(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
E04B1/00 501C
(21)【出願番号】P 2022569436
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2020047222
(87)【国際公開番号】W WO2022130580
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】谷内 光治
(72)【発明者】
【氏名】落合 誠
(72)【発明者】
【氏名】市川 和希
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-265679(JP,A)
【文献】特開平11-293763(JP,A)
【文献】特開昭61-165434(JP,A)
【文献】特開2004-116160(JP,A)
【文献】実開平05-049902(JP,U)
【文献】特開2011-196124(JP,A)
【文献】特開2011-196125(JP,A)
【文献】特開平11-324124(JP,A)
【文献】特開平11-280141(JP,A)
【文献】特開平06-093653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の本体部から外に張り出される床を含む構造体を備える建築物であって、
前記構造体は、
前記本体部に沿うように配置される第1基材と、
前記第1基材から所定距離だけ離れたところに前記第1基材と平行に配置される第2基材と、
前記本体部に沿う横方向において、前記構造体の一方の端を構成し、前記第1基材から前記第2基材に渡るように配置される第3基材と、
前記横方向において、前記構造体の他方の端を構成し、前記第1基材から前記第2基材に渡るように配置される第4基材と、
前記第1基材から前記第2基材に渡るように設けられる横架材と、
前記横架材に支持されるベース部
と、
前記ベース部に配置される複数の台座
と、
前記台座に支持される床材
と、
前記構造体を補強する補強材と
、を備え、
前記ベース部は、前記ベース部と前記床材との間に構成される排水空間の底面部を構成し、
前記補強材は、
前記第3基材および前記第4基材よりも下に位置し、かつ、前記ベース部よりも下の位置に配置されて、
前記第1基材および前記第2基材に渡るように設けられる
建築物。
【請求項2】
複数の前記台座の少なくとも1つは、前記ベース部を介して前記横架材の上に配置される
請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記構造体に繋がる部屋を備え、
前記構造体において前記床材によって構成される床面の高さは、前記部屋の床面の高さと等しい
請求項1または2に記載の建築物。
【請求項4】
前記ベース部は、下地層と、前記下地層に設けられる防水層とを有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の建築物。
【請求項5】
前記ベース部は、傾斜する
請求項1~4のいずれか一項に記載の建築物。
【請求項6】
前記構造体は、さらに、第1排水管と、第2排水管とを備え、
前記第1排水管は、前記ベース部において最も低い部分に接続され、
前記第2排水管は、前記ベース部において前記第1排水管が接続されている部分よりも高い部分に接続される
請求項5に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外に張り出される床を含む構造体を有する建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、デッキを有する建築物が開示されている。
デッキは、支持部と、支持部に配置されるサポートデバイスと、サポートデバイスによって支持されるタイルと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】豪国特許出願公開第2005211518号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建築物において、外に張り出される床を含む構造体の強度について改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)課題を解決する建築物は、外に張り出される床を含む構造体を備える建築物であって、前記構造体は、複数の基材と、複数の基材に渡るように設けられる横架材と、前記横架材に支持されるベース部と、前記ベース部に配置される複数の台座と、前記台座に支持される床材と、前記構造体を補強する補強材とを備え、前記補強材は、前記ベース部よりも下の位置に配置されて、複数の前記基材に渡るように設けられる。この構成によれば、外に張り出される床を含む構造体の強度を高めることができる。
【0006】
(2)(1)に記載の建築物において、複数の前記台座の少なくとも1つは、前記ベース部を介して前記横架材の上に配置される。この構成によれば、床材は台座を介して横架材によって支持される。これによって、上下方向における床材の湾曲を抑制できる。
【0007】
(3)(1)または(2)に記載の建築物において、前記構造体に繋がる部屋を備え、前記構造体において前記床材によって構成される床面の高さは、前記部屋の床面の高さと等しい。この構成によれば、部屋から外に張り出した床にスムーズに移動できる。
【0008】
(4)(1)~(3)のいずれか1つに記載の建築物において、前記ベース部は、下地層と、前記下地層に設けられる防水層とを有する。この構成によれば、ベース部の腐朽を抑制できる。
【0009】
(5)(1)~(4)のいずれか1つに記載の建築物において、前記ベース部は、傾斜する。
この構成によれば、水を迅速に排水できる。
【0010】
(6)(5)に記載の建築物において、前記構造体は、さらに、第1排水管と、第2排水管とを備え、前記第1排水管は、前記ベース部において最も低い部分に接続され、前記第2排水管は、前記ベース部において前記第1排水管が接続されている部分よりも高い部分に接続される。この構成によれば、床面の上に水が溢れ出すことを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
上記建築物において、外に張り出される床を含む構造体の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】
図1のIII-III線に沿う建築物の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1~
図4を参照して、建築物を説明する。
図1および
図2に示されるように、建築物1は、本体部2と、本体部2の外に張り出される床を含む構造体3と、を備える。建築物1は、さらに、構造体3に繋がる部屋4を備える(
図3参照)。
【0014】
構造体3として、バルコニー5、ベランダ、テラス、デッキが挙げられる。構造体3は、建築物1の1階に設けられてもよい。構造体3は、建築物1の2階以上の階に設けられてもよい。本実施形態では、構造体3の一例として、バルコニー5を説明する。
【0015】
図3および
図4に示されるように、バルコニー5は、複数の基材10と、横架材16と、ベース部17と、複数の台座20と、床支持材25と、床材26と、補強材27とを備える。バルコニー5は、さらに、第1排水管31と、第2排水管32とを備えてもよい。バルコニー5の説明において、鉛直方向を高さ方向DZと言い、本体部2の壁に沿う方向を横方向DXと言い、横方向DXおよび高さ方向DZに直交する方向を縦方向DYと言う。
【0016】
バルコニー5は、基材10として、第1基材11と、第2基材12と、第3基材13と、第4基材14とを有する。第1基材11~第4基材14は、木材または鋼材で構成される。第1基材11および第2基材12は、第3基材13および第4基材14よりも太い。具体的には、第1基材11および第2基材12の高さ方向DZの幅は、第3基材13および第4基材14の高さ方向DZの幅の2倍以上の長さを有する。第1基材11および第2基材12の高さ方向DZに交差する方向の幅は、第3基材13および第4基材14の高さ方向DZに交差する方向の幅と等しい。第1基材11は、本体部2の梁を構成する。第2基材12は、第1基材11から水平方向に所定距離だけ離れたところに、第1基材11と平行に配置される。第2基材12は、第3基材13および第4基材14を介して第1基材11に固定される。第3基材13は、横方向DXにおいて、バルコニー5の一方の端を支持し、第4基材14は、バルコニー5の他方の端を支持する。第3基材13および第4基材14は、第1基材11から第2基材12に渡る。
【0017】
横架材16は、複数の基材10に渡るように設けられる。具体的には、複数の横架材16は、第1基材11から第2基材12に渡るように設けられる。複数の横架材16は、第3基材13と第4基材14との間において、第3基材13および第4基材14に平行に配置される。複数の横架材16は、横方向DXの端から中央に向かって取付高さが順に低くなるように、配置される。
【0018】
ベース部17は、横架材16に支持される。ベース部17は、複数の横架材16に渡るように横架材16に取り付けられる。ベース部17は、傾斜する。具体的には、ベース部17は、バルコニー5の端からバルコニー5の中央部に向かって下るように傾斜する。
【0019】
一例では、ベース部17は、下地層18と、下地層18に設けられる防水層19とを有する。下地層18は、複数の板部材によって構成される。複数の板部材は、個々に、横架材16の上に配置される。バルコニー5の全面に板部材が敷き詰められることによって、下地層18が構成される。防水層19は、防水シートによって構成される。防水シートは、下地層18の全体を覆う。
【0020】
台座20は、ベース部17に配置される。台座20は、土台21と、土台21に移動可能に設けられる軸部22と、床支持材25が置かれる設置部23とを有する。軸部22は、土台21に対して高さ方向DZに移動する。例えば、軸部22の周面には、ねじが設けられる。軸部22の回転によって、軸部22が上下に移動する。軸部22の移動によって、土台21の底面から軸部22の上端面までの長さが変わる。設置部23は、軸部22の上端面に取り付けられる。
【0021】
第1排水管31の上側開口端は、ベース部17において最も低い部分に接続される。第1排水管31の下側開口端は、排水路33に接続される。第2排水管32の上側の開口端は、ベース部17において第1排水管31が接続されている部分よりも高い部分に接続される。第2排水管32の下側開口端は、排水路33に接続される。
【0022】
複数の台座20の少なくとも1つは、ベース部17を介して横架材16の上に配置される。好ましくは、複数の台座20それぞれは、ベース部17を介して横架材16の上に配置される。1個の横架材16の上には、1または複数の台座20が配置される。一例では、複数の台座20は、縦方向DYに並べられる。複数の台座20それぞれの軸部22は、設置部23が面一となるように、高さ方向DZにおいて、位置調整される。
【0023】
床支持材25は、例えば、木材または樹脂で構成される。床支持材25は、縦方向DYに一列に並べられた複数の台座20の設置部23の上に配置される。複数の床支持材25は、横方向DXに平行に並べられる。一例では、複数の床支持材25は、横方向DXに等間隔で並べられる。
【0024】
床材26は、例えば、木材、樹脂、または窯業系部材で構成される。一例では、床材26は、床支持材25に交差するように床支持材25の上に置かれる。複数の床材26は、縦方向DYに並べられる。
【0025】
一例では、床材26によって構成される床面26aの高さは、部屋4の床面4aの高さと等しい。床材26によって構成される床面26aは、部屋4の床面4aよりも低くてもよい。例えば、床材26によって構成される床面26aは、部屋4の床面4aよりも所定高さ分だけ低い。所定高さは、5mm以上15mm以下の範囲で設定される。
【0026】
補強材27は、例えば、木材または鋼材で構成される。補強材27は、バルコニー5を補強する。補強材27は、ベース部17よりも下の位置に配置される。補強材27は、複数の基材10に渡るように設けられる。具体的には、補強材27は、第1基材11と第2基材12とに渡るように設けられる。補強材27の一方の端面は、第1基材11の側面に突き当てられ、補強材27の他方の端面は、第2基材12の側面に突き当てられる。補強材27は、第1基材11および第2基材12よりも細い。補強材27は、第3基材13および第4基材14と同じ太さであってもよいし、第3基材13および第4基材14よりも太くてもよい。補強材27は、第3基材13および第4基材14よりも低い位置で、第1基材11および第2基材12に固定される。
【0027】
本実施形態の作用を説明する。
バルコニー5は、第1基材11~第4基材14によって支持される。さらに、バルコニー5は、第1基材11と第2基材12とに渡るように設けられる補強材27によって補強される。第1基材11~第4基材14によって支持されるバルコニー5は、補強材27によって補強されるため、構造的に強くなる。
【0028】
本実施形態では、第2基材12は、第1基材11から縦方向DYに間隔をあけて配置される。第2基材12は、第3基材13および第4基材14を介して第1基材11に固定される。第3基材13と第4基材14との間には、複数の横架材16が配置される。複数の横架材16は、第1基材11と第2基材12とに渡るように設けられる。横架材16よりも上の空間は、排水空間として構成される。このため、この空間に補強材27を配置すると、補強材27が雨水で濡れる。補強材27は、ベース部17のよりも下に配置される。補強材27は、第3基材13および第4基材14よりも低い位置で、第1基材11と第2基材12に固定される。
【0029】
このように、バルコニー5は、第1基材11~第4基材14と、複数の横架材16と、補強材27とを備える。これによって、バルコニー5は、全体として、強固になる。さらに、補強材27が、第3基材13および第4基材14よりも低い位置で第1基材11および第2基材12に固定されることによって、バルコニー5は、捻じれ難くなる。さらに、補強材27が、ベース部17よりも下の位置に配置されることによって、補強材27の腐食が抑制される。
【0030】
本実施形態の効果を説明する。
(1)建築物1は、外に張り出される床を含む構造体3を備える。構造体3の一例はバルコニー5である。構造体3は、複数の基材10と、横架材16と、横架材16に支持されるベース部17と、複数の台座20と、台座20に支持される床材26と、構造体3を補強する補強材27とを備える。補強材27は、ベース部17よりも下の位置に配置されて、複数の基材10に渡るように設けられる。この構成によれば、外に張り出される床を含む構造体3の強度を高めることができる。
【0031】
(2)複数の台座20の少なくとも1つは、ベース部17を介して横架材16の上に配置される。この構成によれば、床材26は台座20を介して横架材16によって支持される。これによって、上下方向における床材26の湾曲を抑制できる。
【0032】
(3)構造体3において床材26によって構成される床面26aの高さは、部屋4の床面4aの高さと等しい。この構成によれば、部屋4から外に張り出した床にスムーズに移動できる。
【0033】
(4)ベース部17は、下地層18と、下地層18に設けられる防水層19とを有する。この構成によれば、ベース部17の腐朽を抑制できる。
【0034】
(5)ベース部17は、傾斜する。この構成によれば、水を迅速に排水できる。例えば、床材26の間から漏れる雨水は、ベース部17で受けられる。雨水は、傾斜したベース部17によって速やかに第1排水管31に導かれる。
【0035】
(6)構造体3は、さらに、第1排水管31と、第2排水管32とを備える。第1排水管31は、ベース部17において最も低い部分に接続され、第2排水管32は、ベース部17において第1排水管31が接続されている部分よりも高い部分に接続される。この構成によれば、床面26aの上に水が溢れ出すことを抑制できる。
【0036】
<変形例>
上記実施形態は、建築物1が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。建築物1は実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の一例を示す。
【0037】
・建築物1の種類は限定されない。建築物1は、住宅であってもよいし、別荘であってもよいし、工場であってもよいし、オフィスビルであってもよく、また、学校などの公共施設であってもよい。
【0038】
・本実施形態では、床材26は、床支持材25を介して台座20に配置されているが、床材26は、直接、台座20に配置されてもよい。
【0039】
・構造体3の平面視の形状は、どのような形状であってもよい。本実施形態では、バルコニー5の平面視の形状は、矩形であるが、バルコニー5の形状は、3角形であってもよく、5角形であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…建築物
3…構造体
4…部屋
4a…床面
10…基材
16…横架材
17…ベース部
18…下地層
19…防水層
20…台座
26…床材
26a…床面
27…補強材
31…第1排水管
32…第2排水管