IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -ソーラーパネル 図1
  • -ソーラーパネル 図2
  • -ソーラーパネル 図3
  • -ソーラーパネル 図4
  • -ソーラーパネル 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ソーラーパネル
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/042 20140101AFI20241217BHJP
【FI】
H01L31/04 500
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022078681
(22)【出願日】2022-05-12
(65)【公開番号】P2023167473
(43)【公開日】2023-11-24
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰造
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104600141(CN,A)
【文献】特表2021-530877(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0125391(US,A1)
【文献】特開2007-103536(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0194143(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0188551(US,A1)
【文献】国際公開第2020/054130(WO,A1)
【文献】特表2017-517145(JP,A)
【文献】特開2022-032239(JP,A)
【文献】特開2013-197190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーラーパネルであって、
複数の太陽電池セルが一方向に配列されたセル群にして、互いに隣接する前記太陽電池セルのうちの一方の表面の縁部分が他方の裏面の縁部分の下に重なるように配置され、前記重なっている縁部分の間と前記太陽電池セルの裏面とに、前記複数の太陽電池セルを互いに電気的に接続する接続要素が配置されているセル群を含み、
前記セル群に於いて、少なくとも二つの太陽電池セルを電気的に並列に接続した並列接続領域が複数形成され、前記並列接続領域が電気的に直列に接続され、これにより、前記一方向に配列された複数枚のセルの間に於いて、隣接したセルが電気的に並列に接続された部分と、隣接したセルが電気的に直列に接続された部分とが形成されているソーラーパネル。
【請求項2】
請求項1のソーラーパネルであって、前記セル群に於いて、隣接する前記並列接続領域を電気的に直列に接続する部位では、隣接する二つの太陽電池セルを電気的に接続する接続要素が前記重なっている縁部分の間に配置され、前記並列接続領域に於いて、互いに並列接続される前記太陽電池セルの陽極を接続する陽極接続要素の配置される前記太陽電池セルの各々の裏面に絶縁材料層を配設し、前記陽極接続要素は、前記絶縁材料層の表面に配置され、互いに並列接続される前記太陽電池セルの前記重なっている縁部分の間は絶縁されているソーラーパネル。
【請求項3】
請求項1又は2のソーラーパネルであって、前記複数の太陽電池セルの各々の表面に於ける受光する面積が互いに等しく、前記複数の並列接続領域の各々に於いて接続されている太陽電池セルの数が互いに等しいソーラーパネル。
【請求項4】
請求項3のソーラーパネルであって、前記セル群を複数含み、前記複数のセル群が電気的に互いに直列又は並列に接続されており、前記複数のセル群の各々に於いて含まれる太陽電池セルの個数が互いに等しく且つ前記並列接続領域に接続されている太陽電池セルの数が互いに等しいソーラーパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーパネルに係り、より詳細には、或る限られた面積内にできるだけ多くの枚数の太陽電池セルを隙間なく配置できるように構成されたソーラーパネルに係る。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラルの実現に向けて、自動車等の車両又はその他の移動体の屋根などにソーラーパネルを搭載して、それにより得られた太陽光エネルギーを車両の駆動に利用する試みが進んでいる。そのような移動体の屋根の上などにソーラーパネルを設置する場合、ソーラーパネルの配置可能な面積が限られることとなるので、或る限られた面積内にて少しでも多くの太陽光エネルギーを回収して発電量を得られるように、パネルに於いてできるだけ多くの枚数の太陽電池セルを隙間なく配置できるようにする構成が種々提案されている。例えば、特許文献1、2等に於いては、パネルに於いて複数の太陽電池セルを一方向に並べて配置する場合に、或る太陽電池セルの裏側の面(裏側面)が隣接する太陽電池セルの表側の面(表側面)の縁に一部重なるように配置し、重なった部分にて、互いに隣接する太陽電池セルが導電性部材を介して電気的に接続される「シングリング構造」又は「シングリング方式」を用いることが提案されている(図4(A)参照)。特に、特許文献1に於いては、シングリング構造に配置された複数のセルを直列に接続した構成の場合に、発電面積の異なる複数の太陽電池セルを配置する際に出力の低下を抑制することができる配置構成が提案されている。また、特許文献2に於いては、複数の太陽電池セルをシングリング方式にて直列接続して配置した構成(ストリング)を、複数、太陽電池セルの配列方向と交差する方向に配置し、各ストリングに於ける隣接する太陽電池セルを電気的に接続する部材を共通にした構成(各セルは、一つのストリングに於いて他のセルと直列に接続され、他のストリングに於ける対応するセルと並列に接続されることとなる。)により、複数のストリング同士における電流のミスマッチによる出力低下の抑制が期待できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-082722
【文献】国際公開2020/031574
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ソーラーパネルに於いて、例えば、太陽光が到達する領域(太陽光到達領域)の全面を一枚の太陽電池セル(以下、「セル」と称する。)で覆ったとすると、発電電圧が低く、発電電流が大きくなり、発熱量(ジュール熱)が大きくなってしまうので、これを避けるために、上記の如く、太陽光到達領域に於いて複数枚のセルを配置し、それらを直列に接続して、パネルに於ける発電電圧を高くして、発電電流を下げる構成が採用される。また、太陽光到達領域を網羅するセルを一枚のセルとして形成するよりも、面積の小さい複数枚のセルを太陽光到達領域の形状に合わせて適宜並置する方が、ソーラーパネルの製造、設置等の作業や操作が容易となる利点も得られる。その際、上記のシングリング構造を採用すれば、太陽光到達領域に於いて、複数のセルをほぼ隙間なく配置することができるので、太陽光到達領域の略全面がセルの受光面で覆われ、パネルからできるだけ多くの太陽光エネルギーを電気エネルギーとして得ることが可能となる。
【0005】
上記の如きシングリング構造を採用したソーラーパネルに於いては、典型的には、複数のセルを一方向に沿って配置して電気的に直列に接続してなる「ストリング」と称されるセルの群が構成され、パネルの太陽光到達領域に於いて、その全域を覆うように、一つ乃至複数のセル群が配置される。その場合、各セル群に於いては、全てのセルが直列に接続されていることから、各セル群にて得られる発電電流の大きさは、そのセル群内のセルのうちで発電電流が最小のセルに於けるその発電電流の大きさに制限されることとなる。従って、パネルの太陽光到達領域に部分影が出来て、一部のセルの受光量が低減すると、その受光量の低減したセルの発電電流が低減し(各セルの発電電流は、各セルの受光量の増減に対応して増減する。)、そのセルの属するセル群から得られる発電電流も低減してしまうこととなる。例えば、一つのセルの全面が部分影に入ってしまうと、そのセルには電流が流れなくなるので、そのセルの属するセル群に電流が流れないこととなる。また、図5(A)の如く、シングリング構造のソーラーパネルに於いては、太陽光到達領域を複数のセルで覆うことになるので、各セルの受光面の面積は、パネルの太陽光到達領域よりも小さくなるところ、或る大きさの部分影が一つのセルに発生した場合、セルの受光面積が小さいほど、電流の低下率が大きくなる。従って、全てのセルが直列接続されたシングリング構造のセル群に於いて、或る部分影が発生したときの発電電流の低下率は、そのセル群の面積と同じ面積のセルに同じ部分影が発生したときの発電電流の低下率よりも大きくなってしまうこととなる。更に、図5(B)の如く、ソーラーパネルに於いては、複数のシングリング構造のストリングの形式のセル群が並置されている場合、各セル群に於いて一つのセルを覆ってしまうような細長い影(木や電柱などにより生ずる影など)が出来てしまうと、各セル群の全てのセルが直列接続されている場合、全てのセル群に於いて電流が得られず、電力が取り出せないこととなる。従って、ソーラーパネルに於いて、その太陽光到達領域を、所謂「シングリング構造」にて複数のセルを配置する構成に於いて、一つのセルを覆うような部分影が出来てもそのセルの属するセル群からその他のセルの発電電流を取り出せるようになっていると有利である。
【0006】
かくして、本発明の一つの課題は、シングリング構造にて複数のセルが配置されてなるセル群に於いて、一つのセルが部分影に覆われてもその他のセルの発電電流を取り出すことのできる構成のソーラーパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、上記の課題は、ソーラーパネルであって、
複数の太陽電池セルが一方向に配列されたセル群にして、互いに隣接する前記太陽電池セルのうちの一方の表側面の縁部分が他方の裏側面の縁部分の下に重なるように配置され、前記重なっている縁部分の間と前記太陽電池セルの裏側面とに、前記複数の太陽電池セルを互いに電気的に接続する接続要素が配置されているセル群を含み、
前記セル群に於いて、少なくとも二つの太陽電池セルを電気的に並列に接続した並列接続領域が複数形成され、前記並列接続領域が電気的に直列に接続されているソーラーパネル
によって達成される。
【0008】
上記の本発明の構成に於いて、「太陽電池セル」は、この分野にて通常用いられる任意の形式の太陽電池セルであってよい。上記の如く、かかる「太陽電池セル」が、複数枚、一方向に配列された「セル群」は、互いに隣接する太陽電池セルのうちの一方の表面の縁部分が他方の裏面の縁部分の下に重なるように配置され、所謂「シングリング構造」に形成される。また、各太陽電池セルの表側の面(表側面)に於いて、隣接する太陽電池セルの裏側の面(裏側面)の縁部分に重なる縁部分を除いて、実質的に全域が受光面であってよく(隣接する太陽電池セルの裏側面の縁部分に重なる縁部分も受光面と同様に形成されていてもよい。)、これにより、セル群の太陽光到達領域となる表側面の実質的に全域が受光面となるように形成することが可能となる。なお、セル群の両端間に、通常の態様にてバイパスダイオードが並列に接続されてよい。
【0009】
そして、上記の本発明のソーラーパネルのセル群に於いては、一方向に配列された複数枚のセルが全て直列に接続されるのではなく、少なくとも二つの太陽電池セルを電気的に並列に接続した並列接続領域が複数形成され、かかる複数の並列接続領域が電気的に直列に接続される。即ち、一方向に配列された複数枚のセルの間に於いて、隣接したセルが電気的に並列に接続された部分と、隣接したセルが電気的に直列に接続された部分とが形成されることとなる。なお、隣接したセルが電気的に並列に接続されるとは、各セルの陽極同士と陰極同士とがそれぞれ電気的に接続された状態であり、隣接したセルが電気的に直列に接続されるとは、隣接したセルの一方の陰極が他方の陽極に電気的に接続された状態である。
【0010】
上記の本発明の構成によれば、まず、セル群に於いて、複数のセルは、シングリング構造にて配置され、複数の太陽電池セルを互いに電気的に接続する接続要素が、隣接するセルの重なっている縁部分の間と太陽電池セルの裏面とに配置されていることから、太陽光到達領域の実質的に全域にセル群の表側の受光面を配置することが可能となり、セル群の占有する面積に於いて、可能な限り多くの量の太陽光をセルで受光することが可能となる。その上で、本発明の構成に於いては、セル群に於いて、各セルは、少なくとも一つの他のセルと並列に接続された状態となっているので、そのセルが部分影に覆われても発電できなくなっても、そのセルと並列に接続されたセルが発電できる状態であれば、セル群の他のセルで生ずる発電電流が流通可能であるので、そのセル群から発電電流を取り出すことが可能となる。即ち、上記の本発明によれば、セル群に於ける一つのセルが部分影に覆われる状況となっても、そのセル群に発電電流が流れ、太陽光エネルギーから変換された電気エネルギーを取り出すことが可能となる。
【0011】
上記の本発明の構成に於いて、複数の太陽電池セルの各々は、その表側面に於ける受光する面積が互いに等しく、その場合に、複数の並列接続領域の各々に於いて接続されている太陽電池セルの数が互いに等しくなるように、セル群が構成されてよい。これにより、セル群に於いて、部分影が発生していないときには、各並列接続領域から流出する発電電流が等しくなるので、いずれかのセルで発電電流が制限されるといったことがなくなって、太陽光エネルギーを電気エネルギーとして効率よく取り出すことが可能となる。また、上記の本発明のソーラーパネルは、セル群が複数含まれ、複数のセル群が電気的に互いに直列又は並列に接続されてよいところ、上記の如く、複数の太陽電池セルの各々の表側面に於ける受光する面積が互いに等しく、複数の並列接続領域の各々に於いて接続されている太陽電池セルの数が互いに等しい場合には、複数のセル群の各々に於いて含まれる太陽電池セルの個数が互いに等しく且つ並列接続領域に接続されている太陽電池セルの数が互いに等しくなっていてよい。かかる構成によれば、各セル群に於いて得られる発電電圧と発電電流とが、それぞれ、互いに等しくなるので、複数のセル群を直列又は並列に接続しても、いずれかのセル群の発電電圧と発電電流が制限を受けることがなく、更に、各セルの発電電圧と発電電流が他のセルの発電電圧と発電電流によって制限されることもないので、より効率的に太陽光エネルギーを電気エネルギーとして効率よく取り出すことが可能となる。
【0012】
上記の本発明の構成の実施の態様に於いては、セル群に於いて、一部の隣接したセルが電気的に並列に接続され、別の隣接したセルが電気的に直列に接続される構成を達成するために、セル間を電気的に接続する接続要素については、隣接する並列接続領域を電気的に直列に接続する部位では、隣接する二つの太陽電池セルを電気的に接続する接続要素がその二つの太陽電池セルの重なっている縁部分の間に配置され、並列接続領域に於いては、互いに並列接続される太陽電池セルの陽極を接続する陽極接続要素が配置される太陽電池セルの各々の裏側面に絶縁材料層を配設し、かかる陽極接続要素が、絶縁材料層の表面に配置されてよく(互いに並列接続される太陽電池セルの陰極を接続する陰極接続要素は、セルの裏側面に直接に貼着されてよい。)、互いに並列接続される太陽電池セルの重なっている縁部分の間は絶縁されてよい。かかる構成により、セル群に於いて、太陽光の受光面(表側面)に(セル間を電気的に接続するための)接続要素を配置せずに、セルを直列に接続した部分とセルを並列に接続した部分とを簡単な構成にて混在させることが可能となる。[セルの表側面の集電のためのフィンガー電極は、セル間を電気的に接続するための接続要素ではなく、表側面に配置されてよい。]
【発明の効果】
【0013】
かくして、上記の本発明の構成のソーラーパネル装置に於いては、少なくとも二つのセルが並列に接続されている並列接続領域が、複数組、直列に接続されているので、セル群から得られる発電電圧を、同じ面積の領域を一枚のセルにて覆う場合よりも高くできるようになっているだけでなく、セル群のうちの或るセルが部分影に覆われて発電電流が流れない状態となったとしても、そのセルと並列に接続されたセルが、発電電流が流れる状態であれば、その他のセルから発電電流が流通できるので、そのセル群から発電電流を取り出すことができ、これにより、電力を得ることが可能となる。この点に関し、本発明の構成は、車両等の移動体に搭載されるソーラーパネル装置に於いて、有利に用いられる。即ち、移動体に搭載されるソーラーパネル装置の場合、移動体が動き回る間に、時々刻々変化する部分影がパネルの受光面に入り込むことがある。また、例えば、複数のセル群が並置されたソーラーパネルを搭載した移動体が走行している間に、街路樹、電柱、広告塔など、細長い部分影がパネルの受光面に入り込み、図5(B)の如く、複数のセル群に亙ってそれぞれ一つずつセルが部分影に覆われることもある。そのように、時々刻々に様々な態様にて部分影が受光面に入り込んでいく状況に於いては、従前の如く、シングリング構造のセル群に於いて全てのセルが直列に接続されていると、そのうちの一つのセルが部分影に覆われる度に、そのセル群からの電力を取り出すことができなくなってしまう。特に、複数のセル群が並置されたソーラーパネルを搭載した移動体に於いて、図5(B)のように、複数のセル群に亙ってそれぞれ一つずつセルが部分影に覆われるときには、細長い部分影が一本受光面に入り込むだけで、パネル全体から発電エネルギーを得ることができなくなり、安定的に持続的に電力を作り出せなくなる場合がある。しかしながら、上記の本発明の構成では、セル群に於ける各セルは、少なくとも一つの別のセルと並列に接続されているので、一つのセル群に於いて、或いは、全てのセル群に於いて、一つのセルが部分影に覆われても、別のセルに発電電流が流れるので、より間断無く、より安定的に電力を作り出すことが可能となり、有利である。
【0014】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(A)は、本実施形態によるソーラーパネルの模式的な側面図であり、図1(B)は、本実施形態によるソーラーパネルの底面図である。図1(C)は、本実施形態によるソーラーパネルの一つの態様の結線回路図である。図1(D)は、本実施形態によるソーラーパネルの別の態様の結線回路図である。
図2図2は、10枚のセルがシングリング構造に配列されたセル群に於いて、セルを本実施形態により接続した構成の場合(本例)と、全てのセルを直列接続した構成の場合(直列)との、影がないとき(影なし)、1つのセルの半分が影に覆われているとき(影0.5セル)、及び、1つのセル全体が覆われているとき(影1セル)のそれぞれに於けるセル群の両端間の電圧-出力特性を表わした図である。
図3図3は、本実施形態のセル群を、複数、接続した状態の模式的な平面図である。
図4図4(A)は、セルがシングリング構造に配列されたセル群の模式的な斜視図である。上が、重ねられるセルの関係がわかるようにセル間を離して描いた図であり、下が、セルを重ねた状態の図である。図4(B)は、セルがシングリング構造に配列されたセル群に於いて、全てのセルが直列に接続された構成の模式的な側面図である。図4(C)は、全てのセルが直列に接続された構成の結線回路図である。
図5図5(A)は、面積の異なるセルのそれぞれに同じ大きさの部分影ができた状態を模式的に表わしたセルの平面図である。図5(B)は、並置された複数のセル群の模式的な平面図であり、全てのセル群に亙って細長い部分影が入り込んだ状態を示している。
【符号の説明】
【0016】
1…セル群
2…セル
2a…セルの表側面(おもてがわめん)
2b…セルの裏側面(うらがわめん)
2c…セルの重なっている縁部分
3…接続要素
3a…セルの陰極端子又は陰極接続具
3b…セルの陽極端子又は陽極接続具
4…絶縁材料層
S…直列接続箇所
P…並列接続箇所
Sh…部分影
R…並列接続領域
BPD…バイパスダイオード
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
シングリング構造のセル群の構成
図4(A)を参照して、既に述べた如く、所謂「シングリング構造」の複数の太陽電池セルから成るセル群に於いては、複数のセルが一方向に配置される際に、各セルの縁部分が隣接するセルの縁部分に重なるように、即ち、図に於いて、各セルの右端の辺の縁部分の裏側面が隣接するセルの左端の辺の縁部分の表側面の上に載置される。そして、シングリング構造の場合、一般に、セル間の電気的接続のための接続要素(接続端子、導電線、接続具等)は、それぞれの隣接するセルに於ける重なった縁部分の間に設けられるので、太陽光が到達するセル群の露出した表側面(太陽光到達領域)の実質的に全域にて受光面を配して太陽光を受光することが可能となり、セル群の占有する面積に於いて実質的に最大の太陽光を受光することができることとなる。これにより、シングリング構造のセル群は、例えば、移動体の屋根などの限られた面積に於いて、できるだけ多くの太陽光エネルギーを電気エネルギーとして回収しようとする場合に有利である。
【0018】
ところで、上記の如きシングリング構造のセル群に於いては、従前の構成の場合、典型的には、一列のセル群に於いて、図4(B)の如く、全てのセルが電気的に直列に接続される。この場合、隣接する二つのセル2の間の重ねられる縁部分2cに於いて、上に載置されるセルの裏側面2bの縁部分に配置されたセルの陰極端子3aが、下に載置されるセルの表側面2aの縁部分に配置されたセルの陽極端子3bに整合されて接続され、この構成がセル群に沿って順々に繰返され、これにより、セル間の接続要素がセル群の上面の太陽光到達領域を占有することなく、全てのセルの直列接続が達成されることとなる。しかしながら、上記の如く、全てのセルが直列に接続されるセル群の場合、図4(C)の回路図から理解される如く、全てのセルに於いて電流が共通となるので、セル群に流通する電流は、直列に接続されているセルのうちで発電電流が最小のセルに流通する電流の大きさに制限されることとなる。従って、全てのセルに均等に太陽光が照射されている場合には、いずれのセルに於いても電流は制限を受けないが、セル群のうちの一つのセルに於いて部分影がかかることなどにより受光量が減ると、そのセルの発電電流が低減するだけでなく、そのセル群に流れる電流全体が低減することとなり、セル群から取り出せる電気エネルギーが低減してしまうこととなる。そして、一つのセルを完全に覆う部分影がかかると、そのセルが属するセル群からは、電流が取り出せず、電気エネルギーが得られなくなる。
【0019】
また、この点に関し、シングリング構造のセル群に於いては、一般に、各セルの受光面積が比較的小さくなるところ、面積の異なるセルに同じ面積の部分影がかかったとき、セルの面積が小さいほど、電流の低下率が相対的に大きくなる。例えば、図5(A)に描かれている如く、面積αのセル(左)と、面積α/nのセル(右)(nは、1より大きい正数)とに於いて、面積α/kの部分影Shがかかったとき(k>n)、電流は、面積αのセルでは、(k-1)/k倍となり、面積α/nのセルでは、(k/n-1)k倍となるので、電流の低下率は、後者の方が大きくなる。即ち、シングリング構造のセル群のように、各セルの面積が小さい場合には、或る面積の部分影による電流の低下率が相対的に大きくなるので、その分、セル群に流れる電流が低下しやすくなることとなる。[図4(C)の如く、セル群1の両端にバイパスダイオードBPDが並列されている場合、セル群1に流通可能な電流が低下すると、バイパスダイオードBPDへ電流が流れることとなり、セル群1は、電力を全く出力しないこととなる。]
【0020】
更に、例えば、図5(B)の如く、複数のセル群1が並置されているソーラーパネルに於いて、各セル群の複数のセルが全て直列に接続されている場合に、図示の如く、複数のセル群に跨る細長い部分影Shがかかったときには、各セル群で一つずつしか部分影に入っていないにもかかわらず、複数のセル群の全てから電力が取り出せない状態となってしまう。このような細長い部分影Shは、車両等の移動体の移動中に、街路樹や電柱の影により移動体の屋根にしばしば発生することがあり、移動体の屋根に、図5(B)のようなソーラーパネルが搭載されている構成に於いて、移動体の移動中に、そのような細長い部分影Shがかかる度に電力が全く得られない状態が頻発し得ることとなってしまう。
【0021】
本実施形態によるシングリング構造のセル群の構成
上記の如く、セル群内のセル間の全てが直列接続である場合、セル群内の一つのセルだけでも部分影に覆われてしまうと、そのセル群に電流が流れず、電力を回収することができなくなる。そこで、本実施形態に於いては、複数のセルがシングリング構造を形成するように配列されたセル群に於いて、各セルが少なくとも1つの別のセルと並列に接続され、かかる互いに並列に接続されたセルの組(並列接続領域)を直列に接続するように、セル間が電気的に接続される。かかる構成によれば、セル群に於いて、或るセルが部分影に覆われて、発電電流が流れなくなっても、そのセルと並列に接続された他のセルが部分影に覆われていなければ、その他のセルを通じてセル群に発電電流が流通することとなり、そのセル群から電力を取り出せる状態が維持されることとなる。
【0022】
具体的には、本実施形態によるソーラーパネル装置に於けるセル群は、表側面からみたときには、図4(A)と同様に、複数のセル2が一方向に配置される際に、各セルの縁部分が隣接するセルの縁部分に重なるように、即ち、図に於いて、各セルの右端の辺の縁部分の裏側面が隣接するセルの左端の辺の縁部分の表側面の上に載置され、セル群1の太陽光到達領域の実質的に全域にて受光面が配置されて、セル群の占有する面積に於いて実質的に最大の太陽光を受光することができることとなる。しかしながら、本実施形態の場合には、図1(A)、(B)に模式的に描かれているように、Pが付されたセル間の部位(並列接続部位)に於いては、隣接するセル2が互いに電気的に並列に接続され、Sが付されたセル間の部位(直列接続部位)に於いては、隣接するセル2が互いに電気的に直列に接続されるように、隣接するセル2の重なった縁部分2cの間と、各セル2の裏側面2bとに、セル間の接続する陰極接続具3a、陽極接続具3bが配置される。そして、本実施形態では、シングリング構造に配置されたセル群1に於いて、隣接するセル2が並列に接続された領域(並列接続領域)Rが、複数組、構成され、それらの並列接続領域Rが直列に接続されるようにセル間が配線される。
【0023】
図1(A)、(B)を参照して、上記の如く隣接するセル2が並列に接続された並列接続領域Rを直列に接続した構成は、例えば、以下の如く、陰極接続具3a、陽極接続具3bを構成し配置することにより達成される。先ず、セル間が直列に接続された直列接続部位Sの各々に於いて、上側に重ねられた(図にて左に位置する)セル2の裏側面2bに、セル群1の延在方向の全長に亙って延在する陰極接続具3aが配置され、直列接続部位Sにて、陰極接続具3aの端が、その下側に重ねられた(図にて右に位置する)セル2の表側面2aの縁部分に配置された陽極接続具3bの端と対向して整合して接触し、これにより、重なった縁部分2cに於いて隣接する二つのセル2の間の直列接続が達成される。次に、各直列接続部位Sの下側に重ねられたセル2に於いて、陽極接続具3bは、直列接続部位Sの重なった縁部分2cの表側面2aの端から、そのセル2の側縁に沿って下降し、そのセル2の裏側面2bに沿って、並列接続部位Pが形成されるもう一方の縁部分まで、セル群1の延在方向の全長に亙って(図にて右方へ)伸長するよう構成され配置される。なお、直列接続部位Sの下側に重ねられたセル2に於いて、裏側面2bには、図示の如く絶縁材料層4が積層され、陽極接続具3bは、絶縁材料層4の表面に配置され、これにより、裏側面2bと陽極接続具3bとの間は電気的に絶縁される。
【0024】
一方、各並列接続部位Pに於いては、上側に重ねられた(図にて左に位置する)セル2の裏側面2bに接触しないように絶縁材料層4を介して配置されている陽極接続具3bの端が、下側に重ねられた(図にて右に位置する)セル2の表側面2aの縁部分に接触される。かかる陽極接続具3bは、上側に重ねられたセル2の、もう一方の端の(図に於いて直列接続部位Sに於ける)重なった縁部分2cにて、そのセル2の表側面2aに接触しているので、これにより、並列接続部位Pに於ける上側に重ねられたセル2と下側に重ねられたセル2の陽極である表側面2a同士が接続される。また、各並列接続部位Pに於いて、下側に重ねられたセル2の裏側面2bに接触した陰極接続具3aが、そのセル2の裏側面2bから側壁を上昇して、陽極接続具3bに接触しないように、上側に重ねられたセル2の裏側面2bに対して接触され、これにより、並列接続部位Pに於ける上側に重ねられたセル2と下側に重ねられたセル2の陰極である裏側面2b同士が接続され、かくして、並列接続部位Pにて隣接する二つのセル2の間の並列接続が達成される。
【0025】
以上の如く、上記の本実施形態に於けるセル群1では、図1(C)に示されている回路図の如く、隣接するセル2が並列に接続された複数個の並列接続領域Rが形成され、それらの並列接続領域Rを直列に接続した構成が達成されることとなる。上記の構成によれば、セル間を電気的に接続する陰極接続具3aと陽極接続具3bとは、セル間の重なった縁部分の間2cと各セル2の裏側面2bとに配設され、各セル2の表側面2aの露出した太陽光の到達し得る領域には、フィンガー電極(図示せず)を除いて、何も配置されないようにすることができるので、セル群の占有する面積に於いて、太陽光を最大限にて受光するように、セルの受光面を配置することが可能となる。なお、陰極接続具3aと陽極接続具3bとの構成は、図示の例以外の形状であってもよく、そのような場合も本実施形態の範囲に属する。
【0026】
本実施形態に於いて利用可能な太陽電池は、任意の形式のものであってよく、この分野に通常用いられている結晶シリコン太陽電池などのシリコン系太陽電池、GaAs電池などの化合物系太陽電池、有機系太陽電池、多接合型太陽電池、量子ドット太陽電池等が用いられてよい。図1(C)に示されている如く、セル群の両端に対してバイパスダイオードBPDが並列に接続されていてよい。
【0027】
また、図1(A)~(C)の例では、一つの並列接続領域に於いて、2つのセルが並列に接続されているところ、一つの並列接続領域にて接続されるセルの個数は、任意であってよく、例えば、図1(D)の如く、一つの並列接続領域に於いて、3つ又はそれ以上のセルが並列に接続されていてよい。
【0028】
上記の本実施形態によるセル群1に用いられる各セルは、必ずしも、一枚の大きなセルを分割して製造されたものでなくてもよい。
【0029】
ところで、図1(C)、(D)の回路図から理解されるように、本実施形態によるセル群1に於いては、複数個の並列接続領域Rが直列に接続されるので、受光面に影がかかっていない状態で、いずれの並列接続領域Rも発電電流が制限されないように、各並列接続領域Rの発電電流が等しくなるように、各並列接続領域Rの受光面積が調整されていることが好ましい。セル郡に於いて、同一の受光面積を有するセルを用いる場合には、各並列接続領域Rに並列接続されるセルの数は等しいことが好ましい。
【0030】
セル群の電圧-出力特性
図2は、10枚の同一の受光面積のセルをシングリング構造にて配列してなるセル群に於いて得られる電圧-出力特性を表した図である(同図の電圧と出力は、シミュレーション演算にて算出した。)。図に於いては、従前の如く、シングリング構造の全てのセルを直列に接続した場合(直列-点線)と、本実施形態の教示に従い、シングリング構造に於いて、二つのセルを並列に接続した領域を、5組、直列に接続した場合(本例-実線)とについて、部分影が無いとき(影なし)、一つのセルの半分が部分影に覆われているとき、及び、一つのセルの全域が部分影に覆われているときのそれぞれの場合に於ける発電電圧に対する出力が示されている。同図を参照して、部分影が無いときについてみると、全てのセルを直列に接続した場合と、本実施形態の場合とで、得られる出力は、同じであるが、一つのセルが部分影に一部又は全部が覆われたときには、全てのセルを直列に接続した場合、セル群全体の発電電流が最も電流の少ないセルの電流に制限されるために、得られる出力の低下幅が大きく、一つのセルの全域が部分影に覆われているときには、セル群全体に電流が流れずに、セル群から電力が得られなくなる。一方、本実施形態の場合、一つのセルが部分影に一部又は全部が覆われても、そのセルに並列に接続されているセルを通して電流が流通するので、出力の低下幅が相対的小さくなり、一つのセルの全域が部分影に覆われても、セル群全体には、電流が流れるので、セル群から電力が得られる状態が維持されることとなる。かくして、本実施形態のセル群は、部分影が種々変化する可能性のある移動体の屋根などにソーラーパネル装置を搭載する場合に、電力が全く得られなくなる機会が大幅に低減されることが期待され、有利である。
【0031】
複数のセル群の接続
上記の本実施形態のセル群1は、図3に例示されている如く、複数、並列又は直列(図示せず)に接続されてよい。複数のセル群1が直列に接続される場合には、各セル群1の発電電流を実質的に等しくして、他のセル群1による電流の制限を受けないようにすることが好ましく、複数のセル群1が並列に接続される場合には、各セル群1の発電電圧を実質的に等しくして、いずれのセル群1も高効率の作動点にて作動させるようにすることが好ましい。そこで、好適には、同じ受光面積を有するセルで、セル群を構成する場合には、全てのセル群に於いて、セル数を同じくし、各並列接続領域内に接続されるセル数を等しくし、更に、直列接続される並列接続領域の数も等しくすることが好ましい。
【0032】
既に触れた如く、上記の本実施形態のセル群は、移動体に搭載されるソーラーパネルに於いて有利に用いられるところ、それ以外の用途に於いても用いられてよい。ソーラーパネルを、占有可能なスペースが限られており、時間によって部分影が発生するような場所に配置する場合や持ち運び可能なパネルの場合にも、本実施形態は、有利に用いられる。
【0033】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5