(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】スタッカクレーンの検査方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
B65G1/00 511J
(21)【出願番号】P 2022069589
(22)【出願日】2022-04-20
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】鯰江 一也
(72)【発明者】
【氏名】林 徹也
(72)【発明者】
【氏名】上田 卓弥
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-18426(JP,A)
【文献】特開2012-12152(JP,A)
【文献】特開2001-261111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00- 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路に沿って走行する走行台車と、
前記走行台車に固定され、上下方向に沿うように設けられた一対のマストと、
一対の前記マストのそれぞれに取り付けられ、前記上下方向に沿うように設けられた昇降レールと、
一対の前記昇降レールに沿って昇降する昇降体と、を備えたスタッカクレーンの検査方法であって、
それぞれが前記昇降レールに沿って昇降自在な一対の検査用スライダと、互いの離間距離を測定する第1検査装置及び第2検査装置と、紐状に形成された第1紐状体及び第2紐状体と、前記第1紐状体及び前記第2紐状体が巻き掛けられる巻掛機構と、を準備する準備工程と、
前記昇降体に前記巻掛機構を取り付ける巻掛機構取付工程と、
前記第1紐状体及び前記第2紐状体を前記巻掛機構に巻き掛ける巻掛工程と、
前記巻掛工程の後、前記第1紐状体の両端部及び前記第2紐状体の両端部を保持した状態で、前記昇降体を一対の前記昇降レールの上部に移動させる昇降体上昇工程と、
一対の前記昇降レールの一方に、一対の前記検査用スライダの一方である第1スライダを取り付け、一対の前記昇降レールの他方に一対の前記検査用スライダの他方である第2スライダを取り付けるスライダ取付工程と、
前記第1スライダに前記第1検査装置を取り付け、前記第2スライダに前記第2検査装置を取り付ける検査装置取付工程と、
前記第1紐状体の一方の端部である第1端部を前記第1スライダ及び前記第1検査装置の少なくとも一方に取り付け、前記第2紐状体の一方の端部である第2端部を前記第2スライダ及び前記第2検査装置の少なくとも一方に取り付ける紐状体取付工程と、
前記巻掛機構取付工程、前記巻掛工程、前記昇降体上昇工程、前記スライダ取付工程、前記検査装置取付工程、及び前記紐状体取付工程の後、前記第1紐状体における他方の端部である第3端部の側の部分、及び前記第2紐状体における他方の端部である第4端部の側の部分を操作して、前記第1検査装置及び前記第2検査装置を前記昇降レールに沿って昇降させる検査装置昇降工程と、
前記検査装置昇降工程により前記第1検査装置及び前記第2検査装置を昇降させて、前記第1検査装置と前記第2検査装置との離間距離を測定する測定工程と、を備える、スタッカクレーンの検査方法。
【請求項2】
前記検査装置昇降工程では、前記第1紐状体及び前記第2紐状体を、互いに同じ長さ分繰り出し又は引き寄せる操作を行うことで、前記第1検査装置及び前記第2検査装置を、互いに同じ高さ分昇降させる、請求項1に記載のスタッカクレーンの検査方法。
【請求項3】
一対の前記マストが対向する方向を対向方向とし、前記上下方向に沿う上下方向視で前記対向方向に直交する方向を対向直交方向とし、前記対向直交方向の一方側を対向直交方向第1側として、
前記第1検査装置は、前記第1スライダに連結される第1連結部材と、距離センサを構成する第1センサ部材と、を備え、
前記第2検査装置は、前記第2スライダに連結される第2連結部材と、前記距離センサを構成する第2センサ部材と、を備え、
前記第1連結部材は、前記第1スライダに対して前記対向直交方向第1側に突出する第1突出部を備え、
前記第2連結部材は、前記第2スライダに対して前記対向直交方向第1側に突出する第2突出部を備え、
前記第1センサ部材と前記第2センサ部材とが互いに前記対向方向に対向するように、前記第1センサ部材が前記第1突出部に取り付けられていると共に、前記第2センサ部材が前記第2突出部に取り付けられている、請求項1又は2に記載のスタッカクレーンの検査方法。
【請求項4】
一対の前記第1センサ部材が前記対向直交方向に並んで配置され、
一対の前記第2センサ部材が前記対向直交方向に並んで配置されている、請求項3に記載のスタッカクレーンの検査方法。
【請求項5】
前記昇降体は、一対の前記マストの少なくとも一方において前記上下方向に沿って延在するように配置された駆動ベルトに連結されており、
前記スライダ取付工程の実行中に、前記駆動ベルトが前記昇降レールから離間するように、固定部材を用いて前記駆動ベルトを前記マストに固定する、請求項1又は2に記載のスタッカクレーンの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッカクレーンの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、走行経路(17)に沿って走行する走行台車(20)と、当該走行台車に固定され、上下方向に沿うように設けられた一対のマスト(19)と、当該一対のマストに沿って昇降する昇降体(21)と、を備えたスタッカクレーン(14)が開示されている。なお、背景技術の説明において括弧内に示す符号は、特許文献1のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなスタッカクレーン(14)においては、マスト(19)の傾きや歪みがあるか否かの検査が行われることがある。この検査の際には、スタッカクレーン(14)に設けられた梯子(25)を作業者が昇り、上下方向の複数箇所においてマスト(19)の傾き等を測定する作業が行われる。
【0005】
そのため、従来のスタッカクレーンの検査方法では、作業者による検査作業が煩雑となり易かった。更に、作業者が高所で検査作業を行うため、作業者の安全性を確保する必要があった。
【0006】
そこで、検査作業の容易性及び安全性を高めることが可能なスタッカクレーンの検査方法の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、スタッカクレーンの検査方法の特徴構成は、
走行経路に沿って走行する走行台車と、
前記走行台車に固定され、上下方向に沿うように設けられた一対のマストと、
一対の前記マストのそれぞれに取り付けられ、前記上下方向に沿うように設けられた昇降レールと、
一対の前記昇降レールに沿って昇降する昇降体と、を備えたスタッカクレーンの検査方法であって、
それぞれが前記昇降レールに沿って昇降自在な一対の検査用スライダと、互いの離間距離を測定する第1検査装置及び第2検査装置と、紐状に形成された第1紐状体及び第2紐状体と、前記第1紐状体及び前記第2紐状体が巻き掛けられる巻掛機構と、を準備する準備工程と、
前記昇降体に前記巻掛機構を取り付ける巻掛機構取付工程と、
前記第1紐状体及び前記第2紐状体を前記巻掛機構に巻き掛ける巻掛工程と、
前記巻掛工程の後、前記第1紐状体の両端部及び前記第2紐状体の両端部を保持した状態で、前記昇降体を一対の前記昇降レールの上部に移動させる昇降体上昇工程と、
一対の前記昇降レールの一方に、一対の前記検査用スライダの一方である第1スライダを取り付け、一対の前記昇降レールの他方に一対の前記検査用スライダの他方である第2スライダを取り付けるスライダ取付工程と、
前記第1スライダに前記第1検査装置を取り付け、前記第2スライダに前記第2検査装置を取り付ける検査装置取付工程と、
前記第1紐状体の一方の端部である第1端部を前記第1スライダ及び前記第1検査装置の少なくとも一方に取り付け、前記第2紐状体の一方の端部である第2端部を前記第2スライダ及び前記第2検査装置の少なくとも一方に取り付ける紐状体取付工程と、
前記巻掛機構取付工程、前記巻掛工程、前記昇降体上昇工程、前記スライダ取付工程、前記検査装置取付工程、及び前記紐状体取付工程の後、前記第1紐状体における他方の端部である第3端部の側の部分、及び前記第2紐状体における他方の端部である第4端部の側の部分を操作して、前記第1検査装置及び前記第2検査装置を前記昇降レールに沿って昇降させる検査装置昇降工程と、
前記検査装置昇降工程により前記第1検査装置及び前記第2検査装置を昇降させて、前記第1検査装置と前記第2検査装置との離間距離を測定する測定工程と、を備えている点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、上下方向の複数箇所で第1検査装置と第2検査装置との離間距離を測定することにより、一対のマスト及び一対の昇降レールの傾きや歪みを検査することができる。そして、このような検査を行う場合に、作業者が梯子に登ってマストの傾きや歪みの測定を行うといった高所作業の必要性を低減することができる。したがって、検査作業の容易性及び安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態に係るスタッカクレーンの一部拡大図
【
図3】実施形態に係るスタッカクレーンのマスト近傍の構成を示す断面図
【
図4】実施形態に係るスタッカクレーンの検査方法を示すフローチャート
【
図5】実施形態に係る巻掛機構取付工程及び巻掛工程の完了後の様子を示す図
【
図6】実施形態に係るスライダ取付工程及び検査装置取付工程の完了後の様子を示す断面図
【
図7】実施形態に係るスライダ取付工程を行っている様子を示す斜視図
【
図8】実施形態に係るスライダ取付工程を行っている様子を示す断面図
【
図9】実施形態に係る検査装置昇降工程を行っている様子を示す斜視図
【
図10】実施形態に係る測定工程を行っている様子を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、スタッカクレーンの検査方法に係る、スタッカクレーン100の検査工程S100について、図面を参照して説明する。
【0011】
まず、スタッカクレーン100について説明する。
図1及び
図2に示すように、スタッカクレーン100は、走行経路11に沿って走行する走行台車1と、当該走行台車1に固定され、上下方向Zに沿うように設けられた一対のマスト2と、当該一対のマスト2のそれぞれに取り付けられ、上下方向Zに沿うように設けられた昇降レール3と、一対の昇降レール3に沿って昇降する昇降体4と、を備えている。
【0012】
なお、
図10に示すように、本実施形態では、スタッカクレーン100は、天井側に設けられた案内レールRに案内される被案内部Gを更に備えている。被案内部Gには、一対のマスト2の上端部が固定されている。
図10に示す例では、スタッカクレーン100は、昇降体4を挟んで一対のマスト2とは反対側に、上下方向Zに沿うように設けられて走行台車1と被案内部Gとを連結する連結体Cを備えているが、
図10以外の図面ではこの連結体Cの図示を省略している。
【0013】
以下の説明では、一対のマスト2が対向する方向を「対向方向X」とする。また、上下方向Zに沿う上下方向視で、対向方向Xに直交する方向を「対向直交方向Y」とする。そして、対向直交方向Yの一方側を「対向直交方向第1側Y1」とし、対向直交方向Yの他方側を「対向直交方向第2側Y2」とする。なお、本実施形態では、上下方向Zは、鉛直方向に一致する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態では、走行経路11は、対向直交方向Yに沿って延在するレールにより構成されている。つまり、本実施形態では、走行台車1は、対向直交方向Yに沿って走行する。
【0015】
本実施形態では、一対のマスト2は、対向方向Xにおいて対称である以外は、互いに同様に構成されている。そして、一対の昇降レール3も、対向方向Xにおいて対称である以外は、互いに同様に構成されている。そのため、便宜上、
図2及び
図3において、一方のマスト2及びそれに取り付けられた昇降レール3を図示し、他方のマスト2及びそれに取り付けられた昇降レール3の図示を省略している。そして、特に記載する場合を除いて、他方のマスト2及びそれに取り付けられた昇降レール3の説明を省略する。
【0016】
図3に示すように、マスト2には、当該マスト2の内部空間を成す、第1収容部A1及び第2収容部A2が形成されている。本実施形態では、マスト2は、第1収容部A1と第2収容部A2とを隔てるように形成された隔壁部21と、第1収容部A1の一部を覆うように形成されたカバー部材22と、第1収容部A1の一部を覆うように形成された第1側壁部23と、第2収容部A2を覆うように形成された第2側壁部24と、を備えている。
【0017】
隔壁部21は、対向方向Xに沿って延在するように形成されている。そして、隔壁部21は、第1収容部A1と第2収容部A2とを、対向直交方向Yに隔てるように配置されている。本実施形態では、隔壁部21に対して対向直交方向第1側Y1に第1収容部A1が配置され、隔壁部21に対して対向直交方向第2側Y2に第2収容部A2が配置されている。
【0018】
カバー部材22は、対向方向Xの一方側(
図3における左側)及び対向直交方向第1側Y1から第1収容部A1を覆うように形成されている。カバー部材22は、隔壁部21に対して着脱可能に構成されている。図示の例では、カバー部材22は、隔壁部21における対向方向Xの一方側(
図3における左側)の端部から対向直交方向第1側Y1に延出し、更に対向方向Xの他方側(
図3における右側)に向けて湾曲するように形成されている。そして、カバー部材22における対向直交方向第2側Y2の端部が、隔壁部21における対向方向Xの一方側(
図3における左側)の端部に対して、ボルトにより固定されている。
【0019】
第1側壁部23は、対向方向Xの他方側(
図3における右側)及び対向直交方向第1側Y1から第1収容部A1を覆うように形成されている。第1側壁部23は、隔壁部21に固定されている。図示の例では、第1側壁部23は、隔壁部21における対向方向Xの他方側(
図3における右側)の端部から対向直交方向第1側Y1に延出し、更に対向方向Xの一方側(
図3における左側)に向けて湾曲するように形成されている。そして、第1側壁部23は、隔壁部21と一体的に形成されている。
【0020】
第2側壁部24は、対向方向Xの両側及び対向直交方向第2側Y2から第2収容部A2を覆うように形成されている。第2側壁部24は、隔壁部21に固定されている。図示の例では、第2側壁部24は、隔壁部21と一体的に形成されている。
【0021】
図3に示すように、本実施形態では、一対のマスト2は、対向方向Xに沿って延在する連結部材25により互いに連結されている(
図6も参照)。図示の例では、連結部材25は、一対のマスト2の第2側壁部24同士を連結するように配置されている。なお、図示は省略するが、複数の連結部材25が、互いに上下方向Zに間隔を空けて配置されている。
【0022】
図1に示すように、本実施形態では、複数のカバー部材22が、上下方向Zに並んで配置されている。以下の説明では、複数のカバー部材22のうち、最も下方に位置するカバー部材22を、「最下カバー部材22L」とする。
【0023】
図2では、最下カバー部材22Lが取り外されている。
図2に示すように、本実施形態では、昇降レール3は、複数のレール部材31により構成されている。複数のレール部材31は、上下方向Zに沿って連続して配置されている。以下の説明では、複数のレール部材31のうち、最も下方に位置するレール部材31を、「最下レール部材31L」とする。
【0024】
また、
図3に示すように、昇降レール3は、マスト2に対して着脱可能に構成されている。本実施形態では、昇降レール3は、第1収容部A1に配置されている。そして、昇降レール3は、マスト2の隔壁部21に対して、対向直交方向第1側Y1から固定されている。図示の例では、昇降レール3は、ボルトを用いて隔壁部21に固定されている。
【0025】
図3に示すように、本実施形態では、昇降体4は、本体部41と、それぞれが昇降レール3に沿って摺動する一対の昇降スライダ42と、本体部41と一対の昇降スライダ42とを連結する一対の昇降連結部材43と、を備えている(
図1も参照)。
【0026】
本体部41は、一対のマスト2に対して対向直交方向第1側Y1に配置されている。本体部41は、対向方向X及び対向直交方向Yに延在する台状に形成されている。本実施形態では、本体部41は、移載装置(図示を省略)を下方から支持するように構成されている。図示は省略するが、移載装置は、規定の移載対象箇所との間で、物品の受け渡しを行うように構成されている。
【0027】
昇降スライダ42は、上下方向Zに沿って昇降レール3上を摺動するように構成されている。なお、昇降スライダ42及び昇降レール3として、既存の直動機構を用いることが可能である。
【0028】
昇降連結部材43は、本体部41と昇降スライダ42とを連結するように、対向直交方向Yに沿って延在している。昇降連結部材43がマスト2のカバー部材22及び第1側壁部23に干渉しないように、カバー部材22と第1側壁部23とが対向方向Xに間隔を空けて配置されている。本実施形態では、マスト2のカバー部材22における対向直交方向第1側Y1から第1収容部A1を覆う部分と、マスト2の第1側壁部23における対向直交方向第1側Y1から第1収容部A1を覆う部分との対向方向Xの間に、上下方向Zに沿うスリット状の空隙が形成されている。
【0029】
図2及び
図3に示すように、本実施形態では、昇降体4は、駆動ベルト51に連結されている。駆動ベルト51は、一対のマスト2の少なくとも一方において、上下方向Zに沿って延在するように配置されている。本実施形態では、駆動ベルト51は、一対のマスト2のそれぞれに配置されている。
【0030】
図2に示すように、本実施形態では、駆動ベルト51は、駆動プーリ52及び従動プーリ(図示を省略)に巻き掛けられている。駆動プーリ52は、昇降用モータ53(
図1参照)により回転駆動される。本実施形態では、駆動プーリ52は、マスト2の下方に配置されている。図示の例では、駆動プーリ52は、走行台車1の内部に配置されている。また、図示は省略するが、従動プーリは、マスト2の上方に配置されている。
【0031】
図3に示すように、本実施形態では、駆動ベルト51は、上下方向Zに沿って延在する第1上下方向延在部51a及び第2上下方向延在部51bを備えている。第1上下方向延在部51aは第1収容部A1に配置され、第2上下方向延在部51bは第2収容部A2に配置されている。なお、駆動ベルト51は、駆動プーリ52及び従動プーリを介して、昇降用モータ53により回転駆動されるが、第1上下方向延在部51a及び第2上下方向延在部51bの位置は変化しない。このように、第1上下方向延在部51a及び第2上下方向延在部51bは、駆動ベルト51の特定の部分を指すものではなく、駆動ベルト51における駆動プーリ52及び従動プーリに接触していない部分を指す。
【0032】
本実施形態では、第1上下方向延在部51aに、昇降スライダ42及び昇降連結部材43が連結されている。そのため、駆動ベルト51の回転に伴い、昇降スライダ42及び昇降連結部材43を介して、本体部41が上下方向Zに移動する。つまり、駆動ベルト51の回転に伴い、昇降体4が昇降する。
【0033】
図2に示すように、本実施形態では、昇降レール3の最下レール部材31Lに、昇降体4の下方への移動を規制する規制部材10が固定されている。規制部材10は、当該規制部材10に昇降スライダ42が上方から当接することで、昇降スライダ42の下方への移動を規制する。本実施形態では、規制部材10は、最下レール部材31L上を上下方向Zに摺動自在に構成されている。そして、規制部材10は、ボルト等の固定部材により、最下レール部材31Lに固定されている。
【0034】
次に、スタッカクレーン100の検査工程S100について説明する。
図4に示すように、検査工程S100は、準備工程S1と、巻掛機構取付工程S2と、巻掛工程S3と、昇降体上昇工程S4と、スライダ取付工程S5と、検査装置取付工程S6と、紐状体取付工程S7と、検査装置昇降工程S8と、測定工程S9と、を備えている。
【0035】
準備工程S1は、それぞれが昇降レール3に沿って昇降自在な一対の検査用スライダ6と、互いの離間距離を測定する第1検査装置7A及び第2検査装置7Bと、紐状に形成された第1紐状体8A及び第2紐状体8Bと、当該第1紐状体8A及び第2紐状体8Bが巻き掛けられる巻掛機構9と、を準備する工程である。
【0036】
巻掛機構取付工程S2は、昇降体4に巻掛機構9を取り付ける工程である。本実施形態では、巻掛機構取付工程S2は、準備工程S1の後に行われる。
【0037】
図5に示すように、本実施形態では、巻掛機構9は、第1巻掛部材91と、第2巻掛部材92と、を備えている。本実施形態の巻掛機構取付工程S2では、昇降体4を作業者Wの手が届く程度の上下方向Zの位置に移動させ、昇降体4の本体部41の下面に第1巻掛部材91及び第2巻掛部材92を取り付ける。
【0038】
第1巻掛部材91及び第2巻掛部材92のそれぞれは、第1紐状体8A及び第2紐状体8Bが巻き掛けられるように構成されている。本例では、第1巻掛部材91及び第2巻掛部材92のそれぞれは、アイボルトである。
【0039】
巻掛工程S3は、第1紐状体8A及び第2紐状体8Bを巻掛機構9に巻き掛ける工程である。巻掛工程S3では、第1紐状体8A及び第2紐状体8Bのそれぞれが巻掛機構9に対して相対移動自在となるように、第1紐状体8A及び第2紐状体8Bを巻掛機構9に巻き掛ける。第1紐状体8A及び第2紐状体8Bとしては、ワイヤ、ロープ、ベルト等を用いることが可能である。本実施形態では、巻掛工程S3は、巻掛機構取付工程S2の後に行われる。
【0040】
図5に示すように、本実施形態では、第1紐状体8Aを第1巻掛部材91に引っ掛ける。そして、第1紐状体8Aの一方の端部である第1端部8Aaと、他方の端部である第3端部8Abとを、上下方向Zにおける同程度の位置とする。また、本実施形態では、第2紐状体8Bを第2巻掛部材92に引っ掛ける。そして、第2紐状体8Bの一方の端部である第2端部8Baと、他方の端部である第4端部8Bbとを、上下方向Zにおける同程度の位置とする。
【0041】
昇降体上昇工程S4は、巻掛工程S3の後、第1紐状体8Aの両端部(第1端部8Aa及び第3端部8Ab)及び第2紐状体8Bの両端部(第2端部8Ba及び第4端部8Bb)を保持した状態で、昇降体4を一対の昇降レール3の上部に移動させる工程である。本実施形態の昇降体上昇工程S4では、作業者Wが第1紐状体8Aの両端部及び第2紐状体8Bの両端部を保持した状態で、昇降用モータ53を駆動させることにより、昇降体4を一対の昇降レール3の上部まで上昇させる。なお、「昇降レール3の上部」は、例えば、昇降レール3を上下方向Zに3等分した場合における、最も上方の部分を意味する。好ましくは、「昇降レール3の上部」は、昇降レール3に沿った昇降体4の昇降範囲における最上位置とされる。
【0042】
スライダ取付工程S5は、一対の昇降レール3の一方に、一対の検査用スライダ6の一方である第1スライダ61を取り付け、一対の昇降レール3の他方に一対の検査用スライダ6の他方である第2スライダ62を取り付ける工程である。
図6に示すように、スライダ取付工程S5では、一方の昇降レール3のレール部材31に第1スライダ61を摺動自在に取り付け、他方の昇降レール3のレール部材31に第2スライダ62を摺動自在に取り付ける。第1スライダ61及び第2スライダ62のそれぞれは、昇降スライダ42と同様に構成されている。本実施形態では、スライダ取付工程S5は、昇降体上昇工程S4の後に行われる。
【0043】
図7に示すように、本実施形態のスライダ取付工程S5では、最下レール部材31L及び規制部材10(
図2参照)をマスト2から取り外す。その後、最下レール部材31Lを取り外すことで生じた領域を利用して、最下レール部材31Lに対して上方に隣接していたレール部材31に対して下方から検査用スライダ6を取り付ける。
【0044】
また、
図7及び
図8に示すように、本実施形態のスライダ取付工程S5では、駆動ベルト51が昇降レール3から離間するように、固定部材20を用いて駆動ベルト51をマスト2に固定する。本実施形態では、固定部材20は、駆動ベルト51の第1上下方向延在部51aをマスト2の第1側壁部23に接近させた状態で、第1側壁部23に固定可能に構成されている。図示の例では、固定部材20は、上下方向Zに沿う上下方向視で、U字状に形成されている。このように、固定部材20を用いて駆動ベルト51をマスト2に固定することで、昇降レール3の周囲のスペースを大きく確保することができる。したがって、上記のような昇降レール3に対する検査用スライダ6の取付作業を容易に行うことができる。
【0045】
検査装置取付工程S6は、第1スライダ61に第1検査装置7Aを取り付け、第2スライダ62に第2検査装置7Bを取り付ける工程である。本実施形態では、検査装置取付工程S6は、スライダ取付工程S5の後に行われる。
【0046】
図6に示すように、本実施形態では、第1検査装置7Aは、第1スライダ61に連結される第1連結部材71Aと、距離センサ70を構成する第1センサ部材72Aと、を備えている。また、第2検査装置7Bは、第2スライダ62に連結される第2連結部材71Bと、距離センサ70を構成する第2センサ部材72Bと、を備えている。
【0047】
本実施形態では、第1連結部材71Aは、第1スライダ61に対して対向直交方向第1側Y1に突出する第1突出部711Aと、第1スライダ61に取り付けられる第1取付部712Aと、第1突出部711Aと第1取付部712Aとを接続するように形成された第1接続部713Aと、を備えている。
【0048】
また、本実施形態では、第2連結部材71Bは、第2スライダ62に対して対向直交方向第1側Y1に突出する第2突出部711Bと、第2スライダ62に取り付けられる第2取付部712Bと、第2突出部711Bと第2取付部712Bとを接続するように形成された第2接続部713Bと、を備えている。
【0049】
第1突出部711Aは、対向直交方向Yに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、第1突出部711Aは、一方のマスト2の第1収容部A1における駆動ベルト51の第1上下方向延在部51aよりも対向直交方向第1側Y1から、マスト2の外部に亘って配置されている。また、本実施形態では、第1取付部712Aは、駆動ベルト51の第1上下方向延在部51aと第1スライダ61との対向直交方向Yの間に配置されている。そして、第1取付部712Aは、第1スライダ61に対して対向直交方向第1側Y1から当接した状態で、ボルト等の固定部材により第1スライダ61に固定されている。また、第1接続部713Aは、駆動ベルト51の第1上下方向延在部51aに干渉しないように、対向方向Xの一方側(ここでは、
図6における左側)に迂回して第1突出部711Aと第1取付部712Aとを接続している。
【0050】
第2突出部711Bは、対向直交方向Yに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、第2突出部711Bは、他方のマスト2の第1収容部A1における駆動ベルト51の第1上下方向延在部51aよりも対向直交方向第1側Y1から、マスト2の外部に亘って配置されている。また、本実施形態では、第2取付部712Bは、駆動ベルト51の第1上下方向延在部51aと第2スライダ62との対向直交方向Yの間に配置されている。そして、第2取付部712Bは、第2スライダ62に対して対向直交方向第1側Y1から当接した状態で、ボルト等の固定部材により第2スライダ62に固定されている。また、第2接続部713Bは、駆動ベルト51の第1上下方向延在部51aに干渉しないように、対向方向Xの他方側(ここでは、
図6における右側)に迂回して第2突出部711Bと第2取付部712Bとを接続している。
【0051】
上述したように、第1センサ部材72Aと第2センサ部材72Bとは、距離センサ70を構成している。本実施形態では、第1センサ部材72Aは、レーザ光を発振する発振器と、レーザ光を受光する受光器とを備えている。そして、第2センサ部材72Bは、第1センサ部材72Aの発振器から発振されたレーザ光を、第1センサ部材72Aの受光器に向けて反射させるように構成されている。本実施形態では、第1センサ部材72Aと通信可能に接続された演算装置(図示を省略)は、レーザ光が第1センサ部材72Aの発振器から発振されて受光器により受光されるまでの時間に基づいて、第1センサ部材72Aと第2センサ部材72Bとの離間距離を算出する。このように、本実施形態では、距離センサ70は、反射型のレーザ距離センサとして構成されている。
【0052】
本実施形態では、第1センサ部材72Aと第2センサ部材72Bとは、互いに対向方向Xに対向するように配置されている。そして、第1センサ部材72Aは、第1連結部材71Aの第1突出部711Aに取り付けられている。また、第2センサ部材72Bは、第2連結部材71Bの第2突出部711Bに取り付けられている。本例では、第2突出部711Bにおける第1センサ部材72Aに対向する面が、第2センサ部材72Bとして機能する。
【0053】
図6に示すように、本実施形態では、一対の第1センサ部材72Aが対向直交方向Yに並んで配置されている。そして、一対の第2センサ部材72Bが対向直交方向Yに並んで配置されている。つまり、本実施形態では、一対の距離センサ70が対向直交方向Yに並んで配置されている。
【0054】
紐状体取付工程S7は、第1紐状体8Aの第1端部8Aaを第1スライダ61及び第1検査装置7Aの少なくとも一方に取り付け、第2紐状体8Bの第2端部8Baを第2スライダ62及び第2検査装置7Bの少なくとも一方に取り付ける工程である。本実施形態では、紐状体取付工程S7は、検査装置取付工程S6の後に行われる。
【0055】
図9に示すように、本実施形態の紐状体取付工程S7では、第1検査装置7Aにおける第1連結部材71Aの第1突出部711Aに第1固定部材73Aを取り付け、当該第1固定部材73Aに第1紐状体8Aの第1端部8Aaを括り付ける。そして、第2検査装置7Bにおける第2連結部材71Bの第2突出部711Bに第2固定部材73Bを取り付け、当該第2固定部材73Bに第2紐状体8Bの第2端部8Baを括り付ける。図示の例では、第1固定部材73Aは第1突出部711Aの上面に固定され、第2固定部材73Bは第2突出部711Bの上面に固定されている。また、本例では、第1固定部材73A及び第2固定部材73Bのそれぞれは、アイボルトである。
【0056】
検査装置昇降工程S8は、巻掛機構取付工程S2、巻掛工程S3、昇降体上昇工程S4、スライダ取付工程S5、検査装置取付工程S6、及び紐状体取付工程S7の後に行われる。検査装置昇降工程S8は、第1紐状体8Aにおける第3端部8Abの側の部分、及び第2紐状体8Bにおける第4端部8Bbの側の部分を操作して、第1検査装置7A及び第2検査装置7Bを昇降レール3に沿って昇降させる工程である。ここで、「第1紐状体8Aにおける第3端部8Abの側の部分」とは、巻掛機構9(第1巻掛部材91)に巻き掛けられた第1紐状体8Aにおける、巻掛機構9(第1巻掛部材91)よりも第3端部8Abの側の部分を指す。また、「第2紐状体8Bにおける第4端部8Bbの側の部分」とは、巻掛機構9(第2巻掛部材92)に巻き掛けられた第2紐状体8Bにおける、巻掛機構9(第2巻掛部材92)よりも第4端部8Bbの側の部分を指す。
【0057】
本実施形態の検査装置昇降工程S8では、第1紐状体8A及び第2紐状体8Bを、互いに同じ長さ分繰り出し又は引き寄せる操作を行うことで、第1検査装置7A及び第2検査装置7Bを、互いに同じ高さ分昇降させる。例えば、検査装置昇降工程S8では、第1紐状体8A及び第2紐状体8Bを、互いに同じ長さ分引き寄せる操作を行うことで、第1検査装置7A及び第2検査装置7Bを、互いに同じ高さ分上昇させる。或いは、検査装置昇降工程S8では、第1紐状体8A及び第2紐状体8Bを、互いに同じ長さ分繰り出す操作を行うことで、第1検査装置7A及び第2検査装置7Bを、互いに同じ高さ分下降させる。本例では、第1紐状体8Aにおける第3端部8Abの側の部分と、第2紐状体8Bにおける第4端部8Bbの側の部分とを互いに結び付けて結び部を形成する。そして、例えば、当該結び部を作業者Wが一定の速度で下方に引っ張ることで、第1検査装置7A及び第2検査装置7Bを一定の速度で上昇させる。
【0058】
測定工程S9は、検査装置昇降工程S8により第1検査装置7A及び第2検査装置7Bを昇降させて、第1検査装置7Aと第2検査装置7Bとの離間距離を測定する工程である。
図10に示すように、本実施形態の測定工程S9では、上下方向Zにおいて互いに離間した複数箇所において、距離センサ70として構成された、第1検査装置7Aの第1センサ部材72Aと第2検査装置7Bの第2センサ部材72Bとの離間距離を測定する。なお、第1センサ部材72Aと第2センサ部材72Bとの離間距離の測定は、第1検査装置7A及び第2検査装置7Bの昇降中(昇降動作の実行中)に行っても、第1検査装置7A及び第2検査装置7Bの停止中(昇降動作の停止中)に行っても良い。
【0059】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、巻掛機構取付工程S2、巻掛工程S3、昇降体上昇工程S4、スライダ取付工程S5、検査装置取付工程S6、紐状体取付工程S7、及び検査装置昇降工程S8を記載の順に行う構成を例として説明した。しかし、巻掛工程S3の後に昇降体上昇工程S4が行われると共に、巻掛機構取付工程S2、巻掛工程S3、昇降体上昇工程S4、スライダ取付工程S5、検査装置取付工程S6、及び紐状体取付工程S7の後に検査装置昇降工程S8が行われれば、それ以外の順序は問わない。例えば、巻掛機構取付工程S2の前に巻掛工程S3を行っても良いし、スライダ取付工程S5の前に検査装置取付工程S6を行っても良い。
【0060】
(2)上記の実施形態では、巻掛機構9が第1巻掛部材91及び第2巻掛部材92を備え、第1巻掛部材91及び第2巻掛部材92にそれぞれ第1紐状体8A及び第2紐状体8Bが巻き掛けられる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、巻掛機構9が1つの巻掛部材のみを備え、当該巻掛部材に第1紐状体8A及び第2紐状体8Bの双方を巻き掛けても良い。
【0061】
(3)上記の実施形態では、第1巻掛部材91及び第2巻掛部材92のそれぞれがアイボルトである構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1巻掛部材91及び第2巻掛部材92の少なくとも一方が滑車であっても良い。
【0062】
(4)上記の実施形態では、紐状体取付工程S7において、第1検査装置7Aの第1連結部材71Aに取り付けた第1固定部材73Aに、第1紐状体8Aの第1端部8Aaを括り付けると共に、第2検査装置7Bの第2連結部材71Bに取り付けた第2固定部材73Bに第2紐状体8Bの第2端部8Baを括り付ける構成、つまり、第1紐状体8Aの第1端部8Aaを第1検査装置7Aに取り付け、第2紐状体8Bの第2端部8Baを第2検査装置7Bに取り付ける構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1紐状体8Aの第1端部8Aaを第1スライダ61に取り付け、第2紐状体8Bの第2端部8Baを第2スライダ62に取り付けても良い。
【0063】
(5)上記の実施形態では、検査装置昇降工程S8において、第1紐状体8Aにおける第3端部8Abの側の部分と、第2紐状体8Bにおける第4端部8Bbの側の部分とを互いに結び付けた結び部を、作業者Wが操作する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1紐状体8Aにおける第3端部8Abの側の部分を作業者Wの一方の手で操作し、第2紐状体8Bにおける第4端部8Bbの側の部分を作業者Wの他方の手で操作しても良い。或いは、第1紐状体8Aにおける第3端部8Abの側の部分を作業者Wが操作し、第2紐状体8Bにおける第4端部8Bbの側の部分を作業者Wとは別の作業者が操作しても良い。また、検査装置昇降工程S8を作業者Wが手動で行わず、第1紐状体8Aにおける第3端部8Abの側の部分と、第2紐状体8Bにおける第4端部8Bbの側の部分とを把持する把持装置を用いて自動で行っても良い。
【0064】
(6)上記の実施形態では、検査装置昇降工程S8において、第1紐状体8Aにおける第3端部8Abの側の部分と、第2紐状体8Bにおける第4端部8Bbの側の部分とを、作業者Wが下方に引っ張る(引き寄せる)ことで、第1検査装置7A及び第2検査装置7Bを上昇させる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、検査装置昇降工程S8において、第1紐状体8Aにおける第3端部8Abの側の部分と、第2紐状体8Bにおける第4端部8Bbの側の部分とを、作業者Wが繰り出すことで、第1検査装置7A及び第2検査装置7Bの自重により、第1検査装置7A及び第2検査装置7Bを下降させても良い。また、上記の実施形態では、検査装置昇降工程S8より第1検査装置7A及び第2検査装置7Bを上昇させつつ、複数箇所で測定工程S9を実行する構成を例として説明したが、検査装置昇降工程S8より第1検査装置7A及び第2検査装置7Bを下降させつつ、複数箇所で測定工程S9を実行しても良い。
【0065】
(7)上記の実施形態では、距離センサ70が反射型のレーザ距離センサである構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1センサ部材72Aが第2センサ部材72Bに向けてレーザ光を発振すると共に、第2センサ部材72Bが第1センサ部材72Aから発振されたレーザ光を受信するように構成されていても良い。
【0066】
(8)上記の実施形態では、2つの距離センサ70が対向直交方向Yに並んで配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、3つ以上の距離センサ70が対向直交方向Yに並んで配置されていても良い。或いは、1つの距離センサ70が設けられた構成としても良い。
【0067】
(9)上記の実施形態では、スライダ取付工程S5において、駆動ベルト51が昇降レール3から離間するように、固定部材20を用いて駆動ベルト51をマスト2に固定する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、スライダ取付工程S5において、駆動ベルト51が昇降レール3から離間するように作業者Wが手で駆動ベルト51を固定しても良い。
【0068】
(10)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0069】
〔上記実施形態の概要〕
以下では、上記において説明したスタッカクレーンの検査方法の概要について説明する。
【0070】
スタッカクレーンの検査方法は、
走行経路に沿って走行する走行台車と、
前記走行台車に固定され、上下方向に沿うように設けられた一対のマストと、
一対の前記マストのそれぞれに取り付けられ、前記上下方向に沿うように設けられた昇降レールと、
一対の前記昇降レールに沿って昇降する昇降体と、を備えたスタッカクレーンの検査方法であって、
それぞれが前記昇降レールに沿って昇降自在な一対の検査用スライダと、互いの離間距離を測定する第1検査装置及び第2検査装置と、紐状に形成された第1紐状体及び第2紐状体と、前記第1紐状体及び前記第2紐状体が巻き掛けられる巻掛機構と、を準備する準備工程と、
前記昇降体に前記巻掛機構を取り付ける巻掛機構取付工程と、
前記第1紐状体及び前記第2紐状体を前記巻掛機構に巻き掛ける巻掛工程と、
前記巻掛工程の後、前記第1紐状体の両端部及び前記第2紐状体の両端部を保持した状態で、前記昇降体を一対の前記昇降レールの上部に移動させる昇降体上昇工程と、
一対の前記昇降レールの一方に、一対の前記検査用スライダの一方である第1スライダを取り付け、一対の前記昇降レールの他方に一対の前記検査用スライダの他方である第2スライダを取り付けるスライダ取付工程と、
前記第1スライダに前記第1検査装置を取り付け、前記第2スライダに前記第2検査装置を取り付ける検査装置取付工程と、
前記第1紐状体の一方の端部である第1端部を前記第1スライダ及び前記第1検査装置の少なくとも一方に取り付け、前記第2紐状体の一方の端部である第2端部を前記第2スライダ及び前記第2検査装置の少なくとも一方に取り付ける紐状体取付工程と、
前記巻掛機構取付工程、前記巻掛工程、前記昇降体上昇工程、前記スライダ取付工程、前記検査装置取付工程、及び前記紐状体取付工程の後、前記第1紐状体における他方の端部である第3端部の側の部分、及び前記第2紐状体における他方の端部である第4端部の側の部分を操作して、前記第1検査装置及び前記第2検査装置を前記昇降レールに沿って昇降させる検査装置昇降工程と、
前記検査装置昇降工程により前記第1検査装置及び前記第2検査装置を昇降させて、前記第1検査装置と前記第2検査装置との離間距離を測定する測定工程と、を備えている。
【0071】
この構成によれば、上下方向の複数箇所で第1検査装置と第2検査装置との離間距離を測定することにより、一対のマスト及び一対の昇降レールの傾きや歪みを検査することができる。そして、このような検査を行う場合に、作業者が梯子に登ってマストの傾きや歪みの測定を行うといった高所作業の必要性を低減することができる。したがって、検査作業の容易性及び安全性を高めることができる。
【0072】
ここで、前記検査装置昇降工程では、前記第1紐状体及び前記第2紐状体を、互いに同じ長さ分繰り出し又は引き寄せる操作を行うことで、前記第1検査装置及び前記第2検査装置を、互いに同じ高さ分昇降させると好適である。
【0073】
この構成によれば、第1検査装置と第2検査装置との上下方向の位置関係を一定に保つことができる。したがって、検査精度を高く確保し易い。
【0074】
また、一対の前記マストが対向する方向を対向方向とし、前記上下方向に沿う上下方向視で前記対向方向に直交する方向を対向直交方向とし、前記対向直交方向の一方側を対向直交方向第1側として、
前記第1検査装置は、前記第1スライダに連結される第1連結部材と、距離センサを構成する第1センサ部材と、を備え、
前記第2検査装置は、前記第2スライダに連結される第2連結部材と、前記距離センサを構成する第2センサ部材と、を備え、
前記第1連結部材は、前記第1スライダに対して前記対向直交方向第1側に突出する第1突出部を備え、
前記第2連結部材は、前記第2スライダに対して前記対向直交方向第1側に突出する第2突出部を備え、
前記第1センサ部材と前記第2センサ部材とが互いに前記対向方向に対向するように、前記第1センサ部材が前記第1突出部に取り付けられていると共に、前記第2センサ部材が前記第2突出部に取り付けられていると好適である。
【0075】
この構成によれば、測定工程において第1検査装置と第2検査装置との離間距離を適切に測定することができる。
【0076】
前記第1検査装置が前記第1連結部材及び前記第1センサ部材を備え、前記第2検査装置が前記第2連結部材及び前記第2センサ部材を備えた構成において、
一対の前記第1センサ部材が前記対向直交方向に並んで配置され、
一対の前記第2センサ部材が前記対向直交方向に並んで配置されていると好適である。
【0077】
この構成によれば、対向方向に対する一対のマストの傾斜角度を測定することができる。
【0078】
また、前記昇降体は、一対の前記マストの少なくとも一方において前記上下方向に沿って延在するように配置された駆動ベルトに連結されており、
前記スライダ取付工程の実行中に、前記駆動ベルトが前記昇降レールから離間するように、固定部材を用いて前記駆動ベルトを前記マストに固定すると好適である。
【0079】
この構成によれば、スライダ取付工程を容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示に係る技術は、スタッカクレーンの検査方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
100 :スタッカクレーン
1 :走行台車
11 :走行経路
2 :マスト
3 :昇降レール
4 :昇降体
6 :検査用スライダ
61 :第1スライダ
62 :第2スライダ
7A :第1検査装置
7B :第2検査装置
8A :第1紐状体
8Aa :第1端部
8Ab :第3端部
8B :第2紐状体
8Ba :第2端部
8Bb :第4端部
9 :巻掛機構
Z :上下方向