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  • 特許-材料試験片の冷却方法および冷却装置 図1
  • 特許-材料試験片の冷却方法および冷却装置 図2
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  • 特許-材料試験片の冷却方法および冷却装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】材料試験片の冷却方法および冷却装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/30 20060101AFI20241217BHJP
   G01N 3/31 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G01N3/30 S
G01N3/31 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022126830
(22)【出願日】2022-08-09
(65)【公開番号】P2024024182
(43)【公開日】2024-02-22
【審査請求日】2024-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼本 隆洋
(72)【発明者】
【氏名】荒尾 亮
(72)【発明者】
【氏名】内田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克哉
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-072058(JP,U)
【文献】特開平04-248439(JP,A)
【文献】実開昭60-146841(JP,U)
【文献】特開平06-222176(JP,A)
【文献】米国特許第05302023(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/30
G01N 3/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料試験片を容器内の液体冷媒により低温の試験温度に冷却する方法において、
前記液体冷媒の液面に断熱材からなる試験片載置台を浮揚させ、該試験片載置台上に前記材料試験片を配置し、前記材料試験片を冷却する
ことを特徴とする材料試験片の冷却方法。
【請求項2】
前記試験片載置台に錘を装着させ、前記材料試験片と前記液体冷媒の液面との距離を変えて前記試験温度を調整することを特徴とする請求項1に記載の材料試験片の冷却方法。
【請求項3】
前記試験温度が-90℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の材料試験片の冷却方法。
【請求項4】
前記材料試験片がシャルピー試験片であることを特徴とする請求項1または2に記載の材料試験片の冷却方法。
【請求項5】
前記液体冷媒が液体窒素または液体ヘリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の材料試験片の冷却方法。
【請求項6】
材料試験片を容器内の液体冷媒により低温の試験温度に冷却する冷却装置であって、
前記容器と、
前記液体冷媒と、
前記液体冷媒の液面に浮揚する断熱材からなる試験片載置台と
を備えることを特徴とする材料試験片の冷却装置。
【請求項7】
前記試験片載置台に、錘を脱着する手段を有することを特徴とする請求項6に記載の材料試験片の冷却装置。
【請求項8】
前記試験温度が-90℃以下であることを特徴とする請求項6または7に記載の材料試験片の冷却装置。
【請求項9】
前記材料試験片がシャルピー試験片であることを特徴とする請求項6または7に記載の材料試験片の冷却装置。
【請求項10】
前記液体冷媒が液体窒素または液体ヘリウムであることを特徴とする請求項6または7に記載の材料試験片の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料試験に用いる材料試験片の冷却方法および冷却装置に関し、特に鉄鋼材料である厚鋼板などの靭性を評価するため衝撃値を測定するシャルピー衝撃試験の材料試験片の冷却方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料の衝撃特性を評価する材料試験として、JIS Z 2242に記載されているシャルピー衝撃試験が一般に知られている。多くの金属材料の衝撃値は,試験温度によって変化するため、試験は指定された温度で行う必要があるが、その温度が室温でない場合は、材料試験片(以下、単に「試験片」ともいう。)を管理された状態で指定温度に加熱又は冷却しなければならない。特に低炭素鋼ではその使用環境から0℃以下での試験が一般的である。
【0003】
試験片の冷却方法は、液体に試験片を漬けて液体温度に冷却する場合と気体の冷気によって冷却する場合がある。液体に試験片を漬けて冷却する場合は、調整できる温度は液体の沸点から凝固点までの温度となる。例えば、非特許文献1に記載の通り液体としてエチルアルコールを使用する場合は、ドライアイスを入れることで室温から凝固点付近の-75℃までの温度が調整可能である。また、工業的によく使われる液体窒素を用いる場合は、-196℃の温度に調整可能である。
【0004】
しかし、工業的に一般に使用可能な液体を使用した冷却では、-75℃以下から-196℃までの温度範囲では温度調整可能な液体がないのが現状である。希少価値の高い液体アルゴンや液体キセノンを使用すれば、-186℃や-109℃といった液化温度にだけは調整可能であるが、例えば、温度を10℃毎に下げて試験する場合などは、その液化温度以外では温度調整ができないことが課題である。
【0005】
上記の課題を解決するための方法として、気体の冷気によって冷却する方法がある。気体の冷気を使う場合は、その気体を断熱層内で供給することで温度を調整可能であり、供給量を調整することで気体の気化温度以上にも設定できる。例えば、特許文献1では、金属試験片を所定の極低温まで冷却する装置であって、液体窒素が供給される槽内の通気性貯留棚上にドライアイスを載せ、その上に試験片を設置する装置が開示されている。しかし、このような装置では、液体窒素のレベルを一定に保つために、液体窒素を供給しつつ、オーバーフロー分を排出させることから、液体窒素を無駄に使用してしまうという問題がある。
【0006】
さらに、液体窒素を噴出して供給する場合の液体窒素の噴出量を調節する冷却装置が市販されている。このような冷却装置では、室温~液体窒素温度(-196℃)の間の任意の温度に調整できるため、広く用いられている。しかし、この冷却装置は、液体窒素の噴出を繰り返すことで温度を調整するため、目標の温度に到達し、その温度をキープするのに時間がかかることが問題となっている。また、液体窒素噴出の冷却装置は、設備として大がかりとなりシャルピー試験機に併設することが難しいという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭60-146841号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】岡本晴道、他1名、”液体窒素温度における金属の材料試験方法およびその結果”、低温工学、Vol.3 No.1(1968)p.9~15
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術の問題点を解消し、液体窒素噴出装置の課題である噴出量を抑え、温度調整時間を短縮し、装置を簡易化し、シャルピー試験機に併設できるように持ち運び可能な材料試験片の冷却方法および冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前述の目的を達成するため、鋭意検討した。
液体窒素の噴出冷却の温度調整時間が長くなる理由について、冷却中の試験片温度を測定し検討した。その結果、断熱層内の温度を調整するために液体窒素を噴出するタイミングで断熱層内および試験片の温度が大きく変動し、噴出を止めるとある一定温度になることを見出した。
【0011】
この温度変動をなくす手法として、液体窒素を噴出せず所定温度に試験片温度を調整する方法をさらに検討した。そして、本発明者らは、保温容器に液体窒素を入れ、試験片を断熱性の台に置き液体窒素の液面に浮かべることで試験片の温度を一定に保つことができることを新たに知見した。
【0012】
さらに、液体窒素の液面に浮かせた断熱性の台の一部を沈めて液体窒素の液面と試験片距離を変えることにより、-90℃以下(-196℃以上)の温度であれば任意の温度に試験片の温度調整できることも新たに見出した。
以上の知見を得る基となった検討実験とその結果については後述する。
【0013】
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものであって、本発明の要旨は、次のとおりである。
〔1〕材料試験片を容器内の液体冷媒により低温の試験温度に冷却する方法において、
前記液体冷媒の液面に断熱材からなる試験片載置台を浮揚させ、該試験片載置台上に前記材料試験片を配置し、前記材料試験片を冷却する
ことを特徴とする材料試験片の冷却方法。
〔2〕〔1〕において、前記試験片載置台に錘を装着させ、前記材料試験片と前記液体冷媒の液面との距離を変えて前記試験温度を調整することを特徴とする材料試験片の冷却方法。
〔3〕〔1〕または〔2〕において、前記試験温度が-90℃以下であることを特徴とする材料試験片の冷却方法。
〔4〕〔1〕ないし〔3〕のいずれか一つにおいて、前記材料試験片がシャルピー試験片であることを特徴とする材料試験片の冷却方法。
〔5〕〔1〕ないし〔4〕のいずれか一つにおいて、前記液体冷媒が液体窒素または液体ヘリウムであることを特徴とする材料試験片の冷却方法。
〔6〕材料試験片を容器内の液体冷媒により低温の試験温度に冷却する冷却装置であって、
前記容器と、
前記液体冷媒と、
前記液体冷媒の液面に浮揚する断熱材からなる試験片載置台と
を備えることを特徴とする材料試験片の冷却装置。
〔7〕〔6〕において、前記試験片載置台に、錘を脱着する手段を有することを特徴とする材料試験片の冷却装置。
〔8〕〔6〕または〔7〕において、前記試験温度が-90℃以下であることを特徴とする材料試験片の冷却装置。
〔9〕〔6〕ないし〔8〕のいずれか一つにおいて、前記材料試験片がシャルピー試験片であることを特徴とする材料試験片の冷却装置。
〔10〕〔6〕ないし〔9〕のいずれか一つにおいて、前記液体冷媒が液体窒素または液体ヘリウムであることを特徴とする材料試験片の冷却装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液体冷媒の気化温度以上においても液体冷媒を噴出することなく材料試験片の温度を狙いの温度に短時間で到達させ、その温度を保持できる。そのため、鋼構造物の安全性を評価するシャルピー衝撃値を効率的に求めることができるという産業上格段に優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る材料試験片の冷却装置の一実施態様を示す模式斜視図である。
図2】本発明に係る材料試験片の冷却装置の一実施態様を示す模式縦断面図である。
図3】本発明に係る冷却装置内の試験片載置台の実施態様例を示す模式斜視図である。
図4】本発明と従来技術における材料試験片冷却時の温度変化を説明する模式図である。
図5】本発明における材料試験片冷却時の温度変化を説明する模式図である。
図6】本発明における液体窒素液面からの距離と試験片温度との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る材料試験片の冷却方法および冷却装置の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表わされた各部材の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0017】
[冷却方法]
本発明に係る材料試験片の冷却方法は、材料試験片を容器内の液体冷媒により低温の試験温度に冷却する方法において、液体冷媒の液面に断熱材からなる試験片載置台を浮揚させ、試験片載置台上に材料試験片を配置し、材料試験片を冷却することを特徴とする。
【0018】
また、前記試験片載置台に錘を装着させ、前記材料試験片と前記液体冷媒の液面との距離を変えることにより、前記材料試験片の試験温度を調整することができる材料試験片の冷却方法である。
【0019】
すなわち、液体冷媒の液面に断熱材からなる試験片載置台を浮揚させることで、液体冷媒が気化した冷気により材料試験片の温度一定に保つことができる。液体冷媒が気化した冷気の温度は、液体冷媒の液面からの距離dに応じて一定となるので、試験片載置台に配置した材料試験片と液体冷媒の液面からの距離dを調整することにより、材料試験片を目標の温度に冷却することができる。
【0020】
液面からの距離dを調整する方法としては、試験片載置台の液面から出ている高さを変更すれば良い。
【0021】
その具体的な方法の一例としては、液面に浮揚させた試験片載置台に、脱着可能な複数の錘を装着させて、試験片載置台の一部を沈下させて液体冷媒の液面と材料試験片との距離dを変える方法がある。この錘を装着する方法では、錘の重量を変えることにより、または脱着させる複数の錘の個数を変えることにより、載置台の沈み具合が変化するので、目標とする試験片温度となるように、錘の重量を選択すれば良い。
【0022】
さらに、前記試験温度が-90℃以下であることが好ましい。より好ましくは、-90℃以下であって、-196℃以上、さらには-256℃以上である。これは、対象とする材料試験が低温のシャルピー衝撃試験であることから、材料試験片は、シャルピー試験片であることが好ましい。なお、シャルピー衝撃試験以外でも低温での衝撃試験などの材料試験において用いる材料試験片にも適応可能である。
【0023】
次に、液体冷媒としては、液体窒素が好ましい。液体窒素は、沸点が-196℃(77.35K)の液体であり、冷却剤や冷媒として様々な用途に利用されている。また、より低温の沸点を有する冷媒としては、液体ヘリウムを用いることもできる。液体ヘリウムの沸点は、-269℃(約4.2K)であり、-256℃の極低温における材料試験を行う場合などに用いられる。
【0024】
[冷却装置]
続いて、本発明に係る材料試験片の冷却装置の一実施態様を、図1および図2に基づいて説明する。図1は装置の斜視図であり、図2は、縦断面図である。
【0025】
本発明に係る材料試験片の冷却装置1は、材料試験片5を保温容器2内の液体冷媒である液体窒素3により低温の試験温度に冷却する冷却装置であって、保温容器2と液体冷媒である液体窒素3と液体窒素3の液面に浮揚する断熱材からなる試験片載置台4とを備える。
【0026】
また、試験片載置台4に複数の錘を脱着する手段(図示せず)を有していることが好ましい。これらの錘の総重量を変化させることにより、試験片載置台4の一部が液体窒素3の液面より沈み込み、液体窒素3の液面と材料試験片の下面との距離dを変化させることができる。この距離dを調整することにより、材料試験片を目標の温度に冷却することができる。
【0027】
浮揚させた断熱材からなる試験片載置台4は、ポリスチレンフォーム断熱材(いわゆる発泡スチロール)を使用することが好ましいが、その他の断熱材としては、発泡ポリプロピレンなどが使用できる。
【0028】
さらに、試験片載置台4の浮揚を安定させるために、図3(a)に示す4本脚の台とすることが好ましい。脚4aの数は、少なくとも図3(b)に示す3本脚の台とし、それ以上の脚の数を有する台とすることが好ましい。この脚4aは、保温容器2の底面に到達していなくても安定するが、浮力による復元力の観点から液体窒素の液面から長い方がより安定し好ましい。
【0029】
ここで、保温容器2の形状、構造は、特に限定されないが、持ち運び可能で液体窒素を投入しやすい開放型の四角柱容器であることが好ましい。開放型容器とは、蓋が密閉しない容器のことである。また、容器の壁と底は、真空断熱層を有する二重構造であることが好ましい。
【0030】
また、試験片載置台4上には、材料試験片5を複数個配置することができる。
これらの材料試験片5の温度の測定は、試験と同材質・同形状のダミーサンプルに熱電対を取り付け、材料試験片5に隣接しておいて測温することができる。
【0031】
なお、保温容器に入れる液体冷媒として液体窒素の説明を述べたが、前述したように、液体ヘリウムに変えることも可能である。その場合には、-256℃以上の温度でも調整可能となる。
【0032】
[試験片冷却の検討実験とその結果]
ここで、材料試験片の冷却時の温度変化に関する検討実験とその結果について説明する。
【0033】
図4は、本発明の冷却方法と従来技術の液体窒素噴霧冷却方法における材料試験片の冷却時の温度変化の結果を示している。この図4の実験では、目標とする試験片温度を、本発明例では-150℃とし、従来例では-170℃とした場合の試験片温度が試験可能となる安定した温度となるまでの時間経過を調べたものである。図4中の実線は、本発明例の温度変化であり、点線が従来例の温度変化である。従来例では、液体窒素投入(噴出)を行うと試験片温度は急激に低下するが、すぐに温度上昇するので、その都度液体窒素を投入しており、試験可能となる温度が30分一定に保持されるまでに232分が経過した。これに対し、本発明例では、液体窒素を一旦投入して、そのまま容器内に滞留させておけば、液体窒素を補充投入することなく、試験片温度は安定し、試験可能となるまでにわずか111分経過しただけであった。つまり、従来例と比べて、121分の大幅な時間短縮となった。
【0034】
次に、図5は、本発明の冷却方法における試験片冷却時の温度変化について、目標とする冷却温度ごとの温度変化の状況を調べた結果を示している。この図5からは、冷却温度が高いほど温度が安定する(一定となる)までに時間を要することが分かった。
【0035】
さらに、図6は、液面からの距離dと冷却温度との関係を調べた結果である。目標とする冷却温度は、試験片載置台に装着する錘の種類を変えて、載置台上の試験片下面と液体窒素の液面との距離dを変化させることにより調整する。距離dが短い、すなわち試験片が液面に近いほど、液体窒素の温度-196℃に近い温度となり、距離dが長い、すなわち試験片が液面から遠いほど、高い温度となっていることが分かった。
【実施例
【0036】
JIS Z 2242によるシャルピー衝撃試験を実施した結果について説明する。
まず、その試験片を厚鋼板から採取した。試験片は、10mm角×55mm長のサイズで、各温度3本用意した。前述した本発明に係る冷却装置(本発明例)として、直径300mm、高さ350mmの保温容器を用いた。対比する比較例の従来装置として、市販の液体窒素噴出装置(株式会社島津製作所製冷却装置)を用いた。それぞれに液体窒素を投入し、その冷却時間を測定した。この冷却時間は、JIS Z 2242に従い、室温から冷却を開始し、目標温度の±1℃で30分保持できる(試験可能時間)までのトータル時間とした。試験片の温度測定は、前述した熱電対を用いて行った。目標温度の調整方法は、本発明例では、ポリスチレンフォーム断熱材からなる試験片載置台に装着する錘の重量を変化させ、試験片と液体窒素液面との距離を変えて調整した。また、比較例では、液体窒素の噴出量を調整して温度調整した。
【0037】
表1に目標温度と冷却時間の比較をまとめた。
【0038】
【表1】
【0039】
目標温度-100℃のNo.1とNo.5を比較すると、本発明例(No.1の冷却時間:113分)は、比較例(No.5の冷却時間:240分)に対して、113/240=47%の所要時間で冷却完了した。目標温度-140℃のNo.2とNo.6を比較すると、本発明例(No.2の冷却時間:96分)は、比較例(No.6の冷却時間:210分)に対して、96/210=46%の所要時間で冷却完了した。目標温度-165℃のNo.3とNo.7を比較すると、本発明例は、比較例に対して35%の所要時間で冷却完了した。目標温度-180℃のNo.4とNo.8を比較すると、本発明例は、比較例に対して27%の所要時間で冷却完了した。
【0040】
以上のように、本発明の冷却方法を適用することにより、液体窒素を噴出する従来方式に比べ液体窒素を噴出することがないため、50%以下の冷却時間で冷却することができ、冷却時間の大幅な短縮が可能となり試験効率の向上に多大な寄与をすることができた。
【0041】
さらに、本発明に係る冷却装置は、持ち運び可能な保温容器に液体窒素を入れるだけの簡易的な装置であるため、簡単に持ち運びでき、液体窒素を噴出させるような大掛かりな冷却装置は必要としないため、シャルピー試験機の近くに設置することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 冷却装置
2 保温容器
3 液体窒素(液体冷媒)
4 試験片載置台
4a 試験片載置台の脚
5 材料試験片
d 液体窒素液面と試験片下面との距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6