IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-光-電気複合コネクタ 図1
  • 特許-光-電気複合コネクタ 図2
  • 特許-光-電気複合コネクタ 図3
  • 特許-光-電気複合コネクタ 図4
  • 特許-光-電気複合コネクタ 図5
  • 特許-光-電気複合コネクタ 図6
  • 特許-光-電気複合コネクタ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】光-電気複合コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/46 20060101AFI20241217BHJP
   G02B 6/38 20060101ALI20241217BHJP
   H01R 13/514 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01R13/46 D
G02B6/38
H01R13/514
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023552889
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2022037080
(87)【国際公開番号】W WO2023058635
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2021163994
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前岨 宏芳
(72)【発明者】
【氏名】生田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】石田 英敏
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-147346(JP,A)
【文献】特開2003-161864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/46
H01R 13/514
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ光ケーブルの光ファイバを結合される少なくとも1つの光フェルールと、
それぞれ電線を結合される少なくとも1つの電気接続端子と、
前記少なくとも1つの光フェルールを収容するサブハウジングと、
前記光フェルールを収容したサブハウジングと前記電気接続端子とをともに収容して固定するメインハウジングと、を有し、
前記サブハウジングに収容された前記光フェルールの軸に沿って先端側の方向を前方として、
前記サブハウジングは、
前記光フェルールを収容する収容部と、
前記収容部の前端面から前方に突出して設けられ、前後方向に直交する断面が前記収容部の前記前端面よりも小さくなった小筒部と、を一体に有し、
前記メインハウジングは、
前端部に、収容している前記サブハウジングの前記小筒部の前方の位置に貫通孔が形成された、ハウジング端面を有するとともに、
前記貫通孔に前記小筒部の位置を合わせた前記サブハウジングに対して、前記収容部の前記前端面に当接する、内部当接面を有する、光-電気複合コネクタ。
【請求項2】
前記サブハウジングはさらに、前記収容部の前後方向中途部に、外周面から外側に突出した突出部を有し、
前記メインハウジングは、前後方向中途部に、内壁面から内側に向かって突出した内突起を有し、
前記メインハウジングに前記サブハウジングを収容した状態で、前記サブハウジングの前記突出部の後端部と、前記メインハウジングの前記内突起の前端部が相互に当接する、請求項1に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項3】
前記電気接続端子は、外表面の前後方向中途部に、前後方向に沿った段差構造を有し、
前記メインハウジングは、内側に、前記電気接続端子を収容した状態で、前記段差構造と係止可能な係止片を有し、
前記メインハウジングの前記係止片に前記電気接続端子の前記段差構造が係止される、請求項2に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項4】
前記係止片は、前記メインハウジングにおいて、前記内突起よりも前方に形成されている、請求項3に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項5】
前記メインハウジングは、前後方向に直交する方向に分割された、2つの分割部材より構成され、
前記貫通孔を備えた前記ハウジング端面は、前記2つの分割部材の一方に形成され、
前記内突起は、前記2つの分割部材の他方に形成されている、請求項2に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項6】
前記メインハウジングは、前後方向に直交する方向に分割された、2つの分割部材より構成され、
前記貫通孔を備えた前記ハウジング端面は、前記2つの分割部材の一方に形成され、
前記係止片は、前記2つの分割部材の他方に形成されている、請求項3に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項7】
前記2つの分割部材のそれぞれには、前記内突起の位置よりも前方に、相互に係止する爪部材が設けられている、請求項5または請求項6に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項8】
前記電気接続端子は、外表面の前後方向中途部に、前後方向に沿った段差構造を有し、
前記メインハウジングは、内側に、前記電気接続端子を収容した状態で、前記段差構造と係止可能な係止片を有し、
前記メインハウジングの前記係止片に前記電気接続端子の前記段差構造が係止される、請求項1に記載の光-電気複合コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光-電気複合コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた光ケーブルは、多量の情報の高速通信が可能であることから、家庭用、産業用等の情報通信に広く利用されている。また、自動車には、カーナビゲーションシステム等、各種の電子機器が装備されているが、それらの機器における通信にも、光ケーブルを用いた光通信が使用され始めている。特に近年、自動車分野において、通信の高速化が加速しているが、数Gbpsを超えるような高速の通信を、電気ケーブルによって行うことには課題が多く、通信の高速化に伴って、車載通信機器において、高速通信に対応可能な光ケーブルの重要性がますます高まっている。特に、ガラス製光ファイバを備えた光ケーブルを、高速通信に好適に用いることができる。
【0003】
一方で、光ケーブルは、通信装置を作動させるのに必要なエネルギーを供給する用途には適しておらず、光ケーブルと合わせて、金属線を備えた電線も使用される。そこで、光ケーブルおよび電線を通信装置等の装置に簡便に接続できるようにするために、光ケーブルと電線を一括して装置に接続できるコネクタが開発されている。その種の光-電気複合コネクタは、特許文献1等に開示されており、一部では実用化も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/088863号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、光ケーブルと電線を一括して通信機器等の機器に接続する手段として、光-電気複合コネクタが開発されているが、その種の複合コネクタは、光ケーブルのみを接続する光コネクタや、電線のみを接続する電気コネクタと比較して、製造が難しくなりやすい。通常、光コネクタと電気コネクタでは、製造工程や製造設備が全く異なっており、同一の製造ラインで、光ケーブルの接続部と電線の接続部を一体に備えた複合コネクタを製造することに困難が伴うことが、理由の1つである。特に、光フェルール等の光通信部材と、電気接続端子等の電気接続部材の両方を、それぞれの所定位置に正確に配置して、コネクタハウジングの中に固定することに、困難が生じやすい。さらに、自動車内での通信の高速化が進むのに伴って、従来用いられてきたプラスチック光ファイバ(POF)から、ガラス光ファイバ(AGF)への置換が、近年進められているが、AGFがPOFよりも小径であることに対応して、AGF用の光通信部材の方が、POF用の光通信部材よりも小型であり、コネクタハウジング内で正しく配置することが、とりわけ難しい。しかも、AGF用の光通信部材においては、高い通信性能を得るために、配置に高い精度が求められる。
【0006】
上記に鑑み、組み立てを行いやすい光-電気複合コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の光-電気複合コネクタは、それぞれ光ケーブルの光ファイバを結合される少なくとも1つの光フェルールと、それぞれ電線を結合される少なくとも1つの電気接続端子と、前記少なくとも1つの光フェルールを収容するサブハウジングと、前記光フェルールを収容したサブハウジングと前記電気接続端子とをともに収容して固定するメインハウジングと、を有し、前記サブハウジングに収容された前記光フェルールの軸に沿って先端側の方向を前方として、前記サブハウジングは、前記光フェルールを収容する収容部と、前記収容部の前端面から前方に突出して設けられ、前後方向に直交する断面が前記収容部の前記前端面よりも小さくなった小筒部と、を一体に有し、前記メインハウジングは、前端部に、収容している前記サブハウジングの前記小筒部の前方の位置に貫通孔が形成された、ハウジング端面を有するとともに、前記貫通孔に前記小筒部の位置を合わせた前記サブハウジングに対して、前記収容部の前記前端面に当接する、内部当接面を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる光-電気複合コネクタは、組み立てを行いやすい光-電気複合コネクタとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1A,1Bは、本開示の一実施形態にかかる光-電気複合コネクタの全体を示す斜視図である。図1Aは前方、図1Bは後方から見た状態を示している。
図2図2は、上記光-電気複合コネクタを示す分解斜視図である。
図3図3A,3Bは、メインハウジングのハウジング本体部を示す斜視図である。図3Aは前方、図3Bは後方からハウジング本体部を見た状態を示している。
図4図4A,4Bは、メインハウジングのリテーナ部材を示す斜視図である。図4Aは前方、図4Bは後方からリテーナ部材を見た状態を示している。
図5図5Aは光サブコネクタを示す斜視図であり、図5Bは電気接続端子を示す斜視図である。
図6図6A,6Bは、上記光-電気複合コネクタを示す断面図である。図6Aは、光サブコネクタの中心の位置に対応する図1A中のA-A断面を示し、図6Bは、電気接続端子の中心の位置に対応する図1A中のB-B断面を示している。
図7図7は、上記光-電気複合コネクタについて、リテーナ部材と光サブコネクタの位置関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示の光-電気複合コネクタは、それぞれ光ケーブルの光ファイバを結合される少なくとも1つの光フェルールと、それぞれ電線を結合される少なくとも1つの電気接続端子と、前記少なくとも1つの光フェルールを収容するサブハウジングと、前記光フェルールを収容したサブハウジングと前記電気接続端子とをともに収容して固定するメインハウジングと、を有し、前記サブハウジングに収容された前記光フェルールの軸に沿って先端側の方向を前方として、前記サブハウジングは、前記光フェルールを収容する収容部と、前記収容部の前端面から前方に突出して設けられ、前後方向に直交する断面が前記収容部の前記前端面よりも小さくなった小筒部と、を一体に有し、前記メインハウジングは、前端部に、収容している前記サブハウジングの前記小筒部の前方の位置に貫通孔が形成された、ハウジング端面を有するとともに、前記貫通孔に前記小筒部の位置を合わせた前記サブハウジングに対して、前記収容部の前記前端面に当接する、内部当接面を有する。
【0011】
上記光-電気複合コネクタにおいては、電気接続端子を収容するメインハウジングに、光フェルールを直接収容するのではなく、電気接続端子とは別に光フェルールをサブハウジングに収容したうえで、メインハウジングにそのサブハウジングを収容している。サブハウジングへの光フェルールの組み付けは、従来の光コネクタの製造工程や製造設備を利用して実施することができ、光フェルールを組み付けたサブハウジングを、電気接続端子とともにメインハウジングに取り付ける工程は、電気接続端子とともに光フェルールも直接メインハウジングに取り付ける工程と比較して、簡便に実施することができ、光-電気複合コネクタの組み立てを行いやすくなっている。
【0012】
さらに、上記光-電気複合コネクタにおいては、サブハウジングにおいて、光フェルールを収容する収容部の前端面の前方に、その前端面よりも小さな断面を有する小筒部が形成されている。そして、メインハウジングには、内部当接面が設けられており、ハウジング端面の貫通孔に小筒部の位置を合わせたサブハウジングに対して、収容部の前端面に、その内部当接面が当接するようになっている。サブハウジングの収容部の前端面にメインハウジングの内部当接面が当接することで、メインハウジングに対してサブハウジングが位置決めされる。このようにサブハウジングが位置決めされることで、サブハウジングをメインハウジングの所定の位置に配置して光-電気複合コネクタを組み立てる工程を、実施しやすくなる。
【0013】
ここで、前記サブハウジングはさらに、前記収容部の前後方向中途部に、外周面から外側に突出した突出部を有し、前記メインハウジングは、前後方向中途部に、内壁面から内側に向かって突出した内突起を有し、前記メインハウジングに前記サブハウジングを収容した状態で、前記サブハウジングの前記突出部の後端部と、前記メインハウジングの前記内突起の前端部が相互に当接するとよい。サブハウジングをメインハウジングに収容した状態で、サブハウジングの突出部とメインハウジングの内突起が相互に当接することで、サブハウジングがメインハウジングに対して位置決めされ、また抜け止めされることになる。これにより、上記内部当接面による位置決めの効果と合わせて、メインハウジングの内部でのサブハウジングの位置決めおよび位置固定が行いやすくなり、光-電気複合コネクタの製造性がさらに高くなる。
【0014】
前記電気接続端子は、外表面の前後方向中途部に、前後方向に沿った段差構造を有し、前記メインハウジングは、内側に、前記電気接続端子を収容した状態で、前記段差構造と係止可能な係止片を有し、前記メインハウジングの前記係止片に前記電気接続端子の前記段差構造が係止されるとよい。電気接続端子をメインハウジングに収容した状態で、電気接続端子の外表面の段差構造が、メインハウジングに設けられた係止片に係止されることで、電気接続端子がメインハウジングに対して位置決めされることになる。これにより、光フェルールを収容したサブハウジングのみならず、電気接続端子についても、メインハウジングに対する位置決めを簡便に行うことが可能となり、光-電気複合コネクタ全体として、組み立ての簡便性が高くなる。
【0015】
この場合に、前記係止片は、前記メインハウジングにおいて、前記内突起よりも前方に形成されているとよい。すると、メインハウジングにおいて、光フェルールを収容したサブハウジングよりも、電気接続端子の方が、メインハウジング内の前方の位置に取り付けられることになる。光フェルールと電気接続端子の構造および接続形態の差異に起因して、電気接続端子の方が光フェルールよりも、相手方コネクタに設けられた相手方部材との接続位置を前方に設けることが好都合であり、上記のように係止片および内突起の位置関係を設定することで、そのような接続位置の関係を実現しやすい。
【0016】
前記メインハウジングは、前後方向に直交する方向に分割された、2つの分割部材より構成され、前記貫通孔を備えた前記ハウジング端面は、前記2つの分割部材の一方に形成され、前記メインハウジングが前記内突起を有する場合の該内突起、また前記メインハウジングが前記係止片を有する場合の該係止片が、前記2つの分割部材の他方に形成されているとよい。また、すると、光フェルールを収容したサブハウジングおよび電気接続端子を、メインハウジングの内部の所定の位置に収容して固定する操作を、簡便に、また高精度に行うことができる。
【0017】
この場合に、前記2つの分割部材のそれぞれには、前記内突起の位置よりも前方に、相互に係止する爪部材が設けられているとよい。すると、2つの分割部材の爪部材を相互に係止させることで、2つの分割部材が相互に対して浮き上がって分離するのを、効果的に抑制できる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態にかかる光-電気複合コネクタについて、図面を用いて詳細に説明する。本明細書において、「円筒状」、「角筒状」、「中心」、「面一」、寸法について「同じ」等、部材の形状や配置を示す語には、幾何的に厳密な概念のみならず、光-電気複合コネクタとして一般に許容される範囲の誤差も含むものとする。
【0019】
<光-電複合コネクタの構造の概略>
図1A,1Bおよび図2に、本開示の一実施形態にかかる光-電気複合コネクタ(以下、単に複合コネクタと称する場合がある)1を、それぞれ斜視図および分解斜視図にて表示する。本実施形態にかかる複合コネクタ1は、光ケーブル8と電線9の集合体の先端に接続され、光通信のための光接続と、導通のための電気接続を同時に行うものである。本実施形態にかかる複合コネクタ1は、通信機器やプリント回路基板等の部材に固定されるものではなく、光ケーブル8および電線9とともに、相手方コネクタに対して着脱可能となったケーブルコネクタとして構成されている。
【0020】
本実施形態にかかる複合コネクタ1は、光通信部分として、少なくとも1つの光フェルール5を備えるとともに、電気接続部分として、少なくとも1つの電気接続端子7を備えている。そして、光フェルール5を収容する収容部材として、サブハウジング3を備える。サブハウジング3には、光フェルール5とともに、バネ部材6が収容され、光サブコネクタSが構成される。さらに、複合コネクタ1は、サブハウジング3と電気接続端子7を一括して収容可能なメインハウジング2を備えており、メインハウジング2に、光フェルール5を収容して光サブコネクタSとしたサブハウジング3と、電気接続端子7とを収容して固定する。メインハウジング2の構造については、後に詳しく説明するが、ハウジング本体部10とリテーナ部材20の2つの分割部材より構成されている。
【0021】
本明細書において、光-電気複合コネクタ1が相手方コネクタと接続される方向を前方、光ケーブル8および電線9が接続される方向を後方として、前後方向(a方向)を規定する。つまり、光フェルール5および電気接続端子7の軸方向が前後方向となり、光フェルール5および電気接続端子7の先端側が前方となる。そして、前後方向に直交し、1対の電気接続端子7と、光フェルール5を収容したサブハウジング3とが並列される方向を上下方向(c方向)とし、前後方向および上下方向に直交する方向を幅方向(b方向)とする。
【0022】
光フェルール5は、公知の光ファイバ用のフェルールより構成されており、光ケーブル8が、固定されている。ここで、光ケーブル8および光フェルール5の種類は、特に限定されるものではないが、高速での通信に適用する観点から、光ケーブル8として、ガラス製光ファイバ(AGF)を備えたものを用いることが好ましい。一般に広く普及しているAGFは、クラッド径が125μmのものであり、マルチモード型の場合でもコア径が100μm以下と小さい場合が多く、適合する光フェルールも、先端面の面積が小さくなっている。光ケーブル8は、先端部にて露出された光ファイバ81を、光フェルール5の先端面と面一にして、光フェルール5に結合固定されている。さらに、光ケーブル8の先端部には、ストップリング83とかしめリング84よりなるケーブル固定部材が取り付けられる。
【0023】
図示した形態においては、複合コネクタ1に含まれる光フェルール5の数は1つであるが、複数としてもよい。光フェルール5が複数である場合には、それぞれの光フェルール5が独立に光ファイバ81に結合される。複数の光フェルール5が複合コネクタ1に含まれる場合に、複数の光フェルール5が、それぞれに対応するバネ部材6とともに共通のサブハウジング3に収容されて、光サブコネクタSを構成してもよい。また、1つあるいは複数の光フェルール5およびばね部材6の組をサブハウジング3に収容して構成した光サブコネクタSを、複数、メインハウジング2に収容するように構成してもよい。
【0024】
電気接続端子7は、公知の絶縁電線用の電気接続端子として構成されている。電気接続端子7は、絶縁電線9の先端部に固定され、絶縁電線9の先端側で露出された電線導体に電気的に接続されている。電気接続端子7の種類は特に限定されるものではないが、嵌合型のメス型端子を好適に適用することができる。図示した形態では、複合コネクタ1に含まれる電気接続端子7の数は1対(2つ)としているが、少なくとも1つの電気接続端子7が含まれていれば、その数は特に限定されない。
【0025】
図5Bに、電気接続端子7を斜視図にて示すが、電気接続端子7には、外表面のうち、幅方向外側の面の一方(-b方向の面)に、段差構造71が形成されている。段差構造71としては、前後方向の中途部に、前後方向に沿って外表面の高さが変化する構造が設けられている。ここでは、段差構造71として、前後方向に沿って前方が高く、後方が低くなった段差が形成されている。さらに、電気接続端子7においては、段差構造71よりも前方に、前後方向に沿って中途部が幅方向に鋭角に突出した突出構造72が設けられている。後に詳しく説明するように、電気接続端子7の段差構造71は、メインハウジング2に設けられた端子係止片24に係止されることで、電気接続端子7をメインハウジング2に位置決めするものとなる。
【0026】
ここで、サブハウジング3および光サブコネクタSの構造について簡単に説明する。図5Aに、光サブコネクタSを斜視図にて示す。また、図6Aの断面図に、光サブコネクタSの断面が含まれている。上記のように、光ケーブル8を結合された光フェルール5は、バネ部材6とともにサブハウジング3に収容され、光サブコネクタSを構成している。光サブコネクタSの外郭となるサブハウジング3は、前後に開口を有する中空筒状の樹脂部材として構成されており、内部に、光ケーブル8を接続した光フェルール5を、少なくとも1つ収容することができる。サブハウジング3は、上方部材3aと下方部材3bの2つの分割部材より構成されている。光ケーブル8に光フェルール5が結合され、さらにケーブル固定部材83,84が取り付けられた結合体のうち、ケーブル固定部材83,84より前方の箇所全体が、サブハウジング3の内部に収容されている。
【0027】
上方部材3aと下方部材3bを結合して形成されたサブハウジング3は、角筒状のサブ収容部32を有している。光フェルール5とバネ部材6が、サブ収容部32の中に収容されている。光フェルール5は、サブハウジング3の中で、コイルバネとして構成されたバネ部材6によって、前方に向かって付勢された状態となっている。サブハウジング3の前端には、光フェルール5の先端面を臨み、光フェルールを含む相手方コネクタの光接続部が進入可能な開口として、接続用サブ開口331が形成されている。接続用サブ開口331から相手方の光フェルールが進入し、サブハウジング3内の光フェルールに突き当たると、バネ部材6が、光フェルール5を相手方光フェルールに向かって押圧する。
【0028】
サブハウジング3は、先端部に段付き形状を有しており、光フェルール5およびバネ部材6を収容しているサブ収容部32の前方に、小筒部33が設けられている。小筒部33は、サブ収容部32の前端面(サブ収容部端面)321から前方に突出する筒状部として形成されている。小筒部33はサブ収容部32と一体に構成されており、小筒部33の中空部とサブ収容部32の中空部が連続している。小筒部33は、前後方向に沿って、サブ収容部端面321よりも細くなっている。つまり、前後方向に直交する小筒部33の断面が、サブ収容部端面321よりも小さくなっており、前後方向全域において、小筒部33の断面が、サブ収容部端面321の面形状の内側に収まる形状および大きさをとっている。図示した形態では、小筒部33は、円筒形状に形成されている。サブハウジング3において、小筒部33の先端が、接続用サブ開口331となっている。後に詳しく説明するように、小筒部33とサブ収容部32の間の境界部分において、サブ収容部端面321が、メインハウジング2の内側に設けられた当接部16と当接することで、サブハウジング3が、メインハウジング2に対して、位置決めされる。
【0029】
サブハウジング3の外周面には、係止用突出部31が設けられている。係止用突出部31は、サブ収容部32の前後方向中途部に、サブハウジング3の上方の壁面の外側から、上方に向かって突出した突出片として、サブハウジング3(上方部材3a)の壁面と一体に設けられている。図示した形態では、サブハウジング3は、直方体形状の小片として形成されている。係止用突出部31は、後に詳しく説明するように、メインハウジング2に設けられた係止用内突起22と相互に係止されることで、サブハウジング3をメインハウジング2中で位置決めするとともに、抜け止めする役割を果たす。
【0030】
本実施形態にかかる複合コネクタ1においては、メインハウジング2に、光フェルール5を直接固定するのではなく、サブハウジング3に光フェルール5を収容して光サブコネクタSとした状態で、その光サブコネクタSを、電気接続端子7とともに、メインハウジング2に組み付け、固定している。このことにより、複合コネクタ1の光通信部分の組み立てを、行いやすくなっている。通常、光コネクタと電気コネクタでは、製造工程および製造設備が大きく異なり、光フェルール5と電気接続端子7をともに含むコネクタを同一の製造ラインで製造することは困難であるが、本実施形態のように、光フェルール5をサブハウジング3に収容して光サブコネクタSとして組み立てておき、その光サブコネクタSの形で、メインハウジング2への光フェルール5の組み付けを行うようにすれば、光サブコネクタSの組み立てを、従来の光コネクタ用の製造工程および製造設備を適用して、電気接続部の組み上げと独立して行うことができる。そのようにして組み立てた光サブコネクタSを、電気接続端子7とともにメインハウジング2に組み付ける工程は、従来の電気コネクタの製造工程および製造設備を応用して、大きな困難なく実施することができる。特に、光フェルール5が、AGF用の小径のものである場合には、コネクタの組み立て工程での扱いが困難になりやすいが、あらかじめ光サブコネクタSの状態としておけば、その後の組み立て工程において、光フェルール5の径の小ささによる困難も生じにくい。
【0031】
<メインハウジングの構造と位置決め>
ここで、メインハウジング2の構造と、メインハウジング2による光サブコネクタSおよび電気接続端子7の位置決めについて、詳細に説明する。
【0032】
(メインハウジングの全体形状)
メインハウジング2は、樹脂部材として構成されており、サブハウジング3に光フェルール5を収容した光サブコネクタSと、電気接続端子7を、内部の空間に収容して固定する。メインハウジング2は、前端面としてハウジング端面11を有し、後方が開放された略角筒状の樹脂部材として構成されている。
【0033】
図1A,1Bに示した形態において、メインハウジング2は、ハウジング本体部10とリテーナ部材20の2つの分割部材が結合されて、略角筒形状となっている。図3A,3Bおよび図4A,4Bに、ハウジング本体部10およびリテーナ部材20のそれぞれについて、前方および後方から見た斜視図を示す。
【0034】
ハウジング本体部10は、前方に筒状部12を有するとともに、筒状部12の後方に、筒状部12と一体に、幅方向の一方(-b方向)が開放された形状の開放部13を有している。筒状部12の前方には、前端面が設けられており、この前端面が、メインハウジング2全体としての前端面であるハウジング端面11となる。リテーナ部材20は、ハウジング本体部10の開放部13を幅方向外側(-b方向)から覆うものであり、ハウジング本体部10の開放部13にリテーナ部材20を結合することで、略角筒状のメインハウジング2となる。
【0035】
ハウジング本体部10とリテーナ部材20の間の結合状態は、係止タブ21と係止突起14の間の係止によって保持される。リテーナ部材20には、上下の壁面に、ループ状の係止タブ21が設けられている。そして、ハウジング本体部10には、リテーナ部材20を結合した際に係止タブ21に対応する位置に、係止タブ21を係止可能な係止突起14が設けられている。ハウジング本体部10の開放部13をリテーナ部材20で覆い、係止突起14に係止タブ21のループ構造を係止させることで、ハウジング本体部10とリテーナ部材20を結合することができる。係止タブ21と係止突起14の間の係止構造は、一度係止すると、容易には解除できない。
【0036】
さらに、メインハウジング2には、ハウジング本体部10とリテーナ部材20の間の結合を保持する部材を、係止タブ21と係止突起14の組以外にも補助的に設けてもよい。例えば、ハウジング本体部10の上下の壁面の外側と、リテーナ部材20の上下の壁面の内側の相互に対応する箇所に、相互に幅方向に係止可能な爪部材の対を設ける形態を挙げることができる。図示した形態では、ハウジング本体部10の上方の壁面のうち、リテーナ部材20と重畳される部位の外側の面に、一方の爪部材15が設けられており、リテーナ部材20の上方の壁面のうち、ハウジング本体部10の筒状部12の位置まで延出した延出部23の内側の面に、他方の爪部材25が設けられ、それらの爪部材15,25が、幅方向に相互に係止される。このような爪部材15,25は、リテーナ部材20がハウジング本体部10に対して幅方向に浮き上がり、リテーナ部材20とハウジング本体部10が相互に分離される方向に力が働くのを抑制するものとなる。リテーナ部材20の浮き上がり抑制の効果を高める観点から、爪部材15,25は、メインハウジング2の前方側に設けられることが好ましく、係止タブ21と係止突起14の係止箇所よりも前方、さらに好ましくは、後に説明する係止用内突起22と係止用突出部31の係止箇所よりも前方に設けられることが好ましい。
【0037】
ハウジング本体部10の筒状部12の内部の空間は、前後方向に沿った隔壁により、複数の空間に区画されている。それらの空間のうち、サブコネクタ収容空間s1には、光フェルール5等を収容して光サブコネクタSとしたサブハウジング3が収容される。また、2つの端子収容空間s2に、電線9を接続した電気接続端子7がそれぞれ収容される。電気接続端子7、およびサブハウジング3に収容された光フェルール5は、メインハウジング2内で、それぞれの軸方向を前後方向に向けて配置される。サブコネクタ収容空間s1および端子収容空間s2は、それぞれ、がたつきなくサブハウジング3および電気接続端子7を収容できる大きさおよび形状に形成されている。
【0038】
ハウジング本体部10の前端面として構成されたハウジング端面11には、貫通孔として、光接続用開口111が形成されている。光接続用開口111は、サブハウジング3の小筒部33の前方にあたる位置に設けられている。光フェルールを含む相手方コネクタの光接続部が、光接続用開口111および接続用サブ開口331を通って、サブハウジング3の内部に進入可能となっている。また、ハウジング端面11には、各電気接続端子7の前方にあたる位置に、電気接続用開口112が形成され、電気接続端子を含む相手方コネクタの電気接続部が、端子収容空間s2に進入可能となっている。
【0039】
(光サブコネクタの位置決め)
ここで、メインハウジング2における光サブコネクタSの位置決めについて説明する。図6Aに、図1A中のA-A断面図、つまり光サブコネクタSの中心を通る上下方向に垂直な面で複合コネクタ1を切断した断面図を示す(光フェルール5および光ケーブル8の内部構造は図示を省略している)。上記で説明した各図に加えて、この図6Aを参照して、以下の説明を行う。
【0040】
上記のように、ハウジング本体部10のハウジング端面11には、サブハウジング3の小筒部33の前方にあたる位置に、光接続用開口111が形成されている。光接続用開口111の開口径は、サブハウジング3の小筒部33の径よりも少し大きく形成されており、小筒部33は通過可能であるが、サブ収容部32は通過不能な大きさとなっている。
【0041】
光接続用開口111の後方には、ハウジング端面11と一体に、当接部16が設けられている。当接部16は、前後方向に貫通した貫通孔を有するブロック状の部材として構成されている。当接部16の貫通孔は、ハウジング端面11の光接続用開口111と同じ内径を有しており、光接続用開口111と前後に連続している。当接部16の厚さ(前後方向の寸法)は、ハウジング端面11の板厚との合計(図6A中のd1)で、サブハウジング3の小筒部33の前後方向に沿った長さとほぼ同じになっている。この当接部16の後端面が、内部当接面161となっている。
【0042】
メインハウジング2において、サブコネクタ収容空間s1に後方から光サブコネクタSを挿入すると、小筒部33が当接部16の貫通孔に挿通される。そして、当接部16の後端面である内部当接面161が、小筒部33の後方のサブ収容部端面321(サブ収容部32の前端面)に突き当たる。この時、小筒部33の先端が、メインハウジング2のハウジング端面11と面一になる。このように、メインハウジング2に設けられた内部当接面161と、サブハウジング3のサブ収容部端面321との間の当接により、サブハウジング3が、メインハウジング2に対して位置決めされる。また、サブハウジング3が、メインハウジング2に対して、前方に抜け止めされる。サブハウジング3の小筒部33を後方からメインハウジング2の当接部16の貫通孔に挿入し、サブ収容部端面321を内部当接面161に当接させるだけで、サブハウジング3を位置決めすることができるので、メインハウジング2に光サブコネクタSを組み込む際に、正規の位置にサブハウジング3を配置し、保持する作業を、簡便に行うことができる。
【0043】
さらに、メインハウジング2には、上記のように内部当接面161とサブ収容部端面321の間の当接を利用して位置決めした光サブコネクタSの保持の確実性をさらに高めるための部材として、係止用内突起22が設けられている。係止用内突起22は、リテーナ部材20の閉塞面26の内側に設けられている。ここで、リテーナ部材20の閉塞面26とは、ハウジング本体部10の幅方向外側(-b方向)に位置し、ハウジング本体部10の開放部13を閉塞する面である。係止用内突起22は、メインハウジング2の前後方向中途部において、リテーナ部材20の閉塞面26の内壁面から幅方向内側(+b方向)に向かって突出したブロック状小片として設けられている。係止用内突起22は、ハウジング本体部10にリテーナ部材20を結合した際に、メインハウジング2の内側に向かって突出した部材となる。
【0044】
ハウジング本体部10において、サブハウジング3のサブ収容部端面321を内部当接面161に当接させて、光サブコネクタSを位置決めした状態で、ハウジング本体部10にリテーナ部材20を取り付けると、収容されたサブハウジング3の側壁面から幅方向外側(-b方向)に突出した係止用突出部31の位置に、リテーナ部材20の係止用内突起22の位置が対応するようになっている。さらに詳細には、係止用突出部31の後端部311の位置が、係止用内突起22の前端部221の位置と対応するように、係止用内突起22の位置が設定されている。
【0045】
図7に、係止用突出部31と係止用内突起22の係止箇所に着目して、リテーナ部材20とサブハウジング3の位置関係を斜視図にて表示している。ここでは、係止用突出部31と係止用内突起22の位置が上記のように設定されていることにより、係止用突出部31の後端部311と、係止用内突起22の前端部221が相互に当接する。この係止用突出部31と係止用内突起22の間の当接により、係止用突出部31と係止用内突起22が前後方向に相互に係止した状態となる。
【0046】
この係止用突出部31と係止用内突起22の間の係止構造は、サブハウジング3の前方における、サブ収容部端面321と内部当接面161の間の当接による位置決めに加え、メインハウジング2内での光サブコネクタSの位置決めの確実性を増すものとなる。さらに、そのようにして位置決めされた光サブコネクタSが、係止用突出部31と係止用内突起22の間の係止によって抜け止めされ、メインハウジング2の後方に抜けるのが阻止される。これにより、メインハウジング2の所定の位置に光サブコネクタSを配置して固定する工程を簡便に実施できるとともに、製造された複合コネクタ1において、光サブコネクタSが、メインハウジング2の中で、所定の位置に安定に保持されることになる。さらに、係止用内突起22は、前後方向に沿って長い形状を有しており、メインハウジング2において、ハウジング本体部10の筒状部12の中に設けられた隔壁と連続して、サブコネクタ収容空間s1を画定する隔壁としての役割も兼ねる。
【0047】
(電気接続端子の位置決め)
次に、メインハウジング2における電気接続端子7の位置決めについて説明する。図6Bに、図1A中のB-B断面図、つまり一方の電気接続端子7の中心を通る上下方向に垂直な面で複合コネクタ1を切断した断面図を示す(電気接続端子7および電線9の内部構造は図示を省略している)。上記で説明した各図に加えて、この図6Bを参照して、以下の説明を行う。
【0048】
メインハウジング2を構成するリテーナ部材20は、上方の壁面が前方に延出した延出部23を有している。延出部23は、ハウジング本体部10の開放部13を閉塞する閉塞面26よりも前方に延出しており、ハウジング本体部10の筒状部12の前後方向中途部にまで至っている。延出部23の前方部には、延出部23と一体に、端子係止片24が設けられている。端子係止片24は、延出部23から、下方に向かって突出した板状の小片として構成されている。端子係止片24は、幅方向外側の面が、閉塞面26の幅方向外側の面と面一となっているが、端子係止片24の板厚は、閉塞面26の板厚よりも大きくなっている。ハウジング本体部10の側壁面のうち、リテーナ部材20を結合した際に端子係止片24が位置する箇所には、端子係止片24が進入可能な貫通孔として、窓部17が設けられている。ハウジング本体部10にリテーナ部材20を結合した際に、端子係止片24は、窓部17を介して、閉塞面26との板厚の差の分だけ、メインハウジング2の側壁面から内側(+b方向)に向かって突出することになる。
【0049】
端子係止片24の位置は、ハウジング本体部10の筒状部12の端子収容空間s2に電気接続端子7を挿入して、リテーナ部材20を取り付けた際に、電気接続端子7の段差構造71の位置に対応するようになっている。より詳細には、電気接続端子7をハウジング端面11に当接する位置まで端子収容空間s2に挿入した状態において、その電気接続端子7の段差構造71の位置、つまり前方から後方に向かって高さが変化する段差の位置に、端子係止片24の前端部241の位置が対応するように、リテーナ部材20における端子係止片24の位置が設定されている。また、段差構造71における段差の高さと、メインハウジング2の内側面からの端子係止片24の突出高さが同じになっている。
【0050】
端子係止片24と電気接続端子7の段差構造71の位置関係が上記のように設定されていることにより、図6Bに示すように、複合コネクタ1において、電気接続端子7の段差構造71に、端子係止片24が前後方向に沿って係止した状態となる。また、端子係止片24が電気接続端子7の段差構造71の後方の箇所(段差を下った箇所)の外表面に当接する。この端子係止片24と電気接続端子7の段差構造71の間の係止構造は、メインハウジング2内で、電気接続端子7を位置決めするものとなる。端子係止片24の上下方向の寸法は、並列された2つの電気接続端子7の両方の位置にまたがるものとなっており、1つの端子係止片24が、2つ両方の電気接続端子7の段差構造71に係止し、2つの電気接続端子7を同時に位置決めすることができる。なお、電気接続端子7には、段差構造71よりも前方の部位に、突出構造72が設けられており、端子収容空間s2への電気接続端子7の挿入時に、この突出構造72がハウジング本体部10の内壁面に食い込むことで、電気接続端子7がメインハウジング2内で仮係止され、その後、端子係止片24により、電気接続端子7が、メインハウジング2内の所定の位置に強固に固定されるものとなる。
【0051】
リテーナ部材20において、電気接続端子7の段差構造71に係止される端子係止片24は、光サブコネクタSを構成するサブハウジング3の係止用突出部31に係止される係止用内突起22よりも、複合コネクタ1の前方に形成されている。これにより、電気接続端子7が相手方コネクタの電気接続端子との間に電気接続を形成する位置が、光フェルール5が相手方コネクタの光フェルールとの間に光接続を形成する位置よりも、前方に設定されることになる。電気接続端子7は、電線9の先端に直接結合された簡素な接続構造をとるうえ、相手方電気接続端子とオス-メス型の篏合によって接続されることに対応して、メインハウジング2の前方側の浅い位置で電気接続を形成しやすい。これに対し、光フェルール5は、単純に光ケーブル8の先端に結合されているのではなく、バネ部材6やケーブル固定部材83,84を、近傍に配置する必要があるうえ、相手方光フェルールと先端面を突き合せて接続されることと対応して、メインハウジング2の奥深く入った位置で光接続を形成することが好都合である。上記のように、端子係止片24を係止用内突起22よりも前方に設けておくことで、電気接続端子7による電気接続が光フェルール5による光接続よりも前方に形成される複合コネクタ1を、簡素な構成で構築することができる。
【0052】
複合コネクタ1を組み立てるに際しては、まず、あらかじめ組み立てておいた光サブコネクタSと、電線9を結合した電気接続端子7を、それぞれ、ハウジング本体部10のサブコネクタ収容空間s1および端子収容空間s2に、後方から挿入する。この際、光サブコネクタSは、サブハウジング3の小筒部33を当接部16の貫通孔に挿入し、サブ収容部端面321を内部当接面161に当接させて位置決めする。また、電気接続端子7を、先端をハウジング端面11に当接させた位置にて、突出構造72により仮係止する。次に、ハウジング本体部10の開放部13をリテーナ部材20の閉塞面26で閉塞するようにして、リテーナ部材20を取り付ける。この際、閉塞面26の内側に設けられた係止用内突起22をサブハウジング3の係止用突出部31に係止させるとともに、端子係止片24を2つの電気接続端子7の段差構造71に係止させるようにする。また、ハウジング本体部10の爪部材15とリテーナ部材20の爪部材25を相互に係止させる。このように、各部に係止構造を形成したうえで、リテーナ部材20の係止タブ21をハウジング本体部10の係止突起14に係止することで、ハウジング本体部10とリテーナ部材20を結合する。このようにして、メインハウジング2内の所定の位置に光フェルール5と電気接続端子7を収容した複合コネクタ1を、簡便に製造することができる。
【0053】
<その他の形態>
上記で説明した形態においては、メインハウジング2が、幅方向に分割されたハウジング本体部10とリテーナ部材20から構成されており、そのうちリテーナ部材20に、光サブコネクタSを保持するための係止用内突起22と、電気接続端子7を保持するための端子係止片24が設けられていた。このように構成することで、筒形状のメインハウジング2の内部の所定の位置に、光サブコネクタSおよび電気接続端子7を配置し、固定する操作が行いやすい。しかし、メインハウジング2は必ずしも複数の分割部材に分けて構成されなくてもよく、また、分割部材に分けられる場合にも、分割の形態は、例えば前後方向への分割等、上記と異なる形態であってもよい。また、上記のように、幅方向に2つの分割部材より構成される場合に、係止用内突起および端子係止片は、それぞれいずれの分割部材に設けられてもよく、両者が同じ分割部材に設けられても、別の分割部材に設けられてもよい。ただし、上記のように、係止用内突起22および端子係止片24を、共通の分割部材(上記ではリテーナ部材20)に設けておくこと、さらに、それら係止用内突起22および端子係止片24を、ハウジング端面11を有する方の分割部材(上記ではハウジング本体部10)とは異なる分割部材(上記ではリテーナ部材20)に設けておくことで、それらの部材22,24による光サブコネクタSおよび電気接続端子7との係止構造の形成を、簡便に行うことができる。
【0054】
また、上記のとおり、電気接続端子7の種類や数は特に限定されるものではない。例えば、電気接続端子7として、特定の規格への適合が想定されない一般端子を用いても、イーサネット(登録商標)規格等、所定の規格を満たす端子を用いても、いずれでもよい。一般端子を用いる形態は、低コスト性において優れ、所定の規格を満たす端子を用いる形態は、通信性能等、電気接続部の性能を担保できる点で優れる。
【0055】
電気接続端子7を複数設ける場合に、それらの電気接続端子7を並べる方向も、特に限定されるものではない。上記実施形態では、図示したとおり、1対の電気接続端子7を、光フェルール5を収容したサブハウジング3とともに、上下方向(c方向)に並べているが(以下、直列配置と称する)、例えば、1対の電気接続端子7を幅方向(b方向)に並べた状態で、光フェルール5を収容したサブハウジング3と上下方向(c方向)に並べるようにしてもよい(以下、並列配置と称する)。直列配置と並列配置のいずれを採用するかは、複合コネクタ1の用途や電気接続端子7の種類等に応じて選択すればよい。また、本実施形態にかかる複合コネクタは、ケーブルコネクタであり、基板コネクタ(PCBコネクタ)等、嵌合させる相手方のコネクタにおける電気接続部と光接続部の配置に合わせて、直列配置か並列配置かを選べばよい。ただし、並列配置とする方が、複合コネクタ1全体を小型に設定しやすく、省スペース性の点では優れる。
【0056】
さらに、上記実施形態においては、複合コネクタ1に防水性を付与していないが、複合コネクタ1を防水コネクタとして構成してもよい。例えば、メインハウジング2の後端の開口部を、防水栓で閉塞する形態が考えられる。
【0057】
本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 (光-電気)複合コネクタ
2 メインハウジング
3 サブハウジング
3a 上方部材
3b 下方部材
5 光フェルール
6 バネ部材
7 電気接続端子
8 光ケーブル
9 (絶縁)電線
10 ハウジング本体部
11 ハウジング端面
111 光接続用開口
112 電気接続用開口
12 筒状部
13 開放部
14 係止突起
15 爪部材
16 当接部
161 内部当接面
17 窓部
20 リテーナ部材
21 係止タブ
22 (係止用)内突起
221 (係止用)内突起の前端部
23 延出部
24 端子係止片
241 端子係止片の前端部
25 爪部材
26 閉塞面
31 (係止用)突出部
311 (係止用)突出部の後端部
32 (サブ)収容部
321 サブ収容部端面(=サブ収容部の前端面)
33 小筒部
331 接続用サブ開口
71 電気接続端子の段差構造
72 突出構造
81 光ファイバ
83 ストップリング
84 かしめリング
a 前後方向
b 幅方向
c 上下方向
d1 当接部とハウジング端面の合計の厚さ
s1 サブコネクタ収容空間
s2 端子収容空間
S 光サブコネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7