(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】セラミックグリーンシート成型用離型フィルム
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
B28B1/30 101
(21)【出願番号】P 2024557144
(86)(22)【出願日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2024018264
【審査請求日】2024-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2023089026
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 悠介
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-145685(JP,A)
【文献】特開2022-128855(JP,A)
【文献】特開2002-273715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30
B32B 27/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型層と、基材としてのポリエステルフィルムと、帯電防止層とをこの順序で有するセラミックグリーンシート成型用離型フィルムであって、
前記基材は、2つの面の粗さが異なり、
前記帯電防止層が帯電防止性樹脂およびワックスを含有し、
前記離型層の領域表面平均粗さ(Sa1)が10nmより小さく、かつ
前記離型層の領域表面平均粗さ(Sa1)と、前記帯電防止層の領域表面平均粗さ(Sa2)が以下の式を満たす
0.02<Sa1/Sa2<0.5
セラミックグリーンシート成型用離型フィルム。
【請求項2】
前記帯電防止層中の全固形分100質量%に対し、前記ワックスの含有量が1質量%以上60質量%以下である、請求項1に記載のセラミックグリーンシート成型用離型フィルム。
【請求項3】
前記ワックスは、ポリオレフィンワックスを含む、請求項1に記載のセラミックグリーンシート成型用離型フィルム。
【請求項4】
前記帯電防止層の厚さは、0.005~0.1μmである、請求項1に記載のセラミックグリーンシート成型用離型フィルム。
【請求項5】
前記帯電防止性樹脂が、カチオン性官能基を有するアクリル系樹脂である、請求項1に記載のセラミックグリーンシート成型用離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシート成型用離型フィルムに関するものであり、更に詳しくは超薄層のセラミックグリーンシートを成型する際に用いる離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルムを基材とし、その上に離型層を積層した離型フィルムは、粘着シート、カバーフィルム、高分子膜、光学レンズなどのセラミックグリーンシートを成型するための工程フィルムとして使用されている。
【0003】
前記離型フィルムは、積層セラミックコンデンサ、セラミック基板等の高い平滑性が求められるセラミックグリーンシート成型用の工程フィルムとしても使用されている。セラミックグリーンシートは、チタン酸バリウムなどのセラミック成分とバインダー樹脂を含有したスラリーを離型フィルム上に塗工し乾燥することで成型される。成型したセラミックグリーンシートに電極を印刷し離型フィルムから剥離することで得られたセラミックグリーンシートを、積層、プレス、焼成、外部電極塗布することで積層セラミックコンデンサが製造される。
【0004】
近年、積層セラミックコンデンサの小型化・大容量化に伴い、セラミックグリーンシートの厚みも薄膜化する傾向にある。薄膜化したセラミックグリーンシート製造工程においては、セラミックグリーンシートを離型フィルム上に塗工・乾燥する工程において離型フィルムのわずかな突起によりピンホール等の不具合が発生し、該セラミックグリーンシートを用いた積層セラミックコンデンサにおいてショート等が発生する。そのため、離型フィルムにおいてもセラミックグリーンシートを塗工する離型面が平滑なフィルムが求められている。
【0005】
しかし、離型フィルムが平滑になることによりフィルムロールの巻き出し、巻き取り時の帯電量が増加し、操業上の課題となっている。
【0006】
上記の課題に対して、これまでセラミックグリーンシート製造用離型フィルムに帯電防止性を付与する取り組みが各種なされてきた。特許文献1は、離型層そのものに帯電防止性成分を混合するものであり、特許文献2は離型層を設ける前に下引き層として帯電防止層を設けるものである。
【0007】
一方、特許文献3のようにセラミックグリーンシートを設ける加工面の反対側の面に帯電防止性を有する層を設ける技術も提案されている。また、特許文献4のように、離型フィルムの離型層とは反対側に形成された帯電防止層に、カチオン性高分子化合物と滑り性向上剤を含有するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-206996号公報
【文献】特開2010-155459号公報
【文献】特開2006-130724号公報
【文献】特開平10-315373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
成型したセラミックグリーンシートに電極を印刷する工程では、ロール状のセラミックグリーンシート付き離型フィルムのセラミックグリーンシート面に電極用ペーストをスクリーン印刷したのち、連続して乾燥機に投入して乾燥し、再びロールとして巻き取る工程が用いられる。この際、電極印刷した反対側の面、すなわち離型フィルムのセラミックグリーンシートを設ける加工面の反対側の面と乾燥機内の支持体が接触し、摩擦を伴いながら搬送されることとなる。そのため、摩擦に伴う帯電による異物等の混入や、摩擦によるフィルム搬送の不具合による印刷工程のズレなど、各種の問題が発生している。
【0010】
また、特許文献1、2に記載の技術は、セラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離する際の剥離帯電を抑える点においては有効であるものの、搬送時の帯電については考慮されていなかった。
【0011】
特許文献3、4の技術では、帯電防止性については有効であるものの、離型フィルムの搬送性については考慮されておらず、摩擦によるフィルム搬送の不具合による印刷工程のズレ等の問題を解決できていなかった。また、帯電防止層と乾燥機内の支持体との摩擦による帯電防止層の脱落についても考慮されておらず、帯電防止性物質等の脱落による新たな問題が発生していた。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、帯電防止性能とフィルムの搬送性を両立し、帯電防止層の脱落を抑制し、かつ平滑性を有するセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記構成を有する離型フィルムにより前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
[1]離型層と、基材としてのポリエステルフィルムと、帯電防止層とをこの順序で有するセラミックグリーンシート成型用離型フィルムであって、
前記基材は、2つの面の粗さが異なり、
前記帯電防止層が帯電防止性樹脂およびワックスを含有し、
前記離型層の領域表面平均粗さ(Sa1)が10nmより小さく、かつ
前記離型層の領域表面平均粗さ(Sa1)と、前記帯電防止層の領域表面平均粗さ(Sa2)が以下の式を満たす
0.02<Sa1/Sa2<0.5
セラミックグリーンシート成型用離型フィルム。
[2]前記帯電防止層中の全固形分100質量%に対し、前記ワックスの含有量が1質量%以上60質量%以下である、上記[1]に記載のセラミックグリーンシート成型用離型フィルム。
[3]前記ワックスは、ポリオレフィンワックスを含む、上記[1]または[2]に記載のセラミックグリーンシート成型用離型フィルム。
[4]前記帯電防止層の厚さは、0.005~0.1μmである、、上記[1]~[3]の何れかに記載のセラミックグリーンシート成型用離型フィルム。
[5]前記帯電防止性樹脂が、カチオン性官能基を有するアクリル系樹脂である、上記[1]~[4]の何れかに記載のセラミックグリーンシート成型用離型フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセラミックグリーンシート成型用離型フィルムは、帯電防止性に優れているだけでなく、離型層の平面性も優れているため、薄層領域のセラミックグリーンシート成型に好適に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、例えば、成型したセラミックグリーンシートに電極を印刷する工程において、離型フィルムにセラミックグリーンシートを設ける加工面の反対側の面と、乾燥機内の支持体が接触し、摩擦を伴いながら搬送される状態において、摩擦に伴う帯電を抑制できる。
【0017】
本発明は、搬送時における帯電を抑制できるので、摩擦に伴う帯電による異物等の混入を抑制できる。更に、搬送性も良好であり、フィルム搬送時に生じ得るフィルムの巻取り不良、シワの発生を抑制できる。
【0018】
また、本発明は、良好な帯電防止性と巻取り性をバランスよく備えるので、薄層領域のセラミックグリーンシート成型時におけるグリーンシートの破損を抑制でき、更に、印刷される電極の位置ズレも抑制できる。
【0019】
加えて、本発明は、セラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離する際の剥離帯電を抑えるだけでなく、搬送時の帯電についても抑制できる。
【0020】
ここで、本発明は、基材と帯電防止層の密着性にも優れており、帯電防止層と乾燥機内の支持体との摩擦による帯電防止層の脱落を防止できる。また、帯電防止層から帯電防止性樹脂が脱落することにより生じる工程汚染や、グリーンシートのピンホール生成を抑制でき、帯電防止性樹脂の脱落物による新たな問題についても解決できる。
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
[ポリエステルフィルム]
本発明の離型フィルムにおいて基材として用いるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、特に限定されず、離型フィルム基材として通常一般に使用されているポリエステルをフィルム成型したものを使用することが出来るが、好ましくは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分からなる結晶性の線状飽和ポリエステルであるのが良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体がさらに好適であり、とりわけポリエチレンテレフタレートから形成されたポリエステルフィルムが好適である。ポリエチレンテレフタレートは、エチレンテレフタレートの繰り返し単位が好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、他のジカルボン酸成分、ジオール成分が少量共重合されていてもよいが、コストの点から、テレフタル酸とエチレングリコールのみから製造されたものが好ましい。また、本発明のフィルムの効果を阻害しない範囲内で、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶化剤などを添加してもよい。ポリエステルフィルムは双方向の弾性率の高さ等の理由からポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0023】
上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの固有粘度は0.50~0.70dl/gが好ましく、0.52~0.62dl/gがより好ましい。固有粘度が0.50dl/g以上の場合、延伸工程で破断が発生しづらく好ましい。逆に、0.70dl/g以下の場合、所定の製品幅に裁断するときの裁断性が良く、寸法不良が発生しないので好ましい。また、原料は十分に真空乾燥することが好ましい。
【0024】
本発明におけるポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されず、従来一般に用いられている方法を用いることが出来る。例えば、前記ポリエステルを押出機にて溶融して、フィルム状に押出し、回転冷却ドラムにて冷却することにより未延伸フィルムを得て、該未延伸フィルムを一軸又は二軸延伸することにより得ることが出来る。二軸延伸フィルムは、縦方向あるいは横方向の一軸延伸フィルムを横方向または縦方向に逐次二軸延伸する方法、或いは未延伸フィルムを縦方向と横方向に同時二軸延伸する方法で得ることが出来る。
【0025】
本発明において、ポリエステルフィルム延伸時の延伸温度はポリエステルの二次転移点(Tg)以上とすることが好ましい。縦、横各々の方向に1~8倍、特に2~6倍の延伸をすることが好ましい。
【0026】
上記ポリエステルフィルムは、厚みが12~50μmであることが好ましく、さらに好ましくは12~38μmであり、より好ましくは、15μm~31μmである。フィルムの厚みが12μm以上であれば、フィルム生産時や離型層の加工工程、セラミックグリーンシートの成型の時に、熱により変形するおそれがなく好ましい。一方、フィルムの厚みが50μm以下であれば、使用後に廃棄するフィルムの量が極度に多くならず、環境負荷を小さくする上で好ましく、さらには、使用する離型フィルムの面積当たりの材料が少なくなるため経済的観点からも好ましい。
【0027】
上記ポリエステルフィルム基材は、単層であっても2層以上の多層であっても構わないが、少なくとも片面には実質的に無機粒子を含まない平面層Aを有する積層ポリエステルフィルムであることが好ましい。2層以上の多層構成からなる積層ポリエステルフィルムの場合は、実質的に無機粒子を含有しない層の反対面には、粒子などを含有することができる易滑層を有することが好ましい。積層構成としては、離型層を塗布する側の層を平面層A、その反対面の層を易滑層、これら以外の芯層を芯層とすると、厚み方向の層構成は離型層/平面層/易滑層/帯電防止層、あるいは離型層/平面層/芯層/易滑層/帯電防止層等の積層構造が挙げられる。当然ながら芯層Cは複数の層構成であっても構わない。
本発明におけるポリエステルフィルム基材において、離型層を塗布する面を形成する平面層Aは、実質的に無機粒子を含有しないことが好ましい。このとき、平面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は、10nm以下が好ましい。Saが10nm以下であると、離型層の膜厚が2.0μm以下、更に薄く0.5μm以下のような薄膜でも、積層する超薄層セラミックグリーンシートの成型時にピンホールなどの発生が起こりにくく好ましい。平面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であって構わない。但し平面層A上に後述のアンカーコート層などを設ける場合は、コート層に実質的に無機粒子を含まないことが好ましく、コート層積層後の領域表面平均粗さ(Sa)が前記範囲内であることが好ましい。
【0028】
なお、本発明をより理解しやすくするために、基材における離型層面の領域表面平均粗さを(Sa1)と記載することも有るが、特に言及のない限り、領域表面平均粗さ(Sa1)は、離型層の領域表面平均粗さを意味する。
【0029】
本発明において「無機粒子を実質的に含有しない」とは、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下であることにより定義され、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量である。これは積極的に無機粒子をフィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0030】
本発明におけるポリエステルフィルム基材が積層フィルムである場合において、離型層を塗布する平面層Aと反対面を形成する易滑層は、フィルムの滑り性や空気の抜けやすさの観点から、粒子を含有することが好ましく、特にシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を含有することが好ましい。含有される粒子含有量は、易滑層中に粒子の合計で5000~15000ppmであることが好ましい。このとき、易滑層の領域表面平均粗さ(Sa)は、1~40nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、5~35nmの範囲である。
【0031】
本発明は、ポリエステルフィルムの離型層を設けた側とは反対側に帯電防止層を有する。
ここで、ポリエステルフィルムが易滑層を有する場合、易滑層の上に帯電防止層が配置される。易滑層を構成するフィルムの領域表面平均粗さ(Sa)が上記範囲内であることにより、帯電防止層の平均粗さ(Ra2)が過大となることを抑制できる。
【0032】
なお、本発明をより理解しやすくするために、基材における帯電防止層側の面の領域表面平均粗さを(Sa2)と記載することも有るが、特に言及のない限り、領域表面平均粗さ(Sa2)は、帯電防止層の領域表面平均粗さを意味する。
【0033】
易滑層のフィルムの領域表面平均粗さ(Sa)を上記範囲とし、更に、帯電防止層が帯電防止性樹脂およびワックスを含有することにより、帯電防止層の領域表面平均粗さ(Ra2)が、
0.02<Sa1/Sa2<0.5
で表される関係を示すことができる。
【0034】
特定の理論に限定して解釈すべきではないが、本発明の帯電防止性樹脂およびワックスの相乗効果により、ポリエステルフィルムの表面形状がそのまま帯電防止層に転写されることなく、帯電防止層の領域表面平均粗さ(Sa2)が導かれる。
【0035】
このため、(Sa1/Sa2)が所定の範囲となり、本発明は、例えば、良好な帯電防止性と巻取り性をバランスよく備えることができ、薄層領域のセラミックグリーンシート成型時におけるグリーンシートの破損を抑制でき、更に、印刷される電極の位置ズレも抑制できる。
【0036】
易滑層のシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が5000ppm以上、Saが1nm以上の場合には、フィルムをロール状に巻き上げるときに、空気を均一に逃がすことができ、巻き姿が良好で平面性良好により、超薄層セラミックグリーンシートの製造に好適なものとなる。また、シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が15000ppm以下、Saが40nm以下の場合には、滑剤の凝集が生じにくく、粗大突起ができないため、超薄層のセラミックグリーンシートを成型後に巻き取った場合でもセラミックグリーンシートにピンホールなどの欠点を発生させることがなく好ましい。
【0037】
易滑層に含有する粒子としては、透明性やコストの観点からシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることがより好ましい。シリカ及び/又は炭酸カルシウム以外に不活性な無機粒子及び/又は耐熱性有機粒子などを用いることができ、他に使用できる無機粒子としては、アルミナ-シリカ複合酸化物粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などが挙げられる。また、耐熱性有機粒子としては、架橋ポリアクリル系粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン系粒子などが挙げられる。またシリカ粒子を用いる場合、多孔質のコロイダルシリカが好ましく、炭酸カルシウム粒子を用いる場合は、ポリアクリル酸系の高分子化合物で表面処理を施した軽質炭酸カルシウムが、滑剤の脱落防止の観点から好ましい。
【0038】
上記易滑層に添加する粒子の平均粒子径は、0.1μm以上2.0μm以下が好ましく、0.5μm以上1.0μm以下が特に好ましい。粒子の平均粒子径が0.1μm以上であれば、離型フィルムの滑り性が良好であり好ましい。また、平均粒子径が2.0μm以下であれば、離型層表面に粗大粒子によるピンホールが発生するおそれがなく好ましい。なお、粒子の平均粒子径の測定方法は、加工後のフィルムの断面の粒子を走査型電子顕微鏡で観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする方法で行うことができる。本発明の目的を満たすものであれば、粒子の形状は特に限定されるものでなく、球状粒子、不定形の球状でない粒子を使用できる。不定形の粒子の粒子径は円相当径として計算することができる。円相当径は、観察された粒子の面積を円周率(π)で除し、平方根を算出し2倍した値である。
【0039】
易滑層には素材の異なる粒子を2種類以上含有させてもよい。また、同種の粒子で平均粒子径の異なるものを含有させてもよい。
【0040】
易滑層に粒子を含まない場合は、易滑層上に粒子を含んだコート層で易滑性を持たせることも好ましい。本コート層を設ける手段は、特に限定されないが、ポリエステルフィルムの製膜中に塗工する所謂インラインコート法で設けることが好ましい。また、ポリエステルフィルムの離型層を積層しない側の表面に易滑性を持たせるコート層を設ける場合には、ポリエステルフィルムは平面層及び易滑層を有している必要はなく、無機粒子を実質的に含有しない単層のポリエステルフィルムからなっていてもよい。
【0041】
また、後述のように帯電防止層を易滑コート層と同時にインラインコートによって設けてもよい。
【0042】
易滑層の領域表面平均粗さ(Sa)は、40nm以下が好ましく、35nm以下がより好ましく、さらに好ましくは30nm以下である。一方で、易滑層の領域表面平均粗さは平面層の領域表面平均粗さより大きい必要があるため、10nm以上であることが望ましい。また、易滑層あるいは単層ポリエステルフィルムの離型層を積層しない側の表面にコート層で易滑性を持たせる場合についても、その表面のSaはコート層を積層した表面を測定するものとし、前記の易滑層Bの領域表面平均粗さ(Sa)と同等範囲であることが好ましい。
例えば、コート層(易滑層)のフィルムの領域表面平均粗さ(Sa)は10nm以上40nm以下であり、10nm以上35nm以下であってもよい。
【0043】
(コート層(易滑層))
前記のポリエステルフィルムについて離型層を積層しない側の表面のコート層中には、少なくともバインダー樹脂及び粒子が含まれていることが好ましい。
【0044】
(易滑層のバインダー樹脂)
コート層(易滑層)を構成するバインダー樹脂としては特に限定されないが、ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル系樹脂(ポリビニルアルコール等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも粒子の保持、密着性の観点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。また、ポリエステルフィルムとのなじみを考慮した場合、ポリエステル樹脂が特に好ましい。溶剤への溶解性、分散性、さらには基材フィルムや他の層との接着性を達成させるため、バインダーのポリエステルは共重合ポリエステルであることが好ましい。なお、ポリエステル樹脂はポリウレタン変性されていても良い。また、ポリエステル基材フィルム上のコート層(易滑層、または易滑塗布層と称する場合もある)を構成する他の好ましいバインダー樹脂としてはウレタン樹脂が挙げられる。ウレタン樹脂としてはポリカーボネートポリウレタン樹脂が挙げられる。さらに、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂は併用しても良く、上記の他のバインダー樹脂を併用してもよい。
【0045】
(コート層の架橋剤)
本発明において、コート層中に架橋構造を形成させるために、コート層は架橋剤が含まれて形成されていてもよい。架橋剤を含有させることにより、高温高湿下での密着性を更に向上させることが可能になる。具体的な架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、アジリジン等が挙げられる。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用することができる。
【0046】
(コート層中の粒子)
易滑塗布層は、表面にすべり性を付与するために、滑剤粒子を含むことが好ましい。粒子は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではない。例えば、(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられるが、塗布層に適度な滑り性を与えるために、シリカが特に好ましく使用される。
【0047】
粒子の平均粒径は10nm以上であることが好ましく、より好ましくは20nm以上であり、さらに好ましくは30nm以上である。粒子の平均粒径は10nm以上であると、凝集しにくく、滑り性が確保できて好ましい。
【0048】
粒子の平均粒径は1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは800nm以下であり、さらに好ましくは600nm以下である。粒子の平均粒径が1000nm以下であると、透明性が保たれ、また、粒子が脱落することがなく好ましい。
【0049】
また、例えば、平均粒径が10~270nm程度の小さい粒子と、平均粒径が300~1000nm程度の大きい粒子を混用することも、後述の領域表面平均粗さ(Sa)、最大突起高さ(RP)を小さく保ちながら、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を小さくして、すべり性と平滑性を両立させる上で好ましく、特に好ましくは、30nm以上250nm以下の小さい粒子と、平均粒径が350~600nmの大きい粒子を併用することである。小さい粒子と大きい粒子を混用する場合、塗布層固形分全体に対して、小さい粒子の質量含有率を大きい粒子の質量含有率より大きくしておくことが好ましい。
【0050】
離型層を設ける側の層である平面層には、ピンホール低減の観点から、滑剤などの粒子の混入を防ぐため、再生原料などを使用しないことが好ましい。
【0051】
上記離型層を設ける側の層である平面層の厚み比率は、基材フィルムの全層厚みの20%以上50%以下であることが好ましい。20%以上であれば、易滑層Bなどに含まれる粒子の影響をフィルム内部から受けづらく、領域表面平均粗さSaが上記の範囲を満足することが容易であり好ましい。基材フィルムの全層の厚みの50%以下であると、易滑層における再生原料の使用比率を増やすことができ、環境負荷が小さく好ましい。
【0052】
また、経済性の観点から上記平面層以外の層(易滑層もしくは前述の芯層)には、50~90質量%のフィルム屑やペットボトルの再生原料を使用することができる。この場合でも、易滑層Bに含まれる滑剤の種類や量、粒子径ならびに領域表面平均粗さ(Sa)は、上記の範囲を満足することが好ましい。
【0053】
また、後に塗布する離型層などの密着性を向上させるために平面層の表面に製膜工程内の延伸前または一軸延伸後のフィルムにコート層を設けてもよく、コロナ処理などを施すこともできる。コート層も設ける場合は、各層のSaはコート層表面の測定値で代用する。また、平面層Aの表面にこれらコート層を設ける場合は、粒子を含有しないことが好ましい。
【0054】
(帯電防止層)
本発明は、ポリエステルフィルムの離型層を有した面の反対側の面に帯電防止層を有する。帯電防止層は、帯電防止性樹脂およびワックスを含有する。
【0055】
更に、後述する離型層の平均粗さ(Sa1)が10nmより小さく、かつ離型層の平均粗さ(Ra1)と、帯電防止層の平均粗さ(Ra2)が以下の式を満たす。
0.02<Sa1/Sa2<0.5
帯電防止層は、帯電防止性樹脂およびワックスを含有し、更に(Ra1/Ra2)が所定の条件を示すことにより、本発明は、例えば、成型したセラミックグリーンシートに電極を印刷する工程において、離型フィルムにセラミックグリーンシートを設ける加工面の反対側の面と、乾燥機内の支持体が接触し、摩擦を伴いながら搬送される状態において、摩擦に伴う帯電を抑制できる。
【0056】
本発明は、搬送時における帯電を抑制できるので、摩擦に伴う帯電による異物等の混入を抑制できる。更に、搬送性も良好であり、フィルム搬送時に生じ得るフィルムの巻取り不良、シワの発生を抑制できる。
【0057】
また、本発明は、良好な帯電防止性と巻取り性をバランスよく備えるので、薄層領域のセラミックグリーンシート成型時におけるグリーンシートの破損を抑制でき、更に、印刷される電極の位置ズレも抑制できる。
【0058】
加えて、本発明は、セラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離する際の剥離帯電を抑えるだけでなく、搬送時の帯電についても抑制できる。
【0059】
ここで、本発明は、基材と帯電防止層の密着性にも優れており、帯電防止層と乾燥機内の支持体との摩擦による帯電防止層の脱落できる。また、帯電防止層から帯電防止性樹脂が脱落することにより生じる工程汚染や、グリーンシートのピンホール生成を抑制でき、帯電防止性樹脂の脱落物による新たな問題についても解決できる。
【0060】
本発明の離型フィルムにおける帯電防止層を構成する帯電防止性樹脂としては、荷電性又は親水性の官能基を有する樹脂が挙げられる。帯電防止性樹脂としては、荷電性又は親水性の官能基を有するビニル系樹脂が好ましい。
【0061】
例えば、帯電防止性樹脂としては、アルキルサルフェート型、アルキルホスフェート型のようなアニオン帯電防止剤、第4級アンモニウム塩型、第4級アンモニウム樹脂型、イミダゾリン型のようなカチオン系帯電防止剤、ソルビタン型、エーテル型のようなノニオン系帯電防止剤、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる複合物のような高分子型導電剤など、公知の帯電防止剤のうち、ポリマータイプのものが使用できる。帯電防止性樹脂としては、カチオン性官能基を有する樹脂が好ましく、特に、カチオン性官能基を有するアクリル系樹脂が好ましい。
【0062】
上記のような有機系の帯電防止剤を使用することにより、セラミックグリーンシートに万が一導電性有機物が脱落、混入しても、積層セラミックコンデンサの焼成工程において消失するため、導電性物質が残留することによる不具合を防ぐことが可能となる。
【0063】
好ましくは、帯電防止性樹脂は、カチオン性帯電防止剤である。例えば、帯電防止層は、カチオン性帯電防止剤と、25℃の環境条件において固体であるワックスを含むことで、表面固有抵抗値、摩耗後の表面固有抵抗値を所定の範囲にもたらすことができ、摩擦に伴う帯電を抑制できる。更に、搬送時における帯電を抑制できるので、摩擦に伴う帯電による異物等の混入を抑制できる。更に、搬送性も良好であり、フィルム搬送時に生じ得るフィルムの巻取り不良、シワの発生を抑制できる。
【0064】
また、本発明は、良好な帯電防止性と巻取り性をバランスよく備えるので、薄層領域のセラミックグリーンシート成型時におけるグリーンシートの破損を抑制でき、更に、印刷される電極の位置ズレも抑制できる。
【0065】
加えて、本発明は、セラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離する際の剥離帯電を抑えるだけでなく、搬送時の帯電についても抑制できる。
【0066】
その上、帯電防止層は、カチオン性帯電防止剤と、25℃の環境条件において固体であるワックスを含むことで、基材と帯電防止層の密着性にも優れており、帯電防止層と乾燥機内の支持体との摩擦による帯電防止層の脱落できる。また、帯電防止層から帯電防止性樹脂が脱落することにより生じる工程汚染や、グリーンシートのピンホール生成を抑制でき、帯電防止性樹脂の脱落物による新たな問題についても解決できる。
【0067】
また、本発明の離型フィルムにおける帯電防止層には、易滑性を付与する成分としてワックスを添加することを必須とする。また、本発明においては、帯電防止層にワックス成分を含むことで、摩耗後の表面固有抵抗値を本明細書に記載の範囲に導くことが出来る。
【0068】
これは、帯電防止層に含まれる帯電防止性樹脂と、ワックスとの相互作用により、帯電防止層の耐摩耗性が向上し、摩耗試験後に表面固有抵抗値が急激に上昇することを抑制できたと推測される。
【0069】
ワックスとしては、ポリエステルワックス、ポリオレフィンワックスなど公知のものを使用できる。例えば、ポリオレフィンワックスが好ましい。
【0070】
帯電防止層が、ポリオレフィンワックスを含むことで、帯電防止性樹脂と、ワックスとの相互作用により、帯電防止層の耐摩耗性が向上し、摩耗試験後に表面固有抵抗値が急激に上昇することを抑制できたと推測される。ポリオレフィンワックスは、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックスを1種または2種以上含んでもよい。
【0071】
好ましくは、ワックス、特にポリオレフィンワックスは、25℃の環境条件において固体であることがより望ましい。これは常温で液体として存在する場合、離型フィルムをロールとして巻き取った際に離型層にワックスが著しく転写する可能性があるためである。
【0072】
また、ワックスが25℃の環境条件において固体であるため、ポリエステルフィルムの表面形状がそのまま帯電防止層に転写されることを抑制できる。特定の理論に限定して解釈すべきではないが、ワックスが25℃の環境条件において固体であることにより、帯電防止層においてポリエステルフィルムの表面形状、例えば、表面粗さ、表面高さが緩和され、帯電防止層の表面形状が導かれると推測される。
【0073】
ワックス、特にポリオレフィンワックスの融点または軟化点については特に限定されないが、170℃以下であることが好ましく、例えば150℃以下、120℃以下であることがより好ましい。ワックスの融点または軟化点が170℃以下であることで、摩擦時に変形しやすくなり、易滑性を促進することができる。
【0074】
一態様において、ポリオレフィンワックスは、融点または軟化点が170℃以下であり、150℃以下であってよく、例えば、融点または軟化点が120℃以下であり、25℃の環境条件において固体である。
【0075】
また、ワックスの形態については特に限定されないが、ワックスが水性媒体中に分散したワックスの水性分散体、またはワックスが水性媒体中に溶解したワックスの水性溶液であることがより好ましい。
【0076】
これは、ワックスが水性媒体中に分散若しくは溶解することで帯電防止層を構成する帯電性組成物と容易に混合するためである。ワックスの水性分散体におけるワックス粒子の数平均粒子径については特に限定されないが、保存安定性や混合安定性の観点から5μm以下であり、例えば0.1μm以上である。
【0077】
本発明においては、帯電防止層に含まれるワックスの質量に対して、Si原子を有する化合物の質量の比率が、1/50以下であることが好ましく、1/100以下であることがより好ましい。特に、本発明においては、易滑剤としてワックスを含み、帯電防止層は、Si原子を有する化合物、特にシロキサン結合を有する化合物を実質的に含まないことが望ましい。離型フィルムをロールとして巻き取った際に離型層にシロキサン結合を有する化合物が著しく転写することを抑制するためである。
【0078】
本発明において「Si原子を有する化合物を実質的に含まない」とは、帯電防止層の表面Si元素比率により規定できる。具体的には、帯電防止層に含まれるSi元素比率(at%)が1.0(at%)未満であり、好ましくは、0.5(at%)であり、0.1(at%)未満であってよく、最も好ましくは検出限界以下となる含有量である。
【0079】
これは、Si原子を有する化合物、特にシロキサン結合を有する化合物を積極的にフィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0080】
Si元素比率は、例えば、ESCAにて測定できる。
装置にはK-Alpha+ (Thermo Fisher Scientific社製)を例示できる。測定条件の詳細は以下に例示できる。
例えば、測定装置を用いて帯電防止層表面のC、O、N、S、Siの5元素についてナロースキャンを行い、ここからSi元素比率(at%)を次式により算出できる。
(本発明ではSi元素比率は、C、O、N、S、Siの5元素中でのSiの割合(at%)とする。)
Si元素比率(at%)={Si/(C+O+N+S+Si)}×100・・・式
なお、解析の際、バックグラウンドの除去はshirley法にて行った。また、表面Si元素比率は3箇所以上の測定結果の平均値とした。
【0081】
・測定条件
励起X線:モノクロ化AlKa線
X線出力:12kV、6mA
光電子脱出角度:90°
スポットサイズ:400mmf(程度)
パスエネルギー:50eV
ステップ:0.1eV
帯電防止層の全固形分100質量%中のワックスの含有量は、1質量%以上65質量%以下である。ワックスの混合比率は、例えば、10質量%以上60質量%以下であり、14質量%以上56質量%以下である。
【0082】
ワックスの比率が1質量%以上であることにより、離型層と帯電防止層、もしくは帯電防止層とグリーンシート成型工程中の搬送ロールや乾燥機内の支持体等、各種金属素材や各種ゴム素材との十分な易滑性を確保できる。また、帯電防止層の脱落による帯電防止能の低下を抑制できる。
【0083】
一方でワックスの比率が65質量%以下の場合、過剰なワックスが離型層やグリーンシート成型工程中の搬送工程を汚染したり、フィルムが滑りすぎることによる搬送時の蛇行や巻き取り時の巻き不良を回避できる。
【0084】
帯電防止層には導電性有機物に対するワックスの他に、帯電防止性や易滑性を阻害しない範囲でバインダーや架橋剤、硬化触媒などを添加してもよい。また、先述のように帯電防止層と易滑層をインラインコート法により同時に設ける場合に、易滑成分として粒子を添加してもよい。
【0085】
帯電防止層の厚さは、0.005~0.1μmであることが好ましく、特に0.01~0.05μmであることが好ましい。帯電防止層の厚さが0.005μm以下であると、帯電防止層としての機能を発揮することができない。一方、帯電防止層の厚さが0.1μm以上の場合、帯電防止層からの塗膜の脱落が発生し不適である。
【0086】
帯電防止層の領域表面平均粗さ(Sa2)は、10nm以上40nm以下であり、10nm以上35nm以下であってもよい。
【0087】
離型層の平均粗さ(Sa1)と、前記帯電防止層の平均粗さ(Sa2)が以下の式を満たす、
0.02<Sa1/Sa2<0.5。
好ましくは、0.03<Sa1/Sa2<0.35であり、0.03<Sa1/Sa2<0.25であってよく、例えば、0.035<Sa1/Sa2<0.25であり、0.035<Ra1/Ra2<0.150であってもよい。
【0088】
このような条件を満たすことで離型面が平滑性を保持した状態であり、かつ離型面の反対面が適度な表面粗さを有することでフィルム全体として易滑性を確保すること可能となる。
【0089】
一方、Sa1/Sa2が0.02以下であると、フィルムの離型面の平滑性に対して、反対面(帯電防止層)が粗すぎる問題を生じることがあり、易滑面を構成する粒子が脱落しやすくなったり、反対面の粗さが離型面に転写し、セラミックグリーンシート製造時にピンホールが発生するおそれがある。
【0090】
また、Sa1/Sa2が0.5以上の場合、フィルムの易滑性が不十分となるおそれがある。
【0091】
帯電防止層の表面固有抵抗値[Rs値]は、1.0×106~1.0×1012(Ω/□)であり、好ましくは1.5×109~1.0×1011(Ω/□)である。
【0092】
表面固有抵抗値が上記範囲内であることにより該離型フィルムを用いて加工する際に、フィルムをロール状に巻き取るおよび巻き出す際の帯電や、フィルムが加工機台に接触する際の摩擦帯電を抑制するという効果を奏することができる。
【0093】
本発明において、実施例に測定方法が記載される表面固有抵抗値と、摩耗後の表面固有抵抗値との関係について、帯電防止層が本発明の構成を有することで、摩耗後も表面抵抗値の変動を少なくできる。すなわち、本発明は、帯電子防止層を摩耗した後であっても、帯電防止層がポリエステル基材から剥離すること、帯電防止層の一部が削り落とされることを抑制できる。
【0094】
帯電防止層における表面固有抵抗値と、摩耗後の表面固有抵抗値とが上記関係を有することにより、帯電防止層と乾燥機内の支持体との摩擦による帯電防止層の脱落を防止できる。また、帯電防止層から帯電防止性樹脂が脱落することにより生じる工程汚染や、グリーンシートのピンホール生成を抑制でき、帯電防止性樹脂の脱落物による新たな問題についても解決できる。
【0095】
本発明の帯電防止層において、動摩擦係数(μd)は、例えば0.10μdを超え0.45μd以下であり、0.12μdを超え0.40μd以下であってよく、0.12μdを超え0.35μd以下であってよく、例えば、0.13μd以上0.26μd以下である。
【0096】
本発明においては、動摩擦係数が上記範囲内であり、更にSa1/Sa2が所定の関係を満たすことで、粒子脱落の抑制と、巻出帯電の抑制を共にバランスよく備えることができる。
【0097】
(離型層)
本実施形態に係るセラミックグリーンシート成型用離型フィルムの離型層を構成する材料については、離型層に要求される平面性を満たすものであれば特に限定されない。例えば、シリコーン化合物やフッ素化合物、アルキド化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物など、公知のものを使用することができる。
【0098】
一態様において、離型層は、ポリジメチルシロキサンを含む。また、少なくとも2種類のポリジメチルシロキサンを含んでもよい。例えば、第1のポリジメチルシロキサンとしてポリジメチルシロキサンの構造中にビニル基を少なくとも1個有するビニル変性シリコーン樹脂と、第2のポリジメチルシロキサンとして、ポリジメチルシロキサンの構造中にヒドロシリル基を少なくとも1個有するポリメチルハイドロジェンシロキサンを含んでもよい。
【0099】
離型層がポリジメチルシロキサンを含み、かつ本発明の帯電防止層を有することで、離型層と帯電防止層の表面自由エネルギー差が小さくなる。結果帯電防止層のワックスが離型層に移行することを抑制することができ、長期保管後も帯電防止層の耐摩耗性を維持することが可能となる。
【0100】
本発明における離型層の膜厚は、乾燥後の厚みとして0.001~0.2μmであることが好ましく、0.005~0.1μmであることがより好ましい。0.001μm以上であると、剥離性に優れた離型層が得られるため好ましい。0.2μm以下であると、離型層成分の固形分濃度や、塗布量を増やす必要がなく、基材フィルム上に塗布する時の塗工性に優れるため好ましい。
【0101】
本発明において、離型層の形成方法は、特に限定されず、離型性の化合物を溶解もしくは分散させた塗液を、基材のポリエステルフィルムの一方の面に塗布等により展開し、溶媒等を乾燥により除去後、硬化させる方法などが用いられる。また、離型層をインラインコーティング法によりポリエステルフィルムの成膜と同時に設けてもよい。
【0102】
離型層の領域表面平均粗さ(Sa1)は、0.1nm以上10nm以下であり、例えば0.3nm以上8nm以下である。例えば、離型層の領域表面平均粗さ(Sa1)は、基材における離型層側の面の表面平均粗さ(Sa1)±2nmの範囲内であり、±1.5nmの範囲であってよく、±1.2nmの範囲であってよい。離型層は、本発明に係る第1および第2のポリジメチルシロキサンを含むことで、離型層は高い平滑性と、優れたセラミック剥離力を示し、更に、離型層と帯電防止層の表面自由エネルギー差を小さくできる。
【0103】
(セラミックグリーンシート成型用離型フィルム)
本発明のセラミックグリーンシート成型用離型フィルムは、ポリエステルフィルムの片面に離型層を有し、ポリエステルフィルムの片面に離型層を有した面の反対側の面に帯電防止層を有する。
【0104】
本発明における、離型層と帯電防止層とをポリエステルフィルムの両面に分けて設け、かつ離型層の平均粗さ(Sa1)を小さく、帯電防止層の平均粗さ(Sa2)をそれより大きくすること、好ましくは、
0.02<Sa1/Sa2<0.5
の関係を有することで、離型層の離型性や平面性を帯電防止層が阻害することなく、また帯電防止層が暴露していることでフィルム搬送時の巻出帯電を抑止することが可能である。
【0105】
また、上記のような構造において、セラミックグリーンシートの剥離時に発生する剥離帯電も抑止することが可能である。このメカニズムについては不明ではあるが、剥離時に発生した帯電が速やかに裏面の帯電防止層に移動するためであると考えられる。
【0106】
一方、帯電防止層にワックス成分を添加することで、平均粗さの大きい離型層が離型層を傷つける、帯電防止層の凸な部分がフィルム搬送時に削れて脱落するといった問題を克服することが可能となる。
【0107】
離型層と帯電防止層をフィルムに設ける順番については特に限定されない。離型層を設けた後に帯電防止層を設けてもよいし、帯電防止層を易滑コート層とともにインラインコーティングで設けた後に離型層を設けてもよい。また、インラインコーティング、オフラインコーティングによらず、離型層と帯電防止層を同時に設けてもよい。
【0108】
(第2の実施態様)
別の実施態様として、本発明は以下に記載のセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを提供する。
【0109】
基材としてのポリエステルフィルムと、
ポリエステルフィルムの片面に離型層を有し、
前記ポリエステルフィルムの離型層を有した面の反対側の面に帯電防止層を有する
セラミックグリーンシート成型用離型フィルムであって、
前記基材は、2つの面の粗さが異なり、
前記ポリエステルフィルムは、離型層側および帯電防止層側に粒子を含み、
帯電防止層が帯電防止性樹脂およびワックスを含有し、
前記離型層の領域表面平均粗さ(Sa1)が3nm以上10nmより小さく、かつ
前記離型層の領域表面平均粗さ(Sa1)と、前記帯電防止層の領域表面平均粗さ(Sa2)が以下の式を満たす、
セラミックグリーンシート成型用離型フィルム;
0.02<Sa1/Sa2<0.5。
【0110】
この態様において、基材としてのポリエステルフィルムは、少なくとも離型層側および帯電防止層側に粒子を含み、好ましくは、離型層側の領域表面平均粗さが、帯電防止層側の領域表面平均粗さよりも小さい。
【0111】
また、型層側の領域表面平均粗さは、3nm以上10nm以下であり、例えば、3nm以上8nm以下である。一方、帯電防止層側の領域表面平均粗さは、5nm以上25nm以下であり、例えば、5nm以上20nm以下である。
【0112】
更に、離型層の領域表面平均粗さ(Sa1)と、帯電防止層の領域表面平均粗さ(Sa2)が以下の式を満たす、
0.02<Sa1/Sa2<0.5。
【0113】
このような離型フィルムは、例えば、成型したセラミックグリーンシートに電極を印刷する工程において、離型フィルムにセラミックグリーンシートを設ける加工面の反対側の面と、乾燥機内の支持体が接触し、摩擦を伴いながら搬送される状態において、摩擦に伴う帯電を抑制できる。
【0114】
本発明は、搬送時における帯電を抑制できるので、摩擦に伴う帯電による異物等の混入を抑制できる。更に、搬送性も良好であり、フィルム搬送時に生じ得るフィルムの巻取り不良、シワの発生を抑制できる。
【0115】
また、本発明は、良好な帯電防止性と巻取り性をバランスよく備えるので、薄層領域のセラミックグリーンシート成型時におけるグリーンシートの破損を抑制でき、更に、印刷される電極の位置ズレも抑制できる。
【0116】
加えて、本発明は、セラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離する際の剥離帯電を抑えるだけでなく、搬送時の帯電についても抑制できる。
【0117】
ここで、本発明は、基材と帯電防止層の密着性にも優れており、帯電防止層と乾燥機内の支持体との摩擦による帯電防止層の脱落できる。また、帯電防止層から帯電防止性樹脂が脱落することにより生じる工程汚染や、グリーンシートのピンホール生成を抑制でき、帯電防止性樹脂の脱落物による新たな問題についても解決できる。
【0118】
なお、基材における領域表面平均粗さ以外の条件、例えば基材の組成、離型層、帯電防止層など本発明を構成する各種条件は、本明細書に記載の条件を適用できる。
【0119】
また、この態様においては、0.1<Sa1/Sa2<0.5であってもよく、0.2<Sa1/Sa2<0.5であってもよい。
【0120】
別の態様として、本発明は、セラミックグリーンシート成型用離型フィルムの製造方法を提供する。
【0121】
一態様において、本発明の製造方法は、基材としてのポリエステルフィルムに、離型層形成コート液を塗布することを含む。この工程において、離型層形成コート液は、離型層を有する側のポリエステルフィルムの面に塗布され、当該面は実質的に粒子を含有しない。
【0122】
好ましくは、離型層形成コート液を塗布した基材は、コート液の塗布後0.1秒以上10秒以下の時間で第1の乾燥炉に搬入される。特に好ましくは、0.1秒以上5秒以内である。
また、第1の乾燥炉における乾燥温度は、70℃以上110℃以下であってよく、80℃以上100℃以下であってもよい。更に、第1の乾燥炉に続き、第2の乾燥炉に得られた積層フィルムを搬入してもよい。第2の乾燥炉における乾燥温度は、80℃以上130℃以下であってよい。好ましくは、第1の乾燥炉の乾燥温度は、第2の乾燥炉の乾燥温度よりも低く設定される。なお、第1および第2の乾燥炉に加え、更なる乾燥炉を設けてもよい。
【0123】
その後、得られた積層フィルムを冷却ロール上で紫外線照射し、離型層を効果させることができる。このような工程を経て得られる離型層は、本明細書に記載される種々の物性および効果を満たすことが出来る。
【0124】
特定の理論に限定して解釈すべきではないが、本発明の製造方法において、第1の乾燥炉までの搬送時間、第1の乾燥炉での乾燥温度および第2の乾燥炉における乾燥温度を、上記条件に制御することで、離型層に含まれる第1のポリジメチルシロキサンと、第2のポリジメチルシロキサンの分散状態を良好に保つことができると考えられる。その結果、離型層と帯電防止層の表面自由エネルギー差を小さくでき、帯電防止層のワックスが離型層に移行することを抑制することができ、長期保管後も帯電防止層の耐摩耗性を維持することが可能となる。
【0125】
本発明の製造方法は、更に、得られた離型コートフィルムの離型層とは反対側の面に帯電防止層を形成する工程を含む。例えば、基材としてのポリエステルフィルムに易滑層を設け、易滑層に帯電防止層形成コート液を塗布することを含む。
【0126】
好ましくは、帯電防止層形成コート液を塗布した積層フィルムは、コート液の塗布後0.1秒以上10秒以下の時間で第1の乾燥炉に搬入される。特に好ましくは、0.1秒以上5秒以内である。また、第1の乾燥炉における乾燥温度は、70℃以上110℃以下であってよく、80℃以上100℃以下であってもよい。更に、第1の乾燥炉に続き、第2の乾燥炉に得られた積層フィルムを搬入してもよい。第2の乾燥炉における乾燥温度は、80℃以上130℃以下であってよい。好ましくは、第1の乾燥炉の乾燥温度は、第2の乾燥炉の乾燥温度よりも低く設定される。なお、第1および第2の乾燥炉に加え、更なる乾燥炉を設けてもよい。
【0127】
また、本明細書において第1の乾燥炉および第2乾燥炉は、同一の乾燥炉であってもよく、離型層の形成工程と帯電防止層の形成工程において、それぞれ個別に第1の乾燥炉、第2の乾燥炉を設けてもよい。いずれの工程においても、上記乾燥条件を適用できれば良い。
【0128】
このような工程を経て得られる帯電防止層は、本明細書に記載される種々の物性および効果を満たすことができ、更に、本明細書に記載される種々の物性および効果を満たすセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得ることができる。
【0129】
特定の理論に限定して解釈すべきではないが、本発明の製造方法において、第1の乾燥炉までの搬送時間、第1の乾燥炉での乾燥温度および第2の乾燥炉における乾燥温度を、上記条件に制御することで、帯電防止層に含まれる帯電防止性樹脂およびワックスの相乗効果により、ポリエステルフィルムの表面形状がそのまま帯電防止層に転写されることなく、帯電防止層の領域表面平均粗さ(Sa2)が導かれる。
【0130】
このため、本発明に係る(Sa1/Sa2)が所定の範囲となり、本発明の製造方法で得られる離型フィルムは、例えば、良好な帯電防止性と巻取り性をバランスよく備えることができ、薄層領域のセラミックグリーンシート成型時におけるグリーンシートの破損を抑制でき、更に、印刷される電極の位置ズレも抑制できる。
【0131】
また、離型層と帯電防止層の表面自由エネルギー差を小さくでき、帯電防止層のワックスが離型層に移行することを抑制することができ、長期保管後も帯電防止層の耐摩耗性を維持することが可能となる。
【0132】
本発明の離型フィルムは、例えば上記工程を経ることにより製造される。
【0133】
(セラミックグリーンシート)
本発明におけるセラミックグリーンシートは、樹脂を含むシートであれば、特に限定されない。一態様において、本発明の離型フィルムは、無機化合物を含むセラミックグリーンシートを成型するための離型フィルムである。無機化合物としては、金属粒子、金属酸化物、鉱物などを例示でき、例えば、炭酸カルシウム、シリカ粒子、アルミ粒子、チタン酸バリウム粒子等を例示できる。本発明は、平滑性の高い離型層を有するため、これら無機化合物をセラミックグリーンシートに含む態様であっても、無機化合物に起因し得る欠点、例えば、セラミックグリーンシートの破損、離型層からセラミックグリーンシートの剥離が困難になる問題を抑制できる。
【0134】
セラミックグリーンシートを形成する樹脂成分は、用途に応じて適宜選択できる。一態様において、無機化合物を含むセラミックグリーンシートは、セラミックグリーンシートである。例えば、セラミックグリーンシートは、無機化合物として、チタン酸バリウムを含むことができる。また、樹脂成分として、例えば、ポリビニルブチラール系樹脂を含むことができる。
【0135】
一態様において、セラミックグリーンシートは厚さが、0.2μm以上1.0μm以下である。例えば、本発明は、このような無機化合物を含むセラミックグリーンシートを製造するための離型フィルムを製造する方法を、提供できる。また、本発明における、セラミックグリーンシート成型用離型フィルムの製造方法は、厚さが0.2μm以上1.0μm以下のセラミックグリーンシートを成型する工程を含んでもよい。
【0136】
また、本発明の離型フィルムを構成する積層ポリエステルフィルムは、離型層側に実質的に無機粒子を含まない平面層を、帯電防止層側に粒子などを含有することができる易滑層を設けている。本発明においては、帯電防止層がワックスを有することによって、易滑層の粒子の脱落を防止することが可能となる。また、従来の離型フィルムと比べて、更に良好に、粒子の脱落を防止できる。
【0137】
これは、積層セラミックコンデンサ製造時に搬送ロールと易滑層が強く擦れた際にワックスが存在することで粒子にかかる力を抑制することができるためである。
【0138】
さらに、本発明の離型フィルムではフィルム巻き出し時の帯電を大幅に抑制することが可能である。フィルム巻き出し時の帯電を大幅に抑制することで、セラミックグリーンシート作成工程においてフィルムが帯電することで生じる異物の付着や、スパーク等の発生による工程不具合を抑制することができ、結果としてより高品質な積層セラミックコンデンサを作成することが可能となる。
【0139】
(セラミックグリーンシートと積層セラミックコンデンサ)
一般に、積層セラミックコンデンサは、直方体状のセラミック素体を有する。セラミック素体の内部には、第1の内部電極と第2の内部電極とが厚み方向に沿って交互に設けられている。第1の内部電極は、セラミック素体の第1の端面に露出している。第1の端面の上には第1の外部電極が設けられている。第1の内部電極は、第1の端面において第1の外部電極と電気的に接続されている。第2の内部電極は、セラミック素体の第2の端面に露出している。第2の端面の上には第2の外部電極が設けられている。第2の内部電極は、第2の端面において第2の外部電極と電気的に接続されている。
【0140】
一態様において、本発明の離型フィルムは、セラミックグリーンシート製造用離型フィルムであり、このような積層セラミックコンデンサを製造するために用いられる。例えば、本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムを用いてセラミックグリーンシートを成型するセラミックグリーンシートの製造方法は、0.2μm以上1.0μm以下の厚みを有するセラミックグリーンシートを成型できる。
より詳細には、例えば、以下のようにしてセラミックグリーンシートは製造される。まず、本発明の離型フィルムをキャリアフィルムとして用い、セラミック素体を構成するためのセラミックスラリーを塗布、乾燥させる。セラミックグリーンシートの厚みは、0.2~1.0μmの極薄品が求められてきている。塗布、乾燥したセラミックグリーンシートの上に、第1又は第2の内部電極を構成するための導電層を印刷する。セラミックグリーンシート、第1の内部電極を構成するための導電層が印刷されたセラミックグリーンシート及び第2の内部電極を構成するための導電層が印刷されたセラミックグリーンシートを適宜積層し、プレスすることにより、マザー積層体を得る。マザー積層体を複数に分断し、生のセラミック素体を作製する。生のセラミック素体を焼成することによりセラミック素体を得る。その後、第1及び第2の外部電極を形成することにより積層セラミックコンデンサを完成させることができる。
【実施例】
【0141】
以下に、実施例を用いて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。本発明で用いた特性値は下記の方法を用いて評価した。
【0142】
(領域表面粗さSa)
非接触表面形状計測システム(VertScan R550H-M100)を用いて、下記の条件で測定した。領域表面平均粗さ(Sa)は、5回測定の平均値を採用した。
【0143】
(測定条件)
・測定モード:WAVEモード
・対物レンズ:50倍
・0.5×Tubeレンズ
・測定面積:187μm×139μm
(解析条件)
・面補正:4次補正
・補間処理:完全補間
【0144】
(セラミックグリーンシート剥離力)
下記、材料からなるスラリー組成物Iを10分間攪拌混合し、ビーズミルを用いて直径0.5mmのジルコニアビーズで10分間分散し1次分散体を得た。その後下記材料からなるスラリー組成物IIを(スラリー組成物I):(スラリー組成物II)=3.4:1.0の比率になるように1次分散体に加え、ビーズミルを用いて直径0.5mmのジルコニアビーズで10分間2次分散し、セラミックスラリーを得た。
【0145】
(スラリー組成物I)
トルエン 22.3質量部
エタノール 18.3質量部
チタン酸バリウム(平均粒径100nm) 57.5質量部
ホモゲノールL-18(花王社製) 1.9質量部
(スラリー組成物II)
トルエン 39.6質量部
エタノール 39.6質量部
フタル酸ジオクチル 3.3質量部
ポリビニルブチラール(積水化学社製 エスレックBM-S)16.3質量部
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルサルフェート 0.5質量部
次いで得られた離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが1.0μmになるように塗工し60℃で1分乾燥して、セラミックグリーンシート付き離型フィルムを得た。得られたセラミックグリーンシート付き離型フィルムを、除電機(キーエンス社製、SJ-F020)を用いて除電した後に剥離試験機(協和界面科学社製、VPA-3、ロードセル荷重0.1N)を用いて、剥離角度90度、剥離温度25℃、剥離速度10m/minで剥離した。剥離する向きとしては、剥離試験機付属のSUS板上に両面接着テープ(日東電工社製、No.535A)を貼りつけ、その上にセラミックグリーンシート側を両面テープと接着する形で離型フィルムを固定し、離型フィルム側を引っ張る形で剥離した。
【0146】
(セラミックグリーンシートのピンホール評価)
前記セラミックスラリーの剥離性評価と同様にして離型フィルムの離型面に厚さ1μmのセラミックグリーンシートを成型した。次いで、成型したセラミックグリーンシート付き離型フィルムから離型フィルムを剥離し、セラミックグリーンシートを得た。得られたセラミックグリーンシートのフィルム幅方向の中央領域において25cm2の範囲でセラミックスラリーの塗布面の反対面から光を当て、光が透過して見えるピンホールの発生状況を観察し、下記基準で目視判定した。
○:ピンホールの発生なし
×:ピンホールの発生が1個以上
【0147】
(帯電防止層の滑り性)
テンシロン万能試験機((エー・アンド・デイ(株)製、RTG-1210)を用いて、フィルムの帯電防止層表面と、SUS板を接するように重ねたときの、接触面の静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μd)をJIS K-7125に順じて下記条件で測定した。
試験片:幅50mm×長さ60mm
荷重:4.4kg
試験速度:200mm/min
被摩擦材:SUS板
【0148】
(帯電防止層の表面抵抗値)
フィルムを23℃、65%RHの雰囲気下で24時間放置後、その雰囲気下で表面抵抗値測定装置(三菱油化株式会社製、ハイレスタ-IP)を用い、印加電圧500Vにてフィルム表面、すなわち帯電防止層の表面固有抵抗値(Ω/□)を測定した。
【0149】
(摩耗試験後の帯電防止層の表面抵抗値)
フィルムを学振式摩擦試験器(山口科学産業社製)で荷重ヘッド部とフィルムの接触部にガーゼ(白十字株式会社製ハクジュウジガーゼ)を介してパール紙(東洋紡株式会社製東洋紡エステルフィルム P4255-35)を用い、ヘッド部の荷重を200gf/25mm2(5mm×5mm)[0.0785MPa]とし、フィルムの帯電防止層を10往復させて荷重ヘッド部と擦った後、23℃、65%RHの雰囲気下で24時間放置後、擦過部を、表面抵抗値測定装置(三菱油化株式会社製、ハイレスタ-IP)を用い、印加電圧500Vにてフィルム表面、すなわち帯電防止層の表面固有抵抗値(Ω/□)を測定した。
【0150】
(粒子脱落性)
摩擦堅牢度試験機(大栄科学精器製作所製、RT-200)にフィルム(3cm(フィルム幅方向)×20cm(フィルム長手方向))を帯電防止層が上になるように取り付け、荷重ヘッド部(2cmx2cm、200g)と試料フィルムの接触部にアルミ箔(厚さ80μm、算術的平均表面粗さ0.03μm)を用い、10cmの距離を1往復2秒の速度で10往復させた。黒台紙の上に得られたフィルムをのせ、粉落ちしているか目視で確認した。
○:黒台紙上で粉落ちが確認できない。
△:黒台紙上で全体的にわずかな粉落ちが確認できる。
×:黒台紙上で全体的に粉落ちが確認できる。
【0151】
(離型フィルムロールの巻出し帯電)
各実施例および各比較例で得られたグリーンシート製造用剥離フィルムを、幅400mm、長さ5000mのロール状に巻き上げ、剥離フィルムロールを得た。この剥離フィルムロールを40℃、湿度50%以下の環境下に30日間保管した後、100m/minで巻き返す際の帯電量を春日電機社製「KSD-0103」を用いて測定した。帯電量は、巻出し直後100mmの箇所について、巻出し長さ500M毎に測定し、その平均値を算出した。
○:±5kV未満
△:±5kV以上、10kV未満
×:±10kV以上
【0152】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(I))の調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口及び生成物取出口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用いた。TPA(テレフタル酸)を2トン/時とし、EG(エチレングリコール)をTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間、255℃で反応させた。次いで、第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成PETに対して8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウム四水塩を含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が40ppmのとなる量のTMPA(リン酸トリメチル)を含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1時間、260℃で反応させた。次いで、第2エステル化反応缶の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、高圧分散機(日本精機社製)を用いて39MPa(400kg/cm2)の圧力で平均処理回数5パスの分散処理をした平均粒径が0.9μmの多孔質コロイダルシリカ0.2質量%と、ポリアクリル酸のアンモニウム塩を炭酸カルシウムあたり1質量%付着させた平均粒径が0.6μmの合成炭酸カルシウム0.4質量%とを、それぞれ10%のEGスラリーとして添加しながら、常圧にて平均滞留時間0.5時間、260℃で反応させた。第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、95%カット径が20μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターで濾過を行ってから、限外濾過を行って水中に押出し、冷却後にチップ状にカットして、固有粘度0.60dl/gのPETチップを得た(以後、PET(I)と略す)。PETチップ中の滑剤含有量は0.6質量%であった。
【0153】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(II))の調製)
一方、上記PET(I)チップの製造において、炭酸カルシウム、シリカ等の粒子を全く含有しない固有粘度0.62dl/gのPETチップを得た(以後、PET(II)と略す。)。
【0154】
(積層フィルムF1の製造)
これらのPETチップを乾燥後、285℃で溶融し、別個の溶融押出し機押出機により290℃で溶融し、95%カット径が15μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターと、95%カット径が15μmのステンレススチール粒子を焼結したフィルターの2段の濾過を行って、フィードブロック内で合流して、PET(I)を易滑層(反離型面側層)、PET(II)を平面層(離型面側層)となるように積層し、シート状に45m/分のスピードで押出(キャスティング)し、静電密着法により30℃のキャスティングドラム上に静電密着・冷却させ、固有粘度が0.59dl/gの未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。層比率は各押出機の吐出量計算でPET(I)/(II)=60質量%/40質量%となるように調整した。次いで、この未延伸シートを赤外線ヒーターで加熱した後、ロール温度80℃でロール間のスピード差により縦方向に3.5倍延伸した。その後、テンターに導き、140℃で横方向に4.2倍の延伸を行なった。次いで、熱固定ゾーンにおいて、210℃で熱処理した。その後、横方向に170℃で2.3%の緩和処理をして、厚さ31μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムF1を得た。得られたフィルムF1の平面層AのSaは1nm、易滑層BのSaは28nmであった。
【0155】
(積層フィルムF2の製造)
積層フィルムF2としては、平面層側、易滑層側にいずれもPET(II)を用いて積層フィルムF1と同様に積層し、シート状に45m/分のスピードで押出(キャスティング)し、静電密着法により30℃のキャスティングドラム上に静電密着・冷却させ、固有粘度が0.59dl/gの未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。この未延伸PETシートを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸延伸PETフィルムを得た。次いで、下記易滑塗布液をバーコーターでPETフィルムの片面に塗布した後、80℃で15秒間乾燥した。なお、最終延伸、乾燥後の塗布量が0.1μmになるように調整した。引続いてテンターで、150℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、230℃で0.5秒間加熱し、さらに230℃で10秒間3%の幅方向の弛緩処理を行ない、厚さ31μmのインラインコーティングポリエステルフィルムF2を得た。得られたフィルムF2の平面層AのSaは1nm、易滑層BのSaは6nmであった。
【0156】
(易滑塗布液)
水 45.82質量部
イソプロピルアルコール 35.00質量部
アクリルポリオール樹脂 10.36質量部
(DSM Coating Resins社製 NeoCryl A-614 Tg74℃、酸価55%、固形分濃度32質量%)
オキサゾリン系架橋剤D-1 5.68質量部
(固形分濃度25質量%)
アクリル粒子水分散体 2.37質量部
(日本触媒製、商品名MX200W、平均粒径350nm、固形分濃度10質量%)
アクリル粒子水分散体 0.47質量部
(日本触媒製、商品名MX300W、平均粒径450nm、固形分濃度10質量%)
界面活性剤H-1(フッ素系、固形分濃度10質量%) 0.30質量部
【0157】
(積層フィルムF3の製造)
積層フィルムF3としては、厚み25μmのE5101(東洋紡エステル(登録商標)フィルム、東洋紡社製)を使用した。積層フィルムF3は、平面層及び易滑層に粒子を含有した構成になっている。積層フィルムF3の平面層AのSaは12nm、易滑層BのSaは12nmであった。
【0158】
(積層フィルムF4の製造)
積層フィルムF4としては、厚み38μmのA4000(東洋紡エステル(登録商標)フィルム、東洋紡社製)を使用した。A4000は、フィルム中に粒子を含有しない構成になっている。積層フィルムF4の平面層AのSaは2nm、易滑層BのSaは2nmであった。
【0159】
(積層フィルムF5の製造)
積層フィルムF5としては、厚み31μmのX3(東洋紡エステル(登録商標)フィルム、東洋紡社製)を使用した。積層フィルムF5は、平面層及び易滑層に粒子を含有した構成になっている。積層フィルムF5の平面層AのSaは6nm、易滑層BのSaは15nmであった。
【0160】
(積層フィルムF6の製造)
積層フィルムF6としては、厚み38μmのA4000(東洋紡エステル(登録商標)フィルム、東洋紡社製)の片面にサンドマット処理を施したフィルムを使用した。該フィルムのうち、サンドマット処理を施した側を易滑面、反対側を平面層とした。積層フィルムF6の平面層AのSaは3nm、易滑層BのSaは200nmであった。
【0161】
(実施例1)
第1のポリジメチルシロキサンとして、ポリジメチルシロキサンの構造中にビニル基を少なくとも1個有するビニル変性シリコーン樹脂(重量平均分子量:466000)と、第2のポリジメチルシロキサンとして、ポリジメチルシロキサンの構造中にヒドロシリル基を少なくとも1個有するポリメチルハイドロジェンシロキサンをビニル基とヒドロシリル基の比率が2.0になるように調整した離型層形成物R1を用意し、離型層形成物R1を含む下記の離型層形成コート液M1を調液した。
【0162】
(離型層形成コート液M1)
メチルエチルケトン 64.3質量部
トルエン 34.0質量部
離型層形成物R1 1.5質量部
密着性付与剤 0.1質量部
(ダウ・東レ株式会社製SD7200(ビニルトリアセトキシシランとグリシドキシプロピルトリメトキシシランの反応物 固形物濃度90質量%))
触媒 0.1質量部
(ダウ・東レ株式会社製 SRX212(1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサンの白金錯体 固形分濃度5質量%))
積層フィルムF1の平面層A上に下記組成の離型層形成コート液M1を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が20nmになるように塗工した。その後、0.5秒後に第1の乾燥炉に入るように加工速度を調整し、第1の乾燥炉温度90℃、第2の乾燥炉温度120℃で連続的に加熱乾燥した。乾燥工程後、冷却ロール上で紫外線照射機(へレウス社製、Hバルブ)を用いて積算光量100mJ/cm2の紫外線を照射し、離型層を硬化させた。
【0163】
得られた離型コートフィルムの易滑層B上に下記組成の帯電防止層形成コート液R1を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工した。その後、0.5秒後に第1の乾燥炉に入るように加工速度を調整し、第1の乾燥炉温度90℃、第2の乾燥炉温度120℃で連続的に加熱乾燥することでセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0164】
(帯電防止層形成コート液R1)
水 34.6質量部
メタノール 64.4質量部
カチオン性帯電防止剤(綜研化学株式会社製 エレコンドPQ-10 固形分濃度50質量%) 0.4質量部
ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製 ハイテック E68A 固形分濃度20質量%) 0.6質量部
実施例で用いたポリエチレンワックスの軟化点は、110℃であった。また、得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Aに示すように良好な結果が得られた。
【0165】
(実施例2)
積層フィルムF2の平面層A上に下記組成の離型層形成コート液M1を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が20nmになるように塗工した。その後、0.5秒後に第1の乾燥炉に入るように加工速度を調整し、第1の乾燥炉温度90℃、第2の乾燥炉温度120℃で連続的に加熱乾燥した。乾燥工程後、冷却ロール上で紫外線照射機(へレウス社製、Hバルブ)を用いて積算光量100mJ/cm2の紫外線を照射し、離型層を硬化させた。
【0166】
得られた離型コートフィルムの易滑層B上に帯電防止層層形成コート液R1を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Aに示すように良好な結果が得られた。
【0167】
(実施例3)
離型コートフィルムの易滑層上に下記組成の帯電防止層層形成コート液R2を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0168】
(帯電防止層層形成コート液R2)
水 34.8質量部
メタノール 64.4質量部
カチオン性帯電防止剤(綜研化学株式会社製 エレコンドPQ-10) 0.5質量部
ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製 ハイテック E68A) 0.3質量部
また、得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Aに示すように良好な結果が得られた。
【0169】
(実施例4)
離型コートフィルムの易滑層上に下記組成の帯電防止層層形成コート液R3を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0170】
(帯電防止層層形成コート液R3)
水 34.4質量部
メタノール 64.4質量部
カチオン性帯電防止剤(綜研化学株式会社製 エレコンドPQ-10) 0.3質量部
ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製 ハイテック E68A) 0.9質量部
また、得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Aに示すように良好な結果が得られた。
【0171】
(実施例5)
離型コートフィルムの易滑層上に下記組成の帯電防止層層形成コート液R4を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0172】
(帯電防止層層形成コート液R4)
水 35.1質量部
メタノール 64.4質量部
カチオン性帯電防止剤(綜研化学株式会社製 エレコンドPQ-10) 0.2質量部
ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製 ハイテック E68A) 0.3質量部
また、得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Aに示すように良好な結果が得られた。
【0173】
(実施例6)
離型コートフィルムの易滑層上に下記組成の帯電防止層層形成コート液R5を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が23nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0174】
(帯電防止層層形成コート液R5)
水 34.1質量部
メタノール 64.4質量部
カチオン性帯電防止剤(綜研化学株式会社製 エレコンドPQ-10) 0.6質量部
ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製 ハイテック E68A) 0.9質量部
また、得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Aに示すように良好な結果が得られた。
【0175】
(実施例7)
離型コートフィルムの易滑層上に下記組成の帯電防止層層形成コート液R6を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0176】
(帯電防止層層形成コート液R6)
水 35.1質量部
メタノール 64.4質量部
カチオン性帯電防止剤(綜研化学株式会社製 エレコンドPQ-10) 0.4質量部
ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製 ハイテック E68A) 0.1質量部
また、得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Aに示すように易滑性が十分なフィルムが得られた。
【0177】
(実施例8)
離型コートフィルムの易滑層上に下記組成の帯電防止層層形成コート液R7を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0178】
(帯電防止層層形成コート液R7)
水 34.1質量部
メタノール 64.4質量部
カチオン性帯電防止剤(綜研化学株式会社製 エレコンドPQ-10) 0.3質量部
ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製 ハイテック E68A) 1.2質量部
また、得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Aに示すように易滑性が若干高いフィルムが得られた。
【0179】
(実施例9)
離型コートフィルムの易滑層上に下記組成の帯電防止層層形成コート液R8を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0180】
(帯電防止層層形成コート液R8)
水 34.8質量部
メタノール 64.4質量部
カチオン性帯電防止剤(綜研化学株式会社製 エレコンドPQ-10) 0.4質量部
ポリエチレンワックス(ビックケミー株式会社製 AQUACER 531) 0.4質量部
実施例で用いたポリエチレンワックスの軟化点は、130℃であった。また、得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Aに示すように粒子脱落性が十分なフィルムが得られた。
【0181】
(実施例10)
離型コートフィルムの易滑層上に下記組成の帯電防止層層形成コート液R9を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0182】
(帯電防止層層形成コート液R9)
水 34.8質量部
メタノール 64.4質量部
カチオン性帯電防止剤(綜研化学株式会社製 エレコンドPQ-10) 0.4質量部
ポリプロピレンワックス(ビックケミー株式会社製 AQUACER 593) 0.4質量部
実施例で用いたポリエチレンワックスの軟化点は、160℃であった。また、得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Aに示すように粒子脱落性が十分なフィルムが得られた。
【0183】
(製造例11)
積層フィルムF5の片面上に下記組成の離型層形成コート液M1を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が20nmになるように塗工した。その後、0.5秒後に第1の乾燥炉に入るように加工速度を調整し、第1の乾燥炉温度90℃、第2の乾燥炉温度120℃で連続的に加熱乾燥した。乾燥工程後、冷却ロール上で紫外線照射機(へレウス社製、Hバルブ)を用いて積算光量100mJ/cm2の紫外線を照射し、離型層を硬化させた。
【0184】
得られた離型コートフィルムのもう一方の面に帯電防止層層形成コート液R1を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。また、得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Aに示すように良好な結果が得られた。
【0185】
(実施例12)
離型コートフィルムの易滑層上に下記組成の帯電防止層層形成コート液R13を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0186】
(帯電防止層層形成コート液R13)
水 33.3質量部
メタノール 64.4質量部
アニオン性帯電防止樹脂(新中村化学工業株式会社製 ELポリマーWS-52R) 2質量部
ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製 ハイテック E68A) 0.3質量部
フッ素系界面活性剤(DIC株式会社製 メガファックF-444) 0.03質量部
また、得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Aに示すように表面抵抗値が若干高い結果となった。
【0187】
(実施例13)
離型コートフィルムの易滑層上に下記組成の帯電防止層層形成コート液R14を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0188】
(帯電防止層層形成コート液R14)
水 34.6質量部
メタノール 64.4質量部
カチオン性帯電防止剤(綜研化学株式会社製 エレコンドPQ-10 固形分濃度50質量%) 0.4質量部
ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製 ハイテック E68A 固形分濃度20質量%) 0.01質量部
得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Aに示すように滑り性が若干高いフィルムが得られた。
【0189】
(実施例14)
離型コートフィルムの易滑層上に下記組成の帯電防止層層形成コート液R15を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0190】
(帯電防止層層形成コート液R15)
水 35.1質量部
メタノール 64.4質量部
カチオン性帯電防止剤(竹本油脂株式会社製 TIE-615A) 0.2質量部
ポリエチレンワックス(東邦化学工業株式会社製 ハイテック E68A) 0.3質量部
また、得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Aに示すように良好な結果が得られた。
【0191】
(比較例1)
積層フィルムF3の片面上に下記組成の離型層形成コート液M1を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が20nmになるように塗工した。その後、0.5秒後に第1の乾燥炉に入るように加工速度を調整し、第1の乾燥炉温度90℃、第2の乾燥炉温度120℃で連続的に加熱乾燥した。乾燥工程後、冷却ロール上で紫外線照射機(へレウス社製、Hバルブ)を用いて積算光量100mJ/cm2の紫外線を照射し、離型層を硬化させた。
【0192】
得られた離型コートフィルムのもう一方の面に帯電防止層層形成コート液R1を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Bに示すようにセラミックグリーンシートに多数のピンホールが発生した。
【0193】
(比較例2)
離型コートフィルムの易滑層上に、帯電防止層を設けないほかは実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Bに示すように表面抵抗値が劣るため、巻出帯電が大幅に劣る結果となった。
【0194】
(比較例3)
離型コートフィルムの易滑層上に、ワックスを有さない下記組成の帯電防止層層形成コート液R10を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0195】
(帯電防止層層形成コート液R10)
水 35.2質量部
メタノール 64.4質量部
カチオン性帯電防止剤(綜研化学株式会社製 エレコンドPQ-10) 0.4質量部
また、得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Bに示すように易滑性、耐摩耗性および粒子脱落性が著しく劣るフィルムが得られた。
【0196】
(比較例4)
積層フィルムF4の片面上に下記組成の離型層形成コート液M1を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が20nmになるように塗工した。その後、0.5秒後に第1の乾燥炉に入るように加工速度を調整し、第1の乾燥炉温度90℃、第2の乾燥炉温度120℃で連続的に加熱乾燥した。乾燥工程後、冷却ロール上で紫外線照射機(へレウス社製、Hバルブ)を用いて積算光量100mJ/cm2の紫外線を照射し、離型層を硬化させた。
【0197】
得られた離型コートフィルムのもう一方の面に帯電防止層層形成コート液R1を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Bに示すように易滑性が著しく劣るフィルムが得られた。
【0198】
(比較例5)
積層フィルムF5の片面上に下記組成の離型層形成コート液M1を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が20nmになるように塗工した。その後、0.5秒後に第1の乾燥炉に入るように加工速度を調整し、第1の乾燥炉温度90℃、第2の乾燥炉温度120℃で連続的に加熱乾燥した。乾燥工程後、冷却ロール上で紫外線照射機(へレウス社製、Hバルブ)を用いて積算光量100mJ/cm2の紫外線を照射し、離型層を硬化させた。
【0199】
得られた離型コートフィルムのもう一方の面に帯電防止層層形成コート液R1を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Bに示すようにセラミックスラリー塗工時にピンホールが多数発生した。
【0200】
(比較例6)
フィルム平面層上に離型層を設けないほかは実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Bに示すようにセラミック剥離力が著しく劣るフィルムが得られた。
【0201】
(比較例7)
離型コートフィルムの易滑層上に下記組成の帯電防止層層形成コート液R11を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0202】
(帯電防止層層形成コート液R11)
水 34.6質量部
メタノール 64.4質量部
カチオン性帯電防止剤(綜研化学株式会社製 エレコンドPQ-10) 0.4質量部
シリコーングラフトアクリル樹脂(東亞合成株式会社製 サイマックUS-450) 0.6質量部
得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Bに示すように粒子脱落性が劣るフィルムが得られた。
【0203】
(比較例8)
離型コートフィルムの易滑層上に下記組成の帯電防止層層形成コート液R12を、リバースグラビアを用いて乾燥後の塗布量が15nmになるように塗工したことを除いては実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを得た。
【0204】
(帯電防止層層形成コート液R12)
水 34.6質量部
メタノール 64.4質量部
カチオン性帯電防止剤(綜研化学株式会社製 エレコンドPQ-10) 0.4質量部
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー株式会社製 BYK-307) 0.6質量部
得られた離型フィルムの上記の各種物性の評価を行った結果、表2Bに示すように摩耗後の表面固有抵抗値が劣るフィルムが得られた。
【0205】
用いた各種成分、物性値などを表1A、表1B、表2A及び表2Bに示す。
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
実施例の発明は、本発明の要件をみたす。この結果、例えば、成型したセラミックグリーンシートに電極を印刷する工程において、離型フィルムにセラミックグリーンシートを設ける加工面の反対側の面と、乾燥機内の支持体が接触し、摩擦を伴いながら搬送される状態において、摩擦に伴う帯電を抑制できる。
【0211】
本発明は、搬送時における帯電を抑制できるので、摩擦に伴う帯電による異物等の混入を抑制できる。更に、搬送性も良好であり、フィルム搬送時に生じ得るフィルムの巻取り不良、シワの発生を抑制できる。
【0212】
また、本発明は、良好な帯電防止性と巻取り性をバランスよく備えるので、薄層領域のセラミックグリーンシート成型時におけるグリーンシートの破損を抑制でき、更に、印刷される電極の位置ズレも抑制できる。
【0213】
加えて、本発明は、セラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離する際の剥離帯電を抑えるだけでなく、搬送時の帯電についても抑制できる。
【0214】
ここで、本発明は、基材と帯電防止層の密着性にも優れており、帯電防止層と乾燥機内の支持体との摩擦による帯電防止層の脱落できる。また、帯電防止層から帯電防止性樹脂が脱落することにより生じる工程汚染や、グリーンシートのピンホール生成を抑制でき、帯電防止性樹脂の脱落物による新たな問題についても解決できる。特に、本発明において、帯電防止層がワックスを含むことで、粒子脱落の抑制に優れ、摩耗後の表面固有抵抗値にも優れたフィルムが得られた。
【0215】
一方、比較例1は、基材としてのポリエステルフィルムの2つの面の粗さが同程度に大きいため、セラミックグリーンシートにピンホールが生じた。比較例2は、帯電防止層を有さず、例えば、粒子脱落性、巻き出し帯電が悪くなる。比較例3は、ワックスを有さず、粒子脱落性が不十分である。
【0216】
比較例4は、基材としてのポリエステルフィルムの2つの面の粗さが同程度に小さいため、巻き出し帯電が悪くなる。比較例5は、基材としてのポリエステルフィルムが本発明のAS面の粗さが過度に大きいため、セラミックスラリー塗工時にピンホールが多数発生した。
【0217】
比較例6は、離型層を有しておらず、セラミック剥離性が悪く、十分な評価が出来なかった。比較例7は、帯電防止層にワックスを含まないため、粒子脱落性が劣るフィルムが得られた。比較例8は、帯電防止層にワックスを含まないため、摩耗後の表面固有抵抗値が劣るフィルムが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明の離型フィルムは、特にセラミックグリーンシートを成型する時に欠陥の発生を抑制することができる。
【要約】
本発明は、帯電防止性能とフィルムの搬送性を両立し、帯電防止剤の脱落を抑制し、平滑性を有するセラミックグリーンシート成型用離型フィルムを提供することを目的とする。
セラミックグリーンシート成型用離型フィルムは、離型層と、基材としてのポリエステルフィルムと、帯電防止層とをこの順序で有する。前記基材は、2つの面の粗さが異なり、前記帯電防止層が帯電防止性樹脂およびワックスを含有し、前記離型層の領域表面平均粗さ(Sa1)が10nmより小さく、かつ前記離型層の領域表面平均粗さ(Sa1)と、前記帯電防止層の領域表面平均粗さ(Sa2)が0.02<Sa1/Sa2<0.5を満たす。