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特許7605415位置推定装置、情報端末、位置推定プログラム、及び、位置推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】位置推定装置、情報端末、位置推定プログラム、及び、位置推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20241217BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20241217BHJP
   G01S 1/68 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G01C21/30
G01S17/89
G01S1/68
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023168885
(22)【出願日】2023-09-28
【審査請求日】2023-09-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和4年12月7~9日にパシフィコ横浜で開催された国際画像機器展2022において頒布したパンフレットにて発表。 (2)令和5年6月14~16日にパシフィコ横浜で開催された画像センシング展2023において頒布したパンフレットにて発表。
(73)【特許権者】
【識別番号】307009791
【氏名又は名称】株式会社カラーチップス
(73)【特許権者】
【識別番号】000108177
【氏名又は名称】セントラル警備保障株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523373267
【氏名又は名称】ライアンロボティクスシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110777
【弁理士】
【氏名又は名称】宇都宮 正明
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】青山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】森本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】松本 和久
(72)【発明者】
【氏名】大林 直樹
【審査官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-056629(JP,A)
【文献】特開2020-159997(JP,A)
【文献】特表2019-525342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-25/00
G01S 17/89
G01S 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージセンサー又はレーザー測域センサーを含むセンサー部を有すると共に外部の機器から所定の範囲に送信される波動を受信可能な情報端末との間で、ネットワークを介してデータ通信を行うことにより、前記情報端末の位置を推定する位置推定装置であって、
前記情報端末との間でネットワークを介してデータ通信を行うことにより、前記情報端末のセンサー部から得られる計測データを受信すると共に、前記情報端末が外部の機器から受信した波動に基づいて得られる前記外部の機器の機器情報又は前記情報端末の位置情報を受信する通信回路と、
複数の特定領域における点群配置情報を含む複数のローカル地図のデータを格納するローカル地図データベースと、
前記通信回路によって機器情報が受信されたら、前記機器情報で特定される外部の機器が設置されている領域のローカル地図を選択すると共に、前記機器情報に対応して位置情報データベースに格納されているローカル座標を暫定位置情報として取得し、前記通信回路によって位置情報が受信されたら、前記位置情報によって表される位置を含む領域のローカル地図を選択すると共に、前記位置情報を暫定位置情報として取得する複数のローカル地図選択部と、
前記ローカル地図データベースから、前記複数のローカル地図選択部によって1つのローカル地図が選択された場合に、前記1つのローカル地図を読み出し、前記複数のローカル地図選択部によって複数のローカル地図が選択された場合に、前記複数のローカル地図の内から優先順位に従って1つのローカル地図を読み出すローカル地図設定部と、
記計測データから複数の特徴点を抽出し、前記ローカル地図データベースから読み出されたローカル地図に配置されている複数の点群の内から前記複数の特徴点がマッチする点群を探索する点群探索部と、
前記点群探索部による点群探索が成功した場合に、記計測データから抽出される複数の特徴点と前記点群探索部によって探索された点群との位置関係に基づいて前記情報端末の位置を推定して、推定された位置のローカル座標を算出し、前記点群探索部による点群探索が失敗した場合に、少なくとも1つのローカル地図選択部によって取得された暫定位置情報から位置推定結果を得る位置推定部と、
を備える位置推定装置。
【請求項2】
前記位置推定部が、ローカル地図の画像において前記情報端末の推定位置又は暫定位置を示す画像データを生成する、請求項1記載の位置推定装置。
【請求項3】
前記複数のローカル地図選択部が、前記情報端末が受信したビーコンの電波又は光から得られるビーコンデバイスの機器情報を取得し、取得したビーコンデバイスの機器情報に対応する1つのローカル地図を選択するローカル地図選択部を含む、請求項1記載の位置推定装置。
【請求項4】
前記複数のローカル地図選択部が、前記情報端末が受信した無線LANの電波から得られる無線LANアクセスポイントの機器情報を取得し、取得した無線LANアクセスポイントの機器情報に対応する1つのローカル地図を選択するローカル地図選択部を含む、請求項1記載の位置推定装置。
【請求項5】
前記通信回路が、それぞれの気圧計を有する前記情報端末及び第2の情報端末との間でネットワークを介してデータ通信を行い、
前記複数のローカル地図選択部が、前記情報端末の気圧計から得られる気圧情報と前記第2の情報端末の気圧計から得られる気圧情報とに基づいて、前記第2の情報端末に対する前記情報端末の相対高度を算出し、前記情報端末の高度情報に従って1つのローカル地図を選択するか、又は、前記情報端末の高度情報に加えて、前記情報端末が受信した全世界測位システムの電波に基づいて得られる緯度及び経度に関する位置情報に従って1つのローカル地図を選択するローカル地図選択部を含む、請求項1~4のいずれか1項記載の位置推定装置。
【請求項6】
前記ローカル地図設定部が、前記ローカル地図データベースから読み出したローカル地図をメモリーに書き込
前記点群探索部が、前記メモリーに書き込まれたローカル地図に配置されている複数の点群の内から前記複数の特徴点がマッチする点群を探索する、請求項1~4のいずれか1項記載の位置推定装置。
【請求項7】
前記点群探索部が、前記ローカル地図データベースから読み出されたローカル地図に配置されている複数の点群の内から、少なくとも1つのローカル地図選択部によって得られる位置情報又は暫定位置情報によって表される位置から近い順序で点群配置情報を読み出すことにより、前記複数の特徴点がマッチする点群を探索する、請求項1~4のいずれか1項記載の位置推定装置。
【請求項8】
イメージセンサー又はレーザー測域センサーを含むセンサー部を有すると共に外部の機器から所定の範囲に送信される波動を受信可能な情報端末との間でネットワークを介してデータ通信を行う位置推定装置において、前記情報端末の位置を推定するために用いられる位置推定プログラムであって、
前記情報端末との間でネットワークを介してデータ通信を行うことにより、前記情報端末のセンサー部から得られる計測データを受信すると共に、前記情報端末が外部の機器から受信した波動に基づいて得られる前記外部の機器の機器情報又は前記情報端末の位置情報を受信するように通信回路を制御する手順(a)と、
手順(a)において機器情報が受信されたら、前記機器情報で特定される外部の機器が設置されている領域のローカル地図を選択すると共に、前記機器情報に対応して位置情報データベースに格納されているローカル座標を暫定位置情報として取得し、手順(a)において位置情報が受信されたら、前記位置情報によって表される位置を含む領域のローカル地図を選択すると共に、前記位置情報を暫定位置情報として取得する手順()と、
複数の特定領域における点群配置情報を含む複数のローカル地図のデータを格納するローカル地図データベースから、手順(b)において1つのローカル地図が選択された場合に、前記1つのローカル地図を読み出し、手順(b)において複数のローカル地図が選択された場合に、前記複数のローカル地図の内から優先順位に従って1つのローカル地図を読み出す手順(c)と、
記計測データから複数の特徴点を抽出し、前記ローカル地図データベースから読み出されたローカル地図に配置されている複数の点群の内から前記複数の特徴点がマッチする点群を探索する手順()と、
手順(d)における点群探索が成功した場合に、記計測データから抽出される複数の特徴点と手順()において探索された点群との位置関係に基づいて前記情報端末の位置を推定して、推定された位置のローカル座標を算出し、手順(d)における点群探索が失敗した場合に、手順(b)において取得された暫定位置情報から位置推定結果を得る手順()と、
をCPUに実行させる位置推定プログラム。
【請求項9】
イメージセンサー又はレーザー測域センサーを含むセンサー部を有すると共に外部の機器から所定の範囲に送信される波動を受信可能な情報端末との間でネットワークを介してデータ通信を行う位置推定装置において、前記情報端末の位置を推定する位置推定方法であって、
前記情報端末との間でネットワークを介してデータ通信を行うことにより、前記情報端末のセンサー部から得られる計測データを受信すると共に、前記情報端末が外部の機器から受信した波動に基づいて得られる前記外部の機器の機器情報又は前記情報端末の位置情報を受信するステップ(a)と、
ステップ(a)において機器情報が受信されたら、前記機器情報で特定される外部の機器が設置されている領域のローカル地図を選択すると共に、前記機器情報に対応して位置情報データベースに格納されているローカル座標を暫定位置情報として取得し、ステップ(a)において位置情報が受信されたら、前記位置情報によって表される位置を含む領域のローカル地図を選択すると共に、前記位置情報を暫定位置情報として取得するステップ()と、
複数の特定領域における点群配置情報を含む複数のローカル地図のデータを格納するローカル地図データベースから、ステップ(b)において1つのローカル地図が選択された場合に、前記1つのローカル地図を読み出し、ステップ(b)において複数のローカル地図が選択された場合に、前記複数のローカル地図の内から優先順位に従って1つのローカル地図を読み出すステップ(c)と、
記計測データから複数の特徴点を抽出し、前記ローカル地図データベースから読み出されたローカル地図に配置されている複数の点群の内から前記複数の特徴点がマッチする点群を探索するステップ()と、
ステップ(d)における点群探索が成功した場合に、記計測データから抽出される複数の特徴点とステップ()において探索された点群との位置関係に基づいて前記情報端末の位置を推定して、推定された位置のローカル座標を算出し、ステップ(d)における点群探索が失敗した場合に、ステップ(b)において取得された暫定位置情報から位置推定結果を得るステップ()と、
を備える位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬又は移動が可能な情報端末の位置を推定する位置推定システムにおいて用いられる位置推定装置、情報端末、位置推定プログラム、及び、位置推定方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建物の警備のために、建物の内部を巡回する警備員が携帯するスマートフォン等の情報端末の位置を把握したい場合がある。スマートフォン用の位置計測技術としては、GNSS(Global Navigation Satellite System:全世界測位システム)が用いられており、自動車等の移動体の自動運転にも欠かせない要素技術となっている。しかしながら、測位衛星から送信される電波が建物に遮られてしまうようなフィールドでは、位置計測の精度の劣化が避けられない。
【0003】
また、工場内で部品や材料を搬送したり倉庫からトラックに物品を搬送する物流業務においては、省人化や効率化の観点から、AGV(Automated Guided Vehicle:無人搬送車)と呼ばれる移動ロボットの需要が高まっている。従来のAGVにおいては、床に磁気テープ等を貼って走路を形成するガイド方式が主流であり、AGVを導入するために多大な手間とコストを要していた。
【0004】
そこで、センサーを搭載した移動体等を用いて、自己位置の推定と周囲の環境の構造把握とを同時に行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping:自己位置推定と環境地図作成の同時実行)という技術を使えば、ガイドが不要になり、走路も簡単に変更することができる。SLAM技術には、主に、センサーとしてカメラを用いるVisual SLAMと、センサーとしてLiDAR(Light Detection and Ranging:ライダー)と呼ばれるレーザーセンサーを用いるLiDAR SLAMとがある。
【0005】
カメラを用いるVisual SLAMによれば、明るさの影響を受け易いという問題がある。一方、レーザーセンサーを用いるLiDAR SLAMによれば、周辺の構造物にレーザー光を当ててその形状を計測するので、明るさの影響を受け難く暗所でも計測できるが、水平方向のみに走査するセンサーを使用するのが一般的であり、得られる情報も2次元位置情報に限られる。3次元化も可能であるが、特別な機構が必要となる。
【0006】
関連する技術として、下記の特許文献1には、コストの上昇を抑制しつつ、自己位置推定の精度の向上を図ることが可能な位置推定装置等が開示されている。この位置推定装置は、移動体に搭載されたカメラから出力される画像データをフレーム単位で取得し、フレーム毎に、別のフレームとの間で対応する特徴点を画像データから抽出し、抽出した特徴点に基づいて当該フレームにおける前記移動体の3次元座標を推定する第1の位置推定部と、前記移動体に搭載された2次元深度センサーから連続して出力される深度データを取得し、取得した深度データを用いて前記移動体の2次元座標を推定する第2の位置推定部と、推定された前記移動体の2次元座標についての設定条件が満たされているかどうかを判定し、前記設定条件が満たされている場合に、前記移動体の2次元座標を用いて前記移動体の3次元座標を補正する補正処理部とを備えている。ここで、深度とは、2次元深度センサーから対象物までの距離を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2023-4517号公報(段落0011-0012、0024、0066、図1-2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の位置推定装置によれば、コストの高い3次元の深度センサー、例えば、3次元のLiDARセンサーを用いる必要がないため、これを用いる場合に比べてコストの上昇が抑制される。しかしながら、移動体に搭載された2次元深度センサーから出力される深度データに基づいて移動体の位置推定を行うためには、位置推定を行う領域の自律走行用地図(2次元環境地図)を予め作成しておく必要がある。
【0009】
一般に、ある領域(例えば、長方形の領域)における移動体等の位置推定を行うためには、その領域における点群配置情報(環境地図)を予め作成しておき、位置推定を行う際に点群配置情報をメモリーに書き込む必要がある。従って、位置推定を行う領域が広くなると、位置推定に用いられる点群配置情報も増加するので、点群配置情報の作成に要する費用や、点群配置情報を書き込むメモリーの容量に伴う費用が増大して、設備コストが上昇してしまう。
【0010】
そこで、上記の点に鑑み、本発明の第1の目的は、運搬又は移動が可能な情報端末の位置を推定する位置推定装置において、情報端末の位置を推定するために用いられる点群配置情報の作成に要する費用や、点群配置情報を書き込むメモリーの容量に伴う費用を抑制して、設備コストを削減することである。また、本発明の第2の目的は、情報端末の位置を推定する際に発生し得る推定位置の誤りの発生率を低減することである。さらに、本発明の第3の目的は、そのような位置推定装置において設備コストを削減しつつ位置推定を可能にする情報端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の1つの観点に係る位置推定装置は、イメージセンサー又はレーザー測域センサーを含むセンサー部を有すると共に外部の機器から所定の範囲に送信される波動を受信可能な情報端末との間で、ネットワークを介してデータ通信を行うことにより、前記情報端末の位置を推定する位置推定装置であって、前記情報端末との間でネットワークを介してデータ通信を行うことにより、前記情報端末のセンサー部から得られる計測データを受信すると共に、前記情報端末が外部の機器から受信した波動に基づいて得られる前記外部の機器の機器情報又は前記情報端末の位置情報を受信する通信回路と、複数の特定領域における点群配置情報を含む複数のローカル地図のデータを格納するローカル地図データベースと、前記通信回路によって機器情報が受信されたら、前記機器情報で特定される外部の機器が設置されている領域のローカル地図を選択すると共に、前記機器情報に対応して位置情報データベースに格納されているローカル座標を暫定位置情報として取得し、前記通信回路によって位置情報が受信されたら、前記位置情報によって表される位置を含む領域のローカル地図を選択すると共に、前記位置情報を暫定位置情報として取得する複数のローカル地図選択部と、前記ローカル地図データベースから、前記複数のローカル地図選択部によって1つのローカル地図が選択された場合に、前記1つのローカル地図を読み出し、前記複数のローカル地図選択部によって複数のローカル地図が選択された場合に、前記複数のローカル地図の内から優先順位に従って1つのローカル地図を読み出すローカル地図設定部と、記計測データから複数の特徴点を抽出し、前記ローカル地図データベースから読み出されたローカル地図に配置されている複数の点群の内から前記複数の特徴点がマッチする点群を探索する点群探索部と、前記点群探索部による点群探索が成功した場合に、記計測データから抽出される複数の特徴点と前記点群探索部によって探索された点群との位置関係に基づいて前記情報端末の位置を推定して、推定された位置のローカル座標を算出し、前記点群探索部による点群探索が失敗した場合に、少なくとも1つのローカル地図選択部によって取得された暫定位置情報から位置推定結果を得る位置推定部とを備える。
【0013】
また、本発明の1つの観点に係る位置推定プログラムは、イメージセンサー又はレーザー測域センサーを含むセンサー部を有すると共に外部の機器から所定の範囲に送信される波動を受信可能な情報端末との間でネットワークを介してデータ通信を行う位置推定装置において、前記情報端末の位置を推定するために用いられる位置推定プログラムであって、前記情報端末との間でネットワークを介してデータ通信を行うことにより、前記情報端末のセンサー部から得られる計測データを受信すると共に、前記情報端末が外部の機器から受信した波動に基づいて得られる前記外部の機器の機器情報又は前記情報端末の位置情報を受信するように通信回路を制御する手順(a)と、手順(a)において機器情報が受信されたら、前記機器情報で特定される外部の機器が設置されている領域のローカル地図を選択すると共に、前記機器情報に対応して位置情報データベースに格納されているローカル座標を暫定位置情報として取得し、手順(a)において位置情報が受信されたら、前記位置情報によって表される位置を含む領域のローカル地図を選択すると共に、前記位置情報を暫定位置情報として取得する手順()と、複数の特定領域における点群配置情報を含む複数のローカル地図のデータを格納するローカル地図データベースから、手順(b)において1つのローカル地図が選択された場合に、前記1つのローカル地図を読み出し、手順(b)において複数のローカル地図が選択された場合に、前記複数のローカル地図の内から優先順位に従って1つのローカル地図を読み出す手順(c)と、記計測データから複数の特徴点を抽出し、前記ローカル地図データベースから読み出されたローカル地図に配置されている複数の点群の内から前記複数の特徴点がマッチする点群を探索する手順()と、手順(d)における点群探索が成功した場合に、記計測データから抽出される複数の特徴点と手順()において探索された点群との位置関係に基づいて前記情報端末の位置を推定して、推定された位置のローカル座標を算出し、手順(d)における点群探索が失敗した場合に、手順(b)において取得された暫定位置情報から位置推定結果を得る手順()とをCPUに実行させる。
【0014】
また、本発明の1つの観点に係る位置推定方法は、イメージセンサー又はレーザー測域センサーを含むセンサー部を有すると共に外部の機器から所定の範囲に送信される波動を受信可能な情報端末との間でネットワークを介してデータ通信を行う位置推定装置において、前記情報端末の位置を推定する位置推定方法であって、前記情報端末との間でネットワークを介してデータ通信を行うことにより、前記情報端末のセンサー部から得られる計測データを受信すると共に、前記情報端末が外部の機器から受信した波動に基づいて得られる前記外部の機器の機器情報又は前記情報端末の位置情報を受信するステップ(a)と、ステップ(a)において機器情報が受信されたら、前記機器情報で特定される外部の機器が設置されている領域のローカル地図を選択すると共に、前記機器情報に対応して位置情報データベースに格納されているローカル座標を暫定位置情報として取得し、ステップ(a)において位置情報が受信されたら、前記位置情報によって表される位置を含む領域のローカル地図を選択すると共に、前記位置情報を暫定位置情報として取得するステップ()と、複数の特定領域における点群配置情報を含む複数のローカル地図のデータを格納するローカル地図データベースから、ステップ(b)において1つのローカル地図が選択された場合に、前記1つのローカル地図を読み出し、ステップ(b)において複数のローカル地図が選択された場合に、前記複数のローカル地図の内から優先順位に従って1つのローカル地図を読み出すステップ(c)と、記計測データから複数の特徴点を抽出し、前記ローカル地図データベースから読み出されたローカル地図に配置されている複数の点群の内から前記複数の特徴点がマッチする点群を探索するステップ()と、ステップ(d)における点群探索が成功した場合に、記計測データから抽出される複数の特徴点とステップ()において探索された点群との位置関係に基づいて前記情報端末の位置を推定して、推定された位置のローカル座標を算出し、ステップ(d)における点群探索が失敗した場合に、ステップ(b)において取得された暫定位置情報から位置推定結果を得るステップ()とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明の1つの観点によれば、運搬又は移動が可能な情報端末の位置を推定する位置推定装置において、情報端末の位置を推定するために用いられる点群配置情報(環境地図)の少なくとも一部の領域を複数の特定領域のローカル地図に分割してデータベースに格納しておき、情報端末が外部の機器から受信した波動(環境情報)に基づいて1つのローカル地図をローカル地図データベースから読み出してメモリーに書き込むことにより、点群配置情報の作成に要する費用や、点群配置情報を書き込むメモリーの容量に伴う費用を抑制して、設備コストを削減することができる。
【0017】
例えば、互いに離れて位置するビルA及びビルBの点群配置情報が必要な場合に、ビルA及びビルBを含む長方形の広い領域の環境地図を作成するよりも、ビルAのローカル地図とビルBのローカル地図とを作成する方が、点群配置情報の作成に要する費用や、点群配置情報を書き込むメモリーの容量に伴う費用を抑制することができる。
【0018】
また、情報端末のセンサー部から得られる計測データに基づいて点群探索する領域を広い領域から比較的狭い領域に絞り込むことにより、情報端末の位置を推定する際に発生し得る推定位置の誤りの発生率を低減することができる。さらに、情報端末の位置を推定するための点群探索が失敗した場合であっても、情報端末から受信した外部の機器の機器情報に対応して位置情報データベースに格納されているローカル座標を暫定位置情報として取得したり、情報端末から受信した位置情報を暫定位置情報として取得することにより、位置推定結果を得ることができる
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る位置推定装置を含む位置推定システムの構成例を示すブロック図である。
図2図1に示す第1の情報端末の構成例を示すブロック図である。
図3図1に示す位置推定装置の構成例を示すブロック図である。
図4】ローカル地図のデータに含まれている情報の例を示す図である。
図5図3に示す第1のローカル地図選択部の動作例を示すフローチャートである。
図6図3に示す第1のローカル地図選択部の動作例を説明するための模式図である。
図7図3に示す第2のローカル地図選択部の動作例を示すフローチャートである。
図8図3に示す第4のローカル地図選択部の動作例を示すフローチャートである。
図9図3に示すローカル地図設定部の動作例を示すフローチャートである。
図10図3に示す点群探索部の動作例を示すフローチャートである。
図11図3に示す点群探索部の動作例を説明するための模式図である。
図12図3に示す位置推定部の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0021】
<位置推定システム>
図1は、本発明の一実施形態に係る位置推定装置を含む位置推定システムの構成例を示すブロック図である。図1に示すように、この位置推定システムは、少なくとも1つの情報端末(図1においては、一例として、第1の情報端末10a及び第2の情報端末10bを示す)と、本発明の一実施形態に係る位置推定装置20と、位置情報処理装置30とを含んでいる。第1の情報端末10a~位置情報処理装置30は、移動体通信網又はインターネット等のネットワークを介して互いに通信を行う機能を有している。
【0022】
第1の情報端末10aは、イメージセンサー又はレーザー測域センサーを含むセンサー部を有すると共に、外部の機器から所定の範囲に送信される波動(電波又は光等)を受信することが可能である。例えば、第1の情報端末10aとして、撮像機能及び通信機能を有すると共に運搬が容易なスマートフォンやタブレット端末等の携帯機器を用いることができる。あるいは、第1の情報端末10aが、無人搬送車、自動配送車、自走車、又は、製造会社において物品の製造に使用されるロボット等の移動体に搭載されても良い。
【0023】
位置推定装置20は、例えば、データセンター等に設置されて位置推定サービスを提供する位置推定サーバーである。図1に示す例においては、位置推定装置20が、第1の情報端末10aから送信される計測データ及び各種計測情報に基づいて、第1の情報端末10aの現在位置を推定する。その際に、位置推定装置20は、第2の情報端末10bから送信される計測情報を、第1の情報端末10aの現在位置を推定するために利用しても良い。
【0024】
位置情報処理装置30は、例えば、警備会社や製造会社のコントロールセンター等に設置されて位置推定結果をモニターするために用いられる。位置情報処理装置30は、一般的なPC(パーソナルコンピューター)及びディスプレイで構成されても良いし、位置推定装置20と同様に構成されて、位置推定に用いられる各種のデータベースを備えても良い。後者の場合には、位置情報処理装置30においても位置推定が可能になる。
【0025】
例えば、警備会社に所属する警備員が、建物等を警備する際に第1の情報端末10aを携帯し、位置推定装置20が、警備員の現在位置を推定する。その場合には、推定された現在位置が、警備会社のコントロールセンター等に設置された位置情報処理装置30のディスプレイに映し出される。
【0026】
さらに、もう1人の警備員が、第2の情報端末10bを携帯することにより、2人の警備員の位置情報を同時にディスプレイに表示させても良い。あるいは、第2の情報端末10bは、所定の建物の所定の階に配置されて、基準高度における基準気圧を計測するための基準器として用いられても良い。
【0027】
別の例として、位置推定装置20が、無人搬送車又は自動配送車等の移動体に搭載された第1の情報端末10aの現在位置を推定しても良い。その場合には、推定された現在位置が、製造会社又は運送会社のコントロールセンター等に設置された位置情報処理装置30のディスプレイに映し出される。
【0028】
<情報端末>
図2は、図1に示す第1の情報端末の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、第1の情報端末10aは、センサー部11と、近距離通信回路12と、無線LAN(Local Area Network:ローカル・エリア・ネットワーク)通信回路13と、GNSS(Global Navigation Satellite System:全世界測位システム)受信回路14と、慣性計測装置(inertial measurement unit:IMU)15と、無線通信回路16と、制御回路17とを含んでいる。
【0029】
また、第2の情報端末10bも、第1の情報端末10aと同様に構成されても良い。なお、図1及び図2に示す構成要素の一部を省略又は変更しても良いし、あるいは、図1及び図2に示す構成要素に他の構成要素を付加しても良い。
【0030】
センサー部11は、例えば、スマートフォンのカメラ部分で構成され、光を集めて画像を形成する複数のレンズと、形成された画像を電気信号に変換して取り出す多数の画素センサーを有するイメージセンサーとを含んでいる。カメラは、周辺に存在する構造物等の物体を撮影して、各画素の輝度又はRGB値を表す画像データを生成する。なお、2つのカメラ(ステレオカメラ)を用いて、3次元の画像データを生成するようにしても良い。
【0031】
あるいは、センサー部11は、カメラの替わりにレーザー測域センサーを含んでも良い。例えば、移動体に搭載されたレーザー測域センサーは、移動体の進行方向から所定の角度範囲内にレーザー光線を投射して、周辺に存在する構造物等の物体の位置及び形状を計測することにより、物体が存在する方向を表す角度データと、物体までの距離を表す距離データとを生成する。
【0032】
例えば、レーザー測域センサーは、レーザーダイオードを用いてパルス状のレーザー光線を生成し、ポリゴンミラー等の回転ミラーを介して周辺の空間にレーザー光線を投射することにより、周辺の空間を角度方向に走査する。レーザー光線の投射方向は、角度エンコーダーを用いて、一定の角度ステップで変更される。また、レーザー測域センサーは、フォトダイオードを用いて反射光を検出する。
【0033】
物体が存在する方向は、反射光が検出された時の角度エンコーダーの出力信号に基づいて求められ、物体が存在する方向を表す角度データが生成される。また、物体までの距離は、パルス状のレーザー光線を投射してから反射光を検出するまでの時間に基づいて求められ、物体までの距離を表す距離データが生成される。なお、2つのレーザー測域センサーを用いると、一方のレーザー測域センサーから見て複数の物体が重なって配設されていても、それらの物体を分離して計測できる場合がある。
【0034】
近距離通信回路12は、他の機器から所定の距離内にあるときに限りその機器との間で無線データ通信が可能な近距離無線データ通信機能を有する送受信回路やモデム等を含んでいる。この近距離無線データ通信においては、例えば、Bluetooth(登録商標)、RFID(Radio Frequency Identifier)、又は、赤外線通信等の通信方式が用いられる。そのような通信方式によれば、最大で約10m以内の無線データ通信が可能である。
【0035】
無線LAN通信回路13は、外部の機器との間で無線LANの電波を送受信する無線LAN通信機能を有する送受信回路やモデム等を含んでおり、無線LANアクセスポイントとの間で無線LAN通信が可能である。この無線LAN通信においては、例えば、Wi-Fi(Wireless Fidelity)等の通信方式が用いられる。
【0036】
GNSS受信回路14は、全世界測位システムの3機以上(一般的には4機)の測位衛星から送信される電波を受信する。測位衛星から送信される電波には、送信した時刻の情報が含まれているので、電波伝搬時間が分かり、測位衛星からの距離が求められる。従って、GNSS受信回路14によって受信された電波に基づいて、第1の情報端末10aの現在位置を算出することができる。
【0037】
慣性計測装置15は、例えば、3軸の角速度センサー(ジャイロセンサー)と、3方向の加速度センサーとを含んでおり、第1の情報端末10aの3次元の慣性運動(直交3軸方向の並進運動及び回転運動)を検出する。第1の情報端末10aの角速度及び加速度を高精度に計測した結果を利用することによって、第1の情報端末10aの姿勢や軌跡を把握又は推測することが可能である。本実施形態においては、信頼性向上のために、慣性計測装置15が気圧計151を有しているが、気圧計151は、第1の情報端末10aの位置を推定するためにも利用することができる。
【0038】
無線通信回路16は、例えば、携帯電話基地局との間で無線通信を行うことにより、位置推定装置20や位置情報処理装置30との間でネットワークを介してデータ通信を行う。制御回路17は、例えば、CPU(中央演算装置)と、フラッシュメモリー等で構成されるストレージと、RAM(ランダムアクセスメモリー)等で構成されるキャッシュメモリーとを含んでいる。
【0039】
CPUは、ストレージに格納されている各種のソフトウェア(位置推定に用いられる位置推定クライアントプログラムを含む)に従って、各種の演算やデータ処理を行う。位置推定装置20が位置推定動作を行う際には、制御回路17が、位置推定装置20と連携して、センサー部11~無線通信回路16を制御する。
【0040】
センサー部11は、制御回路17の制御の下で、周辺の物体を計測して計測データを生成し、計測データを制御回路17に出力する。例えば、センサー部11は、第1の情報端末10aの周辺に存在する構造物等の物体を連続的に計測して、物体の位置及び形状を表す動画データ、又は、角度データ及び距離データを生成する。
【0041】
近距離通信回路12は、制御回路17の制御の下で、建物又はその周辺に設置されたビーコンデバイスから送信されるビーコンの波動を受信し、それを復調して得られるビーコン信号を制御回路17に出力する。ビーコンの波動としては、例えば、BLE(Bluetooth Low Energy) Beacon等の電波、又は、赤外線等の光が用いられる。ビーコン信号は、個々の機器を特定する機器情報としてビーコンデバイスのID情報を含んでおり、制御回路17は、ビーコン信号からビーコンデバイスのID情報を取得する。
【0042】
無線LAN通信回路13は、制御回路17の制御の下で、建物又はその周辺に設置された無線LANアクセスポイントから送信される無線LANの電波を受信し、それを復調して得られる無線LAN信号を制御回路17に出力する。無線LAN信号は、個々の機器を特定する機器情報として無線LANアクセスポイントのID情報を含んでおり、制御回路17は、無線LAN信号から無線LANアクセスポイントのID情報を取得する。
【0043】
例えば、無線LANの通信方式としてWi-Fiが用いられる。Wi-Fiアクセスポイントは、Wi-Fi電波の基地局としてWi-Fi対応デバイスと無線接続する機能を有している。Wi-Fi電波は、Wi-FiアクセスポイントのID情報として、SSID(Service Set Identifier)又はBSSID(Basic Service Set Identifier)を含んでいる。SSIDは、無線LANを他のネットワークから区別するための識別子であり、ホットスポット名としても用いられる。
【0044】
また、無線LANは、異なる認証を必要とする複数のサブネットワークに分割することができる。無線LANのインフラストラクチャーモードにおいて、1つのアクセスポイントとそのアクセスポイントの電波内にいる配下の無線LANクライアント端末とで構成されるネットワークをBSSという。BSSIDは、BSSの識別子である。なお、SSIDもBSSIDも任意に設定可能なので、完全にユニークな識別子ではないものの、単体又は組み合わせによって、無線LAN又はサブネットワークを周辺のネットワークから区別する機能を果たすことができる。
【0045】
GNSS受信回路14は、制御回路17の制御の下で、全世界測位システムの3機以上(一般的には4機)の測位衛星から送信される電波を受信し、受信信号を制御回路17に出力する。制御回路17は、受信信号に基づいて、第1の情報端末10aの現在位置に関する位置情報を算出する。
【0046】
慣性計測装置15は、制御回路17の制御の下で、第1の情報端末10aの3次元の慣性運動を検出し、検出信号を制御回路17に出力する。制御回路17は、検出信号に基づいて、第1の情報端末10aの姿勢又は軌跡を表す姿勢情報を生成する。また、気圧計151は、制御回路17の制御の下で、第1の情報端末10aの現在位置における気圧を計測し、気圧計測信号を制御回路17に出力する。制御回路17は、気圧計測信号に基づいて、第1の情報端末10aの現在位置における気圧を表す気圧情報を生成する。
【0047】
このようにして、制御回路17は、位置推定装置20が位置推定動作を行う際に、連続的に計測を行うようにセンサー部11を制御すると共に、センサー部11から得られる計測データ、ビーコン信号から得られるビーコンデバイスのID情報、無線LAN信号から得られる無線LANアクセスポイントのID情報、GNSS受信回路14の受信信号から得られる位置情報、慣性計測装置15の検出信号から得られる姿勢情報、及び、気圧計151の気圧計測信号から得られる気圧情報の内から選択された少なくとも1つを位置推定装置20に送信するように無線通信回路16を制御する。
【0048】
第1の情報端末10a又は第2の情報端末10bとしてスマートフォンが用いられる場合には、警備会社に所属する警備員等が自分の手を使わなくてもスマートフォンを正常に動作させるために、自己位置推定用のスマートフォン脱着装具がスマートフォンに付属しても良い。このスマートフォン脱着装具は、人体の腹囲に装着されるベルト部と、そのベルト部に固定された格納部とを含んでいる。
【0049】
スマートフォンは、格納部に格納された状態で人体の前方を向くようになっている。位置推定装置20が位置推定動作を行う際には、位置推定クライアントプログラム従って制御回路17が制御動作を行うことにより、人体の前方に存在する構造物等の物体を撮影するようにスマートフォンのカメラ部分が動作する。
【0050】
<位置推定装置>
図3は、図1に示す位置推定装置の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、位置推定装置20は、操作部21と、表示部22と、音声入出力部23と、通信回路24と、インターフェース25と、CPU(中央演算装置)26と、格納部27と、キャッシュメモリー28とを含んでいる。インターフェース25~キャッシュメモリー28は、バスラインを介して互いに接続されている。なお、図3に示す構成要素の一部を省略又は変更しても良いし、あるいは、図3に示す構成要素に他の構成要素を付加しても良い。
【0051】
操作部21は、例えば、キーボードやマウス等で構成され、各種の命令やデータを位置推定装置20に入力するために用いられる。表示部22は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)等を含み、操作画面等を表示する。音声入出力部23は、例えば、マイクロフォン、アンプリファイアー、及び、スピーカー等を含み、音声信号を電気信号に変換したり、電気信号を音声信号に変換する。
【0052】
通信回路24は、第1の情報端末10a、第2の情報端末10b、及び、位置情報処理装置30との間で、有線LAN、無線LAN、移動体通信網、又は、インターネット等のネットワークを介してデータ通信を行う機能を有している。
【0053】
インターフェース25は、操作部21~通信回路24に接続されると共に、それらとCPU26との間で各種の命令やデータを伝達する。CPU26は、格納部27に格納されている各種のソフトウェア(位置推定に用いられる位置推定サーバープログラムを含む)に従って、各種の演算やデータ処理を行う。また、位置推定装置20又は位置情報処理装置30は、API(Application Programming Interface)を用いて、自らのアプリケーションを他のプロバイダーのアプリケーションやウェブサービスと統合したり、連携することができる。
【0054】
格納部27における記録媒体(記憶媒体)としては、ハードディスク、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、磁気テープ、ROM(リードオンリーメモリー)、CD-ROM、又は、DVD-ROM等を用いることができる。キャッシュメモリー28は、RAM等で構成される。格納部27は、上記のソフトウェアに加えて、位置推定に用いられる各種のデータを格納しており、それらのデータは、必要に応じて読み出されてキャッシュメモリー28に書き込まれる。
【0055】
ここで、CPU26と格納部27に格納されている位置推定サーバープログラム等とによって、通信制御部260と、第1のローカル地図選択部261と、第2のローカル地図選択部262と、第3のローカル地図選択部263と、第4のローカル地図選択部264と、ローカル地図設定部265と、点群探索部266と、位置推定部267とが、機能ブロックとして構成される。
【0056】
通信制御部260は、通信回路24の通信動作を制御する。通信回路24は、位置推定装置20が位置推定動作を行う際に、第1の情報端末10a又は第2の情報端末10bから、計測データ、ビーコンデバイスのID情報、無線LANアクセスポイントのID情報、GNSSの電波受信に基づく位置情報、慣性計測に基づく姿勢情報、又は、気圧計測に基づく気圧情報を受信したら、それらを通信制御部260に出力する。
【0057】
第1のローカル地図選択部261~位置推定部267は、通信回路24及び通信制御部260によって第1の情報端末10a又は第2の情報端末10bから取得される計測データや各種の情報を用いて、第1の情報端末10aの位置を推定する。
【0058】
図1に示す位置推定システムで用いられる位置推定方法においては、広範囲の領域に関する地理的情報を緯度及び経度の座標情報(グローバル座標系)と共に含むグローバル地図と、グローバル地図の領域よりも狭い特定領域に配置された点群配置情報(ローカル座標系)を含むローカル地図とが用いられる。
【0059】
例えば、グローバル地図としては、全世界的な地理的情報を含むグーグルマップ(Google Maps)を用いることができる。また、ローカル地図としては、所定の建物の内部や敷地等の特定領域における点群配置情報を含む局地的地図を用いることができる。さらに、ローカル地図において推定された位置をディスプレイに表示するために、ローカル地図に対応する地図画像(例えば、建物のフロアー図やイラスト等)を表す画像データが用いられても良い。
【0060】
図4は、ローカル地図のデータに含まれている情報の例を示す図である。例えば、ローカル地図のデータは、以下の情報を含んでも良い。
(1)画像座標系(IX,IY)(単位:ピクセル)
画像幅IW、画像長さIL、画像上のローカル座標系原点位置(IX1,IY1)
(2)ローカル座標系(LX,LY)(単位:m)
ローカル地図幅LW、ローカル地図長さLL
(3)グローバル座標系
ローカル座標系原点のグローバル地図上における緯度及び経度
ローカル座標系Y軸方向の北をゼロとしたときのグローバル地図の角度
(4)高度情報
地表面をゼロとしたときのローカル地図の高度情報
例えば、ビルの階層(1F、2F、3F等)
(5)点群配置情報
ローカル地図に予め配置された位置推定用の点群のローカル座標又は高度情報
例えば、点群A~Eの3次元座標(Xij,Yij,Zij)(i=1~5)
(6)ローカル地図識別子
複数のローカル地図の分類や目的のローカル地図の特定に用いられる識別子
例えば、ビルA-3F、連絡通路等(必ずしも文字情報である必要はない)
【0061】
本実施形態において、点群配置情報は、第1の情報端末10a又は第2の情報端末10bのセンサー部と同じタイプのセンサーを使用して、センサーの移動方向や移動距離等に基づいてその位置や姿勢を特定しながら、所定の複数の領域を予め計測して得られる。イメージセンサーを使用する場合には、点群とは、イメージセンサーによって生成される画像データで表される物体の画像における特徴点の集合を意味する。また、レーザー測域センサーを使用する場合には、点群とは、レーザー測域センサーによって生成される角度データ及び距離データで表される物体の位置及び形状における特徴点の集合を意味する。
【0062】
図3に示す格納部27のローカル地図データベースDBLには、複数の特定領域における点群配置情報を含む複数のローカル地図のデータが格納されている。第1のローカル地図選択部261~第3のローカル地図選択部263は、第1の情報端末10aが外部の機器から受信した波動に基づいて得られる情報に従って、ローカル地図データベースDBLに格納されている複数のローカル地図の内から1つのローカル地図を選択する。
【0063】
例えば、第1のローカル地図選択部261及び第2のローカル地図選択部262は、第1の情報端末10aが受信した波動を送信する個々の機器を特定する機器情報を取得し、取得した機器情報に対応する1つのローカル地図を選択する。また、第3のローカル地図選択部263は、第1の情報端末10aが受信したGNSSの電波に基づいて得られる位置情報を取得し、取得した位置情報に従って1つのローカル地図を選択する。
【0064】
一方、第4のローカル地図選択部264は、第1の情報端末10a及び第2の情報端末10bの気圧計から得られる気圧情報に基づいて求めた第1の情報端末10aの高度情報に従って1つのローカル地図を選択するか、又は、第1の情報端末10aの高度情報に加えて、第1の情報端末10aが受信したGNSSの電波に基づいて得られる緯度及び経度に関する位置情報に従って1つのローカル地図を選択する。
【0065】
<第1のローカル地図選択部>
第1のローカル地図選択部261は、第1の情報端末10aが受信したビーコンの電波又は光から得られるビーコンデバイスのID情報を取得し、取得したビーコンデバイスのID情報に対応する1つのローカル地図を選択する。
【0066】
図5は、図3に示す第1のローカル地図選択部の動作例を示すフローチャートである。図5において処理が開始すると、第1のローカル地図選択部261によって過去に設定されていた位置情報やフラグ等がリセットされる。
【0067】
ステップS11において、第1のローカル地図選択部261が、第1の情報端末10aがビーコンデバイスから受信したビーコンの電波又は光から得られるビーコンデバイスのID情報を通信制御部260から取得する。
【0068】
第1の位置情報データベースDBP1には、どのビーコンデバイスが、どの建物又は敷地の、どの場所に設置されているかという情報が、予め格納されている。例えば、第1の位置情報データベースDBP1には、複数のビーコンデバイスのID情報に対応して、それらのビーコンデバイスが設置されている領域のローカル地図を特定するローカル地図識別子と、それらのローカル地図におけるビーコンデバイスのローカル座標(LX,LY)とが、ビーコンデバイスの位置情報として格納されている。
【0069】
ステップS12において、第1のローカル地図選択部261が、ステップS11において取得したビーコンデバイスのID情報がローカル地図選択条件を満たすか否かを判定する。例えば、第1のローカル地図選択部261は、取得したビーコンデバイスのID情報を検索キーワードとして用いて、第1の位置情報データベースDBP1に予め格納されているビーコンデバイスのID情報を検索する。検索がヒットした場合に、ビーコンデバイスのID情報がローカル地図選択条件を満たすと判定される。
【0070】
ビーコンデバイスのID情報がローカル地図選択条件を満たさないと判定された場合には、処理がステップS13に移行する。ステップS13において、第1のローカル地図選択部261が、ビーコンデバイスのID情報に基づくローカル地図選択に失敗した旨を表す地図選択失敗フラグF1を設定する。その後、処理が終了する。
【0071】
ビーコンデバイスのID情報がローカル地図選択条件を満たすと判定された場合には、処理がステップS14に移行する。ステップS14において、第1のローカル地図選択部261が、第1の位置情報データベースDBP1からビーコンデバイスのID情報に対応するローカル地図識別子を読み出すことにより、ローカル地図データベースDBLに格納されている複数のローカル地図の内から1つのローカル地図を選択する。
【0072】
ステップS15において、第1のローカル地図選択部261が、ステップS14において選択されたローカル地図を特定するローカル地図識別子を出力すると共に、第1の位置情報データベースDBP1から読み出されたビーコンデバイスのローカル座標(LX,LY)を暫定位置情報として出力する。その後、処理が終了する。
【0073】
図6は、図3に示す第1のローカル地図選択部の動作例を説明するための模式図である。図6には、ビルA及びビルBの模式的な斜視図と、ビルAの4階フロアの模式的な平面図とが示されている。ビルAの4階フロアには、BLE(Bluetooth Low Energy)方式のビーコンの電波を送信するビーコンデバイス41及び42が設置されており、ビーコンの電波の届く範囲が破線で示されている。
【0074】
第1の情報端末10aは、ビーコンデバイス41から送信されるビーコンの電波を受信することにより、受信したビーコンの電波からビーコンデバイス41のID情報を取得して、ビーコンデバイス41のID情報を位置推定装置20に送信する。
【0075】
位置推定装置20において、第1のローカル地図選択部261は、第1の情報端末10aから取得したビーコンデバイス41のID情報に従って、第1の位置情報データベースDBP1から1つのローカル地図識別子を読み出す。第1の位置情報データベースDBP1に格納されている各々のローカル地図識別子は、ローカル地図データベースDBLに格納されている何れかのローカル地図を特定しているので、第1の位置情報データベースDBP1からローカル地図識別子を読み出すことができれば、ローカル地図の選択が成功したことになる。
【0076】
また、第1の情報端末10aがビーコンデバイス41からビーコンの電波を受信していることから、ビーコンデバイス41からビーコンの電波が届く範囲内に第1の情報端末10aが位置していると推定できる。従って、第1の位置情報データベースDBP1からビーコンデバイス41のローカル座標(LX,LY)を読み出すことができれば、第1の情報端末10aの暫定位置の推定が成功したことになる。
【0077】
<第2のローカル地図選択部>
第2のローカル地図選択部262は、第1の情報端末10aが受信した無線LANの電波から得られる無線LANアクセスポイントのID情報を取得し、取得した無線LANアクセスポイントのID情報に対応する1つのローカル地図を選択する。
【0078】
図7は、図3に示す第2のローカル地図選択部の動作例を示すフローチャートである。図7において処理が開始すると、第2のローカル地図選択部262によって過去に設定されていた位置情報やフラグ等がリセットされる。
【0079】
ステップS21において、第2のローカル地図選択部262が、第1の情報端末10aが無線LANアクセスポイントから受信した無線LANの電波から得られる無線LANアクセスポイントのID情報を通信制御部260から取得する。
【0080】
第2の位置情報データベースDBP2には、どの無線LANアクセスポイントが、どの建物又は敷地の、どの場所に設置されているかという情報が、予め格納されている。例えば、第2の位置情報データベースDBP2には、複数の無線LANアクセスポイントのID情報に対応して、それらの無線LANアクセスポイントが設置されている領域のローカル地図を特定するローカル地図識別子と、それらのローカル地図における無線LANアクセスポイントのローカル座標(LX,LY)とが、無線LANアクセスポイントの位置情報として格納されている。
【0081】
ステップS22において、第2のローカル地図選択部262が、ステップS21において取得した無線LANアクセスポイントのID情報がローカル地図選択条件を満たすか否かを判定する。例えば、第2のローカル地図選択部262は、取得した無線LANアクセスポイントのID情報を検索キーワードとして用いて、第2の位置情報データベースDBP2に予め格納されている無線LANアクセスポイントのID情報を検索する。検索がヒットした場合に、無線LANアクセスポイントのID情報がローカル地図選択条件を満たすと判定される。
【0082】
無線LANアクセスポイントのID情報がローカル地図選択条件を満たさないと判定された場合には、処理がステップS23に移行する。ステップS23において、第2のローカル地図選択部262が、無線LANアクセスポイントのID情報に基づくローカル地図選択に失敗した旨を表す地図選択失敗フラグF2を設定する。その後、処理が終了する。
【0083】
無線LANアクセスポイントのID情報がローカル地図選択条件を満たすと判定された場合には、処理がステップS24に移行する。ステップS24において、第2のローカル地図選択部262が、第2の位置情報データベースDBP2から無線LANアクセスポイントのID情報に対応するローカル地図識別子を読み出すことにより、ローカル地図データベースDBLに格納されている複数のローカル地図の内から1つのローカル地図を選択する。
【0084】
ステップS25において、第2のローカル地図選択部262が、ステップS24において選択されたローカル地図を特定するローカル地図識別子を出力すると共に、第2の位置情報データベースDBP2から読み出された無線LANアクセスポイントのローカル座標(LX,LY)を暫定位置情報として出力する。その後、処理が終了する。
【0085】
<第3のローカル地図選択部>
第3のローカル地図選択部263は、第1の情報端末10aが受信したGNSSの電波に基づいて得られる位置情報を取得し、取得した位置情報に従って1つのローカル地図を選択する。第3のローカル地図選択部263において処理が開始すると、過去に設定されていた位置情報やフラグ等がリセットされる。
【0086】
第3のローカル地図選択部263は、第1の情報端末10aがGNSSの測位衛星から受信した電波から得られる第1の情報端末10aの現在位置に関する位置情報を通信制御部260から取得する。
【0087】
例えば、第3の位置情報データベースDBP3には、複数のローカル地図の座標範囲を特定する情報に対応して、それらのローカル地図を特定するローカル地図識別子が格納されている。
【0088】
第3のローカル地図選択部263は、取得した第1の情報端末10aの位置情報がローカル地図選択条件を満たすか否かを判定する。例えば、取得した第1の情報端末10aの位置情報によって表される位置が、第3の位置情報データベースDBP3に格納されている何れかのローカル地図の座標範囲に含まれている場合に、第1の情報端末10aの位置情報がローカル地図選択条件を満たすと判定される。
【0089】
第1の情報端末10aの位置情報がローカル地図選択条件を満たさないと判定された場合には、第3のローカル地図選択部263が、GNSSの電波受信に基づくローカル地図選択に失敗した旨を表す地図選択失敗フラグF3を設定する。
【0090】
第1の情報端末10aの位置情報がローカル地図選択条件を満たすと判定された場合には、第3のローカル地図選択部263が、第3の位置情報データベースDBP3から第1の情報端末10aの位置情報に対応するローカル地図識別子を読み出すことにより、ローカル地図データベースDBLに格納されている複数のローカル地図の内から1つのローカル地図を選択する。
【0091】
第3のローカル地図選択部263は、選択されたローカル地図を特定するローカル地図識別子を出力すると共に、取得した第1の情報端末10aの位置情報を暫定位置情報として出力する。
【0092】
<第4のローカル地図選択部>
第4のローカル地図選択部264は、第1の情報端末10aの気圧計から得られる気圧情報と第2の情報端末10bの気圧計から得られる気圧情報とに基づいて、第2の情報端末10bに対する第1の情報端末10aの相対高度を算出し、第1の情報端末10aの高度情報に従って1つのローカル地図を選択する。
【0093】
例えば、第1の情報端末10aによって計測される気圧と、基準高度に配置された第2の情報端末10bによって計測される基準気圧との差に基づいて、第1の情報端末10aの高度が算出されて、第1の情報端末10aが位置する階層に関する高度情報が求められる。あるいは、第4のローカル地図選択部264は、第1の情報端末10aの高度情報に加えて、第1の情報端末10aが受信したGNSSの電波に基づいて得られる緯度及び経度に関する位置情報に従って1つのローカル地図を選択する。
【0094】
図8は、図3に示す第4のローカル地図選択部の動作例を示すフローチャートである。図8において処理が開始すると、第4のローカル地図選択部264によって過去に設定されていた位置情報やフラグ等がリセットされる。
【0095】
ステップS41において、第4のローカル地図選択部264が、第1の情報端末10aの気圧計から得られる気圧情報と第2の情報端末10bの気圧計から得られる気圧情報とを通信制御部260から取得する。
【0096】
ステップS42において、第4のローカル地図選択部264が、ステップS41において取得した第1の情報端末10aの気圧情報と第2の情報端末10bの気圧情報とに基づいて、第2の情報端末10bに対する第1の情報端末10aの相対高度を算出する。それにより、第4のローカル地図選択部264は、第1の情報端末10aが位置する階層の範囲に関する高度情報を求めて、ローカル地図選択のための高度条件として設定する。
【0097】
さらに、第2の情報端末10bの高度が判明していれば、第4のローカル地図選択部264は、第2の情報端末10bの高度と、第2の情報端末10bに対する第1の情報端末10aの相対高度とに基づいて、第1の情報端末10aの絶対高度を算出しても良い。それにより、第4のローカル地図選択部264は、第1の情報端末10aが位置する階層に関する高度情報を求めて、ローカル地図選択のための高度条件として設定する。
【0098】
ステップS43において、第4のローカル地図選択部264が、ステップS42において設定された高度条件を満たす階層がローカル地図データベースDBLに格納されている何れかのローカル地図に存在するか否かを判定する。例えば、設定された高度条件を満たす階層の範囲が4階フロア以上である場合に、4階フロアを有するローカル地図は選択の候補になる。
【0099】
設定された高度条件を満たす階層が何れのローカル地図にも存在しない場合には、処理がステップS44に移行する。ステップS44において、第4のローカル地図選択部264が、第1の情報端末10a及び第2の情報端末10bの気圧情報に基づくローカル地図選択に失敗した旨を表す地図選択失敗フラグF4を設定する。その後、処理が終了する。
【0100】
設定された高度条件を満たす階層が何れかのローカル地図に存在すると判定された場合には、処理がステップS45に移行する。ステップS45において、第4のローカル地図選択部264が、設定された高度条件を満たす階層が複数のローカル地図に存在するか否かを判定する。
【0101】
設定された高度条件を満たす階層が1つのローカル地図のみに存在すると判定された場合には、処理がステップS46に移行する。ステップS46において、第4のローカル地図選択部264が、設定された高度条件を満たす階層が存在する1つのローカル地図を選択し、選択されたローカル地図を特定するローカル地図識別子を出力すると共に、例えば、ローカル地図の原点座標と第1の情報端末10aが位置する階層に関する高度情報とを暫定位置情報として出力する。その後、処理が終了する。
【0102】
設定された高度条件を満たす階層が複数のローカル地図に存在すると判定された場合には、処理がステップS47に移行する。ステップS47において、第4のローカル地図選択部264が、補助的な位置情報として、第1の情報端末10aがGNSSの測位衛星から受信したGNSSの電波に基づいて得られる緯度及び経度に関する位置情報を第3のローカル地図選択部263から取得する。
【0103】
第4のローカル地図選択部264は、設定された高度条件を満たす複数のローカル地図の内から、緯度及び経度に関する位置情報に従って1つのローカル地図を選択する。例えば、第4のローカル地図選択部264は、緯度及び経度に関する位置情報によって表される位置に最も近い領域を含む1つのローカル地図を選択する。
【0104】
ステップS48において、第4のローカル地図選択部264が、ステップS47において選択されたローカル地図を特定するローカル地図識別子を出力すると共に、例えば、ローカル地図の原点座標と第1の情報端末10aが位置する階層に関する高度情報とを暫定位置情報として出力する。その後、処理が終了する。
【0105】
再び図6を参照すると、4階以上のフロアを有する唯一の建物であるビルAのローカル地図と、3階までのフロアを有するビルBのローカル地図とが、ローカル地図データベースDBLに格納されているものとする。例えば、設定された高度条件を満たす階層が4階フロアである場合には、4階フロアを有するビルAのローカル地図(ビルA-4F)が選択される。
【0106】
一方、設定された高度条件を満たす階層が2階フロアである場合には、2階フロアを有するビルAのローカル地図(ビルA-2F)と、2階フロアを有するビルBのローカル地図(ビルB-2F)とが、2つの候補として判定される。その場合には、第1の情報端末10aにおいてGNSSの電波に基づいて得られる緯度及び経度に関する位置情報が取得され、それによって表される位置に最も近い領域を含む1つのローカル地図が、2つの候補の内から選択される。
【0107】
<ローカル地図設定部>
以上において、第1のローカル地図選択部261~第4のローカル地図選択部264における地図選択処理は、順次行っても良いし、並列的に行っても良い。その後、ローカル地図設定部265が、第1のローカル地図選択部261~第4のローカル地図選択部264によって選択された1つのローカル地図をローカル地図データベースDBLから読み出して、読み出したローカル地図をキャッシュメモリー28に書き込む。
【0108】
あるいは、第1のローカル地図選択部261~第4のローカル地図選択部264によって複数のローカル地図が選択された場合には、ローカル地図設定部265が、選択された複数のローカル地図の内から優先順位に従って1つのローカル地図をローカル地図データベースDBLから読み出して、読み出したローカル地図をキャッシュメモリー28に書き込む。
【0109】
例えば、第1の情報端末10aが屋内に位置する場合には、GNSS測位衛星から送信される電波が建物に遮られてしまい、位置計測の精度の劣化が避けられないので、第1のローカル地図選択部261、第2のローカル地図選択部262、第4のローカル地図選択部264の順で優先順位が定められても良い。
【0110】
一方、第1の情報端末10aが屋外に位置する場合には、GNSS測位衛星から送信される電波が良好に受信できると考えられるので、第3のローカル地図選択部263の優先順位を上げても良い。
【0111】
図9は、図3に示すローカル地図設定部の動作例を示すフローチャートである。この例においては、第1の情報端末10aが主に屋内に位置する場合を想定している。図9において処理が開始すると、ローカル地図設定部265によって過去に設定されていたフラグ等がリセットされる。
【0112】
ステップS51において、ローカル地図設定部265が、第1のローカル地図選択部261から選択結果を取得する。ステップS52において、ローカル地図設定部265が、ステップS51における選択結果の取得が成功したか否かを判定する。
【0113】
ステップS51における選択結果の取得が成功した場合には、処理がステップS53に移行する。ステップS53において、ローカル地図設定部265が、ローカル地図の選択が成功したとして、第1のローカル地図選択部261から取得したローカル地図識別子によって特定されるローカル地図のデータをローカル地図データベースDBLから読み出してキャッシュメモリー28に書き込む。また、ローカル地図設定部265は、第1のローカル地図選択部261から取得した暫定位置情報をキャッシュメモリー28に書き込む。その後、処理が終了する。
【0114】
ステップS51における選択結果の取得が失敗した場合には、処理がステップS54に移行する。ステップS54において、ローカル地図設定部265が、第2のローカル地図選択部262から選択結果を取得する。ステップS55において、ローカル地図設定部265が、ステップS54における選択結果の取得が成功したか否かを判定する。
【0115】
ステップS54における選択結果の取得が成功した場合には、処理がステップS53に移行する。ステップS53において、ローカル地図設定部265が、ローカル地図の設定が成功したとして、第2のローカル地図選択部262から取得したローカル地図識別子によって特定されるローカル地図のデータをローカル地図データベースDBLから読み出してキャッシュメモリー28に書き込む。また、ローカル地図設定部265は、第2のローカル地図選択部262から取得した暫定位置情報をキャッシュメモリー28に書き込む。その後、処理が終了する。
【0116】
ステップS54における選択結果の取得が失敗した場合には、処理がステップS56に移行する。ステップS56において、ローカル地図設定部265が、第4のローカル地図選択部264から選択結果を取得する。ステップS57において、ローカル地図設定部265が、ステップS56における選択結果の取得が成功したか否かを判定する。
【0117】
ステップS56における選択結果の取得が成功した場合には、処理がステップS53に移行する。ステップS53において、ローカル地図設定部265が、ローカル地図の設定が成功したとして、第4のローカル地図選択部264から取得したローカル地図識別子によって特定されるローカル地図のデータをローカル地図データベースDBLから読み出してキャッシュメモリー28に書き込む。また、ローカル地図設定部265は、第4のローカル地図選択部264から取得した暫定位置情報をキャッシュメモリー28に書き込む。その後、処理が終了する。
【0118】
ステップS56における選択結果の取得が失敗した場合には、処理がステップS58に移行する。ステップS58において、ローカル地図設定部265が、ローカル地図の設定が失敗した旨を表す地図設定失敗フラグを設定する。その後、処理が終了する。
【0119】
<点群探索部>
一方、図3に示す点群探索部266は、第1の情報端末10aのセンサー部から得られる計測データ(例えば、スマートフォンのカメラ部分から得られる画像データ)が位置推定装置20に送信されると、通信制御部260から計測データを取得して、点群探索処理を開始する。
【0120】
点群探索部266は、計測データから複数の特徴点を抽出し、第1のローカル地図選択部261~第4のローカル地図選択部264の内の何れかによって選択され、ローカル地図設定部265によって設定されたローカル地図に配置されている複数の点群の内から、抽出された特徴点がマッチする点群を探索する。
【0121】
図10は、図3に示す点群探索部の動作例を示すフローチャートである。図10において処理が開始すると、点群探索部266によって過去に設定されていたフラグ等がリセットされる。
【0122】
ステップS61において、点群探索部266が、第1のローカル地図選択部261~第4のローカル地図選択部264の内の何れかによって選択されたローカル地図が既に設定済みか否かを判定する。例えば、ローカル地図がキャッシュメモリー28に書き込まれていれば、ローカル地図が設定済みと判定される。
【0123】
ローカル地図が設定されていない場合には、処理がステップS62に移行する。ステップS62において、点群探索部266が、点群の探索が失敗した旨を表す点群探索失敗フラグを設定する。その場合には、第1のローカル地図選択部261~第4のローカル地図選択部264におけるローカル地図選択処理が再起動されて、新たに選択されたローカル地図がローカル地図設定部265によって設定される。
【0124】
ローカル地図が設定されている場合には、処理がステップS63に移行する。ステップS63において、点群探索部266が、ローカル地図設定部265によって設定されたローカル地図における複数の点群のリストを取得する。例えば、図4に示すローカル地図には、5つの点群A~Eが設定されている(点群の数n=5)。
【0125】
ステップS64において、点群探索部266が、点群の探索を開始する。ここで、点群カウント値iがゼロにリセットされる(i=0)。ステップS65において、点群探索部266が、ステップS63において取得された複数の点群のリストから点群を選択することにより、次の点群のデータ(点群配置情報)をキャッシュメモリー28から読み出す。ここで、点群カウント値iがインクリメントされる(i=i+1)。
【0126】
ステップS66において、点群探索部266が、第1の情報端末10aのセンサー部が周辺を計測して得られる計測データを通信制御部260から取得して、取得した計測データから複数の特徴点を抽出する。ステップS67において、点群探索部266が、計測データから抽出された複数の特徴点が、キャッシュメモリー28から読み出された点群のデータにマッチするか否かを判定する。
【0127】
計測データから抽出された複数の特徴点が点群のデータにマッチしている場合には、処理がステップS68に移行する。ステップS68において、点群探索部266が、点群の探索が成功したとして、複数の特徴点がマッチした点群を特定する情報を出力すると共に、点群の位置情報を暫定位置情報として出力する。また、点群探索部266は、点群の取得状況を表すフラグを取得済みに変更する。その後、処理が終了する。
【0128】
計測データから抽出された複数の特徴点が点群のデータにマッチしていない場合には、処理がステップS69に移行する。ステップS69において、点群探索部266が、点群カウント値iが点群の数nに達したか否かを判定する。
【0129】
点群カウント値iが点群の数nに達していなければ、処理がステップS65に戻り、次の点群について点群の探索が行われる。一方、点群カウント値iが点群の数nに達していれば、処理がステップS70に移行する。ステップS70において、点群の探索が成功しないまま、点群探索部266による点群探索処理が終了する。
【0130】
ステップS71において、点群探索部266が、他のローカル地図選択部において選択結果が変更されたか否かを判定する。他のローカル地図選択部において選択結果が変更されていなければ、処理がステップS64に戻り、新たな計測データについて点群の探索が繰り返される。一方、他のローカル地図選択部において選択結果が変更されていれば、処理がステップS72に移行する。ステップS72において、点群探索部266が、点群の取得状況を表すフラグを未取得に変更する。その後、処理がステップS62に移行する。
【0131】
図11は、図3に示す点群探索部の動作例を説明するための模式図である。図11には、ビルA及びビルBの模式的な斜視図と、ビルAの4階フロアのローカル地図とが示されている。ビルAの4階フロアのローカル地図には、5つの点群A~Eが設定されている。
【0132】
点群探索部266は、ローカル地図に配置されている点群A~Eの点群配置情報の内から、任意の順序で1つの点群の点群配置情報を読み出し、読み出された点群配置情報に複数の特徴点がマッチするか否かを判定しても良い。例えば、図11の(a)に示すように、点群探索部266は、点群A、点群B、点群C、点群D、点群Eの順に点群探索処理を行っても良い。
【0133】
一方、第1のローカル地図選択部261~第4のローカル地図選択部264の内の少なくとも1つによって位置情報(暫定位置情報)が得られる場合には、点群探索部266は、得られる位置情報によって表される位置から近い順序で点群配置情報を読み出すことにより、複数の特徴点がマッチする点群を探索しても良い。例えば、図11の(b)に示すように、第1の情報端末10aが点群Bの近くに位置していることを表す位置情報が得られる場合には、点群探索部266は、点群B、点群E、点群A、点群D、点群Cの順に点群探索処理を行っても良い。
【0134】
<位置推定部>
また、図3に示す位置推定部267は、第1の情報端末10aのセンサー部から得られる計測データ(例えば、スマートフォンのカメラ部分から得られる画像データ)が位置推定装置20に送信されると、通信制御部260から計測データを取得して、位置推定処理を開始する。位置推定部267は、計測データから抽出される複数の特徴点と点群探索部266によって探索された点群との位置関係に基づいて第1の情報端末10aの位置を推定する。
【0135】
図12は、図3に示す位置推定部の動作例を示すフローチャートである。図12において処理が開始すると、位置推定部267によって過去に設定されていたフラグ等がリセットされる。ステップS81において、位置推定部267が、点群が取得済みか否かを判定する。
【0136】
点群が未取得であれば、処理がステップS82に移行する。ステップS82において、位置推定部267が、暫定位置情報が取得済みか否かを判定する。暫定位置情報が取得済みであれば、処理がステップS83に移行し、位置推定部267が、位置推定結果として暫定位置情報を出力する。一方、暫定位置情報が未取得であれば、処理がステップS84に移行し、位置推定部267が、位置推定が失敗した旨を表す位置推定失敗フラグを設定する。その後、処理が終了する。
【0137】
点群が取得済みであれば、処理がステップS85に移行する。ステップS85において、位置推定部267が、第1の情報端末10aのセンサー部から得られる計測データを通信制御部260から取得し、計測データから抽出される複数の特徴点と点群探索部266によって探索された点群との位置関係に基づいて、第1の情報端末10aの位置を推定する。
【0138】
ステップS86において、位置推定部267が、位置推定が成功したか否かを判定する。位置推定が失敗した場合には、処理がステップS83に移行して、位置推定部267が、位置推定結果として暫定位置情報を出力する。一方、位置推定が成功した場合には、処理がステップS87に移行する。
【0139】
ステップS87において、位置推定部267が、ローカル地図上の点群配置場所に基づいて、推定された位置のローカル座標系の座標を算出する。さらに、ステップS88において、位置推定部267が、位置推定結果として、推定された位置のローカル座標系の座標を出力する。その後、処理が終了する。
【0140】
図12には示されていないが、位置推定部267は、ローカル地図において推定された第1の情報端末10aの位置を表示するために、ローカル地図に対応する地図画像(例えば、建物のフロアー図やイラスト等)の画像データを画像データベースDBIから読み出し、地図画像において推定位置の表示を追加した画像データを生成しても良い。位置推定部267によって生成された画像データに基づいて、第1の情報端末10aの推定位置が示された地図画像が表示部22に表示される。
【0141】
さらに、位置推定部267によって生成された画像データは、位置推定装置20から位置情報処理装置30に送信されても良い。その場合には、例えば、警備会社のコントロールセンターにおいて、建物等を警備する警備員の位置を確認することが可能になる。また、製造会社のコントロールセンターにおいて、部品や材料を搬送する無人搬送車の位置を確認したり、運送会社のコントロールセンターにおいて、物品を搬送する自動配送車の位置を確認したりすることが可能になる。
【0142】
<点群探索と位置推定のアルゴリズム例>
以下においては、一例として、第1の情報端末10aのセンサー部としてカメラを用いる場合について説明する。位置推定装置20の点群探索部266は、第1の情報端末10aのカメラが周辺を撮影して得られる画像データに画像認識処理を施すことにより、画像データから複数の特徴点を抽出して、それらの特徴点の座標を求める。
【0143】
上記の画像認識処理においては、例えば、対象となる物体の画像を形状とテクスチャー(アピアランス)とに分けて、それぞれを主成分分析によって次元圧縮することにより、少ないパラメーターで対象の形状の変化とテクスチャーの変化とを表現できるようにしたモデルを用いることができる。
【0144】
このモデルにおいて、全特徴点を並べた形状ベクトルは、平均形状ベクトルと、平均形状ベクトルからの偏差を主成分分析して得られる固有ベクトル行列とを用いて表される。それにより、対象の形状及びテクスチャーの情報を低次元のパラメーターで表現できるので、それらのパラメーターを変化させることによって、対象の形状及びテクスチャーを変化させることができる。さらに、対象が、画像中のどこに、どんなサイズで、どんな向きで存在するかという広域的な変化に関するパラメーターが考慮される。
【0145】
点群の探索とは、上記のパラメーターを変化させることにより、モデルを局所的及び広域的に変化させて対象の画像を生成し、生成した画像と点群の画像とを比較して、誤差が最小となるようなパラメーターの値を求めることである。点群探索部266は、誤差が閾値以下である場合に、画像データから抽出された複数の特徴点が探索中の点群にマッチしていると判定する。
【0146】
ここで、カメラの位置によって対象の見え方が変わってくるので、上記のパラメーターは、探索された点群に対するカメラの相対的な位置を推定するためにも用いることができる。即ち、対象の特徴点を認識し、カメラとの距離や角度が変わることによる映像の変化に基づいて、カメラと特徴点との距離を算出することができる。
【0147】
位置推定部267は、点群配置情報と、誤差が最小となったときのパラメーターの値とに基づいて、画像データから抽出された複数の特徴点と探索された点群との位置関係を求め、それに基づいて第1の情報端末10aの位置を推定することができる。典型的には、三角測量の原理を使って、第1の情報端末10aの3次元位置が推定される。
【0148】
上記の点群探索と位置推定においては、位置の推定と周囲の環境の構造把握(環境地図の作成)とを同時に行うSLAM技術を用いても良い。第1の情報端末10aのセンサー部としてカメラを用いる場合には、Visual SLAMが用いられる。Visual SLAMのアルゴリズムは、画像特徴点のマッチングによる特徴量ベースの手法(feature based method)と、画像全体の輝度を用いる直接法(direct method)との2つに大きく分類できる。
【0149】
特徴量ベースの手法とは、異なる視点から撮影した画像から所定のアルゴリズムを用いて得られる複数の特徴点及びそれらの特徴ベクトル同士をマッチングすることによって、撮影対象の3次元形状及びカメラの外部パラメーターを推定する方法である。また、直接法とは、異なる視点から撮影した画像同士の輝度値を比較して、誤差が最小になるようにカメラの外部パラメーターを推定する方法である。
【0150】
単眼カメラを使用する場合には、距離の単位(スケール)が不定となるので、AR(Augmented Reality)マーカー、ARタグ、QRコード(登録商標)、又は、チェッカーボード等の既知の物体を検出して、画像上から物理量を知るか、又は、図2に示す慣性計測装置15のように物理量を直接計測できるセンサーから得られる姿勢情報等を利用することが望ましい。
【0151】
一方、第1の情報端末10aのセンサー部としてレーザーセンサーを用いる場合には、LiDAR SLAMが用いられる。レーザーセンサーによって得られる点群は、距離精度が高く、SLAMの地図構築に対して非常に有効である。計測データから抽出された複数の特徴点と探索中の点群とのマッチングにおいては、ICP(Iterative Closest Point)アルゴリズムや、NDT(Normal Distributions Transform)アルゴリズム等が用いられる。
【0152】
ICPアルゴリズムは、複数の特徴点と探索中の点群との間で最も近い点の組合せを決め、それらの距離の2乗和が最小となるように逐次一方の回転と並進を更新していく方法である。また、NDTアルゴリズムは、探索空間を一定の大きさのグリッドに分割し、グリッド内での点群の分布の平均と分散を計算して、それらが最適にマッチングするように逐次一方の回転と並進を更新していく方法である。
【0153】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、運搬又は移動が可能な第1の情報端末10aの位置を推定する位置推定装置20において、第1の情報端末10aの位置を推定するために用いられる点群配置情報(環境地図)を複数の特定領域のローカル地図に分割してローカル地図データベースDBLに格納しておき、第1の情報端末10aが外部の機器から受信した波動(環境情報)に基づいて1つのローカル地図を選択することにより、点群配置情報の作成に要する費用や、点群配置情報を書き込むメモリーの容量に伴う費用を抑制して、設備コストを削減することができる。
【0154】
例えば、互いに離れて位置するビルA及びビルBの点群配置情報が必要な場合に、ビルA及びビルBを含む長方形の広い領域の環境地図を作成するよりも、ビルAのローカル地図とビルBのローカル地図とを作成する方が、点群配置情報の作成に要する費用や、点群配置情報を書き込むメモリーの容量に伴う費用を抑制することができる。
【0155】
また、第1の情報端末10aのセンサー部から得られる計測データに基づいて探索する領域を広い領域から比較的狭い領域に絞り込むことにより、第1の情報端末10aの位置を推定する際に発生し得る推定位置の誤りの発生率を低減することができる。さらに、本実施形態によれば、そのような位置推定装置20において設備コストを削減しつつ位置推定を可能にする第1の情報端末10aを提供することができる。
【0156】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、当該技術分野において通常の知識を有する者によって、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。例えば、以上説明した実施形態の内から一部の動作を省略して実施することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、運搬又は移動が可能な情報端末の位置を推定する位置推定システム等において利用することが可能である。
【符号の説明】
【0158】
10a…第1の情報端末、10b…第2の情報端末、11…センサー部、12…近距離通信回路、13…無線LAN通信回路、14…GNSS受信回路、15…慣性計測装置、151…気圧計、16…無線通信回路、17…制御回路、20…位置推定装置、21…操作部、22…表示部、23…音声入出力部、24…通信回路、25…インターフェース、26…CPU、260…通信制御部、261…第1のローカル地図選択部、262…第2のローカル地図選択部、263…第3のローカル地図選択部、264…第4のローカル地図選択部、265…ローカル地図設定部、266…点群探索部、267…位置推定部、27…格納部、28…キャッシュメモリー、30…位置情報処理装置
【要約】
【課題】情報端末の位置を推定する位置推定装置において、位置推定のために用いられる点群配置情報の作成に要する費用や、点群配置情報を書き込むメモリーの容量に伴う費用を抑制する。
【解決手段】この位置推定装置は、情報端末との間でネットワークを介してデータ通信を行う通信回路と、複数のローカル地図のデータを格納するローカル地図データベースと、情報端末が外部の機器から受信した波動に基づいて得られる情報に従って、複数のローカル地図の内から1つのローカル地図を選択するローカル地図選択部と、情報端末のセンサー部から得られる計測データから複数の特徴点を抽出し、選択されたローカル地図に配置されている複数の点群の内から複数の特徴点がマッチする点群を探索する点群探索部と、複数の特徴点と探索された点群との位置関係に基づいて情報端末の位置を推定する位置推定部とを含む。
【選択図】図3

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12