(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】運行管理方法及び運行管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/40 20240101AFI20241217BHJP
G06Q 10/0639 20230101ALI20241217BHJP
【FI】
G06Q50/40
G06Q10/0639
(21)【出願番号】P 2023044135
(22)【出願日】2023-03-20
【審査請求日】2023-05-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩男 眞由美
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-091394(JP,A)
【文献】特開2009-011706(JP,A)
【文献】特開2008-071263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバーに対して予定されている運行開始時刻及び運行終了時刻を含む運行計画情報を取得する運行計画取得ステップと、
前記運行開始時刻前の前記ドライバーの生体情報を取得する生体情報取得ステップと、
前記運行開始時刻前に前記ドライバーから前記ドライバーの健康に関する自己申告情報を取得する自己申告情報取得ステップと、
取得した前記生体情報及び前記自己申告情報に基づいて、前記運行開始時刻から前記運行終了時刻までの予定運行期間における、前記ドライバーのアラートレベルを判定する判定ステップと、
前記判定の結果を提示する判定結果提示ステップと、
を含み、
前記判定ステップは、
前記生体情報を、第1レベルとそれよりも悪い第2レベルに閾値判定する第1の閾値判定ステップと、
前記自己申告情報を、第1レベルとそれよりも悪い第2レベルに閾値判定する第2の閾値判定ステップと、
前記第1の閾値判定ステップの判定結果と、前記第2の閾値判定ステップの判定結果と、に基づいて、前記予定運行期間における前記ドライバーのアラートレベルを分類するレベル分類ステップと、
を含み、
前記レベル分類ステップでは、前記第1の閾値判定ステップ及び前記第2の閾値判定ステップの判定結果が共に前記第1レベルだった場合に前記アラートレベルを第1のアラートレベルに分類し、前記第1の閾値判定ステップ及び前記第2の閾値判定ステップの判定結果のいずれか一方が前記第1レベルで他方が前記第2レベルだった場合に前記アラートレベルを前記第1のアラートレベルよりもアラートレベルが高い第2のアラートレベルに分類し、前記第1の閾値判定ステップ及び前記第2の閾値判定ステップの判定結果が共に前記第2レベルだった場合に前記アラートレベルを前記第2のアラートレベルよりもアラートレベルが高い第3のアラートレベルに分類し、
前記判定結果提示ステップでは、前記レベル分類ステップで分類したアラートレベルを、前記判定の結果として提示する、
運行管理方法。
【請求項2】
前記第1のアラートレベルは「良好」であり、前記第2のアラートレベルは「注意」であり、前記第2のアラートレベルは「不良」である、
請求項1に記載の運行管理方法。
【請求項3】
前記ドライバーのタイプを分類するステップを、さらに含み、
前記判定ステップでは、取得した前記生体情報及び前記自己申告情報に加えて、分類した前記ドライバーの前記タイプに基づいて、前記ドライバーのアラートレベルを判定する、
請求項1に記載の運行管理方法。
【請求項4】
ドライバーに対して予定されている運行開始時刻及び運行終了時刻を含む運行計画情報を取得する運行計画取得部と、
前記運行開始時刻前の前記ドライバーの生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記運行開始時刻前に前記ドライバーから前記ドライバーの健康に関する自己申告情報を取得する自己申告情報取得部と、
取得した前
記生体情報及び前記自己申告情報に基づいて、前記運行開始時刻から前記運行終了時刻までの予定運行期間における、前記ドライバーのアラートレベルを判定する判定部と、
前記判定の結果を提示する判定結果提示部と、
を有し、
前記判定部は、
前記生体情報を、第1レベルとそれよりも悪い第2レベルに閾値判定する第1の閾値判定を行うとともに、前記自己申告情報を、第1レベルとそれよりも悪い第2レベルに閾値判定する第2の閾値判定を行い、
前記第1の閾値判定の判定結果と、前記第2の閾値判定の判定結果と、に基づいて、前記第1の閾値判定及び前記第2の閾値判定の判定結果が共に前記第1レベルだった場合に前記アラートレベルを第1のアラートレベルに分類し、前記第1の閾値判定及び前記第2の閾値判定の判定結果のいずれか一方が前記第1レベルで他方が前記第2レベルだった場合に前記アラートレベルを前記第1のアラートレベルよりもアラートレベルが高い第2のアラートレベルに分類し、前記第1の閾値判定及び前記第2の閾値判定の判定結果が共に前記第2レベルだった場合に前記アラートレベルを前記第2のアラートレベルよりもアラートレベルが高い第3のアラートレベルに分類する、
運行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運行管理方法及び運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の車両を数多く所有する運送業者は、それらを安全に運行するようにドライバーを管理することが要求されている。
【0003】
運送業者等が使用する運行管理システムとして、勤務中(運転中)のドライバーに着脱可能な生体センサーを装着させ、ドライバーの心拍数や体温などの生体情報を取得し、勤務中の健康状態を管理するものがある(例えば特許文献1参照)。このようなシステムでは、ドライバーが運行中に眠気を感じた場合などに、警告や休息を促すことにより、安全性を高めることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように、運転中のドライバーの生体状態に基づいて健康管理を行う方法においては、運転中のドライバーの健康状態が悪化してからではないと警告などを行うことができないという課題があった。
【0006】
一方で、運行開始前に取得した、ドライバーの生体情報やドライバーの自己申告に基づいて運行計画を作成する方法もある。しかし、この方法では、運行開始時に健康状態が良好であったとしても、運行中に疲労が蓄積して体調不良が発生する場合などには十分に対応できない。
【0007】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、運行中のドライバーの健康状態悪化リスクに対して早期に対処することができる、運行管理方法及び運行管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の運行管理方法の一つの態様は、
ドライバーに対して予定されている運行開始時刻及び運行終了時刻を含む運行計画情報を取得する運行計画取得ステップと、
前記運行開始時刻前の前記ドライバーの生体情報を取得する生体情報取得ステップと、
前記運行開始時刻前に前記ドライバーから前記ドライバーの健康に関する自己申告情報を取得する自己申告情報取得ステップと、
取得した前記生体情報及び前記自己申告情報に基づいて、前記運行開始時刻から前記運行終了時刻までの予定運行期間における、前記ドライバーのアラートレベルを判定する判定ステップと、
前記判定の結果を提示する判定結果提示ステップと、
を含む。
【0009】
本開示の運行管理システムの一つの態様は、
ドライバーに対して予定されている運行開始時刻及び運行終了時刻を含む運行計画情報を取得する運行計画取得部と、
前記運行開始時刻前の前記ドライバーの生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記運行開始時刻前に前記ドライバーから前記ドライバーの健康に関する自己申告情報を取得する自己申告情報取得部と、
取得した前記前記生体情報及び前記自己申告情報に基づいて、前記運行開始時刻から前記運行終了時刻までの予定運行期間における、前記ドライバーのアラートレベルを判定する判定部と、
前記判定の結果を提示する判定結果提示部と、
を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、運行中のドライバーの健康状態悪化リスクに対して早期に対処することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態における運行管理システムの全体構成を示す図
【
図2】実施の形態の運行管理システムの要部構成を示すブロック図
【
図3】実施の形態の運行管理システムの動作の説明に供するフローチャート
【
図4】アラートレベル判定処理の処理内容を示すフローチャート
【
図5】判定部によるレベル分類及び判定の説明に供する図
【
図6A】通常型のドライバーに対する判定例を示す図
【
図6B】我慢型のドライバーに対する判定例を示す図
【
図6C】過敏型のドライバーに対する判定例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
<1>運行管理システムの全体構成
図1は、実施の形態における運行管理システムの全体構成を示す図である。
【0014】
本実施の形態の運行管理システム1は、管理者側システム10と、ドライバー側システム20と、クラウド30と、を有する。
【0015】
管理側システム10は、端末11を有する。端末11は、運送業者の運行管理部門のオフィスに設置されている。端末11は、いわゆるパソコンであり、管理者M1の操作に応じて安全運行管理に必要な動作を実行する。
【0016】
端末11には、ドライバーD1に関する、睡眠不足の情報、体調不良の情報、自己申告情報、運行情報などが表示される。管理者M1は、ドライバーD1に対して、点呼時の声掛けやアフターフォローを行う。また管理者M1は、運行計画を立てて、それを端末11に入力する。
【0017】
ドライバー側システム20は、端末21と生体情報センサー22とを有する。本実施の形態の場合、端末21はドライバーD1が携帯しているいわゆるスマートフォンであり、生体情報センサー22はリング型のセンサーである。
【0018】
生体情報センサー22により取得された生体情報は、端末21に無線にて送られる。生体情報センサー22は、生体情報として、睡眠に関する情報と体調に関する情報とを取得する。生体情報センサー22は、例えば睡眠時の心拍数、体温、呼吸数、SpO2などを計測する。
【0019】
なお、生体情報センサー22としては、腕時計型のものを用いてもよく、要はドライバーD1の生体情報を睡眠時も含めて取得できるものであればどのようなものを用いてもよい。
【0020】
端末21には、生体情報センサー22と連携してドライバーD1の生体情報を計測するためのアプリケーションプログラムと、ドライバーD1からの自己申告情報を受け付けるためのアプリケーションプログラムとが予めインストールされている。端末21が計測する生体情報としては、例えば、睡眠時における、平均心拍数、最低心拍数、平均呼吸数、体温などが含まれる。端末21には、ドライバーD1の生体情報が時系列に蓄積される。
【0021】
また、端末21には、健康管理アプリケーションプログラムとして、ドライバーD1の生体情報に基づいて、ドライバーD1の睡眠レベルを判定可能なものがインストールされていてもよい。生体情報に基づいて睡眠レベルを判定する方法は既知のものなので、ここでの詳細な説明は省略する。例えば、端末21は、生体情報センサー22からの加速度情報に基づいてドライバーD1の寝入り及び目覚めを検出する。また、端末21は、ドライバーD1の心拍数や体温に基づいて睡眠レベルを判定する。端末21又はクラウド30によって、睡眠スコアを算出してもよい。
【0022】
クラウド30は、管理者側システム10及びドライバー側システム20と無線にてデータのやりとりが可能な構成とされている。
【0023】
クラウド30は、管理者側システム10から管理者見立て情報を入力する。管理者見立て情報とは、管理者M1が点呼時に観察したドライバーD1に関する情報であり、例えばドライバーD1が眠そうであるとか、体調が悪そうであるなどといった情報である。
【0024】
また、クラウド30は、ドライバー側システム20から、生体情報及び自己申告情報を入力する。
【0025】
また、クラウド30は、運送業者の所有するトラックなどの車両B1から運行情報を入力する。運行情報は、車載器によって得られた情報であり、例えば実際の車両B1が走行していた時間の情報や走行距離の情報である。また、運行情報には、ドライバーの視線などに基づく、ドライバーの眠気の情報などが含まれていてもよい。
【0026】
クラウド30は、少なくとも記憶装置及び情報処理装置を含んで構成されており、ドライバー側システム20から入力した生体情報及び自己申告情報、管理者側システム10から入力した管理者見立て情報、車両B1から入力した運行情報などを用いて、所定のプラグラムを実行することにより、各種の情報を生成する。
【0027】
クラウド30は、生成した各種の情報のうち、健康アドバイス情報をドライバー側システム20の端末21に、点呼時健康コメント情報を管理者側システム10の端末11に送る。点呼時健康コメント情報には、ドライバーD1についての、睡眠に関する情報、体調に関する情報、などが含まれる。また、点呼時健康コメント情報には、生体情報及び自己申告情報に基づいて判定された、運行開始時刻から運行終了時刻までの予定運行期間における、ドライバーD1のアラートレベルを示す情報が含まれる。
【0028】
<2>運行管理システムの要部構成
図2は、本実施の形態の運行管理システムの機能ブロック図である。
【0029】
図2に示した機能ブロックの各要素は、
図1の管理者側システム10、ドライバー側システム20及びクラウド30のいずれかに設けられている。具体的には、運行計画取得部101は、管理者側システム10に設けられ、生体情報取得部102はドライバー側システム20に設けられ、判定部102は管理者側システム10に設けられ、提示部104は管理者側システム10に設けられ、睡眠検出部105及び体調判定部106は管理者側システム10に設けられ、自己申告情報取得部107はドライバー側システム20に設けられる。
【0030】
なお、判定部103、睡眠検出部105及び体調判定部106は、必ずしも管理者側システム10に設けられる必要はなく、クラウド30に設けられてもよく、あるいはドライバー側システム20に設けられてもよい。
【0031】
実際上、管理者側システム10、ドライバー側システム20及びクラウド30の各々は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えている。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働して
図2に示した各部の機能を実現する。なお、
図2に示した各部の機能の全部又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードワイヤード回路により実現してもよい。運行管理システム10の各機能ブロックは、1以上のプロセッサ、1以上の電子回路、又はそれらの組合せによって実現可能である。
【0032】
運行計画取得部101は、ドライバーD1に対して予定されている運行開始時刻及び運行終了時刻を含む運行計画情報を取得する。運行計画は、例えば管理者M1により端末11から入力され、クラウド30又は端末11などに記憶されている。運行計画取得部101は、記憶された運行計画を読み出すことで運行計画を取得する。
【0033】
生体情報取得部102は、運行開始時刻前のドライバーD1の生体情報を取得する。この生体情報は、端末21と生体情報センサー22との連携により計測されたものであり、端末21、クラウド30又は端末11に記憶されている。
【0034】
判定部103は、運行開始時刻前のドライバー生体情報に基づいて、運行開始時刻から運行終了時刻までの予定運行期間における、ドライバーD1のアラートレベルを判定する。本実施の形態の場合、判定部103は、睡眠検出部105による検出結果と、体調判定部106による判定結果と、ドライバーD1の自己申告情報を入力し、これらに基づいて、運行開始時刻から運行終了時刻までの予定運行期間における、ドライバーD1のアラートレベルを判定する。ここで「アラートレベル」とは、運行中のドライバーD1に眠気や体調不良が生じるリスクのレベルを表すものである。
【0035】
睡眠検出部105は、生体情報取得部102によって取得された生体情報に基づいてドライバーD1の睡眠を検出する。具体的には、睡眠検出部105は、ドライバーD1の心拍数や体温などに基づいて、ドライバーD1の睡眠開始時刻(つまり寝入った時刻)、睡眠終了時刻(つまり目覚めた時刻)及び睡眠時間を検出し、これらを判定部103に出力する。
【0036】
体調判定部106は、生体情報取得部102によって取得された生体情報と、睡眠時検出部105によって検出された睡眠情報を入力し、ドライバーD1の睡眠中の生体情報に基づいてドライバーD1の体調を判定する。例えば、体調判定部106は、睡眠時の心拍数が高いほど、ドライバーD1に疲労が蓄積しており、ドライバーD1の体調が悪いと判定する。本実施の形態では、睡眠時の生体情報に基づいて体調を判定したことにより、非睡眠時の生体情報に基づいて体調を判定する場合よりも、安定した体調判定を行うことができる。
【0037】
なお、体調判定部106が判定する体調は疲労度に限らない。体調判定部106は、例えば体温や呼吸数、心拍変動などに基づいて、ドライバーD1の体調を判定してもよい。
【0038】
自己申告情報取得部107は、ドライバーD1からの自己申告を受け付ける入力部であり、例えば端末21のタッチパネルや音声入力部により具現化されている。また、自己申告情報取得部107は、例えば端末11のタッチパネルや音声入力部により具現化されていてもよい。
【0039】
自己申告情報取得部107は、運行前に、ドライバーD1からの体調などに関する自己申告情報を取得する。運行前とは、例えば運行開始までの所定時間以内(例えば運行前の1時間以内)であったり、点呼時である。自己申告情報とは、例えば、ドライバーD1が感じている疲労や体調の度合い、服薬状況などである。
【0040】
判定部103の判定処理について、より具体的に説明する。
【0041】
判定部103は、運行開始時刻から運行終了時刻までの予定運行期間において、ドライバーD1に眠気が生じたり、疲労度が大きくなり過ぎないかなどを判定する。判定部103は、運行開始時刻より前の少なくとも1回の睡眠時間を含む期間におけるドライバーD1の生体情報を取得し、睡眠時間の長さ及びタイミングに基づいて、ドライバーD1が運行予定期間内おいて眠気を覚える可能性を判定する。少なくとも1回の睡眠時間を含む期間は、例えば、少なくとも1日(24時間)であることが望ましいが、直前の睡眠時間を判定できれば半日(12時間)程度であってもよい。判定部103は、ドライバーD1が、運行の開始に最も近い睡眠において取った睡眠時間を算出する。あるいは、運行開始以前の例えば24時間以内に取った睡眠時間を算出する。また、判定部103は、ドライバーD1が運行開始の直前の睡眠を終了してから(目覚めてから)運行を終了するまでの時間、すなわち非睡眠予定時間を算出する。
【0042】
そして、判定部103は、上記睡眠時間が短いほど、ドライバーD1が運行中に眠くなると判定する。加えて、判定部103は、上記非睡眠予定時間が長いほど、ドライバーD1が運行中に眠くなる可能性が高いと判定する。つまり、本実施の形態では、単なる睡眠時間だけでなく、非睡眠予定時間を加味して、ドライバーD1に眠気が生じる可能性が高いか否かを判定する。例えば、判定部103は、睡眠時間が閾値X1より短く、かつ、非睡眠予定時間が閾値X2より長い場合に、運行中の眠気のアラートレベルを高程度と判定する。また、判定部103は、睡眠時間が閾値X1より短い場合、又は、非睡眠予定時間が閾値X2より長い場合のいずれか一方である場合、運行中の眠気のアラートレベルを中程度と判定する。判定部103は、睡眠時間が閾値X1以上であり、かつ、非睡眠予定時間が閾値X2以下である場合に、運行中の眠気のアラートレベルを低程度と判定する。なお、高程度のほうが、運行中に眠気が発生する可能性が高いことを示す。なお、眠気の段階は3段階に限らず、より多段階で判定結果を示してもよい。
【0043】
さらに、判定部103は、以下のような、従来の眠気に関する知見を用いた判定を行うと、より好ましい。
・睡眠リズム(昼は覚醒し易く、夜は眠くなる)により、例えば徹夜明けでも点呼の時間は朝なので眠気は無いが勤務終了前に眠くなってしまうこともある。
・連続して起きている時間が長いほど眠気は高まる。
【0044】
加えて、本実施の形態の場合、判定部103は、体調判定部106により得られたドライバーD1の体調、及び、自己申告情報取得部107により得られた自己申告情報に基づいて、運行中のドライバーD1のアラートレベルを判定する。
【0045】
なお、判定部103は、必ずしも、睡眠検出部105、体調判定部106及び自己申告情報取得部107の出力の全てを用いて判定を行う必要なく、例えば睡眠検出部105と自己申告情報取得部107の出力を用いて上記判定を行ってもよく、あるいは、体調判定部106と自己申告情報取得部107の出力を用いて上記判定を行ってもよい。要は、生体情報及び自己申告情報に基づいて、運行開始時刻から運行終了時刻までの予定運行期間における、ドライバーD1のアラートレベルを判定すればよい。
【0046】
例えば、判定部103は、体調判定部106から睡眠時の心拍数を取得し、睡眠時の心拍数が閾値Hより高い場合、ドライバーD1に疲労が蓄積していると判断して、眠気のアラートを判定部103の判定結果よりも1段階高めてもよい。また、判定部103は、眠気のアラートと体調判定部106から得られた体調を示す情報に基づいて、眠気のアラートとは別に、疲労度などの他の体調を示すパラメータを出力することも可能である。
【0047】
提示部104は、端末11の表示部やスピーカーによって具現化されており、判定結果を表示や音声出力によって提示する。提示部104は、第2分類ステップでの分類結果以外にも、管理者M1の操作に応じて、睡眠検出部105の検出結果、体調判定部106による判定結果などを提示することもできる。提示の内容は、例えば「睡眠時間がいつもより短く、予定運行時間を短くする必要があります。」、「早く目覚めたようで、運行終了頃に睡眠欲求が高まりそうです。昼休みの仮眠を推奨します。」、「体調不良として注意が必要です。早めの休息を推奨します。」、「体調不良として注意が必要です。本人の自覚を確認し、病院での検査も検討してください。」、「本人から体調が悪いので明日休みたいとの申告があります。休暇取得可能かを検討してください。」、「本人から疲れ気味との申告が3日連続してありました。回復しきれていないようです。運行計画を作り直してください。」、「服薬を忘れたようです、詰所で保管の薬を渡してあげてください」などがある。
【0048】
提示部104は、判定部103による判定結果と、自己申告されたドライバーD1のアラートレベルを並べて表示してもよい。例えば、提示部104は判定部103による睡眠アラートや、体調を示す情報を表示するとともに、自己申告された体調を示す情報を表示してもよい。提示部104は例えば、モニターやタブレット端末などであってもよい。
【0049】
図3は、本実施の形態の運行管理システムの動作の説明に供するフローチャートである。
【0050】
ステップS1において、運行計画取得部101がドライバーD1に対して予定されている運行開始時刻及び運行終了時刻を含む運行計画情報を取得する。ステップS2において、生体情報取得部102が運行開始時刻前のドライバーD1の生体情報を取得する。
【0051】
続くステップS3において、睡眠検出部105がステップS2で取得された生体情報に基づいて、ドライバーD1の睡眠を検出する。続くステップS4において、体調判定部106が睡眠時の生体情報に基づいてドライバーD1の体調レベルを判定する。続くステップS5において、自己申告情報取得部107がドライバーD1の自己申告情報を取得する。なお、ステップS2-S3と、ステップS4と、ステップS5の処理は並列して行ってもよい。
【0052】
続くステップS6において、判定部103が運行開始時刻前の生体情報に基づいて、運行開始時刻から運行終了時刻までの予定運行期間における、ドライバーD1のアラートレベルを判定する。本実施の形態では、判定部103は、運行開始時刻前の生体情報により得られた睡眠情報及び体調レベルと、自己申告情報とに基づいて、予定運行期間における、ドライバーD1のアラートレベルを判定する。
【0053】
続くステップS7において、提示部104がアラートレベルを提示する。
【0054】
図4は、アラートレベル判定処理(ステップS6)の処理内容を示すフローチャートである。また
図5は、生体情報及び自己申告情報のレベル分類と、アラートレベルの分類の例を示す図である。
【0055】
図4に示したように、判定部103は、アラートレベル判定処理(ステップS6)を開始すると、先ず、ステップS6a1で生体情報が閾値Th1以上であるか否かを判定するとともに、ステップS6a2で自己申告情報が閾値Th2以上であるか否かを判定する。ここで、生体情報が閾値Th1以上であるということは健康状態が所定レベルよりも良いことを意味する。同様に、自己申告情報が閾値Th2以上であるということは健康状態が所定レベルよりも良いことを意味する。
【0056】
判定部103は、ステップS6a1、S6a3、S6a4において、生体情報を閾値判定することで、ドライバーD1の健康状態を第1レベル又は第2レベルに分類する。なお、このレベル分類は、生体情報を直接用いて行ってもよいが、本実施の形態の場合には、睡眠検出部105の検出結果、体調判定部106の判定結果に対して行うようになっている。
【0057】
同様に、判定部103は、ステップS6a2、S6a5、S6a6において、自己申告情報を閾値判定することで、ドライバーD1の健康状態を第1レベル又は第2レベルに分類する。
【0058】
次に、判定部103は、ステップS6b1において、生体情報に基づく健康状態のレベルと自己申告情報に基づく健康状態のレベルの両方が第1レベルであるか判定し、肯定結果を得た場合には(ステップS6b1;YES)、ステップS6b3に移って、ドライバーD1のアラートレベルを「良好」(つまりアラートレベルが低い)と分類する。
【0059】
判定部103は、ステップS6b1で否定結果を得ると(ステップS6b1;NO)、ステップSb2に移り、生体情報に基づく健康状態のレベルと自己申告情報に基づく健康状態のレベルの両方が第2レベルであるか判定し、肯定結果を得た場合には(ステップS6b2;YES)、ステップS6b4に移って、ドライバーD1のアラートレベルを「不良」(つまりアラートレベルが高い)と分類する。
【0060】
判定部103は、ステップS6b2で否定結果を得ると(ステップS6b2;NO)、このことは生体情報に基づく健康状態のレベルと自己申告情報に基づく健康状態のレベルのいずれか一方が第1レベルであり、他方が第2レベルであることを意味し、ステップSb5に移り、ドライバーD1のアラートレベルを「注意」(つまりアラートレベルが中程度)と分類する。
【0061】
このように、本実施の形態では、判定部103は、生体情報と自己申告情報のそれぞれに対して、健康状態をレベル分類する第1分類ステップ(ステップS6a1~S6a6)と、生体情報と自己申告情報のそれぞれについてのレベル分類結果の組み合わせに基づいて、予定運行期間におけるドライバーD1のアラートレベルをレベル分類する第2分類ステップ(ステップS6b1~S6b5)と、を実行する。
【0062】
第2分類ステップでの分類結果(ステップS6b1~S6b5)は、提示部104によって提示される。
【0063】
<3>まとめ
以上説明したように、本実施の形態によれば、ドライバーD1に対して予定されている運行開始時刻及び運行終了時刻を含む運行計画情報を取得する運行計画取得部101と、運行開始時刻前のドライバーD1の生体情報を取得する生体情報取得部102と、運行開始時刻前にドライバーD1からドライバーD1の健康に関する自己申告情報を取得する自己申告情報取得部107と、取得した生体情報及び自己申告情報に基づいて、運行開始時刻から運行終了時刻までの予定運行期間における、ドライバーD1のアラートレベルを判定する判定部103と、判定の結果を提示する判定結果提示部(提示部104)と、を設けた。
【0064】
これにより、管理者M1は、判定結果提示部(提示部104)に提示された内容に基づいて、運行開始時刻から運行終了時刻までの予定運行期間におけるドライバーD1のアラートレベルを知ることができるので、ドライバーD1に対して適切な声掛けや、適切な運行計画の変更等を行うことができるようになる。この結果、運行中のドライバーの健康状態悪化リスクに対して早期に対処することができる、運行管理システム及び運行管理方法を実現できる。
【0065】
また、
図1に示した本実施の形態の運行管理システムによれば、生体情報センサー22による生体情報の漏れがあった場合でも、ドライバーD1の自己申告や管理者M1の見立てによりサポートすることもできる。
【0066】
上述の実施の形態の構成によれば、管理者M1は、点呼時のドライバーD1の様子、自己申告の内容及び生体情報に基づいて総合的にドライバーD1の運行中のアラートレベルを判断できるようになる。
【0067】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0068】
上述の実施の形態では、判定部103は、ドライバーD1が運行の開始に最も近い睡眠において取った睡眠時間、あるいは、運行開始以前の例えば24時間以内に取った睡眠時間を算出するとともに、ドライバーD1が運行開始の直前の睡眠を終了してから(目覚めてから)運行を終了するまでの時間を非睡眠予定時間として算出する場合について述べたが、本開示はこれに限らない。
【0069】
例えば、判定部103は、睡眠時間及び予定非睡眠時間に加えて、前回の運行までの睡眠時間及び予定非睡眠時間の平均値に基づいて、予定運行期間でのドライバーのアラートレベルを判定するようにしてもよい。
【0070】
このようにすれば、判定部103は、今回の運行における睡眠時間と予定非睡眠時間との関係だけでなく、前回の運行までの睡眠時間と予定非睡眠時間との関係を考慮した判定を行うことができるようになる。例えば、予定非睡眠時間に対する睡眠時間の割合が小さくても眠気が生じにくいドライバーや、それとは逆に予定非睡眠時間に対する睡眠時間の割合が大きくないと眠気が生じやすいドライバーがいる。前回の運行までの睡眠時間と予定非睡眠時間との関係を考慮した判定を行うようにすれば、このようなドライバーの個人差を反映した判定を行うことができるようになる。
【0071】
換言すれば、勤務当日の所定時間前だけでなく、所定日数前(2日、5日、14日など)からの勤務日における睡眠時間と予定非睡眠時間との平均値を算出し、それらの関係も考慮して勤務当日の睡眠時間と予定非睡眠時間との関係を判定して提示することにより、予定運行期間でのドライバーのアラートレベルをより的確に判定できるようになる。
【0072】
上述の実施の形態では、
図5に示したように、判定部103が、生体情報及び自己申告情報に基づいて、運行開始時刻から運行終了時刻までの予定運行期間における、ドライバーD1のアラートレベルを判定する。さらに、この判定を行う際にドライバーD1のタイプを考慮した判定を行ってもよい。ドライバーD1のタイプは、例えば、通常型、疲れているにもかかわらず疲れていないと自己申告する我慢型、大して疲れていないにもかかわらず疲れていると自己申告する過敏型、などに分類できる。
【0073】
判定部103は、生体情報と自己申告情報と、の過去の履歴に基づいて、ドライバーD1のタイプを分類する。具体的には、過去の履歴において、客観的な情報である生体情報と自己申告情報とを比較し、生体情報が不良であるにもかかわらず自己申告情報が良い傾向にあるドライバーD1を我慢型に分類する。逆に、生体情報が良いにもかかわらず自己申告情報が不良の傾向にあるドライバーD1を敏感型に分類する。
【0074】
例えば、個人の自己申告と生体情報の履歴において、自己申告を1軸にプロットし、生体情報を2軸にプロットした分布図から、自己申告と生体情報とが単純な比例的な相関関係でなく偏りがあることに基づいて、ドライバーD1のタイプを分類し得る。また、分布の偏りなどを集団の中で比較することで、ドライバーD1のタイプを分類し得る。
【0075】
なお、この分類は、生体情報と自己申告情報との過去の履歴に限らず、管理者M1の見立てに基づいて行ってもよい。つまり、管理者M1がドライバーD1のタイプを判断し、それを端末11から入力してもよい。判定部103は、生体情報及び自己申告情報に加えて、分類されたドライバーD1のタイプに基づいて、ドライバーD1のアラートレベルを判定する。この判定は、ドライバーD1のタイプに応じた重み付け判定と言ってもよい。
【0076】
図6Aは通常型のドライバーに対する判定例を示す図であり、
図6Bは我慢型のドライバーに対する判定例を示す図であり、
図6Cは過敏型のドライバーに対する判定例を示す図である。
図6Aは通常のドライバーに対する判定例は、
図5に示した判定例と同じである。
【0077】
図6Bの我慢型のドライバーに対する判定例では、自己申告情報が第2レベル(不良)であり生体情報が第1レベル(良)の場合に、判定結果(総合判定)として「注意」ではなく「不良」が出力される。
図6Cの過敏型のドライバーに対する判定例では、自己申告情報が第2レベル(不良)であり生体情報が第1レベル(良)の場合に、判定結果(総合判定)として「注意」ではなく「良好」が出力される。
【0078】
このように、ドライバーD1のタイプを分類し、生体情報及び自己申告情報に加えて、ドライバーD1のタイプに基づいて、ドライバーD1のアラートレベルを判定することにより(換言すれば、ドライバーD1のタイプに応じて自己申告情報を重み付けして判定することにより)、運行開始時刻から運行終了時刻までの予定運行期間における、ドライバーD1のアラートレベルをより的確に判定できるようになる。
【0079】
上述の実施の形態では、生体情報及び自己申告情報を第1レベル(良)及び第2レベル(不良)にレベル分類する場合について述べたが、生体情報及び自己申告情報をより細かく分類してもよい。また、上述の実施の形態では、ドライバーD1のタイプを通常型、我慢型、過敏型に分類する場合について述べたが、分類はこれに限らない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示は、例えば運送業者が安全な運行管理を行うための技術として有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 運行管理システム
10 管理者側システム
11、21 端末
20 ドライバー側システム
22 生体情報センサー
30 クラウド
101 運行計画取得部
102 生体情報取得部
103 判定部
104 提示部
105 睡眠検出部
106 体調判定部
107 自己申告情報取得部