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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20241217BHJP
   H01F 27/25 20060101ALI20241217BHJP
   H01F 17/06 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/04 A
H01F27/25
H01F17/06 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023502196
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2022003066
(87)【国際公開番号】W WO2022181180
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2021030982
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 敢
(72)【発明者】
【氏名】辻 博美
(72)【発明者】
【氏名】小田原 充
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-076509(JP,A)
【文献】特開平06-077055(JP,A)
【文献】特表2018-534773(JP,A)
【文献】特開平06-061084(JP,A)
【文献】特開2016-122836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23-27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材からなる平板状の複数の磁性薄帯を含み、複数の前記磁性薄帯が、前記磁性薄帯の主面に対して直交する方向に積層された素体と、
前記素体の内部で、前記主面に沿って直線状に延びているインダクタ配線と、を備え、
前記インダクタ配線の延びる軸を中心軸とし、前記中心軸に直交する断面視で前記主面に沿う軸を第1軸とし、前記断面視で前記主面に直交する軸を第2軸としたとき、
前記素体は、前記第2軸に沿って隣り合う前記磁性薄帯の間に位置する非磁性材からなる複数の非磁性層を有し、
複数の前記磁性薄帯の前記第2軸に沿う方向の寸法の平均値を磁性薄帯厚さとし、複数の前記非磁性層の前記第2軸に沿う方向の寸法の平均値を非磁性層厚さとしたとき、前記磁性薄帯厚さに対する前記非磁性層厚さの百分率は、3%より大きく、
前記第2軸に沿って順に積層された第1部分、第2部分、及び第3部分を有しており、
前記第1部分及び前記第3部分は、複数の前記磁性薄帯を含む部分であり、
前記第2部分は、複数の前記磁性薄帯及び前記インダクタ配線を含む部分であり、
「M」及び「N」を正の整数とし、且つ「M」及び「N」を「2」以上としたとき、
前記第1部分及び前記第3部分において、前記磁性薄帯は、前記第2軸に沿う同一の位置において、前記中心軸に沿う方向に「M」個並んでおり、前記第1軸に沿う方向に「N」個並んでおり、
前記第2軸に沿う方向から視たときに、前記第1部分及び前記第3部分において、前記第2軸に沿う同一の位置で前記中心軸に沿う方向に隣り合う前記磁性薄帯の境界の一部又は全部は、前記インダクタ配線と重複しており、且つ、前記第2軸に沿う同一の位置で前記第1軸に沿う方向に隣り合う前記磁性薄帯の境界の一部又は全部は、前記インダクタ配線と重複している
インダクタ部品。
【請求項2】
前記磁性薄帯厚さに対する前記非磁性層厚さの百分率は、15%より大きい
請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記非磁性層厚さは、0.6μmより大きい
請求項1又は請求項2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記非磁性層厚さは、3μmより大きい
請求項3に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記各磁性薄帯の前記第2軸に沿う方向の寸法は、前記磁性薄帯厚さに対して、80%以上120%以下の寸法である
請求項1~4のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記各非磁性層の前記第2軸に沿う方向の寸法は、前記非磁性層厚さに対して、80%以上120%以下の寸法である
請求項1~5のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記第1軸に沿う2つの方向のうちのいずれか一方を第1正方向としたとき、
前記断面視において、
前記インダクタ配線の前記第1正方向の端を第1配線端とし、
前記インダクタ配線に対して前記第2軸に沿う方向に積層された前記磁性薄帯のうち、前記第1配線端からの前記第2軸に沿う方向の距離が最も短い前記磁性薄帯を第1磁性薄帯とし、
前記第1磁性薄帯における前記第1軸に沿う方向の両端を除く範囲を第1範囲としたとき、
前記第1配線端を通り前記第2軸に沿う方向に延びる仮想直線を引いたときに、前記仮想直線は、前記第1磁性薄帯の前記第1範囲内を通る
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインダクタ部品は、素体と、素体の内部で延びているインダクタ配線と、を備えている。素体は、無機フィラー及び樹脂からなっている。例えば、磁性コンポジット体については、無機フィラーの材質は、磁性材である。また、無機フィラーの平均粒径は、5μm以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-192920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のインダクタ部品は、素体における無機フィラーの充填率を高めることによって、インダクタ部品の各種特性の向上が図られる。しかしながら、特許文献1に記載のインダクタ部品は、素体中において無機フィラーの粒子がランダムに分散した構造を前提としており、素体における磁性材の他の構造については何ら検討されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、磁性材からなる平板状の複数の磁性薄帯を含み、複数の前記磁性薄帯が、前記磁性薄帯の主面に対して直交する方向に積層された素体と、前記素体の内部で、前記主面に沿って延びているインダクタ配線と、を備え、前記インダクタ配線の延びる軸を中心軸とし、前記中心軸に直交する断面視で前記主面に沿う軸を第1軸とし、前記断面視で前記主面に直交する軸を第2軸としたとき、前記素体は、前記第2軸に沿って隣り合う前記磁性薄帯の間に位置する非磁性材からなる複数の非磁性層を有し、複数の前記磁性薄帯の前記第2軸に沿う方向の寸法の平均値を磁性薄帯厚さとし、複数の前記非磁性層の前記第2軸に沿う方向の寸法の平均値を非磁性層厚さとしたとき、前記磁性薄帯厚さに対する前記非磁性層厚さの百分率は、3%より大きいインダクタ部品である。
【0006】
インダクタ配線に電流を流すと、磁界が発生する。磁界が発生している場合、素体を構成する磁性薄帯内を磁束が通過するため、当該磁性薄帯では渦電流が発生する。渦電流が大きいほど、渦電流の発生に起因する損失であるインダクタ部品の渦電流損失が大きくなる。
【0007】
上記のインダクタ部品によれば、素体は、第2軸に沿って積層された複数の磁性薄帯と、非磁性材からなり隣り合う磁性薄帯の間に位置する複数の非磁性層と、を有している。すなわち、上記のインダクタ部品は、第2軸に沿って積層されるという磁性薄帯の規則的な構造を有する。
【0008】
ここで、上記のインダクタ部品において、非磁性層厚さが、発生する渦電流損失に影響する。そして、磁性薄帯厚さに対する非磁性層厚さの百分率が、3%より大きいと、渦電流損失の発生を抑制できる。
【0009】
なお、「沿う」とは、直接接触しておらず、離れた位置にある場合も含む。例えば、「第1軸に沿う」とは、第1軸に直接接触して第1軸に沿うものだけでなく、第1軸に直接接触しておらず離れた位置で第1軸に沿うものも含む。また、「沿う」とは、実質的に平行関係にあればよく、製造誤差等によって、僅かに傾いているものも含む。
【発明の効果】
【0010】
磁性薄帯が複数積層されているインダクタ部品において、渦電流損失の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インダクタ部品の分解斜視図。
図2】インダクタ部品の第1部分の平面図。
図3図2における3-3線に沿うインダクタ部品の断面図。
図4図3の一部拡大図。
図5】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図6】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図7】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図8】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図9】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図10】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図11】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図12】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図13】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図14】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図15】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図16】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図17】シミュレーションの結果を示すグラフ。
図18】変更例のインダクタ部品の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<インダクタ部品の一実施形態>
以下、インダクタ部品の一実施形態について説明する。なお、図面は理解を容易にするため構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図中のものと異なる場合がある。また、断面図ではハッチングを付しているが、理解を容易にするために一部の構成要素のハッチングを省略している場合がある。さらに、複数の部材のうち、一部の部材のみに符号を付している場合がある。
【0013】
(全体構成)
図1に示すように、インダクタ部品10は、素体20と、インダクタ配線30と、を備えている。素体20は、複数の磁性薄帯40と、複数の非磁性層50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70を有している。
【0014】
磁性薄帯40は、平板状である。複数の磁性薄帯40は、磁性薄帯40の主面MFと直交する方向に積層されている。なお、平板状とは、主面MFを有する薄い形状のことであるが、厚みの薄い直方体に限られず、稜線や角が曲面状であってもよく、主面MFに微小な凹凸があったり、内部に空孔があったりしてもよい。
【0015】
インダクタ配線30は、素体20の内部で主面MFに沿って直線状に延びている。なお、インダクタ配線30の延びる軸を中心軸CAとする。本実施形態では、中心軸CAの延びる向きは、四角形状の主面MFのいずれかの辺の延びる向きと一致する。
【0016】
図3に示すように、中心軸CAに直交する断面視で、主面MFに沿う軸を第1軸Xとし、主面MFに直交する軸を第2軸Zとする。なお、第1軸Xに沿う方向の一方を第1正方向X1とし、第1軸Xに沿う方向の他方を第1負方向X2とする。また、中心軸CAに沿う方向の一方を正方向Y1とし、中心軸CAに沿う方向の他方を負方向Y2とする。さらに、第2軸Zに沿う方向の一方を第2正方向Z1とし、第2軸Zに沿う方向の他方を第2負方向Z2とする。
【0017】
図1に示すように、インダクタ部品10は、第2軸Zに沿って順に積層された、第1部分P1と、第2部分P2と、第3部分P3と、で構成されている。3つの部分P1~P3のうち、第2軸Zに沿う第2負方向Z2の端には、第1部分P1が位置している。
【0018】
図2に示すように、第1部分P1は、第2軸Zに沿う方向から視たときに正方形状である。第1部分P1は、複数の磁性薄帯40と、複数の非磁性層50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70とを有する。
【0019】
図3に示すように、中心軸CAに直交する断面視で、第1部分P1の各磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う方向に積層されている。図2に示すように、第1部分P1の各磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う方向から視たときに正方形状である。第2軸Zに沿う方向から視たときに各磁性薄帯40の各辺は、第1軸X又は中心軸CAと平行である。
【0020】
磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う同一の位置において、第2軸Zに直交する第3軸に沿う方向に、間隔をあけて2個並んでいる。また、磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う同一の位置において、第2軸Z及び第3軸に直交する第4軸に沿う方向に、間隔をあけて2個並んでいる。なお、第3軸は中心軸CAと一致しており、且つ第4軸は第1軸Xと一致している。そのため、本実施形態では、磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う方向のみならず、第1軸X及び中心軸CAに沿う方向にも配列している。
【0021】
磁性薄帯40は、磁性材からなっている。磁性材は、例えば、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Al、Si、B、P等を含む金属磁性材である。本実施形態では、磁性材は、Fe及びSiを含んでいる金属磁性材である。
【0022】
図3に示すように、非磁性層50は、第2軸Zに沿う方向に隣り合っている磁性薄帯40の間に位置している。非磁性層50は、第2軸Zに沿う方向に隣り合っている磁性薄帯40の空間を全て埋めている。非磁性層50は、非磁性材からなっている。非磁性材は、例えば、アクリル樹脂や、エポキシ樹脂、シリコン樹脂である。なお、図3では、非磁性層50を線で図示している。
【0023】
図2に示すように、非磁性部60は、第2軸Zに沿う同一の位置において並ぶ磁性薄帯40の間に位置している。非磁性部60は、第2軸Zに沿う方向の同一の位置において並ぶ磁性薄帯40の間の空間を全て埋めている。上述したとおり、第2軸Zに沿う同一の位置において、磁性薄帯40は、中心軸CAに沿う方向に2つ、第1軸Xに沿う方向に2つ、合計4つ存在するので、非磁性部60は4つ存在している。非磁性部60は、非磁性材からなっている。本実施形態では、非磁性部60の材質は、非磁性層50と同一の材質である。
【0024】
非磁性膜70は、第1部分P1において、第1軸Xに沿う第1正方向X1の端、及び第1正方向X1とは反対方向である第1負方向X2の端に位置している。非磁性膜70は、磁性薄帯40における第1軸Xに沿う方向の両端面の全域を覆っている。また、非磁性膜70は、非磁性層50における第1軸Xに沿う方向の両端面の全域を覆っている。さらに、非磁性膜70は、非磁性部60における第1軸Xに沿う方向の両端面の全域を覆っている。そのため、第1部分P1における第1軸Xに沿う第1正方向X1の端面は、すべて非磁性膜70で構成されている。同様に、第1部分P1における第1軸Xに沿う第1負方向X2の端面は、すべて非磁性膜70で構成されている。非磁性膜70は、非磁性材からなっている。本実施形態では、非磁性膜70の材質は、非磁性層50と同一の材質である。
【0025】
図1に示すように、第1部分P1から視て、第2軸Zに沿う第2負方向Z2とは反対方向である第2正方向Z1には、第2部分P2が位置している。第2部分P2は、第2軸Zに沿う方向から視たときに、第1部分P1と同じ正方形状である。
【0026】
第2部分P2は、インダクタ配線30と、複数の磁性薄帯40と、複数の非磁性層50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70と、で構成されている。
インダクタ配線30は、第2軸Zに沿う方向から視て長方形状であり、中心軸CAに沿って直線状に延びている。インダクタ配線30の中心軸CAに沿う正方向Y1の端面は、第2部分P2の外面の一部を構成しており、素体20から露出している。同様に、インダクタ配線30の中心軸CAに沿う正方向Y1とは反対方向である負方向Y2の端面は、第2部分P2の外面の一部を構成しており、素体20から露出している。
【0027】
第2軸Zから視たときに、インダクタ配線30の正方向Y1の端面及び負方向Y2の端面は、第1軸Xと平行になっている。また、インダクタ配線30の中心軸CAは、第1軸Xに沿う方向において、第2部分P2の中心に位置している。そのため、インダクタ配線30の延びる軸である中心軸CAは、第1軸Xに沿う方向における第2部分P2の中心を通っている。インダクタ配線30の第1軸Xに沿う方向の寸法は、第2部分P2の第1軸Xに沿う方向の寸法の半分である。
【0028】
インダクタ配線30の材質は、導電性材料である。導電性材料は、例えば、Cu、Ag、Au、Al、又はこれらの合金である。本実施形態では、インダクタ配線30の材質は、Cuである。
【0029】
図3に示すように、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30は、長方形状である。ここで、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30に外接するとともに、第1軸Xに沿う第1辺及び第2軸Zに沿う第2辺を有する面積が最小の仮想長方形VRを描く。本実施形態では、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30が長方形である。また、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30の外形の長辺は第1軸Xに沿っている。さらに、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30の外形の短辺は第2軸Zに沿っている。そのため、仮想長方形VRは、インダクタ配線30の外形と一致する。そして、仮想長方形VRの第1辺は、仮想長方形VRの第2辺よりも長い。
【0030】
第2部分P2において、インダクタ配線30でない部分は、第1部分P1と同様に、複数の磁性薄帯40と、複数の非磁性層50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70と、で構成されている。
【0031】
図3に示すように、中心軸CAに直交する断面視で、第2部分P2の各磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う方向に積層されている。図2に示すように、第2部分P2の各磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う方向から視たときに長方形状である。第2軸Zに沿う方向から視たときに各磁性薄帯40の長辺は、中心軸CAと平行である。
【0032】
図1に示すように、第2部分P2において、磁性薄帯40は、インダクタ配線30から視て、第1軸Xに沿う第1正方向X1及び第1負方向X2の両側に位置している。すなわち、第2部分P2において、磁性薄帯40は、第1軸Xに沿う方向に、インダクタ配線30を挟んで2個並んでいる。また、磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う同一の位置において、中心軸CAに沿う方向に、間隔をあけて2個並んでいる。
【0033】
上述した第1部分P1と同様に、第2部分P2の非磁性層50は、第2軸Zに沿う方向に隣り合っている磁性薄帯40の間に位置している。すなわち、図3に示すように、磁性薄帯40及び非磁性層50は、第1部分P1と同様に、第2軸Zに沿う方向に交互に積層されている。
【0034】
第2部分P2の非磁性部60は、第2軸Zに沿う同一の位置において並ぶ磁性薄帯40の間に位置している。非磁性部60は、第2軸Zに沿う方向の同一の位置において並ぶ磁性薄帯40の間の空間を全て埋めている。第2部分P2の非磁性部60の位置は、第2軸Zに沿う方向から視たときに、第1部分P1の非磁性部60の一部と重複している。第2部分P2の非磁性部60は、第1部分P1の非磁性部60と連続している。なお、第2部分P2において、インダクタ配線30と磁性薄帯40との間には非磁性部60は存在していない。
【0035】
非磁性膜70は、第2部分P2において、第1軸Xに沿う第1正方向X1の端、及び第1正方向X1とは反対方向である第1負方向X2の端に位置している。第2部分P2の非磁性膜70は、第1部分P1の非磁性膜70と連続している。
【0036】
第2部分P2の第2正方向Z1には、第3部分P3が位置している。第3部分P3は、第2軸Zから視たときに、第1部分P1と同じ正方形状である。第3部分P3は、複数の磁性薄帯40と、複数の非磁性層50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70で構成されている。本実施形態では、第3部分P3は、第2部分P2を挟んで第1部分P1と対称的な構造であるため、詳細な説明は省略する。このようにして、素体20は、複数の磁性薄帯40と、複数の非磁性層50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70と、を含んでいる。
【0037】
(磁性薄帯厚さ及び非磁性層厚さについて)
磁性薄帯40及び非磁性層50の第2軸Zに沿う方向の寸法について詳述する。磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法は、製造上の誤差により、磁性薄帯40毎に最大で20%程度ばらつく。また、非磁性層50の第2軸Zに沿う方向の寸法は、製造上の誤差により、最大で20%程度ばらついている。
【0038】
ここで、磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法の平均値を磁性薄帯厚さTmとし、非磁性層50の第2軸Zに沿う方向の寸法の平均値を非磁性層厚さTnmとする。各厚さの測定方法について説明する。
【0039】
先ず、各磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法を測定する。図4に示すように、中心軸CAに直交する断面について、6つの磁性薄帯40及び5つの非磁性層50がおさまるように、電子顕微鏡にて1枚の画像を撮影する。そして、当該画像中において、第2軸Zに沿う第2正方向Z1へ並ぶ各磁性薄帯40を、磁性薄帯40A、磁性薄帯40B、磁性薄帯40C、磁性薄帯40D、磁性薄帯40E、磁性薄帯40Fとする。この場合に、当該画像において、磁性薄帯40Aの第2軸Zに沿う方向の最小の寸法を第1寸法Tm1として測定する。同様に、当該画像において、磁性薄帯40Bの第2軸Zに沿う方向の最小の寸法を第2寸法Tm2として測定する。同様に、当該画像において、磁性薄帯40Cの第2軸Zに沿う方向の最小の寸法を第3寸法Tm3として測定する。同様に、当該画像において、磁性薄帯40Dの第2軸Zに沿う方向の最小の寸法を第4寸法Tm4として測定する。同様に、当該画像において、磁性薄帯40Eの第2軸Zに沿う方向の最小の寸法を第5寸法Tm5として測定する。
【0040】
そして、これらの第1寸法Tm1~第5寸法Tm5の平均値を、磁性薄帯厚さTmとして算出する。上記実施形態においては、磁性薄帯厚さTmは、20μmである。さらに、第1寸法Tm1~第5寸法Tm5のそれぞれは、磁性薄帯厚さTmに対して、80%以上120%以下の寸法である。
【0041】
次に、非磁性層50の第2軸Zに沿う方向の寸法を測定する。図4に示すように、磁性薄帯厚さTmを測定した同じ画像中において、磁性薄帯40Aと磁性薄帯40Bとの間に位置する非磁性層50を非磁性層50Aとする。磁性薄帯40Bと磁性薄帯40Cとの間に位置する非磁性層50を非磁性層50Bとする。磁性薄帯40Cと磁性薄帯40Dとの間に位置する非磁性層50を非磁性層50Cとする。磁性薄帯40Dと磁性薄帯40Eとの間に位置する非磁性層50を非磁性層50Dとする。磁性薄帯40Eと磁性薄帯40Fとの間に位置する非磁性層50を非磁性層50Eとする。
【0042】
図4に示す画像中において、非磁性層50Aの第2軸Zに沿う方向の最小の寸法を第1寸法Tnm1として測定する。非磁性層50Bの第2軸Zに沿う方向の最小の寸法を第2寸法Tnm2として測定する。非磁性層50Cの第2軸Zに沿う方向の最小の寸法を第3寸法Tnm3として測定する。非磁性層50Dの第2軸Zに沿う方向の最小の寸法を第4寸法Tnm4として測定する。非磁性層50Eの第2軸Zに沿う方向の最小の寸法を第5寸法Tnm5として測定する。
【0043】
そして、これらの第1寸法Tnm1~第5寸法Tnm5の平均値を、非磁性層厚さTnmとして算出する。上記実施形態においては、非磁性層厚さTnmは、3μmより大きい。そのため、磁性薄帯厚さTmに対する非磁性層厚さTnmの百分率は、15%より大きい。すなわち、非磁性層厚さTnmは、0.6μmより大きく、磁性薄帯厚さTmに対する非磁性層厚さTnmの百分率は、3%より大きい。さらに、第1寸法Tnm1~第5寸法Tnm5のそれぞれは、非磁性層厚さTnmに対して、80%以上120%以下の寸法である。
【0044】
(第1磁性薄帯について)
図3に示すように、中心軸CAに直交する断面視において、インダクタ配線30の第1正方向X1の端を第1配線端IP1とする。また、中心軸CAに直交する断面視において、インダクタ配線30の第1負方向X2の端を第2配線端IP2とする。
【0045】
そして、インダクタ配線30に対して、第2軸Zに沿う方向に積層された磁性薄帯40のうち、第1配線端IP1からの第2軸Zに沿う距離が最も短い磁性薄帯40を第1磁性薄帯41とする。なお、第2軸Zに沿う方向から視た場合に、少なくとも一部分がインダクタ配線30に重複する磁性薄帯40が、インダクタ配線30に対して第2軸Zに沿う方向に積層された磁性薄帯40である。したがって、本実施形態では、第1部分P1における磁性薄帯40及び第3部分P3における磁性薄帯40が、インダクタ配線30に対して第2軸Zに沿う方向に積層された磁性薄帯40である。一方で、第2部分P2における磁性薄帯40は、インダクタ配線30に対して第2軸Zに沿う方向に積層されていない。また、第1磁性薄帯41は、第1部分P1における磁性薄帯40のうち最も第2負方向Z2に位置する磁性薄帯40と、第3部分P3における磁性薄帯40のうち最も第2正方向Z1に位置する磁性薄帯40と、である。
【0046】
図3に示すように、1つの磁性薄帯40において、第1正方向X1の端を第1端MP1とし、第1負方向X2の端を第2端MP2とする。このとき、1つの磁性薄帯40における第1軸Xに沿う方向の両端を除く範囲を、第1範囲AR1とする。換言すれば、1つの磁性薄帯40において、第2端MP2の第1軸Xに沿う方向の位置を示す座標を0とする。1つの磁性薄帯40において、第1軸Xに沿う第1正方向X1の第1端MP1の第1軸Xに沿う方向の位置を示す座標を1とする。このときに、第1軸Xに沿う方向の位置を示す座標が、0より大きく1より小さい範囲が第1範囲AR1である。そして、図3に示すように、第1配線端IP1を通過するとともに、第2軸Zに沿う方向に第1仮想直線VL1を引く。このとき、第1仮想直線VL1は、第1磁性薄帯41の第1範囲AR1内を通っている。
【0047】
また、本実施形態では、第1部分P1において、複数の磁性薄帯40が、インダクタ配線30に対して第2正方向Z1に連続して積層されている。そして、中心軸CAに直交する断面視において、第1仮想直線VL1は、第1磁性薄帯41から第2正方向Z1に連続して積層された複数の磁性薄帯40のうち、第1磁性薄帯41を含めて連続して積層された2つ以上の磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。具体的には、第1仮想直線VL1は、第1部分P1に含まれている磁性薄帯40のうち、第1磁性薄帯41に連続して積層されたすべての磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。
【0048】
第1磁性薄帯41の第1軸Xに沿う第1正方向X1の反対方向である第1負方向X2の第2端MP2を通過するとともに、第2軸Zに沿う方向に第2仮想直線VL2を引く。このとき、第2仮想直線VL2は、インダクタ配線30を通っている。本実施形態では、インダクタ配線30の第1軸Xに沿う方向の概ね中央に位置している。
【0049】
なお、本実施形態においては、インダクタ部品10は、第1軸Xに沿う方向における中心を通る第2軸Zを対称軸として、線対称の構造となっている。ここで、インダクタ配線30の第2配線端IP2を通過するとともに、第2軸Zに沿う方向に第3仮想直線VL3を引く。また、インダクタ配線30に対して、第2軸Zに沿う方向に積層された磁性薄帯40のうち、第2配線端IP2からの第2軸Zに沿う距離が最も短い磁性薄帯40を第2磁性薄帯42とする。この場合に、当該第3仮想直線VL3は、中心軸CAに直交する断面視において、第2磁性薄帯42の第1範囲AR1内を通っている。より具体的には、第3仮想直線VL3は、第2磁性薄帯42の第1軸Xに沿う方向の中央を通っている。
【0050】
また、本実施形態では、中心軸CAに直交する断面視において、第3仮想直線VL3は、第2磁性薄帯42を含めて連続して積層された2つ以上の磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。具体的には、第3仮想直線VL3は、第1部分P1に含まれている磁性薄帯40のうち、第2磁性薄帯42に連続して積層されたすべての磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。
【0051】
さらに、中心軸CAに直交する断面視において、第3仮想直線VL3は、第3部分P3に含まれている磁性薄帯40のうち、第2磁性薄帯42を含めて連続して積層された2つ以上の磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。具体的には、第3仮想直線VL3は、第3部分P3に含まれている磁性薄帯40のうち、第2磁性薄帯42に連続して積層されたすべての磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。より具体的には、第3仮想直線VL3は、第2磁性薄帯42に連続して積層されたすべての磁性薄帯40の中央を通っている。このように、中心軸CAに直交する断面視において、第3仮想直線VL3が、第2磁性薄帯42に対して、上記の第1範囲AR1を通ることが好ましい。
【0052】
(インダクタ部品の製造方法)
次に、インダクタ部品10の製造方法を説明する。
図5に示すように、先ず、銅箔81を準備する銅箔準備工程を行う。銅箔81は、インダクタ配線30を構成するため、銅箔81の厚さは、インダクタ配線30として必要な厚さのものを準備する。なお、以下の説明では、銅箔81は、当該銅箔81の2つの主面が第2軸Zに直交するように配置されているものとし、且つ中心軸CAに直交する断面を示して説明する。
【0053】
次に、図6に示すように、銅箔81の第2軸Zに直交する両主面のうち、第2軸Zに沿う方向から視たときに、第2部分P2における複数の磁性薄帯40が占める範囲以外を被覆する第1被覆工程を行う。具体的には、先ず、銅箔81の第2軸Zに沿う第2負方向Z2を向く面のうち、第2部分P2における複数の磁性薄帯40が占める範囲以外を被覆する第1被覆部82を形成する。第1被覆部82を形成するにあたっては、銅箔81の第2軸Zに沿う第2負方向Z2を向く面全体に、感光性のドライフィルムレジストを塗布する。次に、第1被覆部82を形成する部分について露光することで、ドライフィルムレジストを硬化させる。次に、同様に、銅箔81の第2軸Zに沿う第2正方向Z1を向く面にも、ドライフィルムレジストを塗布するとともに、第1被覆部82を形成する部分について露光することで、ドライフィルムレジストを硬化させる。その後、塗布したドライフィルムレジストのうち硬化していない部分を、薬液により剥離除去させる。これにより、塗布したドライフィルムレジストのうち、硬化している部分が、第1被覆部82として形成される。なお、後述する他の工程におけるフォトリソグラフィも、同様の工程であるので、詳細な説明は省略する。
【0054】
次に、図7に示すように、第1被覆部82から露出している銅箔81をエッチングする銅箔エッチング工程を行う。部分的に第1被覆部82に被覆された銅箔81についてエッチングすることで、露出している銅箔81を除去する。
【0055】
次に、図8に示すように、第1被覆部82を取り除く第1被覆部除去工程を行う。具体的には、薬品によって、第1被覆部82をウェットエッチングすることにより、第1被覆部82を剥離する。
【0056】
次に、銅箔81の第2軸Zに直交する両面のうち、第2軸Zに沿う方向から視たときに、複数の磁性薄帯40が占める範囲を被覆する第2被覆工程を行う。具体的には、先ず、図9に示すように、銅箔81の第2軸Zに沿う第2正方向Z1を向く面全体に、ドライフィルムレジストRを塗布する。次に、図10に示すように、フォトリソグラフィによって、銅箔81の第2軸Zに沿う第2正方向Z1を向く面のうち、第2軸Zに沿う方向から視たときに、磁性薄帯40及び非磁性層50が占める範囲以外を被覆する第2被覆部83を形成する。その後、同様に、フォトリソグラフィによって、銅箔81の第2軸Zに沿う第2負方向Z2を向く面のうち、第2軸Zに沿う方向から視たときに、磁性薄帯40及び非磁性層50が占める範囲以外を被覆する第2被覆部83を形成する。
【0057】
次に、磁性薄帯40及び非磁性層50が積層されている積層体84を準備する積層体準備工程を行う。
先ず、例えば、磁性薄帯40として、薄帯を準備する。薄帯は、例えば、東北マグネットインスティテュート社製NANOMET(登録商標)、日立金属社製Metglas(登録商標)やFINEMET(登録商標)、FeSiB、FeSiBCr等からなるものである。この薄帯を10mm角に切断する。切断した薄帯に非磁性材からなる例えばエポキシ樹脂フィルムを積層する。エポキシ樹脂フィルムは、薄帯の厚さの3%より大きい予め定められた厚さとなっている。本実施形態では、薄帯の厚さに対するエポキシ樹脂フィルムの厚さの百分率は15%より大きく、エポキシ樹脂フィルムの厚さは、3μmより大きい。さらに、積層したエポキシ樹脂フィルムに、切断した薄帯を積層する。このように、薄帯と非磁性材とを交互に積層させた後、真空加熱加圧装置で薄帯と非磁性材とを硬化接着させる。そして、所望の大きさにダイシングすることにより複数の磁性薄帯40及び非磁性層50が積層された積層体84を準備できる。本実施形態では、積層体84は、第1部分P1及び第3部分P3における磁性薄帯40及び非磁性層50を構成する第1積層体84Aと、第2部分P2における磁性薄帯40及び非磁性層50を構成する第2積層体84Bとの2種類を準備する。
【0058】
次に、積層体84を配置する積層体配置工程を行う。
図11に示すように、積層体84のうち、第3部分P3における磁性薄帯40及び非磁性層50を構成する第1積層体84Aを、銅箔81の第2軸Zに沿う第2正方向Z1を向く面に、熱可塑性接着剤85によって仮接着させる。なお、熱可塑性接着剤85は、図11図16では、太線で示す。
【0059】
次に、図12に示すように、第2軸Zに沿う方向に全体を反転させる。そして、図13に示すように、積層体84のうち、第2部分P2における磁性薄帯40及び非磁性層50を構成する第2積層体84Bを、第1積層体84Aの第2軸Zに沿う第2正方向Z1を向く面のうち、銅箔81に接していない部分に配置させる。具体的には、プレス等により積層体84を銅箔81の開口部に押し込むことで、第2積層体84Bを配置させることができる。
【0060】
次に、図14に示すように、積層体84のうち、第1部分P1における磁性薄帯40及び非磁性層50を構成する第1積層体84Aを、銅箔81の第2軸Zに沿う第2正方向Z1を向く面及び第2積層体84Bに沿う第2正方向Z1を向く面に、熱可塑性接着剤85によって仮接着させる。これにより、積層体84を配置させる。
【0061】
次に、図15に示すように、プレス工程を行う。全体を非磁性材である樹脂材86で覆った状態で、プレス加工を行う。これにより、第2軸Zに沿う方向の各層が圧着される。
次に、図16に示すように、個片化加工工程を行う。具体的には、例えば、破断線DLにてダイシングにより個片化する。上述した第2被覆部83のうち、第1軸Xに沿う方向に並ぶ第1積層体84Aの間の部分は、非磁性部60となる。また、第2被覆部83のうち、中心軸CAに沿う方向に並ぶ第1積層体84Aの間、第2積層体84Bの間の部分は、非磁性部60となる。さらに、熱可塑性接着剤85は、非磁性層50の一部として、インダクタ配線30の第2軸Zに沿う方向の両面に残存している。なお、図16に示す例では、積層体84の第1正方向X1における端面及び第1負方向X2における端面に沿って切断している。その後、積層体84の第1正方向X1における端面及び第1負方向X2における端面に、非磁性材からなる非磁性膜70を塗布する。これにより、インダクタ部品10を形成できる。なお、この方法により熱可塑性接着剤85がインダクタ配線30の第1正方向X1を向く側面側及び第1負方向X2を向く側面側にも回り込むため、磁性薄帯40とインダクタ配線30とは直接接触せず絶縁性が確保される。
【0062】
(シミュレーションについて)
次に、インダクタ部品10について得られる特性を、比較例のインダクタ部品と比較したシミュレーション結果について説明する。シミュレーションには、ムラタソフトウェア株式会社のFemtet(登録商標)を用いた。
【0063】
先ず、シミュレーションの条件について説明する。
使用したソフトは、ムラタソフトウェア製のFemtet2019である。ソルバは、磁場調和解析である。モデルは、3次元である。標準メッシュサイズは、0.25mmである。磁性体は、Fe、Si、Cr及びBからなるアモルファス金属磁性薄帯である。比透磁率μrは、7000であり、飽和磁束密度Bsは、1.3Tである。磁性体BH曲線は、B=Bs×tanh(μ0×μr×H/Bs)を満たすものを使用した。なお、磁性体BH曲線は、真空の透磁率以下にならないように、比透磁率μrが1以上の部分を使用し、さらにFemtet2019の機能を使って、真空の透磁率へ外挿した。インダクタ配線30の材質は、銅である。また、磁性体の導電率は、0.568181818MS/mである。配線印加電流は、300kHzの正弦波で振幅は、2.25Aである。
【0064】
次に、シミュレーションに使用するインダクタ部品のモデルの寸法や位置についての条件について説明する。
インダクタ配線30の第1軸Xに沿う方向の寸法は、1000μmである。インダクタ配線30の第2軸Zに沿う方向の寸法は、100μmである。インダクタ配線30の中心軸CAに沿う方向の寸法は、2400μmmである。
【0065】
磁性薄帯40の第1軸Xに沿う方向の寸法は、990μmである。磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法は、20μmである。磁性薄帯40の中心軸CAに沿う方向の寸法は、990μmである。
【0066】
非磁性層50は、非磁性体且つ絶縁体である。非磁性層50の第2軸Zに沿う方向の寸法は、0.06~10.00μmである。非磁性部60の第1軸Xに沿う方向の寸法は、20μmである。非磁性部60の中心軸CAに沿う方向の寸法は、20μmである。磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向に積層する数は、41個である。磁性薄帯40の第1軸Xに沿う方向に並ぶ数は、2個である。磁性薄帯40の中心軸CAに沿う方向に並ぶ数は、2個である。
【0067】
インダクタ配線30の位置は、インダクタ配線30の重心が、素体20の重心位置に一致するように配置した。非磁性層50、非磁性部60及び非磁性膜70の非磁性材の比透磁率μrは、1とした。なお、インダクタ配線30と磁性薄帯40とが接する部分には、100nmの非磁性且つ絶縁性のギャップを設けた。
【0068】
インダクタ部品10の第1軸Xに沿う方向の寸法は、2020μmである。シミュレーションにおいては、素体20は、非磁性膜70と同じ非磁性材の膜を、中心軸CAに沿う方向の両端に有している。当該膜の中心軸CAに沿う方向の寸法は、10μmである。そのため、素体20の中心軸CAに沿う方向の寸法は、2020μmである。すなわち、このシミュレーションにおいて、インダクタ配線30の中心軸CAに沿う方向の寸法は、素体20の中心軸CAに沿う方向の寸法よりも380μmだけ大きい。そのため、素体20の正方向Y1の端面からインダクタ配線30が190μmだけ突出し、素体20の負方向Y2の端面からインダクタ配線30が190μmだけ突出した状態で、シミュレーションが行われる。また、インダクタ部品10の第2軸Zに沿う方向の寸法は、非磁性層50の第2軸Zに沿う方向の寸法によって、変化する。
【0069】
図17に示すように、非磁性層50の第2軸Zに沿う方向の寸法を、0.06~10.00μmの範囲内で変更して、配線印加電流を、300kHzの正弦波で振幅を2.25Aとした場合に得られる渦電流損失AClossをシミュレーションによって算出した。渦電流損失AClossは、ジュール熱として算出されている。なお、非磁性層厚さTnmを調整するためには、上述した製造方法における例えばエポキシ樹脂フィルムの厚さを変更すればよい。
【0070】
算出されたシミュレーション結果によれば、渦電流損失AClossは、非磁性層厚さTnmと相関があることが分かった。全体としては、非磁性層厚さTnmが小さいほど、渦電流損失AClossが小さい傾向であった。非磁性層厚さTnmが0.6μm以下、すなわち磁性薄帯厚さTmに対する非磁性層厚さTnmの百分率が3%以下である場合、渦電流損失AClossは、ほぼ変化しない。一方で、非磁性層厚さTnmが0.6μmより大きい場合、すなわち磁性薄帯厚さTmに対する非磁性層厚さTnmの百分率が3%より大きい場合、非磁性層厚さTnmが大きくなるほど、渦電流損失AClossは小さく算出された。さらに、非磁性反厚さTnmが3.0μmより大きい場合、すなわち磁性薄帯厚さTmに対する非磁性層厚さTnmの百分率が15%より大きい場合、非磁性層厚さTnmが0.6μm以下である場合と比べて、渦電流損失AClossは、約3分の2以下の値であった。すなわち、非磁性反厚さTnmが3.0μmより大きい場合、非磁性層厚さTnmが0.6μm以下である場合と比べて、渦電流損失AClossを約3分の1以上削減する効果があった。
【0071】
(本実施形態の効果について)
次に、上記実施形態の効果について説明する。
(1)上記実施形態によれば、素体20は、複数の磁性薄帯40と、複数の非磁性層50と、を有している。複数の磁性薄帯40は、第2軸Zに沿って積層されており、各非磁性層50は、第2軸Zに沿って隣り合う磁性薄帯40の間に位置している。すなわち、上記実施形態のインダクタ部品10は、第2軸Zに沿って積層されるという磁性薄帯40の規則的な構造を有する。
【0072】
図17にシミュレーション結果として示しているように、磁性薄帯厚さTmに対する非磁性層厚さTnmの百分率が3%以下の場合には、非磁性層厚さTnmを変化させても、渦電流損失AClossは、ほぼ変化しない。上記実施形態によれば、磁性薄帯厚さTmに対する非磁性層厚さTnmの百分率が3%よりも大きい。そのため、図17にシミュレーション結果として示しているように、非磁性層厚さTnmが大きくなるほど、渦電流損失AClossが小さくなる相関がある。よって、上記実施形態によれば、磁性薄帯厚さTmに対する非磁性層厚さTnmの百分率が3%以下の場合と比べて、発生する渦電流損失AClossを抑制できる。
【0073】
(2)上記実施形態によれば、非磁性層厚さTnmは0.6μmよりも大きい。このように非磁性層厚さTnmが十分に大きければ、磁性薄帯厚さTmによらず、発生する渦電流損失AClossを抑制できる。
【0074】
(3)図17に示すシミュレーション結果では、非磁性層厚さTnmが3μmより大きい場合、非磁性層厚さTnmが0.6μm以下の場合と比べて、発生する渦電流損失AClossが、約3分の2、又はそれ以下である。すなわち、磁性薄帯厚さTmに対する非磁性層厚さTnmの百分率が15%より大きい場合には、磁性薄帯厚さTmに対する非磁性層厚さTnmの百分率が3%以下の場合と比べて、発生する渦電流損失AClossを約3分の1以上抑制できる。
【0075】
(4)上記実施形態によれば、非磁性層厚さTnmは3μmよりも大きい。このように非磁性層厚さTnmが十分に大きければ、磁性薄帯厚さTmによらず、発生する渦電流損失AClossを大幅に抑制できる。
【0076】
(5)インダクタ配線30に中心軸CAに沿う方向に電流が流れたときに発生する磁束の中には、磁性薄帯40に対して、第2軸Zに沿う方向に侵入する磁束が含まれる。このように侵入する磁束は、磁性薄帯40に渦電流を生じさせる。また、この渦電流は、第2軸Zに沿う方向から視たとき、1つ当たりの磁性薄帯40の面積が大きいほど、大きくなる。渦電流が生じると、磁束のエネルギーが熱エネルギーとして失われることになるので、損失が生じる。
【0077】
上記実施形態によれば、磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う同一の位置において、第3軸に沿う方向に2個、第4軸に沿う方向に並んでいる。そのため、第2部分P2における磁性薄帯40が、第2軸Zに沿う同一の位置において1個である場合よりも、第2軸Zに沿う方向から視たときの磁性薄帯40の面積が小さくなる。よって、1つの磁性薄帯40で発生する渦電流が小さくなる。
【0078】
(6)上記実施形態によれば、磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う同一の位置において、第1軸Xに沿う方向に2個並んでいる。そのため、インダクタ配線30の第1配線端IP1を通る第1仮想直線VL1が通る第1磁性薄帯41と、インダクタ配線30の第2配線端IP2を通る第3仮想直線VL3が通る第2磁性薄帯42とは、異なる磁性薄帯40である。よって、インダクタ配線30の第1軸Xに沿う方向の寸法としてある程度の大きさを確保しつつ、インダクタ配線30と第1磁性薄帯41との位置関係として上述した位置関係を実現できる。
【0079】
(7)上記実施形態によれば、すべての磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法は、磁性薄帯厚さTmに対して、80%以上120%以下の寸法である。すなわち、すべての磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法は、ほぼ等しいといえる。そのため、各磁性薄帯40内での磁束密度が均一化し、特定の箇所において磁束が集中して飽和しにくい。その結果、素体20全体で見た場合の磁束密度が向上する。
【0080】
(8)上記第1実施形態によれば、すべての非磁性層50の第2軸Zに沿う方向の寸法は、非磁性層厚さTnmに対して、80%以上120%以下の寸法である。すなわち、すべての非磁性層50の第2軸Zに沿う方向の寸法は、ほぼ等しいといえる。そのため、非磁性層50と磁性薄帯40との界面で生じる磁束の乱れを均一化できる。
【0081】
(9)上記実施形態によれば、第1仮想直線VL1は、第1磁性薄帯41の第1範囲AR1内を通っている。そのため、インダクタ配線30に電流が流れたときに発生する磁束のうち、インダクタ配線30の第1配線端IP1の近傍において、第1仮想直線VL1に沿う向きの磁束の大半は、第1磁性薄帯41の第1軸Xに沿う方向の端を除く部分を通過する。すなわち、インダクタ配線30に電流が流れたときに発生する磁束のうち、第1磁性薄帯41に沿う方向の端を通過する磁束が少なくなる。そのため、磁束が乱れたり、磁束が局所に集中したりすることを抑制できる。こうした第1磁性薄帯41とインダクタ配線30との位置関係によれば、磁性材の充填率に拠らずとも、得られるインダクタンスLが大きくなる。
【0082】
<その他の実施形態>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
【0083】
・上記実施形態において、素体20の形状は、上記実施形態の例に限られない。例えば、第2軸Zに沿う方向から視たときに、素体20の形状は、長方形状であってもよいし、四角形以外の多角形であってもよい。さらに例えば、第2軸Zに沿う方向から視たときに、素体20の形状は、楕円等の円状であってもよい。また、素体20の形状は、第3軸に沿う方向における寸法と第4軸に沿う方向における寸法とが異なる直方体や、立方体、多角柱、円柱等であってもよい。
【0084】
・上記実施形態において、インダクタ配線30とは、電流が流れた場合に磁性薄帯40に磁束を発生させることによって、インダクタ部品10にインダクタンスLを付与できるものであれば、形状は適宜に変更できる。
【0085】
例えば、図18に示す変更例のインダクタ部品110では、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線130は、楕円状である。そして、インダクタ配線130に外接するとともに、第1軸Xに沿う第1辺及び第2軸Zに沿う第2辺を有する面積が最小の仮想長方形VR2を描く。このとき、仮想長方形VR2の第1辺は、仮想長方形VR2の第2辺よりも長い。このように、仮想長方形VR2の長辺が第1軸Xと平行であると、磁束のより集中する配線断面の第1軸Xに沿う方向の端部には、第1磁性薄帯41の反磁界の小さい領域が対応するため、より好ましい。
【0086】
また、上記実施形態において、中心軸CAに直交する断面におけるインダクタ配線30の形状は、第2軸Zに沿う第2辺が、第1軸Xに沿う第1辺よりも長くてもよい。この場合であっても、インダクタ配線30の第1正方向X1の端である第1配線端IP1には、磁束が集中する。そのため、このように、磁束のより集中する配線断面の第1配線端IP1には、第1磁性薄帯41の反磁界の小さい領域が対応するため、より好ましい。
【0087】
さらに、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30の形状は、1つ以上の突出部分を含む場合等、線対称や回転対称等の対称性を有しない形状であってもよい。このように、中心軸CAに直交する断面において、対称性が崩れていると、磁束が他よりも集中する箇所が発生する。そして、突出部分等のように磁束が他よりも集中する箇所が第1配線端IP1となるように、第1磁性薄帯41の位置関係を定めることが好ましい。
【0088】
また、例えば、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30の形状は、正方形状であってもよいし、真円状であってもよい。この場合、中心軸CAに直交する断面において描く仮想長方形VRは正方形となり、仮想長方形VRの第1辺は、仮想長方形VRの第2辺より長くなくてもよい。
【0089】
なお、第1磁性薄帯41は、中心軸CAに直交する断面におけるインダクタ配線30の形状に併せて定められる。図18に示す変更例では、インダクタ配線130に対して、第2軸Zに沿う方向に積層された磁性薄帯40のうち、第1配線端IP1からの第2軸Zに沿う距離が最も短い磁性薄帯40は、第2部分P2に含まれる磁性薄帯40の1つである。この場合であっても、第1仮想直線VL1が、第1磁性薄帯41の第1範囲AR1を通っていればよい。
【0090】
・上記実施形態において、インダクタ配線30の第1軸Xに沿う方向の位置は、上記実施形態の例に限られない。第1仮想直線VL1が、第1磁性薄帯41を含む第2軸Zに沿う方向に連続して並ぶ5つの磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通ることが好ましく、すべての磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通ることがより好ましい。そのため、第1仮想直線VL1が、すべての磁性薄帯40の第1軸Xに沿う方向における略中央を通っていなくてもよい。また、第1仮想直線VL1が、第1磁性薄帯41の第1範囲AR1外にあってもよい。
【0091】
・上記実施形態において、インダクタ配線30の形状は、直線状に限られない。磁性薄帯40の主面MFに沿って延びていればよく、例えば、全体として湾曲している形状や、ミアンダ形状であってもよい。例えば、上述したシミュレーションのように、インダクタ配線30の両端が素体から突出していてもよい。
【0092】
また、インダクタ配線30が、主面MFと交差する方向に延びる引出配線や、第2軸Zに沿う方向に延びるビア配線等に接続されていてもよい。さらに、複数のインダクタ配線30が第2軸Zに沿う方向に延びるビア配線に接続されて、全体として、弦巻形状やヘリカル状の三次元螺旋状であってもよい。この場合には、磁性薄帯40の主面MFに沿って延びている部分が、インダクタ配線30である。
【0093】
・上記実施形態において、インダクタ配線30の材質は、導電性材料であれば、上記実施形態の例に限られない。例えば、インダクタ配線30の材質は、導電性の樹脂であってもよい。
【0094】
・上記実施形態において、中心軸CAと、第3軸とは、一致していなくてもよい。また、第4軸は、第1軸Xと一致していなくてもよい。例えば、上述したようにインダクタ配線30の形状がミアンダ形状の場合、中心軸CAはミアンダ状に延びる。この場合、第3軸は第2軸Zに直交し、第4軸は、第2軸Zと直交し、第3軸に交差すればよい。この場合であっても、磁性薄帯40が第3軸に沿う方向に複数個並んでいたり、第4軸に沿う方向に複数個並んでいたりすれば、磁性薄帯40が第2軸Zに沿う同一の位置において1個である場合よりも、第2軸Zに沿う方向から視たときの磁性薄帯40の面積が小さくなる。そのため、1つの磁性薄帯40で発生する渦電流が小さくなる。
【0095】
・上記実施形態で説明した第1配線端IP1を通る第1仮想直線VL1と第1磁性薄帯41の第1範囲AR1との位置関係は、中心軸CAに直交するインダクタ配線30の断面のうち、いずれか1つの断面において満たしていればよい。つまり、インダクタ配線30のすべての領域において、第1仮想直線VL1と第1磁性薄帯41の第1範囲AR1の位置関係が満たされていなくてもよい。なお、第1配線端IP1を通る第1仮想直線VL1と第1磁性薄帯41の第1範囲AR1との位置関係を満たす断面が1つも有していなくてもよい。すなわち、インダクタ配線30の第1配線端IP1の第1軸Xに沿う方向の位置が、第1磁性薄帯41の第1範囲AR1内でなくてもよく、第1磁性薄帯41の第1軸Xに沿う方向の端に一致していてもよい。
【0096】
・上記実施形態において、インダクタ配線30が素体20から露出している部分には、外部電極が接続されていてもよい。例えば、インダクタ配線30の中心軸CAに沿う方向の両端面、及び素体20の中心軸CAに沿う方向の両端面に、塗布、印刷、めっき等によって、外部電極を形成してもよい。
【0097】
・上記実施形態において、複数の磁性薄帯40と複数の非磁性層50とが積層される方向は、製造上の誤差等により、中心軸CA及び第1軸Xに対して直交しないこともある。上記実施形態において、磁性薄帯40等が「第2軸Zに沿う方向に積層されている」というのは、このような製造上の誤差などを許容するものである。
【0098】
・上記実施形態において、第2軸Zに沿う方向に積層される磁性薄帯40の数は、2個以上であればよい。この場合、2つの磁性薄帯40の間に、インダクタ配線30及び非磁性層50が配置されていればよい。
【0099】
・上記実施形態において、磁性薄帯40の材質は、磁性材であれば、上記実施形態の例に限られない。例えば、Feであってもよいし、Niであってもよい。また、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Al、Si、B、P以外の金属磁性材であってもよい。
【0100】
・上記実施形態において、非磁性層50の材質は、非磁性材であれば、上記実施形態の例に限られない。非磁性層50は、アクリル樹脂や、エポキシ樹脂、シリコン樹脂以外の樹脂であってもよいし、アルミナ、シリカ、ガラス等の非磁性セラミックスやこれらを含む非磁性無機物であってもよいし、空隙であってもよく、さらにこれらの混合物であってもよい。この点、非磁性部60及び非磁性膜70についても同様である。また、非磁性層50、非磁性部60及び非磁性膜70の材質は、非磁性材であれば、互いに異なっていてもよいし、部分的に異なっていてもよい。
【0101】
・上記実施形態において、非磁性層50、非磁性部60、非磁性膜70は一体化していてもよいし、別の部材であってもよい。例えば、非磁性層50は、中空であってもよいし、磁性薄帯40の表面が酸化した酸化膜が絶縁体となって構成されていてもよい。
【0102】
・上記実施形態において、非磁性部60を省いてもよい。この場合、第3軸又は第4軸に沿う方向に並ぶ磁性薄帯40同士が直接接触していてもよい。また、非磁性部60が、インダクタ配線30と磁性薄帯40との間に存在していてもよい。この場合、非磁性部60によって、インダクタ配線30と磁性薄帯40との間の絶縁性を確保できる。
【0103】
なお、「複数の磁性薄帯40が積層された」及び「複数の磁性薄帯40が並ぶ」とは、具体的には、隣接する磁性薄帯40同士が完全に又は部分的に絶縁されている場合や微視的に物理的な境界が存在する場合を指す。例えば、磁性薄帯40同士が焼結されて完全に一体化されている状態等は含まない。
【0104】
・上記実施形態において、素体20は、複数の磁性薄帯40と、複数の非磁性層50と、を有していれば、素体20の構成は、変更できる。例えば、第2部分P2のうちのインダクタ配線30を除く部分全てを磁性薄帯40で構成してもよいし非磁性層50で構成してもよい。また、第2部分P2のうちのインダクタ配線30を除く部分全てを磁性薄帯40で構成する場合、その磁性薄帯40は粉体状の磁性材と非磁性材とのコンポジット材であってもよい。このようなコンポジット材としては、Fe、Si、Cr、Bからなるアモルファス金属粒子と樹脂とのメタルコンポジット材が挙げられる。
【0105】
・上記実施形態によれば、磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う同一の位置において、第1軸Xに沿う方向に2個並んでおり、中心軸CAすなわち第3軸に沿う方向に2個並んでいる。すなわち、「M」及び「N」を正の整数とした場合、磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う同一の位置において、第3軸に沿う方向に「M」個並んでおり、第1軸Xすなわち第4軸に沿う方向に「N」個並んでおり、「M」及び「N」のいずれも2である。上記実施形態において、第4軸に沿う方向に並ぶ第1磁性薄帯41の数である「M」は、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。また、中心軸CAに沿う方向に並ぶ磁性薄帯40の数である「N」は、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。なお、「M」及び「N」の少なくともいずれか一方が2以上であると、第2軸Zから視たときの1つ当たりの磁性薄帯40の面積を小さくできるので、渦電流による損失を小さくしやすい。
【0106】
・上記実施形態で説明した磁性薄帯厚さTmと非磁性層厚さTnmとの大小関係は、中心軸CAに直交するインダクタ配線30の断面のうち、いずれか1つの断面において満たしていればよい。つまり、インダクタ配線30の全ての領域において、磁性薄帯厚さTmと非磁性層厚さTnmとの大小関係が満たされていなくてもよい。
【0107】
・複数の磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法は、互いに同一であってもよいし、磁性薄帯厚さTmに対して、20%より大きくばらついていてもかまわない。
・複数の非磁性層50の第2軸Zに沿う方向の寸法は、互いに同一であってもよいし、平均値に対して、20%より大きくばらついていてもかまわない。少なくとも、非磁性層厚さTnmが、磁性薄帯厚さTmに対して3%より大きければよい。なお、非磁性層厚さTnmが、磁性薄帯厚さTmに対して100%以下であると、素体20の第2軸Zに沿う方向の寸法の大型化を回避しやすい。また、非磁性層厚さTnmが、磁性薄帯厚さTmに対して50%以下であると、素体20における磁性薄帯40の割合を担保するうえで好適である。
【0108】
・上記実施形態において、非磁性部60の数や位置は、上記実施形態の例に限られない。第1軸Xに沿う方向や中心軸CAに沿う方向における磁性薄帯40の数や位置に併せて、非磁性部60の数や位置を変更すればよい。また、非磁性部60の大きさも、第2軸Zに沿う方向における同一の位置における磁性薄帯40の間隔に併せて、適宜変更すればよい。
【0109】
・上記実施形態において、非磁性膜70は省略してもよい。なお、非磁性膜70を形成する場合には、例えば、インダクタ部品10の製造方法において、第2被覆部83の第1軸X及び中心軸CAに沿う方向の隙間に対して、積層体84の第1軸X及び中心軸CAに沿う方向の寸法が小さく設定すればよい。この場合、第2被覆部83と積層体84との隙間に、樹脂材86が入り込むことで、非磁性膜70を形成できる。
【0110】
・上記実施形態において、インダクタ部品10の製造方法は、上記実施形態の例に限られない。例えば、積層体84を、第2被覆部83に配置せずに、素体20を第2軸Zに沿う方向に積層される複数のシートを形成して、これらの複数のシートを積層させることによって、素体20を形成してもよい。
【符号の説明】
【0111】
10,110…インダクタ部品
20…素体
30,130…インダクタ配線
40…磁性薄帯
41…第1磁性薄帯
42…第2磁性薄帯
50…非磁性層
60…非磁性部
70…非磁性膜
AR1…第1範囲
CA…中心軸
MF…主面
MP1…第1端
MP2…第2端
Tm…磁性薄帯厚さ
Tnm…非磁性層厚さ
VL1…第1仮想直線
VL2…第2仮想直線
VR,VR2…仮想長方形
X…第1軸
Z…第2軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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