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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024118709
(22)【出願日】2024-07-24
【審査請求日】2024-08-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】明比 大典
(72)【発明者】
【氏名】長野 剛
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2024-054576(JP,A)
【文献】特開2014-007942(JP,A)
【文献】特開2021-182795(JP,A)
【文献】特開2014-236596(JP,A)
【文献】特開2013-176218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00- 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁トランスと、
前記絶縁トランスの一次側に接続され、直列に接続される上下アームを各々含む第1レグおよび第2レグを並列に有する第1ブリッジ回路と、
前記絶縁トランスの二次側に接続され、直列に接続される上下アームを各々含む第3レグおよび第4レグを並列に有する第2ブリッジ回路と、
前記絶縁トランスの一次側および二次側の各交流電圧の双方がゼロ電圧となる期間を制御する不連続電流モードの位相制御を実行する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記不連続電流モードにおいて、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路のうち一方のブリッジ回路から他方のブリッジ回路へ電力を伝送する場合、前記第1レグから前記第4レグまでのうち、前記他方のブリッジ回路のいずれか一つのレグの上下アームをオフ状態とし、かつ、残りの各レグの上下アームをオフ状態とするデッドタイムを挟んで前記残りの各レグの上下アームを交互にスイッチングさせる、電力変換システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1ブリッジ回路に与えられる一次側直流電圧と前記第2ブリッジ回路に与えられる二次側直流電圧のいずれが高いかによって、前記他方のブリッジ回路の上下アームをオフ状態とするレグを変更する、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記不連続電流モードの位相制御を実行するか、前記絶縁トランスの一次側および二次側の各交流電圧が逆極性となる期間を制御する連続電流モードの位相制御を実行するかを判定し、前記不連続電流モードの位相制御を実行すると判定した場合、前記他方のブリッジ回路のいずれか一つのレグの上下アームをオフ状態とする、請求項1または2に記載の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁トランスと、前記絶縁トランスの一次側に接続される第1ブリッジ回路と、前記絶縁トランスの二次側に接続される第2ブリッジ回路と、前記絶縁トランスの一次側および二次側の各交流電圧の双方がゼロ電圧となる期間を制御する不連続電流モードの位相制御を実行する制御装置と、を備える、電力変換システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2024-082491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不連続電流モードは、絶縁トランスの一次側および二次側の各交流電圧の双方がゼロ電圧となる期間を含むため、それらの交流電圧の位相関係により定まる電力伝送方向に対して逆方向に伝送される逆電力は、理想的には発生しない。しかしながら、各ブリッジ回路内の上下アームをスイッチングさせる場合、上下アームに流れる貫通電流の発生防止等を目的として、実際には、上下アームをいずれもオフ状態とするデッドタイムが設けられる。このデッドタイムにより、絶縁トランスに流れる交流の電流が理想的な方向に対して逆方向に流れることで、電力変換システムの電力変換効率が低下する場合がある。
【0005】
本開示は、電力変換効率の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
絶縁トランスと、
前記絶縁トランスの一次側に接続され、直列に接続される上下アームを各々含む第1レグおよび第2レグを並列に有する第1ブリッジ回路と、
前記絶縁トランスの二次側に接続され、直列に接続される上下アームを各々含む第3レグおよび第4レグを並列に有する第2ブリッジ回路と、
前記絶縁トランスの一次側および二次側の各交流電圧の双方がゼロ電圧となる期間を制御する不連続電流モードの位相制御を実行する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記不連続電流モードにおいて、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路のうち一方のブリッジ回路から他方のブリッジ回路へ電力を伝送する場合、前記第1レグから前記第4レグまでのうち、前記他方のブリッジ回路のいずれか一つのレグの上下アームをオフ状態とし、かつ、残りの各レグの上下アームをオフ状態とするデッドタイムを挟んで前記残りの各レグの上下アームを交互にスイッチングさせる、電力変換システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電力変換効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る電力変換システムの一構成例を示す回路図である。
図2】第1実施形態に係る電力変換システムにおいて実行される不連続電流モードの位相制御の動作例を示す波形図である。
図3】不連続電流モードの位相制御の基本のスイッチングパターンでの動作波形図である。
図4】不連続電流モードの位相制御の基本のスイッチングパターンでの各期間の電流経路を示す図である。
図5】不連続電流モードの位相制御の基本のスイッチングパターンでの各期間の電流経路を示す図である。
図6】不連続電流モードの位相制御の第1スイッチングパターンでの動作波形図である。
図7】不連続電流モードの位相制御の第1スイッチングパターンでの各期間の電流経路を示す図である。
図8】不連続電流モードの位相制御の第1スイッチングパターンでの各期間の電流経路を示す図である。
図9】不連続電流モードの位相制御の基本のスイッチングパターンでの各期間の電流経路を示す図である。
図10】不連続電流モードの位相制御の第2スイッチングパターンでの動作波形図である。
図11】不連続電流モードの位相制御の基本のスイッチングパターンでの各期間の電流経路を示す図である。
図12】不連続電流モードの位相制御の第3スイッチングパターンでの動作波形図である。
図13】不連続電流モードの位相制御の基本のスイッチングパターンでの各期間の電流経路を示す図である。
図14】不連続電流モードの位相制御の第4スイッチングパターンでの動作波形図である。
図15】第2実施形態に係る電力変換システムの全体的な動作例を示す波形図である。
図16】第2実施形態に係る電力変換システムにおける電力の伝送特性を例示する図である。
図17】逆電流を防止するためにオフするレグを特定する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る電力変換システムの一構成例を示す図である。図1に示す電力変換システム100は、絶縁トランス102の両側にブリッジ回路が設けられる双方向絶縁型DC/DCコンバータ(絶縁DC/DCコンバータ110)を備える。電力変換システム100は、第1ブリッジ回路111と第2ブリッジ回路112との間で双方向に電力を供給する。
【0011】
電力変換システム100は、絶縁トランス102と、第1ブリッジ回路111と、第2ブリッジ回路112と、制御装置106と、を備える。
【0012】
絶縁トランス102は、一次巻線31と二次巻線32とを有し、一次巻線31と二次巻線32とが磁気的に結合する変圧器である。一次巻線31および二次巻線32の巻線比は、適宜、設定される。
【0013】
本明細書では、特に断りのない限り、一次巻線31と二次巻線32との巻線比は、1:1と考えてよい。しかしながら、一次巻線31と二次巻線32との巻数比が1:1以外の場合、二次側もしくは一次側の電圧値は、一次側もしくは二次側の電圧値に換算されればよく、二次側もしくは一次側の電流値は、一次側もしくは二次側の電流値に換算されればよい。例えば、以下の説明では、二次側直流電圧Eおよび二次側交流電圧vは、一次側に換算した電圧値を意味する。すなわち、絶縁トランス102の一次巻線31の巻回数をn、二次巻線32の巻回数をnとした場合において、実際の二次側直流電圧に対して係数n/nを乗算した電圧値(一次側に換算した電圧値)が二次側直流電圧Eである。二次側交流電圧vについても同様である。また、以下の説明において、低圧側および高圧側は、絶縁DC/DCコンバータ110の一次側および二次側のうち低圧が発生している側および高圧が発生している側を意味する。例えば、一次側直流電圧Eと一次側の値に換算された二次側直流電圧Eとの間に、E<Eの関係があれば、一次側が低圧側で二次側が高圧側であり、E>Eの関係があれば、一次側が高圧側で二次側が低圧側である。
【0014】
第1ブリッジ回路111は、絶縁トランス102の一次側に接続される一次側ブリッジ回路であり、絶縁トランス102の一次巻線31との間で電力を授受する。第1ブリッジ回路111は、不図示の外部装置に電気的に接続される一次側直流端子として、正極端子41pと負極端子41nを有する。第1ブリッジ回路111は、一次側直流端子に接続される外部装置との間で電力を授受する。
【0015】
第1ブリッジ回路111は、一次側の直流母線対として、正極母線43p及び負極母線43nを有する。正極母線43pは、正極端子41pに接続される。負極母線43nは、負極端子41nに接続される。第1ブリッジ回路111は、絶縁トランス102の一次巻線31に一次側の直流母線対43p,43nによって印加される電圧vの極性を切り替える。
【0016】
第1ブリッジ回路111は、複数のレグ11,12を並列に有するフルブリッジ回路である。
【0017】
第1ブリッジ回路111は、例えば、ハイサイドのアーム101aとローサイドのアーム101bとが直列に接続されたレグ11と、ハイサイドのアーム101cとローサイドのアーム101dとが直列に接続されたレグ12とを有する。アーム101aは、第1アームの一例であり、アーム101bは、第2アームの一例であり、アーム101cは、第3アームの一例であり、アーム101dは、第4アームの一例である。レグ11は、第1レグの一例であり、レグ12は、第2レグの一例である。ハイサイドのアームとローサイドのアームを、まとめて、上下アームと称する場合がある。
【0018】
第1ブリッジ回路111は、アーム101aとアーム101bとの中間接続点a1と、アーム101cとアーム101dとの中間接続点b1とを接続するブリッジ部分21に、絶縁トランス102の一次巻線31が設けられたフルブリッジ回路である。第1ブリッジ回路111は、絶縁トランス102の一次巻線31に直列に接続されるリアクトル104aをブリッジ部分21に有してもよい。中間接続点a1は、第1接続点の一例である。中間接続点b1は、第2接続点の一例である。ブリッジ部分21は、第1ブリッジ部分の一例である。
【0019】
第1ブリッジ回路111は、コンデンサ103aと、アーム101a~101dと、を有する。
【0020】
コンデンサ103aは、一次側の直流母線対43p,43nの間に接続され、直流母線対43p,43nの間の電圧(コンデンサ103aの電圧)を平滑化する。
【0021】
アーム101a~101dは、一次側のスイッチング素子である。その具体例として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチング素子が挙げられる。
【0022】
レグ11は、アーム101aとアーム101bとが直流母線対43p,43nの間に直列に接続された構成を含み、レグ12は、アーム101cとアーム101dとが直流母線対43p,43nの間に直列に接続された構成を含む。アーム101a~101dは、それぞれ、第1主端子と、第2主端子と、制御端子とを有する。例えば、第1主端子は、ドレイン又はコレクタに対応し、第2主端子は、ソース又はエミッタに対応し、制御端子は、ゲートに対応する。アーム101a~101dは、主端子間に逆接続されたダイオードを含んでよい。アーム101a~101dがMOSFETの場合、このダイオードは寄生ダイオードであってもよい。図1は、還流ダイオードD1,D2,D3,D4を例示する。
【0023】
第1ブリッジ回路111は、アーム101a及びアーム101dがオン、アーム101b及びアーム101cがオフとなると、中間接続点a1を正極母線43pに電気的に接続し、中間接続点b1を負極母線43nに電気的に接続する。これにより、第1ブリッジ回路111は、中間接続点a1と中間接続点b1の間の電圧vを正電圧"E"とする。Eは、直流母線対43p,43nの間の電圧値である。第1ブリッジ回路111は、アーム101a及びアーム101dがオフ、アーム101b及びアーム101cがオンとなると、中間接続点a1を負極母線43nに電気的に接続し、中間接続点b1を正極母線43pに電気的に接続する。これにより、第1ブリッジ回路111は、電圧vを負電圧"-E"とする。第1ブリッジ回路111は、このように動作することで、絶縁トランス102の一次巻線31に一次側の直流母線対43p,43nによって印加される電圧vの極性を切り替える。
【0024】
第1ブリッジ回路111は、アーム101a及びアーム101cがオン、アーム101b及びアーム101dがオフとなると、中間接続点a1及び中間接続点b1の両方を正極母線43pに電気的に接続して、電圧vを実質的にゼロとする。第1ブリッジ回路111は、アーム101a及びアーム101cがオフ、アーム101b及びアーム101dがオンとなると、中間接続点a1及び中間接続点b1の両方を負極母線43nに電気的に接続して、電圧vを実質的にゼロとする。
【0025】
第2ブリッジ回路112は、絶縁トランス102の二次側に接続される二次側ブリッジ回路であり、絶縁トランス102の二次巻線32との間で電力を授受する。第2ブリッジ回路112は、不図示の外部装置に電気的に接続される二次側直流端子として、正極端子42pと負極端子42nを有する。第2ブリッジ回路112は、二次側直流端子に接続される外部装置との間で電力を授受する。
【0026】
第2ブリッジ回路112は、二次側の直流母線対として、正極母線44p及び負極母線44nを有する。正極母線44pは、正極端子42pに接続される。負極母線43nは、負極端子42nに接続される。第2ブリッジ回路112は、絶縁トランス102の二次巻線32に二次側の直流母線対44p,44nによって印加される電圧vの極性を切り替える。
【0027】
第2ブリッジ回路112は、複数のレグ13,14を並列に有するフルブリッジ回路である。
【0028】
第2ブリッジ回路112は、例えば、ハイサイドのアーム101eとローサイドのアーム101fとが直列に接続されたレグ13と、ハイサイドのアーム101gとローサイドのアーム101hとが直列に接続されたレグ14とを有する。アーム101eは、第5アームの一例であり、アーム101fは、第6アームの一例であり、アーム101gは、第7アームの一例であり、アーム101hは、第8アームの一例である。レグ13は、第3レグの一例であり、レグ14は、第4レグの一例である。ハイサイドのアームとローサイドのアームを、まとめて、上下アームと称する場合がある。
【0029】
第2ブリッジ回路112は、アーム101eとアーム101fとの中間接続点a2と、アーム101gとアーム101hとの中間接続点b2とを接続するブリッジ部分23に、絶縁トランス102の二次巻線32が設けられたフルブリッジ回路である。第2ブリッジ回路112は、絶縁トランス102の二次巻線32に直列に接続されるリアクトル104bをブリッジ部分23に有してもよい。中間接続点a2は、第3接続点の一例である。中間接続点b2は、第4接続点の一例である。ブリッジ部分23は、第2ブリッジ部分の一例である。
【0030】
第2ブリッジ回路112は、コンデンサ103bと、アーム101e~101hと、を有する。
【0031】
コンデンサ103bは、二次側の直流母線対44p,44nの間に接続され、直流母線対44p,44nの間の電圧(コンデンサ103bの電圧)を平滑化する。
【0032】
アーム101e~101hは、二次側のスイッチング素子である。その具体例として、アーム101a~101dと同様、MOSFET、IGBTなどの半導体スイッチング素子が挙げられる。
【0033】
レグ13は、アーム101eとアーム101fとが直流母線対44p,44nの間に直列に接続された構成を含み、レグ14は、アーム101gとアーム101hとが直流母線対44p,44nの間に直列に接続された構成を含む。アーム101e~101hは、アーム101a~101dと同様、それぞれ、第1主端子と、第2主端子と、制御端子と、ダイオードと、を有する。図1は、還流ダイオードD5,D6,D7,D8を例示する。
【0034】
第2ブリッジ回路112は、アーム101e及びアーム101hがオン、アーム101f及びアーム101gがオフとなると、中間接続点a2を正極母線44pに電気的に接続し、中間接続点b2を負極母線44nに電気的に接続する。これにより、第2ブリッジ回路112は、中間接続点a2と中間接続点b2の間の電圧vを正電圧"E"とする。Eは、直流母線対44p,44nの間の電圧値である。第2ブリッジ回路112は、アーム101e及びアーム101hがオフ、アーム101f及びアーム101gがオンとなると、中間接続点a2を負極母線44nに電気的に接続し、中間接続点b2を正極母線44pに電気的に接続する。これにより、第2ブリッジ回路112は、電圧vを負電圧"-E"とする。第2ブリッジ回路112は、このように動作することで、絶縁トランス102の二次巻線32に二次側の直流母線対44p,44nによって印加される電圧vの極性を切り替える。
【0035】
第2ブリッジ回路112は、アーム101e及びアーム101gがオン、アーム101f及びアーム101hがオフとなると、中間接続点a2及び中間接続点b2の両方を正極母線44pに電気的に接続して、電圧vを実質的にゼロとする。第2ブリッジ回路112は、アーム101e及びアーム101gがオフ、アーム101f及びアーム101hがオンとなると、中間接続点a2及び中間接続点b2の両方を負極母線43nに電気的に接続して、電圧vを実質的にゼロとする。
【0036】
制御装置106は、第1ブリッジ回路111と第2ブリッジ回路112を制御する。制御装置106は、第1ブリッジ回路111のアーム101a~101dを各々駆動するための駆動パルスGa~Gdと、第2ブリッジ回路112のアーム101e~101hを各々駆動するための駆動パルスGe~Ghを生成する。駆動パルスGa~Ghは、アーム101a~101hのうち対応するアームのオン又はオフを制御するための駆動信号である。
【0037】
電力変換システム100は、駆動回路105a及び駆動回路105bを備える。駆動回路105aは、駆動パルスGa~Gdに従って、第1ブリッジ回路111のアーム101a~101dのオン又はオフのスイッチングを制御する一次側駆動回路である。駆動回路105bは、駆動パルスGe~Ghに従って、第2ブリッジ回路112のアーム101e~101hのオン又はオフのスイッチングを制御する二次側駆動回路である。
【0038】
電力変換システム100は、直流電圧検出部107a及び直流電圧検出部107bを備える。直流電圧検出部107aは、第1ブリッジ回路111の直流母線対43p,43nに与えられる一次側直流電圧Eを検出する回路である。直流電圧検出部107bは、第2ブリッジ回路112の直流母線対44p,44nに与えられる二次側直流電圧Eを検出する回路である。
【0039】
制御装置106は、直流電圧検出部107aにより検出される一次側直流電圧Eおよび直流電圧検出部107bにより検出される二次側直流電圧Eに基づき、アーム101a~101hを駆動するための駆動パルスGa~Ghのエッジの位相を制御する。制御装置106は、駆動パルスGa~Ghのエッジの位相を制御することにより、絶縁DC/DCコンバータ110の電力伝送(第1ブリッジ回路111と第2ブリッジ回路112との間の電力伝送)の制御を行う。
【0040】
制御装置106は、駆動パルスのエッジの位相を制御することにより、絶縁トランス102の一次側および二次側の各交流電圧の双方がゼロ電圧となる期間を制御する不連続電流モードの位相制御を実行する。制御装置106は、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vの両方がゼロ電圧となる期間を発生させることで、一次側交流電圧vと二次側交流電圧vとの位相関係により定まる電力伝送方向に対して逆方向に伝送される電力(逆電力)の発生を回避する。
【0041】
図2は、本実施形態に係る電力変換システムにおいて実行される不連続電流モードの位相制御の動作例を示す波形図である。
【0042】
電力変換システム100において、第1ブリッジ回路111および第2ブリッジ回路112は、同じ周期(波長)の一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vを出力する。以下の説明では、位相角あるいは位相差という用語が用いられるが、位相角あるいは位相差とは、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vの1周期(1波長)を2πとして表現した各種の期間の相対的な長さを意味する。
【0043】
図2の動作例では、低圧側の一次側交流電圧vがゼロ電圧から第1極性(この例では正極性)の電圧に変化してから、位相角θ-γの期間の経過後に、高圧側の二次側交流電圧vがゼロ電圧から第1極性の電圧に変化する。その後、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vは、位相角π-θの期間、第1極性の電圧を維持する。その後、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vは、第1極性の電圧からゼロ電圧に同時に変化してから、位相角γの期間、ゼロ電圧を維持する。その後、一次側交流電圧vがゼロ電圧から第1極性と反対の第2極性(この例では負極性)の電圧に変化してから、位相角φ-γの期間の経過後に、二次側交流電圧vがゼロ電圧から第2極性の電圧に変化する。その後、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vは、位相角π-θの期間、第2極性の電圧を維持する。その後、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vは、第2極性の電圧からゼロ電圧に同時に変化してから、位相角γの期間、ゼロ電圧を維持する。その後、一次側交流電圧vがゼロ電圧から第1極性の電圧に変化する。
【0044】
図2の動作例では、一次側交流電圧vが第1または第2の極性の電圧であり、かつ、二次側交流電圧vがゼロ電圧である位相角φ-γの期間に絶縁トランス102の一次巻線31に流れる電流iが増加する。その後の一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vの両方が同極性の電圧である期間に絶縁トランス102の一次巻線31に流れる電流iが減少してゼロになる動作が繰り返される。
【0045】
そして、絶縁トランス102に流れる電流iが減少してゼロになった後の位相角γの期間、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vの両方がゼロ電圧となるので、絶縁トランス102の一次巻線31に流れる電流iの変化が停止する。これにより、電流iの流れる方向が反転する極性反転が起こらないため、一次側交流電圧vと二次側交流電圧vとの位相関係により定まる電力伝送方向に対して逆方向に伝送される電力(逆電力)の発生が回避される。
【0046】
図2の動作例において、一次側から二次側に伝送される電力Pは、絶縁トランス102に流れる電流iのピーク値に依存する。電流iのピーク値は、位相角φ-γの期間の長さに依存する。制御装置106は、絶縁トランス102の一次側および二次側の各交流電圧の双方がゼロ電圧となる位相角γの期間を制御するとともに、位相角φおよびγを制御することにより、一次側および二次側の双方間の伝送電力Pを制御する。この伝送電力Pは、
P=(E/(ωL))(A(1-A)(π-γ))/(2π)
・・・式1
により表される。Aは、
A=低圧側直流電圧/高圧側直流電圧<1
・・・式2
により表される。
【0047】
ところで、上述の通り、不連続電流モードは、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vの両方がゼロ電圧となる期間を発生させるため、それらの交流電圧の位相関係により定まる電力伝送方向に対して逆方向に伝送される逆電力は、理想的には発生しない。しかしながら、各レグの上下アームをスイッチングさせる場合、上下アームに流れる貫通電流の発生防止等を目的として、実際には、上下アームをいずれもオフ状態とするデッドタイムが設けられる。このデッドタイムにより、一次側交流電圧vのパルス欠けが発生し、交流の電流iが理想的な方向に対して逆方向に流れることがある。この逆方向に流れる電流(逆電流)は、導通損を増加させる無効電流のため、電力変換システム100の電力変換効率が低下する場合がある。
【0048】
図3は、不連続電流モードの位相制御の基本のスイッチングパターンでの動作波形図である。図3は、E<Eにおいて、第1ブリッジ回路111から第2ブリッジ回路112に電力を伝送する力行動作時の波形を示す。
【0049】
制御装置106は、不連続電流モードの位相制御を実行しているとき、図3に示すスイッチングパターンの駆動パルスGa~Ghに従って、レグ11~14の各々の上下アームをオフ状態とするデッドタイムを挟んで当該上下アームを交互にスイッチングさせる。
【0050】
この例では、駆動パルスGa~Ghがハイレベルの期間では、対応するアームがオン状態となり、駆動パルスGa~Ghがローレベルの期間では、対応するアームがオフ状態となる(他の図面も同様)。
【0051】
デッドタイム無しで上下アームが同時にスイッチングする理想的な場合(図3破線参照)、一次側交流電圧vのパルス欠けが無いので、絶縁トランス102に流れる電流iのピーク値(絶対値)は、第1レベルまで上昇してから減少に転じる。しかしながら、デッドタイムが存在する場合(図3実線参照)、一次側交流電圧vのパルス欠けが発生し、交流の電流iのピーク値(絶対値)は、第1レベルまで上昇する前に、第1レベルよりも低い第2レベルまで上昇してから減少に転じる。電流iのピーク値(絶対値)が第1レベルまで上昇しない場合、図3に示すように、交流の電流iが理想的な方向に対して逆向きの電流(逆電流)が流れることがある。
【0052】
図4は、不連続電流モードの位相制御の基本のスイッチングパターンでの各期間の電流経路を示す図である。図4に示す矢印は、図3の各期間T1~T5に第1ブリッジ回路111と第2ブリッジ回路112との間に流れる伝送電流の経路を表す。図4において、各アーム101a~101hに付記する「ON」は、そのアームがオン状態を意味し、各アーム101a~101hに付記する「OFF」は、そのアームがオフ状態を意味する(電流経路を示す他の図面も同様)。
【0053】
期間T1では、アーム101aとアーム101dがオン状態なので、一次側交流電圧vは、正電圧"E"であり、アーム101eとアーム101gがオン状態なので、二次側交流電圧vは、ゼロ電圧である。このため、一次巻線31に正方向(第1方向)に流れる電流は、増加する。
【0054】
期間T1から期間T2に遷移すると、アーム101gとアーム101hは、いずれもオフ状態となるデッドタイムに突入し、二次側に流れる電流の経路は、アーム101gからアーム101hのダイオードに切り替わる。このため、期間T2では、二次側に流れる電流は、アーム101hのダイオードを経由してアーム101eを通るので、二次側交流電圧vは、正電圧"E"となる。一方、期間T2では、一次側交流電圧vは正電圧"E"に維持されるので、一次巻線31に正方向に流れる電流は、減少する。
【0055】
期間T2から期間T3に遷移すると、アーム101hがオンとなるので、アーム101gとアーム101hがいずれもオフ状態となるデッドタイムは終了する。期間T2にダイオードに電流が流れていたアーム101hがオンするので、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vは、期間T2から期間T3への遷移においてほとんど変化しない。
【0056】
一次巻線31に正方向に流れる電流iの減少は、期間T3も継続する。電流iは、期間T3から期間T4に遷移するタイミングでゼロクロスする。このゼロクロスタイミングで、電流iの流れる方向が逆向きになり、一次巻線31に流れる電流は正方向から負方向に変化する。期間T4では、一次巻線31に負方向に流れる電流i(逆電流)が増加する。
【0057】
期間T4から期間T5に遷移すると、アーム101eとアーム101fは、いずれもオフ状態となるデッドタイムに突入し、二次側に流れる電流の経路は、アーム101eからアーム101fのダイオードに切り替わる。このため、期間T5では、二次側に流れる電流は、アーム101hを経由してアーム101fのダイオードを通るので、二次側交流電圧vは、ゼロ電圧となる。一方、期間T4から期間T5に遷移すると、アーム101cとアーム101dは、いずれもオフ状態となるデッドタイムに突入し、一次側に流れる電流の経路は、オン状態のアーム101dからアーム101dのダイオードに切り替わる。期間T5に一次側に流れる電流は、アーム101dのダイオードを経由してアーム101aを通るので、期間T5では、一次側交流電圧vは、正電圧"E"に維持される。よって、一次巻線31に負方向に流れる電流i(逆電流)は、ゼロに向かって減少する。
【0058】
図5は、不連続電流モードの位相制御の基本のスイッチングパターンでの各期間の電流経路を示す図である。図5に示す矢印は、図3の各期間T6~T10に第1ブリッジ回路111と第2ブリッジ回路112との間に流れる伝送電流の経路を表す。
【0059】
期間T6では、アーム101bとアーム101cがオン状態なので、一次側交流電圧vは、負電圧"-E"であり、アーム101fとアーム101hがオン状態なので、二次側交流電圧vは、ゼロ電圧である。このため、一次巻線31に負方向(第1方向とは逆向きの第2方向)に流れる電流は、増加する。
【0060】
期間T6から期間T7に遷移すると、アーム101gとアーム101hは、いずれもオフ状態となるデッドタイムに突入し、二次側に流れる電流の経路は、アーム101hからアーム101gのダイオードに切り替わる。このため、期間T7では、二次側に流れる電流は、アーム101fを経由してアーム101gのダイオードを通るので、二次側交流電圧vは、負電圧"-E"となる。一方、期間T7では、一次側交流電圧vは負電圧"-E"に維持されるので、一次巻線31に負方向に流れる電流は、減少する。
【0061】
期間T7から期間T8に遷移すると、アーム101gがオンとなるので、アーム101gとアーム101hがいずれもオフ状態となるデッドタイムは終了する。期間T7にダイオードに電流が流れていたアーム101gがオンするので、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vは、期間T7から期間T8への遷移においてほとんど変化しない。
【0062】
一次巻線31に負方向に流れる電流iの減少は、期間T8も継続する。電流iは、期間T8から期間T9に遷移するタイミングでゼロクロスする。このゼロクロスタイミングで、電流iの流れる方向が逆向きになり、一次巻線31に流れる電流は負方向から正方向に変化する。期間T9では、一次巻線31に正方向に流れる電流i(逆電流)が増加する。
【0063】
期間T9から期間T10に遷移すると、アーム101eとアーム101fは、いずれもオフ状態となるデッドタイムに突入し、二次側に流れる電流の経路は、アーム101fからアーム101eのダイオードに切り替わる。このため、期間T10では、二次側に流れる電流は、アーム101eのダイオードを経由してアーム101gを通るので、二次側交流電圧vは、ゼロ電圧となる。一方、期間T9から期間T10に遷移すると、アーム101cとアーム101dは、いずれもオフ状態となるデッドタイムに突入し、一次側に流れる電流の経路は、オン状態のアーム101cからアーム101cのダイオードに切り替わる。期間T10に一次側に流れる電流は、アーム101cのダイオードを経由してアーム101bを通るので、期間T10では、一次側交流電圧vは、負電圧"-E"に維持される。よって、一次巻線31に正方向に流れる電流i(逆電流)は、ゼロに向かって減少する。
【0064】
このように、不連続電流モードの位相制御の基本のスイッチングパターン(図3図4及び図5)では、一次側交流電圧vのパルス欠けによる逆電流が発生し、電力変換システム100の電力変換効率が低下する場合がある。
【0065】
本開示に係る制御装置106は、基本のスイッチングパターンとは異なる変形スイッチングパターンに従って不連続電流モードの位相制御を実行することにより、逆電流の発生を回避し、電力変換システム100の電力変換効率を向上させる。例えば、制御装置106は、不連続電流モードにおいて、第1ブリッジ回路111と第2ブリッジ回路112のうち一方のブリッジ回路から他方のブリッジ回路へ電力を伝送する場合を考える。この場合、制御装置106は、レグ11~14のうち、当該他方のブリッジ回路のいずれか一つのレグの上下アームをオフ状態とし、かつ、残りの各レグの上下アームをオフ状態とするデッドタイムを挟んで当該残りの各レグの上下アームを交互にスイッチングさせる。制御装置106は、当該他方のブリッジ回路(電力の受け取る方のブリッジ回路)の片側のレグをオフ状態に維持することで、当該他方のブリッジ回路を整流動作させる。制御装置106は、このように、当該他方のブリッジ回路の片側のレグをオフ状態とする変形スイッチングパターンに従って不連続電流モードの位相制御を実行することにより、逆電流の発生を回避し、電力変換システム100の電力変換効率を向上させる。
【0066】
図6は、不連続電流モードの位相制御の第1スイッチングパターンでの動作波形図である。図6は、E<Eにおいて、第1ブリッジ回路111から第2ブリッジ回路112に電力を伝送する力行動作時の波形を示す。第1スイッチングパターンは、上記の変形スイッチングパターンの一例である。
【0067】
制御装置106は、不連続電流モードの位相制御を実行しているとき、図6に示す第1スイッチングパターンの駆動パルスGe,Gfに従って、レグ13の上下アーム(アーム101e及びアーム101f)をオフ状態とする。一方、制御装置106は、不連続電流モードの位相制御を実行しているとき、図6に示す第1スイッチングパターンの駆動パルスGa~Gd,Gg,Ghに従って、残りの各レグ11,12,14の上下アームをオフ状態とするデッドタイムを挟んで当該上下アームを交互にスイッチングさせる。
【0068】
図7は、不連続電流モードの位相制御の第1スイッチングパターンでの各期間の電流経路を示す図である。図7に示す矢印は、図6の各期間T1~T4に第1ブリッジ回路111と第2ブリッジ回路112との間に流れる伝送電流の経路を表す。
【0069】
期間T1では、アーム101aとアーム101dがオン状態なので、一次側交流電圧vは、正電圧"E"である。一方、期間T1では、アーム101eがオフ状態でアーム101gがオン状態であるので、二次側に流れる電流は、アーム101eのダイオードを経由してアーム101gを通る。このため、二次側交流電圧vは、ゼロ電圧となる。よって、一次巻線31に正方向(第1方向)に流れる電流は、増加する。
【0070】
期間T1から期間T2に遷移すると、アーム101gとアーム101hは、いずれもオフ状態となるデッドタイムに突入し、二次側に流れる電流の経路は、アーム101gからアーム101hのダイオードに切り替わる。このため、期間T2では、二次側に流れる電流は、アーム101hのダイオードを経由してアーム101eのダイオードを通るので、二次側交流電圧vは、正電圧"E"となる(厳密には、アーム101h,101eの両ダイオードの順方向電圧分だけ正電圧"E"よりも低い電圧となる)。一方、期間T2では、一次側交流電圧vは正電圧"E"に維持されるので、一次巻線31に正方向に流れる電流は、減少する。
【0071】
期間T2から期間T3に遷移すると、アーム101hがオンとなるので、アーム101gとアーム101hがいずれもオフ状態となるデッドタイムは終了する。期間T2にダイオードに電流が流れていたアーム101hがオンするので、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vは、期間T2から期間T3への遷移においてほとんど変化しない。
【0072】
一次巻線31に正方向に流れる電流iは、ゼロに到達するまで減少し、期間T4の開始時点でゼロクロスしようとする(逆向きの負方向に流れようとする)。しかし、期間T4では、アーム101e,101gはオフ状態のため、電流はアーム101e,101gを逆方向に流れず、一次巻線31に負方向に流れる電流i(逆電流)は阻止される。期間T4では、第2ブリッジ回路112が開放のため、二次側交流電圧vには、一次側交流電圧vと同じ電圧値が現れる。
【0073】
図8は、不連続電流モードの位相制御の第1スイッチングパターンでの各期間の電流経路を示す図である。図5に示す矢印は、図8の各期間T6~T9に第1ブリッジ回路111と第2ブリッジ回路112との間に流れる伝送電流の経路を表す。
【0074】
期間T6では、アーム101bとアーム101cがオン状態なので、一次側交流電圧vは、負電圧"-E"である。一方、期間T6では、アーム101fがオフ状態でアーム101hがオン状態であるので、二次側に流れる電流は、アーム101hを経由してアーム101fのダイオードを通る。このため、二次側交流電圧vは、ゼロ電圧となる。よって、一次巻線31に負方向(第1方向とは逆向きの第2方向)に流れる電流は、増加する。
【0075】
期間T6から期間T7に遷移すると、アーム101gとアーム101hは、いずれもオフ状態となるデッドタイムに突入し、二次側に流れる電流の経路は、アーム101hからアーム101gのダイオードに切り替わる。このため、期間T7では、二次側に流れる電流は、アーム101gのダイオードを経由してアーム101fのダイオードを通るので、二次側交流電圧vは、負電圧"-E"となる(厳密には、アーム101g,101fの両ダイオードの順方向電圧分だけ負電圧"-E"よりも高い電圧となる)。一方、期間T7では、一次側交流電圧vは負電圧"-E"に維持されるので、一次巻線31に負方向に流れる電流は、減少する。
【0076】
期間T7から期間T8に遷移すると、アーム101gがオンとなるので、アーム101gとアーム101hがいずれもオフ状態となるデッドタイムは終了する。期間T7にダイオードに電流が流れていたアーム101gがオンするので、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vは、期間T7から期間T8への遷移においてほとんど変化しない。
【0077】
一次巻線31に負方向に流れる電流iは、ゼロに到達するまで減少し、期間T9の開始時点でゼロクロスしようとする(逆向きの正方向に流れようとする)。しかし、期間T9では、アーム101f,101hはオフ状態のため、電流はアーム101f,101hを逆方向に流れず、一次巻線31に正方向に流れる電流i(逆電流)は阻止される。期間T9では、第2ブリッジ回路112が開放のため、二次側交流電圧vには、一次側交流電圧vと同じ電圧値が現れる。
【0078】
このように、E<Eにおいて、第1ブリッジ回路111から第2ブリッジ回路112に電力を伝送する力行動作時、第1スイッチングパターン(図6図7及び図8)による不連続電流モードの位相制御の実行により、逆電流の発生は回避される。よって、電力変換システム100の電力変換効率が向上する。
【0079】
図9は、不連続電流モードの位相制御の基本のスイッチングパターンでの動作波形図である。図9は、E<Eにおいて、第2ブリッジ回路112から第1ブリッジ回路111に電力を伝送する回生動作時の波形を示す。図3の基本のスイッチングパターンの場合と同様に考えると、図9に示すように、交流の電流iが理想的な方向に対して逆向きの電流(逆電流)が流れることがある。
【0080】
図10は、不連続電流モードの位相制御の第2スイッチングパターンでの動作波形図である。図10は、E<Eにおいて、第2ブリッジ回路112から第1ブリッジ回路111に電力を伝送する回生動作時の波形を示す。第2スイッチングパターンは、上記の変形スイッチングパターンの一例である。
【0081】
制御装置106は、不連続電流モードの位相制御を実行しているとき、図10に示す第2スイッチングパターンの駆動パルスGc,Gdに従って、レグ12の上下アーム(アーム101c及びアーム101d)をオフ状態とする。一方、制御装置106は、不連続電流モードの位相制御を実行しているとき、図10に示す第2スイッチングパターンの駆動パルスGa,Gb,Ge~Ghに従って、残りの各レグ11,13,14の上下アームをオフ状態とするデッドタイムを挟んで当該上下アームを交互にスイッチングさせる。
【0082】
第1スイッチングパターンの上述の場合と同様のため、詳細な説明は省略するが、電力の受け取る方のブリッジ回路の片側のレグ(この場合、レグ12)をオフ状態に維持することで、逆電流の流れが阻止される。このように、E<Eにおいて、第2ブリッジ回路112から第1ブリッジ回路111に電力を伝送する回生動作時、第2スイッチングパターン(図10)による不連続電流モードの位相制御の実行により、逆電流の発生は回避される。よって、電力変換システム100の電力変換効率が向上する。
【0083】
図11は、不連続電流モードの位相制御の基本のスイッチングパターンでの動作波形図である。図11は、E≧Eにおいて、第1ブリッジ回路111から第2ブリッジ回路112に電力を伝送する力行動作時の波形を示す。図3の基本のスイッチングパターンの場合と同様に考えると、図11に示すように、交流の電流iが理想的な方向に対して逆向きの電流(逆電流)が流れることがある。
【0084】
図12は、不連続電流モードの位相制御の第3スイッチングパターンでの動作波形図である。図12は、E≧Eにおいて、第1ブリッジ回路111から第2ブリッジ回路112に電力を伝送する力行動作時の波形を示す。第3スイッチングパターンは、上記の変形スイッチングパターンの一例である。
【0085】
制御装置106は、不連続電流モードの位相制御を実行しているとき、図12に示す第3スイッチングパターンの駆動パルスGg,Ghに従って、レグ14の上下アーム(アーム101g及びアーム101h)をオフ状態とする。一方、制御装置106は、不連続電流モードの位相制御を実行しているとき、図12に示す第3スイッチングパターンの駆動パルスGa~Gfに従って、残りの各レグ11~13の上下アームをオフ状態とするデッドタイムを挟んで当該上下アームを交互にスイッチングさせる。
【0086】
第1スイッチングパターンの上述の場合と同様のため、詳細な説明は省略するが、電力の受け取る方のブリッジ回路の片側のレグ(この場合、レグ14)をオフ状態に維持することで、逆電流の流れが阻止される。このように、E≧Eにおいて、第1ブリッジ回路111から第2ブリッジ回路112に電力を伝送する力行動作時、第3スイッチングパターン(図12)による不連続電流モードの位相制御の実行により、逆電流の発生は回避される。よって、電力変換システム100の電力変換効率が向上する。
【0087】
図13は、不連続電流モードの位相制御の基本のスイッチングパターンでの動作波形図である。図13は、E≧Eにおいて、第2ブリッジ回路112から第1ブリッジ回路111に電力を伝送する回生動作時の波形を示す。図3の基本のスイッチングパターンの場合と同様に考えると、図13に示すように、交流の電流iが理想的な方向に対して逆向きの電流(逆電流)が流れることがある。
【0088】
図14は、不連続電流モードの位相制御の第4スイッチングパターンでの動作波形図である。図14は、E≧Eにおいて、第2ブリッジ回路112から第1ブリッジ回路111に電力を伝送する回生動作時の波形を示す。第4スイッチングパターンは、上記の変形スイッチングパターンの一例である。
【0089】
制御装置106は、不連続電流モードの位相制御を実行しているとき、図14に示す第4スイッチングパターンの駆動パルスGa,Gbに従って、レグ11の上下アーム(アーム101a及びアーム101b)をオフ状態とする。一方、制御装置106は、不連続電流モードの位相制御を実行しているとき、図14に示す第4スイッチングパターンの駆動パルスGc~Ghに従って、残りの各レグ12~14の上下アームをオフ状態とするデッドタイムを挟んで当該上下アームを交互にスイッチングさせる。
【0090】
第1スイッチングパターンの上述の場合と同様のため、詳細な説明は省略するが、電力の受け取る方のブリッジ回路の片側のレグ(この場合、レグ11)をオフ状態に維持することで、逆電流の流れが阻止される。このように、E≧Eにおいて、第2ブリッジ回路112から第1ブリッジ回路111に電力を伝送する回生動作時、第4スイッチングパターン(図14)による不連続電流モードの位相制御の実行により、逆電流の発生は回避される。よって、電力変換システム100の電力変換効率が向上する。
【0091】
このように、制御装置106は、第1ブリッジ回路11に与えられる一次側直流電圧Eと第2ブリッジ回路112に与えられる二次側直流電圧Eのいずれが高いかによって、電力の受け取る方のブリッジ回路の上下アームをオフ状態とするレグを変更してもよい。
【0092】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。
【0093】
第2実施形態に係る制御装置106は、駆動パルスGa~Ghのエッジの位相を制御することにより、絶縁トランス102の一次側および二次側の各交流電圧が逆極性となる期間(位相角δ)を制御する連続電流モードの位相制御を実行する。これにより、一次側と二次側との間で授受される伝送電力Pが制御される。
【0094】
制御装置106は、制御変数Dの大きさに応じて、不連続電流モードの位相制御または連続電流モードの位相制御の実行を切り替えてもよい。制御装置106は、駆動パルスGa~Ghのエッジの位相を制御することにより、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vの双方がゼロ電圧となる期間を制御する不連続電流モードの位相制御を実行する。あるいは、制御装置106は、駆動パルスGa~Ghのエッジの位相を制御することにより、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vが逆極性となる期間を制御する連続電流モードの位相制御を実行する。制御装置106は、不連続電流モードの位相制御と連続電流モードの位相制御を制御変数Dの大きさに応じて切り替えて実行することで、絶縁DC/DCコンバータ110の一次側と二次側との間で授受される伝送電力Pの伝送を制御する。
【0095】
制御変数Dは、目標伝送電力に応じて決定される制御変数である。制御変数Dが大きくなる程、一次側と二次側との間の伝送電力Pは大きくなる。好ましい態様において、制御変数Dは、電力変換システム100を制御する上位装置から制御装置106に与えられる。他の好ましい態様では、絶縁DC/DCコンバータ110の運転状況や負荷の状況に基づいて、制御装置106が制御変数Dを決定する。
【0096】
制御変数Dは、0から3π/2までの間の値をとり得る。制御変数Dが0以上かつπ以下の値である場合、制御装置106は、不連続電流モードの位相制御を実行する。また、制御変数Dがπ以上かつ3π/2以下の値である場合、制御装置106は、連続電流モードの位相制御を実行する。
【0097】
図15は、第2実施形態に係る電力変換システムの全体的な動作例を示す波形図である。図16は、第2実施形態に係る電力変換システムにおける電力の伝送特性を例示する図である。これらの図を参照して、第2実施形態の動作を要約すると次のようになる。
【0098】
制御変数Dが0≦D≦πの範囲内である場合、第2実施形態では、不連続電流モードの位相制御が実行される。この不連続電流モードにおいて、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vが逆極性となる期間(位相角δ)は発生しない。不連続電流モードでは、制御変数Dが増加することにより、低圧側および高圧側の双方の交流電圧がゼロ電圧を維持する期間(位相角γ=π―D)が減少し、高圧側の交流電圧がゼロ電圧を維持する期間(位相角φ=π-AD)が減少する。
【0099】
不連続電流モードでは、逆電力は発生せず、一次側と二次側との間で授受される伝送電力Pは、
P=((E)/(ωL))A(1-A)D/(2π)
・・・式3
により表される。
【0100】
不連続電流モードでは、逆電力が発生しないので、一次側および二次側の直流電圧差が少ない場合や軽負荷の場合に、少ない損失で電力の伝送を行うことができる。
【0101】
制御変数Dがπ≦D≦3π/2の範囲内である場合、第2実施形態では、連続電流モードの位相制御が実行される。連続電流モードにおいて、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vの双方がゼロ電圧となる期間(位相角γ)は発生しない。連続電流モードにおいて、制御変数Dが増加すると、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vが逆極性となる期間(位相角δ=D-π)が増加し、高圧側の交流電圧がゼロ電圧を維持する期間(位相角φ=(1-A)(2π-D)が減少する。
【0102】
連続電流モードでは、一次側交流電圧vおよび二次側交流電圧vが逆極性となる期間を利用して電力の伝送が行われ、一次側と二次側との間で授受される伝送電力Pは、
【0103】
P=((E)/(ωL))(a(A)D+b(A)D+c(A))/(2π)
・・・式4
により表される。ここで、a(A)、b(A)、c(A)は、次の通りである。
【0104】
a(A)=-(1+A) ・・・式5
b(A)=(4A-A+3)π ・・・式6
c(A)=-2(2A-A+1)π ・・・式7
この連続電流モードでは、広い電圧範囲において一定以上の電力を伝送することができる。また、連続電流モードでは、負荷が大きい場合にも高い効率で電力を伝送することが可能である。
【0105】
図16に示すように、制御変数Dを0から3π/2まで変化させた場合、一次側から二次側へ伝送される電力Pは連続的に変化する。また、制御変数Dがπである場合、第2実施形態の動作モードは、不連続電流モードと連続電流モードとの間のモード境界となる。このモード境界では、不連続電流モードを想定して算出される位相角δ、φおよびγと、連続電流モードを想定して算出される位相角δ、φおよびγとが一致する。したがって、不連続電流モードおよび連続電流モードとの間の遷移の際に絶縁トランスの電流波形は、連続的に変化する。
【0106】
以上説明したように、第2実施形態によれば、1つの制御変数Dの大きさにより不連続電流モードの位相制御あるいは連続電流モードの位相制御を実行するので、広い電圧範囲において高い効率で一次側および二次側の相互間の電力伝送を行うことができる。
【0107】
また、第2実施形態によれば、1つの制御変数Dにより、不連続電流モードの位相制御および連続電流モードの位相制御の両方を実行するので、制御が簡単であり、安定したものになるという効果がある。
【0108】
図17は、逆電流を防止するためにオフするレグを特定する方法を説明するための図である。制御装置106は、制御変数Dの絶対値の大きさに応じて、連続電流モードの位相制御を実行するか、不連続電流モードの位相制御を実行するかを判定する。制御装置106は、制御変数Dの絶対値が180°未満(π未満)の場合、不連続電流モードの位相制御を実行すると判定する。制御装置106は、制御変数Dの絶対値が180°以上(π以上)の場合、連続電流モードの位相制御を実行すると判定する。
【0109】
制御装置106は、制御変数Dの極性に応じて、電力変換システム100を力行動作させるか回生動作させるか判定する。制御装置106は、制御変数Dがゼロ以上の場合、電力変換システム100を力行動作させると判定する。力行動作は、第1ブリッジ回路111から第2ブリッジ回路112に電力を伝送する動作である。制御装置106は、制御変数Dがゼロ未満の場合、電力変換システム100を回生動作させると判定する。回生動作は、第2ブリッジ回路112から第1ブリッジ回路111に電力を伝送する動作である。
【0110】
制御装置106は、一次側直流電圧Eと二次側直流電圧Eのいずれが高いかによって、電力を受け取る方のブリッジ回路のいずれか一つのレグの上下アームをオフ状態とする。より詳しくは、制御装置106は、図17に示す3つの条件を組み合わせることで、電力を受け取る方のブリッジ回路のいずれか一つのレグの上下アームをオフ状態とする。制御装置106は、|D|<180°、かつ、D<0、かつ、E<Eのとき、第2スイッチングパターン(図10)による不連続電流モードの位相制御を実行する。制御装置106は、|D|<180°、かつ、D<0、かつ、E≧Eのとき、第4スイッチングパターン(図14)による不連続電流モードの位相制御を実行する。制御装置106は、|D|<180°、かつ、D≧0、かつ、E<Eのとき、第1スイッチングパターン(図6)による不連続電流モードの位相制御を実行する。制御装置106は、|D|<180°、かつ、D≧0、かつ、E≧Eのとき、第3スイッチングパターン(図12)による不連続電流モードの位相制御を実行する。
【0111】
上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
100 電力変換システム
102 絶縁トランス
106 制御装置
110 絶縁DC/DCコンバータ
111 第1ブリッジ回路
112 第2ブリッジ回路
【要約】
【課題】電力変換効率の向上。
【解決手段】絶縁トランスと、前記絶縁トランスの一次側に接続される第1ブリッジ回路と、前記絶縁トランスの二次側に接続される第2ブリッジ回路と、前記絶縁トランスの一次側および二次側の各交流電圧の双方がゼロ電圧となる期間を制御する不連続電流モードの位相制御を実行する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記不連続電流モードにおいて、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路のうち一方のブリッジ回路から他方のブリッジ回路へ電力を伝送する場合、前記第1ブリッジ回路の第1レグと第2レグ及び前記第2ブリッジ回路の第3レグと第4レグのうち、前記他方のブリッジ回路のいずれか一つのレグの上下アームをオフ状態とし、かつ、残りの各レグの上下アームをオフ状態とするデッドタイムを挟んで前記残りの各レグの上下アームを交互にスイッチングさせる、電力変換システム。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図16
図17