(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20241217BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20241217BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20241217BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20241217BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20241217BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04007
H01M8/00 Z
B60K1/04 Z
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2023537764
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2021027584
(87)【国際公開番号】W WO2023007555
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】礒田 博之
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183222(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104301(WO,A1)
【文献】特開2020-53234(JP,A)
【文献】特開2016-91889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
B60K 1/00-6/12
7/00-8/00
16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池、前記燃料電池にアノードガスを供給するアノード流路、前記燃料電池にカソードガスを供給するカソード流路及び前記燃料電池に供給されるカソードガスを加熱する熱交換器を含む燃料電池ユニットを備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池ユニットに取り付けられ、前記カソード流路にカソードガスを分配供給するマニホールドを備え、
前記カソード流路は、前記熱交換器を通過する主流路と、前記熱交換器を迂回して前記主流路に接続するバイパス流路と、前記アノード流路に部分酸化改質用のガスを供給する部分改質流路とを有し、
前記マニホールドは、上流側から順に前記主流路に接続する第一流路と、前記第一流路の隣に設けられ前記バイパス流路に接続する第二流路と、前記第二流路の隣に設けられ前記部分改質流路に接続する第三流路とを備えたガス分配部材として構成され、前記第一流路と前記第二流路を連結する第一連通路と、前記第二流路と前記第三流路を連結する第二連通路とを含む連通路を備える、
燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記第二連通路は、前記第一連通路よりも流路断面積が小さい、
燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池システムであって、
前記連通路は、下流に向かって流路が狭くなるようにテーパ状に形成される、
燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の燃料電池システムであって、
前記第二連通路は前記第一連通路よりも長い、
燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の燃料電池システムであって、
前記第一連通路と前記第二連通路とは、カソードガスの流れ方向における中心軸線が同一直線状になるように構成される、
燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の燃料電池システムであって、
前記マニホールドは、前記第二流路上に設けられ、前記バイパス流路に分配するカソードガスの量を調整する第一制御弁、及び前記第三流路上に設けられ、前記部分改質流路に分配するカソードガスの量を調整する第二制御弁の少なくともいずれかを備える、
燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の燃料電池システムであって、
前記マニホールドは、前記第一流路、前記第二流路及び前記第三流路を囲むように形成されたフランジを備え、
前記マニホールドは、前記フランジが前記燃料電池ユニットに固定される、
燃料電池システム。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一つに記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池ユニットは、ブラケットを介して車両に固定され、
前記マニホールドは、前記第一流路、前記第二流路及び前記第三流路を囲むように形成されたフランジを備え、当該フランジが前記ブラケットに固定されることにより前記燃料電池ユニットに固定され、
前記ブラケットは、前記マニホールドの前記第一流路と前記主流路とを接続する第1貫通孔と、前記第二流路と前記バイパス流路とを接続する第2貫通孔と、前記第三流路と前記部分改質流路とを接続する第3貫通孔とを有し、
前記ブラケットを前記燃料電池ユニットに固定する固定部は、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔及び前記第3貫通孔を囲むように形成される、
燃料電池システム。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池システムであって、
前記ブラケットには、カソードガス供給源としての空気供給装置が取り付けられる、
燃料電池システム。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一つに記載の燃料電池システムであって、
前記マニホールドは、前記第二流路上に設けられ、前記バイパス流路に分配するカソードガスの量を調整する第一制御弁、及び前記第三流路上に設けられ、前記部分改質流路に分配するカソードガスの量を調整する第二制御弁を備え、
前記フランジは、前記マニホールドを前記燃料電池ユニットに固定するためのフランジ固定部を有し、
前記フランジ固定部は、前記マニホールドの前記第一流路、前記第二流路及び前記第三流路を囲むように形成される、
燃料電池システム。
【請求項11】
請求項7から9のいずれか一つに記載の燃料電池システムであって、
前記フランジは、板厚が均一であり、
前記マニホールドの前記第一連通路及び前記第二連通路は、一直線上で前記フランジ表面に接している、
燃料電池システム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一つに記載の燃料電池システムであって、
前記マニホールドは、前記第二流路上に設けられ、前記バイパス流路に分配するカソードガスの量を調整する第一制御弁、及び前記第三流路上に設けられ、前記部分改質流路に分配するカソードガスの量を調整する第二制御弁を備え、
前記第一制御弁は、第一弁体と、前記第二流路に固定される第一弁筒と、前記第一弁筒の先端に設けられた第一弁座とから構成され、
前記第二制御弁は、第二弁体と、前記第三流路に固定される第二弁筒と、前記第二弁筒の先端に設けられた第二弁座とから構成される、
燃料電池システム。
【請求項13】
請求項12に記載の燃料電池システムであって、
前記マニホールドは、前記バイパス流路に接続する前記第二流路の出口及び前記部分改質流路に接続する前記第三流路の出口が下側になるように前記燃料電池ユニットに取り付けられ、
前記第一弁座及び前記第二弁座は、前記第一連通路及び前記第二連通路の底部よりも上方に位置する、
燃料電池システム。
【請求項14】
請求項12または13に記載の燃料電池システムであって、
前記第一弁筒の外周を囲む筒状の第一ハウジングと、
前記第二弁筒の外周を囲む筒状の第二ハウジングと、を備え、
前記第一ハウジングは、内周面が前記第一弁筒に接するとともに外周面が前記第二流路の内周面に接し、
前記第二ハウジングは、内周面が前記第二弁筒に接するとともに外周面が前記第三流路の内周面に接する、
燃料電池システム。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか一つに記載の燃料電池システムであって、
前記第一弁筒は前記第二流路に着脱可能に構成され、
前記第二弁筒は前記第三流路に着脱可能に構成された、
燃料電池システム。
【請求項16】
請求項12から15のいずれか一つに記載の燃料電池システムであって、
前記第一弁筒は前記第二流路に着脱可能に構成され、
前記第二弁筒は前記第三流路に着脱可能に構成され、
前記第一弁体は前記第二流路に挿入されることで前記第二流路に取り付けられ、
前記第二弁体は前記第三流路に挿入されることで前記第三流路に取り付けられ、
前記第一弁体及び前記第二弁体の当該挿入方向は同方向である、
燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
WO2018/051468A1には、カソードガス(空気)が流れるカソード流路が、熱交換器を通る経路(主流路)、熱交換器を迂回する経路(バイパス流路)、アノード流路に部分改質用の空気を供給する経路(POX流路)を有する燃料電池システムが開示されている。
【発明の概要】
【0003】
燃料電池システムのカソード流路がバイパス流路やPOX流路等を有する場合、これらの流路の下流側で必要な流量を満足させるために圧損設計が重要となる。しかしながら、WO2018/051468A1では、カソード流路を主流路、バイパス流路及びPOX流路に分岐させる構造において、圧損設計が考慮されていない。このため、例えばPOX流路等のような、ガスの流量制御に比較的高い精度が要求される流路の圧損設計が難しくなる虞がある。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑み、カソード流路における圧損設計が容易な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【0005】
本発明の一態様によれば、燃料電池、燃料電池にアノードガスを供給するアノード流路、燃料電池にカソードガスを供給するカソード流路及び燃料電池に供給されるカソードガスを加熱する熱交換器を含む燃料電池ユニットを備える燃料電池システムが提供される。燃料電池システムは、燃料電池ユニットに取り付けられ、カソード流路にカソードガスを分配供給するマニホールドを備える。カソード流路は、熱交換器を通過する主流路と、熱交換器を迂回して主流路に接続するバイパス流路と、アノード流路に部分酸化改質用のガスを供給する部分改質流路とを有する。マニホールドは、上流側から順に主流路に接続する第一流路と、第一流路の隣に設けられバイパス流路に接続する第二流路と、第二流路の隣に設けられ部分改質流路に接続する第三流路とを備えたガス分配部材として構成される。また、マニホールドは、第一流路と第二流路を連結する第一連通路と、第二流と第三流路を連結する第二連通路とを含む連通路を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態による燃料電池システムの概略構成図である。
【
図4】
図4は、マニホールドを、第一流路、第二流路及び第三流路の出口が下側になるように配置した図である。
【
図5】
図5は、燃料電池ユニットから取り外した状態のマニホールドの正面図である。
【
図6】
図6は、マニホールドから第一弁筒及び第二弁筒を取り外した状態の図である。
【
図7】
図7は、変形例によるマニホールドの上面模式図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態による燃料電池システムにおけるマニホールドの上面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の変形例によるマニホールドの上面模式図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態による燃料電池システムにおけるマニホールドの上面図である。
【
図11】
図11は、第4実施形態による燃料電池システムの概略構成図である。
【
図12】
図12は、燃料電池ユニットからブラケットを取り外した状態の模式図である。
【
図13】
図13は、燃料電池システムを搭載した車両の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による燃料電池システム100の概略構成図である。燃料電池システム100は、例えば車両等に搭載され、燃料電池スタック1に対して発電に必要となる燃料ガス(アノードガス)及び酸化剤ガス(カソードガス)を供給し、燃料電池スタック1を車両走行用の電動モータ等の電気負荷に応じて発電させるシステムである。
【0009】
図1に示すように、燃料電池システム100は、2つの燃料電池スタック1と補機構造体2とこれらを収容する筐体3とから成る燃料電池ユニット10、及び燃料電池ユニット10に取り付けられるマニホールド4等から構成される。
【0010】
燃料電池スタック(燃料電池)1は、補機構造体2の上面と下面とにそれぞれ配置されている。燃料電池スタック1は、複数の燃料電池または燃料電池単位セルを積層して構成され、アノードガスとカソードガスの供給を受けて発電する。燃料電池スタック1の発電源である個々の燃料電池は、例えば固体酸化物型燃料電池(SOFC)である。
【0011】
補機構造体2は、金属等の塊から成る略直方体状の構造体で、2つの燃料電池スタック1の間に介在している。補機構造体2は、燃料電池スタック1にアノードガスを供給するアノード流路と燃料電池スタック1にカソードガスを供給するカソード流路とを含むガス流路、及び燃料電池スタック1に供給されるカソードガスを加熱する熱交換器等を内蔵する。補機構造体2に内蔵されるガス流路は、補機構造体2の側面を介して補機構造体2外部のガス供給路に接続されるとともに、補機構造体2の上面または下面を介して燃料電池スタック1に接続している。これにより、補機構造体2の外部からのアノードガス及びカソードガスが補機構造体2の内部のガス流路を通過して燃料電池スタック1に供給される。なお、補機構造体2は、さらに排気流路、燃焼器等を内蔵してもよく、また、補機構造体2に内蔵される熱交換器は、燃焼器と一体型の熱交換器であってもよい。
【0012】
補機構造体2に内蔵されるカソード流路は、熱交換器を通過する主流路21と、熱交換器を迂回して主流路21に接続するバイパス流路22と、アノード流路に接続するPOX流路(部分改質流路)23とを有している。主流路21は、熱交換器により加熱されたカソードガスを燃料電池スタック1に供給する流路である。バイパス流路22は熱交換器を迂回した加熱されていない空気(以下、温調ガスとする)を主流路21に供給することで燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの温度を調整するための流路である。また、POX流路23は、アノード流路に部分改質用のガス(以下、改質ガスとする)を供給する流路である。主流路21、バイパス流路22、POX流路23の一端は、補機構造体2の内部から燃料電池ユニット10を収容する筐体3の内周面まで延びている。
【0013】
筐体3は金属等からなり、燃料電池スタック1及び補機構造体2を収容する。筐体3には、マニホールド4が固定されている。また、筐体3は、複数のガス供給口を有し、各ガス供給口は、補機構造体2に内蔵される主流路21、バイパス流路22、POX流路23等のガス流路にそれぞれ接続している。燃料電池スタック1、補機構造体2及び筐体3は、燃料電池ユニット10を構成する。
【0014】
マニホールド4は、補機構造体2内のカソード流路にカソードガスを分配供給する部材であり、燃料電池ユニット10の筐体3に取り付けられている。マニホールド4の入口44は、コンプレッサ等のカソードガス供給源(不図示)に接続される。マニホールド4は、上流側から順に、筐体3のガス供給口を介してそれぞれカソード流路の主流路21に接続する第一流路41と、バイパス流路22に接続する第二流路42と、POX流路23に接続する第三流路43とを備える。なお、マニホールド4と筐体3との間に、マニホールド4の第一、第二、第三流路41,42,43と燃料電池ユニット10のカソード流路との接続部分を補強するための補強材を設けてもよい。また、マニホールド4の詳細は後述する。
【0015】
以上のように構成された燃料電池システム100では、コンプレッサ等の空気供給装置により取り込まれた空気(カソードガス)がマニホールド4を介してカソード流路に供給される。
【0016】
ところで、燃料電池システムのカソード流路がバイパス流路やPOX流路等を有する場合、これらの流路の下流側で必要な流量を満足させるために圧損設計が重要となる。ここで、バイパス流路やPOX流路に分岐する位置や構造を適切に設定しないと、流路の圧損設計が難しくなる虞がある。例えば、分岐後のバイパス流路やPOX流路が長い場合や、分岐箇所を複数設けた場合等には、圧損設計要素が増え、流路の設計が複雑になる。また、バイパス流路には比較的高い流量のガスを流す必要がある一方、POX流量の制御は比較的高い精度が要求されるため、POX流路には低流量のガスを供給することが求められる。従って、POX流路のように、ガスの流量に比較的高い制御精度が要求される流路を、主流路のような流量の大きい流路から直接分岐させると、ガス流量の調整が難しくなり、流路の設計が難しくなる虞がある。
【0017】
これに対し、本実施形態では、カソード流路にカソードガスを分配供給するマニホールド4を燃料電池ユニット10に取り付け、マニホールド4を、上流側から順にそれぞれ主流路21、バイパス流路22、POX流路23に接続する第一、第二、第三流路41,42,43を備える構成とした。即ち、高流量が必要な主流路21、バイパス流路22に接続する第一、第二流路41,42を上流側に設け、低流量が求められるPOX流路23に接続する第三流路43を最も下流側に設けることとした。これにより、マニホールド4からPOX流路23に供給されるカソードガスの圧損は、主流路21及びバイパス流路22に供給されるカソードガスの圧損よりも大きくなる。このように、高流量が必要な主流路21及びバイパス流路22に供給されるカソードガスの圧損は小さく、低流量が求められるPOX流路23に供給されるカソードガスの圧損は大きくなるため、カソード流路における圧損設計が容易になる。また、マニホールド4を用いて主流路21、バイパス流路22及びPOX流路23にカソードガスを分配しているため、カソード流路に分岐箇所を複数設けた場合に比べて部品点数が削減され、低コスト化、組立の簡素化、作業工程の低減及びシステムの小型化が実現される。また、マニホールド4を、燃料電池スタック1、熱交換器、アノード流路及びカソード流路等のガス流路を含む燃料電池ユニット10に取り付けているため、マニホールド4と燃料電池スタック1やガス流路との距離を近くすることができる。従って、主流路21、バイパス流路22、POX流路23を短くすることができ、各流路の圧損設計がより容易になる。
【0018】
以下、マニホールド4の詳細を説明する。
【0019】
図2はマニホールド4の上面模式図、
図3はマニホールド4の斜視図である。
図2及び
図3はいずれも燃料電池ユニット10からマニホールド4を取り外した状態の図である。
【0020】
前述のとおり、マニホールド4は、燃料電池ユニット10のカソード流路にカソードガスを分配供給する部材である。
図2及び
図3に示すように、マニホールド4は、入口44に近い方(即ち、上流側)から順に、第一流路41と、第一流路41の隣に設けられた第二流路42と、第二流路42の隣に設けられた第三流路43とを一体的に備える。第一流路41はカソードガスをカソード流路の主流路21に供給する流路であり、第二流路42はカソードガスをバイパス流路22に供給する流路であり、第三流路43はカソードガスをPOX流路23に供給する流路である。
【0021】
また、マニホールド4は、第一流路41と第二流路42を連結する第一連通路45aと、第二流路42と第三流路43とを連結する第二連通路45bとを含む連通路45を備える。
図2に示すように、第二連通路45bは、第一連通路45aよりも流路断面積が小さい。また、第二連通路45bは、第一連通路45aよりも通路の長さが長い。
【0022】
マニホールド4の第二流路42上には、バイパス流路22に分配されるカソードガスの量を調整する第一制御弁47が設けられ、第三流路43上には、POX流路23に分配されるカソードガスの量を調整する第二制御弁48が設けられている。
【0023】
第一制御弁47は、ステッピングモータバルブであり、電動式の第一弁体471と、第二流路42に固定される中空円筒状の第一弁筒472と、第一弁筒472の先端に設けられた第一弁座473とから構成される。第一弁筒472の中空部分はカソードガスが通過する通路であり、バイパス流路22に接続する。第一制御弁47は、ステッピングモータにより第一弁体471の位置を制御することで開度が調整され、これによりバイパス流路22に分配するカソードガスの流量(バイパス流量)が調整される。
【0024】
第二制御弁48は、ソレノイドバルブであり、第三流路43を開閉する第二弁体481と、第三流路43に固定される中空円筒状の第二弁筒482と、第二弁筒482の先端に設けられた第二弁座483とから構成される。第二弁筒482の中空部分はカソードガスが通過する通路であり、POX流路23に接続する。第二制御弁48は、電磁力により第二弁体481を作動することで開閉され、これによりPOX流路23に分配するカソードガスの流量(POX流量)が調整される。
【0025】
なお、第一流路41から主流路21に供給されるカソードガスの流量は、カソードガス供給源のコンプレッサ等により調整することができる。
【0026】
このように、カソード流路にカソードガスを分配するマニホールド4と各流路に流すカソードガスの量を調整する制御弁とを一体化しているため、マニホールド4とは別の構成として制御弁を設ける必要がなく、システム全体の部品点数を削減することができる。
【0027】
コンプレッサ(空気供給装置)から入口44を介してマニホールド4内にカソードガスが供給されると、マニホールド4内のカソードガスは、第一流路41、第二流路42及び第三流路43に分配供給される。具体的には、カソードガスの一部は入口44から直接、第一流路41に供給され、一部は入口44から第一連通路45aを通過して第二流路42に供給され、一部は入口44から第一連通路45aを通過し、第二流路42を横切って、さらに第二連通路45bを通過して第三流路43に供給される。このとき、入口44から各流路に供給されるまでのカソードガスの圧損は、上流側の流路に供給されるカソードガスほど小さくなる。即ち、マニホールド4の各流路に到達するまでのカソードガスの圧損は、主流路21に接続される最上流の第一流路41で最も小さく、第一流路41の隣に設けられ、バイパス流路22に接続される第二流路42が次に小さく、POX流路23に接続される最下流の第三流路43で最も大きくなる。これにより、高流量が必要な主流路21及びバイパス流路22に供給されるカソードガスの圧損は小さく、低流量が求められるPOX流路23に供給されるカソードガスの圧損は大きくなるため、カソード流路における圧損設計が容易になる。
【0028】
また、連通路45のうち、下流側の第二連通路45bは、上流側の第一連通路45aよりも流路断面積が小さいため、カソードガスの圧損は第二連通路45bの方が第一連通路45aよりも大きくなる。このため、低流量が求められるPOX流路23に供給されるカソードガスの圧損はより大きくなり、カソード流路における圧損設計がより容易になる。
【0029】
また、下流側の第二連通路45bは、上流側の第一連通路45aよりも通路の長さが長いため、長さの違いによっても第二連通路45bの方が第一連通路45aよりもカソードガスの圧損が大きくなる。このため、低流量が求められるPOX流路23に供給されるカソードガスの圧損はより大きくなり、カソード流路における圧損設計がより容易になる。
【0030】
さらに、第一連通路45a及び第二連通路45bを通過して第三流路43に供給されるカソードガスは、第二流路42を横切る際に第二流路42上に設けられた第一制御弁47によって流れが妨げられる。従って、第三流路43からPOX流路23に供給されるカソードガスの圧損はさらに大きくなり、カソード流路における圧損設計がさらに容易になる。
【0031】
なお、マニホールド4は、第一流路41、第二流路42及び第三流路43を囲むように形成されたフランジ46を備える。
図3に示すように、フランジ46の周縁には、第一流路41、第二流路42及び第三流路43を囲むようにフランジ固定部461が形成されている。マニホールド4は、第一流路41の出口411、第二流路42の出口421及び第三流路43の出口431が、それぞれ主流路21、バイパス流路22及びPOX流路23に接続する筐体3の各ガス供給口に重なるように、筐体3に固定される(
図1、
図2)。また、マニホールド4は、第一流路41、第二流路42及び第三流路43を囲むように形成されたフランジ固定部461においてボルト等により燃料電池ユニット10(筐体3)に固定される(
図1)。このように、マニホールド4を燃料電池ユニット10に固定するフランジ固定部461が、第一流路41、第二流路42及び第三流路43を囲むように形成されているため、マニホールド4の取付剛性、取付強度が向上するとともに、取付面圧が均一化する。これにより、マニホールド4の各流路41,42,43と燃料電池ユニット10内のカソード流路との接続箇所におけるシール性が向上する。
【0032】
次に、第一制御弁47及び第二制御弁48の詳細を説明する。
【0033】
前述の通り、第一制御弁47は、電動式の第一弁体471と、第二流路42に固定される第一弁筒472と、第一弁筒472の先端に設けられた第一弁座473とから構成される。また、第二制御弁48は、第三流路43を開閉する第二弁体481と、第三流路43に固定される第二弁筒482と、第二弁筒482の先端に設けられた第二弁座483とから構成される。
【0034】
図4に示すように、マニホールド4を、第一流路41の出口411、第二流路42の出口421及び第三流路43の出口431が下側になるように設置した場合、第一弁座473は、第一連通路45a及び第二連通路45bの底部よりも上方に位置する。即ち、第一弁座473は、
図4の第一連通路45aの底部の高さを示す直線X
1及び第二連通路45bの底部の高さを示す直線X
2よりも上方に位置する。同様に、マニホールド4を、第一流路41の出口411、第二流路42の出口421及び第三流路43の出口431が下側になるように設置した場合、第二弁座483は、第一連通路45a及び第二連通路45bの底部よりも上方に位置する。即ち、第二弁座483は、
図4の直線X
1及び第二連通路45bの直線X
2よりも上方に位置する。これにより、連通路45に結露水が滞留した場合でも、第一弁座473及び第二弁座483が第一連通路45a及び第二連通路45bの底部よりも上方に位置するため、第一弁体471及び第二弁体481が凍結固着することが回避される。即ち、第一弁体471、第二弁体481は、それぞれ第一弁座473、第二弁座483より上方にあるため、結露水は第一弁体471及び第二弁体481まで到達せず、第一弁体471及び第二弁体481の凍結固着が防止される。
【0035】
図5は、燃料電池ユニット10から取り外した状態のマニホールド4の正面図であり、第一流路41、第二流路42及び第三流路43の出口411,421,431方向から見た図である。
【0036】
図5に示すように、第二流路42には中空円筒状の第一弁筒472が固定され、第三流路43には中空円筒状の第二弁筒482が固定されている。また、第一弁筒472の外周には、内周面が第一弁筒472に接する筒状の第一ハウジング474が設けられている。第一ハウジング474は第一弁筒472の外周を囲み、第一ハウジング474の外周面は、第二流路42の内周面に接している。同様に、第二弁筒482の外周には、内周面が第二弁筒482に接する筒状の第二ハウジング484が設けられている。第二ハウジング484は第二弁筒482の外周を囲み、第二ハウジング484の外周面は、第三流路43の内周面に接している。このようにハウジング474,484が設けられることにより、第一弁筒472及び第二弁筒482の先端に位置する第一弁座473及び第二弁座483の外周縁は、それぞれハウジング474,484の厚み分だけ第二流路42、第三流路43の中心部に近くなる。従って、マニホールド4を、第一流路41、第二流路42及び第三流路43の流れ方向が地面に対し水平になるように設置した場合、ハウジング474,484が無い場合に比べて、第一弁座473及び第二弁座483の下部がハウジング474,484の厚み分だけ上方に位置することになる。例えば、
図5では、第一ハウジング474及び第二ハウジング484があるために、第一弁座473及び第二弁座483は第一連通路45a及び第二連通路45bの底部よりも上方に位置する(
図5では、第一弁筒472と第二弁筒482が第一連通路45a及び第二連通路45bの底部よりも上方に位置しているが、第一弁座473及び第二弁座483と第一弁筒472及び第二弁筒482は等しい高さの位置にある)。即ち、第一弁座473及び第二弁座483は、
図5の第一連通路45aの底部の高さを示す直線Y
1及び第二連通路45bの底部の高さを示す直線Y
2よりも上方に位置する。このように、第一ハウジング474及び第二ハウジング484によって第一弁座473及び第二弁座483は上方に位置するため、連通路45に結露水が滞留した場合でも、第一弁体471及び第二弁体481が凍結固着することが回避される。即ち、第一弁体471及び第二弁体481は第一弁座473及び第二弁座483と高さが等しい位置に設けられているため、連通路45に滞留した結露水は第一弁体471及び第二弁体481まで到達せず、第一弁体471及び第二弁体481の凍結固着が防止される。
【0037】
また、第一制御弁47の第一弁筒472は第二流路42から着脱可能に構成され、第二制御弁48の第二弁筒482は第三流路43から着脱可能に構成される。
図6は、燃料電池ユニット10から取り外した状態のマニホールド4の斜視図であり、マニホールド4から第一弁筒472及び第二弁筒482を取り外した状態の図である。第一弁筒472及び第二弁筒482は、例えばそれぞれ第二流路42及び第三流路43内にねじ込まれることにより、第二流路42及び第三流路43に固定される。前述の通り、第一弁筒472及び第二弁筒482は中空円筒形状に構成され、中空部分はカソードガスが通過する通路である。従って、中空部分のサイズの異なる第一弁筒472及び第二弁筒482を使用することで、バイパス流路22及びPOX流路23に供給するカソードガスの流量の調整範囲を変更することができる。本実施形態では、第一弁筒472及び第二弁筒482を第二流路42及び第三流路43から着脱可能に構成しているため、マニホールド4全体を交換することなく、第一弁筒472及び第二弁筒482を交換するだけで流量調整範囲を変更することができる。また、
図6に示すように、第一弁筒472と第二弁筒482は、同方向からそれぞれ第二流路42及び第三流路43に挿入され取り付けられる。このように、第一弁筒472と第二弁筒482を同方向から第二流路42及び第三流路43に挿入可能に構成しているため、組立時の作業性が向上する。
【0038】
上記した第1実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0039】
燃料電池システム100は、燃料電池ユニット10に取り付けられ、カソード流路にカソードガスを分配供給するマニホールド4を備える。カソード流路は、熱交換器を通過する主流路21と、熱交換器を迂回して主流路21に接続するバイパス流路22と、アノード流路に部分酸化改質用のガスを供給するPOX流路(部分改質流路)23とを有している。マニホールド4は、上流側から順に主流路21に接続する第一流路41と、第一流路41の隣に設けられバイパス流路22に接続する第二流路42と、第二流路42の隣に設けられPOX流路(部分改質流路)23に接続する第三流路43とを備えたガス分配部材として構成される。このように、高流量が必要な主流路21、バイパス流路22に接続する第一、第二流路41,42を上流側に設け、低流量が求められるPOX流路23に接続する第三流路43を最も下流側に設けている。これにより、マニホールド4からPOX流路(部分改質流路)23に供給されるカソードガスの圧損は、主流路21及びバイパス流路22に供給されるカソードガスの圧損よりも大きくなる。即ち、高流量が必要な主流路21及びバイパス流路22に供給されるカソードガスの圧損は小さく、低流量が求められるPOX流路(部分改質流路)23に供給されるカソードガスの圧損は大きくなるため、カソード流路における圧損設計が容易になる。
【0040】
また、カソードガスをマニホールド4により主流路21、バイパス流路22及びPOX流路(部分改質流路)23に分配しているため、カソード流路に分岐箇所を複数設けた場合に比べて部品点数が削減される。従って、低コスト化、組立の簡素化、作業工程の低減及びシステムの小型化を実現することができる。
【0041】
また、マニホールド4を、燃料電池スタック1、熱交換器、アノード流路及びカソード流路等のガス流路を含む燃料電池ユニット10に取り付けているため、マニホールド4と燃料電池スタック1やガス流路との距離を近くすることができる。従って、主流路21、バイパス流路22及びPOX流路(部分改質流路)23を短くすることができ、各流路の圧損設計がより容易になる。
【0042】
燃料電池システム100は、マニホールド4が第一流路41と第二流路42を連結する第一連通路45aと、第二流路42と第三流路43を連結する第二連通路45bとを含む連通路45を備え、第二連通路45bは、第一連通路45aよりも流路断面積が小さい。これにより、カソードガスの圧損は下流側の第二連通路45bの方が上流側の第一連通路45aよりも大きくなる。このため、低流量が求められるPOX流路(部分改質流路)23に供給されるカソードガスの圧損はより大きくなり、カソード流路における圧損設計がより容易になる。
【0043】
燃料電池システム100は、マニホールド4の第二連通路45bが第一連通路45aよりも長い。これにより、カソードガスの圧損は下流側の第二連通路45bの方が上流側の第一連通路45aよりもより大きくなる。このため、低流量が求められるPOX流路(部分改質流路)23に供給されるカソードガスの圧損がより大きくなり、カソード流路における圧損設計がより容易になる。
【0044】
燃料電池システム100は、マニホールド4が第二流路42上に設けられ、バイパス流路22に分配するカソードガスの量(バイパス流量)を調整する第一制御弁47と、第三流路43上に設けられ、POX流路(部分改質流路)23に分配するカソードガスの量(POX流量)を調整する第二制御弁48とを備える。このように、カソード流路にカソードガスを分配するマニホールド4と各流路に流すカソードガスの量を調整する制御弁とを一体化しているため、制御弁を別途設ける必要がなく、システム全体の部品点数を削減することができる。従って、低コスト化、組立の簡素化、作業工程の低減及びシステムの小型化を実現することができる。
【0045】
また、第二流路42上にバイパス流量を調整する第一制御弁47を設けているため、第一連通路45a及び第二連通路45bを通過して第三流路43に供給されるカソードガスは、第二流路42を横切る際に第一制御弁47によって流れが妨げられる。従って、第三流路43からPOX流路(部分改質流路)23に供給されるカソードガスの圧損はさらに大きくなり、カソード流路における圧損設計がさらに容易になる。
【0046】
燃料電池システム100は、マニホールド4が第一流路41、第二流路42及び第三流路43を囲むように形成されたフランジ46を備える。フランジ46は、マニホールド4を燃料電池ユニット10に固定するためのフランジ固定部461を有し、フランジ固定部461は、マニホールド4の第一流路41、第二流路42及び第三流路43を囲むように形成される。このように、マニホールド4を燃料電池ユニット10に固定するフランジ固定部461が、第一流路41、第二流路42及び第三流路43を囲むように形成されているため、マニホールド4の取付剛性、取付強度が向上するとともに、取付面圧が均一化する。これにより、マニホールド4の各流路41,42,43と燃料電池ユニット10内のカソード流路との接続箇所におけるシール性が向上する。
【0047】
燃料電池システム100は、第一制御弁47が、第一弁体471と、第二流路42に固定される第一弁筒472と、第一弁筒472の先端に設けられた第一弁座473とから構成される。また、第二制御弁48は、第二弁体481と、第三流路43に固定される第二弁筒482と、第二弁筒482の先端に設けられた第二弁座483とから構成される。そして、マニホールド4を第二流路42の出口421及び第三流路43の出口431が下側になるように燃料電池ユニット10に取り付けた場合、第一弁座473及び第二弁座483は、第一連通路45a及び第二連通路45bよりも上方に位置する。これにより、連通路45に結露水が滞留した場合でも、第一弁体471及び第二弁体481が凍結固着することが回避される。
【0048】
燃料電池システム100は、第一弁筒472の外周を囲む筒状の第一ハウジング474と、第二弁筒482の外周を囲む筒状の第二ハウジング484とを備える。第一ハウジング474は、内周面が第一弁筒472に接するとともに外周面が第二流路42の内周面に接し、第二ハウジング484は、内周面が第二弁筒482に接するとともに外周面が第三流路43の内周面に接する。これにより、マニホールド4を、第一流路41、第二流路42及び第三流路43の流れ方向が地面に対し水平になるように設置した場合、第一弁座473及び第二弁座483の下部は、ハウジング474,484が無い場合に比べ、それぞれハウジング474,484の厚み分だけ上方に位置する。従って、連通路45に結露水が滞留した場合でも、第一弁体471及び第二弁体481が凍結固着することが防止される。
【0049】
燃料電池システム100は、第一弁筒472が第二流路42に着脱可能に構成され、第二弁筒482が第三流路43に着脱可能に構成される。これにより、マニホールド4全体を交換することなく、第一弁筒472及び第二弁筒482を交換するだけで流量調整範囲を変更することができる。
【0050】
燃料電池システム100は、第一弁体471、第二弁体481は、それぞれ第二流路42、第三流路43に挿入されることで、第二流路42、第三流路43に取り付けられ、第一弁体471及び第二弁体481の当該挿入方向は同方向である。このように、第一弁筒472と第二弁筒482を同方向から第二流路42及び第三流路43に挿入可能に構成しているため、組立時の作業性が向上する。
【0051】
なお、本実施形態の
図2では、マニホールド4の第一連通路45a及び第二連通路45bをいずれも直線的な円筒状に形成しているが、これに限られない。例えば、
図7に示すように、連通路45全体をテーパ状に形成してもよい。このような形状であっても、第二連通路45bの流路面積は、第一連通路45aよりも小さくなるため、カソードガスの圧損は下流側の第二連通路45bの方が上流側の第一連通路45aよりも大きくなる。従って、低流量が求められるPOX流路23に供給されるカソードガスの圧損はより大きくなり、カソード流路における圧損設計がより容易になる。
【0052】
また、
図2や
図7のように、下流側の第二連通路45bの流路断面積を上流側の第一連通路45aよりも小さくすることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、例えば第一連通路45aと第二連通路45bの流路断面積は等しくてもよい。この場合でも、POX流路23に接続する第三流路43をマニホールド4の下流に設けていれば、POX流路23に供給されるカソードガスの圧損は大きくなるため、カソード流路における圧損設計が容易になる。
【0053】
同様に、本実施形態のように、マニホールド4の第二連通路45bは、第一連通路45aよりも長いことが好ましいが、必ずしもこれに限られず、例えば第一連通路45aと第二連通路45bの長さが等しくてもよい。
【0054】
また、本実施形態のように、カソード流路にカソードガスを分配するマニホールド4と各流路に流すカソードガスの量を調整する制御弁とは、一体化することが好ましいが、必ずしもこれに限られない。例えば、第一制御弁47や第二制御弁48をマニホールド4とは別の構成としてマニホールド4の下流に設けてもよい。また、バイパス流量を調整する第一制御弁47と、POX流量を調整する第二制御弁48の一方のみをマニホールド4に設けてもよい。
【0055】
また、本実施形態のように、マニホールド4をフランジ46のフランジ固定部461により燃料電池ユニット10に固定することが好ましいが、マニホールド4を燃料電池ユニット10に固定する方法は必ずしもこれに限られず、既知の如何なる方法で固定してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、第一制御弁47をステッピングモータバルブ、第二制御弁48をソレノイドバルブとしたが、これに限られず、カソードガスの量を調整する制御装置は既知の如何なるものを用いてもよい。
【0057】
また、本実施形態のように、弁筒472,482の外周にハウジング474,484を備えることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、ハウジング474,484を設けない構成であってもよい。
【0058】
また、本実施形態のように、弁筒472,482を同方向から着脱可能に構成することが好ましいが、必ずしもこれに限られず、弁筒472,482を取り外せない構造であってもよく、また、例えば、第一弁筒472と第二弁筒482の着脱方向が異なっていてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、2つの燃料電池スタック1の間に補機構造体2を介在させる構成としているが、燃料電池スタック1の個数や燃料電池スタック1と補機構造体2との位置関係は必ずしもこれに限られず、任意に設定することができる。
【0060】
(第2実施形態)
図8を参照して、第2実施形態による燃料電池システム100を説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0061】
図8は、第2実施形態による燃料電池システム100におけるマニホールド4の上面図である。本実施形態では、マニホールド4の連通路45の位置が第1実施形態と異なる。
【0062】
図8に示すように、本実施形態においても、マニホールド4の連通路45は、第二連通路45bの流路面積が、第一連通路45aよりも小さく、また、第二連通路45bは、第一連通路45aよりも通路の長さが長い。
【0063】
一方、第一実施形態と異なり、第一連通路45aと第二連通路45bとは、カソードガスの流れ方向における中心軸線Lが同一直線状になるように構成されている。これにより、連通路45の配管を加工する際、ドリルやリーマを一方向の穴(例えば
図6の第一流路41の左壁に開けた穴)から挿入して加工することができる。従って、連通路45の配管の加工工数が減少し、低コスト化が実現される。また、加工が容易になり、鋳物等によって連通路45の配管を加工する場合に比べ孔径の誤差等が減少し、加工精度が向上する。
【0064】
なお、本実施形態でも、第一実施形態と同様に、マニホールド4の第二連通路45bを、第一連通路45aよりも流路面積は小さく、通路の長さは長くしているが、必ずしもこれに限られない。例えば、第一連通路45aと第二連通路45bの流路面積や長さを等しくしてもよい。
【0065】
また、本実施形態の
図8では、マニホールド4の第一連通路45a及び第二連通路45bをいずれも直線的な円筒状に形成しているが、これに限られない。例えば、連通路45全体を
図9に示すようなテーパ状に形成してもよい。このような形状であっても、第一連通路45aと第二連通路45bの中心軸線Lが同一直線状になっていれば、ドリルやリーマを一方向の穴から挿入して連通路45の配管を加工することができる。
【0066】
(第3実施形態)
図10を参照して、第3実施形態による燃料電池システム100を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図10は、第3実施形態による燃料電池システム100におけるマニホールドの上面図である。本実施形態では、マニホールド4の連通路45の位置が他の実施形態と異なる。
【0068】
図10に示すように、本実施形態においても、他の実施形態と同様に、マニホールド4の連通路45は、第二連通路45bの流路面積が、第一連通路45aよりも小さく、また、第二連通路45bは、第一連通路45aよりも通路の長さが長い。
【0069】
一方、他の実施形態と異なり、第一連通路45a及び第二連通路45bは、
図10に示すように、一直線(直線M)上でフランジ46の表面に接している。このように連通路45が一直線上でフランジ46の表面に当接するため、フランジ46の板厚を一定にすることができる。これにより、マニホールド4を燃料電池ユニット10に取り付ける際、燃料電池ユニット10に当接するフランジ46のシール面462の面圧を均一化することができる。これにより、マニホールド4の各流路41,42,43と燃料電池ユニット10内のカソード流路との接続箇所におけるシール性が向上する。
【0070】
なお、本実施形態でも、他の実施形態と同様に、マニホールド4の第二連通路45bを、第一連通路45aよりも流路面積は小さく、通路の長さは長くしているが、必ずしもこれに限られない。例えば、第一連通路45aと第二連通路45bの流路面積や長さを等しくしてもよい。
【0071】
(第4実施形態)
図11~
図13を参照して、第4実施形態による燃料電池システム100を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
図11は、第4実施形態による燃料電池システム100の概略構成図である。本実施形態では、マニホールド4がブラケット5を介して燃料電池ユニット10に取り付けられる点が他の実施形態と異なる。
【0073】
図11に示すように、本実施形態では、燃料電池ユニット10を燃料電池システム100が搭載される車両に固定するブラケット5が筐体3に取り付けられている。
【0074】
ブラケット5は、筐体3の外周側の側面に当接する表面を有するケース側固定部51と、ケース側固定部51から屈曲して、筐体3の側面に対し略垂直な方向に延設される延設部52とを有する。ケース側固定部51における筐体3に当接する表面とは反対側の面には、マニホールド4が取り付けられている。後述するように、ブラケット5は、延設部52の上面において、燃料電池システム100が搭載される車両のサイドメンバー6に取り付けられる第2ブラケット7に固定される(
図13参照)。延設部52の下面には、肉抜きされた複数の穴53が形成されている。これにより、ブラケット5が軽量化される。さらに、延設部52の下面には、カソードガス供給源としてのコンプレッサ(空気供給装置)8が取り付けられている。また、ブラケット5は、筐体3のガス供給口を介して補機構造体2に内蔵されるガス流路に接続するガス供給口を有している。
【0075】
図12は、燃料電池ユニット10(筐体3)からマニホールド4及びブラケット5を取り外した状態の模式図である。
図12に示すように、筐体3は、一つの側面にガス供給口であるカソードガス供給口31、温調ガス供給口32、改質ガス供給口33を有している。補機構造体2の内部から筐体3の内周面まで延びる主流路21、バイパス流路22、POX流路23は、それぞれカソードガス供給口31、温調ガス供給口32、改質ガス供給口33に接続するように、筐体3に固定されている。一方、ブラケット5は、ケース側固定部51に第1貫通孔54、第2貫通孔55、第3貫通孔56を有している。ブラケット5は、第1貫通孔54、第2貫通孔55、第3貫通孔56がそれぞれ筐体3のカソードガス供給口31、温調ガス供給口32、改質ガス供給口33に重なるように取り付けられる。これにより、第1貫通孔54とカソードガス供給口31、第2貫通孔55と温調ガス供給口32、及び第3貫通孔56と改質ガス供給口33は、それぞれカソードガス、温調ガス、改質ガスが通過する孔を形成する。
【0076】
図11に示すように、マニホールド4は、フランジ46がブラケット5のケース側固定部51に固定されている。即ち、マニホールド4は、フランジ46がブラケット5に固定されることで、燃料電池ユニット10に固定される。また、マニホールド4は、第一流路41がブラケット5の第1貫通孔54に、第二流路42がブラケット5の第2貫通孔55に、第三流路43がブラケット5の第3貫通孔56にそれぞれ連結されるように、ブラケット5に取り付けられている。従って、マニホールド4の第一流路41は、ブラケット5の第1貫通孔54及び筐体3のカソードガス供給口31を介して主流路21に接続される。同様に、マニホールド4の第二流路42は、ブラケット5の第2貫通孔55及び筐体3の温調ガス供給口32を介してバイパス流路22に接続され、マニホールド4の第三流路43は、ブラケット5の第3貫通孔56及び筐体3の改質ガス供給口33を介してPOX流路23に接続される。なお、マニホールド4の入口44は、配管またはホース管等を介してコンプレッサ8に接続されている。
【0077】
また、
図12に示すように、ブラケット5には、第1貫通孔54、第2貫通孔55、第3貫通孔56を囲むように固定部57が形成されており、
図11に示すように、ブラケット5は、固定部57においてボルト等により筐体3に固定される。
【0078】
このように、ブラケット5は、マニホールド4の第一流路41と主流路21とを接続する第1貫通孔54と、第二流路42とバイパス流路22とを接続する第2貫通孔55と、第三流路43とPOX流路23とを接続する第3貫通孔56とを有している。従って、燃料電池ユニット10を燃料電池システム100が搭載される車両に固定するブラケット5を、カソード流路21,22,23とマニホールド4との接続部の補強材として兼用することができる。これにより、カソード流路21,22,23とマニホールド4との接続部の補強材を別途設ける場合に比べて、システムの部品点数を削減でき、軽量化、低コスト化が実現される。また、筐体3(燃料電池ユニット10)に取り付けられる部品数が多くなると、当該部品を介して筐体3外部への放熱が多くなるが、上記の通り、ブラケット5を補強材として兼用することで部品点数が削減されるため、筐体3からの放熱を抑制することができる。
【0079】
また、ブラケット5を燃料電池ユニット10に固定する固定部57が、第1貫通孔54、第2貫通孔55及び第3貫通孔56を囲むように形成されているため、ブラケット5の取付剛性、取付強度が向上するとともに、取付面圧が均一化する。これにより、ブラケット5の貫通孔54,55,56と燃料電池ユニット10内のカソード流路とのシール性が向上する。
【0080】
図13は、燃料電池システム100を搭載した車両の断面模式図であり、車両の前面方向から見た図である。
【0081】
図13に示すように、車両のサイドメンバー6には第2ブラケット7が取り付けられている。燃料電池ユニット10に固定されるブラケット5は、延設部52の上面において、第2ブラケット7に固定されている。これにより、燃料電池ユニット10がブラケット5を介して車両に固定される。一方、延設部52の下面には、カソードガスの供給源であるコンプレッサ(空気供給装置)8が取り付けられている。コンプレッサ8は、配管またはホース管を介してマニホールド4の入口44に接続している(
図11参照)。このように、コンプレッサ8をブラケット5に取り付けることで、他の位置に取り付けた場合に比べ、コンプレッサ8からマニホールド4及びカソード流路までの距離が短くなり、配管等の距離を短くすることができる。従って、システムの小型化、低コスト化、軽量化が実現される。また、コンプレッサ8がブラケット5(延設部52)の下面に取り付けられているため、低重心化により車両の運動性が向上する。
【0082】
上記した第4実施形態の燃料電池システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0083】
燃料電池システム100は、ブラケット5を介して車両に固定され、マニホールド4は、第一流路41、第二流路42及び第三流路43を囲むように形成されたフランジ46がブラケット5に固定されることにより燃料電池ユニット10に固定される。ブラケット5は、マニホールド4の第一流路41と主流路21とを接続する第1貫通孔54と、第二流路42とバイパス流路22とを接続する第2貫通孔55と、第三流路43とPOX流路(部分改質流路)23とを接続する第3貫通孔56とを有している。また、ブラケット5を燃料電池ユニット10に固定する固定部57は、前記第1貫通孔、前記第2貫通孔及び前記第3貫通孔を囲むように形成される。このように、燃料電池ユニット10を燃料電池システム100が搭載される車両に固定するブラケット5を、カソード流路21,22,23とマニホールド4との接続部の補強材として兼用することができる。これにより、カソード流路21,22,23とマニホールド4との接続部の補強材を別途設ける場合に比べて、システムの部品点数を削減でき、軽量化、低コスト化が実現される。また、ブラケット5を補強材として兼用することで部品点数が削減されるため、燃料電池ユニット10からの放熱を抑制することができる。
【0084】
また、ブラケット5を燃料電池ユニット10に固定する固定部57が、第1貫通孔54、第2貫通孔55及び第3貫通孔56を囲むように形成されているため、ブラケット5の取付剛性、取付強度が向上するとともに、取付面圧が均一化する。これにより、ブラケット5の貫通孔54,55,56と燃料電池ユニット10内のカソード流路とのシール性が向上する。
【0085】
燃料電池システム100は、ブラケット5に、カソードガス供給源としてのコンプレッサ(空気供給装置)8が取り付けられている。このように、コンプレッサ(空気供給装置)8をブラケット5に取り付けることで、他の位置に取り付けた場合に比べ、コンプレッサ(空気供給装置)8からマニホールド4及びカソード流路までの距離が短くなる。これにより、配管等の距離を短くすることができ、システムの小型化、低コスト化、軽量化が実現される。
【0086】
なお、本実施形態のように、コンプレッサ(空気供給装置)8はブラケット5の延設部52の下面に取り付けられることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、ブラケット5のどこに取り付けられていてもよい。
【0087】
また、いずれの実施形態においても、燃料電池ユニット10が燃料電池スタック1及び補機構造体2を収容する筐体3を備える構成としたが、必ずしもこれに限られず、筐体3を備えていなくてもよい。この場合、マニホールド4やブラケット5は、補機構造体2に直接取り付けられる。
【0088】
また、いずれの実施形態においても、熱交換器やカソード流路等のガス流路を補機構造体2に内蔵する構成としたが、必ずしもこれに限られず、補機構造体2を用いない構成であってもよい。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0090】
上記した各実施形態は、それぞれ単独の実施形態として説明したが、適宜組み合わせてもよい。