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特許7605330造粒装置、造粒焼結原料の製造方法および焼結鉱の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】造粒装置、造粒焼結原料の製造方法および焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/16 20060101AFI20241217BHJP
   F27B 21/08 20060101ALI20241217BHJP
   C22B 1/216 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C22B1/16 K
F27B21/08 Z
C22B1/216
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023546185
(86)(22)【出願日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2023015186
(87)【国際公開番号】W WO2023210411
(87)【国際公開日】2023-11-02
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2022073925
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】岩見 友司
(72)【発明者】
【氏名】藤原 頌平
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆英
(72)【発明者】
【氏名】今井 佑治
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/167888(WO,A1)
【文献】特開2016-172903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 61/00
F27B 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄含有原料、CaO含有原料および凝結材を含む焼結原料を造粒する造粒装置であって、
前記焼結原料が投入される投入口と、造粒された焼結原料が排出される排出口と、が設けられ、横方向を回転軸として回転する筒状のドラムと、
前記ドラム内であって、前記投入口から前記投入口と前記排出口との中間位置までの間の前半部分のみに設けられる蒸気配管と、
前記蒸気配管に接続され、前記焼結原料の堆積面に蒸気を噴出させる複数のノズルと、を有し、
前記複数のノズルは、前記焼結原料の堆積面から500mm以上離れて設けられ
前記複数のノズルのうち、半数以上のノズルの蒸気噴出方向が前記排出口側を向くように傾けて設けられる、造粒装置。
【請求項2】
前記複数のノズルのうち、半数以上のノズルの蒸気噴出方向が前記排出口側を向くように傾けて設けられ、残りのノズルの蒸気噴出方向が前記焼結原料の堆積面に対して垂直に蒸気を噴出されるように設けられる、請求項1に記載の造粒装置。
【請求項3】
前記複数のノズルの蒸気噴出方向は、ノズルの位置が前記排出口に近づくに従って大きく前記排出口側を向くように傾けて設けられる、請求項1または請求項2に記載の造粒装置。
【請求項4】
造粒装置を用いて、鉄含有原料、CaO含有原料および凝結材を含む焼結原料を造粒する造粒焼結原料の製造方法であって、
前記造粒装置は前記焼結原料が投入される投入口と、造粒された焼結原料が排出される排出口と、が設けられ、横方向を回転軸として回転する筒状のドラムを有し、
前記ドラム内であって、前記投入口から前記投入口と前記排出口との中間位置までの間の前半部分で前記焼結原料の堆積面から500mm以上離れた位置から前記焼結原料に蒸気を吹き込んで、前記蒸気を吹き込まないで造粒した造粒焼結原料よりも10℃以上高い造粒焼結原料とし、
前記焼結原料に吹き込まれる全蒸気量のうち、半分以上の蒸気の噴出方向が前記排出口側を向くように傾けて吹き込まれる、造粒焼結原料の製造方法。
【請求項5】
請求項に記載の造粒焼結原料の製造方法を用いて造粒された造粒焼結原料を焼結機で焼結して焼結鉱を製造する、焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結原料を造粒する造粒装置、造粒焼結原料の製造方法および焼結鉱の製造方法に関する。
【0002】
高炉用原料である焼結鉱は、一般に、鉄鉱石粉、製鉄所内回収粉、焼結鉱篩下粉などの鉄含有原料と、石灰石及びドロマイトなどの含CaO原料と、粉コークスや無煙炭などの炭材(固体燃料)とを焼結原料として、無端移動型焼結機であるドワイトロイド式焼結機(以下、「焼結機」と記載する場合がある。)を用いて製造される。焼結原料は、焼結機の無端移動式のパレットに装入され、装入層が形成される。装入層の厚さ(高さ)は400~800mm程度である。その後、装入層の上方に設置された点火炉により、装入層表層の炭材に点火される。パレットの下に配設されている風箱を介して空気を下方に吸引することにより、装入層中の炭材を順次燃焼させる。この燃焼は、パレットの移動につれて次第に下層にかつ前方に進行する。このときに発生する燃焼熱によって、焼結原料が燃焼、溶融し、焼結ケーキが生成される。その後、得られた焼結ケーキは、排鉱部において破砕され、クーラーで冷却され、整粒されて成品焼結鉱となる。
【0003】
上述した焼結機を用いた焼結鉱の製造では、焼結原料を予熱乾燥することで装入層の湿潤帯が占める割合を縮小させて装入層の通気性を向上させ、焼結鉱の生産性を向上させる技術が知られている。例えば、特許文献1には、焼結原料を造粒する造粒時に水蒸気などの蒸気を吹込み、焼結原料を加熱する造粒焼結原料の製造方法が開示されている。特許文献1によれば、水蒸気を吹込みながら焼結原料を造粒することで焼結原料が予熱乾燥され、装入層の通気性が向上して焼結鉱の生産率が向上できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2019/167888号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の方法は、蒸気を吹き込みながら焼結原料を造粒するので、焼結原料に吹き込む蒸気を別途用意する必要がある。このため、蒸気を用意するのに要するコストにより焼結鉱の製造コストが上昇するという課題があった。一方、蒸気を用いて効率的に焼結原料を加熱できれば、使用する蒸気の量を削減でき、焼結鉱の製造コストの上昇を抑制できる。本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、焼結原料に蒸気を吹き込んで、効率的に焼結原料を加熱できる造粒装置、造粒焼結原料の製造方法および当該造粒焼結原料の製造方法を用いた焼結鉱の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]鉄含有原料、CaO含有原料および凝結材を含む焼結原料を造粒する造粒装置であって、前記焼結原料が投入される投入口と、造粒された焼結原料が排出される排出口と、が設けられ、横方向を回転軸として回転する筒状のドラムと、前記ドラム内であって、前記投入口から前記投入口と前記排出口との中間位置までの間の前半部分のみに設けられる蒸気配管と、前記蒸気配管に接続され、前記焼結原料の堆積面に蒸気を噴出させる複数のノズルと、を有し、前記複数のノズルは、前記焼結原料の堆積面から500mm以上離れて設けられる、造粒装置。
[2]前記複数のノズルのうち、半数以上のノズルの蒸気噴出方向が前記排出口側を向くように傾けて設けられ、残りのノズルの蒸気噴出方向が前記焼結原料の堆積面に対して垂直に蒸気を噴出されるように設けられる、[1]に記載の造粒装置。
[3]前記複数のノズルの蒸気噴出方向は、ノズルの位置が前記排出口に近づくに従って大きく前記排出口側を向くように傾けて設けられる、[1]または[2]に記載の造粒装置。
[4]造粒装置を用いて、鉄含有原料、CaO含有原料および凝結材を含む焼結原料を造粒する造粒焼結原料の製造方法であって、前記造粒装置は前記焼結原料が投入される投入口と、造粒された焼結原料が排出される排出口と、が設けられ、横方向を回転軸として回転する筒状のドラムを有し、前記ドラム内であって、前記投入口から前記投入口と前記排出口との中間位置までの間の前半部分で前記焼結原料の堆積面から500mm以上離れた位置から前記焼結原料に蒸気を吹き込んで、前記蒸気を吹き込まないで造粒した造粒焼結原料よりも10℃以上高い造粒焼結原料とする造粒焼結原料の製造方法。
[5]前記焼結原料に吹き込まれる全蒸気量のうち、半分以上の蒸気の噴出方向が前記排出口側を向くように傾けて吹き込まれる、[4]に記載の造粒焼結原料の製造方法。
[6][4]または[5]に記載の造粒焼結原料の製造方法を用いて造粒された造粒焼結原料を焼結機で焼結して焼結鉱を製造する、焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る造粒装置を用いることで、焼結原料に蒸気を吹き込んで効率的に加熱できるので、造粒時に用いる蒸気の蒸気原単位を削減できる。この加熱された造粒焼結原料を用いることで、装入層の通気性が向上し焼結鉱の生産率が向上するので、本発明に係る造粒装置を用いることで、焼結鉱の生産率の向上と焼結鉱の製造コスト上昇の抑制とが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る造粒装置であるドラムミキサー32を有する焼結鉱製造設備10の一例を示す模式図である。
図2図2は、ドラムミキサー出側の焼結原料の温度と、装入層の通気性指数JPUとの関係を示すグラフである。
図3図3は、ドラムミキサー出側の焼結原料の温度と、装入層の通気性指数JPUとの関係を示すグラフである。
図4図4は、ドラムミキサーの構成を説明する模式図である。
図5図5は、複数のノズルの位置を示すドラムミキサーの断面図である。
図6図6は、蒸気吹き込み実験の結果を示すグラフである。
図7図7は、蒸気配管を示す模式図である。
図8図8は、蒸気吹き込み実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を説明する。図1は、本実施形態に係る造粒装置であるドラムミキサー32を有する焼結鉱製造設備10の一例を示す模式図である。ヤード11に保管された鉄含有原料12は、搬送コンベア14によって配合槽22に搬送される。鉄含有原料12は、種々の銘柄の鉄鉱石および製鉄所内発生ダストを含む。
【0010】
原料供給部20は、複数の配合槽22、24、25、26、28を備える。配合槽22には、鉄含有原料12が貯留される。配合槽24には、石灰石や生石灰等を含むCaO含有原料16、配合槽25にはドロマイトや精錬ニッケルスラグ等を含むMgO含有原料17がそれぞれ貯留される。配合槽26には、ロッドミルを用いて粒径1mm以下に破砕された粉コークスや無煙炭を含む凝結材18が貯留される。配合槽28には、焼結鉱の篩下となった粒径5mm以下の返鉱(焼結鉱篩下粉)が貯留される。原料供給部20の配合槽22~28から、各原料が所定量切り出され、これらが配合されて焼結原料となる。焼結原料は、搬送コンベア30によってドラムミキサー32に搬送される。MgO含有原料17は、任意配合原料であって、焼結原料に配合されてもよく、配合されなくてもよい。
【0011】
ドラムミキサー32は、焼結原料に蒸気を吹き付けながら造粒する造粒装置である。ドラムミキサー32は、横方向を回転軸として回転する筒状のドラム33と、蒸気配管36と、蒸気配管36に接続され、焼結原料の堆積面に水蒸気38を噴出させる複数のノズル37とを有する。なお、水蒸気は蒸気の一例である。
【0012】
筒状のドラム33には、当該ドラム33の一端面側に設けられ、焼結原料が投入される投入口34と、ドラム33の他端面側に設けられ、造粒された造粒焼結原料(以後、擬似粒子と記載する。)が排出される排出口35と、が設けられている。蒸気配管36は、ドラム33内であって、投入口34から、投入口34と排出口35との中間位置までの間の前半部分となる領域に設けられる。複数のノズル37は、焼結原料の堆積面から垂直方向に500mm以上離れた位置に設けられ、当該位置から焼結原料の堆積面に向けて水蒸気を吹き込む。
【0013】
このように、水蒸気を吹き込みながら焼結原料を造粒して擬似粒子を製造することで、水蒸気を吹き込まないで造粒された擬似粒子よりも10℃以上高い温度の平均粒径3.0mm程度の擬似粒子に造粒している。擬似粒子は、搬送コンベア39によって焼結機40に搬送される。本実施形態において、擬似粒子の平均粒径は算術平均粒径であって、Σ(Vi×di)(但し、Viはi番目の粒度範囲の中にある粒子の存在比率であり、diはi番目の粒度範囲の代表粒径である。)で定義される粒径である。また、ドラムミキサー32は、焼結原料を造粒する造粒装置の一例である。
【0014】
焼結機40は、例えば、下方吸引式のドワイトロイド式焼結機である。焼結機40は、焼結原料供給装置42と、無端移動式のパレット台車44と、点火炉46と、ウインドボックス48とを有する。焼結原料供給装置42から焼結原料がパレット台車44に装入され、焼結原料の装入層が形成される。装入層は点火炉46で点火される。ウインドボックス48を通じて空気を吸引することで、装入層内で凝結材18を燃焼させつつ装入層内の燃焼・溶融帯を装入層の下方へ移動させる。これにより、装入層は焼結されて焼結ケーキが形成される。本実施形態では、気体燃料供給装置47を備えても良い。気体燃料供給装置47から供給される気体燃料は、高炉ガス、コークス炉ガス、高炉・コークス炉混合ガス、転炉ガス、都市ガス、天然ガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、シェールガスおよびそれらの混合ガスのうちから選ばれるいずれかの可燃性ガスである。
【0015】
焼結ケーキは、破砕機50によって破砕され焼結鉱にされる。破砕機50で破砕された焼結鉱は、冷却機52によって冷却される。冷却機52によって冷却された焼結鉱は、複数の篩を有する篩分け装置54によって篩分けされ、粒径5mm超の成品焼結鉱56と、粒径5mm以下の返鉱58とに篩分けされる。成品焼結鉱56は、高炉原料として用いられる。一方、返鉱58は、搬送コンベア60によって原料供給部20の配合槽28に搬送される。本実施形態において、成品焼結鉱56の粒径および返鉱58の粒径は、篩によって篩分けられる粒径を意味し、例えば、粒径5mm超とは、目開き5mmの篩を用いて篩上に篩分けされる粒径であり、粒径5mm以下とは、目開き5mmの篩を用いて篩下に篩分けされる粒径である。成品焼結鉱56および返鉱58の粒径の各値は、あくまで一例であり、この値に限定するものではない。
【0016】
このように、焼結鉱製造設備10を用いた焼結鉱の製造では、ドラムミキサー32で焼結原料に水蒸気を吹き込んで焼結原料を造粒するとともに加熱している。これにより、焼結原料の装入層の通気性が向上し、焼結原料の生産率が向上する。図2は、ドラムミキサー出側の擬似粒子の温度と、装入層の通気性指数JPUとの関係を示すグラフである。図2の横軸はドラムミキサー32から排出された擬似粒子の温度(℃)である。擬似粒子の温度は、ドラムミキサー32から排出された擬似粒子の平均温度である。
【0017】
ドラムミキサー32に投入される前の焼結原料の温度は35.0℃である。焼結原料はCaO含有原料を含む。CaOは水と反応してCa(OH)を生成する際に発熱するので、水蒸気を吹き込まなくても焼結原料の温度は35.0℃から約42.5℃に上昇する。図2の横軸が42.5℃のプロットは焼結原料に水蒸気を吹き込まずに焼結原料を造粒した造粒例であり、他のプロットは焼結原料に水蒸気を吹き込んで造粒し、焼結原料を加熱させた造粒例である。
【0018】
図2の縦軸は装入層の通気性指数JPUである。JPUとは、擬似粒子をパレットに装入することで形成された装入層を、冷間で下向きに大気を吸引して測定される通気性指数である。通気性指数JPUは、下記(1)式を用いて算出される。
【0019】
JPU=V/[S×(ΔP/h)0.6]・・・(1)
上記(1)式において、Vは風量(m/min)であり、Sは焼結機の有効面積(m)であり、hは装入層高さ(mm)であり、ΔPは圧力損失(mmHO)である。
【0020】
装入層の通気性が高いと通気性指数JPUは大きくなり、通気性が低いと通気性指数JPUは小さくなる。図2に示すように、焼結原料に水蒸気を吹込み、擬似粒子の温度を42.5℃よりも高くすることで装入層の通気性は向上した。また、42.5℃から10℃以上温度が高められた56.0℃の擬似粒子によって形成された装入層の通気性は、47.0℃の擬似粒子によって形成された装入層の通気性よりも顕著に高くなった。この結果から、焼結原料に水蒸気を吹き込んで造粒し、水蒸気を吹き込まずに造粒した擬似粒子よりも10℃以上高い温度の擬似粒子とすることが好ましく、これにより、高い通気性の装入層が形成される擬似粒子となることがわかる。
【0021】
図3は、ドラムミキサー出側の擬似粒子の温度と、焼結鉱の生産率との関係を示すグラフである。図3の横軸はドラムミキサー32から排出された擬似粒子の温度(℃)である。図3の縦軸は、焼結鉱の生産率(t/(hr×m))である。図3に示すように、温度が43.5℃から10℃以上高い温度の56.0℃の擬似粒子を用いて焼結鉱を生産した焼結鉱の生産率は、47.0℃の擬似粒子を用いて焼結鉱を生産した焼結鉱の生産率よりも顕著に高くなった。この結果と図2の結果から、焼結原料に水蒸気を吹き込んで造粒し、水蒸気を吹き込まずに造粒した擬似粒子よりも10℃以上高い温度の擬似粒子とし、当該擬似粒子を用いて焼結鉱を製造することで、焼結鉱の生産率の向上が実現できることがわかる。
【0022】
次に、焼結原料の水蒸気を吹き込み、ドラムミキサー32から排出される擬似粒子の温度を効率的に高めることができるドラムミキサー32の構成について説明する。ドラム33は横方向を回転軸として回転するので、ドラム33内の焼結原料の堆積位置は、鉛直下方に対してドラム33の回転方向に傾いている。複数のノズル37は、焼結原料の堆積面から垂直方向に500mm以上離れた位置に設けられている。このように、複数のノズル37を焼結原料の堆積面から垂直方向に500mm以上離れた位置に設けることで、擬似粒子の温度を効率的に高めることができる。ドラムミキサー32における回転軸は、略水平にしてよい。また、擬似粒子を効率良く排出するため、投入口34に対して排出口35が鉛直方向の下方に位置するように回転軸を傾けてもよい。
【0023】
図4は、ドラムミキサー32の構成を説明する模式図である。図4(a)はドラムミキサー32の断面模式図である。図4(b)は蒸気配管36の模式図である。なお、図4(b)では、複数のノズル37を各ノズルから噴出される水蒸気の噴出方向を示す矢印で示している。
【0024】
図4に示すように、本実施形態に係るドラムミキサー32において、蒸気配管36は、ドラム33の投入口34から、投入口34と排出口35との中間位置までの間の前半部分となる投入口34から5000mmまでの位置に設けられている。また、蒸気配管36には、15固のノズル37が350mmピッチでそれぞれ設けられている。これら複数のノズル37のうち、投入口34側から1~7番目のノズルは、焼結原料の堆積面に対して垂直に水蒸気が噴出されるように設けられている。投入口34側から8~14番目のノズルは、排出口35側を向くように、焼結原料の堆積面に対する垂線に対して排出口35側に30°傾斜して設けられている。最も排出口35側に近いノズルは、焼結原料の堆積面に対する垂線に対して排出口35側に45°傾斜して設けられている。即ち、複数のノズル37のうち、半数以上のノズルの蒸気噴出方向が排出口35側を向くように傾けて設けられ、残りのノズルの蒸気噴出方向が焼結原料の堆積面に対して垂直に蒸気を噴出されるように設けられる。
【0025】
図5は、複数のノズルの位置を示すドラムミキサーの断面図である。ノズルの設置位置の効果を確認するため、図4に示したドラムミキサーであって、ノズルの位置を焼結原料62の堆積面からの垂直方向の距離が100mm、300mm、500mm、1500mmおよび2500mmとなるように蒸気配管を設けたドラムミキサーを製作し、当該ドラムミキサーを用いて蒸気吹き込み実験を実施した。
【0026】
図6は、蒸気吹き込み実験の結果を示すグラフである。図6の横軸はドラムミキサー内の位置(m)であり、縦軸は焼結原料の温度(℃)である。図6において、焼結原料の温度は、横軸に示したドラムミキサー内の各位置における焼結原料の平均温度である。本実験(蒸気吹き込み実験)の条件は、何れの実験例(1~5)においても、蒸気吹込み量を7.5t/h、蒸気温度を170℃(蒸気配管の圧力:0.7MPa)、原料(焼結原料)投入量を730t/hとして、実験を行った。
【0027】
図6に示すように、焼結原料の堆積面からの垂直方向の距離が500mm未満の実験例1、2のドラムミキサーでは、投入口付近の温度は高くなるものの、その後、温度は低下していき、これらのドラムミキサーから排出される擬似粒子の温度は低くなった。一方、焼結原料の堆積面からの垂直方向の距離が500mm以上離れた実験例3、4、5のドラムミキサーでは、投入口付近の温度は低いもののその後の温度低下が抑制され、これらのドラムミキサーから排出される擬似粒子の温度は実験例1、2よりも高くなった。これらの結果から、焼結原料の堆積面から垂直方向に500mm以上離れた位置に複数のノズルを設け、当該ノズルから焼結原料に水蒸気を吹き込むことで、焼結原料の堆積面から垂直方向に500mm未満の位置に複数のノズルを設けた場合よりもドラムミキサーから排出される擬似粒子の温度が高められることが確認された。このように、本実施形態に係るドラムミキサーでは、蒸気を吹き込んで効率よく擬似粒子の温度を高めることができるので、吹き込む蒸気量が同じであるならばドラムミキサーから排出される擬似粒子の温度をより高めることができ、ドラムミキサーから排出される擬似粒子の温度が同じであるならば、水蒸気の吹き込み量をより少なくできることがわかる。
【0028】
一方、ドラムミキサーから排出される擬似粒子の水分量も重要である。ドラムミキサーから排出される擬似粒子の水分量が目標水分量(6.5質量%)未満になると、焼結原料の造粒が進行せず、造粒後の擬似粒子の粒径が小さくなる。このように擬似粒子の粒径が小さくなると、当該粒径の小さい擬似粒子によって形成される装入層の通気性が悪化して焼結鉱の生産率が低下する。
【0029】
図7は、蒸気配管を示す模式図である。図7においても、複数のノズルを各ノズルから噴出される水蒸気の噴出方向を示す矢印で示している。図7(a)は、噴出される水蒸気の噴出方向が鉛直下方になるように複数のノズルが設けられた実験例11の蒸気配管である。図7(b)は、複数のノズルのうち、投入口側から1~7番目のノズルから噴出される水蒸気の噴出方向が鉛直下方になるように設けられ、投入口側から8~14番目のノズルから噴出される水蒸気の噴出方向が鉛直下方に対して排出口側に30°傾斜させて設けられ、最も排出口側に近いノズルから噴出される水蒸気の噴出方向が鉛直下方に対して排出口側に45°傾斜させて設けられた実験例12の蒸気配管である。図7(c)は、複数のノズルのうち、投入口側から1~7番目のノズルから噴出される水蒸気の噴出方向が鉛直下方に対して排出口側に30°傾斜させて設けられ、投入口側から8~14番目のノズルから噴出される水蒸気の噴出方向が鉛直下方に対して排出口側に45°傾斜させて設けられ、最も排出口側に近いノズルから噴出される水蒸気の噴出方向が鉛直下方に対して排出口側に60°傾斜させて設けられた実験例13の蒸気配管である。これらの蒸気配管を焼結原料の堆積面から垂直方向に1500mm離れた位置から水蒸気が吹き込まれるように設置したドラムミキサーを用いて、水蒸気吹き込み実験を実施した。
【0030】
図8は、蒸気吹き込み実験の結果を示すグラフである。図8の横軸はドラムミキサー内の位置(m)であり、縦軸は焼結原料の水分量(質量%)であり、横軸に示したドラムミキサー内の各位置における焼結原料の平均水分量を示す。
【0031】
図8に示すように、実験例12、13の蒸気配管が設けられたドラムミキサーで造粒された擬似粒子の水分量は、実験例11の蒸気配管が設けられたドラムミキサーで造粒された擬似粒子の水分量より多くなった。これらの結果から、ノズルの位置が排出口に近づくに従って、噴出される水蒸気の噴出方向がより排出口側を向くように大きく傾けて設けられることが好ましいことがわかる。また、実験例12よりも実験例13の方が擬似粒子の水分量が多くなったことから、複数のノズルのうち、その半数以上のノズルの蒸気噴出方向が排出口を向くように傾けて設けられることが好ましく、その全てをノズルの蒸気噴出方向が排出口側を向くように傾けて設けられることがより好ましいことがわかる。なお、それぞれのノズルからの蒸気吹込み量は同じであるので、全水蒸気吹込み量のうち半分以上の水蒸気の噴出方向が排出口側を向くように傾けて、水蒸気を焼結原料に吹き込むことが好ましく、全ての水蒸気の噴出方向が排出口側を向くように傾けて、水蒸気を焼結原料に吹き込むことがより好ましいといえる。
【0032】
以上、説明したように本実施形態に係る造粒装置であるドラムミキサー32は、焼結原料に蒸気を吹き込み、効率的に加熱できる。このため、蒸気使用量が同じであるならば、擬似粒子をより高温に加熱でき、排出口出側の温度が同じであるならば、より少ない蒸気使用量で擬似粒子を加熱できる。このように、本実施形態に係る造粒装置を用いることで焼結原料を所定温度に加熱しつつ焼結鉱製造時に使用する蒸気量を削減できるので、本焼結鉱の生産率の向上と焼結鉱の製造コスト上昇の抑制とが実現できる。
【符号の説明】
【0033】
10 焼結鉱製造設備
11 ヤード
12 鉄含有原料
14 搬送コンベア
16 CaO含有原料
17 MgO含有原料
18 凝結材
20 原料供給部
22 配合槽
24 配合槽
26 配合槽
28 配合槽
30 搬送コンベア
32 ドラムミキサー
33 ドラム
34 投入口
35 排出口
36 蒸気配管
37 ノズル
38 水蒸気
39 搬送コンベア
40 焼結機
42 焼結原料供給装置
44 パレット台車
46 点火炉
48 ウインドボックス
50 破砕機
52 冷却機
54 篩分け装置
56 成品焼結鉱
58 返鉱
60 搬送コンベア
62 焼結原料


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8