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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/06 20060101AFI20241217BHJP
   H01F 1/34 20060101ALI20241217BHJP
   C04B 35/30 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01F17/06 D
H01F17/06 F
H01F1/34 140
C04B35/30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022059885
(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公開番号】P2023150665
(43)【公開日】2023-10-16
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】中野 真亜沙
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-026519(JP,A)
【文献】特開2020-088289(JP,A)
【文献】特開平10-144526(JP,A)
【文献】特開2021-100098(JP,A)
【文献】特開2021-052180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/06
H01F 1/34
C04B 35/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層された絶縁体部と、
前記絶縁体部に埋設された複数の帯状の内部導体と、
前記絶縁体部の外表面に対向するように設けられ、前記内部導体と電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と
を備え、
前記絶縁体部は、前記内部導体よりも、線膨張係数が小さく、
前記内部導体は、ライン部とその両端に位置する第1引出部及び第2引出部と、を有し、
前記第1引出部及び前記第2引出部は、上面視において、前記ライン部よりも幅広であり、
前記内部導体は、3以上5以下であり、前記絶縁層を介して積層されており、
前記複数の内部導体のライン部の断面積の合計は、0.1mm以上、0.5mm以下であり、
前記内部導体のライン部の厚さをt1、前記内部導体のライン部の幅をw4、前記内部導体のライン部間の距離をt2とし、t1/w4をx、t2/t1をyとしたとき、
(i)前記内部導体の数が3である場合
(x,y)は、A(0.051,1.0)、B(0.051,5.9)、C(0.2,5.9)、D(0.2,4.4)、E(0.1,1.4)で囲まれる領域にある、
(ii)前記内部導体の数が4である場合
(x,y)は、F(0.038,0.26)、G(0.038,5.2)、H(0.2,5.2)、I(0.2,4.9)、J(0.1,1.9)で囲まれる領域にある、
(iii)前記内部導体の数が5である場合
(x,y)は、K(0.031,0.53)、L(0.031,4.9)、M(0.15,4.9)、N(0.15,4.1)で囲まれる領域にある、
電子部品。
【請求項2】
記第1引出部及び第2引出部の幅は、前記絶縁体部の幅に対する比は、0.4以上1.0以下である、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記絶縁体部の高さは、1.8mm以上2.2mm以下であり、前記絶縁体部の幅は、2.3mm以上2.7mm以下である、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記絶縁層は、
Feを、Feに換算して、40モル%以上49.5モル%以下、
Znを、ZnOに換算して、2モル%以上35モル%以下、
Cuを、CuOに換算して、6モル%以上13モル%以下、
Niを、NiOに換算して、10モル%以上45モル%以下
含む第1絶縁層を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記絶縁層は、
Feを、Fe に換算して、40モル%以上49.5モル%以下、
Cuを、CuOに換算して、6モル%以上13モル%以下、
Znを、ZnOに換算して、37.5モル%以上54モル%以下
含む第2絶縁層を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品として、素体の内部に帯状の内部導体を複数含む電子部品が知られている(特許文献1)。特許文献1は、図2及び図5において、積層体の端面への引出部が幅広である帯状の内部導体を備えた電子部品を開示している。この電子部品によれば、マザー積層体のカット時にカット刃やダイサーが痛むことを抑制でき、直流抵抗値を低減でき、かつ、積層体に変形が発生することを抑制できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-210204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電子部品は、流す電流値を大きくしようとする場合、コイル導体の断面積を大きくする必要がある。しかしながら、内部導体の断面積を大きくすると、絶縁層と内部導体との線膨張係数の差により、内部導体近傍付近で応力が大きくなり、その応力により素体にクラックが発生するおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、素体内部に複数の帯状の内部導体を有する電子部品であって、内部導体の断面積を大きくしても素体にクラックが生じにくい電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] 複数の絶縁層が積層された絶縁体部と、
前記絶縁体部に埋設された複数の帯状の内部導体と、
前記絶縁体部の外表面に対向するように設けられ、前記内部導体と電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と
を備え、
前記内部導体は、3以上5以下であり、前記絶縁層を介して積層されており、
前記複数の内部導体の断面積の合計は、0.1mm以上、0.5mm以下であり、
前記内部導体の厚さをt1、幅をw4、前記内部導体間の距離をt2とし、t1/w4をx、t2/t1をyとしたとき、
(i)前記内部導体の数が3である場合
(x,y)は、A(0.051,1.0)、B(0.051,5.9)、C(0.2,5.9)、D(0.2,4.4)、E(0.1,1.4)で囲まれる領域にある、
(ii)前記内部導体の数が4である場合
(x,y)は、F(0.038,0.26)、G(0.038,5.2)、H(0.2,5.2)、I(0.2,4.9)、J(0.1,1.9)で囲まれる領域にある、
(iii)前記内部導体の数が5である場合
(x,y)は、K(0.031,0.53)、L(0.031,4.9)、M(0.15,4.9)、N(0.15,4.1)で囲まれる領域にある、
電子部品。
[2] 前記内部導体は、ライン部とその両端に位置する第1引出部及び第2引出部と、を有し、前記第1引出部及び第2引出部の幅は、前記絶縁体部の幅に対する比は、0.4以上1.0以下である、上記[1]に記載の電子部品。
[3] 前記絶縁体部の高さは、1.8mm以上2.2mm以下であり、前記絶縁体部の幅は、2.3mm以上2.7mm以下である、上記[1]又は[2]に記載の電子部品。
[4] 前記絶縁層は、
Feを、Feに換算して、40モル%以上49.5モル%以下、
Znを、ZnOに換算して、2モル%以上35モル%以下、
Cuを、CuOに換算して、6モル%以上13モル%以下、
Niを、NiOに換算して、10モル%以上45モル%以下
含む磁性体層を含む、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の電子部品。
[5] 前記絶縁層は、非磁性体層を含む、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の電子部品。
[6] 前記非磁性体層は、
Feを、Feに換算して、40モル%以上49.5モル%以下、
Cuを、CuOに換算して、6モル%以上13モル%以下、
Znを、ZnOに換算して、37.5モル%以上54モル%以下
含む、上記[5]に記載の電子部品。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、素体の内部導体近傍にクラックが生じにくい電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態1に係る電子部品1を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す電子部品1のLW面に平行な断面図である。
図3図3は、図1に示す電子部品1のLT面に平行な断面図である。
図4図4は、図1に示す電子部品1のWT面に平行な断面図である。
図5図5は、図3に示す断面図の一部拡大図である。
図6図6は、図2に示す断面図の一部拡大図である。
図7図7は、本開示の実施形態2に係る電子部品の断面図である。
図8図8は、本開示の実施形態2の別態様に係る電子部品の断面図である。
図9図9は、本開示の実施形態3に係る電子部品の断面図である。
図10図10は、本開示の実施形態4に係る電子部品の断面図である。
図11図11は、実施例における内部導体が3本の場合の結果を示す。
図12図12は、実施例における内部導体が4本の場合の結果を示す。
図13図13は、実施例における内部導体が5本の場合の結果を示す。
図14図14は、実施例におけるインピーダンスを測定の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の電子部品について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本実施形態の電子部品及び各構成要素の形状及び配置等は、図示する例に限定されない。
【0010】
<実施形態1>
本実施形態の電子部品1の斜視図を図1に、LW面に平行な断面図を図2に、LT面に平行な断面図を図3に、WT面に平行な断面図を図4に示す。但し、下記実施形態の電子部品及び各構成要素の形状及び配置等は、図示する例に限定されない。
【0011】
図1図4に示されるように、本実施形態の電子部品1は、略直方体形状を有する電子部品である。電子部品1は、概略的には、絶縁体部7と、絶縁体部7に埋設された複数の内部導体3と、絶縁体部7の両端面に設けられた第1外部電極21及び第2外部電極22とを含む。絶縁体部7は、略直方体形状を有する。絶縁体部7において、図1のL軸に垂直な2つの面をそれぞれ第1端面及び第2端面と称し、W軸に垂直な面を第1側面及び第2側面と称し、T軸に垂直な面をそれぞれ上面及び下面と称する。内部導体3は、ライン部4と、第1引出部5と、第2引出部6とを含む。内部導体3は、第1引出部5において第1外部電極21に電気的に接続され、第2引出部6において第2外部電極22に電気的に接続される。
【0012】
本開示の電子部品は、好ましくは、長さ(L)が2.5mm以上4.0mm以下であり、幅(W)が2.0mm以上3.0mm以下であり、高さ(T)が1.5mm以上2.5mm以下であり、より好ましくは長さが2.8mm以上3.5mm以下であり、幅が2.3mm以上2.7mm以下であり、高さが1.8mm以上2.2mm以下である。
【0013】
(絶縁体部)
本実施形態の電子部品1において、絶縁体部7は、複数の絶縁層が積層されて構成される。絶縁層は、図1のT方向に積層される。
【0014】
上記絶縁層は、磁性体層を含む。
【0015】
上記磁性体層は、少なくともFe、Zn、Cu、及びNiを含む。
【0016】
上記磁性体層は、主成分として、少なくともFe、Zn、Cu、及びNiを含む焼結磁性材料から構成される。
【0017】
上記主成分とは、磁性体層に含まれる成分のうち、全体の多くを占める成分をいう。典型的には、主成分は、磁性体層に含まれる成分全体に対して、合計で50質量%を超える量で含まれる。
【0018】
上記焼結磁性材料において、Fe含有量は、Feに換算して、好ましくは40.0モル%以上49.5モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは45.0モル%以上49.5モル%以下であり得る。
【0019】
上記焼結磁性材料において、Zn含有量は、ZnOに換算して、好ましくは2.0モル%以上35.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは5.0モル%以上30.0モル%以下であり得る。
【0020】
上記焼結磁性材料において、Cu含有量は、CuOに換算して、好ましくは6.0モル%以上13.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは7.0モル%以上10.0モル%以下である。
【0021】
上記焼結磁性材料において、Ni含有量は、特に限定されず、上記した他の主成分であるFe、Zn及びCuの残部とし得、NiOに換算して、好ましくは10.0モル%以上45.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは15.0モル%以上40.0モル%以下である。
【0022】
磁性体層におけるFe、Zn、Cu、及びNiの含有量を、上記の範囲とすることにより、優れた電気特性を得ることができる。
【0023】
本開示において、上記焼結磁性材料は、さらに添加成分を含んでいてもよい。焼結磁性材料における添加成分としては、例えばMn、Co、Sn、Bi、Si等が挙げられるが、これに限定されるものではない。Mn、Co、Sn、Bi及びSiの含有量(添加量)は、主成分(Fe(Fe換算)、Zn(ZnO換算)、Cu(CuO換算)及びNi(NiO換算))の合計100質量部に対して、それぞれ、Mn、Co、SnO、Bi、及びSiOに換算して、0.1質量部以上1質量部以下であることが好ましい。また、上記焼結磁性材料は、さらに製造上不可避な不純物を含んでいてもよい。
【0024】
絶縁体部7の上面14と下面13との間の距離、即ち絶縁体部7の高さh1は、好ましくは、1.8mm以上2.2mm以下である。
【0025】
絶縁体部7の第1側面15と第2側面16との間の距離、即ち絶縁体部7の幅w1は、好ましくは、2.3mm以上2.7mm以下である。
【0026】
一の態様において、絶縁体部7の高さh1は、1.8mm以上2.2mm以下であり、絶縁体部7の幅w1は、2.3mm以上2.7mm以下である。
【0027】
絶縁体部7の大きさは、特に限定されないが、好ましくは、絶縁体部7の高さh1が、1.8mm以上2.2mm以下であり、絶縁体部7の幅w1が、2.3mm以上2.7mm以下である。
【0028】
(内部導体)
絶縁体部7には、複数の帯状の内部導体3が埋設されている。帯状とは、長さと幅を持った面形状をいう。
【0029】
内部導体3は、L軸方向を長さとし、W軸方向を幅とし、T軸方向を厚さとし、その軸が直線状であり得る。内部導体3は、上面14側の主面である第1主面17と、下面13側の主面である第2主面18とを有する。
【0030】
内部導体3は、ライン部4とその両端に位置する第1引出部5及び第2引出部6とを有する。第1引出部5は、第1端面11に露出し、第1外部電極21に電気的に接続される。第2引出部6は、第2端面12に露出し、第2外部電極22に電気的に接続される。
【0031】
内部導体3は、複数存在し、絶縁層を介して積層されている。このような構造とすることにより、本開示の電子部品は、コイル様の機能を発揮する。積層された各内部導体は、上面視において、実質的に同じ位置に配置される。なお、実質的に同じ位置とは、完全に一致することに加え、大部分、例えば上面視における面積のうち90%以上が重なっている状態を含む。
【0032】
内部導体3の数は、好ましくは3以上5以下、より好ましくは4又は5である。
【0033】
内部導体3のライン部4の断面積の合計は、好ましくは、0.1mm以上0.5mm以下である。ライン部4の断面積の合計を0.1mm以上とすることにより、内部導体の抵抗値を小さくすることができる。また、ライン部4の断面積の合計を0.5mm以下とすることにより、電子部品1をより小さくすることができる。
【0034】
内部導体3のライン部4の厚さt1は、好ましくは0.03mm以上、より好ましくは0.04mm以上である。また、内部導体3のライン部4の厚さt1は、好ましくは0.1mm以下、より好ましくは0.09mm以下、さらに好ましくは0.08mm以下である。一の態様において、内部導体3のライン部4の厚さt1は、好ましくは0.03mm以上0.1mm以下、より好ましくは0.04mm以上0.08mm以下であり得る。
【0035】
内部導体3のライン部4間の距離(換言すれば、内部導体3のライン部4間の絶縁層の厚さ)t2は、好ましくは0.01mm以上0.6mm以下、より好ましくは0.07mm以上0.48mm以下、さらに好ましくは0.10mm以上0.36mm以下である。かかるライン部間の距離t2を0.01mm以上とすることにより、内部導体層間の絶縁性をより確実に確保できる。また、かかるライン部間の距離t2を0.6mm以下とすることにより、より優れた電気特性を得ることができる。
【0036】
内部導体3のライン部4の幅w4は、好ましくは0.3mm以上2.0mm以下、より好ましくは0.5mm以上1.5mm以下、さらに好ましくは0.6mm以上1.3mm以下である。
【0037】
内部導体3の引出部の幅w3は、好ましくは0.5mm以上2.5mm以下、より好ましくは0.8mm以上2.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以上2.0mm以下である。
【0038】
絶縁体部7の高さh1に対する、絶縁体部7の上面14に最も近い内部導体3dのライン部4の第1主面17と、絶縁体部7の下面13に最も近い内部導体3aのライン部4の第2主面18との間の距離h3の比(h3/h1)は、好ましくは0.25以上0.55以下、より好ましくは0.30以上0.45以下である。h3/h1を上記の範囲とすることにより、絶縁体部及び外部電極におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0039】
絶縁体部7の幅w1に対する、内部導体3の引出部の幅w3の比(w3/w1)は、好ましくは0.40以上1.0以下、より好ましくは0.40以上1.0未満、さらに好ましくは0.50以上0.80以下である。
【0040】
なお、w3は、内部導体の軸方向(即ち、L軸方向)における、引出部の略中央における幅である。w3は、内部導体のうち積層方向中央に位置する内部導体の幅とする。例えば、内部導体が5つ存在する場合、w3は、上面14又は下面13から3つめの内部導体の幅となる。また、内部導体が偶数の場合は、w3は、中央2つ、図示する例においては、内部導体3b及び3cの2つの幅の平均となる。
【0041】
w3/w1を上記の範囲とすることにより、絶縁体部及び外部電極におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0042】
上記内部導体の厚さt1、幅w4、内部導体間の距離t2とし、t1/w4をx、t2/t1をyとしたとき、
(i)前記内部導体の数が3である場合
(x,y)は、A(0.051,1.0)、B(0.051,5.9)、C(0.2,5.9)、D(0.2,4.4)、E(0.1,1.4)で囲まれる領域にあり、
(ii)前記内部導体の数が4である場合
(x,y)は、F(0.038,0.26)、G(0.038,5.2)、H(0.2,5.2)、I(0.2,4.9)、J(0.1,1.9)で囲まれる領域にあり、
(iii)前記内部導体の数が5である場合
(x,y)は、K(0.031,0.53)、L(0.031,4.9)、M(0.15,4.9)、N(0.15,4.1)で囲まれる領域にある。
【0043】
x及びyを上記の領域内の値とすることにより、クラックの発生を抑制し、また、電子部品の強度を高くすることができる。
【0044】
内部導体3は、第1端面11及び第2端面12から突出した突出部を有する。
【0045】
第1端面11及び第2端面12において、最も突出した内部導体3の突出距離p1、およびp2は、好ましくは0.10mm以下、より好ましくは0.05mm以下、さらに好ましくは0.04mm以下である。また、突出距離p1、およびp2の下限は、特に限定されないが、小さいほど好ましく、例えば0.03mm以上、又は0.01mm以上である。
【0046】
第1端面11及び第2端面12において、絶縁体部7の上面14に最も近い内部導体3dの第1主面17と、絶縁体部7の下面13に最も近い内部導体3aの第2主面18との間の距離h2に対する、最も突出した内部導体の突出距離p1の比(p1/h2)は、好ましくは0.07以下、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.04以下である。また、p1/h2は、例えば0.01以上である。
【0047】
第1端面11及び第2端面12において、それぞれの端面から露出した内部導体3の幅w2に対する、内部導体3の突出距離p2の比(p2/w2)は、好ましくは0.06以下、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.04以下である。また、p2/w2は、例えば0.01以上である。ここに、上記内部導体は、w2及びp2は、内部導体のうち積層方向中央に位置する内部導体の幅及び突出距離とする。例えば、内部導体が5つ存在する場合、w2及びp2は、上面14又は下面13から3つめの内部導体の幅及び突出距離となる。また、内部導体が偶数の場合は、w2及びp2は、中央2つ、図示する例においては、内部導体3b及び3cの2つの幅の平均となる。
【0048】
内部導体3を構成する導電性材料は、特に限定されないが、例えば、Au、Ag、Cu、Pd、Ni等が挙げられる。内部導体3を構成する材料は、好ましくはAg又はCu、より好ましくはAgである。上記導電性材料は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0049】
(外部電極)
外部電極21,22は、絶縁体部7の第1端面11及び第2端面12を覆うように設けられる。
【0050】
外部電極21,22を構成する導電性材料は、特に限定されないが、例えばAu、Ag、Pd、Ni、Sn及びCuから選択される1種又はそれ以上の金属材料であり得る。
【0051】
外部電極21,22は、単層であっても、多層であってもよい。一の態様において、上記外部電極21,22は、多層、好ましくは2層以上4層以下、例えば3層であり得る。
【0052】
一の態様において、外部電極21,22は多層であり、Ag又はPdを含む層、Niを含む層、又はSnを含む層を含み得る。好ましい態様において、外部電極21,22は、Ag又はPdを含む層、Niを含む層、及びSnを含む層からなる。好ましくは、上記の各層は、内部導体側から、Ag又はPd、好ましくはAgを含む層、Niを含む層、Snを含む層の順で設けられる。好ましくは、上記Ag又はPdを含む層はAgペースト又はPdペーストを焼き付けた層であり、上記Niを含む層及びSnを含む層は、めっき層であり得る。
【0053】
(測定方法)
【0054】
上記絶縁体部7の高さh1、及び幅w1、内部導体3のライン部4の断面積、厚さt1、及び幅w4、ライン部4間の距離t2、ならびに、絶縁体部7の上面14に最も近い内部導体3dの第1主面17と、下面13に最も近い内部導体3aの第2主面18との間の距離h3は、以下のようにして測定することができる。
電子部品の試料を、WT面が露出するように周囲を樹脂で固めて、研磨機でL方向に、絶縁体部7の略中央部が露出するまで研磨する。研磨後に、断面をデジタルマイクロスコープで撮影する。得られた画像を、画像解析ソフトを用いて解析し、内部導体3の断面積、厚さt1、幅w4、距離t2、及び距離h3を得る。なお、高さh1は、幅方向の略中央部における高さである。幅w1は、高さ方向の略中央部における幅である。厚さt1及びt2は、上記断面における内部導体の幅方向の中央における厚さである。
【0055】
上記内部導体3の引出部の幅w3は、以下のようにして測定することができる。
電子部品の試料を、WT面が露出するように周囲を樹脂で固めて、研磨機でL方向に、引出部のL軸方向における略中央部が露出するまで研磨する。研磨後に、断面をデジタルマイクロスコープで撮影する。得られた画像を、画像解析ソフトを用いて解析し、内部導体3の引出部の幅w3を得る。
【0056】
上記の距離h2及び突出距離p1は、以下のようにして測定することができる。
電子部品の試料を、LT面が露出するように周囲を樹脂で固めて、研磨機でW方向に内部導体の略中央部が露出するまで研磨する。研磨後に、断面をデジタルマイクロスコープで撮影する。得られた画像を、画像解析ソフトを用いて解析して、h1及びp1を得る。なお、p1は、得られた断面における、絶縁体部7と、絶縁体部7の上面14に最も近い内部導体3dの第1主面17との接点x1と、絶縁体部7と、絶縁体部7の下面13に最も近い内部導体3aの第2主面18との接点x2とを結んだ直線に対する、最も突出した内部導体の先端からの距離である。
【0057】
上記の幅w2及び突出距離p2は、以下のようにして測定することができる。
電子部品の試料を、LW面が露出するように周囲を樹脂で固めて、研磨機でT方向に中央に位置する内部導体(図示する例においては、内部導体3b又は3c)の厚み方向の略中央部が露出するまで研磨する。研磨後に、断面をデジタルマイクロスコープで撮影する。得られた画像を、画像解析ソフトを用いて解析して、w2及びp2を得る。なお、p2は、得られた断面における、絶縁体部7の第1端面又は第2端面と、内部導体3との接点x3及びx4とを結んだ直線に対する、内部導体の先端からの距離である。
【0058】
(製造方法)
電子部品1の製造方法を以下に説明する。
【0059】
(1)磁性材料(仮焼磁性粉末)の調製
【0060】
まず、磁性材料の原料を準備する。磁性材料の原料は、主成分としてFe、Zn、Cu、及びNiを含む。通常、上記原料の主成分は、実質的にFe、Zn、Cu、及びNiの酸化物(理想的には、Fe、ZnO、CuO及びNiO)から成る。
【0061】
上記原料として、Fe、ZnO、CuO、NiO、及び必要に応じて添加成分を所定の組成になるように秤量し、混合及び粉砕する。得られた粉末を乾燥し、仮焼し、仮焼磁性粉末を得る。好ましくは、得られた仮焼磁性粉末を粉砕し、微粉化する。
【0062】
上記仮焼磁性粉末において、Fe含有量は、Feに換算して、好ましくは40.0モル%以上49.5モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは45.0モル%以上49.5モル%以下であり得る。
【0063】
上記仮焼磁性粉末において、Zn含有量は、ZnOに換算して、好ましくは2.0モル%以上35.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは5.0モル%以上30.0モル%以下であり得る。
【0064】
上記仮焼磁性粉末において、Cu含有量は、CuOに換算して、好ましくは6.0モル%以上13.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは7.0モル%以上10.0モル%以下である。
【0065】
上記仮焼磁性粉末において、Ni含有量は、特に限定されず、上記した他の主成分であるFe、Zn及びCuの残部とし得、NiOに換算して、好ましくは10.0モル%以上45.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは15.0モル%以上40.0モル%以下である。
【0066】
本開示において、上記仮焼磁性粉末は、さらに添加成分を含んでいてもよい。仮焼磁性粉末における添加成分としては、例えばMn、Co、Sn、Bi、Si等が挙げられるが、これに限定されるものではない。Mn、Co、Sn、Bi及びSiの含有量(添加量)は、主成分(Fe(Fe換算)、Zn(ZnO換算)、Cu(CuO換算)及びNi(NiO換算))の合計100質量部に対して、それぞれ、Mn、Co、SnO、Bi、及びSiOに換算して、0.1質量部以上1質量部以下であることが好ましい。また、上記仮焼磁性粉末は、さらに製造上不可避な不純物を含んでいてもよい。
【0067】
なお、上記仮焼磁性粉末におけるFe含有量(Fe換算)、Zn含有量(ZnO換算)、Cu含有量(CuO換算)、及びNi含有量(NiO換算)は、焼成後の上記焼結磁性材料におけるFe含有量(Fe換算)、Zn含有量(ZnO換算)、Cu含有量(CuO換算)、及びNi含有量(NiO換算)と実質的に相違ないと考えて差し支えない。
【0068】
(2)導電性ペーストの調製
導電性材料を準備する。導電性材料としては、例えば、Au、Ag、Cu、Pd、Ni等が挙げられ、好ましくはAg又はCu、より好ましくはAgである。所定量の導電性材料の粉末を秤量し、所定量の溶剤(オイゲノールなど)、樹脂(エチルセルロースなど)、及び分散剤と、プラネタリーミキサー等で混錬した後、3本ロールミル等で分散することで、導電性ペーストを作製することができる。
【0069】
(3)シート作製
上記で調製した磁性材料を、所定の配合になるように混合する。これらの混合物を、例えばPSZメディアとともにボールミルに入れ、さらにポリビニルブチラール系等の有機バインダ、エタノール、トルエン等の有機溶剤、及び可塑剤を加え混合して、スラリーを得る。次に、このスラリーをドクターブレード法等で、シート状に成形し、これを矩形状に打ち抜きグリーンシートを作製する。
【0070】
上記グリーンシートの厚さは、例えば20μm以上100μm以下、好ましくは30μm以上80μm以下、より好ましくは30μm以上60μm以下であり得る。グリーンシートの厚さを、上記の範囲とすることにより、高い絶縁性と、優れた電気特性を得ることができる。
【0071】
次いで、上記で作製したグリーンシートに、上記で調製した導電性ペーストをスクリーン印刷することにより、内部導体のパターンを形成する。
【0072】
(4)積層、圧着及び個片化
上記で得られたグリーンシートを、所定の順番で積層し、熱圧着した積層ブロックを作製する。得られた積層ブロックを、ダイサー等で切断し、個片化し、未焼成素体を得る。
【0073】
(5)焼成
上記で得られた未焼成素体を、焼成し、電子部品の素体を得る。
【0074】
焼成温度は、好ましくは850℃以上950℃以下、より好ましくは900℃以上920℃以下であり得る。
【0075】
焼成時間は、好ましくは1時間以上6時間以下、より好ましくは2時間以上4時間以下であり得る。
【0076】
焼成後には、得られた素体をメディアとともに回転バレル機に入れ、回転することにより、素体の稜線やコーナーにRを形成してもよい。
【0077】
(6)電極形成
下地電極を形成する。下地電極は、内部導体が引き出された端面に、例えばAgとガラスを含んだ導電性ペーストを塗布し、焼き付けることにより形成することができる。
【0078】
上記下地電極の厚さは、例えば5μm以上80μm以下、好ましくは10μm以上70μm以下、より好ましくは40μm以上60μm以下であり得る。
【0079】
上記焼き付け時の温度は、例えば800℃以上820℃以下であり得る。
【0080】
上記で形成した下地電極上に、電解めっきにより、金属層の被膜を形成する。当該被膜は、単層であっても、多層であってもよく、例えば下地電極上にNi被膜を形成し、次いで、Sn被膜を形成してもよい。
【0081】
上記のようにして、本開示の電子部品1を製造することができる。
【0082】
(実施形態2)
【0083】
本実施形態2の電子部品の断面を図7に示す。図7の断面図は、実施形態1の図4の断面図に対応する。
【0084】
図7に示されるように、本実施形態2の電子部品は、絶縁体部7に、非磁性体層31,32を含む。他の構成は、上記実施形態1の電子部品1と同様である。本実施形態の電子部品は、非磁性体層を有することにより、優れた直流重畳特性を有する。
【0085】
非磁性体層31は、内部導体3dと3cの間に、内部導体3dに接するように配置される。同様に、非磁性体層32は、内部導体3bと3aの間に、内部導体3bに接するように配置される。
【0086】
なお、非磁性体層の位置は、上記に限定されない。例えば、一の態様において、図8に示すように、内部導体3dと3cの間と、内部導体3bと3aの間に、内部導体から離隔して配置されてもよい。
【0087】
別の態様において、非磁性体層は、内部導体の積層方向の中央部分、すなわち内部導体3cと3bの間にのみ配置されてもよい。
【0088】
別の態様において、非磁性体層は、すべての内部導体の間に配置されてもよい。
【0089】
上記非磁性体層は、少なくともFe、Cu、及びZnを含む。
【0090】
上記非磁性体層は、好ましくは、主成分として、少なくともFe、Cu、及びZnを含む焼結非磁性材料から構成される。
【0091】
上記焼結非磁性材料において、Fe含有量は、Feに換算して、好ましくは40.0モル%以上49.5モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは45.0モル%以上49.5モル%以下であり得る。
【0092】
上記焼結非磁性材料において、Cu含有量は、CuOに換算して、好ましくは6.0モル%以上13.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは7.0モル%以上10.0モル%以下である。
【0093】
上記焼結非磁性材料において、Zn含有量は、特に限定されず、上記した他の主成分であるFe及びCuの残部とし得、ZnOに換算して、好ましくは37.5モル%以上54モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは40.5モル%以上48モル%以下であり得る。
【0094】
Fe、Cu、及びZnの含有量を、上記の範囲とすることにより、優れた電気特性を得ることができる。
【0095】
本開示において、上記焼結非磁性材料は、さらに添加成分を含んでいてもよい。焼結非磁性材料における添加成分としては、例えばMn、Co、Sn、Bi、Si等が挙げられるが、これに限定されるものではない。Mn、Co、Sn、Bi及びSiの含有量(添加量)は、主成分(Fe(Fe換算)、Zn(ZnO換算)、Cu(CuO換算)及びNi(NiO換算))の合計100質量部に対して、それぞれ、Mn、Co、SnO、Bi、及びSiOに換算して、0.1質量部以上1質量部以下であることが好ましい。また、上記焼結非磁性材料は、さらに製造上不可避な不純物を含んでいてもよい。
【0096】
非磁性体層31,32の厚さは、好ましくは0.01mm以上0.4mm以下、より好ましくは0.03mm以上0.30mm以下、さらに好ましくは0.06mm以上0.20mm以下である。
【0097】
本実施形態の電子部品の製造方法は、非磁性体層を設ける工程を含む以外は、上記実施形態1の電子部品1の製造方法と同様である。
【0098】
非磁性材料の原料は、主成分としてFe、Cu及びZnを含む。通常、上記原料の主成分は、実質的にFe、Cu及びZnの酸化物(理想的には、Fe、CuO及びZnO)から成る。
【0099】
上記原料として、Fe、CuO、ZnO、及び必要に応じて添加成分を所定の組成になるように秤量し、混合及び粉砕する。得られた粉末を乾燥し、仮焼し、仮焼非磁性粉末を得る。好ましくは、得られた仮焼非磁性粉末を粉砕し、微粉化する。
【0100】
上記仮焼非磁性粉末において、Fe含有量は、Feに換算して、好ましくは40.0モル%以上49.5モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは45.0モル%以上49.5モル%以下であり得る。
【0101】
上記仮焼非磁性粉末において、Cu含有量は、CuOに換算して、好ましくは6.0モル%以上13.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは7.0モル%以上10.0モル%以下である。
【0102】
上記仮焼非磁性粉末において、Zn含有量は、ZnOに換算して、好ましくは37.5モル%以上54モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは40.5モル%以上48モル%以下であり得る。
【0103】
なお、上記仮焼非磁性粉末におけるFe含有量(Fe換算)、Zn含有量(ZnO換算)、Cu含有量(CuO換算)、及びNi含有量(NiO換算)は、焼成後の上記焼結非磁性材料におけるFe含有量(Fe換算)、Zn含有量(ZnO換算)、Cu含有量(CuO換算)、及びNi含有量(NiO換算)と実質的に相違ないと考えて差し支えない。
【0104】
上記の仮焼非磁性粉末を用いて、上記した磁性体層と同様にグリーンシートを作成し、所定の箇所に積層し、次いで、上記した磁性体層と同様に、個片化、焼成、電極形成を行うことにより、実施形態2の電子部品を製造することができる。
【0105】
(実施形態3)
【0106】
本実施形態3の電子部品の断面を図9に示す。図9の断面図は、実施形態1の図2の断面図に対応する。
【0107】
図9に示されるように、本実施形態3の電子部品は、引出部が一方の側面側に寄っている点以外は、実施形態1の電子部品1と同様である。
【0108】
(実施形態4)
【0109】
本実施形態4の電子部品の断面を図10に示す。図10の断面図は、実施形態1の図2の断面図に対応する。
【0110】
図10に示されるように、本実施形態4の電子部品は、引出部が第1端面側と第2断面側で逆位置である点以外は、実施形態1の電子部品1と同様である。
【0111】
以上、本発明の1つの実施形態について説明したが、本実施形態は種々の改変が可能である。
【0112】
以下、本開示の電子部品を実施例を挙げて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例
【0113】
実施例1
下記の特徴を有する電子部品について、シミュレーションソフトFemtet(登録商標)(ムラタソフトウエア株式会社製)を用いて、内部応力を計算した。内部応力が215MPaを超える条件については×、215MPa以下の条件を〇と判定し、下記表に示す。

・絶縁体組成
Fe-Zn-Cu-Niフェライト
・内部導体
Ag導体
・寸法
下記表に示す通り。なお、*を付した試料は、比較例である。
【0114】
【表1】
【0115】
(i)コイル導体の数が3の場合
(x,y)が、A(0.051,1.0)、B(0.051,5.9)、C(0.2,5.9)、D(0.2,4.4)、E(0.1,1.4)で囲まれる領域(図11に示す)にある場合、内部応力が215MPa以下となった。
(ii)コイル導体の数が4の場合
(x,y)が、F(0.038,0.26)、G(0.038,5.2)、H(0.2,5.2)、I(0.2,4.9)、J(0.1,1.9)で囲まれる領域(図12に示す)にある場合、内部応力が215MPa以下となった。
(iii)コイル導体の数が5の場合
(x,y)が、K(0.031,0.53)、L(0.031,4.9)、M(0.15,4.9)、N(0.15,4.1)で囲まれる領域(図13に示す)にある場合、内部応力が215MPa以下となった。
(x,y)が、上記の領域よりも下方の領域にある場合、内部応力が215MPaを上回り、クラックが発生するリスクが高くある。また、(x,y)が、上記の領域よりも上方にある場合には、内部導体と絶縁体部の表面との距離が250μmを下回り、電子部品の強度が低下する。
【0116】
実施例2
・磁性材料の調製
Feを48.0mol%、ZnOを21.0mol%、CuOを8.0mol%、及びNiOを23.0mol%の割合で配合し、混合物を得た。この混合物を湿式で混合、粉砕した後、乾燥することで水分を除去した。得られた乾燥物を800℃の温度で2時間仮焼して、磁性材料を得た。
【0117】
・非磁性材料の調製
Feを48.0mol%、ZnOを44.0mol%、及びCuOを8.0mol%の割合で配合し、混合物を得た。この混合物を湿式で混合、粉砕した後、乾燥することで水分を除去した。得られた乾燥物を800℃の温度で2時間仮焼して、非磁性材料を得た。
【0118】
・導電性ペーストの調製
Agの粉末を、所定量の溶剤、樹脂、及び分散剤と、プラネタリーミキサーで混錬した後、3本ロールミルで分散することで、導電性ペーストを作製した。
【0119】
・グリーンシートの作製
得られた磁性材料及び非磁性材料を、それぞれ所定量のポリビニルブチラール系等の有機バインダ、エタノール、トルエン等の有機溶剤、及び可塑剤をボールミルに入れ、混合した。次に、ドクターブレード法で、膜厚が約25μmのシート状に成形し、これを矩形状に打ち抜き、磁性グリーンシート及び非磁性グリーンシートを作製した。また、グリーンシート上に、上記導電性ペーストをスクリーン印刷することにより、内部導体のパターンを形成した。
【0120】
・電子部品の作製
上記で得られたグリーンシートを、図1~4の形状(試料番号42)、及び図7の形状(試料番号43)となるように積層し、熱圧着した積層ブロックを作製した。得られた積層ブロックを、ダイサーで切断し、個片化し、未焼成素体を得た。
【0121】
上記で得られた未焼成素体を、トップ温度を920℃として4時間焼成して、電子部品の素体を得た。得られた素体をメディアとともに回転バレル機に入れ、回転することにより、素体の稜線やコーナーにRを形成した。
【0122】
上記得られた素体の端面に、Agとガラスを含んだ導電性ペーストを塗布し、820℃で焼き付けることにより下地電極を形成し、試料番号42(非磁性層なし)及び試料番号43(非磁性層あり)の電子部品を得た。
【0123】
作製した電子備品の内部導体は4本であり、内部導体の厚さは0.06mm、幅は1.0mmであり、内部導体間の距離は0.11mmであった。内部導体の作製した電子部品のサイズは、長さ(L)が3.2mm、幅(W)が2.5mm、高さ(T)が2.0mmであった。
【0124】
(評価)
得られた試料番号42及び試料番号43について、直流電流を20Aまで通電し、インピーダンスを測定した。結果を、図14に示す。図14の結果に示されるように、内部導体間に非磁性層を配置することにより、重畳電流なしの場合のインピーダンスの低下を小さくでき、かつ直流電流を重畳したときのインピーダンスの低下を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本開示の電子部品は、種々様々な用途に、例えばインピーダンス素子、又はインダクタとして使用され得る。
【符号の説明】
【0126】
1…電子部品
3…内部導体
4…ライン部
5…第1引出部
6…第2引出部
7…絶縁体部
11…第1端面
12…第2端面
13…下面
14…上面
15…第1側面
16…第2側面
17…内部導体の第1主面
18…内部導体の第2主面
21…第1外部電極
22…第2外部電極
31,32…非磁性体層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14