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特許7605329造粒装置、造粒焼結原料の製造方法および焼結鉱の製造方法
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  • 特許-造粒装置、造粒焼結原料の製造方法および焼結鉱の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】造粒装置、造粒焼結原料の製造方法および焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/16 20060101AFI20241217BHJP
   C22B 1/216 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C22B1/16 K
C22B1/216
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023546184
(86)(22)【出願日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2023015187
(87)【国際公開番号】W WO2023210412
(87)【国際公開日】2023-11-02
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2022073926
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】岩見 友司
(72)【発明者】
【氏名】志村 康成
(72)【発明者】
【氏名】藤原 頌平
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 寿幸
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆英
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-039966(JP,A)
【文献】特開昭50-104103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造粒装置を用いて、鉄含有原料、CaO含有原料および凝結材を含む焼結原料を造粒する造粒焼結原料の製造方法であって、
前記造粒装置は前記焼結原料が投入される投入口と、造粒された焼結原料が排出される排出口と、が設けられ、横方向を回転軸として回転する筒状のドラムを有し、
前記ドラム内であって、前記投入口と前記排出口との中間位置から前記排出口までの間の後半部分のみで前記焼結原料に蒸気を吹き込んで造粒焼結原料とし、
前記造粒装置から排出される造粒焼結原料の温度が60℃以上となる場合に、前記焼結原料に0.5質量%以上4.5質量%以下の水分をさらに添加する、造粒焼結原料の製造方法。
【請求項2】
請求項に記載の造粒焼結原料の製造方法で造粒された造粒焼結原料を焼結機で焼結して焼結鉱を製造する、焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結原料を造粒する造粒装置、造粒焼結原料の製造方法および焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉用原料である焼結鉱は、一般に、鉄鉱石粉、製鉄所内回収粉、焼結鉱篩下粉などの鉄含有原料と、石灰石及びドロマイトなどの含CaO原料と、粉コークスや無煙炭などの炭材(固体燃料)とを焼結原料として、無端移動型焼結機であるドワイトロイド式焼結機(以下、「焼結機」と記載する場合がある。)を用いて製造される。焼結原料は、焼結機の無端移動式のパレットに装入され、装入層が形成される。装入層の厚さ(高さ)は400~800mm程度である。その後、装入層の上方に設置された点火炉により、装入層表層の炭材に点火される。パレットの下に配設されている風箱を介して空気を下方に吸引することにより、装入層中の炭材を順次燃焼させる。この燃焼は、パレットの移動につれて次第に下層にかつ前方に進行する。このときに発生する燃焼熱によって、焼結原料が燃焼、溶融し、焼結ケーキが生成される。その後、得られた焼結ケーキは、排鉱部において破砕され、クーラーで冷却され、整粒されて成品焼結鉱となる。
【0003】
上述した焼結機を用いた焼結鉱の製造では、焼結原料を予熱乾燥することで装入層の湿潤帯が占める割合を縮小させて装入層の通気性を向上させ、焼結鉱の生産性を向上させる技術が知られている。例えば、特許文献1には、焼結原料を造粒する造粒時に水蒸気などの蒸気を吹込み、焼結原料を加熱する造粒焼結原料の製造方法が開示されている。特許文献1によれば、水蒸気を吹込みながら焼結原料を造粒することで焼結原料が予熱乾燥され、装入層の通気性が向上して焼結鉱の生産率が向上できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2019/167888号
【文献】特開2022-39966
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の方法は、蒸気を吹き込みながら焼結原料を造粒する方法であるものの、ドラムミキサー内において焼結原料が移動する下流側の領域(後半部分)にて蒸気を吹き込むことについての開示や示唆はなされていない。このため、特許文献1に開示された方法を用いた場合には、排出口から排出される前に、造粒焼結原料の温度が低下してしまう。また、特許文献2に開示の方法は、造粒済みの原料を加熱装置にて加熱する方法であるため、加熱装置を経た後であっても、原料内部への熱伝達の困難性から、目標温度に達しない可能性がある。本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、焼結原料に蒸気を吹き込んで、効率的に焼結原料を加熱できる造粒装置、造粒焼結原料の製造方法および当該造粒焼結原料の製造方法を用いた焼結鉱の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]鉄含有原料、CaO含有原料および凝結材を含む焼結原料を造粒する造粒装置であって、前記焼結原料が投入される投入口と、造粒された焼結原料が排出される排出口と、が設けられ、横方向を回転軸として回転する筒状のドラムと、前記ドラム内であって、前記投入口と前記排出口との中間位置から前記排出口までの間の後半部分のみに設けられる蒸気配管と、前記蒸気配管に接続され、前記焼結原料の堆積面に蒸気を噴出させる複数のノズルと、を有する、造粒装置。
[2]造粒装置を用いて、鉄含有原料、CaO含有原料および凝結材を含む焼結原料を造粒する造粒焼結原料の製造方法であって、前記造粒装置は前記焼結原料が投入される投入口と、造粒された焼結原料が排出される排出口と、が設けられ、横方向を回転軸として回転する筒状のドラムを有し、前記ドラム内であって、前記投入口と前記排出口との中間位置から前記排出口までの間の後半部分のみで前記焼結原料に蒸気を吹き込んで造粒焼結原料とする、造粒焼結原料の製造方法。
[3]前記造粒装置から排出される造粒焼結原料の温度が60℃以上となる場合に、前記焼結原料に0.5質量%以上4.5質量%以下の水分をさらに添加する、[2]に記載の造粒焼結原料の製造方法。
[4][2]または[3]に記載の造粒焼結原料の製造方法で造粒された造粒焼結原料を焼結機で焼結して焼結鉱を製造する、焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る造粒装置を用いることで、焼結原料に蒸気を吹き込んで効率的に加熱できるので、造粒時に用いる蒸気の使用量を削減できる。この加熱された造粒焼結原料を用いることで、装入層の通気性が向上し焼結鉱の生産率が向上するので、本発明に係る造粒装置を用いることで、焼結鉱の生産率の向上と焼結鉱の製造コスト上昇の抑制とが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る造粒装置であるドラムミキサー32を有する焼結鉱製造設備10の一例を示す模式図である。
図2図2は、焼結機のパレット装入時の擬似粒子の温度上昇分と、焼結鉱の生産性の上昇率との関係を示すグラフである。
図3図3は、実験例1~3の焼結原料の水分量を示すグラフである。
図4図4は、実験例1~3の擬似粒子の粒子径と、装入層の通気性指数JPUを示すグラフである。
図5図5は、実験例1~3の焼結鉱の生産率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を説明する。図1は、本実施形態に係る造粒装置であるドラムミキサー32を有する焼結鉱製造設備10の一例を示す模式図である。ヤード11に保管された鉄含有原料12は、搬送コンベア14によって配合槽22に搬送される。鉄含有原料12は、種々の銘柄の鉄鉱石および製鉄所内発生ダストを含む。
【0010】
原料供給部20は、複数の配合槽22、24、25、26、28を備える。配合槽22には、鉄含有原料12が貯留される。配合槽24には、石灰石や生石灰等を含むCaO含有原料16、配合槽25にはドロマイトや精錬ニッケルスラグ等を含むMgO含有原料17がそれぞれ貯留される。配合槽26には、ロッドミルを用いて粒径1mm以下に破砕された粉コークスや無煙炭を含む凝結材18が貯留される。配合槽28には、焼結鉱の篩下となった粒径5mm以下の返鉱(焼結鉱篩下粉)が貯留される。原料供給部20の配合槽22~28から、各原料が所定量切り出され、これらが配合されて焼結原料となる。焼結原料は、搬送コンベア30によってドラムミキサー32に搬送される。MgO含有原料17は、任意配合原料であって、焼結原料に配合されてもよく、配合されなくてもよい。
【0011】
ドラムミキサー32は、焼結原料に蒸気を吹き付けながら造粒する造粒装置である。ドラムミキサー32は、横方向を回転軸として回転する筒状のドラム33と、蒸気配管36と、蒸気配管36に接続され、焼結原料の堆積面に水蒸気38を噴出させる複数のノズル37とを有する。なお、水蒸気は蒸気の一例である。ドラムミキサー32における回転軸は、略水平にしてよい。また、擬似粒子を効率良く排出するため、投入口34に対して排出口35が鉛直方向の下方に位置するように回転軸を傾けてもよい。
【0012】
筒状のドラム33には、当該ドラム33の一端面側に設けられ、焼結原料が投入される投入口34と、ドラム33の他端面側に設けられ、造粒された造粒焼結原料(以後、擬似粒子と記載する。)が排出される排出口と、が設けられている。蒸気配管36は、ドラム33内であって、投入口34と排出口35との中間位置から排出口35までの間の後半部分となる領域のみに設けられ、当該位置から複数のノズル37を通じて焼結原料の堆積面に向けて水蒸気を吹き込む。
【0013】
このように、ドラム33の後半部分において焼結原料に水蒸気を吹き込みながら焼結原料を造粒することで、水蒸気を吹き込まないで造粒された焼結原料よりも高い温度の平均粒径3.0mm程度の擬似粒子を製造している。擬似粒子は、搬送コンベア39によって焼結機40に搬送される。本実施形態において、擬似粒子の平均粒径は算術平均粒径であって、Σ(Vi×di)(但し、Viはi番目の粒度範囲の中にある粒子の存在比率であり、diはi番目の粒度範囲の代表粒径である。)で定義される粒径である。また、ドラムミキサー32は、焼結原料を造粒する造粒装置の一例である。
【0014】
焼結機40は、例えば、下方吸引式のドワイトロイド式焼結機である。焼結機40は、焼結原料供給装置42と、無端移動式のパレット台車44と、点火炉46と、ウインドボックス48とを有する。焼結原料供給装置42から焼結原料がパレット台車44に装入され、焼結原料の装入層が形成される。装入層は点火炉46で点火される。ウインドボックス48を通じて空気を吸引することで、装入層内で凝結材18を燃焼させつつ装入層内の燃焼・溶融帯を装入層の下方へ移動させる。これにより、装入層は焼結されて焼結ケーキが形成される。本実施形態では、気体燃料供給装置47を備えても良い。気体燃料供給装置47から供給される気体燃料は、高炉ガス、コークス炉ガス、高炉・コークス炉混合ガス、転炉ガス、都市ガス、天然ガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、シェールガスおよびそれらの混合ガスのうちから選ばれるいずれかの可燃性ガスである。
【0015】
焼結ケーキは、破砕機50によって破砕され焼結鉱にされる。破砕機50で破砕された焼結鉱は、冷却機52によって冷却される。冷却機52によって冷却された焼結鉱は、複数の篩を有する篩分け装置54によって篩分けされ、粒径5mm超の成品焼結鉱56と、粒径5mm以下の返鉱58とに篩分けされる。成品焼結鉱56は、高炉原料として用いられる。一方、返鉱58は、搬送コンベア60によって原料供給部20の配合槽28に搬送される。本実施形態において、成品焼結鉱56の粒径および返鉱58の粒径は、篩によって篩分けられる粒径を意味し、例えば、粒径5mm超とは、目開き5mmの篩を用いて篩上に篩分けされる粒径であり、粒径5mm以下とは、目開き5mmの篩を用いて篩下に篩分けされる粒径である。成品焼結鉱56および返鉱58の粒径の各値は、あくまで一例であり、この値に限定するものではない。
【0016】
このように、焼結鉱製造設備10を用いた焼結鉱の製造では、ドラムミキサー32で焼結原料に水蒸気を吹き込んで焼結原料を加熱しながら造粒している。これにより、焼結原料の装入層の通気性が向上し、焼結原料の生産率が向上する。
【0017】
図2は、焼結機のパレット台車44へ装入される擬似粒子の上昇温度と、焼結鉱の生産性の上昇率との関係を示すグラフである。図2の横軸は焼結機のパレット台車44への装入時の擬似粒子の上昇温度(℃)である。上昇温度は、パレット台車44への装入時における水蒸気を吹き込んで造粒した擬似粒子の平均温度と水蒸気を吹き込まずに造粒した擬似粒子の平均温度との差である。なお、水蒸気を吹き込まずに造粒した擬似粒子の平均温度は18.3℃であり、図中の各プロットは、パレット台車44装入時の擬似粒子の平均温度が、38.0℃、35.0℃、35.5℃、45.0℃、51.0℃の例である。また、図2の縦軸は焼結鉱の生産率の向上効果(%)であり、下記(1)式で算出される値である。
【0018】
(T2-T1)×100/T1・・・(1)
上記(1)式において、T1は、水蒸気を吹き込まずに造粒した擬似粒子を用いて焼結鉱を製造したときの焼結鉱の生産率(t/(hr×m))であり、T2は、水蒸気を吹き込んで造粒した擬似粒子を用いて焼結鉱を製造した時の焼結鉱の生産率(t/(hr×m))である。
【0019】
図2に示すように、パレット台車44への装入時の擬似粒子の平均温度が高くなるに従って、焼結鉱の生産性の上昇率は高くなった。この結果から、ドラムミキサー32で焼結原料に水蒸気を吹き込んで高温の擬似粒子とし、当該擬似粒子を用いて焼結鉱を製造することで、焼結鉱の生産率を向上できることがわかる。
【0020】
一方、擬似粒子の平均温度が60℃以上になると、水分が蒸発してしまい、所定の粒径の擬似粒子が造粒されなくなる。擬似粒子の粒径が小さくなると装入層の通気性が悪化し、焼結鉱の生産性が大きく低下する。
【0021】
図3は、実験例1~3の焼結原料の水分量を示すグラフである。図3において斜線ハッチングで示した棒グラフはドラムミキサー入り側の焼結原料の水分量(質量%)を示し、横線ハッチングで示した棒グラフは焼結機装入時の焼結原料の水分量(質量%)を示す。実験例1は焼結機への装入時の焼結原料の平均温度が33℃である擬似粒子を用いた製造例である。実験例2は、焼結機への装入時の焼結原料の平均温度が60℃である擬似粒子を用いた製造例である。実験例3は、焼結機への装入時の焼結原料の平均温度が62℃である擬似粒子を用いた製造例である。
【0022】
図3に示すように、実験例1と実験例3は、焼結機への装入時においても原料水分量6.5質量%が確保できていることがわかる。一方、実験例2では、ドラムミキサー入り側では6.5質量%の水分量を確保できていたものの加熱によって水分が蒸発したため、焼結機への装入時においては水分量が5.5質量%程度に低下した。
【0023】
図4は、実験例1~3の擬似粒子の粒子径と、装入層の通気性指数JPUを示すグラフである。図4において、斜線のハッチングで示した棒グラフは擬似粒子の粒子径(mm)を示し、横線のハッチングで示した棒グラフは通気性指数JPU(-)((-)は無次元を意味する。)を示す。なお、擬似粒子の粒子径は上述した算出平均粒径であり、装入層の通気性指数JPUは、下記(2)式を用いて算出される指数である。
【0024】
JPU=V/[S×(ΔP/h)0.6]・・・(2)
上記(1)式において、Vは風量(m/min)であり、Sは焼結機の有効面積(m)であり、hは装入層高さ(mm)であり、ΔPは圧力損失(mmHO)である。
【0025】
図4に示すように、実験例1と実験例3は、粒子径が3mm程度の擬似粒子が造粒されたものの、実験例2では、粒子径が1mm程度の擬似粒子しか造粒されなかった。実験例2の擬似粒子の粒子径の低下は、図3に示した原料水分量の低下によるものと考えられる。実験例3では高温で、且つ、粒子径が3mm程度の擬似粒子が造粒されたので、装入層の通気性指数は17程度になった。実験例1では同等の粒子径の擬似粒子が造粒されたものの当該擬似粒子の平均温度が低いために、装入層の通気性指数は15程度になった。実験例2では高温の擬似粒子となったものの粒子径が1mm程度の擬似粒子しか造粒されなかったため、装入層の通気性指数は12程度に大きく低下した。
【0026】
図5は、実験例1~3の焼結鉱の生産率を示すグラフである。焼結鉱の生産率は、装入層1m当たり1時間で製造される成品焼結鉱の製造量(t)である。図5に示すように、実験例1の生産率1.29に対し、実験例3の生産率は1.39になり、焼結鉱の生産率は大きく増加した。実験例3の生産率の向上は、図4に示した通気性の向上によるものと考えられる。一方、実験例2では、装入層の通気性が大きく低下し、焼結が進行せず焼結原料が塊成化されなかった。
【0027】
このように、造粒装置から排出される擬似粒子の平均温度が60℃以上となる場合には、当該温度によって水分が蒸発するので、造粒に必要な水分が足りなくなり、所定の粒径の擬似粒子が造粒できず、逆に装入層の通気性が悪化する。そこで、ドラムミキサー32から排出される擬似粒子の平均温度が60℃以上80℃未満になるように加熱した場合の水分蒸発量を確認した所、造粒後の水分量で0.5質量%以上3.0質量%以下の範囲内の水分量が蒸発することが確認された。さらに、ドラムミキサー32から排出される擬似粒子の平均温度が80℃以上になるように加熱した場合に水分蒸発量を確認した所、造粒後の水分量で2.0質量%以上4.5質量%以下の水分量が蒸発することが確認された。
【0028】
これらの結果から、造粒装置から排出される擬似粒子の平均温度を60℃以上とする場合には、造粒中の焼結原料に造粒後の水分量で0.5質量%以上4.5質量%以下の範囲内の水分をさらに添加することが好ましい。これにより、擬似粒子を60℃以上に加熱しても造粒に必要な水分量が確保でき、焼結原料から60℃以上に加熱された粒子径3mm程度の擬似粒子を製造できる。この加熱された擬似粒子を用いて焼結鉱を製造することで、装入層の通気性が向上し、これにより、焼結鉱の生産率の向上が実現できる。なお、擬似粒子の平均温度を60℃以上80℃未満とする場合には造粒中の焼結原料に造粒後の水分量で0.5質量%以上3.0質量%以下の水分をさらに添加することが好ましく、擬似粒子の平均温度を80℃以上とする場合には、造粒後の水分量で2.0質量%以上4.5質量%以下の水分をさらに添加することが好ましい。
【0029】
添加する水分量は、所定の期間ごとにドラムミキサー32から排出される擬似粒子の水分含有量を測定し、上記範囲内で定めてよい。また、水分の添加は、造粒中の焼結原料に工場用水や熱水あるいは凝縮水を添加すればよい。
【0030】
次に、ドラムミキサー32における蒸気配管36の設置位置について説明する。表1は、蒸気配管36の設ける位置を投入口側と排出口側とに変えて、焼結原料への水蒸気の吹き込み実験を行った結果を示す。なお、表中の排出口出側の温度は、ドラムミキサー32から排出される擬似粒子の平均温度である。
【0031】
【表1】
【0032】
実験例11、12は、蒸気配管36を投入口34から投入口と排出口との中間位置までの前半部分のみに設け、焼結原料に水蒸気を吹き込んで造粒した造粒例である。実験例13~15は、蒸気配管36を投入口34と排出口35との中間位置から排出口35までの間の後半部分のみに設け、焼結原料に水蒸気を吹き込んで造粒した造粒例である。
【0033】
実験例11と実験例13との比較、および、実験例12と実験例14との比較から、蒸気配管36を後半部分に設けて水蒸気を吹き込んで造粒した擬似粒子の排出口出側の平均温度は、蒸気配管36を前半部分に設けて水蒸気を吹込んで造粒した擬似粒子の排出口出側の平均温度よりも8~11℃高くなった。また、実験例11と実験例15との比較から、擬似粒子の排出口出側の温度が同じであるなら、蒸気配管36を後半部分に設けた方が造粒中に使用する水蒸気の吹込み量を17%削減できた。これらの結果から、ドラムミキサー32の後半部分のみに複数のノズル37を有する蒸気配管36を設け、当該ノズル37から焼結原料に蒸気を吹込むことで、ドラムミキサー32の他の位置に複数のノズルを有する蒸気配管を設けた場合よりも焼結原料を効率的に加熱できることが確認された。
【0034】
以上、説明したように本実施形態に係る造粒装置であるドラムミキサー32は、焼結原料に蒸気を吹き込み、効率的に加熱できる。このため、蒸気使用量が同じであるならば、焼結原料をより高温に加熱でき、排出口出側の温度が同じであるならば、より少ない蒸気使用量で焼結原料を加熱できる。このように、本実施形態に係る造粒装置を用いることで焼結原料を所定温度に加熱しつつ焼結鉱製造時に使用する蒸気量を削減できるので、本焼結鉱の生産率の向上と焼結鉱の製造コスト上昇の抑制とが実現できる。
【符号の説明】
【0035】
10 焼結鉱製造設備
11 ヤード
12 鉄含有原料
14 搬送コンベア
16 CaO含有原料
17 MgO含有原料
18 凝結材
20 原料供給部
22 配合槽
24 配合槽
26 配合槽
28 配合槽
30 搬送コンベア
32 ドラムミキサー
33 ドラム
34 投入口
35 排出口
36 蒸気配管
37 ノズル
38 水蒸気
39 搬送コンベア
40 焼結機
42 焼結原料供給装置
44 パレット台車
46 点火炉
48 ウインドボックス
50 破砕機
52 冷却機
54 篩分け装置
56 成品焼結鉱
58 返鉱
60 搬送コンベア
62 焼結原料


図1
図2
図3
図4
図5