(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】シート特定装置、画像処理装置及びシート特定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20241217BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20241217BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G01B11/30 Z
G01N21/17 A
(21)【出願番号】P 2022566905
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2021043674
(87)【国際公開番号】W WO2022118797
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2020201451
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020201452
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】山田 眞一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 一徳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晃司
(72)【発明者】
【氏名】中地 一博
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-023203(JP,A)
【文献】特開2011-007576(JP,A)
【文献】特開2004-038879(JP,A)
【文献】特開2020-036227(JP,A)
【文献】特開2007-078517(JP,A)
【文献】特開2009-300085(JP,A)
【文献】特開2019-191020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 - 11/30
G01N 21/17 - 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の形成対象又は画像の読み取り対象であるシートの表面のうちパターン光が投影されている特定領域の画像である特定画像を取得する取得部と、
前記特定画像に基づいて、前記シートの前記表面の凹凸に関する凹凸情報を特定する凹凸特定部と、を備え
、
前記パターン光は、前記特定領域上に明部と暗部とが交互に並ぶ縞パターンを形成し、
前記縞パターンは、互いに直交する第1縞パターンと第2縞パターンとを含み、
前記第1縞パターンと前記第2縞パターンとでは、前記明部と前記暗部との少なくとも一方の幅が異なる、
シート特定装置。
【請求項2】
前記凹凸特定部で特定される前記凹凸情報に基づいて、画像の形成又は画像の読み取りに関する画像処理条件を決定する条件決定部を更に備える、
請求項1に記載のシート特定装置。
【請求項3】
前記パターン光を照射する光照射部と前記特定領域の中心とを結ぶ第1仮想直線は、前記シートの搬送方向に沿った第2仮想直線に対して、所定角度で傾斜している、
請求項1に記載のシート特定装置。
【請求項4】
前記所定角度は、20度以上90度以下である、
請求項3に記載のシート特定装置。
【請求項5】
前記パターン光を照射する光照射部は、
光源と、
前記光源から出力される光の一部を遮ることにより、前記パターン光を透過させる遮蔽体と、を有する、
請求項1に記載のシート特定装置。
【請求項6】
前記明部と前記暗部との少なくとも一方の幅は、60μm以上500μm以下である、
請求項1に記載のシート特定装置。
【請求項7】
前記凹凸情報は、前記表面の凹凸の前記表面に沿った平面に直交する方向の寸法と、前記平面に沿った方向の寸法と、の少なくとも一方に関する情報を含む、
請求項1に記載のシート特定装置。
【請求項8】
前記凹凸特定部は、少なくとも前記特定領域上における前記パターン光の線幅のばらつきに基づいて、前記凹凸情報を特定する、
請求項1に記載のシート特定装置。
【請求項9】
請求項1に記載のシート特定装置と、
前記シートを対象として、画像の形成と画像の読み取りとの少なくとも一方を実行する画像処理部と、を備える、
画像処理装置。
【請求項10】
画像の形成対象又は画像の読み取り対象であるシートの表面のうちパターン光が投影されている特定領域の画像である特定画像を取得することと、
前記特定画像に基づいて、前記シートの前記表面の凹凸に関する凹凸情報を特定することと、を有
し、
前記パターン光は、前記特定領域上に明部と暗部とが交互に並ぶ縞パターンを形成し、
前記縞パターンは、互いに直交する第1縞パターンと第2縞パターンとを含み、
前記第1縞パターンと前記第2縞パターンとでは、前記明部と前記暗部との少なくとも一方の幅が異なる、
シート特定方法。
【請求項11】
画像の形成対象又は画像の読み取り対象であるシートの表面のうちパターン光が投影されている特定領域の画像である特定画像を取得する取得部と、
前記シートの前記表面内で前記特定領域がある移動量だけ移動する際の前記特定画像を積算して得られる積算画像に基づいて、前記シートの前記表面の凹凸に関する凹凸情報を特定する凹凸特定部と、を備
え、
前記パターン光は、前記特定領域上に明部と暗部とが交互に並ぶ縞パターンを形成し、
前記縞パターンは、互いに直交する第1縞パターンと第2縞パターンとを含み、
前記第1縞パターンと前記第2縞パターンとでは、前記明部と前記暗部との少なくとも一方の幅が異なる、
シート特定装置。
【請求項12】
前記凹凸特定部で特定される前記凹凸情報に基づいて、画像の形成又は画像の読み取りに関する画像処理条件を決定する条件決定部を更に備える、
請求項11に記載のシート特定装置。
【請求項13】
前記移動量は、前記シートの搬送速度と、前記特定画像を撮像する撮像部の露光時間と、の少なくとも一方で規定される、
請求項11に記載のシート特定装置。
【請求項14】
前記移動量は、前記特定画像を撮像する撮像部の画素ピッチを像倍率で除した値以上である、
請求項11に記載のシート特定装置。
【請求項15】
前記パターン光を照射する光照射部は、
光源と、
前記光源から出力される光の一部を遮ることにより、前記パターン光を透過させる遮蔽体と、を有する、
請求項11に記載のシート特定装置。
【請求項16】
前記縞パターンは、前記明部と前記暗部との少なくとも一方が、前記シートの前記表面内での前記特定領域の移動方向に沿って延びる、
請求項11に記載のシート特定装置。
【請求項17】
前記凹凸情報は、前記表面の凹凸の前記表面に沿った平面に直交する方向の寸法と、前記平面に沿った方向の寸法と、の少なくとも一方に関する情報を含む、
請求項11に記載のシート特定装置。
【請求項18】
前記凹凸特定部は、少なくとも前記特定領域上における前記パターン光の線幅のばらつきに基づいて、前記凹凸情報を特定する、
請求項11に記載のシート特定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート特定装置、画像処理装置及びシート特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、複写機又はレーザープリンター等の画像形成装置に用いられ、シート(紙)の表面の映像から、種類を自動で判別する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。関連技術に係る映像読取装置は、シートの表面に斜め方向より光を照射する発光素子と、その照射領域内を映像として読み取るエリアセンサーと、を備え、読取結果からシートに関する情報を読み取る。
【0003】
この映像読取装置では、シートの表面の凹凸によって生じる陰影像を照射領域内の映像から検出することで、シートの表面粗度を推定する。シートの表面の凹凸が大きい場合には、凹凸が小さい場合と比べてコントラストが高くなるので、コントラストから表面の凹凸の大きさを推定できる。さらに、この映像読取装置は、発光素子からの光の入射方向をシートの搬送方向に対して斜め45度にすることにより、シートの繊維方向と光入射方向とを略45度に保ち、繊維方向による検出精度のばらつきの少ない構成をとる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記関連技術の構成では、凹凸に対して感度が高い映像を得るためにはシートの表面に対する光入射方向の角度を浅く(小さく)する必要があり、これにより得られる映像が全体的に暗くなって、凸凹に起因する陰影がノイズに埋もれやすい。
【0006】
本発明の目的は、シートの表面の凹凸の特定精度を向上しやすいシート特定装置、画像処理装置及びシート特定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係るシート特定装置は、取得部と、凹凸特定部と、を備える。前記取得部は、特定領域の画像である特定画像を取得する。前記特定領域は、画像の形成対象又は画像の読み取り対象であるシートの表面のうちパターン光が投影されている領域である。前記凹凸特定部は、前記特定画像に基づいて、前記シートの前記表面の凹凸に関する凹凸情報を特定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シートの表面の凹凸の特定精度を向上しやすいシート特定装置、画像処理装置及びシート特定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る画像処理装置の概略ブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る画像処理装置の外観及び内部構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係るシート特定装置の光照射部及び撮像部を示す概略図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係るシート特定装置の光照射部及びシートを示す概略図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係るシート特定装置でのシートの表面の凹凸検知の原理を示す概略図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係るシート特定装置にて得られる特定画像の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係るシート特定装置の動作例のフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態1に係るシート特定装置にて得られる所定角度を変えた場合の特定画像の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係るシート特定装置にて得られる標準偏差と、算術平均高さとの関係性を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施形態1に係るシート特定装置においてパターン光の線幅、及びパターン光の照射方向と繊維方向との関係を変えながら、決定係数を算出した結果を示す表である。
【
図11】
図11は、実施形態1に係るシート特定装置において格子パターンを生じるパターン光を示す概略図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る画像処理装置の概略ブロック図である。
【
図13】
図13は、実施形態3に係るシート特定装置の光照射部及びシートを示す概略図である。
【
図14】
図14は、実施形態3に係るシート特定装置にて得られる特定画像及び積算画像の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態3に係るシート特定装置にて得られる特定画像及び積算画像の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、実施形態3に係るシート特定装置にて得られる積算画像の1行に着目した各画素の画素値を示すグラフである。
【
図17】
図17は、実施形態3に係るシート特定装置にて得られる中間層の幅と、算術平均高さとの関係性を示すグラフである。
【
図18】
図18は、実施形態3に係るシート特定装置の動作例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0011】
(実施形態1)
[1]画像処理装置の全体構成
まず、
図1及び
図2を参照しつつ、本実施形態に係る画像処理装置10の全体構成について説明する。
【0012】
本実施形態に係る画像処理装置10は、一例として、原稿から画像(画像データ)を読み取るスキャン機能、画像データに基づいて画像を形成するプリント機能、ファクシミリ機能、及びコピー機能等の複数の機能を有する複合機である。画像処理装置10は、画像を形成する機能と画像を読み取る機能との少なくとも一方を含む画像処理機能を有していればよく、プリンター、スキャナー、ファクシミリ装置、及びコピー機等であってもよい。
【0013】
画像処理装置10は、
図1に示すように、自動原稿搬送装置11と、画像読取部12と、画像形成部13と、給紙部14と、操作表示部15と、制御部16と、を備える。自動原稿搬送装置11は、ADF(Auto Document Feeder)であるので、
図1では「ADF」と表記し、かつ以下の説明でも「ADF11」と称する。本実施形態では、
図2に示すように、画像処理装置10は筐体100を備えている。ADF11、画像読取部12、画像形成部13、給紙部14、操作表示部15及び制御部16は、筐体100に設けられている。
【0014】
ADF11は、画像読取部12によって画像が読み取られるシート(原稿)を搬送する。ADF11は、原稿セット部、複数の搬送ローラー、原稿押さえ及び排紙部等を有する。
【0015】
画像読取部12は、シートから画像を読み取り、読み取られた画像に対応する画像データを出力する。画像読取部12は、原稿台、光源、複数のミラー、光学レンズ及びCCD(Charge Coupled Device)等を有する。
【0016】
画像形成部13は、画像読取部12から出力される画像データに基づいて、シートSh1(
図2参照)に画像を形成する。また、画像形成部13は、パーソナルコンピューター等の、画像処理装置10の外部の情報処理装置から入力される画像データに基づいて、シートSh1に画像を形成する。本実施形態では一例として、
図2に示すように、画像形成部13は、転写装置131、定着装置132及び排紙トレイ133等を備え、電子写真方式でシートSh1に画像を形成する。画像形成部13は、モノクロの画像を形成する構成に限らず、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びK(ブラック)の4色を用いてフルカラーの画像を形成する構成であってもよい。また、画像形成部13は、例えば、インクジェット方式等、電子写真方式以外の画像形成方式により、シートに画像を形成する構成であってもよい。
【0017】
画像形成部13は、現像剤としてのトナーを用いて、シートSh1に画像を形成する。具体的には、画像形成部13は、帯電した感光体ドラムの表面に、レーザー光を照射することで静電潜像を形成し、トナーにて静電潜像を現像することにより、感光体ドラムの表面にトナー像を形成する。転写装置131にて、搬送路T1(
図2参照)を搬送されるシートSh1にトナー像を転写する。定着装置132は、シートSh1に転写されたトナー像をそのシートSh1に溶融定着させる。例えば、定着装置132は、定着ローラー及び加圧ローラーを含み、シートSh1に転写されたトナー像を加熱し、かつシートSh1加圧することで、トナー像をシートSh1に定着させる。排紙トレイ133には、画像形成後のシートSh1が排出される。画像形成部13がインクジェット方式で画像を形成する場合、トナーに代えてインク(現像剤の他の一例)が供給される。
【0018】
給紙部14は、画像形成部13にシートSh1を供給する。給紙部14は、複数の給紙カセット141、手差しトレイ及び複数の搬送ローラー等を有する。給紙部14は、複数の給紙カセット141又は手差しトレイ等から、複数の搬送ローラー等で搬送路T1を通してシートSh1を搬送し、画像形成部13に供給する。画像形成部13は、給紙部14から搬送路T1を通して供給されるシートSh1に画像を形成する。
【0019】
操作表示部15は、画像処理装置10におけるユーザーインターフェイスである。操作表示部15は、制御部16からの制御指示に応じて各種の情報を表示する液晶ディスプレー等の表示部、及びユーザーの操作に応じて制御部16に各種の情報を入力するスイッチ又はタッチパネル等の操作部を有する。また、画像処理装置10は、ユーザーインターフェイスとして、操作表示部15に加えて又は代えて、例えば、音声出力部及び音声入力部等を備えていてもよい。
【0020】
制御部16は、画像処理装置10を統括的に制御する。制御部16は、1以上のプロセッサー及び1以上のメモリーを有するコンピューターシステムを主構成とする。画像処理装置10では、1以上のプロセッサーがプログラムを実行することにより、制御部16の機能が実現される。プログラムは1以上のメモリーに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリーカード又は光学ディスク等の、コンピューターシステムで読み取り可能な非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。1以上のプロセッサーは、半導体集積回路を含む1以上の電子回路で構成される。さらに、本開示でいうコンピューターシステムは、1以上のプロセッサー及び1以上のメモリーを有するマイクロコントローラーを含む。制御部16は、画像処理装置10を統括的に制御するメイン制御部とは別に設けられた制御部であってもよい。
【0021】
また、画像処理装置10は、記憶部、通信部及び電源部等を更に備える。記憶部は、1以上の不揮発性のメモリーを含んでおり、制御部16に各種の処理を実行させるための制御プログラム等の情報が予め記憶されている。通信部は、画像処理装置10と、例えば、インターネット又はLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークを介して接続される外部装置との間で、データ通信を実行するインターフェイスである。電源部は、画像処理装置10の動作のための電力を生成(出力)する電源回路である。
【0022】
ところで、この種の画像処理装置10の関連技術として、複写機又はレーザープリンター等の画像形成装置に用いられ、シート(紙)の表面の映像から、種類を自動で判別する技術が知られている。関連技術に係る映像読取装置は、シートの表面に斜め方向より光を照射する発光素子と、その照射領域内を映像として読み取るエリアセンサーと、を備え、読取結果からシートに関する情報を読み取る。
【0023】
この映像読取装置では、シートの表面の凹凸によって生じる陰影像を照射領域内の映像から検出することで、シートの表面粗度を推定する。シートの表面の凹凸が大きい場合には、凹凸が小さい場合と比べてコントラストが高くなるので、コントラストから表面の凹凸の大きさを推定できる。さらに、この映像読取装置は、発光素子からの光の入射方向をシートの搬送方向に対して斜め45度にすることにより、シートの繊維方向と光入射方向とを略45度に保ち、繊維方向による検出精度のばらつきの少ない構成をとる。
【0024】
しかし、上記関連技術の構成では、凹凸に対して感度が高い映像を得るためにはシートの表面に対する光入射方向の角度を浅く(小さく)する必要があり、これにより得られる映像が全体的に暗くなって、凸凹に起因する陰影がノイズに埋もれやすい。
【0025】
これに対し、本実施形態では、以下に説明する構成により、シートの表面の凹凸の特定精度を向上しやすい、画像処理装置10を実現する。
【0026】
すなわち、本実施形態に係る画像処理装置10は、
図1に示すように、シート特定装置2を備えている。本実施形態に係るシート特定装置2は、画像処理装置10と一体化されている。
【0027】
シート特定装置2は、取得部21と、凹凸特定部22と、を備えている。取得部21は、特定画像Im1(
図4参照)を取得する。特定画像Im1は、画像の形成対象又は画像の読み取り対象であるシートSh1の表面A1(
図3参照)のうち特定領域R1(
図4参照)の画像である。特定領域R1は、シートSh1の表面A1のうちパターン光P1(
図3参照)が投影されている領域である。凹凸特定部22は、特定画像Im1に基づいて、シートSh1の表面A1の凹凸に関する凹凸情報を特定する。本実施形態では、シート特定装置2の構成要素である取得部21及び凹凸特定部22は、制御部16の一機能として制御部16に設けられている。
【0028】
上述した構成によれば、本実施形態に係るシート特定装置2、及びシート特定装置2を備える画像処理装置10は、シートSh1の表面A1の凹凸の特定精度を向上しやすい、という利点がある。すなわち、シートSh1の表面A1の特定領域R1には、発光素子からの光が一様に照射するのではなく、パターン光P1が投影される。したがって、凹凸特定部22では、特定画像Im1におけるパターン光P1の変形又は歪み等の度合いから、シートSh1の表面A1の凹凸に関する凹凸情報を特定することができる。よって、上記関連技術のようにシートSh1の表面A1に対する光入射方向の角度を浅く(小さく)しなくても、比較的明るい特定画像Im1からでも凹凸情報を特定可能であって、結果的に、関連技術に比較して凹凸の特定精度を向上しやすくなる。
【0029】
本実施形態に係るシート特定装置2は、画像処理部(画像読取部12及び画像形成部13)と共に、画像処理装置10を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る画像処理装置10は、シート特定装置2と、シートSh1を対象として、画像の形成と画像の読み取りとの少なくとも一方を実行する画像処理部と、を備える。
【0030】
[2]定義
本開示でいう「シート」は、画像の形成対象又は画像の読み取り対象であるシートである。本実施形態では一例として、パターン光P1の照射対象となるシートSh1は、画像形成部13による画像の形成対象としてのシートSh1であることとする。つまり、本実施形態では、給紙部14により搬送路T1を搬送されるシートSh1を、パターン光P1の照射対象とする。ただし、この例に限らず、パターン光P1の照射対象となるシートは、画像読取部12による画像の読み取り対象としてのシート(原稿)、つまりADF11により搬送されるシートであってもよい。また、シートSh1は、本実施形態では一例として紙であるが、紙に限らず、例えば、樹脂フィルム等であってもよい。
【0031】
本開示でいう「パターン光」は、例えば、光照射部3(
図1参照)から、形状及び方向を制御されて投影面(ここではシートSh1の表面A1)に投影される光であって、いわゆる構造化光(Structured Light)である。つまり、パターン光P1が照射する領域(特定領域R1)においては、パターン光P1により一様に照らされるのではなく、パターン光P1に応じた図形、図柄、絵柄、模様、記号、文字及び数字等が投影される。具体的には、パターン光P1が特定領域R1に照射することで、特定領域R1には、例えば、縞パターン、格子パターン又は円弧パターン等の、パターン光P1に応じたパターンの輝度分布が生じる。さらに、パターン光P1は、静止画像のように固定的なパターンに限らず、動画像(アニメーションを含む)のように時間経過に伴って変化するパターンの輝度分布を、特定領域R1に生じさせてもよい。
【0032】
本開示でいう「特定画像」は、例えば、撮像部4で撮像される、パターン光P1が投影されている状態の特定領域R1の画像である。つまり、特定画像Im1には、特定領域R1に投影されているパターン光P1、厳密には、パターン光P1が投影されることにより特定領域R1に生じる、パターン光P1に応じたパターンの輝度分布が含まれる。特定画像Im1は、モノクロ画像とカラー画像とのいずれでもよく、さらに、静止画像と動画像とのいずれであってもよい。
【0033】
本開示でいう「凹凸情報」は、シートSh1の表面A1の凹凸に関する情報であって、例えば、凹凸の高さ(又は深さ)及び/又は平面視における凹凸のサイズ等の情報を含む。シートSh1の表面A1は、凹部と凸部との少なくとも一方を含む凹凸を有している。つまり、表面A1には、複数の凹部のみが含まれていてもよいし、複数の凸部のみが含まれていてもよい。さらに、表面A1は、複数の凹部と1つの凸部とを含んでもよい。この場合、一例として、表面A1は、網状の1つの凸部と、この凸部で囲まれた網目の部位からなる複数の凹部とを含む。同様に、一例として、表面A1は、網状の1つの凹部と、この凹部で囲まれた網目の部位からなる複数の凸部とを含んでもよい。
【0034】
そして、表面A1における凹凸(凹部及び凸部)は、肉眼では個々の識別ができない程度の極めて小さなサイズを持ち、1枚のシートSh1の表面A1には、多数の凹凸が含まれる。つまり、凹凸は表面A1全体に比べて微細であって、人が表面A1を見たときに、凹凸があることで表面A1がざらざらした「梨地」のように見えることになる。このような多数の微細な凹凸は、例えば、紙のシートSh1であれば紙を構成する多数の繊維により、樹脂フィルムであればシボ加工等により、形成される。このような微細な凹凸に関する情報は、算術平均高さ(Sa)、又は線の算術平均高さ(Ra)等の、表面粗さを表す指標を含む。
【0035】
本開示でいう「繊維方向」は、シートSh1の表面A1の繊維の方向であって、例えば、紙のシートSh1であれば紙を構成する多数の繊維の延長方向、つまり紙の流れ目(紙の目)の方向である。一般的に、シートSh1には、繊維方向がシートSh1の長辺に沿った「縦目」と、繊維方向がシートSh1の短辺に沿った「横目」とがある。そして、画像処理装置10におけるシートSh1の搬送方向D1(
図2参照)は、シートSh1の長辺又は短辺に沿った方向である。そのため、基本的には、繊維方向は、シートSh1の搬送方向D1に沿うか、又は搬送方向D1に直交する方向に沿うことになる。
【0036】
[3]シート特定装置
次に、
図1~
図4を参照しつつ、本実施形態に係るシート特定装置2の構成について、より詳細に説明する。
【0037】
本実施形態では、シート特定装置2は、取得部21と、凹凸特定部22と、条件決定部23と、方向特定部24と、厚み特定部25と、光照射部3と、撮像部4と、厚みセンサー5と、を備えている。取得部21、凹凸特定部22、条件決定部23、方向特定部24及び厚み特定部25は、制御部16の一機能として制御部16に設けられている。つまり、本実施形態では、画像処理装置10は、取得部21及び凹凸特定部22に加え、条件決定部23、方向特定部24及び厚み特定部25を制御部16の一機能として備えている。
【0038】
光照射部3は、シートSh1の表面A1に向けてパターン光P1を照射する。つまり、光照射部3は、形状及び方向が制御されたパターン光P1を生成し、パターン光P1をシートSh1の表面A1に照射することにより、シートSh1の表面A1の特定領域R1にパターン光P1を投影する。このような光照射部3からのパターン光P1により、シートSh1の表面A1の特定領域R1には、パターン光P1に応じた図形、図柄、絵柄、模様、記号、文字及び数字等が投影される。
【0039】
本実施形態では一例として、パターン光P1は、
図4に示すように、特定領域R1上に明部L1と暗部L2とが交互に並ぶ縞パターンを形成する。つまり、パターン光P1が投影されることにより、特定領域R1には、明部L1及び暗部L2を含む縞パターンの輝度分布が生じる。ここで、明部L1は暗部L2に比べて明るい領域であって、言い換えれば、縞パターンは、複数本の明部L1が間隔を空けて並んだパターンであり、又は複数本の暗部L2が間隔を空けて並んだパターンである。つまり、特定領域R1においては、パターン光P1が投影されることで、直線状の明部L1と直線状の暗部L2とが各々の長手方向に直交する方向に交互に並ぶ縞パターンが形成される。本実施形態では一例として、シートSh1の搬送方向D1に直交する直線状の明部L1及び暗部L2が、搬送方向D1に交互に並ぶように配置されている。
図4等においては、明部L1を網掛け(ドットハッチング)で示し、暗部L2を黒塗りで示している。これにより、特定領域R1上の縞パターンには、表面A1の凹凸に応じた変形又は歪み等が現れやすくなる。ただし、
図4に示すような縞パターンを生じるパターン光P1は、あくまでパターン光P1の一例であって、パターン光P1は適宜変更可能である。
【0040】
本実施形態では、
図3及び
図4に示すように、光照射部3は、光源31と、遮蔽体32と、を有する。遮蔽体32は、光源31から出力される光の一部を遮ることにより、パターン光P1を透過させる。光源31は、電力が供給されることにより発光する発光素子を含み、発光素子で発生した光を遮蔽体32に向けて出力する。光源31は、制御部16からの制御信号によって制御され、少なくとも制御部16にて点灯/消灯の切り替えが可能である。遮蔽体32は、光源31とシートSh1の表面A1の特定領域R1との間に配置され、光源31からの光の一部を遮蔽し、残りを透過させる部品である。これにより、光源31から出力される光は、その一部が遮蔽体32で遮蔽され、残りは遮蔽体32を透過するので、遮蔽体32を透過する光は、遮蔽体32によって所望の形状に制御されたパターン光P1となる。これにより、比較的簡単な構成でパターン光P1を実現できる。
【0041】
本実施形態では一例として、光源31は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)又は有機EL(Electroluminescence)等の発光素子を1以上有し、平面視矩形状の発光面311(
図3参照)の全域を略一様に発光させることで、面発光する。さらに、本実施形態では、光源31は、平行光又は平行光に近い光を出力する。そのため、光照射部3から出力されるパターン光P1の光軸Ax1(
図3参照)は、光源31の発光面311の中心(重心)を通る発光面311の垂線となる。光源31は、コリメーターレンズ等の、発光素子からの光を平行光に変換する光学部品を有していてもよい。本実施形態では一例として、光源31は、可視光、具体的には白色光を出力する。ただし、光源31は、撮像部4が感度を有する波長の光を出力すればよく、白色光以外の光を出力してもよいし、例えば、赤外線又は紫外線等の可視光以外の波長域の光を出力してもよい。
【0042】
本実施形態では一例として、遮蔽体32は、光源31からの光を吸収又は反射する矩形板状の部品であって、1本以上のスリット321(
図4参照)が形成されている。これにより、光源31から出力される光は、その一部が遮蔽体32で遮蔽され、残りは遮蔽体32のスリット321を通して遮蔽体32を透過する。本実施形態では、特定領域R1に縞パターンを形成するパターン光P1を実現するべく、遮蔽体32は、直線状の複数本のスリット321を有する。これにより、パターン光P1が照射する特定領域R1においては、スリット321を透過した光が明部L1となり、遮蔽体32の影が暗部L2となることで、縞パターンが投影される。ただし、このようにスリット321を透過した光が明部L1となる構成に限らず、例えば、光の干渉を利用した「干渉縞」によってパターン光P1を実現してもよい。
【0043】
ここで、パターン光P1を照射する光照射部3と特定領域R1の中心とを結ぶ第1仮想直線は、シートSh1の搬送方向D1に沿った第2仮想直線に対して、所定角度θ1で傾斜している。本実施形態では、特定領域R1において、シートSh1の表面A1はシートSh1の搬送方向D1に沿っているので、第1仮想直線とシートSh1の表面A1との間の角度が、所定角度θ1となる。さらに、第1仮想直線はパターン光P1の光軸Ax1であるので、パターン光P1の光軸Ax1は、シートSh1の表面A1に対して所定角度θ1で傾斜する。特に、本実施形態では、光照射部3は、特定領域R1に対して、搬送方向D1における下流側、つまりシートSh1の進行方向の前方側から、所定角度θ1で斜めにパターン光P1を照射するように構成されている。これにより、特定領域R1上のパターンには、表面A1の凹凸に応じた変形又は歪み等が現れやすくなる。
【0044】
撮像部4は、シートSh1の表面A1のうち特定領域R1の画像を特定画像Im1として撮像する。ここで、撮像部4が撮像するのは、パターン光P1が投影されている状態の特定領域R1の画像(特定画像Im1)であるので、少なくとも撮像部4の撮像タイミングにおいては、光照射部3は特定領域R1にパターン光P1を照射する。本実施形態では一例として、撮像部4と光照射部3とは同期しており、撮像部4の撮像タイミングに合わせて光照射部3がパターン光P1を照射する。つまり、撮像部4で撮像が行われない期間には、光照射部3はパターン光P1を出力せず、これにより、光照射部3での無駄な電力消費が抑制される。
【0045】
本実施形態では、
図3に示すように、撮像部4は、撮像素子41と、光学部品42と、を有している。撮像素子41は、エリアセンサー又はラインセンサーを含み、撮像した特定画像Im1の画像データを、電気信号として制御部16に出力する。本実施形態では一例として、撮像部4は、撮像素子41としてCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサーを用いた、CIS(Contact Image Sensor)方式のエリアセンサーである。ただし、この例に限らず、撮像部4は、例えば、撮像素子41としてCCD(Charge Coupled Device)を用いたCCD方式であってもよい。
【0046】
光学部品42は、例えば、結像レンズを含み、撮像素子41とシートSh1の表面A1の特定領域R1との間に配置される。これにより、撮像素子41には、光学部品42を通して、特定領域R1の光が入射する。本実施形態では、撮像素子41及び光学部品42は、特定領域R1の中心(重心)を通る特定領域R1の垂線上に並んでいる。さらに、撮像素子41の受光面411(
図3参照)は、特定領域R1と平行に配置されている。そのため、撮像部4の光軸Ax2(
図3参照)は、撮像素子41の受光面411の中心(重心)を通る受光面411の垂線となる。撮像部4の光軸Ax2は、特定領域R1に対しても直交し、かつ特定領域R1の中心において光照射部3(パターン光P1)の光軸Ax1と交差する。撮像素子41で撮像される特定領域R1の面積は、撮像素子41の受光面411の面積を光学部品42の像倍率Mで除した数値に等しくなる。本実施形態では、説明を簡単にするため像倍率Mが「1」であると仮定する。ただし、像倍率Mは、1以外の値であってもよい。
【0047】
本実施形態では一例として、撮像部4は光照射部3と一体化されてセンサーユニット20(
図2参照)を構成する。言い換えれば、センサーユニット20は、光照射部3及び撮像部4を含んでいる。センサーユニット20は、画像処理装置10の筐体100内に収容されており、少なくとも制御部16と電気的に接続されている。
【0048】
本実施形態では、
図2に示すように、光照射部3及び撮像部4を含むセンサーユニット20は、給紙部14と画像形成部13との間の搬送路T1に対向して配置されている。そのため、特定領域R1の撮像位置は、給紙部14と画像形成部13との間の搬送路T1上に設定されることになる。つまり、光照射部3及び撮像部4は、給紙部14と画像形成部13との間の位置で、給紙部14から画像形成部13に搬送されるシートSh1について、パターン光P1を照射して特定画像Im1を撮像可能である。より詳細には、シートSh1の搬送方向D1において、画像形成部13の転写装置131よりも上流側であって、複数の給紙カセット141につながる搬送路T1の合流点よりも下流側の位置に、センサーユニット20が配置される。したがって、複数の給紙カセット141から画像形成部13に供給されるシートSh1についても、1つのセンサーユニット20にて特定画像Im1を撮像可能となり、給紙カセット141ごとにセンサーユニット20を設ける必要がない。
【0049】
特定領域R1を含むシートSh1の表面A1は、本実施形態では一例として、シートSh1の厚み方向において画像形成部13により画像が形成される側の一面であるが、この例に限らない。特定領域R1は、例えば、シートSh1の厚み方向において画像形成部13により画像が形成されない側の一面(裏面)に設定されてもよい。この場合、光照射部3及び撮像部4はシートSh1の裏面側に配置される。また、特定領域R1は、例えば、シートSh1の厚み方向の両面に設定されてもよい。この場合、光照射部3及び撮像部4は、2組設けられてシートSh1の厚み方向の両側に配置されてもよいし、シートSh1を裏返すことで、1組の光照射部3及び撮像部4にてシートSh1の両面の特定画像Im1を撮像してもよい。
【0050】
厚みセンサー5は、シートSh1の厚みに関する物理量を検出する。厚みセンサー5は、検出した物理量を、電気信号として制御部16に出力する。これにより、制御部16においては、シートSh1の厚みを特定可能となる。一例として、厚みセンサー5は、透過光を利用してシートSh1の厚み(又は坪量)を検出する光学センサーを含む。厚みセンサー5は、センサーユニット20に含まれていてもよいし、センサーユニット20とは別に設けられていてもよい。
【0051】
取得部21は、撮像部4で撮像される特定画像Im1を取得する。具体的には、取得部21は、撮像部4が撮像した特定画像Im1の画像データを、電気信号として撮像部4の撮像素子41から取得する。取得部21は、光照射部3及び撮像部4を制御し、例えば、搬送路T1のうちセンサーユニット20に対応する位置をシートSh1が通過するタイミングに合わせて、光照射部3にパターン光P1を照射させ、かつ撮像部4に特定画像Im1を撮像させる。取得部21で取得される特定画像Im1は、1以上のメモリーに一時的に記憶される。取得部21は、撮像部4以外から特定画像Im1を取得してもよい。
【0052】
凹凸特定部22は、取得部21で取得される特定画像Im1に基づいて、シートSh1の表面A1の凹凸に関する凹凸情報を特定する。これにより、シートSh1の表面A1の凹凸の状態を特定することができる。凹凸情報は、表面A1の凹凸の表面A1に沿った平面に直交する方向の寸法と、当該平面に沿った方向の寸法と、の少なくとも一方に関する情報を含む。つまり、凹凸情報は、表面A1に沿った平面に直交する方向の寸法である凹凸の高さ(又は深さ)、及び/又は、当該平面に沿った方向の寸法である平面視における凹凸のサイズに関する情報を含む。これにより、シートSh1の表面A1の凹凸の高さ(又は深さ)、及び/又は平面視における凹凸のサイズを特定することができる。本実施形態では一例として、凹凸特定部22は、凹凸の高さ(又は深さ)に関する表面A1の算術平均高さ(Sa)に相当する数値を、凹凸情報として算出する。
【0053】
ここで、凹凸特定部22は、特定画像Im1におけるパターン光P1の変形又は歪み等の度合いに基づいて、凹凸情報を特定する。すなわち、特定画像Im1は、パターン光P1が投影されることにより特定領域R1に生じる、パターン光P1に応じたパターン(本実施形態では縞パターン)の輝度分布を含むので、表面A1の凹凸により、当該パターンに変形又は歪み等が生じる。例えば、直線状のパターンを形成するパターン光P1であっても、表面A1に投影されるパターン光P1においては、表面A1の凹凸に応じた変形(蛇行)等が生じる。そこで、このようなパターン光P1の変形又は歪み等の度合いから、凹凸特定部22は、表面A1の凹凸に関する凹凸情報を算出する。本実施形態では、凹凸特定部22は、少なくとも特定領域R1上におけるパターン光P1の線幅のばらつきに基づいて、凹凸情報を特定する。これにより、比較的簡単な演算処理でシートSh1の表面A1の凹凸の状態を特定することができる。
【0054】
条件決定部23は、凹凸特定部22で特定される凹凸情報に基づいて、画像処理条件を決定する。ここでいう画像処理条件は、画像の形成又は画像の読み取りに関する条件である。つまり、画像処理装置10で実行される画像の形成に関する画像形成条件、及び/又は、画像の読み取りに関する画像読取条件を含む種々の画像処理条件が、条件決定部23にて決定される。具体的には、画像処理条件は、一例として、画像形成部13における定着圧力、定着温度、シートSh1の搬送速度、転写電圧、又はインクジェット方式でのインクの吐出量等、さらに、画像読取部12におけるシートの搬送速度、光量又は解像度等の条件を含む。例えば、シートSh1の表面A1の算術平均高さ(Sa)が大きく(つまり粗く)なると、画像形成部13による定着時に熱が伝わりにくくなったり、転写時に電気的な接触抵抗が高くなって電流が流れにくくなったりすることがある。そこで、条件決定部23は、凹凸情報に基づいて、算術平均高さ(Sa)が大きく(つまり粗く)なると、定着温度を上げたり、搬送速度を低下させたり、転写電圧を上げたりするように、画像処理条件を自動的に設定する。これにより、シートSh1の表面A1の凹凸に応じた適切な画像処理条件で、画像の形成及び/又は画像の読み取りが可能となり、画像形成及び/又は画像読取の品質(画質を含む)向上につながる。
【0055】
また、本実施形態では、条件決定部23は、繊維方向に基づいて、画像の形成又は画像の読み取りに関する画像処理条件を決定する。つまり、本実施形態では、方向特定部24により、シートSh1の表面A1の繊維方向が特定される。そこで、条件決定部23は、凹凸情報だけでなく、繊維方向に基づいても、画像処理条件を決定する。例えば、インクジェット方式の画像形成部13においては、繊維方向に対してカール挙動が異なるため、繊維方向に応じてカール方向を予測し、カール矯正することがある。繊維方向に基づいて、条件決定部23にて決定される画像処理条件は、カール矯正の条件を含む。また、繊維方向からは、搬送方向に対してシートSh1の長辺又は短辺が傾斜している「斜行」についても推定可能であるので、繊維方向に基づいて、条件決定部23にて決定される画像処理条件は、斜行補正の条件を含んでいてもよい。これにより、シートSh1の表面A1の繊維方向に応じた適切な画像処理条件で、画像の形成及び/又は画像の読み取りが可能となり、画像形成及び/又は画像読取の品質(画質を含む)向上につながる。
【0056】
ただし、条件決定部23は、凹凸情報と繊維方向との少なくとも一方に基づいて、画像処理条件を決定する機能があればよい。つまり、条件決定部23は、凹凸情報及び繊維方向の両方に基づいて、画像処理条件を決定する構成に限らず、凹凸情報又は繊維方向のいずれか一方のみに基づいて、画像処理条件を決定してもよい。さらに、本実施形態では、厚み特定部25により、シートSh1の厚みが特定される。そこで、条件決定部23は、凹凸情報と繊維方向との少なくとも一方に加えて又は代えて、シートSh1の厚みに基づいて、画像処理条件を決定してもよい。
【0057】
方向特定部24は、特定画像Im1に基づいて、シートSh1の表面A1の繊維方向を特定する。ここで、方向特定部24は、特定画像Im1におけるパターン光P1の変形又は歪み等に基づいて、繊維方向を特定する。すなわち、特定領域R1上におけるパターン光P1の線幅によっては、パターン光P1の延長方向と繊維方向との関係に応じて、表面A1の凹凸のパターン光P1による変形又は歪み等の発生度合いが異なる。そこで、本実施形態では、方向特定部24は、少なくとも特定領域R1上におけるパターン光P1の線幅のばらつきに基づいて、繊維方向を特定する。これにより、比較的簡単な演算処理でシートSh1の表面A1の繊維方向を特定することができる。
【0058】
厚み特定部25は、厚みセンサー5の出力に基づいて、シートSh1の厚みを特定する。つまり、厚み特定部25は、厚みセンサー5からシートSh1の厚みに関する物理量を表す電気信号を受けて、シートSh1の厚みを算出する。本実施形態に係るシート特定装置2は、厚み特定部25を備えることで、シートSh1の表面A1の状態に加えて、厚みも含めて、シートSh1の種類(紙種)を推定することが可能である。
【0059】
[4]シート特定方法
次に、
図5~
図7を参照しつつ、本実施形態に係るシート特定方法、つまりシート特定装置2の動作について説明する。
【0060】
[4.1]原理
まず、凹凸特定部22が、特定画像Im1に基づいて凹凸情報を特定する原理について、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5では、パターン光P1の明部L1を点線で模式的に示し、暗部L2を二点鎖線で模式的に示している。
【0061】
図5の上段に「凸部1」として示すように、シートSh1の表面A1上に、表面A1からの高さΔZを有する直方体状の凸部A11が存在すると仮定する。ここで、パターン光P1は、シートSh1の表面A1に対して、所定角度θ1で斜めに入射する。そのため、パターン光P1は、凸部A11以外では表面A1と同一平面上に投影され、凸部A11においては表面A1よりも高さΔZだけ手前に投影され、表面A1の垂線方向から見ると、パターン光P1の投影位置が凸部A11の部分だけずれることになる。つまり、撮像部4で撮像される特定画像Im1中においては、凸部A11がある部分のパターン光P1(明部L1及び暗部L2)が、下記の式1で表されるシフト量ΔXだけ、本来の表面A1上の投影位置からずれる。
ΔX=ΔZ/tanθ1 ・・・(式1)
【0062】
所定角度θ1は既知であるので、特定画像Im1からシフト量ΔXが求まれば、当該シフト量ΔX及び上記式1から、凸部A11の高さΔZを算出可能である。そして、特定領域R1の全域についてのシフト量ΔXからは、特定領域R1の全域の凹凸情報を求めることができる。このようにして算出される凹凸情報は、表面A1の算術平均高さ(Sa)との間に相関を持つ。
【0063】
また、
図5の下段に「凸部2」として示すように、シートSh1の表面A1上に、表面A1からの高さΔZが部位ごとに異なる三角柱状の凸部A12が存在する場合でも、凸部A12の各部位の高さΔZを算出可能である。すなわち、上記の例と同様に、特定画像Im1からシフト量ΔXを求めることで、上記式1より、凸部A12の高さΔZを算出可能である。よって、例えば、紙のシートSh1の場合のように、多数の繊維が連続的に絡み合うことで発生するうねり成分に起因する凹凸についても、凹凸情報を算出可能である。
【0064】
ところで、上記関連技術のように、凹凸によって生じる陰影像から表面A1の粗さを求める方法では、例えば、紙のシートSh1の場合に、算出結果に局所的な繊維の凸凹が強く反映されるため、算出結果は算術平均高さ(Sa)と必ずしも線形関係とならない。そのため、上記関連技術の方法では、例えば、平坦度の高い光沢紙(グロス紙)と普通紙とを判別するだけならまだしも、同種(例えば普通紙)のシートSh1の表面粗さの大小についてまで、算出結果から判別することは困難である。よって、上記関連技術の方法において、表面粗さの大小まで判別するには、例えば、様々なシートSh1についての算出結果と算術平均高さ(Sa)とを対応付けたテーブル(データベース)を予め用意することが必要になる。
【0065】
これに対して、本実施形態に係るシート特定装置2では、パターン光P1の線幅及び所定角度θ1等を最適化することで、局所的な繊維の影響をも低減して、算術平均高さ(Sa)との間に高い線形性を有する凹凸情報を、算出可能となる。したがって、本実施形態の方法であれば、算出結果(凹凸情報)と算術平均高さ(Sa)とを対応付けたテーブル(データベース)を予め用意しなくても、凹凸特定部22の算出結果から、算術平均高さ(Sa)を一意に求めることが可能である。
【0066】
本実施形態に係るシート特定装置2にて得られる特定画像Im1の一例を、
図6に示す。ここでは、特定画像Im1の撮像条件として、所定角度θ1を40度、撮像素子41の解像度(画素数)が100×100、パターン光P1による縞パターンの明部L1の線幅W1(
図4参照)を120μm、暗部L2の線幅W2(
図4参照)を120μmとする。さらに、像倍率Mが「1」であって、パターン光P1の照射方向、つまり明部L1及び暗部L2の並び方向を繊維方向と同一とする。
【0067】
特定画像Im1は、複数の画素からなり、複数の画素の各々が輝度に対応する画素値を有している。本実施形態では一例として、輝度が高いほど画素値が大きくなるように輝度と画素値との関係が規定されることとする。そのため、パターン光P1が投影される特定領域R1を撮像した特定画像Im1においては、明部L1に相当する画素の画素値は比較的大きな値となり、暗部L2に相当する画素の画素値は比較的小さな値となる。
【0068】
図6の上段(「Sa:小」)は、算術平均高さ(Sa)が小さい、つまり平坦度の高い光沢紙(グロス紙)の特定領域R1に、パターン光P1を投影した場合の特定画像Im1を示す。一方、
図6の下段(「Sa:大」)は、算術平均高さ(Sa)が大きい、つまり平坦度の低い普通紙(Sa=6μm)の特定領域R1に、パターン光P1を投影した場合の特定画像Im1を示す。
図6に示すように、算術平均高さ(Sa)が大きくなるほど、特定画像Im1中のパターン光P1による縞パターンの変形及び歪みが大きくなる。具体的には、縞パターンの変形及び歪みが大きくなると、縞パターンの明部L1と暗部L2との境界線が歪み、明部L1及び暗部L2の各々の線幅のばらつきが大きくなる。つまり、算術平均高さ(Sa)が大きくなると、表面A1の高さのうねり成分が大きくなるため、明部L1及び暗部L2の各々の線幅のばらつきが大きくなる。このように、
図6では、特定画像Im1において、表面A1の凹凸に応じて、パターン光P1による縞パターンに、変形又は歪み等が生じることが明らかである。
【0069】
[4.2]具体的処理
次に、凹凸特定部22にて、特定画像Im1に基づいて凹凸情報を特定する具体的処理について、
図7を参照して説明する。
図7に示すフローチャートにおけるステップS1、S2・・・は、制御部16により実行される処理手順(ステップ)の番号を表している。以下に説明する処理は、例えば、搬送路T1のうちセンサーユニット20に対応する位置(モニター位置)をシートSh1が通過するタイミングに合わせて開始する。
【0070】
パターン光P1を含む特定画像Im1の分析は、三次元形状の復元を目的とする場合、例えば、複数のパターン光P1を連続的に投影し、パターン光P1の位相変化を算出するために特定画像Im1のフーリエ変換等を利用する手法で実現可能である。ただし、この手法では、演算負荷が比較的高く、表面A1の粗さ(凹凸情報)を算出するまでに比較的時間がかかり、さらには、ハードウェア(CPU、GPU及びメモリー等)のコストも比較的高くなる。そこで、本実施形態では、上記手法に代えて、比較的簡単な演算処理によって表面A1の粗さ(凹凸情報)を算出できるように下記の手法を採用する。
【0071】
すなわち、本実施形態では、凹凸特定部22は、特定画像Im1における明部L1及び暗部L2の並び方向(
図6の左右方向)を「行方向」として、特定画像Im1の1行(1ライン)毎に、明部L1及び暗部L2の少なくとも一方の幅(線幅)を算出する。つまり、特定画像Im1は、明部L1及び暗部L2の並び方向にN画素が並ぶ「N画素×M行」の画像であって、凹凸特定部22は、特定画像Im1に含まれるM行の各行について、線幅を算出する。凹凸特定部22は、このように1行毎に算出される明部L1及び暗部L2の少なくとも一方の線幅を、特定画像Im1の全体について求め、特定画像Im1内での線幅のばらつきの大きさを、凹凸情報として算出する。これにより、凹凸特定部22は、パターン光P1の線幅のばらつきに基づいて、表面A1の算術平均高さ(Sa)との間に相関を持つ凹凸情報を求めることができる。
【0072】
<ステップS1>
具体的には、ステップS1において、制御部16は、シートSh1がモニター位置、つまり搬送路T1のうちセンサーユニット20に対応する位置に到達するかを判断する。給紙部14が画像形成部13にシートSh1を供給するに際して、シートSh1がモニター位置のセンサーで検知されることをもって、制御部16は、シートSh1がモニター位置に到達すると判断し(S1:Yes)、処理をステップS2に移行させる。一方、シートSh1がモニター位置のセンサーで検知されなければ、制御部16は、シートSh1がモニター位置に到達していないと判断し(S1:No)、処理をステップS1に移行させる。
【0073】
<ステップS2、S3>
ステップS2において、制御部16は、取得部21にて光照射部3を制御して、光照射部3にパターン光P1を照射させる。これにより、シートSh1の表面A1の特定領域R1にパターン光P1が投影される。ステップS3において、制御部16は、取得部21にて撮像部4を制御し、パターン光P1が投影されている状態の特定領域R1を撮像部4にて撮像させる。これにより、シートSh1の表面A1の特定領域R1の画像である特定画像Im1が、撮像部4にて生成される。
【0074】
<ステップS4>
ステップS4において、制御部16は、取得部21にて特定画像Im1のうち、1行(1ライン)分の画像を撮像部4から取得する。つまり、取得部21は、列方向において1画素分となる1行分の特定画像Im1を取得する。撮像部4(撮像素子41)としては、画像の読み出しが1行毎に順次行われる仕様が一般的であるため、このように、1行毎に特定画像Im1を取得して解析(ステップS5、S6)を行うことで、メモリーの使用量を少なく抑えることができる。
【0075】
<ステップS5>
ステップS5において、制御部16は、取得部21にて、特定画像Im1について前処理を実行する。このとき、前処理の対象となるのは、ステップS4で取得された1行(1ライン)分の特定画像Im1である。つまり、制御部16は、特定画像Im1について1行単位で前処理を実行する。前処理は、例えば、フィルタリング処理と、二値化処理と、を含む。具体的には、制御部16は、1行分の特定画像Im1について、フィルタリング処理にてノイズ除去等を行い、さらに、ある基準値にて二値化する。
【0076】
二値化処理に用いられる基準値は、例えば、複数画素の平均値、又はあらかじめ決められた値(所定値)等である。明部L1に相当する画素は、基準値以上の画素値を有する画素として「白画素」となり、暗部L2に相当する画素は、基準値未満の画素値を有する画素として「黒画素」となる。前処理は、特定画像Im1の一部のみを切り出すトリミング処理を含み、ステップS6での処理対象となる範囲を絞り込んでもよい。また、フィルタリング処理等は必須ではなく、適宜省略可能である。
【0077】
<ステップS6>
ステップS6において、制御部16は、凹凸特定部22にて、特定画像Im1から明部L1及び暗部L2の少なくとも一方の幅(線幅)を示す幅データを抽出する。このとき、幅データの抽出対象となるのは、ステップS4で取得された1行(1ライン)分の特定画像Im1である。つまり、制御部16は、特定画像Im1について1行単位で幅データの抽出を実行する。具体的には、制御部16は、1行分の特定画像Im1のうち、明部L1に相当する白画素、及び暗部L2に相当する黒画素が何画素ずつあるかを、幅データとして算出する。このとき、制御部16は、1行分の特定画像Im1の全体について、白画素の画素数及び黒画素の画素数を抽出することにより、複数本の明部L1の線幅の合計、及び複数本の暗部L2の線幅の合計を抽出する。
【0078】
本実施形態では一例として、明部L1の線幅に相当する白画素の画素数、及び暗部L2の線幅に相当する黒画素の画素数の両方を、幅データとして利用するが、この例に限らず、いずれか一方の画素数のみを幅データとして利用してもよい。つまり、制御部16は、明部L1と暗部L2とのいずれか一方の線幅に着目して、凹凸情報を特定してもよい。また、制御部16は、行方向に連続する白画素の画素数及び行方向に連続する黒画素の画素数を抽出することにより、1本の明部L1毎及び1本の暗部L2毎に、線幅を抽出してもよい。この場合、制御部16は、複数本の明部L1(又は暗部L2)のそれぞれの線幅を幅データとしてもよいし、複数本の明部L1(又は暗部L2)の線幅の代表値(例えば、平均値、最頻値又は中央値等)を幅データとしてもよい。
【0079】
<ステップS7>
ステップS7において、制御部16は、特定画像Im1の最終行まで処理が完了した否かを判断する。つまり、「N画素×M行」の特定画像Im1については、制御部16は、処理の対象が最終行となるM行目であれば、最終行まで処理が完了したと判断し(S7:Yes)、処理をステップS8に移行させる。一方、制御部16は、処理の対象が最終行となるM行目でなければ、最終行まで処理が完了していないと判断し(S7:No)、処理をステップS4に移行させ、次の1行分の特定画像Im1を取得する。
【0080】
<ステップS8>
ステップS8において、制御部16は、凹凸特定部22にて、特定画像Im1のM行分の幅データの標準偏差σを算出する。算術平均高さ(Sa)が大きくなると、表面A1の高さのうねり成分が大きくなるため、明部L1及び暗部L2の各々の線幅のばらつきが大きくなって(
図6参照)、標準偏差σが大きくなる。つまり、凹凸特定部22は、標準偏差σを凹凸情報として算出する。
【0081】
<ステップS9>
ステップS9において、制御部16は、条件決定部23にて、画像処理条件を決定する。つまり、条件決定部23は、ステップS8で算出された標準偏差σに応じて、画像形成条件を含む画像処理条件を決定する。一例として、標準偏差σが大きくなると、条件決定部23は、定着温度を上げたり、搬送速度を低下させたり、転写電圧を上げたりするように、画像形成条件を設定する。これにより、画像形成部13にてシートSh1に画像が形成される際には、当該シートSh1の表面A1の凹凸に応じた画像形成条件が自動的に適用される。
【0082】
以上説明したシート特定方法の手順は一例に過ぎず、
図7のフローチャートに示す処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
【0083】
[5]照射角度
次に、パターン光P1の照射角度について、所定角度θ1を変えた場合の特定画像Im1の一例を示す
図8を参照して説明する。
図8では、特定画像Im1の撮像条件として、特定領域R1の算術平均高さ(Sa)が6μm、撮像素子41の解像度(画素数)が100×100、パターン光P1による縞パターンの明部L1の線幅W1を100μm、暗部L2の線幅W2を100μmとする。さらに、パターン光P1の照射方向、つまり明部L1及び暗部L2の並び方向を繊維方向と同一とする。
【0084】
パターン光P1の光軸Ax1は、シートSh1の表面A1に対して所定角度θ1で傾斜する(
図3参照)。ここで、所定角度θ1は、特定画像Im1の明るさに大きく影響する。上記関連技術のように、凹凸によって生じる陰影像から表面A1の粗さを求める方法では、数μmオーダーの凸凹を陰影像として撮像するために、シートSh1の表面A1に対する光の照射角度(所定角度θ1に相当)は、比較的浅く(小さく)設定される。特に、凹凸に対する感度を挙げるためには、照射角度は、10度程度の非常に浅い角度に設定される。ただし、非常に小さな照射角度では、撮像部4に十分な光が届かず、特定画像Im1は比較的暗い画像となって、暗い画像から表面A1の粗さを求めるには、比較的高価な高感度の撮像素子41が必要となる。
【0085】
これに対して、本実施形態に係るシート特定装置2では、特定画像Im1におけるパターン光P1の変形又は歪み等の度合いから、表面A1の粗さを求めるので、凹凸によるパターン光P1の変形又は歪み等が生じればよい。そのため、本実施形態では、上記関連技術の方法に比較して、所定角度θ1を大きく設定でき、特定画像Im1として明るい画像を実現することが可能である。したがって、比較的安価な撮像素子41であっても、特定画像Im1から表面A1の粗さを求めることできる。
【0086】
むしろ、本実施形態の構成では、
図8に示すように、所定角度θ1が小さくなると、特定領域R1に投影されるパターン光P1の形状が崩れ、縞パターンの明部L1と暗部L2との境界があいまいになる。つまり、
図8から明らかなように、所定角度θ1が40度よりも30度の方がパターン光P1の形状が崩れ、所定角度θ1が20度になるとパターン光P1の形状が更に崩れ、所定角度θ1が10度になるとパターン光P1の形状が更に崩れる。このように形状が崩れたパターン光P1の特定画像Im1からでは、凹凸によるパターン光P1の変形又は歪み等を抽出しにくい。発明者らは、様々な所定角度θ1について検証を行い、表面A1の算術平均高さ(Sa)が数μm程度のシートSh1を対象とする場合には、所定角度θ1は20度以上であることが好ましいとの知見を得た。
【0087】
要するに、特定画像Im1の明るさを考慮すれば、所定角度θ1は、10度以上であることが好ましく、15度以上であることがより好ましい。さらに、本実施形態では、パターン光P1の形状が崩れ過ぎないように、所定角度θ1は、20度以上に設定される。つまり、所定角度θ1は、20度以上90度以下である。ここで、所定角度θ1の下限値は、20度に限らず、例えば、25度、30度、35度、40度、45度、50度、55度、60度、65度、70度、75度又は80度であってもよい。また、所定角度θ1の上限値は、90度に限らず、例えば、85度、80度、75度、70度、65度、60度、55度、50度又は45度であってもよい。
【0088】
90度と所定角度θ1との差分は、表面A1の垂線との間の角度である「入射角」に相当するので、所定角度θ1が20度のときのパターン光P1の「入射角」は70度(=90度-20度)となる。一方、所定角度が90度のときのパターン光P1の入射角は0度となる。
【0089】
[6]線幅
次に、パターン光P1の線幅について、
図9及び
図10を参照して説明する。
図9は、48種類のシートSh1について、
図7のフローチャートに従って算出される凹凸情報としての標準偏差σと、実際の算術平均高さSaとの関係性を示すグラフである。
図9では、横軸を算術平均高さSaとし、縦軸を標準偏差σ(標準偏差σは、明部L1又は暗部L2の5箇所の平均値)とする。
図9では、特定画像Im1の撮像条件として、撮像素子41の解像度(画素数)が100×100、パターン光P1による縞パターンの明部L1の線幅W1を80μm、暗部L2の線幅W2を80μmとする。さらに、パターン光P1の照射方向、つまり明部L1及び暗部L2の並び方向を繊維方向と同一とする。
【0090】
図9の例では、算術平均高さSa及び標準偏差σの線形回帰モデルの決定係数R
2は「0.9684」であって、凹凸情報としての標準偏差σと算術平均高さSaとの間に高い線形性を有することが確認できる。
【0091】
一方で、
図10は、パターン光P1の線幅、及びパターン光P1の照射方向と繊維方向との関係を変えながら、決定係数R
2を算出した結果を示す。
図10では、特定画像Im1の撮像条件として、所定角度θ1を40度、撮像素子41の解像度(画素数)が100×100とする。その上で、パターン光P1による縞パターンの明部L1の線幅W1及び暗部L2の線幅W2を40μm~200μmの範囲で変更し、かつパターン光P1の照射方向と繊維方向との関係を「同一」(つまり平行)及び「90°」(つまり直交)で変更する。
【0092】
図10によれば、パターン光P1の照射方向と繊維方向との関係が凹凸情報としての標準偏差σに与える影響は、パターン光P1の線幅によって変化する、との推測が成立する。つまり、
図10では、パターン光P1の線幅が小さく(細く)なるほどに、パターン光P1の照射方向と繊維方向との関係が、凹凸情報としての標準偏差σに与える影響が大きくなることが確認できる。これは、シートSh1の繊維の幅が数十μm以下であって、パターン光P1の線幅が繊維幅に近づくことで、局所的な表面A1の高さのうねり成分が、明部L1及び暗部L2の各々の線幅のばらつきとして生じやすくなることに起因すると考えられる。
【0093】
そして、パターン光P1の線幅が100μm以上であれば、パターン光P1の照射方向と繊維方向との関係によらずに、決定係数R2は「0.85」以上となる。そのため、パターン光P1の線幅が100μm以上であれば、パターン光P1の照射方向と繊維方向との関係が凹凸情報としての標準偏差σに与える影響が比較的小さく、パターン光P1の照射方向と繊維方向との関係は無視できる。要するに、パターン光P1による縞パターンの明部L1の線幅W1及び暗部L2の線幅W2が、100μm以上か100μm未満かによって、パターン光P1の照射方向と繊維方向との関係が凹凸情報に影響するか否かが決まる。つまり、線幅が100μm以上であれば、照射方向と繊維方向との関係は凹凸情報に影響しにくいため、算出される凹凸情報は「繊維方向に依存しない」とみなすことできる。一方、線幅が100μm未満であれば、照射方向と繊維方向との関係は凹凸情報に影響しやすいため、算出される凹凸情報は「繊維方向に依存する」とみなすことできる。
【0094】
上述したように、本実施形態に係るシート特定装置2であっても、パターン光P1の線幅によっては、パターン光P1の照射方向と繊維方向との関係が、凹凸情報としての標準偏差σに影響を与えることはある。そして、シートSh1の繊維の幅に比べて、パターン光P1の線幅を相対的に大きくすることで、当該影響を小さくでき、凹凸情報としての標準偏差σと算術平均高さSaとの間に高い線形性を有することになる。
【0095】
上記より、本実施形態では、明部L1と暗部L2との少なくとも一方の幅は、60μm以上500μm以下であることが好ましい。さらに、凹凸情報が、パターン光P1の照射方向と繊維方向との関係の影響を受けにくくするには、パターン光P1による縞パターンの明部L1の線幅W1と暗部L2の線幅W2との少なくとも一方は、100μm以上であることが好ましい。反対に、凹凸情報が、パターン光P1の照射方向と繊維方向との関係の影響を受けやすくするには、パターン光P1による縞パターンの明部L1の線幅W1と暗部L2の線幅W2との少なくとも一方は、100μm未満であることが好ましい。ここで、明部L1と暗部L2との少なくとも一方の幅の下限値は、60μmに限らず、例えば、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm又は95μmであってもよい。また、明部L1と暗部L2との少なくとも一方の幅の上限値は、500μmに限らず、例えば、450μm、400μm、350μm、300μm、250μm、200μm、180μm、160μm、140μm又は120μmであってもよい。
【0096】
[7]格子パターン
次に、格子パターンを生じるパターン光P1について、
図11を参照して説明する。つまり、特定領域R1には、パターン光P1が投影されることにより、明部L1及び暗部L2を含む格子パターンの輝度分布が生じる。
【0097】
格子パターンは、互いに直交する縦縞パターンと横縞パターンとの重ね合わせである。したがって、
図11に示すように、格子パターンを生じるパターン光P1は、第1縞パターン(縦縞パターン)を生じる第1パターン光P11と、第2縞パターン(横縞パターン)を生じる第2パターン光P12と、の合成光とみなすことができる。
図11の例では、第1パターン光P11及び第2パターン光P12の明部L1と暗部L2とが重なる部位については、暗部L2が優先されているが、これに限らず、明部L1が優先されてもよい。つまり、
図11に示す格子パターンの明部L1(網掛け)と暗部L2(黒塗り)とが逆転していてもよい。
【0098】
ここで、第1パターン光P11の線幅と、第2パターン光P12の線幅とは、互いに異なっている。つまり、格子パターンの縦縞と横縞とでは、線幅が異なっている。
図11の例では、第1パターン光P11の明部L1の線幅W11及び暗部L2の線幅W12は、第2パターン光P12の明部L1の線幅W21及び暗部L2の線幅W22に比べて大きい。具体的には、第1パターン光P11の明部L1の線幅W11及び暗部L2の線幅W12は、いずれも100μmであって、第2パターン光P12の明部L1の線幅W21及び暗部L2の線幅W22はいずれも80μmである。よって、
図11の例では、格子パターンのうちの縦縞パターンの方が、横縞パターンの方よりも幅広のパターンとなる。
【0099】
要するに、縞パターンは、互いに直交する第1縞パターン(縦縞パターン)と第2縞パターン(横縞パターン)とを含む。第1縞パターンと第2縞パターンとでは、明部L1と暗部L2との少なくとも一方の幅が異なる。これにより、凹凸情報に加えて、シートSh1の繊維方向の特定が可能となる。
図11の例では、明部L1及び暗部L2の両方について、第1縞パターンが第2縞パターンよりも幅広であるが、この例に限らず、明部L1のみ、又は暗部L2のみで、第1縞パターンが第2縞パターンよりも幅広であってもよい。また、明部L1及び暗部L2の少なくとも一方について、第2縞パターンが第1縞パターンよりも幅広であってもよい。
【0100】
また、上述したような格子パターンを生じるパターン光P1は、格子状の遮蔽体32を用いて実現されてもよいし、スリット321が形成された遮蔽体32を2つ用いて実現されてもよい。後者の場合、スリット321の幅が異なる2つの遮蔽体32を、スリット321の向きが互いに直交するように重ねて配置することで、
図11に示すような、格子パターンを実現可能である。
【0101】
このような格子パターンのパターン光P1が用いられる場合、制御部16では、特定画像Im1の解析時に、第1縞パターン(縦縞パターン)の線幅の解析に加え、第2縞パターン(横縞パターン)の線幅の解析を行うことができる。つまり、制御部16は、第1縞パターンから横方向の線幅のばらつきを算出でき、第2縞パターンから縦方向の線幅のばらつきを算出できる。このように、互いに直交する縦方向及び横方向の2方向についての解析に必要な特定画像Im1を、1度に取得することが可能となる。この場合、1行毎に特定画像Im1を取得して解析できないため、特定画像Im1の全体をメモリーに記憶する必要があるものの、縦方向の算出結果と横方向の算出結果とを比較することで、繊維方向を特定することが可能となる。
【0102】
すなわち、制御部16は、縦方向の算出結果と横方向の算出結果との差分から、方向特定部24にて、シートSh1の表面A1の繊維方向を特定できる。
図11の例では、第1縞パターン(縦縞パターン)を投影する第1パターン光P11の線幅W11,W12は、100μm以上であるので、第1パターン光P11から算出される横方向の凹凸情報は「繊維方向に依存しない」とみなされる。一方、第2縞パターン(横縞パターン)を投影する第2パターン光P12の線幅W21,W22は、100μm未満であるので、第2パターン光P12から算出される縦方向の凹凸情報は「繊維方向に依存する」とみなされる。
【0103】
よって、方向特定部24は、縦方向と横方向とで同一の結果(凹凸情報)が得られる場合には、繊維方向が第2パターン光P12による第2縞パターン(横縞パターン)に直交していると判断する。言い換えれば、繊維方向が、第2パターン光P12の明部L1及び暗部L2の並び方向と、同一であると判断される。一方、縦方向と横方向とで異なる結果(凹凸情報)が得られる場合には、方向特定部24は、繊維方向が第2パターン光P12による第2縞パターン(横縞パターン)に沿っていると判断する。言い換えれば、繊維方向が、第2パターン光P12の明部L1及び暗部L2の並び方向と、直交すると判断される。ここで、縦方向と横方向とで凹凸情報が同一であるか否かは、縦方向の凹凸情報と横方向の凹凸情報との差分が、所定値以下であるか否かで判断され、当該差分が所定値以下であれば、縦方向と横方向とで凹凸情報が同一と判断される。
【0104】
このように、格子パターンの一方の縞パターンについてのみ、線幅を細くして「繊維方向に依存する」凹凸情報が得られるようにすることで、特定画像Im1からは、凹凸情報と繊維方向との両方を特定可能となる。繊維方向が特定されれば、例えば、インクジェット方式の画像形成部13においては、繊維方向に応じてカール方向を予測し、条件決定部23にてカール矯正することが可能となる。
【0105】
[8]変形例
画像処理装置10に含まれる複数の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。例えば、シート特定装置2の構成要素である取得部21、凹凸特定部22、条件決定部23、方向特定部24及び厚み特定部25等の少なくとも1つは、制御部16の一機能として実現される構成に限らず、制御部16とは、別の筐体に設けられていてもよい。つまり、シート特定装置2は、画像処理装置10と一体でなくてもよく、シート特定装置2の少なくとも一部が画像処理装置10とは別の筐体に設けられていてもよい。
【0106】
また、シート特定装置2は、少なくともシートSh1の表面A1の凹凸に関する凹凸情報を特定する機能があればよく、シートSh1の繊維方向及びシートSh1の厚み等を特定する機能については、適宜省略可能である。例えば、シートSh1の厚みを特定する機能が省略される場合には、厚みセンサー5及び厚み特定部25が省略されてもよい。
【0107】
また、実施形態1では、光照射部3の光軸Ax1がシートSh1の特定領域R1に対して所定角度θ1で傾斜し、撮像部4の光軸Ax2がシートSh1の特定領域R1に直交する例を示したが、この構成に限らない。例えば、光照射部3の光軸Ax1がシートSh1の特定領域R1に直交し、撮像部4の光軸Ax2がシートSh1の特定領域R1に対して傾斜してもよいし、光軸Ax1及び光軸Ax2の両方がシートSh1の特定領域R1に対して傾斜してもよい。
【0108】
また、光照射部3は、例えば、プロジェクターを含み、投影用データとして入力される任意のパターン光P1を特定領域R1に投影してもよい。つまり、プロジェクターから投影される映像が、パターン光P1として特定領域R1に投影されてもよい。この場合、パターン光P1として動画像を採用することも容易である。
【0109】
また、パターン光P1の照射対象となるシートSh1は、搬送中のシートに限らず、例えば、給紙カセット141内にセットされているシートSh1等であってもよい。この場合に、シートSh1と撮像部4との少なくとも一方を移動させて、シートSh1と撮像部4とを相対的に移動させた状態で特定画像Im1を撮像することで、像倍を小さくしつつシートSh1の広範囲を撮像可能となる。
【0110】
(実施形態2)
本実施形態に係る画像処理装置10Aは、
図12に示すように、シート特定装置2Aが出力部26を備える点で、実施形態1に係る画像処理装置10と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して説明を適宜省略する。
【0111】
出力部26は、凹凸特定部22と方向特定部24と厚み特定部25との少なくとも1つの特定結果を出力する。本実施形態では一例として、出力部26は、特定結果を、操作表示部15に表示させることで出力し、ユーザーに通知する。出力部26による特定結果の出力の態様は、操作表示部15での表示に限らず、外部装置への送信、コンピューターシステムで読み取り可能な非一時的記録媒体への書き込み等であってもよい。出力部26は、制御部16の一機能として制御部16に設けられている。
【0112】
出力部26が出力する内容は、例えば、凹凸特定部22の特定結果であれば、凹凸情報としての標準偏差σ、算術平均高さ(Sa)、又はシートSh1の種別を表す情報等である。同様に、方向特定部24の特定結果であれば、出力部26が出力する内容は、例えば、繊維方向、又は「縦目」か「横目」かを表す情報等である。
【0113】
また、出力部26は、凹凸特定部22等の特定結果から推定される、例えば、寿命推定結果、メンテナンス時期のリコメンド、又はシートSh1の種別のリコメンド等の情報の出力を行ってもよい。例えば、シートSh1の搬送時に画像処理装置10Aの部品に摩耗が生じることがあるが、搬送するシートSh1の表面A1が粗いほど、摩耗が進行しやすくなる。つまり、使用するシートSh1の表面粗さ等によって、画像処理装置10Aの劣化の進み具合が異なるので、例えば、シートSh1の搬送枚数に加えて、シートSh1の凹凸情報が分かれば、画像処理装置10Aの寿命推定の精度が向上する。よって、出力部26は、画像処理装置10Aの寿命推定結果、又は画像処理装置10Aのメンテナンス時期のリコメンド等の情報を、例えば、操作表示部15に表示させることで出力し、ユーザーに通知することが可能である。さらに、画像処理装置10Aの寿命を延ばすために、出力部26は、例えば、使用中のシートSh1よりも平坦度の高いシートSh1等のリコメンド等の情報を、ユーザーに通知することが可能である。
【0114】
特に、本実施形態に係るシート特定装置2Aでは、実施形態1で説明したように、算術平均高さ(Sa)との間に高い線形性を有する凹凸情報を算出可能である。したがって、事前にデータベース等に登録されていないシートSh1であっても、例えば、画像処理装置10Aの寿命推定等に、反映することが可能である。
【0115】
また、出力部26は、凹凸特定部22等の特定結果から推定される、シートSh1の表裏の推定結果等の情報の出力を行ってもよい。すなわち、シートSh1の種別によっては、裏面の方が表面よりも粗い等、シートSh1の表裏で粗さが異なる場合がある。そこで、シートSh1の表裏それぞれの凹凸情報が分かれば、シートSh1の表裏を推定可能となる。よって、出力部26は、シートSh1の表裏の推定結果等の情報を、例えば、操作表示部15に表示させることで出力し、ユーザーに通知することが可能である。この場合、シートSh1の厚み方向の両面の特定画像Im1を撮像する必要がある。そのため、2つのセンサーユニット20が搬送路T1を挟んで配置してもよいし、ミラー等を用いて1つのセンサーユニット20で両面の特定画像Im1を撮像してもよいし、シートSh1が裏返されてもよい。
【0116】
実施形態2の変形例として、条件決定部23は適宜省略されてもよい。
【0117】
(実施形態3)
本実施形態では、凹凸特定部22は、特定画像Im1をそのまま用いるのではなく、積算画像Im10に基づいて、シートSh1の表面A1の凹凸に関する凹凸情報を特定する。積算画像Im10は、シートSh1の表面A1内で特定領域R1がある移動量だけ移動する際の特定画像Im1を積算して得られる画像である。このように、特定画像Im1そのものではなく、特定画像Im1を積算した積算画像Im10を用いて、凹凸情報を特定することで、特定画像Im1中に「ぶれ」があっても、凹凸情報を特定しやすくなる。すなわち、本実施形態では、そもそも積算することで「ぶれ」の成分を含み得る積算画像Im10に基づいて凹凸情報を特定するので、特定画像Im1中の「ぶれ」にかかわらずに凹凸情報を特定でき、関連技術に比較して凹凸の特定精度を向上しやすくなる。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して説明を適宜省略する。
【0118】
本開示でいう特定画像Im1等の画像の「ぶれ」は、撮像部4での被写体の撮像中に、被写体及び撮像部4が相対的に移動したりすることで、得られる画像中の被写体が何重にも重なって見え、不鮮明な画像となることを意味する。例えば、撮像部4に高速度カメラ等が用いられていれば、このような「ぶれ」が生じにくくなるものの、この種の撮像部4は高価になりやすい。
【0119】
本開示でいう「画像の積算」は、画素毎に画素値(輝度値)を積算することを意味し、例えば、特定画像Im1を撮像する撮像部4の露光時間を10msとする場合に、画素毎に10ms間の画素値を連続的に積算することで実現される。つまり、特定領域R1がある移動量だけ移動するのに要する時間を露光時間として、露光時間中の画素値を連続的に積算することで、シートSh1の表面A1内で特定領域R1がある移動量だけ移動する際の特定画像Im1を積算した積算画像Im10が得られる。また、このような画素値の連続的に積算だけでなく、例えば、複数の特定画像Im1について画素毎に画素値を積算(加算)するような不連続な積算も「画像の積算」に含む。つまり、特定領域R1がある移動量だけ移動する間に間欠的に取得される複数の特定画像Im1について画素値を積算することで、シートSh1の表面A1内で特定領域R1がある移動量だけ移動する際の特定画像Im1を積算した積算画像Im10が得られる。さらに、所定の画素数分の画素値を積算した上で、当該所定の画素数で画素値を除することにより、所定の画素数分の画素値の平均値を求めることが可能である。このような平均値を求める平均化の処理も、「画像の積算」に含まれる。
【0120】
本実施形態では一例として、パターン光P1は、
図13に示すように、特定領域R1上に明部L1と暗部L2とが交互に並ぶ縞パターンを形成する。つまり、パターン光P1が投影されることにより、特定領域R1には、明部L1及び暗部L2を含む縞パターンの輝度分布が生じる。ここで、明部L1は暗部L2に比べて明るい領域であって、言い換えれば、縞パターンは、複数本の明部L1が間隔を空けて並んだパターンであり、又は複数本の暗部L2が間隔を空けて並んだパターンである。つまり、特定領域R1においては、パターン光P1が投影されることで、直線状の明部L1と直線状の暗部L2とが各々の長手方向に直交する方向に交互に並ぶ縞パターンが形成される。本実施形態では一例として、シートSh1の搬送方向D1に沿って延びる直線状の明部L1及び暗部L2が、搬送方向D1に交互に並ぶように配置されている。
【0121】
本実施形態では、シートSh1が搬送路T1を搬送方向D1に搬送されることで、光照射部3及び撮像部4を含むセンサーユニット20に対して、シートSh1が相対的に移動する。そのため、光照射部3によるパターン光P1の照射対象となり、かつ撮像部4による特定画像Im1の撮像対象となる特定領域R1は、シートSh1の表面A1内を搬送方向D1に沿って移動することになる。したがって、搬送方向D1は、シートSh1の表面A1内での特定領域R1の移動方向である。よって、本実施形態では、縞パターンは、明部L1と暗部L2との少なくとも一方が、シートSh1の表面A1内での特定領域R1の移動方向に沿って延びる。
【0122】
具体的には、パターン光P1がシートSh1の表面A1に投影されて形成される縞パターンは、明部L1と暗部L2との両方が、特定領域R1の移動方向である搬送方向D1に沿って延びた形状となる。ただし、縞パターンは、明部L1と暗部L2との少なくとも一方が、特定領域R1の移動方向に対して厳密に平行でなくても、特定領域R1の移動方向との間の角度が公差(十数度)の範囲内であれば、特定領域R1の移動方向に沿っているとみなす。これにより、シートSh1の表面A1内で特定領域R1が移動する際の特定画像Im1を積算した積算画像Im10において、表面A1の凹凸の影響が現れやすくなる。
【0123】
ところで、上記関連技術のように、凹凸によって生じる陰影像から表面A1の粗さを求める方法では、例えば、紙のシートSh1の場合に、算出結果に局所的な繊維の凸凹が強く反映されるため、算出結果は算術平均高さ(Sa)と必ずしも線形関係とならない。そのため、上記関連技術の方法では、例えば、平坦度の高い光沢紙(グロス紙)と普通紙とを判別するだけならまだしも、同種(例えば普通紙)のシートSh1の表面粗さの大小についてまで、算出結果から判別することは困難である。よって、上記関連技術の方法において、表面粗さの大小まで判別するには、例えば、様々なシートSh1についての算出結果と算術平均高さ(Sa)とを対応付けたテーブル(データベース)を予め用意することが必要になる。
【0124】
これに対して、本実施形態に係るシート特定装置2では、パターン光P1の線幅及び所定角度θ1等を最適化することで、局所的な繊維の影響をも低減して、算術平均高さ(Sa)との間に高い線形性を有する凹凸情報を、算出可能となる。したがって、本実施形態の方法であれば、算出結果(凹凸情報)と算術平均高さ(Sa)とを対応付けたテーブル(データベース)を予め用意しなくても、凹凸特定部22の算出結果から、算術平均高さ(Sa)を一意に求めることが可能である。
【0125】
本実施形態に係るシート特定装置2にて得られる特定画像Im1及び積算画像Im10の一例を、
図14及び
図15に示す。ここでは、特定画像Im1の撮像条件として、所定角度θ1を40度、撮像素子41の解像度(画素数)が100×100、パターン光P1による縞パターンの明部L1の線幅W1(
図13参照)を120μm、暗部L2の線幅W2(
図13参照)を120μmとする。さらに、像倍率Mが「1」であって、パターン光P1による縞パターンの明部L1及び暗部L2の各々の延長方向(長手方向)を搬送方向D1(特定領域R1の移動方向)と同一とする。ここで、
図14には算術平均高さSaが0.8μm、2.3μmの2種類、
図15には算術平均高さSaが5.16μm、6.1μmの2種類というように、計4種類のシートSh1について、特定画像Im1及び積算画像Im10を示す。
図14及び
図15では、いずれも左側に特定画像Im1を示し、右側に特定画像Im1を積算した積算画像Im10を示す。
【0126】
特定画像Im1は、複数の画素からなり、複数の画素の各々が輝度に対応する画素値を有している。本実施形態では一例として、輝度が高いほど画素値が大きくなるように輝度と画素値との関係が規定されることとする。そのため、パターン光P1が投影される特定領域R1を撮像した特定画像Im1においては、明部L1に相当する画素の画素値は比較的大きな値となり、暗部L2に相当する画素の画素値は比較的小さな値となる。
【0127】
積算画像Im10は、特定領域R1が特定画像Im1の所定の画素数分だけ移動する際の特定画像Im1を積算した画像である。具体的には、積算画像Im10は、特定領域R1の移動方向である搬送方向D1において特定画像Im1の所定の画素数分だけ積算した上で、当該画素数で各画素の画素値を除して平均化した画像である。ここでは一例として、積算画像Im10で積算される所定の画素数は50画素(pix.)とする。つまり、積算画像Im10の各画素は、特定画像Im1における搬送方向D1の50画素(pix.)分の画素値の平均値を、画素値として有している。
【0128】
図14の上段は、算術平均高さ(Sa)が0.8μm、つまり平坦度の高い光沢紙について、
図14の下段は、算術平均高さ(Sa)が2.3μmである普通紙についての、特定画像Im1及び積算画像Im10を示す。同様に
図15の上段は算術平均高さ(Sa)が5.16μmである普通紙について、
図15の下段は、算術平均高さ(Sa)が6.1μmである普通紙についての、特定画像Im1及び積算画像Im10を示す。
【0129】
図14及び
図15に示すように、算術平均高さ(Sa)が大きくなるほど、特定画像Im1中のパターン光P1による縞パターンの変形及び歪みが大きくなる。具体的には、縞パターンの変形及び歪みが大きくなると、縞パターンの明部L1と暗部L2との境界線が歪み、明部L1及び暗部L2の各々の線幅のばらつきが大きくなる。つまり、算術平均高さ(Sa)が大きくなると、表面A1の高さのうねり成分が大きくなるため、明部L1及び暗部L2の各々の線幅のばらつきが大きくなる。このように、
図14及び
図15では、特定画像Im1において、表面A1の凹凸に応じて、パターン光P1による縞パターンに、変形又は歪み等が生じることが明らかである。
【0130】
さらに、
図14及び
図15に示すように、積算画像Im10においては、算術平均高さ(Sa)が大きくなるほど、明部L1と暗部L2との境界線上の中間層L3の線幅が大きくなる。具体的には、特定画像Im1中のパターン光P1による縞パターンの変形及び歪みが大きくなると、縞パターンの明部L1と暗部L2との境界線が歪むため、これを積算(平均化)することで生じる中間層L3の線幅が大きく(太く)なる。このように、
図14及び
図15では、積算画像Im10において、表面A1の凹凸に応じた線幅の中間層L3が生じることが明らかである。本実施形態に係るシート特定装置2では、積算画像Im10の中間層L3の幅(線幅)を解析することにより、シートSh1の表面A1の凹凸情報を特定する。
【0131】
特に、本実施形態では、特定領域R1がある移動量だけ移動する際の特定画像Im1を積算した画像が積算画像Im10であるところ、移動量は、特定画像Im1を撮像する撮像部4の画素ピッチを像倍率Mで除した値以上である。本実施形態では、像倍率Mは「1」であると仮定しているので、特定領域R1の移動量は撮像部4の画素ピッチ以上である。これにより、特定領域R1が移動量だけ移動することによって、少なくとも画素ピッチ以上のシートSh1の移動が生じた特定画像Im1の積算により積算画像Im10が得られることとなる。したがって、積算画像Im10においては、明部L1及び暗部L2の各々の線幅のばらつきに応じた中間層L3が生じやすくなる。
【0132】
ただし、
図15の下段の積算画像Im10のように、積算画像Im10における搬送方向D1の全域において、中間層L3の幅(線幅)が均一とならないケースもある。これは、積算画像Im10においても、明部L1及び暗部L2の各々の線幅のばらつきが均しきれておらず、表面A1の凹凸による明部L1及び暗部L2の各々の線幅のばらつき成分が残存していることに起因する。例えば、紙のシートSh1の場合のように、多数の繊維が連続的に絡み合うことで発生するうねり成分等にあっては比較的長周期で生じるため、このような長周期の凹凸に応じて積算画像Im10でも明部L1及び暗部L2の各々の線幅がばらつく。そこで、積算画像Im10における搬送方向D1の全域において中間層L3の幅を均一とするには、積算画像Im10を得るための特定領域R1の移動量を、長周期の凹凸の周期(距離)以上とすることが好ましい。これにより、長周期の凹凸の周期(距離)以上の範囲にわたって特定画像Im1の積算を行って積算画像Im10を得ることになるので、積算画像Im10における搬送方向D1の全域において中間層L3の幅を均一とできる。
【0133】
図16は、上記4種類のシートSh1について、積算される所定の画素数をシートSh1の長周期の凹凸の周期以上とした場合に、積算画像Im10の搬送方向D1の任意の位置(1行)に着目した、各画素の画素値を示している。
図16では、横軸が積算画像Im10における明部L1及び暗部L2の並び方向(
図14及び
図15の左右方向)である「行方向」の画素番号(画素位置)、縦軸を画素値(輝度値)とする。すなわち、
図16によれば、画素値が「50」以上の明部L1と、画素値が「30」未満の暗部L2との間に、中間層L3に相当する領域が存在することが分かる。そして、中間層L3の幅は、明部L1と暗部L2との間の画素値の立ち上がり(又は立ち下がり)の傾斜に相当し、傾斜が緩いほど中間層L3の幅が大きいことを表す。言い換えれば、シートSh1の表面A1の算術平均高さSaが大きい(粗い)ほどに、明部L1と暗部L2との間の画素値の立ち上がり(又は立ち下がり)の傾斜は緩くなる。つまり、
図16に示す4種類のシートSh1についてのグラフの中では、算術平均高さSaが「6.1」であるグラフの傾斜が最も緩い。
【0134】
そして、上述した
図16のグラフから中間層L3の幅を抽出し、積算画像Im10ごとに複数の中間層L3の幅の代表値(例えば、平均値、最頻値又は中央値等)を算出することで、積算画像Im10における中間層L3の幅を算出できる。このようにして算出される中間層L3の幅、つまり
図16のグラフの傾斜幅の平均値は、画素数で表すと、
図17に示すようになる。
図17では、横軸を算術平均高さSaとし、縦軸を中間層L3の幅(傾斜幅の平均値)とする。
図17の例では、少なくとも上記4種類のシートSh1について、積算画像Im10の中間層L3の幅と算術平均高さSaとの間に高い線形性を有することが確認できる。
【0135】
上述したように、特定画像Im1を積算した積算画像Im10を用いて凹凸情報を特定することで、特定画像Im1中に「ぶれ」があっても、凹凸情報を特定しやすくなる。すなわち、特定画像Im1を撮像する撮像部4において、極力明るい特定画像Im1を撮像するためには露光時間を比較的長くする必要があり、被写体(シートSh1)の移動により特定画像Im1に「ぶれ」が生じ得る。
【0136】
一例として、画像処理装置10の生産性を向上するためにシートSh1の搬送速度が500mm/secに設定される場合、フレームレートが100Hzの撮像部4で露光時間が最大の10msであると、露光時間内にシートSh1は5mm移動する。そのため、特定画像Im1においてはシートSh1の移動に伴う「ぶれ」が生じ、上記関連技術のように特定画像Im1の陰影像から表面A1の粗さを求める方法では、「ぶれ」によって陰影がつぶれて表面A1の粗さを求めることが困難である。上記関連技術を適用する場合、特定画像Im1の「ぶれ」を抑制するために、シートSh1の搬送速度を遅くしたり、撮像部4に高感度の撮像素子41を用いて露光時間を短くしたりする必要性が生じる。そうすると、画像処理装置10の生産性が低下したり、撮像部4が高コストになったりといった問題が生じる。これに対して、本実施形態に係るシート特定装置2では、そもそも「ぶれ」の成分を含み得る積算画像Im10を用いて凹凸情報を特定するので、特定画像Im1の「ぶれ」を抑制する必要がない。よって、本実施形態では、画像処理装置10の生産性の向上、及び撮像部4の低コスト化を図りやすい。
【0137】
さらに、本実施形態では、積算画像Im10を得るための特定領域R1の移動量を、シートSh1の長周期の凹凸の周期以上とする。移動量は、シートSh1の搬送速度と、特定画像Im1を撮像する撮像部4の露光時間と、の少なくとも一方で規定される。これにより、積算画像Im10における搬送方向D1の全域において中間層L3の幅が均一となるので、積算画像Im10の搬送方向D1の任意の位置(1行)に着目しても、中間層L3の幅を求めることが可能となる。結果的に、中間層L3の幅を算出するための演算負荷を低減できる。
【0138】
次に、凹凸特定部22にて、特定画像Im1に基づいて凹凸情報を特定する具体的処理について、
図18を参照して説明する。
図18に示すフローチャートにおけるステップS1、S2・・・は、制御部16により実行される処理手順(ステップ)の番号を表している。以下に説明する処理は、例えば、搬送路T1のうちセンサーユニット20に対応する位置(モニター位置)をシートSh1が通過するタイミングに合わせて開始する。
【0139】
パターン光P1を含む特定画像Im1の分析は、三次元形状の復元を目的とする場合、例えば、複数のパターン光P1を連続的に投影し、パターン光P1の位相変化を算出するために特定画像Im1のフーリエ変換等を利用する手法で実現可能である。ただし、この手法では、演算負荷が比較的高く、表面A1の粗さ(凹凸情報)を算出するまでに比較的時間がかかり、さらには、ハードウェア(CPU、GPU及びメモリー等)のコストも比較的高くなる。そこで、本実施形態では、上記手法に代えて、比較的簡単な演算処理によって表面A1の粗さ(凹凸情報)を算出できるように下記の手法を採用する。
【0140】
すなわち、本実施形態では、凹凸特定部22は、積算画像Im10における明部L1及び暗部L2の並び方向(
図14及び
図15の左右方向)を「行方向」として、積算画像Im10の任意の1行(1ライン)に着目して、中間層L3の幅(線幅)を算出する。つまり、積算画像Im10は、明部L1及び暗部L2の並び方向にN画素が並ぶ「N画素×M行」の画像であって、凹凸特定部22は、積算画像Im10に含まれるM行のうちの任意の1行について、線幅を算出する。凹凸特定部22は、このように1行に着目して算出される中間層L3の線幅を、凹凸情報として算出する。これにより、凹凸特定部22は、中間層L3の線幅に基づいて、表面A1の算術平均高さ(Sa)との間に相関を持つ凹凸情報を求めることができる。
【0141】
<ステップS1>
具体的には、ステップS1において、制御部16は、シートSh1がモニター位置、つまり搬送路T1のうちセンサーユニット20に対応する位置に到達するかを判断する。給紙部14が画像形成部13にシートSh1を供給するに際して、シートSh1がモニター位置のセンサーで検知されることをもって、制御部16は、シートSh1がモニター位置に到達すると判断し(S1:Yes)、処理をステップS2に移行させる。一方、シートSh1がモニター位置のセンサーで検知されなければ、制御部16は、シートSh1がモニター位置に到達していないと判断し(S1:No)、処理をステップS1に移行させる。
【0142】
<ステップS2、S3>
ステップS2において、制御部16は、取得部21にて光照射部3を制御して、光照射部3にパターン光P1を照射させる。これにより、シートSh1の表面A1の特定領域R1にパターン光P1が投影される。ステップS3において、制御部16は、取得部21にて撮像部4を制御し、パターン光P1が投影されている状態の特定領域R1を撮像部4にて撮像させる。これにより、シートSh1の表面A1の特定領域R1の画像である特定画像Im1が、撮像部4にて生成される。
【0143】
<ステップS4>
ステップS4において、制御部16は、シートSh1の表面A1内で特定領域R1がある移動量だけ移動する際の特定画像Im1を積算して積算画像Im10を生成する。具体的には、表面A1内を特定領域R1がある移動量(一例として5mm)だけ移動するのに要する時間を、撮像部4の露光時間に設定した上で、撮像部4にて撮像を行うので、取得部21で取得される画像は、積算後の積算画像Im10となる。ここで、本実施形態では、積算画像Im10を得るための特定領域R1の移動量を、シートSh1の長周期の凹凸の周期以上としている。積算画像Im10の生成は、制御部16内にて行われてもよい。
【0144】
<ステップS5>
ステップS5において、制御部16は、取得部21にて積算画像Im10のうち、1行(1ライン)分の画像を撮像部4から取得する。つまり、取得部21は、列方向において1画素分となる1行分の積算画像Im10を取得する。撮像部4(撮像素子41)としては、画像の読み出しが1行毎に順次行われる仕様が一般的であるため、このように、1行分の積算画像Im10を取得して解析(ステップS6、S7)を行うことで、メモリーの使用量を少なく抑えることができる。このとき取得する行は、例えば、あらかじめ決められていてもよいし、ユーザーにより設定されてもよい。
【0145】
<ステップS6>
ステップS6において、制御部16は、取得部21にて、積算画像Im10について前処理を実行する。このとき、前処理の対象となるのは、ステップS5で取得された1行(1ライン)分の積算画像Im10である。つまり、制御部16は、積算画像Im10について1行単位で前処理を実行する。前処理は、例えば、フィルタリング処理を含む。具体的には、制御部16は、1行分の積算画像Im10について、フィルタリング処理にてノイズ除去等を行う。前処理は、積算画像Im10の一部のみを切り出すトリミング処理を含み、ステップS7での処理対象となる範囲を絞り込んでもよい。また、フィルタリング処理等は必須ではなく、適宜省略可能である。
【0146】
<ステップS7>
ステップS7において、制御部16は、凹凸特定部22にて、積算画像Im10から中間層L3の幅(線幅)を示す幅データを抽出する。このとき、幅データの抽出対象となるのは、ステップS5で取得された1行(1ライン)分の積算画像Im10である。つまり、制御部16は、積算画像Im10について1行単位で幅データの抽出を実行する。具体的には、制御部16は、1行分の積算画像Im10について、画素値が第1閾値(一例として「50」)以上の画素を明部L1、画素値が第2閾値(一例として「30」)未満の画素を暗部L2として、各画素を明部L1及び暗部L2に分類する。ここで、明部L1にも暗部L2にも当たらない画素、つまり第1閾値未満、第2閾値以上の画素値を有する画素は、中間層L3に分類される。そして、制御部16は、中間層L3としての画素が何画素あるかを、幅データとして算出する。このとき、制御部16は、1行分の積算画像Im10の全体について、中間層L3に当たる画素の画素数を抽出することにより、複数本の中間層L3の線幅の合計を抽出する。
【0147】
明部L1、暗部L2及び中間層L3への画素の分類に用いられる第1閾値及び第2閾値は、例えば、複数画素の平均値を基に決められる値、又はあらかじめ決められた値(所定値)等である。第2閾値は第1閾値よりも小さい。また、制御部16は、行方向に連続する中間層L3に当たる画素の画素数を抽出することにより、1本の中間層L3毎に、線幅を抽出してもよい。この場合、制御部16は、複数本の中間層L3の合計に限らず、複数本の中間層L3のそれぞれの線幅を幅データとしてもよいし、複数本の中間層L3の線幅の代表値(例えば、平均値、最頻値又は中央値等)を幅データとしてもよい。
【0148】
<ステップS8>
ステップS8において、制御部16は、凹凸特定部22にて、中間層L3の幅データから算術平均高さSaを算出する。すなわち、積算画像Im10における中間層L3の幅(線幅)と算術平均高さSaとの間には、高い線形性があるので、線形回帰モデルを用いて、中間層L3の幅から算術平均高さSaを一意に求めることが可能である。
【0149】
<ステップS9>
ステップS9において、制御部16は、条件決定部23にて、画像処理条件を決定する。つまり、条件決定部23は、ステップS8で算出された算術平均高さSaに応じて、画像形成条件を含む画像処理条件を決定する。一例として、算術平均高さSaが大きくなると、条件決定部23は、定着温度を上げたり、搬送速度を低下させたり、転写電圧を上げたりするように、画像形成条件を設定する。これにより、画像形成部13にてシートSh1に画像が形成される際には、当該シートSh1の表面A1の凹凸に応じた画像形成条件が自動的に適用される。
【0150】
以上説明したシート特定方法の手順は一例に過ぎず、
図18のフローチャートに示す処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
【0151】
また、縞パターンの明部L1と暗部L2との少なくとも一方が、シートSh1の表面A1内での特定領域R1の移動方向(搬送方向D1)に沿って延びることは必須でなく、例えば、明部L1及び暗部L2の両方が搬送方向D1に直交していてもよい。この場合でも、表面A1内を特定領域R1が移動するのに伴って、シートSh1の表面A1に投影されたパターン光P1には、表面A1の凹凸に応じた変形又は歪み等が動的に生じることになる。したがって、このようなパターン光P1を用いた場合でも、凹凸特定部22は、積算画像Im10に基づいて、実施形態3と同様に、凹凸情報を特定することが可能である。
【0152】
また、実施形態3では、特定画像Im1の積算の方法として、特定画像Im1を時間的に積算する方法を採用しているが、これに限らず、特定画像Im1を空間的に積算してもよい。つまり、1枚の画像内で、特定領域R1を移動させつつ、特定領域R1内の画像(特定画像Im1)について画素毎に画素値を積算(加算)するような積算も「画像の積算」に含む。つまり、1枚の画像内で特定領域R1がある移動量だけ移動する間に切り出される特定領域R1内の画像(特定画像Im1)について画素値を積算することで、特定領域R1がある移動量だけ移動する際の特定画像Im1を積算した積算画像Im10が得られる。