(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】学習装置、ストレス推定装置、学習方法、ストレス推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20241217BHJP
G16H 50/30 20180101ALI20241217BHJP
【FI】
G06Q10/04
G16H50/30
(21)【出願番号】P 2023510140
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2021014357
(87)【国際公開番号】W WO2022208874
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】辻川 剛範
(72)【発明者】
【氏名】北出 祐
(72)【発明者】
【氏名】中島 嘉樹
(72)【発明者】
【氏名】梅松 旭美
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 恵
(72)【発明者】
【氏名】古川 あずさ
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-202031(JP,A)
【文献】特開2012-75708(JP,A)
【文献】特開2018-11720(JP,A)
【文献】特開2013-27570(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0012665(US,A1)
【文献】特開2020-190936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の観測特徴量を、前記対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき
クラスタごとに分割する第1分割を行う第1分割手段と、
前記
クラスタの各々を、当該観測特徴量の観測対象又は前記対象者の活動状態の少なくとも一方に基づき
サブクラスタごとに分割する第2分割を行う第2分割手段と、
前記観測特徴量
の各サブクラスタから、
前記各サブクラスタと、当該各サブクラスタの観測特徴量に対応するストレスデータとの相関係数に基づく相関スコアが上位所定個数となる種類の観測特徴量を、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量
として選択する特徴量選択手段と、
前記ストレス推定特徴量
をストレス推定モデルへの入力データとし、当該ストレス推定特徴量に対応するストレス
データを正解データとする組を訓練データとして、少なくとも前記第1分割により分けられた
前記クラスタごとに、
前記ストレス推定モデルの学習を行う学習手段と、
を有する学習装置。
【請求項2】
前記特徴量選択手段は、前記
各サブクラスタから無作為抽出により複数のグループを形成し、前記グループごとに算出した前記相関に関する前記複数のグループ全体での集計結果に基づき、前記
相関スコアを算出する、請求項
1に記載の学習装置。
【請求項3】
前記特徴量選択手段は、前記集計結果として、前記複数のグループにおける前記相関の統計値と、前記複数のグループにおける前記相関の正負符号の割合とを算出
し、前記相関の統計値と前記割合とに基づく前記相関スコアを算出する、請求項
2に記載の学習装置。
【請求項4】
前記学習手段は、
前記サブクラスタごとに、前記ストレス推定モデルの学習を行う、請求項1に記載の学習装置。
【請求項5】
前記学習手段は、前記特徴量選択手段が選択したストレス推定特徴量に関する情報である特徴量選択情報と、前記学習手段により学習された前記ストレス推定モデルのパラメータとを学習結果として出力する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の学習装置。
【請求項6】
前記第1分割手段は、前記正解のストレス値が測定されていないときのストレス値を示す疑似データを、前記正解のストレス値の補間により生成する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の学習装置。
【請求項7】
前記第1分割手段は、前記観測特徴量の一部が2以上のまとまりに重複して属するように前記第1分割を行う、請求項1~
6のいずれか一項に記載の学習装置。
【請求項8】
ストレス推定の対象となる推定対象者の観測特徴量を、前記推定対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき分類を行う分類手段と、
前記ストレス推定に用いるストレス推定モデルの機械学習に用いた訓練データの入力データとして用いられた観測特徴量の種類を前記分類と関連付けた特徴量選択情報を参照し、前記分類に対応する前記種類に対応する前記観測特徴量
を、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量
として選択する特徴量選択手段と、
前記分類に基づき、ストレス推定モデルを選択し、選択した前記ストレス推定モデルに前記ストレス推定特徴量を入力することで、前記推定対象者のストレス値を推定するストレス推定手段と、
を有するストレス推定装置。
【請求項9】
前記ストレス推定手段は、請求項1~
7のいずれか一項に記載の学習装置により学習されたストレス推定モデルに基づき、前記ストレス値を推定する、請求項
8に記載のストレス推定装置。
【請求項10】
前記特徴量選択手段は、前記ストレス推定特徴量として、請求項1~
7のいずれか一項に記載の学習装置により選択されたストレス推定特徴量と同一種類の観測特徴量を選択する、請求項
8または9に記載のストレス推定装置。
【請求項11】
前記分類手段は、前記観測特徴量を複数に分類し、
前記ストレス推定手段は、前記複数の分類に基づき選択された複数のストレス推定モデルが出力する推定結果を統合することで、前記ストレス値を推定する、請求項
8~10のいずれか一項に記載のストレス推定装置。
【請求項12】
コンピュータが、
対象者の観測特徴量を、前記対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき
クラスタごとに分割する第1分割を行い、
前記
クラスタの各々を、当該観測特徴量の観測対象又は前記対象者の活動状態の少なくとも一方に基づき
サブクラスタごとに分割する第2分割を行い、
前記観測特徴量
の各サブクラスタから、
前記各サブクラスタと、当該各サブクラスタの観測特徴量に対応するストレスデータとの相関係数に基づく相関スコアが上位所定個数となる種類の観測特徴量を、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量
として選択し、
前記ストレス推定特徴量
をストレス推定モデルへの入力データとし、当該ストレス推定特徴量に対応するストレス
データを正解データとする組を訓練データとして、少なくとも前記第1分割により分けられた
前記クラスタごとに、
前記ストレス推定モデルの学習を行う、
学習方法。
【請求項13】
コンピュータが、
ストレス推定の対象となる推定対象者の観測特徴量を、前記推定対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき分類を行い、
前記ストレス推定に用いるストレス推定モデルの機械学習に用いた訓練データの入力データとして用いられた観測特徴量の種類を前記分類と関連付けた特徴量選択情報を参照し、前記分類に対応する前記種類に対応する前記観測特徴量
を、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量
として選択し、
前記分類に基づき、ストレス推定モデルを選択し、選択した前記ストレス推定モデルに前記ストレス推定特徴量を入力することで、前記推定対象者のストレス値を推定する、
ストレス推定方法。
【請求項14】
対象者の観測特徴量を、前記対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき
クラスタごとに分割する第1分割を行い、
前記
クラスタの各々を、当該観測特徴量の観測対象又は前記対象者の活動状態の少なくとも一方に基づき
サブクラスタごとに分割する第2分割を行い、
前記観測特徴量
の各サブクラスタから、
前記各サブクラスタと、当該各サブクラスタの観測特徴量に対応するストレスデータとの相関係数に基づく相関スコアが上位所定個数となる種類の観測特徴量を、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量
として選択し、
前記ストレス推定特徴量
をストレス推定モデルへの入力データとし、当該ストレス推定特徴量に対応するストレス
データを正解データとする組を訓練データとして、少なくとも前記第1分割により分けられた
前記クラスタごとに、
前記ストレス推定モデルの学習を行う処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項15】
ストレス推定の対象となる推定対象者の観測特徴量を、前記推定対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき分類を行い、
前記ストレス推定に用いるストレス推定モデルの機械学習に用いた訓練データの入力データとして用いられた観測特徴量の種類を前記分類と関連付けた特徴量選択情報を参照し、前記分類に対応する前記種類に対応する前記観測特徴量
を、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量
として選択し、
前記分類に基づき、ストレス推定モデルを選択し、選択した前記ストレス推定モデルに前記ストレス推定特徴量を入力することで、前記推定対象者のストレス値を推定する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ストレス状態の推定に関する処理を行う学習装置、ストレス推定装置、学習方法、ストレス推定方法及び記憶媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
対象者から測定したデータに基づき対象者のストレス状態を判定する装置又はシステムが知られている。例えば、特許文献1には、推定対象者の生体データに基づき、各日の推定対象者の一時的ストレス度を判定する携帯用ストレス測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象者の生体データから対象者のストレスレベルを推定する場合、未知のデータに対する推定精度が安定しないといった課題があった。
【0005】
本開示は、上述した課題を鑑み、安定した推定精度のストレス推定結果を得るための処理を行う学習装置、ストレス推定装置、学習方法、ストレス推定方法及び記憶媒体を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
学習装置の一の態様は、
対象者の観測特徴量を、前記対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づきクラスタごとに分割する第1分割を行う第1分割手段と、
前記クラスタの各々を、当該観測特徴量の観測対象又は前記対象者の活動状態の少なくとも一方に基づきサブクラスタごとに分割する第2分割を行う第2分割手段と、
前記観測特徴量の各サブクラスタから、前記各サブクラスタと、当該各サブクラスタの観測特徴量に対応するストレスデータとの相関係数に基づく相関スコアが上位所定個数となる種類の観測特徴量を、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量として選択する特徴量選択手段と、
前記ストレス推定特徴量をストレス推定モデルへの入力データとし、当該ストレス推定特徴量に対応するストレスデータを正解データとする組を訓練データとして、少なくとも前記第1分割により分けられた前記クラスタごとに、前記ストレス推定モデルの学習を行う学習手段と、
を有する学習装置である。
【0007】
ストレス推定装置の一の態様は、
ストレス推定の対象となる推定対象者の観測特徴量を、前記推定対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき分類を行う分類手段と、
前記ストレス推定に用いるストレス推定モデルの機械学習に用いた訓練データの入力データとして用いられた観測特徴量の種類を前記分類と関連付けた特徴量選択情報を参照し、前記分類に対応する前記種類に対応する前記観測特徴量を、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量として選択する特徴量選択手段と、
前記分類に基づき、ストレス推定モデルを選択し、選択した前記ストレス推定モデルに前記ストレス推定特徴量を入力することで、前記推定対象者のストレス値を推定するストレス推定手段と、
を有するストレス推定装置である。
【0008】
学習方法の一の態様は、
コンピュータが、
対象者の観測特徴量を、前記対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づきクラスタごとに分割する第1分割を行い、
前記クラスタの各々を、当該観測特徴量の観測対象又は前記対象者の活動状態の少なくとも一方に基づきサブクラスタごとに分割する第2分割を行い、
前記観測特徴量の各サブクラスタから、前記各サブクラスタと、当該各サブクラスタの観測特徴量に対応するストレスデータとの相関係数に基づく相関スコアが上位所定個数となる種類の観測特徴量を、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量として選択し、
前記ストレス推定特徴量をストレス推定モデルへの入力データとし、当該ストレス推定特徴量に対応するストレスデータを正解データとする組を訓練データとして、少なくとも前記第1分割により分けられた前記クラスタごとに、前記ストレス推定モデルの学習を行う、
学習方法である。なお、「コンピュータ」は、あらゆる電子機器(電子機器に含まれるプロセッサであってもよい)を含み、かつ、複数の電子機器により構成されてもよい。
【0009】
ストレス推定方法の一の態様は、
コンピュータが、
ストレス推定の対象となる推定対象者の観測特徴量を、前記推定対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき分類を行い、
前記ストレス推定に用いるストレス推定モデルの機械学習に用いた訓練データの入力データとして用いられた観測特徴量の種類を前記分類と関連付けた特徴量選択情報を参照し、前記分類に対応する前記種類に対応する前記観測特徴量を、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量として選択し、
前記分類に基づき、ストレス推定モデルを選択し、選択した前記ストレス推定モデルに前記ストレス推定特徴量を入力することで、前記推定対象者のストレス値を推定する、
ストレス推定方法である。
【0010】
プログラムの一の態様は、
対象者の観測特徴量を、前記対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づきクラスタごとに分割する第1分割を行い、
前記クラスタの各々を、当該観測特徴量の観測対象又は前記対象者の活動状態の少なくとも一方に基づきサブクラスタごとに分割する第2分割を行い、
前記観測特徴量の各サブクラスタから、前記各サブクラスタと、当該各サブクラスタの観測特徴量に対応するストレスデータとの相関係数に基づく相関スコアが上位所定個数となる種類の観測特徴量を、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量として選択し、
前記ストレス推定特徴量をストレス推定モデルへの入力データとし、当該ストレス推定特徴量に対応するストレスデータを正解データとする組を訓練データとして、少なくとも前記第1分割により分けられた前記クラスタごとに、前記ストレス推定モデルの学習を行う処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0011】
プログラムの一の態様は、
ストレス推定の対象となる推定対象者の観測特徴量を、前記推定対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき分類を行い、
前記ストレス推定に用いるストレス推定モデルの機械学習に用いた訓練データの入力データとして用いられた観測特徴量の種類を前記分類と関連付けた特徴量選択情報を参照し、前記分類に対応する前記種類に対応する前記観測特徴量を、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量として選択し、
前記分類に基づき、ストレス推定モデルを選択し、選択した前記ストレス推定モデルに前記ストレス推定特徴量を入力することで、前記推定対象者のストレス値を推定する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
安定した推定精度によるストレス推定を行うことができる、又は、そのようなストレス推定を行うためのストレス推定モデルの学習を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係るストレス推定システムの概略構成を示す。
【
図2】各実施形態に共通するストレス推定装置のハードウェア構成の一例を示す。
【
図3】第1実施形態に係る情報処理装置の学習フェーズにおける機能ブロックの一例である。
【
図5】ある観測特徴量の種類に対する相関を集計したヒストグラムを示す。
【
図6】あるサンプル対象者の観測データの測定期間におけるPSS値を測定するためのストレスアンケートのタイミングを明示した図である。
【
図7】第1実施形態において情報処理装置が学習フェーズにおいて実行する学習処理の手順を示すフローチャートの一例である。
【
図8】第1実施形態に係る情報処理装置の推定フェーズにおける機能ブロックの一例である。
【
図9】第1実施形態において情報処理装置が推定フェーズにおいて実行するストレス推定処理の手順を示すフローチャートの一例である。
【
図10】第2実施形態におけるストレス推定システムの概略構成を示す。
【
図11】第3実施形態における学習装置のブロック図である。
【
図12】第3実施形態において学習装置が実行するフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、学習装置、ストレス推定装置、学習方法、ストレス推定方法及び記憶媒体の実施形態について説明する。
【0015】
<第1実施形態>
(1)
システム構成
図1は、第1実施形態に係るストレス推定システム100の概略構成を示す。ストレス推定システム100は、人のストレスを推定するモデル(「ストレス推定モデル」とも呼ぶ。)の学習を行い、学習した推定モデルに基づきストレス推定を行う。以後では、ストレス推定の対象となる人を「推定対象者」と呼び、ストレス推定モデルの学習に必要な訓練データ(学習サンプル)の生成において測定対象となった人を「サンプル対象者」とも呼ぶ。また、推定対象者及びサンプル対象者を特に区別しない場合、これらを単に「対象者」とも呼ぶ。なお、「推定対象者」は、組織によりストレス状態の管理が行われるスポーツ選手又は従業員であってもよく、個人のユーザであってもよい。
【0016】
ストレス推定システム100は、主に、情報処理装置1と、入力装置2と、表示装置3と、記憶装置4と、センサ5とを備える。
【0017】
情報処理装置1は、通信網を介し、又は、無線若しくは有線による直接通信により、入力装置2、表示装置3、及びセンサ5とデータ通信を行う。そして、情報処理装置1は、入力装置2から供給される入力信号「S1」及びセンサ5から供給されるセンサ信号「S3」に基づき、ストレス推定モデルの学習又はストレス推定モデルを用いた推定対象者のストレス推定に必要な情報を収集し、収集した情報を記憶装置4に記憶する。また、情報処理装置1は、推定対象者のストレス状態(具体的には、ストレスの度合いを表すストレス値)の推定結果に基づき表示信号「S2」を生成し、生成した表示信号S2を表示装置3に供給する。なお、本実施形態において情報処理装置1が推定するストレスは、数日から週又は月単位での長期(慢性)的な観点でのストレスである慢性ストレスであるものとする。
【0018】
入力装置2は、各推定対象者に関する情報のユーザ入力(手入力)を受け付けるインターフェースである。なお、入力装置2を用いて情報の入力を行うユーザは、推定対象者本人であってもよく、推定対象者の活動を管理又は監督する者であってもよい。入力装置2は、例えば、タッチパネル、ボタン、キーボード、マウス、音声入力装置などの種々のユーザ入力用インターフェースであってもよい。入力装置2は、ユーザの入力に基づき生成した入力信号S1を、情報処理装置1へ供給する。表示装置3は、情報処理装置1から供給される表示信号S2に基づき、所定の情報を表示する。表示装置3は、例えば、ディスプレイ又はプロジェクタ等である。
【0019】
センサ5は、推定対象者の生体信号等を測定し、測定した生体信号等を、センサ信号S3として情報処理装置1へ供給する。この場合、センサ信号S3は、推定対象者の心拍、脳波、発汗量、ホルモン分泌量、脳血流、血圧、体温、筋電、呼吸数、脈波、加速度などの任意の生体信号(バイタル情報を含む)であってもよい。また、センサ5は、推定対象者から採取された血液を分析し、その分析結果を示すセンサ信号S3を出力する装置であってもよい。また、センサ5は、推定対象者が装着するウェアラブル端末であってもよく、推定対象者を撮影するカメラ又は推定対象者の発話の音声信号を生成するマイク等であってもよく、推定対象者が操作するパーソナルコンピュータやスマートフォンなどの端末であってもよい。後者の場合、センサ5は、パーソナルコンピュータやスマートフォンなどの操作量に相当する情報をセンサ信号S3として情報処理装置1に供給してもよい。また、センサ5は、ウェアラブル端末等に組み込まれたGPS受信機等が出力する位置情報をセンサ信号S3として出力してもよい。センサ信号S3は、観測された対象者の観測された特徴を表す特徴量(「観測特徴量」とも呼ぶ。)等の生成に用いられる。
【0020】
記憶装置4は、ストレス状態の推定等に必要な各種情報を記憶するメモリである。記憶装置4は、情報処理装置1に接続又は内蔵されたハードディスクなどの外部記憶装置であってもよく、フラッシュメモリなどの記憶媒体であってもよい。また、記憶装置4は、情報処理装置1とデータ通信を行うサーバ装置であってもよい。また、記憶装置4は、複数の装置から構成されてもよい。
【0021】
記憶装置4は、機能的には、属性情報記憶部40と、観測データ記憶部41と、訓練データ記憶部42と、学習パラメータ記憶部43とを有している。
【0022】
属性情報記憶部40は、対象者の属性に関する属性情報を記憶する。ここで、「属性」は、例えば、対象者の性格、ストレス耐性、性別、職種、年齢、認知の傾向又はこれらの組み合わせなどが該当する。属性情報は、情報処理装置1により生成されて記憶装置4に記憶されたものであってもよく、情報処理装置1以外の装置により事前に生成されて記憶装置4に記憶されたものであってもよい。属性情報は、対象者によるアンケートの回答結果に基づき生成された情報を含んでもよい。例えば、対象者の性格を測るアンケートとして、Big5性格検査などが存在する。属性情報は、対象者の識別情報と関連付けられて属性情報記憶部40に記憶される。
【0023】
観測データ記憶部41は、情報処理装置1がセンサ5から取得したセンサ信号S3等に基づき生成された観測データを記憶する。本実施形態において、観測データは、例えば、観測特徴量と、観測が行われた日時又は場所等の環境を示す環境情報と、観測が行われたときの対象者の活動状態(例えば、身体的な運動強度、メンタルワークロードなど精神的な活動強度、座る/歩く/走るなどの状態、起きている/寝ているなどの状態)を示す活動情報と、対象者の識別情報とが関連付けられた情報である。なお、説明便宜上、観測データ記憶部41は、推定対象者の観測データを記憶するものとし、サンプル対象者の観測データについては訓練データ記憶部42が記憶するものとする。
【0024】
観測特徴量は、対象者から観測されたデータの特徴を表す任意の特徴量であり、発汗、加速度、皮膚温、脈波などの生体的特徴に基づく特徴量であってもよく、機器の操作量などの対象者の行動に基づく行動的特徴に基づく特徴量であってもよい。ここで、センサ信号S3を観測特徴量に変換する処理は、情報処理装置1が実行してもよく、情報処理装置1以外の装置が実行してもよい。この場合、生体信号からその特徴量を算出する任意の手法又はその他の任意の特徴量算出手法に基づき、センサ信号S3から観測特徴量が生成されてもよい。環境情報は、例えば、センサ信号S3に含まれる日時情報、位置情報、温湿度情報、二酸化炭素濃度情報、照度情報、環境音情報などに基づき情報処理装置1又は他の装置により生成され、活動情報は、例えば、センサ信号S3に含まれる位置情報、加速度等に基づき情報処理装置1又は他の装置により生成される。
【0025】
訓練データ記憶部42は、ストレス推定モデルの学習に用いる訓練データを記憶する。訓練データは、複数のサンプル対象者を対象として生成したデータであり、サンプル対象者の観測データと、サンプル対象者によるアンケートの回答等に基づく正解のストレス値との組を複数含んでいる。本実施形態では、正解のストレス値として、PSS(Perceived Stress Scale)値を用いるものとする。PSS値は、経時的に変化する動的なストレスを測定できるPSSアンケートの回答結果から算出される。
【0026】
学習パラメータ記憶部43は、情報処理装置1が学習したパラメータを記憶する。学習パラメータ記憶部43が記憶するパラメータには、ストレス推定モデルを構成するために必要なパラメータが含まれている。ストレス推定モデルは、対象者の特定の観測特徴量の組(特徴ベクトル)が入力された場合に、対象者のストレス推定値を出力するように学習されたモデルである。ここで、ストレス推定モデルは、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシーンなどの任意の機械学習モデル(統計モデルを含む)であってもよい。また、後述するように、ストレス推定モデルは、対象者の属性等に基づく分類ごとに学習される。この場合、各ストレス推定モデルは、夫々の分類に適したアーキテクチャを有してもよい。学習パラメータ記憶部43は、これらのストレス推定モデルを構成するために必要なパラメータの情報を記憶する。例えば、ストレス推定モデルが畳み込みニューラルネットワークなどのニューラルネットワークに基づくモデルである場合、学習パラメータ記憶部43は、層構造、各層のニューロン構造、各層におけるフィルタ数及びフィルタサイズ、並びに各フィルタの各要素の重みなどの各種パラメータの情報を記憶する。
【0027】
なお、
図1に示すストレス推定システム100の構成は一例であり、当該構成に種々の変更が行われてもよい。例えば、入力装置2及び表示装置3は、一体となって構成されてもよい。この場合、入力装置2及び表示装置3は、情報処理装置1と一体又は別体となるタブレット型端末として構成されてもよい。また、入力装置2とセンサ5とは、一体となって構成されてもよい。また、情報処理装置1は、複数の装置から構成されてもよい。この場合、情報処理装置1を構成する複数の装置は、予め割り当てられた処理を実行するために必要な情報の授受を、これらの複数の装置間において行う。この場合、情報処理装置1は、情報処理システムとして機能する。
【0028】
(2)
情報処理装置のハードウェア構成
図2は、情報処理装置1のハードウェア構成を示す。情報処理装置1は、ハードウェアとして、プロセッサ11と、メモリ12と、インターフェース13とを含む。プロセッサ11、メモリ12及びインターフェース13は、データバス90を介して接続されている。
【0029】
プロセッサ11は、メモリ12に記憶されているプログラムを実行することにより、情報処理装置1の全体の制御を行うコントローラ(演算装置)として機能する。プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)などのプロセッサである。プロセッサ11は、複数のプロセッサから構成されてもよい。プロセッサ11は、コンピュータの一例である。
【0030】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどの各種の揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより構成される。また、メモリ12には、情報処理装置1が実行する処理を実行するためのプログラムが記憶される。なお、メモリ12が記憶する情報の一部は、情報処理装置1と通信可能な1又は複数の外部記憶装置により記憶されてもよく、情報処理装置1に対して着脱自在な記憶媒体により記憶されてもよい。
【0031】
インターフェース13は、情報処理装置1と他の装置とを電気的に接続するためのインターフェースである。これらのインターフェースは、他の装置とデータの送受信を無線により行うためのネットワークアダプタなどのワイアレスインタフェースであってもよく、他の装置とケーブル等により接続するためのハードウェアインターフェースであってもよい。
【0032】
なお、情報処理装置1のハードウェア構成は、
図2に示す構成に限定されない。例えば、情報処理装置1は、入力装置2又は表示装置3の少なくとも一方を含んでもよい。また、情報処理装置1は、スピーカなどの音出力装置と接続又は内蔵してもよい。
【0033】
(3)学習フェーズ
次に、情報処理装置1が実行する学習フェーズでの処理について説明する。概略的には、情報処理装置1は、対象者の属性等に基づく分類ごとに推定モデルの学習を行う。このとき、情報処理装置1は、訓練データに含まれる観測特徴量を、対応するサンプル対象者の属性等、観測特徴量の環境情報等に基づきストレス傾向や生体情報において偏りがあるクラスタ(まとまり)に分割する。そして、情報処理装置1は、分割した観測特徴量のクラスタと正解のストレス値との相関等に基づき、ストレス推定モデルの入力に用いる観測特徴量(「ストレス推定特徴量」とも呼ぶ。)を選択する。このように、情報処理装置1は、ストレスデータと相関が高い観測特徴量をストレス推定特徴量として選定し、かつ、ストレス傾向や生体情報において偏りがあるクラスタごとに特化したストレス推定モデルの学習を行う。これにより、情報処理装置1は、学習に用いていない未知のデータに対して高精度にストレス推定を行うことが可能なストレス推定モデルを取得する。
【0034】
(3-1)機能ブロック
図3は、情報処理装置1の機能ブロックの一例である。情報処理装置1のプロセッサ11は、学習フェーズにおいて、機能的には、第1分割部14と、「N」(Nは2以上の整数)個の第2分割部15(151~15N)と、「M」(Mは2以上の整数)個の特徴量選択部16(1611~16NM)と、N個の推定モデル学習部17(171~17N)とを有する。なお、
図3では、データの授受が行われるブロック同士を実線により結んでいるが、データの授受が行われるブロックの組合せは
図3に限定されない。後述する他の機能ブロックの図においても同様である。また、訓練データ記憶部42は、機能的には、観測データ記憶部421と、ストレスデータ記憶部422とを有する。さらに、学習パラメータ記憶部43は、機能的には、学習すべきN個のストレス推定モデルのパラメータを夫々記憶する第1推定モデル情報記憶部431~第N推定モデル情報記憶部43Nを有する。
【0035】
第1分割部14は、学習用の観測特徴量を観測データ記憶部421から抽出し、抽出した観測特徴量を、対応する属性情報又は環境情報(例えば日時情報)の少なくとも一方に基づき、N個に分割する第1分割を行う。これにより、ストレスや生体特徴等に偏りがあるN個の観測特徴量のクラスタが形成される。なお、第1分割部14は、属性情報を属性情報記憶部40から抽出し、環境情報を観測データ記憶部421から抽出する。
【0036】
ここで、属性情報に基づく分割は、例えば、性格、性別、職種、人種、年齢、身長、体重、筋肉量、生活習慣、運動習慣又はこれらの組み合わせに基づく分割である。また、環境情報に基づく分割は、検査時の季節に基づく分割、時間帯に基づく分割、場所(屋外又は屋内か等)に基づく分割、又はこれらの組み合わせによる分割である。そして、第1分割部14は、第1分割に基づき分割した観測特徴量のクラスタを、クラスタの分類ごとに予め対応付けられた各第2分割部15(151~15N)へ供給する。
【0037】
なお、第1分割は、1つの観測特徴量をいずれか1つのクラスタに排他的に仕分ける態様に限らず、2個以上のクラスタに重複して仕分ける態様であってもよい。例えば、観測された季節に基づき第1分割を行う場合、「4月から6月に該当するクラスタ」、「6月から9月に該当するクラスタ」といったようにクラスタ間で重複した期間の割当てが行われているクラスタが存在してもよい。このことは、後述する第2分割においても同様である。
【0038】
また、第1分割部14は、好適には、訓練データを拡張した疑似データを生成する処理を行う。疑似データの生成については、「(3-3)訓練データの拡張」のセクションにて詳しく説明する。
【0039】
第2分割部15(151~15N)は、第1分割部14から供給されたクラスタごとの観測特徴量を、観測特徴量の観測対象又は観測時の対象者の活動状態に基づきM個のクラスタ(サブクラスタ)に分割する第2分割を行う。これにより、第1分割部14は、ストレス推定において扱いを異ならせるべき観測特徴量をさらに分割する。そして、各第2分割部151~15Nは、第2分割に基づき分割したM個の観測特徴量のサブクラスタを、特徴量選択部16(1611~16NM)に供給する。
【0040】
ここで、「観測対象」とは、観測特徴量が算出される際に用いた生データの観測対象であり、例えば発汗、加速度、皮膚温、脈波などの種々の生体的特徴が該当する。従って、「観測対象に基づく分割」は、例えば、生体的特徴に基づく観測特徴量の場合には、発汗に関する観測特徴量、加速度に関する観測特徴量、皮膚温に関する観測特徴量、脈波に関する観測特徴量等に分割することである。また、「活動状態に基づく分割」は、例えば、対象者の観測時の運動強度のレベル(例えば、静止状態、歩行状態、ランニング状態)に応じた分割である。なお、各観測特徴量に対応する観測対象及び活動状態を示す情報は、例えば、観測データ記憶部421において観測特徴量と関連付けられて記憶されている。
【0041】
特徴量選択部16(1611~16NM)は、第1分割及び第2分割に基づきN×M個に分割された観測特徴量のサブクラスタから、正解となるストレスデータとの相関に基づき、ストレス推定モデルに入力すべき観測特徴量であるストレス推定特徴量を選択する。ここでは、特徴量選択部16は、「R」(Rは0以上の整数)種類の観測特徴量を、ストレス推定特徴量として選択するものとする。特徴量選択部16の処理の詳細については後述する。なお、特徴量選択部16の数は、第1分割のクラスタごとに一律にM個設けられる代わりに、第1分割のクラスタごとに適切な数だけ設けられてもよい。同様に、Rの値についても特徴量選択部16ごとに異なってもよい。
【0042】
推定モデル学習部17(171~17N)は、特徴量選択部16が選択したストレス推定特徴量と、ストレスデータ記憶部422から参照したストレスデータとに基づき、第1分割部14が分割したクラスタごとに用意されたストレス推定モデルの学習を行う。この場合、各推定モデル学習部17は、M個の特徴量選択部16から供給されるM×R個のストレス推定特徴量をストレス推定モデルへの入力データとし、ストレスデータ記憶部422から参照した対応するストレスデータを正解データとする組を複数取得する。そして、各推定モデル学習部17は、上述の入力データと正解データの複数組に基づき、対応するストレス推定モデルの学習を行う。
【0043】
ストレス推定モデルの学習では、推定モデル学習部17は、例えば、上述の入力データと正解データの組を順に抽出し、ストレス推定モデルのパラメータを更新する。この場合、入力データを入力した場合にストレス推定モデルが出力する推定結果と正解データであるストレス値(ここではPSS値)との誤差(損失)が最小となるように、ストレス推定モデルのパラメータを決定する。損失を最小化するように上述のパラメータを決定するアルゴリズムは、勾配降下法や誤差逆伝播法などの機械学習において用いられる任意の学習アルゴリズムであってもよい。そして、各推定モデル学習部17は、学習した各ストレス推定モデルのパラメータを、夫々第1推定モデル情報記憶部431~第N推定モデル情報記憶部43Nに記憶する。
【0044】
なお、
図3において説明した第1分割部14、第2分割部15、特徴量選択部16及び推定モデル学習部17の各構成要素は、例えば、プロセッサ11がプログラムを実行することによって実現できる。また、必要なプログラムを任意の不揮発性記憶媒体に記録しておき、必要に応じてインストールすることで、各構成要素を実現するようにしてもよい。なお、これらの各構成要素の少なくとも一部は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組合せ等により実現してもよい。また、これらの各構成要素の少なくとも一部は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はマイクロコントローラ等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、上記の各構成要素から構成されるプログラムを実現してもよい。また、各構成要素の少なくとも一部は、ASSP(Application Specific Standard Produce)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又は量子プロセッサ(量子コンピュータ制御チップ)により構成されてもよい。このように、各構成要素は、種々のハードウェアにより実現されてもよい。以上のことは、後述する他の実施の形態においても同様である。さらに、これらの各構成要素は、例えば、クラウドコンピューティング技術などを用いて、複数のコンピュータの協働によって実現されてもよい。
【0045】
(3-2)特徴量選択部の詳細
次に、特徴量選択部16(1611~16NM)が実行する処理の詳細について説明する。
図4は、ある特徴量選択部16nm(「n」、「m」は、1≦n≦N、1≦m≦Mを満たす整数)の機能ブロックの一例である。特徴量選択部16nmは、機能的には、グループ生成部50と、相関算出部51と、ランキング部52と、選択部53とを有する。
【0046】
特徴量選択部16nmは、第2分割部15nから観測特徴量「Fp,q」を取得し、ストレスデータ記憶部422から観測特徴量Fp,qに対応する正解のストレス値(PSS値)「Sp」を取得する。ここで、「p」は、サンプル対象者のインデックス(1≦p≦P、Pは2以上の整数)を示し、「q」は、観測特徴量の種類のインデックス(1≦q≦Q、Qは「Q≧R」を満たす整数)を示す。なお、観測特徴量の種類は一般的に多数(例えば数万個)存在し、例えば発汗に関する特徴量の場合には、発汗の最大値、最小値、中央値、平均値、その他の任意の統計量などの種々の発汗に関する指標が該当する。
【0047】
グループ生成部50は、無作為に所定個数分の観測特徴量Fp,qをL(Lは1以上の整数)回抽出し、抽出した所定個数分の観測特徴量Fp,qを1つのグループとしてL個のグループを生成する。この場合、例えば、グループ生成部50は、サンプル対象者が100人存在する場合には、50人分のサンプル対象者を無作為にL回抽出し、各試行において抽出したサンプル対象者の観測特徴量Fp,qを1つのグループとして形成する。そして、グループ生成部50は、観測特徴量Fp,qの各グループを、相関算出部511~51Lに夫々供給する。
【0048】
相関算出部51(511~51L)は、グループ生成部50から供給された観測特徴量Fp,qのグループに基づき、観測特徴量Fp,qとストレス値Spとの相関(相関係数)を、観測特徴量Fp,qの種類qごとに算出する。相関係数は、ピアソンの積率相関係数、スピアマンの順位相関係数、ケンドールの順位相関係数のいずれか、又は複数の相関係数の平均など組み合わせて利用してもよい。言い換えると、相関算出部51は、グループ生成部50が生成したグループごと、かつ、観測特徴量Fp,qの種類qごとに、観測特徴量Fp,qとストレス値Spとの相関を算出する。
【0049】
ランキング部52は、L個の相関算出部511~51Lの算出結果に基づき、観測特徴量Fp,qの種類qのランク付けを行う。この場合、ランキング部52は、観測特徴量Fp,qの種類qごとに、L個の相関算出部511~51Lの算出結果に基づくスコア(「相関スコア」とも呼ぶ。)を算出し、相関スコアが高いほどランキングが上位であるとみなす。この場合、ランキング部52は、グループ間での相関の平均などの統計値と後述する符号反転度とに基づき、相関スコアを算出する。相関スコアの算出方法については後述する。
【0050】
選択部53は、ランキング部52が形成したランキングの上位R個の種類に該当する観測特徴量Fp,qを、ストレス推定特徴量として選択する。この場合、選択部53は、ストレス推定特徴量として選択した観測特徴量の種類を示す情報(「特徴量選択情報Ifs」とも呼ぶ。)を、学習パラメータ記憶部43に記憶する。後述するように、特徴量選択情報Ifsは、推定フェーズにおいて、ストレス推定モデルに入力するストレス推定特徴量を取得した観測特徴量から、ストレス推定モデルに入力するストレス推定特徴量を選択する処理に用いられる。
【0051】
ここで、ランキング部52による相関スコアの算出方法の具体例について説明する。
図5は、相関算出部511~51Lの算出結果に基づき、相関スコアを算出する対象である種類qに対する相関を集計したヒストグラムを示す。なお、ここでは、説明便宜上ヒストグラムを示しているが、ヒストグラムの生成は相関スコアの算出において必須の処理ではない。
【0052】
この場合、まず、相関算出部51は、相関算出部511~51Lの算出結果に基づき、対象の種類qに対して相関算出部511~51Lが算出した相関(相関係数)の平均(ここでは0.15)を算出する。さらに、相関算出部51は、符号反転度として、算出された相関の正負の符号を集計した場合の、少数派の符号の割合を算出する。
図5の例では、相関算出部51は、正の符号が多数派であることから、負の符号の割合(0.3)を、符号反転度として認識する。符号反転度は、0から0.5までの値域となる。そして、相関算出部51は、例えば、以下のように、対象の種類qに対する相関スコアを、相関の平均の絶対値に対し、1から符号反転度を引いた値(即ち0.5~1の値域)を重みとして乗じた値に定める。
相関スコア=|相関の平均|×(1-符号反転度)
図5の例では、種類qの相関スコアは、0.105(=|0.15|×0.7)となる。
【0053】
なお、相関スコアの算出方法は、上述の式に限られず、相関の平均と正の相関を有し、かつ、符号反転度と負の相関を有するように相関スコアを定めた任意の式又はルックアップテーブルを用いてもよい。
【0054】
特徴量選択部16nmは、
図4に示すような機能的構成を有することで、ストレス値と個人差によらずに安定的に相関がある観測特徴量を好適にストレス推定特徴量として選択することができる。
【0055】
(3-3)訓練データの拡張
次に、訓練データの拡張(Data Augmentation)の手法について説明する。一般的に、ストレス値が低いサンプルとストレス値が高いサンプルは不足する傾向がある。一方、慢性ストレスは時間経過によって急激に変化しない。以上を勘案し、第1分割部14は、正解となるストレス値を補間により生成する。
【0056】
図6は、あるサンプル対象者の観測データの測定期間におけるPSS値を測定するためのストレスアンケートのタイミングを明示した図である。
図6では、日時「t1」においてサンプル対象者の観測データの測定を開始すると共に、第1回のストレスアンケートを実施している。また、日時「t2」~「t4」においても、夫々、第2回~第4回のストレスアンケートを実施している。ストレスアンケートは、例えば1か月ごとに行われる。そして、各ストレスアンケートにより、対象のサンプル対象者のPSS値(実測PSS値)が測定されている。なお、時刻t1~時刻t4で測定された各実測PSS値は、実際には、アンケートにおいて対象とする期間でのストレス値に相当し、例えば実施されたアンケートが1か月間隔で実施されるアンケートである場合には、1か月間のストレス値に相当する。
【0057】
この場合、第1分割部14は、実測PSS値が測定される合間の期間において、一定の間隔により、実測PSS値を用いて補間(例えば線形補間)したPSS値(補間PSS値)を疑似データとして生成する。ここでは、第1分割部14は、日時t2から日時t3までの期間、及び、日時t3から日時t4までの期間において、夫々2個の補間PSS値を生成している。そして、第1分割部14は、これらの補間PSS値は、アンケートの実施間隔等に応じた所定期間のストレス値の正解データとみなす。ここで、観測データについては、アンケートの実施間隔等によらずに継続的に測定されており、これらの補間PSS値に対応する観測データについては、時刻t1~t4の間に生成されている。なお、時刻t1から時刻t2の期間については、時刻t1に近い補間ポイントでの補間PSS値に対応する観測データが存在しないことから、時刻t2に近い補間ポイントでの補間PSS値のみが生成されている。
【0058】
このように、第1分割部14は、慢性ストレスは急激に変化しないことを鑑み、補間PSS値を生成する。これにより、実質的な訓練データのデータ量を増やし、ストレス推定モデルの学習に必要な訓練データを好適に確保することができる。
【0059】
(3-4)処理フロー
図7は、第1実施形態において情報処理装置1が学習フェーズにおいて実行する学習処理の手順を示すフローチャートの一例である。
【0060】
まず、情報処理装置1は、ストレス推定モデルの学習に用いる訓練データと、訓練データに対応するサンプル対象者の属性情報又は/及び環境情報とを取得する(ステップS11)。この場合、例えば、情報処理装置1は、訓練データ及び環境情報を訓練データ記憶部42から取得し、属性情報を属性情報記憶部40から取得する。
【0061】
そして、情報処理装置1の第1分割部14は、属性情報が示すサンプル対象者の属性、又は、日時情報などの環境情報が示す計測時の環境(例えば季節等)の少なくともいずれかに基づき、訓練データの観測特徴量を分割する第1分割を行う(ステップS12)。これにより、第1分割部14は、N個のクラスタを生成するように観測特徴量を分割する。
【0062】
次に、情報処理装置1の第2分割部15は、観測特徴量の観測対象と対応するサンプル対象者の観測時の活動状態とによる第2分割に基づき、観測特徴量を分割する(ステップS13)。この場合、例えば、第2分割部15は、観測された生体特徴の種類、サンプル対象者の運動強度等に応じた第2分割に基づき、N個の観測特徴量のクラスタの各々に対し、M個の観測特徴量のサブクラスタを生成する。
【0063】
次に、情報処理装置1の特徴量選択部16は、サブクラスタごとに、無作為によるグループを生成し、生成したグループにおいて、観測特徴量の種類ごとに、訓練データに含まれるストレスデータとの相関を算出する(ステップS14)。さらに、特徴量選択部16は、サブクラスタごとに、相関及び符号反転度に応じた観測特徴量の種類のランク付けを行い、上位個数R個の観測特徴量の種類をストレス推定特徴量として選択する(ステップS15)。
【0064】
そして、情報処理装置1の推定モデル学習部17は、ストレス推定特徴量と、訓練データに含まれる、対応する正解のストレス値を示すストレスデータとに基づき、第1分割により分けられたクラスタごとのストレス推定モデルの学習を行う(ステップS16)。そして、情報処理装置1は、ステップS15で選択したストレス推定特徴量に関する特徴量選択情報Ifsと、ステップS16で学習されたストレス推定モデルのパラメータとを、学習結果として出力する。具体的には、情報処理装置1は、特徴量選択情報Ifsとストレス推定モデルのパラメータとを、学習パラメータ記憶部43に記憶させる。これにより、情報処理装置1は、推定フェーズにおいて必要な情報を記憶装置4に記憶させることができる。
【0065】
(4)推定フェーズ
次に、情報処理装置1が実行する推定フェーズでの処理について説明する。情報処理装置1は、学習フェーズにおいて学習されたストレス推定モデルに基づき、推定対象者のストレス値を推定する。
【0066】
図8は、情報処理装置1の推定フェーズにおける機能ブロックの一例である。情報処理装置1のプロセッサ11は、推定フェーズにおいて、機能的には、分類部34と、N個の特徴量選択部36(361~36N)と、N個のストレス推定部37(371~37N)とを有する。ここで、学習パラメータ記憶部43に含まれる第1推定モデル情報記憶部431~第N推定モデル情報記憶部43Nは、学習フェーズにおいて学習が既に行われたN個のストレス推定モデルのパラメータを記憶している。
【0067】
分類部34は、推定対象者の観測特徴量を観測データ記憶部41から抽出し、抽出した観測特徴量を、対応する属性情報又は環境情報の少なくとも一方に基づき、使用するストレス推定モデル(第1推定モデル~第N推定モデル)に応じて分類する。分類部34による観測特徴量の分類方法は、第1分割部14による第1分割において行うクラスタ生成方法と同一である。従って、第1分割部14が第2分割部15n(nは1~Nの任意の整数)に供給するクラスタと同一分類の属性情報又は環境情報に対応する推定対象者の観測特徴量は、特徴量選択部36nに供給される。即ち、第2分割部15nと特徴量選択部36nとは、同一分類の観測特徴量を扱う。
【0068】
なお、分類部34は、推定対象者の観測特徴量をいずれか一つのストレス推定モデルに割り当てるように分類する態様に限らず、2つ以上のストレス推定モデルに重複して割り当てるように観測特徴量を分類してもよい。
【0069】
特徴量選択部36(361~36N)は、学習パラメータ記憶部43に記憶された特徴量選択情報Ifsに基づき、分類部34から供給された観測特徴量からストレス推定特徴量を選択する。この場合、特徴量選択部36n(nは1~Nの任意の整数)は、夫々、分類部34が供給する観測特徴量から、特徴量選択部16n1~特徴量選択部16nMが生成した特徴量選択情報Ifsが示すストレス推定特徴量の種類と同一種類の観測特徴量を、ストレス推定特徴量として抽出する。そして、特徴量選択部36nは、抽出したストレス推定特徴量を、対応するストレス推定部37nに供給する。
【0070】
ストレス推定部37(371~37N)は、ストレス推定モデルに基づき推定対象者のストレス値を推定する。この場合、ストレス推定部37n(nは1~Nの任意の整数)は、対応する第n推定モデル情報記憶部43nを参照することで、対応する第n推定モデルを構成する。そして、ストレス推定部37nは、構成した第n推定モデルに対し、対応する特徴量選択部36nから供給されたストレス推定特徴量を入力することで第n推定モデルが出力する推定対象者のストレス値を取得する。そして、ストレス推定部37nは、第n推定モデルが出力するストレス値を、出力制御部38に供給する。
【0071】
出力制御部38は、推定された推定対象者のストレス値(ストレス推定値)に基づく出力を行う。例えば、出力制御部38は、ストレス推定値に関する情報を表示するための表示信号S2を生成し、当該表示信号S2を表示装置3に供給することで、ストレス推定値に関する情報を表示装置3に表示させる。ここで、出力制御部38は、複数のストレス推定部37からストレス値を取得した場合には、取得した複数のストレス値の平均値、中央値、最大値その他の代表する統計的な値を表す統計値を、推定対象者のストレス推定値として表示装置3に表示させる。
【0072】
なお、出力制御部38は、ストレス推定値そのものを表示する制御を行う代わりに、又はこれに加えて、ストレス推定値と所定の閾値との比較に基づき判定されるストレスのレベルに関する情報、又は/及び、当該レベルに応じたアドバイスに関する情報を表示する制御を行ってもよい。なお、この場合の表示装置3の閲覧者は、例えば、推定対象者であってもよく、推定対象者を管理又は監督する者であってもよい。また、出力制御部38は、図示しない音出力装置によりストレス推定値に関する情報の音声出力を行ってもよい。
【0073】
図9は、情報処理装置1が推定フェーズにおいて実行するストレス推定処理の手順を示すフローチャートの一例である。ストレス推定処理を行うタイミングは、入力信号S1に基づきユーザが要求したタイミングであってもよく、予め定められたタイミングであってもよい。
【0074】
まず、情報処理装置1は、推定対象者の観測特徴量と、推定対象者の属性情報又は/及び環境情報とを取得する(ステップS21)。この場合、例えば、情報処理装置1は、観測特徴量及び環境情報を観測データ記憶部41から取得し、属性情報を属性情報記憶部40から取得する。
【0075】
次に、情報処理装置1の分類部34は、属性情報が示す推定対象者の属性、又は、日時情報などの環境情報が示す計測時の環境(例えば季節等)の少なくともいずれかに基づき、観測特徴量を分類する(ステップS22)。これにより、分類部34は、第1推定モデル~第N推定モデルの少なくともいずれかに観測特徴量を分類する。なお、観測特徴量は、複数のストレス推定モデルに重複して分類されてもよい。
【0076】
そして、情報処理装置1の特徴量選択部36は、対象のストレス推定モデルに入力する観測特徴量を選択する(ステップS23)。この場合、特徴量選択部36は、分類部34から観測特徴量が供給された場合に、対応する特徴量選択情報Ifsを参照し、ストレス推定モデルに入力する観測特徴量であるストレス推定特徴量を選択する。
【0077】
そして、情報処理装置1のストレス推定部37は、対象のストレス推定モデルに基づき、ストレス推定値を算出する(ステップS24)。この場合、ストレス推定部37は、特徴量選択部36からストレス推定特徴量が供給された場合に、学習パラメータ記憶部43を参照して対応するストレス推定モデルを構成し、構成したストレス推定モデルにストレス推定特徴量を入力することで、ストレス推定値を算出する。なお、情報処理装置1は、複数のストレス推定モデルを用いた場合には、これらのストレス推定モデルの推定結果を統合したストレス推定値を決定する。そして、情報処理装置1の出力制御部38は、ストレス推定値に関する情報を出力する(ステップS25)。
【0078】
(5)変形例
ストレス推定モデルは、第1分割により形成されたクラスタごとに設けられる代わりに、第1分割及び第2分割により形成されたサブクラスタごとに設けられてもよい。
【0079】
この場合、学習フェーズにおいて、情報処理装置1は、N×M個存在する特徴量選択部1611~16NMの夫々に対応するストレス推定モデルを設け、これらのストレス推定モデルを対応する特徴量選択部16が出力するストレス推定特徴量を入力データとし、対応するストレスデータが示すストレス値を正解データとして学習を行う。また、推定フェーズでは、特徴量選択部36は、学習フェーズでの特徴量選択部16と同様、N×M個存在し、各ストレス推定部37は、対応するM個の特徴量選択部36が各々出力するストレス推定特徴量を、対応するM個のストレス推定モデルに入力する。これにより、ストレス推定部37は、M個のストレス値を取得し、M個のストレス値を統合したストレス推定値を決定する。
【0080】
このように、本変形例においても、情報処理装置1は、ストレス傾向において偏りがあるクラスタごとに学習したストレス推定モデルに基づき、学習に用いていない観測特徴量から推定対象者のストレス状態を正確に推定することができる。
【0081】
また、情報処理装置1が推定するストレスは、慢性ストレスに限られず、比較的短期(数分~1日程度)におけるストレスである短期ストレスであってもよい。
【0082】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態におけるストレス推定システム100Aの概略構成を示す。第2実施形態に係るストレス推定システム100Aは、第1実施形態の情報処理装置1の推定フェーズの処理を行うストレス推定装置1Aと、第1実施形態の情報処理装置1の学習フェーズの処理を行う学習装置1Bと、推定対象者が使用する端末装置8及びセンサ5とを有する。以後では、第1実施形態と同一構成要素については、適宜同一符号を付し、その説明を省略する。
【0083】
図10に示すように、ストレス推定システム100Aは、主に、サーバとして機能するストレス推定装置1Aと、記憶装置4と、クライアントとして機能する端末装置8とを有する。ストレス推定装置1Aと端末装置8とは、ネットワーク7を介してデータ通信を行う。
【0084】
学習装置1Bは、
図2に示す情報処理装置1のハードウェア構成と同一のハードウェア構成を有し、学習装置1Bのプロセッサ11は、
図3に示される機能ブロックを有する。そして、学習装置1Bは、記憶装置4が記憶する情報に基づき、ストレス推定モデルのパラメータ更新及び特徴量選択情報Ifsの生成などの学習処理を行う。
【0085】
端末装置8は、推定対象者となる利用者(ユーザ)が使用する端末であり、入力機能、表示機能、及び通信機能を有し、
図1に示される入力装置2及び表示装置3等として機能する。端末装置8は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォンなどのタブレット型端末、PDA(Personal Digital Assistant)などであってもよい。端末装置8は、利用者が装着するウェアラブルセンサなどのセンサ5と電気的に接続し、センサ5が出力する推定対象者の生体信号等(即ち、
図1におけるセンサ信号S3に相当する情報)を、ネットワーク7を介してストレス推定装置1Aに送信する。また、端末装置8は、アンケートの回答に関するユーザ入力などを受け付け、ユーザ入力により生成された情報(
図1における入力信号S1に相当する情報)を、ストレス推定装置1Aに送信する。
【0086】
ストレス推定装置1Aは、
図2に示す情報処理装置1のハードウェア構成と同一のハードウェア構成を有し、ストレス推定装置1Aのプロセッサ11は、
図8に示される機能ブロックを有する。そして、ストレス推定装置1Aは、
図1における入力信号S1及びセンサ信号S3に相当する情報を、ネットワーク7を介して端末装置8から受信し、受信した情報を記憶装置4に記憶する。そして、ストレス推定装置1Aは、学習装置1Bが学習したストレス推定モデルのパラメータ及び特徴量選択情報Ifsを参照し、推定対象者のストレス推定処理を実行する。また、ストレス推定装置1Aは、端末装置8からの表示要求に基づき、ストレス推定結果を出力するための出力信号を、ネットワーク7を介して端末装置8へ送信する。
【0087】
このように、第2実施形態におけるストレス推定システム100Aは、学習フェーズと推定フェーズとを別の装置が実行し、ストレス推定モデルの学習及びストレス推定モデルを用いたストレス推定等を第1実施形態と同様に行うことができる。また、第2実施形態では、ストレス推定装置1Aは、推定対象者が使用する端末から受信する推定対象者の生体信号等に基づき推定対象者のストレス状態の推定を行い、推定対象者に推定結果を端末上において好適に提示することができる。
【0088】
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態における学習装置1BXのブロック図である。情報処理装置1Xは、主に、第1分割手段14Xと、第2分割手段15Xと、特徴量選択手段16Xと、学習手段17Xと、を有する。なお、学習装置1BXは、複数の装置により構成されてもよい。
【0089】
第1分割手段14Xは、対象者の観測特徴量を、対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき分割する第1分割を行う。第1分割手段14Xは、例えば、第1実施形態(変形例を含む、以下同じ)又は第2実施形態における第1分割部14とすることができる。第2分割手段15Xは、観測特徴量を、当該観測特徴量の観測対象又は対象者の活動状態の少なくとも一方に基づき分割する第2分割を行う。第2分割手段15Xは、例えば、第1実施形態又は第2実施形態における第2分割部15とすることができる。
【0090】
特徴量選択手段16Xは、第1分割及び前記第2分割に基づき分割された観測特徴量から、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量を選択する。特徴量選択手段16Xは、例えば、第1実施形態又は第2実施形態における特徴量選択部16とすることができる。学習手段17Xは、ストレス推定特徴量と、当該ストレス推定特徴量に対応する正解のストレス値とに基づき、少なくとも第1分割により分けられたまとまりごとに、ストレス推定モデルの学習を行う。学習手段17Xは、例えば、第1実施形態又は第2実施形態における推定モデル学習部17とすることができる。
【0091】
図12は、第3実施形態において学習装置1BXが実行するフローチャートの一例である。まず、第1分割手段14Xは、対象者の観測特徴量を、対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき分割する第1分割を行う(ステップS31)。また、第2分割手段15Xは、観測特徴量を、当該観測特徴量の観測対象又は対象者の活動状態の少なくとも一方に基づき分割する第2分割を行う(ステップS32)。さらに、特徴量選択手段16Xは、第1分割及び前記第2分割に基づき分割された観測特徴量から、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量を選択する(ステップS33)。そして、学習手段17Xは、ストレス推定特徴量と、当該ストレス推定特徴量に対応する正解のストレス値とに基づき、少なくとも第1分割により分けられたまとまりごとに、ストレス推定モデルの学習を行う(ステップS34)。
【0092】
第3実施形態によれば、学習装置1BXは、ストレス傾向において偏りがあるまとまりごとにストレス推定モデルを学習し、ストレス推定を高精度に実行可能なストレス推定モデルを学習することができる。
【0093】
なお、上述した各実施形態において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータであるプロセッサ等に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記憶媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記憶媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0094】
その他、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが以下には限られない。
【0095】
[付記1]
対象者の観測特徴量を、前記対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき分割する第1分割を行う第1分割手段と、
前記観測特徴量を、当該観測特徴量の観測対象又は前記対象者の活動状態の少なくとも一方に基づき分割する第2分割を行う第2分割手段と、
前記第1分割及び前記第2分割に基づき分割された観測特徴量から、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量を選択する特徴量選択手段と、
前記ストレス推定特徴量と、当該ストレス推定特徴量に対応する正解のストレス値とに基づき、少なくとも前記第1分割により分けられたまとまりごとに、ストレス推定モデルの学習を行う学習手段と、
を有する学習装置。
[付記2]
前記特徴量選択手段は、前記第1分割及び前記第2分割に基づき分割された観測特徴量と、前記ストレス値との相関に基づき、前記ストレス推定特徴量を選択する、付記1に記載の学習装置。
[付記3]
前記特徴量選択手段は、前記第1分割及び前記第2分割に基づき分割された観測特徴量から無作為抽出により複数のグループを形成し、前記グループごとに算出した前記相関に関する前記複数のグループ全体での集計結果に基づき、前記ストレス推定特徴量を選択する、付記2に記載の学習装置。
[付記4]
前記特徴量選択手段は、前記集計結果として、前記複数のグループにおける前記相関の統計値と、前記複数のグループにおける前記相関の正負符号の割合とを算出する、付記3に記載の学習装置。
[付記5]
前記学習手段は、前記第1分割及び前記第2分割により分けられたまとまりごとに、前記ストレス推定モデルの学習を行う、付記1に記載の学習装置。
[付記6]
前記学習手段は、前記特徴量選択手段が選択したストレス推定特徴量に関する情報である特徴量選択情報と、前記学習手段により学習された前記ストレス推定モデルのパラメータとを学習結果として出力する、付記1~5のいずれか一項に記載の学習装置。
[付記7]
前記第1分割手段は、前記正解のストレス値が測定されていないときのストレス値を示す疑似データを、前記正解のストレス値の補間により生成する、付記1~6のいずれか一項に記載の学習装置。
[付記8]
前記第1分割手段は、前記観測特徴量の一部が2以上のまとまりに重複して属するように前記第1分割を行う、付記1~7のいずれか一項に記載の学習装置。
[付記9]
ストレス推定の対象となる推定対象者の観測特徴量を、前記推定対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき分類を行う分類手段と、
前記分類に基づき、前記観測特徴量から、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量を選択する特徴量選択手段と、
前記分類に基づき、ストレス推定モデルを選択し、選択した前記ストレス推定モデルに前記ストレス推定特徴量を入力することで、前記推定対象者のストレス値を推定するストレス推定手段と、
を有するストレス推定装置。
[付記10]
前記ストレス推定手段は、付記1~8のいずれか一項に記載の学習装置により学習されたストレス推定モデルに基づき、前記ストレス値を推定する、付記9に記載のストレス推定装置。
[付記11]
前記特徴量選択手段は、前記ストレス推定特徴量として、付記1~8のいずれか一項に記載の学習装置により選択されたストレス推定特徴量と同一種類の観測特徴量を選択する、付記9または10に記載のストレス推定装置。
[付記12]
前記分類手段は、前記観測特徴量を複数に分類し、
前記ストレス推定手段は、前記複数の分類に基づき選択された複数のストレス推定モデルが出力する推定結果を統合することで、前記ストレス値を推定する、付記9~11のいずれか一項に記載のストレス推定装置。
[付記13]
コンピュータが、
対象者の観測特徴量を、前記対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき分割する第1分割を行い、
前記観測特徴量を、当該観測特徴量の観測対象又は前記対象者の活動状態の少なくとも一方に基づき分割する第2分割を行い、
前記第1分割及び前記第2分割に基づき分割された観測特徴量から、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量を選択し、
前記ストレス推定特徴量と、当該ストレス推定特徴量に対応する正解のストレス値とに基づき、少なくとも前記第1分割により分けられたまとまりごとに、ストレス推定モデルの学習を行う、
学習方法。
[付記14]
コンピュータが、
ストレス推定の対象となる推定対象者の観測特徴量を、前記推定対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき分類を行い、
前記分類に基づき、前記観測特徴量から、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量を選択し、
前記分類に基づき、ストレス推定モデルを選択し、選択した前記ストレス推定モデルに前記ストレス推定特徴量を入力することで、前記推定対象者のストレス値を推定する、
ストレス推定方法。
[付記15]
対象者の観測特徴量を、前記対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき分割する第1分割を行い、
前記観測特徴量を、当該観測特徴量の観測対象又は前記対象者の活動状態の少なくとも一方に基づき分割する第2分割を行い、
前記第1分割及び前記第2分割に基づき分割された観測特徴量から、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量を選択し、
前記ストレス推定特徴量と、当該ストレス推定特徴量に対応する正解のストレス値とに基づき、少なくとも前記第1分割により分けられたまとまりごとに、ストレス推定モデルの学習を行う処理をコンピュータに実行させるプログラムが格納された記憶媒体。
[付記16]
ストレス推定の対象となる推定対象者の観測特徴量を、前記推定対象者の属性又は環境の少なくとも一方に基づき分類を行い、
前記分類に基づき、前記観測特徴量から、ストレス推定に用いる特徴量であるストレス推定特徴量を選択し、
前記分類に基づき、ストレス推定モデルを選択し、選択した前記ストレス推定モデルに前記ストレス推定特徴量を入力することで、前記推定対象者のストレス値を推定する処理をコンピュータに実行させるプログラムが格納された記憶媒体。
【0096】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【符号の説明】
【0097】
1 情報処理装置
1A ストレス推定装置
1B、1BX 学習装置
2 入力装置
3 表示装置
4 記憶装置
5 センサ
8 端末装置
100、100A ストレス推定システム