(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】リニア搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 54/02 20060101AFI20241217BHJP
H02K 41/02 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B65G54/02
H02K41/02 C
(21)【出願番号】P 2024545050
(86)(22)【出願日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2023016134
【審査請求日】2024-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 健治
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0389675(US,A1)
【文献】特許第7262680(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0180872(US,A1)
【文献】国際公開第2019/171456(WO,A1)
【文献】特許第7238149(JP,B2)
【文献】特開2020-129854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 54/02
H02K 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に磁石が配置された可動子と、
複数のコイルを有し、前記複数のコイルの電磁力により前記可動子を移動させる第1のモジュール及びコイルを有さない磁性材料で形成された第2のモジュールが前記可動子の進行方向に沿って配置された搬送路と、を備え、
前記搬送路は、
前記可動子の前記側面の一方の側に前記第1のモジュールが配置された非分岐部分と、
前記可動子の前記側面の一方の側に前記第1のモジュールが配置され、他方の側に前記第2のモジュールが配置された分岐部分と、
を備えることを特徴とするリニア搬送システム。
【請求項2】
前記磁性材料は鋼板である、
請求項1に記載のリニア搬送システム。
【請求項3】
側面に磁石が配置された可動子と、
複数のコイルを有し、前記複数のコイルの電磁力により前記可動子を移動させる第1のモジュール及びコイルを有さない磁性材料(但し、前記磁性材料が永久磁石である場合を除く。)で形成された第2のモジュールが前記可動子の進行方向に沿って配置された搬送路と、を備え、
前記搬送路は、
前記可動子の前記側面の一方の側に前記第1のモジュールが配置された非分岐部分と、
前記可動子の前記側面の一方の側に前記第1のモジュールが配置され、他方の側に前記第2のモジュールが配置された分岐部分と、
を備えることを特徴とするリニア搬送システム。
【請求項4】
前記分岐部分で前記可動子が進行する場合に、前記可動子に作用する前記進行方向と垂直な方向の力が、前記第1のモジュールによる電磁力よりも前記第2のモジュールによる電磁力のほうが大きくなることで、前記可動子と前記第2のモジュールの前記進行方向に垂直な距離が小さくなることを特徴とする請求項1
から3のいずれか1項に記載のリニア搬送システム。
【請求項5】
前記分岐部分で前記可動子が進行する場合に、前記可動子に作用する前記進行方向と垂直な方向の力が、前記第1のモジュールによる電磁力よりも前記第2のモジュールによる電磁力のほうが小さくなることで、前記可動子と前記第2のモジュールの前記進行方向に垂直な距離が大きくなることを特徴とする請求項1
から3のいずれか1項に記載のリニア搬送システム。
【請求項6】
前記第2のモジュールは、前記第1のモジュールと前記第2のモジュールとの前記可動子の前記進行方向に垂直な方向の距離が前記進行方向に沿って変化する形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のリニア搬送システム。
【請求項7】
前記第2のモジュールは、前記可動子の前記進行方向と垂直な方向に段差が設けられている請求項
6に記載のリニア搬送システム。
【請求項8】
前記第2のモジュールは、前記可動子の前記進行方向と垂直な方向に対して傾斜した傾斜部が設けられている請求項
6に記載のリニア搬送システム。
【請求項9】
前記第2のモジュールは、前記可動子の前記進行方向に垂直な軸に対して、対称な形状である請求項1から
3のいずれか1項に記載のリニア搬送システム。
【請求項10】
前記搬送路の前記非分岐部分と前記分岐部分との間に設けられ、前記非分岐部分から前記分岐部分に移動するにしたがって前記第1のモジュールと前記第2のモジュールとの前記可動子の前記進行方向に垂直な方向の距離が小さくなる切り替わり部を備える請求項1から
3のいずれか1項に記載のリニア搬送システム。
【請求項11】
前記第2のモジュールを前記可動子の前記進行方向と垂直な方向に可動させる可動機構を備える請求項1から
3のいずれか1項に記載のリニア搬送システム。
【請求項12】
前記第2のモジュールが前記可動子の前記進行方向に沿って複数設けられ、複数の前記第2のモジュールに前記可動機構が設けられている請求項
11に記載のリニア搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リニアモータの推力を使用するリニア搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の磁石が取り付けられた可動子が複数の固定子モジュールによって構成されるリニアガイドに沿って移動し、電磁力により搬送路の分岐及び合流が可能な技術が知られている。例えば特許文献1は、搬送路が分岐している区間において、コイルを有する固定子モジュールが可動子の両側に配置され、片側の固定子モジュールのコイルに通電して、可動子を分岐方向に移動させる横方向の力を加える構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のリニア搬送システムでは、搬送路が分岐している区間において、コイルを有する固定子モジュールを可動子の両側に配置しているため、リニア搬送システムの重量が増加する課題がある。
【0005】
本開示は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、搬送路が分岐する場合でも重量の増加を防ぐリニア搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るリニア搬送システムは、側面に磁石が配置された可動子と、複数のコイルを有し、複数のコイルの電磁力により可動子を移動させる第1のモジュール及びコイルを有さない磁性材料で形成された第2のモジュールが可動子の進行方向に沿って配置された搬送路と、を備え、搬送路は、可動子の側面の一方の側に第1のモジュールが配置された非分岐部分と、可動子の側面の一方の側に第1のモジュールが配置され、他方の側に第2のモジュールが配置された分岐部分と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るリニア搬送システムによれば、搬送路の分岐部分において、可動子の側面の一方の側に、コイルを有さない第2のモジュールを用いるため、重量の増加を防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態1に係るリニア搬送システムを示す概略構成図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係るリニア搬送システムの第1のモジュール及び第2のモジュールを示す断面図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の正の向きに進行し、Y方向の負の向きに吸引される場合を示す断面図である。
【
図4】本開示の実施の形態1に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の負の向きに進行し、Y方向の正の向きに吸引される場合を示す断面図である。
【
図5】本開示の実施の形態1に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の正の向きに進行し、Y方向の正の向きに吸引される場合を示す断面図である。
【
図6】本開示の実施の形態1に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の負の向きに進行し、Y方向の負の向きに吸引される場合を示す断面図である。
【
図7】本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムの第1のモジュール及び第2のモジュールを示す断面図である。
【
図8】本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の正の向きに進行し、Y方向の負の向きに吸引される場合を示す断面図である。
【
図9】本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向負の向きに進行し、Y方向の正の向きに吸引される場合を示す断面図である。
【
図10】本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の正の向きに進行し、段差を通過する前にY方向の正の向きに吸引される場合を示す断面図である。
【
図11】本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の正の向きに進行し、段差を通過した後にY方向の正の向きに吸引される場合を示す断面図である。
【
図12】本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の負の向きに進行し、段差を通過する前にY方向負の向きに吸引される場合を示す断面図である。
【
図13】本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の負の向きに進行し、段差を通過した後にY方向負の向きに吸引される場合を示す断面図である
【
図14】本開示の実施の形態3に係るリニア搬送システムの第1のモジュール及び第2のモジュールを示す断面図である。
【
図15】本開示の実施の形態4に係るリニア搬送システムの第1のモジュール及び第2のモジュールを示す断面図である。
【
図16】本開示の実施の形態5に係るリニア搬送システムの第1のモジュール及び第2のモジュールを示す断面図である。
【
図17】本開示の実施の形態6に係るリニア搬送システムの第1のモジュール及び第2のモジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、実施の形態に係るリニア搬送システムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係るリニア搬送システムを示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施の形態における方向は、可動子4の進行方向、可動子4の進行方向と直交する方向をそれぞれX方向及びY方向と定義し、X方向における右側を正、Y方向における上側を正の向きとする。なお、説明の便宜上、上述のような座標系を設定して説明を行ったが、リニア搬送システムの構成によりX方向及びY方向を適宜設定してもよい。
【0011】
リニア搬送システム1は側面に磁石41が配置された可動子4と、複数のコイル22を有し、複数のコイル22の電磁力により可動子4を移動させる第1のモジュール2及びコイルを有さない磁性材料で形成された第2のモジュール3が可動子4の進行方向に沿って配置された搬送路7とを備える。搬送路7は、可動子4の側面の一方の側に第1のモジュール2が配置された非分岐部分6と、可動子4の側面の一方の側に第1のモジュール2が配置され、他方の側に第2のモジュール3が配置された分岐部分5とを備える。
【0012】
図2は、本開示の実施の形態1に係るリニア搬送システムの第1のモジュール及び第2のモジュールを示す断面図である。
図2に示すように、第1のモジュール2は、鉄心21と複数のコイル22を有する。鉄心21は複数のティース23を有しており、複数のコイル22は複数のティース23のいずれかに巻回されている。第2のモジュール3は、磁性材料で構成されているが、コイルを有さない。この第2のモジュール3は可動子4が有する磁石41との距離が一定となる平坦な形状であり、可動子4の推進時の損失を極力小さくするために、例えば積層鋼板で構成される。ここでは、第1のモジュール2にコイルを有する場合を示したが、第1のモジュール2と第2のモジュール3を入れ替えて、第1のモジュール2を磁性材料のみ、第2のモジュール3を鉄心とコイルで構成してもよい。
【0013】
可動子4は、非分岐部分6において、第1のモジュール2の側面の一方の側に位置しており、第1のモジュール2からの電磁力を受けて進行する。搬送路7の分岐部分5では、可動子4は第1のモジュール2と第2のモジュール3との間に位置し、第1のモジュール2が有する複数のコイル22からの電磁力で推進される。ここで、
図2に示すように、可動子4の進行方向がX方向であり、進行方向と垂直な方向がY方向である。また、複数の可動子4の各々は、搬送路7において独立して制御される。ここでは図示しないが、モータ駆動制御装置が、可動子4の近傍に位置する第1のモジュール2の各コイル22に電流を供給する。例えば、電流は、UVWの三相交流の電流ではなく、各相を独立に制御する単相交流の電流であり、各コイル22に任意の波形で電流が供給される。
【0014】
可動子4は、両側の側面に配置された複数の磁石41を有する。
図2に示すように、可動子4の両側の側面における磁石41は、可動子4のY方向における磁石41の磁極方向が反転するように配列されている。実施の形態1では、Y方向における磁石41の配列が同じであってもよいし、Y方向における磁石41の配列がX方向にずれていてもよい。
【0015】
図3は、本開示の実施の形態1に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の正の向きに進行し、Y方向の負の向きに吸引される場合を示す断面図である。搬送路7の分岐部分5において、可動子4は、第1のモジュール2と第2のモジュール3との間に位置する。可動子4が有する複数の磁石41の各々は、第1のモジュール2及び第2のモジュール3と向き合う。第1のモジュール2のコイル22に通電されると、可動子4に進行方向と平行な向きの電磁力(推進力)が加わる。分岐部分5では、可動子4を選択された経路に導くために、可動子4の近傍のコイル22が通電され、第1のモジュール2は、可動子4の進行方向に対して垂直な方向に電磁力(分岐横力)を作用させる。これにより、第1のモジュール2は、可動子4を移動させる。少なくとも二つ以上のコイル22に通電することで、任意の推進力と分岐横力とを同時に発生させることができる。
【0016】
図3に示すように、分岐部分5において、可動子4がX方向の負の向きから正の向きに移動し、第1のモジュール2と可動子4の磁気吸引力Fa1が、第2のモジュール3と可動子4との磁気吸引力Fb1よりも大きいときに、リニア搬送システム1のユーザによって磁気吸引力Fb1が大きくなる方向の経路が選択された場合を想定する。リニア搬送システム1は、可動子4にY方向の正の向きから負の向きへの電磁力Fdを作用させる。なお、このときの可動子4と第1のモジュール2及び第2のモジュール3とのギャップは一例であり、この値に限られるものではない。これにより、第2のモジュール3と可動子4のY方向の負の向きにおける間隔Lb2は、電磁力が作用する前の第2のモジュール3と可動子4のY方向における間隔Lb1より小さくなる。この作用により、リニア搬送システム1は、第2のモジュール3と可動子4の磁気吸引力Fb1が大きくなる方向の経路に可動子4を進行させることができる。分岐部分5で経路が選択された後、可動子4は非分岐部分6の第1のモジュール2からの電磁力Fdを受けて進行する。つまり、電磁力の作用で移動した可動子4の距離Ls、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の距離La1、La2及び第2のモジュール3と可動子4の電磁力が作用する前後の距離Lb1、Lb2、および電磁力Fdと、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fa1、Fa2、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fb1、Fb2において以下の式(1)から(5)の関係が成立している。
【0017】
【0018】
なお、式(1)から(5)では、電磁力を作用した後の第1のモジュール2と可動子4のY方向の正の向きにおける磁気吸引力Fa2よりも、第2のモジュール3と可動子4のY方向の負の向きにおける磁気吸引力Fb2が大きいが、第2のモジュール3の形状によっては、第1のモジュール2と可動子4のY方向の正の向きにおける間隔La2とLb2の関係が、La2<Lb2となっていてもよい。このように、本開示の実施の形態1のリニア搬送システム1では、分岐部分5で可動子4がX方向の負の向きから正の向きに進行する場合に、可動子4に作用する進行方向と垂直な方向の力が、第1のモジュール2による電磁力よりも第2のモジュール3による電磁力のほうが大きくなることで、可動子4と第2のモジュール3の進行方向に垂直な距離が小さくなることを特徴とする。
【0019】
図4は、本開示の実施の形態1に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の負の向きに進行し、Y方向の正の向きに吸引される場合を示す断面図である。
図4に示すように、分岐部分5において、可動子4がX方向の負の向きに移動し、第1のモジュール2と可動子4の磁気吸引力Fa3よりも、第2のモジュール3と可動子4との磁気吸引力Fb3が大きいときに、リニア搬送システム1のユーザによって磁気吸引力Fa3が大きくなる方向の経路が選択された場合を想定する。リニア搬送システム1は、可動子4にY方向の負の向きから正の向きへの電磁力を作用させる。それにより、電磁力が作用した後の第2のモジュール3と可動子4のY方向の負の向きにおける間隔Lb4は、電磁力が作用する前の第2のモジュール3と可動子4のY方向の負の向きにおける間隔Lb3より大きくなる。この作用により、リニア搬送システム1は、第1のモジュール2と可動子4の磁気吸引力が大きくなる方向の経路に可動子4を進行させることができる。分岐部分5で経路が選択されたあと、可動子4は非分岐部分6の第1のモジュール2からの電磁力を受けて進行する。つまり、電磁力の作用で移動した可動子4の距離Ls、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の距離La3、La4及び第2のモジュール3と可動子4の電磁力が作用する前後の距離Lb3、Lb4および電磁力Fdと、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fa3、Fa4、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fb3、Fb4において以下の式(6)から(10)関係が成立している。
【0020】
【0021】
なお、式(6)から(10)では、電磁力が作用する前の第1のモジュール2と可動子4のY方向の正の向きにおける磁気吸引力Fa3よりも、第2のモジュール3と可動子4のY方向の負の向きにおける磁気吸引力Fb3が大きいが、第2のモジュール3の形状によっては、第1のモジュール2と可動子4のY方向の正の向きにおける間隔La3とLb3の関係が、La3<Lb3となってもよい。このように、本開示の実施の形態1のリニア搬送システム1では、分岐部分5で可動子4がX方向の正の向きから負の向きに進行する場合に、可動子4に作用する進行方向と垂直な方向の力が、第1のモジュール2による電磁力よりも第2のモジュール3による電磁力のほうが小さくなることで、可動子4と第2のモジュール3の進行方向に垂直な距離が大きくなることを特徴とする。
【0022】
図5は、本開示の実施の形態1に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の正の向きに進行し、Y方向の正の向きに吸引される場合を示す断面図である。
図5に示すように、分岐部分5において、可動子4がX方向の正の向きに移動し、第1のモジュール2と可動子4の磁気吸引力Fa5よりも、第2のモジュール3と可動子4の磁気吸引力Fb5が大きいとき、リニア搬送システム1のユーザによって磁気吸引力Fa5が大きくなる方向の経路が選択された場合を想定する。リニア搬送システム1は、可動子4にY方向の負の向きから正の向きへの電磁力を作用させる。それにより、電磁力が作用した後の第2のモジュール3と可動子4の間隔Lb6は、電磁力が作用する前の第2のモジュール3と可動子4のY方向の負の向きにおけるLb5より大きくなる。この作用により、リニア搬送システム1は、第1のモジュール2と可動子4の磁気吸引力が大きくなる方向の経路に可動子4を進行させることができる。分岐部分5を経て経路が選択された後、可動子4は非分岐部分6の第1のモジュール2からの電磁力を受けて進行する。このとき、電磁力の作用で移動した可動子4の距離Ls、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の距離La5、La6及び第2のモジュール3と可動子4の電磁力が作用する前後の距離Lb5、Lb6および電磁力Fdと、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fa5、Fa6、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fb5、Fb6において以下の式(11)から(15)の関係が成立している。
【0023】
【0024】
なお、式(11)から(15)では、電磁力を作用する前の第1のモジュール2と可動子4のY方向の正の向きにおける磁石41の磁気吸引力Fa5よりも、第2のモジュール3と可動子4のY方向の負の向きにおける磁石41の磁気吸引力Fb5が大きいが、第2のモジュールの形状によっては、第1のモジュール2と可動子4の磁石41のY方向の正の向きにおける間隔La5と、第1のモジュール2と可動子4の磁石41のY方向の負の向きにおける間隔Lb5の関係が、La5<Lb5となってもよい。このように、本開示の実施の形態1のリニア搬送システム1では、分岐部分5で可動子4がX方向の負の向きから正の向きに進行する場合に、可動子4に作用する進行方向と垂直な方向の力が、第1のモジュール2による電磁力よりも第2のモジュール3による電磁力のほうが小さくなることで、可動子4と第2のモジュール3の進行方向に垂直な距離が大きくなることを特徴とする。
【0025】
図6は、本開示の実施の形態1に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の負の向きに進行し、Y方向の負の向きに吸引される場合を示す断面図である。
図6に示すように、分岐部分5において、可動子4がX方向の負の向きに移動し、第1のモジュール2と可動子4のY方向の正の向きにおける磁気吸引力Fa7が、第2のモジュール3と可動子のY方向の負の向きにおける磁気吸引力Fb7よりも大きいとき、リニア搬送システム1のユーザによって第2のモジュール3と可動子4の磁気吸引力Fb7が大きくなる方向の経路が選択された場合を想定する。リニア搬送システム1は、可動子4にY方向の正の向きからY方向の負の向きへの電磁力を作用させる。それにより、電磁力が作用した後の第2のモジュール3と可動子4のY方向の負の向きにおける間隔Lb8は、電磁力が作用する前の第2のモジュール3と可動子4のY方向の負の向きにおける間隔Lb7より小さくなる。この作用により、リニア搬送システム1は、第2のモジュール3と可動子4のY方向の負の向きの磁気吸引力が大きくなる方向の経路に可動子4を進行させることができる。分岐部分5で経路が選択された後、可動子4は非分岐部分6の第1のモジュール2からの電磁力を受けて進行する。このとき、電磁力の作用で移動した可動子4の距離Ls、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の距離La7、La8及び第2のモジュール3と可動子4の電磁力が作用する前後の距離Lb7、Lb8および電磁力Fdと、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fa7、Fa8、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fb7、Fb8において以下の式(16)から(20)の関係が成立している。
【0026】
【0027】
なお、式(16)から(20)では、電磁力を作用する前の第1のモジュール2と可動子4のY方向の正の向きにおける磁気吸引力Fa8よりも、第2のモジュール3と可動子4のY方向の負の向きにおける磁気吸引力Fb8が大きいが、第2のモジュール3の形状によっては、第1のモジュール2と可動子4のY方向の正の向きにおける間隔La8と、第1のモジュール2と可動子4のY方向の負の向きにおける間隔Lb8の関係が、La8<Lb8となってもよい。このように、本開示の実施の形態1のリニア搬送システム1では、分岐部分5で可動子4がX方向の正の向きから負の向きに進行する場合に、可動子4に作用する進行方向と垂直な方向の力が、第1のモジュール2による電磁力よりも第2のモジュール3による電磁力のほうが大きくなることで、可動子4と第2のモジュール3の進行方向に垂直な距離が小さくなることを特徴とする。
【0028】
上述したように、本開示の実施の形態1に係るリニア搬送システム1は、側面に磁石41が配置された可動子4と、複数のコイル22を有し、複数のコイル22の電磁力により可動子4を移動させる第1のモジュール2及びコイルを有さない磁性材料で形成された第2のモジュール3が可動子4の進行方向に複数配置された搬送路7とを備える。搬送路7は、可動子4の側面の一方の側に第1のモジュール2が配置された非分岐部分6と、可動子4の側面の一方の側に第1のモジュール2が配置され、他方の側に第2のモジュール3が配置された分岐部分5と、を備えることを特徴とする。従来のリニア搬送システムでは経路が分岐している場合も分岐していない区間と同様のコイルが配置されていたが、本開示に係るリニア搬送システム1は、第2のモジュール3は磁性材料のみで構成され、コイルが巻回されていない。このため本開示の実施の形態1に係るリニア搬送システムによれば、搬送路7が分岐する場合でも、分岐部分5で可動子4の側面の一方の側に第2のモジュール3を用いるため、リニア搬送システム1の重量の増加を防ぎ、リニア搬送システム1が大型化しないという効果を奏する。
【0029】
また、分岐部分において、コイルを有さない第2のモジュール3を用いたことで、第1のモジュール2を両側に配置する場合に比べて、コイルに通電するためのインバータの数を減らすことができ、リニア搬送システム1の重量の増加を防止でき、リニア搬送システム1が大型化しないという効果を奏する。
【0030】
加えて、本開示のリニア搬送システム1によれば、コイルの削減によって配線作業が減り、モータの組立が容易になる。さらにコイルを有さない第2のモジュール3の形状を第1のモジュール2の形状よりも小さくできるため、第2のモジュール3の重量も低減可能である。なお、第2のモジュール3の形状を第1のモジュール2の鉄心形状と同じにしてもよいし、コギング推力低減のために第2のモジュール3に複数のティースを有してもよいし、第1のモジュールのティースと第2のモジュールのティースの位相をずらしてもよい。
【0031】
実施の形態2.
実施の形態2では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態2に係るリニア搬送システム1bについて説明する。
【0032】
図7は本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムの第1のモジュール及び第2のモジュールを示す断面図である。
図7に示すように、実施の形態2に係るリニア搬送システム1bでは、実施の形態1の構成に加えて、第2のモジュール31に進行方向と垂直な方向に段差8が設けられている。この段差8は、第2のモジュール31と可動子4が対向する範囲において、第2のモジュール31の表面から磁石41の表面までの平均距離が、第2のモジュール31のX方向の位置で変化していることを意味する。
図7では、第2のモジュール31と磁石41の距離が位置によって変化するような形状としているが、第1のモジュール2の鉄心21の形状を変化させてもよいし、第1のモジュール2の鉄心21及び第2のモジュール31の形状の両方を変化させてもよい。
【0033】
図8は、本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の正の向きに進行し、Y方向の負の向きに吸引される場合を示す断面図である。
図8に示すように、第2のモジュール31は進行方向と垂直な方向、つまりY方向に段差8を有する。この段差8により、可動子4の第2のモジュール31と対面する側の距離のほうが第1のモジュール2と対面する側の距離よりも小さくなる。
図8では、分岐部分5において、可動子4がX方向正の向きに移動し、第1のモジュール2と可動子4の磁気吸引力Fa1が、第2のモジュール31と可動子4のYとの磁気吸引力Fb1より大きいときに、リニア搬送システム1bのユーザによって磁気吸引力Fb1が大きくなる方向の経路が選択された場合を想定している。このとき、電磁力の作用で移動した可動子4の距離Ls、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の距離La1、La2及び第2のモジュール3と可動子4の電磁力が作用する前後の距離Lb1、Lb2および電磁力Fdと、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fa1、Fa2、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力F1、Fb2において以下の式(21)から(26)の関係が成立している。
【0034】
【0035】
リニア搬送システム1bは、可動子4が段差8を通過後の領域において、Y方向の正の向きから負の向きへの電磁力を作用させる。段差8を通過後の第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb1’は、段差8を通過前の第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb1よりも小さくなっている。段差8を通過後の磁気吸引力Fb1’は|Fb1’|>|Fb1|と大きくなるが、式(24)より、電磁力を作用する前は、Fa1+Fb1’>0の関係が成り立ち、Y方向の正の向きの磁気吸引力が大きくなっている。電磁力を作用させると、電磁力が作用する前の第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb1’よりも、電磁力が作用した後の第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb2が小さくなる。この作用により、リニア搬送システム1は、第2のモジュール31と可動子4の磁気吸引力が大きくなる方向の経路に可動子4を進行させることができる。分岐部分5で経路が選択された後、可動子4は非分岐部分6の第1のモジュール2からの電磁力を受けて進行する。
【0036】
ここで式(21)のGは第2のモジュール31に設けられた段差8の大きさを表している。式(24)より、段差8を設けることで|Fa1+Fb1|>|Fa1+Fb1’|が成り立つため、段差8のない状態で可動子をY方向の負の向きに移動させる電磁力よりも、段差8のある領域において可動子4をY方向の負の向きに移動させる電磁力のほうが小さくなる。
【0037】
図9は、本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の負の向きに進行し、Y方向の正の向きに吸引される場合を示す断面図である。
図9では、分岐部分5において、可動子4がX方向の負の向きに進行し、第1のモジュール2と可動子4磁気吸引力Fa3よりも第2のモジュール31と可動子4の磁気吸引力Fb3が大きいときに、リニア搬送システム1bのユーザによって磁気吸引力Fa3が大きくなる方向の経路が選択された場合を想定している。このとき電磁力の作用で移動した可動子4の距離Ls、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の距離La3、La4及び第2のモジュール3と可動子4の電磁力が作用する前後の距離Lb3、Lb4および電磁力Fdと、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fa3、Fa4、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fb3、Fb4において以下の式(27)から(32)の関係が成立している。
【0038】
【0039】
リニア搬送システム1bは、可動子4が段差8を通過後の領域において、Y方向の負の向きから正の向きへの電磁力を作用させる。段差8を通過後の第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb3’は、段差8を通過前の第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb3よりも大きくなっている。段差8を通過後に磁気吸引力Fb3’は|Fb3’| < |Fb3|と小さくなるが、式(30)より、電磁力を作用する前は、Fa3 + Fb3’< 0の関係が成り立ち、Y方向の負の向きの磁気吸引力が大きくなっている。電磁力Fを作用させると、電磁力が作用する前の第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb3’よりも、第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb4が大きくなる。この作用により、リニア搬送システム1bは、第1のモジュール2と可動子4の磁気吸引力が大きくなる方向の経路に可動子4を進行させることができる。分岐部分5で経路が選択された後、可動子4は非分岐部分6の第1のモジュール2からの電磁力を受けて進行する。
【0040】
ここで、
図8の段差8を通過した後で電磁力が作用した可動子4の状態と、
図9の段差8を通過する前で電磁力が作用する前の可動子4の状態が同じであり、以下の式(33)及び式(34)の関係が成り立つ。
【0041】
【0042】
また、
図8の段差8を通過する前で電磁力が作用する前の可動子4の状態と、
図9の段差8を通過した後で電磁力が作用した可動子4の状態が同じであり、以下の式(35)及び式(36)の関係が成り立つ。
【0043】
【0044】
このように、本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムでは、式(27)から(32)のように、段差8を設けることで、|Fa3 + Fb3| > |Fa3 + Fb3’|が成り立つため、段差8のない状態で可動子4をY方向の正の向きに移動させる電磁力よりも、段差8のある領域において可動子4をY方向の正の向きに移動させる電磁力のほうが小さくなる。
【0045】
図10は、本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の正の向きに進行し、段差を通過する前にY方向の正の向きに吸引される場合を示す断面図である。
図10では、分岐部分5において、可動子4がX方向の正の向きに移動し、第1のモジュール2と可動子4の磁気吸引力Fa5よりも、第2のモジュール31と可動子4の磁気吸引力Fb5が大きいとき、リニア搬送システム1bのユーザによって磁気吸引力Fa5が大きくなる方向の経路が選択された場合を想定している。
【0046】
図11は、本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の正の向きに進行し、段差を通過した後にY方向の正の向きに吸引される場合を示す断面図である。
図11は、可動子4の進行方向と吸引される方向は
図10と同様であるが、分岐部分5において可動子4が経路を決定する際に、第2のモジュール31に吸引される場所が異なる。このとき、電磁力の作用で移動した可動子4の距離Ls、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の距離La5、La6及び第2のモジュール3と可動子4の電磁力が作用する前後の距離Lb5、Lb6および電磁力Fdと、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fa5、Fa6、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fb5、Fb6において以下の式(37)から(42)の関係が成立している。
【0047】
【0048】
リニア搬送システム1bは、可動子4が段差8を通過前の領域において、Y方向の正の向きへの電磁力を作用させる。
図10の段差8を通過前の第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb5は、
図11の電磁力を作用させることなく段差8を通過した場合の第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb5’よりも大きくなっている。
図10の段差8の通過前の磁気吸引力Fbと、
図11の電磁力を作用させることなく段差8を通過した場合のFb5’は|Fb5|<|Fb5’|が成り立つため、可動子4をY方向の正の向きに移動させる電磁力は、段差8を通過する前の状態のほうが小さくなる。可動子4に電磁力を作用する前は、式(40)より、Fa5+Fb5<0の関係が成り立ち、Y方向の負の向きの磁気吸引力が大きくなっている。電磁力を作用させると、電磁力が作用する前の第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb5よりも、第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb6が大きくなり、リニア搬送システム1bは、第1のモジュール2と可動子4の磁気吸引力が大きくなる方向の経路に可動子4を進行させることができる。なお、段差8を通過した後は、第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb6’についてLb6>Lb6’が成り立つが、第1のモジュール2と可動子4の磁気吸引力Fa6のほうが、第2のモジュールと可動子4の磁気吸引力Fb6’よりも大きいため、Y方向の負の向きの磁気吸引力が大きくなる方向の経路に誤って進行することはない。
【0049】
ここで、
図9の段差8を通過した後で電磁力が作用する前の可動子4の状態と、
図10の段差8を通過する前で電磁力が作用する前の可動子4の状態が同じであり、以下の式(43)及び式(44)の関係が成り立つ。
【0050】
【0051】
また、
図8の段差8を通過した後で電磁力が作用する前の可動子の状態と、
図10の段差8を通過した後で電磁力が作用した可動子4の状態が同じであり、以下の式(45)及び式(46)の関係が成り立つ。
【0052】
【0053】
以上より、本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムでは1bでは、段差8を設けることで、段差8を通過後は|Fa5+Fb5’|>|Fa5+Fb5|が成り立つため、段差8を通過後の可動子4をY方向の正の向きに移動させる電磁力よりも、段差8を通過前の領域における可動子4をY方向の正の向きに移動させる電磁力のほうが小さくなる。
【0054】
図12は、本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の負の向きに進行し、段差を通過する前にY方向負の向きに吸引される場合を示す断面図である。
図12では、分岐部分5において、可動子4がX方向の負の向きに移動し、第1のモジュール2と可動子4の磁気吸引力Fa7のほうが、第2のモジュール31と可動子4の磁気吸引力Fb7より大きいとき、リニア搬送システム1bのユーザによって磁気吸引力Fb7の大きくなる方向の経路が選択された場合を想定している。
【0055】
図13は、本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムの分岐部分で可動子がX方向の負の向きに進行し、段差を通過した後にY方向負の向きに吸引される場合を示す断面図である。
図13は、可動子4の進行方向と吸引される方向は
図12と同様であるが、分岐部分5において可動子4が経路を決定する際に、第2のモジュール31に吸引される場所が異なる。このとき、電磁力の作用で移動した可動子4の距離Ls、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の距離La7、La8及び第2のモジュール3と可動子4の電磁力が作用する前後の距離Lb7、Lb8および電磁力Fdと、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fa7、Fa8、第1のモジュール2と可動子4の電磁力が作用する前後の磁気吸引力Fb7、Fb8において以下の式(47)から(52)の関係が成立している。
【0056】
【0057】
リニア搬送システム1bは、可動子4が段差8を通り過ぎる前の領域において、Y方向の正の向きから負の向きへの電磁力を作用させる。段差8を通過前の第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb7は、電磁力を作用させることなく段差8を通過した場合の第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb7’よりも小さくなっている。段差8の通過前の磁気吸引力Fb7について、電磁力を作用させることなく段差8を通過した場合の磁気吸引力Fb7’と比較して、|Fb7|>|Fb7’|が成り立つため、可動子4をY方向の負の向きに移動させる電磁力は、段差8を通過する前の状態のほうが小さくなる。可動子4に電磁力を作用する前は、式(50)より、Fa7+Fb7>0の関係が成り立ち、Y方向の正の向きの磁気吸引力が大きくなっている。電磁力を作用させると、電磁力が作用する前の第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb7よりも、第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb8が小さくなり、リニア搬送システム1bは、第2のモジュール31と可動子4のY方向の正の向きの磁気吸引力が大きくなる方向の経路に可動子4を進行させることができる。なお、段差8を通過した後は、第2のモジュール31と可動子4の間隔Lb8’についてLa8>Lb8’が成り立つが、第1のモジュール2と可動子4の磁気吸引力Fa8のほうが、第2のモジュール31と可動子4の磁気吸引力Fb8’よりも小さいため、Y方向の正の向きの磁気吸引力が大きくなる方向の経路に誤って進行することはない。
【0058】
ここで、
図8の段差8を通過した後の電磁力が作用する前の可動子4の状態と、
図12の段差8を通過する前の電磁力が作用する前の可動子4の状態が同じであり、以下の式(53)及び式(54)の関係が成り立つ。
【0059】
【0060】
また、
図9の段差8を通過した後の電磁力が作用する前の可動子の状態と、
図12の段差8を通過した後の電磁力が作用した後の可動子の状態が同じであり、以下の式(55)及び(56)の関係が成り立つ。
【0061】
【0062】
以上より、本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムでは1bでは、段差8を設けることで、段差8を通過後は、|Fa7+Fb7’|>|Fa7+Fb7|が成り立ち、段差8を通過後に可動子4をY方向の負の向きに移動させる電磁力よりも、段差8前の領域において可動子4をY方向の負の向きに移動させる電磁力のほうが小さくなる。
【0063】
上述したように、本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システム1bは、実施の形態1と同様に、第2のモジュール31は磁性材料のみで構成され、コイルが巻回されていない。このため、本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システム1bによれば、実施の形態1と同様に、搬送路7が分岐する場合でも、分岐部分5で可動子4の側面の一方の側に第2のモジュール3を用いるため、リニア搬送システム1の重量の増加を防ぎ、リニア搬送システム1が大型化しないという効果を奏する。
【0064】
さらに、本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システム1bでは、は第2のモジュール31に進行方向と垂直な方向に段差8が設けられているため、可動子4をY方向の負の向きに移動させる場合に、段差8のない状態で可動子4をY方向の負の向きに移動させる電磁力よりも、段差8のある領域において可動子4をY方向の負の向きに移動させる電磁力のほうが小さくなる。可動子4をY方向の正の向きに移動させる場合は、段差8のない状態で可動子4をY方向の正の向きに移動させる電磁力よりも、段差8のある領域において可動子4をY方向の正の向きに移動させる電磁力のほうが小さくなる。また、可動子4をY方向の正の向きに移動させる場合に、段差8が設けられていることで、段差8を通過後の可動子4をY方向の正の向きに移動させる電磁力よりも、段差8を通過前の領域における可動子4をY方向の正の向きに移動させる電磁力のほうが小さくなる。可動子4をY方向の負の向きに移動させる場合でも、段差8を通過後に可動子4をY方向の負の向きに移動させる電磁力よりも、段差8前の領域において可動子4をY方向の負の向きに移動させる電磁力のほうが小さくなる。このように、本開示の実施の形態2に係るリニア搬送システムでは、より小さい電磁力(電流)で分岐できるため、モータ巻線又はインバータ容量の小型化も可能である。
【0065】
また、第2のモジュール3は、第1のモジュール2と第2のモジュール3との可動子4の進行方向に垂直な方向の距離が可動子4の進行方向に沿って変化する形状であってもよい。このとき、第1のモジュール2と第2のモジュール3との可動子4の進行方向に垂直な方向の距離は進行方向に沿って狭くなってもよく、広くなってもよい。
【0066】
実施の形態3.
実施の形態3では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態3に係るリニア搬送システム1cについて説明する。
【0067】
図14は、本開示の実施の形態3に係るリニア搬送システムの第1のモジュール及び第2のモジュールを示す断面図である。
図14に示すように、本開示の実施の形態3に係るリニア搬送システム1cでは、実施の形態1の構成に加えて、第2のモジュール32には、進行方向に対して垂直な方向に傾斜した傾斜部9が設けられている。この傾斜部9が設けられていることにより、第2のモジュール32と可動子4との距離がなだらかに変化することとなる。なお、この傾斜部9の形状は、可動子4の進行方向と垂直な方向に対して、第1のモジュール2との間の距離が狭まるように傾斜してもよく、第1のモジュール2との間の距離が広がるように傾斜してもよい。
【0068】
上述したように、本開示の実施の形態3に係るリニア搬送システム1cは、実施の形態1と同様に、第2のモジュール32は磁性材料のみで構成され、コイルが巻回されていない。このため、本開示の実施の形態3に係るリニア搬送システム1cによれば、実施の形態1と同様に、搬送路7が分岐する場合でも、分岐部分5で第2のモジュール3を用いるため、リニア搬送システム1の重量の増加を防ぎ、リニア搬送システム1が大型化しないという効果を奏する。
【0069】
さらに、本開示の実施の形態3に係るリニア搬送システム1cでは、第2のモジュール32と可動子4の距離がなだらかに変化している。このため、可動子4が有する磁石41と第2のモジュール32との間の磁束分布もなだらかに変化することとなり、可動子4に生じるコギング推力を低減することができる。
【0070】
実施の形態4.
実施の形態4では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態4に係るリニア搬送システム1dについて説明する。
【0071】
図15は、本開示の実施の形態4に係るリニア搬送システムの第1のモジュール及び第2のモジュールを示す断面図である。
図15に示すように、本開示の実施の形態4に係るリニア搬送システム1dは、実施の形態1の構成に加えて、第2のモジュール33が可動子4の進行方向に垂直な軸に対して、対称な形状である。
図15では、一例として、第2のモジュール33に傾斜部9が対称に設けられている場合を示している。第2のモジュール33を可動子4の進行方向に垂直な軸に対して、対称な形状とすることで、第1のモジュール2と可動子4の磁石41の距離と、第2のモジュール33と可動子4の磁石41の距離が一定となる。このときの第2のモジュール33の対称な形状とは、進行方向と垂直な軸に対して線対称な形状でもよく、回転対称な形状であってもよい。なお、進行方向と垂直な面を想定し、その垂直な面に対称な面対称でもよく、対称な形状はこれらに限られない。
【0072】
上述したように、本開示の実施の形態4に係るリニア搬送システム1dは、実施の形態1と同様に、第2のモジュール32は磁性材料のみで構成され、コイルが巻回されていない。このため、本開示の実施の形態4に係るリニア搬送システム1dによれば、実施の形態1と同様に、搬送路7が分岐する場合でも、分岐部分5で可動子4の側面の一方の側に第2のモジュール3を用いるため、リニア搬送システム1の重量の増加を防ぎ、リニア搬送システム1が大型化しないという効果を奏する。
【0073】
さらに、本開示の実施の形態4に係るリニア搬送システム1dでは、第2のモジュール33が可動子4の進行方向に垂直な軸に対して対称な形状であるため、第1のモジュール2と可動子4の磁石41の距離と、第2のモジュール33と可動子4の磁石41の距離が一定となり、可動子4が非分岐部分6から分岐部分5に乗り移る際に発生するコギング推力を低減することができる。
【0074】
実施の形態5.
実施の形態5では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態5に係るリニア搬送システム1eについて説明する。
【0075】
図16は、本開示の実施の形態5に係るリニア搬送システムの第1のモジュール及び第2のモジュールを示す断面図である。
図16に示すように、本開示の実施の形態5に係るリニア搬送システム1eでは、実施の形態1の構成に加えて、搬送路7の非分岐部分6と分岐部分5との間に非分岐部分6から分岐部分5に移動するにしたがって第1のモジュール2と第2のモジュール3との可動子4の進行方向に垂直な方向の距離が小さくなる切り替わり部10を備える。切り替わり部10は、磁性材料で構成され、コイルを有さない。この磁性材料には、可動子4の推進時の損失を極力小さくするために、積層した鋼板等を用いる。切り替わり部10は、第2のモジュール34と一体化していてもよく、可動子4の磁石41と切り替わり部10の距離が徐々に小さくなり、最終的に分岐部分5の第2のモジュール34と可動子4の磁石41の距離と同じになればよい。
【0076】
上述したように、本開示の実施の形態5に係るリニア搬送システム1eは、実施の形態1と同様に、第2のモジュール34はコイルを有さない磁性材料のみで構成され、コイルが巻回されていない。このため、本開示の実施の形態5に係るリニア搬送システム1eによれば、実施の形態1と同様に、搬送路7が分岐する場合でも、分岐部分5で可動子4の側面の一方の側に第2のモジュール3を用いるため、リニア搬送システム1の重量の増加を防ぎ、リニア搬送システム1が大型化しないという効果を奏する。
【0077】
さらに、本開示の実施の形態5に係るリニア搬送システム1eでは、搬送路7が非分岐部分6から分岐部分5に切り替わる場合に、第2のモジュール34と可動子4の距離が小さくなり、搬送路7が分岐部分5から非分岐部分6に切り替わる場合に、第2のモジュール34と可動子4の距離が大きくなる切り替わり部10とを備える。このため、可動子4が進行方向に移動するにつれて、切り替わり部10と可動子4の磁石41との距離が、徐々に分岐部分5の第2のモジュール34と可動子4の磁石41の距離と等しくなるため、パーミアンスの変化がなだらかになり、コギング推力が低減できる。
【0078】
実施の形態6.
実施の形態6では、本開示の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を使用し、同一または対応する部分についての説明は省略する。以下、図面を参照して、実施の形態6に係るリニア搬送システム1fについて説明する。
【0079】
図17は、本開示の実施の形態6に係るリニア搬送システムの第1のモジュール及び第2のモジュールを示す断面図である。
図17に示すように、本開示の実施の形態6に係るリニア搬送システム1fでは、実施の形態1の構成に加えて、第2のモジュール35に設けられ、第2のモジュール35を進行方向と垂直な方向に可動し、可動子4の進行方向を変える可動機構11を備える。可動機構11を備えることにより、第2のモジュール35の位置を変えることができ、第2のモジュール35と可動子4の磁石41の距離を任意に調整することが可能となる。
【0080】
図17に示すように、本開示の実施の形態6に係るリニア搬送システム1fでは、可動子4が分岐部分5を通過する際に、第2のモジュール35を進行方向と垂直な方向に移動させることで、第2のモジュール35と磁石41の吸引力で可動子4の経路を選択する。可動子4が分岐部分5に侵入した直後は、Y方向の正の向きの吸引力が大きいが、可動子4の進行に合わせて第2のモジュール35との距離が小さくなるように可動機構11を用いることで、Y方向の負の向きの吸引力が大きくなる。可動子4の全体にはたらく力がY方向の負の向きになることで、可動子4と第2のモジュール35は一緒に移動する。
【0081】
また、本開示の実施の形態6に係るリニア搬送システム1fでは、複数の第2のモジュール35が設けられていてもよく、複数の第2のモジュール35に可動機構11が設けられていてもよい。
【0082】
上述したように、本開示の実施の形態6に係るリニア搬送システム1fは、実施の形態1と同様に、第2のモジュール35は磁性材料のみで構成され、コイルが巻回されていない。このため、本開示の実施の形態6に係るリニア搬送システム1fによれば、実施の形態1と同様に、搬送路7が分岐する場合でも、分岐部分5で可動子4の側面の一方の側に第2のモジュール3を用いるため、リニア搬送システム1の重量の増加を防ぎ、リニア搬送システム1が大型化しないという効果を奏する。
【0083】
さらに、本開示の実施の形態6に係るリニア搬送システム1fでは、実施の形態1の構成に加えて、第2のモジュール35に設けられ、第2のモジュール35を進行方向と垂直な方向に可動し、可動子4の進行方向を変える可動機構11を備えるため、可動子4が進行方向と垂直な方向に移動する際にコイルからの電磁力を用いないため、可動子4への推進力を低下させることなく、経路が変更できる。
【0084】
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能である。また本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 1b 1c 1d 1e 1f リニア搬送システム、2 第1のモジュール、3 31 32 33 34 35 第2のモジュール、4 可動子、5 分岐部分、6 非分岐部分、7 搬送路、8 段差8、9 傾斜部、10 切り替わり部、11 可動機構、21 鉄心、22 コイル、23 ティース、41 磁石41
【要約】
本開示のリニア搬送システム(1)は、側面に磁石(41)が配置された可動子(4)と、複数のコイル(21)を有し、複数のコイルの電磁力により可動子を移動させる第1のモジュール(2)及びコイルを有さない磁性材料で形成された第2のモジュール(3)が可動子の進行方向に沿って配置された搬送路(7)と、を備え、搬送路は、可動子の側面の一方の側に第1のモジュールが配置された非分岐部分(6)と、可動子の側面の一方の側に第1のモジュールが配置され、他方の側に第2のモジュールが配置された分岐部分(5)と、を備えることを特徴とする。