(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】送信方法
(51)【国際特許分類】
H04N 21/242 20110101AFI20241217BHJP
H04N 21/236 20110101ALI20241217BHJP
H04N 21/43 20110101ALI20241217BHJP
H04H 20/18 20080101ALI20241217BHJP
H04H 20/95 20080101ALI20241217BHJP
【FI】
H04N21/242
H04N21/236
H04N21/43
H04H20/18
H04H20/95
(21)【出願番号】P 2023179302
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2022124215の分割
【原出願日】2014-07-30
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【氏名又は名称】山田 英治
(74)【代理人】
【識別番号】100095496
【氏名又は名称】佐々木 榮二
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】110000763
【氏名又は名称】弁理士法人大同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北里 直久
【審査官】鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-130065(JP,A)
【文献】国際公開第2012/120763(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/136754(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/165187(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/190789(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00-21/858
H04H 20/18
H04H 20/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信部
が、伝送メディア
と第1の時間軸によ
る時刻情報を含む伝送ストリー
ムを送信する送信ステップを有し、
前記送信ステップでは、信号符号化処理の遅延に関連し、第2の時間軸による時刻情報を前記第1の時間軸による時刻情報に対応させるための情報を含む参照時刻情報をさらに送信し、
前記参照時刻情報は、前記伝送ストリームに含まれるテーブルに配置される情報である
送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の放送方式において不可欠なサービス要件として、放送と通信の融合サービスが挙げられる。放送と通信の融合サービスも様々な形態が想定されるが、1つの放送番組を構成する画像・音声等の基本信号が一部放送、一部通信で伝送されるケースがその1形態として考えられている。
【0003】
現在の放送システムでは、伝送メディアのトランスポート方式として、MPEG2-TS(Moving Picture Experts Group-2 Transport Stream)方式が広く用いられている(例えば、特許文献1を参照)。また、通信による伝送メディアの配信システムとして、MPEG-DASH(Moving Picture Experts Group-Dynamic Adaptive Streaming over HTTP)が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】「既存のWebサーバで途切れない動画配信を実現」、平林光浩、NIKKEI ELECTRONICS 2012.3.19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の放送と通信の融合サービスを実現する上で技術的な課題となるのは、異なる経路で伝送する映像・音声の同期提示である。提示同期制御を実現する上で、ベースとなる時間軸(タイムライン)を共有することが要求される。
【0007】
一般に、放送ではSTC(System Time Clock)と呼ばれる各送信システムで独立する27MHzのカウンタ値が時間軸として使用され、通信ではUTC(Universal Time, Coordinated)と呼ばれる絶対時刻(データフォーマットとしてNTP形式)が時間軸として使用される。
【0008】
本技術の目的は、放送と通信の融合サービスにおける提示同期制御を良好に実現可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術の概念は、
伝送メディアと該伝送メディアの提示単位毎の第1の時間軸による提示時刻情報を含む伝送ストリームおよび該伝送ストリームに対応した伝送制御信号のそれぞれに対して個別に伝送路符号化処理を行った後に時分割多重と変調の処理を行って変調波を得、該変調波を送信する送信部を備え、
上記伝送ストリームには、上記第1の時間軸による時刻情報が挿入されており、
上記伝送制御信号に、上記第1の時間軸とは異なる第2の時間軸による時刻情報を挿入する時刻情報挿入部をさらに備える
送信装置にある。
【0010】
本技術において、送信部により、変調波の送信が行われる。この変調波は、伝送メディアとこの伝送メディアの提示単位毎の第1の時間軸による提示時刻情報を含む伝送ストリームおよびこの伝送ストリームに対応した伝送制御信号のそれぞれに対して個別に伝送路符号化処理を行った後に時分割多重と変調の処理を行うことで得られたものである。伝送ストリームには、第1の時間軸による時刻情報が挿入されている。そして、時刻情報挿入部により、伝送制御信号に、第1の時間軸とは異なる第2の時間軸による時刻情報が挿入される。
【0011】
例えば、伝送ストリームはMPEG2-TSであり、第1の時間軸による時刻情報はSTCベースのPCRであり、第2の時間軸による時刻情報はUTCベースのNTPフォーマットの時刻情報である、ようにされてもよい。また、例えば、伝送制御信号はTMCC情報であり、時刻情報挿入部は、TMCC情報に、拡張情報として、第2の時間軸による時刻情報を挿入する、ようにされてもよい。
【0012】
このように本技術においては、伝送ストリームに第1の時間軸による時刻情報が挿入される他に、伝送制御信号に第2の時間軸による時刻情報が挿入されるものである。そのため、受信側では、放送と通信の融合サービスにおける提示同期制御を良好に実現できる。
【0013】
なお、本技術において、例えば、伝送ストリームに、伝送制御信号に第2の時間軸による時刻情報が挿入されていることを示す識別情報を挿入する識別情報挿入部をさらに備える、ようにされてもよい。この場合、例えば、伝送ストリームはMPEG2-TSであり、識別情報挿入部は、識別情報が記述された記述子をネットワーク・インフォメーション・テーブルに挿入する、ようにされてもよい。このように識別情報が挿入されることで、受信側では、伝送制御信号に第2の時間軸による時刻情報が挿入されていることを容易に識別可能となる。
【0014】
この場合、例えば、第2の時間軸による時刻情報がUTCベースのNTPフォーマットの時刻情報であるとき、識別情報には、NTPフォーマットがロングフォーマットであるかショートフォーマットであるかを示す情報が付加される、ようにされてもよい。これにより、受信側では、NTPフォーマットがロングフォーマットであるかショートフォーマットであるかを容易に認識できる。
【0015】
また、この場合、識別情報には、第1の時間軸による時刻情報と第2の時間軸による時刻情報との伝送遅延差情報が付加される、ようにされてもよい。これにより、受信側では、第2の時間軸による提示時刻情報を第1の時間軸による提示時刻情報に変換するために必要な送信側における伝送遅延差情報を得ること可能となる。
【0016】
また、本技術の他の概念は、
伝送メディアと該伝送メディアの提示単位毎の第1の時間軸による提示時刻情報を含む第1の伝送ストリームおよび該第1の伝送ストリームに対応した伝送制御信号のそれぞれに対して個別に伝送路符号化処理を行った後に時分割多重と変調の処理を行って得られた変調波を受信する第1の受信部を備え、
上記第1の伝送ストリームには上記第1の時間軸による時刻情報が挿入されており、
上記伝送制御信号には上記第1の時間軸とは異なる第2の時間軸による時刻情報が挿入されており、
上記変調波から上記第1の伝送ストリームおよび上記第2の時間軸による時刻情報を取得する取得部と、
伝送メディアと該伝送メディアの提示単位毎の上記第2の時間軸による提示時刻情報を含む第2の伝送ストリームを受信する第2の受信部と、
上記取得部で取得された上記第1の伝送ストリームに含まれる上記第1の時間軸による時刻情報に同期した時刻情報を発生する時刻情報発生部と、
上記取得部で取得された上記第1の伝送ストリームに含まれる伝送メディアの提示を、上記第1の伝送ストリームに含まれる提示時刻情報と、上記時刻情報発生部で発生される時刻情報に基づいて制御する第1の制御部と、
上記第2の受信部で受信された上記第2の伝送ストリームに含まれる伝送メディアの提示を、上記第2の伝送ストリームに含まれる提示時刻情報と、上記取得部で取得された上記第2の時間軸による時刻情報と、上記時刻情報発生部で発生される時刻情報に基づいて制御する第2の制御部をさらに備える
受信装置にある。
【0017】
本技術において、第1の受信部により、変調波が受信される。この変調波は、伝送メディアとこの伝送メディアの提示単位毎の第1の時間軸による提示時刻情報を含む第1の伝送ストリームおよびこの第1の伝送ストリームに対応した伝送制御信号のそれぞれに対して個別に伝送路符号化処理を行った後に時分割多重と変調の処理を行って得られたものである。ここで、第1の伝送ストリームには、第1の時間軸による時刻情報が挿入されており、伝送制御信号には第1の時間軸とは異なる第2の時間軸による時刻情報が挿入されている。
【0018】
取得部により、変調波から第1の伝送ストリームおよび第2の時間軸による時刻情報が取得される。第2の受信部により、伝送メディアと、この伝送メディアの提示単位毎の第2の時間軸による提示時刻情報を含む第2の伝送ストリームが受信される。また、時刻情報発生部により、取得部で取得された第1の伝送ストリームに含まれる第1の時間軸による時刻情報に同期した時刻情報が発生される。
【0019】
そして、第1の制御部により、取得部で取得された第1の伝送ストリームに含まれる伝送メディアの提示が、第1の伝送ストリームに含まれる提示時刻情報と、時刻情報発生部で発生される時刻情報に基づいて制御される。また、第2の制御部により、第2の受信部で受信された第2の伝送ストリームに含まれる伝送メディアの提示が、この第2の伝送ストリームに含まれる提示時刻情報と、取得部で取得された第2の時間軸による時刻情報と、時刻情報発生部で発生される時刻情報に基づいて制御される。
【0020】
例えば、第1の時間軸はSTCベースの時間軸であり、第2の時間軸はUTCベースの時間軸である、ようにされてもよい。また、例えば、第1の伝送ストリームはMPEG2-TSであり、伝送制御信号はTMCC情報であり、TMCC情報に、拡張情報として、第2の時間軸による時刻情報が挿入されている、ようにされてもよい。
【0021】
また、例えば、第2の制御部は、取得部で取得された第2の時間軸による時刻情報とこの時刻情報の受信時における時刻情報発生部で発生される時刻情報との対応関係と、第1の時間軸による時刻情報と第2の時間軸による時刻情報との伝送遅延差情報を用いて、第2の伝送ストリームに含まれる提示時刻情報を第1の時間軸による提示時刻情報に変換し、この変換された提示時刻情報と、時刻情報発生部で発生される時刻情報に基づいて、第2の伝送ストリームに含まれる伝送メディアの提示を制御する、ようにされてもよい。
【0022】
この場合、例えば、伝送遅延差情報は、送信側の伝送遅延差情報と受信側の伝送遅延差情報とからなり、第1の伝送ストリームには、送信側の伝送遅延差情報が含まれている、ようにされてもよい。また、この場合、第2の制御部は、対応関係として、最新の2つの対応関係を用いる、ようにされてもよい。
【0023】
このように本技術においては、第1の伝送ストリームに含まれる伝送メディアの提示が、第1の時間軸による提示時刻情報と、時刻情報発生部で発生される第1の時間軸による時刻情報に基づいて制御されると共に、第2の伝送ストリームに含まれる伝送メディアの提示が、第2の時間軸による提示時刻情報と、取得部で取得された第2の時間軸による時刻情報と、時刻情報発生部で発生される第1の時間軸による時刻情報に基づいて制御されるものである。そのため、放送と通信の融合サービスにおける提示同期制御を良好に実現できる。
【発明の効果】
【0024】
本技術によれば、放送と通信の融合サービスにおける提示同期制御を良好に実現できる。なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態としての放送・通信ハイブリッドシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】放送・通信ハイブリッドシステムにおけるそれぞれの系を概略的に示す図である。
【
図3】放送信号の構成を示すシステム・パイプ・モデルである。
【
図4】デジタル放送に関するTMCC情報の構成例を示す図である。
【
図5】TMCC情報の拡張情報(時刻情報)の構成例を示す図である。
【
図6】NTPサーバが提供する時刻情報のロングフォーマットとショートフォーマットを示す図である。
【
図7】時刻情報参照記述子の構成例を示す図である。
【
図8】PCR/NTPの伝送遅延モデルを示す図である。
【
図9】放送・通信ハイブリッドシステムを構成する放送送出システムの構成例を示すブロック図である。
【
図10】放送・通信ハイブリッドシステムを構成する受信機の構成例を示すブロック図である。
【
図11】送信側・受信側のタイムラインとターゲットタイム換算を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明を以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
【0027】
<1.実施の形態>
[放送・通信ハイブリッドシステムの構成例]
図1は、放送・通信ハイブリッドシステム10の構成例を示している。放送・通信ハイブリッドシステム10において、送信側には放送送出システム110および配信サーバ120が配置され、受信側には受信機200が配置されている。
【0028】
放送送出システム110は、ビデオ、オーディオなどの伝送メディア(コンポーネント)を含む伝送ストリームとしてのトランスポートストリームTSと、このトランスポートストリームTSに対応した伝送制御情報としてのTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)情報のそれぞれに対して個別に伝送路符号化処理を行った後に時分割多重と変調の処理を行って得られた変調波からなる放送信号を送出する。
【0029】
トランスポートストリームTSには、伝送メディアの提示単位毎の提示時刻情報(PTS:Presentation Time Stamp)が含まれている。この提示時刻情報は、STC(System Time Clock)をベースとするものである。また、このトランスポートストリームTSには、STCベースのPCR(Program Clock Reference)が挿入されている。この実施の形態において、TMCC情報には、UTC(Universal Time Coordinated)ベースのNTP(Network Time Protocol)フォーマットの時刻情報が挿入される。
【0030】
また、トランスポートストリームTSには、TMCC情報にNTPフォーマットの時刻情報が挿入されていることを示す識別情報が挿入される。この実施の形態においては、ネットワーク・インフォメーション・テーブル(NIT:Network Information Table)の配下に、この識別情報が記述された時刻情報参照記述子(time_reference_descriptor)が挿入される。ネットワーク・インフォメーション・テーブルには、チャンネル番号や変調方式、ガードインターバルなど、送信するネットワークに関する情報が含まれる。この時刻情報参照記述子の詳細については、後述する。
【0031】
配信サーバ120は、ビデオ、オーディオなどの伝送メディア(コンポーネント)を含む伝送ストリームを、例えば、受信側からの要求に応じ、通信ネットワーク300を通じて、受信側に配信する。この伝送ストリームには、伝送メディアの提示単位毎の提示時刻情報が含まれている。この提示時刻情報は、UTCをベースとするものである。この実施の形態において、通信による伝送メディアの配信システムはMPEG-DASHであり、配信サーバ120はDASHストリーミングサーバ(DASH MPDサーバも兼ねる)であるとする。
【0032】
受信機200は、放送送出システム110から送られてくる放送信号を受信すると共に、配信サーバ120から配信される伝送ストリームを受信する。受信機200は、トランスポートストリームTSに含まれているPCRに同期した時刻情報(STC)を発生する。そして、受信機200は、この時刻情報(STC)に基づいて、トランスポートストリームTSに含まれている伝送メディアの提示を制御すると共に、配信サーバ120から配信される伝送ストリームに含まれている伝送メディアの提示を制御する。
【0033】
受信機200は、配信サーバ120から配信される伝送ストリームに含まれている伝送メディアの提示を制御する際、TMCC情報に挿入されているUTCベースのNTPフォーマットの時刻情報を利用する。すなわち、受信機200は、このNTPフォーマットの時刻情報の受信時における上述の時刻情報(STC)との対応関係から、配信サーバ120から配信される伝送ストリームに含まれている提示時刻情報をUTCベースからSTCベースに変換して利用する。
【0034】
図2は、
図1に示す放送・通信ハイブリッドシステム10におけるそれぞれの系を概略的に示している。番組素材から放送系にメインの画像、音声のデータが入力される。これらの画像、音声のデータにエンコード処理が施されて得られたトランスポートストリームTSが、放送送出システム110から放送伝送路を通じて受信機200に送られる。ここで、エンコード処理時に、STC(System Time Clock)に基づいて、ビデオ、オーディオのPESパケットに提示時刻情報(PTS)が挿入される。また、トランスポートストリームTSに、STC(System Time Clock)に基づいて、PCRが挿入される。
【0035】
番組素材から通信系にサブの画像、音声のデータが入力される。これらの画像、音声のデータにエンコード処理が施されて得られた伝送ストリームが、配信サーバ120から通信伝送路を通じて受信機200に送られる。ここで、エンコード処理時に、UTC(Universal Time Coordinated)に基づいて、画像、音声の提示単位毎に提示時刻情報が挿入される。
【0036】
この実施の形態では、上述したように、放送系においてTMCC情報にUTCベースのNTPフォーマットの時刻情報が挿入され、受信機200でこの時刻情報が用いられて通信系で配信された伝送ストリームに含まれる画像、音声の提示が制御される。したがって、放送系と通信系における提示時刻情報の時間軸が異なっていても、放送と通信の融合サービスにおける提示同期が可能となる。
【0037】
図3は、放送信号の構成を示すシステム・パイプ・モデル(System Pipe Model)である。1つのRFチャネルの中で一つまたは複数のトランスポートストリームが伝送される。各々のトランスポートストリームは、“TS-id”で識別される。また、一つのトランスポートストリームに、一つまたは複数のサービスが存在する。各々のサービスは、“Service_id”で識別される。このサービスが、いわゆるチャネルに当たる。
【0038】
一つのサービスの中に、伝送メディア(コンポーネント)として、ビデオ(Video)、オーディオ(Audio)、クローズドキャプション(Closed Caption)などが含まれる。つまり、各サービスは、ビデオ、オーディオ、クローズドキャプションなどの各コンポーネントから構成される。
【0039】
また、一つのトランスポートストリームに、PSI(Program Specific Information)/SI(Service Information)といわれる制御信号が存在する。さらに、一つのトランスポートストリームに、STC(System Time Clock)ベースのPCR(Program Clock Reference)が存在する。
【0040】
また、1つのRFチャネルの中で、上述した一つまたは複数のトランスポートストリームと並列して、伝送制御信号であるTMCC情報が伝送される。この実施の形態においては、上述したように、このTMCC情報に、UTC(Universal Time Coordinated)ベースのNTP(Network Time Protocol)フォーマットの時刻情報が存在する。このTMCC情報は、物理レイヤの制御信号である。
【0041】
図4は、デジタル放送に関するTMCC情報の構成例を示している。「変更指示」のフィールドは、TMCC情報の内容に変更が生じるごとに1ずつ加算され、その値が‘11111111’となった場合は、‘00000000’に戻る。「伝送モード/スロット情報」のフィールドは、伝送主信号の変調方式、誤り訂正内符号化の符号化率、衛星出力バックオフおよび割当てスロット数を示す。
【0042】
「ストリーム種別/相対ストリーム情報」のフィールドは、相対ストリーム番号とストリームの種別の対応関係を示す。「パケット形式/相対ストリーム情報」のフィールドは、相対ストリーム番号とパケットの形式の対応関係を示す。「ポインタ/スロット情報」のフィールドは、スロットに格納される最初のパケットの先頭の位置と最後のパケットの末尾の位置を示す。
【0043】
「相対ストリーム/スロット情報」のフィールドは、スロットと相対ストリーム番号の対応関係を示す。「相対ストリーム/伝送ストリームID対応表」のフィールドは、相対ストリーム番号とトランスポートストリーム識別子との対応関係を示す。「送受信制御情報」のフィールドは、緊急警報放送における受信機の起動制御のための信号およびアップリンク制御情報を伝送する。
【0044】
TMCC情報の最後に「拡張情報」の3614ビットのフィールドが存在する。この実施の形態においては、この「拡張情報」のフィールドの先頭の80ビットが使用されて、UTCベースのNTPフォーマットの時刻情報が挿入される。
図5は、拡張情報(時刻情報)の構成例を示している。「拡張識別子」の16ビットフィールドは、例えば、「0x0001」とされ、拡張情報が時刻情報であることを示す。「拡張情報」の64ビットフィールドには、UTCベースのNTPフォーマットの時刻情報が挿入される。ここでは、NTPフォーマットは、64ビットのロングフォーマットとされる。
【0045】
ここで、NTP(Network Time Protocol)について説明する。NTPは、ITU(International Telecommunication Union)でインターネットの標準として規定されているプロトコルである。パーソナルコンピュータ、スマートフォンなどのクライアントからNTPプロトコルによりNTPサーバにアクセスすることで、時刻情報を得ることができる。NTPサーバが提供する時刻情報は、1900年1月1日からの積算秒数(UTC:Universal Time Coordinated)で表現されている。
【0046】
図6(a)は、NTPサーバが提供する時刻情報のロングフォーマット(NTP time stamp long format)を示している。この時刻情報は、64ビットフォーマットであり、上位32ビットはUTCの積算秒数を示し、下位32ビットは秒未満を示している。また、
図6(b)は、NTPサーバが提供する時刻情報のショートフォーマット(NTP time stamp short format)を示している。この時刻情報は、32ビットフォーマットであり、上位16ビットはUTCの積算秒数を示し、下位16ビットは秒未満を示している。
【0047】
図7は、時刻情報参照記述子(time_reference_descriptor)の構成例を示している。「descriptor_tag」の8ビットフィールドは、記述子タイプを示す。ここでは、時刻情報参照記述子であることを示す。「descriptor_length」の8ビットフィールドは、デスクリプタの長さ(サイズ)を示し、デスクリプタの長さとして、以降のバイト数を示す。
【0048】
「time_reference_mode」の2ビットフィールドは、時刻情報の伝送モードを示す。“0”は、PCRのみが伝送されることを示す。“1”は、PCRを伝送する他に、MPEGで規格策定中のTSタイムライン拡張方式で、NTPフォーマットの時刻情報がPESで伝送されることを示す。なお、この伝送モードは、従来からの放送システムに影響が大きく、また、伝送するための帯域が必要となる。“2”は、PCRを伝送する他に、TMCC情報でNTPフォーマットの時刻情報が伝送されることを示す。
【0049】
「time_reference_format」の2ビットフィールドは、PCRの他に伝送されるNTPフォーマットの時刻情報がロングフォーマット(
図6(a)参照)であるかショートフォーマット(
図6(b)参照)であるかを示す。“0”は、ショートフォーマットであることを示す。“1”は、ロングフォーマットであることを示す。
【0050】
「delay_adjustment」の32ビットフィールドは、システムレイヤのPCRと物理レイヤのNTPフォーマットの時刻情報との伝送遅延差ΔT1を示す。この伝送遅延差ΔT1は、1/90000秒単位とされる。PCRとNTPフォーマットの時刻情報の伝送遅延差は、送信側、受信側のいずれにおいても発生する。伝送遅延差ΔT1は、送信側における伝送遅延差である。
【0051】
後述するように、受信側において、UTCベースの提示時刻情報をSTCベースの提示時刻情報に変換する際、送信側、受信側の双方の伝送遅延差が必要となる。送信側の伝送遅延差ΔT1は、上述したように時刻情報参照記述子の「delay_adjustment」の32ビットフィールドに指定される。また、受信側の伝送遅延差ΔT2に関しては、受信側で計算時に固定値が設定される。
【0052】
図8は、PCR/NTPの伝送遅延モデルを示している。送信側では、STCベースのPCRと、UTCベースのNTPフォーマットの時刻情報があるタイミングにおいて同時に抜き出されたとき、トランスポートストリームTSに対する伝送路符号化の処理遅延Ttssと、TMCC情報に対する伝送路符号化の処理遅延Ttmccsの差だけ、PCRとNTPフォーマットの時刻情報との間に伝送遅延差ΔT1が発生する。つまり、ΔT1=(Ttss-Ttmccs)である。
【0053】
伝送路符号化されたトランスポートストリームTSと伝送路符号化されたTMCC情報とは多重化および変調の処理がされた後に、放送伝送路を通じて、受信側に送られる。この放送伝送路で、PCRとNTPフォーマットの時刻情報は共通に伝送路遅延Tbtrだけ遅延する。つまり、この放送伝送路では、PCRとNTPフォーマットの時刻情報の遅延差はゼロである。
【0054】
受信側では、トランスポートストリームTSに対する伝送路復号化の処理遅延Ttsrと、TMCC情報に対する伝送復号化の処理遅延Ttmccrの差だけ、PCRとNTPフォーマットの時刻情報との間に伝送遅延差ΔT2が発生する。つまり、ΔT2=(Ttsr-Ttmccr)である。したがって、PCRとNTPフォーマットの時刻情報との間のトータルの伝送遅延差ΔTは、ΔT=ΔT1+ΔT2となる。
【0055】
[放送送出システムの構成例]
図9は、放送送出システム110の構成例を示している。この放送送出システム110は、27MHzのクロック(システムクロック)を生成する電圧制御発振器121と、1/1716分周をする分周器122と、比較器123と、STCベースの時計部を構成する9ビットカウンタ124aおよび33ビットカウンタ124bと、パケット化部125を有している。また、放送送出システム110は、ビデオ/オーディオエンコード処理部126と、パケット化/タイムスタンプ付加部127と、エンコーダバッファ128と、マルチプレクサ129を有している。
【0056】
また、放送送出システム110は、時刻信号インタフェース131と、32ビットレジスタ132a,132bを有している。また、この放送送出システム110は、2**24Hzのクロック(システムクロック)を生成する電圧制御発振器133と、UTCベースの時計部を構成する24ビットカウンタ134aおよび32ビットカウンタ134bと、比較器135を有している。また、放送送出システム110は、伝送路符号化装置141を有している。この伝送路符号化装置141には、トランスポートストリームTSの伝送路符号化を行う主信号系処理部141aと、TMCC情報の伝送路符号化を行う制御信号系処理部141bと、時分割多重/直交変調処理部141cが含まれている。
【0057】
電圧制御発振器121で生成される27MHzのクロックは分周器122で1/1716分周され、この分周器122からは1水平期間の時間長でパルスが出力される。この分周器122の出力パルスは比較器123に供給され、リファレンス水平同期信号(Ref. Hsync)の位相と比較される。この比較器123から出力される比較誤差信号は、電圧制御発振器121に制御信号として供給される。電圧制御発振器121、分周器122および比較器123はPLL(Phase Locked Loop)回路を構成し、電圧制御発振器121では、リファレンス水平同期信号に同期した27MHzのクロックが生成される。
【0058】
この電圧制御発振器121から出力される27MHzのクロックは、9ビットカウンタ124aでカウントされ、300分周される。そして、この9ビットカウンタ124aで得られる90KHzのクロックは、33ビットカウンタ124bでカウントされる。これら9ビットカウンタ124aおよび33ビットカウンタ124bの(33+9)ビットのビット出力は、STCベースの時刻情報となる。
【0059】
このSTCベースの時刻情報は、パケット化部125に供給される。パケット化部125では、このSTCベースの時刻情報に基づいたプログラム・クロック・リファレンス(PCR:Program Clock Reference)を含むアダプテーションフィールドを持つTSパケットが生成される。このTSパケットは、所定の間隔で生成され、順次マルチプレクサ129に供給される。なお、PCRは、TSストリーム中に100ms間隔で出現することが推奨されている。
【0060】
ビデオ/オーディオエンコード処理部126では、電圧制御発振器121で得られる27MHzのクロックに同期して、ビデオ、オーディオが符号化される。パケット化/タイムスタンプ付加部127では、符号化後のビデオ、オーディオのエレメンタリストリームからアクセスユニット毎にPESパケットが生成され、さらにペイロードに符号化ビデオ、符号化オーディオを含むTSパケットが生成される。このTSパケットは、エンコーダバッファ128を通じてマルチプレクサ129に供給される。
【0061】
また、このパケット化/タイムスタンプ付加部127には、33ビットカウンタ124bから出力される33ビットのビット出力が供給される。この33ビットのビット出力は、90kHzの精度の時刻情報である。パケット化/タイムスタンプ付加部127では、この33ビットのビット出力に基づいて、プレゼンテーション・タイム・スタンプ(PTS:Presentation Time Stamp)が各PESパケットのヘッダに挿入される。
【0062】
マルチプレクサ129には、上述したように、PCRを含むTSパケットと、符号化ビデオ、符号化オーディオを含むTSパケットが供給される。マルチプレクサ129では、各TSパケットが多重化されて、トランスポートストリームTSが生成される。このトランスポートストリームTSには、PSI/SIの制御信号も含まれる。マルチプレクサ129では、NIT(Network Information Table)の配下に、上述した時刻情報参照記述子(time_reference_descriptor)(
図7参照)が挿入される。
【0063】
また、時刻信号インタフェース131により、例えば、インターネット経由で図示しないNTPサーバに所定の時間間隔でアクセスされ、64ビットフォーマットの時刻情報(
図6(a)参照)が取得される。32ビットレジスタ132a,132bでは、時刻信号インタフェース131で取得される64ビットフォーマットの時刻情報が保持される。32ビットレジスタ132aには上位32ビットのビットデータが保持され、32ビットレジスタ132bには下位32ビットのビットデータが保持される。32ビットレジスタ132a,132bの保持内容は、時刻信号インタフェース131で64ビットフォーマットの時刻情報を取得する毎に更新される。
【0064】
時刻情報を取得する頻度が十分高い場合にはこのままの構成でよいが、低い場合にはレジスタ132a,132bはNTPサーバの時計を再現するように自動的に時刻を示すカウンタとして継続動作することも考えられる。ここで、取得した時刻情報の下位32ビットを示すレジスタ132bの出力がオール0となった時点で、時刻情報の上位32ビットを示すレジスタ132aの出力は32ビットカウンタ134bの初期値として設定され、かつ24ビットカウンタ134aは0に設定される。この設定動作は放送送出システム110が動作を開始する1回のみに限定される。
【0065】
電圧制御発振器133では、2**24Hzのクロックが発生される。24ビットカウンタ134aでは、電圧制御発振器133から出力される2**24Hzのクロックがカウントされる。32ビットカウンタ134bでは、24ビットカウンタ134aの桁上げ出力である1Hzのクロックがカウントされて、秒精度の時刻情報(Regenerated UTC)である32ビットのビット出力が得られる。24ビットカウンタ134aおよび32ビットカウンタ134bの56ビットのビット出力は、初期値からの上記カウンタ動作により、UTCベースの時刻情報となる。
【0066】
マルチプレクサ129で生成されるトランスポートストリームTSは、伝送路符号化装置141の主信号系処理部141aに供給される。この主信号系処理部141bでは、トランスポートストリームTSに対して、外符号符号化、電力拡散、内符号符号化、マッピング等の伝送路符号化処理が施される。
【0067】
また、24ビットカウンタ134aおよび32ビットカウンタ134bの56ビットのビット出力は、UTCベースのNTPフォーマットの時刻情報として、伝送路符号化装置141の制御信号系処理部141bに供給される。また、この制御信号系処理部141bには、トランスポートストリームTSを伝送する際の伝送パラメータTMCCが供給される。
【0068】
この制御信号系処理部141bでは、伝送パラメータTMCCをもとにTMCC情報が生成される。この際、TMCC情報の拡張情報のフィールドに、NTPロングフォーマットの時刻情報が挿入される(
図5参照)。なお、上述したように24ビットカウンタ134aおよび32ビットカウンタ134bのビット出力は56ビットであるので、下位8ビットはオール「0」とされる。また、この主信号系処理部141bでは、生成されたTMCC情報に対して、外符号符号化、電力拡散、内符号符号化、マッピング等の伝送路符号化処理が施される。
【0069】
また、伝送路符号化装置141の時分割多重/直交変調処理部141cでは、主信号系処理部141aおよび制御信号系処理部141bの出力に対して、時分割多重と直交変調の処理が施され、中間周波の変調波が得られる。
【0070】
[受信機の構成例]
図10は、受信機200の構成例を示している。この受信機200は、放送伝送路復号部210と、デマルチプレクサ211と、27MHzのクロック(システムクロック)を生成する電圧制御発振器212と、STCベースの時計部(時刻情報発生部)を構成する9ビットカウンタ213aおよび33ビットカウント213bと、比較器214を有している。
【0071】
また、受信機200は、デコーダバッファ215と、放送提示制御部216と、放送AVデコーダ217を有している。また、受信機200は、UTC/STCマッピング情報生成部220と、通信インタフェース231と、MPD解析部232と、デコーダバッファ233と、通信提示制御部234と、通信AVデコーダ235と、合成部241を有している。
【0072】
放送伝送路復号部210では、受信された放送信号(変調波)に対して伝送路復号化等の処理などが施され、トランスポートストリームTSが得られる。また、放送伝送路復号部210では、トランスポートストリームTSのNIT(Network Information Table)に配置されている時刻情報参照記述子(time_reference_descriptor)に基づき、TMCC情報に挿入されているNTPフォーマットの時刻情報が抽出される。
【0073】
放送伝送路復号部210で得られたトランスポートストリームTSは、デマルチプレクサ211に供給される。このデマルチプレクサ211では、PCRを含むTSパケットからPCRが抽出される。選局時や電源投入時において、最初に受信された42ビットのPCRはカウンタ213aおよびカウンタ213bからなる42ビットの時計部(時刻情報発生部)に初期値としてセットされる、その後に受信されたPCRは、比較器214に供給される。
【0074】
また、電圧制御発振器42で生成される27MHzのクロックは9ビットカウンタ213aでカウントされ、300分周される。そして、この9ビットカウンタ213aで得られる90KHzのクロックは、33ビットカウンタ213bでカウントされる。これら9ビットカウンタ213aおよび33ビットカウンタ213bの42ビットのビット出力は、STCベースの時刻情報となる。
【0075】
このSTCベースの時刻情報は、比較器214に供給される。比較器214では、例えば、デマルチプレクサ211からPCRが供給されるタイミングで、STCベースの時刻情報がラッチされ、PCRと比較される。この比較器214から出力される比較誤差信号は、電圧制御発振器212に制御信号として供給される。電圧制御発振器212、カウンタ213a,213bおよび比較器214はPLL(Phase Locked Loop)回路を構成し、電圧制御発振器212ではPCRに同期した27MHzのクロックが生成され、またカウンタ213a,213bではPCRに同期したSTCベースの時刻情報が生成される。
【0076】
また、デマルチプレクサ211では、符号化ビデオ、符号化オーディオを含むTSパケットが抽出され、デコーダバッファ215に一時的に蓄積される。また、カウンタ213bの33ビットのビット出力(90KHzのカウント値)がSTCベースの時刻情報として放送提示制御部216に供給される。
【0077】
放送提示制御部216では、デコーダバッファ215に蓄積されている各PESパケットのPTSが確認される。そして、この放送提示制御部216では、STCベースの時刻情報が参照され、デコード処理すべきPESパケットをデコーダバッファ215から放送AVデコーダ217が順次取り込むことが行われる。放送AVデコーダ217では、PESパケットのデパケット化が行われ、さらに符号化ビデオ、符号化オーディオの復号化が行われ、ベースバンドのビデオ(ビデオデータ)、オーディオ(オーディオデータ)が得られる。
【0078】
また、放送伝送路復号部210で抽出されるUTCベースのNTPフォーマットの時刻情報は、UTC/STCマッピング情報生成部220に供給される。このUTC/STCマッピング情報生成部220には、カウンタ213bの33ビットのビット出力(90KHzのカウント値)がSTCベースの時刻情報として供給される。このUTC/STCマッピング情報生成部220では、NTPフォーマットの時刻情報と、その抽出タイミングにおけるSTCベースの時刻情報のペア情報(U,S)が、マッピング情報として生成される。
【0079】
UTCベースのNTPフォーマットの時刻情報は送信側から適当な周期で送られてくるが、受信される毎に、上述のペア情報が継続して生成される。UTC/STCマッピング情報生成部220には、常に最新のペア情報と、その一つ前のペア情報が保持された状態におかれる。
【0080】
また、通信インタフェース231で、配信サーバ120(
図1参照)と通信が行われ、MPDファイルが受信されると共に、ビデオ、オーディオなどの伝送メディア(コンポーネント)を含む伝送ストリームが受信される。MPDファイルはMPD解析部232に供給され、このMPD解析部232で得られるMPD解析情報は通信提示制御部234に供される。また、通信インタフェース231で受信される伝送ストリームは、通信提示制御部234に供給されると共に、デコーダバッファ233に供給される。
【0081】
MPEG-DASHでは、MPDファイルに伝送メディアの提示単位毎のタイミング情報が開示されていると共に、伝送メディア本体にも提示単位毎のタイミング情報が存在する。通信提示制御部234は、これらのタイミング情報に基づいて、伝送メディアの提示単位毎の提示時刻情報を取得する。この提示時刻情報は、UTCベースである。
【0082】
通信提示制御部234は、カウンタ213bの33ビットのビット出力(90KHzのカウント値)であるSTCベースの時刻情報と、UTC/STCマッピング情報生成部220で生成された最新の2つのペア情報(U,S)に基づいて、UTCベースの提示時刻情報をSTCベースの提示時刻情報に変換(タイムライン換算)する。
【0083】
UTCベースからSTCベースへの変換についてさらに説明する。
図11(a)は、送信側におけるSTCおよびUTCのタイムライン(時間軸)を並べて示している。UTCのタイムライン上のUn-1,UnはTMCC情報に挿入されて送信されるUTCベースの時刻を示す。また、STCのタイムライン上のSn-1,Snは、それぞれ、UTCベースの時刻Un-1,Unに対応した、STCベースの時刻を示している。送信側におけるSTCおよびUTCのタイムラインの関係では、UTCベースの提示時刻UtarはSTCベースの時刻Starに対応する。
【0084】
図11(b)は、受信側におけるSTCおよびUTCのタイムライン(時間軸)を並べて示している。STCのタイムラインは、UTCのタイムラインに比べて、ΔTだけ遅延したものとなる。このΔTは、PCRとNTPフォーマットの時刻情報との間のトータルの伝送遅延差である。上述したように、この伝送遅延差ΔTは、送信側における伝送遅延差ΔT1と受信側における伝送遅延差ΔT2とが加算されたものである。
【0085】
UTC/STCマッピング情報生成部220では、UTCベースの時刻Un-1に対してSTCベースの時刻S´n-1がペアとされる。この時刻S´n-1は、時刻Sn-1よりΔTだけ前の時刻である。また、UTC/STCマッピング情報生成部220では、UTCベースの時刻Unに対してSTCベースの時刻S´nがペアとされる。この時刻S´nは、時刻SnよりΔTだけ前の時刻である。受信側におけるSTCおよびUTCのタイムラインの関係では、UTCベースの提示時刻UtarはSTCベースの時刻S´tarに対応する。この時刻S´tarは、時刻StarよりΔTだけ前の時刻である。
【0086】
通信提示制御部234では、以下の数式(1)によって、UTCベースの提示時刻UtarがSTCベースの時刻Starに変換(ターゲットタイム換算)される。
(Star-Sn)/(Sn-Sn-1)=(Utar-Un)/(Un-Un-1)
Star=((Utar-Un)(Sn-Sn-1)/(Un-Un-1))+Sn
=((Utar-Un)(S´n-S´n-1)/(Un-Un-1))+S´n+ΔT1+ΔT2
・・・(1)
【0087】
図10に戻って、通信提示制御部234では、デコーダバッファ233に蓄積されている各提示単位の、上述したようにSTCベースに変換された提示時刻が確認される。そして、通信提示制御部234では、カウンタ213bからのSTCベースの時刻情報が参照され、デコード処理すべきビデオ、オーディオの各提示単位を、デコーダバッファ233から通信AVデコーダ235が順次取り込むことが行われる。通信AVデコーダ235では、各提示単位の符号化ビデオ、符号化オーディオの復号化が行われ、ベースバンドのビデオ(ビデオデータ)、オーディオ(オーディオデータ)が得られる。
【0088】
合成部241では、放送AVデコーダ217で得られるビデオデータ、オーディオデータのAV出力に、通信AVデコーダ235で得られるビデオデータ、オーディオデータのAV出力が合成され、最終的なAV出力とされる。そして、受信機200では、このビデオデータによる映像表示が行われ、オーディオデータによる音声出力が行われる。
【0089】
上述したように、
図1に示す放送・通信ハイブリッドシステム10において、放送送出システム110では、トランスポートストリームTSにSTCベースのPCRが挿入される他に、TMCC情報にUTCベースのNTPフォーマットの時刻情報が挿入されるものである。そのため、受信側では、放送と通信の融合サービスにおける提示同期制御を良好に実現できる。
【0090】
また、
図1に示す放送・通信ハイブリッドシステム10において、放送送出システム110では、UTCベースのNTPフォーマットの時刻情報が、TMCC情報の拡張情報フィールドに挿入されるものである。そのため、UTCベースのNTPフォーマットの時刻情報を伝送するための新たな帯域を必要としない。
【0091】
また、
図1に示す放送・通信ハイブリッドシステム10において、放送送出システム110では、トランスポートストリームTSに、TMCC情報にUTCベースのNTPフォーマットの時刻情報が挿入されていることを示す識別情報が挿入されるものである。つまり、NITに、時刻情報参照記述子が挿入されるものである。そのため、受信側では、TMCC情報にUTCベースのNTPフォーマットの時刻情報が挿入されていることを容易に識別可能となる。
【0092】
また、
図1に示す放送・通信ハイブリッドシステム10において、放送送出システム110でトランスポートストリームTSに挿入される時刻情報参照記述子には、送信側におけるシステムレイヤのPCRと物理レイヤのNTPフォーマットの時刻情報との伝送遅延差ΔT1が記述される。そのため、受信側では、TMCC情報にUTCベースのNTPフォーマットの時刻情報が挿入されて送られてきても、この伝送遅延差ΔT1を用いて、UTCベースの提示時刻情報をSTCベースの提示時刻情報に良好に変換可能となる。
【0093】
<2.変形例>
なお、上述実施の形態では、伝送ストリームはトランスポートストリームTS(MPEG2-TS)であり、第1の時間軸による時刻情報がSTCベースのPCRであり、第2の時間軸による時刻情報がUTCベースのNTPフォーマットの時刻情報である例を示した。詳細説明は省略するが、本技術は、同様の伝送ストリームを取り扱うその他の場合にも同様に適用できることは勿論である。
【0094】
また、本技術は、以下のような構成を取ることもできる。
(1)伝送メディアと該伝送メディアの提示単位毎の第1の時間軸による提示時刻情報を含む伝送ストリームおよび該伝送ストリームに対応した伝送制御信号のそれぞれに対して個別に伝送路符号化処理を行った後に時分割多重と変調の処理を行って変調波を得、該変調波を送信する送信部を備え、
上記伝送ストリームには、上記第1の時間軸による時刻情報が挿入されており、
上記伝送制御信号に、上記第1の時間軸とは異なる第2の時間軸による時刻情報を挿入する時刻情報挿入部をさらに備える
送信装置。
(2)上記伝送ストリームはMPEG2-TSであり、
上記第1の時間軸による時刻情報はSTCベースのPCRであり、
上記第2の時間軸による時刻情報はUTCベースのNTPフォーマットの時刻情報である
前記(1)に記載の送信装置。
(3)上記伝送制御信号はTMCC情報であり、
上記時刻情報挿入部は、上記TMCC情報に、拡張情報として、上記第2の時間軸による時刻情報を挿入する
前記(1)または(2)に記載の送信装置。
(4)上記伝送ストリームに、上記伝送制御信号に上記第2の時間軸による時刻情報が挿入されていることを示す識別情報を挿入する識別情報挿入部をさらに備える
前記(1)から(3)のいずれかに記載の送信装置。
(5)上記第2の時間軸による時刻情報がUTCベースのNTPフォーマットの時刻情報であるとき、上記識別情報には、上記NTPフォーマットがロングフォーマットであるかショートフォーマットであるかを示す情報が付加される
前記(4)に記載の送信装置。
(6)上記識別情報には、上記第1の時間軸による時刻情報と上記第2の時間軸による時刻情報との伝送遅延差情報が付加される
前記(4)または(5)に記載の送信装置。
(7)上記伝送ストリームはMPEG2-TSであり、
上記識別情報挿入部は、上記識別情報が記述された記述子をネットワーク・インフォメーション・テーブルに挿入する
前記(4)から(6)のいずれかに記載の送信装置。
(8)送信部により、伝送メディアと該伝送メディアの提示単位毎の第1の時間軸による提示時刻情報を含む伝送ストリームおよび該伝送ストリームに対応した伝送制御信号のそれぞれに対して個別に伝送路符号化処理を行った後に時分割多重と変調の処理を行って変調波を得、該変調波を送信する送信ステップを有し、
上記伝送ストリームには、上記第1の時間軸による時刻情報が挿入されており、
上記伝送制御信号に、上記第1の時間軸とは異なる第2の時間軸による時刻情報を挿入する時刻情報挿入ステップをさらに有する
送信方法。
(9)伝送メディアと該伝送メディアの提示単位毎の第1の時間軸による提示時刻情報を含む第1の伝送ストリームおよび該第1の伝送ストリームに対応した伝送制御信号のそれぞれに対して個別に伝送路符号化処理を行った後に時分割多重と変調の処理を行って得られた変調波を受信する第1の受信部を備え、
上記第1の伝送ストリームには上記第1の時間軸による時刻情報が挿入されており、
上記伝送制御信号には上記第1の時間軸とは異なる第2の時間軸による時刻情報が挿入されており、
上記変調波から上記第1の伝送ストリームおよび上記第2の時間軸による時刻情報を取得する取得部と、
伝送メディアと該伝送メディアの提示単位毎の上記第2の時間軸による提示時刻情報を含む第2の伝送ストリームを受信する第2の受信部と、
上記取得部で取得された上記第1の伝送ストリームに含まれる上記第1の時間軸による時刻情報に同期した時刻情報を発生する時刻情報発生部と、
上記取得部で取得された上記第1の伝送ストリームに含まれる伝送メディアの提示を、上記第1の伝送ストリームに含まれる提示時刻情報と、上記時刻情報発生部で発生される時刻情報に基づいて制御する第1の制御部と、
上記第2の受信部で受信された上記第2の伝送ストリームに含まれる伝送メディアの提示を、上記第2の伝送ストリームに含まれる提示時刻情報と、上記取得部で取得された上記第2の時間軸による時刻情報と、上記時刻情報発生部で発生される時刻情報に基づいて制御する第2の制御部をさらに備える
受信装置。
(10)上記第2の制御部は、
上記取得部で取得された上記第2の時間軸による時刻情報と該時刻情報の受信時における上記時刻情報発生部で発生される時刻情報との対応関係と、上記第1の時間軸による時刻情報と上記第2の時間軸による時刻情報との伝送遅延差情報を用いて、上記第2の伝送ストリームに含まれる提示時刻情報を上記第1の時間軸による提示時刻情報に変換し、該変換された提示時刻情報と、上記時刻情報発生部で発生される時刻情報に基づいて、上記第2の伝送ストリームに含まれる伝送メディアの提示を制御する
前記(9)に記載の受信装置。
(11)上記伝送遅延差情報は、送信側の伝送遅延差情報と受信側の伝送遅延差情報とからなり、
上記第1の伝送ストリームには、上記送信側の伝送遅延差情報が含まれている
前記(10)に記載の受信装置。
(12)上記第2の制御部は、
上記対応関係として、最新の2つの対応関係を用いる
前記(10)または(11)に記載の受信装置。
(13)上記第1の時間軸はSTCベースの時間軸であり、上記第2の時間軸はUTCベースの時間軸である
前記(9)から(12)のいずれかに記載の受信装置。
(14)上記第1の伝送ストリームはMPEG2-TSであり、
上記伝送制御信号はTMCC情報であり、
上記TMCC情報に、拡張情報として、上記第2の時間軸による時刻情報が挿入されている
前記(9)から(13)のいずれかに記載の受信装置。
(15)第1の受信部により、伝送メディアと該伝送メディアの提示単位毎の第1の時間軸による提示時刻情報を含む第1の伝送ストリームおよび該第1の伝送ストリームに対応した伝送制御信号のそれぞれに対して個別に伝送路符号化処理を行った後に時分割多重と変調の処理を行って得られた変調波を受信する第1の受信ステップを有し、
上記第1の伝送ストリームには上記第1の時間軸による時刻情報が挿入されており、
上記伝送制御信号には上記第1の時間軸とは異なる第2の時間軸による時刻情報が挿入されており、
上記変調波から上記第1の伝送ストリームおよび上記第2の時間軸による時刻情報を取得する取得ステップと、
第2の受信部により、伝送メディアと該伝送メディアの提示単位毎の上記第2の時間軸による提示時刻情報を含む第2の伝送ストリームを受信する第2の受信ステップと、
上記取得ステップで取得された上記第1の伝送ストリームに含まれる上記第1の時間軸による時刻情報に同期した時刻情報を発生する時刻情報発生ステップと、
上記取得ステップで取得された上記第1の伝送ストリームに含まれる伝送メディアの提示を、上記第1の伝送ストリームに含まれる提示時刻情報と、上記時刻情報発生ステップで発生される時刻情報に基づいて制御する第1の制御ステップと、
上記第2の受信ステップで受信された上記第2の伝送ストリームに含まれる伝送メディアの提示を、上記第2の伝送ストリームに含まれる提示時刻情報と、上記取得ステップで取得された上記第2の時間軸による時刻情報と、上記時刻情報発生ステップで発生される時刻情報に基づいて制御する第2の制御ステップをさらに有する
受信方法。
【0095】
本技術の主な特徴は、トランスポートストリームTSにSTCベースのPCRを挿入する他に、TMCC情報にUTCベースのNTPフォーマットの時刻情報を挿入することで、受信側で放送と通信の融合サービスにおける提示同期制御を良好に実現可能としたことである(
図9参照)。
【符号の説明】
【0096】
10・・・放送・通信ハイブリッドシステム
110・・・放送送出システム
120・・・配信サーバ
121・・・電圧制御発振器(27MHz)
122・・・分周器(1/1716)
123・・・比較器
124a・・・9ビットカウンタ
124b・・・33ビットカウンタ
125・・・パケット化部
126・・・ビデオ/オーディオエンコード処理部
127・・・パケット化/タイムスタンプ付加部
128・・・エンコーダバッファ
129・・・マルチプレクサ
131・・・時刻信号インタフェース
132a,132b・・・32ビットカウンタ
133・・・電圧制御発振器(2**24Hz)
134a・・・24ビットカウンタ
134b・・・32ビットカウンタ
135・・・比較器
141・・・伝送路符号化装置
141a・・・主信号系処理部
141b・・・制御信号系処理部
141c・・・時分割多重/直交変調処理部
200・・・受信機
201・・・放送伝送路復号部
211・・・デマルチプレクサ
212・・・電圧制御発振器(27MHz)
213a・・・9ビットカウンタ
213b・・・33ビットカウンタ
214・・・比較器
215・・・デコーダバッファ
216・・・放送提示制御部
217・・・放送AVデコーダ
220・・・UTC/STCマッピング情報生成部
231・・・通信インタフェース
232・・・MPD解析部
233・・・デコーダバッファ
234・・・通信提示制御部
235・・・通信AVデコーダ
241・・・合成部
300・・・通信ネットワーク