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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】成形加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20241217BHJP
   C21D 1/42 20060101ALI20241217BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20241217BHJP
   H05B 6/40 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B21D22/20 H
C21D1/42 B
C21D1/42 J
C21D1/42 F
C21D9/00 A
H05B6/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022098801
(22)【出願日】2022-06-20
(65)【公開番号】P2024000181
(43)【公開日】2024-01-05
【審査請求日】2024-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】伊原 智章
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/175486(WO,A1)
【文献】特開昭48-041965(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098045(WO,A1)
【文献】特開2019-111567(JP,A)
【文献】特開2015-35330(JP,A)
【文献】特開2015-139804(JP,A)
【文献】特開2003-282231(JP,A)
【文献】実公昭61-42313(JP,Y2)
【文献】特開2003-187950(JP,A)
【文献】特開平11-185944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/20 - 22/40
H05B 6/00 - 6/40
C21D 1/42 - 1/46
C21D 9/00
C21D 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を打ち抜くことで、該鋼板の端面の一部が開放された開放打ち抜き端を成形する抜き工程と、
直線状のコイル線が、前記開放打ち抜き端の端面の形状に沿って延在するように変形されて形成されたコイル線であって、前記開放打ち抜き端の端面の一方側に配置された一方の前記コイル線と、前記開放打ち抜き端の端面の他方側に配置され他方の前記コイル線とが、該開放打ち抜き端の端面と非接触の状態で、かつ該開放打ち抜き端の端面を挟み込むように配置されて構成される、加熱コイルに交流電流を流し前記鋼板に誘導起電力を生じさせることで、前記開放打ち抜き端の端面を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後に、前記打ち抜き端に対して伸びフランジを成形する成形工程と、
を含み、
前記開放打ち抜き端の端面の一方側に配置された前記加熱コイルの一方のコイル線の電流方向は、前記開放打ち抜き端の端面の他方側に配置された前記加熱コイルの他方のコイル線の電流方向と逆であり、
前記加熱工程において、
前記開放打ち抜き端、前記加熱線の一方及び他方のコイル線の断面図において、
前記一方及び他方のコイル線のうち片方が前記打ち抜き端の端面の開放側に配置されていることで、上下方向から見て、前記一方のコイル線の断面は、前記開放打ち抜き端の断面と重複せず、前記他方のコイル線の断面は、前記開放打ち抜き端の断面と重複する、
成形加工方法。
【請求項2】
請求項記載の成形加工方法であって、
前記加熱工程において、
前記一方のコイル線は上側に配置され、他方のコイル線は下側に配置され、
前記開放打ち抜き端、上側及び下側の加熱コイルの断面図において、
上下方向から見て、前記上側のコイル線の断面は、前記開放打ち抜き端の断面と重複せず、前記下側のコイル線の断面は、前記開放打ち抜き端の断面と重複する、
成形加工方法。
【請求項3】
請求項記載の成形加工方法であって、
前記加熱コイルの上側の一方のコイル線は、縦a及び横bの矩形状の上側適正範囲内に配置され、
前記加熱コイルの下側の他方のコイル線は、縦c及び横dの矩形状の下側適正範囲内に配置され、
前記上側適正範囲は、前記開放打ち抜き端の端面の上側角を起点に設定されており、
前記下側適正範囲は、前記開放打ち抜き端の端面の下側角から所定距離α離れた位置を起点に設定されており、
前記加熱コイルの一方及び他方のコイル線の直径をDとして、以下の関係を満たす、
0≦a≦1.5×D
0≦b≦1.5×D
α≦c≦1.2×D
0≦d≦1.5×D、
成形加工方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の成形加工方法であって、
前記成形工程において前記鋼板の伸ばされる側に配置された加熱コイルのコイル線の中心軸線と前記開放打ち抜き端の端面までの距離は、該伸ばされる側と反対側に配置された加熱コイルのコイル線の中心軸線と前記開放打ち抜き端の端面までの距離よりも近い、
成形加工方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の成形加工方法であって、
前記加熱工程において、前記抜き工程で打ち抜かれた鋼板は、加熱治具に配置された後、前記加熱コイルにより加熱され、
前記加熱治具は、前記抜き工程で打ち抜かれた鋼板が載置され、該鋼板を所定位置に位置決めするための位置決めガイドと、前記位置決めガイドにより位置決めされた鋼板の開放打ち抜き端の端面を加熱する前記加熱コイルと、を有し、
前記抜き工程で打ち抜かれた鋼板が前記位置決めガイド上に載置される際、手前側に位置する前記加熱コイルのコイル線は、前記鋼板の外側へオフセットしている、
成形加工方法。
【請求項6】
請求項1又は2記載の成形加工方法であって、
前記加熱工程において、前記加熱コイルは、前記成形工程で成形された車両のハイテン材の骨格部材の曲率の付いたフランジ成形部位を加熱する、
成形加工方法。
【請求項7】
請求項記載の成形加工方法であって、
前記加熱工程は、プレス機における任意の工程中に実施される、
成形加工方法。
【請求項8】
請求項記載の成形加工方法であって、
前記加熱工程は、前記鋼板を前記抜き工程から前記成形工程へ搬送する際の搬送ピッチを調整するアイドリング工程で実施される、
成形加工方法。
【請求項9】
請求項記載の成形加工方法であって、
プレス機内で、把持部により鋼板成形品が連続的に搬送されつつ、少なくとも、前記抜き工程、及び前記アイドリング工程が所定の搬送ピッチで連続的に行われており、
前記アイドリング工程に対応する位置に前記加熱治具が配置されることで、前記アイドリング工程を前記加熱工程に置き換える、
成形加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板の成形加工を行う成形加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイテン材のプレス成形課題の一つに伸びフランジ割れが挙げられる。この伸びフランジ割れは、抜き工程による打ち抜き端などのせん断端面の残留歪みに起因して発生する。
【0003】
この残留歪みを低減する方法として、ループ状の加熱コイルを、抜き工程による打ち抜き端の端面に非接触の状態で、かつ端面に沿って対向するように配置し、加熱コイルに交流電流を流し鋼板に誘導起電力を生じさせることで、端面を加熱する成形加工方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2021-003691
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鋼板の端面の一部が開放された開放打ち抜き端の端面を上記ループ状の加熱コイルで加熱した場合、端面に電流が流れるが、その電流は端面から離れ鋼板内側を分散して反対方向に流れてループを形成する。これにより、端面の電流密度が低下し加熱効率が低下する虞がある。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、開放打ち抜き端の端面の加熱効率が向上させることができる成形加工方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
鋼板を打ち抜くことで、該鋼板の端面の一部が開放された開放打ち抜き端を成形する抜き工程と、
加熱コイルを、前記抜き工程による開放打ち抜き端の端面に沿って非接触の状態で、かつ該開放打ち抜き端の端面を挟み込むように配置し、前記加熱コイルに交流電流を流し前記鋼板に誘導起電力を生じさせることで、前記開放打ち抜き端の端面を加熱する加熱工程と、
を含み、
前記開放打ち抜き端の端面の一方側に配置された前記加熱コイルの電流方向は、前記開放打ち抜き端の端面の他方側に配置された前記加熱コイルの電流方向と逆である、
成形加工方法
である。
この一態様において、
前記加熱工程において、
前記開放打ち抜き端の端面の一方側の加熱コイルは、前記開放側に配置され、
前記開放打ち抜き端の端面の他方側の加熱コイルは、前記鋼板側に配置されていてもよい。
この一態様において、
前記加熱工程において、
前記一方側の加熱コイルは上側に配置され、他方側の加熱コイルは下側に配置され、
前記開放打ち抜き端、上側及び下側の加熱コイルの断面図において、
上下方向から見て、前記上側の加熱コイルの断面は、前記開放打ち抜き端の断面と重複せず、前記下側の加熱コイルの断面は、前記開放打ち抜き端の断面と重複していてもよい。
この一態様において、
前記上側の加熱コイルは、縦a及び横bの矩形状の上側適正範囲内に配置され、
前記下側の加熱コイルは、縦c及び横dの矩形状の下側適正範囲内に配置され、
前記上側適正範囲は、前記開放打ち抜き端の端面の上側角を起点に設定されており、
前記下側適正範囲は、前記開放打ち抜き端の端面の下側角から所定距離α離れた位置を起点に設定されており、
前記上側及び下側の加熱コイルの直径をDとして、以下の関係を満たしていてもよい。
0≦a≦1.5×D
0≦b≦1.5×D
α≦c≦1.2×D
0≦d≦1.5×D、
この一態様において、
前記開放打ち抜き端に対して伸びフランジを成形する成形工程を更に含み、
前記成形工程において前記鋼板の伸ばされる側に配置された加熱コイルの中心軸線と前記開放打ち抜き端の端面までの距離は、該伸ばされる側と反対側に配置された加熱コイルの中心軸線と前記開放打ち抜き端の端面までの距離よりも近くてもよい。
この一態様において、
前記加熱工程において、前記抜き工程で打ち抜かれた鋼板は、加熱治具に配置された後、前記加熱コイルにより加熱され、
前記加熱治具は、前記抜き工程で打ち抜かれた鋼板が載置され、該鋼板を所定位置に位置決めするための位置決めガイドと、前記位置決めガイドにより位置決めされた鋼板の開放打ち抜き端の端面を加熱する前記加熱コイルと、を有し、
前記抜き工程で打ち抜かれた鋼板が前記位置決めガイド上に載置される際、手前側に位置する前記加熱コイルは、前記鋼板の外側へオフセットしていてもよい。
この一態様において、
前記開放打ち抜き端に対して伸びフランジを成形する成形工程を更に含み、
前記加熱工程において、前記加熱コイルは、前記成形工程で成形された車両のハイテン材の骨格部材の曲率の付いたフランジ成形部位を加熱してもよい。
この一態様において、
前記加熱工程は、プレス機における任意の工程中に実施されてもよい。
この一態様において、
前記打ち抜き端に対して伸びフランジを成形する成形工程を更に含み、
前記加熱工程は、前記鋼板を前記抜き工程から前記成形工程へ搬送する際の搬送ピッチを調整するアイドリング工程で実施されてもよい。
この一態様において、
前記プレス機内で、把持部により鋼板成形品が連続的に搬送されつつ、少なくとも、前記抜き工程、及び前記アイドリング工程が所定の搬送ピッチで連続的に行われており、
前記アイドリング工程に対応する位置に前記加熱コイルを含む加熱治具が配置されることで、前記アイドリング工程を前記加熱工程に置き換えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、開放打ち抜き端の端面の加熱効率が向上させることができる成形加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る成形加工方法の工程を概略的に示す模式図である。
図2】加熱工程を概略的に示す模式図である。
図3】本実施形態に係る加熱コイルを示す斜視図である。
図4】本実施形態に係る加熱コイルを上方から見た上視図である。
図5】開放打ち抜き端に配置された加熱コイルを垂直に切断した際の断面図である。
図6】開放打ち抜き端の磁界強度を示す図である。
図7】開放打ち抜き端の電流密度を示す図である。
図8】上側及び下側の加熱コイルの適正配置を示す図である。
図9】鋼板の開放打ち抜き端を加熱治具の加熱コイルに対し配置する状態を示す図である。
図10】上側の2本の加熱コイルが配置され、下側に2本の加熱コイルが配置された構成を示す図である。
図11】上側のコイルと下側コイルが上方向から見て重なっている構成を示す図である。
図12】従来の加熱コイルと本実施形態に係る加熱コイルとにより加熱した際の加熱結果を示す図である。
図13】実験結果である上側及び下側の加熱コイルと温度分布との関係を示す図である。
図14】伸びフランジ成形部位を含む成形品を示す図である。
図15】FRロアアームの成形品の具体例を示す図である。
図16】Aピラーロアの成形品の具体例を示す図である。
図17】Bピラーアウターロアの成形品の具体例を示す図である。
図18】加熱治具の一例を示す図である。
図19】本実施形態に係る成形加工方法の工程と、従来の成形加工方法の工程と、を対比した図である。
図20】プレス機内における工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0011】
実施形態1
図1は、本実施形態に係る成形加工方法の工程を概略的に示す模式図である。以下に説明する成形加工方法は、ワークとしての鋼板100に、その端面の一部が開放された開放打ち抜き端101を形成し、当該開放打ち抜き端101の周縁を変形させて伸びフランジ102を成形するものである。
【0012】
本実施形態に係る成形加工方法は、例えば、図1に示すように、鋼板を打ち抜くことで開放打ち抜き端101を成形する抜き工程と、開放打ち抜き端101を加熱する加熱工程と、加熱工程による熱を冷ます放冷工程と、開放打ち抜き端101に対して伸びフランジ102を成形する成形工程とを含む。
【0013】
抜き工程は、不図示の抜きダイスに固定された鋼板100を、不図示の抜きパンチによって打ち抜く工程である。加熱工程は、詳しくは後述するが、抜き工程で形成された開放打ち抜き端101を加熱する工程である。
【0014】
加熱工程では、図2に示す如く、打ち抜かれた鋼板100が加熱治具200の位置決めガイド3上に配置される。そして、鋼板100の開放打ち抜き端101に対し加熱コイル2により誘導加熱が行われる。本実施形態において、例えば、加熱コイル2に高周波の交流電流を流し鋼板100に誘導起電力を生じさせる高周波誘導加熱を行うのが好ましい。上記加熱コイル2による加熱後に鋼板100は加熱治具200から取り出される。
【0015】
なお、加熱コイル2による加熱温度は、例えば、打ち抜き端101が200℃以上Ac1点未満となるように調整される。この温度範囲での加熱であれば、残留歪みの除去を適切に行える。特に、Ac1点以上まで加熱してしまうと、鋼板100がオーステナイト変態を起こしてしまい、空冷すると軟化して強度が低下し、流水等によって急冷すると硬度が増して成形工程における成形性が低下してしまうので、Ac1点未満に留めることが好ましい。
【0016】
図1に示す如く、放冷工程は、加熱工程で加熱された開放打ち抜き端101の熱を冷ます工程である。具体的には、鋼板100が常温環境において一定時間放置される。なお、本実施形態に係る成形加工方法において、放冷工程は省略されてもよい。この場合、加熱工程後に後述の成形工程が実施される。成形工程(バーリング工程)は、開放打ち抜き端101をフランジ金型などにより塑性変形させて伸びフランジ102を成形する工程である。
【0017】
抜き工程により開放打ち抜き端101の周縁部に生じた残留歪みは、加熱工程で除去される。放冷後に成形工程が導入される。このため、加熱状態の鋼板100に対して行うよりもフランジ金型などによって生じるダメージを軽減することができる。さらに、本実施形態においては、後述するように、開放打ち抜き端101を局所的に加熱することができるので残留歪みを良好に除去することができつつ、加熱効率も良好となる。
【0018】
ところで、従来、鋼板の開放打ち抜き端の端面をループ状の加熱コイルで加熱した場合、端面に電流が流れるが、その電流は端面から離れ鋼板内側を分散して反対方向に流れてループを形成する。これにより、端面の電流密度が低下し加熱効率が低下する虞がある。
【0019】
図3は、本実施形態に係る加熱コイルを示す斜視図である。図4は、本実施形態に係る加熱コイルを上方から見た上視図である。
【0020】
上記課題に対し、本実施形態に係る成形加工方法の加熱工程において、例えば、図3及び図4に示す如く、加熱コイル2を、抜き工程による開放打ち抜き端101の端面103に沿って非接触の状態で、かつ開放打ち抜き端101の端面103を挟み込むように配置する。そして、加熱コイル2に交流電流を流し鋼板100に誘導起電力を生じさせることで、開放打ち抜き端101の端面103を加熱する。さらに、開放打ち抜き端101の端面103の一方側(上側)に配置された加熱コイル21の電流方向は、開放打ち抜き端101の端面103の他方側(下側)に配置された加熱コイル22の電流方向と逆となっている。
【0021】
これにより、開放打ち抜き端101の端面103に沿って電流のループを形成し、この端面103に電流を集中させることができる。このため、開放打ち抜き端101の端面103における電流密度の増加させることができ、この端面103の加熱効率が向上させることができる。
【0022】
図5は、開放打ち抜き端に配置された加熱コイルを垂直に切断した際の断面図である。加熱工程において、図5に示す如く、開放打ち抜き端101の端面103の上側の加熱コイル21は、開放側に配置され、開放打ち抜き端101の端面103の下側の加熱コイル22は、鋼板側に配置されている。
【0023】
これにより、開放打ち抜き端101は、上側の加熱コイル21と、下側の加熱コイル22とで斜め方向で挟み込まれ、図6に示す如く、斜め方向で磁界に挟み込まれる。このため、上側及び下側の加熱コイル21、22が設定位置から多少ずれても安定した加熱を行うことができる。また、図7に示す如く、開放打ち抜き端101の端面103の上側角104を起点に強い電流が流れ、開放打ち抜き端101の端面103の加熱効率をより向上させることができる。
【0024】
一般に、上側及び下側の加熱コイルで、開放打ち抜き端の端面を挟み込んで加熱を行う場合、上側及び下側の加熱コイル直下が温度ピークとなる。このため、上側及び下側の加熱コイルと開放打ち抜き端の端面との相対位置関係が変わると温度ピークの位置も変わることになる。したがって、開放打ち抜き端の端面を集中的に加熱するためには、その相対位置関係の管理が特に重要となる。
【0025】
これに対し、本実施形態において、上述の如く、開放打ち抜き端101は、上側の加熱コイル21と、下側の加熱コイル22とで斜め方向で挟み込まれている。これにより、開放打ち抜き端101の端面103の上側角104を起点として温度ピークとなるため、上側及び下側の加熱コイル21、22と開放打ち抜き端101の端面103との相対位置関係の管理が鈍感となる。したがって、その相対位置関係が設定していた関係から多少変わったとしても、開放打ち抜き端101の端面103を集中的に加熱することができる。
【0026】
次に、上側及び下側の加熱コイル21、22と開放打ち抜き端101の端面103との適正な相対位置関係について詳細に説明する。図8は、上側及び下側の加熱コイルの適正配置を示す図である。
【0027】
図8に示す如く、開放打ち抜き端101、上側及び下側の加熱コイル21、22の断面図において、上下方向から見て、上側の加熱コイル21の断面は、開放打ち抜き端101の断面と重複せず、下側の加熱コイル22の断面は、開放打ち抜き端101の断面と重複するのが好ましい。これにより、開放打ち抜き端101は、上側の加熱コイル21と、下側の加熱コイル22とで斜め方向で挟み込まれ、上側及び下側の加熱コイル21、22が設定位置から多少ずれても安定した加熱を行うことができる。
【0028】
上側の加熱コイル21は、縦a及び横bの矩形状の上側適正範囲X1内に配置され、下側の加熱コイル22は、縦c及び横dの矩形状の下側適正範囲X2内に配置されるのが好ましい。
【0029】
上側適正範囲X1は、開放打ち抜き端101の端面103の上側角104を起点に上方かつ左側へ設定されている。下側適正範囲X2は、開放打ち抜き端101の端面103の下側角105から所定距離α離れた位置を起点に下方かつ右側へ設定されている。
【0030】
そして、上側及び下側の加熱コイル21、22の直径をDとして、以下の関係を満たすのが好ましい。なお、上記所定距離αは、開放打ち抜き端101の加工誤差などを考慮して設定され、例えば、0.5mm程度に設定される。
0≦a≦1.5×D
0≦b≦1.5×D
α≦c≦1.2×D
0≦d≦1.5×D
【0031】
上述の如く、上側の加熱コイル21を上側適正範囲X1内に配置し、下側の加熱コイル22を下側適正範囲X2内に配置し、開放打ち抜き端101の端面103を加熱することで、高い加熱効率を維持できる。
【0032】
上側の加熱コイル21は、上側適正範囲X1内で、開放打ち抜き端101の加工誤差を考慮して、開放打ち抜き端101の端面103の最も近くに配置されるのがより好ましい。同様に、下側の加熱コイル22は、下側適正範囲X2内で、開放打ち抜き端101の加工誤差を考慮して、開放打ち抜き端101の端面103の最も近くに配置するのがより好ましい。これにより、加熱効率をより高めることができる。
【0033】
また、抜き工程で打ち抜かれた鋼板100が加熱治具200上に載置される際に、図5に示す如く、上側の加熱コイル21は、鋼板100の外側へオフセットしているのが好ましい。これにより、例えば、図9に示す如く、加熱工程において鋼板100の開放打ち抜き端101を加熱治具200の加熱コイル2に対し配置する際に、鋼板100をそのまま真直ぐ下に降ろせば良いだけなので、鋼板100の設置性を向上させることができる。
【0034】
なお、上記実施形態において、成形工程において鋼板100の伸ばされる側に配置された加熱コイル2の中心軸線と開放打ち抜き端101の端面103までの距離は、鋼板100の伸ばされる側と反対側に配置された加熱コイル2の中心軸線と開放打ち抜き端101の端面103までの距離よりも近くてもよい。
【0035】
これにより、成形工程において鋼板100の伸ばされる側に配置された加熱コイル2を開放打ち抜き端101の端面103により近付けることで、鋼板100の伸ばされる部分をより大きく加熱することができ、加工性を向上させることができる。
【0036】
また、上記実施形態において、図3に示す如く、上側に1本の加熱コイル21が配置され、下側に1本の加熱コイル22が配置され、上側及び下側の加熱コイル21、22がループを形成しているが、これに限定されない。
【0037】
例えば、図10に示す如く、上側の2本の加熱コイル23が配置され、下側に2本の加熱コイル24が配置され、上側及び下側の加熱コイル23、24がループを形成してもよい。
【0038】
これにより、コイルインダクタンスを高めることができ、より加熱効率を高めることができる。また、上側及び下側の加熱コイル23、24による磁界の影響範囲がより広がることから、上側及び下側の加熱コイル23、24と開放打ち抜き端101の端面103との相対位置関係のロバスト性が向上し、より安定した加熱が可能となる。
【0039】
なお、図10の上図は、開放打ち抜き端101に配置された上側及び下側の加熱コイルを斜め方から見た斜視図である。図10の下図は、上側及び下側の加熱コイルを斜め方向から見た斜視図である。
【0040】
図10に示す如く、2本の上側の加熱コイル23と2本の下側の加熱コイル24は、開放打ち抜き端101の端面103に沿って非接触の状態で、かつ開放打ち抜き端101の端面103を挟み込むように配置される。2本の上側の加熱コイル23は開放側に配置され、2本の下側の加熱コイル24は鋼板側に配置されている。2本の上側の加熱コイル23の電流方向は、2本の下側の加熱コイル24の電流方向と逆となっている。
【0041】
これにより、2本の上側の加熱コイル23と2本の下側の加熱コイル24によって、開放打ち抜き端101の端面103に沿って電流のループを形成し、この端面103に電流を集中させることができる。このため、開放打ち抜き端101の端面103における電流密度を増加させることができ、この端面103の加熱効率が向上させることができる。
【0042】
さらに、上記実施形態において、図4に示す如く、上側の加熱コイル21は開放側に配置され、下側の加熱コイル22は鋼板側に配置され、上側の加熱コイル21と下側の加熱コイル22が上方向から見てオフセットしている構成について説明したが、これに限定されない。例えば、図11に示す如く、上側の加熱コイル21と下側の加熱コイル22が上方向から見てオフセットせず、重なっている構成であってもよい。
【0043】
なお、図11の上図は、開放打ち抜き端101に配置された上側及び下側の加熱コイル21、22を上方から見た図である。図11の下図は、上側及び下側の加熱コイル21、22を斜め方向から見た斜視図である。図11に示す如く、上側及び下側の加熱コイル21、22は、開放打ち抜き端101の端面103に沿って非接触の状態で、かつ開放打ち抜き端101の端面103を挟み込むように配置される。
【0044】
これにより、開放打ち抜き端101の端面103に沿って電流のループを形成し、この端面103に電流を集中させることができる。このため、開放打ち抜き端101の端面103における電流密度の増加させることができ、この端面103の加熱効率が向上させることができる。
【0045】
続いて、従来の加熱コイルと本実施形態に係る加熱コイル2とで、夫々、開放打ち抜き端101の端面103を加熱し、その加熱結果の比較を行った。図12は、従来の加熱コイルと本実施形態に係る加熱コイルとにより加熱した際の加熱結果を示す図である。本実験では、加熱コイル2に対し、周波数340kHzの交流電流を200Vの一定電圧で1秒間流したときの鋼板100の開放打ち抜き端101の温度分布と、磁界強度分布と、電流密度の分布及びベクトルと、を解析している。
【0046】
図12において、左側に(a)従来の、開放打ち抜き端101に端面103に沿った形状の加熱コイルの構成、中央に(b)本実施形態に係る上側の加熱コイル21と下側の加熱コイル22が上方向から見てオフセットしていない構成、及び、右側に(c)本実施形態に係る上側の加熱コイル21と下側の加熱コイル22が上方向から見てオフセットしている構成、による実験結果を夫々示している。
【0047】
また、図12において、2段目に温度分布を示し、その下段に磁界強度分布を示し、その下段に電流密度の分布とベクトルを示している。
【0048】
図12の温度分布に示す如く、(b)及び(c)本実施形態の構成は、(a)従来の構成と比較して、開放打ち抜き端101の端面103の温度上昇が顕著であり、加熱効率が良好であることが確認できる。
【0049】
また、(c)本実施形態のオフセット有りの構成は、(b)本実施形態のオフセット無しの構成と比較して、開放打ち抜き端101の端面103の上側角104を起点に強い磁界を受けているため、その上側角104を起点に大きく温度上昇をしていることが確認できる。
【0050】
上側及び下側の加熱コイル21、22で、開放打ち抜き端101の端面103を挟み込んで加熱を行う場合、上側及び下側の加熱コイル21、22直下が温度ピークとなる。
【0051】
このため、(b)本実施形態のオフセット無しの構成の場合、上側及び下側の加熱コイル21、22を開放打ち抜き端101の端面103に対してピンポイントで配置し、上側及び下側の加熱コイル21、22と開放打ち抜き端101の端面103との相対位置関係を正確にそろえることが必要となる。
【0052】
一方で、(c)本実施形態のオフセット有りの構成の場合、開放打ち抜き端101は、上側の加熱コイル21と、下側の加熱コイル22とで斜め方向で挟み込まれている。これにより、開放打ち抜き端101の端面103の上側角104を起点とし、そこが温度ピークとなるため、上側及び下側の加熱コイル21、22と開放打ち抜き端101の端面103との相対位置関係の管理が鈍感となる。
【0053】
したがって、そのようなロバスト性の観点から、(c)本実施形態のオフセット有りの構成の方が、(b)本実施形態のオフセット無しの構成よりも優位であると考えられる。
【0054】
さらに、図12の電流密度の分布及びベクトルが示す如く、(a)従来の構成の場合、加熱コイルに沿って開放打ち抜き端101の端面103を流れた誘導電流は端面103から離れ鋼板内側を分散して反対方向に流れてループを形成するため、加熱効率が低下することとなる。
【0055】
一方、(b)及び(c)本実施形態の構成の場合、誘導電流が加熱コイル21、22直下の開放打ち抜き端101の端面103を集中的に流れるため、温度ピークが加熱したい開放打ち抜き端101の端面103とほぼ一致しており、加熱効率が高いことが分かる。
【0056】
特に、(c)本実施形態の構成の場合、開放打ち抜き端101の上側角104を起点に誘導電流が流れ板厚反対面に電流が流れるため、この上側角104を起点に温度ピークが形成され、開放打ち抜き端101の端面103をより集中的に加熱できることが分かる。
【0057】
続いて、(b)本実施形態のオフセット無しの構成と、(c)本実施形態のオフセット有りの構成とについて、上側及び下側の加熱コイル21、22を移動させて加熱を行い温度分布の変化を見る実験を行った。
【0058】
本実験において、(b)本実施形態のオフセット無しの構成については、上側及び下側の加熱コイルを基準位置から鋼板の外側に移動させた場合と、鋼板の側に移動させた場合と、で温度分布の変化を解析した。
【0059】
同様に、(c)本実施形態のオフセット有りの構成については、上側及び下側の加熱コイル21、22を基準位置から鋼板100の外側に移動させた場合と、鋼板100の下側に移動させた場合と、で温度分布の変化を解析した。
【0060】
図13は、上記実験結果である上側及び下側の加熱コイルと温度分布との関係を示す図である。なお、図13において、左側に(b)本実施形態のオフセット無しの構成の温度分布の変化を示し、右側に(b)本実施形態のオフセット有りの構成の温度分布の変化を示している。
【0061】
図13に示す如く、(b)本実施形態のオフセット無しの構成について、上側及び下側の加熱コイル21、22を基準位置から鋼板100の外側あるいは内側に移動させた場合、上側及び下側の加熱コイル21、22と開放打ち抜き端101の端面103との相対位置関係が変わり温度ピークの位置も変わることが分かる。したがって、開放打ち抜き端101の端面103を集中的に加熱するためには、上側及び下側の加熱コイル21、22と開放打ち抜き端101の端面103と相対位置関係の管理が特に重要となる。
【0062】
一方で、(c)本実施形態のオフセット有りの構成について、上側及び下側の加熱コイル21、22を基準位置から鋼板100の外側あるいは下側に移動させた場合、上側及び下側の加熱コイル21、22と開放打ち抜き端101の端面103との相対位置関係が変わるが、温度ピークの位置はあまり変わらないことが分かる。したがって、上側及び下側の加熱コイル21、22と開放打ち抜き端101の端面103と相対位置関係が多少変わったとしても開放打ち抜き端101の端面103を集中的に加熱することができるため、より安定的に加熱を行うことができる。
【0063】
続いて、本実施形態に係る成形加工方法による成形品の例を説明する。本実施形態に係る成形加工方法によって成型される成形品は、例えば、図14に示す如く、曲率の付いたフランジを立てるフランジ成形部位などの、伸びフランジ成形部位を含む成形品であり、加工前後で端面103の線長が著しく拡大される成形部位を含む成形品である。
【0064】
上述した加熱工程において、加熱コイル2は、例えば、成形工程で成形された車両のハイテン材の骨格部材の曲率の付いたフランジ成形部位を加熱するのが好ましい。これにより、加熱前後で端面の線長が著しく拡大される成形部位を加工することができる。
【0065】
具体的な成形品として、図15に示す如く、車両のサスペンションに用いられるFRロアアームが想定される。図15において、点線で囲んだ股部などのフランジ成形部位は、本実施形態に係る成形加工方法によって成形されてもよい。
【0066】
成形工程は、例えば、不要部分を切り落とした開放打ち抜き端101に対してフランジ金型などを押し当てて伸びフランジを成形する。以下のように、AピラーロアやBピラーアウターロアのフランジ成形部位は、このようにして成形される。
【0067】
上記成形品として、図16に示す如く、車両の窓柱に用いられるAピラーロアが想定される。図16において、点線で囲んだコーナー部などのフランジ成形部位は、本実施形態に係る成形加工方法によって成形されてもよい。
【0068】
上記別の成形品として、図17に示す如く、車両のBピラーアウターロアが想定される。図17において、点線で囲んだコーナー部などのフランジ成形部位は、本実施形態に係る成形加工方法によって成形されてもよい。
【0069】
以上、本実施形態に係る成形加工方法は、鋼板100を打ち抜くことで、該鋼板100の端面103の一部が開放された開放打ち抜き端101を成形する抜き工程と、加熱コイル2を、抜き工程による開放打ち抜き端101の端面103に沿って非接触の状態で、かつ開放打ち抜き端101の端面103を挟み込むように配置し、加熱コイル2に交流電流を流し鋼板100に誘導起電力を生じさせることで、開放打ち抜き端101の端面103を加熱する加熱工程と、を含む。開放打ち抜き端101の端面103の一方側に配置された加熱コイル21の電流方向は、開放打ち抜き端101の端面103の他方側に配置された加熱コイル22の電流方向と逆である。
【0070】
これにより、開放打ち抜き端101の端面103に沿って電流のループを形成し、この端面103に電流を集中させることができる。このため、開放打ち抜き端101の端面103における電流密度を増加させることができ、この端面103の加熱効率が向上させることができる。
【0071】
実施形態2
図18は、加熱治具の一例を示す図である。図18の左側図は、鋼板成形品Xが加熱治具200に配置される前の状態を示し、右側図は、鋼板成形品Xが加熱治具200に配置された後の状態を示している。本実施形態において、上記抜き工程で打ち抜かれた鋼板成形品を、加熱工程で加熱治具200に配置し、加熱を行う。
【0072】
図18に示す如く、加熱治具200は、鋼板成形品Xの開放打ち抜き端101を加熱する加熱コイル2と、鋼板成形品Xを所定位置に位置決めする位置決めガイド3と、ベース部4と、を有している。加熱コイル2には、加熱コイル2に電力を供給する交流電源5が接続されている。
【0073】
鋼板成形品Xを位置決めガイド3上に置くだけで、自ずと鋼板成形品Xの位置が設定されるように、位置決めガイド3の形状及び配置は設定されている。加熱コイル2及び位置決めガイド3は、鋼板成形品Xの形状及び加熱部位の位置に対応させて、ベース部4に配置されている。
【0074】
加熱コイル2の位置、数、及び形状は、図18に示す例に限定されず、任意に設定できる。同様に、位置決めガイド3は、の位置、数、及び形状は、図18に示す例に限定されず、任意に設定できる。
【0075】
本実施形態に係る加熱治具200を用いることで、従来のように鋼板成形品Xを把持した状態で上下方向から加熱を行う必要がなく、鋼板成形品Xを簡易に加熱治具200に配置し加熱することができる。
【0076】
本実施形態に係る加熱工程は、図19に示す如く、抜き工程と、成形工程との間のアイドリング工程で実施されてもよい。アイドリング工程は、鋼板成形品Xを抜き工程から成形工程へ搬送する際の搬送ピッチを調整する工程であり、加工を行わない待機工程である。
【0077】
これにより、従来、抜き工程後、成形工程前に、打ち抜かれた鋼板成形品Xを待機させていたアイドリング工程を利用して、効率的に、鋼板成形品Xの加熱を行うことができる。したがって、追加で加熱工程を導入する必要がないため、生産性が向上する。
【0078】
また、本実施形態によれば、通常のプレス機内のアイドリング工程に加熱治具200を簡易に配置することで、アイドリング工程を加熱工程に変換できるため、工程数を増加することがない。
【0079】
図20は、プレス機内における工程の一例を示す模式図である。プレス機500内では、例えば、図20下段に示すフィンガー(把持部)501により鋼板成形品Xを連続的に搬送しつつ、図20の上段に示す成形工程、抜き工程、アイドリング工程、アイドリング工程、及び抜き工程が、所定の搬送ピッチで連続的に行われる。したがって、アイドリング工程に対応する位置に加熱治具200を単に置くだけで、プレス機500内のアイドリング工程を容易に加熱工程に置き換えることができる。
【0080】
なお、加熱工程は、加熱治具200の配置が可能であれば、プレス機500における任意の工程中、例えば、成形工程や、抜き工程などの工程中に実施されてもよい。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
2 加熱コイル、3 位置決めガイド、4 ベース部、5 交流電源、21 加熱コイル、22 加熱コイル、23 加熱コイル、24 加熱コイル、100 鋼板、101 開放打ち抜き端、102 伸びフランジ、103 端面、104 上側角、105 下側角、200 加熱治具、500 プレス機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20