節の領域や、同一の膝の関節の領域等も含まれる。例えば、肘関節側面の放射線画像における第1のずれ領域としては、肘関節における上腕骨滑車外縁71と上腕骨小頭縁72に囲まれた肘内側の領域(図2に低密度のドットで示す領域)が挙げられ、第2のずれ領域としては、第1のずれ領域と同じ肘関節における上腕骨滑車外縁71と上腕骨小頭縁72に囲まれた肘外側の領域(図2に高密度のドットで示す領域)が挙げられる。
【0035】
本発明における第1のずれとしては、例えば、第1の方向のずれが挙げられ、第2のずれとしては、例えば、第1の方向とは異なる第2の方向のずれが挙げられる。例えば、肘関節側面の放射線画像における所定の領域における第1のずれとしては、肘関節領域の上腕骨滑車外縁71と上腕骨小頭縁72の前腕方向のずれ(図7に符号241kで示す)が挙げられ、第2のずれとしては、肘関節領域の上腕骨滑車外縁71と上腕骨小頭縁72の上腕方向のずれ(図7に符号241jで示す)が挙げられる。
【0036】
第1のずれを表す指標としては、例えば、第1の方向のずれ量が挙げられ、第2のずれを表す指標としては、例えば、第2の方向のずれ量が挙げられる。
ここで、本発明のずれ量とは、理想的なポジショニングを基準とした際に、所定の部位の位置が基準から外れている量を指す。ずれ量が0となることで、理想的なポジショニングとなる。例えば、肘関節側面の放射線画像における所定の領域の第1の方向のずれ量としては、上腕骨滑車外縁71と上腕骨小頭縁72とが前腕方向にずれている量(図2に符号D1で示す)が挙げられ、第2の方向のずれ量としては、上腕骨滑車外縁71と上腕骨小頭縁72とが上腕方向にずれている量(図2に符号D2で示す)が挙げられる。
【0037】
以下、肘関節側面の放射線画像を入力とした場合を例として、学習装置5における学習済みモデルMの生成について説明する。
図2は、肘関節側面を模式的に示す図である。図3は、肘関節正面を模式的に示す図である。
上述のように、肘関節側面の放射線画像では、上腕骨滑車外縁71と上腕骨小頭縁72が一致している状態が理想的なポジショニングの状態であるが、上腕骨滑車外縁71と上腕骨小頭縁72が一致せず、前腕方向(前腕側)及び/又は上腕方向(上腕側)にずれる場合がある。本実施形態では、コンソール2において、放射線画像が肘関節側面の画像である場合、この上腕骨滑車外縁71と上腕骨小頭縁72の前腕方向のずれを第1のずれとし、上腕骨滑車外縁71と上腕骨小頭縁72の上腕方向のずれを第2のずれとして、第1のずれと第2のずれを判定して再撮影判断支援情報及び再撮影支援情報を生成する。学習装置5では、撮影された放射線画像を入力として、コンソール2において用いる第1のずれに関する情報及び第2のずれに関する情報を取得するための学習済みモデルMを生成する。
【0038】
学習装置5は、少なくとも放射線画像を含む1つ以上の入力データとし、放射線画像の所定の領域のずれに関する情報(第1のずれに関する情報と第2のずれに関する情報)を出力データとし、入力データと出力データのセットを教師データとして学習することにより、出力データが未知の入力データを入力すると、出力データを推定する学習済みモデルMを生成する。
教師データにおける入力データとしては、図4(a)に示す放射線画像のほか、例えば、撮影部位情報(例えば、肘関節の画像かどうか)、左右の情報、撮影時の線量などの撮影条件、ピクセルサイズ等の画像情報、光学カメラで学習した患部の画像等を含めることとしてもよい。教師データの入力データが増えるほど、学習済みモデルMの推定精度は高くなる。
【0039】
教師データにおける出力データとしては、例えば、第1のずれと第2のずれのそれぞれについての、図4(b)に示すずれ領域マップ(ずれ領域の座標情報)、ずれ量、ずれに関連する部位の位置を変えるための情報(詳細後述)、ずれの程度の判定ランクや、ずれが生じていることを示すアラートの有無の情報、ずれの判定に用いられる滑車軸(図2の73)の座標情報等が挙げられる。ずれ領域マップは、第1のずれ領域と第2のずれ領域を合わせた領域のものであってもよく、この場合は、第1のずれ領域と第2のずれ領域を分ける情報(両者を分ける線分(例えば、図2のL3)の情報又はずれ領域の各座標が第1のずれ領域と第2のずれ領域のいずれに属するかを示す情報等)も必要となる。また、放射線画像が対象の撮影かどうか(例えば、肘の画像か、関節が写っているか等)の情報等を含めることとしてもよい。さらに、撮影時の照射中心が理想的な位置からどの方向にずれているかを示す情報を出力データに含め、学習済みモデルMから撮影時の照射中心が理想的な位置からどの方向にずれているか(方向ごとの位置の確からしさ)を示す情報を出力できるようにしてもよい。
ずれ領域マップやその他のずれに関する情報は、放射線画像に対して、有識者(放射線技師や医師)が決定したものを用いる。
【0040】
本実施形態において、学習装置5は、例えば、肘関節側面の放射線画像が入力されると、第1のずれ領域の情報(ずれ領域マップや第1のずれ領域と第2のずれ領域を分ける情報)と第2のずれ領域の情報(ずれ領域マップや第1のずれ領域と第2のずれ領域を分ける情報)とを出力する学習済みモデルMを生成する。また、この学習済みモデルMは、滑車軸73の座標も併せて出力する。
ここで、肘関節側面の放射線画像におけるずれ領域(第1のずれ領域と第2のずれ領域を合わせた領域)の範囲は、例えば、図2、3に示すように、上腕骨滑車外縁71と、上腕骨小頭縁72と、滑車軸73から鉤突窩(こうとつか)方向に引いた線L1と、滑車軸73を通り上腕骨76の長手方向(尺骨77方向)に引いた線L2と、で囲まれた範囲とすることができる。このうち、滑車軸73から橈骨75の端に引いた線L3の肘内側の領域(図2に低密度のドットで示す領域)が前腕方向のずれ領域(第1のずれ領域)、肘外側の領域(図2に高密度のドットで示す領域)が上腕方向のずれ領域(第2のずれ領域)である。
なお、本実施形態では、上腕骨滑車外縁71と上腕骨小頭縁72のずれに基づいて第1のずれ、第2のずれを判定することとしているが、これに限定されず、他の2つの部位間での理想的なポジショニングからのずれに基づいて第1のずれ、第2のずれを判定することとしてもよい。
【0041】
学習済みモデルMとしては、上記の他、放射線画像等を入力すると、ずれ量、ずれに関連する部位の位置を変えるための情報、ずれの程度の判定ランク、又はアラートの有無の少なくともいずれかを出力するものであってもよい。
【0042】
<2.コンソールの詳細>
次に、コンソール2について詳細に説明する。
図5は、コンソール2の機能的構成を示すブロック図、図6はコンソール2における処理の流れを示すフローチャートである。
【0043】
〔2-1.コンソールの構成〕
コンソール2は、図5示すように、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、表示部24と、操作部25と、を備えて構成されており、各部21~25は、バス等で電気的に接続されている。
【0044】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等により構成されている。
ROMは、CPUが実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶している。
そして、CPUは、ROMに記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、コンソール2各部の動作を集中制御するようになっている。
制御部21は、後述する撮影制御処理を実行することにより、第1の判定手段、第2の判定手段、出力手段、決定手段として機能する。
【0045】
記憶部22は、不揮発性のメモリーやハードディスク等により構成されている。
記憶部22は、他の装置(撮影装置1、画像管理装置4等)から取得した放射線画像の画像データを記憶することが可能となっている。
【0046】
また、本実施形態に係る記憶部22は、複数の学習済みモデルMを記憶している。複数の学習済みモデルMには、例えば、学習装置5において生成された学習済みモデルMが含まれる。
また、記憶部22は、後述する再撮影判断支援情報生成処理を実行する際に使用される複数種類のアルゴリズムを記憶する。
また、記憶部22は、撮影部位及び撮影方向に対応付けて、その撮影部位及び撮影方向の放射線画像に対して実行される再撮影判断支援情報生成処理の種類を示す情報(例えば、アルゴリズム名)、及びその処理において用いられる学習済みモデルMの種類を示す情報(例えば、学習済みモデル名)を記憶する。
【0047】
また、記憶部22は、RIS等から送信された検査オーダー情報を記憶する。
【0048】
通信部23は、通信モジュール等で構成されている。
通信部23は、通信ネットワークNを介して有線又は無線で接続された他の装置(撮影装置1、発生装置3、画像管理装置4、学習装置5)との間で各種信号や各種データを送受信する。通信部23は、取得手段として機能する。
【0049】
表示部24は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)等で構成されている。表示部24は、制御部21から受信した画像信号に応じた放射線画像等を表示する。
【0050】
操作部25は、キーボード(カーソルキー、数字入力キー、各種機能キー等)、ポインティングデバイス(マウス等)、表示部24の表面に積層されたタッチパネル等を含む。操作部25は、ユーザーによってなされた操作に応じた制御信号を制御部21へ出力する。
【0051】
なお、コンソール2は、表示部24及び操作部25を備えず、例えば通信部23等を介して、コンソール2とは別に設けられた入力装置から制御信号を受信したり、コンソール2とは別に設けられた表示装置(モニター)へ画像信号を出力したりするようになっていてもよい。
また、他の装置(画像管理装置4等)が表示部及び操作部を備える場合、他の装置の操作部から制御信号を受信したり、他の装置の表示部へ画像信号を出力したりするようになっていてもよい(表示部及び操作部が他の装置と共用になっていてもよい)。
【0052】
〔2-2.コンソールの動作〕
次に、図6を参照してコンソール2の動作について説明する。
コンソール2は、図6に示す撮影制御処理を実行する。撮影制御処理は、例えば、表示部24に表示された検査リスト画面の中から操作部25により検査オーダー情報が選択された際に、制御部21のCPUとROMに記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0053】
まず、制御部21は、選択された検査オーダー情報についての検査画面241を表示部24に表示させる(ステップS1)。
検査画面241(例えば、図7参照)には、検査オーダー情報に含まれる各撮影の内容(撮影部位、撮影方向等)が表示された撮影選択ボタン241aの他、選択された撮影の画像読取条件や画像処理条件を設定するための設定領域241b、撮影された放射線画像を表示するための画像表示領域241c、写損ボタン241d、出力ボタン241e等が設けられている。なお、ステップS1の段階では、画像表示領域241cにはまだ放射線画像は表示されていない。また、後述する再撮影判断支援情報(符号241f~241nで示す)は表示されていない。
【0054】
操作部25により撮影選択ボタン241aが押下されることにより、実施する撮影(撮影部位、撮影方向)が選択されると(ステップS2)、制御部21は、撮影装置1や発生装置3に撮影条件(画像読取条件、放射線照射条件)を設定する(ステップS3)。
例えば、制御部21は、押下された撮影選択ボタン241aの撮影部位、撮影方向等に基づいて、自動的に撮影装置1に撮影条件(画像読取条件。例えば、画素サイズ、画像サイズ、フレームレート等。)を設定するとともに、発生装置3に、撮影条件(放射線照射条件。例えば、放射線源の管電圧(kV)、管電流(mA)、照射時間(ms)等。)を設定する。あるいは、検査画面241におけるユーザーの操作部25の操作に応じて、実施する撮影の撮影条件(画像読取条件)を撮影装置1に設定してもよい。また、放射線照射条件については、ユーザーにより発生装置3の操作盤から設定してもよい。
【0055】
撮影選択ボタン241aの押下及び撮影条件の設定後、ユーザー(技師)は、発生装置3の放射線源33と撮影装置1との間に被写体Sを配置し、ポジショニングを行う。ここで、ポジショニングとは、例えば、撮影時の患者の体位の取り方のことである。
そして、ユーザーが照射指示スイッチ32を操作すると、発生装置3は、被写体Sの撮影部位に、放射線Rを照射する。
撮影装置1は、発生装置3から放射線Rを受けるタイミングで撮影部位が写った放射線画像(静止画、動態画像)を生成し、その画像データ(静止画データ、動態画像データ)をコンソール2へ送信する。
【0056】
放射線画像の画像データが通信部23により受信(取得)されると(ステップS4)、制御部21は、受信した放射線画像を検査画面241の画像表示領域241cにプレビュー表示する(ステップS5)。
【0057】
次いで、制御部21は、放射線画像の撮影部位、撮影方向に基づいて、受信した放射線画像に対して適用する再撮影判断支援情報生成処理の種類を決定する(ステップS6)。
上述のように、記憶部22には、撮影部位及び撮影方向に対応付けて、その撮影部位及び撮影方向の放射線画像に対して実行する再撮影判断支援情報生成処理の種類を示す情報が記憶されており、制御部21は、受信した放射線画像の撮影部位及び撮影方向に基づいて、当該放射線画像に対して適用する再撮影判断支援情報生成処理を決定する。
なお、受信した放射線画像に対して適用する再撮影判断支援情報生成処理は、撮影選択ボタン241aが押下され、撮影部位及び撮影方向等が設定された時点で決定してもよい。また、制御部21が自動的に決定するのではなく、ユーザーが操作部25の操作により選択することとしてもよい。
【0058】
次いで、制御部21は、決定された再撮影判断支援情報生成処理を実行する(ステップS7)。
【0059】
再撮影判断支援情報生成処理において、制御部21は、まず、記憶部22に記憶された複数の学習済みモデルMのうち、受信した放射線画像の撮影部位及び撮影方向に対応する学習済みモデルMに、受信した放射線画像を入力し、学習済みモデルMから出力される情報に基づいて、再撮影判断支援情報を生成する。
再撮影判断支援情報は、再撮影をするか否かの判断を支援する情報であれば特に限定されない。例えば、再撮影判断支援情報には、放射線画像の所定の領域の第1のずれに関する情報及び第2のずれに関する情報が含まれる。ずれに関する情報には、例えば、ずれの方向の情報、ずれの距離(ずれ量)の情報、ずれ領域の情報、ずれの程度の判定ランク、ずれに関連する部位の位置を変えるための情報、の少なくとも一つが含まれる。ずれの方向の情報には、ずれの角度の情報が含まれていてもよい。
【0060】
以下、再撮影判断支援情報生成処理について、受信した放射線画像が肘関節側面の放射線画像である場合を例にとり説明する。
まず、制御部21は、肘関節側面に対応する学習済みモデルMに、受信した放射線画像を入力する。肘関節側面の放射線画像が入力されると、学習済みモデルMは、撮影部位(ここでは肘関節)に基づいて、入力された放射線画像の第1のずれ領域及び第2のずれ領域を決定するとともに、滑車軸73の座標を決定し、第1のずれ領域及び第2のずれ領域の情報(例えば、図4(b)に示すずれ領域マップや第1のずれ領域と第2のずれ領域を分ける情報)及び滑車軸73の座標の情報を出力する。なお、滑車軸73の座標は、制御部21が画像処理により求めてもよい。
【0061】
次いで、制御部21は、学習済みモデルMから出力された情報に基づいて、以下のとおり再撮影判断支援情報を生成する。
まず、制御部21は、肘関節の前腕方向のずれ量(第1の方向のずれ量)及び上腕方向のずれ量(第2の方向のずれ量)を判定(計測)する。
例えば、制御部21は、図2に示すように、滑車軸73から橈骨75の端に引いた直線L3よりも肘内側の領域において、滑車軸73から橈骨方向に直線を引いた際に、第1のずれ領域(図2に低密度のドットで示す領域)と垂直に交差する最大幅D1を前腕方向のずれ量として判定する。また、滑車軸73から橈骨75の端に引いた直線L3よりも肘外側の領域において、滑車軸73から尺骨77の方向に直線を引いた際に、第2のずれ領域(図2に高密度のドットで示す領域)と垂直に交差する最大幅D2を上腕方向のずれ量として判定する。
【0062】
なお、ずれ量は、上述のように直接測ってもよいし、間接的に測ってもよい。例えば、上腕骨小頭縁72と上腕骨滑車内縁78に囲まれた範囲の幅(例えば、最大幅)に基づいて、第1の方向のずれ量と第2の方向のずれ量を計測することとしてもよい。この場合、肘関節側面の放射線画像を入力として、上腕骨小頭縁72と上腕骨滑車内縁78に囲まれた範囲を出力する学習済みモデルMを学習装置5で生成し、記憶部22に記憶させておくこととしてもよいし、画像処理により計測する範囲を求めてもよい。
【0063】
次いで、制御部21は、判定したずれ量と、予め設定された閾値に基づいて、ずれの程度のランク(判定ランク)を判定する。
例えば、制御部21は、前腕方向のずれ量が閾値TH1未満である(撮影失敗の可能性が最も低い)場合に「Aランク(良好)」、閾値TH1以上閾値TH2未満である場合に「Bランク(許容)」、閾値TH2以上である(撮影失敗の可能性が最も高い)場合に「Cランク(再撮)」に振り分ける。また、上腕方向のずれ量が閾値TH11未満である(撮影失敗の可能性が最も低い)場合に「Aランク(良好)」、閾値TH11以上閾値TH12未満である場合に「Bランク(許容)」、閾値TH12以上である(撮影失敗の可能性が最も高い)場合に「Cランク(再撮)」に振り分ける。そして、前腕方向の判定ランクと上腕方向の判定ランクのうち、例えば、ランクの低い方(Aランク>Bランク>Cランク)を総合的な判定ランクとする。
【0064】
また、制御部21は、前腕方向のずれ量の判定ランクがCの場合、そのずれ量に基づいて、第1のずれ(前腕方向のずれ)に関連する第1の部位(ここでは、例えば上腕骨滑車外縁71又は上腕骨小頭縁72)の位置を変えるための情報を生成する。上腕方向のずれ量の判定ランクがCの場合、そのずれ量に基づいて、第2のずれ(上腕方向のずれ)に関連する第2の部位(ここでは、上腕骨滑車外縁71又は上腕骨小頭縁72)の位置を変えるための情報を生成する。
【0065】
ここで、ずれに関連する部位の位置を変えるための情報とは、放射線画像上においてずれに関連する部位が現在の位置から基準となる正しい位置になるようにするには、何を、どの方向に、どれだけ動かしたらよいかを示す情報である。
【0066】
例えば、ずれに関連する部位の位置を変えるための情報としては、その部位が現在の位置から基準となる正しい位置になるように、その部位を移動させる移動距離や移動方向(移動角度を含む)を示す情報が挙げられる。例えば、上腕方向のずれ量が2cmである場合、ずれに関連する部位の位置を変えるための情報としては、例えば「再撮影の際は、上腕骨滑車外縁を上方向に2cm移動させてください」との通知情報が挙げられる。
【0067】
また、現在の位置から動かすことで、放射線画像上においてずれに関連する部位を現在の位置から基準となる正しい位置に移動させることができる別の対象がある場合は、その対象を移動させる移動距離や移動方向(移動角度を含む)をずれに関連する部位の位置を変えるための情報としてもよい。
例えば、パネル(撮影装置1)に対する肩の位置を上に2cm動かすことで、ずれに関連する部位を現在の位置から基準となる正しい位置に移動させることができる場合は、「再撮影の際は、パネル(FPD)に対する肩の高さを2cm上げてください」等の通知情報をずれに関連する部位の位置を変えるための情報として生成してもよい。また、例えば、放射線源33の照射中心を5度内旋、2度外転させることで、ずれに関連する部位を現在の位置から基準となる正しい位置に移動させることができる場合は、「再撮影の際は、照射中心を5度内旋、2度外転させてください」等の通知情報をずれに関連する部位の位置を変えるための情報として生成してもよい。
【0068】
ずれに関連する部位の位置を変えるための情報は、例えば、ずれに関連する部位のずれの方向及びずれ量と、動かすべき対象、その対象の移動距離及び移動方向との関係を予め実験的に求めてテーブル等を作成して記憶部22に記憶しておき、当該テーブル等に従って生成することができる。
なお、理想的にはずれが0となることが望ましいが、ずれ量があっても診断上許容される程度のずれ量であれば、ずれに関連する位置を変えるための情報は生成しなくてもよい。
【0069】
また、制御部21は、放射線画像のずれ領域にずれ領域であることを示す所定の色を重畳してずれ領域マップを作成するとともに、ずれ量を計測した位置にマーカーを重畳する。
【0070】
再撮影判断支援情報の生成が終了すると、制御部21は、生成した再撮影判断支援情報を出力する(ステップS8)。
例えば、制御部21は、生成した再撮影判断支援情報を表示部24(検査画面241)に表示する。
【0071】
図7は、撮影装置1から受信した放射線画像のプレビュー画像と、再撮影判断支援情報が表示された検査画面241の一例を示す図である。
図7に示すように、ステップS8において、検査画面241の画像表示領域241cには、受信した放射線画像がプレビュー表示される。また、再撮影判断支援情報が表示される。図7においては、再撮影判断支援情報として、判定ランク241f、第1の方向のずれ量241h、第2の方向のずれ量241g、ずれ領域マップ241i、第1の方向のずれ量の計測位置241k、第2の方向のずれ量の計測位置241j、ずれに関連する部位の位置を変えるための情報(第1のずれに関連する第1の部位の位置を変えるための情報及び第2のずれに関連する第2の部位の位置を変えるための情報)241mが表示されている。また、判定ランクがCの場合、再撮影が必要であることを示すアラート241nが表示される。
なお、再撮影判断支援情報としては、上記全てを生成、表示せず、一部のみを生成、表示することとしてもよい。
【0072】
ユーザー(撮影者)は、放射線画像及び再撮影判断支援情報を確認し、最終的に再撮影が必要であるか否かを判断し、再撮影が必要であると判断した場合に、写損ボタン241dを押下する。ここで、写損とは、撮影失敗により再撮影する際、失敗した画像に診断に使わないようにラベルを付けることをいう。
【0073】
制御部21は、操作部25により写損ボタン241dが押下され、再撮影が指示されたか否かを判断する(ステップS9)。
操作部25により写損ボタン241dが押下され、再撮影が指示されたと判断した場合(ステップS9;YES)、制御部21は、再撮影が必要と判断された放射線画像に、写損であることを示すフラグ、判定ランク、ずれ領域、ずれ量等の情報、部位情報、担当技師の情報等を対応付けて記憶部22に保存させる(ステップS10)。
再撮影が必要と判断された放射線画像に、判定ランク、ずれ領域、ずれ量等の情報、部位情報、担当技師の情報等を対応付けて蓄積保存しておくことで、後の撮影者の教育に役立てたりすることができる。
【0074】
次いで、制御部21は、再撮影支援情報を出力する(ステップS11)。
例えば、制御部21は、再撮影支援情報を表示部24(検査画面241)に表示する。
再撮影支援情報は、再撮影を支援する情報であれば特に限定されない。例えば、再撮影判断支援情報として生成した情報のうち、ずれに関連する部位の位置を変えるための情報は、有用な再撮影支援情報である。また、ずれの方向の情報、ずれの距離(ずれ量)の情報、ずれ領域の情報等を再撮影支援情報としてもよい。また、再撮影判断支援情報として生成されていない新たな情報を再撮影支援情報として生成して出力してもよい。
【0075】
例えば、学習済みモデルMから撮影時の照射中心の理想的な位置からどの方向にずれているか(方向ごとの確からしさ)を示す情報が出力されている場合には、再撮影支援情報として、図8に示すように、照射中心のずれの方向を示すヒートマップ241pを生成して表示してもよい。図8に示すヒートマップ241pは、9分割した領域の中心が理想的な照射中心の位置を示しており、学習済みモデルMから出力された照射中心のずれの方向のうち、確からしさが高い方向ほど濃い色で示している。図8では、撮影時の照射中心が理想的な位置から5度程度外旋、2度程度内転していたことを示している。内旋/外旋は左右方向の回転、内転/外転は上下方向の回転を表す。ヒートマップ242pとともに、ずれに関連する部位の位置を変えるための情報241mとして、照射中心をどの方向にどれだけずらしたらよいかを示す情報を表示することとしてもよい。
なお、ヒートマップ241pは、再撮影判断支援情報として生成、出力することとしてもよい。
【0076】
ユーザーは、表示された放射線画像のプレビュー画像や再撮影支援情報を参照し、撮影条件の設定のし直しやポジショニングのし直しを行って、再撮影を行う。
制御部21は、操作部25の操作又は通信部23による放射線画像の受信に応じてステップS4(S3)に戻り、ステップS4(S3)~S8を繰り返し実施する。
【0077】
一方、ステップS9において、操作部25により写損ボタン241dが押下されていないと判断した場合(ステップS9;NO)、制御部21は、放射線画像に所定の画像処理を施して最終画像として画像表示領域241cに表示する(ステップS12)。
なお、ユーザーにより設定領域241bの画像処理条件等が操作された場合、制御部21は、操作に応じて画像処理を行う。
【0078】
制御部21は、操作部25により出力ボタン241eが押下されたか否かを判断し、出力ボタン241eが押下されていないと判断した場合(ステップS13;NO)、処理はステップS9に戻る。
操作部25により出力ボタン241eが押下されたと判断した場合(ステップS13;YES)、制御部21は、最終画像として生成された放射線画像に、写損ではないことを示すフラグ、部位情報、担当技師の情報等を対応付けて記憶部22に保存させる。また、最終画像として生成された放射線画像に患者情報及び検査情報(検査ID、検査日付、撮影部位、撮影方向等)を対応付けて通信部23により画像管理装置4に送信し(ステップS14)、撮影制御処理を終了する。
【0079】
以上説明したように、コンソール2の制御部21は、放射線画像の所定の領域の第1のずれを判定し、前記放射線画像の所定の領域の第2のずれを判定し、少なくとも第1のずれの判定と第2のずれの判定に基づき、前記放射線画像を再撮影とするか否かの判断を支援する再撮影判断支援情報を出力する。
したがって、関節のポジショニングのずれを精度高く判定することができ、有効な再撮影判断支援情報を出力することができる。
【0080】
また、制御部21は、再撮影判断支援情報として第1のずれに関する情報および第2のずれに関する情報を出力する。
したがって、放射線画像の所定の領域にどのようなずれが生じているのかを撮影者が容易に把握できるよう支援することができる。
【0081】
例えば、制御部21は、再撮影判断支援情報として、第1のずれに関連する第1の部位の位置を変えるための情報、及び、第2のずれに関連する第2の部位の位置を変えるための情報を出力する。
したがって、第1の部位と第2の部位の位置をどのように変えたら正しいポジショニングになるかを撮影者が容易に把握できるよう支援することができる。
【0082】
例えば、制御部21は、第1の部位の位置を変えるための情報として、第1の部位の移動距離を出力し、第2の部位の位置を変えるための情報として、第2の部位の移動距離を出力する。
したがって、第1の部位と第2の部位の位置をどれだけ移動させたら正しいポジショニングになるかを撮影者が容易に把握できるよう支援することができる。
【0083】
また、例えば、制御部21は、第1の部位の位置を変えるための情報として、第1の部位の移動方向を出力し、第2の部位の位置を変えるための情報として、第2の部位の移動方向を出力する。
したがって、第1の部位と第2の部位の位置をどの方向に移動させたら正しいポジショニングになるかを撮影者が容易に把握できるよう支援することができる。
【0084】
また、例えば、制御部21は、再撮影が必要であることを示す情報とともに、再撮影判断支援情報を出力する。
したがって、再撮影が必要であるか否かを撮影者が容易に判断できるよう支援することができる。
【0085】
また、制御部21は、放射線画像の所定の領域の第1のずれを判定し、放射線画像の所定の領域の第2のずれを判定し、少なくとも第1のずれの判定と第2のずれの判定に基づき、前記放射線画像の再撮影を支援する再撮影支援情報を出力する。
したがって、関節のポジショニングのずれを精度高く判定することができ、有効な再撮影支援情報を出力することができる。
【0086】
また、コンソール2は、少なくとも、放射線画像と、前記放射線画像の所定の領域の第1のずれに関する情報と、前記放射線画像の所定の領域の第2のずれに関する情報と、が教師データとして学習された学習済みモデルMを有し、制御部21は、学習済みモデルMと取得された放射線画像とに基づき、放射線画像を再撮影とするか否かの判断を支援する判断支援情報を出力する。
したがって、関節のポジショニングのずれを精度高く判定することができ、有効な再撮影判断支援情報を出力することができる。
【0087】
また、学習装置5は、少なくとも、放射線画像と、前記放射線画像のから所定の領域の第1のずれに関する情報と、前記放射線画像の所定の領域の第2のずれに関する情報と、を教師データとして学習し、学習済みモデルを生成する。したがって、入力された放射線画像から第1のずれに関する情報と第2のずれに関する情報を出力する学習済みモデルを生成することができる。
【0088】
なお、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0089】
例えば、上記実施形態では、肘関節側面の放射線画像の撮影における再撮影判断支援や再撮影支援に本発明を適用する場合を例にとり説明したが、例えば、膝関節や足関節等、他の関節の放射線画像の撮影における再撮影判断支援や再撮影支援に本発明を適用することができる。
【0090】
また、上記実施形態では、機械学習を用いて放射線画像からずれ領域を抽出することとして説明したが、画像処理によりずれ領域を抽出することとしてもよい。
また、ずれ領域だけでなく、再撮影判断支援情報や再撮影支援情報についても機械学習により生成することとしてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、本発明の再撮影判断支援装置及び再撮影支援装置の機能をコンソール2に搭載した場合を例にとり説明したが、再撮影判断支援装置及び再撮影支援装置の機能は、コンソール2とは別の装置に搭載されていてもよいし、専用の装置であってもよい。また、学習装置5の機能は、コンソール2に持たせてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、コンソール2の制御部21は、再撮影判断支援情報や再撮影支援情報を表示部24に表示させることとして説明したが、コンソール2とは別体の表示装置に表示させることとしてもよい。
【0093】
また、再撮影判断支援情報や再撮影支援情報は、表示だけでなく、図示しない音声出力装置により音声として出力することとしてもよい。
【0094】
また、コンソール2の制御部21は、ずれの判定結果(ずれに関する情報)、ずれの判定(ずれに関する情報の生成)に用いた放射線画像、閾値情報、アルゴリズムの種類等の内容を外部装置に出力し、外部装置において確認できるようにしてもよい。また、ずれの判定機能(例えば、上述の再撮影判断支援情報生成処理を実行するためのプログラムや使用された学習済みモデルM)自体を外部装置に出力して外部装置でずれの判定を行えるようにしてもよい。
【0095】
また、例えば、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0096】
100 放射線撮影システム
1 放射線画像撮影装置
2 コンソール
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 表示部
25 操作部
3 放射線発生装置
31 ジェネレーター
32 照射指示スイッチ
33 放射線源
4 画像管理装置
5 学習装置
71 上腕骨滑車外縁
72 上腕骨小頭縁
73 滑車軸
75 橈骨
76 上腕骨
77 尺骨
78 上腕骨滑車内縁
N 通信ネットワーク
R 放射線
S 被写体
M 学習済みモデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8