(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】鋼片予熱判定装置、ホットスカーフ制御装置、鋼片予熱判定方法、鋼片製造方法、および、鋼片の予熱判定を行う学習済みモデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
B23K 7/06 20060101AFI20241217BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B23K7/06 F
B23K31/00 M
B23K7/06 B
(21)【出願番号】P 2022037093
(22)【出願日】2022-03-10
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】前原 喬
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-164143(JP,A)
【文献】特開2015-167977(JP,A)
【文献】特開平05-269577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 7/00-7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼片を予熱した後に前記鋼片の表面溶削を行うホットスカーフ処理において、前記鋼片の予熱完了の判定を行う鋼片予熱判定装置であって、
カメラ部で撮像された前記鋼片の予熱状態を示す画像データを取得するデータ取得部と、
取得した前記画像データに対して学習済モデルを用いた深層学習により予熱状態を推定して予熱完了の一次判定を行う一次判定部と、
前記一次判定で予熱完了状態と判定された段階で、前記カメラ部で取得された画像の輝度により最終的な予熱完了判定を行う二次判定部と、
を有する、鋼片予熱判定装置。
【請求項2】
前記学習済モデルは、前記カメラ部で撮像し保存した複数の画像を、予熱開始時、予熱中、予熱完了時の複数の予熱状態に対応付けて深層学習されたものである、請求項1に記載の鋼片予熱判定装置。
【請求項3】
前記二次判定部は、前記カメラ部で撮像した画像の各画素について輝度を算出し、算出した輝度が第1の閾値を超えた画素の数をカウントし、さらにその画素の数が第2の閾値を超えた際に予熱完了と判定する、請求項1または請求項2に記載の鋼片予熱判定装置。
【請求項4】
前記一次判定部における深層学習は、畳み込みニューラルネットワークにより行う、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の鋼片予熱判定装置。
【請求項5】
鋼片を予熱した後に前記鋼片の表面溶削を行うホットスカーフ処理におけるホットスカーフ制御装置であって、
前記鋼片の予熱状態を撮像するカメラ部と、
前記カメラ部で撮像された画像データに基づいて鋼片の予熱完了の判定を行う鋼片予熱判定装置と、
前記鋼片予熱判定装置により予熱完了の判定がなされた際に、前記鋼片の表面溶削のために前記鋼片の搬送を制御する搬送制御部と、
を備え、
前記鋼片予熱判定装置として、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の鋼片予熱判定装置を用いる、ホットスカーフ制御装置。
【請求項6】
鋼片を予熱した後に前記鋼片の表面溶削を行うホットスカーフ処理において、前記鋼片の予熱完了の判定を行う鋼片予熱判定方法であって、
カメラ部で撮像された前記鋼片の予熱状態を示す画像データを取得する工程と、
取得した前記画像データに対して学習済モデルを用いた深層学習により予熱状態を推定して予熱完了の一次判定を行う工程と、
前記一次判定で予熱完了状態と判定された段階で、前記カメラ部で取得された画像の輝度により最終的な予熱完了判定を行う工程と、
を有する、鋼片予熱判定方法。
【請求項7】
前記学習済モデルは、前記カメラ部で撮像し保存した複数の画像を、予熱開始時、予熱中、予熱完了時の複数の予熱状態に対応付けて深層学習されたものである、請求項6に記載の鋼片予熱判定方法。
【請求項8】
前記最終的な予熱完了判定を行う工程は、前記カメラ部で撮像した画像の各画素について輝度を算出し、算出した輝度が第1の閾値を超えた画素の数をカウントし、さらにその画素の数が第2の閾値を超えた際に予熱完了と判定する、請求項6または請求項7に記載の鋼片予熱判定方法。
【請求項9】
前記一次判定を行う工程における深層学習は、畳み込みニューラルネットワークにより行う、請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の鋼片予熱判定方法。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれか一項の鋼片予熱判定方法を用いて鋼片の表面溶削を行う、鋼片の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の鋼片予熱判定装置において、前記一次判定部に用いる学習済モデルを生成する学習済モデルの生成方法であって、
前記カメラ部で撮像
された前記鋼片の予熱状態を示す複数の画像を入力とし、予熱開始時、予熱中、予熱完了時のいずれかの予熱状態を出力として
対応付けて深層学習
させ、前記学習済モデルを生成する、学習済モデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分塊圧延鋼片や連鋳スラブ等の鋼片に対するホットスカーフ処理における鋼片予熱判定装置、ホットスカーフ制御装置、鋼片予熱判定方法、鋼片製造方法、および、鋼片の予熱判定を行う学習済みモデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼片精整工程では製鋼工程で発生した鋼片表面に介在する不純物や欠陥は、ホットスカーフ設備によって鋼片表面を溶削するホットスカーフ処理を行うことにより除去される。ホットスカーフ設備は、酸素とプロパンガスを噴出するスカーフノズルを備えた火口ユニットを有し、火口ユニットは鋼片の大きさに応じて鋼片に沿うように密着される。鋼片溶削はプロパンバーナを点火し、特定時間予熱後に鋼片を長手方向に連続的に移動させることによってなされる。
【0003】
この溶削作業はオペレータ操作が介入する半自動的な運転によって実施されているのが一般的であり、その予熱時間についてもオペレータが予熱中の鋼片をカメラ映像で監視することにより鋼片の状態を判断し、決定する。実際の操作としては鋼片状態監視によりオペレータが予熱完了と判断したタイミングで鋼片の搬送を開始操作し、鋼片を溶削する。予熱時間が不足した場合は溶削作業において鋼片表面に溶け残りが生じてしまうため、結果として次工程であるグラインダー工程での鋼片表面研削時間が延長されることになり、操業効率の低下につながる。また予熱時間が過剰となった場合は鋼片の品質低下や火口ユニットの溶損につながる。したがって、溶削前の予熱時間は適切に決定する必要がある。
【0004】
現状、予熱時間の決定は、オペレータの裁量でなされている部分が多く、個人差が発生するという問題がある。また、オペレータの目視判断に依存した操業であるため、自動化を推進し省力化を図ることが困難である。そこで、ホットスカーフ処理における予熱完了の自動判定を目的として、例えば特許文献1には、予熱部分をCCDカメラで撮像し、画像データを2値化処理して溶解した鋼片(湯溜り)の面積を算出し、算出面積によって予熱完了を判定する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来技術では、実際の鋼片には鋼種や形状の違いがあるため、湯溜りの面積のみでの予熱完了判定は精度が高くないという課題がある。つまり、予熱中における鋼片の状態変化を考慮せず、湯溜り面積という結果のみで判定を行っているため、鋼片の鋼種や形状、周囲環境などの実操業におけるバラツキに対応することが困難である。
【0007】
したがって、本発明は、鋼片のホットスカーフ処理において精度よく鋼片の予熱完了を判定し、鋼片品質を向上させるとともにホットスカーフ処理におけるオペレータの省力化を図ることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の[1]~[11]を提供する。
【0009】
[1]鋼片を予熱した後に前記鋼片の表面溶削を行うホットスカーフ処理において、前記鋼片の予熱完了の判定を行う鋼片予熱判定装置であって、
カメラ部で撮像された前記鋼片の予熱状態を示す画像データを取得するデータ取得部と、
取得した前記画像データに対して学習済モデルを用いた深層学習により予熱状態を推定して予熱完了の一次判定を行う一次判定部と、
前記一次判定で予熱完了状態と判定された段階で、前記カメラ部で取得された画像の輝度により最終的な予熱完了判定を行う二次判定部と、
を有する、鋼片予熱判定装置。
【0010】
[2]前記学習済モデルは、前記カメラ部で撮像し保存した複数の画像を、予熱開始時、予熱中、予熱完了時の複数の予熱状態に対応付けて深層学習されたものである、[1]に記載の鋼片予熱判定装置。
【0011】
[3]前記二次判定部は、前記カメラ部で撮像した画像の各画素について輝度を算出し、算出した輝度が第1の閾値を超えた画素の数をカウントし、さらにその画素の数が第2の閾値を超えた際に予熱完了と判定する、[1]または[2]に記載の鋼片予熱判定装置。
【0012】
[4]前記一次判定部における深層学習は、畳み込みニューラルネットワークにより行う、[1]から[3]のいずれかに記載の鋼片予熱判定装置。
【0013】
[5]鋼片を予熱した後に前記鋼片の表面溶削を行うホットスカーフ処理におけるホットスカーフ制御装置であって、
前記鋼片の予熱状態を撮像するカメラ部と、
前記カメラ部で撮像された画像データに基づいて鋼片の予熱完了の判定を行う鋼片予熱判定装置と、
前記鋼片予熱判定装置により予熱完了の判定がなされた際に、前記鋼片の表面溶削のために前記鋼片の搬送を制御する搬送制御部と、
を備え、
前記鋼片予熱判定装置として、[1]から[4]のいずれかに記載の鋼片予熱判定装置を用いる、ホットスカーフ制御装置。
【0014】
[6]鋼片を予熱した後に前記鋼片の表面溶削を行うホットスカーフ処理において、前記鋼片の予熱完了の判定を行う鋼片予熱判定方法であって、
カメラ部で撮像された前記鋼片の予熱状態を示す画像データを取得する工程と、
取得した前記画像データに対して学習済モデルを用いた深層学習により予熱状態を推定して予熱完了の一次判定を行う工程と、
前記一次判定で予熱完了状態と判定された段階で、前記カメラ部で取得された画像の輝度により最終的な予熱完了判定を行う工程と、
【0015】
[7]前記学習済モデルは、前記カメラ部で撮像し保存した複数の画像を、予熱開始時、予熱中、予熱完了時の複数の予熱状態に対応付けて深層学習されたものである、[6]に記載の鋼片予熱判定方法。
【0016】
[8]前記最終的な予熱完了判定を行う工程は、前記カメラ部で撮像した画像の各画素について輝度を算出し、算出した輝度が第1の閾値を超えた画素の数をカウントし、さらにその画素の数が第2の閾値を超えた際に予熱完了と判定する、[6]または[7]に記載の鋼片予熱判定方法。
【0017】
[9]前記一次判定を行う工程における深層学習は、畳み込みニューラルネットワークにより行う、[6]から[8]のいずれかに記載の鋼片予熱判定方法。
【0018】
[10]上記[6]から[9]のいずれかの鋼片予熱判定方法を用いて鋼片の表面溶削を行う、鋼片の製造方法。
【0019】
[11]鋼片の予熱判定を行う学習済モデルの生成方法であって、
カメラ部で撮像した前記鋼片の予熱状態を示す複数の画像を入力とし、予熱開始時、予熱中、予熱完了時のいずれかの予熱状態を出力として深層学習する、鋼片の予熱判定を行う学習済みモデルの生成方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鋼片のホットスカーフ処理において精度よく鋼片の予熱完了を判定し、鋼片品質を向上させるとともにホットスカーフ処理におけるオペレータの省力化を図ることができる。また、オペレータの裁量による予熱時間のばらつきを低減することで鋼片品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鋼片予熱判定装置を有するホットスカーフ処理を行うホットスカート設備の概略構成を示す図である。
【
図2】実際の予熱工程における鋼片の画像を示す図である。
【
図3】ホットスカーフ設備における処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る鋼片予熱判定装置を有するホットスカーフ処理を行うホットスカーフ設備の概略構成を示す図である。
ホットスカーフ設備は、搬送ロール2上を搬送される鋼片1の表面を溶削するための火口ユニット11と、ホットスカーフ制御装置12とを有する。
【0024】
火口ユニット11は、酸素とプロパンガスを噴出するスカーフノズルを備え、鋼片1の表面を溶削する。火口ユニット11は、鋼片1の大きさに応じて鋼片1に沿うように密着する。鋼片1の溶削は、プロパンバーナを点火し、特定時間予熱後に鋼片1を搬送ロール2に沿って長手方向に連続的に移動させることによりなされる。
【0025】
ホットスカーフ制御装置12は、鋼片溶削状態を撮像するカメラ部21と、撮像画像に対し予熱が完了しているか否かを判定する鋼片予熱判定装置22と、鋼片予熱判定装置22で予熱完了の判定がなされた際にロール駆動を制御する駆動制御装置23とを有する。
【0026】
カメラ部21は鋼片上面を監視するように設置された撮像カメラを有する。撮像カメラは、例えば1秒間に30フレームの画像を撮像するように構成され、撮像画像は映像データとして鋼片予熱判定装置22に送信される。
【0027】
鋼片予熱判定装置22は、一定周期ごとに映像データを取得し、鋼片1の予熱が完了しているか判定するものであり、データ取得部31と、一次判定部32と、二次判定部33と、記憶媒体34とを有する。鋼片予熱判定装置22では、以下に説明するように、鋼片1の最終状態に加えて、予熱中の状態変化を検出することで、精度よく予熱完了を判定する。
【0028】
予熱中の鋼片1の状態変化については、予熱前の鋼片は全体的に黒色であり、予熱中の鋼片は部分的に予熱が完了して白色にみえる部分と未完了の黒色部分が混在しているため縞模様のように見え、予熱が完了した鋼片は鋼片全体が均一に白色に見えるという特徴がある。実際の予熱工程における鋼片の画像を
図2に示す。この鋼片外見の特徴の変化は、実際にオペレータが目視で予熱完了を判定する際にも判定指標として用いられており、鋼種や鋼片形状が異なる場合でも共通の特徴となっている。
【0029】
本実施形態の鋼片予熱判定装置22では、データ取得部31で取得した映像データについて、上記のような予熱過程における鋼片外見の特徴変化を捉えるため、一次判定部32において、畳み込みニューラルネットワーク(以下、CNN)による深層学習により画像分類を行い、鋼片1の予熱状態を推定する。一次判定部32には、事前に作成した学習済モデルが実装されており、上述した各予熱状態における鋼片表面の特徴量を検出し、学習済モデルの出力が予熱完了状態となった段階で予熱完了の一次判定を行う。
【0030】
学習済モデルは、カメラ部21で撮像し保存した複数の画像を、予熱開始時、予熱中、予熱完了時の複数の予熱状態に対応付けて深層学習されたものである。すなわち、学習モデルを生成する際には、まず、カメラ部21の撮影カメラで撮像した複数の画像を入力として鋼片予熱判定装置22中の記憶媒体34に保存しておく。そして、保存しておいた複数の画像の予熱開始時、予熱中、予熱完了時のいずれかの予熱状態を出力として深層学習する。このようにして生成された学習済モデルを一次判定部32に実装することにより、このモデルを用いて撮像画像の特徴量を抽出し、鋼片1がどの状態にあるか推定することができる。
【0031】
ただし、CNNによる深層学習は画像のノイズ、歪みに対し弱いという特徴がある。また、予熱完了時には鋼片全体が十分に加熱されることよって輝度が高くなるという特徴があるが、CNNでは鋼片の輝度の変化を捉えることが難しい。このため、予熱完了を精度よく判定できないおそれがある。
【0032】
そこで、鋼片予熱判定装置22は、予熱完了の判定精度を向上させるため、二次判定部33をさらに有する。二次判定部33は、一次判定部32における深層学習による予熱完了判定の後に、カメラ部で取得された画像の輝度による予熱完了判定を行う。つまり、一次判定部32で、予熱過程における鋼片外見の特徴変化を学習済モデルにより推定して予熱完了の一次判定を行い、一次判定で予熱完了状態と判定された段階で、二次判定部33により別途画像の輝度から最終的な予熱完了判定である二次判定を行う。
【0033】
二次判定部33では、まず、データ取得部31で取得した、カメラ部21で撮像した画像の各画素について、例えばカラー画像から輝度を算出する際に一般的に用いられているNTSC加重平均法を用いて輝度を算出する。次に算出した輝度が第1の閾値を超えた画素の数をカウントし、さらにその画素数が第2の閾値を超えた際に予熱完了と判定する。画素数は鋼片サイズ(幅)により変化するので、第2の閾値を鋼片サイズ(幅)で区切って複数設定する。これら閾値を適切に設定することにより、予熱工程において鋼片全体が十分に加熱された、すなわち予熱が完了したことを精度よく検出することができる。
【0034】
駆動制御装置23は、鋼片予熱判定装置22で予熱完了と判定された際に、その信号が伝送され、搬送ロール2のうちの駆動ロールの駆動を制御し、鋼片1の長手方向の搬送を制御する。すなわち、駆動制御装置23は鋼片の搬送を制御する搬送制御部として機能する。この際の鋼片1の搬送制御は、火口ユニット11を用いた鋼片1の表面溶削処理のために行われる。つまり、駆動制御装置23による鋼片1の搬送が制御された状態で火口ユニット11を用いた鋼片1の表面溶削処理が行われる。そして、駆動制御装置23により所定の鋼片1の搬送が終了した時点で鋼片1の表面溶削が自動完了する。
【0035】
次に、以上のように構成されるホットスカーフ設備の動作について説明する。
図3はホットスカーフ設備における処理動作を示すフローチャートである。最初に上位の制御部から予熱開始の指令が出され(ST1)、カメラ部21における撮像カメラによる撮像を開始する(ST2)。撮像された画像データは鋼片予熱判定装置22のデータ取得部31に取得される。
【0036】
次に、鋼片予熱判定装置22の一次判定部32でCNNによる深層学習により画像分類を行って、鋼片1の予熱状態を推定することにより予熱完了の一次判定が行われる(ST3)。CNNによる予熱完了の一次判定が行われた後、二次判定部33で輝度による予熱完了の二次判定が行われる(ST4)。これらを一定周期で繰り返し行うことにより、予熱完了のタイミングを検出することが可能であり、最終的に予熱完了の判定が行われる(ST5)。
【0037】
すなわち、CNNによる一次判定は、鋼片状態のモニタリングの役割を担っており、このCNNを用いた状態監視によって予熱完了状態に入ったと判定された段階で、輝度による二次判定(最終判定)を実施する。
【0038】
鋼片予熱判定装置22により予熱完了の判定が行われると、その信号が駆動制御装置23に伝送されて鋼片の搬送が開始され(ST6)、鋼片1の表面溶削処理が開始される。そして、所定の鋼片1の搬送が終了した時点で鋼片の搬送が停止され(ST7)、鋼片1の表面溶削が自動完了される(ST8)。
【0039】
従来の予熱判定手法においては、予熱中における鋼片の状態変化を考慮せず、湯溜り面積という結果のみで判定を行っているため、鋼片の鋼種や形状、周囲環境などの実操業におけるバラツキに対応できていないという課題があった。そこで本実施形態では鋼片の最終状態に加えて、状態変化を検出することで、精度よく予熱完了を判定する。
【0040】
予熱中の鋼片の状態変化については、上述したように、CNNによる深層学習により画像分類を行い、実装されたCNN判定モデルを用いて撮像画像の特徴量を抽出し、鋼片1がどの状態にあるか分類することができる。
【0041】
しかし、CNNによる深層学習は、画像のノイズ、歪みに対し弱く、また、CNNによる深層学習では予熱完了時に鋼片全体が十分に加熱されることよって輝度が高くなるという特徴を捉えることが難しい。このため、本実施形態では、一次判定部32で、予熱過程における鋼片外見の特徴変化を学習済モデルにより推定して予熱完了の一次判定を行い、一次判定で予熱完了状態となった段階で、二次判定部33により別途画像の輝度判定を行って最終的な予熱完了判定である二次判定を行う。このように、CNNを用いた深層学習による一次判定と輝度による二次判定を組み合わせることにより、精度よく予熱完了を判定することができる。
【0042】
<他の適用>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、これらはあくまで例示に過ぎず、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0043】
例えば、上記実施形態ではCNNによる深層学習により一次判定を行う例を示したが、深層学習はCNNに限らず、種々の手法を用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 鋼片
2 搬送ロール
11 火口ユニット
12 ホットスカーフ制御装置
21 カメラ部(撮像カメラ)
22 鋼片予熱判定装置
23 駆動制御装置
31 データ取得部
32 一次判定部
33 二次判定部
34 記憶媒体