(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】質量分析装置
(51)【国際特許分類】
H01J 49/00 20060101AFI20241217BHJP
H01J 49/42 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01J49/00 090
H01J49/00 310
H01J49/42 150
(21)【出願番号】P 2023566064
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045669
(87)【国際公開番号】W WO2023105793
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 航
(72)【発明者】
【氏名】前田 一真
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-257333(JP,A)
【文献】特表2014-508937(JP,A)
【文献】特表2017-512305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0287896(US,A1)
【文献】国際公開第2020/213283(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00
H01J 49/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成要素として、試料成分をイオン化するイオン源と、イオンを質量電荷比に応じて分離する質量分離器と、分離されたイオンを検出するイオン検出器と、前記イオン源と前記質量分離器との間に配置された一つ以上のイオン輸送光学系と、を有する測定部、を含み、
それら構成要素のうちの複数の構成要素におけるパラメーターの値を最適化するオートチューニングの機能を有する質量分析装置であって、
オートチューニングの実行に先立って、標準試料に対し既定のパラメーター値の下で質量分析を実行するように前記測定部を制御し、その質量分析の結果から、感度、質量分解能、質量精度のうちの少なくとも一つを含む複数のチェック項目に対応する情報を取得するシステムチェック実行部と、
前記システムチェック実行部により得られた前記複数のチェック項目に対応する情報がそれぞれ所定の合否条件を満たすか否かを判定し、不合格であると判定された場合に不合格であるチェック項目からオートチューニングが必要である構成要素を特定するチェック結果判定部と、
前記
チェック結果判定部によ
りオートチューニングが必要であると
特定された
構成要素のパラメーターについて、該パラメーターの値を変更しつつ
標準試料に対する質量分析を実行するように前記測定部を制御しつつ、その質量分析の結果が所定の調整条件を満たすように該パラメーターの値を調整するオートチューニング実行部と、
を備える質量分析装置。
【請求項2】
前記チェック項目は感度を含み、前記オートチューニング実行部は、感度が不合格である場合に、前記イオン輸送光学の系の少なくとも一つに印加する電圧を調整する、請求項
1に記載の質量分析装置。
【請求項3】
前記チェック項目は感度を含み、前記オートチューニング実行部は、感度が不合格である場合に、前記イオン検出器に印加する電圧を調整することでゲインを調整する、請求項
1に記載の質量分析装置。
【請求項4】
前記質量分離器は四重極マスフィルターであり、前記チェック項目はマスピークの半値幅
で示される質量分解能を含み、前記オートチューニング実行部は、半値幅が不合格である場合に、前記四重極マスフィルターに印加するDC電圧とRF電圧の比を調整する、請求項
1に記載の質量分析装置。
【請求項5】
前記質量分離器は四重極マスフィルターであり、前記チェック項目はマス軸ずれ
で示される質量精度を含み、前記オートチューニング実行部は、マス軸ずれが不合格である場合に、前記四重極マスフィルターに印加するRF電圧の大きさを調整する、請求項
1に記載の質量分析装置。
【請求項6】
前記オートチューニングを実施する前と後における質量分析結果、及びそのパラメーター設定値を記録する記録部と、
ユーザーによる操作を受けて、該記録部により記録した情報を表示する又は印刷出力する出力部と、
をさらに備える、請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項7】
ユーザーによる、前記複数のチェック項目についての合否条件である判定閾値の入力を受け付ける情報受付部、をさらに備える、請求項
1に記載の質量分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ(LC)の検出器として用いられる質量分析装置は、液体試料中の成分をイオン化するイオン源と、試料成分由来のイオンを最終的に検出するイオン検出器との間に、質量分離器を含む多数のイオン光学素子を有する。そのため、質量分析装置における質量精度、分解能、感度といった性能は、そうした各種のイオン光学素子やイオン検出器に印加される電圧に依存しており、高い性能を達成するには、それら構成要素に印加する電圧をそれぞれ適切に調整する必要がある。
【0003】
一般的な質量分析装置には、標準試料を質量分析することで得られるマスピークをユーザーが表示画面上で観察しながら、マニュアルで印加電圧等を調整する機能が備えられている。しかしながら、こうしたマニュアルのチューニング作業は煩雑であるのみならず、担当可能な者が限られる。そのため、近年の質量分析装置には、標準試料に対する質量分析を実行することで得られるマスピークの強度やマスずれ等に応じて、複数のイオン光学素子やイオン検出器などに印加する電圧をそれぞれ自動的に調整するオートチューニングの機能が搭載されている(特許文献1、2、非特許文献1等参照)。
【0004】
非特許文献1に記載の質量分析装置では、所定の表示画面内に設けられている「オートチューニング開始」ボタンをユーザーがクリック操作することで、オートチューニングが開始される。また、非特許文献1の記載によれば、オートチューニングは、真空停止を伴う装置内部のメンテナンスを実施した場合、装置の調子が悪い場合、或いは、長期間に亘って装置を停止していた場合などに実施するように、メーカーから推奨されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/116443号
【文献】国際公開第2020/054013号
【非特許文献】
【0006】
【文献】「よくあるご質問(FAQ) (Q)LCMSオートチューニング」、[Online]、[2021年9月28日検索]、株式会社島津製作所、インターネット<URL: https://faq.an.shimadzu.co.jp/faq/show/3177?category_id=82&site_domain=default>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の質量分析装置において実施されるオートチューニングでは、多数の構成要素における印加電圧等のパラメーターが調整されるため、その開始から終了までにかなりの時間を要する。そのオートチューニングの実行中には装置を使用することができないため、オートチューニングを高い頻度で行うと、装置のダウンタイムが長くなって運用効率が低下する。また、オートチューニングの頻度が高いと、調整用の標準試料や各種ガス(ネブライズガスなど)等の消費材の使用量が増え、ランニングコストが高くなる。こうしたことから、無駄なオートチューニング作業はできるだけ避けることが望ましい。
【0008】
上述したように従来の装置では、オートチューニングを実施するか否かの判断やそのタイミングはオペレーターに委ねられており、例えば装置の調子の悪さが同程度であっても、或るオペレーターはオートチューニングを実施する一方、別のオペレーターはオートチューニングを実施せずに装置を使い続けるといったように、オペレーターによって対応が異なるのが実状である。そのため、実際にはオートチューニングが不要である状況でも、オートチューニングを実施してしまうことがしばしばあり、装置の運用効率の低下やランニングコストの増大を生じていることが多かった。また、その逆に、本来であればオートチューニングが必要な装置状態であるにも拘わらず、そのまま装置を使用することで不正確な分析結果を取得してしまう場合もあった。
【0009】
また、上述したようにオートチューニングを実施する際には何らかの理由がある筈であるものの、従来の装置では、オートチューニングを実施したこと自体はログとして記録に残るものの、それを実施した理由は記録として残らない。そのため、装置状態のトレーサビリティーが不完全になるおそれがあった。また、オートチューニングを実施したことの妥当性をあとから検証することが困難であった。
【0010】
さらにまた、上述したような、オートチューニングの実施に関するオペレーターの判断のばらつきを避けるには、オートチューニングの実施基準を厳格に管理する必要があるものの、従来の装置ではこうした実施基準の管理も困難であった。
【0011】
本発明はこうした課題を解決するために成されたものであり、その主たる目的の一つは、必要のない無駄なオートチューニングの実行を避けることで、オートチューニングに要する時間や消費材を節約することができる質量分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析装置の一態様は、試料成分をイオン化するイオン源と、イオンを質量電荷比に応じて分離する質量分離器と、分離されたイオンを検出するイオン検出器と、前記イオン源と前記質量分離器との間に配置された一つ以上のイオン輸送光学系と、を有する測定部、を含み、該測定部に関する複数のパラメーターの値を最適化するオートチューニングの機能を有する質量分析装置であって、
前記複数のパラメーターについてオートチューニングの要否を判定する要否判定部と、
前記要否判定部によりオートチューニングの必要がないと判定されたパラメーターを除き、オートチューニングが必要であると判定されたパラメーターについて、該パラメーターの値を変更しつつ質量分析を実行するように前記測定部を制御しつつ、その質量分析の結果が所定の調整条件を満たすように該パラメーターの値を調整するオートチューニング実行部と
を備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る質量分析装置の上記態様では、複数のパラメーターの全てではなく、要否判定部によりオートチューニングの必要があると判定された構成要素のパラメーター値のみについて、その調整が自動的に実施される。それにより、性能的に問題がなく、実行する必要のない無駄なオートチューニングの実行を避けることができ、オートチューニングに要する時間や消費材を節約することができる。その結果、装置のダウンタイムを減らして装置の効率的な運用が可能となる。また、分析のランニングコストを下げることができる。
【0014】
また、本発明に係る質量分析装置の上記態様では、オペレーターの判断に頼ることなく、装置の性能が低下しているときにオートチュー二ングを実行することができる。従って、オペレーターの作業負荷を軽減することができるとともに、オペレーターの経験や技量などの個人差によってオートチューニングの実施状況に差異が生じる事態を回避することができる。さらにまた、要否判定部における判定基準を数値で管理することで、オートチューニングの実施条件を定量的に的確に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る質量分析装置の一実施形態の概略構成図。
【
図2】本実施形態の質量分析装置におけるオートチューニング動作の概略的な流れを示すフローチャート。
【
図3】本実施形態の質量分析装置におけるオートチューニング動作の具体例を示すフローチャート。
【
図4】本実施形態の質量分析装置におけるシステムチェック項目設定画面の一例を示す図。
【
図5】本実施形態の質量分析装置におけるシステムチェック条件設定画面の一例を示す図。
【
図6】質量分析装置におけるイオンガイド電圧と相対イオン強度との関係の一例を示す図。
【
図7】質量分析装置における検出器電圧と検出器ゲインとの関係の一例を示す図。
【
図8】分解能及びマスずれ調整の際のマスピークの状態の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る質量分析装置の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態であるシングルタイプの四重極型質量分析装置の概略構成図である。
【0017】
図1に示すように、この質量分析装置は、チャンバー1の内部に、略大気圧雰囲気の下で液体試料中の成分(化合物)をイオン化するイオン化室2と、試料成分由来のイオンを質量電荷比(以下「m/z」と記す場合がある)に応じて分離して検出するための、高真空雰囲気に維持される分析室5とを有し、イオン化室2と分析室5との間に、段階的に真空度が高められる、第1中間真空室3及び第2中間真空室4、を備える。第1中間真空室3はロータリーポンプ(図示せず)により真空排気され、第2中間真空室4及び分析室5はロータリーポンプとターボ分子ポンプの組合せ(図示せず)により真空排気される。即ち、この質量分析装置は多段差動排気系の構成となっており、それによって最終段の分析室5が高い真空度に維持され得る。
【0018】
イオン化室2には、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法により試料中の成分をイオン化するイオン化プローブ10が配設されている。イオン化室2と第1中間真空室3とは、所定温度に加熱される脱溶媒管11を通して連通している。本例の構成では、イオン化プローブ10による帯電液滴の噴霧方向と脱溶媒管11によるイオンの吸込み方向とが略直交する位置関係であるが、必ずしも直交していなくてもよい。また、ESI法によるイオン源ではなく、大気圧化学イオン化法、大気圧光イオン化法など他のイオン化法によるイオン源を用いることもできる。
【0019】
第1中間真空室3内には、高周波電場の作用によりイオンを収束しつつ輸送する第1イオンガイド12が配設されている。この第1イオンガイド12は、イオン光軸Cを囲むように4本の仮想ロッド電極が配置された構成であり、1本の仮想ロッド電極はイオン光軸C方向に沿って分割された複数の電極から成る。第1中間真空室3と第2中間真空室4との間は、略円錐状のスキマー13の頂部に形成された微小なイオン通過孔13aを通して連通している。
【0020】
第2中間真空室4内には、高周波電場の作用によりイオンを収束しつつ輸送する第2イオンガイド14が配設されている。この第2イオンガイド14は、イオン光軸Cを囲むように該イオン光軸Cに平行に配置された複数本(例えば8本)のロッド電極から成る。第2中間真空室4と分析室5との間は微小なイオン通過孔15を通して連通している。
【0021】
分析室5内には、質量分離器としての四重極マスフィルター16、及びイオン検出器17が設置されている。四重極マスフィルター16は、メインフィルター161とプレフィルター162とから成り、メインフィルター161はイオン光軸Cに平行に延伸する四本のロッド電極をイオン光軸Cの周りに配置した構成である。また、プレフィルター162は、メインフィルター161を構成するロッド電極よりも短い4本のロッド電極から成る。イオン検出器17は例えば、コンバージョンダイノードと二次電子増倍管とから成るものである。イオン検出器17による検出信号は、データ処理部20に入力される。
【0022】
イオン化プローブ10、脱溶媒管11、第1イオンガイド12、スキマー13、第2イオンガイド14、四重極マスフィルター16のプレフィルター162及びメインフィルター161、イオン検出器17などには、電圧発生部18からそれぞれ、DC電圧、又はDC電圧とRF電圧とが加算された電圧が印加される。但し、図面が煩雑になるのを避けるため、
図1では、一部の電圧供給線のみを描いている。具体的な印加電圧の一例を挙げると、第1イオンガイド12と第2イオンガイド14には、イオンを収束させるRF電場を形成するためのRF電圧にDCバイアス電圧を加算した電圧がそれぞれ印加される。四重極マスフィルター16のメインフィルター161には、イオンをm/zに応じて分離する四重極電場を形成するためのRF電圧とDC電圧に、さらにDCバイアス電圧を加算した電圧が印加される。また、四重極マスフィルター16のプレフィルター162には、メインフィルター161に印加されるRF電圧にDCバイアス電圧を加算した電圧が印加される。
【0023】
電圧発生部18は、制御部30により制御される。制御部30は機能ブロックとして、分析制御部31、システムチェック制御部32、チェック結果判定部33、オートチューニング制御部34、チューニング情報記憶部35、レポート作成部36、及びチューニング条件設定受付部37、を含む。また、制御部30には、ユーザーインターフェイスとしての入力部40及び表示部41が接続されている。
【0024】
一般に、データ処理部20及び制御部30は、CPU、メモリーなどを含んで構成されるパーソナルコンピューター又はより高性能であるワークステーションと呼ばれるコンピューターをハードウェアとし、該コンピューターに予めインストールされた専用の処理・制御ソフトウェア(コンピュータープログラム)を該コンピューター上で実行することによって、その機能の少なくとも一部が実現される。その場合、入力部40はコンピューターに付設されたキーボードやマウス等のポインティングデバイスであり、表示部41はコンピューターに付設されたディスプレイモニターである。
【0025】
上記コンピュータープログラムは、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、メモリーカード、USBメモリー(ドングル)などの、コンピューター読み取り可能である非一時的な記録媒体に格納されてユーザーに提供されるものとすることができる。また、上記プログラムは、インターネットなどの通信回線を介したデータ転送の形式で、ユーザーに提供されるようにすることもできる。さらにまた、上記プログラムは、ユーザーがシステムを購入する時点で、予めシステムの一部であるコンピューター(厳密にはコンピューターの一部である記憶装置)にプリインストールしておくこともできる。
【0026】
本実施形態の質量分析装置において、分析制御部31による制御の下で実施される通常の質量分析動作を簡単に説明する。
【0027】
通常の分析時には、図示しない液体クロマトグラフ(LC)のカラムから溶出した液体試料がイオン化プローブ10に導入されると、イオン化プローブ10の先端において液体試料に電荷が付与され、該液体試料は微小な帯電液滴としてイオン化室2内に噴霧される。噴霧された帯電液滴中の溶媒が気化し該帯電液滴が微細化される過程で、液滴中の試料成分はイオン化する。イオン化室2内で生成されたイオンは、微細な帯電液滴と共に、脱溶媒管11の両端の間の圧力差によって形成されるガス流に乗って脱溶媒管11中に吸い込まれる。微細な帯電液滴が脱溶媒管11中を通過する間にも溶媒の蒸発は促進され、イオンの生成が進行する。
【0028】
第1中間真空室3に入射したイオンは第1イオンガイド12により形成されているRF電場により捕捉されつつ進行し、イオン通過孔13aを経て第2中間真空室4へと送られる。第2中間真空室4へ入射したイオンは第2イオンガイド14により形成されているRF電場により収束されつつ進行し、イオン通過孔15を通過して分析室5へと送られる。
【0029】
分析室5においてイオンは、プレフィルター162を経てメインフィルター161へと導入される。メインフィルター161の各ロッド電極には、DC電圧にRF電圧を重畳した電圧が印加されており、その電圧に応じた特定のm/zを有するイオンのみがメインフィルター161を通り抜けてイオン検出器17に到達する。イオン検出器17は到達したイオンの量に応じたイオン強度信号を生成し、この信号をデータ処理部20へと送る。メインフィルター161の各ロッド電極に印加するDC電圧とRF電圧とを所定の関係を保ちつつ変化させることで、メインフィルター161を通り抜け得るイオンのm/zが変化する。これにより、例えば所定のm/z範囲に亘る走査を行い、データ処理部20では、そのm/z範囲に亘るイオン強度信号の変化を示すマススペクトルを作成することができる。
【0030】
次に、本実施形態の質量分析装置において実行される特徴的なオートチューニングの動作について説明する。
図2は、オートチューニング動作の概略的な流れを示すフローチャートである。
図3は、オートチューニング動作の具体例を示すフローチャートである。
ユーザー(オペレーター又は装置管理者)は事前に、以下のように、システムチェックのチェック結果を利用したオートチューニング実施条件を設定する(ステップS1)。
【0031】
図4はシステムチェック項目設定画面50の一例を示す図である。
図5はシステムチェック条件設定画面60の一例を示す図である。
ユーザーが入力部40で所定の操作を行うと、チューニング条件設定受付部37は、
図4に例示するようなシステムチェック項目設定画面50を表示部41に表示する。本例では、システムチェック項目設定画面50には、最終状態表示領域51と、条件設定領域52とが配置され、条件設定領域52には、チェック対象選択領域53、チェック項目選択領域54、及びオートチューニング実施条件選択領域55のほか、「実行」ボタン56、「詳細」ボタン57を含む複数の指示ボタンが配置されている。
【0032】
最終状態表示領域51には、過去の直近に実施されたシステムチェックの実行日時とそのチェック結果とが表示される。
【0033】
チェック対象選択領域53には、消耗品チェック、MSチェック、詳細レポートの三つの対象が選択可能(重複選択可)に設けられている。後述するように質量分析に関するシステムチェックを実施したい場合には、オペレーターは入力部40により、
図4に示すように、「MSチェック」に対応するチェックボックスにチェックマークを入れる。また、システムチェックに関する詳細なレポートを確認したい場合、オペレーターは、「詳細レポート」に対応するチェックボックスにもチェックマークを入れる。なお、「消耗品チェック」のチェックボックスにチェックマークを入れることにより、質量分析において使用されるネブライズガス用の不活性ガス等の消耗材の残量をチェックすることができる。
【0034】
チェック項目選択領域54には、システムチェック可能であるチェック項目が選択可能(重複選択可)に設けられている。ここでは、五つのチェック項目のうち、「マス軸ずれ」、「半値幅」、及び「強度」の三つがオートチューニングの実施の要否に関連するチェック項目である。ここでいう、マス軸ずれは質量精度を意味し、半値幅はマスピークの半値幅であって分解能を意味し、強度はイオン強度であって感度を意味する。
【0035】
オートチューニング実施条件選択領域55には、オートチューニングの実施に関する条件が三択で設けられており、システムチェックの結果に応じてオートチューニングを実施したい場合、オペレーターは、
図4に示すように、「マス軸ずれ、半値幅、強度のいずれかが不合格のときに実行する」(以下単に「不合格のときに実行する」と略して記す)を選択する。また、システムチェックの結果に拘わらず、システムチェック実行後にオートチューニングを実施したい場合であれば、オペレーターは「必ず実行する」を選択する。さらに、オートチューニングを実施せずシステムチェックのみを実行したい場合であれば、オペレーターは「実行しない」を選択する。
【0036】
「実行」ボタン56はシステムチェックの実行を指示するためのボタンである。また、「詳細」ボタン57は、システムチェックのチェック項目毎に合否の基準を設定する画面に移行するためのボタンである。オートチューニング実施条件選択領域55において「不合格のときに実行する」が選択されている状態で「詳細」ボタン57がクリック操作されると、これを受けてチューニング条件設定受付部37は、
図5に例示するシステムチェック条件設定画面60を表示する。
【0037】
システムチェック条件設定画面60には、「マス軸ずれ」、「半値幅」、「強度」のそれぞれのチェック項目について、合格と判断するための基準値を入力するテキストボックスが配置された合否基準入力領域61が設けられている。これら基準値としてはそれぞれデフォルト値が決められており、下方に配置されている「初期化」ボタン62がクリック操作されると、合否基準入力領域61内の各テキストボックス中の数値はデフォルト値に変更される。一方、「OK」ボタン63がクリック操作されると、これを受けてチューニング条件設定受付部37は、その時点で各テキストボックスに入力されている数値を基準値として確定し、チェック結果判定部33に送る。
【0038】
例えばオペレーターが、システムチェック項目設定画面50及びシステムチェック条件設定画面60においてそれぞれ
図4及び
図5に示すように設定したうえで、システムチェック項目設定画面50中の「実行」ボタン56をクリック操作すると、チューニング条件設定受付部37はシステムチェック制御部32にシステムチェック実行を指示する。これに応じてシステムチェック制御部32は、以下のようにシステムチェックを実行する(ステップS2)。
【0039】
具体的には、システムチェック制御部32は、LCからの溶出液の代わりに、図示しない標準試料供給部からイオン化プローブ10に標準試料(試料成分はポリエチレングリコール:PEGやポリプロピレングリコール:PPGなど)を供給させ、既定の測定条件の下で、所定のm/z範囲に亘るスキャン測定を実施するように各部を動作させる。データ処理部20は、そのスキャン測定により得られたイオン強度信号に基いて、試料成分に対応するマスピークが観測されるマススペクトルを作成する。ここで、既定の測定条件とは、過去にオートチューニングが実施されていれば、そのオートチューニングの結果に基くパラメーター値であるものとすることができる。
【0040】
チェック結果判定部33は、作成されたマススペクトルを受け取り、所定の複数のm/z付近に観測されるマスピークの強度、マス軸ずれ、半値幅がそれぞれシステムチェック条件設定画面60で設定された基準値を満たしているか否かを判定することにより、不合格のチェック項目があるか否かをチェックする(ステップS3)。そして、全てのチェック項目において基準値を満たしていれば(ステップS3でNo)、オートチューニングの必要はないので処理を終了する。なお、処理を終了する際には、システムチェックで問題がないことを示す表示を表示部41に出力するようにしてもよい。
【0041】
一方、一つでも不合格のチェック項目がある場合、ステップS3からステップS4へと進み、オートチューニング制御部34は、合格であるチェック項目に対応付けられている構成要素をオートチューニングの対象から除外し、不合格であるチェック項目に対応付けられている構成要素についてのオートチューニングを実施する。本例では例えば、
図3に示す手順でオートチューニングを実施する。チェック項目とオートチューニング対象の構成要素におけるパラメーターは予め対応付けられている。
【0042】
まず、チェック項目の一つである「強度」が不合格である場合(ステップS10でNo)、オートチューニング制御部34は、まず、第1イオンガイド12及び第2イオンガイド14への印加電圧をそれぞれ最適化する(ステップS11)。これは、イオン強度が低い場合には、第1イオンガイド12及び/又は第2イオンガイド14でのイオン通過率が低く、四重極マスフィルター16に十分な量のイオンが供給されていないことが多いためである。
【0043】
このとき、オートチューニング制御部34は、チューニング対象である第1イオンガイド12又は第2イオンガイド14以外の構成要素に印加する電圧の値を規定の電圧に設定するように電圧発生部18を制御する。そして、電圧発生部18により、第1イオンガイド12又は第2イオンガイド14に印加する電圧(DC電圧)の値をそれぞれ所定のステップ幅で所定の電圧範囲に亘って順次変化させながら、各電圧値において標準試料に対する質量分析を実施するように各部を制御する。それにより、データ処理部20では、それぞれ異なるイオンガイド電圧において、標準試料に含まれる成分に対するイオン強度が求まる。このイオン強度は、複数の特定のm/z値におけるイオン強度である。
【0044】
図6は、イオンガイド電圧と相対イオン強度との関係の一例を示す図である。装置毎に或る程度のばらつきはあるものの、イオンガイド電圧を変化させるとイオン強度は山形状を示すように変動し、その変動はm/zに依存する。そこで、オートチューニング制御部34は、イオンガイド電圧を複数段階に変化させることで得られたイオン強度データから、m/z値毎に、イオン強度が最大又はそれに近くなるイオンガイド電圧を探索する。そうして求まったm/z値毎のイオンガイド電圧を、イオンガイド電圧の最適パラメーター値としてチューニング情報記憶部35に保存する。同様のチューニングを、第1イオンガイド12と第2イオンガイド14のそれぞれについて実施すればよい。
【0045】
次に、オートチューニング制御部34は、イオンガイド電圧を上述した最適パラメーター値に設定した状態で、イオン検出器17のゲインが所定値になるようにイオン検出器17に印加する電圧(検出器電圧)を調整する(ステップS12)。
図7は、検出器電圧と検出器ゲインとの関係の一例を示す図である。このように検出器ゲインを適切に定めることによって、実際の分析の際に成分の量が多かった場合であってもイオン検出器17の出力の飽和を軽減することができる。
【0046】
続いて、チェック項目の一つである「半値幅」つまりは分解能が不合格である場合(ステップS13でNo)、オートチューニング制御部34は、四重極マスフィルター16のメインフィルター161に印加するDC電圧(電圧値)とRF電圧(振幅値)との比を調整する(ステップS14)。具体的には、標準試料を質量分析したときの複数のm/z値毎に、
図8に示すようなマスピーク71を求める。このマスピークのピーク幅が分解能に対応するから、ピーク幅が所定の目標値(例えば0.7u)になるようにDC電圧とRF電圧との比を調整する。そうして求まったm/z値毎のDC電圧とRF電圧との比を、最適パラメーター値としてチューニング情報記憶部35に保存する。DC電圧とRF電圧との比を調整すると半値幅のみならずマス軸も変化するため、ステップS14の終了後は後述するステップS16へと進む。
【0047】
ステップS13で「半値幅」が合格であったとしても、チェック項目の一つである「マス軸ずれ」つまりは質量精度が不合格である場合には(ステップS15でNo)、オートチューニング制御部34は、四重極マスフィルター16のメインフィルター161に印加するDC電圧とRF電圧との比を保ちつつ、DC電圧の大きさを調整する(ステップS16)。具体的には、異なるm/z毎に、
図8に示すようなマスピーク71において、そのマスピーク71から求まるセントロイドピークを示すm/zマーカー72が画面70中央のm/z理論値73の位置に来るように、DC電圧の値を調整する。そうして求まったm/z毎のDC電圧値を、最適パラメーター値としてチューニング情報記憶部35に保存する。
【0048】
以上のようにして、オートチューニング制御部34は、強度(感度)、半値幅(分解能)、マス軸ずれ(質量精度)という三つのチェック項目のいずれかが不合格である場合に、不合格であるチェック項目に主として影響を及ぼす構成要素についてのチューニングを自動的に実施し、最適なパラメーター値をチューニング情報記憶部35に保存することができる。逆に、それら三つのチェック項目のいずれかが合格である場合には、その合格であるチェック項目に対応する上記構成要素についてのチューニングは実施されない(但し、上記例では、半値幅が不合格である場合には、その半値幅に対応するパラメーターのチューニング後にマス軸ずれに対応するパラメーターもチューニングされる)。
【0049】
オートチューニングの終了後、システムチェック制御部32はチューニング情報記憶部35に保存された最適なパラメーター値を用いて、ステップ2と同様のシステムチェックを再度実行し、その質量分析結果を保存する(ステップS5)。上述したようにチェック対象選択領域53において「詳細レポート」の作成が選択されている場合、レポート作成部36は、オートチューニング実行前のシステムチェック時において取得されたマススペクトルと、オートチューニング実行後のシステムチェック時において取得されたマススペクトル、及びそれら実行時のパラメーター値などを含む詳細レポートを作成し、該詳細レポートを所定の記憶部に保存するとともに、表示部41に表示する(ステップS6)。
【0050】
こうした詳細レポートを保存しておくことにより、オートチューニング実行前後の装置状態を容易に確認することができ、例えばオートチューニングが適切に実施されたか否かをあとから検証することができる。また、装置がどのような状態であるときにオートチューニングが実施されたのかを確認することができ、そこから、オートチューニングが実施された理由(どのシステム項目がどのような数値で不合格になったのか)を把握することができる。
【0051】
なお、上記実施形態の質量分析装置についての説明では、強度(感度)、分解能、質量精度という3種類の性能に最も影響を与える構成要素についてのパラメーター値のみをオートチューニングにより調整していたが、同様に性能に影響を及ぼす他の構成要素についてのパラメーター値も併せて調整するようにしてもよい。例えば、強度が低い場合には、イオン源でのイオン化が適切に行われていないことも多いため、イオン化プローブ10に印加する電圧を調整することも考えられる。また、強度、半値幅、マス軸ずれという三つのチェック項目以外の項目をシステムチェックの判定に加えるようにしてもよい。
【0052】
また、上記説明では、イオン光学素子等に印加する電圧のみをオートチューニングの対象としていたが、温度やガス流量など、電圧以外の要素をオートチューニングの対象としてもよい。
【0053】
また、上記実施形態の質量分析装置はシングルタイプの四重極型質量分析装置であるが、トリプル四重極型質量分析装置や四重極-飛行時間型(Q-TOF型)質量分析装置等にも本発明を適用できることは当然である。また、LCに接続することを前提とした質量分析装置ではなく、ガスクロマトグラフに接続することを前提とした、試料ガス中の成分をイオン化して質量分析を行う質量分析装置に対しても本発明を適用可能であることは当然である。質量分析装置の構成の相違によって、オートチューニングの対象である構成要素が変わり得ることも当然である。
【0054】
また、上記実施形態及び上述した変形例も本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜に変形、追加、修正を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【0055】
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0056】
(第1項)本発明に係る質量分析装置の一態様は、試料成分をイオン化するイオン源と、イオンを質量電荷比に応じて分離する質量分離器と、分離されたイオンを検出するイオン検出器と、前記イオン源と前記質量分離器との間に配置された一つ以上のイオン輸送光学系と、を有する測定部、を含み、該測定部に関する複数のパラメーターの値を最適化するオートチューニングの機能を有する質量分析装置であって、
前記複数のパラメーターについてオートチューニングの要否を判定する要否判定部と、
前記要否判定部によりオートチューニングの必要がないと判定されたパラメーターを除き、オートチューニングが必要であると判定されたパラメーターについて、該パラメーターの値を変更しつつ質量分析を実行するように前記測定部を制御しつつ、その質量分析の結果が所定の調整条件を満たすように該パラメーターの値を調整するオートチューニング実行部と、
を備えるものである。
【0057】
第1項に記載の質量分析装置において、パラメーターは典型的には印加電圧であるが、ガス流量、ガス圧、温度などであってもよい。
【0058】
第1項に記載の質量分析装置では、複数のパラメーターの全てではなく、要否判定部によりオートチューニングの必要があると判定された構成要素のパラメーター値のみについて、その調整が自動的に実施される。それにより、性能的に問題がなく、実行する必要のない無駄なオートチューニングの実行を避けることができ、オートチューニングに要する時間や消費材を節約することができる。その結果、装置のダウンタイムを減らして装置の効率的な運用が可能となる。また、分析のランニングコストを下げることができる。
【0059】
また、第1項に記載の質量分析装置では、オペレーターの判断に頼ることなく、装置の性能が低下しているときにオートチュー二ングを実行することができる。従って、オペレーターの作業負荷を軽減することができるとともに、オペレーターの経験や技量などの個人差によってオートチューニングの実施状況に差異が生じる事態を回避することができる。さらにまた、要否判定部における判定基準を数値で管理することで、オートチューニングの実施条件を定量的に的確に管理することができる。
【0060】
(第2項)第1項に記載の質量分析装置において、 前記要否判定部は、
所定の試料について既定のパラメーター値の下で質量分析を実行するように前記測定部を制御し、複数のチェック項目に対応する質量分析結果を取得するシステムチェック実行部と、
前記システムチェック実行部による質量分析結果が前記複数のチェック項目についてそれぞれ所定の合否条件を満たすか否かを判定するチェック結果判定部と、
を含むものとすることができる。
【0061】
第2項に記載の質量分析装置において、システムチェック実行部は、例えば装置の立ち上げ(起動)時や所定の時間経過毎に(つまりは定期的に)、さらにはユーザーによる指示に応じて、決められたチェック項目についてのシステムチェックを実施するものとすることができる。第2項に記載の分析装置によれば、こうしたシステムチェックの結果を利用し、必要なときに必要な構成要素のパラメーターのみについて適切なチューニングを実施することができる。システムチェック自体に掛かる時間はオートチューニングに比べて十分に短く、無駄なチューニングを行うことなく、良好な装置状態で分析を実施することができる。
【0062】
(第3項)第1項又は第2項に記載の質量分析装置において、前記チェック項目は、感度、マス軸ずれ、マスピークの半値幅のうちの少なくとも一つを含むものとすることができる。
【0063】
好ましくは、感度、マス軸ずれ、及び半値幅の全てをチェック項目に含むものとするとよい。第3項に記載の質量分析装置によれば、質量分析における重要な性能に関係する装置のパラメーターを適切に設定し、十分な性能を確保することができる。
【0064】
(第4項)第1項~第3項のいずれか1項に記載の質量分析装置において、前記チェック項目は感度を含み、前記オートチューニング実行部は、感度が不合格である場合に、前記イオン輸送光学系の少なくとも一つに印加する電圧を調整するものとすることができる。
【0065】
ここでいうイオン輸送光学系は例えばイオンガイド(イオンファンネルを含む)、イオンレンズ、イオンデフレクターなどである。イオン源と質量分離器との間に配置されるイオン輸送光学系は、イオン源で生成された試料成分由来のイオンを質量分離器まで輸送する重要な役割を担っており、その輸送上でイオンの損失が大きいと感度の低下に繋がる。第4項に記載の質量分析装置によれば、このイオン輸送光学系に印加される電圧が適切に調整されるので、高い感度を達成することができる。
【0066】
(第5項)第1項~第4項のいずれか1項に記載の質量分析装置において、前記チェック項目は感度を含み、前記オートチューニング実行部は、感度が不合格である場合に、前記イオン検出器に印加する電圧を調整することでゲインを調整するものとすることができる。
【0067】
一般に、イオン検出器に印加する電圧を高くすると検出器のゲインは増加するものの、ゲインを高くしすぎると、イオン検出器に入射するイオンの量が多いときに出力が飽和してしまう可能性が高くなる。これに対し、第5項に記載の質量分析装置によれば、検出器のゲインが適切に調整されるため、イオン検出器に入射するイオンの量が多いときでも出力の飽和を回避することができる。
【0068】
(第6項)第1項~第5項のいずれか1項に記載の質量分析装置において、前記質量分離器は四重極マスフィルターであり、前記チェック項目はマスピークの半値幅を含み、前記オートチューニング実行部は、半値幅が不合格である場合に、前記四重極マスフィルターに印加するDC電圧とRF電圧の比を調整するものとすることができる。
【0069】
(第7項)また、第1項~第6項のいずれか1項に記載の質量分析装置において、前記質量分離器は四重極マスフィルターであり、前記チェック項目はマス軸ずれを含み、前記オートチューニング実行部は、マス軸ずれが不合格である場合に、前記四重極マスフィルターに印加するRF電圧の大きさを調整するものとすることができる。
【0070】
第6項及び/又は第7項に記載の質量分析装置によれば、質量分析における重要な性能である分解能及び/又は質量精度に関係する装置のパラメーターを適切に設定し、十分な性能を確保することができる。
【0071】
(第8項)第1項~第7項のいずれか1項に記載の質量分析装置は、
前記オートチューニングを実施する前と後における質量分析結果、及びそのパラメーター設定値を記録する記録部と、
ユーザーによる操作を受けて、該記録部により記録した情報を表示する又は印刷出力する出力部と、
をさらに備えるものとすることができる。
【0072】
第8項に記載の質量分析装置によれば、オートチューニングの実施前後の装置状態が記録として残るので、後日、オートチュー二ングの実施が妥当であったか否か等の検証を行うことができる。
【0073】
(第9項)第1項~第8項のいずれか1項に記載の質量分析装置は、ユーザーによる、前記複数のチェック項目についての合否条件である判定閾値の入力を受け付ける情報受付部、をさらに備えるものとすることができる。
【0074】
第9項に記載の質量分析装置によれば、ユーザー自身がシステムチェックの結果に基くオートチューニングの実施基準を策定し管理することができる。
【符号の説明】
【0075】
1…チャンバー
2…イオン化室
3…第1中間真空室
4…第2中間真空室
5…分析室
10…イオン化プローブ
11…脱溶媒管
12…第1イオンガイド
13…スキマー
13a…イオン通過孔
14…第2イオンガイド
15…イオン通過孔
16…四重極マスフィルター
161…メインフィルター
162…プレフィルター
17…イオン検出器
18…電圧発生部
20…データ処理部
30…制御部
31…分析制御部
32…システムチェック制御部
33…チェック結果判定部
34…オートチューニング制御部
35…チューニング情報記憶部
36…レポート作成部
37…チューニング条件設定受付部
40…入力部
41…表示部
C…イオン光軸