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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】光ファイバセンサおよび変化検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
G01H9/00 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023529415
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2021024168
(87)【国際公開番号】W WO2022269911
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】河野 航
(72)【発明者】
【氏名】樋野 智之
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/050557(WO,A1)
【文献】特開2021-067681(JP,A)
【文献】特開2012-068081(JP,A)
【文献】特開平04-307328(JP,A)
【文献】特開2000-182158(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104990620(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108645498(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 9/00
G01V 8/00 - 8/26
G01D 5/26 - 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの敷設位置の近傍の音源を検知する光ファイバセンサであって、
前記光ファイバに設定される評価対象区間を、音源の存在を検知するときに第1の区間に設定し音源の方位を推定するときにはそれぞれが該第1の区間よりも短い複数の第2の区間に設定する設定手段と、
前記光ファイバからの光の状態変化を抽出する抽出手段と、
前記評価対象区間における前記光の状態変化の時系列データに基づいて前記光ファイバの敷設位置の近傍の音源を検知する検知手段と
を備える光ファイバセンサ。
【請求項2】
前記光の状態変化は、前記光ファイバからの後方散乱光の位相差である
請求項1記載の光ファイバセンサ。
【請求項3】
前記設定手段は、前記評価対象区間の位相差の時系列データの振幅の時間平均が所定値を超えたと判定したときに、前記評価対象区間を、前記第1の区間と前記第2の区間との間で切り替える
請求項2記載の光ファイバセンサ。
【請求項4】
前記位相差の情報を含む信号に基づいて該信号の特徴を判定する特徴判定手段を備え、
前記設定手段は、前記判定された特徴があらかじめ定められている所定の音響特徴に合致していると前記特徴判定手段が判定したときに、前記評価対象区間を、前記第1の区間と前記第2の区間との間で切り替える
請求項2または請求項3記載の光ファイバセンサ。
【請求項5】
前記評価対象区間を、それぞれが前記第2の区間よりも短い複数の短区間に設定する第2の設定手段と、
前記複数の短区間のそれぞれの位相差の時系列データの振幅の時間平均の最大値を呈する短区間を特定する特定手段と
を備える請求項2から請求項4のうちのいずれか1項に記載の光ファイバセンサ。
【請求項6】
前記設定手段は、前記第2の区間を、前記第1の区間の長さの半分よりも短い長さに設定する
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の光ファイバセンサ。
【請求項7】
音響信号に対して共振する円筒形の共振媒体に巻き付けられた前記光ファイバの全長または一部で、1つの光ファイバマイクロフォンが形成されている
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の光ファイバセンサ。
【請求項8】
光ファイバの敷設位置の近傍の音源を検知する変化検知方法であって、
前記光ファイバに設定される評価対象区間を、音源の存在を検知するときに第1の区間に設定し音源の方位を推定するときにはそれぞれが該第1の区間よりも短い複数の第2の区間に設定し、
前記光ファイバからの光の状態変化を抽出し、
前記評価対象区間における前記光の状態変化の時系列データに基づいて前記光ファイバの敷設位置の近傍の音源を検知する
変化検知方法。
【請求項9】
前記光の状態変化は、前記光ファイバからの後方散乱光の位相差である
請求項8記載の変化検知方法。
【請求項10】
コンピュータに、
ファイバに設定される評価対象区間を、音源の存在を検知するときに第1の区間に設定し音源の方位を推定するときにはそれぞれが該第1の区間よりも短い複数の第2の区間に設定する処理と、
前記光ファイバからの光の状態変化を抽出する処理と、
前記評価対象区間における前記光の状態変化の時系列データに基づいて前記光ファイバの敷設位置の近傍の音源を検知する処理とを実行させる
ための変化検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバセンサおよび光ファイバセンサを用いた変化検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空港や軍事基地などの大規模な重要施設に対する不審者や不審物の侵入を監視するための広域監視システムがある。広域監視システムの監視対象の一例としてドローンが挙げられる。ドローンを監視するために、マイクロフォンなどの音響センサを利用する方法がある(例えば、特許文献1参照)。ドローンは、飛行状態特有の音響信号を発生させながら飛行する。したがって、ドローンが発生する音響信号を捉えることによって、ドローンの存在や方位などを検出できる。なお、特許文献1には、音響センサによって得られた飛行物体の音響信号とあらかじめ取得されている音声データとのマッチングの結果に基づいて、ドローンを識別することが記載されている。
【0003】
また、複数のマイクロフォンを用いて音源の方位を推定する推定装置がある(例えば、特許文献2参照)。例えば、マイクロフォンアレイ(複数のマイクロフォンの集合)が、ある地点に設置される。推定装置は、各マイクロフォンの相対位置情報と、各マイクロフォンの出力から測定される音響遅延時間の関係性とを用いて、マイクロフォンアレイからドローンへの方位を推定する。
【0004】
しかし、大規模な施設を監視する場合には、多数のマイクロフォンアレイを設置する必要がある。したがって、広域監視システムを構築するために大きなコストが生ずる。
【0005】
広域監視システムを構築する場合、長距離にわたって連続的に監視を行うことができる光ファイバセンサを用いる光ファイバセンシングが、コストなどの観点から有用である。光ファイバセンシングは、光ファイバを利用して、音や振動などを測定する技術である。光ファイバセンシングでは、光ファイバ自体がセンサになる。本明細書では、光ファイバと検出器とを含むシステムを、光ファイバセンサという。また、光ファイバセンシングに基づく音響センサを、光ファイバマイクロフォンということがある。複数の光ファイバマイクロフォンの集合を、光ファイバマイクロフォンアレイということがある。
【0006】
光ファイバセンサのタイプの一つに、分布型の光ファイバセンサがある。分布型の光ファイバセンサとして、例えば、レーリー(Rayleigh)散乱による散乱光(レーリー散乱光)を利用する光ファイバセンサがある。レーリー散乱は、光ファイバコア中の微粒子(不純物)による光の散乱である。レーリー散乱光を利用する光ファイバセンサにおける検出装置は、レーリー散乱による後方散乱光を検波して得られる信号に基づいて、音や振動に起因する光ファイバの物理的変化を検知できる。
【0007】
光ファイバにおけるある区間が到来物の影響(例えば、到来する音や振動)を受けると、その区間において光ファイバに伸縮が生ずる。換言すれば、光ファイバの長手方向にひずむが生ずる。その結果、その区間で発生する後方散乱光の強度(または振幅)および位相が変化する。強度の変化または位相の変化を観測することによって、到来物の影響を検知できる。すなわち、光ファイバセンサを、音響センサや振動センサとして使用できる。
【0008】
後方散乱光の位相の変化を観測する場合、検出器は、区間の始点での後方散乱光の位相と終点での後方散乱光の位相との差(位相差)を評価するように構成されることがある。一般に、そのような評価対象区間は、ゲージ長と呼ばれる。以下、評価対象区間(ゲージ長)を、単に、区間ということがある。
【0009】
多数のマイクロフォンアレイを設置するのではなく光ファイバセンサを設置する場合には、大規模な施設を監視するための広域監視システムを低コストで構築できる。また、光ファイバセンサによって広域監視システムを構築する場合には、マイクロフォンアレイを使用する場合に比べて、環境変化に対する耐性が高くなるとともに、電磁ノイズの影響を受けにくいという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2017-72557号公報
【文献】国際公開第2017/216999号
【文献】特開2012-68081号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】R. O. Schmidt, "Multiple emitter location and signal parameter estimation", IEEE Transactions on Antennas and Propagation, vol. AP-34, NO. 3, pp.276-280, March 1986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
例えば、1つの光ファイバの全長をゲージ長として設定する場合、光ファイバで1つの光ファイバマイクロフォンが形成される。その場合、光ファイバマイクロフォンの集音に関する性能は、単一のマイクロフォンの性能である。単一のマイクロフォンでは、音響信号のレベルが低い場合に音源の位置を正確に検知することが難しいという課題がある。特に、背景ノイズと同等、またはそれよりも小さな振幅を持つ音響信号に対して、この課題は顕著に現れる。
【0013】
その結果、例えば、1つの光ファイバマイクロフォンを利用して不審者や不審物の侵入を監視するように構成された広域監視システムでは、広範囲での監視を行うことができるものの、監視の精度(例えば、不審者や不審物の侵入位置を特定すること)が高くないという課題がある。
【0014】
なお、非特許文献1には、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法を用いて方位を推定する方法が記載されている。
【0015】
本発明は、光ファイバセンシングを利用して周辺環境の変化を検知するときに、高い検知性能を有する光ファイバセンサおよび変化検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による光ファイバセンサは、光ファイバに設定される評価対象区間を、音源の存在を検知するときに第1の区間に設定し音源の方位を推定するときにはそれぞれが該第1の区間よりも短い複数の第2の区間に設定する設定手段と、光ファイバからの光の状態変化を抽出する抽出手段と、評価対象区間における光の状態変化の時系列データに基づいて光ファイバの敷設位置の近傍の音源を検知する検知手段とを含む。
【0017】
本発明による変化検知方法は、光ファイバに設定される評価対象区間を、音源の存在を検知するときに第1の区間に設定し音源の方位を推定するときにはそれぞれが該第1の区間よりも短い複数の第2の区間に設定し、光ファイバからの光の状態変化を抽出し、評価対象区間における光の状態変化の時系列データに基づいて光ファイバの敷設位置の近傍の音源を検知する。
【0018】
本発明による変化検知プログラムは、コンピュータに、光ファイバに設定される評価対象区間を、音源の存在を検知するときに第1の区間に設定し音源の方位を推定するときにはそれぞれが該第1の区間よりも短い複数の第2の区間に設定する処理と、光ファイバからの光の状態変化を抽出する処理と、評価対象区間における光の状態変化の時系列データに基づいて光ファイバの敷設位置の近傍の音源を検知する処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光ファイバセンシングを利用して周辺環境の変化を検知する場合の検知性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】光ファイバセンサの構成例を説明するための説明図である。
図2】方位推定モードにおける評価対象区間を説明するための説明図である。
図3】第1の実施形態の光ファイバセンサの構成例を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態における判定部の構成例を示すブロック図である。
図5】音源方位推定部の構成例を示すブロック図である。
図6】第1の実施形態の光ファイバセンサの動作を示すフローチャートである。
図7】音響振幅データに基づいて不審物の音源が存在するか否かを検出する処理を説明するための説明図である。
図8】第2の実施形態における判定部の構成例を示すブロック図である。
図9】第2の実施形態の光ファイバセンサの動作を示すフローチャートである。
図10】第3の実施形態における判定部の構成例を示すブロック図である。
図11】第3の実施形態の光ファイバセンサの動作を示すフローチャートである。
図12】CPUを有するコンピュータの一例を示すブロック図である。
図13】光ファイバセンサの主要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
以下の説明では、光ファイバセンサの周辺環境の変化の検知対象として主としてドローンの飛翔音や不審物の接近に基づく振動を例にする。しかし、以下に説明する実施形態は、ドローンの飛翔音以外の周辺環境の変化の検知にも適用可能である。他の周辺環境の変化の一例として、温度変化や、光ファイバの敷設位置の近傍の建造物などの状態変化が挙げられる。
【0023】
図1は、光ファイバセンサの構成例を説明するための説明図である。図1に示すように、光ファイバセンサは、光ファイバ11と、検出器12と、複数の光ファイバマイクロフォン13を含む光ファイバマイクロフォンアレイ14とを含む。図1には、4つの光ファイバマイクロフォン13が例示されている。光ファイバマイクロフォン13の数および設置位置は任意である。例えば、複数の光ファイバマイクロフォン13は、1つの直線上に配列されてもよい。また、複数の光ファイバマイクロフォン13が、1つの平面の任意の位置に設置されるようにしてもよい。また、複数の光ファイバマイクロフォン13が、3次元空間における任意の位置に設置されるようにしてもよい。
【0024】
図1において、左側に検知モードでの使用形態が示されている。右側に方位推定モードでの使用形態が示されている。検知モードは、音源(本実施形態では、ドローン)10からの音(例えば、ドローンの飛翔音)を検知するためのモードである。方位推定モードは、音源10の位置を推定するためのモードである。したがって、方位推定モードにおいて、音源10の方位が推定される。なお、方位推定モードにおける評価対象区間は、検知モードにおける評価対象区間よりも短い。
【0025】
図1に示すように、光ファイバ11において、始端(例えば、図1における検知モードでの位置Y)と終端(例えば、図1における検知モードでの位置X)との間に、複数の光ファイバマイクロフォン13が形成される。光ファイバマイクロフォン13は、音響信号に対して共振する円筒型の共振媒体15に、たわみが生じないように光ファイバ11がコイル状に巻き付けられることによって形成される。すなわち、なお、光ファイバマイクロフォン13は、共振媒体15と光ファイバ11とで形成される。また、各々の光ファイバマイクロフォン13は、共振媒体15に巻き付けられた光ファイバ11の全長で形成されてもよいが、共振媒体15に巻き付けられた光ファイバ11の一部で形成されてもよい。音響信号(具体的には、音圧)によって共振媒体15に歪みが生じると、光ファイバ11が、音響信号の大きさに応じて伸縮する。すると、光ファイバ11を通過する光の経路長が変化する。その結果、レーリー散乱による後方散乱光の振幅および位相が変化する。検出器12は、後方散乱光の位相の変化に基づいて、光ファイバセンサの周辺環境の変化を検出することができる。
【0026】
なお、円筒型の共振媒体15による光ファイバマイクロフォン13は、例えば、特許文献3に開示されている。
【0027】
図1において、Lは、検知モードにおける評価対象区間を示す。評価対象区間は、測定区間と表現されてもよい。図1に示す例では、検知モードでは、評価対象区間L(第1の区間)は、始端Yと終端Xとの間の光ファイバ11の全長で定義される。
【0028】
図2は、方位推定モードにおける評価対象区間を説明するための説明図である。図2に示すように、方位推定モードでは、評価対象区間l(第2の区間)は、共振媒体15に光ファイバ11が巻き付けられた部分の始点yと終点xとの間の光ファイバ11の全長で定義される。始点yと終点xとの間を区間という。図2には、1つの光ファイバマイクロフォン13が示されているが、光ファイバマイクロフォンアレイ14に含まれる他の光ファイバマイクロフォン13についても、同様に評価対象区間lが定義される。図1には、4つの評価対象区間lが例示されている。
【0029】
図1に示す例では、方位推定モードにおいて、光ファイバ11における共振媒体15に対応する部分が、各々の光ファイバマイクロフォン13(図1に示す例では、4つの光ファイバマイクロフォン13)として利用されている。すなわち、評価対象区間が、共振媒体15に対応して設定されている。しかし、2つ以上の共振媒体15にまたがって評価対象区間が設定されてもよく、l≦L/2を満たせば、光ファイバマイクロフォンアレイ14の内部に、光ファイバマイクロフォン13とみなすことができる部分が2つ以上存在し、光ファイバマイクロフォンアレイ14に方位推定能力があることが保証される。
【0030】
なお、実際には、評価対象区間は、検出器12が測定点(例えば、始点y)と、そこから測定区間の距離だけ離れた参照点(例えば、終点x)とを設定することによって規定される。検出器12が測定点および参照点を設定するということは、検出器12が内蔵する光源から光が出射された時刻から、所定時間経過後に測定点および参照点から受光した後方散乱光の位相情報の差を算出し、各々の光ファイバマイクロフォン13で取得した位相差信号を、各々光ファイバマイクロフォン13が受音した際に取得した音響信号とみなすことを意味する。所定時間は、光源から光が出射されてから、測定点および参照点からの後方散乱光が戻ってくるまでの時間である。各々の光ファイバマイクロフォン13が取得した音響信号の音響到達時間差に基づいてドローンの方位検知が行われる。
【0031】
検知モードにおいて、光ファイバセンサは、光ファイバマイクロフォンアレイ14の周辺で生じた音を検知するように動作する。検知モードでは、光ファイバマイクロフォンアレイ14は、実質的に、1つの無指向性マイクロフォンとして機能する。方位推定モードにおいて、光ファイバセンサにおける複数の光ファイバマイクロフォン13のそれぞれが、マイクロフォンとして機能する。
【0032】
複数の光ファイバマイクロフォン13のそれぞれが機能している場合に比べて、検知モードで動作している光ファイバセンサの音の検知性能は高い。例えば、光ファイバマイクロフォンアレイ14に、n個の光ファイバマイクロフォン13があるとする。また、音響信号に含まれるノイズがガウス分布に従う白色雑音であるとする。同期加算の原理に基づけば、光ファイバマイクロフォンアレイ14全体による信号対雑音比は、個々の光ファイバマイクロフォン13による信号対雑音比の√n倍になることが期待される。
【0033】
実施形態1.
(実施形態の構成)
図3は、第1の実施形態の光ファイバセンサの構成例を示すブロック図である。図1に示す例では、光ファイバセンサにおける検出器12は、光源121、受光部122、検知モード信号データ収集部126、方位推定モード信号データ収集部127、記憶部128および判定部129を含む。
【0034】
光源121は、例えば、レーザ光を出射するレーザ光源である。光源121は、例えば判定部129の指示に従って、光ファイバ11にパルス状のレーザ光(パルス光)を出射する。なお、パルス光のパルス幅によって、空間分解能が規定される。
【0035】
受光部122は、光ファイバ11からのレーリー散乱による後方散乱光を受光する。なお、光ファイバ11と光源121および受光部122との間には、光信号を分離するための光サーキュレータ(図1において、図示せず)などが設置されている。受光部122は、光電変換器123と、A-D変換器124と、位相差信号抽出器125とを含む。
【0036】
光電変換器123は、光信号を電気信号に変換する例えばPD(Photodiode)である。PDで変換された電気信号は、強度の情報と位相の情報とを含む。本実施形態では、位相の情報が取り出される。A-D変換器124は、アナログ信号である電気信号をデジタル電気信号に変換する。位相差信号抽出器125は、A-D変換器124で得られる位相情報から、判定部129からの情報(検知モードであるか方位推定モードであるかを示す情報)に従って、評価対象区間(以下、区間という。)の位相差情報を取り出して位相差信号とする。すなわち、位相差信号抽出器125は、判定部129からの情報に従って、評価対象区間が、第1の区間であるのか第2の区間であるのかを認識する。位相差として、例えば、図2における区間の終点xでの位相差が使用される。区間の終点xでの位相差は、一例として、以下のように算出される。
【0037】
検知モードにおいて、区間の始点yでの後方散乱光の位相をP(y)とし、終点xでの後方散乱光の位相をP(x)とする。位相差は、ΔP=P(x)-P(y)である。終点xからの後方散乱光の受光時刻は、レーザ光の出射時刻と光源121から終点xまでの距離とで定まる。始点yからの後方散乱光の受光時刻は、レーザ光の出射時刻と光源121から始点yまでの距離とで定まる。したがって、位相差信号抽出器125は、後方散乱光が受光された時刻に基づいて、受光された後方散乱光が、終点xからの後方散乱光であるのか始点yからの後方散乱光であるのかを判別できる。その結果、位相差信号抽出器125は、区間の位相差を算出できる。
【0038】
なお、方位推定モードでは、区間の始点(始端Y)での後方散乱光の位相をP(Y)とし、終点(終端X)での後方散乱光の位相をP(X)とする。位相差は、ΔP=P(X)-P(Y)である。
【0039】
位相差信号抽出器125は、位相差信号を検知モード信号データ収集部126および方位推定モード信号データ収集部127に供給する。以下、位相差信号抽出器125の出力を音響データという。検知モード信号データ収集部126は、検知モードにおいて音響データを時々刻々収集して記憶部128に格納する。時々刻々収集するということは、あらかじめ決められたサンプリング周期で音響データを取り込むことを意味する。方位推定モード信号データ収集部127は、方位推定モードにおいて音響データを時々刻々収集して記憶部128に格納する。
【0040】
判定部129は、検知モードにおいて、記憶部128に格納されている音響データ(検知モード信号データ収集部126によって時々刻々収集された区間の位相差の情報を含むデータ)を用いて、光ファイバマイクロフォンアレイ14の周辺で異常音が生じたか否か判定する。方位推定モードでは、判定部129は、記憶部128に格納されている音響データ(方位推定モード信号データ収集部127によって時々刻々収集された区間の位相差の情報を含むデータ)を用いて、各々の光ファイバマイクロフォン13毎の区間の位相差の時系列データを生成する。判定部129は、各々の区間の位相差の時系列データを用いて異常音の音源の方位を推定する。なお、本実施形態および他の実施形態では、不審物(本実施形態および他の実施形態では、ドローン(音源10))が発生する音(本実施形態および他の実施形態では、ドローンの飛翔音)を異常音という。
【0041】
本実施形態では、検知モードにおいて異常音の音源の存在が検知されると、判定部129は、動作モードを、検知モードから方位推定モードに切り替える。なお、方位推定モードでは異常音の音源の方位が推定されるが、判定部129は、方位推定モードにおいて、異常音の音源は存在しないと再判定した場合には、動作モードを、方位推定モードから検知モードに戻す。
【0042】
図4は、判定部129の構成例を示すブロック図である。図4に示す例では、判定部129は、振幅算出部131、振幅比較部132、区間振幅算出部141、区間振幅比較部142、および音源方位推定部145を含む。
【0043】
振幅算出部131および振幅比較部132は、検知モードで動作する。区間振幅算出部141、区間振幅比較部142、音源方位推定部145は、方位推定モードで動作する。
【0044】
本実施形態では、振幅算出部131は、記憶部128に記憶されている音響データ(位相差信号、すなわち、検知モード信号データ収集部126によって時々刻々収集された区間の位相差を含むデータ)の振幅の時系列データを生成する。以下、区間の位相差の時系列データに関する振幅の時系列データを音響振幅データという。
【0045】
振幅比較部132は、音響振幅データにおいて、光ファイバマイクロフォンアレイ14の周辺に音を発生する物が存在しないときの振幅の時系列データに対して特徴的な差異があることを検出した場合に、光ファイバマイクロフォンアレイ14の周辺に、ドローンなどの不審物が存在すると判定する。判定部129は、不審物が存在すると判定した場合には、動作モードを方位推定モードに切り替える。以下、周辺に音を発生する物が存在しないときの振幅の時系列データを、通常時時系列データともいう。なお、通常時時系列データには、光ファイバマイクロフォンアレイ14の周辺の雑音も含まれている。
【0046】
区間振幅算出部141は、記憶部128に記憶されている音響データ(方位推定モード信号データ収集部127によって時々刻々収集された区間の位相差の情報を含むデータ)から各々の区間の音響振幅データを生成する。判定部129は、区間振幅比較部142が、各区間の音響振幅データのいずれも、通常時時系列データに対して特徴的な差異がないと判定した場合には、動作モードを検知モードに切り替える。
【0047】
なお、本実施形態では、判定部129は、記憶部128に格納された音響データを用いて処理を実行するが、検知モード信号データ収集部126および方位推定モード信号データ収集部127の出力(音響データ)を直接入力して処理を実行するようにしてもよい。
【0048】
図5は、音源方位推定部145の構成例を示すブロック図である。図5に示す例では、音源方位推定部145は、相互相関算出部151、音源方位算出部152および音源方位決定部153を含む。
【0049】
相互相関算出部151は、光ファイバマイクロフォンアレイ14における複数の光ファイバマイクロフォン13のペア(複数の区間のペアでもある。)について、相互相関関数を算出する。音源方位算出部152は、相互相関関数を用いて異常音の音源の方位の候補を得る。音源方位決定部153は、方位の候補から、推定される方位を決定する。
【0050】
(実施形態の動作)
次に、図6のフローチャートを参照して第1の実施形態の光ファイバセンサの動作を説明する。
【0051】
光源121は、レーザ光を光ファイバ11に出射する(ステップS1)。出射されるレーザ光は、パルス光である。レーザ光(パルス光)の出射間隔(周期)は、レーザ光が出射されてから終端Xでの後方散乱光が受光されるまでの時間よりも長いことが好ましい。なお、初期状態として、動作モードが検知モードに設定される。具体的には、判定部129が、検知モードで動作する。
【0052】
上述したように、光ファイバ11におけるレーリー散乱による後方散乱光が、受光部122で受光される。光電変換器123、A-D変換器124および検知モード信号データ収集部126を介して、音響データが記憶部128に格納される。
【0053】
判定部129において、振幅算出部131は、記憶部128に記憶されている音響データ(検知モード信号データ収集部126によって時々刻々収集された区間の位相差の情報を含むデータ)から音響振幅データを生成する(ステップS2)。ステップS2の処理で生成される音響振幅データは、光ファイバ11の始端Yから終端Xに亘る区間に関する振幅の時系列データである。また、振幅算出部131は、音響振幅データから振幅時間平均A(t)を算出する(ステップS3)。振幅時間平均A(t)は、下記の(1)式のように算出される。
【0054】
【数1】
【0055】
(1)式において、Tは時間平均の算出対象の期間を示す。|f(s)|は音響振幅データを示す。なお、本実施形態では、振幅の時間平均が用いられるが、振幅の2乗平均を用いてもよい。
【0056】
図7は、音響振幅データに基づいて光ファイバマイクロフォンアレイ14の周辺に不審物(ドローン(音源10))が存在するか否かを検出する処理を説明するための説明図である。なお、図7では、信号は、A-D変換される前のアナログ電気信号の形態で示されている。
【0057】
図7において、上段には、黒色で、音響データの一例が振動波形として示されている。また、淡色で、例えばスペクトルサブトラクション法でデノイズがなされた後の音響データの一例がデノイズ波形として示されている。図7の上段に示す例では、デノイズ波形が有限の値を取る部分で、ノイズ以外の要因による3つの高振幅区間が発生している(図7における長方形で囲まれた部分を参照)。
【0058】
図7において、下段には、黒色で、音響振幅データの一例が振幅波形として示されている。また、淡色で、振幅時間平均A(t)の一例が振幅平均として示されている。図7の下段に示す例では、振幅時間平均A(t)は、定常的なノイズによって定常的にほぼ一定の値であるものの、ノイズとは異なる3つの高振幅区間の発生に応じて急激な変化が生じている。
【0059】
したがって、振幅時間平均A(t)が所定のしきい値(図7の下段における白色の直線を参照)と比較されることによって、不審物すなわち音源10が存在するか否かを検出することができる。なお、光ファイバマイクロフォンアレイ14に不審物が接近するにつれて、不審物の音に起因する振幅時間平均A(t)の値が大きくなる。したがって、例えば、振幅時間平均A(t)の値と複数種類のしきい値との比較によって、不審物が接近しているか否かの判別を行うことも可能である。
【0060】
判定部129において、振幅比較部132は、振幅時間平均A(t)とあらかじめ定められている所定のしきい値とを比較する(ステップS4)。しきい値は、通常時時系列データに対して、不審物からの音を識別可能な値である。ステップS4の処理で、振幅比較部132が、振幅時間平均A(t)がしきい値以下であると判定した場合には、光ファイバマイクロフォンアレイ14の周辺に不審物は存在しないと判定される。その場合には、光ファイバセンサは、あらためてステップS1からの処理を実行する。振幅比較部132が、振幅時間平均A(t)においてしきい値を超える部分が存在すると判定した場合には、光ファイバセンサは、ステップS10以降の処理を行う。ステップS10以降の処理は、方位推定モードでの処理である。すなわち、光ファイバセンサは、動作モードを方位推定モードに切り替える。このとき、判定部129は、位相差信号抽出器125に、方位推定モードであることを示す情報を与える。
【0061】
なお、ステップS4の処理で、振幅比較部132が振幅時間平均A(t)にしきい値を越える部分が1つ以上存在すると判定したときに、判定部129が動作モードを方位推定モードに切り替えるようにしてもよいが、振幅比較部132が振幅時間平均A(t)にしきい値を越える部分があらかじめ決められている複数以上存在すると判定したときに、判定部129が動作モードを方位推定モードに切り替えてもよい。
【0062】
ステップS10において、光源121は、パルス光を光ファイバ11に出射する。なお、パルス光の幅(パルス幅)は、例えば、パルス信号の立ち上がりからピークパワーの半値点と立ち下がりの半値点との間の時間間隔で規定される。
【0063】
上述したように、光ファイバ11におけるレーリー散乱による後方散乱光が、受光部122で受光される。光電変換器123、A-D変換器124および方位推定モード信号データ収集部127を介して、音響データが記憶部128に格納される。
【0064】
区間振幅算出部141は、音響データから、各々の光ファイバマイクロフォン13に対応する区間の音響振幅データを生成する(ステップS11)。また、振幅算出部131は、音響振幅データから振幅時間平均A(t)を算出する(ステップS12)。sは、1~nであるが、図1に示す例では、n=4である。振幅時間平均A(t)の算出の仕方は、振幅時間平均A(t)の算出の仕方と同様である((1)式参照)。ステップS12の処理で生成される音響振幅データは、各々の光ファイバマイクロフォン13の始点yから終点xに亘る区間に関する振幅の時系列データである。
【0065】
区間振幅比較部142は、振幅時間平均A(t)の各々とあらかじめ定められている所定のしきい値とを比較する(ステップS13)。しきい値は、通常時時系列データに対して、不審物からの音を識別可能な値である。ステップS13の処理で、区間振幅比較部142が、全ての振幅時間平均A(t)がしきい値以下であると判定した場合には、光ファイバマイクロフォンアレイ14の周辺に不審物は存在しないと判定される。その場合には、光ファイバセンサは、あらためてステップS1からの処理を実行する。すなわち、光ファイバセンサは、動作モードを方位推定モードから検知モードに切り替える。このとき、判定部129は、位相差信号抽出器125に、検知モードであることを示す情報を与える。区間振幅比較部142が、1つ以上の振幅時間平均A(t)においてしきい値を超える部分が存在すると判定した場合には、光ファイバセンサは、ステップS14以降の処理を行う。
【0066】
ステップS13の処理が実行されることによって、検知モードでの判定部129の判定結果(この場合には、不審物が存在するという判定結果)が偶発的に生じた要因で発生したような場合に、すなわち、実際には不審物は存在しない場合に、誤って不審物が存在すると判定されたりすることが防止される。
【0067】
ステップS14~S16の処理で、音源方位推定部145は、音源10の方位を推定する処理を行う。本実施形態では、音源方位推定部145は、到来時間差(TDOA:Time
Difference Of Arrival)を用いて、音源10(不審物)の方位を推定する。
【0068】
TDOAは、以下の(2)式で表される。(2)式において、cは音速を示す。dは光ファイバマイクロフォン13の間の距離を示す。θは音源10の方位(例えば、光ファイバ11からの仰角)を示す。
【0069】
TDOA=d・cosθ/c ・・・(2)
【0070】
したがって、方位は、下記の(3)式で求めることができる。
【0071】
θ=cos-1(TDOA・c)/d) ・・・(3)
【0072】
音源方位推定部145において、相互相関算出部151は、2つの区間(光ファイバマイクロフォン13に相当)の音響データの相互相関関数を算出する(ステップS14)。2つの区間をペアと表現すると、相互相関算出部151は、複数の区間から選択されうる全てのペアについて相互相関関数を算出する。図1に示す例では、4つの光ファイバマイクロフォン13が形成されているので、ペアの数は6である。よって、相互相関算出部151は、6つの相互相関関数を算出する。
【0073】
相互相関関数は、時間τの関数として表現されるが、相互相関関数の値を最大にする時間τからTDOAを推定できる。音源方位算出部152は、各々のペアに関してTDOAを推定する。そして、音源方位算出部152は、各々のTDOAを用いて、各々のペアについて音源10の方位を算出する(ステップS15)。算出された各々の方位を音源の方位候補とする。
【0074】
音源方位決定部153は、複数の音源の方位候補のうちから、例えば最尤推定を行って、最も正しいと思われる音源方位を決定する(ステップS16)。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態では、判定部129は、評価対象区間を大きくすることによって実質的に1つの無指向性マイクロフォンを形成し、1つの無指向性マイクロフォンで音源10が存在するか否か判定する。音源10が存在すると判定されると、判定部129は、評価対象区間を小さくすることによって、すなわち、複数の光ファイバマイクロフォン13によって、無指向性マイクロフォンに比べて高精度で音源10の方位を推定することができる。すなわち、本実施形態では、周辺環境の変化を検知する場合の検知性能が向上する。
【0076】
なお、複数の光ファイバマイクロフォン13を用いた音源方位推定の方法は上記の方法に限られない。例えば、TDOAを推定するために、相互相関関数の代わりに白色化相互相関関数を用いてもよい。また、音源の方位を推定するめに、非特許文献1に記載されているような、TDOAを使用せずに推定する方法を使用してもよい。
【0077】
実施形態2.
(実施形態の構成)
第2の実施形態の光ファイバセンサの全体的な構成は、第1の実施形態の構成と同様である。図8は、第2の実施形態における判定部129の構成例を示すブロック図である。図8に示す例では、判定部129は、区間振幅算出部141、音源方位推定部145、特徴抽出部231、特徴量判定部232、区間特徴抽出部241および区間特徴量判定部242を含む。
【0078】
特徴抽出部231および特徴量判定部232は、検知モードで動作する。区間振幅算出部141、音源方位推定部145、区間特徴抽出部241および区間特徴量判定部242は、方位推定モードで動作する。
【0079】
特徴抽出部231は、音響データから特徴を抽出する。具体的には、特徴抽出部231は、例えば、音響データから音響特徴量(以下、特徴量という。)を算出する。特徴量判定部232は、算出された特徴量が不審物(本実施形態では、ドローン)が発生する音に基づいているか否か判定する。区間特徴抽出部241は、音響データから各々の区間の特徴量を抽出する。区間特徴量判定部242は、算出された特徴量が不審物が発生する音に基づいているか否か判定する。
【0080】
区間振幅算出部141および音源方位推定部145は、第1の実施形態におけるそれらと同様に動作する。
【0081】
(実施形態の動作)
次に、図9のフローチャートを参照して第2の実施形態の光ファイバセンサの動作を説明する。
【0082】
第1の実施形態と同様に、光源121は、レーザ光を光ファイバ11に出射する(ステップS1)。また、本実施形態でも、初期状態として、動作モードが検知モードに設定される。具体的には、判定部129が、検知モードで動作する。第1の実施形態と同様に、光ファイバ11におけるレーリー散乱による後方散乱光が、受光部122で受光される。光電変換器123、A-D変換器124および検知モード信号データ収集部126を介して、音響データが記憶部128に格納される。
【0083】
本実施形態では、判定部129は、音響データから抽出した特徴(すなわち、特徴量)に基づいて、光ファイバマイクロフォンアレイ14の周辺に不審物すなわち音源10が存在するか否か判定する。判定部129において、特徴抽出部231は、記憶部128に記憶されている音響データから特徴量B(t)を算出する(ステップS21)。特徴量の指標として種々の指標があるが、例えば、特徴音(通常時時系列データの振幅から乖離する音)の持続時間や音響データから導出される周波数が特徴量の指標として用いられる。
【0084】
周波数が用いられる場合、特徴抽出部231は、記憶部128に記憶されている音響データから音響振幅データを生成する。なお、音響振幅データは、光ファイバ11の始端Yから終端Xに亘る区間に関する振幅の時系列データである。そして、特徴抽出部231は、音響データに例えばFFT(Fast Fourier transform)を施して周波数スペクトルを得る。特徴音の持続時間が用いられる場合、特徴抽出部231は、例えば音響データの包絡線を得る。なお、周波数スペクトルと特徴音の持続時間とが併用されてもよい。
【0085】
特徴量判定部232は、算出された特徴量B(t)が、不審物(ドローン)の音響特徴に合致するか否か判定する(ステップS22)。本実施形態では、あらかじめ実際に観測された不審物からの音響を学習データとして学習された分類器が作成される。分類器は、特徴量判定部232に組み込まれている。特徴量判定部232は、特徴量B(t)を分類器に入力し、分類器から、特徴量B(t)を呈した音響データが不審物が存在する場合の音響データであるか否か、すなわち、不審物が存在するか否かの判定結果を得る。
【0086】
不審物は存在しないと判定された場合には、光ファイバセンサは、あらためてステップS1からの処理を実行する。不審物が存在すると判定された場合には、光ファイバセンサは、ステップS10とステップS23以降の処理とを行う。ステップS10とステップS23以降の処理とは、方位推定モードでの処理である。すなわち、光ファイバセンサは、動作モードを方位推定モードに切り替える。このとき、判定部129は、位相差信号抽出器125に、方位推定モードであることを示す情報を与える。
【0087】
なお、特徴量判定部232は、算出された特徴量B(t)と、あらかじめ実際に観測された不審物からの音響に基づくテンプレートとしての特徴量とを比較してもよい。その場合には、特徴量判定部232は、双方の特徴量の差が所定のしきい値未満である場合に、不審物が存在すると判定する。
【0088】
第1の実施形態と同様に、光源121は、レーザ光を光ファイバ11に出射する。区間特徴抽出部241は、音響データ(方位推定モード信号データ収集部127によって時々刻々収集された区間の位相差の情報を含むデータ)から、各々の光ファイバマイクロフォン13に対応する区間の音響振幅データを生成する(ステップS23)。また、区間特徴抽出部241は、音響データから各区間のB(t)を算出する(ステップS23)。sは、1~nであるが、図1に示された例では、n=4である。各区間の特徴量B(t)の算出の仕方は、特徴量B(t)の算出の仕方と同様である。なお、ステップS23の処理で生成される音響データは、各々の光ファイバマイクロフォン13の始点yから終点xに亘る区間に関する位相差の時系列データである。
【0089】
区間特徴量判定部242は、算出された各区間の特徴量B(t)が、不審物(ドローン)の音響特徴に合致するか否か判定する(ステップS24)。区間特徴量判定部242の判定の仕方は、特徴量判定部232の判定の仕方と同様である。
【0090】
区間特徴量判定部242が、全ての区間の特徴量B(t)が不審物の音響特徴に合致していないと判定した場合には、光ファイバマイクロフォンアレイ14の周辺に不審物は存在しないと判定される。その場合には、光ファイバセンサは、あらためてステップS1からの処理を実行する。すなわち、光ファイバセンサは、動作モードを方位推定モードから検知モードに切り替える。このとき、判定部129は、位相差信号抽出器125に、検知モードであることを示す情報を与える。区間特徴量判定部242が、1つ以上の特徴量B(t)が不審物の音響特徴に合致すると判定した場合には、光ファイバセンサは、ステップS14以降の処理を行う。
【0091】
ステップS24の処理が実行されることによって、検知モードでの判定部129の判定結果(この場合には、不審物が存在するという判定結果)が偶発的に生じた要因で発生したような場合に、すなわち、実際には不審物は存在しない場合に、誤って不審物が存在すると判定されたりすることが防止される。
【0092】
ステップS14~S16の処理は、第1の実施形態における処理と同じである。
【0093】
以上に説明したように、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、判定部129は、評価対象区間を大きくすることによって実質的に1つの無指向性マイクロフォンが形成され、1つの無指向性マイクロフォンで音源10が存在するか否か判定する。音源10が存在すると判定されると、判定部129は、評価対象区間を小さくすることによって、すなわち、複数の光ファイバマイクロフォン13によって、無指向性マイクロフォンに比べて高精度で音源10の方位を推定することができる。すなわち、本実施形態では、周辺環境の変化を検知する場合の検知性能が向上する。
【0094】
実施形態3.
光ファイバセンサは、光ファイバマイクロフォンアレイ14へのドローンなどの不審物の接近(光ファイバマイクロフォンアレイ14の周辺に不審物が存在すること)に加えて、光ファイバセンサが設置された施設などへの不審者または不審物の侵入を検知することができる。第3の実施形態の光ファイバセンサは、不審者または不審物の侵入も検知できる光ファイバセンサである。以下、光ファイバセンサが、所定の施設に設置されている場合を例にする。
【0095】
光ファイバセンサは、不審者または不審物の施設への侵入に起因する振動を検知する。不審物の接近も、実際には音圧に基づく振動として検知される。以下、音圧に基づく振動を非接触振動といい、不審者または不審物の侵入に起因する振動を接触振動ということがある。一般に、接触振動に起因する音響信号は、非接触振動に起因する音響信号に比べて、局所的に大きな信号になる。そこで、光ファイバセンサは、観測される音響信号の強度(または、振幅)や音声信号における強度(または、振幅)が高い期間の持続期間に基づいて、接触振動に起因する音響信号が観測されたのか非接触振動に起因する音響信号が観測されたのかを判別できる。なお、接触振動に関するデータは実質的には振動データであるが、接触振動の検知に関して記憶部128に格納されている音響データを扱うので、振動データについても、音響データから区間の音響振幅データを生成するというように表現する。
【0096】
(実施形態の構成)
第3の実施形態の光ファイバセンサの全体的な構成は、第1の実施形態の構成と同様である。図10は、第2の実施形態における判定部129の構成例を示すブロック図である。図10に示す例では、判定部129は、振幅算出部131、振幅比較部132、区間振幅算出部141、区間振幅比較部142、音源方位推定部145、振動振幅算出部161、振動振幅比較部162および振動区間特定部163を含む。すなわち、本実施形態における判定部129には、第1の実施形態の構成に対して、振動振幅算出部161、振動振幅比較部162および振動区間特定部163が追加されている。
【0097】
振動振幅算出部161は、記憶部128に格納されている音響データから各区間の音響振幅データを生成する。振動振幅比較部162は、音響振幅データに基づいて、いずれかの区間において振動が生じたか否か判定する。振動区間特定部163は、振動振幅比較部162の判定結果を用いて、不審者または不審物が侵入した区間を特定する。
【0098】
第1の実施形態と同様に、特徴抽出部231および特徴量判定部232は、検知モードで動作する。区間振幅算出部141、音源方位推定部145、区間特徴抽出部241および区間特徴量判定部242は、方位推定モードで動作する。
【0099】
本実施形態では、振動振幅算出部161、振動振幅比較部162および振動区間特定部163は、検知モードに関連する特徴抽出部231および特徴量判定部232、または、方位推定モードに関連する区間特徴抽出部241および区間特徴量判定部242と並行して動作する。
【0100】
(実施形態の動作)
次に、図11のフローチャートを参照して第3の実施形態の光ファイバセンサの動作を説明する。なお、図11に示す処理は、振動振幅算出部161および振動振幅比較部162による処理である。図11に示す処理と並行して、第1の実施形態における図6に示された処理が実行される。
【0101】
振動振幅算出部161は、記憶部128に格納されている音響データから、各々の光ファイバマイクロフォン13に対応する区間の音響振幅データを生成する(ステップS31)。また、振動振幅算出部161は、音響振幅データから振幅時間平均C(t)を算出する(ステップS32)。qは、1~nであるが、図1に示す例では、n=4である。振幅時間平均C(t)の算出の仕方は、第1の実施形態における振幅算出部131による振幅時間平均A(t)の算出の仕方と同様である((1)式参照)。ただし、ここでは、(1)式におけるTを、区間の長さに相当する期間とする。なお、ステップS31の処理で生成される音響振幅データは、各々の光ファイバマイクロフォン13の始点yから終点xに亘る区間に関する位相差信号の振幅の時系列データである。
【0102】
振動振幅比較部162は、振幅時間平均Cq(t)の各々とあらかじめ定められている振動振幅しきい値とを比較する(ステップS33)。振動振幅しきい値は、通常時時系列データに対して、接触振動を識別可能な値である。振動振幅しきい値は、区間振幅比較部142が振幅時間平均A(t)と比較するしきい値よりも大きな値に定められている。ステップS33の処理で、振動振幅比較部162が、全ての振幅時間平均C(t)が振動振幅しきい値以下であると判定した場合には、施設への不審者または不審物の侵入はないと判定される。その場合には、処理を終了する。なお、例えば、次に光源121から光ファイバ11にパルス光が出射されると、あらためてステップS31以降の処理が実行される。
【0103】
振動振幅比較部162が、1つ以上の振幅時間平均C(t)において振動振幅しきい値を超える部分が存在すると判定した場合には、振動振幅算出部161は、ステップS34の処理を実行する。
【0104】
ステップS34において、光源121は、レーザ光を光ファイバ11に出射する。光ファイバ11におけるレーリー散乱による後方散乱光が、受光部122で受光される。光電変換器123、A-D変換器124および第3の信号データ収集部(図示せず)を介して、音響データが記憶部128に格納される。なお、第3の信号データ収集部は、検知モード信号データ収集部126を第1の信号データ収集部に位置付け、方位推定モード信号データ収集部127を第2の信号データ収集部に位置付けた場合、それらとは異なる信号データ収集部である。次いで、振動振幅比較部162によるステップS35の処理が実行される。
【0105】
振動振幅比較部162がステップS35の処理を実行するときに、評価対象区間が短くされる。例えば、共振媒体15がi個(i:2以上の整数)設けられている場合、ステップS31,S32の処理が実行されるときには区間数が(i/2)とされ、ステップS35の処理が実行されるときには、区間数がiとされる。なお、区間数が(i/2)である場合には、2つの共振媒体15にまたがって1つの区間(評価対象区間)が設定される。具体的には、判定部129が、位相差信号抽出器125に対して、区間の短縮を示す情報を与える。位相差信号抽出器125は、短縮された区間(短区間)のの位相差情報を取り出して位相差信号(音響データ)とする。
【0106】
また、各々の区間が短くされる場合、各区間の長さはできるだけ小さいことが好ましい。一例として、各区間の長さは、光ファイバ11に出射される光のパルス幅を下回らない範囲で最小の値に設定される。
【0107】
振動振幅算出部161は、記憶部128に格納されている音響データから、各々の区間の音響振幅データを生成する(ステップS35)。また、振動振幅算出部161は、音響振幅データから振幅時間平均C(t)を算出する(ステップS36)。rは、1~m(m>n)である。mは、上記の例におけるiに相当する。また、nは、上記の例における(i/2)に相当する。振幅時間平均C(t)の算出の仕方は、第1の実施形態における振幅算出部131による振幅時間平均A(t)の算出の仕方と同様である((1)式参照)。ただし、ここでは、(1)式におけるTを、区間の長さに相当する期間とする。
【0108】
振動区間特定部163は、複数の振幅時間平均C(t)のうち、最大の振幅時間平均C(t)に対応する区間を、振動が発生した区間、すなわち、不審者または不審物が侵入した区間として特定する(ステップS37)。
【0109】
本実施形態では、第1の実施形態の効果に加えて、光ファイバセンサが設置された施設等への不審者または不審物の侵入箇所を推定できるという効果を得ることができる。
【0110】
なお、本実施形態では、ステップS1、ステップS21およびステップS22の処理が実行されるときに、区間の設定の仕方を検知モードでの区間の設定の仕方と同様にしたが、方位推定モードでの区間の設定の仕方と同様にしてもよい。
【0111】
また、本実施形態では、第1の実施形態における判定部129に振動振幅算出部161、振動振幅比較部162および振動区間特定部163が追加されたが、第2の実施形態における判定部129に振動振幅算出部161、振動振幅比較部162および振動区間特定部163が追加されてもよい。すなわち、第2の実施形態の光ファイバセンサに、不審者または不審物の侵入箇所を推定する機能が追加されてもよい。
【0112】
また、本実施形態の光ファイバセンサは、図11に示す処理と並行して、第1の実施形態における図6に示された処理が実行されるように構成されているが、図11に示す処理と図6に示された処理とが、時間的にずれて実行されるように構成されていてもよい。
【0113】
また、本実施形態の光ファイバセンサは、振動データ(記憶部128に格納されている音響データ)から得られる振幅に基づいて、不審者または不審物の侵入箇所を推定したが、振動データから得られる特徴量(通常時時系列データの振幅から乖離する振動の持続時間や振動データから導出される周波数)に基づいて不審者または不審物の侵入箇所を推定してもよい。
【0114】
上記の各実施形態では、1本のファイバ(コア+クラッド)を含む光ファイバ11の使用または複数のファイバを含む光ファイバにおける1本のファイバの使用が想定された。しかし、上記の各実施形態の光ファイバセンサは、複数のファイバを含む光ファイバにおける複数のファイバを使用することもできる。また、例えば、複数のファイバを含む光ファイバが使用される場合に、光ファイバセンサは、任意の1本のファイバを検知モードで使用し、他の1本のファイバを方位推定モードで使用することもできる。
【0115】
また、検知モードと方位推定モードとを使い分ける上記の各実施形態の光ファイバセンサは、レーリー散乱による後方散乱光を用いるOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)に基づく光ファイバセンサである。しかし、上記の各実施形態を、後方散乱光を
用いたOFDR(Optical Frequency Domain Reflectometry)方式の光ファイバセンサに適用することも可能である。
【0116】
また、上記の各実施形態を、例えば温度などを検知するためのラマン(Raman)散乱に
よる後方散乱光を用いるR-OTDRに基づく光ファイバセンサに適用してもよい。また、上記の各実施形態を、後方散乱光の分極状態(SoP:State of Polarization)の変
化を用いて振動などを検知するP-OTDRに基づく光ファイバセンサに適用してもよい。
【0117】
換言すると、空間分解能よりもセンサ感度を優先する場合とセンサ感度よりも空間分解能を優先する場合とを使い分ける(上記の各実施形態では、第1の区間と複数の第2の区間とを使い分ける。)ことによって高い検知性能を発揮できる方式に対して、上記の各実施形態の考え方を有効に適用することができる。
【0118】
上記の各実施形態を、ハードウェアで構成することも可能であるが、コンピュータプログラムにより実現することも可能である。
【0119】
図12は、CPU(Central Processing Unit)を有するコンピュータの一例を示すブ
ロック図である。コンピュータは、上記の各実施形態の光ファイバセンサにおける検出器12に実装される。CPU1000は、記憶装置1001に格納されたプログラム(ソフトウェア要素:コード)に従って処理を実行することによって、上記の実施形態における各機能を実現する。すなわち、第1~第3の実施形態における検知モード信号データ収集部126、方位推定モード信号データ収集部127および判定部129の機能を実現する。なお、CPU1000に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、または、CPUとGPUとの組み合わせを使用することもできる。
【0120】
記憶装置1001は、例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium )である。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium )を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の具体例として、磁気記録媒体(例えば、ハードディスク)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory )、CD-R(Compact Disc-Recordable )、CD-R/W(Compact Disc-ReWritable )、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM )、フラッシュROM)がある。また、記憶装置1001として、データを書き換え可能な記憶媒体が用いられる場合には、記憶装置1001は、記憶部128として使用可能である。
【0121】
また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium )に格納されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体には、例えば、有線通信路または無線通信路を介して、すなわち、電気信号、光信号または電磁波を介して、プログラムが供給される。
【0122】
メモリ1002は、例えばRAM(Random Access Memory)で実現され、CPU1000が処理を実行するときに一時的にデータを格納する記憶手段である。メモリ1002に、記憶装置1001または一時的なコンピュータ可読媒体が保持するプログラムが転送され、CPU1000がメモリ1002内のプログラムに基づいて処理を実行するような形態も想定しうる。
【0123】
図13は、光ファイバセンサの主要部を示すブロック図である。図13に示す光ファイバセンサ1は、光ファイバに設定される評価対象区間を、第1の区間と、それぞれが該第1の区間よりも短い複数の第2の区間とのいずれかに設定する設定手段(設定部)2(実施形態では、位相差信号抽出器125および判定部129で実現される。特に、例えば、位相差信号抽出器125が、判定部129からの情報に従って評価対象区間の位相差信号を抽出することによって実現される。)と、光ファイバからの光の状態変化(例えば、後方散乱光の位相差)を抽出する抽出手段(抽出部)3(実施形態では、位相差信号抽出器125で実現される。)と、評価対象区間における光の状態変化の時系列データに基づいて周辺環境の変化を検知する検知手段(検知部)4(第1実施形態では、区間振幅比較部142および音源方位推定部145で実現される。第2実施形態では、区間特徴量判定部242および音源方位推定部145で実現される。)とを備えている。
【0124】
設定手段2は、評価対象区間の位相差の時系列データの振幅の時間平均が所定値を超えたと判定したときに、評価対象区間を、第1の区間と第2の区間との間で切り替えるように構成されていてもよい。
【0125】
光ファイバセンサ1は、位相差の情報を含む信号に基づいて該信号の特徴を判定する特徴判定手段(特徴判定部:実施形態では、特徴抽出部231および特徴量判定部232で実現される。)を備え、設定手段2は、特徴があらかじめ定められている不審物の音響特徴に合致していると判定されたときに、評価対象区間を、第1の区間と第2の区間との間で切り替えるように構成されていてもよい。
【0126】
光ファイバセンサ1は、評価対象区間を、それぞれが第2の区間よりも短い複数の短区間に設定する第2の設定手段(第2の設定部:第3の実施形態では、位相差信号抽出器125および判定部129で実現される。特に、例えば、位相差信号抽出器125が、判定部129からの情報に従って評価対象区間の位相差信号を抽出することによって実現される。)と、複数の短区間のそれぞれの位相差の時系列データの振幅の時間平均の最大値を呈する短区間を特定する特定手段(特定部:第3の実施形態では、振動区間特定部163で実現される。)とを備えていてもよい。
【0127】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、本発明は、以下の構成に限定されるわけではない。
【0128】
(付記1)光ファイバの周辺環境の変化を検知する光ファイバセンサであって、
前記光ファイバに設定される評価対象区間を、第1の区間と、それぞれが該第1の区間よりも短い複数の第2の区間とのいずれかに設定する設定手段と、
前記光ファイバからの光の状態変化を抽出する抽出手段と、
前記評価対象区間における前記光の状態変化の時系列データに基づいて前記周辺環境の変化を検知する検知手段と
を備える光ファイバセンサ。
【0129】
(付記2)前記光の状態変化は、前記光ファイバからの後方散乱光の位相差である
付記1の光ファイバセンサ。
【0130】
(付記3)前記設定手段は、前記評価対象区間の位相差の時系列データの振幅の時間平均が所定値を超えたと判定したときに、前記評価対象区間を、前記第1の区間と前記第2の区間との間で切り替える
付記2の光ファイバセンサ。
【0131】
(付記4)前記位相差の情報を含む信号に基づいて該信号の特徴を判定する特徴判定手段を備え、
前記設定手段は、前記判定された特徴があらかじめ定められている所定の音響特徴に合致していると前記特徴判定手段が判定したときに、前記評価対象区間を、前記第1の区間と前記第2の区間との間で切り替える
付記2または付記3の光ファイバセンサ。
【0132】
(付記5)前記評価対象区間を、それぞれが前記第2の区間よりも短い複数の短区間に設定する第2の設定手段と、
前記複数の短区間のそれぞれの位相差の時系列データの振幅の時間平均の最大値を呈する短区間を特定する特定手段と
を備える付記2から付記4のうちのいずれかの光ファイバセンサ。
【0133】
(付記6)前記設定手段は、前記第2の区間を、前記第1の区間の長さの半分よりも短い長さに設定する
付記1から付記5のうちのいずれかの光ファイバセンサ。
【0134】
(付記7)音響信号に対して共振する円筒形の共振媒体に巻き付けられた前記光ファイバの全長または一部で、1つの光ファイバマイクロフォンが形成されている
付記1から付記6のうちのいずれかの光ファイバセンサ。
【0135】
(付記8)光ファイバの周辺環境の変化を検知する変化検知方法であって、
前記光ファイバに設定される評価対象区間を、第1の区間と、それぞれが該第1の区間よりも短い複数の第2の区間とのいずれかに設定し、
前記光ファイバからの光の状態変化を抽出し、
前記評価対象区間における前記光の状態変化の時系列データに基づいて前記周辺環境の変化を検知する
変化検知方法。
【0136】
(付記9)前記光の状態変化は、前記光ファイバからの後方散乱光の位相差である
付記8の変化検知方法。
【0137】
(付記10)評価対象区間の位相差の時系列データの振幅の時間平均が所定値を超えたと判定したときに、前記評価対象区間を、前記第1の区間と前記第2の区間との間で切り替える
付記9の変化検知方法。
【0138】
(付記11)前記位相差の情報を含む信号に基づいて該信号の特徴を判定し、
前記判定された特徴があらかじめ定められている所定の音響特徴に合致していると判定したときに、前記評価対象区間を、前記第1の区間と前記第2の区間との間で切り替える
付記9または付記10の変化検知方法。
【0139】
(付記12)それぞれが前記第2の区間よりも短い複数の短区間に設定し、
前記複数の短区間のそれぞれの位相差の時系列データの振幅の時間平均の最大値を呈する短区間を特定する
付記8から付記11のうちのいずれかの変化検知方法。
【0140】
(付記13)変化検知プログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記変化検知プログラムは、コンピュータに、
前記光ファイバに設定される評価対象区間を、第1の区間と、それぞれが該第1の区間よりも短い複数の第2の区間とのいずれかに設定する処理と、
前記光ファイバからの光の状態変化を抽出する処理と、
前記評価対象区間における前記光の状態変化の時系列データに基づいて前記周辺環境の変化を検知する処理とを実行させる
記録媒体。
【0141】
(付記14)前記光の状態変化は、前記光ファイバからの後方散乱光の位相差である
付記13の記録媒体。
【0142】
(付記15)コンピュータに、
光ファイバに設定される評価対象区間を、第1の区間と、それぞれが該第1の区間よりも短い複数の第2の区間とのいずれかに設定する処理と、
前記光ファイバからの光の状態変化を抽出する処理と、
前記評価対象区間における前記光の状態変化の時系列データに基づいて前記周辺環境の変化を検知する処理とを実行させる
ための変化検知プログラム。
【0143】
(付記16)光の状態変化は、前記光ファイバからの後方散乱光の位相差である付記15の変化検知プログラム。
【0144】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記の実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0145】
1 光ファイバセンサ
2 設定手段
3 抽出手段
4 検知手段
10 音源
11 光ファイバ
12 検出器
13 光ファイバマイクロフォン
14 光ファイバマイクロフォンアレイ
15 共振媒体
121 光源
122 受光部
123 光電変換器
124 A-D変換器
125 位相差信号抽出器
126 検知モード信号データ収集部
127 方位推定モード信号データ収集部
128 記憶部
129 判定部
131 振幅算出部
132 振幅比較部
141 区間振幅算出部
142 区間振幅比較部
145 音源方位推定部
151 相互相関算出部
152 音源方位算出部
153 音源方位決定部
161 振動振幅算出部
162 振動振幅比較部
163 振動区間特定部
231 特徴抽出部
232 特徴量判定部
241 区間特徴抽出部
242 区間特徴量判定部
1000 CPU
1001 記憶装置
1002 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13