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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】光-電気複合コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/46 20060101AFI20241217BHJP
   H01R 12/73 20110101ALI20241217BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01R13/46 D
H01R12/73
G02B6/42
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023552890
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2022037081
(87)【国際公開番号】W WO2023058636
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2021163995
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前岨 宏芳
(72)【発明者】
【氏名】生田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】石田 英敏
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-039258(JP,A)
【文献】特開2001-167837(JP,A)
【文献】特開2014-048408(JP,A)
【文献】米国特許第04969924(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/46
H01R 12/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に取り付けられる光-電気複合コネクタであって、
少なくとも1つの光フェルールと、
少なくとも1つの電気接続端子と、
前記光フェルールおよび前記電気接続端子を取り付け可能なハウジングと、
前記ハウジングに嵌合可能なリテーナ部材と、を有し、
前記電気接続端子は、前記ハウジングに直接固定されており、
前記光フェルールは、前記ハウジングと前記リテーナ部材の間に挟み込まれて、前記ハウジングに保持されている、光-電気複合コネクタ。ただし、前記電気接続端子が前記リテーナ部材に保持される場合を除く。
【請求項2】
前記光-電気複合コネクタはさらに、前記光フェルールを挿入可能な割スリーブを備え、
前記光フェルールの先端部が前記割スリーブに収容された状態で、前記光フェルールが、前記ハウジングと前記リテーナ部材の間に挟み込まれて、前記ハウジングに保持されている、請求項1に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項3】
前記光フェルールは、光ファイバを結合され、前記光ファイバを介して、前記回路基板に固定される、または、前記光ファイバを介して、前記回路基板に取り付けられた光通信モジュールに結合される、請求項1または請求項2に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項4】
前記電気接続端子は、前記ハウジングの外側に突出した基板接続部にて、前記回路基板に直接電気的に接続される、請求項1または請求項2に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項5】
前記電気接続端子の前記基板接続部は、はんだ付けによる表面実装、またはスルーホールへの挿入により、前記回路基板に電気的に接続される、請求項4に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項6】
前記光フェルールは、前方から、前記先端部、鍔部、後端部を一体に備え、前記鍔部が前記先端部および前記後端部よりも大径であり、
前記ハウジングは、後壁面から前方へと延びる中空円筒状の筒状部を有し、前記筒状部は、前記割スリーブを圧入可能、かつ前記光フェルールの前記鍔部を挿入不能な内径を有し、
前記光フェルールは、前記先端部が前記割スリーブに収容された状態で前記筒状部に収容されるとともに、前記鍔部および前記後端部が前記ハウジングの前記後壁面から後方に突出した状態で、前記ハウジングと前記リテーナ部材の間に挟み込まれている、請求項2に記載の光-電気複合コネクタ。
【請求項7】
前記電気接続端子は、段状に幅方向に張り出した突起部を有し、前記突起部の頂部が、前記ハウジングの後壁面を貫通する孔として設けられた端子挿通孔の壁面に食い込んだ状態で、前記電気接続端子が前記ハウジングに固定されている、請求項1または請求項2に記載の光-電気複合コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光-電気複合コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた光ケーブルは、多量の情報の高速通信が可能であることから、家庭用、産業用等の情報通信に広く利用されている。また、自動車には、カーナビゲーションシステム等、各種の電子機器が装備されているが、それらの機器における通信にも、光ケーブルを用いた光通信が使用されだしている。特に近年、自動車分野において、通信の高速化が加速しているが、数Gbpsを超えるような高速の通信を、電気ケーブルによって行うことには課題が多く、通信の高速化に伴って、車載通信機器において、高速通信に対応可能な光ケーブルの重要性がますます高まっている。特に、ガラス製光ファイバを備えた光ケーブルを、高速通信に好適に用いることができる。
【0003】
一方で、光ケーブルは、通信装置を作動させるのに必要なエネルギーを供給する用途には適しておらず、光ケーブルと合わせて、金属線を備えた電線も使用される。そこで、光ケーブルおよび電線を通信装置等のプリント回路基板に簡便に接続できるようにするために、光ケーブルと電線を一括して、装置のプリント回路基板に接続できるコネクタが開発されている。その種の光-電気複合コネクタは、特許文献1等に開示されており、一部では実用化も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/088863号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、光ケーブルと電線を一括してプリント回路基板に接続する手段として、光-電気複合コネクタが開発されているが、その種の複合コネクタは、光ケーブルのみを接続する光コネクタや、電線のみを接続する電気コネクタと比較して、製造が難しくなりやすい。特許文献1には、回路基板上に取り付けられる光・電気複合コネクタが開示されているが、この複合コネクタには、電気コネクタおよび光コネクタとともに、発光素子を有する送信側モジュールおよび受光素子を有する受信側モジュールが、組み込まれている。このように、光通信用のモジュールをコネクタ内に組み込むとすれば、コネクタハウジングの内部の構造が複雑になり、また、収容される各部材の位置合わせにも高い精度が要求されることになる。すると、複合コネクタの組み立てに、困難を伴うことになる。また、通常、光コネクタと電気コネクタでは、製造工程や製造設備が全く異なっており、同一の製造ラインで、電気接続部分と、モジュール類を含む光通信部分をともに備えた複合コネクタを組み立てることには、困難が生じやすい。特に、自動車内での通信の高速化が進むのに伴って、従来用いられてきたプラスチック光ファイバ(POF)から、ガラス光ファイバ(AGF)への置換が、近年進められているが、AGFがPOFよりも小径であることに対応して、AGF用の光通信部材は、POF用の光通信部材よりも小型であるうえ、高い配置精度が求められるため、コネクタハウジング内に正しく配置して複合コネクタを製造することが、とりわけ難しくなる。
【0006】
そこで、回路基板に実装される光-電気複合コネクタであって、組み立てを行いやすい光-電気複合コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の光-電気複合コネクタは、回路基板に取り付けられる光-電気複合コネクタであって、少なくとも1つの光フェルールと、少なくとも1つの電気接続端子と、前記光フェルールおよび前記電気接続端子を取り付け可能なハウジングと、前記ハウジングに嵌合可能なリテーナ部材と、を有し、前記電気接続端子は、前記ハウジングに直接固定されており、前記光フェルールは、前記ハウジングと前記リテーナ部材の間に挟み込まれて、前記ハウジングに保持されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる光-電気複合コネクタは、回路基板に実装される光-電気複合コネクタであって、組み立てを行いやすい光-電気複合コネクタとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態にかかる光-電気複合コネクタを後方から見た斜視図である。
図2図2は、上記光-電気複合コネクタを前方から見た斜視図である。
図3図3は、図1においてリテーナ部材を外した状態を示す斜視図である。
図4図4A,4Bは、上記光-電気複合コネクタの断面図である。図4Aは、端子取り付け部の箇所の横断面を拡大して示し、図4Bは、フェルール取り付け部の箇所の横断面を示している。
図5図5は、上記光-電気複合コネクタの使用状態を、関連部材とともに説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示にかかる光-電気複合コネクタは、回路基板に取り付けられる光-電気複合コネクタであって、少なくとも1つの光フェルールと、少なくとも1つの電気接続端子と、前記光フェルールおよび前記電気接続端子を取り付け可能なハウジングと、前記ハウジングに嵌合可能なリテーナ部材と、を有し、前記電気接続端子は、前記ハウジングに直接固定されており、前記光フェルールは、前記ハウジングと前記リテーナ部材の間に挟み込まれて、前記ハウジングに保持されている。
【0011】
上記光-電気複合コネクタは、光通信用の部材として、光フェルールを備えている。この光フェルールに光ファイバを結合し、その光ファイバを、発光素子や受光素子を備えたものなど、光通信用のモジュールに結合することができる。すると、光-電気複合コネクタの中に、光通信用モジュールを組み込まなくても、相手方コネクタの光フェルール等の光通信部材と、光通信モジュールとの間で、光信号の送受信を行うことができる。光-電気複合コネクタに光通信モジュールを組み込まないようにすることで、光-電気複合コネクタの構造が簡素化され、光-電気複合コネクタの組み立てが行いやすくなる。さらに、上記光-電気複合コネクタにおいては、光フェルールを、ハウジングに直接固定するのではなく、ハウジングと、ハウジングに嵌合されるリテーナ部材との間に挟み込んで、ハウジングに保持している。よって、ハウジングにリテーナ部材を嵌め込むだけで、光フェルールをハウジングに取り付けることができ、光-電気複合コネクタの組み立てが、さらに簡便に行えるようになっている。光-電気複合コネクタの組み立て工程の簡素化の効果は、光-電気複合コネクタが、AGF等、細い光ファイバを用いた光通信に適用されるものである場合に、特に顕著となる。
【0012】
ここで、前記光-電気複合コネクタはさらに、前記光フェルールを挿入可能な割スリーブを備え、前記光フェルールの先端部が前記割スリーブに収容された状態で、前記光フェルールが、前記ハウジングと前記リテーナ部材の間に挟み込まれて、前記ハウジングに保持されているとよい。割スリーブを使用することで、光-電気複合コネクタにおいて、光フェルールを、高精度に位置決めすることができる。また、相手方コネクタの光フェルールを反対側から割スリーブに挿入することで、両方の光フェルールの先端面を精度良く突き合わせ、光通信を行うことができる。
【0013】
前記光フェルールは、光ファイバを結合され、前記光ファイバを介して、前記回路基板に固定される、または、前記光ファイバを介して、前記回路基板に取り付けられた光通信モジュールに結合されるとよい。そのようにして光-電気複合コネクタを回路基板に実装することで、光-電気複合コネクタに光通信モジュールを設けなくても、光-電気複合コネクタを介して、外部の光通信部材と、回路基板上の光通信部材との間で、光信号の送受信を行うことができる。また、光ファイバの固定箇所や、光ファイバを結合する光モジュールの種類を選択することで、同じ光-電気複合コネクタを、多様な用途の光通信に使用することが可能となる。
【0014】
前記電気接続端子は、前記ハウジングの外側に突出した基板接続部にて、前記回路基板に直接電気的に接続されるとよい。すると、光-電気複合コネクタの電気接続部分の構成、また回路基板への接続箇所の構成を、簡素なものとできる。
【0015】
この場合に、前記電気接続端子の前記基板接続部は、はんだ付けによる表面実装、またはスルーホールへの挿入により、前記回路基板に電気的に接続されるとよい。すると、光-電気複合コネクタの電気接続部分の構成が簡素になるとともに、回路基板への電気接続を簡便に形成することができる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態にかかる光-電気複合コネクタについて、図面を用いて詳細に説明する。本明細書において、「円筒形」、「角筒状」、「並列」等、部材の形状や配置を示す語には、幾何的に厳密な概念のみならず、光-電気複合コネクタとして一般に許容される範囲の誤差も含むものとする。
【0017】
<光-電気複合コネクタの概略>
図1および図2に、本開示の一実施形態にかかる光-電気複合コネクタ(以下、単に複合コネクタと称する場合がある)1を、それぞれ後方および前方から見た斜視図にて表示する。図3は、図1においてリテーナ部材20を外した状態を示している。本実施形態にかかる複合コネクタ1は、プリント回路基板(PCB)等の回路基板に取り付けられる基板コネクタとして構成され、相手方コネクタとの間で、光通信のための光接続と、導通のための電気接続を同時に行うものである。
【0018】
本実施形態にかかる複合コネクタ1は、光通信部分として、少なくとも1つの光フェルール40を備えるとともに、電気接続部分として、少なくとも1つの電気接続端子50を備えている。そして、光フェルール40および電気接続端子50を取り付け可能なハウジング10と、ハウジング10に嵌合可能なリテーナ部材20を有している。ハウジング10に電気接続端子50が固定されるとともに、リテーナ部材20によって、ハウジング10に光フェルール40が取り付けられている。
【0019】
ここで、本実施形態にかかる複合コネクタ1の構造を詳細に説明する前に、複合コネクタ1の使用方状態について説明する。図5に、複合コネクタ1の使用状態の一例を、関連部材とともに示している。図5に示すとおり、複合コネクタ1は、ハウジング10にて、回路基板Bに取り付けられる。ハウジング10には、光フェルール40と電気接続端子50が取り付けられている。このうち電気接続端子50は、後端側の基板接続部51にて、回路基板Bに直接電気的に接続される。光フェルール40は、光ファイバFを結合して使用される。光ファイバFは、先端側で光フェルール40に接合されるとともに、後端側で、回路基板Bに取り付けられた光通信モジュールMに結合される。ここで、光通信モジュールMは、光信号を受信または発信して光通信に寄与するモジュールであり、フォトダイオード素子(PD)やレーザーダイオード素子(LD)を例示することができる。
【0020】
複合コネクタ1のハウジング10は、前方に開口した嵌合部12を有し、この嵌合部12に相手方コネクタ9を挿入し、嵌合させることができる。ここで、相手方コネクタ9は、例えば、光-電気複合型のケーブルコネクタであり、光ケーブル93および電線94の先端に結合され、相手方光フェルール91と相手方電気接続端子92を備えている。回路基板Bに固定した本実施形態にかかる複合コネクタ(基板コネクタ)1に、相手方コネクタ9を嵌合させると、双方の光フェルール40,91の先端面が相互に突き合わせられ、光接続が形成される。また、電気接続端子50の端子接続部52と相手方電気接続端子92が相互に嵌合され、電気接続が形成される。このように、複合コネクタ1を介して、光ケーブル93と回路基板B上の光通信モジュールMの間で光信号の経路が形成されるともに、電線94と回路基板B上の電気回路の間に導通が形成される。
【0021】
図示した形態では、複合コネクタ1の光フェルール40に結合された光ファイバFが直接、光通信モジュールMに結合されているが、光ファイバFを、ボンディング等によって、回路基板Bに固定してもよい。そして、回路基板Bに固定した光ファイバFを、適宜、回路基板B上で、あるいは回路基板Bの外に引き出して、他部材との接続等に用いればよい。例えば、光ファイバFを、中途部にて回路基板Bに固定しておき、一端を複合コネクタ1の光フェルール40に結合するとともに、他端を、回路基板Bに実装した光通信モジュールMに結合するように構成すればよい。
【0022】
<光-電気複合コネクタの構造>
次に、本実施形態にかかる光-電気複合コネクタ1の構造について詳細に説明する。
【0023】
本明細書において、複合コネクタ1が回路基板Bに接続される方向を下方として、上下方向(c方向)を規定する。そして、上下方向に直交する、光フェルール40および電気接続端子50の軸方向を前後方向(a方向)とする。光フェルール40および電気接続端子50の端子接続部52の先端側が前方である。さらに、上下方向および前後方向に直交する方向を幅方向(b方向)とする。光フェルール40と電気接続端子50は、幅方向に沿って並列されている。
【0024】
光フェルール40は、公知の光ファイバ用のフェルールより構成されている。光フェルール40は、前方から、先端部41、鍔部42、後端部43を一体に備えている(図4B参照)。先端部41および後端部43は棒状に形成されている。鍔部42は、先端部41および後端部43より大径であり、端部41側から後端部43側に向かって拡径したテーパ形状を有している。光フェルール40には、光ファイバFを結合することができる。ここで、光ファイバFおよび光フェルール40の種類の詳細は、特に限定されるものではないが、高速での通信に適用する観点から、光ファイバFとして、ガラス製光ファイバ(AGF)を用いることが好ましい。一般に広く普及しているAGFは、クラッド径が125μmのものであり、マルチモード型の場合でもコア径が100μm以下と小さい場合が多く、適合する光フェルール40も、先端面の面積が小さくなる。光ファイバFの先端は、光フェルール40の先端面と面一にして、光フェルール40に結合固定される。
【0025】
電気接続端子50は、公知の絶縁電線用の電気接続端子として構成されている。電気接続端子50の種類および形状は特に限定されるものではないが、ここでは、電気接続端子50は、前端側に端子接続部52を備え、後端側に基板接続部51を備えている。端子接続部52は、相手方コネクタ9の電気接続端子92と電気接続可能な接続部であり、例えば、嵌合型のオス型端子の形態を好適に適用することができる。基板接続部51は、回路基板Bに対して電気的に接続可能な接続部であり、図示した形態では、回路基板Bのスルーホールに挿入されるスルーホールピンとして、基板接続部51が構成されている。あるいは、基板接続部51は、はんだ付けによって表面実装される基板接続端子(SMT端子)や、スルーホールに圧入されるプレスフィットピン等として構成されてもよい。図示した形態では、電気接続端子50は、中途部に、折り曲げ部53を有しており、端子接続部52が前方、基板接続部51が下方に向かって延出している。端子接続部52と折り曲げ部53の間の箇所には、段状に幅方向に張り出した突起部54(図4A参照)が設けられている。
【0026】
図示した形態では、複合コネクタ1に、光フェルール40が1つと、電気接続端子50が1対備えられている。しかし、複合コネクタ1に備えられる光フェルール40および電気接続端子50の数は、それぞれ少なくとも1つ以上であれば、特に限定されるものではない。光フェルール40が複数備えられる場合には、それぞれの光フェルール40が独立に光ファイバFに結合される。
【0027】
ハウジング10は、樹脂製のケース部材である。ハウジング10は、前方に相手方コネクタ9を収容可能な空間として嵌合部12を有する、略角筒形状に形成されている。ハウジング10は、後壁面11の位置に、後壁面11と一体に、光フェルール40を取り付けるためのフェルール取り付け部14と、電気接続端子50を取り付けるための端子取り付け部15を有している。
【0028】
電気接続端子50は、端子取り付け部15において、ハウジング10に直接固定されている。図4Aに、端子取り付け部15の箇所の横断面、つまり電気接続端子50の中心を通る上下方向に垂直な断面を拡大して示す。端子取り付け部15には、ハウジング10の後壁面11を貫通する孔として、端子挿通孔151が設けられている。その端子挿通孔151に、電気接続端子50が挿通されており、突起部54の箇所で、端子取り付け部15に保持されている。端子取り付け部15の端子挿通孔151の幅dが、電気接続端子50の幅より小さくなっており、電気接続端子50が端子挿通孔151に圧入されることで、電気接続端子50が端子取り付け部15に固定されている。さらに、突起部54の頂部が端子挿通孔151の壁面に食い込むことで、電気接続端子50の固定が強固になっている。このようにして電気接続端子50を端子取り付け部15に固定すると、電気接続端子50の前方部分は、端子接続部52が、ハウジング10の嵌合部12内で前方へ突出した状態となる。一方、電気接続端子50の後方部分は、ハウジング10の後壁面11の外から後側へ突出し、折り曲げ部53を挟んで、基板接続部51が、下方に向かって突出した状態となる。
【0029】
光フェルール40は、フェルール取り付け部14において、ハウジング10に保持されるが、電気接続端子50とは異なり、ハウジング10に対して直接固定されるものとはならない。図4Bに、フェルール取り付け部14の箇所における複合コネクタ1の横断面、つまり光フェルール40の中心を通る上下方向に垂直な断面を示す。フェルール取り付け部14は、ハウジング10の後壁面11の前方に設けられた筒状部145と、ハウジング後壁面11の後方に設けられた開放部140とを、一体に有している。筒状部145は、ハウジング10の後壁面11から前方へと嵌合部12内に延びる中空円筒状の部位であり、前後両端が開口している。筒状部145の内径は、後に説明する割スリーブ60を圧入可能で、かつ光フェルール40の鍔部42を挿入不能な大きさに設定されている。
【0030】
フェルール取り付け部14の開放部140は、ハウジング後壁面11から後方に延出した底面141と、底面141の幅方向両端に立設された側方面142とを一体に有している。底面141と両側の側方面142に囲まれた収容空間14Sは、筒状部145の中空部と連続している。収容空間14Sの上方、および後方は、壁面によって覆われることなく開放されている。収容空間14Sは、光フェルール40の鍔部42および後端部43を収容可能となっている。側方面142の内側には、前後方向に沿って段差構造が形成されており、収容空間14Sの前方部分が、幅の狭い鍔部収容空間S1となり、収容空間14Sの後方部分が、幅の広い後端部収容空間S2となっている。開放部140の両側の側方面142の外側には、それぞれ係合突起13が形成されている。
【0031】
光フェルール40は、先端部41が割スリーブ60に収容された状態で、フェルール取り付け部14の筒状部145に収容される。割スリーブ60は、軸線方向に沿ってスリットが形成された金属製の筒状の部材であり、内部に挿入された光フェルール40を、弾性力で内側に締め付けて保持することができる。割スリーブ60は、光フェルール40の位置決めを簡便化および高精度化し、さらに相手方コネクタ9の光フェルール91との接続の精度を高める役割を果たす。
【0032】
フェルール取り付け部14においては、光フェルール40の先端部41を挿入した割スリーブ60が、筒状部145に後方から挿入されている。挿入後の状態において、割スリーブ60が筒状部145に圧入され、その割スリーブ60の後方部分に、光フェルール40の先端部41が圧入された状態となっている。光フェルール40の鍔部42および後端部43は、開放部140の収容空間14Sに収容されて、ハウジング後壁面11の後方に突出した状態となる。光フェルール40の鍔部42は、鍔部収容空間S1に収容され、後端部43は、後端部収容空間S2に収容される。なお、割スリーブ60の前方部分には、相手方コネクタ9の光フェルール91が進入可能な空間が残される。
【0033】
このように、光フェルール40を取り付けたハウジング10のフェルール取り付け部14には、リテーナ部材20を嵌合させることができる。リテーナ部材20は、天井部21と、天井部21からそれぞれ下方に垂下した板状部材として、1対の係合部22、および1対の挿入部23を有している。係合部22は、リテーナ部材20の幅方向両端に設けられ、挿入部23は、係合部22よりも幅方向内側に設けられている。
【0034】
リテーナ部材20を、ハウジング10のフェルール取り付け部14の上方に配置し、フェルール取り付け部14の開放部140の上方をリテーナ部材20の天井部21で覆うようにして、上方からリテーナ部材20を取り付けると(図3の矢印A)リテーナ部材20の係合部22が、幅方向外側に押し広げられるように弾性変形されながら、フェルール取り付け部14の側方面142の外側に配置される。リテーナ部材20の係合部22には、板厚を貫通する孔部が設けられており、この孔部にフェルール取り付け部14の側方面142に設けられた係合突起13が嵌まり込み、係合されることで、リテーナ部材20がフェルール取り付け部14に固定される。
【0035】
このようにリテーナ部材20をフェルール取り付け部14に取り付けた状態において、リテーナ部材20の挿入部23は、フェルール取り付け部14の開放部140の収容空間14Sの中に挿入された状態となる。さらに詳しくは、リテーナ部材20の挿入部23は、収容空間14Sのうち、後方の後端部収容空間S2に挿入される。後端部収容空間S2には、既に光フェルール40の後端部43が収容されており、リテーナ部材20の挿入部23は、光フェルール40の後端部43と、フェルール取り付け部14の側方面142の間に生じている空隙に、圧入されることになる。リテーナ部材20の挿入部23の先端側には、幅方向内側に突出した部位として押圧部231が一体に設けられており、光フェルール40の後端部43に、この押圧部231が接触する。挿入部23を狭い空隙に圧入していることにより、挿入部23が弾性変形されており、1対の挿入部23の押圧部231の間には、幅方向内側に向かう力が働く。この力によって、光フェルール40が、後端部43において保持されることになる。また、リテーナ部材20の挿入部23の前端部が、光フェルール40の鍔部42の後端面に当接することで、フェルール40が後方に抜け止めされる。
【0036】
このように、ハウジング10のフェルール取り付け部14に光フェルール40を収容し、フェルール取り付け部14にリテーナ部材20を嵌合させることで、光フェルール40が、ハウジング10とリテーナ部材20の間に挟み込まれる。この挟み込みによって、ハウジング10の所定の位置に光フェルール40が保持される。このように、リテーナ部材20を使用することで、光フェルール40をハウジング10に直接固定しなくても、光フェルール40をハウジング10に取り付けて保持することができる。
【0037】
さらに、ハウジング10には、複合コネクタ1を回路基板Bに物理的に固定するための、複数のピン16が備えられている。ピン16は、それぞれ回路基板Bのスルーホールに挿入可能となっている。ピン16を回路基板Bのスルーホールに挿入して、適宜はんだ付け等によって固定することで、複合コネクタ1を回路基板Bに固定できる。
【0038】
本実施形態にかかる光-電気複合コネクタ1は、以上に説明した構成を有することで、組み立てを行いやすいものとなっている。図5を参照して説明したように、複合コネクタ1に、光通信部材として、光フェルール40が設けられており、その光フェルール40に光ファイバFを結合することで、その光ファイバFを介して、光フェルール40を、回路基板Bに固定することや、回路基板Bに取り付けられた光通信モジュールMに結合することが可能となる。そのため、複合コネクタ1に、光通信モジュールを組み込まなくても、相手方コネクタ9と、回路基板Bに固定した光通信モジュールMの間の光通信を、複合コネクタ1を介して行うことができる。複合コネクタ1内に光通信モジュールを組み込む必要がないことで、複合コネクタ1の構造が簡素となり、コネクタ内部で光通信部材を精密に配置する必要も生じない。そのため、複合コネクタ1の組み立て作業が行いやすくなっている。特に、AGFを用いた通信の中継に用いられるコネクタの内部に、光通信モジュールを組み込むとすれば、AGFが細径であることと対応して、小型の光通信部材をコネクタ内に組み込む必要があるうえ、それら光通信部材の配置にも高い精度が要求されるが、本実施形態にかかる複合コネクタ1の構成を適用することで、組み立て性の向上に、高い効果が得られる。なお、本実施形態にかかる複合コネクタ1において、内部に光通信モジュールを組み込むことを妨げるものではないが、複合コネクタ1の構造および組み立て工程の簡素化の観点から、光通信モジュールは組み込まれない方が好ましい。
【0039】
さらに、本実施形態にかかる複合コネクタ1においては、光フェルール40をハウジング10には固定せず、ハウジング10と、別体のリテーナ部材20との間に挟み込んで、ハウジング10に保持している。ハウジング10において、フェルール40を所定の位置に配置したフェルール取り付け部14に、リテーナ部材20を嵌め込むだけで、光フェルール40を取り付けることができるので、光フェルール40を複合コネクタ1に組み込む作業の簡便性が、高くなっている。AGF用の光フェルールのように、小型の光フェルール40を取り付ける場合にも、取り付け作業の簡便性は、ほぼ変わらない。
【0040】
本複合コネクタ1においては、光フェルール40は、リテーナ部材20を用いてハウジング10に保持されるとともに、光ファイバFを介して、回路基板Bへの固定または光通信モジュールMへの結合が行われるが、電気接続端子50は、ハウジング10に直接固定され、回路基板Bにも直接電気的に接続される。電気接続端子50については、ハウジング10への取り付け機構および回路基板Bへの接続機構をそのように単純なものとしておくことで、複合コネクタ1全体の構成を簡素にすることができる。
【0041】
<その他の形態>
上記のとおり、電気接続端子50の種類や数は特に限定されるものではない。例えば、電気接続端子50として、特定の規格への適合が想定されない一般端子を用いても、イーサネット(登録商標)規格等、所定の規格を満たす端子を用いても、いずれでもよい。一般端子を用いる形態は、低コスト性において優れ、所定の規格を満たす端子を用いる形態は、通信性能等、電気接続部の性能を担保できる点で優れる。
【0042】
電気接続端子50を複数設ける場合に、それらの電気接続端子50を並べる方向も、特に限定されるものではない。上記実施形態では、図示したとおり、1対の電気接続端子50を、光フェルール40とともに、幅方向(b方向)に並べているが(以下、直列配置と称する)、例えば、1対の電気接続端子50を上下方向(c方向)に並べた状態で、光フェルール40と幅方向(b方向)に並べるようにしてもよい(以下、並列配置と称する)。直列配置と並列配置のいずれを採用するかは、複合コネクタ1の用途や電気接続端子50の種類等に応じて選択すればよい。並列配置とする方が、複合コネクタ1全体を小型に設定しやすく、省スペース性の点で優れる。一方、直列配置を採用する方が、通信性能の担保の点では好ましい。図示したような直列配置を採用すれば、1対の電気接続端子50が回路基板Bの面に沿って横に並ぶことになり、相手方コネクタ9の電気接続端子92から回路基板Bまでの電気接続経路、つまり電気接続端子50の端子接続部52の先端から基板接続部51の先端までの距離を、1対の間で等長としやすいからである。並列配置の場合には、1対の電気接続端子50が回路基板Bに対して上下に並ぶことになり、1対の電気接続経路の間に長さの差が生じやすい。特に、電気接続端子50として、イーサネット規格等の通信規格を満たすものを用いる場合には、通信特性の担保の観点から、直列配置を採用するとよい。
【0043】
本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 (光-電気)複合コネクタ
10 ハウジング
11 ハウジング後壁面
12 嵌合部
13 係合突起
14 フェルール取り付け部
140 開放部
141 底面
142 側方面
145 筒状部
14S 収容空間
15 端子取り付け部
151 端子挿通孔
16 ピン
20 リテーナ部材
21 天井部
22 係合部
23 挿入部
231 押圧部
40 光フェルール
41 先端部
42 鍔部
43 後端部
50 電気接続端子
51 基板接続部
52 端子接続部
53 折り曲げ部
54 突起部
60 割スリーブ
9 相手方コネクタ
91 光フェルール
92 電気接続端子
93 光ケーブル
94 電線
a 前後方向
b 幅方向
上下方向
d 端子挿通孔の幅
A リテーナ部材の取り付け方向
B 回路基板
F 光ファイバ
M 光通信モジュール
S1 鍔部収容空間
S2 後端部収容空間
図1
図2
図3
図4
図5