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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】運転制御方法及び運転制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241217BHJP
   B60W 50/06 20060101ALI20241217BHJP
   B60W 50/08 20200101ALI20241217BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G08G1/16 E
B60W50/06
B60W50/08
G08G1/16 C
G08G1/09 V
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023549186
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2021034530
(87)【国際公開番号】W WO2023047452
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 泰久
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-152288(JP,A)
【文献】特開2020-19455(JP,A)
【文献】特開2017-165157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 50/06
B60W 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを用いて、所定の運転支援レベルで自車両の運転を制御する運転制御方法であって、
前記プロセッサは、
前記運転支援レベルが、第1の運転支援レベルから、前記第1の運転支援レベルよりも高い第2の運転支援レベルに遷移することを要求する遷移要求が入力されたか否かを判定し、
前記遷移要求が入力された場合は、前記遷移要求が入力されない場合に対して、前記運転支援レベルが前記第1の運転支援レベルから前記第2の運転支援レベルに遷移するための遷移条件を緩和する、運転制御方法。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記遷移条件の充足度を示す評価値を算出し、
前記遷移要求が入力された場合は、前記遷移要求が入力されない場合の第1の評価閾値よりも低い第2の評価閾値を評価閾値として選択し、
前記評価値が前記評価閾値より高い場合であって、前記自車両を前記第1の運転支援レベルで制御している場合は、前記運転支援レベルが前記第1の運転支援レベルから前記第2の運転支援レベルに遷移するように前記自車両の運転を制御する、請求項1に記載の運転制御方法。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記遷移要求が入力されてから所定時間が経過するまでは、前記評価閾値を前記第2の評価閾値に維持する、請求項2に記載の運転制御方法。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記自車両の周囲に渋滞が発生しているか否かを判定し、
渋滞が発生している場合の前記評価値は、渋滞が発生していない場合の前記評価値よりも高くなるように、前記評価値を算出する、請求項2~4のいずれか一項に記載の運転制御方法。
【請求項11】
プロセッサを用いて、所定の運転支援レベルで自車両の自律運転を制御する運転制御装置であって、
前記運転支援レベルが、第1の運転支援レベルから、前記第1の運転支援レベルよりも高い第2の運転支援レベルに遷移することを要求する遷移要求が入力されたか否かを判定する遷移要求判定部と、
前記遷移要求が入力された場合は、前記遷移要求が入力されない場合に対して、前記運転支援レベルが前記第1の運転支援レベルから前記第2の運転支援レベルに遷移するための遷移条件を緩和する遷移条件設定部とを備える、運転制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転制御方法及び運転制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の運転制御方法は、自車両の目標走行経路を複数の区間に分け、区間毎に運転支援制御を許容するための基準を設定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-170402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の運転制御方法では、自車両の乗員が運転支援レベルを上げることを希望する場合であっても、自車両が走行している区間によっては、他の区間よりも運転支援レベルが上がり難くなってしまう可能性がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、運転支援レベルを上げる遷移要求が入力された場合は、運転支援レベルが上がりやすくなる運転制御方法及び運転制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第1の運転支援レベルよりも高い第2の運転支援レベルに遷移することを要求する遷移要求が入力されたか否かを判定し、遷移要求が入力された場合は、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移するための遷移条件を緩和することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、遷移要求が入力された場合は遷移条件を緩和するので、運転支援レベルを上げる遷移要求が入力された場合は、運転支援レベルが上がりやすくなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る運転制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】自車両と先行車両との位置関係の例を示す図である。
図3】自車両の車速と運転支援レベルを変更するための車速閾値との関係の例を示す図である。
図4】自車両の車速と運転支援レベルを変更するための車速閾値との関係の例を示す図であって、図3に示す車速閾値を高い値に変更した例を示す図である。
図5図1に示す運転制御装置によって実行される運転制御方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、自車両1及び自車両1の自律運転を制御する運転制御装置100の構成を示すブロック図である。自車両1は、運転制御装置100、検出装置101、自車両位置取得部102、地図データベース103、車載機器104、入力装置105、ユーザインターフェース106及び駆動制御装置107を備える。
【0010】
運転制御装置100は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することで、自律走行制御機能により、自車両1の車速及び操舵を自律制御する。運転制御装置100は、運転支援レベルに応じた運転モードを設定することができ、設定された運転モードによって自車両の走行を支援することができる。運転支援レベルとは、運転制御装置100が自律走行制御機能によって車両の運転を支援する際の介入の程度を示すレベルである。運転支援レベルが高くなるほど、車両の運転に対するドライバの寄与度は低くなる。具体的には、運転支援レベルは、米国自動車技術会(SAE:Society of Automotive Engineers)のSAE J3016に基づく定義等を用いてレベル0~5に設定することができる。レベル0では、自車両の運転操作は、全て、ドライバの手動によって行われる。レベル1では、自車両の運転操作はドライバの手動運転が主体となるが、運転制御装置100は、自動ブレーキ、追従、レーンキープ等のいずれかの機能によってドライバの手動運転を適宜、支援する。レベル2では、自車両の運転操作はドライバの手動運転が主体であるが、特定の条件の下で、運転制御装置100が、自動ブレーキ、追従、レーンキープ等の機能のうち複数の機能を組み合わせて運転支援を実行することが可能である。レベル3では、運転制御装置100が全ての運転タスクを実行するが、ドライバは、運転制御装置100から要請があった場合に、制御を取り戻し、手動により運転する準備をする必要がある。レベル4では、ドライバによる手動運転は必要とされず、運転制御装置100は、特定の条件の下で、全ての運転タスクを実行し、自車両の周囲状況を監視することができる。レベル5では、運転制御装置100は、全ての条件下において、全ての運転タスクを実行することができる。
【0011】
なお、レベル2に対応する運転モードは、アイズオンモードである。すなわち、運転支援レベルがレベル2に設定されている場合、ドライバは目視によって自車両1の周囲状況を監視する必要がある。運転支援レベルがレベル2に設定されている場合は、車内カメラ等によってドライバの顔の向きや目の動きが監視され、ドライバが前方を視認している場合に、自車両1の走行が許可される。また、レベル2に対応する運転モードはハンズオンモードである。ハンズオンモードとは、ドライバがステアリングホイール104aを持っていない場合は、プロセッサ10による自律操舵制御が作動しないモードである。なお、ドライバがステアリングホイール104aを持っているか否かは、ステアリングホイール104aに設けられたタッチセンサ(図示せず)又はEPSの操舵トルクセンサ(図示せず)によって検出される。
なお、「ドライバがステアリングホイール104aを持っていること」には、ドライバがステアリングホイール104aをしっかりと握っている状態のみならず、ドライバがステアリングホイール104aに軽く手を添えている状態も含まれる。
【0012】
一方、レベル3に対応する運転モードは、アイズオフモードである。すなわち、運転支援レベルがレベル3に設定されている場合、プロセッサ10は、ドライバが前方を視認していない状態において自車両1の走行を許可するアイズオフモードにより、自車両1の運転を制御する。このとき、運転制御装置100のシステムがカメラ,レーダ等を用いて自車両の周囲状況を自律的に監視する。また、レベル3に対応する運転モードは、ハンズオフモードである。ハンズオフモードとは、ドライバがステアリングホイール104aから手を離してもプロセッサ10による操舵制御が作動するモードである。すなわち、運転支援レベルがレベル3に設定されている場合、プロセッサ10は、ドライバが自車両1のステアリングから手を放した状態において自車両1の走行を許可するハンズオフモードにより、自車両1の運転を制御する。また、運転制御装置100は、図2に示すように自車両1が先行車両2の後方を走行していることを条件に、レベル3に対応する運転モードを実行することができる。
ここで、「自車両1が先行車両2の後方を走行する」には、自車両1が先行車両2に追従して走行していることのみならず、自車両1が先行車両2に追従せずに、先行車両2が既に走行した走行経路上を、先行車両2の後方から走行することも含まれる。これにより、運転制御装置100は、先行車両2が既に走行した走行経路上、すなわち、自車両1の前方に障害物が存在しないことを確認して、自車両1の運転を制御することができる。また、「自車両1が先行車両2に追従して走行する」とは、運転制御装置100が、先行車両2の動きに連動させるように自車両1の運転を制御し、かつ、自車両1と先行車両2とが一定の間隔を保つように自車両1の車速V1を制御した状態で、自車両1が走行することである。
【0013】
なお、運転支援レベルの分類は、米国自動車技術会の定義に則った分類に限定されず、運転支援レベルは、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)のISO/TC204に基づいて定義されてもよい。また、運転支援レベルの分類は、運転制御装置100の介入の程度に応じて適切に分類されていれば、その他の基準によって定義されているものであってもよい。
【0014】
検出装置101は、自車両1の周囲を撮像する車載カメラ又は自車両の周囲の他車両や障害物を検出するレーダのいずれか一方又は両方を有する。検出装置101の検出結果は、所定時間間隔で運転制御装置100に出力される。
【0015】
自車両位置取得部102は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサなどから構成されている。自車両位置取得部102は、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、自車両1の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した自車両1の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、自車両1の現在位置を検出する。自車両位置取得部102により検出された自車両1の位置情報は、所定時間間隔で運転制御装置100に出力される。
【0016】
地図データベース103は、各種施設や特定の地点の位置情報を含む三次元高精度地図情報を格納し、運転制御装置100からアクセス可能なように構成されたメモリである。地図データベース103には、高精度のデジタル地図情報(高精度地図、ダイナミックマップ)が格納されている。高精度地図情報は、道路が有する複数のレーンの識別情報を含む。地図データベース103の地図情報には、道路及び/又はレーンカーブ路及びそのカーブの大きさ(たとえば曲率又は曲率半径)、合流地点、分岐地点、車線数の減少位置についての三次元位置情報が含まれる。高精度地図情報には、サービスエリア/パーキングエリアなどの施設に関する情報も含まれる。
【0017】
車載機器104は、車両に搭載された各種機器であり、ドライバにより操作されることで動作する。車載機器104は、ステアリングホイール104aを含む。また、その他の車載機器104としては、アクセルペダル、ブレーキペダル、ナビゲーション装置、方向指示器、ワイパー、ライト、クラクション、その他の特定のスイッチなどが挙げられる。車載機器104がドライバにより操作された場合に、その情報が運転制御装置100に出力される。
【0018】
入力装置105は、たとえば、ドライバの手動操作による入力が可能なボタンスイッチ、ディスプレイ画面上に配置されたタッチパネル、又はドライバの音声による入力が可能なマイクなどの装置である。
【0019】
ユーザインターフェース106は、情報を画像、文字又は音声で出力する。ユーザインターフェース106は、例えば、ディスプレイ又はマイクである。また、1つのタッチパネルディスプレイが入力装置105及びユーザインターフェース106として機能してもよい。
【0020】
駆動制御装置107は、運転制御装置100の制御指令に基づいて、自車両1の運転を制御する。たとえば、駆動制御装置107は、自律速度制御機能により、加減速度および車速を調整するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては走行用モータの動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と走行用モータとのトルク配分も含む)及びブレーキ動作を制御する。また、駆動制御装置107は、自律操舵制御機能により、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、自車両の操舵制御を実行する。例えば、駆動制御装置107は、自車両が走行する車線のレーンマーカを検出し、自車両が走行する車線内の中央を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置(横位置)を制御する。また、駆動制御装置107は、自車両の先行車追い越しや走行方向の変更などを制御する。さらに、駆動制御装置107は、交差点などにおいて右折又は左折する走行制御を行う。また、駆動制御装置107による走行制御方法として、その他の公知の方法を用いることもできる。
【0021】
次に、運転制御装置100の構成について、図1~4を用いて、詳細に説明する。
なお、以下の説明において、第1の運転支援レベルはレベル2とし、第2の運転支援レベルはレベル3とする。なお、第1の運転支援レベルと第2の運転支援レベルとの関係は、第2の運転支援レベルが第1の運転支援レベルよりも相対的に高ければよい。各々の運転支援レベルは、レベル2及びレベル3に限定されない。また、プロセッサ10は、レベル2及びレベル3以外にも、他の運転支援レベルに応じた運転モードを設定することができる。
【0022】
図1に示すように、運転制御装置100は、プロセッサ10を備える。プロセッサ10は、自車両の運転を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。プロセッサ10は、評価値算出部11、遷移要求判定部12、遷移条件設定部13、評価値判定部14及び車両制御部15を備える。評価値算出部11、遷移要求判定部12、遷移条件設定部13、評価値判定部14及び車両制御部15は、プロセッサ10の各機能を実現するためのプログラムを実行する。
なお、図1において、運転制御装置100は自車両1に搭載されているが、これに限定されず、運転制御装置100は、自車両1を遠隔で操作する装置であってもよい。
【0023】
評価値算出部11は、運転支援レベルが、第1の運転支援レベルから、第1の運転支援レベルよりも高い第2の運転支援レベルに遷移するための遷移条件の充足度を示す評価値を算出する。遷移条件は、例えば、自車両1が所定の設定速度以下で走行していることである。この例では、評価値算出部11は、第1の車速に応じた評価値よりも、第1の車速よりも低い第2の車速に応じた評価値が高くなるように、評価値を算出する。すなわち、評価値算出部11は、自車両1の車速が低い程、評価値を高く算出して設定する。
【0024】
また、遷移条件は、例えば、自車両1が先行車両2の後方を走行していることであってもよい。この例では、評価値算出部11は、図2に示すように、自車両1と先行車両2との車間距離Dに基づいて、第1の車間距離に応じた評価値よりも、第1の車間距離よりも短い第2の車間距離に応じた評価値が高くなるように、評価値を算出する。すなわち、評価値算出部11は、自車両1と先行車両2との車間距離Dが短い程、評価値を高く算出して設定する。また、評価値算出部11は、先行車両2が検出されてからの経過時間に基づいて、第1の経過時間に応じた評価値よりも、第1の経過時間よりも短い第2の経過時間に応じた評価値が高くなるように、評価値を算出してもよい。すなわち、評価値算出部11は、先行車両2が検出されてからの経過時間が短い程、先行車両2が既に走行した経路上に障害物が存在する可能性が少ないため、評価値を高く算出して設定する。
【0025】
また、遷移条件は、例えば、自車両1の周囲に渋滞が発生していることであってもよい。この例では、評価値算出部11は、渋滞が発生している場合の評価値を、渋滞が発生していない場合の評価値よりも高くなるように、評価値を算出する。なお、評価値算出部11は、先行車両2の車速V2、及び、自車両1の走行車線L1に隣接する他車線L2に走行する他車両(図示せず)の車速に基づいて、自車両1の周囲に渋滞が発生しているか否かを判定する。
【0026】
また、遷移条件は、例えば、自車両1が分岐路を通過してから所定時間経過したことであってもよい。この例では、評価値算出部11は、自車両1が分岐路を通過してから所定時間が長い程、評価値を高く算出して設定してもよい。
【0027】
また、運転支援レベルを上げるための遷移条件は、上述の条件以外に、自車両1が高精度地図情報の利用が有効な道路を走行していること、全球測位衛星システム:GNSS(Global Navigation Satellite System)の信号が有効であること、ドライバが前方を視認していること、現在位置の近傍(例えば、前方約800m以内)に料金所、自動車専用道路の出口、合流、交差点、車線数減少地点が無いこと、現在位置の近傍(例えば、前方約500m以内)に100R以下の急カーブがないこと等であってもよい。評価値算出部11は、上述の条件のうち、1つ又は複数の条件に基づいて、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移するための条件の充足度を示す評価値を算出する。例えば、評価値算出部11は、上述の複数の条件の各々について充足度を算出し、算出した充足度を合計して評価値を算出してもよい。
【0028】
また、図1に示す遷移要求判定部12は、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移することを要求する遷移要求が入力装置105に入力されたか否かを判定する。具体的には、遷移要求判定部12は、自車両1の走行環境が所定の遷移可能条件を充足したか否かを判定し、自車両1の走行環境が遷移可能条件を充足する場合に、運転支援レベルを上げるか否かを問い合わせる通知をユーザインターフェース106に出力する。自車両1の乗員は、ユーザインターフェース106に出力された通知に基づいて、運転支援レベルの遷移を承認するか否かを決定し、運転支援レベルの遷移を承認する場合は、遷移要求を入力装置105に入力する。遷移要求は、自車両1の乗員が入力装置105のタッチパネルを操作すること、又は、所定のボタンスイッチを押すことにより入力される。また、自車両1の乗員は、入力装置105のマイクに遷移要求を音声入力してもよい。なお、遷移可能条件は、自車両1の運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移可能な状態となるための必要条件である。また、遷移可能条件は、運転支援レベルを第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移することが可能であることを自車両1の乗員に通知するための条件でもある。遷移可能条件は、例えば、自車両1の車速が所定速度以下に低下したこと、自車両1の前方に先行車両が検出されたこと、自車両1と先行車両との距離が所定距離以下となったこと、自車両1の走行予定経路において自車両1の前方の所定距離以内に渋滞が発生していること等のうちのいずれか1つ又は複数の条件によって構成される。
【0029】
また、遷移条件設定部13は、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移するための遷移条件を設定する。なお、遷移条件は、遷移要求判定部12が設定する遷移可能条件よりも厳しく設定される。また、遷移条件設定部13は、評価閾値設定部13aを有する。評価閾値設定部13aは、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移するか否かの判断の基準となる評価閾値を設定する。すなわち、評価閾値設定部13aは、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移するための遷移条件に対応する値を評価閾値として設定する。評価閾値設定部13aは、遷移要求が入力された場合は、予め設定されている第1の評価閾値及び第2の評価閾値のうち、遷移要求が入力されない場合の第1の評価閾値よりも低い第2の評価閾値を評価閾値として選択し、設定する。すなわち、評価閾値設定部13aは、遷移要求が入力された場合は、遷移要求が入力されない場合よりも、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移するための遷移条件を緩和させる。
【0030】
また、評価値判定部14は、評価値算出部11が算出した評価値と、評価閾値設定部13aが設定した評価閾値とを比較して、評価値が評価閾値よりも高いか否かを判定する。具体的には、遷移条件が「自車両1が先行車両2の後方を走行していること」及び「自車両1の車速V1が所定の設定速度Vx1,Vx2以下であること」である場合における車速V1と設定速度Vx1,Vx2との比較を、図3及び図4に示す。なお、図3及び図4に示す例において、評価閾値設定部13aは、遷移要求が入力されていない場合の設定速度Vx1(例えば、60km/h)に対して、遷移要求が入力された場合の設定速度Vx2(例えば、60km/h)を高く設定する。すなわち、評価値判定部14は、先行車両2を検出したタイミングT11以降、自車両1の車速V1が設定速度Vx1,Vx2以下となった場合に、評価値が評価閾値より高いと判定する。
【0031】
また、評価値判定部14は、自車両1と先行車両2との車間距離Dが所定の設定車間距離以下か否かを判定し、車間距離が所定の設定車間距離以下である場合に、評価値が評価閾値より高いと判定してもよい。なお、評価閾値設定部13aによって、遷移要求が入力されていない場合の設定車間距離に対して、遷移要求が入力された場合の設定車間距離は、長く設定される。
【0032】
また、評価値判定部14は、検出装置101が先行車両2を検出してからの経過時間が所定の設定経過時間より長いか否かを判定し、経過時間が設定経過時間より長い場合に、評価値が評価閾値より高いと判定してもよい。なお、評価閾値設定部13aによって、遷移要求が入力されていない場合の設定経過時間に対して、遷移要求が入力された場合の設定経過時間は、短く設定される。
【0033】
また、自車両1の周囲に渋滞が発生している場合であって、遷移要求が入力されていない場合は、自車両1と同一の車線L1を走行する先行車両2の車速が所定車速以下であって、かつ、隣接車線L2を走行する他車両の車速が所定車速以下であることを条件に、評価値判定部14は、評価値が評価閾値より高いと判定してもよい。一方、遷移要求が入力された場合は、隣接車線を走行する他車両の車速に関わらず、車線L1を走行する先行車両2の車速が所定車速以下であることを条件に、評価値判定部14は、評価値が評価閾値より高いと判定してもよい。
【0034】
また、評価値判定部14は、自車両1が分岐路を通過してからの通過時間が所定の設定通過時間より長いか否かを判定し、通過時間が設定通過時間より長い場合に、評価値が評価閾値より高いと判定してもよい。なお、評価閾値設定部13aによって、遷移要求が入力されていない場合の設定通過時間に対して、遷移要求が入力された場合の設定通過時間は、短く設定される。
【0035】
なお、プロセッサ10は、評価閾値の設定を行わずに、遷移要求の入力の有無に応じて遷移条件を設定してもよい。また、プロセッサ10は、評価値の算出を行わずに、自車両1の走行環境が遷移条件を充足するか否かを判定してもよい。
【0036】
次に、図1に示す車両制御部15は、評価値判定部14によって評価値が評価閾値より高いと判定された場合であって、自車両1を第1の運転支援レベルで制御している場合は、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移するように自車両1の運転を制御する。
【0037】
具体的には、遷移要求が入力されていない場合は、図3に示すように、車両制御部15は、車速V1が設定速度Vx1以下となる遷移タイミングT11において、運転支援レベルを第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移させる。一方遷移要求が入力された場合は、図4に示すように、車両制御部15は、車速V2が設定速度Vx2以下となる遷移タイミングT21において、運転支援レベルを第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移させる。ここで、遷移要求が入力された場合の遷移タイミングT21は、遷移要求が入力されていない場合の遷移タイミングT11よりも早い。また、図4に示すように、車両制御部15は、遷移要求が入力されてから所定時間Taが経過するまでは、設定速度を速度Vx2に維持する。すなわち、車両制御部15は、遷移要求が入力されてから所定時間Taが経過するまでは、評価閾値を、遷移要求が入力された場合の第1の評価閾値に維持する。これにより、遷移要求が入力された場合は、所定時間Taが経過するまでは、運転支援レベルが第1の運転支援レベルに下がってから再び第2の運転支援レベルに遷移する第2回目の遷移タイミングT22においても、設定速度は速度Vx2に維持されている。
【0038】
また、車両制御部15は、評価値が評価閾値より高い値となってから、所定の遷移時間Tbが経過した後に、運転支援レベルを第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移させる。車両制御部15は、遷移要求が入力されない場合の第1の遷移時間Tb1(図3参照)よりも、遷移要求が入力された場合の第2の遷移時間Tb2(図4参照)が短くなるように設定する。すなわち、車両制御部15は、遷移要求が入力された場合は、運転支援レベルを第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに早く遷移させるようにする。
【0039】
次に、運転制御装置100が実行する運転制御方法の手順について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。
図5に示すように、ステップS1において、プロセッサ10は、第1の運転支援レベルで自車両1の運転を制御しているか否かを判定する。運転支援レベルが第2の運転支援レベルである場合は、プロセッサ10は、処理を終了する。
【0040】
運転支援レベルが第1の運転支援レベルである場合は、ステップS2において、プロセッサ10は、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移すための遷移条件の充足度を示す評価値を算出する。
【0041】
次に、ステップS3において、プロセッサ10は、入力装置105に遷移要求が入力されたか否かを判定する。遷移要求が入力されていない場合は、ステップS4において、プロセッサ10は、第1の評価閾値を評価閾値として選択し、設定する。一方、遷移要求が入力された場合は、ステップS5において、プロセッサ10は、第1評価閾値よりも低い第2評価閾値を評価閾値として選択し、設定する。すなわち、プロセッサ10は、遷移要求が入力された場合は、遷移要求が入力されていない場合に比べて遷移条件を緩和する。
【0042】
次に、ステップS6において、プロセッサ10は、評価値が、ステップS4又はS5で設定した評価閾値よりも高いか否かを判定する。評価値が評価閾値よりも高い場合は、ステップS7において、プロセッサ10は、運転支援レベルを引き上げて、第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに変更する。一方、評価値が評価閾値以下である場合は、ステップS8において、プロセッサ10は、運転支援レベルを第1の運転支援レベルに維持する。
【0043】
以上より、本実施形態における運転制御装置100のプロセッサ10は、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移することを要求する遷移要求が入力されたか否かを判定する。遷移要求が入力された場合は、プロセッサ10は、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移するための遷移条件を緩和する。これにより、運転制御装置100は、自車両1の運転支援レベルを上げる遷移要求が入力された場合は、運転支援レベルを上がりやすくすることができる。従って、運転支援レベルを第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに上げたいという乗員の要求に応じて、運転制御装置100は、図4に示すように、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移する遷移タイミングT21を早めることができる。また、図4に示すように、遷移要求が入力された場合は運転支援レベルを上げるための遷移条件を緩和するため、図3に示すように遷移要求が入力されない場合に比べて、運転支援レベルが切り替わる頻度が少なくなり、自車両1の乗員が、運転支援レベルが切り替わるタイミングを把握しやすくなる。
【0044】
また、運転制御装置100のプロセッサ10は、遷移条件の充足度を示す評価値を算出する。運転制御装置100は、遷移要求が入力された場合は、遷移要求が入力されない場合の第1の評価閾値よりも低い第2の評価閾値を評価閾値として選択する。そして、運転制御装置100は、評価値が評価閾値より高い場合であって、自車両1を第1の運転支援レベルで制御している場合は、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移するように自車両1の運転を制御する。これにより、運転制御装置100は、遷移要求が入力されない場合の第1の評価閾値に対して遷移要求が入力された場合の第2の評価閾値が低くなるように評価閾値を設定するので、遷移要求が入力された場合の遷移条件を遷移要求が入力されない場合の遷移条件よりも緩和することができる。また、運転制御装置100は、具体的な評価値と評価閾値との比較に基づいて、運転支援レベルを上げるか否かを決定することができる。
【0045】
また、運転制御装置100のプロセッサ10は、図4に示すように、遷移要求が入力されてから所定時間Taが経過するまでは、評価閾値を第2の評価閾値に維持する。これにより、運転制御装置100は、遷移要求が入力されてから所定時間Taの間は、運転支援レベルが第2運転支援レベルから第1の運転支援レベルに戻った場合であっても、第2の評価閾値に基づいて、再び、運転支援レベルを第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移させることができる。
【0046】
また、運転制御装置100のプロセッサ10は、評価値が評価閾値より高い値となってから、運転支援レベルが第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに遷移するまでの遷移時間Tbを、遷移要求が入力されない場合の第1の遷移時間Tb1よりも、遷移要求が入力された場合の第2の遷移時間Tb2が短くなるように設定する。これにより、運転制御装置100は、遷移要求が入力された場合は、運転支援レベルを第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに上げたいという乗員の要求に応じて、運転支援レベルの遷移かかる時間を短くすることができる。
【0047】
また、運転制御装置100のプロセッサ10は、自車両1の第1の車速に応じた評価値よりも、第1の車速よりも低い自車両1の第2の車速に応じた評価値が高くなるように、評価値を算出する。これにより、運転制御装置100は、自車両1の車速V1が低い程、運転支援レベルを第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに上げやすくすることができる。
【0048】
また、運転制御装置100のプロセッサ10は、自車両1と先行車両2との車間距離Dに基づいて、第1の車間距離に応じた評価値よりも、第1の車間距離よりも短い第2の車間距離に応じた評価値が高くなるように、評価値を算出してもよい。これにより、運転制御装置100は、自車両1と先行車両2との車間距離Dが低い程、自車両1が先行車両2の後方を走行しやすく、かつ、自車両1と先行車両2との間に障害物が存在する可能性が低いため、運転支援レベルを第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに上げやすくすることができる。
【0049】
また、運転制御装置100のプロセッサ10は、自車両1の前方に先行車両2が検出されてからの経過時間に基づいて、第1の車間距離に応じた前記評価値よりも、前記第1の車間距離よりも短い第2の車間距離に応じた前記評価値が高くなるように、評価値を算出してもよい。これにより、運転制御装置100は、先行車両2が検出されてからの経過時間が短い程、自車両1の前方に障害物等が存在する可能性が低いため、運転支援レベルを第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに上げやすくすることができる。
【0050】
また、運転制御装置100のプロセッサ10は、自車両1の周囲に渋滞が発生しているか否かを判定し、渋滞が発生している場合の評価値は、渋滞が発生していない場合の評価値よりも高くなるように、評価値を算出してもよい。これにより、運転制御装置100は、自車両1の周囲に渋滞が発生している場合は、渋滞が発生していない場合と比較して先行車両2の後方を先行車両2に追従して走行しやすいため、運転支援レベルを第1の運転支援レベルから第2の運転支援レベルに上げやすくすることができる。
【0051】
運転制御装置100のプロセッサ10は、自車両1の運転を第2の運転支援レベルで制御しているときは、ドライバが自車両1のステアリングから手を放した状態において自車両1の走行を許可するハンズオフモードにより、自車両1の運転を制御する。これにより、運転制御装置100は、自車両1の運転を第2の運転支援レベルで制御しているときは、ハンズオフモードで自車両1の運転を制御するため、ドライバの運転負担を軽減することができる。
【0052】
運転制御装置100のプロセッサ10は、自車両1の運転を第2の運転支援レベルで制御しているときは、ドライバが前方を視認していない状態において自車両1の走行を許可するアイズオフモードにより、自車両1の運転を制御する。これにより、運転制御装置100は、自車両1の運転を第2の運転支援レベルで制御しているときは、アイズオフモードで自車両1の運転を制御するため、ドライバの運転負担を軽減することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…自車両
2…先行車両
100…運転制御装置
10…プロセッサ
11…評価値算出部
12…遷移要求判定部
13…遷移条件設定部
15…車両制御部
図1
図2
図3
図4
図5