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特許7605408メッシュベルト式連続焼結炉、および焼結体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】メッシュベルト式連続焼結炉、および焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/24 20060101AFI20241217BHJP
   F27B 9/12 20060101ALI20241217BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F27B9/24 E
F27B9/12
F27D3/12 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021563819
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2020043007
(87)【国際公開番号】W WO2021117442
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2019224746
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】楊 堅
(72)【発明者】
【氏名】西井 強
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲
【審査官】齋藤 健児
(56)【参考文献】
【文献】特開昭47-026308(JP,A)
【文献】特開平07-034121(JP,A)
【文献】実開平05-094695(JP,U)
【文献】特開2002-129202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/24
F27B 9/12
F27D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉本体部と、
前記炉本体部の内部を走行して加熱対象を搬送するメッシュベルトと、を備えるメッシュベルト式連続焼結炉であって、
前記メッシュベルトは、複数のステンレス鋼線で網目状に構成され、
前記炉本体部は、
前記加熱対象を予熱する予熱部と、
予熱された前記加熱対象を焼結する焼結部と、
不活性ガスを前記メッシュベルトと前記メッシュベルトの上に配置された前記加熱対象との間に向けて噴射する噴射口を有する配管と、を有し、
前記予熱部は、理論空燃比に対して炭化水素の割合が多い混合比で前記炭化水素と空気とを混合したガスを燃焼させることにより前記加熱対象を予熱する少なくとも一つの第1の加熱装置を有し、
前記焼結部は、前記焼結部内の雰囲気制御が可能な第2の加熱装置を有し、
前記噴射口は、前記メッシュベルトの前記炉本体部内での進行方向において前記焼結部の入口に最も近い前記第1の加熱装置から前記焼結部の上流部までの間であり、かつ、前記メッシュベルトの周方向において前記噴射口は、前記メッシュベルトの側方から下方までの範囲に配置される、
メッシュベルト式連続焼結炉。
【請求項2】
前記噴射口は、前記炉本体部の側面視において、前記予熱部内に設けられている請求項1に記載のメッシュベルト式連続焼結炉。
【請求項3】
前記不活性ガスは、窒素ガスである請求項1または請求項2に記載のメッシュベルト式連続焼結炉。
【請求項4】
前記メッシュベルトと前記加熱対象との間に介在されるメッシュトレイを有し、
前記メッシュトレイは、複数のステンレス鋼線で網目状に構成される請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のメッシュベルト式連続焼結炉。
【請求項5】
前記加熱対象が前記炉本体部の内部に搬送された時、前記予熱部内の温度は300℃以上800℃以下になるように構成され、前記焼結部内の温度は1000℃以上1170℃以下になるように構成された請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のメッシュベルト式連続焼結炉。
【請求項6】
前記第2の加熱装置は、電気ヒータ又はラジアントチューブバーナーである、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のメッシュベルト式連続焼結炉。
【請求項7】
前記不活性ガスの噴射量は、1m /h以上10m /h以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のメッシュベルト式連続焼結炉。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のメッシュベルト式連続焼結炉を用いて焼結体を製造する工程を備え、
前記加熱対象は、鉄又は鉄合金の粉末からなる圧粉成形体である、
焼結体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メッシュベルト式連続焼結炉に関する。本出願は、2019年12月12日出願の日本出願第2019-224746号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、炉本体部と、メッシュベルトとを備えるメッシュベルト式連続焼結炉を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-009227号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示に係るメッシュベルト式連続焼結炉は、
炉本体部と、
前記炉本体部の内部を走行して加熱対象を搬送するメッシュベルトと、を備えるメッシュベルト式連続焼結炉であって、
前記メッシュベルトは、複数のステンレス鋼線で網目状に構成され、
前記炉本体部は、
前記加熱対象を予熱する予熱部と、
予熱された前記加熱対象を焼結する焼結部と、
不活性ガスを前記メッシュベルトに向けて噴射する噴射口を有する配管と、を有し、
前記予熱部は、理論空燃比に対して炭化水素の割合が多い混合比で炭化水素と空気とを混合したガスを燃焼させることにより前記加熱対象を予熱する少なくとも一つの第1の加熱装置を有し、
前記焼結部は、前記焼結部内の雰囲気制御が可能な第2の加熱装置を有し、
前記噴射口は、前記メッシュベルトの前記炉本体部内での進行方向において前記焼結部の入口に最も近い前記第1の加熱装置から前記焼結部の上流部までの間であり、かつ、前記メッシュベルトの周方向において前記メッシュベルトの側方から下方までの範囲に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、実施形態1に係るメッシュベルト式連続焼結炉を示す概略図である。
図2図2は、図1の(II)-(II)切断線で切断したメッシュベルト式連続焼結炉を示す断面図である。
図3A図3Aは、実施形態1に係るメッシュベルト式連続焼結炉に備わるメッシュベルトの上面図である。
図3B図3Bは、図3Aの(B)-(B)切断線で切断したメッシュベルトを示す断面図である。
図4図4は、実施形態2に係るメッシュベルト式連続焼結炉を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
特許文献1は、炉本体部と、メッシュベルトとを備えるメッシュベルト式連続焼結炉を開示している。炉本体部は、予熱部と焼結部と冷却部とを有する。予熱部は、加熱対象を予熱する。加熱対象は、鉄又は鉄合金の粉末からなる成形体である。焼結部は、予熱された加熱対象を焼結する。冷却部は、焼結体を冷却する。メッシュベルトは、炉本体部の入口から出口に向けて走行して加熱対象を搬送する。メッシュベルトは、張力が付加されて炉本体部の入口側プーリー及び出口側プーリーに架け渡されている。
【0007】
《本開示が解決しようとする課題》
表面性状に優れる焼結体の製造が望まれている。
【0008】
そこで、本開示は、表面性状に優れる焼結体を製造できるメッシュベルト式連続焼結炉を提供することを目的の一つとする。
【0009】
《本開示の実施形態の説明》
本発明者らは、焼結体の表面性状が低下する原因を鋭意検討したところ、次の知見を得た。
【0010】
通常、メッシュベルトは、複数のステンレス鋼線で網目状に構成されている。予熱部では、ガスバーナなどの加熱装置によって理論空燃比に対して炭化水素の割合が多い混合比で炭化水素と空気とを混合したガスを燃焼させることにより加熱対象を予熱する。炭化水素ガスの割合が多い混合比とする理由は、空気の割合が多い混合比で燃焼させると加熱対象の脱炭が生じるからである。
【0011】
理論空燃比に対して炭化水素の割合が多い混合比で炭化水素と空気とを混合したガスを燃焼させた場合、燃焼後の燃焼ガスには、水素ガス、一酸化炭素ガス、及びメタンガスなどが含まれる。これら燃焼ガスは、メッシュベルトの上に加熱対象が直接載置されている場合、メッシュベルトと加熱対象とで囲まれる空間に滞留する。燃焼ガスが上記空間に滞留したまま焼結部に搬送されると、焼結部においてメタンガスが分解される。メタンガスが分解されると水素ガスが生成する。水素ガスの生成により、上記空間内の水素ガスの濃度が局所的に高くなる。そうすると、メッシュベルトを構成するステンレス鋼線の不動態皮膜が還元される。加熱対象が鉄又は鉄合金の粉末からなる成形体である場合、焼結部で不動態皮膜が還元されると、メッシュベルト上で焼結された焼結体に還元された不動態皮膜が付着する。還元された不動態皮膜とは、ステンレス鋼線の表面の酸化クロムの一部が変質した皮膜のことである。
【0012】
炉本体部の出口に搬送された焼結体をメッシュベルトの上から取り出す際、不動態皮膜がステンレス鋼線から剥離して焼結体の表面に残存する。この付着物が焼結体の表面性状を低下させる。
【0013】
本発明者らは、更に、ステンレス鋼線の不動態皮膜の還元に伴って、次の知見を得た。
【0014】
不動態皮膜が還元し剥離すると、ステンレス鋼線の地金が露出する。メッシュベルトが炉本体部の出口から出て大気に晒されると、露出した地金が酸化され、その表面に新たな不動態皮膜が形成される。不動態皮膜の形成には、ステンレス鋼線に含まれるクロムが利用される。即ち、不動態皮膜の剥離と形成とが繰り返されると、ステンレス鋼線が細くなる上に、クロムの含有量が少なくなる。そうすると、ステンレス鋼線の強度が低下し、結果としてメッシュベルトの強度が低下する。メッシュベルトは、張力を付加されて入口側プーリー及び出口側プーリーに架け渡され、炉本体部の内部を通過する。そのため、高温クリープによってメッシュベルトの伸びが大きくなり易い。よって、メッシュベルトの寿命が短くなり易い。
【0015】
そこで、本発明者らは、特定の段階で、上記空間内におけるステンレス鋼線の不動態皮膜を還元し得るガスの濃度を低くすることで、焼結部での不動態皮膜の還元を抑制して還元された不動態皮膜が焼結体へ付着することを抑制できる、との知見を得た。その上、本発明者らは、還元された不動態皮膜が焼結体へ付着することを抑制できれば、メッシュベルトの長寿命化を達成できる、との知見を得た。
【0016】
本開示は、上記知見に基づくものである。最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0017】
(1)本開示の一態様に係るメッシュベルト式連続焼結炉は、
炉本体部と、
前記炉本体部の内部を走行して加熱対象を搬送するメッシュベルトと、を備えるメッシュベルト式連続焼結炉であって、
前記メッシュベルトは、複数のステンレス鋼線で網目状に構成され、
前記炉本体部は、
前記加熱対象を予熱する予熱部と、
予熱された前記加熱対象を焼結する焼結部と、
不活性ガスを前記メッシュベルトに向けて噴射する噴射口を有する配管と、を有し、
前記予熱部は、理論空燃比に対して炭化水素の割合が多い混合比で炭化水素と空気とを混合したガスを燃焼させることにより前記加熱対象を予熱する少なくとも一つの第1の加熱装置を有し、
前記焼結部は、前記焼結部内の雰囲気制御が可能な第2の加熱装置を有し、
前記噴射口は、前記メッシュベルトの前記炉本体部内での進行方向において前記焼結部の入口に最も近い前記第1の加熱装置から前記焼結部の上流部までの間であり、かつ、前記メッシュベルトの周方向において前記メッシュベルトの側方から下方までの範囲に配置される。
【0018】
上記メッシュベルト式連続焼結炉は、表面性状に優れる焼結体を製造できる。その理由は、次の通りである。
【0019】
予熱部が上記第1の加熱装置を備えることで、予熱部内には炭化水素ガスを燃焼して生成した燃焼ガスが導入される。燃焼ガスの一部は、メッシュベルトと加熱対象との間に滞留する。不活性ガスを噴射する配管の噴射口が、網目状に構成されるメッシュベルトの上記範囲内からメッシュベルトに向かって開口している。その噴射口の位置は、前記焼結部の入口に最も近い前記第1の加熱装置から焼結部のうち上流側までの間である。そのため、燃焼ガスがステンレス鋼線の不動態皮膜を還元する前に、不活性ガスがメッシュベルトの網目などを通ってメッシュベルトと成形体との間に噴射され、その間に滞留している燃焼ガスが吹き飛ばされる。焼結部は雰囲気制御が可能な第2の加熱装置を備えるため、還元性のある燃焼ガスが炉内に導入されない。そのため、焼結部において、燃焼ガスがメッシュベルトと成形体との間に再度滞留することがない。よって、不動態皮膜の還元が抑制される。不動態皮膜の還元が抑制されることで、還元された不動態皮膜が焼結体へ付着することが抑制される。炉本体部の出口に搬送された焼結体をメッシュベルトの上から取り出す際、不動態皮膜が焼結体に付着することを抑制できる。
【0020】
また、上記メッシュベルト式連続焼結炉のメッシュベルトは長寿命である。その理由は、次の通りである。
【0021】
上述のようにステンレス鋼線の不動態皮膜の還元が抑制されることで、不動態皮膜が剥離しないので、ステンレス鋼線の地金が露出しない。そのため、メッシュベルトが炉本体部の出口から出て大気に晒されても、ステンレス鋼線が酸化せず、その表面に新たな不動態皮膜が形成されない。よって、不動態皮膜の形成のためにステンレス鋼線に含まれるクロムが利用されることがない。即ち、不動態皮膜の剥離と形成とが繰り返されないので、ステンレス鋼線が細くならない上に、クロムの含有量が減少しない。そのため、ステンレス鋼線の強度が低下し難く、延いてはメッシュベルトの強度が低下し難い。その上、高温クリープに伴うメッシュベルトの伸びが抑制される。
【0022】
(2)上記メッシュベルト式連続焼結炉の一形態として、
前記配管は、炉本体部の側面視において、前記予熱部内に設けられていることが挙げられる。
【0023】
上記メッシュベルト式連続焼結炉は、表面性状に優れる焼結体をより確実に製造できる。上記メッシュベルト式連続焼結炉では、メッシュベルトと成形体との間に滞留した燃焼ガスが焼結部に達する前に吹き飛ばされるためである。
【0024】
(3)上記メッシュベルト式連続焼結炉の一形態として、
前記不活性ガスは、窒素ガスであることが挙げられる。
【0025】
窒素ガスは、容易に入手可能であり、無害であるため好ましい。
【0026】
(4)上記メッシュベルト式連続焼結炉の一形態として、
前記メッシュベルトと前記加熱対象との間に介在されるメッシュトレイを有し、
前記メッシュトレイは、複数のステンレス鋼線で網目状に構成されることが挙げられる。
【0027】
上記メッシュベルト式連続焼結炉は、メッシュトレイを用いる場合であっても、表面性状に優れる焼結体を製造できる。予熱部で生成された燃焼ガスの一部は、メッシュベルトのステンレス鋼線とメッシュトレイのステンレス鋼線との間と、メッシュトレイと加熱対象との間の両方の間に滞留する。メッシュベルトとメッシュトレイとが網目状に構成されていることで、不活性ガスがメッシュベルトやメッシュトレイの網目などを通って、上記両方の間に噴射され、その両方の間に滞留した燃焼ガスが吹き飛ばされる。
【0028】
(5)上記メッシュベルト式連続焼結炉の一形態として、
加熱対象が炉本体部の内部に搬送された時に、前記予熱部内の温度は300℃以上800℃以下になるように構成され、前記焼結部内の温度は1000℃以上1170℃以下になるように構成されることが挙げられる。
【0029】
上記温度とすることで予熱部において加熱対象から潤滑剤やバインダが除去される。焼結部では加熱対象が焼結される。
【0030】
(6)上記メッシュベルト式連続焼結炉の一形態として、
前記第2の加熱装置は、電気ヒータ又はラジアントチューブバーナーであることが挙げられる。
【0031】
上記構成とすることで燃焼ガスが生じないか、燃焼ガスが生じても焼結部内の加熱対象が通過する空間内に燃焼ガスが入らないため、焼結部内の雰囲気制御が可能となる。
【0032】
《本開示の実施形態の詳細》
本開示の実施形態の詳細を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0033】
《実施形態1》
〔メッシュベルト式連続焼結炉〕
図1図2図3A図3Bを参照して、実施形態1に係るメッシュベルト式連続焼結炉1を説明する。メッシュベルト式連続焼結炉1は、炉本体部2とメッシュベルト3とを備える。炉本体部2は、予熱部21と焼結部22と冷却部を有する。冷却部の図示は省略する。メッシュベルト3は、炉本体部2の内部を入口から出口に走行して加熱対象10を搬送する。本形態に係るメッシュベルト式連続焼結炉1は、以下の要件(a)から要件(c)を備える。
(a)予熱部21は、理論空燃比に対して炭化水素の割合が多い混合比で炭化水素と空気とを混合したガスを燃焼させる少なくとも一つの第1の加熱装置211を有する。
(b)焼結部22は、焼結部22内の雰囲気制御が可能な第2の加熱装置221を有する。
(c)炉本体部2は、特定の箇所からメッシュベルト3と加熱対象10との間に対して不活性ガスを噴射口から噴射する配管25を有する。
以下、詳細に説明する。
【0034】
[メッシュベルト]
メッシュベルト3は、炉本体部2の2つの側壁223と上面で形成された内部を進行してメッシュベルト3の上に載置された加熱対象10を搬送する。メッシュベルト3は、複数のステンレス鋼線31で網目状に構成されている。メッシュベルト3は、公知のものが利用できる。メッシュベルト3は、無端ベルトであり、張力が付加されて炉本体部2の入口側プーリー91及び出口側プーリーに架け渡されている。出口側プーリーの図示は省略する。入口側プーリー91と出口側プーリーの少なくとも一方を駆動プーリーとして、その駆動によりメッシュベルト3は進行する。本形態では、出口側プーリーが駆動プーリーであり、入口側プーリー91が従動プーリーである。炉本体部2の出口を出たメッシュベルト3は、炉本体部2の下を通って炉本体部2の入口に戻される。
【0035】
[炉本体部]
炉本体部2内のメッシュベルト3の上に載置された加熱対象10がメッシュベルト3の進行により予熱部21、焼結部22、及び冷却部の順に搬送される。そして、炉本体部2内において、その加熱対象10に対して予熱、焼結、及び冷却が順に施される。焼結された加熱対象10を焼結体とする。冷却された焼結体は、メッシュベルト3の上から取り除かれる。加熱対象10としては、Fe粉末又はCを含まないFe合金粉末とC粉末とを含む圧粉成形体や、Cを含有するFe合金粉末を含む圧粉成形体などが好適である。
圧粉成形体は、公知のものが挙げられる。加熱対象10は炉本体部2の入口から入り、炉本体部2の出口に向けて搬送されるので、炉本体部2の入口を上流、出口を下流とする。予熱部21、焼結部22においても同様に入口を上流、出口を下流とする。
【0036】
(予熱部)
予熱部21は、加熱対象10を予熱する。この予熱により、加熱対象10に潤滑剤やバインダが含まれる場合、加熱対象10から潤滑剤やバインダが除去される。そのため、焼結部22で加熱対象10を焼結した際、焼結体の表面にすすや肌荒れなどが生じ難い。
【0037】
予熱部21は、理論空燃比に対して炭化水素の割合が多い混合比で炭化水素と空気とを混合したガスを燃焼させる第1の加熱装置211を有する。
【0038】
第1の加熱装置211としては、例えば、ガスバーナが挙げられる。燃料である炭化水素としては、例えば、ブタン(C10)、プロパン(C)などが挙げられる。本形態では、炭化水素としてブタンガスを用いている。ブタンと空気との理論空燃比は、約32対1である。本形態のように炭化水素がブタンガスの場合、ブタンと空気との理論空燃比よりもブタンの割合が多い混合比で燃焼させると、水素(H)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、水蒸気(HO)、及び二酸化炭素(CO)などの燃焼ガスが生成される。これらの燃焼ガスが予熱部21内に導入されることで、加熱対象10が予熱される。これらの燃焼ガスの一部は、メッシュベルト3と加熱対象10とで囲まれる空間100(図3A図3B)に滞留する。空間100については後述する。
【0039】
第1の加熱装置211の数は、予熱部21の全長などに合わせて適宜選択できる。第1の加熱装置211の数は、単数であってもよいし複数であってもよい。本形態の第1の加熱装置211の数は、4つとしている。4つの第1の加熱装置211は、メッシュベルト3の進行方向に互いに間隔を開けて並列されている。
【0040】
予熱部21の温度は、加熱対象10に含まれる潤滑剤やバインダの種類に応じて適宜選択できる。加熱対象10が炉本体部2の内部に搬送された時に予熱部21内の温度は、例えば、300℃以上800℃以下、更には400℃以上700℃以下が挙げられる。
【0041】
(焼結部)
焼結部22は、予熱された加熱対象10を焼結する。焼結部22は、焼結部22内の雰囲気制御が可能な第2の加熱装置221を有する。雰囲気制御が可能な第2の加熱装置221とは、予熱部21とは異なり、燃焼ガスが生じないか、燃焼ガスが生じても焼結部22内の加熱対象10が通過する空間内に燃焼ガスが入らないものをいう。その第2の加熱装置221としては、例えば、電気ヒータ、ラジアントチューブバーナーなどが挙げられる。本形態の第2の加熱装置221は、電気ヒータである。
【0042】
焼結部22は、第2の加熱装置221によって加熱対象10の焼結温度に達する。焼結温度は、加熱対象10の材質に応じて適宜選択できる。加熱対象10が炉本体部2の内部に搬送された時に焼結部22内の温度は、予熱部21よりも高く、例えば、1000℃以上1170℃以下が挙げられ、更には1100℃以上1150℃以下が挙げられる。
【0043】
焼結部22内の雰囲気は、不活性ガス雰囲気である。不活性ガス雰囲気であることで、加熱対象10の酸化が抑制される。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス(Nガス)、アルゴンガス(Arガス)などが挙げられる。不活性ガスは、メッシュベルト3の炉本体部内での進行方向とは逆方向に向けて吹いている。そのため、不活性ガスは、予熱部21にも行きわたる。なお、この焼結部22の雰囲気を構成する不活性ガスでは、空間100(図3A図3B)に滞留する燃焼ガスは吹き飛ばせない。
【0044】
(冷却部)
冷却部は、焼結体を冷却する。焼結体の冷却は、例えば、冷却ガスを焼結体に吹き付けることで行える。冷却ガスとしては、不活性ガスが挙げられる。不活性ガスとしては、焼結部22と同様、例えば、Nガス、Arガスなどが挙げられる。不活性ガスは、焼結部22内の雰囲気ガスと同じであることが好ましい。そうすれば、炉本体部2内のガス濃度が変化し難い。
【0045】
(配管)
配管25は、不活性ガスを噴射する。不活性ガスとしては、上述したように、例えば、Nガス、Arガスなどが挙げられる。中でも、Nガスは、容易に入手可能であり、無害であるため好ましい。噴射する不活性ガスは、焼結部22内の雰囲気ガスと同種であることが好ましい。そうすれば、炉本体部2内のガス濃度が変化し難い。本形態の不活性ガスの温度は、常温(23℃)である。なお、不活性ガスとして、加熱した不活性ガスを用いてもよい。配管25の耐久性により、加熱した不活性ガスの温度を常温(23℃)から300℃までの温度範囲とする。加熱した不活性ガスを用いることで、加熱対象10の温度が低下し難い。
【0046】
配管25における不活性ガスの噴射口251は、図2に示すように、メッシュベルト3の側方から下方の範囲内に配置され、その範囲内からメッシュベルト3に向かって開口する。メッシュベルト3が上述のように網目状に構成されていて、噴射口251が上記範囲内からメッシュベルト3に向かって開口していることで、噴射された不活性ガスがメッシュベルト3の網目などを通ってメッシュベルト3と加熱対象10との間に行きわたる。メッシュベルト3の側方から下方の上記範囲内とは、メッシュベルト3の側方と、下方と、側方と下方との間とを含む。
【0047】
図1に示すようにメッシュベルト3の上に加熱対象10が直接載置されている場合、メッシュベルト3と加熱対象10との間とは、図3A図3Bに示すように、メッシュベルト3のステンレス鋼線31と加熱対象10とで囲まれる空間100である。図3Aは、メッシュベルト3の上に載置された加熱対象10を加熱対象10側から平面視した状態を示す。図3A図3Bは、説明の便宜上、格子状のメッシュベルト3を示す。図3A図3Bに示すメッシュベルト3は、模式的に示されたものであり、必ずしも実際のものに対応しているわけではない。また、図3A図3Bは、説明の便宜上、空間100をクロスハッチングで示している。また、図4に示すように、メッシュベルト3の上にメッシュトレイ4が直接載置され、メッシュトレイ4の上に加熱対象10が直接載置されている場合については後述する。
【0048】
本形態の噴射口251は、図2に示すように、メッシュベルト3の周方向においてメッシュベルト3の側方に配置され、メッシュベルト3の側方からメッシュベルト3に向かって不活性ガスを噴射する。メッシュベルト3の周方向とは、メッシュベルト3の炉本体部2内での進行方向を軸としたときの周方向である。なお、図示は省略しているものの、噴射口251は、メッシュベルト3の下方に配置され、メッシュベルト3の下方からメッシュベルト3に向かって不活性ガスを噴射してもよい。また、図示は省略しているものの、噴射口251は、メッシュベルト3の側方から下方までの範囲に配置され、その範囲からメッシュベルト3に向かって斜めに不活性ガスを噴射してもよい。本形態のように噴射口251がメッシュベルト3の側方に配置されていることで、メッシュベルト3の下方に配置されている場合に比較して、メッシュベルト3から落下するゴミなどが噴射口251に入り難いため、噴射口251がゴミなどで詰まったりしない。
【0049】
噴射口251がメッシュベルト3の側方に配置されるとは、噴射口251の軸線がメッシュベルト3の上面に平行であり、かつ、噴射口251がメッシュベルト3の側部に臨むことをいう。メッシュベルト3の上面とは、加熱対象10が載置される箇所である。メッシュベルト3の上面に平行とは、本形態のようにメッシュベルト3の進行方向に対して直交する場合のみならず、斜めに交差する場合も含む。メッシュベルト3の炉本体部内での進行方向に対して斜めに交差する場合、メッシュベルト3の炉本体部内での進行方向とは逆方向に向けて噴射するように噴射口251が配置されていることが好ましい。そうすれば、噴射口251から噴射される不活性ガスによる焼結部22内の温度への影響が少ない、或いは影響が実質的にない。メッシュベルト3の側部とは、メッシュベルト3の進行方向と上下方向の両方向に直交する箇所である。噴射口251がメッシュベルト3の下方に配置されるとは、噴射口251の軸線がメッシュベルト3の下面に対して直交することをいう。メッシュベルト3の下面とは、上部とは反対側の箇所をいう。噴射口251がメッシュベルト3の側方と下方との間に配置されるとは、噴射口251の軸線が、メッシュベルト3の下面に対して直交することなく交差することをいう。
【0050】
噴射口251の位置は、焼結部22の入口222に最も近い第1の加熱装置211から焼結部22の上流部までの間である(図1)。焼結部22の上流部とは、焼結部22の入口222から加熱対象10の焼結温度に達する箇所までの間をいう。そうすれば、焼結温度に達する前に、空間100に不活性ガスが噴射され、空間100に滞留した上記燃焼ガスが吹き飛ばされる。よって、焼結温度に達したときには、空間100内の上記燃焼ガスの濃度、特にHガスやCOガスの濃度が低い。或いは、焼結温度に達したときには、空間100に上記燃焼ガス、特にHガスやCOガスが存在しない。噴射するガスの種類が不活性ガスであるため、噴射した不活性ガスが空間100に滞留したとしても、空間100内のHガスやCOガスの濃度は低いままである。なお、予熱部21の第1の加熱装置211が1つの場合、噴射口251の位置は当該第1の加熱装置211から焼結部22の上流部までの間である。予熱部21の第1の加熱装置211が複数ある場合、噴射口251の位置は焼結部22の入口222に最も近い第1の加熱装置211から焼結部22の上流部までの間である。
【0051】
仮に、加熱対象10が焼結温度に達したときに、空間100の上記燃焼ガスの濃度、特にHガスやCOガスの濃度が高ければ、メッシュベルト3を構成するステンレス鋼線31の不動態皮膜が還元される。不動態皮膜が還元されると、還元された不動態皮膜が焼結体へ付着する。還元された不動態皮膜が焼結体に付着すると、炉本体部2の出口に搬送されてメッシュベルト3から加熱対象10を取り除いた際、不動態皮膜がステンレス鋼線31から剥離して焼結体の表面に残存する。よって、表面性状に劣る焼結体が製造される。
【0052】
本形態では、上述のように加熱対象10が焼結温度に達する前に、空間100内の上記燃焼ガスの濃度が低い、或いは空間100に上記燃焼ガスが存在しないので、焼結部22において、ステンレス鋼線31の不動態皮膜の還元が抑制される。そのため、還元された不動態皮膜が焼結体へ付着することを防止できる。即ち、炉本体部2の出口に搬送されてメッシュベルト3から加熱対象10を取り除いても、不動態皮膜が焼結体に付着することを防止できる。よって、表面性状に優れる焼結体が製造される。
【0053】
噴射口251の位置は、予熱部21の最下流の第1の加熱装置211から焼結部22における加熱対象10の焼結温度に達する箇所までの間において、予熱部21の入口により近い位置であることが好ましい。噴射口251の位置は、更に、予熱部21の最下流の第1の加熱装置211から焼結部22におけるCHガスの分解温度に達する箇所までの間であることが好ましい。CHガスの分解温度は1000℃程度である。即ち、焼結部22において、上記分解温度に達する箇所は、上記焼結温度に達する箇所よりも予熱部21の入口により近い位置である。噴射口251の位置が焼結部22における上記分解温度に達する箇所と上記焼結温度に達する箇所との間である場合は、噴射口251の位置はより予熱部21に近い側であることが好ましい。噴射口251の位置が焼結部22の入口222から上記分解温度に達する箇所までの間である場合も、噴射口251の位置はより予熱部21に近い側であることが好ましい。噴射口251の位置は、特に、予熱部21内であることが好ましい。即ち、噴射口251の位置は、予熱部21の最下流の第1の加熱装置211から焼結部22までの間であることが好ましい。
【0054】
CHガスは、分解するとHガスを生成する。噴射口251の位置がCHガスの分解温度に達する箇所までの間であれば、CHガスが分解する前に、空間100に不活性ガスが噴射され、空間100に滞留した上記燃焼ガス、特にCHガスが吹き飛ばされる。CHガスを分解前に吹き飛ばすことで、空間100内のHガス濃度が高くなることを防止できる。そのため、焼結部22において、ステンレス鋼線31の不動態皮膜の還元がより抑制され易い。
【0055】
噴射口251の位置が予熱部21内であれば、焼結部22に達する前に、空間100に不活性ガスが噴射され、空間100に滞留した上記燃焼ガスが吹き飛ばされる。そのため、焼結部22において、ステンレス鋼線31の不動態皮膜の還元が特に抑制され易い。
【0056】
本形態の噴射口251の位置は、図1に示すように、炉本体部2の側面視において予熱部21内であり、予熱部21の最下流の第1の加熱装置211の下流端から焼結部22の入口222までの間である。
【0057】
配管25の数は、適宜選択できる、単数でもよいし、複数でもよい。本形態では、配管25の数は2本である。2本の配管25の噴射口251は、図2に示すように、炉本体部2の断面図において予熱部21内において、メッシュベルト3の両側方に配置され、両側方からメッシュベルト3に向かって開口している。2本の配管25は炉本体部2の側壁223から炉本体部2の内側に延びており、噴射口251がメッシュベルト3により近い位置に配置されるとよい。
【0058】
メッシュベルト3の側方に配置されて、その側方からメッシュベルト3に向かって開口する噴射口251を有する配管25と、メッシュベルト3の側方と下方との間に配置され、その間からメッシュベルト3に向かって開口する噴射口251を有する配管25とを備えていてもよい。
【0059】
不活性ガスの噴射量は、加熱対象10の大きさやメッシュベルト3の網目の大きさなどにもよる。不活性ガスの噴射量は、例えば、1m/h以上10m/h以下が挙げられる。不活性ガスの噴射量が1m/h以上であれば、空間100に滞留する燃焼ガスが吹き飛び易い。不活性ガスの噴射量が10m/h以下であれば、噴射量が過度に多すぎない。そのため、炉本体部2内の温度が下がり難い。不活性ガスの噴射量は、更に、2m/h以上8m/h以下が挙げられ、特に、3m/h以上6m/h以下が挙げられる。
【0060】
[用途]
実施形態に係るメッシュベルト式連続焼結炉1は、各種の一般構造用部品の製造に好適に利用できる。一般構造用部品としては、例えば、機械部品などが挙げられる。機械部品としては、例えば、電磁カップリングのカム部品、プラネタリキャリア、スプロケット、ローター、ギア、リング、フランジ、プーリー、軸受けなどが挙げられる。
【0061】
〔作用効果〕
本形態に係るメッシュベルト式連続焼結炉1は、表面性状に優れる焼結体を製造できる。不活性ガスを噴射する配管25の噴射口251が、最下流の第1の加熱装置211から焼結部22に達するまでの間で、メッシュベルト3の側方からメッシュベルト3に向かって開口している。そのため、空間100に滞留した燃焼ガスが焼結部22に達する前に吹き飛ばされる。焼結部22の第2の加熱装置221は電気ヒータである。そのため、焼結部22において、燃焼ガスが空間100に再度滞留することがない。よって、焼結部22において、メッシュベルト3を構成するステンレス鋼線31の不動態皮膜の還元が抑制され、不動態皮膜の還元に伴う還元された不動態皮膜が焼結体へ付着することが抑制される。炉本体部2の出口に搬送された焼結体をメッシュベルト3の上から取り出す際、不動態皮膜が焼結体に付着することを抑制できる。このように還元された不動態皮膜が焼結体へ付着することが抑制されることで、ロボットハンドであっても焼結体の取り出しが容易である。即ち、本形態に係るメッシュベルト式連続焼結炉1は、焼結体の取り出しの自動化を図り易い。
【0062】
また、本形態に係るメッシュベルト式連続焼結炉1は、メッシュベルト3が長寿命である。上述のようにステンレス鋼線31の不動態皮膜の剥離が抑制されることで、ステンレス鋼線31の地金の露出が抑制される。そのため、メッシュベルト3が炉本体部2の出口から出て大気に晒されても、ステンレス鋼線31が酸化されず、その表面に新たな不動態皮膜が形成されない。よって、不動態皮膜の形成のためにステンレス鋼線31に含まれるクロムが利用されることがない。即ち、不動態皮膜の剥離と形成とが繰り返されることがないことで、ステンレス鋼線31が細くならない上に、クロムの含有量が減少しない。そのため、ステンレス鋼線31の強度が低下し難く、延いてはメッシュベルト3の強度が低下し難い。その上、メッシュベルト3の高温クリープに伴う伸びが抑制される。
【0063】
《実施形態2》
〔メッシュベルト式連続焼結炉〕
図4を参照して、実施形態2に係るメッシュベルト式連続焼結炉1を説明する。本形態に係るメッシュベルト式連続焼結炉1は、加熱対象10が直接メッシュベルト3の上に載置されているのではなく、メッシュベルト3の上に載置されるメッシュトレイ4の上に載置されている点が、実施形態1と相違する。以下の説明は、実施形態1との相違点を中心に行う。実施形態1と同様の説明は省略する。
【0064】
[メッシュトレイ]
メッシュトレイ4は、少なくとも一つの加熱対象10が載置される。メッシュトレイ4は、複数の加熱対象10が載置される場合、複数の加熱対象10をまとめてメッシュベルト3の上に配置する。メッシュトレイ4は、メッシュベルト3と同様、複数のステンレス鋼線41で網目状に構成されている。メッシュトレイ4は、メッシュベルト3の上に直接載置されている。
【0065】
[炉本体部]
(配管)
配管25の噴射口251は、実施形態1と同様、メッシュベルト3の側方に配置され、メッシュベルト3の側方からメッシュベルト3に向かって開口している。そのため、メッシュベルト3と加熱対象10との間に不活性ガスが噴射される。
【0066】
本形態では、メッシュベルト3の上にメッシュトレイ4が直接載置され、メッシュトレイ4の上に加熱対象10が直接載置されている。本形態において、メッシュベルト3と加熱対象10との間とは、メッシュベルト3とメッシュトレイ4との間と、メッシュトレイ4と加熱対象10との間の両方の間をいう。メッシュベルト3とメッシュトレイ4との間とは、メッシュベルト3のステンレス鋼線31とメッシュトレイ4のステンレス鋼線41とで囲まれる空間をいう。この空間の図示は省略する。メッシュトレイ4と加熱対象10との間とは、メッシュトレイ4のステンレス鋼線41と加熱対象10とで囲まれる空間をいう。この空間は、図3A図3Bを参照して説明したメッシュベルト3と加熱対象10とで囲まれる空間と同様であるため、図示を省略している。
【0067】
上述したようにメッシュベルト3とメッシュトレイ4とが網目状に構成されている。そのため、噴射口251から噴射される不活性ガスは、メッシュベルト3の網目やメッシュトレイ4の網目などを通って、メッシュベルト3のステンレス鋼線31とメッシュトレイ4のステンレス鋼線41とで囲まれる空間及びメッシュトレイ4のステンレス鋼線41と加熱対象10とで囲まれる空間の両方の空間に行きわたる。
【0068】
〔作用効果〕
本形態に係るメッシュベルト式連続焼結炉1は、メッシュトレイ4を用いる場合であっても、実施形態1と同様、表面性状に優れる焼結体を製造できる。また、本形態に係るメッシュベルト式連続焼結炉1は、メッシュベルト3が長寿命である。メッシュベルト3を構成するステンレス鋼線31の不動態皮膜の還元が抑制され、ステンレス鋼線31及びメッシュベルト3の強度が低下し難い上に、メッシュベルト3の高温クリープに伴う伸びが抑制されるからである。更に、本形態に係るメッシュベルト式連続焼結炉1は、実施形態1で説明したメッシュベルト3が長寿命であることの理由と同様の理由から、メッシュトレイ4が長寿命である。
【0069】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 メッシュベルト式連続焼結炉
2 炉本体部
21 予熱部
211 第1の加熱装置
22 焼結部
221 第2の加熱装置
222 焼結部の入口
223 側壁
25 配管
251 噴射口
3 メッシュベルト
31 ステンレス鋼線
4 メッシュトレイ
41 ステンレス鋼線
91 入口側プーリー
10 加熱対象
100 空間
図1
図2
図3A
図3B
図4