(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】発光装置及び計測装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/042 20060101AFI20241217BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20241217BHJP
G01S 7/484 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01S5/042 630
H01L33/00 J
G01S7/484
(21)【出願番号】P 2022045915
(22)【出願日】2022-03-22
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】竹山 慶
(72)【発明者】
【氏名】井口 大介
(72)【発明者】
【氏名】大野 誠治
(72)【発明者】
【氏名】崎田 智明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】早川 純一朗
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-049720(JP,A)
【文献】特開2012-206485(JP,A)
【文献】特開2018-030319(JP,A)
【文献】特開2021-150388(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0069931(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
G01S 7/484
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を有する発光部と、
前記発光部と接続される容量部と、
前記発光部における前記発光素子の発光時に前記容量部の電位を制御する制御部と
、を備え
、
前記発光部と前記容量部とは、ひとつの半導体基板上に設けられ、
前記容量部は、前記半導体基板に設けられた前記発光素子と等価な構造体であるpn接合で構成され、
前記発光部と前記容量部とは、前記半導体基板により接続され、
前記制御部が前記容量部に印加する電位は、前記pn接合を順バイアスにしない電位である
発光装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記発光部に流れる発光電流がオンの際に、前記容量部の電位を第1の電位に設定し、
前記発光部に流れる発光電流をオンからオフにする際に、前記容量部の電位を前記第1の電位から、当該第1の電位より絶対値において大きい第2の電位に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記発光部と前記容量部に接続され、当該発光部に流れる発光電流をオン又はオフにする駆動部を備え、
前記制御部は、前記駆動部が発光電流をオンからオフにするタイミングに応じて、前記第1の電位から前記第2の電位に設定することを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光部は、前記発光素子と並列に第1の容量を有し、
前記容量部は、第2の容量を有し、
前記第1の電位又は及び前記第2の電位は、前記第1の容量と前記第2の容量とが直列接続状態となって変位電流が流れる電位であることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第2の容量は、前記第1の容量の1倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第2の容量は、前記第1の容量の4倍以下であることを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光部は、前記発光素子を複数備え
、
発光させる前記発光素子を選択する選択部を備え、
前記選択部は、前記容量部に積層されている
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
前記制御部は、
選択された前記発光素子を発光させる発光時に、前記選択部が発光させる当該発光素子を選択する選択時とは異なる電位に設定する
ことを特徴とする請求項
7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記選択部の前記選択時に、前記容量部を第1の電位に設定し、当該選択部の当該選択が終了した際に、当該第1の電位より絶対値が大きい第2の電位に設定することを特徴とする請求項
8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記発光時に前記容量部の電位を浮遊状態に設定することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項11】
請求項1乃至
10のいずれか1項に記載された発光装置と、
前記発光装置の前記発光部から出射され、被計測物で反射された光を受光する受光部と、を備え、
前記被計測物の三次元形状を計測する計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板と、前記基板上に設けられ、当該基板の表面と交差する方向に光を出射する複数の発光素子と、複数の前記発光素子上にそれぞれが積層され、オン状態になることで、当該発光素子を発光、又は、発光量を増加させるように駆動する複数のサイリスタと、を備え、前記サイリスタは、前記発光素子の当該サイリスタへ向かう光の経路に開口部を有する発光部品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ToF(Time of Flight)法を用いて被計測物の三次元形状を計測する計測装置などでは、Aオーダの発光電流で、数百psオーダの立ち下がり及び立ち上がりの発光パルスを発生する発光装置が求められる。しかし、発光装置に付随する容量(電気容量)により、発光パルスの波形が劣化するおそれがある。
本発明は、発光パルスの波形に対する容量の影響を抑制した発光装置などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、発光素子を有する発光部と、前記発光部と接続される容量部と、前記発光部における前記発光素子の発光時に前記容量部の電位を制御する制御部と、を備え、前記発光部と前記容量部とは、ひとつの半導体基板上に設けられ、前記容量部は、前記半導体基板に設けられた前記発光素子と等価な構造体であるpn接合で構成され、前記発光部と前記容量部とは、前記半導体基板により接続され、前記制御部が前記容量部に印加する電位は、前記pn接合を順バイアスにしない電位である発光装置である。
請求項2に記載の発明は、前記制御部は、前記発光部に流れる発光電流がオンの際に、前記容量部の電位を第1の電位に設定し、前記発光部に流れる発光電流をオンからオフにする際に、前記容量部の電位を前記第1の電位から、当該第1の電位より絶対値において大きい第2の電位に設定することを特徴とする請求項1に記載の発光装置である。
請求項3に記載の発明は、前記発光部と前記容量部に接続され、当該発光部に流れる発光電流をオン又はオフにする駆動部を備え、前記制御部は、前記駆動部が発光電流をオンからオフにするタイミングに応じて、前記第1の電位から前記第2の電位に設定することを特徴とする請求項2に記載の発光装置である。
請求項4に記載の発明は、前記発光部は、前記発光素子と並列に第1の容量を有し、前記容量部は、第2の容量を有し、前記第1の電位又は及び前記第2の電位は、前記第1の容量と前記第2の容量とが直列接続状態となって変位電流が流れる電位であることを特徴とする請求項2に記載の発光装置である。
請求項5に記載の発明は、前記第2の容量は、前記第1の容量の1倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の発光装置である。
請求項6に記載の発明は、前記第2の容量は、前記第1の容量の4倍以下であることを特徴とする請求項5に記載の発光装置である。
請求項7に記載の発明は、前記発光部は、前記発光素子を複数備え、発光させる前記発光素子を選択する選択部を備え、前記選択部は、前記容量部に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置である。
請求項8に記載の発明は、前記制御部は、選択された前記発光素子を発光させる発光時に、前記選択部が発光させる当該発光素子を選択する選択時とは異なる電位に設定することを特徴とする請求項7に記載の発光装置である。
請求項9に記載の発明は、前記制御部は、前記選択部の前記選択時に、前記容量部を第1の電位に設定し、当該選択部の当該選択が終了した際に、当該第1の電位より絶対値が大きい第2の電位に設定することを特徴とする請求項8に記載の発光装置である。
請求項10に記載の発明は、前記制御部は、前記発光時に前記容量部の電位を浮遊状態に設定することを特徴とする請求項1に記載の発光装置である。
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10のいずれか1項に記載された発光装置と、前記発光装置の前記発光部から出射され、被計測物で反射された光を受光する受光部と、を備え、前記被計測物の三次元形状を計測する計測装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、発光パルスの波形に対する容量の影響が抑制できる。
請求項2に記載の発明によれば、発光パルスの立ち上がり及び立下りの時間が短縮できる。
請求項3に記載の発明によれば、駆動部が発光電流をオン又はオフするタイミングに対応しない場合に比べ、電位の設定が容易になる。
請求項4に記載の発明によれば、変位電流を用いない場合に比べ、発光パルスの立ち上がり又は及び立ち下がりの時間が短縮できる。
請求項5に記載の発明によれば、発光素子をオフにする電圧にしやすい。
請求項6に記載の発明によれば、第2の容量を4倍超にする場合に比べ、充電及び放電の時間が短縮される。
請求項7に記載の発明によれば、選択部を備えない場合に比べ、発光部を分割した照射ができる。
請求項8に記載の発明によれば、同じ電位を用いる場合に比べ、発光パルスの波形に対する容量の影響が抑制される。
請求項9に記載の発明によれば、第2の電位が第1の電位の絶対値未満である場合に比べ、発光パルス波形に対する容量の影響が抑制される。
請求項10に記載の発明によれば、発光パルスの波形に対する容量部の影響が抑制される。
請求項11に記載の発明によれば、三次元形状を計測できる計測装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】計測装置の構成を説明するブロック図である。
【
図2】発光装置から光が照射される照射領域を説明する斜視図である。
【
図3】第1の実施の形態が適用される発光装置の等価回路である。
【
図4】シフトサイリスタ、結合トランジスタ、発光制御サイリスタ及びVCSELにより、光源の動作を説明する図である。(a)は、等価回路、(b)は、シフトサイリスタTと結合トランジスタとの部分における断面図である。
【
図5】光源のレイアウト及び断面を説明する図である。(a)は、レイアウト、(b)は、(a)のVB-VB線での断面である。
【
図6】発光装置におけるVCSELの発光パルス波形である。(a)、(b)は、シフト部を備えた発光装置におけるVCSELの発光パルス波形、(c)は、シフト部を備えない発光装置におけるVCSELの発光パルス波形である。
【
図7】光源の拡大断面図、及び拡大断面図で示された部分の等価回路である。(a)は、拡大断面図、(b)は、拡大断面図で示された部分の等価回路である。
【
図8】発光装置において、容量部が発光パルス波形に及ぼす影響を説明する図である。(a)は、ドライバがオンである場合、(b)は、ドライバをオンからオフに移行させた場合、(c)は、ドライバがオフである場合、(d)は、ドライバをオフからオンに移行させた場合である。
【
図9】発光装置における、第1の実施の形態が適用される動作を説明する図である。(a)は、ドライバがオンである場合、(b)は、ドライバをオンからオフに移行させた場合、(c)は、ドライバがオフである場合、(d)は、ドライバをオフからオンに移行させた場合である。
【
図10】制御電位の電位を異ならせる制御を一般化して説明する図である。(a)は、ドライバがオンである場合、(b)は、ドライバをオンからオフに移行させた場合である。
【
図11】容量に対する容量の比と、ドライバがオフになった際の基板電位との関係を説明する図である。(a)は、ドライバがオンのときの基板電位が2Vの場合、(b)は、ドライバがオンのときの基板電位が1Vの場合である。
【
図12】比較のために示す発光装置の等価回路である。
【
図13】比較のための発光装置において、ドライバをオンからオフに移行させた場合を説明する図である。
【
図14】第1の実施の形態が適用される計測フローチャートである。(a)は、フローチャート、(b)は、制御電位の制御を説明する図である。
【
図15】第2の実施の形態が適用される発光装置の等価回路である。
【
図16】発光装置における、第2の実施の形態が適用される動作を説明する図である。(a)は、ドライバがオンである場合、(b)は、ドライバをオンからオフに移行させた場合、(c)は、ドライバがオフである場合、(d)は、ドライバをオフからオンに移行させた場合である。
【
図17】発光装置におけるVCSELの発光パルス波形である。(a)は、ドライバをオフにする際に、制御電位を接地電位に維持した場合、(b)は、ドライバをオフにする際に、制御電位を浮遊電位に設定した場合である。
【
図18】第2の実施の形態が適用される計測フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
ToF(Time of Flight)法に基づいて、被計測物の三次元形状を計測する計測装置は、光の飛行時間により被計測物の三次元形状を計測する。つまり、ToF法では、発光装置から光が出射されたタイミングから被計測物で反射して3Dセンサが受光するタイミングまでの時間での光の飛行時間から、発光装置から被計測物までの距離を計測する。被計測物の三次元形状を精度よく計測するには、数Aの発光電流で、数百psの立ち上がり及び立ち下り時間の光パルスが求められる。
【0009】
[第1の実施の形態]
(計測装置100)
図1は、計測装置100の構成を説明するブロック図である。計測装置100は、発光装置1と、三次元センサ5(以下では、3Dセンサ5と表記する。)とを備える。発光装置1は、光源10と制御部50と駆動部60とを備える。なお、
図1は、計測装置100に加え、計測制御部110を示している。
【0010】
発光装置1における光源10は、被計測物に向けて光を出射する。3Dセンサ5は、被計測物で反射されて戻ってきた光(反射光)を取得する。そして、3Dセンサ5は、出射されてから反射光を受光するまでの時間に基づいた、被計測物までの距離に関する情報(距離情報)を出力する。3Dセンサ5は、受光部の一例である。
【0011】
計測制御部110は、CPU、ROM、RAMなどを含むコンピュータとして構成され、3Dセンサ5から取得した距離情報に基づいて、被計測物の三次元形状(以下では、3D形状と表記する。)を特定する。被計測物の3D形状を特定することを、三次元計測、3D計測又は3Dセンシングと表記することがある。なお、計測装置100は、計測制御部110を含んでもよい。
【0012】
このような計測装置は、特定された3D形状から被計測物を認識することに適用される。例えば、携帯型情報処理装置などに搭載され、アクセスしようとするユーザの顔の認識などに利用される。つまり、アクセスしたユーザの顔の3D形状を特定し、アクセスすることが許可されているか否かを識別し、アクセスが許可されているユーザであると認識された場合にのみ、自装置(携帯型情報処理装置)の使用を許可する。
また、この計測装置は、拡張現実(AR:Augmented Reality)など、継続的に被計測物の3D形状を計測する場合にも適用される。
【0013】
このような計測装置は、携帯型情報処理装置以外のパーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置に適用しうる。
【0014】
(分割照射)
図2は、発光装置1から光が照射される照射領域200を説明する斜視図である。ここでは、照射領域200は、被計測物の3D形状を計測するために、発光装置1が出射する光が照射される範囲である。照射領域200に被計測物が存在する場合に、被計測物の3D形状が計測される。
【0015】
照射領域200は、複数の照射区画210に分けられている。そして、発光装置1は、後述する発光部11が複数の発光素子を備え、照射区画210毎に対応する発光素子から光が照射される。発光装置1が照射区画210毎に光を照射することを分割照射と表記する。
図2では、2次元に配列された4×3の照射区画210を示しているが、照射区画210の数は、4×3以外であってもよい。分割照射の場合、各照射区画210に対応する発光素子を選択して、選択された発光素子を発光させ、選択されていない発光素子を非発光にしてもよい。以下では、発光装置1は分割照射するとし、選択された発光素子が発光するとして説明する。しかし、照射領域200を一括して照射するとしてもよい。なお、照射領域200を一括して照射することを一括照射と表記する。
【0016】
(発光装置1)
図3は、第1の実施の形態が適用される発光装置1の等価回路である。
図3において、紙面の右方向を+x方向とする。サイリスタ及びトランジスタを記号で示し、抵抗を長方形で示す。他の場合も同様である。前述したように、発光装置1は、光源10と制御部50と駆動部60とを備える。
【0017】
(光源10)
光源10は、一方側(-x方向側)に、φ1端子と、φ2端子と、VGK端子と、VC端子と、VLD端子と、VK端子とを備える。なお、VGKは、光源10におけるシフト部12を駆動する電位(電源電位VGK)、VCは、光源10の容量部13の電位を制御する電位(制御電位VC)、VLDは、光源10における発光部11の発光素子に発光電流を供給する電位(発光電位VLD、)、VKは、光源10を構成する基板(n型の半導体基板80)の電位(基板電位VK)である。
【0018】
光源10は、発光部11とシフト部12と容量部13とを備える。なお、容量部13については、
図7(a)、(b)にて説明する。
発光部11は、垂直共振器面発光レーザVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)と発光制御サイリスタSとを複数備える。以下では、垂直共振器面発光レーザVCSELをVCSELと表記する。図
3では、6個のVCSEL(VCSEL(1)~VCSEL(6))及び6個の発光制御サイリスタS(発光制御サイリスタS(1)~S(6))を示している。そして、VCSELのアノードと発光制御サイリスタSのカソードとが接続されている。つまり、同じ番号のVCSELと発光制御サイリスタSとが直列接続されている。そして、6個のVCSEL及び6個の発光制御サイリスタSは、一方側(-x方向側)から他方側(+x方向側)に向けて配列されている。VCSELが発光素子の一例である。なお、発光素子は、発光制御サイリスタSのようなサイリスタであって、サイリスタにおけるpn接合が発光する素子であってもよい。
【0019】
シフト部12は、シフトサイリスタTと、結合トランジスタQと、電源線抵抗Rgと、電流制限抵抗RLと、結合抵抗Rcとを複数備える。
図3は、6個のシフトサイリスタT(シフトサイリスタT(1)~T(6))及び6個の結合トランジスタQ(結合トランジスタQ(1)~Q(6))を示している。なお、
図3では、6個の電源線抵抗Rgと、6個の電流制限抵抗RLと、6個の結合抵抗Rcとを示しているが、これらには、番号を付さない。各1個のシフトサイリスタT、結合トランジスタQ、電源線抵抗Rg、電流制限抵抗RL、及び結合抵抗Rcでシフトユニット12aを構成する。6個のシフトユニット12aが一方側(-x方向側)から他方側(+x方向側)に向けて配列されている。シフト部12は、一方側(-x方向側)の端部に、電源線抵抗Rgと、スタート抵抗Rsとを備える。さらに、光源10は、電流制限抵抗R1、R2を備える。
【0020】
シフトユニット12aにおいて、シフトサイリスタTと結合トランジスタQとが接続されている。シフトユニット12aにおける結合トランジスタQは、発光部11の発光制御サイリスタSに接続されている。つまり、シフトサイリスタT(1)~T(6)は、結合トランジスタQ(1)~Q(6)と、結合トランジスタQ(1)~Q(6)は、発光制御サイリスタS(1)~S(6)と同じ番号で接続されている。ここでは、6個の発光制御サイリスタS、結合トランジスタQ、発光制御サイリスタS及びVCSELを示しているが、他の個数であってもよい。
【0021】
光源10において、VGK端子は電源線71、φ1端子はシフト信号線72-1、φ2端子はシフト信号線72-2、V
C端子は制御電位層73、V
LD端子は発光電位線74、V
K端子は基板電極75に接続されている。なお、
図3において、制御電位層73を線状に記載しているが、後述する
図7(a)に示すように、p型の半導体層83である。よって、制御電位層73と表記する。同様に、
図3において、基板電極75を線状に記載しているが、後述する
図5(b)に示すように、光源10を構成するn型の半導体基板80の裏面に設けられた電極(裏面電極)である。よって、基板電極75と表記する。シフト信号線72-1、72-2をそれぞれ区別しない場合は、シフト信号線72と表記する。
【0022】
容量部13は、VC端子とVK端子との間に構成される電気容量(以下では、容量と記載する。)である。
【0023】
(制御部50)
制御部50は、シフト信号p1、p2、制御信号pcを発生して、光源10を制御する。
制御部50は、バッファBuf1、Buf2と、電源VS1、VS2、VS3と、ドライバDrv1とを備える。バッファBuf1は、シフト信号p1を光源10のφ1端子に供給する。バッファBuf2は、シフト信号p2を光源10のφ2端子に供給する。ドライバDrv1は、制御電位VCを光源10のVC端子に供給する。
【0024】
電源VS1は、電源電位VGKを発生し、光源10のVGK端子に供給する。また、電源VS1は、バッファBuf1、Buf2の電源を兼ねている。すなわち、バッファBuf1、Buf2は、シフト信号p1、p2がHレベル(「H」と表記することがある。)のときは、ほぼ電源VS1の電圧を出力し、シフト信号p1、p2がLレベル(「L」と表記することがある。)のときはほぼ接地電位(接地電位GND(0V))を出力する。なお、バッファBuf1、Buf2の電源は、電源電位VGKとは独立した電源であってもよい。以下では、接地電位GNDを供給することを、接地すると表記し、接地をGNDと表記する。
【0025】
電源VS2は、発光電位VLDを発生し、光源10のVLD端子に供給する。
【0026】
ドライバDrv1は、例えば、NMOSトランジスタとPMOSトランジスタとが組み合わされた相補型(CMOS構成)のドライバ素子を備える。NMOSトランジスタのソースは接地され、PMOSトランジスタのソースは、電源VS3に接続されている。NMOSトランジスタのドレインとPMOSトランジスタのドレインとは接続され、VC端子に接続されている。NMOSトランジスタのゲートとPMOSトランジスタのゲートとは接続され、制御信号pcが供給される。制御信号pcがHレベルであると、VC端子に供給される制御電位VCを電位VLにし、制御信号pcがLレベルであると、VC端子に供給される制御電位VCを電位VHにする。なお、電位VHは、電源VS3が供給する電位である。ここでは、一例として、VLは、接地電位GND(0V)であり、VHは、後述するように、3.3Vである。電位VLは、第1の電位の一例であり、電位VHは、第2の電位の一例である。なお、ドライバDrv1は、ドライバ素子をCMOS構成としたが、他のドライバ素子やスイッチであってもよい。
【0027】
制御部50は、シフト信号p1、p2、制御信号pcを発生するとしたが、計測制御部110からこれらの信号を受信してもよい。また、制御部50と計測制御部110とを合わせて制御部としてもよい。
【0028】
(駆動部60)
駆動部60は、発光信号pIを発生し、光源10のVCSELを発光させる。
駆動部60は、ドライバDrv2と発光電流制限抵抗RIとを備える。ドライバDrv2は、例えば、NMOSトランジスタをドライバ素子として備える。NMOSトランジスタは、ソースが接地され、ドレインが発光電流制限抵抗RIを介して、VK端子に接続されている。NMOSトランジスタは、ゲートに印加される発光信号pIによりオン又はオフに設定される。発光信号pIがHレベルであると、ドライバDrv2がオンになり、NMOSトランジスタのドレインは接地電位GND(0V)となり、光源10のVK端子が接地電位GND(0V)に向って変化する。発光信号pIがLレベルであると、ドライバDrv2がオフになる。なお、NMOSトランジスタの代わりに、絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの他の素子を用いてもよい。なお、駆動部60が発光信号pIを発生するとしたが、計測制御部110から発光信号pIを受信してもよい。また、駆動部60と計測制御部110とを合わせて駆動部としてもよい。
【0029】
光源10における接続関係は、拡大図によって説明する。発光制御サイリスタSを発光制御サイリスタ、シフトサイリスタTをシフトサイリスタ、結合トランジスタQを結合トランジスタと表記することがある。発光制御サイリスタSとシフトサイリスタTとを区別しないで、サイリスタと表記することがある。
【0030】
(シフトサイリスタ、結合トランジスタ、VCSEL及び発光制御サイリスタの動作)
ここでは、光源10の基本的な動作を説明する。
シフトサイリスタ及び発光制御サイリスタは、npnp構造のサイリスタである。サイリスタは、n型のカソードK(以下では、カソードKと表記する。以下同様とする。)、p型のゲートGp(pゲートGp)、n型のゲートGn(nゲートGn)、p型のアノードA(アノードA)を備える。なお、発光制御サイリスタSは、pゲートGpを制御に用いないため、表記していない。
【0031】
結合トランジスタは、マルチコレクタのnpnバイポーラトランジスタである。結合トランジスタは、n型のエミッタE(エミッタE)、p型のベースB(ベースB)、n型のコレクタCf、Cs(コレクタCf、Cs)を備える。
【0032】
なお、上記の符号は、サイリスタ間、結合トランジスタ間において区別しないで用いる。後述するサイリスタを構成するバイポーラトランジスタについても同様とする。ただし、サイリスタは、シングルコレクタのnpnバイポーラトランジスタとpnpバイポーラトランジスタとの組み合わせで構成されている。よって、エミッタE、ベースB、コレクタCと表記する。以下では、図に符号を付さない場合であっても、アノードA、カソードK、nゲートGn、pゲートGp、エミッタE、ベースB、及びコレクタCの表記を用いる。
【0033】
シフトサイリスタT、結合トランジスタQ、発光制御サイリスタS及びVCSELは、例えばGaAsなどのIII-V属の化合物半導体で構成されている。ここでは、この化合物半導体の接合の順方向電圧(拡散電位)Vdを1.5Vとし、化合物半導体で構成されるバイポーラトランジスタの飽和電圧Vsatを0.3Vとする。また、接地電位GNDを0V、電源電位VGKを5V、発光電位VLDを7Vとする。シフト信号p1、p2、制御信号pc、発光信号pIは、Lレベルが0V(「L」(0V))で、Hレベルが5V(「H」(5V))である信号とする。
【0034】
図4は、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)、発光制御サイリスタS(1)及びVCSEL(1)により、光源10の動作を説明する図である。
図4(a)は、等価回路、
図4(b)は、シフトサイリスタT(1)と結合トランジスタQ(1)との部分における断面図である。
図4(a)では、シフトサイリスタT(2)を合わせて示している。
【0035】
図4(a)に示すように、シフトサイリスタT(1)は、npnバイポーラトランジスタTr1(以下では、npnトランジスタTr1と表記する。)とpnpバイポーラトランジスタTr2(以下では、pnpトランジスタTr2と表記する。)との組み合わせで構成されている。npnトランジスタTr1のベースBがpnpトランジスタTr2のコレクタCに接続され、npnトランジスタTr1のコレクタCがpnpトランジスタTr2のベースBに接続されている。npnトランジスタTr1のエミッタEがシフトサイリスタT(1)のカソードK、pnpトランジスタTr2のエミッタEがシフトサイリスタT(1)のアノードAである。npnトランジスタTr1のコレクタC(pnpトランジスタTr2のベースB)がシフトサイリスタT(1)のnゲートGn、pnpトランジスタTr2のコレクタC(npnトランジスタTr1のベースB)がシフトサイリスタT(1)のpゲートGpである。
【0036】
シフトサイリスタT(1)のカソードK(npnトランジスタTr1のエミッタE)は、制御電位層73に接続されている。制御電位層73は、制御電位VCが供給されるVC端子に接続されている。シフトサイリスタT(1)のアノードA(pnpトランジスタTr2のエミッタE)は、シフト信号線72-1に接続されている。シフト信号線72-1は、シフト信号p1が供給されるφ1端子に接続されている。シフトサイリスタT(1)のnゲートGnは、直列接続されたスタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgとの接続点に接続されている。スタート抵抗Rsの他方(接続点でない方)は、シフト信号線72-2に接続されている。シフト信号線72-2は、シフト信号p2が供給されるφ2端子に接続されている。電源線抵抗Rgの他方(接続点でない方)は、電源線71に接続されている。電源線71は、電源電位VGKが供給されるVGK端子に接続されている。
【0037】
結合トランジスタQ(1)は、npnトランジスタである。結合トランジスタQ(1)のベースBは、シフトサイリスタT(1)のpゲートGp(npnトランジスタTr1のベースB及びpnpトランジスタTr2のコレクタC)に接続されている。結合トランジスタQ(1)のエミッタEは、制御電位層73に接続されている。結合トランジスタQ(1)のコレクタCfは、直列接続された結合抵抗Rcと電源線抵抗Rgとを介して電源線71に接続されている。結合抵抗Rcと電源線抵抗Rgとの接続点は、シフトサイリスタT(2)のnゲートGnに接続されている。
【0038】
シフトサイリスタT(1)におけるnpnトランジスタTr1と、結合トランジスタQ(1)とは、カレントミラー回路を構成する。つまり、npnトランジスタTr1に流れる電流に比例した電流が、結合トランジスタQ(1)に流れる。
【0039】
結合トランジスタQ(1)のコレクタCsは、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnに接続されるとともに、電流制限抵抗RLを介して発光電位線74に接続されている。発光電位線74は、発光電位VLDが供給されるVLD端子に接続されている。
【0040】
前述したように、VCSEL(1)と発光制御サイリスタS(1)とは直列接続されている。つまり、VCSEL(1)のアノードAと発光制御サイリスタS(1)のカソードKとが接続されている。発光制御サイリスタS(1)のアノードAは、発光電位線74に接続されている。VCSEL(1)のカソードKは、基板電極75に接続されている。基板電極75は、発光電流制限抵抗RIを介してドライバDrv2に接続されたV
K端子に接続されている(
図3参照)。
【0041】
シフトサイリスタT(2)のアノードAは、シフト信号線72-2に接続されている。シフト信号線72-2は、シフト信号p2が供給されるφ2端子に接続されている。
図3に示したように、奇数番号のシフトサイリスタTのアノードAは、シフト信号線72-1に接続され、偶数番号のシフトサイリスタTのアノードAは、シフト信号線72-2に接続されている。シフトサイリスタTのシフト信号線72-1、72-2との接続関係を除いて、番号2以上のシフトサイリスタT、結合トランジスタ、発光制御サイリスタS、及びVCSELの接続関係は、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)、発光制御サイリスタS(1)、及びVCSEL(1)と同様である。以下では、シフト信号p1(φ1)、シフト信号p2(φ2)と表記する場合がある。
【0042】
まず、シフト部12におけるシフトサイリスタT(1)の動作を説明する。
電源線71が電源電位VGK(5V)に、制御信号pcが「L」(0V)で制御電位層73が接地電位GND(0V)に、シフト信号p1(φ1)、p2(φ2)が「L」(0V)でシフト信号線72-1、72-2が接地電位GND(0V)に、発光信号pIが、「L」(0V)であってドライバDrv2はオフであり、基板電極75には、電圧が供給されていないとする。この状態を、初期状態と表記する。
【0043】
この時、シフトサイリスタT(1)を構成するnpnトランジスタTr1、pnpトランジスタTr2は、オフ状態にある。シフトサイリスタT(1)のnゲートGnは、直列接続されたスタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgとの接続点に接続されている。そして、スタート抵抗Rsの他方(接続点でない方)は、「L」(0V)のシフト信号線72-2に接続され、電源線抵抗Rgの他方(接続点でない方)は、5Vの電源線71に接続されている。よって、nゲートGnは、電圧差(5V)がスタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgとで分圧された電圧になる。スタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgとの抵抗比を、一例として1:5とすると、nゲートGnは、0.83Vになる。
【0044】
ここで、シフト信号p1(φ1)が「L」(0V)から「H」(5V)に移行すると、シフトサイリスタT(1)のpnpトランジスタTr2のエミッタE(アノードA)(「H」(5V))とベースB(pゲートGp)(0.83V)との電圧差が4.17Vと、順方向電圧Vd(1.5V)以上となる。これにより、エミッタE-ベースB間が順バイアスになって、pnpトランジスタTr2がオフ状態からオン状態に移行する。すると、pnpトランジスタTr2のコレクタC(npnトランジスタTr1のベースB)が、エミッタE(「H」(5V))から飽和電圧Vsat(0.3V)を引いた4.7Vと、順方向電圧Vd(1.5V)以上となる。これにより、エミッタE-ベースB間が順バイアスになり、npnトランジスタTr1がオフ状態からオン状態に移行する。シフトサイリスタT(1)におけるnpnトランジスタTr1とpnpトランジスタTr2とがオン状態になるので、シフトサイリスタT(1)がオフ状態からオン状態に移行する。シフトサイリスタTがオフ状態からオン状態に移行することを、ターンオンと表記する。なお、シフトサイリスタTがオン状態からオフ状態に移行することを、ターンオフと表記する。
【0045】
つまり、初期状態において、シフト信号p1(φ1)が「L」(0V)から「H」(5V)に移行するとシフトサイリスタT(1)がターンオンしてオフ状態からオン状態に移行する。ここでは、アノードAが「H」(5V)になるとシフトサイリスタT(1)がターンオンしうる状態を、オン状態に移行可能な状態であると表記する。他の場合も同様とする。
【0046】
シフトサイリスタT(1)がターンオンすると、シフトサイリスタT(1)において、nゲートGnは、飽和電圧Vsatの0.3Vになる。また、アノードAは、順方向電圧Vdと飽和電圧Vsatとを足した電圧(Vd+Vsat)及びシフトサイリスタTの内部抵抗での電圧低下により決まる電圧になる。ここでは、アノードAは、1.9Vになるとする。つまり、シフトサイリスタT(1)がターンオンすると、シフト信号線72-1は、5Vから1.9Vに移行する。すると、シフトサイリスタT(1)のpゲートGpは、1.6Vになる。
【0047】
以上説明したように、シフトサイリスタT(1)は、nゲートGnの電位がアノードAの電位より順方向電圧Vd(1.5V)以上低い電位となれば、ターンオンする。なお、シフトサイリスタT(1)は、シフト信号線72-1の電位(アノードA-カソードK間の電位)が、上記の1.9V未満になると、ターンオフする。例えば、アノードAが「L」(0V)になると、アノードA-カソードK間の電位差が0Vになるので、シフトサイリスタT(1)は、ターンオフする。一方、シフト信号線72-1の電圧(アノードA-カソードK間の電位差)が1.9V以上であれば、シフトサイリスタT(1)のオン状態が保持される。よって、1.9Vを保持電圧と表記する。なお、保持電圧が印加されていても、シフトサイリスタT(1)をオン状態に保持する電流が流れていないと、シフトサイリスタT(1)のオン状態は保持されない。オン状態を保持する電流を保持電流と表記する。
【0048】
次に、結合トランジスタQ(1)の動作を説明する。
シフトサイリスタT(1)がオフ状態であれば、npnトランジスタTr1は、オフ状態である。よって、結合トランジスタQ(1)も、オフ状態である。このとき、結合トランジスタQ(1)において、エミッタEは、接地電位GND(0V)である制御電位層73に接続されている。コレクタCfは、直列に接続された電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとを介して電源電位VGK(5V)になっている。また、コレクタCsは、電流制限抵抗RLを介して発光電位VLD(7V)になっている。
【0049】
前述したように、シフトサイリスタT(1)がターンオンすると、シフト信号線72-1は1.9Vになる。すると、シフトサイリスタT(1)のpゲートGpは、1.6Vになる。結合トランジスタQ(1)はベースBがシフトサイリスタT(1)のpゲートGpに接続されているので、結合トランジスタQ(1)のエミッタE-ベースB間が順方向電圧Vd(1.5V)以上、つまり順バイアスになる。これにより、結合トランジスタQ(1)は、オフ状態からオン状態に移行する。すると、コレクタCfは飽和電圧Vsat(0.3V)となる(コレクタCsについては後述する。)。電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとの接続点(シフトサイリスタT(2)のnゲートGn)は、電源線71の電圧(5V)とコレクタCfの電圧(0.3V)との電圧差(4.7V)が電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとで分圧された電圧となる。電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとの抵抗比を一例として5:1とすると、電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとの接続点(シフトサイリスタT(2)のnゲートGn)は、1.08Vとなる。
【0050】
シフトサイリスタT(2)のアノードAは、シフト信号線72-2に接続されている。シフト信号線72-2は、シフト信号p2(φ2)が供給されるφ2端子に接続されている。シフト信号p2(φ2)は、「L」(0V)であるので、シフトサイリスタT(2)は、ターンオンしない。しかし、シフト信号p2(φ2)が「L」(0V)から「H」(5V)に移行すると、シフト信号線72-2に接続されたシフトサイリスタT(2)のアノードAが「H」(5V)になる。すると、シフトサイリスタT(2)のアノードAとnゲートGn(1.08V)との電位差(3.92V)が順方向電圧Vd(1.5V)以上になる。すると、シフトサイリスタT(2)は、nゲートGn-アノードA間が順バイアスになってターンオンする。このとき、シフトサイリスタT(1)とシフトサイリスタT(2)とがオン状態になっている。次に、シフト信号p1(φ1)が「H」(5V)から「L」(0V)に移行すると、シフトサイリスタT(1)のアノードAが「L」(0V)になり、シフトサイリスタT(1)がターンオフする。
【0051】
つまり、シフトサイリスタTは、シフト信号p1(φ1)、p2(φ2)を「L」(0V)と「H」(5V)とで、ともに「H」(5V)である期間を設けて、交互に切り替わることで、シフトサイリスタTのオン状態がシフトしていく。このように複数の素子があって、その複数の素子のうちターンオンする素子が次々に移行していく動作がシフト動作である。また、本明細書における実施の形態では、このシフト動作によってターンオンやターンオフさせられる素子がシフト素子である。
【0052】
最後に、発光制御サイリスタS(1)及びVCSEL(1)の動作を説明する。
結合トランジスタQ(1)のコレクタCsは、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnに接続されている。よって、結合トランジスタQ(1)がオフ状態からオン状態に移行すると、結合トランジスタQ(1)のコレクタCsと同様に、コレクタCsに接続された発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnの電位が0.3Vになる。発光制御サイリスタS(1)のアノードAは、発光電位線74に接続されている。発光電位線74は、発光電位VLD(7V)が供給されているVLD端子に接続されている。よって、発光制御サイリスタS(1)のアノードA-nゲートGn間は、6.7Vとなって、発光制御サイリスタS(1)のアノードA-nゲートGn間のpn接合が順方向となる。すると、結合トランジスタQ(1)のコレクタCsは、発光電位VLD(7V)から発光制御サイリスタS(1)のアノードA-nゲートGn間のpn接合を介して電流を引き込む。これにより、結合トランジスタQ(1)のコレクタCsは、おおよそ発光電位VLD(7V)から順方向電圧Vd(1.5V)を引いた5.5Vになる。ここで、ドライバDrv2がオンになって、VK端子が接地電位GND(0V)に向って変化する。すると、基板電極75、及び、VCSEL(1)のカソードKが0Vに向って変化する。これにより、発光制御サイリスタS(1)がターンオンして、直列接続された発光制御サイリスタS(1)とVCSEL(1)とに電流が流れて、VCSEL(1)が発光する。
【0053】
つまり、結合トランジスタQ(1)がオン状態になり、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnが5.5Vになった状態は、ドライバDrv2がオンになると、VCSEL(1)が発光する状態である。よって、結合トランジスタQ(1)がオンになり、発光制御サイリスタS(1)のアノードA-nゲートGn間が順バイアス(5.5V)になった状態を、VCSEL(1)が発光可能な状態と表記する。発光制御サイリスタSは、nゲートGnの電位によって、VCSELの発光を制御するので、発光制御サイリスタと表記する。
【0054】
ドライバDrv2がオンからオフにされると、発光制御サイリスタS(1)とVCSEL(1)とに流れていた発光電流が流れなくなり、VCSEL(1)の発光が停止(消光)する。
【0055】
このとき、シフトサイリスタT(1)がオン状態からオフ状態になることで、結合トランジスタQ(1)がオン状態からオフ状態に移行したとする。つまり、結合トランジスタQ(1)のコレクタCsが5.5Vを維持できない。発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnは、電流制限抵抗RLを介して発光電位VLD(7V)の発光電位線74に接続されている。よって、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnは、発光電位VLD(7V)に向かって上昇する。このとき、発光制御サイリスタS(1)のアノードとnゲートGnとの間の寄生容量Cag(容量をCagとする)が電流制限抵抗RL(抵抗値をRLとする)を介して、RL×Cagの時定数で放電する。一方、発光制御サイリスタS(1)における、nゲートGnとpゲートGp間の寄生容量Cgg、pゲートGpとカソードKとの間の寄生容量Cgk、VCSEL(1)の寄生容量Cvに蓄積された電荷は移動できないので、nゲートGnの電位が上昇した分だけ、発光制御サイリスタS(1)のpゲートGp、カソードKの電位が上昇する。
【0056】
ここで、発光信号pIが「L」(0V)から「H」(5V)になって、ドライバDrv2が再びオンになると、基板電位VKが急に接地電位GND(0V)に向かって変化する。つまり、VCSEL(1)のカソードKが接続された基板電極75が急に接地電位GND(0V)に向かって変化する。このため、寄生容量Cag、Cgg、Cgkを貫通する変位電流が流れ、これをしきい電流として発光制御サイリスタS(1)がターンオンし、VCSEL(1)が発光する。つまり、VCSEL(1)を一度発光させると、シフトサイリスタT(1)がオン状態でなくとも、ドライバDrv2が再びオンになると、VCSEL(1)が再び発光する。この後も、VCSEL(1)は、発光と消光とを繰り返し行える。つまり、VCSEL(1)は、複数の発光パルスを連続的に発生させられる。なお、発光制御サイリスタS(1)のカソードKの電位の上昇が小さく、接地電位GNDに近いと、ドライバDrv2が再びオンになっても、発光制御サイリスタS(1)は、ターンオンしない。発光パルスを光パルス又はパルス光と表記してもよい。
【0057】
シフトサイリスタT(1)がオン状態でないとは、シフトサイリスタT(1)がオフ状態に移行した場合に加え、シフト部12が動作を停止した状態、つまりオフである場合を含む。シフト部12がオフとは、例えば、シフト信号p1、p2をともに「L」(0V)にした状態である。上記のように、VCSELは、一度発光させると、シフト部12をオフにしても、複数の発光パルスを連続的に発生させられる。VCSELを再発光が可能な状態にすることを、メモリ効果を発現させると表記する。なお、シフト部12をオフにすると、シフトサイリスタT、結合トランジスタQに電流が流れないので、光源10の消費電力が抑制される。
【0058】
制御電位VCは、シフトサイリスタTのカソードK、結合トランジスタQのエミッタEに供給される。よって、シフト部12を動作させる場合には、制御電位VCが予め定められた電位、ここでは接地電位GND(0V)に設定されていることを要す。しかし、シフト部12を動作させない場合や、シフト部12をオフにした場合には、制御電位VCは、接地電位GND(0V)と異なる電位に設定されてもよい。
【0059】
以上説明したことを言いかえると、初期状態とは、つまり電源線71が電源電位VGK(5V)、制御電位層73が接地電位GND(0V)に、シフト信号p1(φ1)、p2(φ2)が「L」(0V)でシフト信号線72-1、72-2が接地電位GND(0V)に、発光信号pIが、「L」(0V)であってドライバDrv2はオフであり、基板電極75には、電圧が供給されていない状態である。初期状態では、シフトサイリスタT(1)がオン状態に移行可能な状態になる。ここで、シフト信号p1(φ1)(シフト信号線72-1)が「L」(0V)から「H」(5V)に移行すると、シフトサイリスタT(1)がターンオンしてオフ状態からオン状態に移行する。シフトサイリスタT(1)がターンオンすると、結合トランジスタQ(1)がオフ状態からオン状態に移行する。すると、発光制御サイリスタS(1)のアノードAとnゲートGnとが順バイアスとなり、VCSEL(1)が発光可能な状態になる。そして、基板電位VKが接地電位GND(0V)に向って変化すると、発光制御サイリスタS(1)がターンオンして、VCSEL(1)が発光する。
【0060】
また、結合トランジスタQ(1)がオン状態になると、シフトサイリスタT(2)がオン状態に移行可能な状態になる。そして、シフト信号p2(φ2)(シフト信号線72-2)が「L」(0V)から「H」(5V)に移行すると、シフトサイリスタT(2)がターンオンする。なお、シフトサイリスタT(1)は、シフト信号p1(φ1)(シフト信号線72-1)が「H」(5V)から「L」(0V)に移行すると、カソードKとアノードAとが「L」(0V)になって、ターンオフする。他のシフトサイリスタT、結合トランジスタQ、発光制御サイリスタS及びVCSELも同様に動作する。つまり、シフト信号p1(φ1)とシフト信号p2(φ2)とにより、オン状態のシフトサイリスタTがシフトする。
【0061】
そして、VCSEL(1)は、一度発光させるとメモリ効果が発現して、シフト部12をオフにしても、複数の発光パルスを連続的に発生させられる。
【0062】
ここでは、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)、発光制御サイリスタS(1)及びVCSEL(1)で説明したが、シフト部12の動作によりシフトサイリスタTのオン状態をシフトさせ、オン状態のシフトサイリスタT及び結合トランジスタQに接続されたVCSELを発光させるVCSELとして選択する。そして、発光させるVCSELを、上述したように発光させる。このように、シフト部12により選択されたVCSELを発光させれば、分割照射における照射区画210毎に照射が行われる。シフト部12は、選択部の一例である。
【0063】
図4(b)に示すように、光源10は、複数の半導体層が積層されて構成されている半導体部品である(後述する
図5参照)。
図4(b)では、シフトサイリスタT(1)及び結合トランジスタQ(1)を構成するn型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、及びp型の半導体層88が積層された部分を示す。シフトサイリスタT(1)は、n型の半導体層85をカソードK、p型の半導体層86をpゲートGp、n型の半導体層87をnゲートGn、及びp型の半導体層88をアノードAとして構成されている。一方、結合トランジスタQ(1)は、n型の半導体層85をエミッタE、p型の半導体層86をベースB、n型の半導体層87をコレクタCf、Csとして構成されている。ここで、シフトサイリスタT(1)のカソードKと結合トランジスタQ(1)のエミッタEとは、n型の半導体層85を介して電気的に接続されている。同様に、シフトサイリスタT(1)のpゲートGpと結合トランジスタQ(1)のベースBとは、p型の半導体層86を介して電気的に接続されている。そして、シフトサイリスタT(1)のnゲートGnと結合トランジスタQ(1)のコレクタCf、Csとは、ともにn型の半導体層87で構成されているが、分離されている。他のシフトサイリスタT、結合トランジスタQも同様である。
【0064】
図5は、光源10のレイアウト及び断面を説明する図である。
図5(a)は、レイアウト、
図5(b)は、
図5(a)のVB-VB線での断面である。
図5(a)では、シフトサイリスタT(1)~T(4)、結合トランジスタQ(1)~Q(4)、発光制御サイリスタS(1)~S(4)及びVCSEL(1)~VCSEL(4)を中心に示している。
図5(b)では、発光制御サイリスタS(1)、VCSEL(1)、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)、結合トランジスタQ(1)に接続された結合抵抗Rc、電源線抵抗Rgの部分の断面を示している。
【0065】
図5(b)に示すように、光源10は、n型の半導体基板80上にn型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83、トンネル接合層84、n型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、及びp型の半導体層88が積層されて構成されている。そして、シフトサイリスタT、結合トランジスタQ、発光制御サイリスタS、VCSELなどの素子は、一部の半導体層がエッチングにより除去されて分離された複数のアイランドから構成されている。なお、アイランドは、メサと表記されることがあり、アイランド(メサ)を形成するエッチングをメサエッチングと表記されることがある。以下では、発光制御サイリスタS(1)及びVCSEL(1)が設けられるアイランド301、シフトサイリスタT(1)及び結合トランジスタQ(1)が設けられるアイランド302などを中心にアイランド(アイランド300、301~307)を説明する。
【0066】
アイランド300は、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)などのシフト部12(
図3参照)が設けられる部分であって、n型の半導体基板80上にn型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83、トンネル接合層84、n型の半導体層85が除去されないで残されている。
【0067】
アイランド301にVCSEL(1)と発光制御サイリスタS(1)とが積層されて設けられている。アイランド302に
図2(b)に示したシフトサイリスタT(1)及び結合トランジスタQ(1)が設けられている。アイランド303に電流制限抵抗RL、アイランド304に電源線抵抗Rg及び結合抵抗Rcが設けられている。アイランド305に電源線抵抗Rg及びスタート抵抗Rsが設けられている。アイランド306に電流制限抵抗R1、アイランド307に電流制限抵抗R2が設けられている。
【0068】
以下では、
図5(a)、(b)を参照してレイアウト及び断面を説明する。
アイランド301の周囲は、n型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83、トンネル接合層84、n型の半導体層85、87、p型の半導体層86、88がエッチングにより除去されている。p型の半導体層88上にp型の半導体層とオーミック接触しやすいpオーミック電極321が設けられている。p型の半導体層88を除去して露出させたn型の半導体層87上にn型の半導体層とオーミック接触しやすいnオーミック電極331が設けられている。VCSEL(1)は、n型の半導体層81をカソードK(
図4(a)参照)、活性層82を活性層、p型の半導体層83をアノードA(
図4(a)参照)とする。発光制御サイリスタS(1)は、n型の半導体層85をカソードK、p型の半導体層86をpゲートGp(pゲート層)、n型の半導体層87をnゲートGn(nゲート層)、p型の半導体層88をアノードAとする。nオーミック電極331は、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnである。
【0069】
図5(b)に示すように、n型の半導体基板80上に、VCSEL(1)が設けられ、VCSEL(1)上に、トンネル接合層84を介して、発光制御サイリスタS(1)が積層されている。トンネル接合層84は、VCSEL(1)のp型の半導体層83と発光制御サイリスタS(1)のn型の半導体層85とが、逆バイアスになって電流が流れにくくなることを抑制する。トンネル接合層84は、n型の不純物を高濃度に添加したn
++層と、p型の不純物を高濃度に添加したp
++層との接合であって、逆バイアスであってもトンネル効果によって電流が流れる。
【0070】
アイランド301は、nオーミック電極331が設けられる部分を除いて、円柱状である。pオーミック電極321は、円柱状であるアイランド301のp型の半導体層88上に、円環状に設けられている。そして、エッチングにより露出させたp型の半導体層83を構成する半導体層の一部が円柱状の外周部から酸化されることで、円環状に電流が流れにくい電流阻止部βとなっている。一方、酸化されなかった中央部は、電流が流れやすい電流通過部αとなっている。そして、円環状のpオーミック電極321の中央部から光が出射される。なお、電流阻止部βは、p型の半導体層83に、AlAs層やAl濃度が高いAlGaAs層を設け、露出した外周部から酸化させて、Alを酸化することで構成される。VCSEL(1)の周辺部は、エッチングに起因した欠陥が多く、非発光再結合が起こりやすい。よって、電流阻止部βを設けることで、非発光再結合に消費される電力が抑制される。電流阻止部βを設けることで、低消費電力化及び光取り出し効率の向上が図れる。なお、光取り出し効率とは、電力当たりに取り出すことができる光量である。
【0071】
図5(a)(b)では、VCSEL(1)は、発光制御サイリスタS(1)を透過して光を出射する。なお、アイランド301の光が出射する部分の発光制御サイリスタS(1)(トンネル接合層84、n型の半導体層85、87、p型の半導体層86、88)を除去してもよい。この場合、発光制御サイリスタS(1)は、円筒状になる。このようにすると、VCSEL(1)が出射する光が、発光制御サイリスタS(1)で吸収されて光量が低下することが抑制される。
【0072】
アイランド302の周囲は、p型の半導体層86、n型の半導体層87、p型の半導体層88がエッチングにより除去されている(
図4(b)参照)。p型の半導体層88上にpオーミック電極322が設けられている。pオーミック電極322は、シフトサイリスタT(1)のアノードAに接続される電極(アノードA電極)であって、シフト信号p1(φ1)が供給されるシフト信号線72-1に接続されている。p型の半導体層88を除去して露出させたn型の半導体層87上にnオーミック電極332、333、334が設けられている。nオーミック電極332、334は、結合トランジスタQ(1)のコレクタCs、Cfに接続される電極(コレクタCf、Cs電極)である。なお、pオーミック電極322とnオーミック電極332、334との間のn型の半導体層87は除去されている(
図4(b)参照)。nオーミック電極333は、シフトサイリスタT(1)のnゲートGnに接続される電極(nゲートGn電極)である。
【0073】
アイランド303の周囲は、p型の半導体層86、n型の半導体層87、p型の半導体層88がエッチングにより除去されている。さらに、アイランド303では、p型の半導体層88がエッチングにより除去されている(
図5(b)に示すアイランド304参照)。露出されたn型の半導体層87上に、2個のnオーミック電極335、336が設けられている。2個のnオーミック電極335、336間におけるn型の半導体層87が電流制限抵抗RLである。
【0074】
アイランド304の周囲は、p型の半導体層86、n型の半導体層87、p型の半導体層88がエッチングにより除去されている。さらに、アイランド304では、p型の半導体層88がエッチングにより除去されている。露出されたn型の半導体層87上に、3個のnオーミック電極337、338、339が設けられている。そして、nオーミック電極337、338間におけるn型の半導体層87が結合抵抗Rc、nオーミック電極338、339間におけるn型の半導体層87が電源線抵抗Rgである。
【0075】
アイランド305は、アイランド304と同様に構成され、スタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgが設けられている。アイランド306、307は、アイランド303と同様に構成され、電流制限抵抗R1、R2が設けられている。
【0076】
アイランド300の露出したn型の半導体層85上に、nオーミック電極338が設けられている。n型の半導体基板80の裏面には、基板電極75が設けられている。
【0077】
次に、接続関係を説明する。なお、
図5(a)では、接続に用いられる配線(電源線71、シフト信号線72-1、72-2、発光電位線74)を直線で示している。
アイランド301の発光制御サイリスタS(1)のアノードA電極であるpオーミック電極321は、発光電位V
LDが供給される発光電位線74に接続されている。アイランド301の発光制御サイリスタS(1)のnゲートGn電極であるnオーミック電極331は、アイランド302の結合トランジスタQ(1)のコレクタCs電極であるnオーミック電極332に接続されている。nオーミック電極332は、アイランド303に設けられた電流制限抵抗RLのnオーミック電極336に接続されている。アイランド303のnオーミック電極335は、発光電位線74に接続されている。
【0078】
アイランド302のシフトサイリスタT(1)のアノードA電極であるpオーミック電極322は、シフト信号線72-1に接続されている。シフト信号線72-1は、アイランド306に設けられた電流制限抵抗R1を介して、シフト信号p1が供給されるφ1端子に接続されている。アイランド302のシフトサイリスタT(1)のnゲートGn電極であるnオーミック電極333は、アイランド305に設けられた電源線抵抗Rgとスタート抵抗Rsとの接続点であるnオーミック電極(符号なし)に接続されている。アイランド302の結合トランジスタQ(1)のコレクタCf電極であるnオーミック電極334は、アイランド304の結合抵抗Rcの一方のnオーミック電極337に接続されている。
【0079】
アイランド304の結合抵抗Rcの他方のnオーミック電極338は、シフトサイリスタT(2)のnゲートGn電極であるnオーミック電極(符号なし)に接続されている。アイランド304の電源線抵抗Rgの他方の電極であるnオーミック電極339は、電源電位VGKが供給される電源線71に接続されている。
【0080】
アイランド305のスタート抵抗Rsの一方のnオーミック電極(符号なし)は、シフト信号線72-2に接続されている。アイランド305の電源線抵抗Rgの他方のnオーミック電極(符号なし)は、電源線71に接続されている。シフト信号線72-2は、アイランド307に設けられた電流制限抵抗R2を介してシフト信号p2(φ2)が供給されるφ2端子に接続されている。
【0081】
なお、シフト信号線72-1は、奇数番号のシフトサイリスタTのアノードA電極であるpオーミック電極に接続され、シフト信号線72-2は、偶数番号のシフトサイリスタTのアノードA電極であるpオーミック電極に接続されている。
【0082】
他のシフトサイリスタT、結合トランジスタQ、発光制御サイリスタS、及びVCSELは、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)、発光制御サイリスタS(1)及びVCSEL(1)と同様に構成されている。
【0083】
アイランド300の露出したn型の半導体層85のnオーミック電極338は、制御電位VCが供給されるVC端子である。なお、制御電位VCは、nオーミック電極338を介してn型の半導体層85、トンネル接合層84及びp型の半導体層83に供給される。よって、p型の半導体層83を制御電位層73と表記する。なお、p型の半導体層83と同電位であるn型の半導体層85、トンネル接合層84を含めて制御電位層73としてもよい。そして、n型の半導体基板80の裏面に設けられた裏面電極を基板電極75と表記する。基板電極75は、基板電位VKが供給されるVK端子である。
【0084】
図5(b)に示すように、シフトサイリスタT、結合トランジスタQ、電源線抵抗Rg、結合抵抗Rc、スタート抵抗Rs、電流制限抵抗RL、R1、R2で構成されるシフト部12は、VCSELが構成される積層半導体層(n型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83)上に設けられている。シフト部12の下部の積層半導体層(n型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83)は、VCSELとして機能させない。つまり、VCSELが構成される積層半導体層(n型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83)を除去することなく、その上に、n型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、p型の半導体層88が積層されて、シフト部12が構成されている。このようにすることで、製造プロセスが複雑になることが抑制される。ここでは、シフト部12がその上に設けられる積層半導体層を、VCSEL(発光素子)と等価な構造体と表記する。
【0085】
以上説明したように、光源10は、ひとつの半導体基板(n型の半導体基板80)に設けられた半導体部品である。
【0086】
(発光装置1の発光パルス波形)
シフト部12を備えた発光装置1の場合と、シフト部12を備えない発光装置(不図示)の場合とにおける発光パルスの波形(以下、発光パルス波形と表記する。)について説明する。シフト部12を備えた発光装置1では、前述したように、制御電位V
Cを接地電位GND(0V)に設定している。なお、シフト部12を備えない発光装置は、
図3、
図4(a)、(b)において、直列接続された発光制御サイリスタSとVCSELとのみを備え、外部からの信号により、発光させるVCSELに接続された発光制御サイリスタSが制御される。
【0087】
図6は、発光装置1におけるVCSELの発光パルス波形である。
図6(a)、(b)は、シフト部12を備えた発光装置1におけるVCSELの発光パルス波形、
図6(c)は、シフト部を備えない発光装置(不図示)におけるVCSELの発光パルス波形である。
図6(a)、(b)、(c)において、左側に発光パルス波形を、右側に発光パルス波形の模式図を示している。左側に示した発光パルス波形において、横軸は時間で一目盛りが5ns、縦軸は光強度(a.u.)である。
【0088】
図6(c)に示すシフト部を備えない発光装置におけるVCSELの発光パルス波形は、右側の模式図に示すように、立ち上がり及び立ち下がりの傾きが一定である。
【0089】
これに対して、
図6(a)に示す発光パルス波形は、右側の模式図に示すように、立ち下がり部分において傾きが変化している。つまり、立ち下がり部分は、傾きが異なる2つの部分を有している。矢印δで示す部分は、矢印γで示す部分より傾きが緩やかである。ここでは、矢印δで示す部分を、肩(ショルダ)と呼ぶ。発光パルス波形の立ち下がり部分に肩(ショルダ)を有すると、肩(ショルダ)を有しない場合(
図6(c)の場合)に比べ、立ち下がり時間が長くなる。
【0090】
また、
図6(b)に示す発光パルス波形は、右側の模式図に示すように、矢印εで示す一つ目のピークに加え、一つ目のピークの立ち下がり部分において矢印ζで示す二つ目のピークを有している。つまり、発光パルス波形の立ち下がり部分に二つ目のピークを有すると、二つ目のピークを有しない場合(
図6(c)の場合)に比べ、立ち下がり時間が長くなる。
【0091】
次に、シフト部12を有する発光装置1において、制御電位V
Cが接地電位GND(0V)に設定された場合に、発光パルス波形の立ち下がり部分に肩(ショルダ)や二つ目のピークを有する理由について説明する。
図7は、光源10の拡大断面図、及び拡大断面図で示された部分の等価回路である。
図7(a)は、拡大断面図、
図7(b)は、拡大断面図で示された部分の等価回路である。
図7(a)では、pn接合を示すために、n型の半導体基板80をn、発光部11において、VCSELにおけるn型の半導体層81をVCSEL nとし、VCSELにおけるp型の半導体層83をVCSEL pと示し、VCSEL上に発光制御サイリスタSを示している。なお、活性層82及びトンネル接合層84の記載を省略している。
【0092】
また、シフト部12において、n型の半導体層81をnとし、p型の半導体層83をpと示している。そして、p型の半導体層83上にシフトサイリスタT、結合トランジスタQをシフト部12として示している。なお、活性層82及びトンネル接合層84の記載を省略している。
【0093】
図5(a)に示したように、制御電位V
Cが供給されるV
C端子は、シフトサイリスタT、結合トランジスタQを構成するn型の半導体層85に接続されている。しかし、前述したように、n型の半導体層85は、トンネル接合層84を介してp型の半導体層83上に設けられている。トンネル接合層84は、n型の半導体層85とp型の半導体層83とが逆バイアスにならないように設けられている。よって、n型の半導体層85とp型の半導体層83とは、同電位になる。そこで、
図7(a)では、V
C端子は、p型の半導体層83に接続されているとして記載している。前述したように、p型の半導体層83が制御電位層73である。
【0094】
そして、ドライバDrv2におけるNMOSトランジスタのドレインは、n型の半導体基板80の裏面に設けられた基板電極75に接続されている。NMOSトランジスタのソースは、接地電位GND(0V)に設定されている。よって、基板電極75には、基板電位VKが供給される。
【0095】
ドライバDrv2がオンであると、発光電位V
LD(7V)から発光制御サイリスタSとVCSELとを介してドライバDrv2に向けて電流が流れる。このとき、基板電位V
Kは、発光部11における内部抵抗(
図7(b)に示す抵抗Rv)により、例えば2V程度(~2Vと表記する。)になる。
【0096】
シフト部12において、VC端子は接地電位GND(0V)に設定されている。このため、シフト部12におけるn型の半導体層81(~2V)とp型の半導体層83(0V)とのpn接合が逆バイアスになる。つまり、n型の半導体層81とp型の半導体層83との間のpn接合が容量を構成し、電荷を蓄積する。シフト部12におけるn型の半導体層81とp型の半導体層83との間のpn接合が構成する容量が容量部13である。VC端子の制御電位VCは、容量を構成するp型の半導体層83の電位である。なお、n型の半導体層81は、n型の半導体基板80上に設けられており、n型の半導体基板80と同電位である。n型の半導体基板80の裏面電極である基板電極75は、基板電位VKとなる。n型の半導体基板80、n型の半導体層81は、基板電位VKとなる。よって、n型の半導体層81とp型の半導体層83との間のpn接合が構成する容量に、制御電位VCと基板電位VKとの差電圧が印加されている。
【0097】
図7(b)に示す等価回路では、発光部11は、直列接続されたVCSEL、発光制御サイリスタS及び内部抵抗Rvと、容量C
1との並列接続で表される。
図3に示したように、発光部11は、直列接続されたVCSELと発光制御サイリスタSが複数並列に接続されて構成されている。よって、発光させるVCSEL(と発光制御サイリスタSとの直列接続)以外の直列接続されたVCSELと発光制御サイリスタSは、発光させるVCSEL(と発光制御サイリスタSとの直列接続)に並列に接続された容量C
1となる。また、内部抵抗Rvは、直列接続されたVCSELと発光制御サイリスタSとを流れる電流に対する抵抗である。つまり、内部抵抗Rvは、VCSELと発光制御サイリスタSとの内部に含まれる抵抗であって、外付けで設けられている抵抗ではない。例えば、内部抵抗Rvは、VCSELの電流通過部αが小さく(狭く)なると大きくなる。また、分割照射において、照射区画210の数が多くなって、同時に発光させるVCSELの数が少なくなると大きくなる。なお、
図7(b)において、VCSELと内部抵抗Rvとの接続点の電位を内部電位V
Rとする。容量C
1が第1の容量の一例である。
【0098】
一方、容量部13は、上述したように、n型の半導体層81とp型の半導体層83とで構成されるpn接合(
図7(b)ではダイオードの記号で示す。)による容量C
2とpn接合との並列接続で表される。容量C
2が第2の容量の一例である。
【0099】
なお、シフト部12は、表記を簡単にするために、シフトサイリスタTのみを示している。発光パルス波形には、シフト部12は関係しない。以下では、シフト部12の記載を省略する。
【0100】
図7(a)に示すように、容量部13の容量C
2は、シフト部12の下部に設けられている。よって、光源10において、シフト部12の占める面積が大きくなると、容量C
2が大きくなる。一例として示した、
図5(a)のレイアウト図から分かるように、シフト部12の占める面積は、発光部11に比べて小さくない。つまり、シフト部12の容量C
2は、発光部11の容量C
1に比べて小さくなく、発光パルス波形に影響を与える。
【0101】
光源10は、ひとつの半導体基板(n型の半導体基板80)上に設けられている。つまり、発光部11と容量部13とは、n型の半導体基板80と基板電極75とによって接続されている。発光部11と容量部13との間の抵抗は、n型の半導体基板80及び基板電極75の面積で決まる。なお、容量部13は、発光部11と別に設けられてもよい。この場合、発光部11と容量部13とは、配線で接続される。つまり、ひとつの半導体基板(n型の半導体基板80)上に発光部11と容量部13とが設けられていると、発光部11と容量部13との間の抵抗を、配線で接続する場合に比べ抑えられる。
【0102】
次に、容量部13の発光パルス波形に及ぼす影響を説明する。
図8は、発光装置1において、容量部13が発光パルス波形に及ぼす影響を説明する図である。
図8(a)は、ドライバDrv2がオンである場合、
図8(b)は、ドライバDrv2をオンからオフに移行させた場合、
図8(c)は、ドライバDrv2がオフである場合、
図8(d)は、ドライバDrv2をオフからオンに移行させた場合である。ここでは、発光電位V
LDは7Vとする。そして、制御電位V
Cは接地電位GND(0V)に固定されているとする。
図8(a)、(b)、(c)、(d)において、ドライバDrv2のオンをON、オフをOFFと表記する。以下同様である。また、発光電流の経路を破線で示す。
【0103】
図8(a)に示す、ドライバDrv2がオンである場合、発光制御サイリスタSがオン状態で、VCSELが発光する。つまり、発光電位V
LD(7V)が供給されるV
LD端子から、発光制御サイリスタS、VCSEL、内部抵抗Rv、及びドライバDrv2を経由してGNDに向けて発光電流が流れる。ここでは、順方向電圧Vdを1.5Vとしている。よって、オン状態の発光制御サイリスタSに印加される電圧が1.5V、発光しているVCSELに印加される電圧が1.5Vとなる。よって、内部電位V
Rは、4Vになる。つまり、発光制御サイリスタSとVCSELとの直列接続に3Vが印加されている。このとき、基板電位V
Kは、2Vであるとする。内部抵抗Rvには、2Vが印加されている。
【0104】
図8(b)に示すように、ドライバDrv2をオンからオフに移行させると、直列接続された発光制御サイリスタS、VCSEL、及び内部抵抗Rvに流れていた発光電流は、容量C
1と容量C
2との並列容量と、内部抵抗Rvとで決まる時定数(C
1+C
2)×Rvで立ち下がる。そして、基板電位V
Kは、2Vから4Vへ向かって上昇する。基板電位V
Kが2Vから4Vへ向かって上昇する期間においては、発光制御サイリスタSとVCSELとの直列接続に3Vが印加されているので、発光制御サイリスタSがオン状態であり、VCSELが発光を継続する。
【0105】
図8(c)に示すように、ドライバDrv2がオフのとき、基板電位V
Kが4Vになると、発光制御サイリスタSがオン状態からオフ状態に移行し、VCSELが発光を停止(消光)する。つまり、VCSELが消光した状態になる。そして、基板電位V
Kの変化が停止する。このとき、内部電位V
Rは、基板電位V
Kと同じ4Vになる。
【0106】
図8(d)に示すように、ドライバDrv2をオフからオンに移行させると、容量C
1と容量C
2との並列容量と、ドライバDrv2のオン抵抗とで決まる時定数で発光電流が立ち上がる。ドライバDrv2のオン抵抗は、内部抵抗Rvに比べて小さい。よって、発光電流は、立ち下がりより短い時間で立ち上がる(速く立ち上がる)。そして、
図8(a)の状態に移行する。
【0107】
以上説明したように、発光装置1において、制御電位VCを接地電位GND(0V)に設定した場合、ドライバDrv2をオンからオフに移行させた際に、発光電流が、容量C1と容量C2との並列容量と、内部抵抗Rvとで決まる時定数(C1+C2)×Rvで立ち下がる。前述したように、容量C2は、容量C1に比べて小さくない。つまり、容量C1と容量C2とが並列接続された状態(並列接続状態と表記する。)になって発光電流が流れるため、立ち下がりに肩(ショルダ)や二つ目のピークを生じ、立ち下がり特性が劣化する。
【0108】
図9は、発光装置1における、第1の実施の形態が適用される動作を説明する図である。
図9(a)は、ドライバDrv2がオンである場合、
図9(b)は、ドライバDrv2をオンからオフに移行させた場合、
図9(c)は、ドライバDrv2がオフである場合、
図9(d)は、ドライバDrv2をオフからオンに移行させた場合である。ここでは、容量C
1を100pF、容量C
2を200pFとして説明する。
図9(a)、(b)、(d)において、発光電流を破線で、変位電流を実線で示す。
【0109】
第1の実施の形態では、制御電位V
CをドライバDrv2のオン及びオフに対応して異なる電位に制御する。
図9(a)に示すように、ドライバDrv2がオンである場合には、制御電位V
Cは、接地電位GND(0V)に設定されている。この状態は、
図8(a)に示した状態と同じである。つまり、発光制御サイリスタSがオン状態で、VCSELが発光する。発光電位V
LD(7V)が供給されるV
LD端子から、発光制御サイリスタS、VCSEL、内部抵抗Rv、及びドライバDrv2を経由してGNDに向けて発光電流が流れる。内部電位V
Rは4V、基板電位V
Kは2Vである。よって、100pFの容量C
1には5V(=7V-2V)が印加され、500pCの電荷量が蓄積される。200pFの容量C
2には2V(=2V-0V)が印加され、400pCの電荷量が蓄積される。
【0110】
図9(b)に示すように、ドライバDrv2をオンからオフに移行させる際に、制御電位V
Cを0Vから3.3Vに移行させる。すると、V
C端子が接地電位GND(0V)から3.3Vに急激に移行して、V
C端子からV
LD端子に向けて、電位差3.3Vに対応した変位電流が流れる。これにより、100pFの容量C
1は、500pCから280pCに、200pFの容量C
2は、400pCから180pCに向かって電荷量が変化し、基板電位V
Kは、4.2Vに向かって引き上げられる。同様に、内部電位V
Rも、4Vから4.2Vに向かって引き上げられる。内部電位V
Rが4Vを超えるとVCSELがオフする。つまり、内部電位V
Rが4Vを超えると、発光制御サイリスタSとVCSELとの直列接続に印加される電圧は、3V未満になる。このため、発光制御サイリスタSはオン状態を維持できずターンオフし、VCSELに流れる発光電流が強制的に切断される。これにより、発光パルスの立ち下がりの時間が、制御電位V
Cを0Vから3.3Vに移行させない場合に比べ短縮される(立ち下がりが速くなる)。つまり、発光パルス波形に対する容量C
2の影響が抑制される。なお、変位電流は、容量C
1と容量C
2とが直列接続された状態(直列接続状態)で流れる。制御電位V
Cを0Vから3.3Vに移行させる際とは、ドライバDrv2をオンからオフに移行させるタイミングであってよい。なお、制御電位V
Cを0Vから3.3Vに移行させる際とは、ドライバDrv2がオフになった後でもよく、立ち下がりの時間を短縮できればよい。
【0111】
図9(c)に示すドライバDrv2がオフであって、発光電流が流れなくなった状態において、制御電位V
Cを3.3Vに維持する。すると、容量C
1は、280pCの電荷量を蓄積した状態、容量C
2は、180pCの電荷量を蓄積した状態を維持する。そして、内部電位V
Rは、4.2Vを維持する。
【0112】
図9(d)に示すように、ドライバDrv2がオフからオンに移行させる際に、制御電位V
Cを3.3Vから0Vに設定する。すると、V
C端子が3.3Vから0Vに急激に移行する。これにより、V
LD端子からV
C端子に向けて、電位差3.3Vに対応した変位電流が流れて、容量C
1、C
2を充電する。すると、基板電位V
Kが4.2Vから急激に引き下げられる。このとき、オンになったドライバDrv2も容量C
1、C
2を充電する。つまり、容量C
1は、電荷量が280pCから500pCに向かって充電され、容量C
2は、電荷量が180pCから400pCに向かって充電される。そして、基板電位V
Kが4V以下に引き下げられると、発光制御サイリスタSがターンオンして、直列接続された発光制御サイリスタSとVCSELとに電流が流れ始めて、VCSELが発光を開始する。この場合であっても、制御電位V
Cを3.3Vから0Vに移行させたことによる変位電流により、容量C
1、C
2の充電が補助されるので、VCSELの発光開始までの遅延時間が短縮される。つまり、発光パルスの立ち上がりの時間が、制御電位V
Cを0Vから3.3Vに移行させない場合に比べ短縮される(立ち上がりが速くなる)。つまり、発光パルス波形に対する容量C
2の影響が抑制される。ここでも、変位電流は、容量C
1と容量C
2とが直列接続された状態(直列接続状態と表記する。)で流れる。制御電位V
Cを3.3Vから0Vに移行させる際とは、ドライバDrv2をオフからオンに移行させるタイミングであってよい。なお、制御電位V
Cを3.3Vから0Vに移行させる際とは、ドライバDrv2がオンになった後でもよく、立ち上がりの時間を短縮できればよい。
【0113】
そして、
図9(a)に戻って、ドライバDrv2により、容量C
1、C
2が充電されて基板電位V
Kが2Vになると、発光電流は、定常値になる。
【0114】
図10は、制御電位V
Cの電位を異ならせる制御を一般化して説明する図である。
図10(a)は、ドライバDrv2がオンである場合、
図10(b)は、ドライバDrv2をオンからオフに移行させた場合である。なお、発光電流を破線で、変位電流を実線で示す。また、容量C
1、C
2に付記した“+”は、+の電荷が蓄積されている場合、電荷が+であることを意味する。
【0115】
図10(a)のドライバDrv2がオンである場合を説明する。ここでは、発光制御サイリスタSがターンオンし、VCSELが発光している。よって、V
LD端子からGNDに向かって、発光電流が流れている。ここで、基板電位V
Kは、VCSELがオン状態であるとして、V
onとする。このとき、制御電位V
Cは、電位V
Lであるとする。すると、容量C
1の蓄積する電荷量Q
1と、容量C
2の蓄積する電荷量Q
2とは、数1に示すようになる。以下では、容量C
1の容量値をC
1と表記し、容量C
2の容量値をC
2と表記する。
【0116】
【0117】
次に、
図10(b)のドライバDrv2をオンからオフに移行させた場合を説明する。ドライバDrv2をオンからオフに移行させるとともに、制御電位V
Cを電位V
Lから電位V
Hに移行させる。なお、電位V
Hは、電位V
Lより大きい電位である。これは、n型の半導体基板80を用いた場合であって、p型の半導体基板を用いる場合には、極性が逆になる。つまり、電位V
Hは、電位V
Lより絶対値において大きい電位である。
【0118】
ドライバDrv2をオンからオフに移行させ、制御電位VCを電位VLから電位VHに移行させると、制御電位VCの電位差(VH-VL)による変位電流が容量C1と容量C2とを直列とした状態で流れる。そして、数2に示すように、基板電位VKは、基板電位VK′に、容量C1の電荷量Q1が電荷量Q1′に、容量C2の電荷量Q2が電荷量Q2′になる。そして、数1と数2とから基板電位VK′は、数3に示すようになる。なお、電荷量QDは、変位電流によって移行する電荷量である。
【0119】
【0120】
【0121】
発光制御サイリスタSとVCSELとの直列接続に印加されている電圧(発光電位VLD-基板電位VK′)がそれぞれの順方向電圧Vd(例えば、1.5V)の和(3V)未満になると、発光制御サイリスタSがターンオフして発光電流が遮断されて発光が停止する(消光する)。
【0122】
基板電位VK′を大きくすれば、発光制御サイリスタSが速やかにターンオフして発光が停止しやすくなる。数3から分かるように、基板電位VK′を大きくするには、容量C2を大きくするか、制御電位VCに設定する電位VHを大きくすればよい。なお、容量C2はシフト部12の下部に構成されるpn接合で構成されているとしたが、容量C2を大きくするには、容量C2と並列に外付けの容量を付加してもよい。
【0123】
図11は、容量C
1に対する容量C
2の比と、ドライバDrv2がオフになった際の基板電位V
K′との関係を説明する図である。
図11(a)は、ドライバDrv2がオンのときの基板電位V
K(V
on)が2Vの場合、
図11(b)は、ドライバDrv2がオンのときの基板電位V
K(V
on)が1Vの場合である。
図11(a)、(b)において、横軸は容量比C
2/C
1であり、縦軸はドライバDrv2がオフになったときの基板電位V
K′(V)である。なお、制御電位V
Cの電位V
Lを接地電位GND(0V)、電位V
Hを3.3Vとする。
【0124】
図11(a)に示す、ドライバDrv2がオンのときの基板電位V
K(V
on)を2Vとした場合、ドライバDrv2がオフにおける基板電位V
K′は、容量C
2が0の場合のV
on(2V)から、容量比C
2/C
1が大きくなるとともに、V
on+V
H-V
L(5.3V)に漸近して大きくなる。そして、容量比C
2/C
1が2のとき、基板電位V
K′は4.2Vになる。このとき、直列接続された発光制御サイリスタSとVCSELとに印加される電圧であるV
LD-V
K′は2.8Vになり、VCSELの発光が止まる(消光する)。前述したように、基板電位V
K′を4V以上とすれば、VCSELの発光を停止させられる(消光させられる)。
【0125】
図11(b)に示す、ドライバDrv2がオンのときの基板電位V
K(V
on)を1Vとした場合、ドライバDrv2がオフにおける基板電位V
K′は、容量C
2が0の場合のV
on(1V)から、容量比C
2/C
1が大きくなるとともに、V
on+V
H-V
L(4.3V)に漸近して大きくなる。しかし、容量比C
2/C
1を10としても、基板電位V
K′は4Vに到達しない。容量比C
2/C
1を10とした場合に、VCSELの発光を止めるには、制御電位V
Cとして設定する電位V
Hを3.3Vより高くすることが求められる。
【0126】
以上説明したように、ドライバDrv2がオフのときの基板電位V
K′が大きいほど、発光制御サイリスタSが速やかにターンオフして発光が停止させやすくなる。このためには、制御電位V
Cに設定する電位V
Hを大きくするか、容量C
2を大きくすればよい。しかし、容量C
2を大きくし過ぎると、充電及び放電に時間がかかる。このため、
図11(a)に示すように、ドライバDrv2がオンのときの基板電位V
K(V
on)と、ドライバDrv2がオフのときの基板電位V
K′との差が大きく、且つ容量比C
2/C
1が小さい容量C
2を選ぶことが好ましい。
図11(a)に示すように、基板電位V
K′の大きな変化がみられる、容量比C
2/C
1が1以上(1倍以上)であることが好ましい。容量比C
2/C
1が1未満である場合に比べ、VCSELをオフ状態にする電圧にしやすい。さらに、容量C
2が大きくなりすぎないように、容量比C
2/C
1が4以下(4倍以下)であることがさらに好ましい。容量比C
2/C
1が4を超える場合に比べて、充電及び放電の時間が短縮される。
【0127】
ここでは、制御電位V
Cを電位V
Lと電位V
Hとに制御するドライバDrv1(
図1参照)の内部抵抗Rd(抵抗値Rd)(不図示)が十分小さいとする。つまり、数4を満たすように、内部抵抗Rdは、V
C端子から容量C
1と容量C
2とを直列に流れる電流の時定数Rd×C
1C
2/(C
1+C
2)が、発光電流が容量C
1と容量C
2とを並列に流れる場合(
図8(b)参照)の時定数Rv×(C
1+C
2)より小さく設定されているとする。これにより、制御電位V
Cを制御することによる変位電流は、発光電流が容量C
1と容量C
2とに並列に流れて立ち下がる場合(
図8(b)の場合)より速やかに流れる。よって、基板電位V
Kが、速やかに基板電位V
K′に引き上げられる。これにより、発光パルスの立ち下がりの時間が短縮される(立下りが速くなる)。
【0128】
【0129】
ここでは、ドライバDrv2をオンにする際に制御電位VCを電位VL(一例として、0V)に設定し、ドライバDrv2のオフにする際に制御電位VCを電位VH(一例として、3.3V)に設定した。電位VL、VHは、容量部13のpn接合を順バイアスにしない電位であるとよい。容量部13のpn接合が順バイアスになると、電流が流れて消費電力が増加する。また、電位VHは、電位VLより絶対値において大きい電位であるとした。電位VHが電位VLより絶対値において小さい電位であると、ドライバDrv2をオフにする際に容量C1、C2の電荷量が増加し、基板電位VKが低下し、発光パルスの立ち下がりの時間が逆に長くなってしまう。
【0130】
(比較例としての発光装置2)
第1の実施の形態が適用される発光装置1では、ドライバDrv2のドライバ素子がNMOSであった。このため、制御電位VCを接地電位GND(0V)に固定しておくと、ドライバDrv2をオフにした際に、発光電流が容量C1とC2とに並列に流れた。このため、発光電流の立ち下がりの時定数が大きくなっていた。そこで、ドライバDrv2のドライバ素子を、NMOSトランジスタとPMOSトランジスタとを組み合わせた相補型(CMOS構成)のドライバ素子に置き換えたドライバDrv2′とすることが考えられる。つまり、NMOSトランジスタがオフであっても、PMOSトランジスタを介して基板電位VKを引き上げられるようにする。
【0131】
図12は、比較のために示す発光装置2の等価回路である。発光装置2は、
図3に示した発光装置1の制御部50におけるドライバDrv1を備えず、V
C端子は、接地されている。さらに、
図3に示した発光装置1の駆動部60におけるドライバDrv2のドライバ素子であるNMOSトランジスタをCMOS構成に置き換えたドライバDrv2′を備える。ドライバDrv2′のNMOSトランジスタのソースは接地され、PMOSトランジスタのドレインは、発光電位V
LDに接続されている。そして、NMOSトランジスタのドレインとPMOSトランジスタのドレインとが接続され、発光電流制限抵抗RIを介して、基板電位V
Kを供給するV
K端子に接続されている。そして、NMOSトランジスタのゲートとPMOSトランジスタのゲートとが接続されて、発光信号pIが供給される。発光信号pIが「L」(0V)であると、NMOSトランジスタがOFF、PMOSトランジスタがONになり、NMOSトランジスタのドレインとPMOSトランジスタのドレインとの接続点は、発光電位V
LDになる。一方、発光信号pIが「H」(5V)であると、NMOSトランジスタがON、PMOSトランジスタがOFFになり、NMOSトランジスタのドレインとPMOSトランジスタのドレインとの接続点は、接地電位GND(0V)になる。他の構成は、発光装置1と同様である。
【0132】
図13は、比較のための発光装置2において、ドライバDrv2′をオンからオフに移行させた場合を説明する図である。
図13は、
図10(b)に対応する。
図13において、発光電流を破線で示している。
【0133】
前述したように、ドライバDrv2′のPMOSトランジスタのソースは、VLD端子に接続されている。発光信号pIが「H」(5V)から「L」(0V)に移行すると、ドライバDrv2′のNMOSトランジスタがオフになり、PMOSトランジスタがオンになる。すると、PMOSトランジスタを介して、容量C1と容量C2とに並列に電流が流れる。これにより、基板電位VKが発光電位VLDに引き上げられる。よって、発光パルスが速やかに立ち下がる。つまり、ドライバDrv2′をCMOS構成にすることで、発光パルスの立ち下がりの時間が短縮される(立ち下がりが速くなる)。
【0134】
このとき、移動する電荷量QCとすると、電荷量QCは、数5で示すように容量C1と容量C2とに並列に電荷が移動する。この電荷移動により消費される電力Eは、数6に示すようになる。なお、Cは(C1+C2)、Vは(VLD-Von)である。
【0135】
【0136】
【0137】
ここで、VLDを7V、Vonを2V、C1を200pF、C2を120pFとし、光パルスのパルス幅を5ns、デューティを5%とした場合、100nsに2回電力が消費される。よって、消費される電力Eは、(200pF+100pF)×(7V-2V)2/2×2/100nsで計算され、0.08Wとなる。一方、発光電流を1Aとすると、発光のために消費される電力は、7V×1A×5%で計算され、0.35Wとなる。つまり、容量C1、C2の充放電に消費される電力Eは、発光のために消費される電力の20%以上と大きい。これは、容量C1、C2に並列に電流が流れることによる。つまり、容量C1、C2の並列容量はC1+C2になり、上記の場合320pFとなる。
【0138】
一方、制御電位V
Cを異なる電位に制御する第1の実施の形態では、
図9(b)に示したように、容量C
1と容量C
2とは、直列に見える。よって、直列容量がC
1C
2/(C
1+C
2)になり、上記の場合75pFとなる。よって、第1の実施の形態における容量C
1、C
2の充放電により消費される電力Pは、75pF×(3.3V)
2/2×2/100nsで計算され、0.00817Wとなる。つまり、制御電位V
Cを異なる値に制御する第1の実施の形態における充放電により消費される電力Pは、ドライバDrv2′をCMOS構成とした場合に充放電により消費される電力Eに比べ、1/10程度になる。
【0139】
なお、ドライバDrv2′をCMOS構成とすれば、制御電位V
Cを異なる電位に制御するドライバDrv1(
図3参照)を要しない。また、基板電位V
Kを発光電位V
LDに引き上げやすい。しかし、基板電位V
Kが発光電位V
LDに引き上げられると、発光部11が逆バイアスになり、発光制御サイリスタSとVCSELとに蓄積された電荷が逃げにくくなる。このため、メモリ効果が維持されつづけるおそれがある。よって、ドライバDrv2′をCMOS構成とした場合には、メモリ効果を消去する消去手段が必要になる。
【0140】
一方、制御電位VCを異なる電位に制御する第1の実施の形態では、容量C1、C2の充放電に消費される電力が抑制されるとともに、設定する制御電位VCにより、メモリ効果を消去することを可能とできる。
【0141】
(第1の実施の形態が適用される計測フローチャート)
次に、第1の実施の形態が適用される計測フローチャートについて説明する。
図14は、第1の実施の形態が適用される計測フローチャートである。
図14(a)は、フローチャート、
図14(b)は、制御電位V
Cの制御を説明する図である。
図14(a)では、シフト部12のオンをONと、オフをOFFと表記する。以下同様とする。
【0142】
まず、
図14(b)に示す、制御部50による制御電位V
Cの制御について説明する。制御電位V
Cは、発光信号pIの変化、つまり発光パルスに対応して制御される。つまり、発光信号pIが「L」(0V)から「H」(5V)に移行する際(タイミング)において、制御電位V
Cを電位V
H(例えば、3.3V)から電位V
L(例えば、0V)に移行させる。これにより、
図9(d)に示したように、変位電流が容量C
1と容量C
2を直列に流れ、基板電位V
Kを引き下げて発光パルスの立ち上がりの時間を短縮する。そして、発光信号pIが「H」(5V)から「L」(0V)に移行する際(タイミング)において、制御電位V
Cを電位V
L(例えば、0V)から電位V
H(例えば、3.3V)に移行させる。これにより、
図9(b)に示したように、変位電流が容量C
2と容量C
1を直列に流れ、基板電位V
Kを引き上げて発光パルスの立ち下がりの時間を短縮する。このように、発光パルスの立ち上がり及び立ち下がりと、制御電位V
Cを異ならせる制御のタイミングとを対応させると、電位の設定が容易になる。
【0143】
なお、前述したように、制御電位V
Cを電位V
H(例えば、3.3V)から電位V
L(例えば、0V)に移行させるタイミングは、発光信号pIが「L」(0V)から「H」(5V)に移行する際(タイミング)でなくともよく、発光信号pIが「L」(0V)から「H」(5V)に移行した後でもよい。制御電位V
Cを電位V
L(例えば、0V)から電位V
H(例えば、3.3V)に移行させるタイミングは、発光信号pIが「H」(5V)から「L」(0V)に移行する際(タイミング)でなくともよく、発光信号pIが「H」(5V)から「L」(0V)に移行した後でもよい。つまり、
図14(b)に破線で示すように、制御電位V
Cの変化が、発光信号pIの変化より遅れて生じてもよい。
【0144】
図14(a)により、発光装置1における第1の実施の形態が適用される動作を説明する。なお、発光装置1を動作させるフローは複数ある。まず、左側のフローを説明する。
ステップ10(
図14(a)では、S10と表記する。他も同様である。)において、制御部50は、シフト部12をオンにする。つまり、発光装置1を、前述した初期状態に設定する。このとき、制御電位V
Cは、接地電位GND(0V)に設定する(V
L=0V)。ステップ11において、制御部50は、シフト部12を動作させて、発光させるVCSELを選択する。
【0145】
ステップ12において、駆動部60は、選択したVCSELを発光させる。このとき、制御部50は、制御電位VCを、0Vとする。この発光により、メモリ効果が発現する。なお、この発光は計測に用いないため、予備発光と表記する。
【0146】
ステップ13において、制御部50は、シフト部12をオフにする。前述したように、例えば、シフト信号p1、p2を「L」(0V)にする。これにより、シフトサイリスタT、結合トランジスタQに電流が流れないため、シフト部12の消費電力が抑制される。
【0147】
ステップ14において、駆動部60は、ドライバDrv2をオン、オフさせて、VCSELから複数の発光パルスを連続して発生させる(連続発光パルス)。各発光パルスに対する被計測物からの反射光が3Dセンサ5(
図1参照)で受光され、各発光パルスに対応した電荷が3Dセンサ5内の容量(キャパシタ)に蓄積される。連続発光パルスにより蓄積された電荷から、被計測物までの距離が計測される。このとき、
図14(b)に示したように、制御部50は、VCSELの発光に対応して制御電位V
Cを制御する。なお、複数の発光パルスを連続して発生させている期間を発光時とする。つまり、制御部50は、シフト部12がシフト動作を行うシフト期間(選択時)においては、制御電位V
Cを接地電位GND(0V)に設定し、発光時のある一時期には制御電位V
Cをシフト期間(選択時)と同じV
L(接地電位GND(0V))に設定し、発光時の他の時期にはシフト期間(選択時)と異なる電位V
H(3.3V)に設定する。
【0148】
なお、ステップ13を行わなくてもよい。つまり、制御部50は、シフト部12をオフにしなくてもよい。シフト信号p1又はシフト信号p2を「H」(5V)に維持しても、VCSELは、メモリ効果により連続発光パルスを発生する。
【0149】
ステップ15において、制御部50は、次のVCSELを発光させるか否かを判定する。次のVCSELを発光させると判定された場合(Yesの場合)には、ステップ10に戻って、発光装置1を初期状態にし、シフト部12をONにする。その後は、上述したフローにしたがって計測を行う。シフト部12は、一旦オフにされると、オフにされる前に選択したVCSELの情報を失ってしまう。そこで、次のVCSELを発光させる場合には、発光装置1を初期状態にし、シフト動作をシフトサイリスタT(1)からやり直して、次に発光させるVCSELを選択する。
【0150】
ステップ15において、次のVCSELを発光させないと判定された場合(Noの場合)には、ステップ16の計測終了になる。
【0151】
次に右側のフローを説明する。
ステップ17とステップ19とは、分けて記載しているが、連続したステップである。ステップ14と同様に、駆動部60は、ドライバDrv2をオン、オフさせて、VCSELから連続発光パルスを発生させ、被計測物までの距離を計測する。このとき、
図14(b)に示したように、制御部50は、VCSELの発光に対応して制御電位V
Cを制御する。この場合であっても、VCSELを一度発光させるとメモリ効果が発現する。よって、VCSELにより、連続発光パルスが発生させられる。
【0152】
そして、ステップ18において、制御部50は、ステップ17によるVCSELの発光後、速やかにシフト部12をオフにする。ステップ17においてVCSELが発光すると、メモリ効果が発現するので、ステップ17によるVCSELの発光後速やかにシフト部12をオフにすることがよい。
その後、前述したステップ15以降が実行される。
【0153】
なお、複数の発光パルスを連続して発生させる場合、最初の光パルスは、それに引き続く光パルスに比べ、ピークが低いなど、発光パルス波形が他の発光パルスと異なることがある。このような場合には、ステップ12のように、最初の発光パルスを予備発光として、計測に使用しないことがよい。最初の発光パルス波形が、他の発光パルス波形と差がない又は少ない場合には、ステップ17のように、最初の発光パルスから計測に用いてもよい。
【0154】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、制御部50は、制御電位VCを異なる電位(電位VLと電位VH)に制御した。第2の実施の形態では、制御部50は、一方の電位を特定の電位とせず、浮遊状態にする。なお、浮遊状態は、フロート(フロート状態)又はフローティング(フローティング状態)と呼ばれることがある。ここでは、浮遊状態の電位を、「Hi-Z」と表記する。
【0155】
図15は、第2の実施の形態が適用される発光装置3の等価回路である。発光装置3は、
図3に示した発光装置1の制御部50におけるドライバDrv1の代わりにドライバDrv1′を備える。ドライバDrv1′は、例えば、NMOSトランジスタをドライバ素子としている。他の構成は、発光装置1と同様である。
【0156】
ドライバDrv1′のNMOSトランジスタのソースは、接地され、ドレインは、制御電位VCの供給される端子VC端子に接続されている。ドライバDrv1′のゲートには、「H」(5V)と「L」(0V)とになる制御信号pcが供給される。制御信号pcが「H」(5V)のとき、ドライバDrv1′はONになり、制御電位VCが接地電位GND(0V)になり、制御信号pcが「L」(0V)のとき、ドライバDrv1′はOFFになり、制御電位VCが浮遊状態(Hi-Z)になる。
【0157】
図16は、発光装置3における、第2の実施の形態が適用される動作を説明する図である。
図16(a)は、ドライバDrv2がオンである場合、
図16(b)は、ドライバDrv2をオンからオフに移行させた場合、
図16(c)は、ドライバDrv2がオフである場合、
図16(d)は、ドライバDrv2をオフからオンに移行させた場合である。ここでは、発光電位V
LDは7Vであるとする。発光電流の経路を破線で示す。
【0158】
図16(a)に示す、ドライバDrv2がオンである場合とは、シフト部12を動作させて発光させたVCSELを選択した直後であるとする。このため、制御電位V
Cは、接地電位GND(0V)になっている。つまり、
図8(a)と同じである。
【0159】
図16(b)に示すように、ドライバDrv2をオンからオフに移行させる際に、制御電位V
Cを0Vから浮遊電位(Hi-Z)に設定する。すると、直列接続された発光制御サイリスタS、VCSEL、及び内部抵抗Rvに流れていた発光電流は、容量C
2に流れることが阻止され、容量C
1に向けて流れる。つまり、発光電流は、容量C
1と、内部抵抗Rvとで決まる時定数C
1×Rvで立ち下がる。この時定数は、
図8(b)に示した、制御電位V
Cが接地電位GND(0V)に設定されていた場合の時定数(C
1+C
2)×Rvに比べ小さい。よって、制御電位V
Cを浮遊電位(Hi-Z)に設定すると、制御電位V
Cを接地電位GND(0V)に設定する場合に比べ、発光パルスの立ち下がりの時間が短縮される(立ち下がりが速くなる)。
【0160】
図16(c)に示すように、ドライバDrv2がオフのとき、基板電位V
Kが4Vになると、発光制御サイリスタSがオン状態からオフ状態に移行し、VCSELが発光を停止(消光)する。この状態は、
図8(c)と同様であるが、制御電位V
Cは、浮遊電位(Hi-Z)に維持されている。
【0161】
図16(d)に示すように、ドライバDrv2をオフからオンに移行させる。このとき、制御電位V
Cは、浮遊電位(Hi-Z)に維持されている。すると、容量C
1と、ドライバDrv2のオン抵抗とで決まる時定数で発光電流が立ち上がる。ドライバDrv2のオン抵抗は、内部抵抗Rvに比べて小さい。よって、発光電流は、立ち下がりより速く立ち上がる。
この後は、
図16(b)に戻る。つまり、VCSELが連続した複数の発光パルスを発生する間において、制御電位V
Cは、浮遊電位(Hi-Z)に設定されている。
【0162】
以上説明したように、ドライバDrv2をオンからオフに移行させる際に、制御電位VCを接地電位GND(0V)から浮遊電位(Hi-Z)に移行することで、発光電流の立ち下がりの時間が短縮される(立ち下がりが速くなる)。つまり、発光パルス波形に対する容量C2の影響が抑制される。
【0163】
図17は、発光装置3におけるVCSELの発光パルス波形である。
図17(a)は、ドライバDrv2をオフにする際に、制御電位V
Cを接地電位GND(0V)に維持した場合、
図17(b)は、ドライバDrv2をオフにする際に、制御電位V
Cを浮遊電位(Hi-Z)に設定した場合である。
図6(a)、(b)、(c)と同様に、横軸は時間で一目盛りが5ns、縦軸は光強度(a.u.)である。
【0164】
図17(a)に示す、制御電位V
Cを接地電位GND(0V)に設定した場合には、
図6(a)と同様に、発光パルスの立ち下がりに肩(ショルダ)が見られる(矢印δで示す部分)。一方、
図17(b)に示す、制御電位V
Cを浮遊電位(Hi-Z)に設定した場合には、発光パルスの立ち下がりに肩(ショルダ)が見られない。つまり、ドライバDrv2をオフにする際に、制御電位V
Cを浮遊電位(Hi-Z)に設定することで、発光パルスの立ち下がりの時間が短縮される(立ち下がりが速くなる)。
【0165】
(第2の実施の形態が適用される計測フローチャート)
次に、第2の実施の形態が適用される計測フローチャートについて説明する。
図18は、第2の実施の形態が適用される計測フローチャートである。
【0166】
発光装置3を動作させるフローは複数ある。左側のフローを説明する。
ステップ20において、制御部50は、シフト部12をオンにする。つまり、発光装置1を、前述した初期状態に設定する。このとき、制御電位V
Cを、接地電位GND(0V)に設定する(V
L=0V)。ステップ21において、制御部50は、シフト部12を動作させて、発光させるVCSELを選択する。ステップ20、21は、
図14(a)のステップ10、11と同じである。
【0167】
ステップ22において、駆動部60は、選択したVCSELを発光させる。このとき、制御電位V
Cは、0Vである。この発光により、メモリ効果が発現する。この発光は、計測に用いないため、予備発光と表記する。ステップ22は、
図14(a)のステップ12と同じである。
【0168】
ステップ23において、制御部50は、シフト部12をオフにする。前述したように、例えば、シフト信号p1、p2を「L」(0V)にする。これにより、シフトサイリスタT、結合トランジスタQに電流が流れないため、シフト部12の消費電力が抑制される。
【0169】
ステップ24において、駆動部60は、ドライバDrv2をオン、オフさせて、VCSELから複数の発光パルスを連続して発生させる(連続発光パルス)。各発光パルスにおける被計測物からの反射光が3Dセンサ5(
図1参照)で受光され、各発光パルスに対応した電荷が3Dセンサ5内の容量(キャパシタ)に蓄積される。連続発光パルスにより蓄積された電荷から、被計測物までの距離を計測する。このとき、制御部50は、制御電位V
Cを浮遊電位(Hi-Z)に設定する。なお、浮遊電位(Hi-Z)に設定するタイミングは、ステップ24における最初のVCSELの発光が終了する前であればよい。なお、複数の発光パルスを連続して発生させている期間を発光時とする。つまり、制御部50は、シフト部12がシフト動作を行うシフト期間(選択時)においては、制御電位V
Cを接地電位GND(0V)に設定し、発光時には制御電位V
Cを期間(選択時)と異なる電位(ここでは、浮遊電位(Hi-Z))に設定する。
【0170】
ステップ25において、制御部50は、次のVCSELを発光させるか否かを判定する。ステップ25以降は、
図14(a)のステップ15以降と同様である。
【0171】
次に右側のフローを説明する。
ステップ27とステップ29とは、分けて記載しているが、連続したステップである。ステップ24と同様に、駆動部60は、ドライバDrv2をオン、オフさせて、VCSELから連続発光パルスを発生させ、被計測物までの距離を計測する。このとき、制御部50は、制御電位VCを浮遊電位(Hi-Z)に設定する。VCSELを一度発光させるとメモリ効果が発現する。よって、VCSELにより、連続発光パルスが発生させられる。なお、浮遊電位(Hi-Z)に設定するタイミングは、ステップ27における最初のVCSELの発光が終了する前であればよい。
【0172】
そして、ステップ28において、制御部50は、ステップ27によるVCSELの発光後速やかにシフト部12をオフにする。ステップ27においてVCSELが一度発光させると、メモリ効果が発現する。よって、ステップ27によるVCSELの発光後速やかにシフト部12をオフにすることがよい。
【0173】
その後、前述したステップ25以降が実行される。
【0174】
ここでは、制御電位VCを浮遊電位(Hi-Z)にするとした。しかし、制御電位VCは、必ずしも浮遊電位(Hi-Z)でなくてもよい。制御電位VCは、発光パルスの立ち下がりの際に、発光電流が容量C1と容量C2とが並列接続された状態(並列接続状態)で流れることを抑制する電位であればよい。例えば、制御電位VCは、容量部13の容量C2を構成するpn接合(n型の半導体層81とp型の半導体層83とが作るpn接合)を順バイアスにする電位であってもよい。
【0175】
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、発光素子をVCSELとし、ひとつのシフトユニット12aにひとつの直列接続された発光制御サイリスタSとVCSELとを接続した。しかし、ひとつのシフトユニット12aに、直列接続された発光制御サイリスタSとVCSELとを複数接続してもよい。また、ひとつの発光制御サイリスタSに複数のVCSELを設けてもよい。ひとつのシフトユニット12aにより、複数のVCSELが同時に選択され並行して発光する。このようにすることで、分割照射における照射区画210に照射される光量が増加する。
【0176】
図3、5(a)において、光源10における発光素子(VCSEL)は、一次元に配列されているように記載されているが、発光素子を二次元に配列してもよい。例えば、光源10において、発光素子を二次元に配列することで、二次元に配列された照射区画210に対応して発光素子を発光させられる。
【0177】
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、シフト部12を発光させる発光素子(VCSEL)を選択する選択部としたが、選択部を、シフト動作するシフト部でなく、ドライバから直に発光素子のサイリスタに信号を送るように構成してもよい。
【0178】
上述した、光源10は、カソードコモンで記載したが、アノードコモンとしてもよい。このとき、nゲート層(n型の半導体層87)にnオーミック電極を設けたが、pゲート層(p型の半導体層86)にpオーミック電極を設けるように構成すればよい。
また、光源10のシフト部12において、シフトサイリスタT間を、結合トランジスタQで接続したが、ダイオードや抵抗で接続してもよい。
【0179】
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、発光部と容量部とをひとつの半導体基板上に設けたが、発光部に対して、別の基板に設けられた容量部を配線で繋いでもよいし、同じ基板上でも共有の層を持たないように構成してもよい。
【0180】
また、第1の実施の形態では、制御電位VCをドライバDrv2のオン及びオフに対応して異なる電位に制御したが、例えば発光が複数回行われる場合など、必ずしも最初の発光の際に電位が切り替わっていなくても途中で切り替えるようにしてもよい。具体的には発光時は0Vと3.3Vとの両方があるようにしてもよい。ただし、その場合でも選択時は、0Vに設定する。つまり、容量部は発光させる前記発光素子を選択する選択部で構成され、選択された当該発光素子を発光させる発光時に、前記選択部が前記発光部において発光させる前記発光素子を選択する選択時とは異なる電位に設定する際に、選択された発光素子を発光させる発光時のある一時期は、選択時と同じ電位に設定する。としてもよい。
【0181】
また、発光時に制御電位VCを異なる電位に制御する場合、発光に合わせて電荷が蓄積されやすい場合にのみこまめに切り替えてもよいが、駆動が複雑になるため、あるまとまった期間で切り替えてもよい。つまり、容量部は発光させる前記発光素子を選択する選択部で構成され、選択された当該発光素子を発光させる発光時の連続する複数回の発光など、まとまった期間に、前記選択部が前記発光部において発光させる前記発光素子を選択する選択時とは異なる電位に設定する、としてもよい。
【0182】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形を行っても構わない。
【符号の説明】
【0183】
1、2、3…発光装置、5…三次元センサ(3Dセンサ)、10…光源、11…発光部、12…シフト部、12a…シフトユニット、13…容量部、50…制御部、60…駆動部、71…電源線、72、72-1、72-2…シフト信号線、73…制御電位層、74…発光電位線、75…基板電極、80…n型の半導体基板、81、85、87…n型の半導体層、82…活性層、83、86、88…p型の半導体層、84…トンネル接合層、100…計測装置、110…計測制御部、200…照射領域、210…照射区画、Buf1、Buf2…バッファ、Drv1、Drv1′、Drv2、Drv2′…ドライバ、GND…接地電位、p1、p2…シフト信号、pI…発光信号、pc…制御信号、Q…結合トランジスタ、Rv…内部抵抗、S…発光制御サイリスタ、T…シフトサイリスタ、VCSEL…垂直共振器面発光レーザ、VC…制御電位、Vd…順方向電圧(拡散電位)、VGK…電源電位、VK…基板電位、VLD…発光電位、Vsat…飽和電圧、VS1、VS2、VS3…電源