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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ネブライザ
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/08 20060101AFI20241217BHJP
   A61M 15/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
A61M15/08
A61M15/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023576951
(86)(22)【出願日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2023002299
(87)【国際公開番号】W WO2023145779
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2022010230
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】池田 美樹
(72)【発明者】
【氏名】新 耕華
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0054099(US,A1)
【文献】国際公開第2015/129478(WO,A1)
【文献】特開2013-132473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/08
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を区画する内壁を有するケースと、
前記内部空間に位置しており、前記内部空間に貯留された液体を霧化するノズルと、
を備えており、
前記ケースは、外部と連通する吐出口を有し、
前記ノズルは、圧送された気体を供給可能なガス孔と、前記ガス孔に近接し前記液体を前記内部空間へ供給可能な液孔を一端の開口とするとともに前記液孔へと供給する液体を吸入する吸水口を他端の開口とする液体供給経路と、を有しており、
前記ガス孔が指向する方向と平行であって前記ガス孔を通る仮想の直線軸を第1基準軸としたとき、前記吐出口の開口面を平面視したときの幾何中心である開口中心は、前記第1基準軸に対してずれており、
前記第1基準軸に沿う方向を向いて視たときに前記ガス孔から前記開口中心に向かう方向を特定方向としたとき、前記吸水口のすべての範囲は、前記ガス孔を基準として前記特定方向の側に位置しており、
前記ケースは、前記第1基準軸に交差する方向に延びる抑止壁を有しており、
前記第1基準軸に沿う方向のうち、前記ガス孔が指向する方向とは反対方向を下方向としたとき、
前記抑止壁は、前記吐出口を基準として前記下方向の側に位置しており、且つ、前記第1基準軸に沿う方向を向いて視たときに、前記ガス孔を基準として前記特定方向の側に位置している
ネブライザ。
【請求項2】
前記抑止壁は、前記ケースの内壁から突出しており、
前記抑止壁の先端は、前記抑止壁の基端よりも前記下方向の側に位置している
請求項1に記載のネブライザ。
【請求項3】
前記内部空間のうち前記吐出口を基準として前記下方向の側に位置する凹部は、前記吐出口を基準として前記ガス孔が指向する方向の側に位置する箇所よりも前記特定方向に膨らんでおり、
前記抑止壁は、前記ケースの内壁のうち前記凹部を区画する内壁の一部となっている
請求項1に記載のネブライザ。
【請求項4】
記ケースは、第1底面と、前記第1底面に対して前記下方向に窪んでいる第2底面と、を有しており、
前記吸水口は、前記第2底面によって区画される窪みの内部に位置している
請求項1に記載のネブライザ。
【請求項5】
前記気体を圧送可能な圧電ポンプをさらに備える
請求項1に記載のネブライザ。
【請求項6】
前記ケースは、前記ノズルを収容するケース本体と、第1端が前記ケース本体に繋がっており、第2端が前記吐出口である管状の配管と、を有しており、
前記ガス孔が指向する方向を上方向とし、前記上方向に直交する仮想平面を仮想したとき、
前記配管の延びる向きは、前記仮想平面に対して平行、又は前記吐出口側に向かうほど前記上方向に位置するように前記上方向に対して傾斜している
請求項1に記載のネブライザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ネブライザに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ネブライザが記載されている。ネブライザは、内部空間を有するケースと、液体を霧化するノズルと、を備えている。ケースは、霧化した液体を当該ケースの外部へと導くための開口を有している。ノズルは、ケースの内部空間内に位置している。ノズルは、ガス孔と、液孔と、液体供給経路と、を有している。ガス孔は、圧送された気体を噴出するための孔である。液孔は、液体を噴霧するための孔である。液体供給経路は、ノズルの内部に位置している。液体供給経路は、液孔から内部空間の底側へと延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-229709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたようなネブライザは、ガス孔が指向する方向と、重力方向とは反対方向とが一致する姿勢で使用されることが想定されている。その一方で、ガス孔が指向する方向が重力方向に沿う軸に対して傾くような姿勢で、ネブライザが使用されることもある。この場合、ケースの内部空間に貯留された液体が、液体供給経路に供給されにくくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、内部空間を区画する内壁を有するケースと、前記内部空間に位置しており、前記内部空間に貯留された液体を霧化するノズルと、を備えており、前記ケースは、外部と連通する吐出口を有し、前記ノズルは、圧送された気体を供給可能なガス孔と、前記ガス孔に近接し前記液体を前記内部空間へ供給可能な液孔を一端の開口とするとともに前記液孔へと供給する液体を吸入する吸水口を他端の開口とする液体供給経路と、を有しており、前記ガス孔が指向する方向と平行であって前記ガス孔を通る仮想の直線軸を第1基準軸としたとき、前記吐出口の開口面を平面視したときの幾何中心である開口中心は、前記第1基準軸に対してずれており、前記第1基準軸に沿う方向を向いて視たときに前記ガス孔から前記開口中心に向かう方向を特定方向としたとき、前記吸水口のすべての範囲は、前記ガス孔を基準として前記特定方向の側に位置しているネブライザである。
【0006】
上記構成では、使用者は、吐出口が水平面に対して重力方向側を指向するように、ネブライザを傾けて使用することがあり得る。この場合、ケースの内部空間に貯留されている液体は、吐出口側に偏って貯留される。上記構成によれば、吸水口は、開口中心と同じ側に位置している。そのため、ネブライザ全体が傾いて、内部空間に貯留されている液体の位置が偏っても、吸水口は液体中に没していやすい。よって、液体供給経路に、内部空間に貯留された液体が供給されにくくなることを抑制できる。
【発明の効果】
【0007】
内部空間に貯留された液体が液孔まで供給されにくくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態のネブライザを示す斜視図である。
図2図2は、同実施形態のネブライザを示す分解斜視図である。
図3図3は、同実施形態のノズル及びタンクを示す斜視図である。
図4図4は、同実施形態のネブライザの断面図である。
図5図5は、同実施形態のネブライザの透過上面図である。
図6図6は、変更例のネブライザの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<一実施形態>
以下、ネブライザの一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図面中のものと異なる場合がある。
【0010】
(全体構成について)
図1に示すように、ネブライザ10は、ポンプケース20と、ケース30と、を備えている。ポンプケース20から圧送される気体は、ケース30の内部空間Sに供給される。
【0011】
図2に示すように、ネブライザ10は、ポンプ21と、チューブ22と、を備えている。ポンプ21は、ポンプケース20の内部に位置している。ポンプ21は、いわゆる圧電ポンプである。ポンプ21は、圧電素子とダイヤフラムとを有している。圧電素子は、圧電セラミックスである。そして、ポンプ21は、圧電素子の振動によりダイヤフラムが繰り返し撓むことで空気を圧送できる。つまり、圧電ポンプであるポンプ21は、気体を圧送可能である。
【0012】
チューブ22は、ポンプ21に接続している。ポンプ21から圧送される空気は、チューブ22の内部を流通する。
ポンプケース20は、連結パイプ23を有している。連結パイプ23は、円筒状である。連結パイプ23は、チューブ22と繋がっている。そのため、ポンプ21から圧送される空気は、ポンプケース20の連結パイプ23から流れ出る。
【0013】
図4に示すように、ケース30は、内部空間Sを区画する内壁31を有している。また、ケース30は、内部空間Sで霧化された液体をケース30の外部へと導くための吐出口71を有している。吐出口71は、ケース30の外部と連通している。ケース30の詳細については、後述する。
【0014】
図2に示すように、ネブライザ10は、ノズル80を備えている。図4に示すように、ノズル80は、ケース30の内部空間Sに位置している。ノズル80は、内部空間Sに貯留された液体を霧化する。
【0015】
(ノズルについて)
図3に示すように、ノズル80は、内部空間Sと連結パイプ23の内部とを繋げるガス供給経路RGを有している。ガス供給経路RGは、連結パイプ23を介してポンプ21から圧送される気体を内部空間Sへとの流すための空間である。ノズル80は、ガス供給経路RGの内部空間S側の端であるガス孔GHを有している。ガス孔GHは、圧送された気体を内部空間Sへと供給可能な孔である。
【0016】
ここで、ガス孔GHが指向する方向を上方向UDとする。また、上方向UDとは反対方向を下方向DDとする。さらに、図4に示すように、上方向UDと平行であってガス孔GHを通る仮想の直線軸を第1基準軸AX1とする。なお、ガス孔GHが指向する方向とは、以下のように定められる方向である。まず、ガス孔GHの外縁で囲まれる範囲の見かけの面積が最大になる視点を特定する。次に、ガス孔GHの外縁の面積が最大になる視点からガス孔GHの外縁を視たときに、ガス孔GHの外縁の幾何中心を特定する。そして、当該幾何中心からガス孔GHの外縁の面積が最大になる視点に向かう方向を、ガス孔GHが指向する方向とする。
【0017】
図3に示すように、ノズル80は、内部空間Sに貯留された液体をガス孔GHの近傍に供給する液体供給経路RLを有している。ノズル80は、液体供給経路RLの下方向DD側の開口である吸水口IHを有している。ノズル80は、液体供給経路RLの上方向UD側の開口である液孔LHを有している。すなわち、液体供給経路RLの一端の開口が、液孔LHとなっている。また、液体供給経路RLの他端の開口が、吸水口IHとなっている。吸水口IHは、液孔LHへと供給する液体を吸入する開口である。つまり、液体供給経路RLは、液体を噴出する液孔LHから内部空間Sの底側へと延びている。液孔LHは、ガス孔GHに近接している。そのため、液孔LHから吐出された液体は、ガス孔GHに向かって供給される。なお、ガス孔GHから供給されるガスの流れにより、液孔LHから液体が供給される状態を、ガス孔GHと液孔LHとが近接している状態とする。
【0018】
ノズル80は、第1部分81と、第2部分82と、を有している。第1部分81は、円柱状である。第2部分82は、円柱状である。第2部分82は、第1部分81の上方向UDを向く面上に位置している。
【0019】
ノズル80は、第3部分83をさらに有している。第3部分83は、第2部分82の上方向UDを向く面上に位置している。第3部分83は、板状である。下方向DDを向いてノズル80を視たとき、第3部分83は、第2部分82のうちの半円状の部分と、第2部分82の中心近傍とを覆っている。したがって、第2部分82の上方向UDを向く面の一部は、第3部分83に覆われていない。つまり、第2部分82の上方向UDを向く面の一部は、第3部分83から露出している。
【0020】
ノズル80は、第4部分84をさらに有している。第4部分84は、第3部分83の上方向UDを向く面上に位置している。第4部分84は、平面視半円の板状である。下方向DDを向いてノズル80を視たとき、第4部分84の半円の円中心は、第1部分81の円中心の位置と一致している。下方向DDを向いてノズル80を視たとき、第4部分84は、第3部分83のうちの半円状の部分を覆っている。
【0021】
ノズル80は、第5部分85をさらに有している。第5部分85は、第3部分83の上方向UDを向く面上に位置している。第5部分85は、平面視半円の板状である。下方向DDを向いてノズル80を視たとき、第5部分85の半円の円中心は、第1部分81の円中心の位置と一致している。第5部分85の半円の径は、第4部分84の半円の径よりも小さくなっている。第5部分85は、第3部分83の上方向UDを向く面の一部を覆っている。したがって、第3部分83の上方向UDを向く面の一部は、第4部分84及び第5部分85のいずれにも覆われていない。つまり、第3部分83の上方向UDを向く面の一部は、第4部分84及び第5部分85のいずれからも露出している。
【0022】
そして、ガス孔GHは、第3部分83の上方向UDを向く面に開口している。また、ガス孔GHは、第3部分83の上方向UDを向く面のうち、第4部分84及び第5部分85のいずれからも露出している箇所に位置している。さらに、ガス孔GHは、第5部分85の側面の近傍に位置している。
【0023】
液孔LHは、第5部分85の側面に開口している。また、液孔LHは、ガス孔GHの近傍に位置している。そして、上述したように、液孔LHは、ガス孔GHと近接している。そのため、液孔LHから吐出された液体は、ガス孔GHに向かって供給される。
【0024】
(ケースについて)
図1に示すように、ケース30は、ケース本体40と、配管70と、を有している。図4に示すように、ケース本体40は、ノズル80を収容している。さらに、ケース本体40は、タンク50と、カバー60と、を有している。
【0025】
図2に示すように、タンク50は、タンク底壁51と、タンク側壁56と、を有している。タンク底壁51は、円板状である。図4に示すように、タンク底壁51は、第1底面51Aと、第2底面51Bと、を有している。第2底面51Bは、第1底面51Aに対して下方向DDに窪んでいる。図3に示すように、下方向DDを向いて視たときに、第2底面51Bは、略円環状になっている。第2底面51Bの円環の中心は、第1底面51Aの中心に対して吐出口71の側に寄っている。図4に示すように、タンク底壁51は、流路断面が円形の連結孔52を有している。連結孔52は、タンク底壁51を貫通している。連結孔52は、第1底面51Aに位置している。具体的には、連結孔52は、第1底面51Aのうち、第2底面51Bに囲まれた範囲に位置している。ポンプケース20の連結パイプ23は、連結孔52に嵌め込まれている。
【0026】
図2に示すように、タンク側壁56は、タンク底壁51の外縁からポンプ21とは反対側の方向に突出している。また、タンク側壁56は、外縁の全域に亘って延びている。すなわち、タンク側壁56は、概ね円筒状である。
【0027】
図4に示すように、カバー60は、全体として円筒状の側壁61と、側壁61の上方向UDを向く開口を塞ぐ上壁62と、を有している。側壁61の下方向DDを向く開口は、略円形状の接続口63となっている。接続口63の径は、タンク側壁56におけるタンク底壁51と反対側の端の外縁の径とほぼ一致している。カバー60の接続口63は、タンク50におけるタンク側壁56の上方向UDの端に接続している。
【0028】
図2に示すように、カバー60は、第1吸気穴64と、第2吸気穴65と、を有している。第1吸気穴64及び第2吸気穴65は、いずれも、カバー60における内側の空間と外側の空間とを上下に繋いでいる。
【0029】
カバー60は、カバー60の内側の空間と外側の空間とを繋ぐ出口66を有している。出口66は、カバー60の側壁61の上端よりも下方向DD側に位置している。出口66は、円形状である。出口66の指向する方向は、液孔LHの指向する方向と反対方向である。
【0030】
図4に示すように、カバー60は、抑止壁67を有している。抑止壁67は、側壁61から内部空間S側に突出している。抑止壁67は、第1基準軸AX1に交差する方向に延びている。抑止壁67は、吐出口71を基準として下方向DDの側に位置している。また、抑止壁67は、突出している先端側ほど下方向DDに向かって延びている。そのため、抑止壁67の先端は、抑止壁67の基端よりも下方向DDの側に位置している。
【0031】
配管70は、円管状である。配管70の第1端は、ケース本体40に繋がっている。具体的には、配管70の第1端は、カバー60の出口66に接続している。配管70は、出口66が指向する方向に延びている。つまり、配管70は、上方向UDに対して直交する方向に延びている。ここで、図4に示すように、上方向UDに直交する仮想平面VPを仮想する。この場合、配管70の延びる向きは、仮想平面VPに平行である。
【0032】
配管70は、カバー60と反対側の開口である吐出口71を有している。吐出口71は、霧化された液体をケース30の外部へと導くための開口である。つまり、配管70の第2端が吐出口71となっている。ここで、吐出口71の開口面を平面視したときの幾何中心を開口中心CPとする。本実施形態では、吐出口71の開口面を平面視したとき、吐出口71は円状である。そのため、開口中心CPは、吐出口71の円中心である。
【0033】
タンク50の内壁、カバー60の内壁、及び配管70の内壁、を含むケース30の内壁31によって、内部空間Sが区画されている。なお、使用者がネブライザ10を使用する際には、配管70の吐出口71を含む一部は、使用者の口内に挿入される。
【0034】
(ガス孔と開口中心との位置関係について)
図4に示すように、吐出口71の開口中心CPは、第1基準軸AX1に対してずれている。
【0035】
ここで、図5に示すように、下方向DDを向いてネブライザ10を視たときに、ガス孔GHから開口中心CPに向かう方向を特定方向SDとする。また、特定方向SDと平行であってガス孔GHを通る仮想の直線軸を第2基準軸AX2とする。さらに、第2基準軸AX2に垂直であってガス孔GHを通る仮想の直線軸を第3基準軸AX3とする。
【0036】
なお、ガス孔GHは、下方向DDを向いてネブライザ10を視たときに、第3基準軸AX3に沿う方向に長い長方形状である。具体的には、第3基準軸AX3に平行な長辺の寸法が0.5mmである。また、第2基準軸AX2に平行な短辺の寸法が0.3mmである。
【0037】
(ガス孔と吸水口との位置関係について)
図5に示すように、下方向DDを向いてネブライザ10を視たときに、ノズル80の大部分は、第1底面51Aのうち、第2底面51Bに囲まれた範囲内に位置している。その一方で、図4に示すように、ノズル80の一部は、第2底面51Bにはみ出している。そして、下方向DDを向いてネブライザ10を視たときに、吸水口IHは、第2底面51Bの範囲に位置している。また、吸水口IHは、第2底面51Bによって区画される窪みの内部に位置している。換言すれば、吸水口IHは、第1底面51Aを基準として下方向DD側、且つ第2底面51Bを基準として上方向UD側に位置している。
【0038】
下方向DDを向いてネブライザ10を視たときに、吸水口IHのすべての範囲は、ガス孔GHを基準として特定方向SDの側に位置している。そのため、吸水口IHは、ガス孔GHを基準として特定方向SDとは反対方向の側に配置していない。具体的には、図5に示すように、吸水口IHは、第3基準軸AX3に対して、特定方向SDの側の範囲に位置している。つまり、吸水口IHがガス孔GHを基準として特定方向SDの側に位置している、とは、吸水口IHが第2基準軸AX2上に位置する場合のみならず、第2基準軸AX2上にない場合も含む。つまり、下方向DDを向いてネブライザ10を視たときに、第3基準軸AX3を境として2つの領域を仮想したとき、吐出口71の開口中心CPが存在する側の領域に位置していることをいう。なお、本実施形態では、吸水口IHは、第2基準軸AX2上に位置している。
【0039】
(ガス孔と抑止壁との位置関係について)
図4に示すように、下方向DDを向いてケース30を視たときに、抑止壁67は、ガス孔GHを基準として特定方向SDの側に位置している。また、抑止壁67は、吸水口IHを基準として上方向UD側に位置している。本実施形態では、ノズル80の上方向UDの端を基準として上方向UDの側に位置している。下方向DDを向いてネブライザ10を視たときに、抑止壁67は、吸水口IHと重複する範囲まで延びている。
【0040】
(実施形態の作用について)
ネブライザ10の使用者は、例えばポンプケース20を手で保持して、配管70の吐出口71を含む一部を口内に位置させた状態でネブライザ10を使用する。このとき、上方向UDと、重力方向とは反対方向とが一致する姿勢で使用されることが想定される。また、ネブライザ10は、内部空間Sに薬液等の液体を貯留して使用される。したがって、液体は、内部空間Sにおけるタンク底壁51側に溜まる。
【0041】
ポンプ21が駆動されると、ポンプ21から空気が圧送される。圧送される空気は、チューブ22及び連結パイプ23を介して、ガス供給経路RGを流通する。そして、ガス孔GHから内部空間Sへと噴出する。
【0042】
ガス孔GHから噴出したガスは、液孔LHの近傍を通過する。これにより、液孔LHの近傍は負圧となる。そのため、液体供給経路RLの内部には、吸水口IHから液孔LHに向かう流れが生じる。液体供給経路RLの吸水口IHは、タンク底壁51の近傍に位置しているため、貯留された液体が液体供給経路RLの内部に入り込む。そして、液体供給経路RLの内部に入り込んだ液体は、液孔LHから排出される。
【0043】
ガス孔GHの近傍に液孔LHから排出された液体が供給されると、ガス孔GHから噴出されたガスが、液体に衝突する。これにより、液体は、細かな液滴となる。細かな液滴は、ガスの流れによって、内部空間Sを吐出口71へ向かって流れる。そして、細かな液体は吐出口71から吐出される。
【0044】
ところで、使用者によっては、上方向UDが重力方向に沿う軸に対して傾くような姿勢で、ネブライザ10が使用されることもある。例えば、使用者が寝た状態で使用したりする場合に、このような姿勢でネブライザ10が使用され得る。この場合、上方向UDが重力方向とは反対方向と一致する姿勢の場合と比べて、吐出口71が重力方向を向くように傾く。このように重力方向に沿う軸に対してネブライザ10の姿勢が傾くと、内部空間Sに貯留されている液体は、特定方向SDの側に偏って貯留される。
【0045】
(実施形態の効果について)
(1)上記実施形態によれば、吸水口IHは、ガス孔GHを基準として特定方向SDの側に位置している。つまり、ガス孔GHを基準として、吸水口IHは、吐出口71と同じ側に位置している。そのため、ネブライザ10全体が傾いて、内部空間Sに貯留されている液体の位置が吐出口71の側に偏っても、吸水口IHは液体中に没した状態を保ちやすい。よって、液体供給経路RLに、内部空間Sに貯留された液体が供給されにくくなることを抑制できる。
【0046】
(2)上記実施形態によれば、抑止壁67の先端は、抑止壁67の基端よりも下方向DDの側に位置している。そのため、内部空間Sのうち、抑止壁67を基準として下方向DDの側に貯留されている液体は、ネブライザ10全体が傾いて、当該液体の位置が吐出口71の側に偏っても、抑止壁67によって、抑止壁67よりも上方向UDの側に流れ込みにくい。その結果、抑止壁67によって堰き止められた液体は、タンク50のタンク底壁51側に位置しやすくなる。この場合、吸水口IHがタンク底壁51側に位置する液体に没されている状態を保持しやすくなる。
【0047】
(3)上記実施形態によれば、抑止壁67は、ケース30の内壁の一部であるカバー60の側壁61から突出している。そのため、従来設計のものに対して抑止壁67を新たに設ける設計変更を加えるにあたって、ケース30の外形を変更せずとも、抑止壁67を設けることができる。
【0048】
(4)上記実施形態では、霧化された液滴のうち、一部の液滴はケース30の内壁31にぶつかって、大きな液滴になることがある。この場合、大きな液滴は、内部空間Sのタンク底壁51側へと下方向DDに移動する。上記実施形態によれば、抑止壁67は、突出している先端側ほど下方向DDに向かって延びている。そのため、抑止壁67を基準として上方向UDの側から、大きな液滴が回収される際に、このような液滴が抑止壁67を基準として下方向DDの側へと移動することを妨げにくい。よって、液滴の回収を妨げることを抑制できる。
【0049】
(5)上記実施形態によれば、ポンプ21は、圧電ポンプである。圧電ポンプは小型で軽量である一方、ガスを圧送できる力が比較的に弱い。そのため、ガス孔GHに近接する液孔LHの近傍が負圧になる程度も、相応に小さくなる。よって、液体供給経路RLの内部において、吸水口IHから液孔LHに向かう流れの勢いも、比較的に弱くなる。その結果、吸水口IHから液体を吸う力が弱いため、液体供給経路RLを通って液体を供給しにくい状態になりやすい。よって、ポンプ21が圧電ポンプであると、上記(1)の効果をより顕著に得やすい。
【0050】
(6)上記実施形態によれば、配管70の延びる向きは、仮想平面VPに対して平行である。そのため、ケース30の内壁31に付着した液滴が、配管70の吐出口71から垂れ落ちることを防止できる。
【0051】
<その他の実施形態>
上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
【0052】
・ポンプ21は、圧電ポンプに限られない。例えば、ポンプ21は、ロータリーポンプであってもよい。ポンプ21の種類によっては、ポンプケース20と連結パイプ23とが、ホース等を介して接続していてもよい。この場合、ポンプケース20は、ネブライザ10とは別に設けられていてもよい。つまり、ネブライザ10がポンプケース20及びポンプ21を備えていなくてもよい。なお、ネブライザ10がポンプケース20及びポンプ21を備えていない場合、使用者は、ネブライザ10の例えばタンク50を保持して使用すればよい。
【0053】
・例えば、第1底面51Aは、第2底面51Bに近づくほど下方向DDに位置するように傾斜していてもよい。この場合、第1底面51Aが第1基準軸AX1に直交する場合よりも、内部空間Sに貯留される液体を、第2底面51Bによって区画される窪みへと位置させやすくなる。また、タンク50のタンク底壁51の底面は、第1底面51Aのみで構成されていてもよい。つまり、第1底面51Aを基準として窪んでいる第2底面51Bを省いてもよい。
【0054】
・抑止壁67の構成は、上記実施形態の例に限られない。図6に示す変更例では、抑止壁167は、ケース30の内壁31の一部である。ケース30の内壁31の一部であるとは、仮に抑止壁167を省いた場合、内部空間Sが区画できなくなる状態をいう。図6に示すネブライザ110において、内部空間Sのうち吐出口71を基準として下方向DDの側に位置する抑止箇所として機能する凹部S1は、吐出口71を基準として上方向UDの側に位置する箇所よりも特定方向SDに膨らんでいる。つまり、カバー60の側壁61の一部が、特定方向SDに向かって膨らんでいる。そして、抑止箇所として機能する凹部S1を区画する内壁31の一部が、抑止壁167となっている。この場合であっても、上記実施形態と同様に、抑止壁167によって、内部空間Sに貯留された液体を、ネブライザ110全体が傾いても、内部空間Sにおけるタンク底壁51側にとどめやすくなる。
【0055】
・上記実施形態において、抑止壁67は、仮想平面VPと平行に延びていてもよいし、下方向DDを向いてネブライザ10を視たときに、抑止壁67は、吸水口IHと重複する範囲まで延びていなくてもよい。
【0056】
・配管70の延びる向きは、仮想平面VPと平行でなくてもよい。例えば、配管70の延びる向きは、吐出口71に向かうほど上方向UDに位置するように第1基準軸AX1に対して傾斜していてもよい。この場合であっても、ケース30の内壁31に付着した液滴が、配管70の吐出口71から垂れ落ちることを防止できる。
【0057】
また例えば、配管70の延びる向きは、吐出口71に向かうほど下方向DDに位置するように第1基準軸AX1に対して傾斜していてもよい。さらに例えば、配管70の延びる向きは、上方向UDであってもよい。少なくとも、吐出口71の開口中心CPが第1基準軸AX1に対してずれていればよい。
【0058】
・配管70の形状は、直線状に延びていなくてもよい。例えば、湾曲して延びていてもよいし、流路断面積が変化するように延びていてもよいし、使用者の鼻と口を覆うマスクであってもよい。また、配管70は、可撓性を有していてもよい。さらに、配管70は省かれてもよい。この場合、ケース本体40の出口66が、ケース30の吐出口として機能する。
【0059】
・ケース30の構成は、上記実施形態の例に限られない。例えば、上記実施形態では、ケース本体40は、タンク50とカバー60とで構成しているが、両者が一体となって構成されていてもよい。
【0060】
・ノズル80の形状は、上記実施形態の例に限られない。ノズル80は、ガス孔GHと、液孔LHとを有しており、吸水口IHのすべての範囲がガス孔GHを基準として特定方向SDの側に位置していれば、ノズル80の形状は、ケース30の形状等に併せて適宜変更されればよい。
【0061】
・ガス孔GHの形状は、長方形に限られない。下方向DDを向いてガス孔GHを視たときに、円状であってもよいし、楕円状であってもよいし、正方形であってもよい。また、第2基準軸AX2に平行な辺が長辺となる長方形であってもよい。
【0062】
・吸水口IHは、第2基準軸AX2上に位置していなくてもよい。吸水口IHは、ガス孔GHを基準として特定方向SDの側に位置していればよい。例えば、液体供給経路RLを複数有していることで、吸水口IHが複数ある場合には、すべての吸水口IHが、ガス孔GHを基準として特定方向SDの側に位置していればよい。つまり、吸水口IHが、ガス孔GHを基準として特定方向SDと反対方向の側に位置していなければよい。
【0063】
・ところで、特開2011-229709号公報に記載のようなネブライザでは、ガス孔が指向する方向が重力方向に沿う軸に対して傾くような姿勢で、ネブライザが使用されることもある。この場合、ケースの内部空間に貯留された液体が、吐出口から流出する虞がある。
【0064】
ここで、上記実施形態のネブライザ10によれば、ネブライザ10が傾いたとしても、抑止壁67によって、ケース30の内部空間Sに貯留された液体が、吐出口71まで流れることを抑止できる。
【0065】
このように、ケース30の内部空間Sに貯留された液体が、吐出口71まで流れることを防ぐという観点では、吸水口IHがガス孔GHを基準として特定方向SDの側に位置することは必須ではない。つまり、吸水口IHが、第3基準軸AX3上又はガス孔GHを基準として特定方向SDとは反対方向の側に位置していてもよい。
【0066】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
<付記1>
内部空間を区画する内壁を有するケースと、
前記内部空間に位置しており、前記内部空間に貯留された液体を霧化するノズルと、
を備えており、
前記ケースは、外部と連通する吐出口を有し、
前記ノズルは、圧送された気体を供給可能なガス孔と、前記ガス孔に近接し前記液体を前記内部空間へ供給可能な液孔を一端の開口とするとともに前記液孔へと供給する液体を吸入する吸水口を他端の開口とする液体供給経路と、を有しており、
前記ガス孔が指向する方向と平行であって前記ガス孔を通る仮想の直線軸を第1基準軸としたとき、前記吐出口の開口面を平面視したときの幾何中心である開口中心は、前記第1基準軸に対してずれており、
前記ケースは、前記第1基準軸に交差する方向に延びる抑止壁をさらに有し、
前記第1基準軸に沿う方向を向いて視たときに前記ガス孔から前記開口中心に向かう方向を特定方向とし、
前記第1基準軸に沿う方向のうち、前記ガス孔が指向する方向とは反対方向を下方向としたとき、
前記抑止壁は、前記吐出口を基準として前記下方向の側に位置しており、且つ、前記第1基準軸に沿う方向を向いて視たときに、前記ガス孔を基準として前記特定方向の側に位置している
ネブライザ。
【符号の説明】
【0067】
10,110…ネブライザ
20…ポンプケース
30…ケース
31…内壁
40…ケース本体
50…タンク
51A…第1底面
51B…第2底面
60…カバー
67,167…抑止壁
70…配管
71…吐出口
80…ノズル
AX1…第1基準軸
CP…開口中心
DD…下方向
GH…ガス孔
IH…吸水口
LH…液孔
RL…液体供給経路
S…内部空間
S1…凹部
SD…特定方向
UD…上方向
VP…仮想平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6